(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-02-08
(45)【発行日】2022-02-17
(54)【発明の名称】ハイブリッド車両のための駆動システムおよびそのような駆動システムの動作方法
(51)【国際特許分類】
B60K 6/30 20071001AFI20220209BHJP
B60K 6/48 20071001ALI20220209BHJP
B60K 6/54 20071001ALI20220209BHJP
B60W 10/06 20060101ALI20220209BHJP
B60W 10/02 20060101ALI20220209BHJP
B60W 10/08 20060101ALI20220209BHJP
B60W 20/40 20160101ALI20220209BHJP
B60W 20/19 20160101ALI20220209BHJP
F16F 15/134 20060101ALI20220209BHJP
【FI】
B60K6/30
B60K6/48 ZHV
B60K6/54
B60W10/06 900
B60W10/02 900
B60W10/08 900
B60W20/40
B60W20/19
F16F15/134 A
(21)【出願番号】P 2018544242
(86)(22)【出願日】2017-02-21
(86)【国際出願番号】 EP2017053824
(87)【国際公開番号】W WO2017144425
(87)【国際公開日】2017-08-31
【審査請求日】2019-09-03
(31)【優先権主張番号】102016202828.6
(32)【優先日】2016-02-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】398037767
【氏名又は名称】バイエリシエ・モトーレンウエルケ・アクチエンゲゼルシヤフト
(74)【代理人】
【識別番号】100069556
【氏名又は名称】江崎 光史
(74)【代理人】
【識別番号】100111486
【氏名又は名称】鍛冶澤 實
(72)【発明者】
【氏名】ヘース・ベルンハルト
(72)【発明者】
【氏名】ユング・トーマス
(72)【発明者】
【氏名】コブラー・ゼバスティアン
【審査官】今井 貞雄
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-315673(JP,A)
【文献】特開2002-362197(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60K 6/20- 6/547
B60W 10/00-20/50
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ハイブリッド車両のための駆動システムであって、
駆動出力をハイブリッド車両の駆動可能な車輪に向かって供給するために構成されている内燃機関軸(14)を有する内燃機関(12)と、
駆動側に変速機入力軸(18)を有し、被駆動側に変速機出力軸(20)を有する車両変速機(16)と、
変速機入力軸(18)と変速機出力軸(20)とを連結または連結解除するための変速機クラッチ(22)と、
駆動出力の伝達に関して内燃機関軸(14)と変速機入力軸(18)との間に設けられている振動錘式駆動ユニット(24)と、
中間軸(26)と、
内燃機関軸(14)と中間軸(26)とを連結または連結解除するための第一のクラッチ(28)と、
中間軸(26)と変速機入力軸(18)とを連結または連結解除するための第二のクラッチ(30)と、
電気機械(32)であって、トルク伝達式に変速機入力軸(18)と接続されているとともに、電気機械によってモータ運転時に変速機入力軸(18)が駆動可能である電気機械と、を備え、
振動錘式駆動ユニットは駆動側のDU入力軸(56)と、被駆動側のDU出力軸(58)とを備える、ねじり振動低減装置を有し、ねじり振動低減装置(54)は中間軸(26)のねじり振動を低減するために構成されているハイブリッド車両のための駆動システムにおいて、
ねじり振動低減装置(54)は、駆動出力の伝達に関して、完全に第一のクラッチ(28)と第二のクラッチ(30)の間に設けられ、
電気的制御ユニット(38)を有し、当該電気的制御ユニット(38)は、
a)内燃機関(12)の停止の際、もしくはその停止状態において、第一のクラッチ(28)が開放され、
c)振動錘式駆動ユニット(24)が、接続された第二のクラッチ(30)を介するとともに電気機械(32)を用いて、少なくとも振動錘始動回転速度に加速されるか、または少なくとも振動錘始動回転速度に保持され、
d)アクティブな車両加速のための信号の電気的制御ユニット(38)への伝達により内燃機関の始動が必要になり、
e)続いて第二のクラッチ(30)が開放され、
f)続いて、第一のクラッチ(28)が接続され、それにより振動錘式駆動ユニット(24)と内燃機関軸(14)との角運動量の均衡化により、内燃機関が内燃機関始動回転速度に加速され、
g)内燃機関が内燃機関始動回転速度を起点として、燃料が供給される運転で稼動され、内燃機関目標回転速度に加速される
制御を行なうように構成されていることを特徴とするハイブリッド車両のための駆動システム。
【請求項2】
ねじり振動低減装置は、内燃機関に向いた一次側と、車両変速機に向いた二次側とを含むことを特徴とする請求項1に記載のハイブリッド車両のための駆動システム。
【請求項3】
ねじり振動を低減するために、DU入力軸がDU出力側に対してねじり可能であり、DU入力軸およびDU出力軸は、互いに同心に、かつ内燃機関軸に対して同心に設けられていることを特徴とする請求項1または2に記載のハイブリッド車両のための駆動システム。
【請求項4】
ねじり振動低減装置は、回転速度適応型制振器として形成されていることを特徴とする請求項1から3のいずれか一項に記載の駆動システム。
【請求項5】
回転速度適応型制振器は、回転速度を適応させるために遠心振り子を有するか、遠心振り子として形成されていることを特徴とする請求項4に記載の駆動システム。
【請求項6】
ねじり振動低減装置は、セミアクティブ型またはアクティブ型制振器として形成されていることを特徴とする請求項1から5のいずれか一項に記載のハイブリッド車両のための駆動システム。
【請求項7】
電気機械(32)は60Vより小さい動作電圧を有する低電圧電気機械であることを特徴とする請求項1から6のいずれか一項に記載の駆動システム。
【請求項8】
電気機械(32)は車両変速機(16)に組み込まれていることを特徴とする請求項1から7のいずれか一項に記載の駆動システム。
【請求項9】
車両変速機(16)は自動変速機として、または自動的に切り替え可能な車両変速機として形成されていることを特徴とする請求項1から8のいずれか一項に記載の駆動システム。
【請求項10】
車両変速機(16)は駆動側にベルハウジング(36)を有し、電気機械(32)は、ベルハウジング(36)に収容されていることを特徴とする請求項1から9のいずれか一項に記載の駆動システム。
【請求項11】
車載用電気系統(34)が設けられており、電気機械(32)は発電機としても動作可能であり、発電機運転において電気エネルギーを車載用電気系統(34)に供給することを特徴とする請求項1から10のいずれか一項に記載の駆動システム。
【請求項12】
請求項1から11のいずれか一項に記載の駆動システム(10)を動作させるための方法であって、この駆動システムが電気的制御ユニット(38)を有し、
a)駆動システム(10)の一の動作状態において、第一のクラッチ(28)が開放され、内燃機関(12)が停止されるか、もしくはすでに停止された状態にあるステップと、c)振動錘式駆動ユニット(24)が、接続された第二のクラッチ(30)を介するとともに電気機械(32)を用いて、少なくとも振動錘始動回転速度に加速されるか、または少なくとも振動錘始動回転速度に保持されるステップと、
d)電気的制御ユニット(38)に、アクティブな車両加速のための信号が伝えられ、それにより内燃機関を始動させることが必要となるステップと、
e)続いて第二のクラッチ(30)が電気的制御ユニット(38)により開放されるステップと、
f)続いて、第一のクラッチ(28)が接続され、それにより振動錘式駆動ユニット(24)と内燃機関軸(14)との角運動量の均衡化により、内燃機関が内燃機関始動回転速度に加速されるステップと、
g)内燃機関が内燃機関始動回転速度を起点として、燃料が供給される運転で稼動され、内燃機関目標回転速度に加速されるステップと、
を含む方法。
【請求項13】
内燃機関始動回転速度に到達した後
又は内燃機関目標回転速度に到達した後、第二のクラッチ(30)が接続され、変速機クラッチ(22)は接続されているか、接続され、それにより内燃機関軸(14)とハイブリッド車両の駆動可能な車輪との間で出力伝達もしくは力の流れが生み出されている、請求項12に記載の駆動システム(10)を動作させるための方法。
【請求項14】
方法のステップa)の直後に、かつ方法のステップc)の前に実施される方法のステップb)において、電気機械(32)は、変速機クラッチ(22)が完全に接続された状態で、または変速機クラッチが部分的に接続された状態で、ハイブリッド車両の駆動可能な車輪と力接続されており、それによりハイブリッド車両の駆動可能な車輪に正または負のトルクを提供する、請求項12または13に記載の駆動システム(10)を動作させるための方法。
【請求項15】
内燃機関の停止時および車両停止時または車両のクリープ速度において、変速機クラッチ(22)はステップb)の前にスリップ運転にされ、それにより電気機械(32)は、ハイブリッド車両の駆動可能な車輪と力接続されており、それによりハイブリッド車両の駆動可能な車輪に正または負のモーメントを供給すると同時に、第二のクラッチ(30)は接続されているか、または接続され、それにより電気機械(32)と振動錘式駆動ユニット(24)は互いに回転しないように力接続され、電気機械は振動錘始動回転速度に、またはそれを上回るように稼動され、振動錘始動回転速度は、変速機クラッチ(22)が完全に接続されているときに、車輪回転速度を介して実際の車両速度から生じる電気機械の回転速度よりも大きいことを特徴とする、請求項14に記載の駆動システム(10)を動作させるための方法。
【請求項16】
