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特許7022080部位特異的抗体-薬物複合体の特徴付けのための生化学分析的方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-02-08
(45)【発行日】2022-02-17
(54)【発明の名称】部位特異的抗体-薬物複合体の特徴付けのための生化学分析的方法
(51)【国際特許分類】
   G01N 30/88 20060101AFI20220209BHJP
   G01N 33/68 20060101ALI20220209BHJP
   G01N 33/15 20060101ALI20220209BHJP
   G01N 30/72 20060101ALI20220209BHJP
   G01N 30/06 20060101ALI20220209BHJP
   G01N 27/62 20210101ALI20220209BHJP
【FI】
G01N30/88 J ZNA
G01N33/68
G01N33/15 Z
G01N30/72 C
G01N30/06 E
G01N27/62 V
G01N27/62 X
【請求項の数】 21
(21)【出願番号】P 2018562100
(86)(22)【出願日】2017-05-26
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2019-07-11
(86)【国際出願番号】 US2017034680
(87)【国際公開番号】W WO2017205741
(87)【国際公開日】2017-11-30
【審査請求日】2020-05-18
(31)【優先権主張番号】62/342,825
(32)【優先日】2016-05-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】509012625
【氏名又は名称】ジェネンテック, インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】スー, ティエン
(72)【発明者】
【氏名】ダルウィーシュ, マーティン
(72)【発明者】
【氏名】シュイ, コーヤン
(72)【発明者】
【氏名】カー, スリンダー
【審査官】黒田 浩一
(56)【参考文献】
【文献】特表2014-519029(JP,A)
【文献】国際公開第2015/040125(WO,A1)
【文献】特表2011-524001(JP,A)
【文献】Santiago E. Farias et al.,Mass Spectrometric Characterization of Transglutaminase Based Site-Specific Antibody-Drug Conjugates,Bioconjugate Chemistry,2014年,Vol.25,PP.240-250
【文献】Keyang Xu et al.,Characterization of the drug-to antibody ratio distribution for antibody-drug conjugates in plasma/serum, Bioanalysis,2013年,Vol5. No.9,pp.1057-1071
【文献】Nassur Said et al.,Structural characterization of antibody drug conjugate by a combination of intact, middle-up and bottom-up techniques using sheathless capillary electrophoresis - Tandem mass spectrometry as nanoESI infusion platform and separation method,Analytical chimica Acta,2016年,Vol.918,pp.50-59
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 30/00-30/96
G01N 33/00-33/98
G01N 27/62
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
抗体薬物複合体(ADC)を評価する方法であって、
ここで、ADCがヒト、カニクイザル、ラット、及びマウスから選択される哺乳動物の、全血、血清、血漿、または組織に懸濁され、
a.
システインアミノ酸残基、
セレノシステインアミノ酸残基、
グルタミンアミノ酸残基、
非天然型アミノ酸残基、及び
糖修飾グリカン残基
から選択される組換え操作された部位で抗体に結合している少なくとも1つの薬物部分を含むADCを、前記ADCを切断するIdeSプロテアーゼで消化して、前記少なくとも1つの薬物部分に結合していない少なくとも1つのペプチド断片と、前記少なくとも1つの薬物部分に結合している少なくとも1つのペプチド断片とを含む消化されたADC組成物を形成することと、
b.RP-LC、RP-LC/MS、及びLC-MS/MSの少なくとも1つによって、前記消化されたADC組成物を分析し、前記少なくとも1つの薬物部分に結合していない少なくとも1つのペプチド断片を検出することと、を含む、前記方法。
【請求項2】
前記抗体が、IgG抗体、抗体断片、ヒトまたはヒト化抗体、グリコシル化またはリン酸化抗体、及びシステイン操作抗体から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記ADCの抗体部分が、(1)~(53):
(1)BMPR1B(骨形成タンパク質受容体IB型)、
(2)E16(LAT1、SLC7A5)、
(3)STEAP1(前立腺の6回膜貫通上皮抗原)、
(4)MUC16(0772P、CA125)、
(5)MPF(MPF、MSLN、SMR、巨核球増強因子、メソテリン)、
(6)Napi2b(NAPI-3B、NPTIIb、SLC34A2、溶質輸送体ファミリー34(リン酸ナトリウム)、メンバー2、II型ナトリウム依存性リン酸輸送体3b)、
(7)Sema 5b(FLJ10372、KIAA1445、Mm.42015、SEMA5B、SEMAG、セマフォリン5b Hlog、セマドメイン、7回トロンボスポンジン反復(1型及び1型様)、膜貫通ドメイン(TM)、及び短い細胞質ドメイン、(セマフォリン)5B)、
(8)PSCA hlg(2700050C12Rik、C530008O16Rik、RIKEN cDNA 2700050C12、RIKEN cDNA2700050C12遺伝子)、
(9)ETBR(エンドセリンB型受容体)、
(10)MSG783(RNF124、仮説上のタンパク質FLJ20315)、
(11)STEAP2(HGNC_8639、IPCA-1、PCANAP1、STAMP1、STEAP2、STMP、前立腺癌関連遺伝子1、前立腺癌関連タンパク質1、前立腺の6回膜貫通上皮抗原2、6回膜貫通前立腺タンパク質)、
(12)TrpM4(BR22450、FLJ20041、TRPM4、TRPM4B、一過性受容器電位カチオンチャネル、サブファミリーM、メンバー4)、
(13)CRIPTO(CR、CR1、CRGF、CRIPTO、TDGF1、奇形癌腫由来の成長因子)、
(14)CD21(CR2(補体受容体2)またはC3DR(C3d/エプスタイン・バーウイルス受容体)またはHs73792)、
(15)CD79b(CD79B、CD79β、IGb(免疫グロブリン関連ベータ)、B29)、
(16)FcRH2(IFGP4、IRTA4、SPAP1A(SH2ドメイン含有ホスファターゼアンカータンパク質1a)、SPAP1B、SPAP1C)、
(17)HER2、
(18)NCA、
(19)MDP、
(20)IL20Rα、
(21)Brevican、
(22)EphB2R、
(23)ASLG659、
(24)PSCA、
(25)GEDA、
(26)BAFF-R(B細胞活性化因子受容体、BLyS受容体3、BR3)、
(27)CD22(B細胞受容体CD22-Bアイソフォーム)、
(28)CD79a(CD79A、CD79α、免疫グロブリン関連アルファ)、
(29)CXCR5(バーキットリンパ腫受容体1)、
(30)HLA-DOB(MHCクラスII分子のベータサブユニット(Ia抗原))、
(31)P2X5(プリン受容体P2Xリガンド開口型イオンチャネル5)、
(32)CD72(B細胞分化抗原CD72、Lyb-2)、
(33)LY64(リンパ球抗原64(RP105)、ロイシンリッチ反復(LRR)ファミリーのI型膜タンパク質)、
(34)FcRH1(Fc受容体様タンパク質1)、
(35)FcRH5(IRTA2、免疫グロブリンスーパーファミリー受容体転位関連2)、
(36)TENB2(推定上の膜貫通プロテオグリカン)、
(37)PMEL17(silver相同体、SILV、D12S53E、PMEL17、SI、SIL)、
(38)TMEFF1(EGF様ドメイン及び2つのフォリスタチン様ドメインを有する膜貫通タンパク質1、トモレグリン-1)、
(39)GDNF-Ra1(GDNFファミリー受容体アルファ1、GFRA1、GDNFR、GDNFRA、RETL1、TRNR1、RET1L、GDNFR-アルファ1、GFR-ALPHA-1)、
(40)Ly6E(リンパ球抗原6複合物、遺伝子座E、Ly67、RIG-E、SCA-2、TSA-1)、
(41)TMEM46(shisa相同体2(Xenopus laevis)、SHISA2)、
(42)Ly6G6D(リンパ球抗原6複合物、遺伝子座G6D、Ly6-D、MEGT1)、
(43)LGR5(ロイシンリッチ反復含有Gタンパク質結合型受容体5、GPR49、GPR67)、
(44)RET(retがん原遺伝子、MEN2A、HSCR1、MEN2B、MTC1、PTC、CDHF12、Hs.168114、RET51、RET-ELE1)、
(45)LY6K(リンパ球抗原6複合物、遺伝子座K、LY6K、HSJ001348、FLJ35226)、
(46)GPR19(Gタンパク質結合型受容体19、Mm.4787)、
(47)GPR54(KISS1受容体、KISS1R、GPR54、HOT7T175、AXOR12)、
(48)ASPHD1(アスパラギン酸ベータヒドロキシラーゼドメイン含有1、LOC253982)、
(49)チロシナーゼ(TYR、OCAIA、OCA1A、チロシナーゼ、SHEP3)、
(50)TMEM118(ringフィンガータンパク質、膜貫通2、RNFT2、FLJ14627)、
(51)GPR172A(Gタンパク質結合型受容体172A、GPCR41、FLJ11856、D15Ertd747e)、
(52)CD33、及び
(53)CLL-1から選択される1つ以上の腫瘍関連抗原または細胞表面受容体に結合する抗体である、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記薬物部分が、リンカーを介して前記ADCの前記抗体部分に結合しており、ペプチド、ポリアミド、マイタンシノイド、ドラスタチン、オーリスタチン、カリケアマイシン、ピロロベンゾジアゼピン(PBD)、PNU-159682、アントラサイクリン、デュオカルマイシン、ビンカアルカロイド、タキサン、トリコテセン、CC1065、デュオカルマイシン、カンプトテシン、エリナフィド、抗生物質、フルオロフォア、放射性同位体、ならびにそれらの立体異性体、イソスター(isosteres)、代謝物、類似体、または誘導体から選択される、請求項1~3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
前記消化することが、約20℃~約45℃の温度で、約pH5~約pH9のpHで、及び約0.1時間~約48時間の期間の間、前記ADCを前記プロテアーゼと共にインキュベートすることを含む、請求項1~4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
前記消化することが、約1時間の期間の間、約7のpHで、約37℃の温度で前記ADCを前記プロテアーゼと共にインキュベートすることを含む、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記ADCが、前記消化するステップの前に、サイズ排除クロマトグラフィー、透析、選択的沈降、分画遠心分離、ろ過、ゲル電気泳動、液体クロマトグラフィー、逆相クロマトグラフィー、免疫沈降、プロテインA及びプロテインG、NHS及びストレプトアビジン鉄もしくはリン、または固定化抗体もしくはレクチンを含むスピントラップカラム、常磁性ビーズ、免疫除去、分画、固相抽出法、リンペプチド富化、ポリアクリルアミドゲル電気泳動、ならびに脱塩処理から選択される技法により富化される、請求項1~6のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
