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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-02-08
(45)【発行日】2022-02-17
(54)【発明の名称】移動体
(51)【国際特許分類】
   G05D 1/02 20200101AFI20220209BHJP
【FI】
G05D1/02 H
G05D1/02 S
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2017243035
(22)【出願日】2017-12-19
(65)【公開番号】P2019109771
(43)【公開日】2019-07-04
【審査請求日】2020-10-02
(73)【特許権者】
【識別番号】000000262
【氏名又は名称】株式会社ダイヘン
(74)【代理人】
【識別番号】100115749
【弁理士】
【氏名又は名称】谷川 英和
(74)【代理人】
【識別番号】100121223
【弁理士】
【氏名又は名称】森本 悟道
(72)【発明者】
【氏名】坂原 洋人
【審査官】今井 貞雄
(56)【参考文献】
【文献】特開2004-171430(JP,A)
【文献】特開平09-212798(JP,A)
【文献】特開2010-282443(JP,A)
【文献】特開2012-185619(JP,A)
【文献】特開2012-159894(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G05D 1/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
自律的に移動する移動体であって、
前記移動体を移動させる移動機構と、
前記移動体の現在位置を取得する現在位置取得部と、
前記現在位置を用いて、前記移動体が目的地までの経路に沿って移動するように前記移動機構を制御する移動制御部と、を備え、
出発地と目的地とを結ぶ直線と、前記経路の任意の点との距離は、所定の閾値を超えない範囲になっており、
前記経路には、複数のサブ目的地が設定されており、
前記移動制御部は、現在位置から目的地までの第1方向と、現在位置からサブ目的地までの第2方向との角度が角度閾値以内であり、現在位置からサブ目的地までの距離が距離閾値以上であるという条件を満たすサブ目的地が存在する場合には、前記移動体が前記条件を満たす最も近いサブ目的地に向かうように前記移動機構を制御し、前記条件を満たすサブ目的地が存在しない場合には、前記目的地に向かうように前記移動機構を制御する、移動体。
【請求項2】
前記目的地までの経路は複数存在し、各前記経路にそれぞれ複数のサブ目的地が設定されている、請求項1記載の移動体。
【請求項3】
障害物を検知する障害物検知部をさらに備え、
前記移動制御部は、1つの経路に設定された複数のサブ目的地を用いて制御を行い、前記障害物検知部によって障害物が検知された場合に、当該障害物を回避するように経路を変更する、請求項2記載の移動体。
【請求項4】
前記移動制御部は、前記条件を満たすサブ目的地が存在する場合であっても、前記条件を満たす最も近いサブ目的地より前記目的地の方が近いときには、前記目的地に向かうように前記移動機構を制御する、請求項1から請求項3のいずれか記載の移動体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、経路に沿って移動する移動体に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、経路に沿って自律的に移動する移動体が知られている。そのような移動体によって、例えば、自動搬送などを実現することができる。なお、その移動体が直進している際に、例えば、偏荷重、走行面の傾きや凹凸、滑りやすい走行面での車輪の空転等に起因して、移動体が経路から外れた方向に移動することがあった。
【0003】
なお、関連した技術として、床の凹凸等に起因する外乱の影響下であっても、直進性を高めることができる全方向移動車両の制御装置が知られている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特許5306470号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記特許文献1に記載された全方向移動車両は、搭乗した乗員によって操作される車両であって、経路に沿って自律的に移動する移動体ではない。経路に沿って自律的に移動する移動体において、偏荷重等がある場合でも、経路への追従性が高くなるようにしたいという要望があった。
