IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 大王製紙株式会社の特許一覧

(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-02-08
(45)【発行日】2022-02-17
(54)【発明の名称】吸収性物品
(51)【国際特許分類】
   A61F 13/84 20060101AFI20220209BHJP
   A61F 13/51 20060101ALI20220209BHJP
   A61F 13/514 20060101ALI20220209BHJP
【FI】
A61F13/84
A61F13/51
A61F13/514 500
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2018049279
(22)【出願日】2018-03-16
(65)【公開番号】P2019154979
(43)【公開日】2019-09-19
【審査請求日】2020-09-29
(73)【特許権者】
【識別番号】390029148
【氏名又は名称】大王製紙株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】安達 泰子
【審査官】住永 知毅
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-082132(JP,A)
【文献】特開2005-046263(JP,A)
【文献】特開2008-086660(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2007/0265591(US,A1)
【文献】特開2013-176453(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2012/0232511(US,A1)
【文献】特開平11-192385(JP,A)
【文献】特開平10-071165(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61F13/15-13/84
A61L15/16-15/64
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
透液性の内側シートと、不透液性の外側シートとを備え、前記内側シートと前記外側シートとの間に設けられた吸収体とを備えた面状の吸収性物品であって、
前方及び後方の端部領域の少なくとも一方の、前記外側シート、触覚により識別可能な識別体を備えており、
前記識別体は、気体が封入された膨出状態から、前記気体が放出されることで収縮状態となるように構成されている、吸収性物品。
【請求項2】
前記識別体は、脆弱部を有する、請求項1に記載の吸収性物品。
【請求項3】
前記識別体は、前記外側シート上に配置され、前記外側シートを破断することによって前記収縮状態となるように構成されている、請求項1又は2に記載の吸収性物品。
【請求項4】
前記外側シートは開裂可能線を有し、
前記識別体は、前記開裂可能線上又は前記開裂可能線の延長線上に配置され、前記開裂可能線の開裂によって前記収縮状態となる、請求項3に記載の吸収性物品。
【請求項5】
前記外側シートに、襞が突き合わされてなる逆箱襞が形成されており、
前記識別体は、前記襞の縁部上に配置され、前記逆箱襞を開くことによって前記収縮状態となる、請求項1又は2に記載の吸収性物品。
【請求項6】
前後方向に直交する幅方向に引っ張ることによって、前記識別体が前記収縮状態となる、請求項5に記載の吸収性物品。
【請求項7】
前記識別体は、前記外側シートに接着された密閉袋状体である、請求項1から6のいずれか一項に記載の吸収性物品。
【請求項8】
前記識別体は、前記外側シートと、前記外側シートに接着された袋状半片とによって形成された空間内に前記気体が封入されてなる、請求項1から6のいずれか一項に記載の吸収性物品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、吸収性物品に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、吸収性物品として、パッドタイプ、テープタイプ、パンツタイプ等の使い捨ておむつ、生理用ナプキン等が知られている。吸収性物品は、略平面状であって、身体の形状に合わせて所定の向きで装着するように構成されているものが多い。
【0003】
このような吸収性物品の中には、光の乏しい暗い場所で装着する場合等でも吸収性物品の向きを認識できるような工夫がなされているものがある。例えば、特許文献1には、手の指先の感覚で認識できる凹凸を設けた吸収性物品が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2005-46263号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に開示の吸収性物品では、凸部の厚みはその周囲の厚みよりも大きくなっており、このような厚みは、吸収性物品の装着後においても変わらない。そのため、吸収性物品を装着した後に凸部を含む範囲が圧迫された場合、例えば、凸部が設けられた部分の上に身体が載るように横たわった場合等には、凸部が身体に当たって違和感を生じる場合がある。
【0006】
上記の点に鑑みて、装着する向きが触覚によって認識可能であり、且つ装着中の違和感を低減できる吸収性物品を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の第一の形態は、透液性の内側シートと、不透液性の外側シートとを備え、前記内側シートと前記外側シートとの間に設けられた吸収体とを備えた略平面状の吸収性物品であって、前方及び後方の端部領域の少なくとも一方の、前記外側シート側に、触覚により識別可能な識別体を備えており、前記識別体は、気体が封入された膨出状態から、前記気体が放出されることで収縮状態となるように構成されている。
【0008】
上記第一の形態によれば、前方及び後方の端部領域の少なくとも一方に、触覚により識別可能な識別体を備えている。そのため、光の乏しい暗い場所でも、また視力弱者であっても、吸収性物品の向き(吸収性物品の前方又は後方がどちらであるか)を識別することができるので、吸収性物品を適切に装着することができる。
【0009】
また、本形態における識別体は、気体が封入された膨出状態から収縮状態となるように構成されている。そのため、吸収性物品の装着時に又は装着後に、識別体に封入されていた気体を放出させて識別体を収縮させ、識別体の厚みを小さくすることができる。これにより、吸収性物品の装着中、識別体が設けられている領域が圧迫された場合等に、識別体が身体に押し付けられることによって生じる違和感を低減することができる。