前記ADCが、ビーズまたは樹脂により支持されたプロテインA/G、標的抗原常磁性ビーズ捕捉培地、抗イディオタイプ抗体、抗Hu抗体、及び抗薬物抗体のうちの少なくとも1つを含む親和性捕捉培地に結合される、請求項1~7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
前記親和性捕捉培地に結合されたADCを洗浄して、前記ADCと接触している非抗体タンパク質を減少させることをさらに含む、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記親和性捕捉培地に結合されたADCを脱リン酸化することをさらに含む、請求項8に記載の方法。
【請求項11】
前記消化するステップが、ADCが前記親和性捕捉培地に結合されている間に生じる、請求項8に記載の方法。
【請求項12】
前記ADCを消化するステップの前に、ADCを前記親和性捕捉培地から溶出することをさらに含む、請求項8に記載の方法。
【請求項13】
前記ADCの全抗体濃度が、前記消化されたADC組成物の前記分析から計算される、請求項1~12のいずれか1項に記載の方法。
【請求項14】
前記ADCの抗体複合体化薬物濃度が、前記消化されたADC組成物の前記分析から計算される、請求項1~13のいずれか1項に記載の方法。
【請求項15】
前記ADCの平均薬物対抗体比(DAR)が、前記消化されたADC組成物の前記分析から計算される、請求項1~14のいずれか1項に記載の方法。
【請求項16】
ADCの投与後に生体試料中に存在し得る代謝物または異化物の構造が、前記消化されたADC組成物の前記分析から決定される、請求項1~15のいずれか1項に記載の方法。
【請求項17】
前記ADCのタンパク質濃度が、前記消化されたADC組成物の前記分析から計算される、請求項1~16のいずれか1項に記載の方法。
【請求項18】
前記タンパク質濃度が、前記消化されたADCからの少なくとも1つのFc断片のRP-LC及び/またはMS分析のピーク領域と相関している、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記ADCの吸光係数が、前記消化されたADC組成物の前記分析から計算される、請求項1~18のいずれか1項に記載の方法。
【請求項20】
前記ADCの平均薬物対抗体比(DAR)、ADCの投与後に生体試料中に存在し得る代謝物または異化物の構造が、前記消化されたADCの前記分析から決定され、前記タンパク質濃度が、前記消化されたADCからの少なくとも1つのFc断片のRP-LC及び/またはMS分析からのピーク領域と相関している、請求項17または18に記載の方法。
【請求項21】
前記ADCの吸光係数が、前記消化されたADC組成物の前記分析から計算される、請求項20に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
37CFR§1.53(b)の下で出願されたこの正規出願は、2016年5月27日に出願された米国仮出願第62/342,825号の35USC§119(e)の利益を主張し、これは、参照によりその全体が組み込まれる。
【0002】
本開示は、クロマトグラフィー及び/または質量分析により、非生体または生体マトリックスの抗体-薬物複合体、ならびにそれらの断片及び代謝物を捕捉、検出、分析、特徴付け、及び定量化する方法に関する。
【背景技術】
【0003】
ブレンツキシマブベドチン(ADCETRIS(登録商標)、Seattle Genetics)及びアドトラスツズマブエムタンシン(KADCYLA(登録商標)、Genentech)の承認により、特定の作用部位への薬学的活性薬物または毒素分子の標的送達を提供する抗体薬物複合体(ADC)の療法的可能性が確認され、さらなる研究及び開発がなされている。ADCは一般には、抗体、薬学的活性小分子薬物または毒素(しばしば、「薬物部分」または「ペイロード」と称される)、及びこの2つを接続するための任意のリンカーから構成される。このタンパク質構築物は、このようにして、特定の細胞型、典型的には、がん細胞上の抗原を標的化するように選択されるか、または操作される、小分子で効力の高い薬物を大分子抗体に結合させる。それ故に、ADCは、モノクローナル抗体の強力な標的能力を用いて、効力の高い複合体化小分子療法薬をがん細胞に特異的に送達する。小分子療法ペイロードはしばしば、従来の化学療法での使用へはあまりにも毒性となるであろう、効力の高い細胞毒性分子である。
【0004】
継続中の研究及び開発プログラムにより奏効的なADC候補が明らかになり、臨床評価及び市場承認に進むため、巨大タンパク質複合物(抗体または抗体断片)と、典型的には、非常により小さいが効力の高い薬物分子との組み合わせにより作り出された複合化学組成物を効果的に評定し得る安全性及び効能アッセイが必要とされている。薬物-抗体結合、抗体及び薬物濃度、ならびに薬物対抗体比、ならびにこれらのADC組成物の安定性の特徴付けが最初に確立され、次いで、一貫性に関して監視されるべきであるが、これは、ADCのこれらの特性が、これらの療法体の生物活性、薬物動態、分布、免疫原性、安全性、及び安定性プロファイルに影響を与え得るためである。ADCの特徴付けにおいてのこれらの課題は、抗体当たり0~8個の薬物分子を有し得る多くの現在利用可能なADCを典型とする、ADC分子の異質組成物に適用される場合、さらにより困難である。この異質性は、これらの療法構築物の薬物動態パラメータ及びインビボでの性能の非一貫性の測定値をもたらす1つの要因である。
【0005】
液体クロマトグラフィー-タンデム質量分析(LC-MS/MS)は、血漿/血清/組織試料のような非常に複合的なマトリックスにおいて、タンパク質分析及び定量化のための強力な手段である。目的とするタンパク質及び他の内因性タンパク質の消化から生じるペプチドが同じかまたは類似の見掛けの質量を有し得るため、MS断片化の二次元目はしばしば、目的とするペプチド固有の断片を提供する。特定の親ペプチドと固有の断片イオンとの組み合わせが、定量化される分子を選択的に監視するために使用され得る。かかる手法は、「多重反応モニタリング」(MRM)と命名されるが、選択的反応モニタリング(SRM)とも称され、これは、タンパク質定量化に関して一般的に使用される形式である。しかし、この強力な手段は、インタクトADC、抗体断片、及びペプチド結合薬物(複数可)、ならびに遊離薬物分子の複合混合物の分析によって損なわれ得る。
【0006】
次世代のADCの最近の開発は、改善された安定性、薬物動態(PK)、及び治療指数を有する同質のADCを産生するための技術を探究することに焦点があてられている。リンカー及び様々な細胞毒性メカニズムを有する毒素の新しい型もまた探求されている。これらの次世代ADCは、新しいペイロード及び関連する複雑なインビボでの生体内変化の構造的複雑さのために、追加の生化学分析的課題を提起し得る。例えば、親和性捕捉LC-MSは、インタクトADCの薬物対抗体比(DAR)及び異化物特徴付けに使用されている。インタクトADC親和性捕捉LC-MSアッセイは、Fc領域においてPNGase Fを用いてN-グリカンを除去し、それによってADC質量スペクトルの複雑さ及び異質性を低減する。しかしながら、新しいADCのインタクト質量スペクトルは、より複雑であり、方法の感受性及び分解度が、いくつかの構造的修飾を解明し、DAR分布を正確に特徴付けるのに十分でない場合がある。
【0007】
親和性捕捉液体クロマトグラフィー-質量分析(LC-MS)は、抗体-薬物複合体(ADC)の直接的な薬物対抗体比(DAR)及び異化物特徴付けに広く使用されている。しかしながら、マイタンシン及びオーリスタチン以外にリンカー及びペイロードの新しい型を組み込む、新しいADCのインタクト質量スペクトルは、先行して調査されたものよりも複雑である。現在の方法は、特定の構造的修飾を解明することにおいて、いくつかの限界を示している。
【発明の概要】
【0008】
本発明の態様は、THIOMAB抗体-薬物複合体(TDC)等の、抗体薬物複合体(ADC)への分析手法であり、リンカー薬物が、Fab領域において部位特異的に複合体化されている。親和性捕捉LC-MS F(ab’)2アッセイは、Fab領域に結合すること、その後の特異的かつ均一にFcドメインを除去するためのビーズ上IdeS消化を介してADCの親和性捕捉を組み込む。結果として得られたF(ab’)2(約100kDa)断片は、薬物対抗体比及び薬物代謝等の重要なADCの構造的情報を含み、エレクトロスプレーイオン化LCMSによって、インタクトADC(約150kDa)よりも容易に分析される。分析物の低減されたサイズは、改善された質量スペクトルの感受性及び分解度をもたらす。さらに、低減され最適化された試料の調製時間、例えば、IdeS消化によるFc断片の素早い除去は、延長されたインキュベート時間(例えば、Fc脱グリコシル化のための一晩にわたる酵素処理)からもたらされ得る薬物代謝の生じ得るアッセイ人口産物及び歪んだDARプロファイルを最小化する。親和性捕捉LC-MS F(ab’)2アッセイは、インビボでのADCの生体内変化に関するより詳細で正確な情報を提供し、Fab領域で複合体化されるリンカー薬物を使用して、低用量、不安定、及び複雑な部位特異的ADCの分析を可能にする。
【0009】
本発明の実施形態は、Fc領域で部位特異的に複合体化された薬物部分を有するADCの抗Fc捕捉及びIgdEプロテアーゼ消化を用いる方法である。
【0010】
抗体の消化及びADCの薬物構成成分の分離による、抗体タンパク質濃度及び抗体複合体化薬物量及び構造的特徴付けを検出及び定量化し、次に、消化された抗体からの放出薬物とペプチドとの組み合わせの結果として得られた組成物のクロマトグラフィー分析及び/または質量分光光度分析のためにロバスト法が提供される。本発明の方法は、インタクトADCの代用物として薬物部分を有するADC断片を利用し、それによって、増加したアッセイの感受性及び分解度を提供する。新しい方法はまた、薬物代謝の人口産物を最小化し、特定の薬物対抗体比(DAR)種に対する潜在的な偏った反応を低減する。抗体及びADC分析は、エンドプロテアーゼLys-C、またはプロテアーゼPNGaseの活性の制御を試み、次に、逆相HPLC及び質量分析によって、限られたタンパク質分解性消化を使用して、先行して行われた。これらの方法は、感受性、分解度、及び特定のDAR種に対する偏った反応に起因して、組換え操作された、特定の薬物複合体部分を含むいくつかの次世代のADCの分析において、不十分であると見出された。これは、不安定で、はるかにより高いMS分解度を要求し、かつ典型的には低用量で投与される効力の高いDNA損傷剤に対して部位特異的複合体を有し、それによって、低濃度での試料中において、ADC組成物を特徴付けて、ヒトまたは他の試験対象へのADCの投与後に収集される生体試料中に存在し得る代謝物の構造を特徴付けるために使用される分析技術においてはるかにより高い感受性を要求する、ADCに特に当てはまる。
【0011】
このようにして、本発明は、同質かつ部位特異的ADCの分析と一致する部位特異的かつ制御されたタンパク質分解性消化を組み合わせてADC分析物のサイズを低減することによって、部位特異的ADCの開発中に、安定性、産生中の翻訳後及び化学修飾、配合、保管、ならびに投与を評価する、一貫性の、信頼できる、効率性の、高分解度、及び高感受性の方法を提供する。
【0012】
分析物の低減されたサイズは、改善された質量スペクトルの感受性、及び分解度をもたらし、いくつかのインタクトDARと共に観察された反応の差異は低減される。さらに、特異的タンパク質分解性消化は、Fc炭水化物の一晩にわたる脱グリコシル化の必要性を排除する。さらに、素早いタンパク質分解性消化は、一晩にわたる酵素処理からもたらされ得るアッセイ人口産物を最小化する。本開示の親和性捕捉LC-MS F(ab’)2アッセイは、従来の方法を使用することが実行可能でない場合がある、Fab領域で複合体化されるリンカー薬物を使用して、低用量、不安定、及び複雑な部位特異的ADCの分析のために、インビボでのADCの生体内変化に関するより詳細で正確な情報を提供する。
【0013】
