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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-02-08
(45)【発行日】2022-02-17
(54)【発明の名称】サクション基礎及びその設置方法
(51)【国際特許分類】
   E02D 27/52 20060101AFI20220209BHJP
   E02D 3/10 20060101ALI20220209BHJP
【FI】
E02D27/52 Z
E02D3/10 101
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2018139382
(22)【出願日】2018-07-25
(65)【公開番号】P2020016073
(43)【公開日】2020-01-30
【審査請求日】2020-12-29
(73)【特許権者】
【識別番号】000005119
【氏名又は名称】日立造船株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100170896
【弁理士】
【氏名又は名称】寺薗 健一
(74)【代理人】
【識別番号】100131200
【弁理士】
【氏名又は名称】河部 大輔
(72)【発明者】
【氏名】木村 雄一郎
(72)【発明者】
【氏名】小野 泰明
(72)【発明者】
【氏名】矢幡 武人
(72)【発明者】
【氏名】岡村 武俊
【審査官】高橋 雅明
(56)【参考文献】
【文献】特開2000-110179(JP,A)
【文献】特開平11-158886(JP,A)
【文献】特開昭61-049029(JP,A)
【文献】特開2000-170182(JP,A)
【文献】特開2015-034430(JP,A)
【文献】特開2017-020287(JP,A)
【文献】特開2001-311166(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E02D 27/52
E02D 3/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
天井部と前記天井部に接続された周壁部とを有して底が開放されるように形成され、前記周壁部が水中の地盤に貫入される隔壁と、
前記隔壁を貫通して前記隔壁の内部と外部とを連通させ、前記隔壁の内部の土粒子間の間隙水圧を解放する解放部とを備え
前記解放部は、前記周壁部の貫入後の前記隔壁に構造体が設置された後の、前記隔壁の内部の間隙水圧を解放するサクション基礎。
【請求項2】
請求項1に記載のサクション基礎において、
前記解放部は、前記隔壁の内部と外部との連通及び遮断を切り替え可能なバルブを有するサクション基礎。
【請求項3】
請求項2に記載のサクション基礎において、
前記解放部は、一端が前記隔壁の内部に開口し、他端が前記隔壁の外部であって且つ水面より上方において開口する管を有し、
前記バルブは、前記管のうち水面よりも上方の部分に設けられているサクション基礎。
【請求項4】
請求項1乃至3の何れか1つに記載のサクション基礎において、
前記解放部は、前記隔壁の内部の間隙水を排出する排水ポンプを有するサクション基礎。
【請求項5】
請求項1乃至の何れか1つに記載のサクション基礎において、
前記周壁部は、地盤のうち不透水層に貫入するサクション基礎。
【請求項6】
天井部と前記天井部に接続された周壁部とを有して底が開放されるように形成された隔壁を備えたサクション基礎の設置方法であって、
前記周壁部を水中の地盤に貫入させる工程と、
前記周壁部の貫入後の前記隔壁に構造体を設置する工程と、
前記構造体の設置後に前記隔壁の内部の土粒子間の間隙水圧を解放する工程とを含むサクション基礎の設置方法。
【請求項7】
請求項に記載のサクション基礎の設置方法において、
前記周壁部を貫入させる工程では、前記周壁部を地盤のうち不透水層に貫入させるサクション基礎の設置方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