【0010】
本発明の第二の形態では、前記識別体は脆弱部を有する。
【0011】
上記第二の形態によれば、識別体が脆弱部を有しているので、脆弱部において識別体が破断しやすくなっている。そのため、比較的小さな力で識別体を破断させ、その破断された箇所から気体を放出させることができるので、識別体を容易に収縮状態とすることができる。
【0012】
本発明の第三の形態では、前記識別体は、前記外側シート上に配置され、前記外側シートを破断することによって前記収縮状態となるように構成されている。
【0013】
上記第三の形態によれば、識別体を外側シートの破断によって収縮状態とすることができる。外側シートを破断する動作は比較的意識的に行われるものであるので、装着前に誤って識別体を圧潰する等して収縮状態にしてしまうことを防止することができる。
【0014】
本発明の第四の形態では、前記外側シートは開裂可能線を有し、前記識別体は、前記開裂可能線上又は前記開裂可能線の延長線上に配置され、前記開裂可能線の開裂によって前記収縮状態となる。
【0015】
上記第四の形態によれば、外側シートが開裂可能線を有し、開裂可能線の開裂によって識別体が収縮状態となるように構成されている。このため、外側シートの破断を容易に、また確実に行うことができる。
【0016】
本発明の第五の形態では、前記外側シートに、襞が突き合わされてなる逆箱襞が形成されており、前記識別体は、前記襞の縁部上に配置され、前記逆箱襞を開くことによって前記収縮状態となる。
【0017】
上記第五の形態によれば、外側シートに形成された逆箱襞を開くことによって、識別体が収縮状態になるように構成されている。そのため、比較的小さな力で識別体を収縮状態とすることができる。
【0018】
本発明の第六の形態では、前後方向に直交する幅方向に引っ張ることによって、前記識別体が前記収縮状態となる。
【0019】
上記第六の形態によれば、外側シートを幅方向に引っ張ることで、識別体を収縮状態とすることができる。吸収性物品を装着する際には、通常、端部領域を幅方向外側に引っ張って伸ばす。そのため、通常の自然な動作によって、開裂可能線を開裂させるか又は箱襞を開くことによって、識別体を収縮状態とすることができる。
【0020】
本発明の第七の形態では、前記識別体は、前記外側シートに接着された密閉袋状体である。
【0021】
上記第七の形態によれば、識別体が密閉袋状体であるので、膨出状態では、識別体内に気体を確実に封入し、識別体の膨出状態を確実に維持することができる。
【0022】
本発明の第八の形態では、前記外側シートと、前記外側シートに接着された袋状半片とによって形成された空間内に前記気体が封入されてなる。
【0023】
上記第八の形態によれば、識別体は、外側シートと袋状半片とによって形成される空間に気体が封入されてなる。外側シートが識別体の構成要素として利用されているので、識別体を形成するための材料を低減することができる。
【発明の効果】
【0024】
本発明の一形態によれば、装着する向きが触覚によって認識可能であり、且つ装着中の違和感を低減できる吸収性物品を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1A】本発明の一形態による吸収性物品を外面から見た平面図である。
図1B図1AのI-I線断面図である。
図1C図1Bに示す吸収性物品の識別体が収縮状態に変化した後の図である。
図2A】本発明の一形態による吸収性物品を外面から見た平面図である。
図2B図2AのII-II線断面図である。
図3A】本発明の一形態による吸収性物品を外面から見た平面図である。
図3B図3AのIII-III線断面図である。
図4A】本発明の一形態による吸収性物品を肌対向面から見た平面図である。
図4B図4AのIV-IV線断面図である。
図4C図4Aの吸収性物品の識別体が収縮状態に変化した後の図である。
図4D図4CのV-V線断面図である。
図5A】本発明の一形態による吸収性物品を肌対向面から見た平面図である。
図5B図5AのVI-VI線断面図である。
図5C図5Aの吸収性物品の識別体が収縮状態に変化した後の図である。
図5D図5CのVII-VII線断面図である。
図6A】本発明の一形態による吸収性物品を肌対向面から見た平面図である。
図6B図6AのVIII-VIII線断面図である。
図6C図6Bに示す吸収性物品の識別体が収縮状態に変化した後の図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら説明する。なお、各図面において、特に説明がない限り、同一の又は対応する構成については同一の符号を付して説明を省略する場合がある。
【0027】
図1Aに、本発明の一形態による吸収性物品100を外面(装着時に、肌に対向する面とは反対側の面)の側から見た平面図を示す。また、図1Bに、図1AのI-I線断面図を示す。以下においては、本発明の形態を、パッドタイプ使い捨ておむつ(尿取りパッド)の例に基づき説明する。
【0028】
図1A及び図1Bに示すように、吸収性物品100は、装着時に肌に対向する面(肌対向面ともいう)側に設けられた内側シート22と、肌対向面とは反対側の外面に設けられた外側シート21と、両シート21、22間に設けられた吸収体30とを備え、略平面状の形状を有している。面状とは、薄く広がりをもった平坦な形状(シート状又は層状ともいう)を指すが、表面が部分的に膨出していたり、部分的に溝が形成されたりしているものも含まれる。
【0029】
外側シート(バックシートともいう)21は、不透液性であって、体液の外面からの漏れを防止できるものである。外側シート21は、吸収性物品100の最外面を構成することができ、吸収性物品100の装着時には、下着や衣類、おむつのアウター等に接するシートとなり得る。外側シート21としては、ポリエチレンフィルム等の他、ムレ防止の点から遮水性を損なわずに透湿性を備えたシートも用いることができる。この遮水・透湿性シートは、例えばポリエチレンやポリプロピレン等のオレフィン樹脂中に無機充填材を溶融混練してシートを形成した後、一軸又は二軸方向に延伸することにより得られる微多孔性シートを用いることができる。
【0030】
内側シート(トップシートともいう)22は透液性であり、体液を速やかに透過させて吸収体30へと移行させる機能を有するものである。吸収性物品100の装着時には、内側シート22は肌に接するシートとなり得る。内側シート22としては、有孔又は無孔の不織布や穴あきプラスチックシート等を用いることができる。不織布を構成する素材繊維としては、ポリエチレン、ポリプロピレン等のオレフィン系、ポリエステル系、アミド系等の合成繊維の他、レーヨン、キュプラ等の再生繊維、綿等の天然繊維を用いることができる。
