(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-02-08
(45)【発行日】2022-02-17
(54)【発明の名称】TPUキャップ層を有する、共押出された架橋ポリオレフィン発泡体の調製方法
(51)【国際特許分類】
C08J 9/06 20060101AFI20220209BHJP
B32B 5/18 20060101ALI20220209BHJP
B32B 27/32 20060101ALI20220209BHJP
B32B 27/40 20060101ALI20220209BHJP
B60R 13/02 20060101ALI20220209BHJP
【FI】
C08J9/06 CES
C08J9/06 CFF
B32B5/18
B32B27/32 E
B32B27/40
B60R13/02 Z
(21)【出願番号】P 2018067202
(22)【出願日】2018-03-30
【審査請求日】2021-03-26
(32)【優先日】2017-03-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】511040425
【氏名又は名称】トーレ プラスティックス (アメリカ) インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100088694
【氏名又は名称】弟子丸 健
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100084663
【氏名又は名称】箱田 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100093300
【氏名又は名称】浅井 賢治
(74)【代理人】
【識別番号】100119013
【氏名又は名称】山崎 一夫
(74)【代理人】
【識別番号】100123777
【氏名又は名称】市川 さつき
(74)【代理人】
【識別番号】100111796
【氏名又は名称】服部 博信
(72)【発明者】
【氏名】ダン ベン-ダート
(72)【発明者】
【氏名】ジェシー ボールドウィン
(72)【発明者】
【氏名】ケイトリン ミシェル ボック
(72)【発明者】
【氏名】パヴェル シエラドツキ
【審査官】石塚 寛和
(56)【参考文献】
【文献】特開2003-071988(JP,A)
【文献】特開平07-164537(JP,A)
【文献】特表2007-523765(JP,A)
【文献】特開平10-130362(JP,A)
【文献】特表2003-514943(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08J 9/00-9/42
B32B 1/00-43/00
B29C 44/00-44/60、67/20
B60R 13/01-13/04、13/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
多層構造体を形成する方法であって、
第1の層であって、
ポリプロピレン、ポリエチレン
、又はポリプロピレンとポリエチレンとの組合せ、
及び
化学発泡剤
、
を含む第1の層、並びに
前記第1の層の側面にある第2の層であって、
少なくとも
55質量%の熱可塑性ポリウレタン(TPU)、及び
20~25質量%の、ポリエーテルアミン修飾ポリプロピレン、
ポリエーテルアミン修飾ポリエチレン
、又は
ポリエーテルアミン修飾ポリプロピレンと
ポリエーテルアミン修飾ポリエチレンとの組合せ
、
を含む第2の層
、
を共押出する工程と、
共押出
された層に電離放射線を照射する工程と、
照射され
、共押出
された層を発泡させる工程と
、
を含む
ことを特徴とする方法。
【請求項2】
前記第1の層が、5~20質量%のTPUを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記第1の層が、少なくとも70質量%のポリプロピレン、ポリエチレン又はポリプロピレンとポリエチレンとの組合せを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記第1の層が、添加剤を1~15質量%の量で含む、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記第2の層が、添加剤を1~8質量%の量で含む、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記ポリプロピレンが、230℃において、10分あたり0.1~25gのメルトフローインデックスを有する、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記ポリエチレンが、190℃において、10分あたり0.1~25gのメルトフローインデックスを有する、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記第1の層中の
前記化学発泡剤の量が、5~10質量%である、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記化学発泡剤が、アゾジカルボンアミドを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記第1の層が、架橋剤を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
前記第1の層中の
前記架橋剤の量が、1~3質量%である、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記電離放射線が、アルファ、ベータ(電子ビーム)、X線、ガンマ及び中性子からなる群から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項13】
前記共押出
された層が、最大、個別で4回照射される、請求項1に記載の方法。
【請求項14】
前記電離放射線が、200~1500kVの加速電圧による電子ビームである、請求項12に記載の方法。
【請求項15】
吸収される電子ビーム量が、10~500kGyである、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記電離放射線により、
前記共押出された層が20~75%の架橋度に架橋する、請求項1に記載の方法。
【請求項17】
発泡工程が、
前記照射され
、共押出された層を、溶融塩及び輻射加熱器又は熱風オーブンにより加熱することを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項18】
前記多層構造体が、20~250kg/m
3の密度を有する、請求項1に記載の方法。
【請求項19】
前記多層構造体が、0.05~1.0mmの平均独立気泡サイズを有する、請求項1に記載の方法。
【請求項20】
前記多層構造体が、0.2~50mmの厚さを有する、請求項1に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、TPUキャップ層(multilayer foam structure)を有する多層発泡構造体に関する。より詳細には、本発明は、物理的に架橋された、TPUキャップ層を含む連続独立気泡の多層発泡体又は発泡構造体に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリオレフィン発泡体は、車両内装、床の下葺き、テープ及びガスケットにおける、トリム部品などの様々な用途に使用することができる。これらの様々な用途において使用される場合、ポリオレフィン発泡体は、ウレタンベースの接着剤、ポリウレタン発泡体及び反応性ウレタン発泡体に接合することができる。従来、ポリオレフィン発泡体と(ポリ)ウレタンとの間に満足な接着を得るために、この発泡体に、コロナ、プラズマ又は化学品などの表面修飾処理が適用された。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかし、ポリオレフィン発泡体の表面修飾は、発泡体の製造と最終施用の間に追加される加工工程である。これは、商業目的にとって、この方法を非経済的なものにすることがある、コストの追加となる恐れがある。更に、特にコロナを用いるポリオレフィン表面修飾はまた、一時的なものとなる恐れもあり、例えば、長期間、処理済み発泡体を倉庫又は店舗に保管する場合、好適とはなり得ない。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本出願人らは、TPUキャップ層を有するポリオレフィン発泡体組成物を共押出(co-exclude)すると、発泡体表面を修飾するためのコロナ、プラズマ又は化学品によるポリオレフィン発泡体の表面の処理に伴う問題を克服することができることを発見した。TPUキャップ層は、ウレタンベースのため、ウレタンベースの接着剤、ポリウレタン発泡体及び反応性ウレタン発泡体は、これらの材料のポリマー構造への類似性のため、表面処理をする必要なく、TPUキャップ層に容易に接合することが期待される。更に、コロナとは異なり、TPUキャップ層は、長期間、倉庫又は小売店に置かれても、製品にウレタンベースの接着剤及びポリウレタン発泡体に接着し易くする恐れが低いという、「寿命」を有していない。
一部の実施形態では、多層構造体を形成する方法は、第1の層であって、ポリプロピレン、ポリエチレン又はそれらの組合せ、及び化学発泡剤を含む第1の層;並びに第1の層の側面(side)にある第2の層であって、少なくとも40質量%の熱可塑性ポリウレタン(TPU)、及びポリプロピレン、ポリエチレン又はそれらの組合せを含む第2の層を共押出する工程と、共押出された層に電離放射線を照射する工程と、照射された共押出された層を発泡させる工程とを含む。一部の実施形態では、第1の層は、5~20質量%のTPUを含む。一部の実施形態では、第1の層は、少なくとも70質量%のポリプロピレン、ポリエチレン又はポリプロピレンとポリエチレンとの組合せを含む。一部の実施形態では、第1の層は、添加剤を1~15質量%の量で含む。一部の実施形態では、第2の層は、添加剤を1~8質量%の量で含む。一部の実施形態では、ポリプロピレンは、230℃において、10分あたり0.1~25グラムのメルトフローインデックスを有する。一部の実施形態では、ポリエチレンは、190℃において、10分あたり0.1~25グラムのメルトフローインデックスを有する。一部の実施形態では、第1の層中の化学発泡剤の量は、5~10質量%である。一部の実施形態では、化学発泡剤は、アゾジカルボンアミドを含む。一部の実施形態では、第1の層は、架橋剤を含む。一部の実施形態では、第1の層中の架橋剤の量は、1~3質量%である。一部の実施形態では、電離放射線は、アルファ、ベータ(電子ビーム)、X線、ガンマ及び中性子からなる群から選択される。一部の実施形態では、共押出構造体は、最大、個別で4回照射される。一部の実施形態では、電離放射線は、200~1500kVの加速電圧による電子ビームである。一部の実施形態では、吸収される電子ビーム量は、10~500kGyである。一部の実施形態では、電離放射線により、押出構造体は20~75%の架橋度に架橋する。一部の実施形態では、発泡させる工程は、照射済みの構造体を、溶融塩及び輻射加熱器(radiant heater)又は熱風オーブンにより加熱することを含む。一部の実施形態では、多層発泡構造体は、20~250kg/m3の密度を有する。一部の実施形態では、多層発泡構造体は、0.05~1.0mmの平均独立気泡サイズを有する。一部の実施形態では、多層発泡構造体は、0.2~50mmの厚さを有する。
