(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-02-08
(45)【発行日】2022-02-17
(54)【発明の名称】流量制御弁
(51)【国際特許分類】
F02M 25/08 20060101AFI20220209BHJP
F16K 1/32 20060101ALI20220209BHJP
F16K 31/04 20060101ALI20220209BHJP
【FI】
F02M25/08 311G
F16K1/32 C
F16K31/04 K
(21)【出願番号】P 2018039464
(22)【出願日】2018-03-06
【審査請求日】2021-01-20
(73)【特許権者】
【識別番号】592056908
【氏名又は名称】浜名湖電装株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003214
【氏名又は名称】特許業務法人服部国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】小野寺 浩史
【審査官】櫻田 正紀
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2015/002063(WO,A1)
【文献】特開2000-073906(JP,A)
【文献】特開2012-012950(JP,A)
【文献】特開2000-337415(JP,A)
【文献】特開2017-186085(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2005/0218360(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F02M 25/08
F16K 1/32
F16K 31/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
蒸発燃料入口(32)側の第一流体通路(21)から、蒸発燃料出口(33)に繋がる第二流体通路(22)へと流体が流れる経路を有し、前記第一流体通路と前記第二流体通路とを連通可能な接続空間(23)とを有するバルブハウジング(31)と、
前記接続空間を流体が通過しないよう遮断、または前記接続空間を流体が通過するよう連通させるために、前記バルブハウジングの弁座(35)に当接または離間可能なように設けられているバルブ部材(41)と、
前記バルブ部材が前記弁座に当接または離間可能なように往復移動可能とする駆動部(51)と、
前記駆動部に設けられる駆動部側ねじ部(53)と、
前記バルブ部材に設けられ前記駆動部側ねじ部にねじ結合するバルブ側ねじ部(45)と、
前記接続空間において前記経路上に位置し、前記駆動部側ねじ部と前記バルブ側ねじ部との間でのバックラッシュを防止する方向に前記バルブ部材を付勢するコイルスプリング(46,47,48,49)と、
を備え、
前記蒸発燃料出口を通過する流体の圧力損失をP0、
前記バルブ部材と前記弁座とが離間した状態の、前記バルブ部材と前記弁座との隙間を通過する流体の圧力損失をP1、
前記バルブ部材と前記弁座との隙間を通過した流体が通過する、前記コイルスプリングの隙間、または前記弁座と前記コイルスプリングの隙間を通過する流体の圧力損失をP2とした場合、
P0≧P1≧P2
の関係が成立する流量制御弁。
【請求項2】
蒸発燃料入口側の第一流体通路から、蒸発燃料出口に繋がる第二流体通路へと流体が流れる経路を有し、前記第一流体通路と前記第二流体通路とを連通可能な接続空間とを有するバルブハウジングと、
前記接続空間を流体が通過しないよう遮断、または前記接続空間を流体が通過するよう連通させるために、前記バルブハウジングの弁座に当接または離間可能なように設けられているバルブ部材と、
前記バルブ部材が前記弁座に当接または離間可能なように往復移動可能とする駆動部と、
前記駆動部に設けられる駆動部側ねじ部と、
前記バルブ部材に設けられ前記駆動部側ねじ部にねじ結合するバルブ側ねじ部と、
前記接続空間において前記経路上に位置し、前記駆動部側ねじ部と前記バルブ側ねじ部との間でのバックラッシュを防止する方向に前記バルブ部材を付勢するコイルスプリングと、
を備え、
前記蒸発燃料出口の断面積をS0、
前記バルブ部材と前記弁座とが離間した状態の、前記バルブ部材と前記弁座との隙間の断面積をS1、
