(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-02-08
(45)【発行日】2022-02-17
(54)【発明の名称】踏切警報補助システムおよび中央装置
(51)【国際特許分類】
B61L 29/28 20060101AFI20220209BHJP
【FI】
B61L29/28 C
(21)【出願番号】P 2018199114
(22)【出願日】2018-10-23
【審査請求日】2020-09-10
(73)【特許権者】
【識別番号】000001292
【氏名又は名称】株式会社京三製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100124682
【氏名又は名称】黒田 泰
(74)【代理人】
【識別番号】100104710
【氏名又は名称】竹腰 昇
(74)【代理人】
【識別番号】100090479
【氏名又は名称】井上 一
(72)【発明者】
【氏名】浅野 晃
【審査官】冨永 達朗
(56)【参考文献】
【文献】特開2003-288679(JP,A)
【文献】特開2011-192193(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2018/0222506(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B61L 29/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
踏切警報機が設置された踏切から所定距離離れた位置に設置された信号灯器と、前記踏切警報機の踏切警報のタイミングを示す所与のタイミング情報を外部入力し、当該タイミング情報に基づいて前記信号灯器の表示を制御する信号制御機と、を備える補助信号機と、
前記補助信号機に信号表示のタイミング情報を送信する中央装置と、
を具備し、前記踏切警報機を制御する踏切制御システムと通信を行う踏切警報補助システムであって、
前記中央装置は、
前記踏切制御システムから、前記踏切の踏切タイムテーブル情報を取得する踏切タイムテーブル情報取得手段と、
前記踏切タイムテーブル情報に基づいて前記タイミング情報を生成し、前記補助信号機に送信するタイミング情報提供手段と、
を備える、
踏切警報補助システム。
【請求項2】
前記タイミング情報提供手段は、前記踏切タイムテーブル情報に基づいて、次回の踏切警報が開始されるまでの時間が所定の接近時間条件を満たすか否かを判定し、満たす場合には、満たさない場合に比べて、前記タイミング情報の生成および送信を高頻度に行う、
請求項
1に記載の踏切警報補助システム。
【請求項3】
踏切警報機を制御する踏切制御システムと通信を行い、補助信号機に信号表示のタイミング情報を送信する中央装置であって、
前記補助信号機は、前記踏切警報機が設置された踏切から所定距離離れた位置に設置された信号灯器と、前記踏切警報機の踏切警報のタイミングを示す所与のタイミング情報を外部入力し、当該タイミング情報に基づいて前記信号灯器の表示を制御する信号制御機と、を備えており、
前記踏切制御システムから、前記踏切の踏切タイムテーブル情報を取得する踏切タイムテーブル情報取得手段と、
前記踏切タイムテーブル情報に基づいて前記タイミング情報を生成し、前記補助信号機に送信するタイミング情報提供手段と、
を備える中央装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、踏切警報補助システムおよび中央装置に関する。
【背景技術】
【0002】
鉄道の踏切には、列車の接近を車両や自転車、歩行者などに警告して踏切内への進入を抑止するための踏切警報機や踏切しゃ断機といった踏切保安設備が設けられる。しかし、車両故障等の何らかの理由によって踏切内に車両などが取り残されてしまうと、列車との衝突といった重大な事故が生じ得る。このような事故防止のため、踏切内の障害物を検知する各種のシステムが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、踏切内事故の主要因の1つは、踏切警報機が鳴動して警報が開始されたにも関わらず踏切を横断できると判断して踏切内に進入する、いわゆる“直前横断”である。この直前横断を抑止することが踏切内事故の減少に有効であるが、直前横断は、踏切での列車通過の待ち時間が長くなってしまうことを好ましく思わない車両の運転者の心理的要因が一因とも考えられる。
【0005】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、踏切における直前横断を抑止させるための技術を提供すること、或いは、直前横断の抑止を支援するための技術を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するための第1の発明は、
踏切警報機が設置された踏切から所定距離離れた位置に設置された信号灯器と、
前記踏切警報機の踏切警報のタイミングを示す所与のタイミング情報を外部入力し、当該タイミング情報に基づいて前記信号灯器の表示を制御する信号制御機と、
を備えた補助信号機である。
【0007】
第1の発明によれば、踏切から所定距離離れた位置に信号灯器が設置され、その信号灯器の表示が、当該踏切の踏切警報のタイミング情報に基づいて制御される。踏切警報に連動するように補助信号機の信号表示が制御されることによって、踏切に接近する車両や歩行者などに対して、踏切が警報中であるかどうかを、踏切に到達する前に知らせることができる。車両の運転者などが、踏切に到達する前にその踏切が警報中かどうかを知ることができることから、踏切の直前横断を抑止する可能性が高まる。すなわち、第1の発明によれば、踏切における直前横断を抑止させるための技術、或いは、直前横断の抑止を支援するための技術を実現することができる。
【0008】
第2の発明は、第1の発明において、
前記タイミング情報は、前記踏切警報の開始および終了のタイミングを示す情報を含み、
