(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-02-08
(45)【発行日】2022-02-17
(54)【発明の名称】ガスセンサ
(51)【国際特許分類】
G01N 27/416 20060101AFI20220209BHJP
【FI】
G01N27/416 331
G01N27/416 311G
(21)【出願番号】P 2018114319
(22)【出願日】2018-06-15
【審査請求日】2021-01-20
(73)【特許権者】
【識別番号】000004064
【氏名又は名称】日本碍子株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100077665
【氏名又は名称】千葉 剛宏
(74)【代理人】
【識別番号】100116676
【氏名又は名称】宮寺 利幸
(74)【代理人】
【識別番号】100191134
【氏名又は名称】千馬 隆之
(74)【代理人】
【識別番号】100136548
【氏名又は名称】仲宗根 康晴
(74)【代理人】
【識別番号】100136641
【氏名又は名称】坂井 志郎
(74)【代理人】
【識別番号】100180448
【氏名又は名称】関口 亨祐
(72)【発明者】
【氏名】中垣 邦彦
(72)【発明者】
【氏名】岡本 拓
(72)【発明者】
【氏名】中曽根 修
(72)【発明者】
【氏名】生駒 信和
【審査官】黒田 浩一
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2017/222002(WO,A1)
【文献】国際公開第2017/222001(WO,A1)
【文献】特開2017-072502(JP,A)
【文献】特開2010-127938(JP,A)
【文献】特開2018-063145(JP,A)
【文献】特開2018-040746(JP,A)
【文献】特開2013-040959(JP,A)
【文献】特開2018-040723(JP,A)
【文献】特開2017-003298(JP,A)
【文献】特開2012-127668(JP,A)
【文献】特開2002-071639(JP,A)
【文献】特開2001-133447(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 27/26-27/49
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも酸素イオン伝導性の固体電解質からなる構造体と、前記構造体に形成され、被測定ガスが導入されるガス導入口と、前記ガス導入口に連通する主酸素濃度調整室と、前記主酸素濃度調整室に連通する副酸素濃度調整室と、前記副酸素濃度調整室に連通する測定室と、前記ガス導入口と前記主酸素濃度調整室との間に設けられ、前記ガス導入口に連通する予備調整室とを有するセンサ素子と、前記主酸素濃度調整室内の酸素濃度を制御する主酸素濃度制御手段と、前記副酸素濃度調整室内の酸素濃度を制御する副酸素濃度制御手段と、前記センサ素子の温度を制御する温度制御手段と、前記測定室内の特定成分の濃度を測定する特定成分測定手段と、前記固体電解質の内面と外面とに形成された
複数の電極と、を有し、前記予備調整室内の酸素濃度を制御する予備酸素濃度制御手段と、前記予備酸素濃度制御手段を制御する駆動制御手段と、前記予備酸素濃度制御手段の第1動作時における前記特定成分測定手段からのセンサ出力と、前記予備酸素濃度制御手段の第2動作時における前記特定成分測定手段からのセンサ出力との差、及び前記各々のセンサ出力の一方に基づいて、第1目的成分と第2目的成分の濃度を取得する目的成分取得手段とを有するガスセンサであって、
前記複数の電極は、前記主酸素濃度調整室に形成された主内側電極と、前記構造体の外側に形成された外側電極と、前記予備調整室に形成された内側予備電極と、前記副酸素濃度調整室に形成された副内側電極とを有し、
前記第1目的成分がNO、前記第2目的成分がNH
3
であり、
前記主酸素濃度制御手段は、前
記主内側電極と
前記外側電極間に主ポンプ電圧を印加して、前記主内側電極と前記外側電極間に主ポンプ電流を流すことにより、前記主酸素濃度調整室内の酸素をポンピングする主ポンプセルを有し、
前記予備酸素濃度制御手段は、前
記内側予備電極と
前記外側電極間に予備ポンプ電圧を印加して、前記内側予備電極と前記外側電極間に予備ポンプ電流を流すことにより、前記予備調整室内の酸素をポンピングする予備ポンプセルを有し、
前記主酸素濃度制御手段は、前記主ポンプセルの前記主ポンプ電流が一定になるように、前記予備ポンプセルの前記予備ポンプ電圧を制御する一定制御部を有する、ガスセンサ。
【請求項2】
請求項1記載のガスセンサにおいて、
前記副酸素濃度制御手段は、前
記副内側電極と
前記外側電極間に補助ポンプ電圧を印加して、前記副内側電極と前記外側電極間に補助ポンプ電流を流すことにより、前記副酸素濃度調整室内の酸素をポンピングする補助ポンプセルを有し、
前記副酸素濃度制御手段は、前記補助ポンプセルの補助ポンプ電流が一定になるように、前記主ポンプセルの前記主ポンプ電圧を制御する一定制御部を有する、ガスセンサ。
【請求項3】
少なくとも酸素イオン伝導性の固体電解質からなる構造体と、前記構造体に形成され、被測定ガスが導入されるガス導入口と、前記ガス導入口に連通する主酸素濃度調整室と、前記主酸素濃度調整室に連通する副酸素濃度調整室と、前記副酸素濃度調整室に連通する測定室と、前記ガス導入口と前記主酸素濃度調整室との間に設けられ、前記ガス導入口に連通する予備調整室とを有するセンサ素子と、前記主酸素濃度調整室内の酸素濃度を制御する主酸素濃度制御手段と、前記副酸素濃度調整室内の酸素濃度を制御する副酸素濃度制御手段と、前記センサ素子の温度を制御する温度制御手段と、前記測定室内の特定成分の濃度を測定する特定成分測定手段と、前記固体電解質の内面と外面とに形成された
複数の電極と、を有し、前記予備調整室内の酸素濃度を制御する予備酸素濃度制御手段と、前記予備酸素濃度制御手段を制御する駆動制御手段と、前記予備酸素濃度制御手段の第1動作時における前記特定成分測定手段からのセンサ出力と、前記予備酸素濃度制御手段の第2動作時における前記特定成分測定手段からのセンサ出力との差、及び前記各々のセンサ出力の一方に基づいて、第1目的成分と第2目的成分の濃度を取得する目的成分取得手段とを有するガスセンサであって、
前記複数の電極は、前記主酸素濃度調整室に形成された主内側電極と、前記構造体の外側に形成された外側電極と、前記予備調整室に形成された内側予備電極と、前記副酸素濃度調整室に形成された副内側電極とを有し、
前記第1目的成分がNO、前記第2目的成分がNH
3
であり、
前記主酸素濃度制御手段は、前
記主内側電極と
前記外側電極間に主ポンプ電圧を印加して、前記主内側電極と前記外側電極間に主ポンプ電流を流すことにより、前記主酸素濃度調整室内の酸素をポンピングする主ポンプセルを有し、
前記予備酸素濃度制御手段は、前
記内側予備電極と
前記外側電極間に予備ポンプ電圧を印加して、前記内側予備電極と前記外側電極間に予備ポンプ電流を流すことにより、前記予備調整室内の酸素をポンピングする予備ポンプセルを有し、