振動錘始動回転速度は1000回/minから1400回/minまでの領域内にあることを特徴とする請求項12から15のいずれか一項に記載の駆動システム(10)を動作させるための方法。
【請求項17】
振動錘始動回転速度は、車両の起動後、すでに車両停止時に電気機械(32)を介して調整されることを特徴とする請求項12から16のいずれか一項に記載の駆動システム(10)を動作させるための方法。
【請求項18】
振動錘始動回転速度は、車両停止から、電気機械(32)の正のモーメントをハイブリッド車両の駆動可能な車輪に対して最初に提供するのと同時に調整されることを特徴とする請求項12から16のいずれか一項に記載の駆動システム(10)を動作させるための方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はハイブリッド車両のための駆動システムと、そのような駆動システムを動作させるための方法とに関する。
【背景技術】
【0002】
ハイブリッド車両をエネルギー効率良く動作させるために、アクセルペダルを操作しないとき、すなわちハイブリッド車両の運転者が車両の積極的な加速を要求していないとき、内燃機関(駆動エンジン)に燃料を供給しながらパワートレインにおいて力接続((摩擦)力による接続)(駆動モータと駆動可能な車輪との間でトルクを伝達する接続)を解消し、それによりいわゆる「惰行」の運転状態に至る駆動システムが、従来技術からすでに知られている。さらに、アクセルペダル(これを用いてハイブリッド車両に対して運転者が加速の意向を設定できる。)を操作せず、かつパワートレインにおいて力接続が存在する状態で、内燃機関を停止することが知られており、それにより、任意選択的なブレーキレキュペレーション(Bremsrekuperation)を伴う内燃機関の機械的な牽引運転が行われる。
【0003】
特許文献1は、第一の駆動源としての内燃機関と、さらなる駆動源としての電気機械(電気モータ)と、異なる変速比(ギア)を提供するための車両変速機と、二つの分離クラッチとを備える車両のためのハイブリッド駆動部を開示し、内燃機関は走行中に好適な動作段階において、分離クラッチの開閉を介して周期的に連結解除、かつ再連結されるとともに、付加的に停止されることが可能で、内燃機関はフライホイールを有さずに形成されている。必要とされる振動錘(はずみ錘)は電気機械に配設されており、この振動錘は特に、少なくとも部分的に、電気機械の回転部に組み込まれている。内燃機関をフライホイールなしで形成することにより、内燃機関と電気機械の間で分離クラッチが接続解除されるとき、内燃機関はほとんど遅延することなく停止し、その後、回転する電気機械に再連結すると、内燃機関の質量が小さいために、概ね滑らかに再始動することができる。
【0004】
既知の従来技術から、内燃機関が停止されたハイブリッド車両の走行動作に関して、運転者が加速したいと思っていて、内燃機関を始動させる必要がある場合、内燃機関が始動状態になるとともに車両が実際に加速するまで、やや時間がかかることが明らかになっている。駆動システムのこのような挙動は、運転快適性に不利に働き、したがって運転者が不快と感じるおそれがある。
【0005】
さらに試験から、被駆動部、すなわちハイブリッド車両の駆動可能な車輪に接続されている電気機械に、内燃機関を再連結する場合、内燃機関の立ち上がり過程の際の内燃機関の圧縮抵抗が他のパワートレインに伝えられる可能性のあることが示され、これによりパワートレインの振動が生じることがあり、運転者はこの点も不快と感じかねない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、差し当たり内燃機関が停止されているときでも、運転者の加速の意向に対して、特に迅速な車両反応を可能にするハイブリッド車両のための駆動システムと、その駆動システムを動作させるための方法とを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の課題は本発明により、請求項1に記載の駆動システムと、このような駆動システムを動作させるための請求項10に記載の方法とによって解決される。
【0009】
駆動システムはハイブリッド車両のために用意されており、好ましくは内燃機関軸を有するとともに駆動を行い得る内燃機関と、好ましくは内燃機関軸に対して同軸に設けられた変速機入力軸を駆動側に有し、好ましくは内燃機関軸に対して同軸に設けられた変速機出力軸を被駆動側に有する切り替え可能な車両変速機とを有している。駆動システムはさらに好ましくは、変速機入力軸と変速機出力軸を連結または連結解除するための変速機クラッチを有する。
【0010】
この変速機クラッチは好ましくは、スリップ可能かつスリップ制御可能なクラッチとして形成されている。スリップ可能なクラッチとは特に、それを用いて、少なくとも選択された動作段階において、このクラッチによって連結すべき要素同士の間でスリップが可能にされたクラッチのことであり、このスリップは好ましくは制御可能である。このとき本発明の意味する連結または連結解除とは、クラッチによりトルク伝達式接続(トルクを伝達する接続)を成立させること、または解消することである。従来技術からこのようなクラッチの様々な構成型式が知られており、特に摩擦接続式クラッチ、流体式クラッチ、または摩擦/形状接続式クラッチである。ここでいう摩擦/形状接続式クラッチとは、クラッチの接続時にまず摩擦接続が生じさせられ、クラッチを完全に接続すると、トルクを伝達するための形状接続が生じるクラッチのことであり、このような原理は、例えば自動車製造におけるコーンシンクロから知られている。
【0011】
駆動システムは特に内燃機関を始動させるために、振動錘(はずみおもり)式駆動ユニットを有し、振動錘式駆動ユニットは軸方向において、内燃機関と車両変速機との間に設けられており、振動錘式駆動ユニットはさらに好ましくは、好適に内燃機関軸に対して同軸に設けられた中間軸を有する。
【0012】
振動錘式駆動ユニットは、駆動側のDU入力軸と、被駆動側のDU出力軸とを備える、ねじり振動低減装置を有し、ねじり振動低減装置は、特に中間軸のねじり振動を低減するために構成されている。ねじり振動低減装置は、内燃機関から駆動可能な車輪への駆動出力の伝達に関して、好ましくは完全に、第一のクラッチと第二のクラッチの間に設けられている。
【0013】
ねじり振動低減装置はこれにより、振動錘式駆動ユニット、およびそれとともに駆動システム全体の有効な振動錘として利用可能である。従来技術から既知である振動錘式駆動ユニットは、その動作原理のために、高い質量慣性モーメントを有する場合が多い。ねじり振動低減装置を、好ましくは完全に、第一のクラッチと第二のクラッチの間に設けることは上記の理由から有利である。そうすることにより、振動錘式駆動ユニットのいわゆる有効振動錘として設置される、さらなる付加的な振動錘が、好ましくはほとんどないか、好適に全くなく、または特に好ましくはほんの少しであるからである。特にパワートレインにおいてさらなる付加的な振動錘が設けられると、特にハイブリッド車両の加速段階で、さらなる付加的な振動錘を共に加速しなければならないため、このパワートレインのダイナミクスが損なわれると想定され、加えてこのような付加的な振動錘は特に、駆動システムの効率を低下させる恐れもある。特に、ねじり振動低減装置を、提案されるように完全に、第一のクラッチと第二のクラッチの間に設けることにより、動的な挙動が改善された駆動システムが得られる。
【0014】
ねじり振動低減装置は好ましくは、内燃機関に向いた一次側と、変速機に向いた二次側とを含む。
【0015】
好適な一実施形態において、ねじり振動低減装置は、回転速度適応型(ねじり)振動制振器として形成されており、回転速度に依存する制振器特性を提供(回転速度適応)するために、好ましくは遠心振り子を有するか、好適にこのような遠心振り子から成る。
【0016】
さらなる好適な実施形態において、ねじり振動低減装置は、セミアクティブ型またはアクティブ型制振器/吸振装置として形成されている。特にこのような装置は、アクティブまたはセミアクティブな要素を有するねじり振動低減装置のことであり、アクティブまたはセミアクティブな要素を用いて、このねじり振動低減装置の伝達特性に影響を及ぼすこと、またはねじり振動低減装置の伝達特性を制御することが可能であり、このアクティブまたはセミアクティブな要素は、好ましくは外部の制御コマンドにより制御可能である。このようなセミアクティブ型またはアクティブ型制振器は、従来技術から既知である。セミアクティブ型またはアクティブ型制振器は好ましくは、電気式、好適に空圧式、特に好適に油圧式の装置を有し、その装置を用いて、このねじり振動低減装置の伝達特性に対してアクティブまたはセミアクティブに影響を及ぼすことが可能である。
【0017】
アクティブ(能動型)/パッシブ(受動型)の分類に関しては、従来技術から少なくとも三種類の振動制振器が知られており、提案される駆動システムのためのねじり振動低減装置として基本的に使用可能である。
‐(通常の)パッシブ制振器、特にデュアルマスフライホイール
‐アクティブ制御型制振器、特に振動吸収のために必要とされるエネルギーが外部から供給される油圧システム
‐必要な場合に必要とされるエネルギーが特に弾性要素に貯蔵されているセミアクティブ型制振器(一定の閾値を超えて初めて、遮断および開放が行われる)
【0018】
駆動システムは特に、内燃機関軸と中間軸とを連結または連結解除するための第一のクラッチと、中間軸と変速機入力軸とを連結または連結解除するための第二のクラッチと、電気機械(電気モータ)とを有し、この電気機械は、好ましくは変速機入力軸上にあるか、或いは、好ましくは、特に出力伝達のためにねじり剛性を有して変速機入力軸と連結されているか又は選択的に変速機入力軸と連結可能である。特にこのような構成において変速機入力軸は、電気機械のモータ運転時に、電気機械によって直接的に、およびそれにより特にエネルギー効率良く駆動可能である。第一のクラッチの入力側(このクラッチの駆動側部分)は好ましくは直接的に、好ましくは回転不能ないしねじり剛性を有して、内燃機関軸と接続されている。
【0019】
