(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-02-08
(45)【発行日】2022-02-17
(54)【発明の名称】電子時計
(51)【国際特許分類】
G04G 21/00 20100101AFI20220209BHJP
G04G 21/04 20130101ALI20220209BHJP
H04B 13/00 20060101ALI20220209BHJP
【FI】
G04G21/00 303
G04G21/04
H04B13/00
(21)【出願番号】P 2018115236
(22)【出願日】2018-06-18
【審査請求日】2020-10-30
(73)【特許権者】
【識別番号】000001960
【氏名又は名称】シチズン時計株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】240000327
【氏名又は名称】弁護士法人クレオ国際法律特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】仲 秀治
(72)【発明者】
【氏名】北村 健
(72)【発明者】
【氏名】渡邉 吉康
(72)【発明者】
【氏名】加藤 明
【審査官】吉田 久
(56)【参考文献】
【文献】特開平2-22593(JP,A)
【文献】特開2013-223222(JP,A)
【文献】特開2004-364009(JP,A)
【文献】特開2003-88005(JP,A)
【文献】特表2009-540728(JP,A)
【文献】特開2016-15553(JP,A)
【文献】特開2007-174570(JP,A)
【文献】特開2016-154754(JP,A)
【文献】特開2018-61281(JP,A)
【文献】国際公開第2010/113776(WO,A1)
【文献】特開2014-197821(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G04G 3/00-99/00
H04B 5/00-7/015、13/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
外装ケースと、前記外装ケースの一方の面側を塞いだ風防と、前記外装ケースの内部に配置された生体通信用の少なくとも2つ以上の電極及び時計モジュールと、を有し、
2つ以上の前記電極は、前記外装ケースの厚さ方向の異なる位置において、互いに平行となる姿勢で配置され、
2つ以上の前記電極はいずれも面状で、かつ前記電極の少なくとも1つは、内側部分が開口した外周部分からなり、
前記厚さ方向に見た平面視において、2つ以上の前記電極の他の少なくとも1つは、前記電極の開口した前記内側部分と重なる部分を有
し、
前記内側部分が開口した電極の外形は、前記内側部分に重なる部分を有した電極の外形よりも大きい電子時計。
【請求項2】
前記内側部分が開口した電極は、前記内側部分に重なる部分を有した電極よりも、前記風防に近い側に配置されている請求項
1に記載の電子時計。
【請求項3】
前記内側部分が開口した電極は、前記時計モジュールよりも、前記風防に近い側に配置されている請求項
1又は2に記載の電子時計。
【請求項4】
前記内側部分に重なる部分を有した電極は、GNDに接続されている請求項1か
ら3のうちいずれか1項に記載の電子時計。
【請求項5】
前記外装ケースは、生体に接する部分が導電性を有する材料で形成され、
前記内側部分に重なる部分を有した電極は、前記生体に接する部分に接続されて、前記生体を介してGNDに接続されている請求
項4に記載の電子時計。
【請求項6】
前記時計モジュールによって計時される内部時刻を外部に向けて表示する時刻表示部を有し、前記時刻表示部は前記平面視で前記内側部分に配置されている請求項1か
ら5のうちいずれか1項に記載の電子時計。
【請求項7】
前記時計モジュールは、前記外装ケースの略中心を回転中心として指針を回転させるアナログ時計モジュールであり、
前記内側部分が開口した電極の内周縁は、前記回転中心を中心とした略円形状である請求項1か
ら6のうちいずれか1項に記載の電子時計。
【請求項8】
前記平面視において、前記内側部分はモータ、電池、アンテナ、耐磁板及びソーラセルのうち少なくとも1つと重なる請求項1か
ら7のうちいずれか1項に記載の電子時計。
【請求項9】
ソーラセルを有し、
前記内側部分が開口した電極と前記ソーラセルとが、前記厚さ方向の略同じ位置に配置され、
前記電極と前記ソーラセルとを導通状態又は非導通状態に切り替えるスイッチを有し、
前記スイッチを前記導通状態に切り替えた状態で、前記内側部分と前記外周部分とを一体の電極として機能させ、前記スイッチを前記非導通状態に切り替えた状態で、前記外周部分のみを電極として機能させる、請求項1か
ら8のうちいずれか1項に記載の電子時計。
【請求項10】