前記信号灯器は、青灯、黄灯、赤灯を有し、
前記信号制御機は、前記タイミング情報に基づく踏切警報中の期間を赤信号表示、踏切警報の開始直前の所定秒数の期間を黄信号表示、これら以外の期間を青信号表示とするように前記信号灯器の表示を制御する、
補助信号機である。
【0009】
第2の発明によれば、赤信号表示によって踏切が警報中であることを知らせるとともに、赤信号表示の直前の黄信号表示によって警報の開始を予告することができる。従って、踏切に接近する車両の運転手などは、補助信号機の黄信号表示を見ることによって、接近する踏切の警報が間もなく開始されることを知ることができるので、例えば、急がすに速度を落とした運転操作をするといったことができるようになり、踏切の直前横断の抑止に有効である。
【0010】
第3の発明は、
第1又は第2の発明の補助信号機と、
前記補助信号機に信号表示のタイミング情報を送信する中央装置と、
を具備し、前記踏切警報機を制御する踏切制御システムと通信を行う踏切警報補助システムであって、
前記中央装置は、
前記踏切制御システムから、前記踏切の踏切タイムテーブル情報を取得する踏切タイムテーブル情報取得手段(例えば、
図9の踏切タイムテーブル情報取得部202)と、
前記踏切タイムテーブル情報に基づいて前記タイミング情報を生成し、前記補助信号機に送信するタイミング情報提供手段(例えば、
図9のタイミング情報提供部206)と、
を備える、
踏切警報補助システムである。
【0011】
第3の発明によれば、補助信号機の信号表示の制御タイミングを、踏切制御システムから取得した踏切タイムテーブル情報に基づくものとすることができる。
【0012】
第4の発明は、第3の発明において、
前記タイミング情報提供手段は、前記踏切タイムテーブル情報に基づいて、次回の踏切警報が開始されるまでの時間が所定の接近時間条件を満たすか否かを判定し、満たす場合には、満たさない場合に比べて、前記タイミング情報の生成および送信を高頻度に行う、
踏切警報補助システムである。
【0013】
踏切制御システムは、列車の走行位置に応じて踏切の警報制御を行っており、将来の予測時刻である踏切警報の開始予測時刻はその時々によって変動し得る。第4の発明によれば、現在時刻から踏切警報の開始予測時刻までの時間が接近時間条件を満たしている場合、つまり踏切警報が間もなく開始されるような場合には、接近時間条件を満たさない場合、つまり踏切警報の開始まで充分に時間があるような場合に比べて、タイミング情報の生成および補助信号機への提供を高頻度に行うことができる。この結果、踏切警報の開始予測時刻が変動する場合があるとしても、直前横断が生じ得る踏切警報の開始タイミングが近づくと、補助信号機の信号表示タイミングが短時間で追従して変化することとなる。
【0014】
第5の発明は、
踏切制御システムと通信を行い、自動車へ走行支援情報を提供する踏切警報補助システムであって、
前記踏切制御システムから、踏切の踏切タイムテーブル情報を取得する踏切タイムテーブル情報取得手段(例えば、
図9の踏切タイムテーブル情報取得部202)と、
前記踏切タイムテーブル情報に基づいて前記踏切の直近警報予測時刻情報を生成して、前記走行支援情報に含めて前記自動車に提供する情報提供制御手段(例えば、
図9の走行支援情報提供部208)と、
を備えた踏切警報補助システムである。
【0015】
第5の発明によれば、踏切の直近の警報に関する直近警報予測時刻情報を含む走行支援情報を、自動車に提供することができる。従って、自動車においては、例えば、提供された走行支援情報に含まれる直近警報予測時刻情報に基づく車内表示を行うことで、自動車の運転手に直近の踏切警報予測時刻を知らせ、急がすに速度を落とした運転操作をするといった、踏切の直前横断を抑止するような運転操作を支援することができる。更には、直近警報予測時刻情報を自動車の自動運転に用いることで、踏切における自動車の直前横断を抑止することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図5】ナビゲーション画面における走行支援表示の一例。
【
図6】ナビゲーション画面における走行支援表示の一例。
【
図7】タイミング情報および走行支援情報の生成の説明図。
【
図12】中央装置が実行する処理のフローチャート。
【
図13】踏切制御システムおよび踏切警報補助システムの第2実施形態を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、図面を参照して本発明の好適な実施形態について説明する。なお、以下に説明する実施形態によって本発明が限定されるものではなく、本発明を適用可能な形態が以下の実施形態に限定されるものでもない。また、図面の記載において、同一要素には同一符号を付す。
【0018】
<第1実施形態>
[全体構成]
図1は、第1実施形態における踏切警報補助システム1の適用例である。踏切警報補助システム1は、踏切制御システム40と通信ネットワークN1を介した通信を行い、踏切を通行する自動車や自転車、歩行者などに向けた踏切の警報を支援するシステムである。通信ネットワークは、データ通信が可能な通信路を意味し、直接接続のための専用線(専用ケーブル)やイーサネット(登録商標)等によるLAN(Local Area Network)の他、電話通信網やケーブル網、インターネット等の通信網を含む意味である。通信ネットワークに係る通信方法については有線/無線は適宜に選択することができ、例えば、通信ネットワークN1については有線を、通信ネットワークN2,N3については無線を採用することができる。
【0019】
踏切制御システム40は、各列車の走行位置および走行速度に基づいて各踏切RCの警報を集中制御するシステムであり、踏切制御用中央装置42に、踏切RC毎に設置された踏切制御機44と、各列車の車上装置50とが、通信ネットワークN2を介して通信可能に接続されて構成される。
【0020】