【0031】
内側シート22と吸収体30との間には、吸収体30により吸収した体液の逆戻りを防止する機能を有する中間シートを介在させることもできる。中間シートとしては、保水性が低く且つ液透過性の高い素材、例えば各種の不織布、メッシュフィルム等を用いることが好ましい。
【0032】
吸収体30は、パルプ繊維の積繊体、セルロースアセテート等のフィラメントの集合体、不織布等であってよく、必要に応じて粒子状等の高吸収性ポリマーを混合、固着等してなるものを用いることができる。高吸収性ポリマー粒子を混合する場合等、粒子のこぼれを防ぐためには、吸収体30は包装シートで包まれていた方が好ましい。また、吸収体30として、パルプ等の繊維状物を含まないポリマーシートを部分的に用いることもできる。
【0033】
吸収体30における繊維目付、及び高吸収性ポリマーの目付は適宜定めることができるが、繊維目付は100~700g/m2、好ましくは100~600g/m2程度とすることができ、また吸収性ポリマーの目付は50~550g/m2、好ましくは100~350g/m2程度とすることができる。また、吸収体30の厚みは、溝やスリットが形成されている部分を除いて、3~30mm、好ましくは7~15mm程度とすることができる。
【0034】
吸収体30は、単層であってもよいし、2層以上の複数層から構成されていてもよい。また、吸収体30は、不織布やクレープ紙等の包装シートによって包まれていてもよい。吸収体30が複数層から構成されている場合には、包装シートを層間に介在させることもできる。包装シートは、無着色(すなわち、白色)であってもよいし、着色されていてもよい。色は、排出された体液の色を目立たなくすることができる色、例えば体液の色に近い色、又は体液の色の補色若しくはそれに近い色等にすることができる。
【0035】
また、吸収体30には、体液の流れをコントロールしたり、身体に合せた変形を容易にしたりするために、溝やスリットが設けられていてもよい。
【0036】
本形態では、吸収性物品100は、平面視で、全体として細長い形状を有している。すなわち、吸収性物品100は、第1方向(前後方向)D1に所定の長さを有し、第1方向D1と直交する第2方向(幅方向)D2に、上記長さより小さい所定の幅を有する。吸収性物品100の前後方向D1の長さ(全長)は、350~700mm程度、幅方向D2の長さ(全幅)は130~400mm程度とすることができる。吸収性物品100の形状は、前後方向に延びる中心線(前後方向中心線)CLを対称線として線対称とすることができるが、必ずしも線対称である必要はない。また、吸収性物品100の構成(内側シート21、外側シート22、吸収体30等の各要素の大きさ、形状、配置等)も線対称であってよいが、吸収性物品100の形状及び構成共に線対称でなくてもよい。
【0037】
図1Aに示すように、吸収性物品100においては、前方の端部を含む領域である前方端部領域Fと、後方の端部を含む領域である後方端部領域Rとを有しており、前方端部領域Fと後方端部領域Rとの間が中央領域Mとなっている。中央領域Mは、その前方において股間対応領域Cを含んでいてよい。また、図1Aの形態では、前方端部領域F及び後方端部領域Rに股間対応領域Cを含めていないが、股間対応領域Cの一部を含めてもよい。
【0038】
本明細書において、「股間対応領域」とは、使用時に身体の股間(股下)に対応させる部分を意味する。股間対応領域Cは、例えば、吸収性物品の前後方向中央若しくはその近傍から前方の所定位置までの範囲であってもよいし、吸収性物品の前後方向中央の所定範囲であってもよい。なお、図示の形態では、吸収性物品100の幅はほぼ一定であるが、吸収性物品100には、幅が狭くなっている括れ部分が形成されていてもよい。そして、括れ部分が形成されている領域又はその一部を股間対応領域とすることもできる。
【0039】
なお、前方端部領域F及び後方端部領域Rの前後方向D1の長さは、40~100mm程度とすることができる。なお、吸収性物品100の装着時には、前方(前方端部領域Fの側)が腹側に、後方(後方端部領域Rの側)が背側になるようにする。また、前方端部領域F及び/又は後方端部領域Rを、単に端部領域という場合がある。
【0040】
吸収性物品100の端部(前後方向D1の両端部及び幅方向D2の両端部)の吸収体30がない部分においては、外側シート21と内側シート22とが貼り合わされていてよい。また、吸収性物品100の幅方向D2の両端部(両側部)には、前後方向D1に沿って、ギャザーを形成するための伸縮部材が組み込まれたギャザーシート24、24(或いはサイド不織布)が設けられていてもよい。その場合、吸収性物品100の幅方向D2の両端部においては、ギャザーシート24と外側シート21とが貼り合されていてもよい。なお、上記の貼り合せは、例えば、ホットメルト接着剤、ヒートシール、超音波シールによって形成することができる。
【0041】
図1A及び図1Bに示すように、吸収性物品100は、外面側(外側シート21側)に、触覚により識別可能な識別体80を備えている。図1A及び図1Bは、識別体80に気体82が封入され、吸収性物品100の外面から膨出又は突出している使用前の状態(膨出状態)を示している。膨出状態にある識別体80は、手や指等で触れることによってその存在を容易に認識することができる。よって、光の乏しい暗い部屋等でも、装着者(介助者が装着を行う場合には介助者)は、装着の向き(どちらが前でどちらが後か)を容易に識別することができる。また、視覚の弱い装着者又は装着介助者であっても、装着の向きを容易に識別することができる。
【0042】
図1Aでは、識別体80は、前方端部領域Fに設けられているが、後方端部領域Rに設けられていてもよいし、前方端部領域F及び後方端部領域Rの両方に設けられていてもよい。識別体が端部領域F、Rにそれぞれ設けられている場合には、両識別体を相違させ、その相違を触覚により識別できるよう構成することが好ましい。
【0043】
吸収性物品100における識別体80は、密閉された袋状体82であり、この袋状体82が外側シート21に接着されている。このような識別体80は、気体86を封入した袋状体82を予め作製しておき、この袋状体82を所定の面積の接着面82a(図1Aに斜線で示す)で外側シート21に接着することによって、作製することができる。
【0044】