ソーラセルと、前記ソーラセルの基板と、前記ソーラセルと前記ソーラセルの基板とを電気的に接続するソーラ接続部と、前記生体通信用の基板と、前記第1電極と前記生体通信用の基板とを電気的に接続する通信電極接続部と、を備え、
前記ソーラ接続部は、前記通信電極接続部よりも、時計の文字板の中心に近くなるように配置されている請求項1か
ら9のうちいずれか1項に記載の電子時計。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子時計に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、外部との間で種々の情報を送受信する電子時計が開発されている。ここで、情報の送受信として、時計を装着した人体等生体を伝送媒体として利用した、いわゆる生体通信を利用したものがある(例えば、特許文献1,2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特許第3966069号公報
【文献】特許第3743294号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載の技術は、腕時計の裏蓋の表面に、生体通信用の2つの電極を露出させて、それぞれの電極を、時計を装着した人体の皮膚に接触させる構造を備えている。このように、生体通信用の2つの電極を同一面に並べて配置したものでは、両電極が接触しないように配置する必要がある。この結果、2つの電極の大きさを揃えた場合、各電極は裏蓋側の面の半分以下の面積となる。
【0005】
生体通信では、電極の大きさが大きくなるにしたがって伝送感度が向上するところ、伝送感度をより向上させようとしても、特許文献1の技術では、各電極をさらに大きくすることができない。また、配置された2つの電極同士が接しないように、裏蓋を非導電性の材料で形成する必要があり、裏蓋として使用する材料の制約が生じる。
【0006】
特許文献2に記載の技術は、腕時計状のデータ通信装置を手首に巻き付けた状態で、一方の電極を、手首に接する面に配置し、他方の電極を一方の面とは反対側の面に配置したデータ通信装置である。このデータ通信装置においても、他方の電極が配置されるケースの部分を非導電性の材料で形成する必要がある。また、2つの電極は、データ通信装置の厚さ方向に離れて配置されているが、平面視で、他方の電極は一方の電極に重なるため、両電極間に浮遊容量が発生し、伝送感度を低下させるおそれがある。
【0007】
本発明は上記事情に鑑みなされたものであり、使用する材料の制約がなく、かつ、伝送感度を向上させることができる電子時計を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、外装ケースと、前記外装ケースの一方の面側を塞いだ風防と、前記外装ケースの内部に配置された生体通信用の少なくとも2つ以上の電極及び時計モジュールと、を有し、2つ以上の前記電極は、前記外装ケースの厚さ方向の異なる位置において、互いに平行となる姿勢で配置され、2つ以上の前記電極はいずれも面状で、かつ前記電極の少なくとも1つは、内側部分が開口した外周部分からなり、前記厚さ方向に見た平面視において、2つ以上の前記電極の他の少なくとも1つは、前記電極の開口した前記内側部分と重なる部分を有している電子時計である。
【発明の効果】
【0009】
本発明に係る電子時計によれば、使用する材料の制約がなく、かつ、伝送感度を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明に係る電子時計の一実施形態である腕時計の電子時計を風防側から見た平面図である。
【
図2】電子時計を風防側から見たときの第1電極と第2電極の配置を示す図である。
【
図3】
図1に示したA-A線に沿った面による断面図である。
【
図4】電子時計の内部に設けられた第1電極を示す平面図である。
【
図5】電子時計の内部に設けられた第2電極を示す平面図である。
【
図6】第1電極を文字板のおもて面(風防を向いた面)上に配置した構成を示す
図3相当の断面図である。
【
図7】第1電極を見返しリングの上面(風防を向いた面)上に配置した構成を示す
図3相当の断面図である。
【
図8】第1電極を風防の下面(文字板を向いた面)上に配置した構成を示す
図3相当の断面図である。
【
図9】第1電極とソーラセルとを共に支持板の上面側に配置した一例の構成を示す
図3相当の断面図である。
【
図10】環状の一部が存在しない略C字状に形成された第1電極を示す平面図であり、長波用のアンテナ(バーアンテナ)に対応した態様を示す。
【
図11】環状の一部が存在しない略C字状に形成された第1電極を示す平面図であり、GPSからの電波用のアンテナ(パッチアンテナ)に対応した態様を示す。
【
図12】電波修正機能を有する電子時計と電波修正機能を有しない電子時計とによる生体通信の例を示す模式図である。
