(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-02-08
(45)【発行日】2022-02-17
(54)【発明の名称】被処理物の乾燥方法及び乾燥装置
(51)【国際特許分類】
F26B 17/20 20060101AFI20220209BHJP
F26B 21/00 20060101ALI20220209BHJP
F26B 25/00 20060101ALI20220209BHJP
C02F 11/126 20190101ALI20220209BHJP
B01F 35/95 20220101ALI20220209BHJP
B01F 27/60 20220101ALI20220209BHJP
【FI】
F26B17/20 B
F26B21/00 Z
F26B25/00 F
C02F11/126
B01F15/06 A
B01F7/02 B
(21)【出願番号】P 2018128457
(22)【出願日】2018-07-05
【審査請求日】2020-09-23
(31)【優先権主張番号】P 2018067538
(32)【優先日】2018-03-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】500483219
【氏名又は名称】パンパシフィック・カッパー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100110722
【氏名又は名称】齊藤 誠一
(72)【発明者】
【氏名】宮永 洋
(72)【発明者】
【氏名】岡本 弘晃
(72)【発明者】
【氏名】片又 聖也
【審査官】渡邉 聡
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-167397(JP,A)
【文献】特開2008-069130(JP,A)
【文献】特開2017-166778(JP,A)
【文献】特開平09-122401(JP,A)
【文献】特許第6260071(JP,B1)
【文献】特開2013-167375(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F26B 17/20
F26B 21/00
F26B 25/00
C02F 11/12
B01F 35/95
B01F 27/60
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いに平行に配置された少なくとも2本の回転軸を互いに反対方向へ回転可能に配置し、前記回転軸には所定の間隔を有して撹拌翼をそれぞれ複数配置すると共に、一方側の回転軸に取り付けられた撹拌翼と他方側に取り付けられた撹拌翼が交互に位置するように配置され、ジャケット及び前記撹拌翼に加熱された熱媒体を供給することにより被処理物を加熱乾燥する撹拌式乾燥装置によるスラッジ状の被処理物の乾燥方法において、
前記撹拌式乾燥装置内で乾燥中のスラッジ状の被処理物の高さ位置が前記撹拌翼の回転中心から上端までの長さの80%以上が隠れる高さとなるまで
は、前記撹拌式乾燥装置に対する前記被処理物
の投入速度を定格の1/3以下の投入速度
に抑える第一の工程と、
前記被処理物が、前記撹拌翼が隠れる高さまで当該撹拌乾燥装置内に貯えられたら、
前記撹拌式乾燥装置に対する前記被処理物
の投入速度を定格の80~100%
に設定する第二の工程と、
を含み構成されたことを特徴とする被処理物の乾燥方法。
【請求項2】
請求項
1に記載の被処理物の乾燥方法において、
前記
第二の工程での乾燥は、内部に0.5~0.6MPaの蒸気を導入することによって加熱された前記撹拌翼を15~30rpmで回転させて行うことを特徴とする被処理物の乾燥方法。
【請求項3】
請求項1
又は2に記載の被処理物の乾燥方法において、
前記撹拌式乾燥装置の内部に加熱エアを導入すると共に、当該撹拌式乾燥装置から排気される排ガスを集塵装置へ送る導管の少なくとも前記集塵装置の手前及び/又は前記集塵装置をスチームトレースによって保温することにより前記導管内部及び前記集塵装置の内部が露点温度以下とならないようにすることを特徴とする被処理物の乾燥方法。
