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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-02-08
(45)【発行日】2022-02-17
(54)【発明の名称】電子ペン
(51)【国際特許分類】
   G06F 3/03 20060101AFI20220209BHJP
   G06F 3/046 20060101ALI20220209BHJP
   G06F 3/044 20060101ALI20220209BHJP
【FI】
G06F3/03 400E
G06F3/03 400F
G06F3/046 A
G06F3/044 Z
【請求項の数】 12
(21)【出願番号】P 2018009444
(22)【出願日】2018-01-24
(65)【公開番号】P2019128752
(43)【公開日】2019-08-01
【審査請求日】2021-01-20
(73)【特許権者】
【識別番号】000139403
【氏名又は名称】株式会社ワコム
(74)【代理人】
【識別番号】100091546
【弁理士】
【氏名又は名称】佐藤 正美
(74)【代理人】
【識別番号】100206379
【弁理士】
【氏名又は名称】丸山 正
(72)【発明者】
【氏名】ジャイルズ トーマス ミッシェル
【審査官】木村 慎太郎
(56)【参考文献】
【文献】登録実用新案第3005303(JP,U)
【文献】実開昭49-046826(JP,U)
【文献】特開2001-290581(JP,A)
【文献】国際公開第2017/149879(WO,A1)
【文献】登録実用新案第3182660(JP,U)
【文献】特表平08-511372(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06F 3/03
G06F 3/046
G06F 3/044
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
本体部筐体の軸心方向の開口から芯体の先端部が突出すると共に、前記芯体が前記本体部筐体に対して脱着可能に設けられている電子ペンであって、
前記本体部筐体と前記軸心方向に着脱自在に結合するキャップ部を備え、
前記本体部筐体は、前記軸心方向において前記開口側とは反対側には、1または複数本の芯体を保持可能な芯体保持部を備え、
前記キャップ部は、前記芯体を前記本体部筐体から引き抜いて離脱させるために用いられる芯抜き部を備え、
前記芯体保持部は、前記芯体を差し込むことが可能であり、かつ、差し込まれた前記芯体を弾性的に保持する弾性部材で構成されており、
前記芯抜き部は、前記芯体の径よりも大きな径の前記芯体が挿入される凹穴を備えると共に、前記凹穴の周縁部から前記凹穴の中心に向かって前記軸心方向に直交する方向に放射状に突出する複数個の突出部を備え、前記複数個の突出部の先端部が、前記凹穴内に挿入された前記芯体を弾性的に把持するように構成されており、
前記本体部筐体の軸心方向の開口から先端部が突出している前記芯体を引き抜いて離脱させるために前記芯抜き部を用いる際、前記芯体保持部に保持されている前記1または複数本の芯体が表出する
ことを特徴とする電子ペン。
【請求項2】
前記芯抜き部は、前記開口から突出している前記芯体の先端部と係合すると共に、前記芯体を前記本体部筐体から引き抜くことが可能なように前記係合の状態を維持可能な構成を有する
ことを特徴とする請求項1に記載の電子ペン。
【請求項3】
前記芯抜き部は、前記本体部筐体と結合された状態の前記キャップにおいて外部から視認可能の状態で設けられている
ことを特徴とする請求項1に記載の電子ペン。
【請求項4】
前記芯抜き部は、前記キャップ部の、前記本体部筐体との結合側とは反対側の、前記軸心方向に交差する方向の面に形成されている
ことを特徴とする請求項に記載の電子ペン。
【請求項5】
前記芯抜き部は、前記キャップ部の、前記軸心方向に沿う方向の面に形成されている
ことを特徴とする請求項に記載の電子ペン。
【請求項6】
前記キャップ部は、クリップ部を備え、前記芯抜き部は、前記クリップ部に設けられており、前記凹穴は貫通孔である