駆動システムのこの構成は特に、内燃機関が停止されているときでも、運転者が車両加速を希望する場合(アクセルペダルの位置を介して設定可能)、極めて迅速な車両反応を生じさせ、内燃機関は車両加速のために、燃料が供給されない運転から燃料が供給される運転に移行させられ、ハイブリッド車両を駆動するために用いられる。車両をアクティブに加速するためにアクセルペダルを操作する際にも、電気機械は即座にモータ運転に切り替えられるとともに自動変速機に連結され、このようにして特に内燃機関なしで、電気機械の出力性能の範囲内で車両を加速すること(ゼロエミッション運転)が可能である。同時に振動錘式駆動ユニットを介して、停止された内燃機関の機械的始動(インパルススタート)が実現される。本発明の意味において内燃機関のインパルススタート(瞬時始動)とは、内燃機関軸が出力伝達のために振動錘式駆動ユニットに、特にねじり剛性を有して、または好ましくは相対回転しない(相対的な回転が拘束される)ように接続され、そのようにして回転する振動錘式駆動ユニットから出力(回転速度、トルク)が内燃機関軸に伝達されることであり、それにより内燃機関軸は始動回転速度に加速され、始動回転速度以降、内燃機関は燃料が供給される運転に移行され得る(内燃機関始動回転速度)。
【0020】
第一のクラッチは好ましくは、振動錘式駆動ユニットを用いて内燃機関を始動させるために形成されており、もしくは第一のクラッチは内燃機関を始動させるために閉じられる。第一のクラッチは好ましくは、第一のクラッチが開/閉の状態の間で、好ましくは開/閉の状態の間のみで、切り替えられるように形成されている。第一のクラッチは好ましくは、摩擦接続式クラッチとして、好適に形状接続式クラッチとして、特に好適に摩擦/形状接続式クラッチとして形成されている。第一のクラッチはさらに好ましくは、いわゆる「ノーマルオープン型」クラッチ(クラッチの非操作状態においてトルク伝達不能)として形成されており、好適にいわゆる「ノーマルクローズ型」クラッチ(クラッチの非操作状態において、クラッチによりトルク伝達可能)として形成されている。特に「ノーマルクローズ型」クラッチを用いると、トルク伝達式接続を維持するために、このクラッチ内で損失が発生しないので、特に効率的な駆動システムを提起することができる。
【0021】
第二のクラッチは好ましくは、振動錘式駆動ユニットから変速機入力軸に駆動出力を伝達するために形成されている。第二のクラッチは好ましくは、特により良い運転快適性を実現できるように、とりわけスリップ制御可能なクラッチとして形成されている。スリップ制御可能なクラッチは特に、クラッチの係合(開いた状態から閉じた(接続された)状態への移行)の際、スリップを制御することを可能にする。第二のクラッチは好ましくは、好適にシングルディスクまたはマルチディスク摩擦クラッチとして形成されている発進クラッチとして、または好適にロックアップクラッチを有するか、またはロックアップクラッチを有さない流体力学的トルクコンバータとして形成されている。第二のクラッチは好ましくは摩擦接続式クラッチとして、好適に摩擦/形状接続式クラッチとして形成されている。第二のクラッチはさらに好ましくは、いわゆる「ノーマルオープン型」クラッチとして形成され、好適にいわゆる「ノーマルクローズ型」クラッチとして形成されている。特に「ノーマルクローズ型」クラッチを用いると、トルク伝達式接続を維持するために、このクラッチ内に損失が発生しないので、特に効率的な駆動システムを提起することができる。
【0022】
内燃機関が始動された状態になり、ハイブリッド車両を加速するために用いることができるまでの期間は、駆動システムを制御する本提案方法によれば、電気機械によって橋渡しされるので、このような段階では電気的な車両加速が行われることになる。これにより駆動システムは、車両加速が内燃機関の始動後に初めて実施されるわけではないので、反応の緩慢さが低減し、それにより、快適に感じられる迅速な車両の反応が運転者に伝わる。
【0023】
好適な一実施形態において振動錘式駆動ユニットは、駆動側のDU入力軸と、被駆動側のDU出力軸とを備える、ねじり振動低減装置を有する。本発明の意味において、ねじり振動低減装置とは、特に内燃機関から内燃機関軸、およびそれとともに駆動システム自体へともたらされ得るねじり振動を低減するための装置のことである。ねじり振動低減装置は好ましくは、ねじり振動制振器またはねじり振動ダンパとして、またはこれら両方の装置の組み合わせとして形成されている。このようなねじり振動低減装置は様々な構成型式のものが従来技術から知られている。ねじり振動低減装置は好ましくは、以下の装置を含む装置のグループから選択されている。
‐シングルマスフライホイール、デュアルマスフライホイール、またはマルチマスフライホイール
‐ねじり振動制振器、好ましくは回転速度適応型制振器、さらに好ましくは遠心振り子を備えるねじり振動制振器
‐好ましくはねじり振動を低減するための制御可能な液圧要素または電気要素を備えるアクティブ型ねじり振動制振器/ねじり振動ダンパ
‐セミアクティブ型ねじり振動制振器/ねじり振動ダンパ
‐あるいは上記の装置の少なくとも二つを組み合わせたもの
【0024】
ねじり振動低減装置は特に、ねじり振動低減装置を用いて、中間軸のねじり振動が低減可能であるように設けられている。好ましくは少なくともDU入力軸またはDU出力軸は、相対回転しないように(ねじり強さを有して)、好ましくはねじり剛性を有して、中間軸と接続されている。さらに好ましくは、これらの軸(DU入力軸/DU出力軸)の少なくとも一つは、この中間軸として形成されている。ねじり振動低減装置は好ましくは、内燃機関からハイブリッド車両の駆動可能な車輪への駆動出力の伝達に関して、完全に第一のクラッチと第二のクラッチの間に設けられている。特にこの構成を用いて、ねじり振動低減装置の回転する質量全体が中間軸に集中し、それにより内燃機関の特に良好な始動が可能となるが、それは内燃機関の質量慣性が従来のシステムに比べて低減されていて振動錘式駆動ユニットの質量慣性が高められているからである。
【0025】
従来技術から知られているシステムでは、ねじり振動低減装置の少なくとも一部または全体、例えばデュアルマスフライホイールの一次側が、持続的に内燃機関軸と連結されている場合が多い。したがってこのような従来の構成では、ねじり振動低減装置のこの回転質量部分(デュアルマスフライホイールの一次側)を、内燃機関が停止から始動される際に加速する必要が生じ、したがってスタートプロセスは長くなる(質量慣性がより大きい)。さらに既知のシステムでは、内燃機関を始動させるために用いられる元々存在する振動錘(例えばデュアルマスフライホイールの二次側)に貯蔵可能な運動エネルギーは、内燃機関と連結された部分(デュアルマスフライホイールの一次側)がこの振動錘と共に回転しないために、比較的小さい。従来のシステムにおいて内燃機関を始動させるために用いられる振動錘が内燃機関始動のために十分な回転質量に達するようにするために、振動錘は付加的な錘により増加されてしまい、振動錘が増えることが全体として駆動システムをより緩慢にしてしまう。
【0026】
駆動システムの好適な一実施形態において、ねじり振動低減装置は、ねじり振動を低減するために、DU入力軸がDU出力側に対してねじり可能であるように形成されている。さらに好ましくはDU入力軸およびDU出力軸は、互いに同心に設けられている。好ましくはこれらの軸(DU入力軸/DU出力軸)の少なくとも一つは、内燃機関軸に対して同心に設けられており、あるいは好適に両方の軸は、内燃機関軸に対して同心に設けられている。特にこのような構成を用いて、駆動システムの特に簡単な構成が可能となる。
【0027】
好適な一実施形態において第一のクラッチの出力側は、中間軸と、あるいは好適にDU入力軸と持続的に相対回転しないように接続されている。さらに好ましくは、第二のクラッチの入力側は、中間軸と、あるいは好適にDU出力軸と持続的に相対回転しないように接続されている。振動錘式駆動ユニットは好ましくは、第一のクラッチの出力側、ねじり振動低減装置、中間軸、第二のクラッチの入力側、および振動錘を有し、振動錘式駆動ユニットは好ましくは、これらの構成要素から成る。振動錘式駆動ユニットは好ましくは、第一のクラッチの出力側、ねじり振動低減装置、中間軸、および第二のクラッチの入力側から成る。特にこのような構成により、スペース節約型の構成が実現可能である。特にねじり振動低減装置を、完全に振動錘式駆動ユニットに組み込むことにより、振動錘式駆動ユニットを用いて内燃機関を始動させるために必要なエネルギーの大部分は、すでにねじり振動低減装置の回転質量を用いて実現可能であり、したがって付加的な振動錘を設ける必要がないか、付加的な振動錘はほんの少しで済む。
【0028】
駆動システムの一実施形態によれば、電気機械は60Vより小さい動作電圧、特に定格動作電圧を有する低電圧電気機械であり、電気機械は好ましくは、比較的高い電圧レベル、いわゆるピーク出力/ピーク電圧で短時間動作可能である。低電圧電気機械として形成することにより技術的に、特に部分的に数百ボルトの電圧レベルを有する高電圧駆動に対して、より簡単に扱える低電圧駆動システムが実現可能である。これは特に、システムにおける電圧が比較的低いことにより、安全性リスクが小さくなり、それにより車載用電気系統の保護をより簡単かつ廉価に提供できるという点による。
【0029】
用いられる電気機械は好ましくは48V電気機械であるが、それは48V電気機械が従来の12V電気機械に比べて発電機運転時のレキュペレーションに際してもモータ運転においてもより大きな出力を提供し得るためである。特にハイブリッド車両を加速させるために電気機械を用いる際、(12ボルト電気機械に対して、48ボルト電気機械によって実現可能である)より大きな出力は、それによって達成可能なより迅速な車両反応が運転者にとって認知可能であるために、肯定的に察知され得る。
【0030】
電気機械は好適に、好ましくは少なくとも部分的に、または好適に完全に、車両変速機に組み込まれており、車両変速機は好ましくは自動変速機として、好適に手動で切り替え可能な車両変速機として、または特に好適に自動で切り替え可能な車両変速機として実施されている。電気機械は好ましくはステータと、このステータに対して回転可能なロータとを有する。ステータは好ましくは、車両変速機の変速機ハウジングに相対回転しないように接続されている。
【0031】
車両変速機は好ましくは駆動側にベルハウジングを有し、電気機械、少なくとも電気機械のステータは、ベルハウジングに収容されている。このとき電気機械は好ましくは、遊星歯車型の自動変速機ではベルハウジング内に通常設けられているトルクコンバータに替わるか或いはそれを補い、それにより付加的な組み立てスペースを必要とせずに、コンパクトに実施された電気機械が車両変速機に組み込まれる。これは特にコンパクトな駆動システムの構成につながる。
