(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-02-08
(45)【発行日】2022-02-17
(54)【発明の名称】磁気検出装置、紙葉類識別装置、および磁気検出方法
(51)【国際特許分類】
G01R 33/02 20060101AFI20220209BHJP
G07D 7/04 20160101ALI20220209BHJP
【FI】
G01R33/02 B
G01R33/02 Q
G07D7/04
(21)【出願番号】P 2017560409
(86)(22)【出願日】2017-01-05
(86)【国際出願番号】 JP2017000159
(87)【国際公開番号】W WO2017119453
(87)【国際公開日】2017-07-13
【審査請求日】2019-10-25
(31)【優先権主張番号】P 2016000574
(32)【優先日】2016-01-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000001432
【氏名又は名称】グローリー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002952
【氏名又は名称】特許業務法人鷲田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】近森 雅文
【審査官】永井 皓喜
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2009/084174(WO,A1)
【文献】国際公開第2006/120825(WO,A1)
【文献】特開2000-99788(JP,A)
【文献】国際公開第2013/146755(WO,A1)
【文献】特開2014-10118(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01R 33/02
G07D 7/04
G01N 27/72
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
検出対象の磁性体に直流磁界を印加する直流磁界印加部と、
着磁された磁性体に交流磁界を印加する交流磁界印加部と、
前記交流磁界が前記磁性体に印加された際の前記磁性体の磁気特性を示す信号を検出する検出部と、
前記交流磁界印加部に供給されている交流電圧または交流電流を利用して、キャンセル交流磁界を生成する生成部と、
前記キャンセル交流磁界に応じたキャンセル信号を検出するキャンセル信号検出部と、
前記磁気特性を示す信号から、磁気量特性を示す信号と残留磁気特性を示す信号とを分離し、前記キャンセル信号を用いて前記磁気量特性を示す信号および前記残留磁気特性を示す信号から、前記交流磁界によって発生する交流成分をキャンセルし、前記交流成分がキャンセルされた前記磁気量特性を示す信号および前記残留磁気特性を示す信号に基づいて、前記磁性体が硬磁性体であるか、軟磁性体であるか、非磁性体であるかを判定する判定部と、
を備える磁気検出装置。
【請求項2】
前記判定部は、前記磁気量特性を示す信号に、前記磁気量特性を示す信号の周波数を有する前記キャンセル信号
が合成
された信号、および、前記残留磁気特性を示す信号に、前記残留磁気特性を示す信号の周波数成分を有する前記キャンセル信号
が合成
された信号に基づいて、前記磁性体が硬磁性体であるか、軟磁性体であるか、非磁性体であるかを判定する、
請求項1に記載の磁気検出装置。
【請求項3】
前記交流磁界印加部は、検出用コア部材のギャップに埋設され、前記交流磁界を前記検出用コア部材に生成し、
前記検出部は、前記検出用コア部材に巻回され、前記検出用コア部材の前記交流磁界による電磁誘導によって、前記磁気特性を示す信号を検出する、
請求項1または2に記載の磁気検出装置。
【請求項4】
前記生成部は、キャンセル用コア部材のギャップに埋設され、前記キャンセル交流磁界を前記キャンセル用コア部材に生成し、
前記キャンセル信号検出部は、前記キャンセル用コア部材に巻回され、前記キャンセル用コア部材の前記キャンセル交流磁界による電磁誘導によって、前記キャンセル信号を検出する、
請求項3に記載の磁気検出装置。
【請求項5】
前記キャンセル用コア部材は、前記磁性体に対し、前記検出用コア部材より離れて配置される、
請求項4に記載の磁気検出装置。
【請求項6】
前記検出用コア部材と前記キャンセル用コア部材とは、一体に形成されている、
請求項4または5に記載の磁気検出装置。
【請求項7】
前記検出用コア部材は、前記磁性体が搬送される搬送方向と直交する方向に複数配置される、
請求項4乃至6のいずれか一項に記載の磁気検出装置。
【請求項8】
前記キャンセル用コア部材は、前記磁性体が搬送される搬送方向と直交する方向に複数
配置される、
請求項4乃至7のいずれか一項に記載の磁気検出装置。
【請求項9】
前記交流磁界印加部は、前記磁性体が搬送される搬送方向と直交する方向に延びた板状の非磁性金属体である、
請求項4乃至8のいずれか一項に記載の磁気検出装置。
【請求項10】
前記生成部は、前記磁性体が搬送される搬送方向と直交する方向に延びた板状の非磁性金属体である、
請求項4乃至9のいずれか一項に記載の磁気検出装置。
【請求項11】
検出対象の磁性体に直流磁界を印加する直流磁界印加部と、
着磁された磁性体に交流磁界を印加する交流磁界印加部と、