前記主酸素濃度制御手段は、前記主ポンプセルの前記主ポンプ電流に基づいて、前記予備ポンプセルの前記予備ポンプ電圧を比例制御する比例制御部を有する、ガスセンサ。
【請求項4】
請求項3記載のガスセンサにおいて、
前記予備ポンプ電流をIp0、前記主ポンプ電流をIp1としたとき、下記演算式によってO
2濃度を求め、得られたO
2濃度に基づいて、前記予備ポンプ電圧を得る、ガスセンサ。
O
2濃度=Ip0+a×Ip1(aは1より大きい定数)
【請求項5】
請求項3記載のガスセンサにおいて、
前記副酸素濃度制御手段は、前
記副内側電極と
前記外側電極間に補助ポンプ電圧を印加して、前記副内側電極と前記外側電極間に補助ポンプ電流を流すことにより、前記副酸素濃度調整室内の酸素をポンピングする補助ポンプセルを有し、
前記副酸素濃度制御手段は、前記補助ポンプセルの補助ポンプ電流が一定になるように、前記主ポンプセルの前記主ポンプ電圧を制御する一定制御部を有する、ガスセンサ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被測定ガス中の複数目的成分の各濃度を測定することが可能なガスセンサに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1では、排気ガスのような未燃成分、酸素の存在下に共存する複数成分(例えばNO、NH3等)の濃度を長期間にわたり精度よく測定することができるガスセンサを提供することを目的としている。
【0003】
当該目的を達成するため、特許文献1に記載されたガスセンサは、測定室内の特定成分の濃度を測定する特定成分測定手段と、予備調整室内の酸素濃度を制御する予備酸素濃度制御手段と、予備酸素濃度制御手段の駆動及び停止を制御する駆動制御手段と、予備酸素濃度制御手段の駆動時及び停止時における特定成分測定手段からのセンサ出力との差、及び各々のセンサ出力の一方に基づいて、第1目的成分と第2目的成分の濃度を取得する目的成分取得手段とを有する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1記載のガスセンサは、ガス導入口部分の第1拡散律速部と、その奥の第2拡散律速部との間の空間を「予備調整室」として予備調整電極を形成している。そして、予備調整電極にON/OFF信号を供給することによって、予備調整室で酸素の汲み出し/汲み入れを行っている。
【0006】
ところで、ガスセンサを構成する複数の空室のうち、予備調整室に流入する酸素の量が最も多い。そのため、予備調整室で酸素の汲み出し/汲み入れをすることを考えると、予備調整室でのポンプ能力が最も強力である必要がある。
【0007】
しかしながら、特許文献1に記載のガスセンサは、予備調整室の容積が小さく、ポンプ能力が小さいことがわかる。本来ならば、予備調整室の容積を大きくすればよいが、センサ素子全体のサイズが大きくなるという問題がある。
【0008】
あるいは、第1拡散抵抗を大きくし、予備調整室に流入するガス量を少なくするという方法もあるが、それに応じて、センサ出力の値も小さくなり、S/N比の向上が期待できないという問題がある。
【0009】
本発明はこのような課題を考慮してなされたものであり、排気ガスのような未燃成分、酸素の存在下に共存する複数成分(例えばNO、NH3等)の濃度を長期間にわたり精度よく測定することができるガスセンサにおいて、予備調整室の容量に影響されることなく、センサ出力のS/Nを向上することができ、ガスセンサの小型化も図ることができるガスセンサを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
[1] 本発明に係るガスセンサの第1の態様は、少なくとも酸素イオン伝導性の固体電解質からなる構造体と、前記構造体に形成され、被測定ガスが導入されるガス導入口と、前記ガス導入口に連通する主酸素濃度調整室と、前記主酸素濃度調整室に連通する副酸素濃度調整室と、前記副酸素濃度調整室に連通する測定室と、前記ガス導入口と前記主酸素濃度調整室との間に設けられ、前記ガス導入口に連通する予備調整室とを有するセンサ素子と、前記主酸素濃度調整室内の酸素濃度を制御する主酸素濃度制御手段と、前記副酸素濃度調整室内の酸素濃度を制御する副酸素濃度制御手段と、前記センサ素子の温度を制御する温度制御手段と、前記測定室内の特定成分の濃度を測定する特定成分測定手段と、前記固体電解質の内面と外面とに形成された複数の電極と、を有し、前記予備調整室内の酸素濃度を制御する予備酸素濃度制御手段と、前記予備酸素濃度制御手段を制御する駆動制御手段と、前記予備酸素濃度制御手段の第1動作時における前記特定成分測定手段からのセンサ出力と、前記予備酸素濃度制御手段の第2動作時における前記特定成分測定手段からのセンサ出力との差、及び前記各々のセンサ出力の一方に基づいて、第1目的成分と第2目的成分の濃度を取得する目的成分取得手段とを有するガスセンサである。
前記複数の電極は、前記主酸素濃度調整室に形成された主内側電極と、前記構造体の外側に形成された外側電極と、前記予備調整室に形成された内側予備電極と、前記副酸素濃度調整室に形成された副内側電極とを有し、前記第1目的成分がNO、前記第2目的成分がNH
3
である。
【0011】
前記主酸素濃度制御手段は、前記主内側電極と前記外側電極間に主ポンプ電圧を印加して、前記主内側電極と前記外側電極間に主ポンプ電流を流すことにより、前記主酸素濃度調整室内の酸素をポンピングする主ポンプセルを有する。
【0012】
前記予備酸素濃度制御手段は、前記内側予備電極と前記外側電極間に予備ポンプ電圧を印加して、前記内側予備電極と前記外側電極間に予備ポンプ電流を流すことにより、前記予備調整室内の酸素をポンピングする予備ポンプセルを有する。
【0013】
そして、前記主酸素濃度制御手段は、前記主ポンプセルの前記主ポンプ電流が一定になるように、前記予備ポンプセルの前記予備ポンプ電圧を制御する一定制御部を有する。
【0014】
これにより、主ポンプ電流を一定制御するために、予備電圧をフィードバックすることで、O2濃度に応じて、予備電圧が分離する。その結果、予備電圧とO2濃度との対応関係を示すマップを作成することができ、このマップを利用して、センサ出力とセンサ出力の変化量とから、NO濃度、NH3濃度を精度よく検出することが可能となる。
【0015】
[2] 本発明に係るガスセンサの第1の態様において、前記前記副酸素濃度制御手段は、前記副内側電極と前記外側電極間に補助ポンプ電圧を印加して、前記副内側電極と前記外側電極間に補助ポンプ電流を流すことにより、前記副酸素濃度調整室内の酸素をポンピングする補助ポンプセルを有する。
【0016】
前記副酸素濃度制御手段は、前記補助ポンプセルの補助ポンプ電流が一定になるように、前記主ポンプセルの前記主ポンプ電圧を制御する一定制御部を有する。
【0017】
これにより、一定制御部は、補助ポンプセルの補助ポンプ電流が一定になるように、主ポンプセルの主ポンプ電圧をフィードバック制御する。
【0018】
この場合も、上述したガスセンサと同様に、センサ出力とセンサ出力の変化量とから、NO濃度、NH3濃度を精度よく検出することが可能となる。
