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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-02-08
(45)【発行日】2022-02-17
(54)【発明の名称】電力供給装置及び保安灯システム
(51)【国際特許分類】
   H02J 7/34 20060101AFI20220209BHJP
   E01F 13/02 20060101ALI20220209BHJP
   H02J 9/06 20060101ALI20220209BHJP
【FI】
H02J7/34 G
E01F13/02 A
H02J9/06 110
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2017223070
(22)【出願日】2017-11-20
(65)【公開番号】P2019097266
(43)【公開日】2019-06-20
【審査請求日】2020-11-19
(73)【特許権者】
【識別番号】507230382
【氏名又は名称】首都高メンテナンス西東京株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】509150950
【氏名又は名称】株式会社アドバンスクリエート
(73)【特許権者】
【識別番号】391029347
【氏名又は名称】西尾レントオール株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002468
【氏名又は名称】特許業務法人後藤特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】坪山 雅俊
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 秀樹
(72)【発明者】
【氏名】横井 修司
【審査官】宮本 秀一
(56)【参考文献】
【文献】実開平04-097918(JP,U)
【文献】特開2015-019580(JP,A)
【文献】登録実用新案第3080996(JP,U)
【文献】特開平07-160953(JP,A)
【文献】登録実用新案第3153468(JP,U)
【文献】登録実用新案第3182855(JP,U)
【文献】米国特許出願公開第2017/0012448(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E01F1/00
E01F9/00-15/14
H02J7/00-7/12
H02J7/34-7/36
H02J9/00-11/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
工事現場に載置される保安灯へ電力を供給する持ち運び可能な電力供給装置であって、
充放電可能なバッテリと、
前記工事現場に配置される作業車両からの直流電力が入力される入力端子と、
前記保安灯に供給する直流電力を出力する出力端子と、
前記バッテリの充放電を制御するとともに、前記出力端子から出力する直流電力を制御する制御部と、を備え、
前記制御部は、
前記出力端子から前記保安灯に直流電力を出力する要求があるか否かを判断し、
前記出力端子から前記保安灯に直流電力を出力する要求があると判断した場合に、前記作業車両からの直流電力が入力されているか否かを判断し、前記作業車両からの直流電力が入力されていると判断した場合は、当該直流電力を前記バッテリに充電することなく、前記出力端子から前記保安灯に出力し、
前記出力端子から前記保安灯に直流電力を出力する要求があると判断した場合に、前記作業車両からの直流電力が入力されてないと判断した場合は、前記バッテリに充電された充電電力を前記出力端子から前記保安灯に出力し、
前記出力端子から前記保安灯に直流電力を出力する要求がないと判断した場合に、前記作業車両からの直流電力が入力されているか否かを判断し、前記作業車両からの直流電力が入力されていると判断した場合は、当該直流電力を前記バッテリに充電する、
ことを特徴とする電力供給装置。
【請求項2】
前記バッテリは、リン酸鉄リチウムイオンバッテリにより構成される、
ことを特徴とする請求項1に記載の電力供給装置。
【請求項3】
前記バッテリ及び前記制御部が収容されると共に、前記入力端子及び前記出力端子を外面に備えた筐体を備え、
前記筐体は、頂面にハンドル部を備える、
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の電力供給装置。
【請求項4】
オルタネータ又は車載バッテリから電力を出力する機能を有する作業車両と、
工事現場の作業領域に載置される保安灯と、