【請求項4】
請求項1から
3のいずれか1項に記載の被処理物の乾燥方法において、
乾燥が終了した前記被処理物を密閉系のコンベアによって搬送することを特徴とする被処理物の乾燥方法。
【請求項5】
請求項1から
4のいずれか1項に記載の被処理物の乾燥方法において、
前記被処理物は、水分含量が30~70質量%、銅品位が5~50質量%、嵩比重1.2~2.0であることを特徴とする被処理物の乾燥方法。
【請求項6】
請求項1から
5のいずれか1項に記載の被処理物の乾燥方法において、
前記被処理物の前記
第一の工程では、当該被処理物の水分含量が20質量%以上、30質量%未満となるように半乾燥を行うことを特徴とする被処理物の乾燥方法。
【請求項7】
請求項1から
6のいずれか1項に記載の被処理物の乾燥方法において、
前記被処理物の粒子径が1~100μmである場合には、前記
第二の工程では、当該被処理物の水分含量が15質量%以上、20質量%未満となるように乾燥を行うことを特徴とする被処理物の乾燥方法。
【請求項8】
互いに平行に配置された少なくとも2本の回転軸を互いに反対方向へ回転可能に配置し、前記回転軸には所定の間隔を有して撹拌翼をそれぞれ複数配置すると共に、一方側の回転軸に取り付けられた撹拌翼と他方側に取り付けられた撹拌翼が交互に位置するように配置され、ジャケット及び前記撹拌翼に加熱された熱媒体を供給することにより被処理物を加熱乾燥する撹拌式乾燥装置において、
前記ジャケットに配置された堰板の上端を前記撹拌翼の回転中心から上端までの長さの80%以上の高さとなるように形成されると共に、乾燥後の前記被処理物を前記堰板からオーバーフローさせることにより排出可能に構成されたことを特徴とする
、請求項1から7の何れか1項に記載の被処理物の乾燥方法に用いられる撹拌式乾燥装置。
【請求項9】
請求項
8に記載の撹拌式乾燥装置において、
前記撹拌装置の内部に加熱エアを導入する加熱エア供給手段と、
前記撹拌装置から排気される排ガスを集塵装置へ送る導管と、
前記集塵装置の内部の温度が露点温度以下にならないように前記導管の少なくとも前記集塵装置の手前及び/又は前記集塵装置に設けられたスチームトレースと、
を備えていることを特徴とする被処理物の乾燥装置。
【請求項10】
請求項
8又は
9に記載の被処理物の乾燥装置において、
乾燥が終了した前記被処理物を搬送する搬送手段が密閉式であることを特徴とする被処理物の乾燥装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被処理物の乾燥方法及び乾燥装置に関し、さらに詳しくは、銅等を含有し、水分含有率が高く、嵩比重が大きいスラッジ状の被処理物であっても確実に乾燥することが可能な被処理物の乾燥方法及び乾燥装置に関する。
【背景技術】
【0002】
下水汚泥、し尿汚泥、活性汚泥等は、水分が多く資源化や処分に際して問題となるため、乾燥を施して減量および資源化を図っている。また、森林保全のために間伐された間伐採(=林地残材)等は、そのままでは水分が多くバイオマス燃料等に利用することができないことから、木質チップ(木材チップ)とした後、乾燥が施される。このような汚泥や木質チップの乾燥には、例えば、バンド乾燥機、バンド流動乾燥機、箱型乾燥機、タコロータリー乾燥機、ウェッジ型スタイルドライヤー(「撹拌翼付乾燥機」ともいう。)等の乾燥機が用いられている。
【0003】
各種の乾燥機のうち、ウェッジ型スタイルドライヤーは、複数のクサビ型の回転羽根であるウェッジ型撹拌翼(以下、単に「撹拌翼」という。)を備えており、この撹拌翼の内部に蒸気、温水、オイル等の熱媒体を供給すると共に、乾燥機本体のジャケット内にも蒸気、温水、オイル等の熱媒体を供給することにより乾燥を行う伝導伝熱型の乾燥機(伝導伝熱型乾燥装置)であり、処理物は回転羽根とジャケットからの熱伝導によって乾燥が行われる。このウェッジ型スタイルドライヤーは、1:熱効率が良く伝熱係数が高い、2:伝熱面積が大きいので設置面積が小さくて済む、3:風量が少ないために臭気ガスが少ない、4:連続処理が可能、5:撹拌効率が高く付着物が少ない、6:ランニングコストが低い、などの特徴を備えている。尚、伝導伝熱型乾燥装置に関しては、例えば、特許文献1,2がある。