【0019】
[3] 本発明に係るガスセンサの第2の態様は、少なくとも酸素イオン伝導性の固体電解質からなる構造体と、前記構造体に形成され、被測定ガスが導入されるガス導入口と、前記ガス導入口に連通する主酸素濃度調整室と、前記主酸素濃度調整室に連通する副酸素濃度調整室と、前記副酸素濃度調整室に連通する測定室と、前記ガス導入口と前記主酸素濃度調整室との間に設けられ、前記ガス導入口に連通する予備調整室とを有するセンサ素子と、前記主酸素濃度調整室内の酸素濃度を制御する主酸素濃度制御手段と、前記副酸素濃度調整室内の酸素濃度を制御する副酸素濃度制御手段と、前記センサ素子の温度を制御する温度制御手段と、前記測定室内の特定成分の濃度を測定する特定成分測定手段と、前記固体電解質の内面と外面とに形成された複数の電極と、を有し、前記予備調整室内の酸素濃度を制御する予備酸素濃度制御手段と、前記予備酸素濃度制御手段を制御する駆動制御手段と、前記予備酸素濃度制御手段の第1動作時における前記特定成分測定手段からのセンサ出力と、前記予備酸素濃度制御手段の第2動作時における前記特定成分測定手段からのセンサ出力との差、及び前記各々のセンサ出力の一方に基づいて、第1目的成分と第2目的成分の濃度を取得する目的成分取得手段とを有するガスセンサである。
前記複数の電極は、前記主酸素濃度調整室に形成された主内側電極と、前記構造体の外側に形成された外側電極と、前記予備調整室に形成された内側予備電極と、前記副酸素濃度調整室に形成された副内側電極とを有し、前記第1目的成分がNO、前記第2目的成分がNH
3
である。
【0020】
そして、前記主酸素濃度制御手段は、前記主内側電極と前記外側電極間に主ポンプ電圧を印加して、前記主内側電極と前記外側電極間に主ポンプ電流を流すことにより、前記主酸素濃度調整室内の酸素をポンピングする主ポンプセルを有する。
【0021】
前記予備酸素濃度制御手段は、前記内側予備電極と前記外側電極間に予備ポンプ電圧を印加して、前記内側予備電極と前記外側電極間に予備ポンプ電流を流すことにより、前記予備調整室内の酸素をポンピングする予備ポンプセルを有する。
【0022】
前記主酸素濃度制御手段は、前記主ポンプセルの前記主ポンプ電流に基づいて、前記予備ポンプセルの前記予備ポンプ電圧を比例制御する比例制御部を有する。
【0023】
これにより、予備ポンプ電流Ip0に対する予備ポンプ電圧Vp0の比例制御の式
Vp0=f(Ip0)=a・Ip0+b
を求めることができ、この比例制御の式に基づいて、予備ポンプ電圧とO2濃度との対応関係を示すマップを作成することができ、このマップを利用して、センサ出力とセンサ出力の変化量とから、NO濃度、NH3濃度を精度よく検出することが可能となる。
【0024】
[4] 本発明に係るガスセンサの第2の態様において、予備ポンプ電流をIp0、主ポンプ電流をIp1としたとき、下記演算式によってO2濃度を求め、得られたO2濃度に基づいて、前記予備ポンプ電圧を得ることが好ましい。
O2濃度=Ip0+a×Ip1(aは1より大きい定数)
【0025】
[5] 本発明に係るガスセンサの第2の態様において、前記副酸素濃度制御手段は、前記副内側電極と前記外側電極間に補助ポンプ電圧を印加して、前記副内側電極と前記外側電極間に補助ポンプ電流を流すことにより、前記副酸素濃度調整室内の酸素をポンピングする補助ポンプセルを有する。前記副酸素濃度制御手段は、前記補助ポンプセルの補助ポンプ電流が一定になるように、前記主ポンプセルの前記主ポンプ電圧を制御する一定制御部を有する。
【0026】
これにより、補助ポンプセルの補助ポンプ電流が一定になるように、主ポンプセルの主ポンプ電圧をフィードバック制御することから、センサ出力とセンサ出力の変化量とから、NO濃度、NH3濃度を精度よく検出することが可能となる。
【発明の効果】
【0027】
本発明に係るガスセンサによれば、排気ガスのような未燃成分、酸素の存在下に共存する複数成分(例えばNO、NH3等)の濃度を長期間にわたり精度よく測定することができるガスセンサにおいて、予備調整室の容量に影響されることなく、センサ出力のS/Nを向上することができ、ガスセンサの小型化も図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【
図1】本実施の形態に係る第1のガスセンサ(第1ガスセンサ)の一構造例を示す断面図である。
【
図2】第1ガスセンサを模式的に示す構成図である。
【
図3】予備ポンプセルがOFF動作の場合の予備調整室内、酸素濃度調整室内及び測定室内の反応を模式的に示す説明図である。
【
図4】予備ポンプセルがON動作の場合の予備調整室内、酸素濃度調整室内及び測定室内の反応を模式的に示す説明図である。
【
図5】
図5Aは実施例1の結果(予備ポンプ電圧Vp0と主ポンプ電流Ip1との関係)を示すグラフ、
図5Bは実施例1の結果(O
2濃度と予備ポンプ電圧Vp0との関係)を示す表である。
【
図6】
図6Aは実施例2の結果(センサ出力Ip3とセンサ出力の変化量ΔIp3との関係:O
2濃度1%)を示すグラフ、
図6Bは実施例2の結果(センサ出力Ip3とセンサ出力の変化量ΔIp3との関係:O
2濃度5%)を示すグラフである。
【
図7】
図7Aは実施例2の結果(センサ出力Ip3とセンサ出力の変化量ΔIp3との関係:O
2濃度10%)を示すグラフ、
図7Bは実施例2の結果(センサ出力Ip3とセンサ出力の変化量ΔIp3との関係:O
2濃度20%)を示すグラフである。
【
図8】
図8Aは比較例1の結果(センサ出力Ip3とセンサ出力の変化量ΔIp3との関係:O
2濃度1%)を示すグラフ、
図8Bは比較例1の結果(センサ出力Ip3とセンサ出力の変化量ΔIp3との関係:O
2濃度5%)を示すグラフである。
【
図9】
図9Aは比較例1の結果(センサ出力Ip3とセンサ出力の変化量ΔIp3との関係:O
2濃度10%)を示すグラフ、
図9Bは比較例1の結果(センサ出力Ip3とセンサ出力の変化量ΔIp3との関係:O
2濃度20%)を示すグラフである。
【
図10】本実施の形態に係る第2のガスセンサ(第2ガスセンサ)の一構造例を示す断面図である。
【
図11】第2ガスセンサを模式的に示す構成図である。
【
図12】本実施の形態に係る第3のガスセンサ(第3ガスセンサ)の一構造例を示す断面図である。
【
図13】第3ガスセンサを模式的に示す構成図である。
【
図14】
図14Aは実施例3の結果(予備ポンプ電圧Vp0と主ポンプ電流Ip1との関係)を示すグラフ、
図14Bは実施例3の結果(O
2濃度と予備ポンプ電圧Vp0との関係)を示す表である。
【
図15】実施例3の結果(O
2濃度と予備ポンプ電圧Vp0との関係)を示すグラフである。
【
図16】
図16Aは実施例4の結果(センサ出力Ip3とセンサ出力の変化量ΔIp3との関係:O
2濃度1%)を示すグラフ、
図16Bは実施例4の結果(センサ出力Ip3とセンサ出力の変化量ΔIp3との関係:O
2濃度5%)を示すグラフである。
【
図17】
図17Aは実施例4の結果(センサ出力Ip3とセンサ出力の変化量ΔIp3との関係:O
2濃度10%)を示すグラフ、
図17Bは実施例4の結果(センサ出力Ip3とセンサ出力の変化量ΔIp3との関係:O