請求項1から3のいずれか一つに記載の電力供給装置と、を備える保安灯システムであって、
前記バッテリの充電容量は、前記作業車両が前記作業領域の下流側に移動した後、前記作業領域の上流側に移動するまでの間、前記保安灯の点灯を継続させるのに必要な電力である、
ことを特徴とする保安灯システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、保安灯等に電力を供給する電力供給装置及び保安灯システムに関する。
【背景技術】
【0002】
夜間に道路上で工事を行う場合、工事場所を明示して、通行する車両や歩行者に対して警戒を促す保安灯等の設置が義務化されている。
【0003】
このような保安灯として、従来では、工事現場等で一般的に用いられる三角錐形状のロードコーンの内部に光源としての白熱電球を収容し、この白熱電球が発光することで夜間の視認性を高める内照式保安灯が提案されている(特許文献1参照)。また近年では、白熱電球に代えて、消費電力が少なく、且つより高輝度なLEDを用いたものも知られている(特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開平11-107228号公報
【文献】特開2017-82495号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載されたような一般的な保安灯は、工事現場に存在する作業車両(規制車)や当該規制車に載置された発電機が発電する100Vの交流電力を電源とする。
【0006】
これに対して、特許文献2に記載された保安灯は、光源としてLEDを用いているため、12V或いは24Vの直流電力を電源とする。従って、LEDを用いた保安灯を使用する場合には、上記の発電機が発電する100Vの交流電力を12V或いは24Vの直流電力に変換する電力変換器が別途に必要となる。
【0007】
ここで、工事現場において、規制車が移動する際にもLEDを用いた保安灯の点灯を継続したい場合には、移動前の規制車から発電機と電力変換装置とを積み下ろして、当該工事現場に載置する必要がある。
【0008】
しかしながら、発電機を路上に設置することは、燃料の安全管理や、騒音や排気ガスによる環境への悪影響等の問題がある。さらに、発電機は重量があるために、規制車への積み下しが作業者の負担となっていた。
【0009】
本願発明は、このような問題に鑑みてなされたものであり、工事現場から規制車が移動する場合でも、作業者に負担を強いることなく保安灯の点灯を継続させることができる技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明のある実施態様によれば、工事現場に載置される保安灯へ電力を供給する持ち運び可能な電力供給装置であって、充放電可能なバッテリと、工事現場に配置される作業車両からの直流電力が入力される入力端子と、保安灯に供給する直流電力を出力する出力端子と、バッテリの充放電を制御するとともに、出力端子から出力する直流電力を制御する制御部と、を備える。制御部は、出力端子から保安灯に直流電力を出力する要求があるか否かを判断し、出力端子から保安灯に直流電力を出力する要求があると判断した場合に、作業車両からの直流電力が入力されているか否かを判断し、作業車両からの直流電力が入力されていると判断した場合は、当該直流電力をバッテリに充電することなく、出力端子から保安灯に出力し、出力端子から保安灯に直流電力を出力する要求があると判断した場合に、作業車両からの直流電力が入力されてないと判断した場合は、バッテリに充電された充電電力を出力端子から保安灯に出力し、出力端子から保安灯に直流電力を出力する要求がないと判断した場合に、作業車両からの直流電力が入力されているか否かを判断し、作業車両からの直流電力が入力されていると判断した場合は、当該直流電力をバッテリに充電する。
【発明の効果】
【0011】
上記態様によれば、入力端子から電力が入力されている場合は、当該電力を出力端子に出力し、入力端子から電力が入力されていない場合は、バッテリに充電された電力を出力端子へと出力することができるので、規制車が工事現場から移動する際にもバッテリの充電電力によって保安灯の点灯を継続させることができる。また、バッテリの容量を必要最小限として重量を軽減することができるので、規制車への積み下ろし時の作業者への負担を大幅に軽減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明の実施形態の電力供給装置の概略斜視図である。
図2】本発明の実施形態の電力供給装置の機能を示す構成ブロック図である。
図3】本発明の実施形態の電力供給装置の制御部が実行する制御のフローチャートである。
図4】本発明の実施形態の電力供給装置を工事現場に適用した例を示す。