踏切制御用中央装置42は、各列車の車上装置50から取得した走行位置および走行速度をもとに踏切RCへの到達予測時刻を算出し、踏切RC毎に、各列車の踏切への到達予測時刻をもとに算出した警報の開始予測時刻を含む踏切制御情報を、該当する踏切制御機44へ送信する。
【0021】
踏切制御機44は、例えば、踏切近傍に設置された器具箱に内蔵され、踏切制御用中央装置42から受信した踏切制御情報に従って、踏切RCに設けられた踏切警報機46や踏切しゃ断機48といった踏切保安設備を制御する。すなわち、警報の開始予測時刻となると、踏切警報機46の鳴動や踏切しゃ断機48の降下といった警報を開始させ、踏切RCの進出側の軌道に設けられた踏切制御子により列車の通過を検知することで、踏切警報機46の鳴動の停止や踏切しゃ断機48の上昇といった警報の停止を行わせる。
【0022】
踏切警報補助システム1は、中央装置10と、踏切RC毎に設置された補助信号機20および光ビーコン30とが、通信ネットワークN3を介して通信可能に接続されて構成される。
【0023】
中央装置10は、通信ネットワークN1を介して踏切制御システム40の踏切制御用中央装置42と通信可能に接続されており、踏切制御用中央装置42から、踏切RC毎の踏切制御情報の一部または全部の情報を取得する。そして、取得した情報に基づき、踏切RC毎に、信号表示のタイミング情報を生成して補助信号機20へ送信するとともに、自動車へ提供する走行支援情報を生成し、光ビーコン30を介して自動車の車載装置60へ送信する。
【0024】
補助信号機20は、表示灯色として青灯、黄灯、赤灯を有する信号灯器22と、信号灯器22の各灯色の点灯および滅灯を制御する信号制御機24とを有し、中央装置10からのタイミング情報に従って踏切RCの警報に連動した信号表示を行う。
【0025】
光ビーコン30は、近赤外線を通信媒体とした光無線通信により自動車に搭載された車載装置60との間で双方向通信を行うための装置であり、近赤外線の光信号を発光および受光する投受光器32と、投受光器32の発光および受光を制御する投受光制御機34とを有する。
【0026】
車載装置60は、踏切警報補助システム1から受信した走行支援情報を用いて、搭載された自動車の走行を支援する。また、車載装置60は、GNSS(Global Navigation Satellite System:全球測位衛星システム)衛星Gからの衛星信号を受信するGNSS受信機を有し、受信したGNSS衛星信号に基づく測位機能を備えている。また、車載装置60が搭載される自動車は、第1実施形態では自動運転装置を搭載していることとし、運転モードとして、自動運転装置による自動運転モードと、運転者が手動で運転操作を行う手動運転モードとを、運転者が切り替え可能であることとする。
【0027】
また、中央装置10、補助信号機20、踏切制御用中央装置42、踏切制御機44、車上装置50および車載装置60の各装置は、GNSS衛星Gからの衛星信号を受信するGNSS受信機を有し、受信したGNSS衛星信号に基づいて高精度時刻を計時する高精度時刻計時機能を備えている。これにより、各装置間で時刻同期用の特別な通信をすることなく、各装置の自律制御によって、装置間の時刻同期を実現する。GNSS衛星Gは、GPS(Global Positioning System)、EGNOS(European Geostationary Navigation Overlay Service)、QZSS(Quasi Zenith Satellite System)、GLONASS(Global Navigation Satellite System)、GALILEO、BeiDou(BeiDou Navigation Satellite System)、などの全球測位衛星システム(GNSS)で用いられる衛星である。
【0028】
(A)設置例
図2に、補助信号機20および光ビーコン30の具体的な設置例を示す。
図2の右側には、踏切RC-Aに係る補助信号機20の設置例を示し、左側には、踏切RC-Bに係る光ビーコン30の設置例を示している。踏切RC-A,RA-Bには、何れにも、交差道路からの進入側それぞれに、踏切保安設備である踏切警報機46および踏切しゃ断機48が設置されている。
【0029】
図2の右側に示すように、補助信号機20は、踏切RC-Aから、道路に沿って所定距離L1だけ離れた位置に信号灯器22が設置され、その信号灯器22を支持する道路脇に立設された支柱の例えば下部に信号制御機24が取り付けられて構成される。また信号灯器22は、踏切RC-Aに向かう車両交通に対面するように取り付けられる。距離L1は、例えば、後述する信号灯器22の黄灯の点灯時間Δty(
図3参照)の間に自動車62が所定速度(例えば、当該道路の制限速度)で走行した場合の距離に定められる。なお、
図2では、踏切RC-Aへの一方の進入側に補助信号機20が設置された例を示しているが、他方の進入側にも同様に設置される。
【0030】
また、
図2の左側に示すように、光ビーコン30は、踏切RC-Bから、道路に沿って所定距離L2だけ離れた位置に設置される。つまり、道路脇に立設された支柱の例えば下部に投受光制御機34が取り付けられ、支柱の上部から道路を横切るように水平方向に架設されたバーに、通信対象エリア33が踏切RC-Bに向かう車両交通の走行車線を含むように投受光器32が取り付けられる。距離L2は、例えば、後述する信号灯器22の黄灯の点灯時間Δty(
図3参照)の間に自動車62が所定速度(例えば、当該道路の制限速度)で走行した場合の距離に定められる。距離L1,L2は、同じ距離としても良いし、異なる距離としても良い。なお、
図2では、踏切RC-Bへの一方の進入側に光ビーコン30が設置された例を示しているが、他方の進入側にも同様に設置される。
【0031】
また、
図2では、1つの踏切RCに、補助信号機20或いは光ビーコン30が設置された例を示しているが、補助信号機20および光ビーコン30の両方が設置されていても良い。
【0032】
[特徴]
(A)補助信号機20の信号表示