【
図13】電子時計の機能の概略を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明に係る電子時計の実施形態について、図面を用いて説明する。
【0012】
図1は本発明に係る電子時計の一実施形態である腕時計の電子時計1を風防15側から見た平面図、
図2は電子時計1を風防15側から見たときの第1電極41と第2電極42の配置を示す図、
図3は
図1に示したA-A線に沿った面による断面図、
図4は電子時計1の内部に設けられた第1電極41を示す平面図、
図5は電子時計1の内部に設けられた第2電極42を示す平面図である。
【0013】
図示の電子時計1は、図示を略したバンドを用いて人体の手首に装着される腕時計である。電子時計1は、時針19、分針20及び秒針21という指針22によって、文字板17のおもて面(風防15を向いた面)に設けられた時字(インデックス)18を指し示すことで時刻を表示する、いわゆるアナログ時計である。
【0014】
また、電子時計1は、太陽光等の光の照射を受けて発電し、その発電した電力により指針22を駆動する太陽電池時計であり、さらに、電子時計1は、外部の電波を受信して、指針22の指示誤差を自動的に修正する電波修正時計でもある。
【0015】
電子時計1は、
図2,3に示すように、胴11と裏蓋12とから構成された外装ケース13の内部に、上述した時針19、分針20及び秒針21といった指針22や、文字板17等が配置されている。具体的には、
図2,3に示すように円筒状の胴11の下端側に円板状の裏蓋12が配置されて、胴11の下端面を覆っている。胴11と裏蓋12とは、例えばステンレス鋼等の金属材料(導電性材料)で形成されている。
【0016】
胴11には、指針22の角度位置(指示時刻)を手動で修正するための操作が入力されるリューズ30が設けられている。リューズ30は、使用者が回転等の操作を入力することで、後述するステップモータ25の駆動を操作し、指針22の指示を調整する。
【0017】
胴11の上端側には、円環状のベゼル14が配置されている。ベゼル14は、胴11等と同様の金属製であってもよいし、セラミックや樹脂などの非導電性材料で形成されたものであってもよい。ベゼル14の円環の半径方向内側には、透明なガラスや樹脂で形成された円板状の風防15が配置されている。風防15の外周縁とベゼル14の内周面との間には、図示を略したOリング等の水密性を確保する部材が配置されている。そして、胴11、裏蓋12、ベゼル14及び風防15により囲まれた内部空間は、外部空間と仕切られている。なお、ベゼル14は、胴11と一体に形成され、外装ケース13の一部として形成されてもよい。
【0018】
上述した内部空間の厚さ(高さ)方向の中間位の位置には、樹脂等の非導電性材料で、光透過性を有する円板状に形成された文字板17が配置されている。文字板17のおもて面(風防15に向いた面)の外周部には、文字板17の中心X回りに例えば90[度]の等角度間隔で時字18が設けられている。
【0019】
文字板17の裏面(裏蓋12に向いた面)側からおもて面側に、外装ケース13の略中心でもある文字板17の中心Xを貫通した同心の複数の軸が設けられている。これらの各軸の、文字板17のおもて面側の部分に、時針19、分針20、秒針21がそれぞれ固定されている。各軸が中心Xを回転中心として回転することにより、時針19、分針20、秒針21がそれぞれ回転し、時針19、分針20、秒針21と、文字板17における時字18との位置関係により、時刻を表示する。
【0020】
文字板17の上方には、下面が文字板17に接し、外周面がベゼル14に接した、円環状の見返しリング16が配置されている。見返しリング16は、文字板17の外周縁やベゼル14の内周面を覆って、風防15を通して見える部分を装飾する機能を有している。
【0021】
風防15は、前述したように、電子時計1の内部空間と外部空間とを、上面側で仕切っていて、外装ケース13の上面側を塞いでいる。
【0022】
文字板17の下方には光透過性を有する、非導電性の材料で形成された支持板24が配置され、支持板24の上面(風防15を向いた面)には、生体通信用の2つの電極のうちの一方の電極41(以下、第1電極41という)が固定されている。第1電極41は、文字板17と略平行な板面を有し、
図4に示すように、円板の半径方向の内側部分44が開口した外周部分のみからなる円環板状に形成されている。第1電極41は文字板17の外形と略同じ大きさの外形を有する大きさに形成されている。第1電極41は、導電性を有する材料で形成されている。なお、第1電極41の形状を略C字状としてもよいし、互いに電気的に接続された複数の円弧形状の電極群としてもよい。
【0023】