ことを特徴とする請求項に記載の電子ペン。
【請求項7】
前記キャップ部は、前記本体部筐体の、前記芯体の先端部が突出している前記一方の開口側とは反対側において、前記本体部筐体と前記軸心方向に結合する
ことを特徴とする請求項1に記載の電子ペン。
【請求項8】
前記キャップ部は、前記本体部筐体に対して螺合される
ことを特徴とする請求項1に記載の電子ペン。
【請求項9】
前記キャップ部は、前記芯体保持部を覆う状態で、前記本体部筐体と結合される
ことを特徴とする請求項1に記載の電子ペン。
【請求項10】
電子ペンの載置部を備えるタブレットと共に用いられる
ことを特徴とする請求項1に記載の電子ペン。
【請求項11】
前記芯体は樹脂で構成されており、前記タブレットと電磁誘導方式でインタラクションする
ことを特徴とする請求項10に記載の電子ペン。
【請求項12】
前記芯体は導体で構成されており、前記タブレットと静電結合方式でインタラクションする
ことを特徴とする請求項10に記載の電子ペン。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、位置検出装置と共に使用され、芯体が交換可能な電子ペンに関する。
【背景技術】
【0002】
電子ペンにおいては、タブレットとの間で、電磁誘導結合や静電結合によるインタラクションにより信号の授受を行うので、通常の文房具の筆記具のように芯が減ったり、インクが無くなったりすることはない。しかし、電子ペンにおいても芯体の先端(ペン先)をタブレットに接触させて使用することが多いので、芯体の先端はタブレットとの摩擦で、徐々に擦り減ってゆく。
【0003】
そのため、電子ペンにおいても、芯体を交換することができるようになっているものが多い(例えば特許文献1(特許第6137610号公報)、特許文献2(特許第5801020号公報)参照)。この種の電子ペンにおいては、一般に、筐体内に筆圧検出部が設けられ、棒状の芯体が、その筆圧検出部に対して着脱自在に嵌合されて取り付けられる。また、芯体は、筆圧検出部に嵌合されている圧力伝達部に着脱自在に嵌合されて取り付けられる場合もある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特許第6137610号公報
【文献】特許第5801020号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、電子ペンの芯体の交換のためには、芯体を電子ペンの筐体から引き抜く必要がある。しかし、この種の電子ペンにおいては、一般に、芯体は、筐体から脱落しないように、筐体内に配置されている筆圧検出部あるいは圧力伝達部に嵌合されており、また、筐体からは、芯体の先端部のみが僅かに突出している状態となっている。
【0006】
そのため、使用者が指で芯体の先端をつまんで芯体を筐体から引き抜くことは厄介な作業となる。そこで、電子ペンの芯体を交換する際に、芯体を電子ペンの筐体から引き抜くための芯抜き具を、電子ペンとは別体として付属するものもある。
【0007】
しかしながら、芯抜き具は、電子ペンとは別体のものであるため、紛失してしまったり、実際に芯体を交換しようとしてときに、手元にない場合もあったりして、不便となっている。
【0008】
更に、交換する予備の芯体も、芯抜き具同様に別体のものであるため、紛失し易いものであり、芯体を交換しようとしてときに、手元にない場合もあったりして、不便となっている。
【0009】
この発明は、以上の問題点を解決することができるようにした電子ペンを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記の課題を解決するために、
本体部筐体の軸心方向の開口から芯体の先端部が突出すると共に、前記芯体が前記本体部筐体に対して脱着可能に設けられている電子ペンであって、
前記本体部筐体と前記軸心方向に着脱自在に結合するキャップ部を備え、
前記本体部筐体は、前記軸心方向において前記開口側とは反対側には、1または複数本の芯体を保持可能な芯体保持部を備え、
前記キャップ部は、前記芯体を前記本体部筐体から引き抜いて離脱させるために用いられる芯抜き部を備え、
前記芯体保持部は、前記芯体を差し込むことが可能であり、かつ、差し込まれた前記芯体を弾性的に保持する弾性部材で構成されており、