補助信号機20は、信号制御機24が踏切警報機46の踏切警報のタイミングを示す所与のタイミング情報を外部入力し、当該タイミング情報に基づいて信号灯器22の信号表示を制御することで、当該補助信号機20が設置された踏切の警報に連動した信号表示を行う。第1実施形態では、タイミング情報は、踏切警報補助システム1の中央装置10から受信することとする。
【0033】
図3は、補助信号機20の信号表示を説明する図である。
図3では、縦方向を時間軸として、時間経過に伴う信号表示の遷移に併せて、踏切の状態(警報中であるか否か)を示している。補助信号機20では、現在時刻T
0から将来直近の踏切警報に関して次のような信号表示がなされる。つまり、踏切警報の開始予測時刻T
2から終了予測時刻T
3までの期間は、踏切警報中の期間であるとして赤灯のみを点灯させる赤信号表示とする。また、開始予測時刻T
2から所定時間Δty(数秒程度)だけ遡った予告開始時刻T
1から、開始予測時刻T
2までの期間は、黄灯のみを点灯させる黄信号表示とする。そして、それ以外の期間(
図3では、現在時刻T
0から予告開始時刻T
1までの期間や、終了予測時刻T
3以降)は、青灯のみを点灯させる青信号表示とする。
【0034】
また、補助信号機20の信号表示と踏切の状態との対応をみると、赤信号表示の期間が、踏切が“警報中”の期間に対応し、それ以外である黄信号表示および青信号表示の期間が、踏切が“警報中でない”期間に対応する。つまり、踏切警報の開始予測時刻が近付くと、補助信号機20の信号表示が青信号表示から黄信号表示に変化して、黄信号表示は、間もなく踏切警報が開始されることを予告する役割を果たしている。なお、これらの信号表示の変化時刻T1,T2,T3は、詳細を後述するように、中央装置10から受信するタイミング情報に含まれている。
【0035】
(B)走行支援
また、自動車では、車載装置60が踏切警報補助システム1の中央装置10から受信した走行支援情報に基づく走行支援の一つとして、カーナビゲーション装置の表示画面(ナビゲーション画面)において、走行支援情報に基づく画面表示がなされる。
【0036】
図4は、自動車におけるナビゲーション画面の表示例である。
図4に示すように、ナビゲーション画面W1においては、現在時刻表示E1およびマップ表示E3とともに、走行支援情報に基づく走行支援表示E5が表示される。
【0037】
現在時刻表示E1は、車載装置60が備える高精度時刻計時機能により計時された高精度時刻である。マップ表示E3は、表示マップ上に、自動車の現在の位置および進行方向を示す矢印アイコンD1と、設定した目的地までの太線で示される走行予定経路64とを表示する。自動車の現在の位置および進行方向は、車載装置60が備える測位機能により取得される。走行支援表示E5は、走行予定経路64に沿った進行方向の直近の踏切に関する情報として、当該踏切の名称C1と、現在の状態C3と、予測される次の状態である予測状態C5とを表示する。
【0038】
現在の状態C3は、当該踏切が警報中か否かを示す踏切しゃ断機の図柄およびテキストとともに、
図3に示した補助信号機20の信号表示に相当する信号表示C4を表示する。つまり、踏切が“警報中”ならば、
図4に示すように、信号表示C4として赤信号表示の信号機の図柄を表示する。また、踏切が“警報中でない”ならば、警報の開始予測時刻までの残り時間に応じて、
図5に示すような青信号表示、或いは、
図6に示すような黄信号表示、の信号機の図柄を表示する。
【0039】
予測状態C5は、該当する踏切の現在の状態C3が“警報中”ならば、次の状態は“警報中でない”ことになるので、予測状態C5として、現在の警報が停止される終了予測時刻が表示される。また、現在の状態C3が“警報中でない”ならば、次の状態は“警報中”であるので、予測状態C5として、次の警報が開始される開始予測時刻が表示される。終了予測時刻および開始予測時刻は、その時刻までの残り時間がカウントダウン形式で表示される。
【0040】
(C)情報の生成
踏切警報補助システム1におけるタイミング情報および走行支援情報の生成について説明する。
【0041】
図7は、踏切警報補助システム1におけるタイミング情報および走行支援情報の生成の概要を説明する図である。
図7に示すように、踏切警報補助システム1の中央装置10は、踏切制御システム40の踏切制御用中央装置42から、踏切の高精度時刻に基づく踏切警報予測時刻のタイムテーブルである対象踏切の踏切タイムテーブル情報70を取得する。踏切タイムテーブル情報70は、高精度時刻に基づく当該情報の更新時刻および対象踏切の踏切IDとともに、踏切制御機44から取得した対象踏切の現在の状態(警報中か否か)72と、対象踏切の警報制御に係る警報予測時刻情報74とを含む。警報予測時刻情報74は、警報制御毎の開始予測時刻および終了予測時刻を含む。警報予測時刻情報74に含める警報制御は、現在時刻から所定時間(例えば、30分)以内までの全ての警報制御に係る予測時刻としたり、所定回数(例えば、3回)までの警報制御に係る予測時刻とすることができる。また、現時点で警報中ならば、その実施中の警報制御も含めることにする。
【0042】
そして、中央装置10は、取得した対象踏切の踏切タイムテーブル情報70をもとに、対象踏切の補助信号機20に対する信号表示のタイミング情報80を生成して当該補助信号機20の信号制御機24へ送信するとともに、対象踏切を通行しようとする自動車に提供する走行支援情報90を生成して、対象踏切の光ビーコン30の投受光制御機34へ送信する。
【0043】
タイミング情報80については、踏切タイムテーブル情報70に含まれる警報予測時刻情報74における警報毎の開始予測時刻および終了予測時刻から、
図3に示したように、各警報の開始予定時刻から所定時間Δtyだけ遡った予告開始時刻を算出して、“赤、青、黄”といった信号表示と、その変化時刻とを対応付けた信号変化情報84を生成する。そして、生成した信号変化情報84を、中央装置10が計時している高精度時刻に基づく当該情報の更新時刻および対象踏切の踏切IDに対応付けて、タイミング情報80を生成する。
