(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-02-08
(45)【発行日】2022-02-17
(54)【発明の名称】過冷却水製造装置及び過冷却水製造方法
(51)【国際特許分類】
F28F 17/00 20060101AFI20220209BHJP
F28D 9/02 20060101ALI20220209BHJP
【FI】
F28F17/00 511
F28D9/02
(21)【出願番号】P 2018024167
(22)【出願日】2018-02-14
【審査請求日】2020-12-10
(73)【特許権者】
【識別番号】000169499
【氏名又は名称】高砂熱学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100113608
【氏名又は名称】平川 明
(74)【代理人】
【識別番号】100123098
【氏名又は名称】今堀 克彦
(74)【代理人】
【識別番号】100175190
【氏名又は名称】大竹 裕明
(72)【発明者】
【氏名】万尾 達徳
(72)【発明者】
【氏名】松平 章宏
(72)【発明者】
【氏名】谷野 正幸
【審査官】古川 峻弘
(56)【参考文献】
【文献】特許第5871548(JP,B2)
【文献】特開2000-039241(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F28F 17/00
F28D 9/00-9/04
F25C 1/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
水と前記水の凝固点以下の温度の熱媒体とを熱交換させ、過冷却水を製造するプレート式熱交換器と、
前記熱媒体を前記プレート式熱交換器へ流入させる流入手段と、
前記プレート式熱交換器の外表面に気流を当てる手段と、を備
え、
前記気流を当てる手段は、前記流入手段が起動する場合に起動し、前記流入手段が停止する場合に停止する、
過冷却水製造装置。
【請求項2】
前記気流を当てる手段は、前記プレート式熱交換器の下部近傍に設けられる、
請求項1に記載の過冷却水製造装置。
【請求項3】
前記過冷却水製造装置は、前記プレート式熱交換器の外表面の少なくとも一部を覆い、前記プレート式熱交換器の外表面との間に風路を形成する風路形成部材を備える、
請求項1又は2に記載の過冷却水製造装置。
【請求項4】
水から過冷却水を製造する製造手段と、
前記水の凝固点以下の温度の熱媒体を前記製造手段へ流入させる流入手段と、
接合部を有し、過冷却水が通流する通流管と、
前記接合部の外表面に気流を当てる手段と、を備
え、
前記気流を当てる手段は、前記流入手段が起動する場合に起動し、前記流入手段が停止する場合に停止する、
過冷却水製造装置。
【請求項5】
前記気流を当てる手段は、ヒータを備え、
前記気流は、前記ヒータによって加熱されたものである、
請求項1から
4のうち何れか1項に記載の過冷却水製造装置。
【請求項6】
水と前記水の凝固点以下の温度の熱媒体とを熱交換させ、過冷却水を製造するプレート式熱交換器と、
前記プレート式熱交換器の外表面に気流を当てる手段と、
前記外表面の少なくとも一部を覆い、前記外表面との間に前記外表面に当てられた前記気流が進入する風路を形成する風路形成部材であって、前記風路に進入した前記気流の少なくとも一部が系外に流出可能に設けられる風路形成部材と、を備える、
過冷却水製造装置。
【請求項7】
少なくとも前記風路の下部に、前記風路と連通し系外に向けて開口する開口部が設けられ、
前記気流を当てる手段は、前記開口部を介して前記気流を前記外表面に当てる、
請求項6に記載の過冷却水製造装置。
【請求項8】
水の凝固点以下の温度の熱媒体をプレート式熱交換器へ流入させる流入工程と、
前記プレート式熱交換器において、
前記水と前
記熱媒体とを熱交換させ、過冷却水を製造する製造工程と、
前記プレート式熱交換器の外表面に気流を当てる工程と、を
含み、
前記気流を当てる工程は、前記流入工程が開始される場合に開始され、前記流入工程が終了される場合に終了される、
過冷却水製造方法。
【請求項9】
水の凝固点以下の温度の熱媒体を、前記水から過冷却水を製造する製造手段へ流入させる流入工程と、
前記製造手段において、水と前記熱媒体とを熱交換させることで過冷却水を製造する製造工程と、