【0006】
本発明は、上記事情に応じてなされたものであり、経路への追従性を高めることができる、自律的に移動する移動体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、本発明による移動体は、自律的に移動する移動体であって、移動体を移動させる移動機構と、移動体の現在位置を取得する現在位置取得部と、現在位置を用いて、移動体が目的地までの経路に沿って移動するように移動機構を制御する移動制御部と、を備え、経路には、複数のサブ目的地が設定されており、移動制御部は、現在位置から目的地までの第1方向と、現在位置からサブ目的地までの第2方向との角度が角度閾値以内であり、現在位置からサブ目的地までの距離が距離閾値以上であるという条件を満たすサブ目的地が存在する場合には、移動体が条件を満たす最も近いサブ目的地に向かうように移動機構を制御し、条件を満たすサブ目的地が存在しない場合には、目的地に向かうように移動機構を制御する、ものである。
このような構成により、移動体が、所定の条件を満たすサブ目的地に向かって移動するように制御することによって、偏荷重等があったとしても、移動体を絶えず経路に戻すように移動制御しながら目的地まで移動させることができる。また、移動体が向かうサブ目的地として、移動体の現在位置から距離閾値以上離れているサブ目的地を選択することによって、移動体の実移動の軌跡が経路に対して蛇行すること(ハンチング)を抑制できる。また、移動体が向かうサブ目的地として、第1方向と第2方向との角度が角度閾値以内のサブ目的地を選択することによって、移動体が目的地と異なる方向(例えば、出発地に戻る方向など)に移動しないようにすることができ、また、実移動の軌跡が直線に近づくようにすることもできる。
【0008】
また、本発明による移動体では、目的地までの経路は複数存在し、各経路にそれぞれ複数のサブ目的地が設定されていてもよい。
このような構成により、移動体は、例えば、偏荷重等に応じた適切な経路に応じて目的地まで移動することができるようになる。
【0009】
また、本発明による移動体では、障害物を検知する障害物検知部をさらに備え、移動制御部は、1つの経路に設定された複数のサブ目的地を用いて制御を行い、障害物検知部によって障害物が検知された場合に、障害物を回避するように経路を変更してもよい。
このような構成により、障害物が検知された場合であっても、その障害物を迂回できる複数の経路のいずれかに応じて目的地まで到達することができるようになる。
【0010】
また、本発明による移動体では、移動制御部は、条件を満たすサブ目的地が存在する場合であっても、条件を満たす最も近いサブ目的地より目的地の方が近いときには、目的地に向かうように移動機構を制御してもよい。
このような構成により、移動体が目的地を行き過ぎた状況において、サブ目的地の位置まで逆戻りすることを回避でき、適切に目的地に到達することができるようになる。
【発明の効果】
【0011】
本発明による移動体によれば、偏荷重等があったとしても、目的地までの移動において、経路への追従性を高めることができるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明の実施の形態による移動体の構成を示すブロック図
図2】同実施の形態による移動体の動作を示すフローチャート
図3A】同実施の形態におけるサブ目的地の選択について説明するための図
図3B】同実施の形態におけるサブ目的地の選択について説明するための図
図4】同実施の形態による移動制御と従来の移動制御とを比較するための図
図5】同実施の形態による経路の他の一例を示す図
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明による移動体について、実施の形態を用いて説明する。なお、以下の実施の形態において、同じ符号を付した構成要素及びステップは同一または相当するものであり、再度の説明を省略することがある。本実施の形態による移動体は、目的地までの経路に設けられた複数のサブ目的地のうち、所定の条件を満たすサブ目的地に向かうように移動制御を行うものである。
【0014】