図5】本発明の実施形態の保安灯システムを自動車専用道路の工事現場に適用した例を示す。
図6】本発明の実施形態の保安灯システムを自動車専用道路の工事現場に適用した例を示す。
図7】本発明の実施形態の保安灯システムを自動車専用道路の工事現場に適用した例を示す。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施形態による電力供給装置1を図面を参照して説明する。
【0014】
図1は、本発明の実施形態の電力供給装置1の概略斜視図である。
【0015】
本実施形態の電力供給装置1は、内部にバッテリ200(図2参照)を備え、入力端子20から入力された電力、又は、バッテリ200に充電された電力を、出力端子30から出力する。この機能により、出力端子30から電力ケーブルを介して接続された保安灯を点灯させる。
【0016】
電力供給装置1は、筐体11、ハンドル部12、入力端子20、出力端子30、電源スイッチ40及び表示部50を備えて構成される。
【0017】
筐体11は、例えば金属製の箱形形状を有し、図2で後述する制御回路基板100やバッテリ200等を収容する。
【0018】
筐体11の頂面にはハンドル部12が取り付けられる。ハンドル部12は、電力供給装置1を持ち運ぶのに適した取手形状を有する。
【0019】
筐体11の前面には、入力端子20、出力端子30、電源スイッチ40及び表示部50が備えられる。
【0020】
入力端子20は、電力供給装置1の外部から供給される電力の電力配線が接続される。本実施形態における外部から供給される電力とは、工事現場における作業車両(以下、「規制車」と称する)のエンジンにより発電を行なう発電機(オルタネータ)又は車載バッテリから供給される24Vの直流電力である。
【0021】
ただし、外部から供給される電力としては、規制車に搭載された発電機が発電する100Vの交流電力であってもよい。その場合には、電力供給装置1は、入力端子20から後述する切換スイッチ130の入力端子20までの間にAC/DCコンバータ等の電力変換器(不図示)を介在させて、100Vの交流電力を電力供給対象が要する所定の直流電力(例えばDC24V)に変換可能に構成される。
【0022】
出力端子30は、電力供給装置1に1つ以上(ここでは二つ)設けられ、電力供給対象に連結される電力配線が接続される。本実施形態の電力供給装置1が電力を供給する電力供給対象は、高輝度LEDを光源とする内照式保安灯とする(特許文献2参照)。したがって、本実施形態の出力端子30からは、高輝度LEDを発光させるための24Vの直流電力が出力される。
【0023】
電源スイッチ40は、電力供給装置1の動作をオン/オフするスイッチである。
【0024】
表示部50は、電力供給装置1の動作状態、及び、電力供給装置1が備えるバッテリ200の残充電量などを表示する。
【0025】
表示部50に残充電量が表示される場合には、例えばLEDによるレベルメータにより構成され、バッテリ200の残充電量に応じてレベルが変化するようにLEDの点灯/非点灯が制御される。
【0026】
図2は、本発明の実施形態の電力供給装置1の機能を示す構成ブロック図である。
【0027】
電力供給装置1は、図1で前述したように、筐体11に、入力端子20、出力端子30、電源スイッチ40及び表示部50が備えられる。
【0028】
電力供給装置1は、その内部に、制御回路基板100、保護回路110、DC-DCコンバータ120、切換スイッチ130、主スイッチ140及びバッテリ200を備える。
【0029】
制御回路基板100は、電力供給装置1の各機能を制御する制御部10と、バッテリ200の充放電を制御する充放電回路150とを備える。制御回路基板100は、保護回路110、DC-DCコンバータ120、切換スイッチ130及びバッテリ200にそれぞれ接続されており、これらとの間で信号を授受する。制御部10は、中央演算装置(CPU)、半導体メモリ、入出力装置等を備えており、半導体メモリに記憶されたプログラムをCPUが実行することにより、電力供給装置1の各機能を制御する。
【0030】
保護回路110は、入力端子20に接続され、入力端子20に入力される電力の電圧が規定値を超えた場合や逆電圧となった場合に、当該電力が保護回路110の後段に接続されている出力端子30やDC-DCコンバータ120まで通電されることを規制する。保護回路110は、従来公知の構成でよく、例えば過電圧・逆電圧検出回路、ヒューズやリレー、サーキットブレーカ等により構成される。
【0031】
DC-DCコンバータ120は、制御回路基板100による制御により、入力端子20から入力された直流電力をバッテリ200の充電に適した電圧に変換する。変換された電力は制御回路基板100を介してバッテリ200に供給される。