図1Aに示すように、袋状体82は、袋状体82の平面視の面積の半分以上の面積を有する接着面82aで外側シート21に接着されていてよい。これにより、袋状体82が外側シート21から外れにくくなり、吸収性物品100の使用前に識別体80が離脱してしまうことを防止できる。また、例えば、袋状体82を球状に構成しておいて、球状を実質的に維持したまま外側シート21に接着することで、図1Bの形態よりも小さな面積の接着面で袋状体82と外側シート21とを接着させることもできる。
【0045】
袋状体82と外側シート21との接着は、接着剤、両面接着テープ、両面粘着テープ等によって行うことができる。また、袋状体82及び/又は外側シート21の材質によっては、熱融着を利用して接着を行うこともできる。
【0046】
図1A及び図1Bにおける膨出状態にある識別体80は、袋状体82を破断させることによって内部の気体86を放出させ、収縮状態へと変化させることができる。袋状体82の破断は、例えば、識別体82上に指や掌等を置いて力を加え、袋状体82を圧潰することによって行うことができる。
【0047】
図1Cに、図1Bに示す識別体80が圧潰された後の状態を示す。図1Cに示す状態では、識別体80では、袋状体82の一部が破断しており、封入されていた気体86が放出されている。これにより、袋状体82は萎んで縮む。本明細書では、この図1Cに示すように、識別体80の膨出部分から気体86が放出されて膨出が解消された状態を収縮状態という。なお、本形態では、袋状体82が破断する部位は、袋状体82の構成、接着形式、圧潰の仕方等による。袋状体82と外側シート21との接着面82aにおける剛性が高い場合、接着面82aの縁部に応力が集中しやすいため、接着面82aの縁部付近で破断する場合もある。また、袋状体82の形状によっては、気体からの圧力により生じる応力が集中しやすい部位で破断する場合もある。破断部位は、線状にも点状にもなり得る。
【0048】
このように、識別体80は、膨出状態から、封入されていた気体86を放出し、収縮状態にすることができるので、吸収性物品100の装着時に又は装着後に、識別体80の厚みを小さくする、或いは厚みを実質的になくすことができる。
【0049】
従来の構成では、識別体は、装着後においても、触覚により識別可能な厚みを有したままである。そのため、識別体が設けられている部分が圧迫された場合、例えば、強い伸縮性を有する衣類を着用した場合や、識別体が設けられている部分の上に身体が載るように横たわった場合等でも、識別体が身体に当たって違和感を生じる場合がある。これに対し、本形態による上記構成によれば、吸収性物品100の装着時又は装着後に識別体80を収縮状態にすることができ、識別体の厚みを小さくする、又は実質的になくすことができるので、識別体80によって生じ得る装着中の違和感を低減する、又はなくすことができる。
【0050】
なお、吸収性物品は、折り畳まれて層状に重ねて保存されたり、パッケージに押し込まれて保存されたりする場合があり、下の層に位置する吸収性物品の識別体に大きな圧縮力が加わる可能性がある。よって、そのような力に対しても圧潰しにくい構成とすることが好ましい。その場合、封入された気体の放出を圧潰によらずに行う構成とすることができる。例えば、袋状体82を備えた識別体80を収縮状態とする際に、袋状体82の側面から力を加えて袋状体82を転がすようにして外側シート21から剥がすように動かすことで、接着面82aの縁部で袋状体82を破断できるよう構成することもできる。
【0051】
また、道具を用いて袋状体82に穴やキズを作り、そこから気体86を放出させてもよいが、識別体80は、道具を用いることなく、人の手による通常の力で、袋状体82内の気体86を放出させて収縮状態にできるように構成されていることが好ましい。
【0052】
袋状体82に封入されている気体86は、コスト面から空気であることが好ましいが、窒素や希ガス等の反応性の低い気体を用いてもよい。また、気体86に、芳香成分、消臭成分等の所定の物質を含有させておくこともできる。その場合、識別体80に封入されていた気体86を吸収性物品100の外部(つまり、部屋等の空間内)に放出できるような形態であれば、その物質が部屋等の空間に広がって、装着時に芳香作用や消臭作用を奏する吸収性物品100を提供することができる。その場合、芳香成分を調整することで、吸収性物品の装着時又は交換時(例えば、いわゆるおむつ交換時)に、癒し効果を付与することもできる。
【0053】
識別体80の袋状体82を形成する材料は、気体86を封入して膨出状態を形成し、維持できるような気密性を有し、且つ一部を破断させることによって封入されていた気体を放出することができるものであれば、特に限定されない。袋状体82を形成する材料としては、通常の装着動作において、又は装着後に装着者の身体の動きに伴って、吸収性物品100におけるシート状の部材(外側シート21や内側シート22)とともに識別体80がある程度変形できるよう、可撓性を有しているものが好ましい。
【0054】
袋状体82を形成する材料は、例えば、樹脂フィルム等とすることができる。具体的には、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリスチレン(PS)、ポリ塩化ビニル(PVC)、エチレン-酢酸ビニル共重合体(EVA)、ポリアミド(PA)等の樹脂フィルムを用いることができる。可撓性フィルムの材質としては、柔軟で取扱い性に優れること、安価であること等から、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート等が好ましく、無臭であり、耐水性・耐薬品性にも優れ、低コストで大量生産が可能である点からは、ポリエチレンが好ましい。ポリエチレンとしては、高密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン等を用いることができる。複数のフィルムを積層したラミネートフィルムであってもよいし、上記のうち2種類以上の樹脂の混合物からなるフィルムであってもよい。
【0055】
袋状体82を形成する材料(フィルム)の厚みは、袋状体82の材質や袋状体82全体の形状、後述の脆弱部の有無等の構成にもよって適宜選択することができるが、25~50μm程度とすることができる。
【0056】
図1Aの形態では、識別体80は、吸収性物品100の前方の端部から離れた位置に存在している。この場合、吸収性物品100の端部から識別体80までの距離は、5~50mm程度であってよい。但し、識別体80は、平面視で、吸収性物品100の端部からはみ出すように配置されていてもよい。
【0057】
識別体80が設けられている幅方向D2の位置は、特に限定されない。但し、識別体80が幅方向Dの中央付近、特に、図1Aの形態のように前後方向中心線CL上に配置されていると、手探りでも識別体80を探しやすいので、好ましい。また、暗い環境でも、幅方向D2の中央の位置が分かりやすくなるので、装着作業が容易になる。