【0032】
駆動システムのさらなる実施形態において、車載用電気系統が設けられており、電気機械は発電機としても動作可能であり、電気機械は好ましくは電気機械式エネルギーコンバータとして形成され、電気機械式エネルギーコンバータは好ましくは、少なくとも発電機およびモータとして動作可能であり、特に好適にこの電気機械は、いわゆる多象限動作で、特に極めて好適に四象限動作で動作可能である。特に発電機運転において電気的出力は、電気機械から車載用電気系統に供給可能である。このようにして電気機械はレキュペレーションのために用いられ、レキュペレーションの際にハイブリッド車両の運動エネルギーは、電気エネルギーに変換され、電気エネルギーは好ましくは、電気化学的エネルギー貯蔵部、好ましくは蓄電池に貯蔵可能である。
【0033】
上記の課題は、請求項12に記載の方法によっても解決される。この方法は、上記の駆動システムを動作させるために用意され、コンピュータ実行可能な指令の形で制御機器に格納可能であり、好ましくは車両のために制御機器が設けられ、この制御機器にコンピュータ実行可能な指令の形でこの方法が記憶されている。この方法はさらに、以下のステップを有する:
a)駆動システムの一の動作状態において、第一のクラッチが開放されるか、または開放された状態に保持され、内燃機関は停止されるか、もしくはすでに停止された状態にあるステップ。
c)振動錘式駆動ユニットが、接続された第二のクラッチを介するとともに電気機械を用いて、少なくとも振動錘始動回転速度に加速されるか、または振動錘始動回転速度に、あるいはそれを上回るように保持されるステップ。
d)電気的制御ユニットに、アクティブな車両加速のための信号が伝えられ、それにより内燃機関を始動させることが必要となるステップ。
e)続いて第二のクラッチが電気的制御ユニットにより開放されるステップ。
f)続いてまたは同時に、第二のクラッチとオーバーラップして第一のクラッチが接続され、それにより振動錘式駆動ユニットと内燃機関軸との角運動量の均衡化により、内燃機関が内燃機関始動回転速度に加速されるステップ。
g)内燃機関が内燃機関始動回転速度を起点として、燃料が供給される運転で稼動され、内燃機関目標回転速度に加速されるステップ。
【0034】
特に内燃機関目標回転速度に到達した後、内燃機関は車両加速のために用いることができる。好ましくはさらなる好適な方法のステップにおいて、内燃機関始動回転速度に到達した後、特に内燃機関目標回転速度に到達した後、第二のクラッチが接続される。さらに好ましくは、変速機クラッチも少なくとも部分的に、または好ましくは完全に接続されているか、または接続され、それにより内燃機関とハイブリッド車両の駆動可能な車輪との力接続が作り出され、それにより出力(回転速度/トルク)が、内燃機関から駆動可能な車輪へ、あるいはその逆に伝達可能である。
【0035】
本発明の意味において、内燃機関目標回転速度とは、内燃機関軸の回転速度であって、ハイブリッド車両の走行状態から生じる内燃機関軸の回転速度、特にハイブリッド車両の走行速度と車両変速機において入れられたギア(変速比)とから得られる回転速度から生じる内燃機関軸の回転速度のことである。特に内燃機関目標回転速度は、制御機器によって設定可能な内燃機関軸の回転速度である。
【0036】
特に好適に、付加的に方法のステップb)が実施され、この方法のステップb)は好ましくは、上記において直接的に連続する二つのステップの間で実施され、好適に方法のステップb)は、方法のステップa)とc)の間で実施される。方法のステップb)において電気機械は、変速機クラッチが接続された状態で、好ましくは変速機クラッチが完全に接続された状態で、または好適に変速機クラッチが部分的に接続された状態で稼動され、変速機クラッチは部分的に接続された状態で、スリップしながら稼動される。このとき変速機クラッチは、変速機入力軸から後続のパワートレイン要素を介して、ハイブリッド車両の駆動可能な車輪へと出力伝達を行うように力の流れの中にある。特に駆動可能な車輪と力接続された状態で変速機クラッチをこのように制御することにより、ハイブリッド車両の駆動可能な車輪に正または負のトルクを供給することが可能となる。特に駆動システムのこのような制御により、ハイブリッド車両は純粋に電気的に運転され、すなわち特に内燃機関が連結解除された状態で駆動される。特にハイブリッド車両の加速の際に生じ得るような、比較的高い負荷要求であって、電気機械のみではもはやカバーされ得ない負荷要求があるとき、内燃機関は方法のステップc)および以下のステップ(ff)、好ましくはステップc)からe)を介して、特に迅速、かつまた快適に始動されるとともに、駆動システムに組み込まれる。こうして提案される方法により、運転者にとって、内燃機関の特に感知不能な始動が可能となる。
【0037】
好適に内燃機関の停止時および車両停止時またはクリープ速度において、すなわちハイブリッド車両を小さな速度で、特に50km/hより低い速度、好ましくは25km/hより低い速度、および好適に10km/hより低い速度、特に好適に5km/hより低い速度で運転する際、変速機クラッチはステップb)の前にスリップ動作にされ(変速機クラッチは部分的に接続される)、それにより電気機械は、ハイブリッド車両の駆動可能な車輪と力接続(トルク伝達)されており、それにより好ましくはハイブリッド車両の駆動可能な車輪に正または負のモーメントを供給する。第二のクラッチは、好ましくは同時に接続されているか、または好適に接続され、それにより電気機械と振動錘式駆動ユニットは互いに回転しないように接続されている。電気機械はこのような場合、好ましくは振動錘始動回転速度に、またはそれを上回るように稼動され、特にこのような場合、振動錘始動回転速度は、変速機クラッチが完全に接続されたときの電気機械の回転速度であって、駆動可能な車輪の車輪回転速度を介して実際の車両速度から生じる電気機械の回転速度よりも大きい。
【0038】
上記の過程/経過は特に、従来技術から知られている従来のパワートレインで、内燃機関式駆動部を備える車両のパワートレインを低速領域で動作させることに類似し、従来のパワートレインを低速領域内で動作させる際、内燃機関軸の回転速度(これは、内燃機関のアイドリング回転速度と同じ或いはそれを上回る必要がある。)は、駆動可能な車輪の車輪回転速度から生じる変速機入力軸の回転速度であって車両の走行速度と互いに関連する回転速度を依然として超えている。
【0039】
上記の方法を用いると特に、以下の有利点が生じる。すなわち、振動錘式駆動ユニットは、この低速領域(クリープ速度)においても回転速度に関して内燃機関のスタートプロセスが方法のステップc)からe)に応じて実施可能であるように調整することができ、内燃機関は、燃料が供給されない運転から燃料が供給される運転に移行するのに十分な回転速度、いわゆる内燃機関始動回転速度を有していれば、振動錘式駆動ユニットを用いて好適に始動することができる。内燃機関始動回転速度は、特に内燃機関の構成型式に依存する値であり、これは設定可能である。
【0040】
振動錘始動回転速度は好ましくは500回転/分(回/min)よりも大きく、好ましくは750回/minよりも大きく、好適に1000回/min以上である領域にあり、さらにこの領域は2000回/minより小さく、好ましくは1600回/minより小さく、好適にこの領域は1400回/min以下である。
【0041】
振動錘始動回転速度は好ましくは、予め車両の起動後に、特に、スタートプロセスが目前に迫っているのを認識した後に、車両が停止している状態で電気機械を介して設定される。
【0042】
好ましくはハイブリッド車両を、車両停止から立ち上げる際、ハイブリッド車両を駆動するために電気機械の正の駆動トルクを提供するのと同時に、好ましくはハイブリッド車両の駆動可能な車輪に電気機械の正の駆動トルクを最初に提供する際に、振動錘始動回転速度を電気機械によって設定することは、特にエネルギーの観点から有利であり得る。
【0043】
特にこの方法により、内燃機関を停止した状態、すなわち内燃機関に燃料を供給せず、連結解除した状態で、アクティブな車両加速を希望する場合、その加速の意向に対してパワートレインの迅速な反応が可能となる。加速の意向は一方で直接的に電気機械によって対処され(正の駆動モーメントが提供される。)、同時に内燃機関が(振動錘式駆動ユニットを用いて)始動され、それにより短時間で内燃機関が、ハイブリッド車両を加速するために付加的に用いられ得る。
【0044】
駆動システムに対して特に、少なくとも五つの運転モードが記載され、これらは上記の動作方法に対して好ましくは付加的に、または好適に代替的に実施可能であり、特に上記の動作方法と組み合わせて実施可能である。これらの五つの運転モードは以下の通りである:
モード1:内燃機関の初始動
モード2:電気的クリープ運転時の低速領域内での運転
モード3:内燃機関の停止
モード4:車両停止時または走行中の内燃機関の始動もしくは再始動(内燃機関は停止された状態)
モード5:内燃機関を停止した状態での走行運転、すなわちエンジンオフ滑走、エンジンオフレキュペレーション、電気機械によるトルク提供を伴うエンジンオフE走行
【0045】
以下においてこれらの運転モードをより詳しく説明する。
【0046】
モード1:初始動
この運転状態は特に、内燃機関が停止されている(燃料を供給されない運転、内燃機関軸は静止)ことを特徴とし、さしあたり振動錘式駆動ユニット内に運動エネルギーは貯蔵されておらず、したがって中間軸は静止している。
【0047】
モード1において駆動システムは、以下のステップを有する方法によって制御可能である。
-変速機クラッチを開放する、または開放された状態に保持するステップ。
-第二のクラッチを接続する、または接続された状態に保持するステップ。
-第一のクラッチを開放する、または開放された状態に保持するステップ。
-電気機械を用いてねじり振動低減装置を内燃機関の始動のために必要な回転速度に加速するステップ(振動錘始動回転速度)。
-振動錘始動回転速度に到達後、第一のクラッチを接続するステップ。
-内燃機関を燃料が供給される運転にするステップ。
【0048】