図1は、本実施の形態による移動体1の構成を示すブロック図である。本実施の形態による移動体1は、自律的に移動するものであり、移動機構11と、測距センサ12と、障害物検知部13と、現在位置取得部14と、移動制御部15とを備える。なお、移動体1が自律的に移動するとは、移動体1がユーザ等から受け付ける操作指示に応じて移動するのではなく、自らの判断によって目的地に移動することであってもよい。その目的地は、例えば、手動で決められたものであってもよく、または、自動的に決定されたものであってもよい。その目的地までの移動は、経路に沿って行われる。また、自らの判断によって目的地に移動するとは、例えば、進行方向、移動や停止などを移動体1が自ら判断することによって、目的地まで移動することであってもよい。より具体的には、移動体1は、障害物の検知に応じて停止や減速、移動方向の変更等を行ってもよい。移動体1は、例えば、台車であってもよく、移動するロボットであってもよい。ロボットは、例えば、エンターテインメントロボットであってもよく、監視ロボットであってもよく、搬送ロボットであってもよく、清掃ロボットであってもよく、動画や静止画を撮影するロボットであってもよく、その他のロボットであってもよい。
【0015】
移動機構11は、移動体1を移動させる。移動機構11は、例えば、移動体1を全方向に移動できるものであってもよく、または、そうでなくてもよい。全方向に移動できるとは、任意の方向に移動できることである。移動機構11は、例えば、走行部(例えば、車輪など)と、その走行部を駆動する駆動手段(例えば、モータやエンジンなど)とを有していてもよい。なお、移動機構11が、移動体1を全方向に移動できるものである場合には、その走行部は、全方向移動車輪(例えば、オムニホイール、メカナムホイールなど)であってもよい。全方向移動車輪を有し、全方向に移動可能な移動体については、例えば、特開2017-128187号公報を参照されたい。この移動機構11としては、公知のものを用いることができるため、その詳細な説明を省略する。
【0016】
測距センサ12は、複数方向に関して周囲の物体までの距離を測定する。測距センサ12は、例えば、レーザセンサや、超音波センサ、マイクロ波を用いた距離センサ、ステレオカメラによって撮影されたステレオ画像を用いた距離センサなどであってもよい。そのレーザセンサは、レーザレンジセンサ(レーザレンジスキャナ)であってもよい。なお、それらの測距センサについてはすでに公知であり、それらの説明を省略する。本実施の形態では、測距センサ12がレーザレンジセンサである場合について主に説明する。また、移動体1は、1個のレーザレンジセンサを有していてもよく、または、2個以上のレーザレンジセンサを有していてもよい。後者の場合には、2個以上のレーザレンジセンサによって、全方向がカバーされてもよい。また、測距センサ12が超音波センサや、マイクロ波を用いた距離センサなどである場合に、測距センサ12の測距方向を回転させることによって複数方向の距離を測定してもよく、複数方向ごとに配置された複数の測距センサ12を用いて複数方向の距離を測定してもよい。測距センサ12は、所定範囲の方向に関して距離を測定するものであってもよく、全方向に関して距離を測定するものであってもよい。例えば、測距センサ12は、移動体1の前方のみの範囲について、複数方向の距離を測定するものであってもよい。また、例えば、測距センサ12は、全周囲(360度)について、あらかじめ決められた角度間隔で複数方向の距離を測定するものであってもよい。その角度間隔は、例えば、1度間隔や2度間隔、5度間隔などのように一定であってもよい。測距センサ12から得られる情報は、例えば、移動体1のある向きを基準とした複数の方位角のそれぞれに関する周辺の物体までの距離であってもよい。その距離を用いることによって、移動体1のローカル座標系において、移動体1の周囲にどのような物体が存在するのかを知ることができるようになる。
【0017】
障害物検知部13は、障害物を検知する。本実施の形態では、障害物検知部13が測距センサ12によって測定された距離を用いて障害物を検知する場合について主に説明するが、障害物検知部13は、他の方法、例えば、接触センサを用いた方法などによって障害物を検知してもよい。障害物検知部13は、例えば、測距センサ12によって測定された距離によって、移動体1の近くに物体が存在することが分かった場合に、その物体を障害物として検知してもよい。例えば、測距センサ12によって測定された周囲の物体までの距離が所定の閾値以下になった場合に、障害物検知部13は、その物体を障害物として検知してもよい。その周囲の物体までの距離は、例えば、測距センサ12からの距離であってもよく、移動体1の外縁からの距離であってもよく、移動体1の外縁を仮想的に膨張させた位置からの距離であってもよく、その他の基準からの距離であってもよい。
【0018】