前記芯抜き部は、前記芯体の径よりも大きな径の前記芯体が挿入される凹穴を備えると共に、前記凹穴の周縁部から前記凹穴の中心に向かって前記軸心方向に直交する方向に放射状に突出する複数個の突出部を備え、前記複数個の突出部の先端部が、前記凹穴内に挿入された前記芯体を弾性的に把持するように構成されており、
前記本体部筐体の軸心方向の開口から先端部が突出している前記芯体を引き抜いて離脱させるために前記芯抜き部を用いる際、前記芯体保持部に保持されている前記1または複数本の芯体が表出する
ことを特徴とする電子ペンを提供する。

【0011】
上述の構成の電子ペンによれば、電子ペンの本体筐体部と着脱自在に結合されるキャップ部が芯抜き部を備えているので、芯体の交換時期になったときには、キャップ部の芯抜き部を用いて芯体を筐体から引き抜くと同時に、交換用芯体も表出する為、非常に便利である。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】この発明による電子ペンの実施形態及び、当該電子ペンの実施形態と共に用いられるタブレットの一例を説明するための図である。
図2】この発明による電子ペンの実施形態の構成例を説明するための図である。
図3】この発明による電子ペンの実施形態を説明するための図である。
図4】この発明による電子ペンの実施形態の芯抜き部の例を説明するための図である。
図5】この発明による電子ペンの実施形態の芯体保持部の一例を示す図である。
図6】この発明による電子ペンの実施形態の本体部を説明するための図である。
図7】この発明による電子ペンの実施形態における芯体の交換作業を説明するための図である。
図8】この発明による電子ペンの実施形態の芯抜き部の変形例を説明するための図である。
図9】この発明による電子ペンの他の実施形態の芯抜き部の例を説明するための図である。
図10】この発明による電子ペンの他の実施形態を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、この発明による電子ペンの実施形態を、図を参照しながら説明する。
【0014】
図1は、この実施形態の電子ペン1が、位置検出装置としてのタブレット10に載置されている状態の外観を示す図であり、タブレット10の表面10a側から見た図である。
【0015】
この例のタブレット10は、図1に示すように外形が薄い板状の直方体形状を備える。このタブレット10の内部には、図示は省略するが、位置検出センサと電子回路が設けられている。図1のタブレット10の表面10aにおいて点線で囲むエリアは、位置検出センサによる電子ペン1による指示位置の座標を検出することが可能な座標検出エリア11である。
【0016】
タブレット10の表面10aにおいて、座標検出エリア11の外側の上方のエリアには、電子ペン載置部12が形成されている。この電子ペン載置部12は、この実施形態の電子ペン1の軸心方向の長さよりも細長で電子ペン1の太さよりも広い幅を有する形状とされ、電子ペン1を載置したときに、この電子ペン載置部12から転がり出ないような皿状の凹部12aで構成されている。
【0017】
タブレット10の電子ペン載置部12を構成する凹部12a内には、使用者により押下操作可能な操作部13が設けられている。操作部13は、この例では、複数の操作部分(操作ボタン)に分けられており、電源のオン・オフや種々の機能が割り当てられている。操作部13は、電子ペン1が凹部12aに載置されていないときに操作可能となる。
【0018】
また、この例では、タブレット10の上側側面には、例えば化学繊維や革などにより筒状に構成されている電子ペンホルダー14が取り付けられている。タブレット10を持ち運ぶ場合には、電子ペン1は、この電子ペンホルダー14に差し込んで保持することができる。
【0019】
電子ペン1は、図2(A)~図2(C)に示すように、本体部2とキャップ部3とで構成されている。本体部2は、例えば樹脂で構成される筒状の本体部筐体21の内部に、電子ペン構成部品22(図3参照)が収納されて構成されている。そして、筒状の本体部筐体21のペン先側はテーパ状に先細となるようにされていると共に、開口21a(図4参照)を備え、その開口21aから芯体4の先端部4aが突出するように構成されている。なお、本体部筐体21のペン先側のテーパ状の部分は、本体部筐体21と一体に構成されていてもよいし、別部材として結合される構成であってもよい。
