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特許7021951食品包装用フィルム及び化粧箱付食品包装用小巻フィルム
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  • 特許-食品包装用フィルム及び化粧箱付食品包装用小巻フィルム 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-02-08
(45)【発行日】2022-02-17
(54)【発明の名称】食品包装用フィルム及び化粧箱付食品包装用小巻フィルム
(51)【国際特許分類】
   C08J 5/18 20060101AFI20220209BHJP
   B65D 25/52 20060101ALI20220209BHJP
   B65D 65/02 20060101ALI20220209BHJP
   B65D 85/50 20060101ALI20220209BHJP
【FI】
C08J5/18
B65D25/52 C
B65D65/02 E
B65D85/50 100
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2017554113
(86)(22)【出願日】2016-11-29
(86)【国際出願番号】 JP2016085430
(87)【国際公開番号】W WO2017094726
(87)【国際公開日】2017-06-08
【審査請求日】2019-10-29
(31)【優先権主張番号】PCT/JP2015/083626
(32)【優先日】2015-11-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】521475990
【氏名又は名称】株式会社キッチニスタ
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100128381
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 義憲
(74)【代理人】
【識別番号】100169454
【弁理士】
【氏名又は名称】平野 裕之
(74)【代理人】
【識別番号】100185591
【弁理士】
【氏名又は名称】中塚 岳
(74)【代理人】
【識別番号】100165526
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 寛
(72)【発明者】
【氏名】宮田 裕幸
【審査官】千葉 直紀
(56)【参考文献】
【文献】特開平07-118513(JP,A)
【文献】特開2015-007198(JP,A)
【文献】特開2004-027230(JP,A)
【文献】特開2011-153210(JP,A)
【文献】特開2015-017242(JP,A)
【文献】特開2007-197605(JP,A)
【文献】特開2008-260658(JP,A)
【文献】特開2011-241528(JP,A)
【文献】特開2009-154527(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08J 5/00-5/02
C08J 5/12-5/22
B65D 65/02
B65D 25/52
B65D 85/50
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
フィルム全量基準で73質量%以上の熱可塑性樹脂と、
青色着色剤と、
フィルム全量基準で7.0質量%以上の、数平均分子量が1000~1800であるポリエステル系可塑剤と、を含有し、
前記熱可塑性樹脂が、ポリ塩化ビニル系樹脂、ポリ塩化ビニリデン系樹脂、ポリエチレン又はポリプロピレンであるポリオレフィン系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート又はポリブチレンテレフタレートであるポリエステル系樹脂、及びポリアミド系樹脂からなる群より選ばれる少なくとも1種のみからなる、食品包装用フィルム。
【請求項2】
前記ポリエステル系可塑剤の含有量が、フィルム全量基準で7.0~12.5質量%である、請求項1に記載の食品包装用フィルム。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の食品包装用フィルムと、前記食品包装用フィルムが小巻された芯材と、前記食品包装用フィルム及び前記芯材が収納された化粧箱とを備え、