ここに開示された技術は、サクション基礎及びその設置方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、水中の地盤に設置されるサクション基礎が知られている。例えば、特許文献1には、天井部と周壁部とを有して底が開放された隔壁を備えたサクション基礎が開示されている。周壁部が水底地盤中に貫入されることにより、隔壁が地盤に支持される。隔壁には、躯体等の構造体が設置される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2005-23730号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
前述のサクション基礎は、周壁部が貫入された地盤によって支持されている。この地盤が緩むと、地盤の支持力が低下し、サクション基礎の安定性も低下してしまう。
【0005】
ここに開示された技術は、かかる点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、サクション基礎の安定性を向上させることにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
ここに開示されたサクション基礎は、天井部と前記天井部に接続された周壁部とを有して底が開放されるように形成され、前記周壁部が水中の地盤に貫入される隔壁と、前記隔壁を貫通して前記隔壁の内部と外部とを連通させ、前記隔壁の内部の土粒子間の間隙水圧を解放する解放部とを備える。
【発明の効果】
【0007】
前記サクション基礎によれば、サクション基礎の安定性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1図1は、サクション基礎の模式図である。
図2図2は、サクション基礎の底面図である。
図3図3は、サクション基礎の設置方法の手順を示すフローチャートである。
図4図4は、ステップS1においてサクション基礎を沈設する前の状態を示す説明図である。
図5図5は、ステップS1においてサクション基礎を沈設した後の状態を示す説明図である。
図6図6は、変形例1に係るサクション基礎の模式図である。
図7図7は、変形例2に係るサクション基礎の模式図である。
図8図8は、変形例3に係るサクション基礎の模式図である。
図9図9は、変形例4に係るサクション基礎の模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、例示的な実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。
【0010】
図1は、サクション基礎100の模式図である。図2は、サクション基礎100の底面図である。
【0011】
サクション基礎100は、水上又は水中に構造体を設置するための基礎であり、水中の地盤Gに沈設される。図1の例では、サクション基礎100は、風車40を洋上に設置するための基礎である。サクション基礎100は、風車40が設置される隔壁10と、隔壁10の内部の土粒子間の間隙水圧を解放する解放部30とを備えている。
【0012】
隔壁10は、天井が閉塞され且つ底が開放された容器状に形成されている。具体的には、隔壁10は、略円盤状の天井部11と、天井部11の周縁に接続された略円筒状の周壁部12とを有している。天井部11には、支柱15が設けられている。支柱15は、天井部11の中心Xに配置され、鉛直方向の上方に延びている。支柱15の上端は、隔壁10が地盤Gに沈設された状態において、水面よりも上方に位置している。支柱15に、風車40が設置されている。
【0013】
隔壁10の内部、即ち、天井部11と周壁部12とによって囲まれた空間は、図2に示すように、3つの仕切壁部13によって3つの空間Pに区画されている。仕切壁部13は、天井部11の中心Xから半径方向に延びている。3つの仕切壁部13は、中心X周りの周方向に等間隔に配置されている。隔壁10(詳しくは、天井部11、周壁部12及び仕切壁部13)は、鋼板で形成されている。
【0014】
周壁部12及び仕切壁部13は、地盤Gに貫入している。このとき、隔壁10の内部、即ち、空間Pには地盤Gを構成する土粒子が充填されている。ここで、「充填」とは、空間Pが土粒子で完全に満たされた状態だけでなく、空間Pにおいて土粒子の上方に水が残留した状態も含む意味である。地盤Gに設置されたサクション基礎100においては、周壁部12及び仕切壁部13に摩擦力が作用する。これにより、サクション基礎100は、地盤Gに強固に固定されている。それに加えて、サクション基礎100に外力が作用した場合には、隔壁10の内部に負圧が発生し、引き抜き抵抗が増加する。これにより、サクション基礎100の安定性が確保される。
【0015】