【0020】
この例では、タブレット10は、電磁誘導方式で電子ペン1による指示位置を検出する。このため、この実施形態の電子ペン1の電子ペン構成部品22は、タブレット10のセンサに設けられる複数のループコイルと電磁誘導結合して信号を授受することでタブレット10とインタラクションするための共振回路を含む。
【0021】
図3は、この実施形態の電子ペン1の電子ペン構成部品22の主要部を説明するための図である。すなわち、電子ペン構成部品22は、コイル221が巻回された磁性体コア222と、筆圧検出部223と、プリント基板224とを含んで構成される。コイル221が巻回された磁性体コア222は、図3に示すように、本体部筐体21の中空部のペン先側に設けられる。磁性体コア222は、例えばフェライトコアで構成され、芯体4を挿通する貫通孔222aを備える。
【0022】
芯体4は、この例では、非導電性材料、例えば樹脂で構成される。この芯体4は、磁性体コア222の貫通孔222aを貫通して、筆圧検出部223の嵌合部223aに、着脱自在の状態で嵌合され、その嵌合状態では、芯体4の先端部4aが本体部筐体21の開口21aから突出する状態となる。したがって、芯体4の先端部4aを把持して引っ張ることで、芯体4は、本体部筐体21から抜き取って交換することが可能である。
【0023】
筆圧検出部223は、例えば容量可変キャパシタの静電容量を、印加される圧力(筆圧)に応じて変化させる機構を用いるもの(例えば特許文献(特開2011-186803号公報)参照)で構成される。なお、筆圧検出部223は、容量可変キャパシタをMEMS(Micro Electro Mechanical Systems)素子からなる半導体チップで構成したもの(例えば特許文献(特開2013-161307号公報)参照)を用いることもできる。なお、筆圧検出部223の構成は、これらの構成例に限られるものではなく、筆圧をインダクタンスの変化として検出するものであってもよい。
【0024】
コイル221は、プリント基板224に配設されているキャパシタ225と並列に接続されて共振回路を構成する。この例では、筆圧検出部223で構成される容量可変キャパシタも、コイル221及びキャパシタ225と並列に接続されて共振回路の一部を構成する。この実施形態の電子ペン1は、この共振回路によりタブレット10と電磁結合して相互に信号を授受して、タブレット10とインタラクションする。タブレット10は、この電子ペン1とのインタラクションにより、電子ペン1による指示位置を検出すると共に、電子ペン1における筆圧を検出する。
【0025】
図2(C)に示すように、筒状の本体部筐体21のペン先側とは反対側は、キャップ部3と嵌合するキャップ嵌合部211とされる。キャップ嵌合部211は、本体部筐体21の他の部分よりも径小とされており、その軸心方向の所定位置にキャップ部3を係止するためのリング状突部212が形成されている。
【0026】
キャップ部3は、例えば樹脂で構成され、本体部筐体21のキャップ嵌合部211と嵌合する凹部31を備える。そして、このキャップ部3の凹部31の、キャップ嵌合部211のリング状突部212と対応する位置にリング状の凹溝32が形成されている。
【0027】
キャップ部3は、本体部筐体21に対して、凹部31によりキャップ嵌合部211を覆うようにして結合させる。そして、キャップ部3のリング状の凹溝32と、キャップ嵌合部211のリング状突部212が嵌合してキャップ部3は、本体部筐体21に対して係止する。この状態からキャップ部3をペン先側とは反対側に所定の力で引っ張ると、キャップ部3のリング状の凹溝32とキャップ嵌合部211のリング状突部212との嵌合が外れて、キャップ部3は、本体部筐体21から外すことができる。
【0028】
そして、この実施形態の電子ペン1では、図2(B)に示すように、キャップ部3の本体部筐体21との嵌合側とは反対側の頂部には、芯抜き部33が、外部から視認可能の状態で設けられている。
【0029】