前記化粧箱には、前記食品包装用フィルムを切断するための刃部が設けられている、化粧箱付食品包装用小巻フィルム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、食品包装用フィルム及び化粧箱付食品包装用小巻フィルムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、食品包装用フィルムは、ホテル、レストラン等において業務用として、あるいは家庭において食品保存時、調理時等に幅広く使用されている。近年では、フィルムの破片の食品への混入を目視で見分けることを容易にするために、熱可塑性樹脂を主成分とし、銅フタロシアニン系着色剤等の着色剤を更に含有する食品包装用フィルムが提案されている(特許文献1)。
【0003】
一方、食品包装用フィルムにおいては、フィルムに柔軟性等の機能を付与したり、フィルムを製造しやすくする目的で、一般的に可塑剤、防曇剤、安定剤等の添加剤が使用されている。
【0004】
ところで、近年、食品衛生法の規格・基準について諸外国との調和が検討されており、食品包装用フィルムに含まれる添加剤の食品への溶出量の基準が問題となっている。現在最も有力な考え方の1つとして、添加剤の食品への溶出量がEUの規格・基準における想定基準値25μg/mlを満たすべきであるという考え方がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2015-7198号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、添加剤の食品への溶出を抑制でき、かつ製膜性及び生産性に優れる食品包装用フィルム及び化粧箱付食品包装用小巻フィルムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、熱可塑性樹脂と、青色着色剤と、数平均分子量が1000~1800であるポリエステル系可塑剤と、を含有する食品包装用フィルムを提供する。
【0008】
ポリエステル系可塑剤の含有量は、好ましくは、フィルム全量基準で6.5~12.5質量%である。
【0009】
熱可塑性樹脂は、ポリ塩化ビニル系樹脂、ポリ塩化ビニリデン系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ポリエステル系樹脂及びポリアミド系樹脂からなる群より選ばれる少なくとも1種であってよい。
【0010】
フィルムは、熱可塑性樹脂として、ポリ塩化ビニル系樹脂及びポリ塩化ビニリデン系樹脂からなる群より選ばれる少なくとも1種をフィルム全量基準で70質量%以上含有してよい。
【0011】
また、本発明は、上記の食品包装用フィルムと、食品包装用フィルムが小巻された芯材と、食品包装用フィルム及び芯材が収納された化粧箱とを備え、化粧箱には、食品包装用フィルムを切断するための刃部が設けられている、化粧箱付食品包装用小巻フィルムを提供する。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、添加剤の食品への溶出を抑制でき、かつ製膜性及び生産性に優れる食品包装用フィルム及び化粧箱付食品包装用小巻フィルムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】化粧箱付食品包装用小巻フィルムを示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本実施形態に係るフィルムは、熱可塑性樹脂と、青色着色剤と、数平均分子量が1000~1800であるポリエステル系可塑剤(以下「所定のポリエステル系可塑剤」ともいう)と、を含有し、食品包装用フィルムとして好適に用いられる。
【0015】
熱可塑性樹脂は、ポリ塩化ビニル等のポリ塩化ビニル系樹脂;ポリ塩化ビニリデン等のポリ塩化ビニリデン系樹脂;ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン-酢酸ビニル共重合体ケン化物等のポリオレフィン系樹脂;ブタジエン-スチレン共重合体、アクリロニトリル-スチレン共重合体、ポリスチレン、スチレン-ブタジエン-スチレン共重合体、スチレン-イソプレン-スチレン共重合体、スチレン-アクリル酸共重合体等のポリスチレン系樹脂;ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリブチレンテレフタレート等のポリエステル系樹脂;6-ナイロン、6,6-ナイロン、12-ナイロン等のポリアミド系樹脂;などであってよい。熱可塑性樹脂は、取扱い性に優れる観点から、好ましくは、ポリ塩化ビニル系樹脂又はポリ塩化ビニリデン系樹脂である。