前記バルブ部材と前記弁座との隙間を通過した流体が通過する、前記コイルスプリングの隙間、または前記弁座と前記コイルスプリングの隙間の断面積の総和をS2とした場合、
S0≦S1≦S2
の関係が成立する流量制御弁。
【請求項3】
前記コイルスプリングの、前記バルブ部材の往復移動方向における前記弁座側の隣り合う巻線の隙間は、前記バルブ部材が前記弁座から最も離間するときの、前記バルブ部材と前記弁座との間の距離に比べ大きい請求項1または2に記載の流量制御弁。
【請求項4】
前記コイルスプリングの、前記バルブ部材の往復移動方向における前記弁座とは反対側の隣り合う巻線の隙間は、前記バルブ部材が前記弁座から最も離間するときの、前記バルブ部材と前記弁座との間の距離に比べ大きい請求項3に記載の流量制御弁。
【請求項5】
前記コイルスプリングの巻線の断面形状は、前記バルブ部材の往復移動方向に直交する方向の寸法が前記バルブ部材の往復移動方向の寸法に比べ大きい請求項1から4のいずれか一項に記載の流量制御弁。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、流量制御弁に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、内燃機関を搭載する車両の燃料タンク内で発生したベーパを吸着および脱離可能なキャニスタと、燃料タンクとキャニスタとを連通するベーパ通路とを有する蒸発燃料処理装置がある。例えば、特許文献1に記載されている蒸発燃料処理装置は、ベーパ通路の途中に、流量制御弁が介装されている。そして、流量制御弁は、車両の駐車中等はベーパ通路を閉じ、給油中等はベーパ通路を開ける等の動作をする。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載の流量制御弁は、流量制御弁の流体の流路が狭められるおそれがある。流量制御弁の流体の流路が狭められると、例えば給油中にベーパ通路を開けようとする場合に、オートストップがかかって給油出来なくなる等の不都合が生じるおそれがある。
【0005】
本発明は、上記の問題を鑑みてなされたものであり、その目的は、制御性を向上しつつ消費電力を低減することが可能な流量制御弁を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の流量制御弁は、バルブハウジング(31)、バルブ部材(41)、駆動部(51)、駆動部側ねじ部(53)、バルブ側ねじ部(45)、及び、コイルスプリング(46,47,48,49)を備える。
【0007】
バルブハウジングは、蒸発燃料入口(32)側の第一流体通路(21)から、蒸発燃料出口(33)に繋がる第二流体通路(22)へと流体が流れる経路を有し、第一流体通路と第二流体通路とを連通可能な接続空間(23)とを有する。
【0008】
バルブ部材は、接続空間を遮断または連通させるために、バルブハウジングの弁座(35)に当接または離間可能なように設けられている。
【0009】
駆動部は、バルブ部材が弁座に当接または離間可能なように往復移動可能とする。
【0010】
駆動部側ねじ部は、駆動部に設けられる。
【0011】
バルブ側ねじ部は、バルブ部材に設けられ駆動部側ねじ部にねじ結合する。
【0012】
コイルスプリングは、接続空間において経路上に位置し、駆動部側ねじ部とバルブ側ねじ部との間でのバックラッシュを防止する方向にバルブ部材を付勢する。
【0013】
本発明の流量制御弁では、蒸発燃料出口を通過する流体の圧力損失をP0、バルブ部材と弁座とが離間した状態のバルブ部材と弁座との隙間を通過する流体の圧力損失をP1、バルブ部材と弁座との隙間を通過した流体が通過するコイルスプリングの隙間または弁座とコイルスプリングの隙間を通過する流体の圧力損失をP2とした場合、P0≧P1≧P2の関係が成立する。
【0014】
また、本発明の流量制御弁では、蒸発燃料出口の断面積をS0、バルブ部材と弁座とが離間した状態のバルブ部材と弁座との隙間の断面積をS1、バルブ部材と弁座との隙間を通過した流体が通過する、コイルスプリングの隙間または弁座とコイルスプリングの隙間の断面積の総和をS2とした場合、S0≦S1≦S2の関係が成立する。
【0015】
本発明の流量制御弁は、流量制御弁内において流体の流路が狭められることを抑制することが可能であるため、蒸発燃料の圧力損失を低減することができる。したがって、本発明の流量制御弁は、所定の流量を得るための開弁量を小さくできるため、制御性を向上しつつ消費電力を低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】蒸発燃料処理装置の構成の概略を示す図である。
