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特許7021997組成物、フィルム、ひねり包装用フィルム、フィルムの製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-02-08
(45)【発行日】2022-02-17
(54)【発明の名称】組成物、フィルム、ひねり包装用フィルム、フィルムの製造方法
(51)【国際特許分類】
   C08L 23/04 20060101AFI20220209BHJP
   B29C 48/305 20190101ALI20220209BHJP
   C08K 5/55 20060101ALI20220209BHJP
   B65D 65/02 20060101ALI20220209BHJP
   B29K 23/00 20060101ALN20220209BHJP
   B29L 7/00 20060101ALN20220209BHJP
【FI】
C08L23/04
B29C48/305
C08K5/55
B65D65/02 E
B29K23:00
B29L7:00
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2018067754
(22)【出願日】2018-03-30
(65)【公開番号】P2019178218
(43)【公開日】2019-10-17
【審査請求日】2020-10-23
(73)【特許権者】
【識別番号】000003296
【氏名又は名称】デンカ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001139
【氏名又は名称】SK特許業務法人
(74)【代理人】
【識別番号】100130328
【弁理士】
【氏名又は名称】奥野 彰彦
(74)【代理人】
【識別番号】100130672
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 寛之
(72)【発明者】
【氏名】小林 勝彦
(72)【発明者】
【氏名】村山 秀一
【審査官】久保 道弘
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-199880(JP,A)
【文献】特開2007-308645(JP,A)
【文献】特開2004-067780(JP,A)
【文献】特開平02-308825(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L 23/00-23/36
C08K 5/55
B29C 48/00-48/96
B65D 65/00-65/46
B29K 23/00
B29L 7/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1ポリエチレン系樹脂100質量部と、第2ポリエチレン系樹脂25~70質量部と、ボロン系帯電防止剤0.10~0.60質量部を含み、
第1ポリエチレン系樹脂は、密度が0.940g/cm以上であり、
第2ポリエチレン系樹脂は、密度が0.870g/cm以上、0.940g/cm未満である、組成物。
【請求項2】
請求項1に記載の組成物であって、
第1ポリエチレン系樹脂が高密度ポリエチレンである、組成物。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載の組成物であって、
第2ポリエチレン系樹脂が低密度ポリエチレン又は直鎖状低密度ポリエチレンである、組成物。
【請求項4】
請求項1~請求項3の何れか1つに記載の組成物からなるフィルムであって、
前記フィルムは、少なくとも一方向に延伸されている、フィルム。
【請求項5】
請求項4に記載のフィルムを用いたひねり包装用フィルム。
【請求項6】
フィルムの製造方法であって、
溶融混練工程と、フィルム形成工程を備え、
前記溶融混練工程では、第1ポリエチレン系樹脂100質量部と、第2ポリエチレン系樹脂25~70質量部と、ボロン系帯電防止剤0.10~0.60質量部を溶融混練して溶融樹脂を形成し、
前記フィルム形成工程では、前記溶融樹脂をフィルムダイに通して押し出して形成したフィルムを冷却ロールに接触させて冷却し、
第1ポリエチレン系樹脂は、密度が0.940g/cm 以上であり、