【0044】
また、走行支援情報90については、踏切タイムテーブル情報70に含まれる警報予測時刻情報74における直近(1回目)の警報の開始予測時刻および終了予測時刻から、
図3に示したように、開始予定時刻から所定時間Δtyだけ遡った予告開始時刻を算出して、直近の警報に係る直近警報予測時刻情報94を生成する。そして、生成した直近警報予測時刻情報94を、中央装置10が計時している高精度時刻に基づく当該情報の更新時刻および対象踏切の踏切IDに対応付けて、走行支援情報90を生成する。なお、“直近の警報”は、現時点で“警報中でない”ならば、これから実施する直近の警報が該当し、現時点で“警報中”ならば、その実施中の警報が該当する。
【0045】
(D)提供頻度
このように、中央装置10は、踏切毎に、タイミング情報80および走行支援情報90の提供(生成を含む)を所定の時間間隔で断続的に繰り返し行うが、この提供頻度(単位時間当たりの提供の実行回数)を可変とすることもできる。例えば、提供頻度を、現在時刻から対象とする踏切の次の踏切警報の開始予測時刻までの時間(以下、警報開始待機時間Mという)に応じて可変とすることができる。
【0046】
図8は、警報開始待機時間Mに応じた提供頻度の一例を示す図である。
図8は、警報開始待機時間Mを横軸として、警報開始待機時間Mと提供頻度Fの関係の一例を示すグラフである。提供頻度Fは、警報開始待機時間Mが短いほど高く(高頻度)、警報開始待機時間Mが長いほど低く(低頻度)なるように定められている。つまり、次回の踏切警報が開始されるまでの時間が近付いていることを示す“接近時間条件”を満たす場合には、満たさない場合に比べて提供頻度Fが高く、タイミング情報80および走行支援情報90の生成および提供が高頻度に行われる。
【0047】
警報開始待機時間Mと提供頻度Fとの関係は、例えば、グラフy1に示すように、警報開始待機時間Mに比例して提供頻度Fが減少するような関係としても良いし、グラフy2に示すように、警報開始待機時間Mに応じて提供頻度Fが段階的に減少するような関係としても良い。また、警報開始待機時間Mと提供頻度Fとの関係は、タイミング情報80であればグラフy1とし、走行支援情報90であればグラフy3とするといったように、タイミング情報80と走行支援情報90とで異なることにしても良い。
【0048】
[機能構成]
(A)中央装置10
図9は、中央装置10の機能構成を示すブロック図である。
図9によれば、中央装置10は、操作部102と、表示部104と、音出力部106と、通信部108と、GNSS受信部110と、処理部200と、記憶部300とを備え、一種のコンピュータシステムとして構成することができる。
【0049】
操作部102は、例えばボタンスイッチやタッチパネル、キーボード等の入力装置で実現され、なされた操作に応じた操作信号を処理部200に出力する。表示部104は、例えばLCDやタッチパネル等の表示装置で実現され、処理部200からの表示信号に応じた各種表示を行う。音出力部106は、例えばスピーカ等の音声出力装置で実現され、処理部200からの音声信号に応じた各種音出力を行う。通信部108は、例えば有線或いは無線による通信装置で実現され、通信ネットワークN1,N3に接続して、踏切制御用中央装置42や信号制御機24、投受光制御機34といった各種の外部装置との通信を行う。
【0050】
GNSS受信部110は、GNSS衛星GからのGNSS衛星信号を受信するGNSS受信機であり、受信したGNSS衛星信号に基づく測位演算を行って、緯度経度高度で表される位置、および、時計部220の計時時刻との誤差(時刻誤差)を算出する。
【0051】
処理部200は、例えばCPU(Central Processing Unit)等の演算装置で実現され、記憶部300に記憶されたプログラムやデータ等に基づいて、中央装置10を構成する各部への指示やデータ転送を行い、中央装置10の全体制御を行う。また、処理部200は、記憶部300に記憶された踏切警報補助プログラム302を実行することで、踏切タイムテーブル情報取得部202と、踏切情報管理部204と、タイミング情報提供部206と、走行支援情報提供部208と、時計部220との各機能ブロックとして機能する。但し、これらの機能ブロックは、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)やFPGA(Field Programmable Gate Array)等によってそれぞれ独立した演算回路として構成することも可能である。
【0052】
踏切タイムテーブル情報取得部202は、踏切制御システム40の踏切制御用中央装置42から、踏切毎の踏切タイムテーブル情報70を取得する。この取得は、踏切制御用中央装置42が所定の送信間隔で自主的に送信することで実現されるようにしても良いし、或いは、踏切タイムテーブル情報取得部202からの要求に応答して踏切制御用中央装置42が送信することで実現されるようにしても良い。
【0053】
踏切情報管理部204は、踏切タイムテーブル情報取得部202が取得した踏切タイムテーブル情報70に基づき、踏切管理情報310を用いて各踏切を管理する。
【0054】
図10は、踏切管理情報310の一例を示す図である。
図10によれば、踏切管理情報310は、踏切毎に生成され、当該情報が生成・更新された更新時刻とともに、該当する踏切を識別する踏切ID311と、緯度経度で表される設置位置312と、補助信号機情報313と、光ビーコン情報314と、現在の状態315と、警報予測時刻情報316と、信号変化情報317と、直近警報予測時刻情報318と、タイミング情報の提供履歴319と、走行支援情報の提供履歴情報320とを含む。
【0055】