解放部30は、3本の排水管31と、各排水管31に設けられたバルブ32とを有している。解放部30は、空間Pに充填された土粒子間の間隙水圧を解放する。
【0016】
排水管31は、隔壁10を貫通して隔壁10の内部と外部とを連通させる。詳しくは、排水管31は、空間Pを水面より上方の大気に連通させる。排水管31は、一端が隔壁10の内部、即ち、空間Pに開口し、他端が隔壁10の外部であって且つ水面より上方において開口する。排水管31は、3つの空間Pのそれぞれに設けられている。つまり、それぞれの空間Pは、個別の排水管31によって大気に開放される。排水管31は、支柱15に沿って設けられ、支柱15に支持されている。排水管31は、解放部の管の一例である。
【0017】
バルブ32は、隔壁10の内部と外部との連通及び遮断、即ち、排水管31の開通及び遮断を切り替える。バルブ32は、排水管31のうち水面よりも上方の部分に設置されている。
【0018】
尚、サクション基礎100は、図示を省略するが、隔壁10を沈設する際に隔壁10内の水を排水する排水機構をさらに有していてもよい。この排水機構は、3つの空間Pのそれぞれに連通する3本の排水管と、各排水管に設けられた排水ポンプとを有している。排水ポンプを作動させて、排水管を介して空間P内の水を排水することによって隔壁10の地盤Gへの貫入が促進される。
【0019】
風車40は、サクション基礎100に設置される構造体の一例である。風車40は、タワー41と、タワー41に設けられたロータ42とを有している。タワー41は、隔壁10の支柱15に設置されている。ロータ42は、タワー41の先端部に回転自在に設けられている。
【0020】
続いて、サクション基礎100の設置方法について説明する。図3は、サクション基礎100の設置方法の手順を示すフローチャートである。図4は、ステップS1においてサクション基礎100を沈設する前の状態を示す説明図である。図5は、ステップS1においてサクション基礎100を沈設した後の状態を示す説明図である。
【0021】
まず、ステップS1において、図4に示すように、風車40が設置されていない状態のサクション基礎100が設置現場まで曳航される。その後、サクション基礎100の地盤Gへの沈設が開始される。詳しくは、サクション基礎100は、自重又はバラスト荷重によって海底に沈んでいく。周壁部12及び仕切壁部13の下端部は、サクション基礎100の自重又はバラスト荷重によって地盤Gに或る程度貫入する。このとき、バルブ32は、閉じている。
【0022】
その後、排水機構の排水ポンプを作動させ、隔壁10の内側(空間P)の水が排水される。これにより、隔壁10にサクション荷重が作用し、周壁部12は、地盤Gにさらに貫入していく。図5に示すように、周壁部12が所定の深さ(例えば、天井部11が地盤Gに接する深さ)まで地盤Gに貫入すると、排水ポンプによる排水が停止される。ステップS1は、周壁部を水中の地盤に貫入させる工程の一例である。
【0023】
このように周壁部12及び仕切壁部13が地盤Gに貫入していくのに従って、隔壁10の内部、即ち、空間Pは、地盤Gを構成する土粒子によって下方から満たされていく。このとき、地盤Gより上方の水や土粒子間の間隙水は、排水ポンプによって排出されたり、隔壁10の下端から隔壁10の外部へ排出されていく。
【0024】
次に、ステップS2において、隔壁10に風車40が設置される。詳しくは、支柱15に風車40が設置される。ステップS2は、周壁部の貫入後の隔壁に構造体を設置する工程の一例である。
【0025】
風車40が設置されると、風車40を含む隔壁10の重量が大きくなる。これにより、隔壁10の内部の圧力は高くなり、隔壁10の内部の土粒子間の間隙水圧が高くなる。間隙水圧が高くなると、土粒子同士の摩擦力が低減し、地盤Gが緩んでしまう。その結果、地盤Gによる隔壁10の支持力が低下してしまう。ただし、隔壁10の内部において土粒子間の間隙水は、隔壁10の底、即ち、周壁部12の下端から排出され得る。そのため、隔壁10の内部の過剰間隙水圧(同じ水深における隔壁10の外部の土粒子間の間隙水圧からの増大分の水圧)はやがて低減される。しかしながら、地盤Gには、砂質土等からなる透水層Sだけでなく、粘性土等からなる不透水層Cが存在する場合がある。ステップS1において、周壁部12を地盤Gのうち不透水層Cに貫入させる場合がある。周壁部12が不透水層Cに貫入している場合には、不透水層Cよりも上方の部分の間隙水の排出が不透水層Cにより妨げられる。不透水層Cよりも上方の部分の間隙水は不透水層Cに浸透して、隔壁10の底から少しずつ排水される場合もあるが、隔壁10の内部の間隙水圧が高い状態が長い間継続することになる。