【0004】
特許文献1に示す伝導伝熱型乾燥装置は、被処理物(樹脂を溶剤で溶かしたペースト状、ジェル状、液状等にしたもの)から溶剤と固形樹脂を回収する際の被処理物の乾燥を対象とし、一方、特許文献2に示す伝導伝熱型乾燥装置は、上下水汚泥のような粘着性の有る湿潤物質、その他粉体、粒体等の特に粘着性高い物質等を粉砕及び撹拌をしながら上述した熱媒体や触媒等を熱源として乾燥を行うものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2013-170754号公報
【文献】特開2014-9876号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明者らは、特許文献2に示すような伝導伝熱型乾燥装置を用いて銅等を含有し、水分含有率が高く、嵩比重が大きいスラッジ状の被処理物の乾燥を試みたが、期待したような結果は得られなかった。発明者らの検証によれば、上記スラッジ状の被処理物を投入して乾燥を開始すると撹拌翼に鋳付きが発生すると共に、鋳付きによって撹拌翼から被処理物への熱伝導が阻害されて乾燥速度が低下するという問題が生じた。また、乾燥速度が低下すると高水分(水分率30~50%程度)の半乾燥品がジャケット内に増え、その結果、撹拌翼を駆動するモータに過負荷が生じるという問題が生じることも判明した。このような問題は、被処理物が汚泥、木質チップ、製紙スラッジ等ではなく、金属を含むスラッジ状の被処理物の特有の性状に影響するものであると推察される。したがって、特許文献1に示すような伝導伝熱型乾燥装置を用いた場合であっても本発明者が望む上記のようなスラッジ状の被処理物の乾燥は困難であると推察される。また、被処理物の粒子径が小さい(例えば、1~100μm)場合には、乾燥後に飛散したり、落鉱が極めて多くなって搬送不良が生じるおそれがあるという問題があった。
【0007】
そこで、本発明は、かかる問題点に鑑みなされたもので、金属、例えば銅等を含有し、水分含有率が高く、また嵩比重が大きいスラッジ状の被処理物を効率的に、且つ、長期間安定的に乾燥することが可能な被処理物の乾燥方法及び乾燥装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するため請求項1に記載の本発明は、互いに平行に配置された少なくとも2本の回転軸を互いに反対方向へ回転可能に配置し、前記回転軸には所定の間隔を有して撹拌翼をそれぞれ複数配置すると共に、一方側の回転軸に取り付けられた撹拌翼と他方側に取り付けられた撹拌翼が交互に位置するように配置され、ジャケット及び前記撹拌翼に加熱された熱媒体を供給することにより被処理物を加熱乾燥する撹拌式乾燥装置によるスラッジ状の被処理物の乾燥方法において、前記撹拌式乾燥装置内で乾燥中のスラッジ状の被処理物の高さ位置が前記撹拌翼の回転中心から上端までの長さの80%以上が隠れる高さとなるまでは、前記撹拌式乾燥装置に対する前記被処理物の投入速度を定格の1/3以下の投入速度に抑える第一の工程と、前記被処理物が、前記撹拌翼が隠れる高さまで当該撹拌乾燥装置内に貯えられたら、前記撹拌式乾燥装置に対する前記被処理物の投入速度を定格の80~100%に設定する第二の工程と、を含み構成されたことを特徴とする。
【0010】
上記課題を解決するため請求項2に記載の本発明は、請求項1に記載の被処理物の乾燥方法において、前記第二の工程での乾燥は、内部に0.5~0.6MPaの蒸気を導入することによって加熱された前記撹拌翼を15~30rpmで回転させて行うことを特徴とする。
【0011】
上記課題を解決するため請求項3に記載の本発明は、請求項1又は2に記載の被処理物の乾燥方法において、前記撹拌式乾燥装置の内部に加熱エアを導入すると共に、当該撹拌式乾燥装置から排気される排ガスを集塵装置へ送る導管の少なくとも前記集塵装置の手前及び/又は前記集塵装置をスチームトレースによって保温することにより前記導管内部及び前記集塵装置の内部が露点温度以下とならないようにすることを特徴とする。