接合部を有する通流管内を製造された過冷却水が通流する通流工程と、
前記接合部の外表面に気流を当てる工程と、を
含み、
前記気流を当てる工程は、前記流入工程が開始される場合に開始され、前記流入工程が終了される場合に終了される、
過冷却水製造方法。
【請求項10】
プレート式熱交換器において、水と前記水の凝固点以下の温度の熱媒体とを熱交換させることで過冷却水を製造する製造工程と、
前記プレート式熱交換器の外表面に気流を当てる工程と、
前記外表面に当てられた前記気流が、前記外表面の少なくとも一部を覆う風路形成部材と前記外表面との間に形成された風路に進入し、前記風路に進入した前記気流の少なくとも一部が系外に流出する流出工程と、を含む、
過冷却水製造方法。
【請求項11】
前記気流を当てる工程において、前記気流は、少なくとも前記風路の下部に設けられ前記風路と連通し系外に向けて開口する開口部を介して前記外表面に当てられる、
請求項10に記載の過冷却水製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、過冷却水製造装置及び過冷却水製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、水の過冷却状態を利用してシャーベット状の氷を製造する方法及び氷製造装置に関する発明が開示されている(特許文献1-6)。また、特許文献1には、過冷却水が存在する機器や配管の外部に、結露などによって生じた水が存在し、上記の水が凍結した場合、その水から氷への変化が機器や配管の内部に伝播し、機器や配管の内部の過冷却水が相変化する旨が開示されている。また、特許文献1には、上記の伝播を防止する技術として、配管の接合部を気密カバーで覆うことが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特許第5385193号公報
【文献】特許第5385194号公報
【文献】特許第5631036号公報
【文献】特許第5385198号公報
【文献】特許第5871548号公報
【文献】特許第6022879号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
過冷却水を製造する際に、製造装置として、プレート式熱交換器を用いる場合、プレート式熱交換器の外部で起こった水から氷への相変化が、プレートの締結部分を通じてプレート式熱交換器内部の過冷却水に伝播することが考えられる。この伝播を防止するために、プレート式熱交換器自体を気密カバーで覆うことが考えられる。しかしながら、プレート式熱交換器の外形は複雑であるため、気密カバーで覆って気密にすることは技術的に困難である。よって、プレート式熱交換器を用いて過冷却水を製造できない虞がある。
【0005】
また、過冷却水を製造する際に、製造装置として、接合部を有し過冷却水が通流する配管を備える装置を用いる場合、製造装置の外部で起こった水から氷への相変化が接合部内部の過冷却水に伝播することが考えられる。この伝播を防止するために、接合部を気密カバーで覆うことが考えられる。しかしながら、気密カバーで接合部を覆う場合、気密カバー内に乾燥剤等を充填しなければならず、手間やメンテナンスを要する。
【0006】
そこで、本願は、水から氷への相変化が過冷却水に伝播することを簡易に防止し、過冷却水を製造することのできる技術を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するため、本発明は、過冷却水製造装置の外表面に気流を当てることとした。
【0008】
詳細には、本発明は、水と水の凝固点以下の温度の熱媒体とを熱交換させ、過冷却水を製造するプレート式熱交換器と、プレート式熱交換器の外表面に気流を当てる手段と、を備える、過冷却水製造装置である。
【0009】
このような過冷却水製造装置であれば、プレート式熱交換器の外表面の相対湿度の上昇
を抑制することができる。よって、プレート式熱交換器の内部に結露水の発生による凍結が伝播することは簡易に防止され、過冷却水を製造することができる。
【0010】
また、気流を当てる手段は、プレート式熱交換器の下部近傍に設けられてもよい。
【0011】