【
図2】第一実施形態による流量制御弁の開弁状態の断面図である。
【
図3】第一実施形態による流量制御弁の閉弁状態の断面図である。
【
図4】第一実施形態によるS0、S1およびS2の模式図である。
【
図6】従来の流量制御弁の、
図5に相当する部分の図である。
【
図7】第二実施形態による流量制御弁の断面図である。
【
図8】第二実施形態による第2のコイルスプリングの斜視図である。
【
図9】第三実施形態による流量制御弁の断面図である。
【
図10】第三実施形態による第2のコイルスプリングの斜視図である。
【
図11】第四実施形態による流量制御弁の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
図1は、蒸発燃料処理装置1の構成の概略を示す図である。燃料は、通常燃料タンク2から燃料供給経路3を通って内燃機関4に供給される。燃料タンク2の中で蒸発した蒸発燃料は、通路5a、流量制御弁6、通路5bを通り、キャニスタ7にて吸着剤としての活性炭等に吸着される。所定のタイミングで内燃機関4の負圧を利用して、キャニスタ7から、かつて蒸発していた燃料を吸い出し、通路5cを通って内燃機関4へと供給している。
【0018】
ここで、例えば車両の駐車中では、流量制御弁6は、閉弁状態が維持されるため、燃料タンク2の蒸発燃料がキャニスタ7内に流入することはない。また、例えばタンクキャップ8が開けられ、燃料タンク2への給油が開始され、給油が終了するまでの間は、流量制御弁6は、開弁状態が維持される。このため、給油の際に、燃料タンク2内の蒸発燃料が通路5a,流量制御弁6、通路5bを通ってキャニスタ7内の吸着材に吸着される。このように、流量制御弁6は、燃料タンク2とキャニスタ7との連通をするかどうかを制御するものである。
【0019】
以下、
図1に示す流量制御弁6の複数の実施形態について、図面に基づいて説明する。なお、複数の実施形態において、他の実施形態と実質的に同一の部位には同一の符号を付し、説明を省略する。また、
図2,3,5,6,7,9,11中の矢印付きの曲線は、蒸発燃料の移動経路の一例を示している。
【0020】
(第一実施形態)
図2は、第一実施形態による流量制御弁10の開弁状態の断面図である。また
図3は、第一実施形態による流量制御弁10の閉弁状態の断面図である。説明に際して、
図2に示した燃料タンク側の方向を方向F側という。
【0021】
流量制御弁10は、後述する蒸発燃料入口32側の第一流体通路21から、後述する蒸発燃料出口33に繋がる第二流体通路22へと流体が流れる経路を有し、第一流体通路21と第二流体通路22とを連通可能な接続空間23を有するバルブハウジング31を有する。ここで、第一流体通路21は、後述するシール部433よりも蒸発燃料入口32側の空間を言う。また、第二流体通路22は、後述する第2のコイルスプリング46よりも蒸発燃料出口33側の空間を言う。
【0022】
バルブハウジング31は、略円筒状の形状をなし、蒸発燃料入口32と蒸発燃料出口33とを有する。蒸発燃料入口32は燃料タンクにつながり、蒸発燃料出口33は、キャニスタにつながっている。第二流体通路22は、蒸発燃料出口33につながっている。蒸発燃料入口32の縁部34から方向F側とは直交する方向に延びる平面は、弁座35という。
【0023】
流量制御弁10は、接続空間23を流体が通過しないよう遮断したり、または接続空間23を流体が通過するよう連通したりするために、バルブハウジング31の弁座35に当接または離間可能なように設けられているバルブ部材41を有する。なお、
図2、および、後述する
図5,6,7,9,11は、バルブ部材41が弁座35に対して最も離間している状態を示している。
【0024】
バルブ部材41は、バルブ保持体42とバルブ43とを有する。バルブ保持体42は、有底の径小円筒部材421と、有底の径大円筒部材422とを有し、径小円筒部材421と径大円筒部材422とは、中心軸aを共通の中心軸としている。なお、この中心軸aは、円筒状の蒸発燃料入口32の中心軸でもある。径小円筒部材421の底部423は、方向F側にある。径大円筒部材422の底部424は、方向Fとは反対側にある。なお、径小円筒部材421の底部423は、径大円筒部材422の底部424よりも方向F側にあり、径大円筒部材422の底部424から突出している。