【0026】
そこで、風車40の設置後に、ステップS3において、過剰間隙水圧の解放が実行される。ステップS3は、構造体の設置に起因して増大する、隔壁の内部の土粒子間の間隙水圧を解放する工程の一例である。
【0027】
詳しくは、作業者は、風車40の設置後にバルブ32を開ける。風車40の搭載により増加した過剰間隙水圧によって、空間Pの水が排水管31を介して成り行きで排出される。これにより、同じ水深における隔壁10の外部の間隙水圧と隔壁10の内部の間隙水圧との差が低減していく。やがて、排水管31のうち水面よりも上方に突出している部分の水頭と空間Pの土粒子の間隙水圧とのバランスが取れるところで、排水管31からの排水が停止される。作業者は、排水が停止した後、バルブ32を閉じる。これにより、サクション基礎100は図1に示すように設置され、サクション基礎100の設置が完了する。
【0028】
これにより、隔壁10の内部の土粒子間の過剰間隙水圧が早期に低減され、地盤Gによる隔壁10の支持力が早期に向上する。尚、周壁部12が不透水層Cに貫入していない場合であっても、隔壁10の内部の水が隔壁10の底からだけではなく解放部30を介しても排出されるので、隔壁10の内部の過剰間隙水圧が早期に低減され、地盤Gによる隔壁10の支持力が早期に向上する。
【0029】
また、隔壁10の内部の過剰間隙水圧が低減した後にバルブ32を閉じることによって排水管31を介した隔壁10の内部と外部との連通が遮断される。前述の如く、サクション基礎100は、隔壁10の内部に発生する負圧によって外力に対する引き抜き抵抗を増加させる。排水管31を開通させたままにしておくと、負圧を発生させる機能が多少なりとも弱まってしまう。バルブ32を閉じることによって、隔壁10の閉塞性を高め、負圧の発生機能の低下を抑制することができる。ここでいう「閉塞性」とは、隔壁10の底が開放していることを踏まえた上での閉塞性であり、天井部11及び周壁部12による閉塞性である。
【0030】
尚、ステップS2とステップS3とは並行して行われてもよい。つまり、バルブ32を開けた状態で風車40を設置してもよい。風車40の設置により隔壁10の内部の間隙水圧が増大すると、その増加に応じて隔壁10内の水が排水管31を介して排出される。風車40の設置後にバルブ32が閉じられる。尚、バルブ32は、風車40の設置を開始するときよりも前、例えば、ステップS1の隔壁10の貫入時から開いていてもよい。
【0031】
また、隔壁10の内部の過剰間隙水圧を解放した後にバルブ32を閉じず、排水管31を開通させたままにしておいてもよい。排水管31を開通させておくことによって、潮汐や地盤Gの圧密状態の経年変化等に起因する、隔壁10の内部の間隙水圧の増大を緩和することができる。例えば、潮位が低下した際には、隔壁10の内部の間隙水圧に比べて隔壁10の外部の間隙水圧が低くなる。その結果、隔壁10の内部の水が排水管31から排出され、隔壁10の内部と外部とでの間隙水圧の差が低減される。逆に、潮位が上昇した際には、隔壁10の内部の間隙水圧に比べて隔壁10の外部の間隙水圧が高くなる。その結果、排水管31内の水位が低下し、隔壁10の内部と外部とでの間隙水圧の差が低減される。尚、排水管31が開通していると、隔壁10の閉塞性が低下することになるが、排水管31の断面積は空間Pの断面積に比べて小さいので、隔壁10の閉塞性の低下はわずかである。つまり、排水管31が開通していることによる、隔壁10の負圧の発生機能の低下はそれほど大きくはない。
【0032】
以上のように、サクション基礎100は、天井部11と天井部11に接続された周壁部12とを有して底が開放されるように形成され、周壁部12が水中の地盤Gに貫入される隔壁10と、隔壁10を貫通して隔壁10の内部と外部とを連通させ、隔壁10の内部の土粒子間の間隙水圧を解放する解放部30とを備える。
【0033】
この構成によれば、隔壁10に風車40等の構造体が設置されることによって隔壁10の内部の間隙水圧が増大したとしても、増大した間隙水圧が解放部30によって早期に低減される。その結果、過剰間隙水圧による地盤Gの支持力の低下を早期に解消でき、サクション基礎100の安定性を早期に向上させることができる。
【0034】