【0005】
本明細書におけるある値又はパラメータの「約」を言う場合、その値又はパラメータ自体を対象とするばらつきを含む(及びばらつきを記載する)。例えば、「約X」と言及している記載は、「X」の記載を含む。更に、言い回し「未満」、「超」、「多くとも」、「少なくとも」、「以下」、「以上」、又は他の類似の言い回しとその後の一連の値もしくはパラメータを言う場合、その一連の値又はパラメータにおける各値もしくはパラメータへの言い回しが該当することが意図される。例えば、層が約20質量%未満、約15質量%未満又は約10質量%未満の化学発泡剤を有するという記載は、この層中の化学発泡剤の質量百分率が、約20質量%未満、約15質量%未満又は約10質量%未満となり得ることを意味することが意図されている。
本明細書で使用する場合、単数形「a」「an」及び「the」は、文脈が特に明確に指示しない限り、複数も同様に含むことされ意図される。用語「及び/又は」は、本明細書で使用する場合、列挙されている関連項目のうちの1つ又は複数の可能な組合せのいずれか及びすべてを指し、包含することもやはり理解すべきである。用語「含む(includes)」、「含んでいる(including)」、「含む(comprises)」及び/又は「含んでいる(comprising)」は、本明細書で使用される場合、明記された特徴、完全体、工程、操作、要素、構成成分及び/又は単位の存在を指定するが、1つ又は複数の別の特徴、完全体、工程、操作、要素、構成成分、単位及び/又はそれらの群の存在又は追加を排除するものではないことを更に理解すべきである。
【0006】
本明細書に記載されている態様及び実施形態は、態様及び実施形態「からなる(consisting)」及び/又はこれら「から本質的になる(consisting essentially of)」ことを含む。本明細書に記載されている方法、システム、組成物及び装置のすべてについて、この方法、システム、組成物及び装置は、列挙されている構成成分又は工程を含むか、又は列挙されている構成成分又は工程「からなる」もしくはこれら「から本質的になる」ことができるかのどちらかである。システム、組成物又は装置が、列挙されている構成成分「から本質的になる」として記載されている場合、このシステム、組成物又は装置は、列挙されている構成成分を含み、更に他の構成成分を含有してもよいが、この他の構成成分は、これらのシステム、組成物又は装置の性能に実質的に影響を及ぼさないが、明確に列挙されているそれらの構成成分以外のシステム、組成物もしくは装置の性能に実質的に影響を及ぼす他のいかなる構成成分も含まないか、あるいは追加の構成成分をそれらのシステム、組成物もしくは装置の性能に実質的に影響を及ぼすのに十分な濃度又は量で含有していないかのどちらかである。方法が、列挙されている工程「から本質的になる」と記載されている場合、この方法は、列挙されている工程を含み、この方法の結果に実質的に影響を及ぼさない他の工程を含んでもよいが、この方法は、明確に列挙されているそれらの工程以外の方法の結果に実質的に影響を及ぼす、他のいずれの工程も含まない
本開示において、様々な実施形態では、特定の構成成分、特定の組成物、特定の化合物又は特定の成分を「実質的に含まない」とは、質量で約5%未満、約2%未満、約1%未満、約0.5%未満、約0.1%未満、約0.05%未満、約0.025%未満又は約0.01%未満の特定の構成成分、特定の組成物、特定の化合物又は特定の成分が存在することが意図される。好ましくは、特定の構成成分、特定の組成物、特定の化合物又は特定の成分を「実質的に含まない」とは、質量で約1%未満のその特定の構成成分、特定の組成物、特定の化合物又は特定の成分が、存在することを示す。
さらなる利点が、以下の詳細説明から当業者に容易に明らかになろう。本明細書における例及び説明は、本質的に例示として見なされるべきであり、限定ではない。
例示的な実施形態は、添付の図面を参照して記載する。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1A】一次表面からの30X倍及び45°における例1Aの画像である。
【
図1B】一次表面からの30X倍及び45°における例1Bの画像である。
【
図2】一次表面からの30X倍及び45°における例2の画像である。
【
図3】一次表面からの30X倍及び45°における例3の画像である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
TPUキャップ層を有する、架橋独立気泡共押出成形ポリオレフィン発泡体、及びこのような構造体を生成する方法が、本明細書に記載される。本出願人らは、TPUキャップ層を有するポリオレフィン発泡体組成物を共押出すると、コロナ、プラズマ又は化学品によるポリオレフィン発泡体の表面の処理に伴う問題を克服することができることを発見した。詳細には、本明細書において開示されている構造体は、ウレタンベースの接着剤及びポリウレタン発泡体に容易に接合することができ、寿命による、ウレタンベースの接着剤及びポリウレタン発泡体に接着しにくい製品をもたらすことを回避することができる。
TPUキャップ層を有する、架橋独立気泡共押出成形ポリオレフィン発泡体を生成する方法は、(a)共押出成形、(b)照射及び(c)発泡からなる工程を含んでもよい。
【0009】
共押出は、多層材料を同時に押出成形することである。このタイプの押出成形は、所望の形態の材料を押出成形することができる押出成形用ヘッド(ダイ)に、材料を一定の体積押出量(volumetric throughput)をもたらすよう、2つ以上の押出成形機を利用することができる。共押出工程では、組成物は、複数の押出成形機に供給されて、非発泡多層構造体を形成することができる。例えば、「A」発泡体組成物は、1つの押出成形機に供給することができ、「B」キャップ組成物は、第2の押出成形機に供給することができる。押出成形機に成分を供給する方法は、押出成形機の設計及び利用可能な材料の取り扱い装置に基づき得る。発泡体及びキャップ組成物のブレンド成分は、必要に応じて、それらの分散を容易にするため、押出成形機に供給する前に行われてもよい。ヘンシェルミキサーを、このようなブレンドに使用することができる。成分はすべて、ブレンドして、押出成形機中の単一導入口から供給し得る。成分はまた、各成分用の個別に設計された導入口から個別に供給し得る。例えば、架橋促進剤又は他の任意の添加剤が液体である場合、これらの促進剤及び/又は添加剤は、固体成分と一緒にブレンドする代わりに、押出成形機にある1つのフィード用ゲート(又は、複数のゲート)、又は押出成形機にある通気開口部(通気孔を備えている場合)から、添加することができる。ブレンド成分と個々の成分を組み合わせた導入口からの供給もやはり使用することができる。
押出成形機はそれぞれ、一定量の各組成物を1つ又は複数のマニホールドに送り、次いで、シート用ダイによって、非発泡共押出多層シートを作製することができる。材料を共押出するには、2つの一般的な方法:(1)フィードブロックマニホールド、及び(2)ダイ内部の多重マニホールドがある。フィードブロックマニホールドの要素は、(a)上層、中間層及び下層用の導入用ポート、(b)フィードブロック内部の1つの積層された溶融ストリームに、フローストリームをチャネル分離する流線型溶融積層領域、(c)フィードブロックとシートダイとの間の取付板、及び/又は(d)シートダイ(単層ダイに類似)であって、積層されている溶融ストリームがダイの中央に入って、個別の多層押出物として、ダイ出口から流れ出るマニホールドに沿って広がる、シートダイを含むことができる。多重マニホールドダイの要素は、(a)2つ以上のフィード用チャネルが存在していることを除いて、単層ダイと類似していること、(b)各溶融チャネルは、フロー制御用に、それ自体、チョーカーバーを有していること、及び/又は(c)溶融ストリームが、出口付近のダイ内部に集中し、個別の多層押出物として現れること、とし得る。
【0010】
層の厚さは、マニホールド及び/又はダイの設計によって決定することができる。例えば、80/20フィードブロックマニホールドは、押出成形機それぞれの速度及びサイズが適合する場合、それにより、約4:1の比で組成物を送ることができる。この比は、例えば、(a)それぞれの押出成形機に供給される材料の量、(b)ある押出成形機と別の押出成形機との間の相対的な押出成形速度、(c)それぞれの押出成形機の相対サイズ、及び/又は(d)個々の層の組成(すなわち、粘度)を変更することにより、変えることができる。
多層シート全体の厚さは、総合的なダイギャップによって制御することができる。しかし、多層シート全体の厚さは、例えば、溶融した多層押出物を伸縮(すなわち、「引っ張り」)、及び/又はニップにより溶融多層押出物を平坦化することによって、更に調節することができる。
【0011】
本明細書において開示されている多層構造体は、異なる組成物から構成される少なくとも2つの層を含むことができ、それらの層の少なくとも1つは、TPU(熱可塑性ポリウレタン)を含有することができる。更に、多層構造体は、発泡可能な組成物又は発泡済み組成物から構成される少なくとも1つの層を含むことができる。一部の実施形態では、多層構造体は、少なくとも1つの「A」ポリオレフィン発泡体層及び少なくとも1つの「B」TPUキャップ層を含むことができる。一部の実施形態では、「B」TPUキャップ層はまた、ポリオレフィンを含むことができる。一部の実施形態では、「A」ポリオレフィン発泡体層はまた、TPUを含むことができる。一部の実施形態では、「B」TPUキャップ層はまた、発泡可能とすることができるか、又は発泡済みとすることができる。