2濃度20%)を示すグラフである。
【
図18】実施例5の結果(O
2濃度と主ポンプ電流Ip1との関係)を示すグラフである。
【
図19】実施例
6の結果(O
2濃度=Ip0+1.24×Ip1)を示すグラフである。
【
図20】本実施の形態に係る第4のガスセンサ(第4ガスセンサ)の一構造例を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、本発明に係るガスセンサの実施の形態例を
図1~
図20を参照しながら説明する。なお、本明細書において、数値範囲を示す「~」は、その前後に記載される数値を下限値及び上限値として含む意味として使用される。
【0030】
[第1ガスセンサの構成]
第1の実施の形態に係るガスセンサ(以下、第1ガスセンサ10Aと記す)は、
図1及び
図2に示すように、センサ素子12を有する。センサ素子12は、酸素イオン伝導性の固体電解質からなる構造体14と、該構造体14に形成され、被測定ガスが導入されるガス導入口16と、構造体14内に形成され、ガス導入口16に連通する酸素濃度調整室18と、構造体14内に形成され、酸素濃度調整室18に連通する測定室20とを有する。
【0031】
酸素濃度調整室18は、ガス導入口16に連通する主調整室18aと、主調整室18aに連通する副調整室18bとを有する。測定室20は副調整室18bに連通している。
【0032】
さらに、このガスセンサ10は、構造体14のうち、ガス導入口16と主調整室18aとの間に設けられ、ガス導入口16に連通する予備調整室21を有する。
【0033】
具体的には、センサ素子12の構造体14は、第1基板層22aと、第2基板層22bと、第3基板層22cと、第1固体電解質層24と、スペーサ層26と、第2固体電解質層28との6つの層が、図面視で下側からこの順に積層されて構成されている。各層は、それぞれジルコニア(ZrO2)等の酸素イオン伝導性固体電解質層にて構成されている。
【0034】
センサ素子12の先端部側であって、第2固体電解質層28の下面と第1固体電解質層24の上面との間には、ガス導入口16と、第1拡散律速部30と、予備調整室21と、第2拡散律速部32と、酸素濃度調整室18と、第3拡散律速部34と、測定室20とが備わっている。また、酸素濃度調整室18を構成する主調整室18aと、副調整室18bとの間に第4拡散律速部36が備わっている。
【0035】
これらガス導入口16と、第1拡散律速部30と、予備調整室21と、第2拡散律速部32と、主調整室18aと、第4拡散律速部36と、副調整室18b、第3拡散律速部34と、測定室20とは、この順に連通する態様にて隣接形成されている。ガス導入口16から測定室20に至る部位を、ガス流通部とも称する。
【0036】
ガス導入口16と、予備調整室21と、主調整室18aと、副調整室18bと、測定室20は、スペーサ層26をくり抜いた態様にて設けられた内部空間である。予備調整室21と、主調整室18aと、副調整室18bと、測定室20はいずれも、各上部が第2固体電解質層28の下面で、各下部が第1固体電解質層24の上面で、各側部がスペーサ層26の側面で区画されている。
【0037】
第1拡散律速部30、第3拡散律速部34及び第4拡散律速部36は、いずれも2本の横長の(図面に垂直な方向に開口が長手方向を有する)スリットとして設けられている。第2拡散律速部32は、1本の横長の(図面に垂直な方向に開口が長手方向を有する)スリットとして設けられている。
【0038】
また、第3基板層22cの上面と、スペーサ層26の下面との間であって、ガス流通部よりも先端側から遠い位置には、基準ガス導入空間38が設けられている。基準ガス導入空間38は、上部がスペーサ層26の下面で、下部が第3基板層22cの上面で、側部が第1固体電解質層24の側面で区画された内部空間である。基準ガス導入空間38には、基準ガスとして、例えば酸素や大気が導入される。
【0039】
ガス導入口16は、外部空間に対して開口している部位であり、該ガス導入口16を通じて外部空間からセンサ素子12内に被測定ガスが取り込まれる。
【0040】
第1拡散律速部30は、ガス導入口16から予備調整室21に導入される被測定ガスに、所定の拡散抵抗を付与する部位である。第2拡散律速部32は、予備調整室21から主調整室18aに導入される被測定ガスに、所定の拡散抵抗を付与する部位である。
【0041】
主調整室18aは、ガス導入口16から導入された被測定ガス中の酸素分圧を調整するための空間として設けられる。酸素分圧は、主ポンプセル40が作動することによって調整される。
【0042】
主ポンプセル40は、主内側ポンプ電極42と、外側ポンプ電極44と、これらの電極に挟まれた酸素イオン伝導性の固体電解質とを含んで構成される電気化学的ポンプセルである。主内側ポンプ電極42は、主調整室18aを区画する第1固体電解質層24の上面、第2固体電解質層28の下面、及び、スペーサ層26の側面のそれぞれのほぼ全面に設けられている。外側ポンプ電極44は、第2固体電解質層28の上面の主内側ポンプ電極42と対応する領域に外部空間に露出する態様にて設けられている。主内側ポンプ電極42は、被測定ガス中のNOx成分に対する還元能力を弱めた材料で構成される。例えば平面視矩形状の多孔質サーメット電極(例えば、0.1wt%~30.0wt%のAuを含むPt等の貴金属とZrO2とのサーメット電極)として形成される。
【0043】
主ポンプセル40は、他の回路等からの要因によって、主調整室18a内の酸素を外部空間に汲み出し、あるいは、外部空間の酸素を主調整室18a内に汲み入れることで、外側ポンプ電極44と主内側ポンプ電極42との間に主ポンプ電流Ip1が流れる。
【0044】
第4拡散律速部36は、主調整室18aでの主ポンプセル40の動作により酸素濃度(酸素分圧)が制御された被測定ガスに所定の拡散抵抗を付与して、該被測定ガスを副調整室18bに導く部位である。
【0045】
副調整室18bは、予め主調整室18aにおいて酸素濃度(酸素分圧)が調整された後、第4拡散律速部36を通じて導入された被測定ガスに対して、さらに補助ポンプセル54による酸素分圧の調整を行うための空間として設けられている。これにより、副調整室18b内の酸素濃度を高精度に一定に保つことができるため、このガスセンサ10は、精度の高いNOx濃度測定が可能となる。
【0046】
補助ポンプセル54は、電気化学的ポンプセルであり、副調整室18bに面する第2固体電解質層28の下面のほぼ全体に設けられた補助ポンプ電極56と、外側ポンプ電極44と、第2固体電解質層28とによって構成される。
【0047】
なお、補助ポンプ電極56についても、主内側ポンプ電極42と同様に、被測定ガス中のNOx成分に対する還元能力を弱めた材料を用いて形成される。
【0048】
補助ポンプセル54は、補助ポンプ電極56と外側ポンプ電極44との間に所望の第2ポンプ電圧Vp2を印加することにより、副調整室18b内の雰囲気中の酸素を外部空間に汲み出し、あるいは、外部空間から副調整室18b内に汲み入れることが可能となっている。
【0049】