また、解放部30は、隔壁10の内部と外部との連通及び遮断を切り替え可能なバルブ32を有する。
【0035】
この構成によれば、隔壁10の内部と外部との連通及び遮断をバルブ32によって切り替えることができる。バルブ32を開いて隔壁10の内部と外部とを解放部30を介して連通させると、潮汐等による隔壁10の内部の間隙水圧の増大を緩和することができるという利点がある。一方、バルブ32を閉じて隔壁10の内部と外部との解放部30を介した連通を遮断すると、隔壁10の閉塞性を向上させるという利点がある。バルブ32を設けることによって、いずれの利点を優先するかを選択することができるようになる。
【0036】
さらに、解放部30は、一端が隔壁10の内部に開口し、他端が隔壁10の外部であって且つ水面より上方において開口する排水管31(管)を有し、バルブ32は、排水管31のうち水面よりも上方の部分に設けられている。
【0037】
この構成によれば、バルブ32は、水面よりも上方の位置に設けられている。そのため、バルブ32の開閉を手動で行う場合に、その作業を水中で行う必要がないので、バルブ32の開閉の作業性が向上する。
【0038】
また、解放部30は、隔壁10に風車40(構造体)が設置されることに起因して隔壁10の内部に発生する過剰間隙水圧を解放する。
【0039】
この構成によれば、解放部30は、隔壁10に風車40等の構造体を設置した後に隔壁10の内部に発生する過剰間隙水圧を解放することができる。つまり、隔壁10に風車40等の構造体を設置した後の地盤Gの支持力の低下を抑制することができる。
【0040】
また、周壁部12は、地盤Gのうち不透水層Cに貫入する。
【0041】
この構成によれば、隔壁10の内部の水が隔壁10の底から排出されることが妨げられるので、解放部30によって隔壁10の内部の過剰間隙水圧を解放することが特に有効となる。
【0042】
また、天井部11と天井部11に接続された周壁部12とを有して底が開放されるように形成された隔壁10を備えたサクション基礎100の設置方法は、周壁部12を水中の地盤Gに貫入させる工程と、周壁部12の貫入後の隔壁10に風車40(構造体)を設置する工程と、風車40の設置に起因して増大する、隔壁10の内部の土粒子間の間隙水圧を解放する工程とを含む。
【0043】
この構成によれば、解放部30は、風車40等の構造体の設置に起因して隔壁10の内部に発生する過剰間隙水圧を早期に低減することができる。その結果、過剰間隙水圧による地盤Gの支持力の低下を早期に抑制でき、サクション基礎100の安定性を早期に向上させることができる。
【0044】
また、周壁部12を貫入させる工程では、周壁部12を地盤Gのうち不透水層Cに貫入させる。
【0045】
この構成によれば、隔壁10の内部の水が隔壁10の底から排出されることが妨げられるので、解放部30によって隔壁10の内部の過剰間隙水圧を解放することが特に有効となる。
【0046】
続いて、サクション基礎100の変形例について説明する。以下の説明では、サクション基礎100と同様の構成については同様の符号を付して説明を省略し、異なる部分を中心に説明する。
【0047】
〈変形例1〉
変形例1に係るサクション基礎200について説明する。図6は、変形例1に係るサクション基礎200の模式図である。サクション基礎200は、バルブ32の開閉を自動制御する点で、サクション基礎100と異なる。
【0048】
サクション基礎200の解放部230は、排水管31及びバルブ32に加えて、バルブ32を制御する制御部35をさらに有している。制御部35は、サクション基礎200の設置時にバルブ32の開閉を制御する。
【0049】
サクション基礎200は、前述の図3のフローチャートの手順で設置される。ステップS1,S2までの処理は、サクション基礎100の場合と同様である。
【0050】
作業者は、ステップS3において、風車40の設置後に制御部35を作動させる。制御部35は、バルブ32を開ける。風車40の設置により増加した過剰間隙水圧によって、空間Pの水が排水管31を介して成り行きで排出される。これにより、同じ水深における隔壁10の外部の間隙水圧と隔壁10の内部の間隙水圧との差が低減していく。やがて、排水管31のうち水面よりも上方に突出している部分の水頭と空間Pの土粒子の間隙水圧とのバランスが取れるところで、排水管31からの排水が停止される。制御部35は、この水頭と間隙水圧とがバランスすると想定される時間だけ待機した後、バルブ32を閉じる。制御部35は、3つのバルブ32を同様に且つ並行して制御する。