【0025】
バルブ43は、有底の円筒状の形状である。バルブ43の底部431は、方向F側にある。バルブ43の中心軸も中心軸aである。バルブ43の内側には、第1のコイルスプリング44が、バルブ43の底部431と径大円筒部材422の底部424とを付勢するように配置されている。
【0026】
第1のコイルスプリング44によって付勢されたバルブ43は、その底部431近傍に径方向に突出する鍔部432が、バルブ保持体42の径大円筒部材422の底部424とは反対側の開口部425に設けられた係合部426に係合する。第1のコイルスプリング44による付勢力は、係合部426の鍔部432の係合によって受け止められる。
【0027】
バルブ部材41は、駆動部51によって弁座35に当接または離間可能なように往復移動可能とされる。駆動部51は、ステッピングモータ52によって回転動作をする。駆動部51には、駆動部側送りねじ部53が設けられている。バルブ部材41は、駆動部側送りねじ部53とねじ結合するバルブ側ねじ部45が設けられている。
【0028】
駆動部側送りねじ部53とバルブ側ねじ部45とがねじ結合した状態で、駆動部51が特定の方向に回転することで、バルブ保持体42が方向F側、または方向F側とは反対側に動く。このようなバルブ保持体42の動きによって、バルブ部材41が、弁座35に当接または離間可能なように往復移動可能とされる。バルブ部材41が弁座35に当接するときは、バルブ部材41のバルブ43の底部431に円環状に配置されるシール部433が、弁座35に当接することによって、接続空間23を流体が通過しないよう遮断する。これにより、
図2に示す流量制御弁10の開弁状態から、
図3に示す流量制御弁10の閉弁状態への移行、またはその逆の移行が可能となる。バルブ部材41の往復移動の動作によって、第1のコイルスプリング44及び後述する第2のコイルスプリング46は、伸縮する。
【0029】
流量制御弁10は、接続空間23に対して第二流体通路22側に位置し、駆動部側送りねじ部53とバルブ側ねじ部45との間でのバックラッシュを防止する方向にバルブ部材41を付勢する第2のコイルスプリング46を備えている。
【0030】
第2のコイルスプリング46は、バルブ部材41のうち、バルブ保持体42の外周面427に配置される。第2のコイルスプリング46は、バルブ保持体42の径大円筒部材422の底部424から径方向外側に突出する鍔部428と、弁座35との双方を付勢するように配置される。鍔部428に対する第2のコイルスプリング46の付勢力が、駆動部側送りねじ部53とバルブ側ねじ部45との間でのバックラッシュを防止する。
【0031】
ここで、蒸発燃料出口33を通過する流体の圧力損失をP0とする。また、バルブ部材41と弁座35とが離間した状態の、バルブ部材41と弁座35との隙間を通過する流体の圧力損失をP1とする。また、バルブ部材41と弁座35との隙間を通過した流体が通過する、第2のコイルスプリング46の隙間、または弁座35と第2のコイルスプリング46の隙間を通過する流体の圧力損失をP2とする。その場合、P0≧P1≧P2の関係が成立する。
【0032】
また、蒸発燃料出口33の断面積をS0とする。バルブ部材41と弁座35とが離間した状態の、バルブ部材41と弁座35との隙間の断面積をS1とする。そして、バルブ部材41と弁座35との隙間を通過した流体が通過する、第2のコイルスプリング46の隙間、または弁座35と第2のコイルスプリング46の隙間の断面積の総和をS2とする。その場合、S0≦S1≦S2の関係が成立する。ここで、断面積は、流体の流れ方向に垂直な断面における、流体の流れる範囲の面積を言うものとする。以下同じ。
【0033】
S1の求め方は、
図2に示す円環のシール部433の直径Dにπを乗じ、シール部433と弁座35とが離間した状態の、シール部433と弁座35の間の距離xをさらに乗じる。つまりS1は、シール部433で囲われる円周の距離に、高さである距離xを乗じた、円筒の周面の面積である。S2は、
図2に示す第2のコイルスプリング46の巻線で形成された円筒の周面のうち、蒸発燃料が通過する範囲の周面の断面積である。S0は蒸発燃料出口33の断面積である。
【0034】
図4にS0、S1およびS2の模式図を示す。S1は、円筒の周面の面積である。S2は、S1よりも外周にある円筒の周面の面積である。S0は、S1およびS2とは離れた位置にある。
【0035】