第2ポリエチレン系樹脂は、密度が0.870g/cm 以上、0.940g/cm 未満である、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、組成物、フィルム、ひねり包装用フィルム、フィルムの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、高密度ポリエチレンと低密度ポリエチレンを含み、形状保持性等に優れたフィルムが開示されている。また、特許文献1には、帯電防止剤として、ポリオレフィン用として一般的に用いられている非イオン系界面活性剤、両性ベタイン型界面活性剤、アミン系帯電防止剤、多価アルコールの高級脂肪酸エステル系帯電防止剤等の内部練り込み型帯電防止剤を添加することが好ましい点が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2007-308645号公報
【文献】特許第5734491号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
このようなフィルムは、一例では、原料となる樹脂を溶融させた溶融樹脂をフィルムダイに通して押し出して形成したフィルムを冷却ロールで冷却することによって製造することが可能である。
【0005】
このような製造方法では、フィルムが冷却ロールに巻き付いて製造歩留まりを下げてしまうことがある。この巻き付きの問題は、特許文献1に開示されている帯電防止剤を原料樹脂に添加しても十分に抑制されない。
【0006】
本発明はこのような事情に鑑みてなされたものであり、フィルムの製造時に冷却ロールへのフィルムの巻き付きを抑制することが可能であると共に、製造時にメヤニが抑制され、かつ得られるフィルムの形状保持性、透明性、及び包装適性が良好である組成物を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明によれば、第1ポリエチレン系樹脂100質量部と、第2ポリエチレン系樹脂25~70質量部と、ボロン系帯電防止剤0.10~0.60質量部を含み、第1ポリエチレン系樹脂は、密度が0.940g/cm以上であり、第2ポリエチレン系樹脂は、密度が0.870g/cm以上、0.940g/cm未満である、組成物が提供される。
【発明の効果】
【0008】
本発明者は鋭意検討を行ったところ、フィルムの原料となる組成物が、第1及び第2ポリエチレン系樹脂及びボロン系帯電防止剤を特定の質量比で含有する場合には、フィルムの製造時に冷却ロールへのフィルムの巻き付きが抑制されるという現象を見出した。また、このような組成物を用いると製造時にメヤニが抑制され、かつ得られるフィルムの形状保持性、透明性、及び包装適性が良好であることが分かり、本発明の完成に到った。
【0009】
以下、本発明の種々の実施形態を例示する。以下に示す実施形態は互いに組み合わせ可能である。
好ましくは、前記記載の組成物であって、第1ポリエチレン系樹脂が高密度ポリエチレンである、組成物である。
好ましくは、前記記載の組成物であって、第2ポリエチレン系樹脂が低密度ポリエチレン又は直鎖状低密度ポリエチレンである、組成物である。
好ましくは、前記記載の組成物からなるフィルムであって、前記フィルムは、少なくとも一方向に延伸されている、フィルムである。
好ましくは、前記記載のフィルムを用いたひねり包装用フィルムである。
本発明の別の観点によれば、フィルムの製造方法であって、溶融混練工程と、フィルム形成工程を備え、前記溶融混練工程では、第1ポリエチレン系樹脂100質量部と、第2ポリエチレン系樹脂25~70質量部と、ボロン系帯電防止剤0.10~0.60質量部を溶融混練して溶融樹脂を形成し、前記フィルム形成工程では、前記溶融樹脂をフィルムダイに通して押し出して形成したフィルムを冷却ロールに接触させて冷却する、方法が提供される。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施形態について説明する。以下に示す実施形態中で示した各種特徴事項は、互いに組み合わせ可能である。また、各特徴事項について独立して発明が成立する。
【0011】
1.組成物
