(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-02-08
(45)【発行日】2022-02-17
(54)【発明の名称】反応性ポリカルボン酸化合物、それを用いた活性エネルギー線硬化型樹脂組成物、その硬化物及びその用途
(51)【国際特許分類】
C08G 59/14 20060101AFI20220209BHJP
G03F 7/038 20060101ALI20220209BHJP
【FI】
C08G59/14
G03F7/038 503
(21)【出願番号】P 2018007130
(22)【出願日】2018-01-19
【審査請求日】2020-12-18
(31)【優先権主張番号】P 2017014951
(32)【優先日】2017-01-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000004086
【氏名又は名称】日本化薬株式会社
(72)【発明者】
【氏名】吉澤 恵理
(72)【発明者】
【氏名】山本 和義
(72)【発明者】
【氏名】小淵 香津美
【審査官】中落 臣諭
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2015/080147(WO,A1)
【文献】特開2016-199631(JP,A)
【文献】国際公開第2012/176750(WO,A1)
【文献】特開平03-100009(JP,A)
【文献】特開2015-225249(JP,A)
【文献】特開2007-102109(JP,A)
【文献】特開2015-021997(JP,A)
【文献】特開2014-052599(JP,A)
【文献】特開2015-092229(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08G59/00-59/72
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式(1)で表されるエポキシ樹脂(a)に、一分子中に重合可能なエチレン性不飽和基とカルボキシ基を併せ持つカルボン酸化合物(b)を反応させて得られる反応性エポキシカルボキシレート化合物(c)と、下記式(2)又は式(3)で表される多塩基酸無水物(d)とを反応させた反応性ポリカルボン酸化合物(A)。
【化1】
(式中、nは平均値を示し、0~20の値を示す。)
【化2】
(式(2)中R
1は、水素原子又は炭素数1~10のアルキル基を表わす。)
【請求項2】
請求項1に記載の反応性ポリカルボン酸化合物(A)を含む活性エネルギー線硬化型樹脂組成物。
【請求項3】
反応性ポリカルボン酸化合物(A)以外の反応性化合物(B)を含む請求項2に記載の活性エネルギー線硬化型樹脂組成物。
【請求項4】
光重合開始剤を含む請求項2又は3に記載の活性エネルギー線硬化型樹脂組成物。
【請求項5】
熱硬化触媒を含む請求項2~請求項4のいずれか1項に記載の活性エネルギー線硬化型樹脂組成物。
【請求項6】
成形用材料である請求項2~請求項5のいずれか1項に記載の活性エネルギー線硬化型樹脂組成物。
【請求項7】
皮膜形成用材料である請求項2~請求項5のいずれか1項に記載の活性エネルギー線硬化型樹脂組成物。
【請求項8】
レジスト材料組成物である請求項2~請求項5のいずれか一項に記載の活性エネルギー線硬化型樹脂組成物。
【請求項9】
請求項2~請求項8のいずれか一項に記載の活性エネルギー線硬化型樹脂組成物の硬化物。
【請求項10】
請求項9に記載の活性エネルギー線硬化型樹脂組成物の硬化物でオーバーコートされた物品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新規な反応性ポリカルボン酸化合物、それらを含む活性エネルギー線硬化型樹脂組成物、その硬化物及びオーバーコートされた物品に関する。特に、プリント配線基板等のビルドアップ層としても適用可能なレジスト材料として好適な新規な反応性ポリカルボン酸化合物、それを含有する活性エネルギー線硬化型樹脂組成物、その硬化物に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、プリント配線板等のビルドアップ層には熱硬化性樹脂組成物が用いられ、携帯機器の小型軽量化や通信速度の向上のために、配線の微細化及びビルドアップ層の複層化による配線の高密度化が進んでいる。
一方、プリント配線板のソルダーレジスト層の最外層には配線の劣化を防ぐために、感光性樹脂組成物を用いてソルダーレジスト層を形成している。たとえば、特許文献1には、トリグリシジルエーテル構造を有したエポキシ樹脂と不飽和基含有カルボン酸との反応物を、さらに多塩基酸無水物と反応させて得られるバインダー樹脂を含有する感光性樹脂組成物が記載されている。
また、耐PCT試験後の接着性向上を意図して、熱硬化性成分としてフェノール化合物を配合した感光性樹脂組成物も知られている(特許文献2)。さらに、近年ビルドアップ層の材料として用いるのに良好な耐熱性、低誘電正接を有するアルカリ現像可能な感光性樹脂組成物も開発されている(特許文献3)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開平3-100009号公報
【文献】国際公開第2010/026927号
【文献】特開2013-214057号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載の感光性樹脂組成物は、現像性、耐熱分解性に劣り、十分満足するレベルではない。特許文献2の感光性樹脂組成物は、その用途は保護膜用に限られており、その物理的性能は十分ではない。特許文献3では耐熱性や耐熱分解性は未だ不十分である。このように感光性樹脂組成物は、安価で、製造工程が簡単であることなどの利点があるものの、その物理的性能は十分ではなく、ビルドアップ層に適用することは困難であった。