現在位置取得部14は、移動体1の現在位置を取得する。現在位置の取得は、例えば、無線通信を用いて行われてもよく、周囲の物体までの距離の測定結果を用いて行われてもよく、周囲の画像を撮影することによって行われてもよく、現在位置を取得できるその他の手段を用いてなされてもよい。無線通信を用いて現在位置を取得する方法としては、例えば、GPS(Global Positioning System)を用いる方法や、屋内GPSを用いる方法、最寄りの無線基地局を用いる方法などが知られている。また、例えば、周囲の物体までの距離の測定結果を用いたり、周囲の画像を撮影したりすることによって現在位置を取得する方法としては、例えば、SLAM(Simultaneous Localization and Mapping)などによって知られている方法を用いてもよい。周囲の物体までの距離の測定結果としては、例えば、測距センサ12の測定結果を用いてもよい。また、あらかじめ作成された地図(例えば、周囲の物体までの距離の測定結果や撮影画像を有する地図など)が記憶されている場合には、現在位置取得部14は、地図を用いて、周囲の物体までの距離の測定結果に対応する位置を特定することによって現在位置を取得してもよく、周囲の画像を撮影し、地図を用いて、その撮影結果に対応する位置を特定することによって現在位置を取得してもよい。また、現在位置取得部14は、例えば、自律航法装置を用いて現在位置を取得してもよい。また、現在位置取得部14は、移動体1の向き(方向)を含む現在位置を取得することが好適である。その方向は、例えば、北を0度として、時計回りに測定された方位角によって示されてもよく、その他の方向を示す情報によって示されてもよい。その向きは、電子コンパスや地磁気センサによって取得されてもよい。
【0019】
移動制御部15は、移動機構11を制御することによって、移動体1の移動を制御する。移動の制御は、移動体1の移動の向きや、移動の開始・停止などの制御であってもよい。また、移動制御部15は、地図を用いて、移動の制御を行ってもよい。その場合には、移動体1は、地図が記憶される記憶部を備えていてもよい。より具体的な移動制御として、移動制御部15は、現在位置取得部14によって取得された現在位置を用いて、移動体1が目的地までの経路に沿って移動するように移動機構11を制御する。その経路は、例えば、出発時点の現在位置である出発地と、目的地とを結ぶ経路である。経路は、通常、直線であるが、一部に曲線を含んでもよく、または全部が曲線であってもよい。経路に曲線が含まれる場合や、経路自体が曲線である場合であっても、出発地から目的地までの経路は、出発地と目的地とを結ぶ直線から大きく離れないことが好適である。例えば、その経路は、出発地と目的地とを結ぶ直線と、経路の任意の点との距離が、所定の閾値を超えない範囲になっていてもよい。その所定の閾値は、出発地と目的地との距離よりも短いものであり、その距離よりも十分短いことが好適である。より具体的には、経路が曲線を含む場合であっても、図5の経路P2や、経路P3程度であることが好適である。なお、移動体1が、移動環境において、障害物を避けるなどの理由で、曲がった経路を移動する際には、その経路を2個以上の経路に分割し、その分割した経路が、上記のように、略直線となっていてもよい。そして、その分割後の経路の移動を順次、繰り返すことによって、分割前の出発地から目的地までの移動が実現されてもよい。なお、その分割前の経路は、例えば、経路探索の結果であってもよい。その経路探索は、例えば、移動体1において行われてもよく、または、移動体1以外のサーバ等において行われてもよい。後者の場合には、移動体1は、その探索結果の経路をサーバ等から受信してよい。
【0020】
その略直線の経路には、複数のサブ目的地が設定されている。図3Aは、経路の一例を示す図である。図3Aを参照して、出発地S1から目的地G1までの経路P1においては、出発地S1と目的地G1との間に複数のサブ目的地SG1~SG8が設定されている。サブ目的地SG1~SG8は、例えば、等間隔で設けられてもよく、または、不定の間隔で設けられてもよい。前者の場合に、隣接するサブ目的地の間隔は、あらかじめ決まっていてもよい。また、サブ目的地は、あらかじめ設定されていてもよく、または、移動体1において設定されてもよい。後者の場合には、例えば、移動制御部15は、移動制御を開始する際に、経路P1にサブ目的地が設定されているかどうか判断し、サブ目的地が設定されていないときには、サブ目的地の設定を行ってもよい。
【0021】
移動制御部15は、その経路P1において、あるサブ目的地を選択し、その選択したサブ目的地に向かって移動体1が移動するように移動機構11を制御する。その選択対象のサブ目的地は、次の条件1及び条件2を満たすサブ目的地のうち、移動体1に最も近いものである。
条件1:移動体1の現在位置から目的地までの第1方向と、移動体1の現在位置からサブ目的地までの第2方向との角度θが角度閾値θTH以内である。
条件2:移動体1の現在位置からサブ目的地までの距離Lが距離閾値LTH以上である。
【0022】