また、副調整室18b内における雰囲気中の酸素分圧を制御するために、補助ポンプ電極56と、基準電極48と、第2固体電解質層28と、スペーサ層26と、第1固体電解質層24とによって電気化学的なセンサセル、すなわち、補助ポンプ制御用の補助酸素分圧検出センサセル58が構成されている。
【0050】
なお、この補助酸素分圧検出センサセル58にて検出される第2起電力V2に基づいて電圧制御される第1可変電源60にて、補助ポンプセル54がポンピングを行う。これにより、副調整室18b内の雰囲気中の酸素分圧は、NOxの測定に実質的に影響がない低い分圧にまで制御されるようになっている。
【0051】
また、これと共に、補助ポンプセル54の補助ポンプ電流Ip2が、補助酸素分圧検出センサセル58の第2起電力V2の制御に用いられるようになっている。具体的には、補助ポンプ電流Ip2は、制御信号として補助酸素分圧検出センサセル58に入力され、その第2起電力V2が制御されることにより、第4拡散律速部36を通じて副調整室18b内に導入される被測定ガス中の酸素分圧の勾配が常に一定となるように制御されている。第1ガスセンサ10AをNOxセンサとして使用する際は、主ポンプセル40と補助ポンプセル54との働きによって、副調整室18b内での酸素濃度は各条件の所定の値に精度良く保たれる。
【0052】
第3拡散律速部34は、副調整室18bで補助ポンプセル54の動作により酸素濃度(酸素分圧)が制御された被測定ガスに所定の拡散抵抗を付与して、該被測定ガスを測定室20に導く部位である。
【0053】
NOx濃度の測定は、主として、測定室20内に設けられた測定用ポンプセル61の動作により行われる。測定用ポンプセル61は、測定電極62と、外側ポンプ電極44と、第2固体電解質層28と、スペーサ層26と、第1固体電解質層24とによって構成された電気化学的ポンプセルである。測定電極62は、測定室20内の例えば第1固体電解質層24の上面に直に設けられ、被測定ガス中のNOx成分に対する還元能力を、主内側ポンプ電極42よりも高めた材料にて構成された多孔質サーメット電極である。測定電極62は、測定電極62上の雰囲気中に存在するNOxを還元するNOx還元触媒としても機能する。
【0054】
測定用ポンプセル61は、測定電極62の周囲(測定室20内)の雰囲気中における窒素酸化物の分解によって生じた酸素を汲み出して、その発生量を測定ポンプ電流Ip3、すなわち、センサ出力として検出することができる。
【0055】
また、測定電極62の周囲(測定室20内)の酸素分圧を検出するために、第1固体電解質層24と、測定電極62と、基準電極48とによって電気化学的なセンサセル、すなわち、測定用ポンプ制御用の第3酸素分圧検出センサセル66が構成されている。第3酸素分圧検出センサセル66にて検出された第3起電力V3に基づいて第2可変電源68が制御される。
【0056】
副調整室18b内に導かれた被測定ガスは、酸素分圧が制御された状況下で第3拡散律速部34を通じて測定室20内の測定電極62に到達する。測定電極62の周囲の被測定ガス中の窒素酸化物は還元されて酸素を発生する。そして、この発生した酸素は測定用ポンプセル61によってポンピングされる。その際、第3酸素分圧検出センサセル66にて検出された第3起電力V3が一定となるように第2可変電源68の第3ポンプ電圧Vp3が制御される。測定電極62の周囲において発生する酸素の量は、被測定ガス中の窒素酸化物の濃度に比例する。従って、測定用ポンプセル61の測定ポンプ電流Ip3を用いて被測定ガス中の窒素酸化物濃度を算出することができる。すなわち、測定用ポンプセル61は、測定室20内の特定成分(NO)の濃度を測定する特定成分測定手段106を構成する。
【0057】
また、この第1ガスセンサ10Aは、電気化学的なセンサセル70を有する。このセンサセル70は、第2固体電解質層28と、スペーサ層26と、第1固体電解質層24と、第3基板層22cと、外側ポンプ電極44と、基準電極48とを有する。このセンサセル70によって得られる起電力Vrefによりセンサ外部の被測定ガス中の酸素分圧を検出可能となっている。
【0058】
さらに、センサ素子12においては、第2基板層22bと第3基板層22cとに上下から挟まれた態様にて、ヒータ72が形成されている。ヒータ72は、第1基板層22aの下面に設けられた図示しないヒータ電極を通して外部から給電されることにより発熱する。ヒータ72が発熱することによって、センサ素子12を構成する固体電解質の酸素イオン伝導性が高められる。ヒータ72は、予備調整室21と酸素濃度調整室18の全域に渡って埋設されており、センサ素子12の所定の場所を所定の温度に加熱、保温することができるようになっている。なお、ヒータ72の上下面には、第2基板層22b及び第3基板層22cとの電気的絶縁性を得る目的で、アルミナ等からなるヒータ絶縁層74が形成されている(以下、ヒータ72、ヒータ電極、ヒータ絶縁層74をまとめてヒータ部とも称する)。
【0059】
そして、予備調整室21は、後述する駆動制御手段110(
図2参照)によって駆動し、駆動中は、ガス導入口16から導入された被測定ガス中の酸素分圧を調整するための空間として機能する。酸素分圧は、予備ポンプセル80が作動することによって調整される。
【0060】
予備ポンプセル80は、予備調整室21に面する第2固体電解質層28の下面のほぼ全体に設けられた予備ポンプ電極82と、外側ポンプ電極44と、第2固体電解質層28とによって構成される、予備的な電気化学的ポンプセルである。
【0061】
なお、予備ポンプ電極82についても、主内側ポンプ電極42と同様に、被測定ガス中のNOx成分に対する還元能力を弱めた材料を用いて形成される。
【0062】
予備ポンプセル80は、予備ポンプ電極82と外側ポンプ電極44との間に第3可変電源86による所望の予備ポンプ電圧Vp0を印加することにより、予備調整室21内の雰囲気中の酸素を外部空間に汲み出し、あるいは、外部空間から予備調整室21内に汲み入れることが可能となっている。
【0063】
なお、予備調整室21は、緩衝空間としても機能する。すなわち、外部空間における被測定ガスの圧力変動(被測定ガスが自動車の排気ガスの場合であれば排気圧の脈動)によって生じる被測定ガスの濃度変動を、打ち消すことが可能である。
【0064】
さらに、第1ガスセンサ10Aは、
図2に模式的に示すように、主調整室18a内の酸素濃度を制御する主酸素濃度制御手段100と、副調整室18b内の酸素濃度を制御する副酸素濃度制御手段102と、センサ素子12の温度を制御する温度制御手段104と、測定室20内の特定成分(NO)の濃度を測定する特定成分測定手段106と、予備酸素濃度制御手段108と、駆動制御手段110と、目的成分取得手段112とを有する。
【0065】
なお、これらの各種手段は、例えば1つ又は複数のCPU(中央処理ユニット)と記憶装置等を有する1以上の電子回路にて構成される。電子回路は、例えば記憶装置に記憶されているプログラムをCPUが実行することにより、所定の機能が実現されるソフトウェア機能部でもある。もちろん、複数の電子回路を機能に合わせて接続したFPGA(Field-Programmable Gate Array)等の集積回路で構成してもよい。
【0066】