プレート式熱交換器の上部の外表面において結露水が生じる場合、その結露水は下部の外表面まで垂れてくることが想定される。すなわち、プレート式熱交換器の下部の外表面には、結露水が存在しやすい状況といえる。ここで、上記のような過冷却水製造装置であれば、プレート式熱交換器の下部の外表面に気流が勢いよく当てることができる。よって、プレート式熱交換器の外表面の結露水の凍結の抑制効果及び結露自体の抑制効果を高めることができる。よって、プレート式熱交換器の内部に結露水の凍結が伝播することは簡易に防止され、過冷却水を製造することができる。
【0012】
また、過冷却水製造装置は、プレート式熱交換器の外表面の少なくとも一部を覆い、プレート式熱交換器の外表面との間に風路を形成する風路形成部材を備えてもよい。
【0013】
このような過冷却水製造装置であれば、気流を当てる手段によって、プレート式熱交換器の外表面に当てられた空気は、拡散せずにプレート式熱交換器の外表面の近傍を通過することとなる。よって、プレート式熱交換器の外表面の近傍の湿度低下や加熱の効果を高めることができる。よって、プレート式熱交換器の外表面の結露水の凍結の抑制効果及び結露自体の抑制効果を高めることができる。よって、プレート式熱交換器の内部に結露水の凍結が伝播することは簡易に防止され、過冷却水を製造することができる。
【0014】
また、熱媒体をプレート式熱交換器へ流入させる流入手段をさらに備え、気流を当てる手段は、流入手段が起動する場合に起動し、流入手段が停止する場合に停止してもよい。
【0015】
このような過冷却水製造装置であれば、熱媒体がプレート式熱交換器に流れ込まず、過冷却水が製造されない場合には、気流を当てる手段は停止される。すなわち、過冷却水製造装置は、省エネルギー化を実現する。
【0016】
また、水から過冷却水を製造する製造手段と、接合部を有し、過冷却水が通流する通流管と、接合部の外表面に気流を当てる手段と、を備えてもよい。
【0017】
このような過冷却水製造装置であれば、接合部の外表面の湿度を低下させることができる。よって、接合部の外表面における結露自体を抑制することができる。よって、通流管の内部に結露水の凍結が伝播することは簡易に防止され、製造した過冷却水を通流させることができる。
【0018】
また、気流を当てる手段は、ヒータを備え、気流は、ヒータによって加熱されたものであってもよい。
【0019】
このような過冷却水製造装置であれば、過冷却水製造装置の外表面を加熱することができる。よって、過冷却水製造装置の外表面の結露水の凍結の抑制効果及び結露自体の抑制効果を高めることができる。よって、過冷却水製造装置の内部に結露水の凍結が伝播することは簡易に防止され、過冷却水を製造することができる。
【0020】
また、本発明は、方法の側面から捉えることもできる。すなわち、本発明は、例えば、プレート式熱交換器において、水と水の凝固点以下の温度の熱媒体とを熱交換させ、過冷却水を製造する製造工程と、プレート式熱交換器の外表面に気流を当てる工程と、を備える、過冷却水製造方法であってもよい。
【0021】
また、本発明は、例えば、水から過冷却水を製造する製造工程と、接合部を有する通流管内を製造された過冷却水が通流する通流工程と、接合部の外表面に気流を当てる工程と、を備える、過冷却水製造方法であってもよい。
【発明の効果】
【0022】
上記の過冷却水製造装置及び過冷却水製造方法は、水から氷への相変化が過冷却水に伝播することを簡易に防止し、過冷却水を製造することのできる技術を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図1】
図1は、本実施形態に係る過冷却水製造装置の概要の一例を示している。
【
図2】
図2は、プレート式熱交換器の分解斜視図の一例を示している。
【
図3】
図3は、3種類のプレートの表面を拡大した拡大図の一例を示している。
【
図4】
図4は、プレート式熱交換器の側面を拡大した部分拡大図の一例を示している。
【
図5】
図5は、プレート式熱交換器を上方から見た図を示している。
【
図6】
図6は、プレート式熱交換器が稼働している際の水及びブラインの流れを説明した分解斜視図の一例を示している。
【
図7】
図7は、プレート式熱交換器が稼働している際の、過冷却水製造装置の動作の一例を示している。
【
図8】