【0016】
ポリ塩化ビニル系樹脂としては、フィルムの成形性、耐熱性及び流動性に優れる観点から、平均重合度700~1300のポリ塩化ビニル系樹脂が好ましい。本明細書における平均重合度は、JIS K6720-2に準じて測定された平均重合度を意味する。
【0017】
ポリ塩化ビニル系樹脂は、機械特性に優れる観点から、塩化ビニルホモポリマー(ポリ塩化ビニル樹脂)であってもよく、他の特性を付与する目的から、塩化ビニルとこれに共重合可能なその他のモノマーとの共重合体であってもよい。共重合体は、グラフト共重合体、ブロック共重合体又はランダム共重合体であってよい。その他のモノマーの例としては、エチレン、プロピレン、ポリブテン等のオレフィン;酢酸ビニル、ラウリン酸ビニル等の飽和酸のビニルエステル;アクリル酸メチルエステル、メタクリル酸メチルエステル等の不飽和酸のアルキルエステル;ラウリルビニルエーテル等のアルキルビニルエーテル;マレイン酸、アクリロニトリル、スチレン、メチルスチレン、フッ化ビニリデン;などが挙げられる。ポリ塩化ビニル系樹脂が共重合体である場合、共重合体における塩化ビニル単位の含有量は、モノマー単位全量基準で、10質量%以上であってよく、機械特性に優れる観点から、好ましくは30質量%以上、より好ましくは50質量%以上である。共重合体における塩化ビニル単位の含有量の上限は、特に限定されず、例えば、モノマー単位全量基準で99質量%以下であってよい。
【0018】
ポリ塩化ビニル系樹脂は、例えば、アクリロニトリル-ブタジエン-スチレンの三次元ポリマー等とのポリマーブレンド、アルコール等による後処理物、含塩素化合物による後処理物であってもよい。これらの場合、ポリ塩化ビニル系樹脂における塩化ビニル単位の含有量は、樹脂全量基準で10質量%以上であってよい。
【0019】
ポリ塩化ビニリデン系樹脂は、塩化ビニリデンホモポリマー(ポリ塩化ビニリデン樹脂)であってもよく、例えば、塩化ビニリデンと、塩化ビニリデンと共重合可能なその他のモノマーとをモノマー単位として含む共重合体であってよい。その他のモノマーは、塩化ビニル、アクリル酸と炭素数1~8のアルコールとのアクリル酸エステル、メタクリル酸と炭素数1~8のアルコールとのメタクリル酸エステル、脂肪族カルボン酸のビニルエステル、不飽和脂肪族カルボン酸、オレフィン、ビニルエーテル等であってよい。なお、塩化ビニリデンと塩化ビニルとの共重合体は、ポリ塩化ビニリデン系樹脂に属するものとする。
【0020】
ポリ塩化ビニリデン系樹脂における塩化ビニリデン単位の含有量は、フィルムの成形性及び耐熱性の観点から、モノマー単位全量基準で、例えば、60質量%以上、70質量%以上、又は80質量%以上であってよい。ポリ塩化ビニリデン系樹脂における塩化ビニリデン単位の含有量の上限は、特に限定されず、例えば、モノマー単位全量基準で99質量%以下であってよい。塩化ビニリデン単位の含有量は、核磁気共鳴(NMR)装置により測定することができる。
【0021】
ポリ塩化ビニリデン系樹脂の重量平均分子量は、例えば、40000~180000、60000~160000、又は80000~140000であってよい。ポリ塩化ビニリデン系樹脂の重量平均分子量は、GPC法により、分子量既知のポリスチレンを標準物質として測定することができる。
【0022】
ポリ塩化ビニリデン系樹脂の重量平均分子量測定に用いるGPC法の条件は、以下のとおりである。測定装置としてウォーターズ社製ゲルクロマトグラフAlliance GPC2000型を使用する。ポリ塩化ビニリデン系樹脂を0.5重量%となるようにテトラヒドロフランに溶解させたものを、試料として用いる。
カラム:東ソー株式会社製TSKgel GMHHR-H(S)HT 30cm×2、TSKgel GMH6-HTL 30cm×2
移動相:テトラヒドロフラン
検出器:示差屈折計
流速:1.0mL/分
カラム温度:20℃
注入量:500μL
【0023】
熱可塑性樹脂の含有量は、生産性に優れる観点から、フィルム全量基準で、70質量%以上又は75質量%以上であってよく、また、85質量%以下又は80質量%以下であってよい。ポリ塩化ビニル系樹脂又はポリ塩化ビニリデン系樹脂の含有量が上記の範囲であることが好ましい。
【0024】
青色着色剤は、例えば、可視光領域(380~750nm)における最大吸収波長が600~750nmに存在する着色剤である。青色着色剤の可視光領域における最大吸収波長での吸光度は、470nmでの吸光度の好ましくは2倍以上、より好ましくは3倍以上である。具体的には、青色着色剤は、銅フタロシアニン(銅フタロシアニンブルー)、ヘキサシアノ鉄(ii)酸鉄(III)、酸化第一コバルト・酸化アルミニウム混合物、インジゴ、ウルトラマリン等であってよい。