従来は、NO、NH3の目的成分に対して、酸素濃度調整室18内で全てをNOに変換した後、測定室20に導入し、これら2成分の総量を測定していた。つまり、2つの目的成分毎の濃度、すなわち、NO及びNH3の各濃度を測定することができなかった。
【0067】
これに対して、ガスセンサ10は、上述した各種の手段を具備することで、NO及びNH3の各濃度を取得することができるようにしたものである。
【0068】
すなわち、主酸素濃度制御手段100は、主ポンプセル40の主ポンプ電流Ip1に基づいて予備酸素濃度制御手段108を制御する。予備酸素濃度制御手段108は、主酸素濃度制御手段100による制御によって、予備調整室21内の酸素濃度を、条件に従った濃度に調整する。
【0069】
副酸素濃度制御手段102は、予め設定された酸素濃度の条件と、補助酸素分圧検出センサセル58(
図1参照)において生じる第2起電力V2とに基づいて、第1可変電源60をフィードバック制御することにより、副調整室18b内の酸素濃度を、上記条件に従った濃度に調整する。
【0070】
温度制御手段104は、予め設定されたセンサ温度の条件と、センサ素子12の温度を計測する温度センサ(図示せず)からの計測値とに基づいて、ヒータ72をフィードバック制御することにより、センサ素子12の温度を、上記条件に従った温度に調整する。
【0071】
特定成分測定手段106は、測定室20内の特定成分(NO成分)の濃度を測定する。特に、予備酸素濃度制御手段108のON動作時におけるNO成分と、予備酸素濃度制御手段108のOFF動作時におけるNO成分を測定する。
【0072】
目的成分取得手段112は、予備酸素濃度制御手段108の第1動作(例えばON動作)による特定成分測定手段106からのセンサ出力と、予備酸素濃度制御手段108の第2動作(例えばOFF動作)による特定成分測定手段106からのセンサ出力との差に基づいて、NO及びNH3の各濃度を取得する。
【0073】
第1ガスセンサ10Aは、これら主酸素濃度制御手段100、副酸素濃度制御手段102又は温度制御手段104、あるいは主酸素濃度制御手段100、副酸素濃度制御手段102及び温度制御手段104によって、酸素濃度調整室18内のNOを分解させることなく、NH3を全てNOに変換するように制御する。
【0074】
そして、目的成分取得手段112は、予備酸素濃度制御手段108のON動作による特定成分測定手段106からのセンサ出力と、予備酸素濃度制御手段108のOFF動作による特定成分測定手段106からのセンサ出力との差に基づいて、NO及びNH3の各濃度を取得する。
【0075】
ここで、第1ガスセンサ10Aの処理動作について、
図3及び
図4も参照しながら説明する。
【0076】
先ず、駆動制御手段110によって予備酸素濃度制御手段108がOFF動作している期間では、
図3に示すように、ガス導入口16を通じて導入したNH
3は、酸素濃度調整室18まで到達する。酸素濃度調整室18では、主酸素濃度制御手段100によって、NH
3を全てNOに変換するように制御されていることから、予備調整室21から酸素濃度調整室18に流入したNH
3は酸素濃度調整室18内でNH
3→NOの酸化反応が起こり、酸素濃度調整室18内の全てのNH
3がNOに変換される。従って、ガス導入口16を通じて導入されたNH
3は、第1拡散律速部30及び第2拡散律速部32をNH
3の拡散係数2.2cm
2/secの速度で通過し、酸素濃度調整室18内でNOに変換された後は、第3拡散律速部34をNOの拡散係数1.8cm
2/secの速度で通過して、隣接する測定室20内に移動する。
【0077】
一方、駆動制御手段110によって予備酸素濃度制御手段108がON動作している期間では、
図4に示すように、予備調整室21内でNH
3→NOの酸化反応が起こり、ガス導入口16を通じて導入された全てのNH
3がNOに変換される。従って、NH
3は第1拡散律速部30をNH
3の拡散係数2.2cm
2/secで通過するが、予備調整室21より奥にある第2拡散律速部32以降はNOの拡散係数1.8cm
2/secの速度で測定室20に移動する。
【0078】
すなわち、予備酸素濃度制御手段108が第2動作状態から第1動作状態に切り替わることで、NH3の酸化反応が起こる場所が酸素濃度調整室18から予備調整室21に移動する。
【0079】
NH3の酸化反応が起こる場所が酸素濃度調整室18から予備調整室21に移動することは、被測定ガス中のNH3が第2拡散律速部32を通過する際の状態がNH3からNOに変わることに等しい。そして、NO、NH3は各々異なる拡散係数を持つため、第2拡散律速部32をNOで通過するか、NH3で通過するかの違いは、測定室20に流れ込むNO量の違いに相当するため、測定用ポンプセル61に流れる測定ポンプ電流Ip3を変化させる。
【0080】
この場合、予備ポンプセル80のON動作時の測定ポンプ電流Ip3(on)と、予備ポンプセル80のOFF動作時の測定ポンプ電流Ip3(off)の変化量ΔIp3は、被測定ガス中のNH3の濃度によって一義的に決まる。そのため、予備ポンプセル80のON時又はOFF時の測定ポンプ電流Ip3(on)又はIp3(off)と、上述した測定ポンプ電流Ip3の変化量ΔIp3とからNOとNH3の各濃度を算出することができる。
【0081】
従って、目的成分取得手段112では、予備ポンプセル80のON動作時の測定ポンプ電流Ip3(1)と、該測定ポンプ電流Ip3(1)と予備ポンプセル80のOFF動作時の測定ポンプ電流Ip3(2)との変化量ΔIp3と、マップ120とに基づいてNO及びNH3の各濃度を取得する。
【0082】
そして、この第1ガスセンサ10Aの主酸素濃度制御手段100は、主ポンプセル40の主ポンプ電流Ip1が一定になるように、予備ポンプセル80の予備ポンプ電圧Vp0を制御する一定制御部130を有する。
【0083】
これにより、主ポンプ電流Ip1を一定制御するために、予備ポンプ電圧Vp0をフィードバックすることで、O2濃度に応じて、予備ポンプ電圧Vp0が分離することとなる。その結果、O2濃度、NO濃度及びNH3濃度の違いによって、ポイントの位置が異なることから、これらの関係をマップ化してマップ120とすることで、センサ出力Ip3とセンサ出力の変化量ΔIp3から、NO濃度、NH3濃度を精度よく検出することが可能となる。
【0084】
<実施例1>
ここで、1つの実施例について、
図5A及び
図5Bを参照しながら説明する。実施例1は、
図1に示す第1ガスセンサ10Aにおいて、各酸素分圧における主ポンプ電流Ip1と、予備ポンプ電圧Vp0の関係、すなわち、O
2濃度に応じた予備ポンプ電圧Vp0の変化を確認した。
【0085】
実施例1を実施する上での条件は以下の通りである。
センサ駆動温度:840℃
モデルガス:O2及びH2O(NO及びNH3は導入せず)
ガス濃度:O2=1~20%、H2O=3%
ガス流量:200L/min(250℃)
【0086】
測定結果を
図5Aのグラフ並びに
図5Bの表に示す。
図5Aのグラフにおいて、O
2濃度が1%のときの特性を曲線L1に示し、O
2濃度が5%のときの特性を曲線L2に示し、O
2濃度が10%のときの特性を曲線L3に示し、O
2濃度が20%のときの特性を曲線L4に示す。
【0087】