そこで、本発明は、上記の従来技術の問題点を改善し、耐熱性、耐熱分解性、微細にアルカリ現像可能でビルドアップ層としても適用可能なレジスト材料として好適な新規反応性ポリカルボン酸化合物、それを含有する活性エネルギー線硬化型樹脂組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは前記課題を解決するため、鋭意検討を行った結果、特定のトリグリシジルエーテル構造を有したエポキシ樹脂と不飽和基含有カルボン酸との反応物を、特定の多塩基酸無水物との反応物を用いた樹脂組成物が前記課題を解決することを見いだし、本発明に到達した。
【0006】
即ち、本発明は、
[1]下記式(1)で表されるエポキシ樹脂(a)に、一分子中に重合可能なエチレン性不飽和基とカルボキシ基を併せ持つカルボン酸化合物(b)を反応させて得られる反応性エポキシカルボキシレート化合物(c)を、下記式(2)又は式(3)で表される多塩基酸無水物(d)とを反応させた反応性ポリカルボン酸化合物(A)、
【0007】
【0008】
(式中、nは平均値を示し、0~20の値を示す。)
【0009】
【0010】
(式(2)中R1は、水素原子又は炭素数1~10のアルキル基を表わす。)
【0011】
[2]前項[1]に記載の反応性ポリカルボン酸化合物(A)を含む活性エネルギー線硬化型樹脂組成物、
[3]反応性ポリカルボン酸化合物(A)以外の反応性化合物(B)を含む前項[2]に記載の活性エネルギー線硬化型樹脂組成物、
[4]光重合開始剤を含む前項[2]又は[3]に記載の活性エネルギー線硬化型樹脂組成物、
[5]熱硬化触媒を含む前項[2]~[4]のいずれか1項に記載の活性エネルギー線硬化型樹脂組成物、
[6]成形用材料である前項[2]~[5]のいずれか1項に記載の活性エネルギー線硬化型樹脂組成物、
[7]皮膜形成用材料である前項[2]~[5]のいずれか1項に記載の活性エネルギー線硬化型樹脂組成物、
[8]レジスト材料組成物である前項[2]~[5]のいずれか一項に記載の活性エネルギー線硬化型樹脂組成物、
[9]前項[2]~[8]のいずれか一項に記載の活性エネルギー線硬化型樹脂組成物の硬化物、
[10]前項[9]に記載の活性エネルギー線硬化型樹脂組成物の硬化物でオーバーコートされた物品、
に関する。
【発明の効果】
【0012】
本発明の反応性ポリカルボン酸化合物(A)を含む活性エネルギー線硬化型樹脂組成物は強靭な硬化物を得るだけではなく、溶剤を乾燥させただけの状態においても優れた樹脂物性を有している。又、本発明の活性エネルギー線硬化型樹脂組成物を紫外線等の活性エネルギー線等により硬化して得られる硬化物は、耐熱性、耐熱分解性、微細にアルカリ現像可能でビルドアップ層としても適用可能なレジスト材料として好適である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明について詳細に説明する。
本発明の反応性ポリカルボン酸化合物(A)は、下記式(1)で表される構造を有するエポキシ樹脂(a)と、一分子中に重合可能なエチレン性不飽和基とカルボキシ基を併せ持つカルボン酸化合物(b)とを反応させ、反応性エポキシカルボキシレート化合物(c)を得る。次いで下記式(2)又は式(3)で表される多塩基酸無水物(d)を反応させることによって得ることができる。
【0014】
【0015】
(式中、nは平均値を示し、0~20の値を示す。)
【0016】
【0017】
(式(2)中R1は、水素原子又は炭素数1~10のアルキル基を表わす。)
【0018】
本発明において用いる前記式(1)で表されるエポキシ樹脂(a)(以下、単に「エポキシ樹脂(a)」とも表す。)は、種々の商品名で、たとえば、TECMORE,VG-3101(三井石油化学(株)、商品名)、NC-6000(日本化薬(株)製)等として、一般に入手可能である。
【0019】
本発明において、一分子中に重合可能なエチレン性不飽和基とカルボキシル基を併せ持つカルボン酸化合物(b)(以下、単に「カルボン酸化合物(b)」とも表す。)は、活性エネルギー線への反応性を付与させるために反応せしめるものである。エチレン性不飽和基とカルボキシル基はそれぞれ分子内に一個以上あるものであれば制限はない。
【0020】
一分子中に重合可能なエチレン性不飽和基とカルボキシル基を併せ持つカルボン酸化合物(b)としては、例えば、(メタ)アクリル酸類やクロトン酸、α-シアノ桂皮酸、桂皮酸、或いは飽和または不飽和二塩基酸と不飽和基含有モノグリシジル化合物との反応物等が挙げられる。上記において(メタ)アクリル酸類としては、例えば(メタ)アクリル酸、β-スチリルアクリル酸、β-フルフリルアクリル酸、(メタ)アクリル酸二量体、飽和または不飽和二塩基酸無水物と1分子中に1個の水酸基を有する(メタ)アクリレート誘導体と当モル反応物である半エステル類、飽和または不飽和二塩基酸とモノグリシジル(メタ)アクリレート誘導体類との当モル反応物である半エステル類等の一分子中にカルボキシル基をひとつ含むモノカルボン酸化合物、さらに一分子中に複数の水酸基を有する(メタ)アクリレート誘導体と当モル反応物である半エステル類、飽和または不飽和二塩基酸と複数のエポキシ基を有するグリシジル(メタ)アクリレート誘導体類との当モル反応物である半エステル類等の一分子中にカルボキシル基を複数有するポリカルボン酸化合物等が挙げられる。
【0021】
これらのうち、エポキシ樹脂(a)とカルボン酸化合物(b)の反応の安定性を考慮すると、カルボン酸化合物(b)としてはモノカルボン酸であることが好ましく、モノカルボン酸とポリカルボン酸を併用する場合でも、モノカルボン酸のモル量/ポリカルボン酸のモル量で表される値が15以上であることが好ましい。
最も好ましくは、活性エネルギー線硬化型樹脂組成物としたときの感度の点で(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸とε-カプロラクトンとの反応生成物または桂皮酸が挙げられる。
【0022】
カルボキシレート化合物に反応性を付与させ、反応性エポキシカルボキシレート化合物(c)を得るための、カルボキシレート化工程について説明する。
【0023】