内燃機関はこのスタートプロセスにおいて、特に回転する振動錘式駆動ユニットと、好ましくは電気機械のトルクとに由来する、合計始動モーメントを用いて始動される。内燃機関のこのいわゆる初始動は好ましくは、始動スイッチまたは好適に点火スイッチを操作することにより開始される。
【0049】
モード1によるこのような始動方法により、付加的な始動装置(例えばピニオン式スタータ)なしで、大きな始動トルクを有する内燃機関の有利なコールドスタートを提起することができる。
【0050】
本発明の好適な一実施形態において、始動装置、特にいわゆる点火スイッチまたは始動スイッチを操作することに先立って、振動錘式駆動ユニットおよびそれとともにねじり振動低減装置の回転速度は、完全にまたは部分的に振動錘始動回転速度へと上げられる。特に内燃機関の本来のスタートプロセスに対して、振動錘式駆動ユニットの回転速度を上げることをこのように時系列的に先行させること(スタートプロセスの予測)により、内燃機関の初始動は特に迅速に進行し得る。振動錘式駆動ユニットの回転速度を上げることは、好ましくは接近検知、いわゆる無線キーを介して、あるいは好適に車両ドア開放の検知を介して、あるいは特に好適に着座検知を介して開始される。分かりやすく言えば、車両運転者がハイブリッド車両内の運転席に着くか、あるいはハイブリッド車両のドア、特に運転席ドアが開けられるやいなや、車両は始動準備態勢に置かれる(電気機械を用いて振動錘式駆動ユニットの回転速度を上げる)。
【0051】
モード2:低速領域内での運転(電気的クリープ運転)
この運転モードは特に、内燃機関が停止されており、ハイブリッド車両が低速領域からの速度で、駆動出力を準備しながら電気機械によって動かされることを特徴とする。本発明の意味において低速領域とは、速度が75km/hより低い、好ましくは50km/hより低い、特に好ましくは15km/hより低い速度領域のことである。
【0052】
モード2において駆動システムは、以下のステップを有する方法によって制御可能である。
-第一のクラッチを開放する、または開放された状態に保持するステップ。
-第二のクラッチを接続する、または接続された状態に保持し、それにより振動錘式駆動ユニットと電気機械が、互いに回転しないように接続されているステップ。
-電気機械が、ハイブリッド車両を停止から始動させるために、接続された第二のクラッチを介して変速機入力軸に駆動出力を提供するステップ。
【0053】
モード2の好適な一実施形態において、方法は以下のステップを有する。
-変速機クラッチを部分的に開放し、それにより変速機入力軸と変速機出力軸との間でスリップが可能となるステップ。
-移行段階の間に電気機械の回転速度、およびそれとともに振動錘式駆動ユニットの回転速度を振動錘始動回転速度に増大させるステップであって、ここでいう移行段階とは5秒より短い、好ましくは2秒より短い期間のことであり、移行段階は好適に多くとも1秒であり、あるいはそれより短い。
【0054】
変速機クラッチにおけるスリップにより特に、変速機入力軸の回転速度と変速機出力軸の回転速度の間の回転速度差を、変速機入力軸と変速機出力軸の間の変速比(車両変速機の実際に入れられているギア)を考慮しながら、変速機クラッチにおいて解消することが可能となる。このいわゆる回転速度差解消は、変速機出力軸が固定式変速比を介してハイブリッド車両の少なくとも一つの駆動可能な車輪と連結されており、通常は車両速度に比例するこの回転速度が、入れられているギアの変速比で変速機入力軸に伝達されることから生じる。スリップ制御可能な変速機クラッチにより、変速機入力軸およびそれとともに振動錘式駆動ユニットを、変速機出力軸からほぼ独立して動作させることが可能となる。
【0055】
移行段階中に、内燃機関を始動させるための始動要求が特に加速要求/アクセルペダル位置を通して来た場合、振動錘式駆動ユニットと電気機械とからなるいわゆるコンビ始動を実施することが可能とされ、コンビ始動ではこれらの両方(電気機械、振動錘式駆動ユニット)から内燃機関軸に出力が供給され、内燃機関軸を内燃機関始動回転速度へと加速する。このようなコンビ始動に対して変速機クラッチは、好ましくは部分的または完全に開放される。
【0056】
モード3 内燃機関の停止
この運転モードは特に、内燃機関が燃料を供給される運転から停止に移行される、すなわち停止されることを特徴とする。
【0057】
モード3において駆動システムは、以下のステップを有する方法によって制御可能である。
-第一のクラッチを開放し、または開放を保持し、好ましくは同時に内燃機関を、特に内燃機関の燃焼室への燃料噴射を止めることにより停止させるステップ。
-特に、ねじり振動低減装置が完全に第一のクラッチと第二のクラッチの間に設けられており、それにより第一のクラッチの開放後は、もはや内燃機関軸に連結されていないことにより、慣性モーメント(回転質量)が、従来技術から知られている内燃機関に比べて低減されており、内燃機関の停止後、短時間でも内燃機関軸が停止し、それによりハイブリッド車両の快適性が高められているステップ。
【0058】
モード4 内燃機関の始動(停止から、もしくは電気的運転から)
この運転モード(モード4)は特に、内燃機関が停止されており、ハイブリッド車両は電気機械を用いて駆動されるか、あるいは車両はさしあたり停止状態にあることを特徴とする。
【0059】
モード4において駆動システムは、この電気的走行運転のために以下のステップを有する方法によって制御可能である。
-第一のクラッチが開放され、または開放された状態に保持されるステップ。
-第二のクラッチが接続され、または接続された状態に保持され、それにより振動錘式駆動ユニットと電気機械が、互いに回転しないように接続されているステップ。
-変速機クラッチが接続され、または接続された状態に保持され、特に車両が低速のとき、すなわち低速領域からの速度において、変速機クラッチが部分的に接続された状態でスリップを有して動作され、それにより電気機械によってハイブリッド車両を駆動するためのトルクを提供可能であると同時に、振動錘式駆動ユニットを駆動可能であるステップ。
-内燃機関に対して始動要求があり、特に内燃機関が、車載用電気系統に供給を行う目的で電気機械を発電機運転で駆動するために、あるいは要求された加速が電気機械のみでは達成できないために、まず振動錘式駆動ユニットが、第二のクラッチを開放することにより、変速機入力軸から連結解除され、それにより電気機械が、駆動を行うための電気機械の全出力を変速機入力軸に供給できるステップ。
-好ましくは先行するステップと同時に、または好適に先行するステップに遅延して、その後第一のクラッチが接続され、それにより内燃機関軸が振動錘式駆動ユニットにより、内燃機関始動回転速度に加速され、内燃機関は燃料が供給される運転に移行されるステップ。
【0060】
内燃機関は好ましくは、第一のクラッチが開放された状態で、内燃機関軸の回転速度が振動錘式駆動ユニットの回転速度と一致するまで加速を行う。この方法により特に、加速の際に快適に内燃機関に切り替えることが可能となる。
【0061】
さらに好ましくは内燃機関軸と振動錘式駆動ユニット、およびそれとともに変速機入力軸との間で同一の回転速度が達成された後、第二のクラッチが接続され、これは特に、内燃機関において回転速度制御がアクティブである間に行われる。
【0062】
好ましくは第二のクラッチの接続後、内燃機関により、内燃機関軸から変速機入力軸に駆動トルクを供給可能であり、それによりハイブリッド車両は内燃機関を用いてさらに加速可能である。
【0063】
モード5 エンジンオフレキュペレーション、エンジンオフ滑走、エンジンオフE走行
この運転モード(モード5)は特に、内燃機関が停止されており、ハイブリッド車両が動いており、電気機械は、発電機運転で稼動される(レキュペレーション)か、電流が流れない状態で一緒に回転する(滑走)か、あるいはハイブリッド車両を駆動するために用いられる(E走行)。
【0064】
モード5において駆動システムは、エネルギー回収(レキュペレーション)のために以下のステップを有する方法によって制御可能である。
-変速機クラッチが少なくとも部分的に、または好ましくは完全に接続され、あるいは接続された状態に保持されるステップ。
-第一のクラッチが開放され、または開放された状態に保持されるステップ。
-第二のクラッチが接続され、または接続された状態に保持されるステップ。
-振動錘式駆動ユニットが、上記の連結(第二のクラッチが接続されている)に基づいて、変速機入力軸の回転速度で回転するステップ。
-加速も減速もアクティブに行われないハイブリッド車両の走行状態(車両ブレーキの操作もないし、口語的にガスペダルないし速度調節装置と称されるアクセルペダルの操作もない。)において、電気機械が制御され、それにより電気機械は変速機入力軸に、変速機入力軸の実際の回転方向と逆方向に作用するトルク(負のトルク)を及ぼし、それにより電気機械を用いて、車載用電気系統に供給可能である電気的出力(電圧、電流)を供給可能であるステップ。
【0065】
特にモード5の運転モードでハイブリッド車両を運転することにより、特に簡単な方法で、エネルギー回収が可能となる。
【0066】
以下に駆動システムの制御の個々の関連と、駆動システムの作用の仕方をより詳しく説明する。
【0067】
駆動システムの一の動作状態において、振動錘式駆動ユニットは電気機械から連結解除され(第二のクラッチ開放)、内燃機関と連結されており(第一のクラッチ接続)、それにより内燃機関の機械的インパルススタートを実施する。内燃機関がこの動作状態において始動される間、電気機械はすでに車両変速機と、特に車両変速機の変速機出力軸と連結されており(変速機クラッチは少なくとも部分的に、または完全に接続されている)、それによりハイブリッド車両は加速可能となる。運転者の加速の意向はこのように有利な方法で、内燃機関の始動の前に、および特に第一のクラッチ、第二のクラッチ、変速機クラッチ、および変速機入力軸を介して内燃機関軸を変速機出力軸に連結する前にすでに、電気機械を介して実現される。
【0068】
第一のクラッチの接続後、内燃機関は好ましくは上記のステップd)以降、振動錘式駆動ユニットによって始動される。振動錘式駆動ユニットはエネルギー貯蔵部を形成し、特に振動錘式駆動ユニットの回転する振動錘を介して、内燃機関が始動可能であるように実施されている。ハイブリッド車両の走行運転時、振動錘式駆動ユニットの振動錘は、好ましくは常に、内燃機関を始動させるために必要な最小回転速度、特に振動錘始動回転速度を上回るように保持され、さらに好ましくは少なくとも時々、振動錘式駆動ユニットの回転速度をこの最小回転速度を超えて増大させることができ、この増大は好ましくは、振動錘式駆動ユニットを電気機械によって駆動することによって実現可能である。