図5Bの表は、O
2濃度が1%、5%、10%及び20%であって、主ポンプ電流Ip1が0.05mAのときの予備ポンプ電圧Vp0を示す。
【0088】
このように、主ポンプ電流Ip1を一定制御するために、予備ポンプ電圧Vp0をフィードバックすることで、O2濃度に応じて、予備ポンプ電圧Vp0が分離することがわかった。
【0089】
<実施例2>
実施例2は、実施例1とは異なり、モデルガスとして、O2及びH2Oのほか、NO及びNH3を加えた点で異なる。
【0090】
実施例2を実施する上での条件は以下の通りである。
センサ駆動温度:840℃
モデルガス:O2、H2O、NO、NH3
ガス濃度:O2=1~20%、H2
O=3%、NO=0~500ppm、NH3=0~500ppm
ガス流量:200L/min(250℃)
【0091】
NO濃度とNH
3濃度を振って、予備ポンプセル80の駆動をオフにした状態でのNO濃度とNH
3濃度によるセンサ出力Ip3の変化と、NH
3濃度によるセンサ出力Ip3の変化量ΔIp3の動向を確認した。その結果を
図6A~
図7Bに示す。
【0092】
図6Aは、O
2濃度が1%の場合の特性を示し、
図6Bは、O
2濃度が5%の場合の特性を示す。また、
図7Aは、O
2濃度が10%の場合の特性を示し、
図7Bは、O
2濃度が20%の場合の特性を示す。
【0093】
図6A~
図7Bにおいて、NO濃度が0ppmのときの特性を曲線L11に示し、NO濃度が100ppmのときの特性を曲線L12に示し、NO濃度が200ppmのときの特性を曲線L13に示し、NO濃度が300ppmのときの特性を曲線L14に示し、NO濃度が400ppmのときの特性を曲線L15に示し、NO濃度が500ppmのときの特性を曲線L16に示す。
【0094】
また、
図6A~
図7Bにおいて、NH
3濃度が0ppmのときのポイントをP1で示し、NH
3濃度が100ppmのときのポイントをP2で示し、NH
3濃度が200ppmのときのポイントをP3で示し、NH
3濃度が300ppmのときのポイントをP4で示し、NH
3濃度が400ppmのときのポイントをP5で示し、NH
3濃度が500ppmのときのポイントをP6で示す。
【0095】
図6A~
図7Bからもわかるように、O
2濃度、NO濃度及びNH
3濃度の違いによって、ポイントの位置が異なることから、
図6A~
図7Bをマップ化してマップ120とすることで、センサ出力Ip3とセンサ出力の変化量ΔIp3とから、NO濃度、NH
3濃度を精度よく検出することが可能となる。
【0096】
<比較例1>
比較例1は、上述した実施例2とほぼ同様の構成のガスセンサを用いたが、予備ポンプ電圧Vp0を一定電圧(=0.35V)になるように制御した点で異なる。
【0097】
測定方法は、実施例2と同様に、NO濃度とNH
3濃度を振って、予備ポンプセル80の駆動をオフにした状態でのNO濃度
とNH
3
濃度によるセンサ出力Ip3の変化と、NH
3濃度によるセンサ出力Ip3の変化量ΔIp3の動向を確認した。その結果を
図8A~
図9Bに示す。
【0098】
図8A~
図9Bからわかるように、O
2濃度が1%、5%の場合は、NOとNH
3の分離が可能、すなわち、マップ化が可能だが(
図8A及び
図8B参照)、O
2濃度が10%を超えると、
図9A及び
図9Bに示すように、NOとNH
3の分離が不可能となった。比較例1に示す予備ポンプ電圧Vp0の一定制御では、高O
2濃度下で、予備調整室21が目的の酸素濃度までポンプアウトしておらず、その結果、予備ポンプ電圧Vp0が印加されているにも拘わらず、予備調整室21がOFF状態になっているものと思われる。
【0099】
[第2ガスセンサの構成]
第2の実施の形態に係るガスセンサ(以下、第2ガスセンサ10Bと記す)は、
図10及び
図11に示すように、上述した第1ガスセンサ10A(
図1及び
図2参照)とほぼ同様の構成を有するが、主ポンプセル40の主ポンプ電流Ip1が一定になるように、予備ポンプセル80の予備ポンプ電圧Vp0を制御する上述した第1一定制御部130Aを有するほか、第2一定制御部130Bを有する点で異なる。
【0100】
すなわち、
図11に示すように、この第2ガスセンサ10Bは、上述したように、主酸素濃度制御手段100が第1一定制御部130Aを有するほか、副酸素濃度制御手段102が、第2一定制御部130Bを有する。
【0101】
第2一定制御部130Bは、補助ポンプセル54の補助ポンプ電流Ip2が一定になるように、主ポンプセル40の主ポンプ電圧Vp1をフィードバック制御する。
【0102】
この場合も、上述した第1ガスセンサ10Aと同様に、センサ出力Ip3とセンサ出力の変化量ΔIp3とから、NO濃度、NH3濃度を精度よく検出することが可能となる。
【0103】
[第3ガスセンサの構成]
第3の実施の形態に係るガスセンサ(以下、第3ガスセンサ10Cと記す)は、
図12及び
図13に示すように、上述した第1ガスセンサ10Aとほぼ同様の構成を有するが、予備ポンプセル80の予備ポンプ電圧Vp0が、主ポンプセル40の主ポンプ電流Ip1の比例関係となるように、予備ポンプセル80の予備ポンプ電圧Vp0を主ポンプ電流Ip1で比例制御する比例制御部132を有する点で異なる。すなわち、
図13に示すように、第3ガスセンサ10Cの主酸素濃度制御手段100は、比例制御部132を有する。
【0104】
<実施例3>
実施例3は、
図12及び
図13に示す第3ガスセンサ10Cにおいて、O
2濃度領域(1~20%)における主ポンプ電流Ip1と予備ポンプ電圧Vp0の関係を調査し、酸素濃度別の予備ポンプ電流Ip0と予備ポンプ電圧Vp0との関係を確認した。
【0105】
実施例3を実施する上での条件は以下の通りである。
センサ駆動温度:840℃
モデルガス:O2及びH2O(NO及びNH3は導入せず)
ガス濃度:O2=1~20%、H2O=3%
ガス流量:200L/min(250℃)
【0106】
測定結果を
図14Aのグラフ、
図14Bの表並びに
図15のグラフに示す。
図14Aのグラフは、予備ポンプ電圧Vp0に対する主ポンプ電流Ip1の変化を示す。
図14Aにおいて、O
2濃度が1%のときの特性を曲線L21に示し、O
2濃度が5%のときの特性を曲線L22に示し、O
2濃度が10%のときの特性を曲線L23に示し、O
2濃度が20%のときの特性を曲線L24に示す。
【0107】
そして、代表的に曲線21~曲線24を跨ぐ1つの右上がりの直線Laを設定し、各交点(Pa、Pb、Pc及びPd)をプロットした。プロットした4つの交点Pa~Pdに対応するO
2濃度と予備ポンプ電圧Vp0(V)の関係を
図14Bの表に示した。
【0108】
さらに、
図15に示すように、横軸がO
2濃度(%)、縦軸が予備ポンプ電圧Vp0(V)のグラフに、交点Pa~Pdをプロットし、さらに、最小二乗法にて近似直線Lxを求めた。
【0109】
この近似直線Lxの方程式を、予備ポンプ電流Ip0に対する予備ポンプ電圧Vp0の比例制御の式
Vp0=f(Ip0)=a・Ip0+b
とした。ここで、
図15のグラフの結果に基づけば、a=0.0275、b=0.2737である。
【0110】
<実施例4>
実施例4は、上述した実施例2と同様に、モデルガスとして、O2及びH2