条件1は、移動体1が目的地に近い方向に向かうことによって、移動体1の実移動の軌跡を直線に近づけるための条件である。この条件1により、移動体1は、出発地に戻る方向のサブ目的地を選択しないようになり、また、経路から大きく外れた現在位置に存在する場合であっても、直近のサブ目的地を選択しないようになる。経路から大きく外れた現在位置に存在する場合に、直近のサブ目的地を選択すると、移動体1は、出発地と目的地とを結ぶ直線に対して略直交する方向に移動することになり、無駄な移動が多くなる結果として目的地への到達が遅れる。したがって、この条件1を満たすサブ目的地が選択されることが好適になる。なお、上記のような理由で条件1が定められているため、角度閾値θTHは、例えば、60°以下であってもよく、45°以下であってもよい。角度閾値θTHは、これらに限定されるものではないが、例えば、40°や30°等であってもよい。
【0023】
条件2は、移動体1が、移動体1に近い経路上の点に向かわないようにすることによって、移動体1の実移動の軌跡が滑らかになるようにするための条件である。この条件2により、移動体1は、経路の近くに存在する場合に、経路上の直近のサブ目的地に向かうのではなく、目的地により近い経路上のサブ目的地、すなわち現在位置から少し離れたサブ目的地に向かうようになる。その結果、より滑らかな移動を実現できるようになる。条件2の距離閾値LTHは、条件2の目的を達成できる程度の値となるように調整されることが好適である。
【0024】
図3Aでは、移動体1の現在位置と、経路P1に設定された8個のサブ目的地SG1~SG8が示されている。偏荷重等がある場合には、図3Aで示されるように、出発地S1から出発した移動体1の現在位置が、経路P1から離れてしまうこともある。図3Aにおいて、移動体1の現在位置から目的地までの第1方向と、移動体1の現在位置からサブ目的地SG5までの第2方向との角度θが角度閾値θTH以内であり、サブ目的地SG5は、条件1を満たしていたとする。同様に、サブ目的地SG6~SG8も条件1を満たしていたとする。また、移動体1を中心とした半径が距離閾値LTHである円が、図3Aで示されるようになっていたとすると、サブ目的地SG1,SG5~SG8が、条件2を満たしていることになる。したがって、条件1,2の両方を満たすのは、サブ目的地SG5~SG8になり、そのうち、移動体1の現在位置に最も近いサブ目的地SG5が移動制御部15によって選択されることになる。そして、移動制御部15は、その選択したサブ目的地SG5に移動体1が移動するように、移動機構11を制御する。すなわち、移動制御部15は、移動体1が条件1,2を満たす最も近いサブ目的地SG5に向かうように移動機構11を制御することになる。移動制御部15は、このようなサブ目的地の選択と、その選択したサブ目的地までの移動制御とを繰り返して実行する。したがって、その移動に応じて、順次、目的地G1に近いサブ目的地が選択されていくことになる。
【0025】
なお、上記条件2のため、移動体1の現在位置と、サブ目的地SG8との距離が距離閾値LTHより短くなると、選択対象のサブ目的地が存在しないことになる。そのように、条件1,2を満たすサブ目的地が存在しない場合には、移動制御部15は、移動体1が目的地G1に向かうように移動機構11を制御する。そのようにして、最終的に移動体1が目的地G1に到達することになる。
【0026】
図3Bも、移動体1の現在位置と、経路P1との関係の一例を示す図である。図3Bでは、すべてのサブ目的地SG1~SG8が、条件2を満たしているものとする。一方、θ1,θ2は、角度閾値θTHよりも大きく、θ3は、角度閾値θTH以下であったとする。すると、条件1,2を満たすのはサブ目的地SG7,SG8となり、移動制御部15は、そのうち移動体1の現在位置に最も近いサブ目的地SG7に移動体1が移動するように移動機構11を制御する。
【0027】
なお、移動制御部15は、移動体1が条件1,2を満たす最も近いサブ目的地に向かうように移動制御を行うが、実際には、偏荷重や、走行面の傾斜、凹凸等に応じて、そのサブ目的地に到達しないこともあり得る。しかしながら、サブ目的地を考慮しない移動制御よりは、経路P1に応じたより好適な移動を実現できることについて、図4を用いて説明する。
【0028】
図4は、本実施の形態による移動制御と、それ以外の移動制御とを比較するための図である。図4(a)では、絶えず目的地G1に向かうように移動制御を行う移動体2を示しており、図4(b)では、経路P1から外れた場合に、絶えず経路P1に向かって移動する移動体3を示しており、図4(c)では、本実施の形態による移動制御を行う移動体1を示している。図4(a)~図4(c)において、実線の矢印は、実際の移動方向を示しており、破線の矢印は、指令値に応じた移動方向を示している。図4(a)~図4(c)で示される各移動体1~3では、偏荷重等によって、指令値とは異なる方向に実際の移動が行われることになる。