本発明の一実施形態の組成物は、第1ポリエチレン系樹脂(以下、「第1PE系樹脂」)100質量部と、第2ポリエチレン系樹脂(以下、「第2PE系樹脂」)25~70質量部と、ボロン系帯電防止剤0.10~0.60質量部を含む。以下、各構成について詳述する。
【0012】
1-1.第1及び第2PE系樹脂
第1及び第2PE系樹脂は、エチレン系重合体であり、エチレン単独重合体であることが好ましいが、エチレンと他のα-オレフィン、例えば、1-ブテン、4-メチル-1-ペンテン、1-ヘキセンもしくはこれらの2種の混合物との共重合体であってもよい。第1及び第2PE系樹脂は、エチレン単位の割合が80質量%以上であることが好ましく、90質量%以上であることがさらに好ましく、95質量%以上であることがさらに好ましい。
【0013】
第1PE系樹脂は、例えば高密度ポリエチレン(以下「HDPE」)である。第1PE系樹脂は、密度が0.940g/cm以上であり、好ましくは0.940~0.970g/cm、さらに好ましくは0.950~0.970g/cmである。この密度は、具体的には例えば、0.940、0.945、0.950、0.955、0.960、0.965、0.970g/cmであり、ここで例示した数値の何れか2つの間の範囲内であってもよい。
【0014】
密度が0.940g/cm未満では、得られるフィルムの強度、剛性が不足し、ひねり包装時のひねり保持性の低下が大きくなる。密度を0.970g/cm以下にすると、ひねり包装時のフィルム割れの発生が起こりにくくなる。
【0015】
第1PE系樹脂は、好ましくは、融点がDSC法(示差走査熱量計)の測定で126~136℃、メルトフローレート(MFR)がJISK-6922-2に規定される温度190℃、荷重2.16kgの測定条件下において、0.05~5.0g/10分であり、さらに好ましくは0.05~3.0である。MFRが0.05g/10分以上のものはフィルム加工性が優れており、5.0g/10分以下のものはフィルムの強度が高い。第1PE系樹脂は、公知のチーグラー触媒等を用いてスラリー法、溶液法または気相法による公知のプロセスにより製造される。
【0016】
第2PE系樹脂は、例えば低密度ポリエチレン(以下「LDPE」)、直鎖状低密度ポリエチレン(以下「LLDPE」)、又はその混合物である。第2PE系樹脂は、密度が0.870g/cm以上、0.940g/cm未満であり、好ましくは0.870~0.939g/cmである。具体的には例えば、0.870、0.875、0.880、0.885、0.890、0.895、0.900、0.905、0.910、0.915、0.920、0.925、0.930、0.935、0.939g/cmであり、ここで例示した数値の何れか2つの間の範囲内であってもよい。
【0017】
密度が0.870g/cm未満では、得られるフィルムは、ひねり包装時のひねり保持性の低下が大きくなる。また、密度が0.940g/cm以上では、得られるフィルムは、ひねり包装時のフィルム割れの発生が多くなる。
【0018】
第2PE系樹脂は、好ましくは、融点がDSC法(示差走査熱量計)の測定で100~125℃、メルトフローレート(MFR)がJISK-6922-2に規定される温度190℃、荷重2.16kgの測定条件下において、好ましくは0.05~5.0g/10分であり、さらに好ましくは0.05~3.0g/10分である。MFRが0.05g/10分以上のものはフィルム加工性が優れており、5.0g/10分以下のものはフィルムの寸法安定性が高い。LDPEは、公知の高圧ラジカル重合法により製造され、チューブラー法、オートクレーブ法の何れで製造されたものもよい。LLDPEは、チーグラーナッタ触媒またはメタロセン触媒を用いた配位重合法により、エチレンとコモノマーであるαオレフィンの共重合によって製造可能である。
【0019】
第1PE系樹脂100質量部に対する第2PE系樹脂の配合量は25~70質量部であり、具体的には例えば、25、30、35、40、45、50、55、60、65、70質量部であり、ここで例示した数値の何れか2つの間の範囲内であってもよい。第1及び第2PE系樹脂をこのような質量比で配合することによって、形成されるフィルムの透明性や形状保持性を向上させることができる。
【0020】
1-2.ボロン系帯電防止剤