押出成形機に供給される発泡可能な組成物は、少なくとも1つのポリプロピレン、少なくとも1つのポリエチレン又はそれらの組合せを含むことができる。一部の実施形態では、発泡体組成物は、多層構造体のポリオレフィン発泡体層(A)を形成することができる。一部の実施形態では、発泡体組成物は、多層構造体のTPUキャップ層(B)を形成することができる。
【0012】
ポリプロピレンは、可塑性又は軟化構成成分、典型的に、エチレン又はゴム構成成分を含有してもよく、したがって、以下に限定されないが、ポリプロピレン、衝撃改質ポリプロピレン、ポリプロピレン-エチレンコポリマー、衝撃改質ポリプロピレン-エチレンコポリマー、メタロセンポリプロピレン、メタロセンポリプロピレン-エチレンコポリマー、メタロセンポリプロピレンオレフィンブロックコポリマー(ブロック配列が制御されている)、ポリプロピレンベースのポリオレフィンプラストマー、ポリプロピレンベースのポリオレフィンエラストマー-プラストマー、ポリプロピレンベースのポリオレフィンエラストマー、ポリプロピレンベースの熱可塑性ポリオレフィンブレンド及びポリプロピレンベースの熱可塑性エラストマーブレンドを含む。更には、ポリプロピレンは、ポリエーテルアミンにより修飾されていてもよい。
ポリエチレンは、以下に限定されないが、LDPE、LLDPE(ホモポリマー、ブテン又はヘキセン又はオクテンとのコポリマー、ブテン及び/又はヘキサン及び/又はオクテンとのターポリマー)、VLDPE(ホモポリマー、ブテン又はヘキセン又はオクテンとのコポリマー、ブテン及び/又はヘキサン及び/又はオクテンとのターポリマー)、VLLDPE(ホモポリマー、ブテン又はヘキセン又はオクテンとのコポリマー、ブテン及び/又はヘキサン及び/又はオクテンとのターポリマー)、HDPE、ポリエチレン-プロピレンコポリマー、メタロセンポリエチレン、メタロセンエチレン-プロピレンコポリマー、及びメタロセンポリエチレンオレフィンブロックコポリマー(ブロック配列の制御された)を含み、これらのいずれも、グラフト化相溶剤、又は酢酸エステル基及び/もしくはエステル基を含有するコポリマーを含有してもよい。これらのポリエチレンは、ポリエーテルアミンにより修飾されていてもよい。
押出成形機に供給される発泡体組成物はまた、少なくとも1つのTPUを含むことができる。TPUは、以下に限定されないが、ポリエステルベースの熱可塑性ポリウレタン、ポリエーテル、ポリカプロラクトン、並びにポリカプロラクトンコポリエステルなどのTPUコポリマーを含む。TPUは、芳香族又は脂肪族の種類のものとすることができる。
【0013】
一部の実施形態では、発泡体組成物中の少なくとも1つのポリプロピレン及び/又は少なくとも1つのポリエチレンの量は、該組成物の、約70PPHR以上、約75PPHR以上、約80PPHR以上、約85PPHR以上、約90PPHR以上、約95PPHR以上又は約100PPHR以上とすることができる。一部の実施形態では、発泡体層中の少なくとも1つのポリプロピレン及び/又は少なくとも1つのポリエチレンの量は、発泡体層の少なくとも約50質量%、約60質量%、約65質量%、約70質量%、約75質量%、約80質量%、約85質量%又は約90質量%とすることができる。一部の実施形態では、発泡体層中の少なくとも1つのポリプロピレン及び/又は少なくとも1つのポリエチレンの量は、発泡体層の約50~95質量%、約65~90質量%、約70~90質量%又は約70~85質量%とすることができる。
一部の実施形態では、発泡体組成物中のTPUの量は、該組成物の、約30PPHR以下、約25PPHR以下、約20PPHR又は約15PPHR以下とすることができる。一部の実施形態では、発泡体層中のTPUは、発泡体層の多くとも約25質量%、約20質量%又は約15質量%となり得る。一部の実施形態では、発泡体層中のTPUは、発泡体層の約0~25質量%、約1~22質量%、約5~20質量%、約10~20又は約10~15質量とすることができる。
押出成形機に供給されるキャップ組成物は、少なくとも1つのTPU及び少なくとも1つのポリプロピレン及び/又は少なくとも1つのポリエチレン、すなわち上記のTPU、ポリプロピレン及びポリエチレンを含むことができる。一部の実施形態では、キャップ組成物は、多層構造体のTPUキャップ層(B)を形成することができる。
【0014】
一部の実施形態では、キャップ組成物中のTPUの量は、該組成物の、約40PPHR以上、約50PPHR以上、約55PPHR以上、約60PPHR以上、約70PPHR以上、約75PPHR以上、約85PPHR以上、約95PPHR以上又は約100PPHR以上とすることができる。一部の実施形態では、キャップ層中のTPUは、キャップ層の少なくとも約40質量%、約45質量%、約50質量%、約55質量%、約60質量%、約70質量%、約75質量%、約85質量%、約95質量%又は約100質量%とすることができる。一部の実施形態では、キャップ層中のTPUは、キャップ層の約40~85質量%、約55~80質量%又は約55~75質量%とすることができる。
【0015】
一部の実施形態では、キャップ組成物中の少なくとも1つのポリプロピレン及び/又は少なくとも1つのポリエチレンの量は、該組成物の、約60PPHR以下、約55PPHR以下、約50PPHR以下、約45PPHR以下、約40PPHR以下、約30PPHR以下、約25PPHR以下、約15PPHR以下、又は約5PPHR以下とすることができる。一部の実施形態では、キャップ層中の少なくとも1つのポリプロピレン及び/又は少なくとも1つのポリエチレンの量は、キャップ層の多くとも約60質量%、約55質量%、約50質量%、約45質量%、約40質量%、約30質量%、約25質量%、約15質量%、約10質量%又は約5質量%とすることができる。一部の実施形態では、キャップ層中の少なくとも1つのポリプロピレン及び/又は少なくとも1つのポリエチレンの量は、キャップ層の約15~60質量%、約20~45質量%又は約20~40質量%とすることができる。
幅広い範囲の多層構造体及び発泡体物品は、本開示組成物を用いて生成することができるので、幅広い範囲のポリプロピレン、ポリエチレン及びTPUが、本組成物に使用されて、様々な製造過程中の製造要件及び商業的な最終使用要件を満たすことができる。
市販の「熱可塑性ポリウレタン」(TPU)の非限定例は、以下に限定されないが、CovestroからのTEXIN(登録商標)シリーズ、BASFからのELASTOLLAN(登録商標)シリーズ、LubrizolからのESTANE(登録商標)シリーズ及びHuntsmanからのIROGRAN(登録商標)シリーズを含む。
「ポリプロピレン」の非限定例は、アイソタクチックホモポリプロピレンである。市販の例には、以下に限定されないが、BraskemからのFF018F、Total Petrochemicalsからの3271及びConocoからのCOPYLENE(商標)CH020を含む。
【0016】
「衝撃改質ポリプロピレン」の非限定例は、エチレン-プロピレン(EP)コポリマーゴムとのホモポリプロピレンである。ゴムは、アモルファスはまた半結晶とすることができるが、材料にいかなるプラストマー特性又はエラストマー特性も付与するのに十分な量ではない。市販の「衝撃改質ポリプロピレン」のいくつかの非限定例は、BraskemからのTI4003F及びTI4015F、及びLyondellBasellからのPRO-FAX(登録商標)8623及びPRO-FAX(登録商標)SB786である。
【0017】
「ポリプロピレン-エチレンコポリマー」は、ランダムエチレン単位を有するポリプロピレンである。市販の「ポリプロピレン-エチレンコポリマー」のいくつかの非限定例は、Total Petrochemicalsからの6232、7250FL及びZ9421、Braskemからの6D20及びDS6D81、並びにLyondellBasellからのPRO-FAX(登録商標)RP311H及びADSYL(商標)7415XCPである。
「衝撃改質ポリプロピレン-エチレンコポリマー」は、ランダムエチレン単位及びエチレン-プロピレン(EP)コポリマーゴムを有するポリプロピレンである。ゴムは、アモルファスはまた半結晶とすることができるが、材料にいかなるプラストマー特性又はエラストマー特性も付与するのに十分な量ではない。市販の衝撃改質ポリプロピレン-エチレンコポリマーの非限定例は、BraskemからのPRISMA(登録商標)6910である。
【0018】
「メタロセンポリプロピレン」は、メタロセンのシンジオタクチックホモポリプロピレン、メタロセンのアタクチックホモポリプロピレン及びメタロセンのアイソタクチックホモポリプロピレンである。「メタロセンポリプロピレン」の非限定例は、LyondellBasellからのMETOCENE(商標)、及びExxonMobilからのACHIEVE(商標)という商標名で市販されているものである。メタロセンポリプロピレンはまた、Total Petrochemicalsから市販されており、以下に限定されないが、グレードM3551、M3282MZ、M7672、1251、1471、1571及び1751を含む。
「メタロセンポリプロピレン-エチレンコポリマー」は、ランダムエチレン単位を有する、メタロセンシンジオタクチック、メタロセンアタクチック、及びメタロセンイソタクチックポリプロピレンである。市販の例には、以下に限定されないが、Total PetrochemicalsからのLumicene(登録商標)MR10MX0及びLumicene(登録商標)MR60MC2、並びにLyondellBasellからのPurell(登録商標)SM170Gを含む。
「メタロセンポリプロピレンオレフィンブロックコポリマー」は、結晶性硬質「ブロック」とランダム分布していないアモルファス性軟質「ブロック」が交互のポリプロピレン(すなわち、ブロック配列が制御されている)である。「メタロセンポリプロピレンオレフィンブロックコポリマー」の一例は、以下に限定されないが、Dow Chemical CompanyからのINTUNE(商標)製品ラインを含む。
【0019】
「ポリプロピレンベースのポリオレフィンプラストマー」(POP)及び「ポリプロピレンベースのポリオレフィンエラストプラストマー」は、プラストマー特性及びエラストプラストマー特性を有する、メタロセン及び非メタロセンプロピレンベースコポリマーの両方である。非限定例は、Dow Chemical CompanyからのVERSIFY(商標)(メタロセン)、ExxonMobilからのVISTAMAXX(商標)(メタロセン)、及びLyondellBasellからのKOATTRO(商標)(非メタロセン)(ブテン-1ベースの、プラストマーポリマー系列である。ある種のグレードは、ブテン-1ホモポリマーベースのものであり、他のものは、ポリプロピレン-ブテン-1コポリマーベースの材料である)という商標名で市販されているものである。