【0058】
また、図1Aの形態では、識別体80は、平面視で、吸収体30が配置されている領域内に位置するが、識別体80の位置は、図示のものに限られない。例えば、識別体80は、吸収体30が配置されていない領域、例えば、外側シート21と内側シート22とが貼り合された領域、又は外側シート21とギャザーシート24とが貼り合された領域に配置されていてもよい。また、識別体80は、平面視で、吸収体30が配置されている領域と配置されていない領域との両方に跨って配置されていてもよい。
【0059】
識別体80の膨出状態での膨出部分(外面から突出している識別体80の部分、図1Aの形態では袋状体82)の平面視形状は円形であり、また断面形状は略楕円形となっているが、識別体80の膨出部分の形状は図示のものに限られない。例えば、識別体80の膨出部分の平面視形状は、楕円形、三角形、四角形等の多角形、ハート形、滴形等、又はそれに近い形状であってよい。断面形状も、楕円形、多角形等、又はそれに近い形状であってよい。
【0060】
封入された気体の圧力によって識別体80に生じる応力を均一にしたいのであれば、識別体80の膨出状態での形状(平面視形状及び断面形状を含む)は、角隅のない形状(頂点がないか又は頂点が丸められた形状)とすることができる。識別体80の膨出状態での形状は、球形、又は楕円球形とすることができる。一方、封入された気体の圧力によって識別体80に生じる応力を所定の場所に集中させて、所望の位置に破断部位を形成したい場合には、識別体80の膨出状態での形状を角隅のあるものとし、角隅において破断が生じるように構成することもできる。
【0061】
識別体80は、複数設けられていてもよい。例えば、識別体80は、平面視で円形の膨出部分の集合体とすることができ、その集合体を点字とすることもできる。これにより、視力の弱い装着者又は装着介助者が触読して吸収性物品100の装着する向きを識別することも可能になる。
【0062】
識別体80の膨出部分の大きさは特に限定されないが、識別体80の膨出部分の前後方向D1の長さが5~35mmであり、幅方向D2の長さが5~35mmであると好ましい。また、識別体80の膨出状態において封入されている気体の体積は、130~19,300mmであると好ましい。また、識別体80の膨出部分の厚み(吸収性物品100の厚み方向の長さ)は、5~15mm程度とすることができる。
【0063】
吸収性物品を装着する場合、装着介助者は手袋をはめて手袋越しに吸収性物品に触れることが多いが、その場合には、素手で吸収性物品に触れる場合に比べて、触覚は鈍りやすい。識別体80の膨出部分が上記のような平面視の大きさ及び厚みを有することで、装着者又は装着介助者は、手袋をはめて触覚が鈍っても吸収性物品100の装着の向きを容易に認識することができる。
【0064】
図2Aに、本発明の別の形態による吸収性物品200を外面から見た平面図を示す。図2Aには、前方端部領域F及びその付近の領域のみを部分的に示す。また、図2Bに、図2AのII-II線断面図を示す。
【0065】
吸収性物品200の基本的な構成は、上記の吸収性物品100(図1A図1C)と同様であるが、識別体280が、袋状体から構成されているのではなく、外側シート21と、袋状半片284とによって構成されている点で、吸収性物品100と異なる。識別体280においては、外側シート21と袋状半片284によって形成された空間内に、気体86が封入されている。本形態では、外側シート21を識別体280の構成要素として利用することができるので、識別体280を構成するための材料を低減することができる。
【0066】
図2A及び図2Bは、識別体280内に気体86が封入された膨出状態を示している。図2A及び図2Bに示すように、袋状半片284は、その周縁で、外側シート21に接着されている。つまり、袋状半片284と外側シート21との接着面284a(図2Aに斜線で図示)は、平面視で環状に形成されている。接着面284aの環の平面視形状は特に限定されず、袋状半片284の平面視形状と同じしてもよいし相違させてもよい。また、封入された気体86から受ける圧力を均一としたい場合には、接着面284aの平面視形状を角隅のない形状とすることが好ましく、円形とすることがより好ましい。
【0067】
袋状半片284と外側シート21との間の接着の形式は、識別体280の膨出状態において気体が放出されない形式であれば、好ましくは両者間に気密が維持されるのであれば、特に限定されない。吸収性物品100について説明した、袋状体82と外側シート21との接着形式と同様の形式を用いることができる。
【0068】
吸収性物品200における識別体280を形成するには、膨らみを有するように、且つ接着面284aのための代を周縁に有するよう成形又は変形加工した袋状半片284を、気体が封入されるようにして、外側シート21に、接着面284aで接着することができる。また、袋状半片284と外側シート21とを接着面284aで接着した後、外側シート21又は袋状半片284にニードルを刺して気体を注入してもよい。但し、後者の場合には、ニードルを抜いた後に、ニードルによって外側シート21又は袋状半片284に形成された穴を気密が保たれるように塞ぐか、又は識別体280の膨出状態では、封入された気体が外部へ放出されないような逆止弁とするのが好ましい。
【0069】
図2A及び図2Bにおける膨出状態にある識別体280は、袋状半片284を破断することによって、又は袋状半片284と外側シート21との間の接着を壊すことによって、内部の気体86を放出させ、収縮状態とすることができる。例えば、識別体80(図1A図1C)で述べたように、識別体280上に指や掌等を置いて力を加えることによって、識別体280を圧潰することができる。
【0070】
膨出状態から収縮状態への変化が、袋状半片284の破断によるか又は袋状半片284と外側シート21との間の接着破壊によるのか、そして、どの位置で上記破断若しくは接着破壊が起こるのかは、袋状半片284の材質や厚さ、袋状半片284と外側シート21との接着形式、圧潰の仕方等による。
【0071】
袋状半片284の材質や厚さは、袋状体82(図1A図1C)について上述したものと同様のものとすることができる。また、その他の構成、すなわち、気体86の種類、袋状半片284の接着手段、識別体280の膨出部分(図2Aの形態では、袋状半片284が突出した部分)形状、識別体280自体の配置等も、吸収性物品100(図1A図1C)において説明したものと同様とすることができる。
【0072】