前記交流磁界が前記磁性体に印加された際の前記磁性体の磁気特性を示す信号を検出する検出部と、
前記磁気特性を示す信号から、磁気量特性を示す信号と残留磁気特性を示す信号とを分離し、前記磁気量特性を示す信号および前記残留磁気特性を示す信号に基づいて、前記磁性体が硬磁性体であるか、軟磁性体であるか、非磁性体であるかを判定する判定部と、を備え、
前記判定部は、
前記磁気量特性を示す信号の変化量が第1の閾値以上であり、かつ、前記残留磁気特性を示す信号の変化量が第2の閾値以上である場合、前記磁性体が前記硬磁性体と判定し、
前記磁気量特性を示す信号の変化量が前記第1の閾値以上であり、かつ、前記残留磁気特性を示す信号の変化量が前記第2の閾値未満である場合、前記磁性体が前記軟磁性体と判定する、
磁気検出装置。
【請求項12】
前記磁性体を有する紙葉類を識別する紙葉類識別装置において、
請求項1乃至11のいずれか一項に記載の磁気検出装置、
を備える紙葉類識別装置。
【請求項13】
検出対象の磁性体に直流磁界を印加するステップと、
着磁された磁性体に交流磁界を印加するステップと、
前記交流磁界が前記磁性体に印加された際の前記磁性体の磁気特性を示す信号を検出するステップと、
前記交流磁界の印加に用いられる交流電圧または交流電流を利用して、キャンセル交流磁界を生成するステップと、
前記キャンセル交流磁界に応じたキャンセル信号を検出するステップと、
前記磁気特性を示す信号から、磁気量特性を示す信号と残留磁気特性を示す信号とを分離し、前記キャンセル信号を用いて前記磁気量特性を示す信号および前記残留磁気特性を示す信号から、前記交流磁界によって発生する交流成分をキャンセルし、前記交流成分がキャンセルされた前記磁気量特性を示す信号および前記残留磁気特性を示す信号に基づいて、前記磁性体が硬磁性体であるか、軟磁性体であるか、非磁性体であるかを判定するステップと、
を備える磁気検出方法。
【請求項14】
検出対象の磁性体に直流磁界を印加する直流磁界印加部と、
着磁された磁性体に交流磁界を印加する交流磁界印加部と、
前記交流磁界が前記磁性体に印加された際の前記磁性体の磁気特性を示す信号を検出する検出部と、
前記磁気特性を示す信号から、磁気量特性に対応する高周波成分を示す信号と残留磁気特性に対応する低周波成分を示す信号とを分離し、前記高周波成分を示す信号および前記低周波成分を示す信号に基づいて、前記磁性体が硬磁性体であるか、軟磁性体であるかを判定する判定部と、
を備える磁気検出装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、磁気検出装置、紙葉類識別装置、および磁気検出方法に関する。
【背景技術】
【0002】
磁気検出に関し、例えば、特開昭59-120857号公報(特許文献1)は、二つのセンサを用いて硬磁性体と軟磁性体とを分離する技術を開示している。
【0003】
また、特開2009-163336号公報(特許文献2)は、簡素な構成で各種の検知対象から磁気パターンの有無や種別を確実に検出することのできる磁気パターン検出装置を開示している。
【0004】
また、特開2000-99788号公報(特許文献3)は、装置構成を簡略化でき、装置を小型化できる磁気ヘッド装置を開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開昭59-120857号公報
【文献】特開2009-163336号公報
【文献】特開2000-99788号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
既述の特許文献1に開示された技術では、二つのセンサが必要になるため、一つのセンサを用いる場合に比べてコストが増加することになる。また、差動型センサと残留磁気検出センサとを用いる場合、これらのセンサは個々に配置されるため、検出タイミング差が生じる。そのため、タイミングを合わせる処理が必要になる。また、二つのセンサを使用すると、搬送方向に対して各センサを配置するためのスペースが必要となる。
【0007】
また、既述の特許文献2に開示された技術では、残留磁束密度信号は得られるが、透磁率の影響が大きい信号を得るためには励磁周波数を低くする必要があり、紙幣を大量に処理する装置等では、透磁率信号ではなく、磁気量信号となる。
【0008】
また、既述の特許文献3に開示された技術では、残留磁気検出は、交流磁界がない時に行われ、残留磁束と磁気量とを同時に検知することはできない。
【0009】
そこで、本発明は、上述のような問題点を解決するためになされたものであって、硬磁性体と軟磁性体とを分離して適切に検出するとともに、小型化を図ることが可能な磁気検出装置、紙葉類識別装置、及び磁気検出方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の一態様に係る実施形態に従った磁気検出装置は、検出対象の磁性体に直流磁界を印加する直流磁界印加部と、着磁された磁性体に交流磁界を印加する交流磁界印加部と、前記交流磁界が前記磁性体に印加された際の前記磁性体の磁気特性を示す信号を検出する検出部と、前記磁気特性を示す信号から、磁気量特性を示す信号と残留磁気特性を示す信号とを分離し、前記磁気量特性を示す信号および前記残留磁気特性を示す信号に基づいて、前記磁性体が硬磁性体であるか、軟磁性体であるかを判定する判定部と、を備える。