【0025】
青色着色剤の含有量は、フィルム全量基準で、0.5質量%以上であってよく、また、2.0質量%以下であってよい。
【0026】
ポリエステル系可塑剤の数平均分子量は、1000~1800であり、添加剤の食品への溶出を更に抑制する観点から、好ましくは1200~1800、より好ましくは1300~1800、更に好ましくは1400~1800、特に好ましくは1500~1800である。本発明における数平均分子量は、GPC(例えば、アジレント・テクノロジー株式会社製の型式:Agilent 1260 Infinity GPC)によって測定される、ポリスチレン換算の数平均分子量である。
【0027】
ポリエステル系可塑剤の数平均分子量測定におけるGPCの条件は、以下のとおりである。測定装置としてウォーターズ社製ゲルクロマトグラフAlliance GPC2000型を使用する。試料30mgをo-ジクロロベンゼン20mLに145℃で完全に溶解した後、その溶液を孔径が0.45μmの焼結フィルターでろ過し、そのろ液を試料溶液とする。その他の条件は、以下のとおりである。
カラム:東ソー株式会社製TSKgel GMHHR-H(S)HT 30cm×2、TSKgel GMH6-HTL 30cm×2
移動相:o-ジクロロベンゼン
検出器:示差屈折計
流速:1.0mL/分
カラム温度:140℃
注入量:500μL
【0028】
ポリエステル系可塑剤としては、例えば、脂肪族多塩基酸系ポリエステル可塑剤が挙げられる。脂肪族多塩基酸系ポリエステル可塑剤は、例えば、アジピン酸、セバシン酸等の脂肪族多塩基酸と、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブタンジオール等の多価アルコールとのポリエステル樹脂であってよい。脂肪族多塩基酸系ポリエステル可塑剤としては、具体的には、ポリ(エチレングリコール/アジピン酸)エステル、ポリ(1,3-ブタンジオール/アジピン酸)エステル、ポリ(1,4-ブタンジオール/アジピン酸)エステル、ポリ(プロピレングリコール/セバシン酸)エステル等が挙げられる。これらのポリエステル系可塑剤は、1種単独又は2種以上を組み合わせて用いられる。
【0029】
所定のポリエステル系可塑剤の含有量は、添加剤の食品への溶出を更に抑制する観点から、フィルム全量基準で、好ましくは6.5質量%以上、より好ましくは7.0質量%以上、更に好ましくは8.0質量%以上、特に好ましくは10.0質量%以上である。所定のポリエステル系可塑剤の含有量は、製膜性及び生産性に更に優れる観点から、フィルム全量基準で、好ましくは12.5質量%以下、より好ましくは12.0質量%以下である。所定のポリエステル系可塑剤の含有量は、添加剤の食品への溶出を更に抑制し、かつ製膜性及び生産性に更に優れる観点から、好ましくは、フィルム全量基準で、6.5~12.5質量%、6.5~12.0質量%、7.0~12.5質量%、7.0~12.0質量%、8.0~12.5質量%、8.0~12.0質量%、10.0~12.5質量%、又は10.0~12.0質量%である。
【0030】
フィルムは、熱可塑性樹脂、青色着色剤及び所定のポリエステル系可塑剤に加えて、その他の成分を更に含有していてもよい。その他の成分としては、熱安定剤、光安定剤、所定のポリエステル系可塑剤以外の可塑剤、滑剤、充填剤、プレートアウト防止剤、抗酸化剤、離型剤、粘度低下剤、界面活性剤、青色着色剤以外の着色剤、蛍光剤、表面処理剤、架橋剤、加工助剤、粘着剤、帯電防止剤、紫外線吸収剤、アンチブロッキング剤等が挙げられる。
【0031】
フィルムは、熱可塑性樹脂、青色着色剤及び所定のポリエステル系可塑剤を含有する層の一層からなっていてもよく、複数の層からなっていてもよい。フィルムが複数の層からなる場合、フィルムは、例えば第1の表面層と中間層と第2の表面層とをこの順に備えていてよい。この場合、例えば、第1及び第2の表面層は熱可塑性樹脂及び所定のポリエステル系可塑剤を含有し、中間層は熱可塑性樹脂及び青色着色剤を含有していてよい。フィルムは、例えば、各層間の接着性を向上させるために、酸変性ポリオレフィン樹脂等を含有する接着層を更に備えていてもよく、フィルムの耐熱性を向上させるために、ポリアミド系樹脂を含有する耐熱層を更に備えていてもよい。熱可塑性樹脂がポリ塩化ビニル系樹脂である場合、フィルムは、好ましくは、熱可塑性樹脂(ポリ塩化ビニル系樹脂)、青色着色剤及び所定のポリエステル系可塑剤を含有する層の一層からなっている。