【0012】
上記課題を解決するため請求項4に記載の本発明は、請求項1から3のいずれか1項に記載の被処理物の乾燥方法において、乾燥が終了した前記被処理物を密閉系のコンベアによって搬送することを特徴とする。
【0013】
上記課題を解決するため請求項5に記載の本発明は、請求項1から4のいずれか1項に記載の被処理物の乾燥方法において、前記被処理物は、水分含量が30~70質量%、銅品位が5~50質量%、嵩比重1.2~2.0であることを特徴とする。
【0014】
上記課題を解決するため請求項6に記載の本発明は、請求項1から5のいずれか1項に記載の被処理物の乾燥方法において、前記被処理物の前記第一の工程では、当該被処理物の水分含量が20質量%以上、30質量%未満となるように半乾燥を行うことを特徴とする。
【0015】
上記課題を解決するため請求項7に記載の本発明は、請求項1から6のいずれか1項に記載の被処理物の乾燥方法において、前記被処理物の粒子径が1~100μmである場合には、前記第二の工程では、当該被処理物の水分含量が15質量%以上、20質量%未満となるように乾燥を行うことを特徴とする。
【0016】
上記課題を解決するため請求項8に記載の本発明は、互いに平行に配置された少なくとも2本の回転軸を互いに反対方向へ回転可能に配置し、前記回転軸には所定の間隔を有して撹拌翼をそれぞれ複数配置すると共に、一方側の回転軸に取り付けられた撹拌翼と他方側に取り付けられた撹拌翼が交互に位置するように配置され、ジャケット及び前記撹拌翼に加熱された熱媒体を供給することにより被処理物を加熱乾燥する撹拌式乾燥装置において、前記ジャケットに配置された堰板の上端を前記撹拌翼の回転中心から上端までの長さの80%以上の高さとなるように形成されると共に、乾燥後の前記被処理物を前記堰板からオーバーフローさせることにより排出可能に構成されたことを特徴とする、請求項1から7の何れか1項に記載の被処理物の乾燥方法に用いられる撹拌式乾燥装置である。
【0017】
上記課題を解決するため請求項9に記載の本発明は、請求項8に記載の撹拌式乾燥装置において、前記撹拌装置の内部に加熱エアを導入する加熱エア供給手段と、前記撹拌装置から排気される排ガスを集塵装置へ送る導管と、前記集塵装置の内部の温度が露点温度以下にならないように前記導管の少なくとも前記集塵装置の手前及び/又は前記集塵装置に設けられたスチームトレースとを備えていることを特徴とする。
【0018】
上記課題を解決するため請求項10に記載の本発明は、請求項8又は9に記載の被処理物の乾燥装置において、乾燥が終了した前記被処理物を搬送する搬送手段が密閉式であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0019】
本発明に係る被処理物の乾燥方法によれば、水分含量が30~70質量%、銅品位が5~50質量%、嵩比重1.2~2.0であるスラッジ状の被処理物を定格の投入速度の1/3以下の投入速度で半乾燥を行った後、定格の投入速度の80~100%の投入速度で投入して乾燥を行うこととしたので、乾燥装置(ジャケット)内が空の状態から乾燥を開始する段階、及びその後の定格運転の段階に至る間において、撹拌翼への鋳付きが防止されると共に駆動機構の過負荷の発生を防止することができるという効果がある。
【0020】
また、本発明に係る被処理物の乾燥装置によれば、堰板の上端を少なくとも撹拌翼の回転中心から上端までの長さの80%以上より高い位置に設けることとしたので、撹拌翼への鋳付きが防止され全ての撹拌翼によって乾燥及び撹拌・解砕を効率的に行うことができるという効果があると共に、駆動機構の過負荷を防止することができるという効果がある。
【0021】