ボロン系帯電防止剤は、ボロン原子を含有する帯電防止剤である。本発明の組成物にボロン系帯電防止剤を0.10~0.60質量部含ませることによって、フィルムの製造時に冷却ロールへフィルムが巻き付くことが抑制される。ボロン系帯電防止剤の添加量は、具体的には例えば、第1PE系樹脂100質量部に対して、0.10、0.15、0.20、0.25、0.30、0.35、0.40、0.45、0.50、0.55、0.60質量部であり、ここで例示した数値の何れか2つの間の範囲内であってもよい。
【0021】
ボロン系帯電防止剤としては、例えば、半極性有機ホウ素化合物と塩基性窒素化合物を含むもの、好ましくは半極性有機ホウ素化合物と塩基性窒素化合物を混合溶融し反応させて得られるものが利用可能である。
【0022】
半極性有機ホウ素化合物としては、一般式(1)に示すものが挙げられる。
【0023】
【化1】
(上記式中、R1、R2は、それぞれ独立に、炭素数1~20の炭化水素基、CH(CH16-CO-OCH-、又はHOCH-である。)
【0024】
一般式(1)の炭化水素基は、アルキル基が好ましく、直鎖状アルキル基がさらに好ましい。炭素数は、4~16が好ましく、6~12がさらに好ましく、8がさらに好ましい。炭素数は、具体的には例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20であり、ここで例示した数値の何れか2つの間の範囲内であってもよい。
【0025】
塩基性窒素化合物としては、一般式(2)に示すものが挙げられる。
【0026】
【化2】
(上記式中、R3~R4は、それぞれ独立に、水酸基で置換されていてもよい炭素数1~20の炭化水素基であり、R5は、炭素数1~20の炭化水素基であるか、又は一般式(3)で表される。)
【0027】
【化3】
(上記式中、R6は、-C-、又は-C-である。)
【0028】
R3~R4は、CH-、C-、HOCH-、HOC-、又はHOCHCH(CH)-であることが好ましい。R5は、炭素数1~20の炭化水素基であることが好ましく、炭化水素基は、アルキル基が好ましく、直鎖状アルキル基がさらに好ましい。炭素数は、4~16が好ましく、6~12がさらに好ましく、8がさらに好ましい。炭素数は、具体的には例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20であり、ここで例示した数値の何れか2つの間の範囲内であってもよい。
【0029】
ボロン系帯電防止剤としては、特許文献2に記載しているものや、株式会社ボロン研究所製ビオミセルBN-77が好ましい。ビオミセルBN-77は、一般式(1)の半極性有機ホウ素化合物と、一般式(2)の塩基性窒素化合物とを混合溶融し反応させて得られるボロン系帯電防止剤である。
【0030】
1-3.その他添加剤
さらに本発明においては、防曇剤、有機あるいは無機フィラー、酸化防止剤、有機あるいは無機系顔料、着色剤、紫外線防止剤、分散剤、核剤、架橋剤などの公知の添加剤を、本発明の特性を本質的に阻害しない範囲で添加することができる。
【0031】
2.フィルムの製造方法
本発明の一実施形態のフィルムの製造方法は、溶融混練工程と、フィルム形成工程を備える。また、この方法は、延伸工程、熱固定工程、弛緩処理工程を備えることが好ましい。このような工程により、ひねり包装用フィルムとして必要とされる形状保持性、透明性、寸法安定性、及び、剛性のすべての特性をバランスよく兼ね備えたポリエチレン系のフィルムを安定して製造することができる。
【0032】
以下、各工程について詳述する。
【0033】
2-1.溶融混練工程
この工程では、第1PE系樹脂100質量部と、第2PE系樹脂25~70質量部と、ボロン系帯電防止剤0.10~0.60質量部を溶融混練して溶融樹脂を形成する。つまり、「1.組成物」で説明した組成物を溶融混練して溶融樹脂を形成する。この工程は、単軸押出機、二軸押出機等の連続式溶融混練機を用いて行うことができる。
【0034】
2-2.フィルム形成工程
押出工程では、上記溶融樹脂をフィルムダイに通して押し出して形成したフィルムを冷却ロール(キャストロール)に接触させて冷却する。
【0035】
冷却ロールは、溶融樹脂を冷却して固化可能なものであれば限定されないが、内部に水冷機構を設けられているものが好ましい。また、溶融樹脂を複数の冷却ロールに接触させて冷却させることがさらに好ましい。冷却ロール内を循環させる冷却水の温度は、例えば10~60℃であり、20~50℃が好ましい。