【0032】
フィルムの厚さは、食品を外気から効率良く遮断する観点から、好ましくは5μm以上、より好ましくは6μm以上であってよく、また、取扱い性に優れる観点から、好ましくは25μm以下、より好ましくは12μm以下であってよい。
【0033】
フィルムに含まれる添加剤の溶出量は、以下の手順に従って測定されるヘプタン溶出量及びイソオクタン溶出量として、それぞれ好ましくは25μg/ml以下、より好ましくは20μg/ml以下である。
【0034】
(ヘプタン溶出量)
一定面積の試料をフィルムから切り取り、試料の表面積1cm当たり2mlのヘプタンに25℃の温度で1時間試料を浸漬させる。次いで、試料を取り出した後のヘプタン溶液を蒸発乾固させ、固形物の質量を測定することでフィルムからヘプタンへの添加剤の溶出量を求める。
【0035】
(イソオクタン溶出量)
一定面積の試料をフィルムから切り取り、試料の表面積1cm当たり2mlのイソオクタン溶液に25℃の温度で30分間試料を浸漬させる。次いで、試料を取り出した後のイソオクタン溶液を蒸発乾固させ、固形物の質量を測定することでフィルムからイソオクタンへの添加剤の溶出量を求める。
【0036】
フィルムは、熱可塑性樹脂、青色着色剤及び所定のポリエステル系可塑剤を含有する組成物を、V型ブレンダー、リボンブレンダー、ヘンシェルミキサー、スーパーミキサー等の混合機により混合し、更に必要に応じてミキシングロール、バンバリーミキサー、ニーダ等の混練機により混練することで組成物を得た後、例えば押出成形することにより製造される。具体的には、該組成物を押出機のホッパーに供給しインフレーション法、Tダイ法等で目的とするフィルムが得られる。一般に、フィルムは、作製しつつ巻き取られ、巻き取られたフィルムは、20m、50m等の所望の長さごとに更に巻き替えられ(小巻状とされ)、化粧箱に詰められることで製品とされる。すなわち、本実施形態におけるフィルムは、食品包装用小巻フィルムの形態であってもよく、化粧箱付食品包装用小巻フィルムの形態であってもよい。
【0037】
具体的には、図1に示すように、化粧箱付食品包装用小巻フィルム1は、食品包装用フィルム2と、食品包装用フィルム2が小巻された芯材3と、食品包装用フィルム2及び芯材3が収納された化粧箱4とを備え、化粧箱4には、食品包装用フィルム2を切断するための刃部5が設けられている形態であってよい。芯材3及び化粧箱4の材質は、特に限定されない。フィルム2の色を外部から認識しやすい観点から、化粧箱4の少なくとも一部は、好ましくは透明であるか、箱としての機能を損なわない程度に穴が開いている。
【0038】
フィルムが複数の層からなる場合、フィルムは、各層の構成原料を、それぞれ別々の押出機に投入して溶融押出し、インフレーション、Tダイ法等により各層を共押出して積層することにより得られる。この際、Tダイより押出した溶融物をそのまま、キャスティングロール等で急冷しながら引き取るようにしてフィルムを形成することが好ましい。
【0039】
このようにして得られたフィルムに対して、熱収縮率、自然収縮率等の軽減、幅収縮の発生の抑制などの目的に応じて、加熱ロール間での縦延伸、各種の熱固定、エージング等の熱処理を行ってもよく、防曇性、帯電防止性、粘着性等を付与、促進させる目的で、コロナ処理、熟成等の処理、印刷、コーティング等の表面処理及び表面加工などを行ってもよい。
【0040】
以上説明したフィルムは、包装した食品を外部から視認可能なフィルムである。また、フィルムは、延伸性(伸縮性ともいう)を有するフィルム(ストレッチフィルム)である。
【0041】
本実施形態に係るフィルムは、食品の仕分けに用いられる食品の仕分け用フィルムであってよい。本実施形態に係るフィルムを用いると、2種類以上の食品を食品の種類に応じて少なくとも2つのグループに仕分けることができる。すなわち、例えば、第1の食品を本実施形態に係るフィルムで包装して第1のグループに仕分け、その一方で、第2の食品を、本実施形態に係るフィルムと異なる色を有するフィルム又は無色フィルムで包装して第2のグループに仕分けることができる。
【0042】
具体的には、例えば、第1のアレルギー物質を含む第1の食品と、第2のアレルギー物質を含む第2の食品とがある場合に、第1のアレルギー物質に対してアレルギー症状を有さない人に供される食品群である第1のグループに第1の食品を仕分け、その一方で、第2のアレルギー物質に対してアレルギー症状を有さない人に供される食品群である第2のグループに第2の食品を仕分ける。上記例では、第1又は第2のアレルギー物質に対してアレルギー症状を有する人に、当該アレルギー物質を供してしまう事故の発生を抑制できる。