「ポリプロピレンベースのポリオレフィンエラストマー」(POE)は、エラストマー特性を有する、メタロセンプロピレンベースコポリマーと非メタロセンプロピレンベースコポリマーの両方である。プロピレンベースのポリオレフィンエラストマーの非限定例は、Dow Chemical CompanyからのVERSIFY(商標)(メタロセン)、及びExxonMobilからのVISTAMAXX(商標)(メタロセン)という商標名で市販されているそのようなポリマーである。
【0020】
「ポリプロピレンベースの熱可塑性ポリオレフィンブレンド」(TPO)は、ポリプロピレン、ポリプロピレン-エチレンコポリマー、メタロセンホモポリプロピレン及びメタロセンポリプロピレン-エチレンコポリマーであり、これらは、熱可塑性ポリオレフィンブレンド(TPO)プラストマー特性、エラストプラストマー特性又はエラストマー特性をもたらすのに十分な量のエチレン-プロピレンコポリマーゴムを有する。ポリプロピレンベースのポリオレフィンブレンドポリマーの非限定例は、JSR CorporationからのEXCELINK(商標)、三菱ケミカル株式会社からのTHERMORUN(商標)及びZELAS(商標)、LyondellBasellからのADFLEX(商標)及びSOFTELL(商標)、並びにTeknor Apex CompanyからのTELCAR(商標)という商標名で市販されているそのようなポリマーブレンドである。
【0021】
「ポリプロピレンベースの熱可塑性エラストマーブレンド」(TPE)は、ポリプロピレン、ポリプロピレン-エチレンコポリマー、メタロセンホモポリプロピレン及びメタロセンポリプロピレン-エチレンコポリマーであり、これらは、熱可塑性エラストマーブレンド(TPE)にプラストマー特性、エラストプラストマー特性又はエラストマー特性をもたらすのに十分な量のジブロック又は多重ブロック熱可塑性ゴム修飾剤(SEBS、SEPS、SEEPS、SEP、SERC、CEBC、HSBなど)を有する。ポリプロピレンベースの熱可塑性エラストマーブレンドポリマーの非限定例は、Polyone CorporationからのGLS(商標)DYNAFLEX(商標)及びGLS(商標)、VERSAFLEX(商標)、Teknor Apex CompanyからのMONPRENE(登録商標)並びにA.SchulmanからのDURAGRIP(登録商標)という商標名で市販されているそのようなポリマーブレンドである。
【0022】
「VLDPE」及び「VLLDPE」は、可塑性又は軟化性構成成分、通常、ブテン及び/又はヘキサン及び/又はオクテンであるα-オレフィンを含有する、超低密度ポリエチレン及び超線密度低密度ポリエチレンである。VLDPE及びVLLDPEの非限定例は、Dow Chemical CompanyからのFLEXOMER(商標)、及びBorealisからの特定のグレードのSTAMYLEX(商標)という商標名で市販されている。
「メタロセンポリエチレン」は、非エラストマーからエラストマーまでの範囲の特性を有する、メタロセンベースのポリエチレンである。メタロセンポリエチレンの非限定例は、Dow Chemical CompanyからのENGAGE(商標)、並びにExxonMobilからのENABLE(商標)及びEXCEED(商標)、並びにBorealisからのQUEO(商標)という商標名で市販されている。
「メタロセンポリエチレンオレフィンブロックコポリマー」は、結晶性硬質「ブロック」とランダム分布していないアモルファス性軟質「ブロック」が交互のポリエチレン(すなわち、ブロック配列が制御されている)である。「メタロセンポリエチレンオレフィンブロックコポリマー」の一例は、以下に限定されないが、Dow Chemical CompanyからのINFUSE(商標)製品ラインを含む。
【0023】
これらのポリエチレンはまた、酢酸エステル基及び/又はエステル基を含有するコポリマー及びターポリマーとすることもできる。コモノマーの群は、以下に限定されないが、酢酸ビニル、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸ブチル、メタクリル酸グリシジル及びアクリル酸を含む。非限定例は、DuPontからのBYNEL(登録商標)、ELVAX(登録商標)及びELVALOY(登録商標)、ArkemaからのEVATANE(登録商標)、LOTADER(登録商標)及びLOTRYL(登録商標)、ExxonMobilからのESCORENE(商標)、ESCOR(商標)及びOPTEMA(商標)という商標名で市販されている。
ポリエーテルアミン修飾ポリプロピレン及びポリエチレンは、官能基化されているポリプロピレン及びポリエチレン上のポリエーテルアミンをグラフトすることにより生成される。官能基化ポリプロピレン及びポリエチレンは、モノマーが、通常、遊離ラジカル反応によってグラフトされているところである。官能基化ポリプロピレン及びポリエチレンを調製するのに好適なモノマーは、例えば、オレフィン性不飽和モノカルボン酸、例えばアクリル酸又はメタクリル酸、並びに対応するtert-ブチルエステル、例えば(メタ)アクリル酸tert-ブチル、オレフィン性不飽和ジカルボン酸、例えばフマル酸、マレイン酸及びイタコン酸、並びに対応するモノ及び/又はジ-tert-ブチルエステル、例えば、フマル酸モノ又はジ-tert-ブチル及びマレイン酸モノ又はジ-tert-ブチル、オレフィン性不飽和ジカルボン酸無水物、例えば無水マレイン酸、スルホ又はスルホニル含有オレフィン性不飽和モノマー、例えば、p-スチレンスルホン酸、2-(メタ)アクリルアミド-2-メチルプロペンスルホン酸又は2-スルホニル-(メタ)アクリレート、オキサゾリニル含有オレフィン性不飽和モノマー、例えばビニルオキサゾリン及びビニルオキサゾリン誘導体、並びにエポキシ含有オレフィン性不飽和モノマー、例えば(メタ)アクリル酸グリシジル又はアリルグリシジルエーテルである。
【0024】
最も一般に市販されている官能基化ポリプロピレンは、無水マレイン酸により官能基化されているものである。非限定例は、三井ケミカル株式会社からのADMER(登録商標)QF及びQBシリーズ、LyondellBasellからのPLEXAR(登録商標)6000シリーズ、DuPontからのBYNEL(登録商標)5000シリーズ、及びArkemaからのOREVAC(登録商標)PPシリーズである。
最も一般的な市販の官能基化ポリエチレンはまた、無水マレイン酸により官能基化されているものである。非限定例は、三井ケミカル株式会社からのADMER(登録商標)NF及びSEシリーズ、LyondellBasellからのPLEXAR(登録商標)1000、2000及び3000シリーズ、DuPontからのBYNEL(登録商標)2100、3000、3800、3900、4000シリーズ、並びにArkemaからのOREVAC(登録商標)PE、T、及びLOTADER(登録商標)シリーズの一部である。
【0025】
他のグラフト化モノマーにより官能基化されているポリエチレンもまた、市販されている。非限定例は、DuPontからのBYNEL(登録商標)1100、2200及び3100シリーズ、並びにArkemaからのLOTADER(登録商標)AXシリーズである。
無水マレイン酸により官能基化されているポリプロピレン及びポリエチレン以外のポリマーも市販されていることに留意されたい。例えば、AddivantからのROYALTUF(登録商標)シリーズは、無水マレイン酸により官能基化されている一連のEPDMゴムである。別の例において、KratonからのKRATON(商標)FGシリーズは、無水マレイン酸により官能基化されている一連のSEBSポリマーである。
【0026】
次いで、ポリエーテルアミンは、押出成形機、バッチミキサー、連続式ミキサー又はニーダーなどの任意の慣用的な混合装置で、これらの官能基化にグラフトすることができる。ポリエーテルアミン向けの好適なポリエーテルブロックは、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリエチレングリコールとポリプロピレングリコールとのコポリマー、ポリ(1,2-ブチレングリコール)及びポリ(テトラメチレングリコール)を含む。グリコールは、周知の方法を使用してアミノ化して、ポリエーテルアミンを生成することができる。一般に、グリコールは、メトキシ又はヒドロキシ開始反応によるなどの、周知の方法を使用する、エチレンオキシド、プロピレンオキシド又はそれらの組合せから調製する。エチレンオキシド及びプロピレンオキシドのどちらも使用する場合、ランダムポリエーテルが望ましい時にはオキシドを同時に反応させることができ、ブロックポリエーテルが望ましい場合、オキシドは逐次反応させることができる。好適な市販のポリエーテルアミンは、すべてHuntsmanからの、JEFFAMINE(登録商標)モノアミン、ジアミン、トリアミン;JEFFAMINE(登録商標)(二級の立体障害性の高転化体)及びポリテトラメチレングリコール(PTMEG);及びELASTAMINE(登録商標)モノアミンを含む。技術パンフレットのJEFFAMINE(登録商標)ポリエーテルアミン(Hunstman Corporationより2007年5月に出版)及びELASTAMINE(登録商標)ポリエーテルアミンによるポリオレフィンの修飾(Huntsman Corporationにより2009年10月に出版)は、グラフト反応に使用することができる、幅広い範囲のポリエーテルアミンのタイプを例示している。これらの技術パンフレットは、それらの全体が参照により本明細書に組み込まれている。ポリエーテルアミン修飾ポリプロピレン及びポリエチレンは、時としてAMAPPA(アミン-マレイン酸化ポリプロピレン付加物)及びAMAPEA(アミン-マレイン酸化ポリエチレン付加物)と呼ばれることに留意されたい。
【0027】
任意の発泡可能な層及び任意のキャップ層の組成は、230℃において、10分あたり約0.1~約25グラムのメルトフローインデックスを有する少なくとも1つのポリプロピレン、及び/又は190℃において、10分あたり約0.1~約25グラムのメルトフローインデックスを有する少なくとも1つのポリエチレンを含有することができる。一部の実施形態では、ポリプロピレン及び/又はポリエチレンのメルトフローインデックスは、230℃及び190℃において、10分あたりそれぞれ約0.3~約20グラムであり、より好ましくは、230℃及び190℃において、それぞれ10分あたり約0.5~約15グラムである。ポリマーの「メルトフローインデックス」(MFI)値は、ポリプロピレン及びポリプロピレンベースの材料の場合、230℃において、並びにポリエチレン及びポリエチレンベースの材料の場合、190℃において、10分間、2.16kgのプランジャーを使用して、ASTM D1238に準拠して、定義されて決定される。試験時間は、比較的高い溶融フロー樹脂となるために短縮され得る。