本実施形態の第1電極41の円環形状は、その外周縁及び内周縁(内側部分44の外周縁)がいずれも中心X1を中心とした略円形状によって形成されている。第1電極41は、その中心X1が文字板17の中心Xに一致するように配置されている。なお、本発明に係る電子時計は、一方の電極(第1電極41)が外装ケースの略中心(文字板17の中心X)と一致して配置されたものに限定されない。また、本発明に係る電子時計における一方の電極(第1電極41)は、円環形状の外形を有するものでなくてもよい。
【0024】
支持板24の下面(裏蓋12を向いた面)には、風防15、文字板17及び支持板24を透過した太陽光等の光を受光して発電するソーラセル23が設けられている。ソーラセル23は略円形状で、
図1に示した平面視において、第1電極41の開口している内側部分44とのみ重なって、外周部分である第1電極41とは重ならない外径で形成されている。
【0025】
ここで、ソーラセル23のソーラセル支持板は、第1電極41と共通の支持板24とし、この支持板24の下面側にソーラセル23を形成してもよい。また、支持板24とは別体のソーラセル支持板を設けて、そのソーラセル支持板上にソーラセル23を形成し、そのソーラセル23が形成されたソーラセル支持板を支持板24の下面側に近接して配置し、又は支持板24に接着等によって固定した配置としてもよい。
【0026】
なお、電子時計1は、支持板24が、第1電極41と同様に、内側部分44と同じ形状の開口を有する円環板状に形成されていてもよい。この場合、内側部分44に配置されたソーラセル23を下面側から支持する、ソーラセル23と略同じ外形の円形状に形成されたソーラセル支持板を、電子時計1の厚さ方向における、支持板24の配置位置と略同じ位置に配置することができる。
【0027】
支持板24及びソーラセル23がこのように形成され、配置された電子時計1によれば、
図3における第1電極41と支持板24とソーラセル23とが重ね合わされた厚さが、第1電極41と支持板24(ソーラセル支持板)とソーラセル23とが重ね合わされた厚さとなるため、電子時計1の厚さを薄くすることができる。
【0028】
ソーラセル23の下方には、回転駆動するステップモータ25、ステップモータ25が発生した回転駆動力を指針22が固定された軸まで減速しながら伝達する歯車輪列26及び図示を省略した時計駆動用の制御回路や電子部品を実装した基板27などの時計モジュール(本実施形態においてはアナログ時計モジュール)が配置されている。これら時計モジュールは地板32に支持されている。また、これら時計モジュールも、
図1に示した平面視において、第1電極41の開口している内側部分44とのみ重なって、外周部分である第1電極41とは重ならない配置となっている。
【0029】
ここで、ソーラセル23と基板27との間には、ソーラセル23と基板27とをそれぞれ電気的に接続するソーラ接続部33が配置される。ソーラ接続部33には、例えば金属製のばね部材を用いることができる。
【0030】
基板27の下方には、ソーラセル23で発電された電力を蓄電するとともに、蓄電された電力をステップモータ25や時計駆動用の制御回路に供給する二次電池29と、時刻修正用の電波を受信するアンテナ28とが設けられている。二次電池29やアンテナ28は、導電性を有する材料で形成されている。
【0031】
これら二次電池29やアンテナ28も、
図2に示した平面視において、第1電極41の開口している内側部分44と重なって、外周部分である第1電極41とはほとんど重ならない配置(アンテナ28の極一部は重なっている)となっている。
【0032】
二次電池29及びアンテナ28の下方には、生体通信用の2つの電極41,42のうち他方の電極42(以下、第2電極42という。)が形成された、非導電性材料で形成された生体通信用回路基板43が配置されている。生体通信用回路基板43は、
図3に示すように、地板32に支持されている。
【0033】
生体通信用回路基板43の下面(裏蓋に向いた面)には、第2電極42が固定されている。第2電極42は、第1電極41と略平行な板面を有し、
図5に示すように、中心X2を中心とする円形板状に形成されている。第2電極42は、
図2に示した平面視で、第1電極41の開口した内側部分44と重なる部分を有する。また、本実施形態の電子時計1においては、第2電極42は、外周部分である第1電極41と僅かに重なる程度の外形で形成されている。第2電極42は、導電性を有する材料で形成されている。
【0034】
本実施形態の第2電極42は、その中心X2が文字板17の中心Xに一致するように配置されている。つまり、第1電極41と第2電極42とは、中心X1と中心X2とが一致した同心に配置されている。なお、本発明に係る電子時計は、他方の電極(第2電極42)が外装ケースの略中心(文字板17の中心X)と一致して配置されたものに限定されず、また、2つの電極(第1電極41、第2電極42)が同心に配置されたものにも限定されない。また、本発明に係る電子時計における他方の電極(第2電極42)は、円形状の外形を有するものでなくてもよい。
【0035】