図4は、キャップ部3の頂部の縦断面図を示すものである。この実施形態では、芯抜き部33は、図2(B)及び図4に示すように、キャップ部3の頂部に、本体部筐体21のペン先側のテーパ状の部分の先端の径よりも大きい径の凹部331が形成され、その凹部331の軸心方向に直交する方向の底部の中央部に、芯体4の径よりも僅かに大きい径の芯体係合穴332が形成されることで構成される。
【0030】
この実施形態では、芯抜き部33の芯体係合穴332には、芯体4の先端部4aをしっかりと把持するためのリング状突部333が形成されている。このリング状突部333は、必須のものではなく、より確実に芯体4の先端部4aを把持するためのものである。芯体係合穴332に芯体4の先端部4aが圧入挿入された状態で、キャップ部3を軸芯方向に引っ張ったときに、芯体4が、本体部筐体21の筆圧検出部223との係合が解除されて引く抜くことができる場合には、リング状突部333は設ける必要はない。
【0031】
そして、この実施形態では、本体部筐体21のキャップ嵌合部211には、芯体4の替え芯4E(図6参照)を収納するための芯体保持部213が設けられている。図5(A)は、本体部筐体21を、軸心方向に、キャップ嵌合部211側から見た図であり、また、図5(B)は、そのA-B-C線断面図である。
【0032】
図5(B)に示すように、キャップ嵌合部211には凹部211aが形成されており、この凹部211a内に、この例ではスポンジからなる芯体保持部213が配設されている。そして、芯体保持部213には、替え芯4Eを収納するための凹穴からなる替え芯収納穴213aが、軸心方向に形成されている。替え芯収納穴213aの径は、芯体4及び替え芯4Eの径よりも若干小さい。芯体4及び替え芯4Eは、替え芯収納穴213aに差し込まれることで、芯体保持部213に保持される。
【0033】
この例では、替え芯収納穴213aは、3個設けられているが、3個に限らず、1個でもよいし、2個あるいは4個以上でもよい。また、芯体保持部213は、この例ではスポンジにより構成したが、弾性ゴムや樹脂で構成してもよい。
【0034】
この場合に、替え芯収納穴213aの軸心方向の長さ(深さ)は、替え芯4Eの長さよりも短くされる。これにより、図6に示すように、替え芯4Eは、替え芯収納穴213aに収納されたときに、その一部が外部に突出する状態となり、替え芯4Eを容易と取り出すことができる。なお、キャップ部3の凹部31の軸心方向の長さ(深さ)は、替え芯4Eが替え芯収納穴213aに収納されたときに、替え芯4Eの突出する部分も含めて、その凹部31内に収容して覆うようにすることができる大きさに選定されている。
【0035】
以上のように構成されているので、この実施形態の電子ペン1によれば、本体部筐体21のキャップ嵌合部211に設けられている芯体保持部213の替え芯収納穴213aに替え芯4Eを収納した状態で、キャップ部3を、その凹部31内にキャップ嵌合部211を収納するようにして、本体部筐体21と結合させて、図2(A)に示すような使用状態の電子ペン1を構成できる。したがって、替え芯4Eは、電子ペン1の本体部筐体21のキャップ嵌合部211に保持することができる。このため、芯体4を交換する際に、替え芯4Eを別途用意するなどの手間が不要となり、便利である。
【0036】
芯体4を交換する場合には、キャップ部3を本体部筐体21から取り外して、図7に示すように、芯体4の先端部4aを、キャップ部3の芯抜き部33の芯体係合穴332内に圧入挿入させて、芯抜き部33に係合させる。この状態で、キャップ部3を、本体部筐体21に対して、図7において矢印ARの方向に離間させるように力を印加することで、芯体4を、本体部筐体21から引き抜くことができる。
【0037】
芯体4を本体部筐体21から引き抜いた後、本体部筐体21のキャップ嵌合部211の芯体保持部213から替え芯4Eの一本を引き抜いて、本体部筐体21の開口21aから内部に差し込み、筆圧検出部223に端部を嵌合させる。以上で芯体の交換は完了である。
【0038】