【0051】
これにより、隔壁10の内部の土粒子間の過剰間隙水圧が早期に低減され、地盤Gによる隔壁10の支持力が早期に向上する。また、隔壁10の内部の過剰間隙水圧が低減した後にバルブ32を閉じることによって隔壁10の閉塞性を高め、負圧の発生機能の低下を抑制することができる。
【0052】
尚、ステップS2とステップS3とは並行して行われてもよい。つまり、バルブ32を開けた状態で風車40を設置してもよい。尚、バルブ32は、風車40の設置を開始するときよりも前、例えば、ステップS1の隔壁10の貫入時から開いていてもよい。
【0053】
〈変形例2〉
図7は、変形例2に係るサクション基礎300の模式図である。サクション基礎300は、バルブ32の制御内容が、変形例1に係るサクション基礎200と異なる。
【0054】
サクション基礎300の解放部330は、排水管31、バルブ32及び制御部35に加えて、波高を検出する波高センサ36と、風速を検出する風速センサ37とをさらに有している。制御部35には、波高センサ36及び風速センサ37の検出結果が入力されている。制御部35は、サクション基礎300の設置時にバルブ32の開閉を制御すると共に、サクション基礎300の設置後においても外部環境の変化に応じてバルブ32の開閉を制御する。
【0055】
サクション基礎300は、前述の図3のフローチャートの手順で設置される。ステップS1,S2までの処理は、サクション基礎100の場合と同様である。
【0056】
制御部35は、変形例2と同様に、ステップS3において風車40の設置後にバルブ32を開ける。ただし、隔壁10の内部の過剰間隙水圧を解放した後は、制御部35は、波高センサ36及び風速センサ37の検出結果に基づいてバルブ32の開閉を制御する。詳しくは、制御部35は、波高センサ36により検出される波高が所定の波高閾値よりも高い場合、又は、風速センサ37により検出される風速が所定の風速閾値よりも大きい場合には、バルブ32を閉じる。一方、制御部35は、波高センサ36により検出される波高が所定の波高閾値以下で且つ、風速センサ37により検出される風速が所定の風速閾値以下の場合には、バルブ32を開いたままにする。制御部35は、3つのバルブ32を同様に且つ並行して制御する。
【0057】
波高又は風速が大きい場合には、サクション基礎300に作用する外力が大きくなる。そのような場合には、制御部35はバルブ32を閉じることによって、隔壁10の内部と外部との解放部330を介した連通を遮断する。これにより隔壁10の閉塞性を高め、外力へのサクション基礎300の耐性を向上させることができる。一方、波高及び風速が小さい場合には、サクション基礎300に作用する外力が小さいので、バルブ32を開けておくことによって、潮汐や地盤Gの圧密状態の経年変化等に起因する、隔壁10の内部の間隙水圧の増大を緩和することができる。
【0058】
尚、ステップS2とステップS3とは並行して行われてもよい。つまり、バルブ32を開けた状態で風車40を設置してもよい。尚、バルブ32は、風車40の設置を開始するときよりも前、例えば、ステップS1の隔壁10の貫入時から開いていてもよい。
【0059】
〈変形例3〉
図8は、変形例3に係るサクション基礎400の模式図である。サクション基礎400は、バルブ32を有していない点で、サクション基礎100と異なる。
【0060】
解放部430は、排水管31を有し、バルブ32を有していない。つまり、解放部430の排水管31は、常時、開放されている。
【0061】
サクション基礎400は、前述の図3のフローチャートの手順で設置される。ステップS1の処理は、サクション基礎100の場合と同様である。
【0062】
そして、ステップS2の風車40の設置とステップS3の過剰間隙水圧の解放とが常に並行して行われる。さらに、風車40の設置後においては、排水管31は開放されたままである。排水管31を開通させておくことによって、潮汐や地盤Gの圧密状態の経年変化等に起因する、隔壁10の内部の間隙水圧の増大を緩和することができる。
【0063】
〈変形例4〉
図9は、変形例4に係るサクション基礎500の模式図である。サクション基礎500は、解放部530が排水ポンプ33を有する点で、サクション基礎100と異なる。ここでは、サクション基礎300から変形した構成について説明する。しかし、変形例4のベースとなる構成は、サクション基礎300に限られず、サクション基礎100,200,400等であってもよい。