図8は、ヒータからフランジの近傍に温風を送り込む一例を示している。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明の実施形態について説明する。以下に示す実施形態は、本発明の実施形態の一例であり、本発明の技術的範囲を以下の態様に限定するものではない。
【0025】
<装置構成>
図1は、本実施形態に係る過冷却水製造装置の概要の一例を示している。過冷却水製造装置100は、例えばガスケットタイプのプレート式熱交換器1を備える。過冷却水製造装置100は、本発明における「過冷却水製造装置」の一例である。そして、プレート式熱交換器1において、過冷却水は、液体状態の水から製造される。プレート式熱交換器1において製造された過冷却水は、例えば氷を製造する際に用いられる。
【0026】
過冷却水製造装置100は、ヒータ2を備える。ヒータ2は、本発明における「気流を当てる手段」の一例である。ヒータ2は、内部にファンを備える。また、ヒータ2は、プレート式熱交換器1の側面の下部近傍に載置される。
【0027】
ここで、ヒータ2が載置される場所は、プレート式熱交換器1の外表面において生じた結露水が垂れ、ヒータ2にかかる場合に備えて、プレート式熱交換器1の直下ではなく、やや外れた位置とする。そして、ヒータ2は、水平面に対して例えば約45度の向きに吹出し口が向くように載置される。ただし、ヒータ2の吹出し口は、水平面に対して様々な角度に回動可能であり、その角度は45度に限定されない。また、ヒータ2は、汎用品であり、200W程度の小さな加熱容量で温風が吹出せるものが好ましく、例えば盤用スペースヒータであってもよい。
【0028】
また、過冷却水製造装置100は、風路形成部材3A、3Bを備える。風路形成部材3A、3Bは、プレート式熱交換器1の両側面及び上面に設けられる。風路形成部材3Aは、例えば板状の発泡ポリスチレンからなる弾性部材である。風路形成部材3Aの板面の横方向の長さは、プレート式熱交換器1の側面の横方向の長さと略等しく、プレート式熱交換器1の側面に嵌めるだけで取り付けられる。また、風路形成部材3Aの板面の縦方向の
長さは、プレート式熱交換器1の側面の縦方向の長さよりも短い。そして、風路形成部材3Aは、プレート式熱交換器1の下部に開口部4ができるように取り付けられる。また、風路形成部材3Aがプレート式熱交換器1の側面に取り付けられた際、風路形成部材3Aとプレート式熱交換器1の内部のプレートとの間には隙間が生じる。また、風路形成部材3Bの大きさについては後述する。また、風路形成部材3A、3Bの材料は、発泡ポリスチレンに限定されず、硬質/軟質ウレタン、鉄板、グラスウール板など何でもよい。
【0029】
図2は、プレート式熱交換器1の分解斜視図の一例を示している。プレート式熱交換器1は、プレート5A、5B、5Cの合計3種類のプレートを備える。また、プレート式熱交換器1は、それぞれのプレート表面に対して、ガスケット6A、6B、6Cが設けられている。プレート5A及び5Bは交互に積層される。また、プレート式熱交換器1は、エンドプレート7A、7Bを備える。そして、エンドプレート7Aと接する面には、プレート5Cが位置せしめられる。
【0030】
プレート5A、5B、5Cには、水が通過する水流路8と、ブラインが通過するブライン流路9が備わる。ブラインは、本発明にかかる「熱媒体」の一例である。また、エンドプレート7Aには、エンドプレート7Aの外部から水流路8へ水が流入する際に通る水流入孔10と、水流路8からエンドプレート7Aの外部へ水が流出する際に水が通る水流出孔11を備える。また、エンドプレート7Aには、エンドプレート7Aの外部からブライン流路9へブラインが流入する際に通るブライン流入孔12と、ブライン流路9からエンドプレート7Aの外部へブラインが流出する際にブラインが通るブライン流出孔13を備える。
【0031】
図3は、プレート5A、5B、5Cの表面を拡大した拡大図の一例を示している。
図3(A)には、プレート5Aとガスケット6Aが示されている。
図3(B)には、プレート5Bとガスケット6Bが示されている。
図3(C)には、プレート5Cとガスケット6Cが示されている。
【0032】
ここで、プレート5Aの表面に設けられるガスケット6Aの形状は、内部を流れる水及びブラインがプレート5Aの外へ漏れ出さないようにプレート5Aの外枠に沿った形状となる。また、ガスケット6Aの形状は、プレート5Aの上部の水流路8を流れる水がプレート5Aの表面を伝ってプレート5Aの下部の水流路8へ流れ落ちることを可能とする形状である。また、ガスケット6Aの形状は、水がプレート5Aの表面を伝って流れ落ちる際、ブラインと混流しないよう、水が流れ落ちる際に通過するプレート5Aの表面部分とブライン流路9とを仕切る形状である。