生体通信用回路基板43の上面(風防15を向いた面)には、生体通信用制御回路が形成されており、第1電極41と第2電極42は、それぞれ生体通信用回路基板43に接続されている。この場合、電子時計1は第1電極41と生体通信用回路基板43とを電気的に接続する通信電極接続部34を有する。通信電極接続部34は例えば金属製のばね部材とすることができる。第2電極42と生体通信用回路基板43との接続は、生体通信用回路基板43上に形成した、配線パターンやスルーホールなどによって実現することができる。
【0036】
生体通信用制御回路は、電子時計1の使用者である誘電体としての人体を通信の媒体として利用するために、第1電極41と第2電極42との間に、通信しようとする情報に対応した電界を発生させる。第1電極41と第2電極42との間で発生した電界は、この電子時計1を装着した使用者の近傍に広がり、その近傍に存在する他の生体が備えた生体通信用の電極によって捉えられ、その生体が備えた生体通信用制御回路によって受け取ることができる。
【0037】
第1電極41と第2電極42とには、生体通信用回路基板43により、差動増幅により互いに位相反転した信号が発生する。なお、第1電極41と第2電極42とに、互いに位相反転した信号を出力させるのに代えて、いずれか一方の電極(例えば、第2電極42)を、電子時計1を装着した使用者である人体に導通させて、その使用者の身体を通じて第2電極42をアース(GND)に接続し、他方の電極(第1電極41)に、生体通信の対象となる信号を発生させてもよい。この場合、第1電極41と人体とを接触させるための導通部を設けてもよい。
【0038】
また、アース(GND)電位を、裏蓋12又は胴11とし、第2電極42を、直接又は板ばねなどの導通部材を介して、アース(GND)に設定された裏蓋12又は胴11と接続するように構成してもよい。さらに、第2電極42と裏蓋12又は胴11との間にスイッチを設け、生体通信を行うときに第2電極42とアース(GND)とを導通させるように、制御回路122によって制御してもよい。
【0039】
なお、上述した生体通信用制御回路は基板27に形成され、生体通信用回路基板43には第2電極42のみが形成された構成としてもよい。この場合、第1電極41と第2電極42とは、それぞれ通信電極接続部34を介して基板27に接続される。
【0040】
ここで、ソーラ接続部33も導電性部材であり、生体通信の伝送感度に影響を与えるおそれがあるため、ソーラ接続部33は、内側部分44内に配置するとよい。また、少なくとも第1電極41と接続された通信電極接続部34よりもソーラ接続部33が文字板17の中心に近くなるように配置されることが好ましい。
【0041】
以上のように構成された実施形態の電子時計1は、第1電極41と第2電極42とが外装ケース13の厚さ方向の異なる位置において互いに平行となる姿勢で配置され、第1電極41は内側部分44が開口した外周部分からなり、その厚さ方向に見た平面視において、第2電極42は第1電極41の開口した内側部分44と重なる部分を有している。
【0042】
したがって、本実施形態の電子時計1によれば、2つの電極41,42が同一の面上に配置されないため、限られた面積しかない同一面上に配置した場合に比べて、各電極41,42の大きさを大きくすることができる。すなわち、同一面上に2つの電極41,42を配置すると、2つの電極のうち少なくとも一方は、その面の外形の半分以下の外形になるが、本実施形態の電子時計1は、2つの電極41,42が、互いに異なる面(電極41,42の面に直交する方向(外装ケース13の厚さ方向))上に配置されるため、各面が限られた面積の大きさであっても、それぞれの電極41,42を、それぞれが配置される面の大きさの外形まで大きくすることができる。
【0043】
生体通信用の電極は、それぞれが大きい程、電極41,42間に生じる電界を強くし、外部への伝送感度を向上させることができる。したがって、本実施形態の電子時計1は、2つの電極41,42が同一の面上に配置されたものに比べて、伝送感度を向上させることができる。
【0044】
また、本実施形態の電子時計1は、各電極41,42が外装ケース13に直接接していないため、外装ケース13を、金属等の導電性の材料で形成することができる。したがって、本実施形態の電子時計1は、樹脂の外装ケースに比べて高い質感を得られる金属材料の外装ケース13を適用することができる。なお、外装ケース13は、金属材料に限らず、材料の制限は無い。
【0045】
また、前述したように、2つの電極41,42のうち一方の電極を外装ケース13に導通させてもよい。
【0046】
また、本実施形態の電子時計1は、平面視で、第2電極42が、第1電極41の開口である内側部分と重なり、第1電極41と第2電極42とが重なる部分が非常に少ない。ここで、例えば、平板状の2つの電極を互いに異なる厚さ位置において、平面視で重なるように配置すると、2つの電極の間で浮遊容量が発生して、伝送感度が低下する。