MFIは、ポリマーのフロー特性の尺度を提供することができ、ポリマー材料の分子量及び加工性の指標となる。MFI値が高すぎる場合、これは、粘度が低いことに対応し、本開示による押出成形は、満足する通り実施することができない。MFI値が高すぎることに関連する問題としては、押出成形中に圧力が低いこと、厚さプロファイルを設定する問題、溶融粘度が低いことによる冷却プロファイルの不均一さ、溶融強度に乏しいこと、及び/又は機械の問題が挙げられる。MFI値が低すぎることに伴う問題としては、溶融加工中に圧力が高いこと、シート品質及びプロファイルの問題、並びに発泡剤の分解及び活性化のリスクを引き起こす一層高い押出成形温度が挙げられる。
【0028】
上記のMFI範囲は、材料の粘度に影響を及ぼす恐れがあること、及び粘度は発泡に対して影響を及ぼすので、発泡過程にとってやはり重要である。いかなる理論によっても拘泥されないが、特定のMFI値がかなり一層有効であるいくつかの理由が存在することが考えられる。分子の鎖長が長くなるにつれて、MFIの低い材料は一部の物理特性を改善することがあり、これにより、応力がかかる際に鎖が流れるのに必要なより多量のエネルギーが生成する。同様に、分子鎖(MW)が長くなるほど、より多くの結晶実体である鎖が結晶化することができ、こうして、分子間結合による一層の強度をもたらす。しかし、低すぎるMFIでは、粘度が高くなりすぎる。一方、MFIがより高いポリマーは、鎖がより短い。したがって、より高いMFI値を有する所与の体積の材料では、より低いMFIを有するポリマーに対して、微視的レベルの末端鎖がより多数存在し、このことは、回転を可能にし、このような回転に必要な空間があるために、自由体積を生成する(例えば、回転は、ポリマーのTg超又はガラス転移温度超で起こる)。これは、自由体積を増やし、応力下でより容易に流動することを可能にする。
ポリマーに加えて、押出成形機に供給する組成物はまた、開示されている多層構造体の生成と適合性のある添加剤も含有してもよい。一般的な添加剤は、以下に限定されないが、有機物過酸化物、酸化防止剤、潤滑剤、熱安定剤、着色剤、難燃剤、帯電防止剤、核化剤、可塑剤、抗微生物剤、殺真菌剤、光安定剤、UV吸収剤、ブロッキング防止剤、フィラー、脱臭剤、臭気吸着剤、増粘剤、気泡サイズ安定剤、金属不活性化剤及びそれらの組合せを含む。
【0029】
一部の実施形態では、発泡体組成物及び/又はキャップ組成物中の化学発泡剤及び架橋促進剤以外の添加剤の量は、該組成物の、約20PPHR以下、約15PPHR以下、約10PPHR以下、約8PPHR以下、約6PPHR以下、約5PPHR以下又は約4PPHR以下とすることができる。一部の実施形態では、発泡体組成物及び/又はキャップ組成物中の化学発泡剤及び架橋促進剤以外の添加剤の量は、該組成物の、約1~10PPHR、約1~8PPHR、約3~8PPHR、約5~8PPHR又は約3~5PPHRとすることができる。一部の実施形態では、発泡体層中の化学発泡剤及び架橋促進剤以外の添加剤の量は、発泡体層の約1~15質量%、約3~10質量%、約5~10質量%又は約5~7質量%とすることができる。一部の実施形態では、キャップ層中の化学発泡剤及び架橋促進剤以外の添加剤の量は、キャップ層の約1~10質量%、約2~6質量%又は約3~5質量%とすることができる。
成分をどのように押出成形機に供給するかにかかわらず、押出成形機内のせん断力及び混合は、均質な層を製造するのに十分となり得る。同方向回転(co-rotating)及び異方向回転(counter rotating)二軸押出成形機は、均一な特性を有する層を押出成形するための押出成形機のバレルにより十分なせん断力及び混合を実現することができる。
【0030】
比エネルギーは、層の成分の押出成形中にどれだけの仕事が適用されているか、及び押出成形過程がどれだけ強力であるかの指標である。エネルギーは、押出成形機によって処理されている材料に適用されるエネルギーとして定義され、キログラムあたりの基準に正規化される。比エネルギーは、1時間あたりキログラムでの供給される材料の合計あたりに適用されたエネルギーのキロワットの単位で定量される。比エネルギーは、以下の式によって計算される。
【数1】
式中、
【数2】
比エネルギーは、押出成形機内の成分のせん断及び混合の量を定量するために使用される。本明細書において開示されている多層構造体を形成するために使用する押出成形機は、少なくとも約0.090kW・時/kg、好ましくは少なくとも約0.105kW・時/kg及びより好ましくは少なくとも約0.120kW・時/kgの比エネルギーを生成することが可能となり得る。
【0031】
いかなる発泡可能な層も化学発泡剤(CFA)を含有することができる。任意の発泡可能な層の押出成形温度は、化学発泡剤の熱分解開始温度よりも少なくとも10℃低くすることができる。押出成形温度が、発泡剤の熱分解温度を超えると、発泡剤は分解し、望ましくない「事前発泡」をもたらす。任意のキャップ層の押出成形温度は、キャップ層に隣接する任意の発泡可能な層の熱分解開始温度よりも少なくとも10℃低くすることができる。キャップ層の押出成形温度が、隣接層中の発泡剤の熱分解温度を超える場合、隣接層中の発泡剤は分解し、望ましくない「事前発泡」ももたらす。
発泡体組成物は、様々な異なる化学発泡剤を含むことができる。化学発泡剤の例には、以下に限定されないが、アゾ化合物、ヒドラジン化合物、カルバジド、テトラゾール、ニトロソ化合物及びカーボネートが含まれる。更に、化学発泡剤は、単独で、又は任意の組合せで使用することができる。一部の実施形態において使用することができる化学発泡剤の1つは、アゾジカルボンアミド(ADCA)である。ADCAの熱分解は、通常、約190℃と230℃との間の温度で起こる。ADCAが押出成形機中で熱により分解するのを防ぐために、押出成形温度は、190℃以下に維持することができる。
【0032】
発泡体組成物及び/又はキャップ組成物中の化学発泡剤の量は、該組成物の、約40PPHR以下、約30PPHR以下、約20PPHR以下、約15PPHR以下、約10PPHR以下、又は約8PPHR以下とすることができる。一部の実施形態では、発泡体組成物及び/又はキャップ組成物中の化学発泡剤の量は、該組成物の、約1~20PPHR、約2~15PPHR、約5~10PPHR又は約6~8PPHRとすることができる。一部の実施形態では、発泡体層中の化学発泡剤の量は、約1~20質量%、約2~15質量%、約5~10質量%又は約6~8質量%とすることができる。一部の実施形態では、キャップ層中の化学発泡剤の量は、キャップ層の約0.1~5質量%、約0.5~3質量%又は約1~2質量%とすることができる。化学発泡剤の量は、とりわけ、非発泡シート厚さ、所望の発泡体厚さ、所望の発泡体密度、押出成形される材料、架橋率、化学発泡剤のタイプ(異なる発泡剤は、著しく異なる量のガスを生成することができる)に依存することができる。
化学発泡剤の上記の列挙されている量は、ADCAのみに特異的ではないことに留意されたい。他の発泡剤が、CFAの質量あたり様々な体積量のガスを生成することができ、それにより、考慮することができる。例えば、ADCAを化学発泡剤であるp-トルエンスルホニルセミカルバジド(TSS)と比較する場合:発泡可能な層が40PPHRのADCAを含有する場合、約63PPHRのTSSは、発泡工程中にほぼ同じ量のガスを生成することが必要になると思われる。
【0033】
熱分解可能な発泡剤の分解温度と最も高い融点を有するポリマーの融点との間の差異が高い場合、発泡剤分解の触媒を使用してもよい。例示的な触媒には、以下に限定されないが、酸化亜鉛、酸化マグネシウム、ステアリン酸カルシウム、グリセリン及びウレアが含まれる。押出成形の温度の下限は、最も高い融点を有するポリマーの下限となり得る。押出成形温度が、最高の融点を有するポリマーの溶融温度より下がると、望ましくない「不溶解物」が現れる。発泡時に、この低い方の温度範囲未満で押出成形された押出成形層は、不均一な厚さ、非均一な気泡構造体、気泡がつぶれたポケット、及び他の望ましくない属性を示す恐れがある。
【0034】
非発泡多層シートの押出成形(発泡多層シートの押出成形(一般に、「押出発泡」と呼ばれる)に比べて)は、かなり異なる。押出発泡は、物理発泡剤、化学発泡剤、物理発泡剤と化学発泡剤との混合物を用いて行うことができる。物理発泡剤は、高圧下、溶融ポリマーに直接、注入される、無機ガス及び有機ガス(窒素、二酸化炭素、ペンタン、ブタンなど)とすることができる。溶融ポリマーが、押出成形ダイを出て、発泡ポリマーを生成するにつれて、ガスが核を形成して広がることができる。化学発泡剤(すでに記載されている例など)は、熱的に、又は分解温度において吸熱してガスを生成する固体とすることができる。化学発泡剤から生成する典型的なガスは、窒素、一酸化炭素、二酸化炭素、アンモニアなどを含む。化学発泡剤を用いて押出発泡成形するため、化学発泡剤は、溶融ポリマー中に分散され得、押出成形機及びダイにまだある間に、この溶融物を化学発泡剤の分解温度超まで加熱する。発泡ポリマーは、ポリマー溶融物が押出成形ダイを出る際に、作製され得る。
【0035】
発泡剤が物理的、化学的又は組合せ物であるかにかかわらず、典型的な押出発泡により、一次表面の両面が、開示方法で生成する等価な構造体よりもかなり粗いポリマーシートを生成する。多層(及び単層)発泡体シートの表面プロファイルは、多くの用途において重要となり得、したがって、押出発泡シートは、これらの用途に使用することはできない。これらの用途は、フィルム、織布、繊維層及び皮革への積層の容易さなどの所望の特性、積層中の接触面積の割合、見た目の美しさなどを得るために、滑らかな発泡体表面が必要となり得る。その全体が、参照により本明細書に組み込まれている、PCT公開WO2016109544は、押出発泡ポリマーシートと開示されている方法によって生成された等価な発泡ポリマーシートとの間の表面粗さの差異を例示する例を含む。
押出成形発泡物品のより粗い表面は、一般に、より大きなサイズの気泡(本開示により生成する発泡体と比べた場合)により引き起こされ得る。表面粗さが気泡サイズの関数となるので、気泡サイズ及びサイズ分布は、大部分の商業的用途において重要とはなり得ないが、より大きな気泡を有する発泡体は、滑らかな発泡体表面を必要とする用途にとって、より小さな気泡を有する発泡体ほど望ましいものとはなり得ない。
【0036】