【実施例
【0043】
以下、実施例に基づいて本発明を更に具体的に説明するが、本発明は実施例に限定されるものではない。
【0044】
表1,2に示す熱可塑性樹脂、青色着色剤、及び各種添加剤をスーパーミキサーに投入した後、攪拌しながら材料温度を常温から130℃まで昇温し、混合した後、70℃まで冷却した時点で取り出して樹脂組成物を調製し、各樹脂組成物をTダイ(幅350mm、ギャップ0.4mm)を装着したΦ40mm単軸押出機(L/D=20)にて、樹脂温度200℃で押出し、厚み8μmのフィルムを作製した。なお、表中の数値は固形分換算の値であり、質量%を表す。
【0045】
熱可塑性樹脂a1:ポリ塩化ビニル系樹脂(大洋塩ビ株式会社製、「TH-1000」、平均重合度:1000)
青色着色剤b1:銅フタロシアニン(銅フタロシアニンブルー、大日精化工業株式会社製、「NX-053ブルー」)
添加剤c1:ポリエステル系可塑剤(株式会社ADEKA製、「PN-150」、数平均分子量:1000、アジピン酸系ポリエステル)
添加剤c2:ポリエステル系可塑剤(株式会社ジェイ・プラス製、「D623」、数平均分子量:1800、アジピン酸系ポリエステル)
添加剤c3:ポリエステル系可塑剤(株式会社ジェイ・プラス製、「D620N」、数平均分子量:800、アジピン酸系ポリエステル)
添加剤c4:ポリエステル系可塑剤(株式会社ADEKA製、「P-200」、数平均分子量:2000、アジピン酸系ポリエステル)
添加剤c5:アジピン酸ジオクチル(新日本理化株式会社製、「サンソサイザーDOA」)
添加剤c6:エポキシ化大豆油(三和合成化学株式会社製、「ケミサイザーSE-100」)
添加剤c7:グリセリン脂肪酸エステル(理研ビタミン株式会社製、「XO-100」)
添加剤c8:Ca/Zn系安定剤(株式会社ADEKA製、「SC-308E」)
【0046】
得られた各フィルムについて、添加剤の溶出量を以下の手順で測定した。
【0047】
(ヘプタン溶出量)
表裏の表面積合計100cmとなるように、5cm×10cmの試料をフィルムから切り取り、試料の表面積1cm当たり2mlのヘプタンに25℃の温度で1時間試料を浸漬させた。次いで、試料を取り出した後の試験溶液を105℃で蒸発乾固させ、放冷した。冷却後の固形分の質量を測定し、下記式に従って計算することでフィルムからヘプタンへの成分の溶出量を求めた。ポリ塩化ビニル系樹脂の場合、150μg/ml以下であれば良好といえ、30μg/ml以下であれば非常に良好といえる。
蒸発残留物(μg/ml)=固形分の重量(μg)/試験溶液の採取量(ml)
【0048】
(イソオクタン溶出量)
表裏の表面積合計100cmとなるように、5cm×10cmの試料をフィルムから切り取り、試料の表面積1cm当たり2mlのイソオクタン溶液に25℃の温度で30分間試料を浸漬させた。次いで、試料を取り出した後の試験溶液を105℃で蒸発乾固させ、放冷した。冷却後の固形物の質量を測定し、下記式に従って計算することでフィルムからイソオクタンへの成分の溶出量を求めた。ポリ塩化ビニル系樹脂の場合、90μg/ml以下であれば良好といえ、30μg/ml以下であれば非常に良好といえる。
蒸発残留物(μg/ml)=固形分の重量(μg)/試験溶液の採取量(ml)
【0049】
(製膜性の評価)
Tダイ押出機にて、各樹脂組成物を樹脂温度200℃で押出してフィルムの成形を行い、得られたフィルムの外観を観察することで製膜性を評価した。評価基準は、以下のとおりである。なお、評価がA又はBであれば、製膜性に優れているといえる。
A:ほぼ均一の厚みのフィルムが得られ、24時間の押出でヤケが発生しなかった。
B:フィルムの厚みにわずかにむらが見られ、24時間の押出でヤケが発生した。
C:フィルムの厚みむらが激しく、8時間の押出でヤケが発生した。
【0050】
(生産性の評価)
Tダイ押出機にて、各樹脂組成物を樹脂温度200℃で押出してフィルムの成形を行う際に生じる生産トラブル(穴開き、フィルム切れ及びスリット不具合)の24時間あたりの発生回数をカウントすることで生産性を評価した。評価基準は、以下のとおりである。なお、評価がA又はBであれば、生産性に優れているといえる。
A:生産トラブル回数が0~2回
B:生産トラブル回数が3~4回
C:生産トラブル回数が5回以上
【0051】
【表1】
【0052】
【表2】
【符号の説明】
【0053】
1…化粧箱付食品包装用小巻フィルム、2…食品包装用フィルム、3…芯材、4…化粧箱、5…刃部。
図1