また、本発明に係る被処理物の乾燥方法及び乾燥装置によれば、集塵装置の内部が露点温度以下とならないように撹拌式乾燥装置の内部に加熱エアを導入すると共に、排ガスを集塵装置へ送る導管の少なくとも集塵装置の手前及び/又は集塵装置をスチームトレースによって保温することとしたので集塵装置の濾布の水濡れによって操業が不可能となるのを防止することができるという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】本発明に係る被処理物の乾燥装置の一実施形態における内部構成を示す平面断面図である。
【
図5】各撹拌翼の取り付け角度を示す説明図である。
【
図6】入口側から5枚目までの各撹拌翼の取付角度を示す説明図である。
【
図7】本発明に係る被処理物の乾燥方法の一実施形態を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0023】
[被処理物の乾燥装置の構成]
以下、本発明に係る被処理物の乾燥方法及び乾燥装置について、好ましい一実施形態に基づいて詳細に説明する。
図1は本発明に係る被処理物の乾燥装置の一実施形態における内部構成を示す平面断面図、
図2は
図1に示す乾燥装置のB-B断面図、
図3は撹拌翼の側面図である。本発明に係る被処理物の乾燥装置(以下、単に「乾燥装置」という。)1は、概略として、水平に配置された横長のジャケット(又はケーシング)2と、このジャケット2の内部を貫通するように並列に配置された2つの回転軸3a,3bと、回転軸3a,3bのそれぞれに所定間隔に取り付けられた複数(本実施形態では、回転軸3a側に22基、回転軸3b側に23基)の撹拌翼(ウェッジ)4(4
-1~4
-45)と、回転軸3a,3bの駆動源である駆動機構5a,5bと、ジャケット2の後端(
図1では右側端)の内側に配設された堰板6と、ジャケット2を支持する支持部材7を備えて構成されている。
【0024】
ジャケット2は、例えば金属製であり、
図3に示すように、下部側が撹拌翼4
-1~4
-22及び撹拌翼4
-23~4
-45の形状に即して断面が円弧状をした略W字形状に形成されると共に、その内部は密封構造とされている。そして、
図2に示すように、ジャケット2の一端側(
図2では左側)の上部には被処理物の投入口2aが設けられ、他端側(
図2では右側)には堰板6が配置されると共に、堰板6の上部に排出口2eが設けられている。そして、堰板6の上部高さ位置は撹拌翼4の高さ位置よりも高い位置とされている。これにより、操業の初めに全ての撹拌翼4
-1~4
-45の上部が隠れる高さとなるまでジャケット2内に半乾燥状態の被処理物を保持させることで、投入口2aから投入された新たな被処理物が撹拌翼4の表面に直接接触するのを防止して、撹拌翼4の表面で鋳付きが成長するのを防止したものである。尚、堰板6の上部高さ位置は、被処理物を撹拌翼4
-1~4
-45の回転中心から上端までの長さの80%以上、好ましくは95%以上の高さ、さらに好ましくは上端の高さまで満たすことができる高さを確保できれば撹拌翼4の表面の鋳付きの成長を防止することは可能である。また、ジャケット2は二重構造とされていると共に、ジャケット2の両側面にはそれぞれ加熱蒸気供給口2f,2fが複数設けられ、加熱蒸気供給口2f,2fから加熱蒸気をジャケット2の空洞内に供給することによりジャケット2内の被処理物の加熱乾燥を促進する。そして、ジャケット2の底部には複数(
図2では3つ)のドレン排出口2c,2cが取り付けられており、加熱蒸気供給口2f,2fから供給された加熱蒸気が冷却された後のドレンを排水するようになっている。さらに、排出口2eの近傍には加熱エア供給口2bが設けられると共に、ジャケット2の上部の途中位置にはジャケット2内に導入された加熱エアと被処理物を乾燥させる際に発生する蒸気を図示しない集塵装置へ導くための排気ダクト2d(
図2参照)が接続されている。そして、排気ダクト2dと図示しない集塵装置とは図示しない導管によって連結されており、導管の少なくとも集塵装置の手前及び集塵装置にはいわゆるスチームトレースが設けられている。被処理物を乾燥させる際に発生する蒸気によって乾燥装置内部や図示しない集塵装置が結露するのを防止するためである。尚、スチームトレースは導管の少なくとも集塵装置の手前又は集塵装置のいずれか一方に設けることもできる。スチームトレースによって図示しない集塵装置内の温度が露点温度以下に低下するのを防止する。集塵装置内の温度が露点温度以下になると結露によって集塵装置の濾布が濡れてしまい、濾布による圧損が急上昇して操業不可になるからである。