【0011】
前記磁気検出装置は、前記磁気量特性を示す信号および前記残留磁気特性を示す信号から、前記交流磁界によって発生する交流成分をキャンセルするキャンセル部、を備える。
【0012】
前記磁気検出装置は、前記交流磁界印加部に供給されている交流電圧または交流電流を利用して、キャンセル交流磁界を生成する生成部と、前記キャンセル交流磁界に応じたキャンセル信号を検出するキャンセル信号検出部と、を備える。
【0013】
前記磁気検出装置において、前記キャンセル部は、前記磁気量特性を示す信号に、前記磁気量特性を示す信号の周波数を有する前記キャンセル信号を合成し、前記残留磁気特性を示す信号に、前記残留磁気特性を示す信号の周波数成分を有する前記キャンセル信号を合成する。
【0014】
前記磁気検出装置において、前記交流磁界印加部は、検出用コア部材のギャップに埋設され、前記交流磁界を前記検出用コア部材に生成し、前記検出部は、前記検出用コア部材に巻回され、前記検出用コア部材の前記交流磁界による電磁誘導によって、前記磁気特性を示す信号を検出する。
【0015】
前記磁気検出装置において、前記生成部は、キャンセル用コア部材のギャップに埋設され、前記キャンセル交流磁界を前記キャンセル用コア部材に生成し、前記キャンセル信号検出部は、前記キャンセル用コア部材に巻回され、前記キャンセル用コア部材の前記キャンセル交流磁界による電磁誘導によって、前記キャンセル信号を検出する。
【0016】
前記磁気検出装置において、前記キャンセル用コア部材は、前記磁性体に対し、前記検出用コア部材より離れて配置される。
【0017】
前記磁気検出装置において、前記検出用コア部材と前記キャンセル用コア部材とは、一体に形成されている。
【0018】
前記磁気検出装置において、前記検出用コア部材は、前記磁性体が搬送される搬送方向と直交する方向に複数配置される。
【0019】
前記磁気検出装置において、前記キャンセル用コア部材は、前記磁性体が搬送される搬送方向と直交する方向に複数配置される。
【0020】
前記磁気検出装置において、前記交流磁界印加部は、前記磁性体が搬送される搬送方向と直交する方向に延びた板状の非磁性金属体である。
【0021】
前記磁気検出装置において、前記生成部は、前記磁性体が搬送される搬送方向と直交する方向に延びた板状の非磁性金属体である。
【0022】
前記磁気検出装置において、前記判定部は、前記磁気量特性を示す信号の変化量が第1の閾値以上であり、かつ、前記残留磁気特性を示す信号の変化量が第2の閾値以上である場合、前記磁性体が前記硬磁性体と判定し、前記磁気量特性を示す信号の変化量が前記第1の閾値以上であり、かつ、前記残留磁気特性を示す信号の変化量が前記第2の閾値未満である場合、前記磁性体が前記軟磁性体と判定する。
【0023】
本発明の一態様に係る実施形態に従った前記磁性体を有する紙葉類を識別する紙葉類識別装置は、前記磁気検出装置を備える。
【0024】
本発明の一態様に係る実施形態に従った磁気検出方法は、検出対象の磁性体に直流磁界を印加するステップと、着磁された磁性体に交流磁界を印加するステップと、前記交流磁界が前記磁性体に印加された際の前記磁性体の磁気特性を示す信号を検出するステップと、前記磁気特性を示す信号から、磁気量特性を示す信号と残留磁気特性を示す信号とを分離し、前記磁気量特性を示す信号および前記残留磁気特性を示す信号に基づいて、前記磁性体が硬磁性体であるか、軟磁性体であるかを判定するステップと、を備える。
【発明の効果】
【0025】
本発明に係る磁気検出装置、及び磁気検出方法によれば、硬磁性体と軟磁性体とを分離して適切に検出するとともに、小型化を図ることができることができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【
図1】
図1は、本発明の一態様である実施形態に係る紙葉類識別装置の構成の一例を示す図である。
【
図2】
図2は、
図1に示す磁気検出装置の構成の一例を示す図である。
【
図3】
図3は、
図2に示す磁気検出装置の複数のセンサ部の構成の一例を示す図である。
【
図4】
図4は、検知対象の磁性体が硬磁性体又は軟磁性体である場合における、センサ部の残留磁気出力波形と磁気量出力波形との関係を示す図である。
【
図5】
図5は、着磁された検知対象の磁性体が搬送路を移動している場合における、センサ部の残留磁気出力波形と磁気量の出力波形を示す図である。
【
図6】
図6は、検知対象の磁性体が硬磁性体である場合における、LPF用合成回路が出力する低周波合成信号と第2の閾値電圧、及び、HPF用合成回路が出力する高周波合成信号と第1の閾値電圧の一例を示す図である。
【
図7】
図7は、磁気検出装置の動作の一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、図面を参照しつつ、本発明の実施の形態について説明する。
【第1の実施形態】
【0028】
図1は、本発明の一態様である実施形態に係る紙葉類識別装置1000の構成の一例を示す図である。また、
図2は、
図1に示す磁気検出装置100の構成の一例を示す図である。また、
図3は、
図2に示す磁気検出装置100の複数のセンサ部Yの構成の一例を示す図である。
【0029】
図1に示すように、紙葉類識別装置1000は、磁気検出装置100と、制御部CONと、記憶部Mと、通信部50と、を備える。
【0030】