本発明は、組換え操作された部位で抗体に結合している、少なくとも1つの薬物部分を含むADCを、ADCを切断するプロテアーゼと共に消化して、薬物部分に結合していない少なくとも1つのペプチド断片、及び薬物部分に結合している少なくとも1つのペプチド断片を含む消化されたADC組成物を形成することによって、ADCを評価する方法を提供する。次いで、消化されたADC組成物は、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)及び/または質量分析(MS)によって分析され、少なくとも1つの薬物部分に結合している少なくとも1つのペプチド断片を検出する。ADCに対する薬物部分結合の組換え操作された特異的部位は、システインアミノ酸残基、セレノシステインアミノ酸残基、グルタミンアミノ酸残基、非天然型アミノ酸残基、及び糖修飾グリカン残基から選択される部位であり得る。ADCは、IgG抗体であり得る。ADCの抗体部分は、抗体断片であり得る。ADCの抗体部分は、ヒトまたはヒト化抗体であり得る。ADCは、グリコシル化またはリン酸化されていてもよい。ADCの抗体部分は、1つ以上の腫瘍関連抗原または細胞表面受容体に特異的に結合し得る。
【0014】
薬物部分は、少なくとも1つの芳香族環を含み得る。例示的な薬物部分としては、ペプチド、ポリアミド、マイタンシノイド、ドラスタチン、オーリスタチン、カリケアマイシン、ピロロベンゾジアゼピン(PBD)、PNU-159682、アントラサイクリン、デュオカルマイシン、ビンカアルカロイド、タキサン、トリコテセン、CC1065、デュオカルマイシン、カンプトテシン、エリナフィド、抗生物質、フルオロフォア、放射性同位体、ならびにそれらの立体異性体、イソスター(isosteres)、代謝物、類似体、または誘導体が挙げられる。薬物部分はまた、リンカーを介してADCの抗体部分に結合され得る。
【0015】
これらの方法において利用されるプロテアーゼは、IdeSプロテアーゼ、IdeZプロテアーゼ、IgdEプロテアーゼ、SpeBプロテアーゼ、ジンジパインプロテアーゼ、エンドグリコシダーゼ、及びそれらの組み合わせから選択され得る。消化手順は、約20℃~約45℃の温度で、ADCをプロテアーゼと共にインキュベートすることを含み得、典型的には、約37℃の温度で、ADCをプロテアーゼと共にインキュベートすることを含む。消化はまた、約pH5~約pH9のpHで、ADCをプロテアーゼと共にインキュベートすることを含み得、典型的には、約pH7のpHで、ADCをプロテアーゼと共にインキュベートすることを含む。消化はまた、約0.1時間~約48時間の期間の間、ADCをプロテアーゼと共にインキュベートすることを含み得、典型的には、約1時間の期間の間、ADCをプロテアーゼと共にインキュベートすることを含む。
【0016】
分析することは、RP-LC、RP-LC/MS、及びLC-MS/MS分析のうちの少なくとも1つを含み得る。
【0017】
これらの方法において、消化するステップの前に、ADCは、緩衝液、全血、血清、血漿、脳脊髄液、唾液、尿、リンパ液、胆汁、糞便、汗、硝子体、涙、及び組織から選択されるマトリックス中で懸濁され得る。例としての実施形態において、ADCは、ヒト、カニクイザル、ラット、及びマウスから選択される哺乳動物の、全血、血清、血漿、または組織中で懸濁される。それによって、ADCは、消化するステップの前に、サイズ排除クロマトグラフィー、透析、選択的沈降、分画遠心分離、ろ過、ゲル電気泳動、液体クロマトグラフィー、逆相クロマトグラフィー、免疫沈降、プロテインA及びプロテインG、NHS及びストレプトアビジン鉄もしくはリン、または固定化抗体もしくはレクチンを含むスピントラップカラム、常磁性ビーズ、免疫除去、分画、固相抽出法、リンペプチド富化、ポリアクリルアミドゲル電気泳動、ならびに脱塩処理から選択される技法により富化され得る。このようにして、これらの方法において、ADCは、親和性捕捉培地と接触され得る。親和性捕捉培地は、ビーズまたは樹脂により支持されたプロテインA/G、標的抗原-常磁性ビーズ捕捉培地、抗イディオタイプ抗体、抗Hu抗体、及び抗薬物抗体のうちの少なくとも1つを含み得る。これらの分析方法は、親和性捕捉培地に結合されたADCを洗浄して、ADCと接触している非抗体タンパク質を減少させることを含み得る。これらの方法はまた、親和性捕捉培地に結合されたADCを脱リン酸化または脱グリコシル化することをさらに含み得る。消化のステップはまた、ADCが親和性捕捉培地に結合されている間に実施され得る。代替的に、または追加的に、ADCは、ADCを消化するステップの前に、親和性捕捉培地から溶出され得る。
【0018】
これらの方法は、消化されたADC組成物の分析からADCの全抗体濃度を計算することにおいて特に有用である。代替的に、または追加的に、ADCの抗体複合体化薬物濃度は、消化されたADC組成物の分析から計算される。代替的に、または追加的に、ADCの平均DARは、消化されたADC組成物の分析から計算される。代替的に、または追加的に、代謝物または異化物構造は、消化されたADC組成物の分析から決定され得る。代替的に、または追加的に、ADCのタンパク質濃度は、消化されたADC組成物の分析から計算され得る。代替的に、または追加的に、タンパク質濃度は、消化されたADCからの少なくとも1つのFc断片のRP-LC及び/またはMS分析のピーク領域と相関している。代替的に、または追加的に、ADCの吸光係数は、消化されたADC組成物の分析から計算される。代替的に、または追加的に、ADCの平均DAR、代謝物または異化物構造(複数可)、及びADCのタンパク質濃度は、消化されたADCからの少なくとも1つのFc断片のRP-LC及び/またはMS分析から得られる。
【0019】
本発明の概要は、本開示の全体及び全範囲を表すことを意図せず、かつそのように解釈されるべきではない。さらに、ここで本明細書における「本開示」またはそれらの態様に対してなされる参照が、本開示のある特定の実施形態を意味すると理解されたく、必ずしも全ての実施形態を特定の記述に限定すると解釈されるべきではない。本開示は、本発明の概要、ならびに添付図面及び実施形態の説明において様々なレベルで詳細に記載され、本発明の概要における構成要素、成分等の包含または非包含のいずれかにより、本開示の範囲に関して限定されないことが意図される。本開示の追加の態様は、実施形態の説明により、特に図面と共に用いられるとき、より容易に明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1A】リンカー薬物がF(ab)に部位特異的に複合体化されている、THIOMAB(商標)薬物複合体(TDC)のIdeSプロテアーゼ切断で生成される抗体断片を示す。消化は、F(ab’)2及びFc断片を産生する。リンカー薬物は、F(ab)またはFcのいずれかに部位特異的に複合体化され得る。
図1B】IdeS消化、第2世代親和性捕捉LC-MSの略図を提供する。
図1C】PNGase F(第1世代)及びIdeS(第2世代)消化の略図、ならびに本開示の第2世代親和性捕捉LC-MSアッセイの利点を示す。
図1D-1】TDC標準混合物(DAR0:DAR2=1:1)の、直接的LC-MS(1D-1)、第2世代(1D-2)、及び第1世代(1D-3)親和性捕捉LC-MS分析間の比較を示す。で標識されるMSピークは、グリカンを有するDARを表す。
図1D-2】TDC標準混合物(DAR0:DAR2=1:1)の、直接的LC-MS(1D-1)、第2世代(1D-2)、及び第1世代(1D-3)親和性捕捉LC-MS分析間の比較を示す。で標識されるMSピークは、グリカンを有するDARを表す。
図1D-3】TDC標準混合物(DAR0:DAR2=1:1)の、直接的LC-MS(1D-1)、第2世代(1D-2)、及び第1世代(1D-3)親和性捕捉LC-MS分析間の比較を示す。で標識されるMSピークは、グリカンを有するDARを表す。
図1E-1】ラットの血漿からの、リンカー薬物脱抱合(-LD)、及び不安定なTDC、TDC-L1の、PNGaseF消化、第1世代(1E-1)分析とIdeS消化、第2世代(1E-2)分析との比較を示す。人工部分的薬物分解(-PD)は、第2世代親和性捕捉LC-MSアッセイ(B)によって最小化された。部分的薬物分解は、TDC-L1の効力に影響を与えず、DARにおいて変化をもたらさなかった。
図1E-2】ラットの血漿からの、リンカー薬物脱抱合(-LD)、及び不安定なTDC、TDC-L1の、PNGaseF消化、第1世代(1E-1)分析とIdeS消化、第2世代(1E-2)分析との比較を示す。人工部分的薬物分解(-PD)は、第2世代親和性捕捉LC-MSアッセイ(B)によって最小化された。部分的薬物分解は、TDC-L1の効力に影響を与えず、DARにおいて変化をもたらさなかった。
図1F-1】インビボでのマウスの血漿中の複雑なTDC異化物の特徴付け中に得られたMSピークを示す。薬物分子から42Daの損失に起因して、TDC-L2異化物MSピークは、PNGaseF消化(第1世代)親和性捕捉LC-MSアッセイ(1F-1)において分解されなかったが、それらは、IdeS消化(第2世代アッセイ)(1F-2)を使用してほぼベースラインで分解された。部分的薬物分解(-PD、43Da)は、実施例TDC-L2の効力に著しく影響を与え、したがってDARの低減をもたらした。
図1F-2】インビボでのマウスの血漿中の複雑なTDC異化物の特徴付け中に得られたMSピークを示す。薬物分子から42Daの損失に起因して、TDC-L2異化物MSピークは、PNGaseF消化(第1世代)親和性捕捉LC-MSアッセイ(1F-1)において分解されなかったが、それらは、IdeS消化(第2世代アッセイ)(1F-2)を使用してほぼベースラインで分解された。部分的薬物分解(-PD、43Da)は、実施例TDC-L2の効力に著しく影響を与え、したがってDARの低減をもたらした。
図2A-1】IdeSタンパク質分解性酵素で消化される部位特異的ADCのRP-LCMS分析を示す。Fc/2断片がまず溶出し、ベースラインがF(ab’)2を含有する薬物から分解する。次いで、リンカー薬物を含まない抗体断片のピーク領域を使用して、タンパク質濃度を計算する。
図2A-2】図2A-1のFc/2の畳み込みが解かれた質量スペクトラムを示す。
図2B】IdeSプロテアーゼで消化されたトラスツズマブを生成された0.5~20mg/mLの範囲にわたる、標準曲線(Fc/2ピーク領域対濃度、上部)(F(ab’)2ピーク領域対濃度、下部)を示す。F(ab)上で部位特異的に複合体化されたTDCのタンパク質濃度は、TDC(上部曲線)のFc/2のピーク領域及び線形回帰を使用して決定され得る。鎖間ジスルフィド上で複合体化される伝統的なADCはまた、Fc/2断片がまたこれらの複合体中に薬物がないときに、この方法を使用して特徴付けられ得る。Fc上で部位特異的に複合体化されたTDCのタンパク質濃度は、TDC(下部曲線)のF(ab’)2のピーク領域及び線形回帰を使用して決定され得る。
図2C】操作システインK149CでのF(ab)上でリンカー薬物を有する操作システインK149Cで部位特異的に複合体化されたトラスツズマブの濃度定量を示す。濃度は、標準曲線からFc/2ピーク領域(3つの複製)及び線形回帰を使用して決定された。
図2D】操作システインS400CでのFc上でリンカー薬物を有する操作システインS400Cで部位特異的に複合体化されたトラスツズマブの濃度定量を示す。濃度は、標準曲線からF(ab’)2ピーク領域(3つの複製)及び線形回帰を使用して決定された。
図2E】鎖間ジスルフィド上で複合体化されたリンカー薬物を有するトラスツズマブの濃度定量を示す。濃度は、標準曲線からFc/2ピーク領域(3つの複製)及び線形回帰を使用して決定された。Fc/2断片は、ヒンジジスルフィドを含まず、リンカー薬物を含まない。
図2F】本開示のIdeSプロテアーゼ消化方法またはビシンコニン酸アッセイ(BCA)タンパク質アッセイによって得られた、81個のTHIOMAB(商標)薬物複合濃度値の相関を示す。
図3A】3つの複製について、それぞれ、0.13、0.09、及び0.14の標準偏差を伴う、直接的LC-MSアッセイ、Ides消化、親和性捕捉LC-MS F(ab’)2アッセイ、及びPNGaseF親和性捕捉LC-MSインタクト抗体アッセイによる、TDC(PBD二量体薬物、ジスルフィドリンカー)標準混合物(DAR0:DAR2=1:1)のDAR(薬物対抗体比)プロファイリングを示す。
図3B】直接的LC-MS、1時間のIdes消化を伴う親和性捕捉LC-MS F(ab’)2アッセイ、及び一晩にわたるPNGaseF消化を伴う親和性捕捉LC-MS F(ab’)2アッセイによる、TDC標準混合物(DAR0:DAR2=1:1)のDARプロファイリングを示す。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本開示は、単一の試料調製物からの全抗体及び抗体複合体化薬物量をロバストに測定し、それにより、薬物対抗体比(DAR)の算出、ならびに著しい時間及び資源の節約を提供する、抗体薬物複合体(ADC)の抗体及び薬物構成成分を検出及び定量化するための単一の測定方法に対して記載される。