【0032】
切換スイッチ130は、制御回路基板100の制御により、出力端子30へ出力する電力を切り換える。具体的には、切換スイッチ130は、入力端子20に入力された電力を、出力端子30へ出力するか、バッテリ200の電力(充電電力)を出力端子30へ出力するか、を切り換える。すなわち、切換スイッチ130は、入力端子20に入力された電力をバッテリ200へと充電することなく(バッテリ200をバイパスして)出力端子30へと通電させるバイパス回路として機能する。
【0033】
主スイッチ140は、制御回路基板100によって、出力端子30からの電力の出力をオン/オフ制御するためのスイッチである。
【0034】
なお、切換スイッチ130及び主スイッチ140は、電気接点を持つ機械的スイッチが電磁石等によって動作するものであってもよいし、半導体スイッチであってもよい。
【0035】
バッテリ200は、複数の単バッテリ200aが並列に接続されて構成される。単バッテリ200aは、例えばリン酸鉄リチウムイオンバッテリにより構成される。本実施形態では8個の単バッテリ200aが並列に接続されてバッテリ200が構成されている。バッテリ200の充放電は、制御回路基板100が備える充放電回路150により行なわれる。
【0036】
バッテリ200に必要な容量は、後述するように保安灯の消費電力及び点灯が必要な時間によって決定される。
【0037】
なお、電力供給装置1は、電流供給対象である保安灯を単に点灯するだけでなく、任意の時間間隔で点滅させることもできる。この場合は、例えば筐体11の前面に点滅スイッチをさらに設けて、作業者が保安灯の点灯パターン(点灯/点滅)を選択可能に構成してもよい。
【0038】
次に、本実施形態の制御部10が実行する制御を説明する。
【0039】
図3は、本発明の実施形態の電力供給装置1の制御部10が実行する制御のフローチャートである。以下に説明するフローは、電力供給装置1が稼動している間、所定の間隔で繰り返し実行される。
【0040】
ステップS10において、制御部10は、電源スイッチ40のON/OFF状態を判定する。電源スイッチ40がオフ状態からオン状態に設定されたと判定すると、制御部10は、続くステップS20において主スイッチ140を導通状態(オン)に制御する。これにより、入力端子20又はバッテリ200からの電力が、出力端子30へと導通可能に設定される。電源スイッチ40がオフ状態である場合は、制御部10は、電源スイッチ40がON状態になるまで、ステップS10の処理を繰り返し実行する。
【0041】
次に、ステップS30において、制御部10は、出力端子30から電力を出力する要求があるか否かを判定する。要求があるか否かの判定は、例えば制御部10が出力端子30の負荷を検出する等して、出力端子30に電源ケーブルが接続されていることを検知することにより判定される。すなわち、本ステップでは、電力供給装置1と電力供給対象(保安灯)とが電力配線を介して接続されたか否かを検知して、電力供給装置1が電力供給対象に電力を供給できる状態にあるか否かを判定する。
【0042】
出力端子30から電力を出力する要求があると判定した場合は、ステップS40の処理が実行される。ステップS40では、制御部10は、入力端子20に電力(直流24V)が入力されているか否かを判定する。
【0043】
電力が入力されているか否かの判定は、例えば、入力端子20に電力が入力されていることを示す信号が保護回路110から制御回路基板100に送信されたことを制御部10が検知することにより判定する。
【0044】
入力端子20に電力が入力されていると判定した場合は、ステップS50の処理が実行される。ステップS50では、制御部10は、入力端子20に入力された電力が、出力端子30へ導通するように切換スイッチ130を切り換える。図2に示す例では、制御部10は、切換スイッチ130の出力端子が、図中上側の入力端子と接続されるように制御する。
【0045】
これにより、ステップS60において、入力端子20から入力された電力が、保護回路110、切換スイッチ130及び主スイッチ140を介して、出力端子30に出力される。このようにして、電力供給装置1は、入力端子20に入力された電力を出力端子30に接続された電力配線を介して保安灯に供給する。
【0046】
一方、ステップS40において、入力端子20に電力が入力されていないと判定された場合は、制御部10は、ステップS70の処理を実行する。
【0047】
ステップS70では、制御部10は、バッテリ200に充電された電力を、出力端子30へ出力するように、切換スイッチ130を切り換える。図2に示す例では、制御部10は、切換スイッチ130の出力端子が図中下側の入力端子と接続されるように制御する。
【0048】