交換した芯体4は、キャップ部3の芯抜き部33の芯体係合穴332から引き抜き、摩耗しているものであれば、廃棄するようにする。なお、替え芯4Eは、材料の硬さや先端の形状などにより、種々の書き味の芯体とすることもできる。その場合には、用途に応じて、書き味を変えるために、芯体を交換するようにするが、交換した芯体4は、新たに装着した替え芯4Eが収納されていた芯体保持部213の替え芯収納穴213aに収納保持しておき、再度の交換に備えることができる。したがって、利用しようとする芯体4や替え芯4Eを紛失してしまうことなく、電子ペン1に保持しておくことができる。
【0039】
そして、上述した電子ペン1によれば、キャップ部3に芯抜き部33が設けられているので、芯抜き具を別途、必要とせず、また、芯体の交換作業時には、キャップ部3が外されて芯体保持部213に保持されている替え芯が表出されるので、必要な適宜のタイミングで芯体の交換をすることができる。
【0040】
[他の実施形態または変形例]
上述の実施形態の電子ペン1では、芯抜き部33は、芯体が嵌合されたときに、芯体を電子ペン1から抜き取ることができる程度の把持力で把持することが可能な芯体係合穴332で構成したが、芯抜き部の構成は、上記の例に限られるものではない。図8は、キャップ部3に設けられた他の例の芯抜き部33Aの構成例を示すもので、図8(A)は、キャップ部3を、その頂部側から軸心方向に見た図、図8(B)は、キャップ部3の芯抜き部33Aの部分の縦断面図(図8(A)のD-D断面図)である。
【0041】
この例においては、キャップ部3は、図8(B)に示すように、中空部3aを有する薄肉部材で構成されている。そして、図8(A)及び(B)に示すように、キャップ部3の頂部の軸心方向に直交する方向の面の部分には、芯体4の径よりも大きい径の貫通孔334が、中空部3aに連通するように設けられると共に、この貫通孔334の内壁面から貫通孔334の中心位置に向かって、軸心方向に直交する方向に放射状に突出する複数個の突出部、この例では4個の突出部335a,335b,335c,335dが、十字状に設けられる。
【0042】
この場合に、4個の突出部335a,335b,335c,335dの内、貫通孔334の中心位置を通って互いに対向する突出部335aと335cの先端の離間距離、また、突出部335bと335dの先端の離間距離は、図8(B)に示すように、芯体4の径とほぼ等しく、あるいは、若干小さく定められている。この例の芯抜き部33Aは、貫通孔334と、4個の突出部335a,335b,335c,335dとからなる。
【0043】
この図8の例においては、芯体4を交換する場合には、芯体4の先端部4aを、キャップ部3の芯抜き部33Aの4個の突出部335a,335b,335c,335dの先端の間に空間に差し込む。すると、芯抜き部33Aの4個の突出部335a,335b,335c,335dは、芯体4の先端部4aと係合して当該先端部4aを把持する状態となり、図7に示したのと同様にして、キャップ部3を、本体部筐体21に対して離間させるようにすることにより、芯体4を、本体部筐体21から引き抜きことができる。
【0044】
以上の実施形態においては、芯抜き部33、33Aは、キャップ部3の頂部の軸心方向に直交する方向の面に設けるようにしたが、この構成に限られるものではなく、キャップ部3の側周面(軸心方向に沿う面)に設けてもよい。また、例えば、図9に示すように、キャップ部にクリップを設けて、そのクリップ部分に芯抜き部を形成するようにしてもよい。
【0045】
すなわち、図9の例の電子ペン1Bにおいては、そのキャップ部3Bには、クリップ34が設けられる。そして、この例では、キャップ部3B自体には、芯抜き部は設けられず、クリップ34に芯抜き部35が形成される。この例の電子ペン1Bでは、キャップ部3B以外の構成は、上述した電子ペン1と同様であるので、その部分には、同一参照符号を付して、その説明は省略する。
【0046】
図9(A)は、この例の電子ペン1Bを、キャップ部3Bのクリップ34の上方から見た図である。また、図9(B)は、この例の電子ペン1Bを、クリップ34の側方から見た図である。さらに、図9(C)は、図9(A)におけるE-E断面図であり、説明のために、クリップ34の部分を拡大して示したものである。
【0047】