【0022】
別途定義されない限り、本明細書で使用される技術及び科学用語は、本発明が属する技術分野の当業者に一般的に理解されているものと同じ意味を有し、それらは、Singleton et al,(1994)“Dictionary of Microbiology and Molecular Biology”,2nd Ed.,J.Wiley&Sons,New York,N.Y.、及びJaneway,et al(2001)“Immunobiology”,5th Ed.,Garland Publishing,New Yorkと一致する。商品名が本明細書で使用される場合、商品名の製品配合物、ジェネリック医薬品、及び商品名の製品の活性薬学的成分(複数可)も含まれる。
【0023】
定義
「生体試料」という用語は、動物に由来するか、または動物から分離された任意の構成成分であり、血液、血漿、血清、細胞、尿、脳脊髄液(CSF)、乳、気管支洗浄液、骨髄、羊水、唾液、胆汁、硝子体、涙、または組織が含まれる。
【0024】
「消化酵素」という用語は、特定または一般的な無作為な手法で、ペプチドまたはタンパク質を切断または加水分解して断片にすることができる酵素である。消化酵素は、抗体が生体試料の構成成分である、抗体から消化された抗体試料を形成し得る。消化酵素には、プロテアーゼ、例えば、トリプシン、パパイン、ペプシン、エンドプロテアーゼLysC、エンドプロテアーゼArgC、staph aureus V8、キモトリプシン、Asp-N、Asn-C、PNGaseF、エンドプロテアーゼGluC、及びLysNが含まれる。
【0025】
「抗体」という用語は、最も広義に使用され、それらが所望の抗原結合活性を呈する限り、モノクローナル抗体、ポリクローナル抗体、多重特異性抗体(例えば、二重特異性抗体)、及び抗体断片を含むが、これらに限定されない、様々な抗体構造を包含する。
【0026】
「抗体断片」とは、インタクト抗体が結合する抗原に結合するインタクトな抗体の一部を含むインタクトな抗体以外の分子を指す。抗体断片の例には、Fv、Fab、Fab’、Fab’-SH、F(ab’)2、ダイアボディ、線状抗体、一本鎖抗体分子(例えば、scFv)、及び抗体断片から形成される多重特異性抗体が含まれるが、これらに限定されない。
【0027】
ある特定の実施形態において、本明細書に提供される抗体は、抗体断片である。抗体断片には、Fab、Fab’、Fab’-SH、F(ab’)2、Fv、及びscFv断片、ならびに以下に記載される他の断片が含まれるが、これらに限定されない。ある特定の抗体断片の概説に関しては、Hudson et al.Med.9:129-134(2003)を参照されたい。scFv断片の概説に関しては、例えば、Pluckthun,The Pharmacology of Monoclonal Antibodies,vol.113,Rosenburg and Moore eds.,(Springer-Verlag,New York),pp.269-315(1994)、WO93/16185、US5571894、US5587458を参照されたい。エピトープ残基に結合し、増加したインビボ半減期を有するサルベージ受容体を含むFab及びF(ab’)2断片の考察に関しては、(US5869046)。
【0028】
ダイアボディは、二価または二重特異性であり得る2つの抗原結合部位を有する抗体断片である(EP404097、WO1993/01161、Hudson et al.(2003)Nat.Med.9:129-134、Hollinger et al.(1993)Proc.Natl.Acad.Sci.USA,90:6444-6448)。トリアボディ及びテトラボディも、Hudson et al.(2003)Nat.Med.9:129-134に開示されている。
【0029】
単一ドメイン抗体は、抗体の重鎖可変ドメインの全てもしくは一部、または軽鎖可変ドメインの全てもしくは一部を含む、抗体断片である。ある特定の実施形態において、単一ドメイン抗体は、ヒト単一ドメイン抗体である(US6248516)。
【0030】
抗体断片は、本明細書に記載されるように、インタクト抗体のタンパク質分解性消化、ならびに組換え宿主細胞(例えば、E.coliまたはファージ)による産生を含むが、これらに限定されない様々な技法により作製され得る。
【0031】
本明細書における「Fc領域」という用語は、定常領域の少なくとも一部を含有する免疫グロブリン重鎖のC末端領域を規定するために使用される。この用語は、天然配列Fc領域及び変異形Fc領域を含む。一実施形態において、ヒトIgG重鎖Fc領域は、Cys226から、またはPro230から、重鎖のカルボキシル末端まで延びる。しかしながら、Fc領域のC末端リジン(Lys447)は、存在する場合もあれば、存在しない場合もある。本明細書で別途明記されない限り、Fc領域または定常領域内のアミノ酸残基の番号付けは、Kabat et al.,Sequences of Proteins of Immunological Interest,Fifth Edition,NIH Publication 91-3242,Bethesda Md.(1991),vols.1-3に記載されているように、EUインデックスとも呼ばれる、EU番号付けシステムに従う。
【0032】
「フレームワーク」または「FR」とは、超可変領域(HVR)残基以外の可変ドメイン残基を指す。定常ドメインのFRは一般に、4つのFRドメイン、FR1、FR2、FR3、及びFR4からなる。したがって、HVR及びFR配列は一般に、VH(またはVL)にFR1-H1(L1)-FR2-H2(L2)-FR3-H3(L3)-FR4の順序で出現する。
【0033】
「完全長抗体」、「インタクト抗体」、及び「全抗体」という用語は、本明細書で、天然抗体構造と実質的に同様の構造を有するか、または本明細書に定義されるFc領域を含有する重鎖を有する抗体を指すように同義に使用される。
【0034】
「ヒト抗体」は、ヒトもしくはヒト細胞により産生された抗体、またはヒト抗体レパートリーもしくは他のヒト抗体コード配列を利用する非ヒト源に由来する抗体のアミノ酸配列に対応するアミノ酸配列を保有するものである。ヒト抗体のこの定義は、非ヒト抗原結合残基を含むヒト化抗体を明確に除外する。
【0035】
ヒト化抗体及びそれらを作製する方法は、例えば、Almagro and Fransson,Front.Biosci.13:1619-1633(2008)で広範囲に概説され、例えば、Riechmann et al.,Nature 332:323-329(1988)、Queen et al.,Proc.Nat’l Acad.Sci.USA 86:10029-10033(1989)、米国特許第5,821,337号、米国特許第7,527,791号、米国特許第6,982,321号、米国特許第7,087,409号、Kashmiri et al.(2005)Methods36:25-34(SDR(a-CDR)グラフトを記載している)、Padlan,(1991)Mol.Immunol.28:489-498(「リサーフェシング」を記載している)、Dall’Acqua et al.(2005)Methods36:43-60(「FRシャッフリング」を記載している)、及びOsbourn et al,(2005)Methods 36:61-68、Klimka et al.(2000)Br.J.Cancer 83:252-260(FRシャッフリングへの「誘導選択」手法を記載している)に記載されている。
【0036】
ヒト化に使用され得るヒトフレームワーク領域としては、「最良適合」法を使用して選択されるフレームワーク領域(例えば、Sims et al.J.Immunol.151:2296(1993)を参照されたい)、軽鎖または重鎖可変領域の特定のサブグループのヒト抗体のコンセンサス配列に由来するフレームワーク領域(Carter et al.(1992)Proc.Natl.Acad.Sci.USA,89:4285、Presta et al.(1993)J.Immunol.,151:2623)、ヒト成熟(体細胞突然変異した)フレームワーク領域またはヒト生殖細胞株フレームワーク領域(Almagro and Fransson,(2008)Front.Biosci.13:1619-1633)、及びFRライブラリのスクリーニングから誘導されるフレームワーク領域(例えば、Baca et al.(1997)J.Biol.Chem.272:10678-10684、及びRosok et al.(1996)J.Biol.Chem.271:22611-22618)。
【0037】
ヒト抗体は一般に、van Dijk and van de Winkel,(2001)Curr.Opin.Pharmacol.5:368-74、Lonberg,Curr.Opin.Immunol.20:450-459(2008)に記載されている。ヒト抗体は、抗原投与に応答して、インタクトなヒト抗体またはヒト可変領域を有するインタクトな抗体を産生するように修正されたトランスジェニック動物に免疫原を投与することにより調製され得る。かかる動物は典型的には、内因性免疫グロブリン遺伝子座を置き換えるか、または染色体外に存在するかもしくは動物の染色体内に無作為に組み込まれているヒト免疫グロブリン遺伝子座の全てまたは一部を含有する。かかるトランスジェニックマウスにおいて、内因性免疫グロブリン遺伝子座は一般に、不活性化されている。トランスジェニック動物からヒト抗体を得るための方法の概説については、Lonberg,Nat.Biotech.23:1117-1125(2005)を参照されたい。例えば、米国特許第6,075,181号及び同第6,150,584号(XENOMOUSE(商標)技術について記載)、米国特許第5,770,429号(HuMAB(登録商標)技術について記載)、米国特許第7,041,870号(K-M MOUSE(登録商標)技術について記載)、ならびにUS2007/0061900(VELOCIMOUSE(登録商標)技術について記載)も参照されたい。かかる動物により生成されたインタクトな抗体由来のヒト可変領域は、例えば、異なるヒト定常領域と組み合わせることによりさらに修飾され得る。
【0038】
ヒト抗体は、ハイブリドーマに基づく方法によっても作製され得る。ヒトモノクローナル抗体の産生のためのヒト骨髄腫及びマウス-ヒトヘテロ骨髄腫細胞株が記載されている。(例えば、KozborJ.Immunol.,133:3001(1984)、Brodeur et al.,Monoclonal Antibody Production Techniques and Applications,pp.51-63(Marcel Dekker,Inc.,New York,1987)、及びBoerner et al.,(1991)J.Immunol.,147:86を参照のこと)。ヒトB細胞ハイブリドーマ技術により生成されるヒト抗体もまた、Li et al.(2006)Proc.Natl.Acad.Sci.USA,103:3557-3502に記載されている。さらなる方法としては、米国特許第7,189,826号(ハイブリドーマ細胞株からのモノクローナルヒトIgM抗体の産生について記載)及びNi,(2006)Xiandai Mianyixue,26(4):265-268(ヒト-ヒトハイブリドーマについて記載)に記載されているものが挙げられる。ヒトハイブリドーマ技術(トリオーマ技術)は、Vollmers and Brandlein,(2005)Histology and Histopathology,20(3):927-937及びVollmers and Brandlein,(2005)Methods and Findings in Experimental and Clinical Pharmacology,27(3):185-91にも記載されている。
【0039】
ヒト抗体は、ヒト由来ファージディスプレイライブラリから選択されるFvクローン可変ドメイン配列を単離することによっても生成され得る。次いで、かかる可変ドメイン配列は、所望のヒト定常ドメインと組み合わせられ得る。抗体ライブラリからヒト抗体を選択するための技法は、以下に記載される。
【0040】
「ヒトコンセンサスフレームワーク」は、ヒト免疫グロブリンVLまたはVHフレームワーク配列の選択において最も一般的に起こるアミノ酸残基を表す抗体のフレームワーク領域である。一般に、ヒト免疫グロブリンVLまたはVH配列の選択は、可変ドメイン配列のサブグループからである。概して、配列のサブグループは、上記Kabat et alにあるような、サブグループである。例示的な実施形態において、VLについては、サブグループは、サブグループカッパIである。別の例示的な実施形態において、VHについては、サブグループは、サブグループIIIである。