磁気検出装置100は、検知対象の磁気を検出し、この検出結果に応じて、検知対象Zの磁気特性を判別するようになっている。検知対象Zは、例えば、磁気インクを含む、紙幣、金券の紙葉類である。特に、検知対象Zは、軟磁性体又は硬磁性体の少なくとも何れかを、例えば、既述の磁気インクに含む。この場合、例えば、検知対象Zは、軟磁性体又は硬磁性体の少なくとも何れかを含む磁気インクが印刷された紙幣である。
【0031】
また、制御部CONは、磁気検出装置100を制御するとともに、磁気検出装置100の磁気検出部D(
図2の判別回路DC)が出力する判別結果信号Soutに基づいて検知対象(紙葉類)Zの種類等を識別するようになっている。
【0032】
この制御部CONは、例えば、
図1に示すように、紙葉類識別部10と、搬送制御部20と、磁気検出制御部30と、処理部40と、を備える。
【0033】
例えば、紙葉類識別部10は、検知対象(紙葉類)Zの検出された磁気特性(磁気量特性、残留磁気特性)に応じた判別結果信号Soutと、予め検知対象となる検知対象(紙葉類)Zに関して記憶部Mに記憶されている基準値とを比較することにより、検知対象(紙葉類)Zの種類等を特定する機能を有する。
【0034】
具体的には、例えば、検知対象Zが米国紙幣である場合には、記憶部Mには予め1ドル、2ドル、5ドル、10ドル、20ドル、50ドル及び100ドルの各紙幣の磁気特性の基準値が記憶されている。そして、処理中の検知対象(紙葉類)Zの検出された磁気特性に応じた判別結果信号Soutが、各基準値と比較される。その比較結果に基づいて、この検知対象(紙葉類)Zを100ドル紙幣であると判別する。
【0035】
なお、例えば、紙葉類識別部10は、検知対象(紙葉類)Zを撮像部(図示せず)により撮像した画像と、予め検知対象となる検知対象(紙葉類)Zに関して記憶部Mに記憶されている基準画像とを比較することにより、検知対象(紙葉類)Zの種類等を特定する機能をさらに有するようにしてもよい。
【0036】
具体的には、例えば、検知対象Zが米国紙幣である場合には、記憶部Mには予め1ドル、2ドル、5ドル、10ドル、20ドル、50ドル及び100ドルの各紙幣の基準画像が記憶されている。そして、処理中の検知対象(紙葉類)Zを撮像した画像の特徴部分が、各基準画像と比較される。その結果、検知対象(紙葉類)Zを撮像した画像が、100ドル紙幣の基準画像と所定範囲内で一致するとともに他の金種の基準画像と所定範囲を超えて異なる場合に、この検知対象(紙葉類)Zを100ドル紙幣であると判別するようにしてもよい。
【0037】
なお、検知対象とする検知対象(紙葉類)Zが紙幣である場合には、紙葉類識別部10は、このように金種識別を行う他、紙幣が本物であるか否かを判別する真偽識別や、紙幣が所定基準を満たし再利用可能な紙幣であるか否かを判別する正損識別等の処理を行うこともできる。このような紙葉類の識別処理は、紙幣識別装置の分野において従来から利用されている技術であるため、詳細な説明は省略する。
【0038】
この制御部CONは、例えば、各種の処理を実現するためのソフトウェアプログラムと、当該ソフトウェアプログラムを実行するCPUと、当該CPUによって制御される各種ハードウェア等によって構成されている。各部の動作に必要なソフトウェアプログラムやデータの保存には、記憶部Mや、別途専用に設けられたRAMやROM等のメモリやハードディスク等が利用される。
【0039】
また、搬送制御部20は、検知対象Zを搬送する、磁気検出装置100の搬送部Fを、制御するようになっている。
【0040】
また、磁気検出制御部30は、検知対象Zの磁気を検出する、磁気検出装置100の磁気検出部Dを、制御するようになっている。
【0041】
また、処理部40は、各部の動作に必要な各種の処理を実行するようになっている。
【0042】
また、記憶部Mは、揮発性又は不揮発性のメモリやハードディスク等の記憶装置で構成され、紙葉類識別装置1000で行われる処理に必要な各種のデータを記憶するために利用される。
【0043】
この記憶部Mは、制御部CONによる識別結果を記憶するようになっている。また、記憶部Mは、検知対象(紙葉類)Zの判別処理等を行うために利用される各種の基準値と、これらに関連する情報とを記憶している。また、記憶部Mは、検知対象(紙葉類)Zを撮像した各画像の全体又は特徴部の判別処理等を行うために利用される各種の基準画像と、これらに関連する情報とを記憶している。
【0044】
また、通信部50は、紙葉類識別装置1000の外部からの信号を受信し、紙葉類識別装置1000から外部へ信号を送信する機能を有する。
【0045】
この通信部50によって、例えば、外部からの信号を受信して、制御部CONの動作設定を変更したり、記憶部Mに記憶されているソフトウェアプログラムやデータの更新、追加及び削除の処理を行ったり、紙葉類識別装置1000による検知対象(紙葉類)Zの識別結果を外部へ出力することができる。
【0046】
ここで、
図1、
図2に示すように、軟磁性体又は硬磁性体の少なくとも何れかを含む検知対象Zの磁気特性を検出して判別する磁気検出装置100は、磁気検出部Dと、搬送部Fと、を備える。
【0047】
磁気検出部Dは、例えば、
図2に示すように、センサ部Yと、処理部Wと、を備える。なお、
図2の例では、1組のセンサ部Yと処理部Wを例示的に示しているが、磁気検出部Dは、複数組のセンサ部Yと処理部Wを含むようにしてもよい(