なお、図2A及び図2Bに示すような、外側シート21と袋状半片284とで識別体280を構成する形態では、外側シート21は、少なくとも識別体280が形成されている部分において、気密性が高くなっていることが好ましく、また透湿性を有さない方が好ましい。
【0073】
図3Aに、本発明の別の形態による吸収性物品300を外面から見た平面図を示す。図3Aには、前方端部領域F及びその付近の領域のみを部分的に示す。また、図3Bに、図3AのIII-III線断面図を示す。図3Bは、識別体380を含まない位置での断面図である。すなわち、図3Bには、識別体380の断面図は含まれていない。図3A及び図3Bは、識別体380の膨出状態を示している。
【0074】
吸収性物品300の基本的な構成は、上記の吸収性物品100(図1A図1C)と同様である。すなわち、識別体380は、密閉された袋状体382であり、この袋状体382が接着面382aで外側シート21に接着されている。しかし、識別体380(袋状体382)に脆弱部388が形成されている点で、吸収性物品100と異なる。
【0075】
識別体380は、吸収性物品100における識別体80(図1A図1C)及び吸収性物品200における識別体280(図2A及び図2B)と同様に、外部からの力等によって一部が破断し、この破断部位から内部の気体が放出されることで、膨出状態から収縮状態へと変化することができる。この際、識別体380に脆弱部388が設けられていることによって、脆弱部388を破断部位とすることができる。脆弱部388が設けられておらず、識別体において発生する応力が比較的均一である場合、識別体380を圧潰しようとすると、比較的大きな力を加える必要がある。また、識別体の構成によっては、強い力で識別体を圧潰して破裂させることで大きな音が発生してしまうこともある。これに対し、吸収性物品300における識別体380においては、予め形成された脆弱部388で袋状体382が破断するため、比較的小さな力で破断させることができるので、識別体380を膨出状態から収縮状態へと容易に変化させることができる。
【0076】
脆弱部388は、例えば、その他の部分よりも厚みが小さくなっている部分であってよい。例えば、袋状体382の成形時に、外面から内面へ又は内面から外面へと窪む溝を、溝の反転形状を有するプレス型を押し付けることによって形成することができる。また、袋状体382の片面に刃状部材によって浅い切れ込みを入れることによって形成することができる。或いは、袋状体382の所定の部分を、ヒートシール等によって圧搾して剛性を高めることで、圧搾された部分の縁部に応力が集まりやすくすることで、脆弱部388を形成することもできる。また、脆弱部388の大きさや形状は特に限定されず、識別体380の大きさにもよるが、脆弱部388を線状に形成する場合には、1~20mm程度の長さ及び0.3~1.5mm程度の幅を有するものとすることができる。
【0077】
図3A及び図3Bの形態では、脆弱部388は、接着面382aに近接した位置に形成されているが、脆弱部388が形成される位置も特に限定されない。但し、識別体を圧潰しようとするときには、通常は識別体の上部に指や掌等を置いて外側シート21に向かって力が加えられるので、脆弱部388が識別体380(袋状体382)の上部でなく、側部に形成されていることで、破断部位が指や掌等によって塞がれることを回避できる。
【0078】
なお、上述の脆弱部388は、本形態で説明した袋状体382を備えた構成(図3A及び図3B)においてだけでなく、図2A及び図2Bにおいて説明したような、外側シートと袋状半片とからなる構成においても適用することができ、同様の効果を得ることができる。
【0079】
図4Aに、本発明の別の形態による吸収性物品400を示す。図4Aには、吸収性物品400の肌対向面側(内側シート22が設けられている側)から見た平面図を、前方端部領域F及びその付近の領域のみを部分的に示す。また、図4Bに、図4AのII-II線断面図を示す。図4A及び図4Bは、識別体480の膨出状態を示す。
【0080】
吸収性物品400の基本的な構成は、上記の吸収性物品200(図2A及び図2B)と同様である。すなわち、外側シート21と、外側シート21に接着面484aにて接着された袋状半片484とによって形成された空間内に気体86が封入され、識別体480が形成されている。しかし、吸収性物品400の前方の端部から、識別体280に向かって開裂可能線489が形成されている点で、吸収性物品200と異なる。また、識別体480が、吸収体30が配置されていない領域上に延在している点でも、吸収性物品200と異なる。なお、識別体480は、吸収体30が配置されている領域及び吸収体30が配置されていない領域に跨って配置されているが、吸収体30が配置されている領域に延在せず、吸収体30が配置されていない領域内に配置することが好ましい。
【0081】
開裂可能線489は、人の通常の力で、例えば開裂可能線489の両側を両手でそれぞれ掴んで引っ張ることによって、開裂させることができる線である。開裂可能線489は、少なくとも外側シート21に形成されている。また、図4A及び図4Bに示すように、開裂可能線489は、吸収性物品400の端部から袋状半片489の手前まで、又は袋状半片489に達する位置まで延在していてよい。
【0082】
図4A及び図4Bに示す膨出状態にある識別体480は、開裂可能線489を開裂させることによって、破断させることができる。破断によって、内部の気体86が放出されて識別体480は収縮状態となる。
【0083】
図4Cに、図4Aに示す開裂可能線489が開裂して収縮状態となった識別体480を有する吸収性物品400を示す。また、図4Dに、図4CのV-V線断面図を示す。図4C及び図4Dに示すように、開裂可能線489の開裂によって、外側シート21と内側シート22とがともに開裂されている。また、開裂可能線489は、袋状半片484に近接する又は袋状半片484に達する位置まで形成されているので、開裂可能線489が形成されている部分のみならず、開裂可能線489の延長線上の部分、すなわち、袋状半片484の接着面484aを越えた位置まで開裂することができる。これにより、識別体480の一部をなす外側シート21が破断するので、内部に封入されていた気体86が放出され、識別体480が収縮状態となる。
【0084】