これにより、ステップS60において、バッテリ200に充電された電力が、切換スイッチ130及び主スイッチ140を介して、出力端子30に出力される。このようにして、電力供給装置1は、バッテリ200に充電された充電電力を出力端子30に接続された電力配線を介して保安灯に供給する。
【0049】
一方、ステップS30において、出力端子30から電力を出力する要求がないと判定した場合は、ステップS80の処理が実行される。
【0050】
ステップS80では、制御部10は、入力端子20に電力が入力されているか否かを判定する。入力端子20に電力が入力されていると判定した場合は、ステップS90の処理が実行される。ステップS90では、制御部10は、入力端子20に入力された電力をバッテリ200に充電するように、DC-DCコンバータ120を制御する。
【0051】
DC-DCコンバータ120は、入力された電力(直流24V)を、バッテリ200の充電に適した電力(例えば直流29V)に昇圧して、制御回路基板100の充放電回路150に出力するように制御される。そして、充放電回路150は、入力された電力によってバッテリ200を充電する。
【0052】
出力端子30から電力を出力する要求がないと判定した場合であって、入力端子20に電力が入力されていない場合は、制御部10は、出力端子30からの電力の出力に係る制御、及び、バッテリ200の充電、放電に係る制御を行なうことなく、本フローを終了する。なお、この場合、主スイッチ140を非導通状態(オフ)に制御して、出力端子30と内部回路を遮断してもよい。
【0053】
次に、本実施形態の電力供給装置1を用いた保安灯システムについて説明する。
【0054】
図4は、本実施形態の電力供給装置1を工事現場に適用した際の保安灯システムの一例を示す。
【0055】
図4は、工事現場を通知する標識を備えると共に、後部に緩衝装置を備えた作業車両(規制車)300と、電力供給装置1と、保安灯(ロードコーン400、発光部400a)から構成される保安灯システムを道路上に配置した一例の説明図である。
【0056】
図4に示すように、電力供給装置1の入力端子20には、規制車300からの電力ケーブルが接続される。規制車300は、この電源ケーブルを介して、電力供給装置1に電力を供給する。電力供給装置1の出力端子30には、複数のロードコーン400内部に設置された発光部400aへと接続する電力配線(ここではスズランケーブル)が接続される。
【0057】
発光部400aは、高輝度のLEDを備え、電力供給装置1からの電力により発光する。ロードコーン400は、内部に収容した発光部400aが発光することにより内部から照射され、全体が明るく発光することで保安灯として機能する。
【0058】
電力供給装置1は、規制車300のオルタネータ又はバッテリから入力された電力を出力端子30から出力することにより、出力端子に接続された発光部400aに電力を供給して、ロードコーン400及び発光部400aからなる保安灯を点灯させる。また、電力供給装置1は、規制車300からの電力の供給がなくなった場合(電力が遮断された場合)は、バッテリ200に充電された充電電力を出力端子30から出力することによって、出力端子30に接続された保安灯を点灯させる。
【0059】
なお、電力供給装置1のバッテリ200は、出力端子30から電力を出力しない場合、すなわちロードコーン400の発光部400aを点灯させない場合には、規制車300からの電力により充電される。実例として、例えば、規制車300に搭載された電力供給装置1は、道路工事の現場へ向かう道中において、規制車300からの電力をバッテリ200に充電する。ただし、バッテリ200を充電するタイミングは特に限定されない。例えば、電力供給装置1は、規制車300からの電力を出力端子から出力するとともに、当該電力を用いてバッテリ200を充電可能に構成されてもよい。ただし、上記実例のように、保安灯を点灯させない場合にのみバッテリ200を充電することで、規制車300からの電力により保安灯を点灯させるのと同時にバッテリ200を充電するのに比べて、規制車300のバッテリやオルタネータの負荷を抑制することができる。
【0060】
図5から図7は、本実施形態の保安灯システムを自動車専用道路の工事現場に適用した例を示す。
【0061】
図5に示すように、自動車専用道路1000には、進行方向が同一の車線1100、1200を有し、路側帯1300側に接する車線1100に、道路工事を行なうための作業領域2000が設けられている。車線1100と車線1200との間には、車線境界線1110が描かれており、車線1100と路側帯1300との間には、車線境界線1310が描かれている。車線1200には中央分離帯1400が接している。なお、車線1100、1200は、車両の進行方向が図4中の下側から上側に向かう方向(図中の点線矢印方向)に規定されている。