【0033】
また、プレート5Bの表面に設けられるガスケット6Bの形状も、同様に内部を流れる水及びブラインがプレート5Bの外へ漏れ出さないようにプレート5Bの外枠に沿った形状となる。また、ガスケット6Bの形状は、ガスケット6Aの形状とは反対に、プレート5Bの上部のブライン流路9を流れるブラインがプレート5Bの表面を伝ってプレート5Bの下部のブライン流路9へ流れ落ちることを可能とする形状である。また、ガスケット6Bの形状は、ブラインがプレート5Bの表面を伝って流れ落ちる際、水と混流しないよう、ブラインが流れ落ちる際に通過するプレート5Bの表面部分と水流路8とを仕切る形状である。
【0034】
また、プレート5Cの表面に設けられるガスケット6Cの形状も、同様に内部を流れる水及びブラインがプレート5Cの外へ漏れ出さないようにプレート5Cの外枠に沿った形状となる。また、ガスケット6Cの形状は、ガスケット6A、ガスケット6Bの形状とは異なり、水流路8及びブライン流路9からプレート5Cの表面に水及びブラインが侵入しないよう、水流路8とブライン流路9とを仕切る形状である。
【0035】
また、
図2に示されるように、プレート式熱交換器1は、シャフト14と、ナット15と、上部ガイドバー16と、下部ガイドバー17を備える。また、プレート式熱交換器1には、図示しないがブラインをプレート式熱交換器1の中へ流入させるブラインポンプを備える。ここで、ブラインポンプは、本発明の「流入手段」の一例である。そして、ヒータ2は、ブラインポンプの起動、停止を検知し、ブラインポンプと連動して起動、停止する。
【0036】
プレート式熱交換器1は、プレート5A、5B、5C、及びエンドプレート7A、7Bに、シャフト14を貫通させ、エンドプレート7Bの外側からナット15を締め付けることによって組み立てられる。この際、ガスケット6A、6B、6Cは、締め付け方向に潰れ、プレート5A、5B、5C間の隙間は密閉される。
【0037】
図4は、プレート式熱交換器1の側面を拡大した部分拡大図の一例を示している。
図4に示す通り、プレート式熱交換器1のエンドプレート7Aには、シャフト14を貫通させるための穴18が設けられている。風路形成部材3Aがプレート式熱交換器1に固定された場合であっても、穴18は、完全に塞がれない。すなわち、空気の抜け道のために、完全密閉とはしていない。
【0038】
図5は、プレート式熱交換器1を上方から見た図を示している。プレート式熱交換器1の上面には風路形成部材3Bが設けられる。風路形成部材3Bは、エンドプレート7A、7Bと上部ガイドバー16との隙間に緩挿される程度の大きさである。すなわち、プレート式熱交換器1の上部は、風路形成部材3Bによって完全に密閉はされない。風路形成部材3Bは、一部に切り欠きや孔を備えていてもよい。
【0039】
<動作例>
次に、プレート式熱交換器1の動作について説明を行う。
図6は、プレート式熱交換器1が稼働している際の水及びブラインの流れを説明した分解斜視図の一例を示している。プレート式熱交換器1が稼働している際、水流入孔10からプレート式熱交換器1内へ水が流入している。また同時に、ブライン流入孔12からプレート式熱交換器1内へブラインが流入している。水及びブラインの温度は、図示しないが、プレート式熱交換器1に流入する前において所定の温度に制御されている。プレート式熱交換器1に流入するブラインの温度は、水の凝固点以下である。
【0040】
プレート式熱交換器1内へ流入した水は、プレート5A、5B、5Cに設けられた水流路8を通過する。その際、プレート5Aでは、プレート上部の水流路8を通過する水の一部がプレート表面を伝ってプレート下部の水流路8へ流れ落ちる。また、プレート5Bでは、プレート上部のブライン流路9を通過するブラインの一部がプレート表面を伝ってプレート下部のブライン流路9へ流れ落ちる。そして、プレート5Aを伝って下部に流れ落ちる水は、プレート5Aを挟む両隣に位置するプレート5Bの表面を伝って下部に流れ落ちるブラインと熱交換され、プレート5Aの下部の水流路8へ合流する際には過冷却状態となる。よって、プレート式熱交換器1の下部は、上部よりも温度が低い部分が存在することとなる。