この反応におけるエポキシ樹脂(a)とカルボン酸化合物(b)の仕込み割合としては、用途に応じて適宜変更されるべきものである。即ち、全てのエポキシ基をカルボキシレート化した場合は、未反応のエポキシ基が残存しないために、反応性エポキシカルボキシレート化合物(c)としての保存安定性は高い。この場合は、導入した二重結合による反応性のみを利用することになる。
【0024】
一方、カルボン酸化合物(b)の仕込み量を減量し未反応の残存エポキシ基を残すことで、導入した不飽和結合による反応性と、残存するエポキシ基による反応、例えば光カチオン触媒による重合反応や熱重合反応を複合的に利用することも可能である。しかし、この場合は反応性エポキシカルボキシレート化合物(c)の保存、及び製造条件の検討には注意を払うべきである。
【0025】
エポキシ基を残存させない反応性エポキシカルボキシレート化合物(c)を製造する場合、カルボン酸化合物(b)が、エポキシ樹脂(a)1当量に対し90~120当量%であることが好ましい。この範囲であれば比較的安定な条件での製造が可能である。これよりもカルボン酸化合物の仕込み量が多い場合には、過剰のカルボン酸化合物(b)が残存してしまうために好ましくない。
【0026】
また、エポキシ基を残留させる場合には、カルボン酸化合物(b)が、エポキシ樹脂(a)1当量に対し20~90当量%であることが好ましい。これの範囲を逸脱する場合には、複合硬化の効果が薄くなる。もちろんこの場合は、反応中のゲル化や、反応性エポキシカルボキシレート化合物(c)の経時安定性に対して十分な注意が必要である。
【0027】
カルボキシレート化反応は、無溶剤で反応させる、若しくは溶剤で希釈して反応させることも出来る。ここで用いることが出来る溶剤としては、カルボキシレート化反応に対してイナート溶剤であれば特に限定はない。
【0028】
好ましい溶剤の使用量は、得られる樹脂の粘度や使途により適宜調整されるべきものであるが、好ましくは固形分含有率90~30質量%、より好ましくは80~50質量%になるように使用される。
【0029】
具体的に例示すれば、例えばトルエン、キシレン、エチルベンゼン、テトラメチルベンゼン等の芳香族系炭化水素溶剤、ヘキサン、オクタン、デカン等の脂肪族系炭化水素溶剤、及びそれらの混合物である石油エーテル、ホワイトガソリン、ソルベントナフサ等、エステル系溶剤、エーテル系溶剤、ケトン系溶剤等が挙げられる。
【0030】
エステル系溶剤としては、酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸ブチル等のアルキルアセテート類、γ-ブチロラクトン等の環状エステル類、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノメチルエーテルモノアセテート、ジエチレングリコールモノエチルエーテルモノアセテート、トリエチレングリコールモノエチルエーテルモノアセテート、ジエチレングリコールモノブチルエーテルモノアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ブチレングリコールモノメチルエーテルアセテート等のモノ、若しくはポリアルキレングリコールモノアルキルエーテルモノアセテート類、グルタル酸ジアルキル、コハク酸ジアルキル、アジピン酸ジアルキル等のポリカルボン酸アルキルエステル類等が挙げられる。
【0031】
エーテル系溶剤としては、ジエチルエーテル、エチルブチルエーテル等のアルキルエーテル類、エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、ジプロピレングリコールジメチルエーテル、ジプロピレングリコールジエチルエーテル、トリエチレングリコールジメチルエーテル、トリエチレングリコールジエチルエーテル等のグリコールエーテル類、テトラヒドロフラン等の環状エーテル類等が挙げられる。
【0032】
ケトン系溶剤としては、アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、イソホロン等が挙げられる。
【0033】
このほかにも、後述する反応性ポリカルボン酸化合物(A)以外の反応性化合物(B)(以下、単に「反応性化合物(B)」とも表す。)等の単独または混合有機溶剤中で行うことができる。この場合、硬化型樹脂組成物として使用した場合には、直接に組成物として利用することが出来るので好ましい。
【0034】
反応時には、反応を促進させるために触媒を使用することが好ましく、該触媒の使用量は、反応物、即ちエポキシ樹脂(a)、カルボン酸化合物(b)、及び場合により溶剤その他を加えた反応物の総量100質量部に対して0.1~10質量部である。その際の反応温度は60~150℃であり、また反応時間は、好ましくは5~60時間である。使用しうる触媒の具体例としては、例えばトリエチルアミン、ベンジルジメチルアミン、トリエチルアンモニウムクロライド、ベンジルトリメチルアンモニウムブロマイド、ベンジルトリメチルアンモニウムアイオダイド、トリフェニルホスフィン、トリフェニルスチビン、メチルトリフェニルスチビン、オクタン酸クロム、オクタン酸ジルコニウム等既知一般の塩基性触媒等が挙げられる。
【0035】
また、熱重合禁止剤を用いることもできる。熱重合禁止剤として、ハイドロキノンモノメチルエーテル、2-メチルハイドロキノン、ハイドロキノン、ジフェニルピクリルヒドラジン、ジフェニルアミン、3,5-ジ-tert-ブチル-4ヒドロキシトルエン等を使用するのが好ましい。
【0036】
本反応は、適宜サンプリングしながら、サンプルの酸価が5mgKOH/g以下、好ましくは3mgKOH/g以下となった時点を終点とする。
【0037】
こうして得られた反応性エポキシカルボキシレート化合物(c)の好ましい分子量範囲としては、GPCにおけるポリスチレン換算重量平均分子量が500から50,000の範囲であり、より好ましくは1,000から30,000であり、特に好ましくは1000~10000である。
【0038】
この分子量よりも小さい場合には硬化物の強靭性が充分に発揮されず、またこれよりも大きすぎる場合には、粘度が高くなり塗工等が困難となる。