【0041】
「ヒト化」抗体は、非ヒトHVRからのアミノ酸残基及びヒトFRからのアミノ酸残基を含むキメラ抗体を指す。ある特定の実施形態において、ヒト化抗体は、少なくとも1つ、典型的には2つの可変ドメインの実質的に全てを含み、そのHVR(例えば、CDR)の全てまたは実質的に全てが非ヒト抗体のものに対応し、FRの全てまたは実質的に全てがヒト抗体のものに対応する。ヒト化抗体は任意に、ヒト抗体に由来する抗体定常領域の少なくとも一部を含み得る。抗体、例えば非ヒト抗体の「ヒト化型」は、ヒト化を経た抗体を指す。
【0042】
「キメラ」抗体という用語は、重鎖及び/または軽鎖の一部が特定の源または種に由来し、一方で重鎖及び/または軽鎖の残りが異なる源または種に由来する抗体を指す。例示的な「キメラ」抗体は、非ヒト可変領域(例えば、マウス、ラット、ハムスター、ウサギ、または非ヒト霊長類、例えば、サルに由来する可変領域)及びヒト定常領域を含む(米国特許第4,816,567号、Morrison et al.(1984)Proc.Natl.Acad.Sci.USA,81:6851-6855)。別の例示的なキメラ抗体は、クラスまたはサブクラスが親抗体のクラスまたはサブクラスから変化した「クラススイッチ」抗体である。キメラ抗体には、その抗原結合断片が含まれる。
【0043】
ある特定の実施形態において、キメラ抗体は、ヒト化抗体である。典型的には、非ヒト抗体は、非ヒト親抗体の特異性及び親和性を保持しながら、ヒトに対する免疫原性を低減させるために、ヒト化される。一般に、ヒト化抗体は、HVR、例えば、CDR(またはその一部)が非ヒト抗体に由来し、及びFR(またはその一部)がヒト抗体配列に由来する1つ以上の可変ドメインを含む。ヒト化抗体は任意に、ヒト定常領域の少なくとも一部も含むであろう。いくつかの実施形態において、ヒト化抗体におけるいくつかのFR残基は、例えば、抗体特異性または親和性を回復または改善するために、非ヒト抗体(例えば、HVR残基が由来する抗体)由来の対応する残基で置換される。
【0044】
本開示の抗体は、コンビナトリアルライブラリを所望される活性(複数可)を有する抗体についてスクリーニングすることによって、単離することができる。例えば、ファージディスプレイライブラリを産生し、所望の結合特性を保有する抗体に関してかかるライブラリをスクリーニングするための様々な方法が当該技術分野で既知である。かかる方法は、例えば、Hoogenboom et al.in Methods in Molecular Biology 178:1-37(O’Brien et al.,ed.,Human Press,Totowa,NJ,2001)に概説されており、例えば、McCafferty et al.(1990)Nature 348:552-554、Clackson et al.,Nature 352:624-628(1991)、Marks et al.(1992)J.Mol.Biol.222:581-597、Marks and Bradbury,in Methods in Molecular Biology 248:161-175(Lo,ed.,Human Press,Totowa,N.J.,2003)、Sidhu et al.(2004)J.Mol.Biol.338(2):299-310、Lee et al.(2004)J.Mol.Biol.340(5):1073-1093、Fellouse,(2004)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 101(34):12467-12472、及びLee et al.(2004)J.Immunol.Methods284(1-2):119-132にさらに記載されている。
【0045】
ある特定のファージディスプレイ方法において、VH及びVL遺伝子のレパートリーが、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)により別個にクローニングされ、ファージライブラリで無作為に組換えられ、次いで、Winter et al.(1994)Ann.Rev.Immunol.,12:433-55に記載されているように、抗原結合ファージのためにスクリーニングされ得る。ファージは典型的には、一本鎖Fv(scFv)断片またはFab断片のいずれかとして抗体断片をディスプレイする。免疫化源由来のライブラリは、ハイブリドーマの構築を必要とすることなく、高親和性抗体を免疫原に提供する。あるいは、Griffiths et al.,(1993)EMBO J,12:725-734により記載されるように、ナイーブレパートリーは、クローニングされ(例えば、ヒトから)、いかなる免疫化も伴わずに、幅広い非自己抗原また自己抗原に対する抗体の単一の源を提供することができる。最後に、ナイーブライブラリはまた、Hoogenboom and Winter(1992)J.Mol.Biol.,227:381-388に記載されるように、幹細胞からの再配列されていないV遺伝子セグメントをクローニングし、無作為配列を含有するPCRプライマーを使用して高度可変CDR3領域をコードし、インビトロで再配列を達成することによって、合成的に作製することができる。ヒト抗体ファージライブラリは、US5,750,373、US7,985,840、US7,785,903、US8,679,490、US8,054,268、及びUS2005/0079574、US2007/0117126、US2007/0237764、US2007/0292936に記載されている。ヒト抗体ライブラリから単離された抗体または抗体断片は、本開示の目的のためにヒト抗体またはヒト抗体断片と見なされる。
【0046】
抗体は、多重特異性抗体、例えば、二重特異性抗体であり得る。多重特異性抗体は、少なくとも2つの異なる部位に対する結合特異性を有するモノクローナル抗体である。結合特異性のうちの一方は、1つの抗原に対するものであり得るが、他方は、第2の抗原に対するものである。代替的に、二重特異性抗体は、同じ抗原の2つの異なるエピトープに結合し得る。二重特異性抗体は、抗原を発現する細胞に細胞傷害性薬剤を局在化させるためにも使用され得る。二重特異性抗体は、全長抗体または抗体断片(例えば、Ortiz-Sanchez et al.,Expert Opin.Biol.Ther.(2008)8(5):609-32を参照されたい)として調製され得る。
【0047】
多重特異性抗体を作製するための技法としては、異なる特異性を有する2つの免疫グロブリン重鎖-軽鎖対の組換え共発現(Milstein and Cuello,Nature305:537(1983))、WO1993/08829、及びTraunecker et al.,EMBO J.10:3655(1991)を参照のこと)、ならびに「ノブ・イン・ホール」操作(US5,731,168)が挙げられるが、これらに限定されない。多重特異性抗体はまた、静電ステアリング効果を操作して抗体Fc-ヘテロ二量体分子を作製すること(WO2009/089004A1)、2つ以上の抗体または断片を架橋すること(例えば、US4,676,980、及びBrennan et al.,Science,229:81(1985)を参照のこと)、ロイシンジッパーを使用して二重特異性抗体を産生すること(例えば、Kostelny et al.(1992)J.Immunol.148(5):1547-1553を参照されたい)、「ダイアボディ」技術を使用して、二重特異性抗体断片を作製すること(例えば、Hollinger et al.,(1993)Proc.Natl.Acad.Sci.USA,90:6444-448)、ならびに一本鎖Fv(sFv)二量体を使用すること(Gruber et al.(1994)J.Immunol.,152:5368)、ならびに三重特異性抗体を調製すること(Tutt et al.(1991)J.Immunol.147:60)によって作製され得る。
【0048】
「オクトパス抗体」を含む、3つ以上の機能抗原結合部位を有する操作抗体もまた、本明細書に含まれる(例えば、US2006/0025576)。
【0049】
本明細書における抗体または断片はまた、抗原、ならびに別の異なる抗原に結合する抗原結合部位を含む「二重作用FAb」または「DAF」も含む(例えば、US2008/0069820)。
【0050】
抗体変異形
本明細書に提供される抗体のアミノ酸配列変異形もまた企図される。例えば、抗体の結合親和性及び/または他の生物学的特性を改善することが望ましい場合がある。抗体のアミノ酸配列変異形は、抗体をコードするヌクレオチド配列中に適切な修飾を導入することによるか、またはペプチド合成により調製され得る。かかる修飾には、例えば、抗体のアミノ酸配列内における、残基からの欠失、及び/またはそこへの挿入、及び/またはその置換が含まれる。最終構築物に到達するために欠失、挿入、及び置換の任意の組み合わせを行うことができるが、但し、その最終構築物が所望の特徴、例えば、抗原結合を保有することを条件とする。
【0051】
抗体は、抗体及びタンパク質、薬物部分、標識、またはいくつかの他の基を含む融合タンパク質を含む。融合タンパク質は、組換え技法、複合体化、またはペプチド合成により作製されて、薬物動態等の特性を最適化し得る。ヒトまたはヒト化抗体は、アルブミン結合ペプチド(ABP)配列を含む融合タンパク質でもあり得る(Dennis et al(2002)J Biol.Chem.277:35035-35043の35038頁表III及びIV、米国特許公開第2004/0001827号[0076]、及びWO01/45746の12~13頁を参照されたく、これらの全ては、参照により本明細書に組み込まれる)。
【0052】
置換、挿入、及び欠失変異形
1つ以上のアミノ酸置換を有する抗体変異形が、本開示の方法においての使用及び分析のために提供される。置換型突然変異誘発の目的とする部位は、HVR及びFRを含む。実質的な変化が、「例示的な置換」という見出しで以下の表に提供され、アミノ酸側鎖クラスを参照して以下にさらに記載される。アミノ酸置換は、目的の抗体中に導入され得、その産物は、所望の活性、例えば、保持/改善された抗原結合、減少した免疫原性、または改善された抗体依存性細胞媒介細胞毒性(ADCC)もしくはCDCについてスクリーニングされ得る。
アミノ酸は、一般的な側鎖特性に従って群分けされ得る:
(1)疎水性:ノルロイシン、Met、Ala、Val、Leu、Ile
(2)中性親水性:Cys、Ser、Thr、Asn、Gln
(3)酸性:Asp、Glu
(4)塩基性:His、Lys、Arg
(5)鎖配向に影響を及ぼす残基:Gly、Pro
(6)芳香族:Tip、Tyr、Phe
【0053】
非保存的置換は、これらのクラスのうちの1つのメンバーを別のクラスと交換することを伴う。
【0054】
ある種類の置換変異形は、親抗体(例えば、ヒト化抗体またはヒト抗体)の1つ以上の超可変領域残基を置換することを伴う。一般に、さらなる研究のために選択される、結果として得られた変異形(複数可)は、親抗体と比較して、ある特定の生物学的特性における修正(例えば、改善)(例えば、親和性の増加、免疫原性の低減)を有し、及び/または実質的に保持された親抗体のある特定の生物学的特性を有することになる。例示的な置換変異形は、例えば、本明細書に記載される技法等のファージディスプレイに基づく親和性成熟技法を使用して好都合に生成され得る親和性成熟抗体である。簡潔には、1つ以上のHVR残基が突然変異され、変異形抗体がファージ上にディスプレイされ、特定の生物学的活性(例えば、結合親和性)に関してスクリーニングされる。
【0055】
改変(例えば、置換)は、HVRにおいて、例えば抗体親和性を改善するために行われ得る。かかる改変は、HVR「ホットスポット」、すなわち、体細胞成熟プロセス中に高頻度で突然変異を経るコドンによりコードされた残基(例えば、Chowdhury,(2008)Methods Mol.Biol.207:179-196を参照されたい)、及び/またはSDR(a-CDR)において行われてもよく、結果として得られた変異体VHまたはVLは結合親和性に関して試験される。二次ライブラリを構築し、それから再選択することによる親和性成熟が、例えば、Hoogenboom et al.Methods in Molecular Biology 178:1-37に記載されている(O’Brien et al.,ed.,Human Press,Totowa,N.J.,(2001))。親和性成熟のいくつかの実施形態において、様々な方法(例えば、エラープローンPCR、鎖シャッフリング、またはオリゴヌクレオチド指向性突然変異誘発)のいずれかにより、成熟のために選択された可変遺伝子中に多様性が導入される。次いで、二次ライブラリが作り出される。次いで、ライブラリがスクリーニングされ、所望の親和性を有する任意の抗体変異形を特定する。多様性を導入する別の方法は、いくつかのHVR残基(例えば、一度に4~6つの残基)が無作為化されるHVR指向手法を伴う。抗原結合に関与するHVR残基は、例えば、アラニンスキャニング突然変異誘発またはモデリングを使用して、具体的に特定され得る。特に、CDR-H3及びCDR-L3が、しばしば標的化される。