【0069】
この最小回転速度は本発明の意味において、内燃機関を始動させるために必要であるエネルギー量に関連して決定されている。このエネルギー量は特に、内燃機関を停止状態から、内燃機関の始動回転速度(内燃機関始動回転速度)まで加速するのに必要なエネルギーに相当する。好ましくは振動錘式駆動ユニットの回転速度を少なくとも時々、この最小回転速度を超えて著しく増大させることが行われる。ここで言う著しい増大とは好ましくは、振動錘式駆動ユニットの回転速度を最小回転速度の1.5倍またはそれ以上、好適に2倍またはそれ以上、特に好適に5倍またはそれ以上に増大させることである。特に振動錘式駆動ユニットの回転速度を増大させることにより、内燃機関の確実な始動が可能となる一方、振動錘式駆動ユニットからのエネルギーがハイブリッド車両を加速するために用いられ得る。
【0070】
変速機出力軸は好ましくは、変速機クラッチの接続後、好ましくは変速機クラッチの少なくとも部分的または好適に完全な接続後、特にステップd)において、または好ましくはステップd)以降、電気機械によって駆動可能であり、また、変速機出力軸は好ましくは、ステップd)において、または好ましくはステップd)以降、少なくとも時々、電気機械によって駆動される。このようにして特に運転者の加速の意向を検知した後、わずかな手間で、対応する車両反応、すなわち内燃機関による車両の加速が行われ、この車両加速は、運転者の加速の意向に対する反応として、特に即座に行われる。
【0071】
方法の好適な一実施形態によれば、内燃機関の始動後、第二のクラッチは後続の方法のステップにおいて再び接続される。特に第二のクラッチの接続により、この時点で追加で始動された内燃機関が車両変速機、特に車両変速機の変速機入力軸と相対回転しないように接続され、ハイブリッド車両を所望の方法で加速できる。
【0072】
方法の好適な一実施形態によれば、変速機クラッチはステップb)の前に接続され、電気機械は発電機運転に切り替えられる。特にこれにより、車両は特にエネルギー節約型の運転状態を取り、この運転状態は「レキュペレーションを伴うエンジンオフ滑走」(モード5)とも称される。この運転状態において走行するハイブリッド車両は、内燃機関が停止された状態で(燃料が供給されない運転、内燃機関軸は停止)、専ら不可避的な摩擦効果と、発電機運転時に生じる調節可能な電気機械の抵抗とだけで減速される。
【0073】
本発明のさらなる特徴および優れた点は、以下に図面を参照しながら行われる、好適な実施形態の詳細な説明に記載されている。
【図面の簡単な説明】
【0074】
【
図1】本発明に係るハイブリッド車両のための駆動システムの概略図である。
【
図2】車両速度と、内燃機関および振動錘式駆動ユニットの回転速度を、時間に対してプロットしたグラフを示す図である。
【
図3】車両速度と、内燃機関および振動錘式駆動ユニットの回転速度を、時間に対してプロットしたさらなるグラフを示す図である。
【
図4】車両速度と、内燃機関および振動錘式駆動ユニットの回転速度を、時間に対してプロットしたさらなるグラフを示す図である。
【
図5】車両速度と、内燃機関および振動錘式駆動ユニットの回転速度を、時間に対してプロットしたさらなるグラフを示す図である。
【
図6】本発明に係るハイブリッド車両のための駆動システムのさらなる概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0075】
図1は、ハイブリッド車両のための駆動システム10であって、内燃機関軸14を有するとともにその駆動を行い得る内燃機関12と、内燃機関軸14に対して同軸に設けられた変速機入力軸18を駆動側に有するとともに内燃機関軸14に対して同軸に設けられた変速機出力軸20を被駆動側に有する自動変速機16と、変速機入力軸18と変速機出力軸20とを連結または連結解除するための変速機クラッチ22とを備える駆動システムを示している。駆動システム10はさらに、振動錘式駆動ユニット24であって、軸方向において内燃機関12と自動変速機16との間に設けられていて内燃機関軸14に対して同軸に設けられた中間軸26上に位置する振動錘式駆動ユニット24と、内燃機関軸14と中間軸26とを連結または連結解除するための第一のクラッチ28と、中間軸26と変速機入力軸18とを連結または連結解除するための第二のクラッチ30と、変速機入力軸18上に位置する電気機械32であって、電気機械32のモータ運転時に変速機入力軸を駆動し得る電気機械と、を有する。
【0076】
振動錘式駆動ユニット24は、
図1によれば、例示的にデュアルマスフライホイールとして実施されており、フライホイールはエネルギー貯蔵部を形成する。振動錘式駆動ユニット24の具体的な構成に関わらず、振動錘式駆動ユニットの振動錘は第一のクラッチ28と共に、車両の停止時または走行時に、停止された内燃機関12の機械的なインパルススタート(即時始動)を可能にする。したがって内燃機関12のための電気的な始動装置は省略することができる。
【0077】
図1によれば、さらに車載用電気系統34が備えられており、電気機械32は発電機としても形成されており、発電機運転において電気エネルギーを車載用電気系統34に供給する。
【0078】
本実施形態において、動作電圧が60Vより小さい低電圧車載用電気系統34のみが設けられている。これに応じて電気機械32も低電圧電気機械、特に48V電気機械である。低電圧電気機械32を備える低電圧車載用電気系統34として形成することにより、駆動システム10のコストは低減されるが、それはシステム内の電圧が比較的低いために、安全性リスクが小さくなり、車載用電気系統34の保護をより簡単かつ廉価に提供できるためである。
【0079】
48V電気機械32を使用すると、従来の12V電気機械に比べて性能が向上するという有利点がある。これは、ハイブリッド車両を加速させるために電気機械32がモータ運転で用いられるときに特にはっきりするが、電気機械32が発電機運転時に電気エネルギーを生じさせるとともに車載用電気系統34に供給を行うレキュペレーションの際も同様である。
【0080】
電気機械32は、
図1では駆動システム10の自動変速機16に組み込まれている。特に概略的に示されているのは、自動変速機16が駆動側にベルハウジング36を有する点であり、電気機械32はベルハウジング36に収容されており、ベルハウジング内に通常備えられるトルクコンバータの代わりになっている。
【0081】
図1によればさらに、内燃機関12、電気機械32、および自動変速機16として形成されたハイブリッド車両変速機を制御するための電気的制御ユニット38が設けられている。電気的制御ユニット38はさらに、第一のクラッチ28を操作するためのアクチュエータ40、第二のクラッチ30を操作するためのアクチュエータ42、および変速機クラッチ22を操作するためのアクチュエータ44と接続されている。さらに
図1ではアクセルペダル46が概略的に示されており、アクセルペダルを操作することにより、ハイブリッド車両の運転者はアクティブな加速の意向を表明し、電気的制御ユニット38はアクセルペダル46の操作を検知することができる。
【0082】
電気的制御ユニット38は、電気機械32にも車載用電気系統34にも接続されており、電気機械32を例えばモータ運転から発電機運転へ、あるいはその逆に切り替えることができる。
【0083】
以下において
図2および
図3に基づき、ハイブリッド車両のための上記の駆動システム10を動作させるための方法の変形例について詳細に述べる。
【0084】
図2および
図3はそれぞれ、車両速度48と、内燃機関12の回転速度50と、振動錘式駆動ユニット24の回転速度を52とが、時間tに対してプロットされているグラフを示し、グラフはそれぞれ、期間1から7に分割されている。
【0085】
図2によれば期間1において、ハイブリッド車両が内燃機関12によって駆動され、したがって変速機クラッチ22も、第一のクラッチ28および第二のクラッチ30も接続されている駆動システム10の動作状態が表示されている。図に示す実施の変形例では期間1において、内燃機関12の駆動によって摩擦の影響のみが補われ、それにより車両速度48は概ね一定に保たれる。これに応じて内燃機関12および振動錘式駆動ユニット24の回転速度50,52は、この期間1において同じく一定の推移を有し、第一のクラッチ28が接続されているために、特に同一である。
【0086】
電気的制御ユニット38が、エネルギー節約型の運転モードへ変更するための前提条件が与えられていることを認識するやいなや、第一の方法のステップa)において、第一のクラッチ28が開放されるとともに、内燃機関12が停止される。「エンジンオフ滑走」とも称されるこの運転状態のために、アクセルペダル46は非操作状態でなくてはならない。さらに車両速度48は、好適に所定の速度閾値よりも上にあり、所定の速度閾値は理想的には、所定の速度閾値から得られる振動錘式駆動ユニット24の回転速度もしくは振動錘式駆動ユニット24に貯蔵されたエネルギーが、内燃機関12を始動させるのに十分であるように選択されている。
【0087】
電気的制御ユニット38は、上記の前提条件とは別に、「エンジンオフ滑走」の運転状態への切り替えを妨げるさらなる信号を受信することができる。このような信号は例えば、エンジン冷却回路内の冷却媒体温度が低すぎること、バッテリーの充電レベルが低いこと、車線の長手方向の傾斜が大き過ぎること、あるいはスポーツモードでの走行などの特殊装備が活性化されることによって生成され得る。
【0088】
しかしながらエネルギー節約型の運転モードのための全ての前提条件が満たされているとき、内燃機関12は停止され、すなわちスイッチオフされ、第一のクラッチ28が開放されることによりパワートレインから分離される。これに応じて内燃機関12の回転速度50は期間2において急速にゼロに低下する。
【0089】
期間3において変速機クラッチ22と第二のクラッチ30は接続されており、それによりハイブリッド車両は概ねそのまま進行し、専ら摩擦損失により減速される。
【0090】