【0062】
作業領域2000は、略等間隔に並べられた複数の保安灯(発光部400aを収容するロードコーン400)と規制車300とに取り囲まれた領域であって、図5中にハッチングで示された領域である。規制車300は、作業領域2000よりも常に上流側の道路上に配置される。これにより、万が一走行車両が誤って作業領域2000へと突入しようとした場合にも、規制車300が作業領域2000の作業者を保護する。
【0063】
道路工事が行われる際、ロードコーン400は、上流側から車線1100を走行してくる車両を作業領域2000の手前で車線1200に誘導するように、作業領域2000の上流側に多数設置される。また、ロードコーン400は、車線1100の上流側へと向かうにつれて中央分離帯1400側から路側帯1300側へと徐々に近づいていくように配置される。図5に示す設置例では、25個のロードコーン400(及び発光部400a)が、作業領域2000を取り囲むように配置されている。
【0064】
図4で説明したように、電力供給装置1は、入力端子20に規制車300からの電力ケーブルが接続されるとともに、出力端子30にはロードコーン発光部400aと接続される電力配線(スズランケーブル)が接続される。
【0065】
この状態で、電力供給装置1は、規制車300のオルタネータ又はバッテリから供給される電力を出力端子30から出力することにより、出力端子30に接続されたロードコーン400の発光部400aを点灯させる。
【0066】
ここで、前述のように、規制車300は、作業者を保護するために作業領域2000よりも上流側に配置されている。すなわち、作業者は、安全性を考慮して、規制車300よりも上流側には原則として移動しない。このため、道路工事が終了した後の撤収作業時に、作業領域2000よりも上流側のロードコーン400を回収する場合は、ロードコーン400が設置されているよりもさらに上流側に規制車300を移動させてから行なう必要がある。
【0067】
しかしながら、自動車専用道路1000では、車両は一方向にしか走行できない。そこで、規制車300は、一旦作業領域2000の下流側へ移動して、作業領域2000よりも下流側に存在するインターチェンジから一般道へと下りる。そして、一般道を使って作業領域2000の上流側に存在するインターチェンジへ移動して、自動車専用道路1000における作業領域2000の上流側に回り込む必要がある。
【0068】
なお、規制車300が移動する前に、作業者により、規制車300から電力供給装置1の入力端子20に接続された電力ケーブルが取り外される。このとき、電力供給装置1は、入力端子20への電力の入力がなく、かつ、保安灯を発光させるための電力の出力要求がある状態であるため、制御部10は、バッテリ200に充電された電力を出力端子30に出力するように、切換スイッチ130を切り換える。制御部10による切換スイッチ130の切換は瞬時に行なわれるため、保安灯を消灯させることがない。仮に消灯させることがあったとしてもその時間は数msec以下の一瞬である。したがって、切換スイッチ130が切り換わることによって、保安灯の保安機能(警告灯としての警告機能を含む)を中断させることはない。
【0069】
そして、規制車300の移動中は、図6に示すように、電力供給装置1は、バッテリ200の電力により、ロードコーン400の発光部400aを点灯させる。
【0070】
その後、規制車300は、作業領域2000よりも上流側に存在するインターチェンジから再び自動車専用道路1000に入り、図7に示すように、ロードコーン400の手前に停車する。このとき、全ての保安灯(ロードコーン400及び発光部400a)は作業車300よりも上流側に配置されているので、作業者は、規制車300よりも上流側の領域において、安全性を保ちながら全ての保安灯を回収することができる。また、規制車300が移動している間も、電力供給装置1によってロードコーン400は点灯しているので、自動車専用道路1000を走行する車両に対して、作業領域2000の存在を警告し続けることができる。
【0071】
なお、本実施形態では、道路工事の保安灯として25個のロードコーンを配置した。ここで、一例として、ロードコーン400の発光部400aの消費電力が3.5[W/h]であるとした場合は、全ての発光部400aに供給する電力は約88[W/h]である。従って、規制車300が移動している時間を約2時間とした場合には、全ての保安灯を継続して点灯させるためにバッテリ200に必要とされる電力は、88×2=176Whとなる。
【0072】