補助信号機情報313は、該当する踏切に対応して設置される補助信号機20に関する情報であり、補助信号機20の設置有無や、設置されている場合にはその補助信号機20の信号機IDを含む。光ビーコン情報314は、該当する踏切に対応して設置される光ビーコン30に関する情報であり、光ビーコン30の設置有無や、設置されている場合にはその光ビーコン30のビーコンIDを含む。現在の状態315および警報予測時刻情報316は、取得した踏切タイムテーブル情報70によって、随時、最新の値に更新される。更新された場合には、更新時刻が更新されて踏切管理情報310が更新されることとなる。
【0056】
信号変化情報317は、該当する踏切に設置されている補助信号機20を対象とした、信号表示の変化時刻と、変化後の信号表示とを対応付けたデータであり、警報予測時刻情報316に基づいて算出される(
図7参照)。直近警報予測時刻情報318は、該当する踏切に対応して設置されている光ビーコン30を対象とした、直近の警報に関する予測時刻のデータであり、警報予測時刻情報316に基づいて算出される(
図7参照)。信号変化情報317および直近警報予測時刻情報318は、踏切タイムテーブル情報70の取得による警報予測時刻情報316の更新によって、随時、最新の値が算出・更新される。更新された場合には、更新時刻が更新されて踏切管理情報310が更新されることとなる。
【0057】
タイミング情報提供部206は、踏切タイムテーブル情報70に基づいて、高精度時刻での信号表示のタイミング情報80を生成し、補助信号機20に送信する。すなわち、踏切毎に、当該踏切に該当する踏切管理情報310に格納されている信号変化情報317を取り出し、この信号変化情報317を含むタイミング情報80を生成して、当該踏切に設置されている補助信号機20の信号制御機24へ送信する(
図7参照)。
【0058】
また、タイミング情報提供部206は、踏切毎のタイミング情報80の提供(生成を含む)を予め定められた提供頻度で行うが、この提供頻度を変更することができる。その場合には、例えば、提供頻度を、現在時刻から対象とする踏切の次の踏切警報の開始予測時刻までの時間(警報開始待機時間M)が短いほど高くし、逆に、警報開始待機時間Mが長いほど低くするように変更する(
図8参照)。
【0059】
走行支援情報提供部208は、踏切タイムテーブル情報70に基づいて、高精度時刻での踏切の直近警報予測時刻情報94を生成して、走行支援情報90に含めて自動車に提供する。すなわち、踏切毎に、当該踏切に関する踏切管理情報310に格納されている直近警報予測時刻情報318を取り出し、この直近警報予測時刻情報318を含む走行支援情報90を生成して、当該踏切に設置されている光ビーコン30の投受光制御機34へ送信する(
図7参照)。
【0060】
また、走行支援情報提供部208は、踏切毎の走行支援情報90の提供(生成を含む)を予め定められた提供頻度で行うが、この提供頻度を変更することができる。その場合には、例えば、提供頻度を、現在時刻から対象とする踏切の次の踏切警報の開始予測時刻までの時間(警報開始待機時間M)が短いほど高くし、逆に、警報開始待機時間Mが長いほど低くするように変更する(
図8参照)。
【0061】
時計部220は、水晶発振器を有する発振回路を有して構成され、現在時刻や、指定タイミングからの経過時間を計時する。また、時計部220は、計時した現在時刻をGNSS受信部110により算出された時刻誤差を用いて補正することで、高精度時刻を計時する高精度時刻計時機能を実現する。なお、時計部220の高精度時刻計時機能は、GNSS衛星信号を用いて実現するのではなく、標準電波の受信機を更に備え、この受信機により受信された標準電波を用いることとしても良いし、或いは、通信部108を介して外部システムである絶対時刻情報提供システムから取得した絶対時刻を用いることとしても良い。
【0062】
記憶部300は、ハードディスクやROM、RAM等の記憶装置で実現され、処理部200が中央装置10を統合的に制御するためのプログラムやデータ等を記憶しているとともに、処理部200の作業領域として用いられ、処理部200が各種プログラムに従って実行した演算結果や、操作部102や通信部108を介した入力データ等が一時的に格納される。第1実施形態では、記憶部300には、踏切警報補助プログラム302と、踏切管理情報310とが記憶される。
【0063】
(B)車載装置60
図11は、車載装置60の機能構成を示すブロック図である。
図11によれば、車載装置60は、操作部602と、表示部604と、音出力部606と、通信部608と、GNSS受信部610と、光ビーコン受信部612と、処理部700と、記憶部800とを備え、一種のコンピュータシステムとして構成することができる。
【0064】
操作部602は、例えばボタンスイッチやタッチパネル、キーボード等の入力装置で実現され、なされた操作に応じた操作信号を処理部700に出力する。表示部604は、例えばLCDやタッチパネル等の表示装置で実現され、処理部700からの表示信号に応じた各種表示を行う。音出力部606は、例えばスピーカ等の音声出力装置で実現され、処理部700からの音声信号に応じた各種音出力を行う。通信部608は、例えば有線或いは無線による通信装置で実現され、所与の通信ネットワークに接続して各種の外部装置との通信を行う。
【0065】
GNSS受信部610は、GNSS衛星GからのGNSS衛星信号を受信するGNSS受信機であり、受信したGNSS衛星信号に基づく測位演算を行って、緯度経度高度で表される位置、および、時計部720の計時時刻との誤差(時刻誤差)を算出する測位機能を実現する。
【0066】
光ビーコン受信部612は、光ビーコン30との間で近赤外線を通信媒体とした光無線通信による双方向通信を行うための投受光器である。
【0067】
処理部700は、例えばCPU(Central Processing Unit)等の演算装置で実現され、記憶部800に記憶されたプログラムやデータ等に基づいて、車載装置60を構成する各部への指示やデータ転送を行い、車載装置60の全体制御を行う。また、処理部700は、記憶部800に記憶された車載プログラム802を実行することで、走行経路設定部702と、走行支援情報受信部704と、走行支援表示制御部706と、時計部720との各機能ブロックとして機能する。但し、これらの機能ブロックは、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)やFPGA(Field Programmable Gate Array)等によってそれぞれ独立した演算回路として構成することも可能である。