【0047】
しかし、本実施形態の電子時計1は、両電極41,42を可能な限り大きな外形としつつ、第1電極41の内側部分を開口させることにより平面視で両電極41,42が重なる範囲を非常に小さく設定しているため、浮遊容量の発生を抑制して、伝送感度の低下を抑えている。本実施形態の電子時計1は、これにより、両電極41,42を大きな外形に設定したことによって向上した伝送感度を低下させるのを防ぐことができる。
【0048】
なお、本実施形態の電子時計1は、平面視で両電極41,42が重なる範囲を非常に小さく設定するために、第2電極42の外形を第1電極41の外形よりも小さくしている。なお、第2電極42の外形を第1電極41の内径(内側部分44の外形)よりも小さく設定してもよい。
【0049】
本実施形態の電子時計1は、内側部分44が開口した第1電極41が第2電極42よりも風防15に近い側に配置されているため、開口した内側部分44を通過した光を、第1電極41よりも外装ケース13の厚さ方向の下方の位置に配置されたソーラセル23に照射することが可能となる。つまり、生体通信用の2つの電極41,42については、両電極41,42の間の厚さ方向の間隔を広くして伝送感度が向上させつつ、太陽光発電で駆動可能な電波時計を実現することができる。
【0050】
したがって、伝送感度を向上させる目的で、本実施形態の電子時計1が第1電極41を文字板17よりも上方に配置した構成を適用しても、風防15側から、内側部分44を通して文字板17を視認させることもできる。
【0051】
図6は第1電極41を文字板17のおもて面(風防15を向いた面)上に配置した構成を示す
図3相当の断面図、
図7は第1電極41を見返しリング16の上面(風防15を向いた面)上に配置した構成を示す
図3相当の断面図、
図8は第1電極41を風防15の下面(文字板17を向いた面)上に配置した構成を示す
図3相当の断面図である。
【0052】
ここで、本実施形態の電子時計1において、第1電極41を文字板17の下方に配した構成に代えて文字板17よりも上方に配置した構成として、例えば、
図6に示すように、第1電極41を文字板17のおもて面(風防15を向いた面)上に配置した構成や、
図7に示すように、第1電極41を見返しリング16の上面(風防15を向いた面)上に配置した構成や、
図8に示すように、第1電極41を風防15の下面(文字板17を向いた面)上に配置した構成などを適用することもできる。
【0053】
ここで、
図6に示すように、第1電極41を文字板17の上面に配置した構成によれば、第1電極41を文字板17のデザインの一部として設定することができる。また、
図7に示すように、第1電極41を見返しリング16の上面に配置した構成によれば、第1電極41を見返しリング16のデザインの一部として設定することができる。また、
図8に示すように、第1電極41を風防15の下面に配置した構成によれば、第1電極41を見返しリング16又は風防15のデザインの一部として設定することができる。
【0054】
なお、両電極41,42の間の厚さ方向の間隔が広い程、伝送感度が良いため、伝送感度の良い順序は、第1電極41を風防15に配置したもの、第1電極41を見返しリング16に配置したもの、第1電極41を文字板17上に配置したもの、となる。
【0055】
また、第1電極41及び第2電極42が共に文字板17よりも下方に配置された構成においても、伝送感度を向上させる目的で、本実施形態の電子時計1が第1電極41をソーラセル23よりも上方に配置した構成を適用する場合、第1電極41が第2電極42よりも風防15に近い側に配置されていることにより、風防15側から、内側部分44を通してソーラセル23に光を到達させることができる。
【0056】
また、本実施形態の電子時計1は、ステップモータ25、歯車輪列26等の時計モジュールが、
図1に示した平面視において、第1電極41の開口している内側部分44とのみ重なって、外周部分である第1電極41とは重ならない配置となっているため、時計モジュールが2つの電極41,42間で発生する電界の感度を阻害することなく、時計モジュールの配置スペースを確保することができる。
【0057】
なお、本実施形態の電子時計1は、第1電極41が、ステップモータ25、歯車輪列26等の時計モジュールよりも風防15に近い側に配置されているが、風防15側から入射する光を受光するもの(ソーラセル23等)や電波を受信するもの(アンテナ28等)が存在しない構成の電子時計では、その時計モジュールが配置される地板32の厚さが薄くなった状態に応じて、第2電極42が風防15に近い側に配置されていてもよい。
【0058】
また、本実施形態の電子時計1は、時計モジュールによって設定された内部時刻を外部に向けて表示する指針22(時刻表示部の一例)が、