【0036】
この工程で得られるフィルムは、未延伸フィルムであり、厚さは例えば50~1400μmである。このフィルムをそのままロールに巻き取って製品として用いてもよく、後述する延伸工程等を行ってものを製品としてもよい。
【0037】
この工程では、フィルムダイに通して押し出して形成したフィルムが冷却ロールに巻き付いてしまう場合があり、フィルムが冷却ロールに巻き付いてしまうと、それを剥がすために製造ラインを停止させる必要があるので、冷却ロールへのフィルムの巻き付きを抑制することが重要である。後述の実施例・比較例で示すように、フィルムの原料となる組成物が、第1及び第2PE系樹脂及びボロン系帯電防止剤を特定の質量比で含有する場合には、フィルムの製造時に冷却ロールへのフィルムの巻き付きが抑制されることが見出された。
【0038】
2-4.延伸工程
延伸工程では、未延伸フィルムを一軸又は二軸延伸して延伸フィルムを形成する。一軸延伸は、横一軸であっても、縦一軸であってもよい。
【0039】
フィルムの延伸倍率は、好ましくは10~20倍であり、さらに好ましくは13~17倍である。延伸倍率が10倍未満では、得られたフィルムの形状保持性が劣り、延伸倍率が20倍を超えると延伸が困難になる。また、延伸されたフィルムの厚さは、5~100μm、好ましくは10~60μmの範囲である。フィルムの厚さが、5μm未満ではフィルムとして必要な強度が不足し、一方、100μmを超えるとひねり包装用フィルムには適さない場合がある。
【0040】
未延伸フィルムを延伸する方法としては、従来公知の方法が使用できる。例えば、テンター延伸による横一軸延伸が考えられるが、この場合、延伸温度は100℃~140℃であり、好ましくは110℃~130℃で、前記延伸倍率の範囲で横一軸延伸する。
【0041】
フィルムの形状保持性を高める観点から、延伸は、一軸延伸であることが好ましく、横一軸延伸であることがさらに好ましい。二軸延伸の場合、縦方向の延伸倍率は、3倍以下であることが好ましい。
【0042】
2-5.熱固定工程
延伸工程の後、熱固定工程を行うことができる。熱固定工程は、例えば、第1PE系樹脂の融点+10℃~融点+30℃で熱処理することによって行うことができる。これによって、フィルムの熱収縮率の上昇を抑えることができる。
【0043】
2-6.弛緩処理工程
熱固定工程の後、弛緩処理工程を行うことができる。弛緩処理工程では、フィルムの延伸倍率を下げてる。これによって、フィルムにかかる応力を緩和する。これによって、得られるフィルム製品の巻き締まりが改善できる。
【0044】
以上の工程によって得られるフィルムは、横軸延伸方向に対し垂直な方向の引張破断伸度が600%以上を有するものが好ましい。
【0045】
また、本発明のフィルムは、必要に応じてコロナ放電処理、フレーム処理、界面活性剤の塗布等の表面処理により金属蒸着、印刷性、帯電防止等のフィルムの二次加工性を改良することもできる。
【実施例
【0046】
以下、本発明の実施例・比較例について説明する。
【0047】
1.実施例・比較例
表1に示す樹脂及び帯電防止剤を表1に示す質量比に従ってドライブレンドしたものを押出機内に供給し、溶融混練して、溶融樹脂を形成した。この溶融樹脂をフィルムダイに通して押し出して形成したフィルムを表1に示す冷却水温度に設定された冷却ロールに接触させて冷却することによって未延伸フィルムを形成した。未延伸フィルムの厚さは、最終的に得られるフィルムの厚さが25μmとなるように適宜調整した。
【0048】
次に、未延伸フィルムを120℃のテンター内で表1に示す延伸倍率に延伸して横一軸延伸フィルムを得た。
【0049】
次に、テンター熱固定ゾーンにおいて、128℃でフィルムを熱固定し、テンター熱固定ゾーンと冷却ゾーンの間で、延伸方向の幅長さを縮める弛緩処理を行って厚さ25μmのフィルムを得た。
【0050】
得られたフィルムについて各種評価を行った。その結果を表1に合わせて示す。
【0051】
【表1】
【0052】
表1中に示す構成成分の詳細は、以下の通りである。
【0053】
FX505:京葉ポリエチレン株式会社製、型式:KEIYOポリエチレンFX505
Z322:宇部丸善ポリエチレン株式会社製、型式:UBEポリエチレンZ322
KF360T:日本ポリエチレン株式会社製、型式:カーネル(登録商標)KF360T