【0068】
走行経路設定部702は、操作部602を介した指示操作に従って、自動車の現在位置から、指示された目的地に至る走行予定経路を設定する。設定した走行予定経路に関するデータは、走行予定経路情報816として記憶部800に記憶される。
【0069】
走行支援情報受信部704は、光ビーコン受信部612により、踏切警報補助システム1から走行支援情報90を受信する。受信した走行支援情報90は、最新走行支援情報818として記憶部800に記憶されるとともに、それ以前に受信した走行支援情報90は、受信履歴820として記憶部800に、例えば受信順に蓄積記憶される。
【0070】
走行支援表示制御部706は、表示部604に表示されるナビゲーション画面Wにおいて、現在時刻表示E1やマップ表示E3とともに、最新走行支援情報818に基づく走行支援表示E5を表示させる。具体的には、走行支援表示E5として、現在時刻T
0と直近警報予測時刻情報94が示す各時刻との関係に応じた信号表示とした信号機の図柄である信号表示C4を含む現在の状態C3と、次の警報の開始予測時刻或いは実施中の現在の警報が停止される終了予測時刻を含む予測状態C5とを表示する。なお、マップ表示E3は、踏切を含む地
図DB810を参照して表示させることができる。
【0071】
時計部720は、水晶発振器を有する発振回路を有して構成され、現在時刻や、指定タイミングからの経過時間を計時する。また、時計部720は、計時した現在時刻をGNSS受信部610により算出された時刻誤差を用いて補正することで、高精度時刻を計時する高精度時刻計時機能を実現する。なお、時計部720の高精度時刻計時機能は、GNSS衛星信号を用いて実現するのではなく、標準電波の受信機を更に備え、この受信機により受信された標準電波を用いることとしても良いし、或いは、通信部608を介して外部システムである絶対時刻情報提供システムから取得した絶対時刻を用いることとしても良い。
【0072】
記憶部800は、ハードディスクやROM、RAM等の記憶装置で実現され、処理部700が車載装置60を統合的に制御するためのプログラムやデータ等を記憶しているとともに、処理部700の作業領域として用いられ、処理部700が各種プログラムに従って実行した演算結果や、操作部602や通信部608を介した入力データ等が一時的に格納される。第1実施形態では、記憶部800には、車載プログラム802と、地
図DB810と、走行情報812と、自動車の運転モードが手動運転モードであるか自動運転モードであるかを示す運転モード814と、走行予定経路情報816と、最新走行支援情報818と、走行支援情報の受信履歴820とが記憶される。
【0073】
走行情報812は、自動車の走行位置、走行速度および進行方向を含み、これらは、例えばGNSS受信部610による測位演算から算出することができる。
【0074】
[処理の流れ]
図12は、中央装置10における処理の流れを説明するフローチャートである。先ず、踏切タイムテーブル情報取得部202が、踏切制御システム40の踏切制御用中央装置42から踏切タイムテーブル情報70を取得したならば(ステップS1:YES)、踏切情報管理部204が、取得した踏切タイムテーブル情報70に基づき、信号変化情報、および、直近警報予測時刻情報を生成して、該当する踏切管理情報310を更新する(ステップS3)。
【0075】
続いて、踏切それぞれを対象とした繰り返し処理(ループA)を行う。すなわち、先ず、対象の踏切に対する過去直近のタイミング情報80および走行支援情報90の提供時刻から現在時刻までの経過時間が、所定の提供時間間隔に達しているかを判断する。提供時間間隔に達しているならば(ステップS5:YES)、タイミング情報提供部206が、対象の踏切の踏切管理情報310における信号変化情報317を含むタイミング情報80を生成し(ステップS7)、生成したタイミング情報80を、対象の踏切の補助信号機20の信号制御機24へ送信する(ステップS9)。また、走行支援情報提供部208が、対象の踏切の踏切管理情報310における直近警報予測時刻情報318を含む走行支援情報90を生成し(ステップS11)、生成した走行支援情報90を、対象の踏切の光ビーコン30の灯受光制御機34へ送信する(ステップS13)。ループAの繰り返し処理はこのように行われる。全ての踏切を対象としたループAの繰り返し処理を終了すると、ステップS1に戻り、同様の処理を行う。
【0076】
[作用効果]
第1実施形態によれば、踏切から所定距離離れた位置に設置された補助信号機20の信号表示によって、或いは、光ビーコン30を介した自動車への走行支援情報90の提供によって、踏切に接近する車両や歩行者などに対して当該踏切が警報中であるかどうかを当該踏切に辿り着く前に知らせることができる。補助信号機20は、赤信号表示によって踏切が警報中であることを知らせるとともに、赤信号表示の直前の黄信号表示によって警報の開始を予告することができる。また、自動車において、例えば、走行支援情報90に基づく車内表示を行うことで、自動車の運転手に直近の踏切警報予測時刻を知らせることができる。これにより、急がすに速度を落とした運転操作をするといった、踏切の直前横断を抑止するような自動車の運転者の運転操作を支援することができる。
【0077】
また、補助信号機20に提供されるタイミング情報80や自動車に提供される走行支援情報90は、踏切制御システム40から取得した情報に基づくものであることから、踏切の警報と同期した正確な内容の情報となる。具体的には、踏切制御システム40は高精度時刻計時機を備えているので、踏切制御システム40から取得する情報に含まれる時刻は、この高精度時刻情報に従った時刻である。補助信号機20および中央装置10においても同様に高精度時刻計時機能を備えている。このことから、各装置間で精確な時刻同期が図れることとなり、補助信号機20の信号表示は、踏切における警報に対して時間的にほぼ正確に一致したものとなる。