【0056】
ある特定の実施形態において、置換、挿入、または欠失は、かかる改変が抗原に結合する抗体の能力を実質的に低減させない限り、1つ以上のHVR間で起こり得る。例えば、結合親和性を実質的に低減しない保存的改変(例えば、本明細書に提供されるような保存的置換)がHVR内で行われ得る。かかる改変は、HVR「ホットスポット」またはSDRの外側であり得る。上述の変異形VH配列及びVL配列のある特定の実施形態において、各HVRは、改変されないか、または1つ、2つ、もしくは3つ以下のアミノ酸置換を含有するかのいずれかである。
【0057】
突然変異誘発のために標的化され得る抗体の残基または領域の特定に有用な方法は、Cunningham and Wells(1989)Science,244:1081-85により記載されている「アラニンスキャニング突然変異誘発」と呼ばれる。この方法において、残基または標的残基群(例えば、arg、asp、his、lys、及びglu等の荷電残基)が特定され、中性または負荷電アミノ酸(例えば、アラニンまたはポリアラニン)により置き換えられて、抗体と抗原との相互作用に影響が及ぼされたかどうかを決定する。さらなる置換が最初の置換に対する機能感受性を示すアミノ酸位置に導入され得る。代替的に、または追加的に、抗原-抗体複合体の結晶構造を使用して、抗体と抗原との間の接触点が特定される。かかる接触残基及び隣接する残基が置換の候補として標的とされ得るか、または排除され得る。変異形がスクリーニングされて、それらが所望の特性を有するかを決定することができる。
【0058】
アミノ酸配列挿入には、長さが1残基から100以上の残基を含有するポリペプチドの範囲であるアミノ末端及び/またはカルボキシル末端の融合、ならびに単一または複数のアミノ酸残基の配列内挿入が含まれる。末端挿入の例には、N末端メチオニル残基を有する抗体が含まれる。抗体分子の他の挿入変異形には、酵素(例えば、ADEPTのための)またはポリペプチドへの抗体のN末端もしくはC末端への融合が含まれ、これは抗体の血清半減期を増加させる。
【0059】
グリコシル化変異形
ある特定の実施形態において、本明細書に提供される抗体は、抗体がグリコシル化される程度を増加または減少させるように改変される。抗体へのグリコシル化部位の付加または欠失は、1つ以上のグリコシル化部位が作り出されるか、または除去されるようにアミノ酸配列を改変させることにより好都合に達成され得る。
【0060】
抗体がFc領域を含む場合、それに結合した炭水化物が改変され得る。哺乳動物細胞により産生された天然抗体は典型的には、N結合によりFc領域のCH2ドメインのAsn297に一般に結合される分岐状の二分岐オリゴ糖を含む(Wright et al.(1997)TIBTECH 15:26-32)。オリゴ糖には、様々な炭水化物、例えば、マンノース、N-アセチルグルコサミン(GlcNAc)、ガラクトース、及びシアル酸、ならびに二分岐オリゴ糖構造の「幹」のGlcNAcに結合したフコースが含まれ得る。いくつかの実施形態において、本発明の抗体中におけるオリゴ糖の修飾は、ある特定の特性の改善を有する抗体変異形を作り出すために行われ得る。
【0061】
一実施形態において、Fc領域に(直接または間接的に)結合したフコースを欠く炭水化物構造を有する抗体変異形が提供される。例えば、かかる抗体内のフコースの量は、1%~80%、1%~65%、5%~65%、または20%~40%であってもよい。フコースの量は、MALDI-TOF質量分析(例えば、WO2008/077546を参照されたい)により測定される、Asn297に結合した全ての糖構造(例えば、複合体、ハイブリッド、及び高マンノース構造)の合計に対して、Asn297の糖鎖内のフコースの平均量を計算することによって決定される。Asn297は、Fc領域の約297位(Fc領域残基のEU番号付け)に位置するアスパラギン残基を指すが、Asn297も、抗体の軽微な配列変異に起因して、297位の上流または下流の約±3アミノ酸に、すなわち294~300位の間に位置してもよい。かかるフコシル化変異形は、改善されたADCC機能を有し得る(米国特許公開第2003/0157108号、US2004/0093621)。「脱フコース化」または「フコース欠損」抗体変異形に関する特許公開の例には、US2003/0157108、WO2000/61739、WO2001/29246、US2003/0115614、US2002/0164328、US2004/0093621、US2004/0132140、US2004/0110704、US2004/0110282、US2004/0109865、WO2003/085119、WO2003/084570、WO2005/035586、WO2005/035778、WO2005/053742、WO2002/031140、Okazaki et al.J.Mol.Biol.336:1239-1249(2004)、Yamane-Ohnuki et al.(2004)Biotech.Bioeng.87:614が挙げられる。脱フコシル化抗体を産生することが可能な細胞株としては、タンパク質フコシル化が欠損したLec13CHO細胞(Ripka et al.Arch.Biochem.Biophys.249:533-545(1986)、US2003/0157108、及びWO2004/056312、特に実施例11)、及びアルファ-1,6-フコシルトランスフェラーゼ遺伝子、FUT8、ノックアウトCHO細胞等のノックアウト細胞株(Yamane-Ohnuki,et al.(2004)Biotech.Bioeng.87:614、Kanda,et al.(2006)Biotechnol.Bioeng.,94(4):680-688、WO2003/085107)が挙げられる。
【0062】
例えば、抗体のFc領域に結合した二分岐オリゴ糖がGlcNAcによって二分されている二分オリゴ糖を有する抗体変異形がさらに提供される。かかる抗体変異形は、低減されたフコシル化及び/または改善されたADCC機能を有し得る。二分オリゴ糖を有するかかる抗体変異体を記載している公開としては、WO2003/011878、米国特許第6,602,684号、及び米国特許公開2005/0123546が挙げられる。Fc領域に結合したオリゴ糖内に少なくとも1つのガラクトース残基を有する抗体変異体もまた提供され、改善されたCDC機能を有し得る。かかるガラクトース残基抗体変異形が記載されている公開としては、WO1997/30087、WO1998/58964、WO1999/22764が挙げられる。
【0063】
部位特異的抗体薬物複合体
上記のように、ADC設計において主な課題のうちの1つは、各抗体または抗体断片に結合している0~8個の薬物分子を有し得る現在利用可能なADCの均一性である。ADC種においてのこの異質性は、ADC組成物の安定性、一貫性、薬物動態、及びインビボでの性能を評価、ならびに監視する分析方法に悪影響を与える。この理由のために、事前決定された部位(複数可)で抗体上に、薬物の化学的導入を可能にし、産生後のインビボでの循環中の複合体の安定性を確実する複合体手法が特定された。免疫複合体とも称される、これらの部位特異的ADCは、操作システイン(例えば、THIOMAB(商標))、非天然アミノ酸、セレノシステイン残基、グリコトランスフェラーゼ及びトランスグルタミナーゼ1を通した酵素複合体、ならびに他の技術の使用を含む新しい部位特異的複合体手法に依存する。特に、THIOMAB-薬物複合体(TDC)は、同種のDAR2を産生するために制御され得る。
【0064】
1)システイン操作抗体薬物複合体
システイン操作抗体(例えば、THIOMAB(商標))は、システイン残基(複数可)で置換されている抗体の1つ以上の残基を含む。置換された残基は、反応性チオール基が抗体の到達可能な部位に位置付けられるように、抗体の到達可能な部位で生じ得、抗体を他の部分、例えば、薬物部分またはリンカー-薬物部分に複合体化するために使用され得、部位特異的ADCを作製する。かかるTHIOMABの例には、システイン操作抗体が含まれ、以下の残基のうちのいずれか1つ以上がシステインで置換され得る:軽鎖のV205(Kabat番号付け)、重鎖のA118(EU番号付け)、ならびに重鎖Fc領域の5400(EU番号付け)、ならびに軽鎖のS121及びK149。システイン操作抗体を作製する方法は、US7,521,541、US9,000,130に記載されている方法を含むが、これらに限定されない。
【0065】
それ故に、本開示の方法は、システイン操作抗体を含む抗体-薬物複合体に適用され得、ここで、野生型または親抗体の1つ以上のアミノ酸がシステインアミノ酸で置き換えられる(THIOMAB(商標))。抗体のいずれの形態も、そのように操作され得る。例えば、親Fab抗体断片は、操作されて、システイン操作Fabを形成し得、親モノクローナル抗体は、操作されて、システイン操作モノクローナル抗体を形成し得る。単一の部位の突然変異により、Fab抗体断片に単一の操作システイン残基が生じるが、単一部位の突然変異により、IgG抗体の二量体性に起因して完全長抗体に2つの操作システイン残基が生じることに留意されたい。置き換えられた(「操作された」)システイン(Cys)残基を有する突然変異体は、新しく導入された、操作システインチオール基の反応性に関して評価される。チオール反応性値は、0~1.0の範囲内の相対的な数値であり、任意のシステイン操作抗体に関して測定され得る。本発明のシステイン操作抗体のチオール反応性値は、0.6~1.0、0.7~1.0、または0.8~1.0の範囲である。
【0066】
システインアミノ酸は、鎖内または分子間ジスルフィド結合を形成しない抗体の重鎖(HC)または軽鎖(LC)中の反応部位にて操作してもよい(Junutula, et al.(2008)Nature Biotech.,26(8):925-932、Dornan et al(2009)Blood 114(13):2721-2729、US7521541、US7723485、WO2009/052249、Shen et al(2012)Nature Biotech.,30(2):184-191、Junutula et al(2008)J.Immuno.Methods 332:41-52)。操作システインチオールは、チオール-反応性で求電子性のピリジルジスルフィド基を有する本発明のリンカー試薬またはリンカー-薬物中間体と反応して、システイン操作抗体及び薬物部分を有するADCを形成し得る。それ故に、これらの操作されたADC中の薬物部分の特定の場所(すなわち、部位)は、設計され、制御され、既知であり得る。それによって、薬物の負荷量は、操作システインチオール基が典型的に、チオール反応性リンカー試薬またはリンカー-薬物中間体と高い収率で反応するため、制御され得る。重鎖または軽鎖の単一部位にて置換によりシステインアミノ酸を導入するように抗体を操作することで、対称の抗体上に2つの新しいシステインが得られる。2に近い薬物の負荷量(DAR)が達成され得、これらの部位特異的複合体化されたADCにおいてほぼ完全な均一性が達成され得る。
【0067】
2)非天然アミノ酸操作抗体薬物複合体