【0039】
次に、酸付加工程について詳述する。酸付加工程は、前工程において得られた反応性エポキシカルボキシレート化合物(c)に必要に応じてカルボキシル基を導入し、反応性ポリカルボン酸化合物(A)を得ることを目的として行われる。即ち、カルボキシレート化反応により生じた水酸基に前記式(2)又は(3)で表される多塩基酸無水物(d)(以下、単に「多塩基酸無水物(d)」とも表す。)を付加反応させることで、エステル結合を介してカルボキシル基を導入する。
【0040】
前記式(2)中の炭素数1~10のアルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル、デシル基が挙げられる。好ましくは水素原子、メチル基である。
【0041】
前記多塩基酸無水物(d)として、下記式(4)で表される化合物が好ましい。
【化5】
【0042】
前記多塩基酸無水物(d)を付加させる反応は、前記カルボキシレート化反応液に多塩基酸無水物(d)を加えることにより行うことができる。添加量は用途に応じて適宜変更されるべきものである。
【0043】
前記多塩基酸無水物(d)の添加量は例えば、本発明の反応性ポリカルボン酸化合物(A)をアルカリ水溶液現像型のレジスト材料として用いようとする場合は、多塩基酸無水物(d)を最終的に得られる反応性ポリカルボン酸化合物(A)の固形分酸価(JISK5601-2-1:1999に準拠)が好ましくは40~120mg・KOH/gであり、より好ましくは60~110mg・KOH/g、となる計算値を仕込むことが好ましい。このときの固形分酸価がこの範囲である場合、本発明の活性エネルギー線硬化型樹脂組成物のアルカリ水溶液現像性が良好な現像性を示す。即ち、良好なパターニング性と過現像に対する管理幅も広く、また過剰の酸無水物が残留することもない。
【0044】
反応時には、反応を促進させるために触媒を使用することが好ましく、該触媒の使用量は、反応物、即ちエポキシ化合物(a)、カルボン酸化合物(b)から得られた反応性エポキシカルボキシレート化合物(c)、及び多塩基酸無水物(d)、場合により溶剤その他を加えた反応物の総量に対して0.1~10質量部である。その際の反応温度は60~150℃であり、また反応時間は、好ましくは5~60時間である。使用しうる触媒の具体例としては、例えばトリエチルアミン、ベンジルジメチルアミン、トリエチルアンモニウムクロライド、ベンジルトリメチルアンモニウムブロマイド、ベンジルトリメチルアンモニウムアイオダイド、トリフェニルホスフィン、トリフェニルスチビン、メチルトリフェニルスチビン、オクタン酸クロム、オクタン酸ジルコニウム等が挙げられる。
【0045】
本酸付加反応は、無溶剤で反応するか、若しくは溶剤で希釈して反応させることも出来る。ここで用いることが出来る溶剤としては、酸付加反応に対してイナート溶剤であれば特に限定はない。また、前工程であるカルボキシレート化反応で溶剤を用いて製造した場合には、その両反応にイナートであることを条件に、溶剤を除くことなく直接次工程である酸付加反応に供することもできる。用い得る溶剤はカルボキシレート化反応で用い得るものと同一のものでよい。
【0046】
好ましい溶剤の使用量は、得られる樹脂の粘度や使途により適宜調整されるべきものであるが、好ましくは固形分含有率90~30質量%、より好ましくは80~50質量%になるように用いられる。
【0047】
このほかにも、前記反応性化合物(B)等の単独または混合有機溶剤中で行うことができる。この場合、硬化型樹脂組成物として使用した場合には、直接に組成物として利用することが出来るので好ましい。
【0048】
また、熱重合禁止剤等は、前記カルボキシレート化反応における例示と同様のものを使用することが好ましい。
【0049】
本反応は、適宜サンプリングしながら、反応物の酸価が、設定した酸価のプラスマイナス10%の範囲になった点をもって終点とする。
【0050】
こうして得られた反応性ポリカルボン酸化合物(A)の好ましい分子量範囲としては、GPCにおけるポリスチレン換算重量平均分子量が500から50,000の範囲であり、より好ましくは1,000から30,000であり、特に好ましくは1000~10000である。
【0051】
この分子量よりも小さい場合には硬化物の強靭性が充分に発揮されず、またこれよりも大きすぎる場合には、粘度が高くなり塗工等が困難となる。
【0052】
本発明において使用しうる反応性化合物(B)の具体例としては、ラジカル反応型のアクリレート類、カチオン反応型のその他エポキシ化合物類、その双方に感応するビニル化合物類等のいわゆる反応性オリゴマー類が挙げられる。
【0053】
使用しうるアクリレート類としては、単官能(メタ)アクリレート類、多官能(メタ)アクリレート類、その他エポキシアクリレート、ポリエステルアクリレート、ウレタンアクリレート等が挙げられる。
【0054】
単官能(メタ)アクリレート類としては、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコール(メタ)アクリレートモノメチルエーテル、フェニルエチル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0055】