S0≦S1≦S2の関係が成立するということは、S1およびS2によって、蒸発燃料の圧力損失が低減することを意味する。流量制御弁10内において蒸発燃料の圧力損失が大きくなると、所定の流量を得るための、開弁量が大きくなり、消費電力の増加につながる。その消費電力の増加を抑制しようというのが、S0≦S1≦S2の関係を成立させる意味の一つである。ここで、消費電力の増加を抑制することは、P0≧P1≧P2の関係が成立することによっても達成できる。
【0036】
P0≧P1≧P2およびS0≦S1≦S2の関係を成立させるためには、蒸発燃料が通過しようとする範囲の第2のコイルスプリング46の巻線が、その通過を邪魔しないような形状であることが必要となる。第一実施形態では、第2のコイルスプリング46の巻線ピッチを全域に渡って略均等にし、隣り合う巻線との隙間を十分広くして、蒸発燃料の通過をスムーズにし、P0≧P1≧P2およびS0≦S1≦S2の関係を成立させている。
【0037】
図5は
図2のV部拡大図である。第一実施形態では、開弁状態で蒸発燃料が、第2のコイルスプリング46のうち、巻線部C1と巻線部C2との隙間を殆どが通過する。
図4の模式図に示したように、S2はS1よりも外周にある円筒の周面の面積であり、S2の方が面積は大きくなりやすい。また、巻線部C1と巻線部C2との隙間は、距離xよりも広く、S1≦S2およびP1≧P2の関係が成立する。そして、蒸発燃料出口33の断面積を適宜設定することでP0≧P1≧P2およびS0≦S1≦S2が成立する。
【0038】
(従来の流量制御弁)
図6は、特許文献1に記載の従来の流量制御弁100の、
図5に相当する部分の図である。従来の流量制御弁100における、第一実施形態の流量制御弁10と異なる箇所は、第2のコイルスプリング146の形状のみである。第2のコイルスプリング146は、隣り合う巻線との隙間が、第一実施形態の第2のコイルスプリング46に比べて狭い。しかも、蒸発燃料の通路を塞ぐ位置に巻線部C10が存在するため、そこでの圧力損失が大きい。従来の流量制御弁100は、蒸発燃料が巻線部C10と弁座35の隙間を主に通り、巻線部C10と巻線部C20の隙間も通る。
【0039】
その結果、従来の流量制御弁100の、蒸発燃料出口33を通過する流体の圧力損失をP10とする。また、バルブ部材41と弁座35とが離間した状態の、バルブ部材41と弁座35との隙間を通過する流体の圧力損失をP11とする。また、バルブ部材41と弁座35との隙間を通過した流体が通過する、第2のコイルスプリング146の隙間、または弁座35と第2のコイルスプリング146の隙間を通過する流体の圧力損失をP12とする。その場合、P12≧P10≧P11の関係が成立する。
【0040】
また、蒸発燃料出口33の断面積をS10とする。そして、バルブ部材41と弁座35とが離間した状態の、バルブ部材41と弁座35との隙間の断面積をS11とする。そして、バルブ部材41と弁座35との隙間を通過した流体が通過する、第2のコイルスプリング146の隙間、または弁座35と第2のコイルスプリング146の隙間の断面積の総和をS12とする。その場合、S12≦S10≦S11の関係が成立する。
【0041】
(第二実施形態)
第二実施形態による流量制御弁は、第一実施形態の流量制御弁10と比べて、第2のコイルスプリング46の形状のみ異なる。
図7は、第二実施形態による流量制御弁11の断面図である。
【0042】
流量制御弁11の第2のコイルスプリング47は、バルブ部材41の往復移動方向における弁座35側の隣り合う巻線の隙間が、バルブ部材41が弁座35から最も離間するときの、バルブ部材41と弁座35との間の距離に比べ大きい。また、第2のコイルスプリング47の弁座35側は、第2のコイルスプリング47の弁座35側と鍔部428側との中間部471よりも隣り合う巻線との隙間が大きい。
【0043】
第2のコイルスプリング47の中間部471の隣り合う巻線との隙間の間隔Aは、第2のコイルスプリング47のバルブ部材41の往復移動方向における弁座35側の隣り合う巻線との隙間の間隔Bよりも小さい。第2のコイルスプリング47の斜視図を
図8に示す。
【0044】
第二実施形態による流量制御弁11は、間隔Bを十分に大きくとっているため、第一実施形態と同様にP0≧P1≧P2およびS0≦S1≦S2の関係が成立する。また、第二実施形態による流量制御弁11は、第一実施形態と同様に、蒸発燃料の圧力損失を小さく維持することで、消費電力の増加を抑制できる。
【0045】