【0029】
図4(a)では、移動体2は、目的地G1に向かって移動しようとするため、移動体2を経路P1に戻すための制御が弱くなる。その結果、図4(a)で示されるように、移動体1-1,1-2,1-3のように位置が変化するにつれて、徐々に経路P1との距離が大きくなっている。すなわち、目的地G1に向かうようにする移動制御では、外乱が大きい場合に、経路P1への追従性が低下することになる。
【0030】
図4(b)では、移動体3は、経路P1に戻るように移動しようとするため、移動体3-1の位置のように、経路P1から離れたとしても、移動体3-2の位置のように経路P1に戻ることができる。ただし、経路P1に戻った後には、再度、移動体3-3の位置で示されるように、偏荷重等によって経路P1から外れることになる。したがって、移動体3の実移動の軌跡は蛇行することになる。すなわち、経路P1に向かうようにする移動制御では、外乱が大きいほど、ハンチングが起きやすくなり、実移動の軌跡が滑らかでなくなってしまう。
【0031】
一方、図4(c)では、移動体1は、上記のように条件1,2を満たす最も近いサブ目的地に向かって移動する。したがって、図4(a)で示される移動制御と、図4(b)で示される移動制御との間の制御が行われることになる。すなわち、経路P1上の遠い点(例えば、目的地G1)に向かって移動するのでもなく、経路P1上の近い点(例えば、現在位置から最も近い経路P1上の点)に向かって移動するのでもないため、結果として、図4(c)の移動体1-1,1-2,1-3の位置で示されるように、外乱の存在する状況であっても、図4(a)の軌跡よりも経路P1に沿ったものとなり、また、図4(b)の軌跡よりも滑らかに移動することになり、経路P1への追従性を向上させることができるようになる。ここで、経路P1への追従性が高いとは、必ずしも経路P1上を移動することを意味しないが、経路P1により近い位置を移動するようになることである。なお、偏荷重等の存在しない状況であれば、図4(a)~図4(c)のそれぞれの状況において、移動体1~3は、経路P1上を移動することはいうまでもない。
【0032】
なお、移動制御部15は、障害物検知部13によって障害物が検知された場合に、その障害物への衝突を防ぐための制御を行ってもよい。その制御は、例えば、移動体1の停止であってもよく、移動体1の減速であってもよく、障害物を回避(迂回)するように移動体1の進行方向を変更することであってもよい。このような障害物への衝突を防ぐための移動制御については、すでに公知であり、その詳細な説明を省略する。
【0033】
次に、移動体1の動作について図2のフローチャートを用いて説明する。
(ステップS101)移動制御部15は、条件1,2を満たすサブ目的地が存在するかどうか判断する。そして、条件1,2を満たすサブ目的地が存在する場合には、ステップS102に進み、そうでない場合には、ステップS103に進む。
【0034】
(ステップS102)移動制御部15は、ステップS101において条件1,2を満たすと判断したサブ目的地のうち、現在位置に最も近いサブ目的地に移動するように移動機構11を制御する。そして、ステップS101に戻る。なお、このステップS102の移動制御が繰り返されることによって、移動体1は、目的地に近づくことになる。
【0035】
(ステップS103)移動制御部15は、移動体1が目的地に到達したかどうか判断する。そして、目的地に到達した場合には、目的地までの移動の処理は終了となる。一方、目的地に到達していない場合には、ステップS104に進む。
【0036】
(ステップS104)移動制御部15は、目的地に移動するように移動機構11を制御する。そして、ステップS101に戻る。なお、条件1,2を満たすサブ目的地が存在しなくなった後には、このステップS104の移動制御が繰り返されることによって、移動体1は、目的地に到達することになる。
【0037】
なお、図2のフローチャートには含まれていないが、現在位置取得部14による現在位置の取得や、測距センサ12による距離の測定、障害物検知部13による障害物の検知は、繰り返して行われているものとする。そして、障害物が検知された場合には、上記のように、移動制御部15は、その検知された障害物への衝突を防ぐための移動制御を行ってもよい。また、図2のフローチャートにおいて、電源オフや処理終了の割り込みにより処理は終了する。
【0038】