【0025】
回転軸3a,3bは、内部が中空状とされてその内部に蒸気供給口2g,2gを介して加熱蒸気(例えば、0.5~0.6MPaの加熱蒸気)が導入可能に形成されており、回転軸3a,3b内に導入された加熱蒸気はさらに、後述するように、撹拌翼4
-1~4
-45の内部に導入されるようになっている。被処理物が加熱蒸気によって加熱された回転軸3a,3b及び撹拌翼4
-1~4
-45と接触することにより被処理物の乾燥が行われる。尚、蒸気供給口2g,2gは、内部に複数の流路を備えたロータリージョイントによって形成されており、回転軸3a,3b及び撹拌翼4
-1~4
-45に導入された加熱蒸気が熱交換されることにより生じた水分は再び蒸気供給口2g,2gを介して排水される。乾燥された被処理物は、堰板6の上部に設けられた排出口2eからオーバーフローするようにして排出され、排出シュート2h(
図2参照)を介して密閉式の搬送装置、例えば、フローコンベアによって搬出されるように構成されている。その理由は、解砕・乾燥された乾燥品の粒子径が1~100μmと極めて細かい場合にはベルトコンベア等の開放系のコンベアによる搬送では乾燥品が飛散したり、落鉱が極めて多くなって搬送不良が生じるおそれがあるからである。
【0026】
回転軸3a,3bはそれぞれ両端側が軸受けによって回転可能に軸支されている。そして、
図6に示すように、回転軸3aは時計方向に回転し、回転軸3bは反時計方向に回転するようになっている。すなわち、回転軸3a,3bは駆動機構5a,5bによって互いに逆方向で、且つ、同一速度で回転するように駆動されようになっている。そして、
図1に示すように、本実施形態では各回転軸3a,3bにそれぞれ取り付けられて2列に配置された撹拌翼4
-1~4
-45は回転軸3a側が22基(4
-1~4
-22)で、回転軸3b側が23基(4
-23~4
-45)となっている。平面方向から見ると、撹拌翼4
-1~4
-22と撹拌翼4
-23~4
-45とがジャケット2の中央側で一部が交互に千鳥状に重なるようにして配置されている。
【0027】
撹拌翼4
-1~4
-45は、それぞれ同一の形状とされ、円盤状の2箇所の一部に切欠8,8によって扇形に形成された一対の翼片4a,4b及び翼片4c,4dを備えて形成されている。翼片4a~4dは、内部が中空構造とされ、回転軸3a,3bに導入された加熱蒸気が内部に導入されて加熱されるようになっている。また、翼片4a~4dは、
図5に示すように、回転方向側端部を厚く、回転方向逆側端部を薄くしたテーパー状とされており被処理物の解砕及び撹拌力を増加できる形状とされている。また、
図3に示すように、撹拌翼4
-1~4
-22は、回転軸3a側においては翼片4a,4bの2枚を同一円周上に対向配置されており、同様に、撹拌翼4
-23~4
-45は、回転軸3b側においては翼片4c,4dの2枚を同一円周上に対向配置させた構成になっている。そして、撹拌翼4
-1~4
-45の翼片4a~4dは切欠部8の設けられた位置が軸方向から見て所定枚数(本実施形態では4枚)において重ならないように異なる位置に配置されている。
【0028】
切欠部8を形成する外縁部には補助翼20が取り付けられている。補助翼20は、被処理物を乾燥した乾燥物が固まらないように解砕すると共に、被処理物を出口側へ送り出したり入口側へ戻したりして被処理物をジャケット2内に所定時間保持して乾燥を促進するために設けられている。補助翼20は金属製の板部材を90°に折り曲げた略L字状の補助翼片20a,20aを2個一対として翼片4a~4dに形成した切欠部8における回転方向の後端側の縁部の外周部の位置外周端縁部に設けられた補助翼取付座12に図示しないボルト及びロックナットによって固定することによって取り付けられている。そして、補助翼20は翼片4a~4dの板面に対して各々所定の傾斜角度θで取り付けられている。
【0029】