(第三実施形態)
第三実施形態による流量制御弁は、第一実施形態の流量制御弁10と比べて、第2のコイルスプリング46の形状のみ異なる。
図9は、第三実施形態による流量制御弁12の断面図である。
【0046】
第2のコイルスプリング48は、バルブ部材41の往復移動方向における弁座35側の隣り合う巻線の隙間が、バルブ部材41が弁座35から最も離間するときの、バルブ部材41と弁座35との間の距離に比べ大きい。また第2のコイルスプリング48は、バルブ部材41の往復移動方向における鍔部428側の隣り合う巻線の隙間が、バルブ部材41が弁座35から最も離間するときの、バルブ部材41と弁座35との間の距離に比べ大きい。ここで、第2のコイルスプリング48の「鍔部428側」とは、バルブ部材41の往復移動方向における、弁座35とは反対側のことである。また、第2のコイルスプリング48の弁座35側および鍔部428側は、第2のコイルスプリング48の弁座35側と鍔部428側との中間部481よりも、隣り合う巻線との隙間が大きい。
【0047】
第2のコイルスプリング48の中間部481の隣り合う巻線との隙間の間隔A1は、第2のコイルスプリング48のバルブ部材41の往復移動方向における弁座35側の隣り合う巻線との隙間の間隔B1よりも小さい。また、第2のコイルスプリング48の中間部481の隣り合う巻線との隙間の間隔A1は、第2のコイルスプリング48のバルブ部材41の往復移動方向における鍔部428側の隣り合う巻線との隙間の間隔B2よりも小さい。そして、間隔B1は、間隔B2と略同じ寸法である。第2のコイルスプリング48の斜視図を
図10に示す。
【0048】
第三実施形態による流量制御弁12は、間隔B1およびB2を十分に大きくとっているため、第一実施形態と同様にP0≧P1≧P2およびS0≦S1≦S2の関係が成立する。また、第三実施形態による流量制御弁12は、第一実施形態と同様に、蒸発燃料の圧力損失を小さく維持することで、消費電力の増加を抑制できる。さらに、第2の実施形態による流量制御弁11は、組み立ての際に第2のコイルスプリング47の配置方向に気を使う必要があるが、第三実施形態による流量制御弁12の組み立ての際には、第2のコイルスプリング48の配置方向に気を使う必要はない。これは、隙間の間隔B1が、隙間の間隔B2と略同じ寸法であることから、どちらが弁座35側に来ても同等の流量制御弁12の構成となるためである。
【0049】
(第四実施形態)
第四実施形態による流量制御弁は、第一実施形態の流量制御弁10と比べて、第2のコイルスプリング49の形状のみ異なる。
図11は、第三実施形態による流量制御弁13の断面図である。
【0050】
流量制御弁13の第2のコイルスプリング49では、巻線の断面形状は、バルブ部材41の往復移動方向に直交する方向の寸法がバルブ部材41の往復移動方向の寸法に比べ大きい、長方形となっている。
【0051】
第四実施形態による流量制御弁13は、第一実施形態と同様にP0≧P1≧P2およびS0≦S1≦S2の関係が成立する。また、第四実施形態による流量制御弁13は、第一実施形態と同様に、蒸発燃料の圧力損失を小さく維持することで、消費電力の増加を抑制できる。その理由は、第2のコイルスプリング49の巻線の断面形状が長方形であり、バルブ部材41の往復移動方向に潰れているため、蒸発燃料の通路を広く確保可能だからである。例えば蒸発燃料の通路を塞ぐ位置に第2のコイルスプリング49の巻線が存在していたとしても、蒸発燃料の通路を広く確保可能なため、そこでの圧力損失を小さくできる。
【0052】
(他の実施形態)
第四実施形態による流量制御弁13に用いられる第2のコイルスプリング49の断面形状は、長方形に限らず、バルブ部材41の往復移動方向の寸法よりも、その方向と直交する方向の寸法が大きい楕円形等を採用できる。
【0053】
以上、本発明はこのような実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々の形態で実施可能である。
【符号の説明】
【0054】
6,10,11,12,13,100・・・流量制御弁
21・・・第一流体通路
22・・・第二流体通路
23・・・接続空間
31・・・バルブハウジング
32・・・蒸発燃料入口
33・・・蒸発燃料出口
35・・・弁座
41・・・バルブ部材
45・・・バルブ側ねじ部
46,47,48,49,146・・・第2のコイルスプリング(コイルスプリング)
51・・・駆動部
53・・・駆動部側ねじ部