以上のように、本実施の形態による移動体1によれば、条件1,2を満たすサブ目的地のうち、最も近いサブ目的地に移動するように移動制御を行うことによって、移動体1の現在位置から遠すぎることもなく、近すぎることもない経路上の点に向かって移動することになる。そのようにして、偏荷重や、走行面の傾き、凹凸などに起因する外乱によって、移動体1が経路から離れる方向に移動するようなことがあったとしても、移動体1の経路への追従性をより向上させることができるようになる。その結果、経路1から大きく離れた想定外の軌跡となるような事態や、滑らかでない蛇行した軌跡となるような事態を低減することができる。
【0039】
なお、本実施の形態では、経路が1個である場合について説明したが、そうでなくてもよい。図5で示されるように、出発地S1と目的地G1とを結ぶ複数の経路P1~P3が存在してもよい。なお、図5では、各経路P1~P3上の円形状の図形によってサブ目的地が示されているものとする。したがって、各経路P1~P3にそれぞれサブ目的地が設定されていることになる。そのような場合には、例えば、移動制御部15は、1つの経路に設定された複数のサブ目的地を用いて移動制御を行ってもよい。その1つの経路は、例えば、ランダムに選択された経路であってもよく、または、あらかじめ決められている経路(例えば、3つの経路P1~P3のうち、まずは経路P1で移動することが決められているなど)であってもよい。そして、障害物検知部13によって障害物が検知された場合に、その障害物を回避するように経路を変更してもよい。具体的には、図5において、まず、移動体1が経路P1に応じて移動していたとする。そして、移動体1が矢印M1,M2のように移動した際に、移動体1の前方に障害物B1が検知されたとする。その場合には、移動制御部15は、障害物検知部13から、障害物が検知された旨と、その障害物のローカル座標系における位置とを受け取ってもよい。また、移動制御部15は、現在の経路P1ではない各経路、すなわち経路P2,P3のそれぞれのサブ目的地のうち、条件1,2を満たす最も近いサブ目的地を特定する。そして、その特定したサブ目的地のうち、その時点の現在位置から、障害物の位置を通らないで到達できるサブ目的地を選択して、そのサブ目的地に移動するように移動制御を行ってもよい。その後には、移動制御部15は、さらに別の障害物が検知されるまでは、その選択したサブ目的地を含む経路に設定された複数のサブ目的地を用いて移動制御を行ってもよい。図5の具体例では、移動体1は、矢印M3,M4,M5…のように、経路P3上のサブ目的地に向かって移動することによって、障害物B1を回避できると共に、目的地G1への移動を継続することができるようになる。このようにして、移動体1は、障害物の検知に応じて経路を変更することによって、障害物の迂回と、目的地への移動とを両立できるようになる。なお、さらに別の障害物が検知された場合には、移動体1は、上記と同様に、再度、その障害物を回避するように経路を変更してもよい。
【0040】
ここでは、障害物B1が検知されるまでは、1個の経路P1に沿った移動制御が行われる場合について説明したが、そうでなくてもよい。移動制御部15は、複数の経路に設定されている複数のサブ目的地のうち、条件1,2を満たす最も近いサブ目的地を選択し、その選択したサブ目的地に移動するように移動制御を行ってもよい。その場合には、障害物の検知の有無に関わらず、経路が変更されることがあり得る。
【0041】
また、本実施の形態では、上記条件1,2を満たすサブ目的地が存在しない場合に、目的地に向かうように移動制御が行われる場合について説明したが、上記条件1,2を満たすサブ目的地が存在する場合であっても、その条件1,2を満たすサブ目的地より目的地が近いときには、目的地に向かうように移動制御が行われてもよい。例えば、移動体1の実移動の軌跡が経路から外れることによって、目的地を通り過ぎることが考えられる。そのような場合には、目的地を行き過ぎた位置の移動体1において、条件1,2を満たすサブ目的地が存在することもあり得るが、そのサブ目的地に向かうと、再度、目的地を通過して大きく逆戻りしてしまうことになる。したがって、そのような状況においては、目的地に向かうことが適切であると考えられるため、上記のように、移動制御部15は、条件1,2を満たすサブ目的地が存在する場合であっても、その条件1,2を満たす最も近いサブ目的地より目的地の方が近いときには、移動体1が目的地に向かうように移動機構11を制御し、その条件1,2を満たす最も近いサブ目的地の方が目的地より近いときには、移動体1がその条件1,2を満たす最も近いサブ目的地に向かうように移動機構11を制御してもよい。なお、移動体1の現在位置から、条件1,2を満たす最も近いサブ目的地までの距離と、目的地までの距離とが同じである場合には、移動制御部15は、移動体1が目的地に向かうように移動機構11を制御することが好適である。