図3)。
【0048】
ここで、センサ部Yは、検知対象Zの磁気特性を検出するようになっている。
【0049】
このセンサ部Yは、例えば、
図2に示すように、発振器200と、交流電源101と、直流磁界印加部(着磁用磁石)102と、印加検出部Y1と、キャンセル信号生成部Y2と、配線130a、130bと、を含む。
【0050】
直流磁界印加部(着磁用磁石)102は、検知対象Zに含まれる磁性体に一定の直流磁界を印加するようになっている。検知対象Zは、印加検出部Y1により磁気特性を検出される前に、この直流磁界印加部102によって着磁される。
【0051】
より詳しくは、この直流磁界印加部102は、例えば、検知対象Zに対して一定方向の着磁を実現するように配置されている。着磁された検知対象Zは、搬送部Fによって、印加検出部Y1の近傍を通過するように搬送される。
【0052】
なお、この直流磁界印加部102は、直流磁界印加部102の磁束がセンサ部Yの検出に影響を与えないような(直流磁界印加部102の磁束が印加検出部Y1に達しないような)位置に配置され、又は、着時用磁石102の磁束がセンサ部Yの検出に影響を与えないように(着時用磁石102の磁束が印加検出部Y1に達しないように)構成される。
【0053】
また、印加検出部Y1は、直流磁界印加部102が直流磁界を印加した後の検知対象Zに交流磁界を印加するとともに、当該交流磁界が印加された検知対象Zから、検知対象Zに含まれる磁性体の磁気特性を検出し、検出した磁気特性に応じた検出信号SDを出力するようになっている。
【0054】
この印加検出部Y1は、例えば、
図2に示すように、検出用励磁部104と、検出用コア部材Caと、検出用コイル106と、検出用出力部108と、を含む。
【0055】
検出用コア部材Caは、検知対象Zの搬送方向X1と直交する方向X2に延びた検出用ギャップGaが形成されている。この検出用コア部材Caは、検出用ギャップGaを介する閉磁路を形成している。
【0056】
また、検出用励磁部104は、検出用ギャップGaに埋設され、交流電圧又は交流電流が印加されて交流磁界を検出用ギャップGaに生成するようになっている。
【0057】
この検出用励磁部104は、例えば、
図2に示すように、搬送方向X1と直交する方向X2に延びた板状の非磁性金属体である。なお、上記非磁性導電体は、例えば、銅、SUS、又はアルミで構成されている。
【0058】
また、検出用コイル106は、検出用コア部材Caに巻回されている。この検出用コイル106は、検出用コア部材Caの交流磁界に応答した電磁誘導によって検出用誘導電圧を出力するようになっている。すなわち、この検出用コイル106は、検出用ギャップGaに加わる磁界(磁気特性)を検出するようになっている。より詳しくは、検出用コイル106は、検出用励磁部104に流れる交流電流により発生する交流磁界において、磁性を帯びた検知対象Zが搬送された際に、当該磁性による影響を受けた検出用誘導電圧を出力する。
【0059】
なお、検知対象Zの残留磁気は、直流磁界印加部102による検知対象Zの着磁状態に依存する。
【0060】
そして、検出用出力部108は、検出用コイル106が出力した検出用誘導電圧を検出信号SDとして出力するようになっている。
【0061】
このような印加検出部Y1は、検出用励磁部104を用いて検出用ギャップGaに交流磁界を発生させることで、検出用ギャップGaのインピーダンスを検知対象Zの外部磁化(磁気量特性、残留磁気特性)に応じて変化させ、この変化量を、検出用コイル106を用いて検出するものである。
【0062】
また、キャンセル信号生成部Y2は、検知対象Zに含まれる磁性体の影響を受けていない交流磁界に応じたキャンセル信号SCを出力するようになっている。このキャンセル信号生成部Y2は、検知対象Zに含まれる磁性体の影響が及ばない位置に配置されている。
【0063】
このキャンセル信号生成部Y2は、例えば、
図2に示すように、キャンセル用コア部材Cbと、キャンセル用励磁部103と、キャンセル用コイル105と、キャンセル用出力部107と、を含む。
【0064】
キャンセル用コア部材Cbは、搬送方向X1と直交する方向に延びたキャンセル用ギャップGbが形成されている。このキャンセル用コア部材Cbは、キャンセル用ギャップGbを介する閉磁路を形成している。
【0065】
また、キャンセル用励磁部103は、キャンセル用ギャップGbに埋設され、交流電圧又は交流電流が印加されて交流磁界をキャンセル用ギャップGbに生成するようになっている。
【0066】
このキャンセル用励磁部103は、例えば、
図2に示すように、搬送方向X1と直交する方向X2に延びた板状の非磁性金属体である。なお、上記非磁性導電体は、例えば、銅、SUS、又はアルミで構成されている。
【0067】
また、キャンセル用コイル105は、キャンセル用コア部材Cbに巻回されている。このキャンセル用コイル105は、キャンセル用コア部材Cbの交流磁界に応答した電磁誘導によってキャンセル用誘導電圧を出力する。すなわち、このキャンセル用コイル105は、キャンセル用ギャップGbに加わる磁界(磁気特性)を検出するようになっている。なお、このキャンセル用ギャップGbには、検知対象Zの磁気特性の影響は無いように設定される。
【0068】
また、キャンセル用出力部107は、キャンセル用コイル105が出力したキャンセル用誘導電圧をキャンセル信号SCとして出力するようになっている。