多官能(メタ)アクリレート類としては、ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレンジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリス(メタ)アクリロイルオキシエチルイソシアヌレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、アジピン酸エポキシジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールエチレンオキサイドジ(メタ)アクリレート、水素化ビスフェノールエチレンオキサイドジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールジ(メタ)アクリレート、ヒドロキシビバリン酸ネオペングリコールのε-カプロラクトン付加物のジ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールとε-カプロラクトンの反応物のポリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールポリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリエチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、及びそのエチレンオキサイド付加物、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、及びそのエチレンオキサイド付加物、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、及びそのエチレンオキサイド付加物ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、及びそのエチレンオキサイド付加物等が挙げられる。
【0056】
使用できるビニル化合物類としてはビニルエーテル類、スチレン類、その他ビニル化合物が挙げられる。ビニルエーテル類としては、エチルビニルエーテル、プロピルビニルエーテル、ヒドロキシエチルビニルエーテル、エチレングリコールジビニルエーテル等が挙げられる。スチレン類としては、スチレン、メチルスチレン、エチルスチレン等が挙げられる。その他ビニル化合物としてはトリアリルイソシアヌレート、トリメタアリルイソシアヌレート等が挙げられる。
【0057】
さらに、いわゆる反応性オリゴマー類としては、活性エネルギー線に感応可能な官能基とウレタン結合を同一分子内に併せ持つウレタンアクリレート、同様に活性エネルギー線に感応可能な官能基とエステル結合を同一分子内に併せ持つポリエステルアクリレート、その他エポキシ樹脂から誘導され、活性エネルギー線に感応可能な官能基を同一分子内に併せ持つエポキシアクリレート、これらの結合が複合的に用いられている反応性オリゴマー等が挙げられる。
【0058】
また、カチオン反応型単量体としては、一般的にエポキシ基を有する化合物であれば特に限定はない。例えば、グリシジル(メタ)アクリレート、メチルグリシジルエーテル、エチルグリシジルエーテル、ブチルグリシジルエーテル、ビスフェノールAジグリシジルエーテル、3,4-エポキシシクロヘキシルメチル-3,4,-エポキシシクロヘキサンカルボキシレート(ユニオン・カーバイド社製「サイラキュアUVR-6110」等)、3,4-エポキシシクロヘキシルエチル-3,4-エポキシシクロヘキサンカルボキシレート、ビニルシクロヘキセンジオキシド(ユニオン・カーバイド社製「ELR-4206」等)、リモネンジオキシド(ダイセル化学工業社製「セロキサイド3000」等)、アリルシクロヘキセンジオキシド、3,4-エポキシ-4-メチルシクロヘキシル-2-プロピレンオキシド、2-(3,4-エポキシシクロヘキシル-5,5-スピロ-3,4-エポキシ)シクロヘキサン-m-ジオキサン、ビス(3,4-エポキシシクロヘキシル)アジペート(ユニオン・カーバイド社製「サイラキュアUVR-6128」等)、ビス(3,4-エポキシシクロヘキシルメチル)アジペート、ビス(3,4-エポキシシクロヘキシル)エーテル、ビス(3,4-エポキシシクロヘキシルメチル)エーテル、ビス(3,4-エポキシシクロヘキシル)ジエチルシロキサン等が挙げられる。
【0059】
これらのうち、反応性化合物(B)としては、ラジカル硬化型であるアクリレート類が最も好ましい。カチオン型の場合、カルボン酸とエポキシ基が反応してしまうため2液混合型にする必要が生じる。
【0060】
本発明の反応性ポリカルボン酸化合物(A)と、そのほかの反応性化合物(B)とを混合せしめて本発明の活性エネルギー線硬化型樹脂組成物を得ることができる。このとき、用途に応じて適宜その他の成分を加えてもよい。
【0061】
本発明の活性エネルギー線硬化型樹脂組成物は、組成物中に反応性ポリカルボン酸化合物(A)を97~5質量部、好ましくは87~10質量部、その他反応性化合物(B)3~95質量部、さらに好ましくは3~90質量部を含む。必要に応じてその他の成分を0~80質量部含んでいてよい。
【0062】
この他、本発明の活性エネルギー線硬化型樹脂組成物を各種用途に適合させる目的で、組成物中に70重量部を上限にその他の成分を加えることもできる。その他の成分としては光重合開始剤、その他の添加剤、着色材料、また塗工適性付与等を目的に粘度調整のため添加される揮発性溶剤等が挙げられる。下記に使用しうるその他の成分を例示する。
【0063】
本発明の活性エネルギー線硬化型樹脂組成物は、さらに光重合開始剤を含むことができる。光重合開始剤としてはラジカル型光重合開始剤、カチオン系光重合開始剤が好ましい。
ラジカル型光重合開始剤としては、例えばベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインプロピルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル等のベンゾイン類;アセトフェノン、2,2-ジエトキシ-2-フェニルアセトフェノン、1,1-ジクロロアセトフェノン、2-ヒドロキシ-2-メチル-フェニルプロパン-1-オン、ジエトキシアセトフェノン、1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2-メチル-1-[4-(メチルチオ)フェニル]-2-モルホリノ-プロパン-1-オン等のアセトフェノン類;2-エチルアントラキノン、2-t-ブチルアントラキノン、2-クロロアントラキノン、2-アミルアントラキノン等のアントラキノン類;2,4-ジエチルチオキサントン、2-イソプロピルチオキサントン、2-クロロチオキサントン等のチオキサントン類;アセトフエノンジメチルケタール、ベンジルジメチルケタール等のケタール類;ベンゾフェノン、4-ベンゾイル-4’-メチルジフェニルサルファイド、4,4’-ビスメチルアミノベンゾフェノン等のベンゾフェノン類;2,4,6-トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイド、ビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)-フェニルホスフィンオキサイド等のホスフィンオキサイド類等の公知一般のラジカル型光重合開始剤が挙げられる。