非発泡共押出多層構造体の厚さは、約0.1~約30mm、約0.2~約25mm、約0.3~約20mm又は約0.4~約15mmとすることができる。いかなる個々のA層又はB層も、少なくとも約0.05mm、少なくとも約0.1mm、少なくとも約0.15mm、及び少なくとも約0.2mmの厚さを有することができる。一部の実施形態では、非発泡共押出多層構造体のキャップ層は、約0.1~300μm、約25~250μm、約50~200μm、約60~150μm、約60~90μm、約80~110μm、約90~130μm又は約120~150μmの厚さを有することができる。非発泡キャップ厚さは、非発泡共押出多層シート全体に関係してどれくらい薄くすることができるかには限定されず、多層可撓性パッキングフィルム及びバリアフィルムにおいて使用される非常に薄い結合層の典型的な厚さである、約0.1μmと同じくらい薄くなり得る。一部の実施形態では、非発泡共押出多層構造体の発泡体層は、約0.1~5mm、約0.5~3mm、約1~2mm又は約1~1.5mmの厚さを有することができる。
キャップ層が発泡されるよう意図されていないか、又はわずか少しだけ発泡されているかのどちらかの場合、このキャップは、薄く、発泡工程の間に、発泡可能な層の膨張を著しく妨げることがないよう、溶融した際に容易に曲げることができる。他の層の発泡膨張を妨げる恐れのある、多数の物理特性は、キャップの厚さ、可撓性、溶融強度及び架橋率である。同様に、発泡可能な層の厚さ、可撓性、溶融体強度及び架橋率、並びに発泡層の最終厚さ及び密度も、キャップが発泡可能な層の膨張を阻害するかどうかの要因ともなる。最大キャップ厚さに関する一般的な指針は、キャップ厚さが、共押出非発泡シート全体の約20%以下、約15%以下、約10%以下又は約5%以下となるべきであるということである。キャップ厚さが、共押出非発泡シート全体の約20%超となる場合、多層シートの巻き上がり、ねじれ及びそれ自体への折り重なりという問題が、多層シートを加熱して発泡させると起こり得る。
【0037】
共押出シートが生成された後(例えば、2つの押出成形機により)、この押出成形多層シートは、所与の曝露における、電離放射線による照射を施し、多層シートの組成物を架橋させ、これにより、照射された架橋多層構造体を得ることができる。電離放射線は、ポリプロピレン、ポリプロピレンベースの材料、一部のポリエチレン及び一部のポリエチレンベースの材料に対して十分な架橋度を生じさせることができないことが多い。したがって、架橋促進剤は、架橋を促進するために押出成形機に供給される組成物に添加することができる。電離放射線によって架橋されたポリマーは、一般に「物理的に架橋されている」と呼ばれる。
【0038】
「物理的」架橋と「化学的」架橋とを区別することは重要である。化学的架橋では、架橋は、架橋促進剤を使用するが、電離放射線の使用なし(use or ionizing radiation)に生じる。化学的架橋は、通常、過酸化物、シラン又はビニルシランのいずれかの使用を含む。過酸化物による架橋工程では、架橋は、通常、押出成形ダイで行われる。シラン及びビニルシランによる架橋工程の場合、架橋は、押出成形材料の架橋が、熱及び水分により加速される二次操作において、通常、押出成形後に行われる。化学的架橋方法に関わりなく、化学的に架橋されている発泡体シートは、通常、開示方法において生成する等価な構造体よりもかなり粗い一次表面を示す。多層(及び単層)発泡体シートの表面プロファイルは、多くの用途において重要となり得、したがって、化学的に架橋されている発泡体シートは、これらの用途に使用することはできない。これらの用途は、フィルム、織布、繊維層及び皮革への積層の容易さなどの所望の特性、積層中の接触面積の割合、見た目の美しさなどを得るために、滑らかな発泡体表面が必要となり得る。PCT公開WO2016109544は、化学的に架橋された発泡ポリマーシートと開示されている方法によって生成された等価な発泡ポリマーシートとの間の表面粗さに差異を例示する例を含む。
【0039】
化学的に架橋された発泡物品のより粗い表面は、一般に、より大きなサイズの気泡(本開示により生成する発泡体と比べて)により引き起こされ得る。気泡サイズ及びサイズ分布は、表面粗さが気泡サイズの関数となるので、大部分の商業的用途において重要とはならないが、より大きな気泡を有する発泡体は、滑らかな発泡体表面を必要とする用途にとって、より小さな気泡を有する発泡体ほど望ましいものとはなり得ない。
電離放射線の例には、以下に限定されないが、アルファ、ベータ(電子ビーム)、X線、ガンマ及び中性子が含まれる。それらのなかで、均一なエネルギーを有する電子ビームは、架橋ポリオレフィン発泡体/TPUキャップ構造体を調製するために使用することができる。曝露時間、照射の頻度、電子ビームによる照射時の加速電圧は、多層構造体の、意図される架橋度及び厚さ応じて、幅広く変動し得る。しかし、電離放射線は、一般に、約10~約500kGy、約20~約300kGy又は約20~約200kGyの範囲とすることができる。曝露が短すぎる場合、気泡安定性は、発泡時に維持され得ない。曝露が長すぎる場合、得られた多層発泡構造体は成形性に乏しいことがある。多層発泡体シートが熱成形用途で使用される場合、成形性は、望ましい特性である。同様に、非発泡シートは、電子ビーム放射への曝露時に発熱性の熱放出によって軟化することができ、その結果、曝露が長すぎる場合、構造体が変形する恐れがある。更に、ポリマー構成成分はまた、過度のポリマー鎖切断に由来する分解が起こることもある。
共押出非発泡多層シートは、最大、個別で4回、好ましくは1回以下、好ましくは1回だけ照射され得る。照射の頻度が、約4回超となる場合、ポリマー構成成分は分解を受けることがあり、その結果、発泡時に、例えば、得られる発泡体層中に、均一な気泡が生成しない。押出成形構造体の厚さが、約4mm超の場合、電離放射線を用いる多層プロファイルの各一次表面への照射は、一次表面及び内部層の架橋度を一層均一にするのが好ましいものとなり得る。
【0040】
電子ビームを用いる照射は、様々な厚さを有する共押出シートが、電子の加速電圧を制御することにより、効果的に架橋することができるという利点をもたらす。加速電圧は、一般に、約200~約1500kV、約400~約1200kV又は約600~約1000kVの範囲とすることができる。加速電圧が、約200kV未満である場合、この放射は、共押出シートの内部に到達しないことがある。その結果、内部の気泡は粗くなる恐れがあり、発泡時に不均一となり得る。更に、所与の厚さプロファイルの場合、あまりに低すぎる加速電圧は、アーク放電を引き起こす恐れがあり、発泡構造体中に「ピンホール」又は「トンネル」をもたらす。一方、加速電圧が、約1500kV超となる場合、ポリマーは分解することがある。
【0041】
選択する電離放射線のタイプにかかわらず、「Torayゲル分率法(Toray Gel Fraction Percentage Method)」によって測定すると、押出成形構造体の組成物が、約20~約75%又は約30~約60%で架橋されるよう、架橋を行う。「Torayゲル分率法」に準拠し、テトラリン溶媒が、組成物中の非架橋構成成分を溶解するために使用される。原則として、非架橋材料はテトラリンに溶解され、架橋度は、全組成物中の架橋された材料の質量百分率として表される。ポリマー架橋率を決定するために使用される装置は、100メッシュ(0.0045インチのワイヤ直径);タイプ304ステンレス鋼バッグ;番号付きワイヤ及びクリップ;Miyamoto温度自動調節油浴装置;化学天秤;ヒュームフード;ガスバーナー;高温オーブン;静電気除去ガン;及び蓋付きの3.5リットルの広口ステンレス鋼容器3つを含む。使用される試薬及び物質は、テトラリン、高分子量溶媒、アセトン及びシリコーンオイルを含む。具体的には、空のワイヤメッシュバッグを秤量し、その質量を記録する。各試料について、100ミリグラム±5ミリグラムの試料を秤量し、ワイヤメッシュバッグに移す。通常、薄くスライスされた発泡体の切断品の形態にあるワイヤメッシュバッグ及び試料の質量を記録する。各バッグを対応する番号のワイヤ及びクリップに取り付ける。溶媒温度が130℃に到達すると、束(バッグ及び試料)を溶媒に浸す。この試料を上下に約5回又は6回、振とうし、いかなる気泡も緩めて、試料を完全に湿らす。試料を振とう器に取り付け、3時間、振とうすると、溶媒が発泡体を溶解することができる。次に、この試料をヒュームフード中で冷却する。試料は、第1のアセトンの容器中で、約7回又は8回、上下に振とうすることにより洗浄する。この試料を第2のアセトン洗液中で、2回、目の洗浄を行う。洗浄済み試料を、上記の通り、新しいアセトンの第3の容器中でもう1回、洗浄する。次に、試料をヒュームフード中にぶら下げ、約1~約5分間、アセトンを蒸発させる。次に、試料を乾燥オーブン中、120℃で約1時間、乾燥する。この試料を最低、約15分間、冷却する。ワイヤメッシュバッグを化学天秤で秤量し、質量を記録する。次に、架橋は、式100*(C-A)/(B-A)を使用して算出する(式中、A=空のワイヤメッシュバッグの質量、B=ワイヤバッグ質量+テトラリン中への浸漬前の発泡体試料、及びC=ワイヤバッグ質量+テトラリン中に浸漬後に溶解した試料である)。
【0042】
好適な架橋剤は、以下に限定されないが、市販の二官能性、三官能性、四官能性、五官能性及びそれ超の官能性モノマーを含む。そのような架橋モノマーは、液体、固体、ペレット及び粉末の形態で入手可能である。例には、以下に限定されないが、1,6-ヘキサンジオールジアクリレート、1,6-ヘキサンジオールジメタクリレート、エチレングリコールジアクリレート、エチレングリコールジメタクリレート、トリメチロールプロパントリメタクリレート、テトラメチロールメタントリアクリレート、1,9-ノナンジオールジメタクリレート及び1,10-デカンジオールジメタクリレートなどのアクリレート又はメタクリレート;カルボン酸のアリルエステル(トリメリト酸トリアリルエステル、ピロメリット酸トリアリルエステル及びシュウ酸ジアリルエステルなど);シアヌル酸トリアリル及びイソシアヌル酸トリアリルなどのシアヌル酸又はイソシアヌル酸のアリルエステル;N-フェニルマレイミド及びN,N’-m-フェニレンビスマレイミドなどのマレイミド化合物;フタル酸ジプロパルギル及びマレイン酸ジプロパルギルなどの少なくとも2つの三重結合を有する化合物;及びジビニルベンゼンが含まれる。更に、このような架橋剤は、単独で、又は任意の組合せで使用することができる。ジビニルベンゼン(DVB)、二官能性液体架橋モノマーが、本開示における架橋剤として使用することができる。
【0043】