そこで、余裕分を持たせて、単バッテリ200aの容量を12V、20Ahとして、これを8個直列に接続することで、24Vの電力を2時間以上継続して供給することができ、規制車300からの電力の供給がない場合にも、保安灯の点灯を十分に継続することができる。また、上述したように本実施形態のバッテリ200は、リン酸鉄リチウムイオンバッテリにより構成されるので、上記の容量分のバッテリ200を搭載した電力供給装置1は、平均的な大人一人の力でも余裕で持ち運ぶことができる。従って、規制車300への積み下ろし作業を大人一人で容易に行うことができる。
【0073】
以下、本発明の構成と、その効果について記載する。
【0074】
一実施形態の電力供給装置1によれば、路上に載置される保安灯(400、400a)へ電力を供給する持ち運び可能な電力供給装置1であって、充放電可能なバッテリ200と、外部からの電力が入力される入力端子20と、保安灯に供給する電力を出力する出力端子30と、バッテリ200の充放電を制御するとともに、出力端子30から出力する電力を制御する制御部10と、を備える。制御部10は、外部からの電力が入力されている時は、当該電力を出力端子30から出力し、外部からの電力が入力されている時であって、保安灯へ電力を供給しない場合には、外部からの電力をバッテリ200に充電し、外部からの電力が遮断された場合には、バッテリ200に充電された充電電力を出力端子30から出力する。
【0075】
これにより、保安灯の電源として、例えば内燃機関を用いた発電機を用いる場合と比較して、騒音や排気ガス等の環境負荷を低減することができる。また、バッテリ200の容量を必要最小限とできることにより、バッテリ200の重量や体積を小さくでき、電力供給装置1の持ち運びや規制車300への積み下ろしの際の作業者への負担を小さくすることができる。
【0076】
また、規制車からの電力供給が遮断された場合でも、制御部10(内部回路)による制御によって充電電力との電源の切り換えが行われるので、規制車が移動する際でも、保安灯の点灯を中断させることなく継続させることができる。
【0077】
また、一実施形態の電力供給装置1によれば、バッテリ200は、リン酸鉄リチウムイオンバッテリにより構成される。このように、高密度かつ軽量な蓄電池を用いて電力供給装置1を構成することで、より軽量化、或いは小型化が図れるので、作業車への負担をより軽減することができる。
【0078】
また、一実施形態の電力供給装置1によれば、バッテリ200及び制御部10が収容されると共に、入力端子20及び出力端子30を外面に備えた筐体11を備え、筐体11は、頂面にハンドル部を備える。これにより、作業者による電力供給装置1の取り扱いやすさをより向上させることができる。
【0079】
また、一実施形態の保安灯システムによれば、オルタネータ又は車載バッテリの電力を出力する機能を有する規制車と、路上に載置される保安灯と、上述の電力供給装置と、を備える保安灯システムであって、制御部10は、規制車300からの電力が入力されている時は、当該電力により保安灯を点灯させ、規制車300からの電力が入力されている時であって、保安灯を点灯させない場合には、規制車300からの電力をバッテリ200に充電し、規制車からの電力が遮断された場合には、バッテリ200に充電された充電電力により保安灯を点灯させる。これにより、自動車専用道路において規制車の上流側に保安灯が設置されていたとしても、保安灯を点灯を継続させたまま規制車を移動させることができるので、作業者の安全性が確保された状態を維持しながら、保安灯の回収作業を完遂させることができる。
【0080】
以上、本発明の実施形態について説明したが、上記実施形態は本発明の適用例の一つを示したものに過ぎず、本発明の技術的範囲を上記実施形態の具体的構成に限定する趣旨ではない。
【0081】
例えば、入力端子20及び出力端子30は筐体11の前面に配置される旨説明したが、必ずしもこれに限らず、側面、或いは背面など、筐体11の外面のいずれに配置しても良い。
【0082】
また、本発明の実施形態のバッテリ200は、リン酸鉄リチウムイオンバッテリを例に説明したがこれに限られず、小型軽量で高容量のものであればよい。バッテリ200は、例えばリチウムイオンポリマー電池やニッケル水素電池であってもよい。
【符号の説明】
【0083】
1 電力供給装置
10 制御部
11 筐体
12 ハンドル部
20 入力端子
30 出力端子
40 電源スイッチ
50 表示部
100 制御回路基板
110 保護回路
120 DCコンバータ
130 切換スイッチ
140 主スイッチ
150 充放電回路
200 バッテリ
200a 単バッテリ
300 作業車両(規制車)
400 ロードコーン
400a 発光部
1000 自動車専用道路
2000 作業領域
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7