開裂可能線489は、図4A及び図4Bに示す形態では、ミシン目として形成されている。本形態では、ミシン目は、線上に間欠的に形成された、外側シート21及び内側シート22を貫通する穴又はスリットの集合体である。但し、このミシン目は、外側シート21及び内側シート22に設けられたミシン目でなくともよく、少なくとも外側シート21に設けられていればよい。また、開裂可能線489は、ミシン目の形態でなくとも、外側シート21が貫通しない形態、例えば、外側シート21の外面側又は肌対向面側から窪ませた溝であってもよい。或いは、開裂可能線489を形成しようとする位置で、外側シート21、又は外側シート21及び内側シート22の両方を切断しておき、切断により形成された両縁を、人の通常の力で接着解除可能な接着手段で接着しておくこともできる。
【0085】
開裂可能線489は、吸収性物品400の端部から接着面484aの範囲内まで延在していてもよい。但し、開裂可能線489がミシン目である場合(少なくとも外側シート21が貫通している場合)には、接着面484aを越えて延在しない方が好ましい。識別体480が外側シート21と袋状半片484とから構成されている本形態の場合には、開裂可能線489を開裂する前に、封入されている気体86がミシン目から放出されてしまうおそれがあるからである。
【0086】
開裂可能線489は複数設けられていてもよい。複数の開裂可能線489のうちいずれかが開裂すれば、識別体480内の気体を放出させることができるので、暗い環境で開裂可能線489を探す煩雑さを減らすことができる。また、吸収性物品400の端縁の任意の位置から開裂可能にすることもできる。例えば、マジックカット(登録商標)のような構成を設けることで、同様の効果を有することができる。さらに、少なくとも外側シート21を破断することによって、識別体480内の気体86が放出できるような構成であれば、必ずしも、開裂可能線489という線を形成する必要はない。例えば、人の通常の力で引っ張ることで破断可能な所定の面積を有する部分を外側シート21に形成しておくこともできる。
【0087】
図1図3の形態で説明したような、圧潰によって識別体を収縮状態とする構成は、収縮状態とするための動作が比較的単純であるので、識別体を容易に収縮状態とすることができる点で好ましい。しかし、圧潰は単純な動作であるが故、誤って吸収性物品の上に手をついたりした場合に、意図せず識別体を収縮状態としてしまう可能性もある。これに対し、図4A図4Dに示す吸収性物品400は、開裂可能線489の開裂によって識別体480の気体が放出されるようになっていて、圧潰されにくく構成されているので、誤って識別体480内の気体を放出させてしまう可能性を小さくすることができる。
【0088】
なお、図4A図4Dに示した吸収性物品400における識別体480には、吸収性物品300(図3A及び図3B)において説明した脆弱部388と同様の脆弱部が形成されていてもよい。例えば、識別体480の袋状半片484に脆弱部を形成しておくことができる。この袋状半片484に形成される脆弱部は、平面視で、前後方向D1に沿って延びる線状の脆弱部とすると、開裂可能線489の開裂とともに袋状半片484を、開裂可能線489の延在方向に沿って破断させることができる。これにより、識別体480がさらに破断させやすくなり、より小さな力で識別体480を収縮状態に変化させることができる。
【0089】
図5Aに、本発明の別の形態による吸収性物品500を外面から見た部分平面図を示す。また、図5Bに、図5AのVI-VI線断面図を示す。
【0090】
吸収性物品500の基本的な構成は、上記の吸収性物品200(図2A及び図2B)と同様である。すなわち、識別体580が、外側シート21と、接着面584aにて外側シート21に接着された袋状半片584とによって形成された空間内に気体86が封入されている。しかし、吸収性物品500は、外側シート21に逆箱襞(インバーテッドボックスプリーツ(inverted box pleat))585が形成されている点で、吸収性物品200と異なる。逆箱襞585は、外面側(外側シート21側)で、2つの襞が突き合わされた襞構造を指す。肌対向面側から見た場合には箱襞に相当するため、本明細書では、逆箱襞585を単に箱襞と呼ぶ場合がある。
【0091】
図5A及び図5Bは、識別体580の膨出状態を示す。この状態では、外側シート21に形成された逆箱襞585上に、袋状半片585が、その周縁の接着面584aで接着され、外側シート21とシート585とにより形成された空間内に気体86が封入されている。識別体580を密閉構造とするためには、逆箱襞585における突き合わされた2つの襞の縁部を接着して、気密とすることが好ましい。この場合、襞の縁部の接着は、人の通常の力で接着解除可能であることが好ましい。
【0092】
なお、識別体680を、図1A図1Cに示したような密閉袋状体からなるものとすると、識別体680の気密性が良好に保たれるので、好ましい。その場合、外側シート21に形成された逆箱襞585の突き合わされた襞の縁部を接着する必要はないため、製造工程を減らすことができる。
【0093】
図5A及び図5Bに示す識別体580の膨出状態は、外側シート21に形成された逆箱襞585を展開することで、収縮状態へと変化させることができる。逆箱襞585は、例えば、吸収性物品500の前方端部の両側部を幅方向D2外側に引っ張ることによって展開させることができる。この際、両側部を引っ張る方向は、矢印Pで示すように幅方向D2に沿った方向であってもよいし、或いは、斜め後方であってもよい。後述のように逆箱襞585は扇形に開くように構成されているので、斜め後方に引っ張ると逆箱襞585を展開しやすい。
【0094】
図5Cに、逆箱襞585を開いた後の状態(収縮状態)の吸収性物品500の、外面から見た部分平面図を示す。また、図5Dに、図5CのVI-VI線断面図を示す。収縮状態では、2つの襞の縁部同士の接着が解除され、識別体480が破断されている。これにより、封止されていた気体86が襞間から放出される。また、逆箱襞585が開いて2つの襞がそれぞれ幅方向D2外側に移動する際には、この移動に伴って、外側シート21に接着されている袋状半片584も、幅方向D2外側に移動する。その際、袋状半片584は、図5Cに示すように、前後方向D1に沿って破断し得る。
【0095】
図5Cに示すように、逆箱襞585は扇形に開かれている。つまり、箱襞585が開いているのは、識別体580が形成されている領域であり、識別体580に後方に隣接する領域においては、逆箱襞585が開いていない。この構成は、識別体580の後方において、逆箱襞585の突き合わせられた襞を、人の通常の力で接着解除不能に接着することによって得ることができる。これにより、逆箱襞585を開いた時に、吸収性物品500の中央領域Mが歪んだり損傷したりすることを防止することができる。逆箱襞585を展開不能に接着しておく領域は、袋状半片584の後端から後方の領域、又は袋状半片584の後端から1~10mm程離れた位置から後方の領域とすることが好ましい。
【0096】