【0078】
なお、踏切制御システム40から取得する情報に含まれる踏切警報の開始予定時刻は、列車の走行位置に応じて適宜変更され得るが、列車は定時運行が原則であるため、変更される場合あっても、その変更は原則、遅くなる変更である。つまり、ある1回の踏切警報について算出された開始予測時刻は、遅くなるように変更されることはあっても早くなるように変更されることは原則ない。従って、例えば、中央装置10と踏切制御システム40との間の通信ネットワークN1や中央装置10と信号制御機24および投受光制御機34との間の通信ネットワークN3に何らかの通信途絶や通信遅延が生じた場合であっても、既に取得済みの情報を用いることは安全側であり、自動車の安全走行を妨げることはない。
【0079】
<第2実施形態>
上述した第1実施形態は、
図13に示す第2実施形態に変形して適用することも可能である。
図13は、第1実施形態のシステム構成を変形した第2実施形態における踏切制御システム40Bおよび踏切警報補助システム1Bを示す図である。
【0080】
図13に示すように、踏切制御システム40Bは、第1実施形態における踏切制御機44の替わりに踏切制御機44Bを備える。踏切制御機44Bは、踏切制御用中央装置42から受信した踏切制御情報に含まれる警報開始予測時刻および警報終了予測時刻や実際の踏切警報の開始時刻および終了時刻等を含む、踏切警報のタイミングを示すタイミング情報を、制御対象の踏切に対応して設置されている補助信号機20Bや光ビーコン30Bに出力する。
【0081】
踏切警報補助システム1Bは、第1実施形態における中央装置10を備えず、補助信号機20および光ビーコン30それぞれの替わりに補助信号機20Bおよび光ビーコン30Bを備えて構成される。
【0082】
補助信号機20Bは、第1実施形態における信号制御機24の替わりに信号制御機24Bを有する。信号制御機24Bは、対応する踏切の踏切制御機44Bから入力されるタイミング情報を用いて、第1実施形態と同様に、対応する踏切の警報に連動した信号表示を行うように信号灯器22の表示を制御する。具体的には、踏切警報の開始予測時刻から予告開始時刻を算出して予告開始時刻に達すると黄信号表示とし、踏切警報の開始予測時刻に達するか或いは踏切制御機44Bから踏切警報の開始信号が入力されると黄信号表示から赤信号表示に変化させ、更に、踏切警報の終了予測時刻に達するか或いは踏切制御機44Bから踏切警報の終了信号が入力されると赤信号表示から青信号表示に変化させる(
図3参照)。
【0083】
光ビーコン30Bは、第1実施形態における投受光制御機34の替わりに投受光制御機34Bを有する。投受光制御機34Bは、対応する踏切の踏切制御機44Bから入力される情報を用いて、対応する踏切の直近の警報に関する情報を、投受光器32から自動車に向けて送信させる。具体的には、投受光制御機34Bは、警報開始時刻から予告開始時刻を算出して次回の警報に関する直近警報予測時刻情報94を生成し、これを含めた走行支援情報90を生成する。そして、この走行支援情報90を、投受光器32から自動車に向けて送信させる。なお、投受光器32から自動車に向けて送信する走行支援情報90に含める直近警報予測時刻情報94に替えて、対応する踏切の次回の踏切警報の開始予測時刻としても良い。その場合、自動車が、受信した踏切警報の開始予測時刻から予告開始時刻を算出する。
【0084】
また、信号制御機24Bおよび投受光制御機34Bは、GNSS衛星Gからの衛星信号を受信するGNSS受信機を有し、受信したGNSS衛星信号に基づいて高精度時刻を計時する高精度時刻計時機能を備えている。これにより、各装置間で時刻同期用の特別な通信をすることなく、各装置の自律制御によって装置間の時刻同期を実現する。
【0085】
第2実施形態によれば、第1実施形態と同様に、踏切から所定距離離れた位置に設置された補助信号機20Bの信号表示によって、或いは、光ビーコン30Bを介した自動車への走行支援情報の提供によって、踏切に接近する車両や歩行者などに対して当該踏切が警報中であるかどうかを当該踏切に辿り着く前に知らせることができる。また、補助信号機20Bの信号表示や、光ビーコン30Bから送信される直近警報予測時刻情報は、対応する踏切の踏切制御機44Bから取得した情報に基づくものであることから、踏切の警報と同期した正確なものとなる。
【0086】
以上、2つの実施形態について説明したが、本発明の適用可能な実施形態は上述の実施形態に限定されることなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能なのは勿論である。
【符号の説明】
【0087】
1,1B…踏切警報補助システム
10…中央装置
200…処理部
202…踏切タイムテーブル情報取得部、204…踏切情報管理部
206…タイミング情報提供部、208…走行支援情報提供部
220…時計部
300…記憶部
302…踏切警報補助プログラム
310…踏切管理情報
20,20B…補助信号機、22…信号灯器、24,24B…信号制御機
30,30B…光ビーコン、32…投受光器、34,34B…投受光制御機
40…踏切制御システム
42…踏切制御用中央装置
44,44B…踏切制御機、46…踏切警報機、48…踏切しゃ断機
50…車上装置
60…車載装
700…処理部
702…走行経路設定部、704…走行支援情報受信部
706…走行支援表示制御部、720…時計部
800…記憶部
802…車載プログラム
810…地
図DB、812…走行情報、814…運転モード
816…走行予定経路情報、
818…最新走行支援情報、820…走行支援情報の受信履歴
62…自動車
70…踏切タイムテーブル情報
80…タイミング情報
90…走行支援情報、94…直近警報予測時刻情報
RC…踏切
N1,N2,N3…通信ネットワーク