【0064】
また、カチオン系光重合開始剤としては、ルイス酸のジアゾニウム塩、ルイス酸のヨードニウム塩、ルイス酸のスルホニウム塩、ルイス酸のホスホニウム塩、その他のハロゲン化物、トリアジン系開始剤、ボレート系開始剤、及びその他の光酸発生剤等が挙げられる。
【0065】
ルイス酸のジアゾニウム塩としては、p-メトキシフェニルジアゾニウムフロロホスホネート、N,N-ジエチルアミノフェニルジアゾニウムヘキサフロロホスホネート(三新化学工業社製サンエイドSI-60L/SI-80L/SI-100L等)等が挙げられ、ルイス酸のヨードニウム塩としては、ジフェニルヨードニウムヘキサフロロホスホネート、ジフェニルヨードニウムヘキサフロロアンチモネート等が挙げられ、ルイス酸のスルホニウム塩としては、トリフェニルスルホニウムヘキサフロロホスホネート(UnionCarbide社製CyracureUVI-6990等)、トリフェニルスルホニウムヘキサフロロアンチモネート(UnionCarbide社製CyracureUVI-6974等)等が挙げられ、ルイス酸のホスホニウム塩としては、トリフェニルホスホニウムヘキサフロロアンチモネート等が挙げられる。
【0066】
その他のハロゲン化物としては、2,2,2-トリクロロ-[1-4’-(ジメチルエチル)フェニル]エタノン(AKZO社製TrigonalPI等)、2,2-ジクロロ-1-4-(フェノキシフェニル)エタノン(Sandoz社製Sandray1000等)、α,α,α-トリブロモメチルフェニルスルホン(製鉄化学社製BMPS等)等が挙げられる。トリアジン系開始剤としては、2,4,6-トリス(トリクロロメチル)-トリアジン、2,4-トリクロロメチル-(4’-メトキシフェニル)-6-トリアジン(Panchim社製TriazineA等)、2,4-トリクロロメチル-(4’-メトキシスチリル)-6-トリアジン(Panchim社製TriazinePMS等)、2,4-トリクロロメチル-(ピプロニル)-6-トリアジン(Panchim社製TriazinePP等)、2,4-トリクロロメチル-(4’-メトキシナフチル)-6-トリアジン(Panchim社製TriazineB等)、2[2’(5-メチルフリル)エチリデン]-4,6-ビス(トリクロロメチル)-s-トリアジン(三和ケミカル社製等)、2(2’-フリルエチリデン)-4,6-ビス(トリクロロメチル)-s-トリアジン(三和ケミカル社製)等が挙げられる。
【0067】
ボレート系光重合開始剤としては、日本感光色素製NK-3876及びNK-3881等が挙げられ、その他の光酸発生剤等としては、9-フェニルアクリジン、2,2’-ビス(o-クロロフェニル)-4,4’,5,5’-テトラフェニル-1,2-ビイミダゾール(黒金化成社製ビイミダゾール等)、2,2-アゾビス(2-アミノ-プロパン)ジヒドロクロリド(和光純薬社製V50等)、2,2-アゾビス[2-(イミダゾリン-2イル)プロパン]ジヒドロクロリド(和光純薬社製VA044等)、[イータ-5-2-4-(シクロペンタデシル)(1,2,3,4,5,6,イータ)-(メチルエチル)-ベンゼン]鉄(II)ヘキサフロロホスホネート(CibaGeigy社製Irgacure261等)、ビス(y5-シクロペンタジエニル)ビス[2,6-ジフルオロ-3-(1H-ピリ-1-イル)フェニル]チタニウム(CibaGeigy社製CGI-784等)等が挙げられる。
【0068】
この他、アゾビスイソブチロニトリル等のアゾ系開始剤、過酸化ベンゾイル等の熱に感応する過酸化物系ラジカル型開始剤等を併せて用いても良い。また、ラジカル系とカチオン系の双方の光重合開始剤を併せて用いても良い。光重合開始剤は、1種類を単独で用いることもできるし、2種類以上を併せて用いることもできる。
【0069】
これらのうち、本発明の反応性ポリカルボン酸化合物(A)の特性を考慮すれば、ラジカル型光重合開始剤が特に好ましい。
【0070】
さらに、本発明の活性エネルギー線硬化型樹脂組成物は、着色顔料を含むことができる。着色顔料としては例えば、着色を目的としないもの、いわゆる体質顔料を用いることも出来る。例えば、タルク、硫酸バリウム、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、チタン酸バリウム、水酸化アルミニウム、シリカ、クレー等が挙げられる。
【0071】
さらに、本発明の活性エネルギー線硬化型樹脂組成物は、必要に応じ、その他の添加剤を含むことができる。その他の添加剤としては、例えばメラミン等の熱硬化触媒、アエロジル等のチキソトロピー付与剤、シリコーン系、フッ素系のレベリング剤や消泡剤、ハイドロキノン、ハイドロキノンモノメチルエーテル等の重合禁止剤、安定剤、酸化防止剤等を使用することが出来る。
【0072】
この他に活性エネルギー線に反応性を示さない樹脂類(いわゆるイナートポリマー)として、たとえばその他のエポキシ樹脂、フェノール樹脂、ウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、ケトンホルムアルデヒド樹脂、クレゾール樹脂、キシレン樹脂、ジアリルフタレート樹脂、スチレン樹脂、グアナミン樹脂、天然及び合成ゴム、アクリル樹脂、ポリオレフィン樹脂、及びこれらの変性物を用いることもできる。これらは樹脂組成物中に40質量部までの範囲において用いることが好ましい。
【0073】