システイン操作抗体と同様に、非天然アミノ酸(UAA)のタンパク質への組み込みは、生体直交型官能性を部位特異的に操作する柔軟な方法を提供する(例えば、Agarwal and Bertozzi,Bioconjugate Chem.2015,26:176-92、Sochaj,et al.,Biotech.Advances(2015)33:775-84を参照されたい)。非天然アミノ酸を、抗体または抗体断片等のタンパク質に設計及び特異的に導入するために、望ましいUAAの部位でアンバー終止コドン(TAG)を有する遺伝子によってコードされる変異体タンパク質は、アンバー終止コドン部位でUAAを導入することができる対応する直交性tRNA/アミノアシル-tRNAシンテターゼ(aaRS)対に沿って、細胞内で発現され得る(例えば、Liu and Schultz(2010)Annu.Rev.Biochem.79:413-44)。E.coli UAA発現システムに組み込まれる1つの非天然アミノ酸は、p-アセチルフェニルアラニンであり、そのケトンの生体直交性反応性のために選択された(Wang,et al.,(2003)Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.100:56-61)。この非天然アミノ酸は、アミノオキシ-オーリスタチンFに複合体化され、結果として得られたトラスツズマブ抗体はマウスにおいて上質の薬物動態特性を示した(Tian,et al.,(2014)Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.111:1766-1771)。この部位特異的操作方法論は、2つ以上の生体直交性官能基をタンパク質へ含むために拡大され得る。1つ以上の非天然アミノ酸のタンパク質への組み込みに基づくこの手法は、タンパク質中の正確に設計され特定された部位に限定される薬物複合体(複数可)を有する、極めて同質のADC組成物を産生する、抗がん薬物等の治療部分に容易に一貫して複合体化された特定の数の既知の非天然アミノ酸を有する抗体-薬物複合体を提供し得る。
【0068】
3)セレノシステイン操作抗体薬物複合体
セレノシステインは、天然であるが、稀である、セレノタンパク質の構成成分として全ての生命界に存在するアミノ酸であり、そのうちの25個は、哺乳動物において現在既知である。セレノシステインは、硫黄に代わってセレンを含有し、それにより、酸性条件においてシステインよりも求電子試薬に対してより反応性になる。化学的特性は、マレイミド及びヨードアセタミド含有剤を遺伝子操作されたセレノシステイン残基を含む抗体に選択的に結合するために使用された(Hofer,et al.(2009)Biochemistry 48:12047-57、Li,et al.,(2014)Methods 65:133-38)。セレノシステインは、蛍光プローブ、ビオチン、及びビオチンポリエチレングリコール(ビオチン-PEG)を抗体に複合体化するために使用され、特異的に画定された部位及び化学量論の薬剤の結合を有する完全機能複合体をもたらし、セレノシステイン残基操作に基づいて同質のADCの産生物を示す(例えば、Agarwal and Bertozzi,(2015)Bioconjugate Chem.26:176-92、Sochaj,et al.(2015)Biotech.Advances33:775-84)を参照されたい)。
【0069】
4)グリカン修飾抗体薬物複合体
ヒトIgG分子は、CH2ドメインの各N297残基で保存グリコシル化部位を有し、これらのペンダント結合N-グリカンを部位特異的複合体に好都合な標的にする。このグリコシル化部位は、結合されたグリカンに対する薬物の複合体が抗原結合に影響を与えるべきでない様々な領域から十分に離れている。これらのグリカンに治療部分を結合する1つの方法は、過ヨウ素酸と共にこれらのグリカンに含有されるビシナルジオール部分の酸化的切断を含み、還元的にアミノ化され得、ヒドラジド及びアミノオキシ化合物に複合体化され得るアルデヒドを生成する(O’Shannessy,et al.(1984)Immunol.Lett.8:273-77)。別の方法は、これらのグリカン中のN-アセチルグルコサミンのフコシル化を増加させることを含む。これらのフコース残基の酸化は、薬物及びフルオロフォアを抗体上のこれらの特異的部分に結合するために使用され得るカルボン酸及びアルデヒド部分を産生する(Zuberbuhler,et al.(2012)Chem.Commun.48:7100-02)。別の方法は、これらのグリカン中のシアル酸を修飾することを含み(ならびに、これらのグリカン中のシアル酸含有量を増加させること)、その後、シアル酸及びアミノオキシ薬物を有する複合体の酸化が続き、オキシム結合複合体を形成する(Zhou,et al.(2014) Bioconjugate Chem.25:510-20)。代替的に、シアリルトランスフェラーゼは、これらのグリカン中に生体直交性官能基を含む修飾シアル酸残基を組み込むために使用され得る。次いで、生体直交性官能基は、修飾されて、治療部分をグリカンの部位に結合する(Li,et al.(2014)Angew.Chem.Int.53:7179-82)。これらのグリカン部位を修飾するための別の手法は、ガラクトース、またはケトンもしくはアジドを含有するガラクトース類似体を、これらのグリカン中のN-アセチルグルコサミンに結合するためのグリコシルトランスフェラーゼの使用、及び薬物または放射性ヌクレオチドをガラクトース分子に結合することである(Khidekel,et al.,(2003)J.Am.Chem.Soc.125:16162-63、Clark,et al.,(2008)J.Am.Chem.Soc.130:11576-77、Boeggeman,et al.(2007)Bioconjugate Chem.18:806-14)。別の手法は、代謝オリゴ糖操作による抗体の発現の時点で、これらのグリカン中への修飾糖の導入に依存する(Campbell,et al.(2007)Mol.BioSyst.3:187-94、Agard,et al.,(2009)Acc.Chem.Res.42:788-97)。この手法は、フコース類似体の導入を用いて利用されており、その後、フコシル化部位で薬物結合/修飾が続く(Okeley,et al.(2013)Bioconjugate Chem.24:1650-1655、Okeley,et al.,(2013)Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.110:5404-09.)。
【0070】
抗体薬物複合体
抗体(PROBODY(商標)、Cytomx Therapeutics LLC,South San Francisco,CA)は、組換え、タンパク質分解性活性抗体抗薬物であり、抗体軽鎖のアミノ末端がプロテアーゼ切断リンカー及び抗原に結合しているブロック抗体に設計されたマスキングペプチドと共に延在されている、モノクローナル抗体からなる(米国特許第8,563,269号、Desnoyers,et al.,Sci Transl Med.2013 16;5(207):207ra144、Polu and Lowman,Expert Opin Biol Ther.2014,14(8):1049-53、Wong,et al.,Biochimie.2016 122:62-7)。特異的腫瘍関連プロテアーゼによるリンカーの切断は、腫瘍内の抗原へ結合する能力がある抗体のマスク及び放出の分離をもたらす。抗体は、健全な組織に対して、腫瘍微小環境内に存在する細胞外プロテアーゼ活性の根本的な調節不全を開発するために設計され、それによって、不十分な活性プロテアーゼが存在しマスクを除去する健全な組織中で抗原に最低限のみ結合する。腫瘍内で、十分な無調節プロテアーゼ活性の存在下では、マスクはリンカーの切断によって除去され、抗原結合が進行する。抗体薬物複合体(PDC)は、操作されて、抗体を微小管阻害剤MMAEに結合している(Weidle,et al.,Can Gen&Proteom 2014,11:67-80、Sagert,et al.,Abstract 2665,AACR Annual Meeting 2014)。
【0071】
6)ポリマーまたはペプチド複合体
抗体薬物複合体はまた、抗体、または抗体断片を使用して形成され、天然アミノ酸からなる親水性ポリマーまたはペプチドに結合しており、それら自体が治療用ペプチド、タンパク質、または治療用小分子に結合され得る。それ故に、ポリマーまたはペプチドは、抗体と治療部分(薬物)との間のリンカーとして本質的に役立つが、このリンカーは、複数の治療部分を結合するための手段を提供し、それによって各ADC分子のDARを著しく増加させる。これらの構築物を使用すると、部位特異的ADCの部位特異的複合体の特性を維持する間、14~18のDAR、またはより高いDARが可能である。かかるペプチド/ポリマー複合体を含む例示的なADCは、上述のシステイン操作抗体等の抗体の軽鎖内の特異的、操作アミノ酸残基で、XTEN(商標)ペプチド複合体(Amunix,Mountain View,CA)に結合しているADCを含む。これらのペプチドは、XTENペイロードADC複合体をもたらす架橋反応剤を介して1つ以上のペイロードに結合するための複合体パートナーとして有用である、実質的に同種のポリペプチドである。これらのペプチドリンカーは、物理学的条件下で、低い程度有するか、または二次構造もしくは三次構造を有さない、非天然型の、実質的に非繰り返し配列から構成される、ポリペプチドであり、典型的には約36~3000個のアミノ酸を有し、その大部分または全体は、細胞表面受容体に対してリガンドとして役立つ標的部分の1つ以上の分子及びエフェクター薬物の1つ以上の分子に複合体化された直交性ペンダント結合反応性基の画定された数を有する、小さな親水性アミノ酸である(米国特許公開2015/0037359)。
【0072】
7)Fc融合タンパク質
生物製剤製品として開発されており、米国で薬物としての使用にFDAによって承認されている、幅広い抗体サイトカイン融合タンパク質が存在する。これらの融合タンパク質の大半は、異なるサイトカインが全長抗体またはそれらの誘導体に融合されているタンパク質構築物を有する腫瘍抗原を標的化する(例えば、Ortiz-Sanchez et al.(2008)Expert Opin.Biol.Ther.8(5):609-32、Sochaj,et al.(2015)Biotechnology Advances 33:775-84を参照されたい)。各サイトカインは、両方の構成成分の生物学的活性を保存するために、サイトカイン及び抗体の構造に依存して抗体のアミノ末端またはカルボン末端で融合され得る。増えている数の抗体誘導体とそれらと組み合わされ得る異なるサイトカインとの間で、異なる抗体サイトカイン融合タンパク質の量は、極めて大きい。追加的に、Fc融合構築物は、自己免疫条件等の非がん臨床的適応のために開発されている。これらのタンパク質は、自己タンパク質を標的化する抗体と直接的に競合し得る。概して、これらのFc融合タンパク質構築物は、リガンド特異性(リガンド分子上で1つまたは多重エピトープに結合)及び結合価(リガンド分子への結合の化学量論)に基づいて、以下の4つの群に分類されている:単一リガンド特異性を有する二価、複数リガンド特異性を有する一価、単一リガンド特異性を有する多価、及び単一リガンド特異性を有する一価。
【0073】
Fc融合タンパク質構築物以外に、これらの部位特異的、操作免疫複合体は、それらの野生型の親抗体対応物の抗原結合能力を保持する。それ故に、部位特異的抗体複合体は、抗原に、好ましくは特異的に結合することができる。かかる抗原には、例えば、腫瘍関連抗原(TAA)、細胞表面受容体タンパク質及び他の細胞表面分子、膜貫通タンパク質、シグナル伝達タンパク質、細胞生存制御因子、細胞増殖制御因子、組織の発達または分化に機能的に寄与することが既知であるか、または想定される分子、リンホカイン、サイトカイン、細胞周期制御に関与する分子、脈管形成に関与する分子、ならびに血管新生に機能的に寄与することが既知であるか、または想定される分子が含まれる。腫瘍関連抗原は、クラスター分化因子(すなわち、CDタンパク質)であり得る。システイン操作抗体が結合することができる抗原は、上述の分類のうちの1つのサブセットのメンバーであり得、ここで、当該分類の他のサブセット(複数可)は、(目的とする抗原に関して)異なる特徴を有する他の分子/抗原を含む。
【0074】
本開示の方法で使用される部位特異的抗体複合体は、細胞表面受容体及び腫瘍関連抗原(TAA)に対する抗体を含むが、これらに限定されない、がんの治療で有用な免疫複合体を含む。腫瘍関連抗原は、当該技術分野において既知であり、当該技術分野において周知の方法及び情報を使用して抗体を産生するのに使用するために調製され得る。がんの診断及び療法のための有効な細胞標的を発見するための試みにおいて、研究者らは、1つ以上の正常な非がん性細胞(複数可)と比較して、1つ以上の特定の種類(複数可)のがん細胞の表面上に特異的に発現する膜貫通ポリペプチドまたは他の様式で腫瘍に関連するポリペプチドを特定しようとした。しばしば、かかる腫瘍関連ポリペプチドは、非がん性細胞の表面上と比較して、がん細胞の表面上でより豊富に発現する。かかる腫瘍関連細胞表面の抗原ポリペプチドの特定により、抗体に基づく療法を介してがん細胞の破壊のために特異的に標的化する能力が生じた。
【0075】