【0069】
なお、既述の検出用コア部材Caとキャンセル用コア部材Cbとは、例えば、
図2に示すように、一体に形成されている。
【0070】
ここで、交流電源101は、配線130aを介して、同じ交流電圧又は交流電流を検出用励磁部104及びキャンセル用励磁部103に印加するようになっている。すなわち、交流電源101は、予め定められた一定の周波数(例えば、190kHz)の正弦波の交流電圧又は交流電流を生成し、配線130aを介して検出用ギャップGa、キャンセル用ギャップGbに印加する。
【0071】
なお、配線130bは、検出用励磁部104とキャンセル用励磁部103とを電気的に接続するようになっている。これにより、検出用励磁部104とキャンセル用励磁部103が同電位になる。
【0072】
また、発振器200は、交流電源101に交流電圧又は交流電流を出力させるための周期的な発振信号を発生して出力するようになっている。
【0073】
また、搬送部Fは、検知対象Zが検出用励磁部104の近傍を通過する(検出用励磁部104に対する検知対象Zの相対的な移動に伴って検出用ギャップGaに加わる外部磁化が変化する)ように、検出用励磁部104に対する検知対象Zの位置を相対的に移動させるようになっている。
【0074】
ここで、既述のように、磁気検出装置100は、複数のセンサ部Yを備えるようにしてもよい(
図3)。なお、この
図3においては、発振器200、着磁用磁石102、キャンセル用出力部107、及び検出用出力部108が省略されている。
【0075】
この複数のセンサ部Yは、例えば、
図3に示すように、検知対象Zの搬送方向X1と直交する方向X2に並んで配置されている。そして、複数の検出用コア部材Caは、検出用ギャップGaの位置が方向X2に揃えられている。すなわち、複数のセンサ部Yにおける、各々の検出用励磁部104は搬送方向X1と直交する方向に延びた1本の板状の非磁性金属体で構成される。
【0076】
なお、隣接する2つのセンサ部Yの検出用コア部材Ca間及びキャンセル用コア部材Cb間には、例えば、ガラス等の非磁性層が設けられている(図示せず)。
【0077】
この
図3に示すような複数のセンサ部Yの構成により、例えば、紙幣のように一定の幅を有する検知対象Zの検出対象領域を網羅して、磁性特性を検出することができる。
【0078】
また、
図2に示すように、処理部Wは、センサ部Yが検出した磁気特性に基づいた検出信号SDを取得し、この検出信号SDを信号処理するようになっている。
【0079】
この処理部Wは、例えば、
図2に示すように、キャンセル用増幅回路109と、検出用増幅回路110と、フィルタ部WFと、LPF用合成回路115と、HPF用合成回路116と、判別回路DCと、を備える。
【0080】
検出用増幅回路110は、後述のフィルタ部WFの検出用HPF回路113及び検出用LPF回路111に入力される検出信号SDを増幅するようになっている。
【0081】
なお、
図2の例では、検出信号SDは、この検出用増幅回路110により増幅されているが、この検出用増幅回路110は、必要に応じて省略されていてもよい。この場合、検出用出力部108から検出用HPF回路113及び検出用LPF回路111に検出信号SDが直接入力されることとなる。
【0082】
また、キャンセル用増幅回路109は、後述のフィルタ部WFのキャンセル用HPF回路114及びキャンセル用LPF回路112に入力されるキャンセル信号SCを増幅するようになっている。
【0083】
なお、
図2の例では、キャンセル信号SCは、このキャンセル用増幅回路109により増幅されているが、このキャンセル用増幅回路109は、必要に応じて省略されていてもよい。この場合、キャンセル用出力部107からキャンセル用HPF回路114及びキャンセル用LPF回路112にキャンセル信号SCが直接入力されることとなる。
【0084】
そして、フィルタ部WFは、磁気特性に応じた検出信号SDを、磁気量特性に対応する検出信号SDの高周波成分と、残留磁気特性に対応する検出信号SDの低周波成分と、に分離するようになっている。
【0085】
このフィルタ部WFは、例えば、
図2に示すように、検出用LPF(低域通過フィルタ)回路111と、キャンセル用LPF(低域通過フィルタ)回路112と、検出用HPF(高域通過フィルタ)回路113と、キャンセル用HPF(高域通過フィルタ)回路114と、LPF用合成回路115と、HPF用合成回路116と、を含む。
【0086】
検出用HPF回路113は、検出信号SDをフィルタリングして、検出信号SDの高周波成分を出力するようになっている。なお、この検出用HPF回路113は、BPF(帯域通過フィルタ)回路であってもよい。
【0087】
例えば、この検出用HPF回路113は、検出信号SDについて、予め規定された遮断周波数より高い周波数の成分をほぼ減衰させることなく、また、当該遮断周波数より低い周波数の成分を逓減させる。
【0088】
また、検出用LPF回路111は、検出信号SDをフィルタリングして、検出信号SDの低周波成分を出力するようになっている。
【0089】
例えば、この検出用LPF回路111は、検出信号SDについて、予め規定された遮断周波数より低い周波数の成分をほぼ減衰させることなく、また、当該遮断周波数より高い周波数の成分を逓減させる。
【0090】