BN-77:株式会社ボロン研究所製、型式:ビオミセルBN-77
アニオン性界面活性剤:花王株式会社製、型式:エレストマスターHE510
ノニオン性界面活性剤:花王株式会社製、型式:エレクトロストリッパー TS-3B
【0054】
2.評価方法
表1中の各種評価は、以下の方法・基準で行なった。
【0055】
<生産安定性>
上記実施例・比較例の条件でフィルムを製造する際に、溶融樹脂をフィルムダイに通して押し出して形成したフィルムが冷却ロールに巻き付いて生産の継続の不可になるまでに生産したフィルムの長さを測定した。この長さが5000m以上のものを○、5000m未満のものを×とした。
【0056】
<メヤニ抑制性>
上記実施例・比較例の条件でフィルムを製造する際に、フィルムダイにメヤニが付着して生産の継続の不可になるまでに生産したフィルムの長さを測定した。この長さが20000m以上のものを○、20000m未満のものを×とした。
【0057】
<形状保持率>
「形状保持性」は、縦10×横10×長さ30mmの長方形部材に縦50×横90mmのフィルムを1回転半(540°)ひねり包装し、温度23±2℃、湿度50±2%RHに設定された恒温恒湿装置内に1時間放置した後、ひねりの戻り角を測定し、以下の式に基いて、形状保持率を算出した。ひねり角は、540°である。
形状保持率(%)={(ひねり角-戻り角)/(ひねり角)}×100
【0058】
<ヘイズ>
「ヘイズ」は、ヘイズメータ(スガ試験機株式会社製、積分球式)を用いて、JIS K7105に準拠し測定した。
【0059】
<表面抵抗>
表面抵抗は、実施例・比較例で得られたフィルムについて、株式会社エーディーシー製のデジタル超高抵抗/微少電流計アドバンテストR8340を用いて印加電圧10V、チャージ時間、ディスチャージ時間各10秒として測定した。
【0060】
<帯電減衰率>
帯電減衰率は、実施例・比較例で得られたフィルムについて、90時間以上状態調整(温度23±2℃、湿度50±2%RH)を行い、帯電減衰率測定器(シシド株式会社製、sTATIC HONESTMETER H-0110)にて1Kv帯電させ30秒後の帯電量を測定し、以下の式によって算出した。
帯電減衰率(%)=(30秒後の帯電量/初期帯電量)×100
【0061】
<破断伸度>
「破断伸度」は、温度23±2℃、湿度50±2%RHに設定された恒温恒湿装置内で、JIS Z 1702に準拠して測定した。
【0062】
<延伸方向の弾性率>
「延伸方向の弾性率」は、温度23±2℃、湿度50±2%RHに設定された恒温恒湿装置内で、JISK 7127に準拠して測定した。
【0063】
<包装適性>
包装適性は、ひねり包装機における通紙作業、ひねり包装時において、静電気の発生によるロール、カッター刃への巻き付きの有無を示す。具体的には、ひねり包装機(テンチ製)に実施例・比較例のフィルムを取り付け、稼動した時にガイドロールに巻きついたり、包装フィルムサイズに断裁するカッターに巻きついたりする不具合が生じて、ひねり包装ができないものを×とした。
【0064】
3.考察
全ての実施例では、全ての評価項目において、良好な結果が得られた。
第2PE系樹脂の配合量が少なすぎる比較例1では、ヘイズが大きかった。
第2PE系樹脂の配合量が少なすぎる比較例2では、生産安定性が×であり、かつ形状保持率が低かった。
ボロン系帯電防止剤の配合量が少なすぎる比較例3では、形状保持率が低く、表面抵抗が大きく、かつ包装適性が×であった。
ボロン系帯電防止剤の配合量が多すぎる比較例4では、メヤニ抑制性が×であった。
ボロン系でない帯電防止剤を配合した比較例5~6では、生産安定性が×であった。
第2PE系樹脂を配合していない比較例7では、ヘイズが大きかった。
帯電防止剤を配合していない比較例8では、形状保持率が低く、表面抵抗が大きく、かつ包装適性が×であった。
【0065】
また、比較例2では、ボロン系帯電防止剤が適用配合されているにも関わらず、生産安定性が×であり、比較例4~5は、ボロン系帯電防止剤の代わりに、アニオン系又はノニオン系帯電防止剤を含んでいるにも関わらず、生産安定性が×であった。これらの結果は、フィルムの原料となる組成物が、第1及び第2PE系樹脂及びボロン系帯電防止剤を特定の質量比で含有することが、生産安定性を高めるのに必須であることを示唆している。