図1に示した平面視で、第1電極41の開口である内側部分44とのみ重なって、外周部分である第1電極41とは重ならない配置となっているため、指針22が、2つの電極41,42間で発生する電界の感度を阻害することがない。
【0059】
また、本実施形態の電子時計1は、
図1に示した平面視で、二次電池29やアンテナ28の大部分が、第1電極41の開口である内側部分44と重なって、外周部分である第1電極41とはほとんど重ならない配置となっているため、これら二次電池29やアンテナ28が、2つの電極41,42間で発生する電界の感度を阻害することがほとんどない。
【0060】
なお、指針22の一部は、平面視で第1電極41と重なるが、その重なりの面積は第1電極41の全体の面積に対して極めて小さく、したがって、その重なりによる伝送感度への影響は非常に小さい、したがって、指針22は、その少なくとも一部が平面視で第1電極41と重なる配置となってもよい。
【0061】
本実施形態の電子時計1においては説明を省略したが、電子時計1が、外部磁界からステップモータ25を保護するため、主にステップモータ25のロータ部分を覆う耐磁板を有するものであるときは、この耐磁板も、
図1に示した平面視で、第1電極41の開口である内側部分44と重なって、外周部分である第1電極41とは重ならない配置とするのが好ましい。これにより、電子時計1は、耐磁板が2つの電極41,42間で発生する電界の感度を阻害することがほとんどない。
【0062】
図9は第1電極41とソーラセル23とを共に支持板24の上面側に配置した一例の構成を示す
図3相当の断面図である。本実施形態の電子時計1は、
図3に示すように、支持板24の上面側に第1電極41を配置し、支持板24の下面側にソーラセル23を配置した構成であるが、例えば
図9に示すように、第1電極41とソーラセル23とを共に支持板24の上面側又は下面側に配置した構成を採用することもできる。
【0063】
この場合、
図9に示すように、第1電極41とソーラセル23と電気的に導通させた状態と導通させない状態とを切り替えるスイッチ31を設けてもよい。スイッチ31により、第1電極41とソーラセル23と電気的に導通させた状態に切り替えたときは、電気的に、第1電極41とソーラセル23とを一体の大きな円板状の電極としてとらえることができ、伝送感度を向上させることができる。
【0064】
このとき、後述する電子時計1(101)の制御回路122は、ソーラセル23(121)と二次電池29(119)との間に接続されたスイッチ120を、OFFする(両者の電気的な接続を切断する)ように制御する。
【0065】
一方、スイッチ31により、第1電極41とソーラセル23と電気的に導通させない状態に切り替えたときは、既に説明した実施形態の電子時計1のまま、円環状の第1電極41の機能とソーラセル23の機能とを分離することができ、ソーラセル23(121)による二次電池29(119)の充電を行いながら生体通信による伝送を実施することができる。このとき、制御回路122は、スイッチ120をONする(両者を電気的に接続する)ように制御する。
【0066】
<変形例>
上述した実施形態の電子時計において、第1電極は外周部分が1周繋がった完全な環状に形成された構成であるが、本発明に係る電子時計は、第1電極が完全な環状に形成された形態に限定されない。すなわち、本発明に係る電子時計は、第1電極が完全な環状でなく、環状の一部が存在しない略C字状に形成された形態であってもよい。
【0067】
図10,11は環状の一部が存在しない略C字状に形成された第1電極41を示す平面図であり、
図10は長波用のアンテナ28(バーアンテナ)に対応した態様、
図11はGPSからの電波用のアンテナ28(パッチアンテナ)に対応した態様をそれぞれ示す。
【0068】
具体的には、
図4に示した実施形態の電子時計1において、第1電極41は、1周繋がった完全な環状に形成された構成に代えて、
図10,11に示すように、環状の一部が存在しない略C字状に形成されていてもよい。このように、略C字状に形成された第1電極41を有する電子時計1は、第1電極41の繋がっていない両端部41a,41b間の隙間部分に、サイズの大きいアンテナ28を配置することができる。
【0069】
つまり、アンテナ28は、
図10に示した長波受信用のものであっても、
図11に示したGPSからの電波を受信するものであっても、大きい程受信感度が良い。したがって、受信感度を向上させる目的で、サイズの大きなアンテナ28を電子時計1の外装ケース13の内部に配置しようとしたとき、アンテナ28が第1電極41の内側部分44に収まりきらないことが想定される。
【0070】
このような場合、
図10,11に示すように、第1電極41が環状の一部が存在しない略C字状に形成された電子時計1によれば、アンテナ28の配置スペースを確保しつつ、生体通信の伝送感度を向上させることができる。
【0071】