翼片4a~4dの回転軸3a,3bへの取り付け角度は、本実施形態の場合、
図6に示すようになっている。
図6では回転軸3aに撹拌翼4
-1~4
-5の5枚目まで、そして、回転軸3bに撹拌翼4
-23~4
-27の5枚目までの各翼片4a~4dの取付角度を示している。そして、回転軸3a側においては、撹拌翼4
-1~4
-4の翼片4a~4dが水平位置(9時の位置)から半時計方向へ15°、60°、105°、150°というように角度をずらして取り付けられ、撹拌翼4
-5~4
-22は撹拌翼4
-1~4
-4の取り付けの繰り返しとなる。また、回転軸3b側においては、撹拌翼4
-23~4
-26の翼片4c,4dが12時の位置から時計方向へ15°、60°、105°、150°というように角度をずらして取り付けられ、撹拌翼4
-27~4
-45は撹拌翼4
-23~4
-26の取り付けの繰り返しとなる。このように、補助翼20の取り付け方向がそれぞれ相違するので被処理物の破砕や撹拌が十分に行われると共に、被処理物を投入口2a側から排出口2eへ送り出すと共に反対側へ戻す動きを与える撹拌翼4の作用がさらに補助される。尚、送り補助翼20は、被乾燥物の粘着性の度合等に応じて適宜、最適な大きさ、形状及び傾斜角等のものを選定することができる。
【0030】
駆動機構5a,5bは、回転軸3a,3bのそれぞれに対応して同一構成のものが配置されている。ここで、回転軸3a側の駆動機構5aの構成について説明すると、
図2に示すように、駆動源であるモータ5a
-1と、モータ5a
-1の回転数を調整する減速装置5a
-2と、減速装置5a
-2の回転出力を回転軸3aに伝達する伝達部材5a
-3とを備えて構成されている。
【0031】
堰板6は、ジャケット2内に供給された被処理物をせき止め、被処理物が撹拌翼4
-1~4
-45の回転中心から上端までの長さの80%以上、好ましくは95%以上の高さ、さらに好ましくは上端の高さ(
図2のYレベルを越える高さ)まで満たされるように保持するための部材である。被処理物を撹拌翼4
-1~4
-45の回転中心から上端までの長さの少なくとも80%以上の高さまで保持できれば、撹拌翼4
-1~4
-45への鋳付き防止及び駆動機構5a,5bの過負荷の発生を防止することができる。堰板6の寸法・形状は
図3に示すジャケット2の内部形状相当であるが、本実施形態では上端の高さは少なくとも撹拌翼4
-1~4
-45が投入された被処理物によって隠れる高さ以上とされ、撹拌翼4
-1~4
-45の上部高さよりも上方とされている。尚、堰板6の使用材料は、撹拌翼4
-1~4
-45によって乾燥品の押し出し圧に耐えられるもの、例えば鉄系等の金属を用いることができる。
【0032】
支持部材7は、ジャケット2を所定の高さに維持するための構造体であり、所望の強度を有する鋼管、形鋼等を組み合わせて構築されている。
【0033】
[被処理物の乾燥装置の動作及び乾燥方法]
次に、上述した乾燥装置1の動作及び乾燥方法について説明する。
図7は本発明に係る被処理物の乾燥方法の一実施形態を示すフローチャートである。本実施形態における被処理物の性状は、例えば、水分含量が30~70質量%、銅品位が5~50質量%、嵩比重が1.2~2.0、粒子径が1~100μmのスラッジ状の物である。このような性状の被処理物は、例えば特許文献2に示すような従来の伝導伝熱型乾燥装置では十分に乾燥を行うことができなかったものだからである。もちろん、本実施形態における乾燥装置1による乾燥の対象となる被処理物はこのような性状に限定されるものではない。
【0034】