特に、ソルダーレジスト用途に反応性ポリカルボン酸化合物(A)を用いようとする場合には、活性エネルギー線に反応性を示さない樹脂類として公知一般のエポキシ樹脂を用いることが好ましい。これは活性エネルギー線によって反応、硬化させた後も反応性ポリカルボン酸化合物(A)に由来するカルボキシル基が残留してしまい、結果としてその硬化物は耐水性や加水分解性に劣ってしまう。したがって、エポキシ樹脂を用いることで残留するカルボキシル基をさらにカルボキシレート化し、さらに強固な架橋構造を形成させる。該公知一般のエポキシ樹脂は、前記カチオン反応型単量体を用いることができる。
【0074】
また使用目的に応じて、粘度を調整する目的で、樹脂組成物中に50質量部、さらに好ましくは35質量部までの範囲において揮発性溶剤を添加することも出来る。
【0075】
本発明の活性エネルギー線硬化型樹脂組成物は活性エネルギー線によって容易に硬化する。ここで活性エネルギー線の具体例としては、紫外線、可視光線、赤外線、X線、ガンマー線、レーザー光線等の電磁波、アルファー線、ベータ線、電子線等の粒子線等が挙げられる。本発明の好適な用途を考慮すれば、これらのうち、紫外線、レーザー光線、可視光線、または電子線が好ましい。
【0076】
本発明において成形用材料とは、未硬化の組成物を型にいれ、もしくは型を押し付け、物体を成形したのち、活性エネルギー線により硬化反応を起こさせ成形させるもの、もしくは未硬化の組成物にレーザー等の焦点光等を照射し、硬化反応を起こさせ成形させる用途に用いられる材料を指す。
【0077】
具体的な用途としては、平面状に成形したシート、素子を保護するための封止材、未硬化の組成物に微細加工された「型」を押し当て微細な成形を行う、所謂ナノインプリント材料、さらには特に熱的な要求の厳しい発光ダイオード、光電変換素子等の周辺封止材料等が好適な用途として挙げられる。
【0078】
本発明において皮膜形成用材料とは、基材表面を被覆することを目的として利用されるものである。具体的な用途としては、グラビアインキ、フレキソインキ、シルクスクリーンインキ、オフセットインキ等のインキ材料、ハードコート、トップコート、オーバープリントニス、クリヤコート等の塗工材料、ラミネート用、光ディスク用他各種接着剤、粘着剤等の接着材料、ソルダーレジスト、エッチングレジスト、マイクロマシン用レジスト等のレジスト材料等がこれに該当する。さらには、皮膜形成用材料を一時的に剥離性基材に塗工しフィルム化した後、本来目的とする基材に貼合し皮膜を形成させる、いわゆるドライフィルムも皮膜形成用材料に該当する。
【0079】
本発明には前記の感光性樹脂組成物に活性エネルギー線を照射して得られる硬化物もふくまれ、また、該硬化物の層を有する多層材料も含まれる。
【0080】
これらのうち、反応性ポリカルボン酸化合物(A)のカルボキシル基の導入によって、基材への密着性が高まるため、プラスチック基材、若しくは金属基材を被覆するための用途として用いることが好ましい。
【0081】
さらには、未反応の反応性ポリカルボン酸化合物(A)が、アルカリ水溶液に可溶性となる特徴を生かして、アルカリ水現像型レジスト材料組成物として用いることも好ましい。
【0082】
本発明においてレジスト材料組成物とは、基材上に該組成物の皮膜層を形成させ、その後、紫外線等の活性エネルギー線を部分的に照射し、照射部、未照射部の物性的な差異を利用して描画しようとする活性エネルギー線感応型の組成物を指す。具体的には、照射部、または未照射部を何らかの方法、例えば溶剤等やアルカリ溶液等で溶解させる等して除去し、描画を行うことを目的として用いられる組成物である。
【0083】
本発明のレジスト材料組成物である活性エネルギー線硬化型樹脂組成物は、パターニングが可能な種々の材料に適応でき、例えば特に、ソルダーレジスト材料、ビルドアップ工法用の層間絶縁材に有用であり、さらには光導波路としてプリント配線板、光電子基板や光基板のような電気・電子・光基材等にも利用される。
【0084】
特に好適な用途としては、耐熱性や現像性が良好な特性を生かして、感光性フィルム、支持体付き感光性フィルム、プリプレグ等の絶縁樹脂シート、回路基板(積層板用途、多層プリント配線板用途等)、ソルダーレジスト、アンダ-フィル材、ダイボンディング材、半導体封止材、穴埋め樹脂、部品埋め込み樹脂等、樹脂組成物が必要とされる用途の広範囲に使用できる。なかでも、多層プリント配線板の絶縁層用樹脂組成物(感光性樹脂組成物の硬化物を絶縁層とした多層プリント配線板)、層間絶縁層用樹脂組成物(感光性樹脂組成物の硬化物を層間絶縁層とした多層プリント配線板)、メッキ形成用樹脂組成物(感光性樹脂組成物の硬化物上にメッキが形成された多層プリント配線板)用として使用することが好ましい。
更に、高い顔料濃度においても良好な現像性を発揮することが出来、カラーレジスト、カラーフィルタ用のレジスト材料、特にブラックマトリックス材料等にも好適に用いることが出来る。
【0085】
本発明の活性エネルギー線硬化型樹脂組成物を使用してのパターニングは、例えば次のようにして行うことができる。基板上にスクリーン印刷法、スプレー法、ロールコート法、静電塗装法、カーテンコート法、スピンコート法などの方法で0.1~200μmの膜厚で本発明の組成物を塗布し、塗膜を通常50~110℃、好ましくは60~100℃の温度で乾燥させることにより、塗膜が形成できる。その後、露光パターンを形成したフォトマスクを通じて塗膜に直接または間接に紫外線などの高エネルギー線を通常10~2000mJ/cm2程度の強さで照射し、後述する現像液を用いて、例えばスプレー、振動浸漬、パドル、ブラッシング等により所望のパターンを得ることができる。
【0086】
上記現像に使用されるアルカリ水溶液としては水酸化カリウム、水酸化ナトリウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム、リン酸ナトリウム、リン酸カリウム等の無機アルカリ水溶液やテトラメチルアンモニウムハイドロオキサイド、テトラエチルアンモニウムハイドロオキサイド、テトラブチルアンモニウムハイドロオキサイド、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン等の有機アルカリ水溶液が使用できる。この水溶液には、さらに有機溶剤、緩衝剤、錯化剤、染料または顔料を含ませることができる。