振動錘式駆動ユニット24の回転速度52が所定の最小回転速度を下回って低下しないように、振動錘式駆動ユニット24は期間4において電気機械32によって駆動することができる。そのために変速機クラッチ22が開放されるとともに、電気機械32はモータ運転に切り替えられる。このときハイブリッド車両はさらに概ねそのまま進行し、摩擦損失は依然として車両速度48を低下させる。
【0091】
これに対して電気機械32は、振動錘式駆動ユニット24の振動錘をアクティブに駆動し、少なくとも振動錘式駆動ユニット24にエネルギーが維持される役割をする。言い換えれば電気機械32は、振動錘式駆動ユニット24の振動錘を、停止された内燃機関12の機械的なインパルススタートのために十分である、最小回転速度を上回るように保つ。
【0092】
期間4の終わりに、方法のステップb)において、電気的制御ユニット38に対して、例えば運転者がアクセルペダル46を操作することにより、アクティブな車両加速のための信号が伝えられる。
【0093】
続いて方法のステップc)により、第二のクラッチ30が電気的制御ユニット38によって開放され、それにより電気機械32と振動錘式駆動ユニット24は連結解除されている。
【0094】
続いて方法のステップd)において、第一のクラッチ28が接続される。同時に変速機クラッチ22も接続され(または接続された状態に保たれ)、それにより電気機械32は、変速機出力軸20に相対回転しないように接続されている。
【0095】
第一のクラッチ28の接続により期間5において、内燃機関12の回転速度50と、振動錘式駆動ユニット24の回転速度52とは迅速に均一になり、内燃機関12は振動錘式駆動ユニット24により、機械的インパルススタートを用いて始動される。
【0096】
さらに変速機出力軸20は、方法のステップd)において変速機クラッチ22の接続後、電気機械32によって駆動される。したがって期間5では、すでに運転者によってアクセルペダル46が操作された直後に、電気機械32によって生じさせられる車両加速が行われる。これは
図2の期間5においてすでに上昇している車両速度48から明らかである。
【0097】
方法のステップd)における内燃機関12の始動後、第二のクラッチ30は続く方法のステップe)において再び接続され(期間6)、電気機械32はさらに車両加速に寄与する。
【0098】
始動され、かつ燃料が供給される内燃機関12は、期間7の始めにおいて、接続された第一のクラッチ28、接続された第二のクラッチ30、および接続された変速機クラッチ22を介して、変速機出力軸20に相対回転しないように接続されており、ハイブリッド車両を所望のやり方で加速することができる。これにより期間7において、車両速度48も、内燃機関12および振動錘式駆動ユニット24の回転速度50,52も上昇する。
【0099】
電気機械32の出力が限られているために、期間5および6における車両加速は、期間7において内燃機関12によって提供される車両加速よりも小さい。それでも運転者はすでに期間5および6において、すなわち運転者がアクセルペダル46を操作した直後に、感知可能な車両加速の形で所望の車両レスポンスを得ている。駆動システム10は、このように反応の緩慢さが低減し、運転者がより良い運転感覚を得るようにする。
【0100】
図3は
図2と同じく、ハイブリッド車両のための上記の駆動システム10を動作させるための方法の変形例を表示している。
【0101】
図3に示す方法の変形例が、
図2による方法の変形例と異なるのは、方法のステップb)において、アクティブな車両加速のための信号に先立って、変速機クラッチ22が接続され(あるいは接続された状態に保持され)、電気機械32が発電機運転に切り替えられる点のみである。言い換えれば、期間3および4において、レキュペレーション、すなわち発電機運転状態にある電気機械32によって、車両の運動エネルギーを電気エネルギーに変換することが行われている。
【0102】
発電機運転時の電気機械32の抵抗により、比較的大きな車両遅延が生じ、それにより
図3に示す期間3および4における車両速度48は、
図2に示す期間3および4における車両速度48よりも大きく減少する。
【0103】
電気機械32は、
図3に示す期間4において発電機運転状態にあるので、振動錘式駆動ユニット24を駆動できない。
【0104】
この場合、振動錘式駆動ユニット24の回転速度52が設定された最小回転速度を下回るように減少することは、自動変速機16のギアシフトストラテジーにより防止される。振動錘式駆動ユニット24の最小回転速度に到達すると、自動変速機16をより低いギアにダウンシフトすることにより、変速機入力軸18の回転速度と、接続された第二のクラッチ30を介して中間軸26の回転速度およびそれとともに振動錘式駆動ユニット24の回転速度52も急激に増大する(
図3の期間3および4の移行領域を参照)。これにより回転速度52もしくは振動錘式駆動ユニット24内に貯蔵されたエネルギーが、内燃機関12の機械的インパルススタートを実施するのに十分であることが保証される。
【0105】
以下においてエンジンオフ滑走(内燃機関は停止され、内燃機関軸14は静止しており、車両は移動し、車両ブレーキ装置は働いていない)のための方法を、
図4に基づいて実証的に説明する。四角の中に記載された数字1から6は個々の時間的段階1から6を表している。走行中(車両速度48は一定、段階1)、振動錘式駆動ユニットの回転速度52と、内燃機関軸の回転速度50は同期しており、つまり、これらは第一のクラッチが接続されているために同一の回転速度で回転する。
【0106】
エンジンオフ滑走のためにハイブリッド車両は滑走状態にあり、そのために特にアクセルペダルから足が外され、車両の速度48は設定可能な速度閾値を上回り、この速度閾値は好ましくは30km/hまたはそれより大きく、好適に50km/hまたはそれより大きく、特に好適に80km/hまたはそれより大きい。
【0107】
段階2において内燃機関は切られ、すなわち内燃機関が停止され、そのために第一のクラッチは開放され、内燃機関はそれにより、ねじり振動低減装置から完全に分離される。内燃機関軸の回転速度50は、内燃機関の振動錘が小さいために、わずかな回転の間にゼロに低下する。内燃機関はこうしてパワートレインから分離されており、特に推進運転時に抗力損失(Schleppverlust)を生じさせない。
【0108】
段階3において車両はそのまま進行し、特に内燃機関のアイドリングトルク(Schleppmoment)は駆動可能な車輪に作用しない。すでに説明したように、第一のクラッチは開放されているが、第二のクラッチは接続されたままであり、それにより振動錘式駆動ユニット、およびそれとともにねじり振動低減装置は、変速機入力軸の回転速度で一緒に回転する。本発明に係る制御方法により、振動錘式駆動ユニットの回転速度は、設定可能な最小値を上回るように保たれ、この最小値は境界条件に応じて設定可能である。このとき最小値は特に、内燃機関を始動させるために必要なエネルギーに合わせられ、最小値は好ましくは、シミュレーションまたは試験において計算により決定することができ、振動錘式駆動ユニットを用いて内燃機関を始動させると同時に、ハイブリッド車両を加速させるための出力が提供可能であるように選択されていてよい。
【0109】
ハイブリッド車両の速度は、ここで想定される平地で移動する際、さらにやや減少し(転がり抵抗および空気抵抗、電気機械のレキュペレーションモーメントなどが、車両の速度を減少させる)、この速度減少は、段階3における車両速度48の下降する推移によって視覚化されている。エンジンオフ滑走の状態をやめて内燃機関に対する始動要求があるようにするのは、特に、速度閾値に到達する/速度閾値を下回るとき、あるいはハイブリッド車両の車載用電気系統からの要求があるとき、特に蓄電池の最小充電状態を下回るときに、ブレーキペダルの操作、およびアクセルペダルの操作をすることで得ることができる。内燃機関は始動要求に基づき、モード4による方法を実施することにより始動される(段階4および5)。
【0110】
始動の際、まず振動錘式駆動ユニットの回転速度52が低下する(段階4)が、それは、振動錘式駆動ユニットから、接続された第一のクラッチを介して、内燃機関軸(その回転速度50は増加している。)を加速するための出力が、内燃機関軸に伝達されるためである。電気機械はハイブリッド車両を加速するための出力を変速機入力軸に供給する。
【0111】
内燃機関の始動回転速度に到達した後、内燃機関は燃料が供給される運転にされ、振動錘式駆動ユニットに出力を供給し、それにより内燃機関軸および振動錘式駆動ユニットの回転速度50,52は上昇する(段階5)。
【0112】
内燃機関軸の回転速度50が適切なレベルに到達し、第一のクラッチ、第二のクラッチ、および変速機クラッチが接続されるやいなや、ハイブリッド車両は内燃機関の出力供給によって加速される(段階6)。
【0113】
エンジンオフ滑走の運転状態において、さらにエネルギー回収も行うことができる(レキュペレーション)。ハイブリッド車両はそのために、上記のように段階3に対応する滑走状態にある。
【0114】
内燃機関は、開放された第一のクラッチにより、パワートレイン(振動錘式駆動ユニット、車両変速機)から切り離されている。内燃機関は停止される。レキュペレーションが行われない上述した場合に比べて、車両の速度は、電気機械によって変速機入力軸の回転方向と逆向きに変速機入力軸にもたらされるレキュペレーションモーメント(負のトルク)により、上述の場合よりも大きく減速され、これは
図4のグラフにおいて、車両速度48および振動錘式駆動ユニットの回転速度52が比較的大きく下降する点に反映していると考えられる。
【0115】
ハイブリッド車両および振動錘式駆動ユニットの運動エネルギーは、発電機運転時の電気機械におけるレキュペレーションの際に、電気エネルギーに変換され、車載用電気系統に供給される。
【0116】
レキュペレーションをやめる要求、すなわち、レキュペレーションを伴う運転モード(モード5)をやめる要求は、例えばアクセルペダルを操作することにより、あるいは速度閾値に到達する際に行われる。やめる順序は、
図4の段階4および5において、レキュペレーションを伴わない上記の方法(モード5)と同様に進行する。
【0117】
図5にはハイブリッド車両が少なくとも時々、電気機械のみにより(E走行)駆動される一方、内燃機関が停止されている(ゼロエミッション)走行状況が表示されている。このとき内燃機関は、モード4による方法を用いて始動され、電気機械を介してハイブリッド車両を駆動するために、駆動システムはモード5による方法に応じて、エンジンオフE走行の変形例で稼動される。