【0064】
サクション基礎500の解放部530は、排水管31、バルブ32、制御部35、波高センサ36及び風速センサ37に加えて、隔壁10の内部の間隙水を排出する排水ポンプ33と、各排水管31に設けられた圧力センサ34と、隔壁10の傾きを検出する傾きセンサ38とをさらに有している。制御部35には、圧力センサ34、傾きセンサ38、波高センサ36及び風速センサ37の検出結果が入力されている。排水ポンプ33は、空間Pの水を排水管31を介して排水する。排水ポンプ33は、排水管31のうち水面よりも上方の部分に設置されている。圧力センサ34は、排水管31内の水圧を検出する。
【0065】
サクション基礎500は、前述の図3のフローチャートの手順で設置される。ステップS1,S2までの処理は、サクション基礎100の場合と同様である。
【0066】
制御部35は、ステップS3においてバルブ32を開けると共に圧力センサ34の検出結果に基づいて排水ポンプ33を作動させることによって、空間Pの水を排出する。制御部35は、同じ水深における隔壁10の外部の間隙水圧と隔壁10の内部の間隙水圧との差が低減するように水を排出する。具体的には、圧力センサ34の検出圧力と、圧力センサ34と隔壁10(例えば、排水管31の下端)との高低差とから、隔壁10の内部の間隙水圧がわかる。圧力センサ34の検出圧力が目標の間隙水圧の範囲に対応する圧力範囲内に入るように、制御部35は、排水ポンプ33を制御する。圧力センサ34の検出圧力が目標の圧力範囲内に入ると、制御部35は、排水ポンプ33を停止すると共にバルブ32を閉じる。制御部35は、3組のバルブ32及び排水ポンプ33に対するこのような制御を並行して行う。
【0067】
サクション基礎500は、隔壁10の内部の水を排水ポンプ33によって強制的に排出するので、隔壁10の内部の水を成り行きで排出する場合と比較して、隔壁10の内部の過剰間隙水圧を早期に低減することができる。
【0068】
尚、ステップS2とステップS3とは並行して行われてもよい。つまり、バルブ32を開け且つ排水ポンプ33で排水を行いつつ風車40を設置してもよい。尚、バルブ32は、風車40の設置を開始するときよりも前、例えば、ステップS1の隔壁10の貫入時から開いていてもよい。
【0069】
それに加えて、制御部35は、過剰間隙水圧を解放する際に、隔壁10の傾きを調節してもよい。隔壁10の内部の水を排出すると、間隙水圧が低下するだけでなく、周壁部12が地盤Gにさらに貫入し得る。制御部35は、傾きセンサ38の検出結果に基づいて、3つの排水ポンプ33の排水量を調節する。詳しくは、制御部35は、傾きセンサ38の検出結果に基づいて、天井部11のうち相対的に高い部分に対応する空間Pの排水ポンプ33の排水量を相対的に多くする。このとき、制御部35は、3つの圧力センサ34の検出圧力が前述の圧力範囲に収まる範囲内で3つの排水ポンプ33の排水量を調節する。これにより、隔壁10の内部の過剰間隙水圧を低減しつつ、隔壁10の傾きを調節することができる。
【0070】
さらに、制御部35は、サクション基礎500の設置後の通常の運用時に、波高センサ36及び風速センサ37の検出結果に基づいてバルブ32及び排水ポンプ33を制御してもよい。詳しくは、制御部35は、波高センサ36により検出される波高が所定の波高閾値よりも高い場合、又は、風速センサ37により検出される風速が所定の風速閾値よりも大きい場合には、バルブ32を開くと共に排水ポンプ33を作動させる。制御部35は、圧力センサ34による検出圧力が所定の圧力以下になるまで排水ポンプ33による排水を継続する。この所定の圧力は、前述の過剰間隙水圧の解放における圧力範囲よりも小さい値である。排水ポンプ33の停止後は、バルブ32が閉じられる。一方、制御部35は、波高センサ36により検出される波高が所定の波高閾値以下で且つ、風速センサ37により検出される風速が所定の風速閾値以下の場合には、バルブ32を閉じ、排水ポンプ33を停止させたままにする。制御部35は、3つのバルブ32及び排水ポンプ33を同様に且つ並行して制御する。
【0071】
波高又は風速が大きい場合には、サクション基礎500に作用する外力が大きくなる。そのような場合には、制御部35はバルブ32を開け、排水ポンプ33によって隔壁10の内部の水を排出する。これによって、隔壁10の内部の間隙水圧が低下し、地盤Gの支持力が増強される。その結果、外力へのサクション基礎500の耐性を向上させることができる。一方、波高及び風速が小さい場合には、サクション基礎300に作用する外力が小さいので、バルブ32を開けておくことによって、潮汐や地盤Gの圧密状態の経年変化等に起因する、隔壁10の内部の間隙水圧の増大を緩和することができる。