【0041】
次に、ヒータ2の動作の一例を説明する。
図7は、プレート式熱交換器1が稼働している際の、ヒータ2の動作の一例を示している。プレート式熱交換器1のブラインポンプが起動し、プレート式熱交換器1の中へブラインが流入されると、プレート式熱交換器1において水とブラインが熱交換を行い、過冷却水が生成される。ヒータ2は、ブラインポンプが起動されると、連動して起動される。そして、ヒータ2から温風が吹出され、吹出された温風は、風路形成部材3Aの下部に形成される開口部4へ送り込まれる。温風の温度
は、例えば常温以上でよいが、プレート式熱交換器1の外表面が凍らない温度であれば常温に限定されない。
【0042】
開口部4へ送り込まれた温風は、まずプレート式熱交換器1の下部の外表面に勢いよく当たる。ここで、風路形成部材3Aは、プレート式熱交換器1の側面に固定された際、風路形成部材3Aはプレート式熱交換器1のプレート5A、5B、5Cの側面との間に隙間20を生じさせている。よって、温風の一部は、隙間20を通り、プレート式熱交換器1の外表面に沿ってプレート式熱交換器1の外表面の上部まで進行する。プレート式熱交換器1の外表面の上部まで達した温風は、プレート式熱交換器1の上面に設けられた風路形成部材3Bとエンドプレート7A、7B及び上部ガイドバー16との間にある隙間から系外へ流出する。
【0043】
また、プレート式熱交換器1の下部の外表面に当たった温風の一部は、プレート式熱交換器1の下部を通り抜け、プレート式熱交換器1の反対側の側面へ回り込む。そして、上記と同様にプレート式熱交換器1の外表面に沿ってプレート式熱交換器1の外表面の上部まで進行する。また、温風は、プレート式熱交換器1の穴18からも系外へ流出する。
【0044】
上記のように、ヒータ2は、プレート式熱交換器1において過冷却水が製造されている際、プレート式熱交換器1の外表面に温風を送り込むことができる。また、ヒータ2は、ブラインポンプの停止に伴って停止される。
【0045】
<効果>
上記のような過冷却水製造装置100であれば、プレート式熱交換器1の中にブラインが流入し、過冷却水を生成している際に、プレート式熱交換器1の外表面を温めることができ、また外表面の近傍の湿度を低下させることができる。よって、プレート式熱交換器1の外表面の結露水の凍結の抑制及び結露自体の抑制を行うことができる。
【0046】
また、過冷却水製造装置100は、凍結の抑制のためにプレート式熱交換器1の外表面に不凍液を塗るなどの手間を要しない。また、過冷却水製造装置100は、凍結防止のためにプレート式熱交換器1の全体を断熱材で覆うといった大掛かりで費用のかかる装置でもない。すなわち、過冷却水製造装置100は、手間や費用を要さずにプレート式熱交換器1の内部に結露水の凍結が伝播することを簡易に防止することができる。よって、水から氷への相変化が過冷却水に伝播することを簡易に防止し、過冷却水を製造することができる。
【0047】
また、ヒータ2は、ブラインポンプと連動して動作する。すなわち、プレート式熱交換器1にブラインが流れ込まず、過冷却水が製造されない場合には、ヒータ2は停止される。よって、過冷却水製造装置100は、省エネルギー化を実現する。
【0048】
また、ヒータ2から吹出される温風は、プレート式熱交換器1の下部の外表面に勢いよく当たる。プレート式熱交換器1の下部の外表面は、低温状態となっており、また、プレート式熱交換器1の上部で結露水が生じた場合には、その結露水が垂れてくることも想定される。すなわち、このような結露水が存在しやすいと言えるプレート式熱交換器1の下部の外表面に温風が勢いよく当たるため、プレート式熱交換器1の外表面の結露水の凍結及び結露自体の抑制効果を高めることができる。
【0049】
また、ヒータ2から吹出された温風は、風路形成部材3Aとプレート式熱交換器1との間に存在する隙間20を通過して、プレート式熱交換器1の外表面の上部に達する。すなわち、吹出された温風は、拡散することなく、プレート式熱交換器1の外表面の近傍を通過することとなる。よって、プレート式熱交換器1の外表面の近傍の湿度低下や加熱の効
果を高めることができる。よって、プレート式熱交換器1の外表面の結露水の凍結の抑制効果及び結露自体の抑制効果を高めることができる。