初めに、回転軸3a,3bを介して加熱蒸気を撹拌翼4-1~4-45内に導入すると共に、駆動機構5a,5bを駆動して撹拌翼4-1~4-45を所定速度(例えば、15~30rpm)で回転駆動させ、投入口2aから被処理物をジャケット2内に投入する(ステップS1:投入工程)。このときの被処理物の投入速度は定格(例えば、3.0wt/h)の1/3以下である。定格の1/3の速度より早い投入速度で投入すると、被処理物が撹拌翼4-1~4-45に鋳付いてしまい、撹拌翼4-1~4-45から離れなくなり、乾燥効率が著しく低下すると共に鋳付きの除去のために数日後に長期操業停止が必要となるからである。尚、ジャケット2内には、排ガス中に多量の水分が含まれるため、排ガス処理設備や排気ダクト2dの結露防止のために蒸気圧0.5~0.6MPaの蒸気で熱交換された加熱エアを導入することでジャケット2内部が露点温度以下とならないようにしている。また、排気ダクト2dから図示しない導管を介して連結された図示しない集塵装置にはスチームトレースが設けられ、少なくとも集塵装置内を80℃以上に維持しているので集塵装置の濾布が結露によって濡れて圧損が急上昇して操業不可となるのを防止している。
【0035】
ジャケット2内に投入された被処理物は、回転している撹拌翼4-1~4-45及び補助翼20によって順次撹拌されながら後段へ移動し、その過程で乾燥処理が行われる。この過程では、乾燥中の被処理物の高さ位置が攪拌翼4-1~4-45の回転中心から上端までの長さの80%以上、好ましくは95%以上の高さとなるまで、さらに好ましくは撹拌翼4-1~4-45の上端が隠れる高さとなるまで半乾燥を行う(ステップS2:半乾燥工程)。半乾燥工程では被処理物の水分含量が20質量%以上、30質量%未満となるように被処理物の乾燥を行う。半乾燥を行うのは撹拌翼4-1~4-45への鋳付き防止及び駆動機構5a,5bの過負荷の発生を防止するためである。尚、半乾燥状態となった被処理物を半乾燥品という。このような半乾燥工程を継続することによりジャケット2内には半乾燥品が堆積し、最終的に撹拌翼4-1~4-45の上端が隠れるレベルに到達するまで半乾燥を行う(ステップS3:蓄積工程)。
【0036】
半乾燥品が撹拌翼4-1~4-45が隠れる高さまでジャケット2内に貯えられたら被処理物の投入速度を定格の投入速度(例えば、3.0wt/h)の80~100%の投入速度で定格操業に移行する(ステップS4:乾燥工程)。乾燥工程では、被処理物の水分含量が15質量%以上、20質量%未満となるように乾燥を行う。被処理物の水分含量が15%未満となるような完全乾燥を行うと被処理物の粒度が細かい場合には乾燥品貯留鉱区やその後の運搬などの際に酷い発塵を生じることで作業環境の悪化を招いたり、設備寿命を著しく短くする等の不具合を招くおそれがあるからである。そのため、水分含量が20質量%以上、30質量%未満の半乾燥品の状態で一旦ジャケット2内に保持し、その後乾燥工程によって被処理物の水分含量が15質量%以上、20質量%未満となるように乾燥を行う。ここで、乾燥状態となった被処理物を乾燥品という。尚、粒度が細かくなく、乾燥後の飛散等の問題がない場合には、水分含量を15質量%以下となるまで乾燥してもよい。乾燥工程において撹拌翼4-1~4-45の回転によって解砕されて乾燥された乾燥品は、堰板6をオーバーフローして排出口2eから排出シュート2hへ落下しジャケット2の外へ排出され(ステップS5:排出工程)、さらに密閉式のフローコンベアによって所定の場所へ運ばれる。
【0037】
以上のように、本発明の好ましい実施形態について詳述したが、本発明は係る特定の実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明の要旨の範囲内において、種々の変形・変更が可能であることはいうまでもない。例えば、本発明に係る乾燥装置は、含銅スラッジ以外の被処理物にも幅広く展開可能である。また、乾燥品排出設備や集塵装置ダスト搬送設備は粒子径の観点から搬送不良を極度に起こしやすい被処理物に対応可能な仕様としているため、より幅広い被処理物の取り扱いにも対応可能である。
【符号の説明】
【0038】
1 乾燥装置
2 ジャケット
2a 投入口
2b 加熱エア供給口
2c ドレン排出口
2d 排気ダクト
2e 排出口
2f 加熱蒸気供給口
2g 蒸気供給口
2h 排出シュート
3a,3b 回転軸
4-1~4-45 撹拌翼
4a~4d 撹拌翼
5 駆動機構
5a モータ
5b 減速装置
5c 伝達部材
6 堰板
7 支持部材
8 切欠部
9 送り羽根
10 戻り羽根
11 ボルト孔
12 補助翼取付座
20 補助翼
20a 補助翼片