識別体580の袋状半片584には脆弱部を設けても設けなくともよいが、図5A図5Dに示すような脆弱部588を形成しておく方が好ましい。脆弱部588としては、吸収性物品300(図3A及び図3B)において説明した脆弱部288と同様のものを用いることができる。逆箱襞588の襞の縁部は前後方向D1に沿って延びており、識別体580の外側シート21は前後方向D1に沿って破断するので、脆弱部288も、図5Cに示すように、前後方向D1に沿って延びる線状であると好ましく、平面視で、逆箱襞588の突き合わせられた襞の縁部上に縁部に沿って形成されているとより好ましい。脆弱部588を有する構成とすることで、逆箱襞585を開く際に、比較的小さい力で外側シート21及び袋状半片584の両方を破断させることができる(図5C及び図5D)。すなわち、比較的小さい力で、識別体580から気体86を放出させることができ、識別体580を膨出状態から収縮状態に変化させることができる。
【0097】
上述のように、逆箱襞585を開く際に両側部を引っ張る方向は、幅方向D2に沿った方向(矢印Pの方向)であってもよいし、斜め後方であってもよい。この場合、側部を引っ張る方向の力に、幅方向D2に沿って外側に向かう成分が含まれていればよい。本明細書では、引っ張る力に、幅方向D2に沿って外側に向かう成分が含まれていれば、概ね幅方向D2外側に又は幅方向D2に引っ張るという場合がある。このように、逆箱襞585は、幅方向D2外側に引っ張ることによって展開可能に形成されている。
【0098】
吸収性物品の装着時、装着者又は装着介助者は、端部領域における違和感や漏れを低減するために、通常、端部領域のシワを伸ばす動作を行う。具体的には、端部領域の幅方向外側の端縁を両手でそれぞれ持って、それぞれ幅方向D2外側に引っ張る動作を行う。上述のように逆箱襞585は、概ね幅方向D2外側に引っ張ることにより展開可能に構成されているので、装着者又は装着介助者は、通常の装着時の自然な動作によって逆箱襞585を展開することができ、識別体580を収縮状態とすることができる。なお、逆箱襞585は、前後方向D1に引っ張ることによって展開させる構成とすることもできる。
【0099】
図5B及び図5Dに示すように、吸収性物品500においては、前方の端部では、少なくとも袋状半片584が接着されている領域、又は逆箱襞585が形成されている領域において、外側シート21と内側シート22とは貼り合されていないことが好ましい。また、内側シート22は、少なくとも袋状半片584が接着されている領域において、逆箱襞585の縁部に沿った方向に切り込み522bを有していることが好ましい。これにより、端部の両側部を引っ張って逆箱襞585を開く際に、外側シート21と内側シート22とを共に幅方向D2外側に引っ張ることができる。よって、吸収性物品500に歪みが生じさせることなく、識別体580を膨出状態から収縮状態とすることができる。
【0100】
なお、図5C及び図5Dに示すように開かれた逆箱襞585は、識別体580内に封入されていた気体が放出された後には、元の状態に戻ることもできる。すなわち、識別体580が収縮状態となった後は、逆箱襞585を開いた状態又は閉じた状態のいずれの状態で吸収性物品500を装着してもよい。
【0101】
図6Aに、本発明の別の形態による吸収性物品600を外面から見た部分平面図を示す。また、図6Bに、図6AのVIII-VIII線断面図を示す。
【0102】
吸収性物品600の基本的な構成は、上記の吸収性物品200(図2A及び図2B)と同様である。すなわち、外側シート21と、外側シート21に接着面684aにて接着された袋状半片684とによって形成された空間内に気体86が封入され、識別体680が形成されている。しかし、図6A及び図6Bに示すように、吸収性物品600における識別体680は、易剥離接着部684bを有する。そして、識別体680は、易剥離接着部684bを境として、膨出部分680Aと非膨出部分680Bとに分けられており、気体68は膨出部分680Aに主として封入されている。易剥離接着部684aは、膨出状態において、膨出部分680Aの密閉性を維持し、気体68が非膨出部分680Bに流入しないようにすることができるよう形成されている。
【0103】
図6A及び図6Bは、識別体680の膨出状態を示している。識別体680は、この膨出状態から、膨出部分680Aに封入されている気体68を非膨出部分Bに放出させることによって、収縮状態とすることができる。例えば、膨出部分680Aの上に指や掌を置いて力を外側シート21に向けて加えることによって、気体68の圧力によって易剥離接着部638aを少なくとも部分的に剥離させる。そして、気体68を非膨出部分Bへと流入させる。この際、気体68は、吸収性物品の外部(例えば部屋の中)へ放出されない。
【0104】
図6Cに、図6Bに示す膨出状態の識別体680が収縮状態に変化した後の図を示す。この収縮状態では、膨出部分680A及び非膨出部分680Bの厚みがほぼ均一となっている。収縮状態における膨出部分680A及び非膨出部分680Bの厚みは、袋状半片684の大きさ、膨出部分680A及び非膨出部分680Bの大きさ等を適宜選択することで、装着中に圧迫されても気にならない程度の小さな厚みとすることができる。
【0105】
このような構成では、識別体680が破断されないので、装着時又は装着後に破断部位を指や衣類のパーツ等に引っかけてしまうことを防止できる。また、収縮状態においても小さな膨出が残されるので、誤って識別体680を収縮状態としてしまった後でも、識別体680を、暗い環境での吸収性物品600の向きの識別のために利用することができる。
【0106】
以上、本発明の形態について、パッドタイプの使い捨ておむつを例として説明したが、本形態は、テープタイプ、パンツタイプ等の使い捨ておむつや、生理用ナプキン等においても好適に用いることができる。
【符号の説明】
【0107】
21 外側シート
22 内側シート
30 吸収体
80、280、380、480、580、680 識別体
680A 膨出部分
680B 非膨出部分
82、382 袋状体
82a、382a 接着面
84、184、284、484、584、684 袋状半片
84a、184a、484a、584a、684a 接着面
684b 易剥離接着部
100、200、300、400、500、600 吸収性物品
388、588 脆弱部
489 開裂可能線
522b 切れ込み
585 逆箱襞
C 股間対応領域
D1 前後方向(第1方向)
D2 幅方向(第2方向)
F 前方端部領域
M 中央領域
R 後方端部領域
図1A
図1B
図1C
図2A
図2B
図3A
図3B
図4A
図4B
図4C
図4D
図5A
図5B
図5C
図5D
図6A
図6B
図6C