【0050】
<変形例>
上記の実施形態では、ヒータ2によってプレート式熱交換器1の外表面へ温風を送り込む一例を示したが、プレート式熱交換器1と接続し、プレート式熱交換器1において生成された過冷却水が系外へ流出する際に通流する通流管に設けられるフランジの近傍に、ヒータから温風を送り込んでもよい。
図8は、ヒータからフランジの近傍に温風を送り込む一例を示している。
【0051】
過冷却水製造装置100は、プレート式熱交換器1と、プレート式熱交換器1と接続され、プレート式熱交換器1において製造された過冷却水が通流する通流管を備える。また過冷却水製造装置100は、上記通流管の途中に、異なる通流管と接合することのできるフランジ21を備える。フランジ21は、本発明における「接合部」の一例である。
【0052】
また、過冷却水製造装置100は、ヒータ2及び2Aを備え、ヒータ2Aは、その吹出し口をフランジ21の近傍へ向けた状態で載置される。ここで、ヒータ2Aが載置される場所は、フランジ21の外表面において生じた結露水が垂れ、ヒータ2Aにかかる場合に備えて、フランジ21の直下ではなく、やや外れた位置とする。そして、ヒータ2Aは、水平面に対して例えば約45度の向きに吹出し口が向くように載置される。ヒータ2Aは、ヒータ2と同型のものである。ヒータ2Aは、ブラインポンプの起動、停止を検知し、ブラインポンプと連動して動作することができる。
【0053】
上記のような過冷却水製造装置100であれば、フランジ21の外表面の湿度を低下させ、また温度を上昇させることができる。よって、フランジ21の外表面における結露水の凍結の抑制や結露自体の抑制を実現することができる。よって、結露水が凍結し、フランジ21の内部を通過する過冷却水に、結露水から氷への相変化が伝播するこということは簡易に防止される。
【0054】
また、上記のような過冷却水製造装置100であれば、プレート式熱交換器1における過冷却水の製造だけではなく、製造された過冷却水が系外へ流出する際に通流する通流管においても、水の過冷却状態を維持することができる。
【0055】
また、上記の変形例では、フランジ21の内部を通過する過冷却水は、プレート式熱交換器1において製造されたものであったが、過冷却水は、プレート式熱交換器1以外の装置において製造されたものであってもよい。
【0056】
また、上記の実施形態において、風路形成部材は、プレート式熱交換器1の側面及び上面に設けられていたが、プレート式熱交換器1の全体を覆うように設けられていてもよい。
【0057】
また、上記の実施形態では、ヒータ2はプレート式熱交換器1の一側面の下部近傍に1つのみ設けられていたが、プレート式熱交換器1の反対側の側面の下部近傍にもう1つ追加され、2つ設けられていてもよい。
【0058】
また、ヒータ2、2Aは、外気温に応じて加熱温度と送風量を制御してもよい。例えば、夏季など気温が高い時期には、プレート式熱交換器1又はフランジ21の外表面に送り込まれる空気は、加熱していなくともよい。また、ヒータ2の代わりに扇風機やサーキュレータ等、気流を発生させる装置を用いて、プレート式熱交換器1又はフランジ21の外表面に空気を当ててもよい。
【0059】
また、ヒータ2、2Aの吹き出し角度は、例えばプレート式熱交換器1又はフランジ21の外表面近傍に温湿度計を設け、温湿度計によって計測された値を用いて制御されてもよい。また、ヒータ2、2Aの吹き出し角度は、手動で変更されてもよく、周期的に変化させてもよい。
【0060】
以上、本発明の好ましい実施の形態の一例を説明したが、本発明は図示の形態に限定されない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された思想の範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【符号の説明】
【0061】
1・・プレート式熱交換器;2、2A・・ヒータ;3A、3B・・風路形成部材;4・・開口部;5A、5B、5C・・プレート;6A、6B、6C・・ガスケット;7A、7B・・エンドプレート;8・・水流路;9・・ブライン流路;10・・水流入孔;11・・水流出孔;12・・ブライン流入孔;13・・ブライン流出孔;14・・シャフト・・15・・ナット;16・・上部ガイドバー;17・・下部ガイドバー;18・・穴;20・・隙間;21・・フランジ