Oのほか、NO及びNH3を加えて実施し、O2濃度、NO濃度及びNH3濃度の違いによって、ポイントの位置が異なるかどうかを確認した。
【0111】
実施例4を実施する上での条件は以下の通りである。
センサ駆動温度:840℃
モデルガス:O2、H2
O、NO、NH3
ガス濃度:O2=1~20%、H2
O=3%、NO=0~500ppm、NH3=0~500ppm
ガス流量:200L/min(250℃)
【0112】
NO濃度とNH
3濃度を振って、予備ポンプセル80の駆動をオフにした状態でのNO濃度とNH
3濃度によるセンサ出力Ip3の変化と、NH
3濃度によるセンサ出力の変化量ΔIp3の動向を確認した。その結果を
図16A~
図17Bに示す。
【0113】
図16Aは、O
2濃度が1%の場合の特性を示し、
図16Bは、O
2濃度が5%の場合の特性を示す。また、
図17Aは、O
2濃度が10%の場合の特性を示し、
図17Bは、O
2濃度が20%の場合の特性を示す。
【0114】
図16A~
図17Bにおいて、NO濃度が0ppmのときの特性を曲線L31に示し、NO濃度が100ppmのときの特性を曲線L32に示し、NO濃度が200ppmのときの特性を曲線L33に示し、NO濃度が300ppmのときの特性を曲線L34に示し、NO濃度が400ppmのときの特性を曲線L35に示し、NO濃度が500ppmのときの特性を曲線L36に示す。
【0115】
また、
図16A~
図17Bにおいて、NH
3濃度が0ppmのときのポイントをP11で示し、NH
3濃度が100ppmのときのポイントをP12で示し、NH
3濃度が200ppmのときのポイントをP13で示し、NH
3濃度が300ppmのときのポイントをP14で示し、NH
3濃度が400ppmのときのポイントをP15で示し、NH
3濃度が500ppmのときのポイントをP16で示す。
【0116】
図16A~
図17Bからもわかるように、O
2濃度、NO濃度及びNH
3濃度の違いによって、ポイントの位置が異なることから、
図16A~
図17Bをマップ化してマップ120とすることで、センサ出力Ip3とセンサ出力の変化量ΔIp3とから、NO濃度、NH
3濃度を精度よく検出することが可能となる。
【0117】
<実施例5>
実施例5は、
図12及び
図13に示す第3ガスセンサ10Cを用いた。予備ポンプセル80がOFFのときの主ポンプ電流Ip1は、O
2濃度に正比例する。従って、予備ポンプセル80がOFFのときの予備ポンプ電流Ip0から排気ガス中のO
2濃度を把握し、続いて起こる予備ポンプセル80のON時の予備ポンプ電圧Vp0の設定点を予備ポンプ電流Ip0(OFF時)から求める。
【0118】
例えば
図18のグラフに示すように、予めO
2濃度に対する主ポンプ電流Ip1(予備ポンプセルOFF時)の特性をマップとして用意し、OFF時の主ポンプ電流Ip1からマップを使用してO
2濃度を求めればよい。そして、把握したO
2濃度に基づいて、例えば
図14Bの表から予備ポンプ電圧Vp0を決定する。
【0119】
<実施例6>
実施例6は、同じく
図12及び
図13に示す第3ガスセンサ10Cを用いた。予備ポンプセル80をONにしたときの予備ポンプ電流Ip0は、予備ポンプセル80での酸素の出し入れの量を表し、主ポンプ電流Ip1は、主調整室18a(酸素濃度調整室18)での酸素の出し入れの量を表している。すなわち、予備ポンプ電流Ip0+主ポンプ電流Ip1で、第3ガスセンサ10Cのトータルの酸素の出し入れの量を表し、この量が排気ガスのO
2濃度と同じになる。つまり、予備ポンプセル80がONして、予備ポンプ電圧Vp0がどんな値になろうとも、
O
2濃度=Ip0+a×Ip1(aは1より大きい定数)
が成立し、係数aは、第1拡散律速部30の拡散抵抗D0及び第2拡散律速部32の拡散抵抗D1の大きさによって定まる値になる。拡散抵抗D0及びD1があるため、内部にいくほど拡散で到達する酸素量は減少する。また、係数aの値は、拡散抵抗D0及びD1の設計値に依存する。例えば係数aが1.24の場合、
図19に示すようなグラフが作成される。このグラフからO
2濃度を算定することができる。そして、O
2濃度が判明すれば、
図14Bの表から予備ポンプ電圧Vp0を決定すればよい。
【0120】
[第4ガスセンサの構成]
第4の実施の形態に係るガスセンサ(以下、第4ガスセンサ10Dと記す)は、
図20に示すように、上述した第3ガスセンサ10C(
図12及び
図13参照)とほぼ同様の構成を有するが、上述した第2ガスセンサ10B(
図10参照)と同様に、第2一定制御部130Bを有する点で異なる。
【0121】
第2一定制御部130Bは、補助ポンプセル54の補助ポンプ電流Ip2が一定になるように、主ポンプセル40の主ポンプ電圧Vp1をフィードバック制御する。
【0122】
この場合も、上述した第3ガスセンサ10Cと同様に、センサ出力Ip3とセンサ出力の変化量ΔIp3とから、NO濃度、NH3濃度を精度よく検出することが可能となる。
【0123】
なお、本発明に係るガスセンサ及びガスセンサの制御方法は、上述の実施の形態に限らず、本発明の要旨を逸脱することなく、種々の構成を採り得ることはもちろんである。
【0124】
上述の例では予備調整室21内にて第2目的成分であるNH3が変換率100%でNOに変換される例を示したが、NH3の変換率は100%である必要はなく、被測定ガス中のNH3濃度と再現性の良い相関が得られる範囲で変換率を任意に設定することができる。
【0125】
また、予備酸素濃度制御手段108の駆動は、予備調整室21内から酸素を汲み出す方向でも、汲み入れる方向でも良く、第2目的成分であるNH3の存在によって、測定用ポンプセル61の出力である測定ポンプ電流Ip3が再現性良く変化すればよい。
【0126】
なお、本発明の実施に当たっては、本発明の思想を損なわない範囲で自動車用部品としての信頼性向上のための諸手段が付加されてもよい。
【符号の説明】
【0127】
10A~10D…第1ガスセンサ~第4ガスセンサ
12…センサ素子 14…構造体
16…ガス導入口 18…酸素濃度調整室
18a…主調整室 18b…副調整室
20…測定室 21…予備調整室
30…第1拡散律速部 32…第2拡散律速部
34…第3拡散律速部 36…第4拡散律速部
40…主ポンプセル 42…主内側ポンプ電極
44…外側ポンプ電極 54…補助ポンプセル
56…補助ポンプ電極 60…第1可変電源
61…測定用ポンプセル 62…測定電極
68…第2可変電源 70…センサセル
72…ヒータ 80…予備ポンプセル
82…予備ポンプ電極 86…第3可変電源
100…主酸素濃度制御手段 102…副酸素濃度制御手段
104…温度制御手段 106…特定成分測定手段
108…予備酸素濃度制御手段 110…駆動制御手段
112…目的成分取得手段 120…マップ
130…一定制御部 130A…第1一定制御部
130B…第2一定制御部 132…比例制御部
Ip1…主ポンプ電流 Ip2…補助ポンプ電流
Ip3…測定ポンプ電流(センサ出力) V2…第2起電力
V3…第3起電力 Vp0…予備電圧
Vp1…主ポンプ電圧 Vp2…第2ポンプ電圧
Vp3…第3ポンプ電圧