【0118】
内燃機関が停止されており、電気機械がエネルギー回収のために用いられるか、変速機入力軸と一緒にパッシブに回転する(滑走)上述の運転状態のうちの一つとは異なり、この運転状態において電気機械はモータ運転で動かされ、すなわち変速機入力軸の回転方向に駆動トルクを提供する。段階1においてハイブリッド車両は、内燃機関に駆動された状態で、一定の車両速度48で移動する。段階2において内燃機関は停止され、回転速度50はゼロに低下し、第一のクラッチは開放され、振動錘式駆動ユニットの回転速度52は一定に保たれる。
【0119】
段階3において電気機械が車両を加速し、振動錘式駆動ユニットの回転速度52および車両速度48は上昇する。
【0120】
段階2および3において第一のクラッチは開放され、第二のクラッチは接続され、それにより段階3において静止している内燃機関軸が、振動錘式駆動ユニットから連結解除されることが可能となるが、振動錘式駆動ユニットは、相対回転しないように変速機入力軸に接続されており、電気機械は、ハイブリッド車両の駆動のために必要なトルクを変速機入力軸に提供し、いわゆるE走行が行われる。
【0121】
このときE走行は、電気機械の出力性能に応じて可能である。提案による48Vの定格電圧を有する低電圧電気機械では、およそ15-20kWまでの走行需要が生み出されることが試験から分かっている。これは車体重量がおよそ1.5tのハイブリッド車両では、およそ60km/hまでの走行速度と、およそ1.5m/s2の加速度に相当する。
【0122】
このおよそ60km/hまでの速度領域内で、特にアクセルペダルによる運転者の意向に応じた加速要求が、電気機械の加速能力を上回るという条件で、内燃機関は振動錘始動を用いて、モード4による方法で非常に迅速かつ快適に始動され、この比較的大きな加速要求は内燃機関により実現することができ、このとき内燃機関の始動が段階4および5において表されている。内燃機関の始動の際、まず振動錘式駆動ユニットの回転速度52が低下し、同時に内燃機関軸の回転速度50が上昇する。内燃機関は、始動回転速度に到達した後、燃料が供給される運転にされ、その後、振動錘式駆動ユニットを加速する(段階5)。段階6において内燃機関は、ハイブリッド車両を加速するために標準的に用いられ、第一および第二のクラッチ、および変速機クラッチはそのために接続されている。
【0123】
提案される駆動システムにより、内燃機関が停止された状態でのE走行は、車両の停止からも可能となる。このとき
図5の段階1および2は省略される。その場合、
図5の段階3は、可変的に表示可能なE走行段階、またはさらなる場合において、車両停止に相当する。車両停止およびそれとともに振動錘式駆動ユニットの停止からE走行を行う場合、電気機械によりまずハイブリッド車両を駆動するための出力が提供され、付加的に振動錘式駆動ユニットが加速される。モード4による方法を用いて内燃機関が始動される間(段階4および5)、電気機械は、出力およびモーメントに関して可能な限り、上述のようにさらに運転者の意向に応え、段階6において内燃機関が車両加速のために用いられる。
【0124】
内燃機関の初始動の際、振動錘式駆動ユニットに対する回転速度の推移51が生じ、段階4および5における振動錘式駆動ユニットの回転速度52は不変のままである。初始動に対する車両速度49は、内燃機関がまだ立ち上がり過程にあるうちに、ハイブリッド車両が加速を行うことを示している。振動錘式駆動ユニットに対する回転速度の推移51は、スタートプロセスを予測することにより生じる。振動錘式駆動ユニットの回転速度51は、人が運転席に着くやいなや増加させられる。段階4の初めに、スタートボタンが操作され、振動錘式駆動ユニットは第一のクラッチを介して内燃機関軸と連結される。ハイブリッド車両はしかし、すでにこのスタートプロセスの間に加速を行うことができる。電気機械および振動錘式駆動ユニットを介して、駆動出力が、第二のクラッチおよび変速機クラッチを介して駆動可能な車輪へと伝達可能であるからである。
【0125】
図6は、内燃機関軸14を有するとともにその駆動を行い得る内燃機関12と、内燃機関軸14と同軸に設けられた変速機入力軸18を駆動側に有するとともに内燃機関軸14と同軸に設けられた変速機出力軸20を被駆動側に有する車両変速機16と、変速機入力軸18と変速機出力軸20とを連結または連結解除するための変速機クラッチ22とを備えるハイブリッド車両のための駆動システム10を示している。
【0126】
このとき車両変速機は、
図1と同じく非常に簡略化して表示されている。車両変速機16は、多数の切り替え可能なギアを有し、これらのギアによって、変速機入力軸と変速機出力軸との間で変速比が変更可能である。
【0127】
駆動システム10はさらに、振動錘式駆動ユニット24であって、軸方向において内燃機関12と車両変速機16との間に設けられていて内燃機関軸14に対して同軸に設けられた中間軸26上に位置する振動錘式駆動ユニットと、内燃機関軸14と中間軸26とを連結または連結解除するための第一のクラッチ28とを有する。第一のクラッチ28は、駆動側の入力側60と、被駆動側の出力側60とを有する。駆動システム10はさらに、中間軸26と変速機入力軸18とを連結または連結解除するための第二のクラッチ30を有する。第二のクラッチ30は、駆動側の入力側64と、被駆動側の出力側66とを有する。駆動システム10はさらに、変速機入力軸18に設けられているとともに、モータ運転時に変速機入力軸を駆動でき、または発電機運転時に変速機入力軸を減速できる電気機械32を有する。
【0128】
振動錘式駆動ユニット24は、DU入力軸56と、DU出力軸58とを備えるデュアルマスフライホイール54を有する。デュアルマスフライホイール54はエネルギー貯蔵部を形成する。振動錘式駆動ユニット24の具体的な構成に関わらず、振動錘式駆動ユニットの振動錘は第一のクラッチ28と共に、車両の停止時または走行時に、停止された内燃機関12の機械的なインパルススタートを可能にする。したがって内燃機関12のための電気的な始動装置は省略することができる。デュアルマスフライホイール54は完全に、第一および第二のクラッチ28,30の間に設けられており、DU入力側は、相対回転しないように第一のクラッチ28の被駆動側の出力側62と連結されているとともに、DU出力側は、持続的に相対回転しないように中間軸26と連結されており、中間軸は持続的に相対回転しないように第二のクラッチの駆動側の入力側64と連結されている。
【0129】
特に
図6に表示されていない制御機器および車載用電気系統に関しては、
図1が参照される。駆動出力は、車両変速機16を介して、表示された一の駆動可能な車輪68に伝達され、このとき駆動システムの基本的構成は、車両のための前輪駆動、後輪駆動、および全車輪駆動に適応可能である。
【0130】
電気機械32は、
図6では駆動システム10の車両変速機16に組み込まれている。特に概略的に示されているのは、車両変速機16が駆動側にベルハウジング36を有する点であり、電気機械32はベルハウジング36に収容されており、ベルハウジング内に通常備えられるトルクコンバータの代わりになっている。
【0131】
図6に表示された駆動システム10を、アクチュエータ、制御機器、およびアクセルペダル(本図では不図示)を介して制御する点については、
図1が参照される。
【0132】
提案される駆動システムと、提案される方法によるこの駆動システムの制御とから、取り分け以下の複数の長所が生じる。
-内燃機関の始動時の角運動量保存に関して、本願では外部モーメントが現れない(内燃機関軸の加速/振動錘式駆動ユニットの減速)ので、存在しないこの外部モーメントをエンジンマウントにおいて支持する必要がなく、エンジンマウントの負荷が取り除かれている。
-さらに、特に内燃機関が高い始動回転速度に加速されることによる、いわゆる始動時のガタつきが低減されている。
-ねじり振動低減装置全体の配設により、好適な回転質量比(内燃機関の回転質量は小さい/振動錘式駆動ユニットの回転質量は大きい)となり、それにより内燃機関の始動時間を短くできる。
-試験により、内燃機関に対して、100msより短い始動時間が達成可能であることが示されている。
-内燃機関の始動のためのエネルギーが始動時点において振動錘式駆動ユニットから(純粋に機械的に)取り出された後は、内燃機関の始動時に車載用電気系統には負荷がかからず、したがって内燃機関始動の間の電圧降下を防ぐための車載用電気系統安定化手段が不要である。
-全体として駆動システムは、極めて多様な走行状況に迅速に反応するように制御可能である。
-試験によれば、例えば信号による停止のためのエンジン始動停止動作は、特に快適に実現可能である。
-個々の運転モードによって示されるように、本駆動システムにより、高電圧駆動機関を備えることなく、極めて多様な走行状況が反映される。
-この電気機械は走行運転に対して最適化することができる。それは、その他の電気機械では略大半を占めるコールドスタートの必要性がこの電気機械にはないからであり、特に内燃機関が振動錘式駆動ユニットによるコールドスタート(内燃機関の大きな始動トルク)を用いて実現され、特にこれにより、従来の駆動システムに対して、特にピニオン式スタータのようなさらなる電気的始動ユニットが省略されるからである。
【符号の説明】
【0133】
10 駆動システム
12 内燃機関
14 内燃機関軸
16 車両変速機/自動変速機
18 変速機入力軸
20 変速機出力軸
22 変速機クラッチ
24 振動錘式駆動ユニット
26 中間軸
28 第一のクラッチ
30 第二のクラッチ
32 電気機械
34 低電圧車載用電気系統
36 ベルハウジング
38 制御ユニット/制御機器
40 第一のクラッチを操作するためのアクチュエータ
42 第二のクラッチを操作するためのアクチュエータ
44 変速機クラッチを操作するためのアクチュエータ
46 アクセルペダル
48 車両速度
49 初始動時の車両速度
50 内燃機関軸の回転速度
51 初始動時の振動錘式駆動ユニットの回転速度
52 振動錘式駆動ユニットの回転速度
54 ねじり振動低減装置
56 DU入力軸
58 DU出力軸
60 第一のクラッチの入力側
62 第一のクラッチの出力側
64 第二のクラッチの入力側
66 第二のクラッチの出力側
68 駆動可能な車輪