また、キャンセル用HPF回路114は、キャンセル信号SCをフィルタリングして、キャンセル信号SCの高周波成分を出力するようになっている。なお、キャンセル用HPF回路114は、BPF(帯域通過フィルタ)回路であってもよい。
【0091】
例えば、このキャンセル用HPF回路114は、キャンセル信号SCについて、予め規定された遮断周波数より高い周波数の成分をほぼ減衰させることなく、また、当該遮断周波数より低い周波数の成分を逓減させる。
【0092】
また、キャンセル用LPF回路112は、キャンセル信号SCをフィルタリングして、キャンセル信号SCの低周波成分を出力するようになっている。
【0093】
例えば、このキャンセル用LPF回路112は、キャンセル信号SCについて、予め規定された遮断周波数より低い周波数の成分をほぼ減衰させることなく、また、当該遮断周波数より高い周波数の成分を逓減させる。
【0094】
ここで、HPF用合成回路116は、検出信号SDの高周波成分とキャンセル信号SCの高周波成分とを合成(検出信号SDの高周波成分からキャンセル信号SCの高周波成分を減算)して、高周波合成信号SHを出力するようになっている。
【0095】
すなわち、このHPF用合成回路116は、磁性体が検知対象Zに含まれているか否かを判別するための信号を生成する。この場合、検出用HPF回路113からの出力とキャンセル用HPF回路114からの出力とが合成され、ノイズおよびオフセットが取り除かれる。検知対象Zが軟磁性体を含んでいる場合には、HPF用合成回路116の出力は磁気量出力となる。磁気量出力は、周波数特性に依存するものである。
【0096】
なお、このHPF用合成回路116は、検出信号SDの高周波成分とキャンセル信号SCの高周波成分とを合成し且つ増幅した高周波合成信号SHを出力するようにしてもよい。
【0097】
また、LPF用合成回路115は、検出信号SDの低周波成分とキャンセル信号SCの低周波成分とを合成(検出信号SDの低周波成分からキャンセル信号SCの低周波成分を減算)して、低周波合成信号SLを出力するようになっている。
【0098】
すなわち、LPF用合成回路115は、硬磁性体が検知対象Zに含まれているか否かを判別するための信号を生成する。この場合、キャンセル用LPF回路112からの出力信号の波形よりも検出用LPF回路111からの出力信号の波形が、合成信号の波形を決定する。例えば、検知対象としての検知対象Zが硬磁性体を含んでいる場合には、微分出力を含むことになる。
【0099】
なお、このLPF用合成回路115は、検出信号SDの低周波成分とキャンセル信号SCの低周波成分とを合成し且つ増幅した低周波合成信号SLを出力するようにしてもよい。
【0100】
ここで、
図4は、検知対象Zの磁性体が硬磁性体又は軟磁性体である場合における、センサ部Yの残留磁気出力波形と磁気量出力波形との関係を示す図である。なお、検知対象Zの磁性体が軟磁性体である場合における、センサ部Yの残留磁気出力波形は基底レベルである(信号レベルが変化しない)。
【0101】
図4に示すように、硬磁性体からは、材質の磁気量および着磁された方向に基づいて磁気量出力および残留磁気出力の両方が検出される。一方、軟磁性体からは、材質の磁気量に応じた磁気出力が検出される。したがって、残留磁気出力の有無(第2の閾値電圧Th2との大小関係)に基づき、検知対象(例えば、紙幣)Zが硬磁性体を有するか否かが判別され得る。
【0102】
また、
図5は、着磁された検知対象Zの磁性体が搬送路を移動している場合における、センサ部Yの残留磁気出力波形と磁気量の出力波形を示す図である。
【0103】
検知対象Zの磁性体が軟磁性体の場合、保磁力は小さくなる。したがって、着磁された検知対象Zが磁気検出装置100を通る際には、磁気量に相当する出力のみが現れる。
【0104】
一方、検知対象Zが硬磁性体の場合、保磁力が大きいため、残留磁気が出力される。残留磁気の出力状態は、検知対象Zにおける着磁の状態に依存する。
【0105】
そこで、判別回路DCは、高周波合成信号SHと低周波合成信号SLとに基づいて、検知対象Zの磁性体が硬磁性体であるか否か、および、検知対象Zの磁性体が軟磁性体であるか否かを判別するようになっている。
【0106】
すなわち、判別回路DCは、検知対象Zが検出用ギャップGa近傍を通過するとき(通過前から通過後)の、磁気量特性に対応する検出信号SDの高周波成分と、残留磁気特性に対応する検出信号SDの低周波成分とに基づいて、検知対象Zに含まれる磁性体が硬磁性体であるか否か、および、検知対象Zに含まれる磁性体が軟磁性体であるか否かを判別する。
【0107】
例えば、判別回路DCは、高周波合成信号SHの振幅の変化が第1の閾値電圧Th1以上であり、且つ、低周波合成信号SLの振幅の変化が第2の閾値電圧Th2以上である場合に、検知対象Zに含まれる磁性体が硬磁性体であると判別する。
【0108】
すなわち、判別回路DCは、検知対象Zが検出用ギャップGa近傍を通過するとき(通過前から通過後)において、検出信号SDの高周波成分に対応する磁気量特性の変化量が予め設定された第1の閾値量以上であり、且つ、検出信号SDの低周波成分に対応する残留磁気特性の変化量が予め設定された第2の閾値量以上である場合に、検知対象Zに含まれ磁性体が硬磁性体であると判別する。
【0109】
一方、判別回路DCは、高周波合成信号SHの振幅の変化が第1の閾値電圧Th1以上であり、且つ、低周波合成信号SLの振幅の変化が第2の閾値電圧Th2未満である場合に、検知対象Zに含まれる磁性体が軟磁性体であると判別する。