【0072】
このように、サクション基礎500の解放部530は、隔壁10の内部の間隙水を排出する排水ポンプ33を有する。
【0073】
この構成によれば、隔壁10の内部の水を成り行きで排水する場合と比べて、早期に排水することができる。その結果、過剰間隙水圧による地盤Gの支持力の低下をより早期に抑制でき、サクション基礎100の安定性をより早期に向上させることができる。
【0074】
尚、サクション基礎500において、傾き制御及び外部環境によるバルブ32及び排水ポンプ33の制御は省略してもよい。
【0075】
また、制御部35は、圧力センサ34の検出結果に基づいて排水ポンプ33を制御しているが、これに限られない。例えば、解放部530は、目標とする隔壁10の内部の間隙水圧に対応する揚程を有する排水ポンプ33を採用し、圧力センサ34を省略してもよい。その場合、制御部35は、風車40の設置後に過剰間隙水圧を解放する際には、排水ポンプ33の排水能力で排出できるだけの水を排出させるようにしてもよい。排水ポンプ33が可能な量の水を排出したときには、隔壁10の内部の間隙水圧は、目標とする値となる。
【0076】
《その他の実施形態》
以上のように、本出願において開示する技術の例示として、前記実施形態を説明した。しかしながら、本開示における技術は、これに限定されず、適宜、変更、置き換え、付加、省略などを行った実施の形態にも適用可能である。また、前記実施形態で説明した各構成要素を組み合わせて、新たな実施の形態とすることも可能である。また、添付図面および詳細な説明に記載された構成要素の中には、課題解決のために必須な構成要素だけでなく、前記技術を例示するために、課題解決のためには必須でない構成要素も含まれ得る。そのため、それらの必須ではない構成要素が添付図面や詳細な説明に記載されていることをもって、直ちに、それらの必須ではない構成要素が必須であるとの認定をするべきではない。
【0077】
例えば、前記実施形態について、以下のような構成としてもよい。
【0078】
隔壁10の形状は、略円筒状に限られるものではない。隔壁10は、天井部及び周壁部を有し且つ底を有さない形状であれば、任意の形状に形成することができる。例えば、隔壁10は、断面が略四角形や略五角形等の角筒状に形成されていてもよい。また、隔壁10は、天井部が湾曲したドーム状に形成されていてもよい。
【0079】
また、隔壁10の内部は、仕切壁部13によって複数の空間に仕切られているが、仕切壁部13が省略されてもよい。すなわち、隔壁10の内部には、単一の空間が形成されていてもよい。
【0080】
隔壁10には、支柱15が設けられていなくてもよい。
【0081】
さらに、サクション基礎100に設置される構造体は、風車40に限られるものではない。構造体は、風況観測塔又はケーソン等であってもよい。
【0082】
隔壁10の内部と外部との連通は、排水管31以外の構成で実現されてもよい。例えば、隔壁10に形成された貫通孔によって、隔壁10の内部と外部との連通が実現されてもよい。
【0083】
排水管31は、隔壁10の内部の空間Pごとに1つ設けられているが、空間Pごとに複数設けられていてもよい。また、排水管31の上端は、水面よりも上方に位置しているが、水面よりも下方に位置していてもよい。また、排水管31は、天井部11を貫通しているが、周壁部12を貫通していてもよい。
【0084】
バルブ32及び/又は排水ポンプ33が設けられている場合には、バルブ32及び/又は排水ポンプ33は、排水管31のうち水面よりも下方の部分に設けられていてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0085】
以上説明したように、ここに開示された技術は、サクション基礎及びその設置方法について有用である。
【符号の説明】
【0086】
100,200,300,400,500 サクション基礎
10 隔壁
11 天井部
12 周壁部
30,230,330,430,530 解放部
31 排水管(管)
32 バルブ
33 排水ポンプ
40 風車(構造体)
G 地盤
C 不透水層

図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9