なお、アンテナ28のアンテナ特性は、その周囲に配置される金属製の部材による影響を受け易いため、アンテナ28と二次電池29とは離して配置することが好ましい。一般的に、生体通信の伝送感度よりも長波やGPSの電波を受信するアンテナ28の受信感度の方が周囲の金属製の部材(例えば、二次電池29)に対する影響が大きいので、互いの受信特性を確保するために、平面視において二次電池29の一部が第1電極41と重なることを許容してもよい。
【0072】
本実施形態の電子時計1は、生体通信用の電極として、第1電極41と第2電極42との2つだけの構成であるが、本発明に係る電子時計は、生体通信用の電極は2つに限定されるものではなく、3つ以上であってもよい。この場合、少なくとも1つの電極を、内側部分が開口した外周部分のみからなる構成とすればよい。
【0073】
本実施形態の電子時計1は、太陽電池時計で、かつ電波修正時計であるため、ソーラセル23やアンテナ28を内部に備えているが、本発明に係る電子時計は太陽電池時計や電波修正時計に限定されるものではない。したがって、実施形態の電子時計1において、ソーラセル23を備えないものであってもよいし、アンテナ28を備えないものであってもよい。
【0074】
図12は電波修正機能を有する電子時計101と電波修正機能を有しない電子時計201とによる生体通信の例を示す模式図である。
図12に示すように、本発明の一実施形態である1つの電子時計101は電波修正時計としてアンテナや電波修正用の制御部を有するものであり、本発明の一実施形態である他の1つの電子時計201は電波修正時計としての機能を有していないものであるとする。
【0075】
この場合、電波修正時計の機能を有する電子時計101は、アンテナで受信した電波に基づいて制御部が指針の位置を、単独で修正することができる。一方、電波修正時計の機能を有していない電子時計201は、指針の位置を単独で修正することはできない。
【0076】
しかし、両電子時計101,201はいずれも生体通信用の電極及び生体通信用の制御回路を備えているため、電波修正時計の機能を有する電子時計101が受け取った時刻情報を、生体通信を通じて電波修正時計の機能を有していない電子時計201に伝送することにより、電子時計201は伝送された時刻情報に基づいて時計モジュールが備える機能を用いて、指針の位置を修正することができる。これにより、2つの電子時計101,201の時刻を同期させることができる。
【0077】
図13は、上述した2つの電子時計101,201の時刻を同期させる機能を実現する場合の電子時計101の機能の概略を示すブロック図である。図示の電子時計101は、発振部111、駆動部112、時刻表示部113、操作部114、生体通信電極115、アンテナ116、電波受信回路117、スイッチ118、二次電池119、スイッチ120、ソーラセル121及び制御回路122を備える。
【0078】
ここで、発振部111は電子時計101の時計モジュールに設けられて、駆動部112のステップモータ25を駆動するためのパルスを生成する基本となる発振を出力するものである。駆動部112は、ステップモータ25や歯車輪列26などである。時刻表示部113は、指針22や文字板17である。
【0079】
操作部114は、例えばリューズ30である。生体通信電極115は、第1電極41及び第2電極42である。アンテナ116は、前述したアンテナ28と同じである、電波受信回路117は、アンテナ116で受信された電波から必要とされる電波を選択的に取得する電気回路である。二次電池119は、前述した二次電池29と同じである。ソーラセル121は、前述したソーラセル23と同じである。
【0080】
制御回路122は、時計駆動用の制御回路であり、計時部123と記憶部124とを備えている。制御回路122は、発振部111により得られた周期で時刻を計時しつつ、電波受信回路117で得られた時刻情報に基づいて、現在時刻を適宜修正し、修正後の時刻を時刻表示部113に表示させるように、駆動部112を制御する。
【0081】
また、制御回路122は、生体通信のために生体通信電極115に発生する電界を制御する。さらに、制御回路122は、二次電池119から電波受信回路117に供給する電力を、電波受信回路117を動作させるときにのみ通電するように、スイッチ118の断接を切り換える。同様に、制御回路122は、ソーラセル121で発電された電力が二次電池119に流入して二次電池119を充電する際に、二次電池119が過充電されるのを防ぐため、ソーラセル121から二次電池119への電力の流入の調整するように、スイッチ120の断接を切り換える。
【0082】
なお、本発明に係る電子時計は、生体通信を通じて伝送する情報としては上述した時刻情報に限定されるものでなく、その他の種々の情報を適用することができる。
【符号の説明】
【0083】
1 電子時計
13 外装ケース
15 風防
17 文字板
22 指針
41 第1電極
42 第2電極
43 生体通信用回路基板
44 内側部分