【0087】
この他、活性エネルギー線による硬化反応前の機械的強度が求められるドライフィルム用途として特に好適に用いられる。即ち、本発明で用いられるエポキシ樹脂(a)の水酸基、エポキシ基のバランスが特定の範囲にあるがゆえに、本発明の反応性カルボキシレート化合物が比較的高い分子量であるにも関わらず、良好な現像性を発揮させることが出来る。
【0088】
皮膜形成させる方法としては特に制限はないが、グラビア等の凹版印刷方式、フレキソ等の凸版印刷方式、シルクスクリーン等の孔版印刷方式、オフセット等の平版印刷方式、ロールコーター、ナイフコーター、ダイコーター、カーテンコーター、スピンコーター等の各種塗工方式が任意に採用できる。
【0089】
本発明の活性エネルギー線硬化型樹脂組成物の硬化物とは、本発明の活性エネルギー線硬化型樹脂組成物に活性エネルギー線を照射し硬化させたものを指す。
【0090】
本発明の活性エネルギー線硬化型樹脂組成物でオーバーコートされた物品とは、本発明において示される活性エネルギー線硬化型樹脂組成物を基材上に皮膜形成・硬化させ得られる、少なくとも二層以上の層をもってなる材料を示す。
【実施例】
【0091】
以下、本発明を実施例により更に詳細に説明するが、本発明はこれら実施例によって限定されるものではない。また、実施例中、特に断りがない限り、%は質量%を示す。
【0092】
軟化点、エポキシ当量、酸価は以下の条件で測定した。
1)エポキシ当量:JISK7236:2001に準じた方法で測定した。
2)軟化点:JISK7234:1986に準じた方法で測定した。
3)酸価:JISK0070:1992に準じた方法で測定した
4)GPCの測定条件は以下の通りである。
機種:TOSOH HLC-8220GPC
カラム:Super HZM-N
溶離液:THF(テトラヒドロフラン);0.35ml/分、40℃
検出器:RI(示差屈折計)
分子量標準:ポリスチレン
【0093】
(合成例1):反応性エポキシカルボキシレート化合物(c)の合成
エポキシ樹脂(a)としてトリグリシジルエーテル構造を有するエポキシ樹脂(三井石油化学(株)製、VG-3101、エポキシ当量210)を353g、カルボン酸化合物(b)としてアクリル酸(略称AA、Mw=72)を122g、触媒としてトリフェニルホスフィン3g、溶剤としてプロピレングリコールモノメチルエーテルモノアセテートを固形分含有率80%となるように加え、100℃24時間反応させ、反応性エポキシカルボキシレート化合物(c1)溶液を得た。
【0094】
(合成例2)
エポキシ樹脂(a)としてトリグリシジルエーテル構造を有するエポキシ樹脂(三井石油化学(株)製、VG-3101、エポキシ当量210)を353g、カルボン酸化合物(b)としてメタクリル酸(略称MAA、Mw=86)を146g、触媒としてトリフェニルホスフィン3g、溶剤としてプロピレングリコールモノメチルエーテルモノアセテートを固形分含有率80%となるように加え、100℃24時間反応させ、反応性エポキシカルボキシレート化合物(c2)溶液を得た。
【0095】
(実施例1、比較例1):反応性ポリカルボン酸化合物(A)の調製
得られた反応性エポキシカルボキシレート化合物(c)溶液593gに、多塩基酸無水物(d)として表1に記載の化合物、量(g)、及び溶剤として固形分含有率65%となるようプロピレングリコールモノメチルエーテルモノアセテートを添加し、100℃に加熱した後、酸付加反応させ、反応性ポリカルボン酸化合物(A)溶液を得た。得られた反応性ポリカルボン酸化合物(A)の固形分酸価(AV:mgKOH/g)、重量平均分子量を表1中に記載した。固形分酸価(mg・KOH/g):測定は溶液として測定を行い固形分での値に換算した。
【0096】
【0097】
(実施例2、比較例2):レジスト材料組成物の調製
実施例1で得られた反応性ポリカルボン酸化合物(A)を54.44g、その他の反応性化合物(B)としてHX-220(商品名:日本化薬(株)製ジアクリレート単量体)3.54g、光重合開始剤としてイルガキュアー907(チバスペシャリチィーケミカルズ製)を4.72g及びカヤキュアーDETX-S(日本化薬(株)製)を0.47g、硬化剤成分としてGTR-1800(日本化薬製)を14.83g、熱硬化触媒としてメラミンを1.05g及び濃度調整溶媒としてメチルエチルケトンを20.95g加え、ビーズミルにて混練し、均一に分散させレジスト材料樹脂組成物を得た。
得られた当該組成物をロールコート法により、支持フィルムとなる銅箔のフィルムに均一に塗布し、温度70℃の熱風乾燥炉を通過させ、厚さ30μmの樹脂層を形成した。その後1%炭酸ナトリウム水溶液でスプレー現像を行い、完全に現像されきるまでの時間、いわゆるブレイクタイムをもって現像性の評価とした(単位:秒)。
【0098】
【0099】
上記の結果から、本発明の反応性ポリカルボン酸化合物(A)を用いたレジスト材料組成物は良好な現像性を有している。
【0100】
(実施例3及び比較例3):耐熱分解性の評価
実施例1で得られた反応性ポリカルボン酸化合物(A)を24.8g、光重合開始剤としてイルガキュアー184を0.5g、プロピレングリコールモノメチルエーテルモノアセテートを2.4g加え、ポリイミドフィルムに均一に塗布し、温度80℃の熱風乾燥炉を通過させ、厚さ20μmの樹脂層を形成した後、紫外線露光装置((株)オーク製作所、型式HMW-680GW)で露光し、硬化物を得た。作製した硬化物を幅5mmで切り出す。その後、TA instruments製粘弾性測定装置RSA-G2にセットし、空気雰囲気中、周波数10Hz、昇温速度2℃/min.でtanδを測定し、tanδの最大値における温度をTgとした。
また、作成したサンプル3mgを、毎分100mlの空気流中でMETTLER製TGA/DSC1を用いて重量が5%減少する温度を測定した。
【0101】
【0102】
上記の結果から、本発明の反応性ポリカルボン酸化合物(A)を用いた活性エネルギー線硬化型樹脂組成物は、比較用の樹脂組成物に比べて、耐熱性、耐熱分解性に優れていることがわかる。