発泡体組成物及び/又はキャップ組成物中の架橋剤の量は、該組成物の、約4PPHR以下、約3PPHR以下、約2.5PPHR以下、約2PPHR以下、約1.5PPHR以下、約1PPHR又は約0.5PPHR以下とすることができる。一部の実施形態では、発泡体組成物及び/又はキャップ組成物中の架橋剤の量は、該組成物の、約0.1~5PPHR、約0.5~3PPHR、約1~3PPHR又は約2~3PPHRとすることができる。一部の実施形態では、発泡体層中の架橋剤の量は、発泡体層の約0.5~5質量%、約1~3質量%又は約1.5~2.5質量%とすることができる。一部の実施形態では、キャップ層中の架橋剤の量は、キャップ層の約0.1~2質量%、約0.3~1質量%又は約0.4~0.6質量%とすることができる。
【0044】
架橋剤の上記の列挙されている量は、DVBにしか特異的になり得ないことに留意されたい。他の架橋剤は、DVBよりも多かれ少なかれ、架橋に有効となり得る。したがって、このように、別の架橋剤の必要な量を考慮すべきである。架橋剤は、以下に限定されないが、電離放射線量、架橋されているポリマー、モノマーの化学構造、モノマー上の官能基の数、及びモノマーが液体であるか粉末であるかに由来する架橋効率の点で様々となる。
架橋は、様々な異なる技法を使用して行うことができ、分子間の両方、異なるポリマー分子間、及び分子内、単一ポリマー分子の一部の間に形成することができる。そのような技法は、以下に限定されないが、架橋を形成することができるか、又は活性化されて架橋を形成することができる官能基を含有する架橋剤を組み込むポリマー鎖から分離される、及びこのようなポリマー鎖をもたらす、架橋剤を供給することを含む。
共押出シートを照射した後、発泡は、架橋多層シートを熱的に分解可能な発泡剤の分解温度より高い温度まで加熱することにより行うことができる。発泡は、連続法で、約200~260℃又は約220~240℃で行うことができる。連続発泡法は、連続発泡体シートを生成するため、バッチ法よりも好ましいものとなり得る。
【0045】
発泡は、通常、架橋多層シートを、溶融塩、輻射加熱器、縦型又は横型熱風オーブン、マイクロ波エネルギー又はこれらの方法の組合せにより加熱することによって行うことができる。発泡はまた、例えば、オートクレーブ中の窒素、次いで溶融塩、輻射加熱器、縦型又は横型熱風オーブン、マイクロ波エネルギー又はこれらの方法の組合せによる自由発泡を使用する、浸漬法で行うこともできる。場合により、発泡前に、架橋多層シートは、予熱により軟化することができる。これは、特に、厚く堅いシートを用いて、発泡時の構造体の膨張を安定化する一助となり得る。
多層発泡体シートの密度は、JIS K6767によって測定すると、「コア」密度よりもむしろ、断面又は「全体」密度を使用して定義及び測定し得る。上記の方法を使用して生成する多層発泡体シートは、約20~250kg/m3、約30~125kg/m3、約50~100kg/m3又は約60~95kg/m3の断面又は「全体」密度を有する発泡体が生じ得る。断面密度は、発泡剤の量及び押出成形構造体の厚さによって制御し得る。多層発泡体シートの密度が、約20kg/m3未満である場合、このシートは、密度を得るために必要な化学発泡剤が多量となるために、効率よく発泡することができないことがある。更に、シートの密度が約20kg/m3未満である場合、発泡工程中のシートの膨張により、制御するのが徐々に難しくなることがある。更に、多層発泡体シートの密度が約20kg/m3未満である場合、発泡体は、気泡が徐々につぶれ易くなることがある。したがって、約20kg/m3未満の密度に、一定の断面密度及び厚さの多層発泡体シートを製造するのが困難になることがある。
【0046】
多層発泡体シートは、約250kg/m3の断面密度に限定されない。約350kg/m3、約450kg/m3又は約550kg/m3の断面密度をおよそ有する発泡体も生成することができる。しかし、より大きな密度は、所与の用途において使用され得る他の材料と比べた場合、一般に、法外な費用がかかる恐れがあるので、発泡体シートは、約250kg/m3未満の密度を有するのが好ましいものとなり得る。
上記の方法を使用して生成された発泡体層は、独立気泡を有することができる。好ましくは、気泡の少なくとも90%、好ましくは少なくとも95%、及びより好ましくは98%超が、損傷を受けていない気泡壁を有することができる。平均気泡サイズは、約0.05~約1.0mm及び好ましくは約0.1~約0.7mmとすることができる。平均気泡サイズが、約0.05mmより低い場合、発泡構造体の密度は、通常、250kg/m3より高くなり得る。平均気泡サイズが1mmより大きい場合、発泡体は不均一な表面を有することがある。発泡体中の気泡集団が、好ましい平均気泡サイズを有していない場合、発泡構造体は、望ましくない断裂が起こる可能性もある。これは、発泡構造体が、引っ張られる、又はその一部に二次処理が施されると起こり得る。発泡体層中の気泡サイズは、発泡構造体のコア中の比較的丸い気泡集団、及び比較的平坦で薄く、かつ/又は長方形となる、発泡構造体の表面付近の外膜中の気泡集団を表す、バイモーダル分布を有することができる。
【0047】
多層ポリオレフィン発泡体/TPUキャップシートの全体厚さは、約0.2mm~約50mm、約0.4mm~約40mm、約0.6mm~約30mm又は約0.8mm~約20mmとすることができる。厚さが約0.2mm未満である場合、発泡は、一次表面からかなりのガスを喪失するために、効率的にならないことがある。厚さが、約50mmを超える場合、発泡工程中の膨張により、制御が徐々に困難になる恐れがある。したがって、一定の断面密度及び厚さを有する多層ポリオレフィン発泡体/TPUキャップシートを生成することが徐々に一層困難になり得る。一部の実施形態では、発泡共押出多層構造体のキャップ層は、約0.1~100μm、約1~100μm、約5~75μm、約10~60μm、約15~50μm、約15~25μm、約20~50μm、約20~35μm又は約25~30μmの厚さを有することができる。一部の実施形態では、発泡共押出多層構造体の発泡体層は、約0.1~5mm、約0.5~5mm、約1~5mm、約2~5mm又は約2~4mmの厚さを有することができる。
一部の実施形態では、所望の厚さは、スライス、剥離又は接合などの二次処理によって得ることができる。スライス、剥離又は接合は、約0.1mm~約100mmの範囲の厚さを生成することができる。
【0048】
非発泡性又はわずかに発泡させることが意図されているキャップ層の場合、キャップ層の厚さは、多層シートの発泡時に低下させることができる。これは、発泡可能な層の膨張及びその結果のキャップ層の伸縮によるものとすることができる。したがって、例えば、多層シートが、その元の面積の2倍に膨張した場合、キャップ厚さは、約半分になることが予期され得る。多層シートが、その元の面積の4倍に膨張すると、キャップ厚さは、その元の厚さの約4分の1まで低下することが予期され得る。
開示されている多層ポリオレフィン発泡体/TPUキャップシートは、ウレタンベースの接着剤への接着が必要な用途に使用することができる。ウレタンベースの接着剤は、例えば、発泡体テープ及びガスケット;床の下葺き用発泡体;フィルム、織布、繊維層及び皮革に積層される発泡体;及び基材に接着する発泡体に使用される。
独立気泡発泡体テープは、窓ガラスの取り付け工事などの領域で一般に使用され、この場合、発泡体テープのストリップが、ガラス間の空気を封入するために、2枚の窓パネルの間に置かれる。これは、窓の断熱特性を改善することができる。発泡体はまた、日々及び季節温度の変化に由来する、建築物並びに窓枠の熱膨張及び収縮の影響から、ガラスパネルにとってのクッションとして働くこともできる。同様に、独立気泡発泡体ガスケットは、封止及び緩衝材に一般に使用される。携帯型電子デバイス及び家電は、発泡体ガスケットを含み得る2つの例である。軟質で可撓性のある発泡体シートは、通常、テープ又はガスケットとして適し得る。
【0049】
多層発泡体シートが、テープ又はガスケットとして使用されることになる場合、感圧接着層は、TPUキャップ層の少なくとも一部分に配置され得る。当分野において公知の任意の感圧接着剤が使用され得る。このような感圧接着剤の例には、以下に限定されないが、アクリルポリマー、ポリウレタン、熱可塑性エラストマー、ブロックコポリマー、ポリオレフィン、シリコーン、ゴムベースの接着剤、エチルヘキシルアクリレートとアクリル酸とのコポリマー、イソオクチルアクリレートとアクリル酸とのコポリマー、アクリル接着剤とゴムベースの接着剤とのブレンド、並びに上述の組合せが含まれる。しかし、ポリウレタンは、TPUキャップ層に接合するのに、特に非常に好適である。
一部の実施形態は、開示されている多層発泡構造体の第1の層、及び中実堅木張り床パネル、工学設計木造床パネル、積層体床パネル、ビニル床タイル、セラミック製床タイル、磁器製床タイル、石製床タイル、石英製床タイル、セメント製床タイル及びコンクリート製床タイルからなる群から選択される第2の層を含む。これらの積層体では、第1の層は、化学結合、機械的手段又はそれらの組合せによって、隣接パネル又はタイルにつなげることができる。隣接積層はまた、反対の電磁変化を有する物質間の引力、又は主に疎水特性もしくは主に親水特性のどちらか一方を有する両方の物質間に存在する引力の使用を含めた、任意の他の手段によって、互いに固定することもできる。
【0050】
開示されている多層発泡体を床パネル、特に、中実堅木張り床パネル、工学設計木造床パネル及び積層体床パネルに取り付ける方法は、キャップ表面及び/又はパネル表面の少なくとも一部の上に配置され得る、感圧接着層を介するものとすることができる。当分野において公知の任意の感圧接着剤が使用さてもよい。このような感圧接着剤の例は、アクリルポリマー、ポリウレタン、熱可塑性エラストマー、ブロックコポリマー、ポリオレフィン、シリコーン、ゴムベースの接着剤、エチルヘキシルアクリレートとアクリル酸とのコポリマー、イソオクチルアクリレートとアクリル酸とのコポリマー、アクリル接着剤とゴムベースの接着剤とのブレンド、並びに上述の組合せである。しかし、ポリウレタンは、TPUキャップ層に接合するのに、特に非常に好適である。
別の実施形態では、開示されている多層発泡体は、発泡体表面(キャップ表面よりむしろ)及び/又はパネル表面の少なくとも一部の上に配置され得る、感圧接着剤層を介して、床パネル、特に、中実堅木張り床パネル、工学設計木造床パネル及び積層体床パネルに取り付けることができる。この実施形態では、キャップ層が露出される。一成分ウレタン接着剤及び二成分ウレタン接着剤を使用する最終使用者(床の設置者)は、TPUキャップ層のない発泡体に比べて、下張り床への改善された接着を得ることができる。
【0051】