【0042】
なお、本実施の形態では、移動体1が障害物検知を行う場合について説明したが、そうでなくてもよい。移動体1が障害物検知を行わない場合には、移動体1は、障害物検知部13を備えていなくてもよい。また、移動体1が障害物検知を行わない場合であって、また、測距センサ12によって測定された距離を自己位置の同定、すなわち現在位置の取得などに用いない場合には、移動体1は、測距センサ12も備えていなくてもよい。
【0043】
また、上記実施の形態において、各処理または各機能は、単一の装置または単一のシステムによって集中処理されることによって実現されてもよく、または、複数の装置または複数のシステムによって分散処理されることによって実現されてもよい。
【0044】
また、上記実施の形態において、各構成要素間で行われる情報の受け渡しは、例えば、その情報の受け渡しを行う2個の構成要素が物理的に異なるものである場合には、一方の構成要素による情報の出力と、他方の構成要素による情報の受け付けとによって行われてもよく、または、その情報の受け渡しを行う2個の構成要素が物理的に同じものである場合には、一方の構成要素に対応する処理のフェーズから、他方の構成要素に対応する処理のフェーズに移ることによって行われてもよい。
【0045】
また、上記実施の形態において、各構成要素が実行する処理に関係する情報、例えば、各構成要素が受け付けたり、取得したり、選択したり、生成したり、送信したり、受信したりした情報や、各構成要素が処理で用いる閾値や数式、アドレス等の情報等は、上記説明で明記していなくても、図示しない記録媒体において、一時的に、または長期にわたって保持されていてもよい。また、その図示しない記録媒体への情報の蓄積を、各構成要素、または、図示しない蓄積部が行ってもよい。また、その図示しない記録媒体からの情報の読み出しを、各構成要素、または、図示しない読み出し部が行ってもよい。
【0046】
また、上記実施の形態において、各構成要素等で用いられる情報、例えば、各構成要素が処理で用いる閾値やアドレス、各種の設定値等の情報がユーザによって変更されてもよい場合には、上記説明で明記していなくても、ユーザが適宜、それらの情報を変更できるようにしてもよく、または、そうでなくてもよい。それらの情報をユーザが変更可能な場合には、その変更は、例えば、ユーザからの変更指示を受け付ける図示しない受付部と、その変更指示に応じて情報を変更する図示しない変更部とによって実現されてもよい。その図示しない受付部による変更指示の受け付けは、例えば、入力デバイスからの受け付けでもよく、通信回線を介して送信された情報の受信でもよく、所定の記録媒体から読み出された情報の受け付けでもよい。
【0047】
また、上記実施の形態において、移動体1に含まれる2以上の構成要素が通信デバイスや入力デバイス等を有する場合に、2以上の構成要素が物理的に単一のデバイスを有してもよく、または、別々のデバイスを有してもよい。
【0048】
また、上記実施の形態において、各構成要素は専用のハードウェアにより構成されてもよく、または、ソフトウェアにより実現可能な構成要素については、プログラムを実行することによって実現されてもよい。例えば、ハードディスクや半導体メモリ等の記録媒体に記録されたソフトウェア・プログラムをCPU等のプログラム実行部が読み出して実行することによって、各構成要素が実現され得る。その実行時に、プログラム実行部は、記憶部や記録媒体にアクセスしながらプログラムを実行してもよい。また、そのプログラムは、サーバなどからダウンロードされることによって実行されてもよく、所定の記録媒体(例えば、光ディスクや磁気ディスク、半導体メモリなど)に記録されたプログラムが読み出されることによって実行されてもよい。また、このプログラムは、プログラムプロダクトを構成するプログラムとして用いられてもよい。また、そのプログラムを実行するコンピュータは、単数であってもよく、複数であってもよい。すなわち、集中処理を行ってもよく、または分散処理を行ってもよい。
【0049】
また、本発明は、以上の実施の形態に限定されることなく、種々の変更が可能であり、それらも本発明の範囲内に包含されるものであることは言うまでもない。
【産業上の利用可能性】
【0050】
以上より、本発明による移動体によれば、偏荷重等があったとしても、より経路に応じた滑らかな移動を実現できるという効果が得られ、例えば、搬送用の移動体等として有用である。
【符号の説明】
【0051】
1 移動体
11 移動機構
12 測距センサ
13 障害物検知部
14 現在位置取得部
14 在位置取得部
15 移動制御部
図1
図2
図3A
図3B
図4
図5