【0110】
すなわち、判別回路DCは、検知対象Zが検出用ギャップGa近傍を通過するとき(通過前から通過後)において、検出信号SDの高周波成分に対応する磁気量特性の変化量が既述の第1の閾値量以上であり、且つ、検出信号SDの低周波成分に対応する残留磁気特性の変化量が既述の第2の閾値量未満である場合に、検知対象Zに含まれる磁性体が軟磁性体であると判別する。
【0111】
なお、判別回路DCは、高周波合成信号SHの振幅の変化が第1の閾値電圧Th1未満であり、且つ、低周波合成信号SLの振幅の変化が第2の閾値電圧Th2未満である場合に、検知対象Zに硬磁性体及び軟磁性体が含まれていないと判別する。
【0112】
すなわち、判別回路DCは、検知対象Zが検出用ギャップGa近傍を通過するとき(通過前から通過後)において、検出信号SDの高周波成分に対応する磁気量特性の変化量が既述の第1の閾値量未満であり、且つ、検出信号SDの低周波成分に対応する残留磁気特性の変化量が既述の第2の閾値量未満である場合に、検知対象Zに硬磁性体及び軟磁性体が含まれていないと判別する。
【0113】
そして、判別回路DCは、検知対象Zの磁気特性のこれらの判別結果の情報を含む判別結果信号Soutを出力するようになっている。
【0114】
ここで、
図6は、検知対象Zの磁性体が硬磁性体である場合における、LPF用合成回路115が出力する低周波合成信号SLと第2の閾値電圧Th2、及び、HPF用合成回路116が出力する高周波合成信号SHと第1の閾値電圧Th1の一例を示す図である。
【0115】
既述のように、LPF用合成回路115は、検出信号SDの低周波成分とキャンセル信号SCの低周波成分とを合成(検出信号SDの低周波成分からキャンセル信号SCの低周波成分を減算)して、低周波合成信号SLを出力する。
【0116】
また、既述のように、HPF用合成回路116は、検出信号SDの高周波成分とキャンセル信号SCの高周波成分とを合成(検出信号SDの高周波成分からキャンセル信号SCの高周波成分を減算)して、高周波合成信号SHを出力する。
【0117】
そして、
図6に示す例では、高周波合成信号SHの振幅の変化が第1の閾値電圧Th1以上であり、且つ、低周波合成信号SLの振幅の変化が第2の閾値電圧Th2以上である。
【0118】
これにより、判別回路DCは、高周波合成信号SHの振幅の変化が第1の閾値電圧Th1以上であり、且つ、低周波合成信号SLの振幅の変化が第2の閾値電圧Th2以上であるので、検知対象Zに含まれる磁性体が硬磁性体であると判別する。
【0119】
そして、判別回路DCは、検知対象Zに含まれる磁性体が硬磁性体であるとの判別結果の情報を含む判別結果信号Soutを出力することとなる。
【0120】
次に、以上のような構成、機特性を有する磁気検出装置100の動作フローの一例について説明する。ここで、
図7は、磁気検出装置100の動作の一例を示すフローチャートである。
【0121】
図7に示すように、先ず、磁気検出装置100は、検知対象Zに含まれる磁性体に一定の直流磁界を印加する(ステップS1)。
【0122】
次に、磁気検出装置100は、直流磁界を印加した後の検知対象Zに交流磁界を印加する(ステップS2)。
【0123】
そして、磁気検出装置100は、交流磁界が印加された検知対象Zから、検知対象Zに含まれる磁性体の磁気特性を検出し、検出した磁気特性に応じた検出信号を出力する(ステップS3)。
【0124】
次に、磁気検出装置100は、磁気特性に応じた検出信号を、磁気量特性に対応する検出信号の高周波成分と、残留磁気特性に対応する検出信号の低周波成分と、に分離する(ステップS4)。
【0125】
次に、磁気量特性に対応する検出信号の高周波成分と、残留磁気特性に対応する検出信号の低周波成分とに基づいて、検知対象Zに含まれる磁性体が硬磁性体であるか否か、および、検知対象Zに含まれる磁性体が軟磁性体であるか否かを判別する(ステップS5)。
【0126】
以上のようにして、本実施の形態に係る磁気検出装置は、一つのセンシング(検出)により検知対象が硬磁性体を含むか否かおよび軟磁性体を含むか否かを判別することができる。これにより、例えば、差動型センサと残留磁気検出型センサとを用いた場合における検出タイミングの差を低減することができ、この磁気検出装置によれば検出タイミングを合わせる処理が不要となる。これにより、例えば、偽造紙幣その他の検知対象の判別精度が向上し、偽造検知対象の排除能力が高まる。
【0127】
また、複数のセンサを必要としないので、磁気検出装置の搬送方向における寸法が大きくならず、磁気検出装置の構成を小型化することができる。
【0128】
また、一つのセンサを用いることで、磁気量出力と残留磁気出力とを同時に検出することが可能になるため、真偽の判別速度が向上し得る。
【0129】
なお、本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【0130】
2016年1月5日出願の特願2016-000574の日本出願に含まれる明細書、図面および要約書の開示内容は、全て本願に援用される。
【符号の説明】
【0131】
1000 紙葉類識別装置
100 磁気検出装置
10 紙葉類識別部
20 搬送制御部
30 磁気検出制御部
40 処理部
50 通信部
D 磁気検出部
F 搬送部
CON 制御部
M 記憶部