床パネル、特に中実堅木張り床パネル、工学設計木造床パネル及び積層体床パネルに取り付けた多層発泡体は、いくつかの目的を果たすことができる。発泡体は、パネルが圧縮された場合、例えば、このパネルの上にブーツ又は高いヒールの靴で歩いた場合、反射される音圧レベルを減じることができる。下張り床上のいかなる不規則性、衝突又は打ち突け(例えば、突き出た釘)も発泡体によって緩衝されるので、発泡体はまた、パネルと下張り床との間で水蒸気バリアとして働くこともでき、複数のパネル間で一層の均一な下張りをもたらす一助となり得る。これらの床パネル及びタイルは、住宅、オフィスビル及び他の商業ビルに一般に設置されている。
別の実施形態は、上部床層;下張り床層;及び1つ又は複数の下葺き層を含む床面システムであって、下葺き層のうち少なくとも1つが、下張り床と上部床層との間に配置されている開示されている多層発泡構造体を含有する、床面システムを提供することができる。このシステムでは、発泡体層は、下張り床又は上部床層を含めた、いずれの隣接層に接合されていてもよく、又は接合されていなくてもよい。取付けは、化学結合、機械的手段又はそれらの組合せによって行うことができる。隣接層はまた、反対の電磁変化を有する物質間の引力、又は主に疎水特性もしくは主に親水特性のどちらか一方を有する両方の物質間に存在する引力の使用を含めた、任意の他の手段によって、互いに固定することもできる。取付方法は、一成分ウレタン接着剤、二成分ウレタン接着剤、一成分アクリル接着剤又は二成分アクリル接着剤のいずれか1つの使用とすることができる。これらの接着剤のなかで、ポリウレタンは、TPUキャップ層に接合するのに、特に非常に好適である。接着剤は、住宅、オフィスビル及び商業ビルにおいて、このシステムを設置する間に適用することができる。
【0052】
このシステムにおける発泡体は、いくつかの目的に役立つことができる。発泡体は、上部床層が圧縮された場合、例えば、パネルの上をブーツ又は高いヒールの靴で歩いた場合、反射される音圧レベルを低減することができる。下張り床上のいかなる不規則性、衝突又は打ち突け(例えば、突き出た釘)も発泡体によって緩衝され得るので、発泡体はまた、パネルと下張り床との間に水蒸気バリアとして働くこともでき、複数のパネル間の一層の均一な下張りをもたらす一助となる。上部床層がセラミック製床タイル、磁器製床タイル、石製床タイル、石英製床タイル、セメント製床タイル及びモルタルにより結合させるコンクリート製床タイルからなる場合、及び床面システムにおけるすべて層が接合される場合、発泡体は、このシステムにおける様々な層の熱膨張及び収縮を緩衝することにより、モルタルの割れを低減する一助となり得る。
【0053】
一部の実施形態では、多層発泡構造体は、多層発泡体及び積層を含有している積層体である。好ましくは、この積層は、多層発泡体のTPUキャップ側に適用することができる。これらの積層体では、多層発泡構造体は、例えば、フィルム及び/又は箔と組み合わせることができる。そのような層の好適な材料の例には、以下に限定されないが、ポリ塩化ビニル(PVC)、熱可塑性ポリオレフィン(TPO)、熱可塑性ウレタン(TPU)、ポリエステル、ポリプロピレン、布及び他の織布などの織布;不織布などの皮革及び/又は繊維層が含まれる。しかし、熱可塑性ウレタンは、TPUキャップ層に接合するのに、特に非常に好適である。そのような層は、当業者に周知の標準技法を使用して、製造することができる。重要なことに、本開示の多層発泡体は、これらの材料の片側又は両側に積層され得、複数の他の層を含んでもよい。多層発泡体が両側に積層される場合、好ましくはこれらの積層は、多層発泡体のキャップ層に適用することができる。
【0054】
別の実施形態では、多層発泡構造体は、多層発泡体及びポリウレタン発泡体を含有している積層体である。好ましくは、このポリウレタン発泡体層は、多層発泡構造体のTPUキャップ側に適用することができる。多層発泡体及びポリウレタン発泡体は、例えば、フレームラミネーション機で接合することができ、この場合、炎を制御してポリウレタン発泡体の表面を溶融し、次いで、直ちに多層発泡体/キャップ構造及びポリウレタン発泡体に接触(通常、ニップなどの圧縮を用いる)させる。同様に、この実施形態における典型的なものは、多層ポリオレフィン発泡体/キャップ構造、又はポリウレタン発泡体のどちらか一方が、フィルム及び/又は箔を組み合わせた積層体とすることができるものである。そのような層の好適な材料の例には、以下に限定されないが、ポリ塩化ビニル(PVC);熱可塑性ポリオレフィン(TPO);熱可塑性ウレタン(TPU);ポリエステル、ポリプロピレン、布及び他の織布などの織布;不織布などの皮革及び/又は繊維層が含まれる。特に、ポリウレタン発泡体に積層する場合、そのような層は、同じフレームラミネーション機で積層することができる。層は、ポリウレタン発泡体に、前もって、同じパスで、又はその後に、積層することができる。
【0055】
別の実施形態では、多層/TPUポリオレフィン発泡体/キャップ構造は、反応射出成形(RIM)に使用されてもよい。RIM法では、多層発泡構造体は、通常、多層発泡構造体、並びに例えば、ポリ塩化ビニル(PVC);熱可塑性ポリオレフィン(TPO);熱可塑性ウレタン(TPU);ポリエステル、ポリプロピレン、布及び他の織布などの織布;不織布などの皮革及び/又は繊維層からなる積層を含む積層体とすることができる。積層された多層発泡構造体のTPUキャップ層は、鋳型中に好ましくは置くことができ、TPUキャップ層は、この鋳型の注入側に露出させる(通常、硬質プラスチック製基材、金属製又はプラスチック製枠などが、注入前の鋳型にやはり置かれる)。ポリマーの二成分が、通常、インライン静止ミキサー又は衝突式ミキサー中、高圧下で一緒に混合され、次に、鋳型に注入されて、混合物が反応して、更に重合する時に鋳型のキャビティを満たす。二成分ポリウレタン発泡体システムは、商業的なRIM製造に最も一般的なものである。TPUキャップ層は、注入されたポリウレタン発泡体との良好な接合にとって非常に好適となり得る。しかし、以下に限定されないが、ポリウレア、ポリイソシアヌレート及びポリエポキシドなどの他の二成分システムも使用することができる。
【0056】
多層発泡構造体はまた、熱形成され得る。多層発泡構造体を熱成形するために、発泡体を多層発泡体/TPUキャップ構造体中のすべての層に対するブレンドの融点まで加熱することができる。いかなる層も混合しないポリマーを有する場合、多層発泡構造体は、1つ超の融点を示すことがある。この場合、多層発泡構造体は、発泡体が多層発泡体組成物の最低融点と最高融点との間の中間温度まで加熱すると、通常、熱形成され得る。更に、多層発泡構造体は、硬質ポリプロピレン、ABS又は木質繊維コンポジットなどの基材上に熱形成され得る。基材がABS又は木質繊維コンポジットである場合、熱で活性化される接着剤を使用して、キャップ層への基材の接合を改善することができる。様々な接着剤のうち、ポリウレタンは、特に、TPUキャップ層に接合するのに、特に非常に好適である。基材自体は、多層発泡構造体として、同時に熱形成することもできる。
【0057】
一部の実施形態では、多層発泡構造体又は積層体(それらは、熱形成されていても、されていなくてもよい)は、ドアパネル、ドアロール、ドアインサート、ドアスタッファー(stuffer)、トランクスタッファー、アームレスト、センターコンソール、シートクッション、シートバック、ヘッドレスト、シートバックパネル、インストルメントパネル、ニーボルスター又はヘッドライナーなどの自動車内装部品に使用することができる。これらの多層発泡構造体又は積層体(それらは、熱形成されていても、されていなくてもよい)はまた、チェアクッション、チェアバック、ソファクッション、ソファトリム、リクライナークッション、リクライナートリム、カウチクッション、カウチトリム、スリーパークッション又はスリーパートリムなどの家具(例えば、商業用、オフィス用及び家庭用家具)において使用することができる。これらの多層発泡体積層体又は構造体(それらは、熱形成されていても、されていなくてもよい)は、モジュラー壁、可動壁、壁用パネル、モジュラーパネル、オフィスシステムパネル、間仕切り又は可動式パーティションなどの壁に使用することができる。多層発泡体積層体又は構造体はまた、可動式又は据え付け式のどちらか一方となり得る、収納用筐体(例えば、商業用、オフィス用及び家庭用)に使用することもできる。更に、多層発泡体積層体又は構造体(それらは、熱形成されていても、されていなくてもよい)は、チェアクションのカバー、チェアバックのカバー、アームレストのカバー、ソファカバー、ソファクッションのカバー、リクライナークッションのカバー、リクライナーのカバー、カウチクッションのカバー、カウチカバー、スリーパークッションのカバー、スリーパーカバー、壁カバー及び建築物用カバーなどのカバーに使用することができる。
【0058】
上記の用途のいずれの要件を満たすために、本開示の開示されている構造体に、以下に限定されないが、エンボス加工、コロナ又はプラズマ処理、粗面処理、滑面化処理、穿孔処理又はミクロ穿孔処理、スプライシング、スライシング、剥離、層化、接合及び穴あけ処理を含めた、様々な二次処理を施してもよい。
【実施例】
【0059】
例の原料
以下の表1に、以下の例において使用される、様々な構成成分及びそのような構成成分の説明の一覧表示を示す。
【表1】
【0060】
例のフィルムへの変換法
以下の表2に、例1~3の配合物を示す。
【表2-1】
【表2-2】
以下の表3に、例1~3の多層構造の共押出、照射及び特性を示す。
【表3-1】
【表3-2】
一次表面に由来する例1A、1B、2及び3の30×倍及び45°での多層構造体の画像が、
図1A、1B、2及び3にそれぞれ見いだすことができる。
【0061】
本出願は、本文及び図において、いくつかの数値範囲を開示している。本開示は、開示されている数値範囲全体にわって実施することができるので、正確な範囲境界が本明細書において言葉通り明記されていない場合でさえも、開示されている数値範囲は、端点を含めて、開示されている数値範囲内の任意の範囲又は値を本来、支持している。
【0062】
上記の説明は、当業者が、本開示の実施及び使用を可能にするために提示されており、特定の用途及びその要件の文脈において提示されている。好ましい実施形態に対する様々な改変は、当業者に容易に明白になり、本明細書において定義されている一般的な原理は、本開示の趣旨及び範囲から逸脱することなく、他の実施形態及び用途に適用することができる。したがって、本開示は、示されている実施形態に限定されることを意図するものではないが、本明細書において開示されている原理及び特徴に一致する最も広い範囲に与えられるものとする。最後に、本出願において言及されている特許及び刊行物の全開示が、参照により本明細書において組み込まれている。