この例のクリップ34は、弾性を有する金属や合成樹脂からなるL字状の部材である。すなわち、クリップ34は、軸心方向に沿ってキャップ部3Bの側周面に平行となる板状のクリップ本体部341と、クリップ本体部341をキャップ部3Bに対して取り付けるために、クリップ本体部341に対して直交する支持部342とを備える。この例では、支持部342は、キャップ部3Bの頂部の近傍の側周面位置に形成されている。支持部342は、キャップ部3Bに固定されるリング状部材343に一体に形成されている。
【0048】
クリップ34は、支持部342の位置を支点として、クリップ本体部341が常時キャップ部3Bの周側面に対して軸心方向に直交する方向に弾性的に偏倚するように構成されている。クリップ本体部341の支持部342とは反対側の端部には、クリップ本体部341がキャップ部3Bの側周面と常に所定の距離だけ離間するようにするための膨出部341aが形成されている。
【0049】
そして、この例においては、クリップ34のクリップ本体部341の所定位置には、図9(C)に示すように、クリップ本体部341の板厚方向に貫通する貫通孔35aからなる芯抜き部35が形成されている。この例では、図9(A)に示すように、芯抜き部35を構成する貫通孔35aは、三角形の形状とされている。この芯抜き部35を構成する三角形の貫通孔35aの大きさは、芯体4が、当該三角形の貫通孔35aに圧入嵌合することができる大きさとされている。
【0050】
電子ペン1Bの芯体4の交換時には、本体部筐体21から取り外したキャップ部3Bを、そのクリップ34のクリップ本体部341が、芯体4の軸心方向と直交する状態として、当該クリップ本体部341の芯抜き部35の貫通孔内に、芯体4の先端部4aを圧入させる。すると、芯体4の先端部4aは、芯抜き部35の貫通孔35aと係合して、芯抜き部35に保持されるので、キャップ部3Bを本体部筐体21から離間させるように移動させることで、芯体4を、本体部筐体21から引き抜くことができる。
【0051】
なお、クリップ本体部341の芯抜き部35の貫通孔35aの形状は、三角形に限らず、要は、芯体4の先端部4aと係合して、芯体4を本体部筐体21から引き抜くことができる形状であればどのような形状であってもよく、例えば菱形や、その他の多角形でもよい。
【0052】
上述の実施形態では、本体部筐体21のキャップ嵌合部211に、キャップ部3を嵌合させることで本体部2とキャップ部3とを結合したが、本体部2とキャップ部3とは、螺合させるように構成してもよい。図10は、本体部2とキャップ部3とを螺合させるように構成した電子ペン1Cを示す図である。
【0053】
すなわち、図10に示すように、この例の電子ペン1Cにおいては、キャップ嵌合部211Cには、リング状突部212に代えて、ねじ部214が設けられる。一方、キャップ部3の凹部31には、リング状凹溝32に代えて、ねじ部36が形成される。
【0054】
そして、この例の場合には、キャップ部3は、凹部31により本体部筐体21のキャップ嵌合部211の芯体保持部213を覆うように、本体部筐体21のキャップ嵌合部211に被せられて回転されることで、キャップ部3のねじ部36がキャップ嵌合部211のねじ部214に螺合されて本体部筐体21と結合される。
【0055】
[その他の変形例]
なお、上述の実施形態の電子ペンは、電磁誘導方式の場合であったが、この発明は、静電結合方式(アクティブ静電結合方式を含む)の電子ペンにも適用することができることは、言うまでもない。静電結合方式の電子ペンの場合には、芯体は金属や導電性を有する樹脂など構成される。そして、アクティブ静電結合方式の電子ペンの場合には、プリント基板に設けられる信号発生回路からの信号が、導電性の芯体から送出されて、静電結合によりタブレットとインタラクションする。
【0056】
なお、芯体は筆圧検出部に直接嵌合される場合に限られるものではなく、筆圧検出部に嵌合されている圧力伝達部に嵌合されていてもよい。
【符号の説明】
【0057】
1,1B,1C…電子ペン、2…本体部、3,3B…キャップ部、4…芯体、4E…替え芯、10…タブレット、21…本体部筐体、31…凹部、33,33A…芯抜き部、34…クリップ、35…芯抜き部、211…キャップ嵌合部
図1
図2
図3
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図7
図8
図9
図10