腫瘍関連抗原TAAの例には、以下に列挙されるTAA(1)~(53)が含まれるが、これらに限定されない。当該技術分野で既知である、これらの抗原に関連する情報を以下に列挙し、この情報には、名称、別称、Genbank受託番号、及び主な参考文献(複数可)に続き、National Center for Biotechnology Information(NCBI)の核酸及びタンパク質配列を特定する慣例が含まれている。TAA(1)~(53)に対応する核酸及びタンパク質配列は、GenBank等の公的データベースにおいて入手可能である。抗体により標的とされる腫瘍関連抗原には、引用される参考文献において特定されている配列と比較して、少なくとも約70%、80%、85%、90%、もしくは95%の配列同一性を保有する全てのアミノ酸配列変異形及びアイソフォーム、または引用される参考文献中に見出される配列を有するTAAと実質的に同じ生物学的特性もしくは特徴を呈するものが含まれる。例えば、変異形配列を有するTAAは一般に、列挙されている対応する配列を有するTAAに特異的に結合する抗体に特異的に結合することができる。本明細書に具体的に引用される参考文献中の配列及び開示は、参照により明示的に組み込まれる。
【0076】
腫瘍関連抗原
(1)BMPR1B(骨形成タンパク質受容体-IB型、Genbank受託番号NM_001203)ten Dijke,P.,et al Science 264(5155):101-104(1994)、Oncogene 14(11):1377-1382(1997))、WO2004/063362(請求項2)、WO2003/042661(請求項12)、US2003/134790-A1(38~39頁)、WO2002/102235(請求項13、296頁)、WO2003/055443(91~92頁)、WO2002/99122(実施例2、528~530頁)、WO2003/029421(請求項6)、WO2003/024392(請求項2、図112)、WO2002/98358(請求項1、183頁)、WO2002/54940(100~101頁)、WO2002/59377(349~350頁)、WO2002/30268(請求項27、376頁)、WO2001/48204(実施例、図4)NP_001194骨形成タンパク質受容体、IB型/pid=NP_001194.1-相互参照:MIM:603248、NP_001194.1、AY065994。
(2)E16(LAT1、SLC7A5、Genbank受託番号NM_003486)Biochem.Biophys.Res.Commun.255(2),283-288(1999)、Nature 395(6699):288-291(1998)、Gaugitsch,H.W.,et al(1992)J.Biol.Chem.267(16):11267-11273)、WO2004/048938(実施例2)、WO2004/032842(実施例IV)、WO2003/042661(請求項12)、WO2003/016475(請求項1)、WO2002/78524(実施例2)、WO2002/99074(請求項19、127~129頁)、WO2002/86443(請求項27、222頁、393頁)、WO2003/003906(請求項10、293頁)、WO2002/64798(請求項33、93~95頁)、WO2000/14228(請求項5、133~136頁)、US2003/224454(図3)、WO2003/025138(請求項12、150頁)、NP_003477溶質輸送体ファミリー7(カチオン性アミノ酸輸送体、y+システム)、メンバー5/pid=NP_003477.3-ホモサピエンス、相互参照:MIM:600182、NP_003477.3、NM_015923、NM_003486_1。
(3)STEAP1(前立腺の6回膜貫通上皮抗原、Genbank受託番号NM_012449)Cancer Res.61(15),5857-5860(2001),Hubert,R.S.,et al(1999)Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.96(25):14523-14528)、WO2004/065577(請求項6)、WO2004/027049(図1L)、EP1394274(実施例11)、WO2004/016225(請求項2)、WO2003/042661(請求項12)、US2003/157089(実施例5)、US2003/185830(実施例5)、US2003/064397(図2)、WO2002/89747(実施例5、618~619頁)、WO2003/022995(実施例9、図13A、実施例53、173頁、実施例2、図2A)、NP_036581前立腺の6回膜貫通上皮抗原。相互参照:MIM:604415、NP_036581.1、NM_012449_1。
(4)0772P(CA125、MUC16、Genbank受託番号AF361486)J.Biol.Chem.276(29):27371-27375(2001))、WO2004/045553(請求項14)、WO2002/92836(請求項6、図12)、WO2002/83866(請求項15、116~121頁)、US2003/124140(実施例16)、US798959。相互参照:GI:34501467、AAK74120.3、AF361486_1。
(5)MPF(MPF、MSLN、SMR、巨核球増強因子、メソテリン、Genbank受託番号NM_005823)Yamaguchi,N.,et al.Biol.Chem.269(2),805-808(1994),Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.96(20):11531-11536(1999),Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.93(1):136-140(1996),J.Biol.Chem.270(37):21984-21990(1995))、WO2003/101283(請求項14)、(WO2002/102235(請求項13、287~288頁)、WO2002/101075(請求項4、308~309頁)、WO2002/71928(320~321頁)、WO9410312(52~57頁)、相互参照:MIM:601051、NP_005814.2、NM_005823_1。
(6)Napi3b(NAPI-3B、NPTIIb、SLC34A2、溶質輸送体ファミリー34(リン酸ナトリウム)、メンバー2、II型ナトリウム依存性リン酸輸送体3b、Genbank受託番号NM_006424)J.Biol.Chem.277(22):19665-19672(2002)、Genomics62(2):281-284(1999)、Feild,J.A.,et al.(1999)Biochem.Biophys.Res.Commun.258(3):578~582)、WO2004/022778(請求項2)、EP1394274(実施例11)、WO2002/102235(請求項13、326頁)、EP875569(請求項1、17~19頁)、WO2001/57188(請求項20、329頁)、WO2004/032842(実施例IV)、WO2001/75177(請求項24、139~140頁)、相互参照:MIM:604217、NP_006415.1、NM_006424_1。
(7)Sema5b(FLJ10372、KIAA1445、Mm.42015、SEMA5B、SEMAG、セマフォリン5b Hlog、セマドメイン、7回トロンボスポンジン反復(1型及び1型様)、膜貫通ドメイン(TM)、及び短い細胞質ドメイン、(セマフォリン)5B、Genbank受託番号AB040878)Nagase T.,et al(2000)DNA Res.7(2):143-150)、WO2004/000997(請求項1)、WO2003/003984(請求項1)、WO2002/06339(請求項1、50頁)、WO2001/88133(請求項1、41~43頁、48~58頁)、WO2003/054152(請求項20)、WO2003/101400(請求項11)、受託番号:Q9P283、EMBL、AB040878、BAA95969.1。Genew、HGNC:10737。
(8)PSCA hlg(2700050C12Rik、C530008O16Rik、RIKEN cDNA 2700050C12、RIKEN cDNA 2700050C12遺伝子、Genbank受託番号AY358628)、Ross et al.(2002)Cancer Res.62:2546-2553、US2003/129192(請求項2)、US2004/044180(請求項12)、US2004/044179(請求項11)、US2003/096961(請求項11)、US2003/232056(実施例5)、WO2003/105758(請求項12)、US2003/206918(実施例5)、EP1347046(請求項1)、WO2003/025148(請求項20)、相互参照:GI:37182378、AAQ88991.1、AY358628_1。
(9)ETBR(エンドセリンB型受容体、Genbank受託番号AY275463)、Nakamuta M.,et al.Biochem.Biophys.Res.Commun.177,34-39,1991、Ogawa Y.,et al.Biochem.Biophys.Res.Commun.178,248-255,1991、Arai H.,et al Jpn.Circ.J.56,1303-1307,1992、Arai H.,et alJ.Biol.Chem.268,3463-3470,1993、Sakamoto A.,Yanagisawa M.,et al.Biochem.Biophys.Res.Commun.178,656-663,1991、Elshourbagy N.A.,et al.J.Biol.Chem.268,3873-3879,1993、Haendler B.,et al J.Cardiovasc.Pharmacol.20,s1-S4,1992、Tsutsumi M.,et al Gene 228,43-49,1999、Strausberg R.L.,et al Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.99,16899-16903,2002、Bourgeois C.,et al J.Clin.Endocrinol.Metab.82,3116-3123,1997、Okamoto Y.,et al.Biol.Chem.272,21589-21596,1997、Verheij J.B.,et al Am..J.Med.Genet.108,223-225,2002、Hofstra R.M.W.,et al Eur.J.Hum.Genet.5,180-185,1997、Puffenberger E.G.,et al Cell 79,1257-1266,1994、Attie T.,et al,Hum.Mol.Genet.4,2407-2409,1995、Auricchio A.,et al Hum.Mol.Genet.5:351-354,1996、Amiel J.,et al Hum.Mol.Genet.5,355-357,1996、Hofstra R.M.W.,et al Nat.Genet.12,445-447,1996、Svensson P.J.,et al Hum. Genet.103,145-148,1998、Fuchs S.,et al Mol.Med.7,115-124,2001、Pingault V.,et al(2002)Hum.Genet.111,198-206、WO2004/045516(請求項1)、WO2004/048938(実施例2)、WO2004/040000(請求項151)、WO2003/087768(請求項1)、WO2003/016475(請求項1)、WO2003/016475(請求項1)、WO2002/61087(図1)、WO2003/016494(図6)、WO2003/025138(請求項12、144頁)、WO2001/98351(請求項1、124~125頁)、EP522868(請求項8、図2)、WO2001/77172(請求項1、297~299頁)、US2003/109676、US6518404(図3)、US5773223(請求項1a、欄31~34)、WO2004/001004。
(10)MSG783(RNF124、仮説上のタンパク質FLJ20315、Genbank受託番号NM_017763)、WO2003/104275(請求項1)、WO2004/046342(実施例2)、WO2003/042661(請求項12)、WO2003/083074(請求項14、61頁)、WO2003/018621(請求項1)、WO2003/024392(請求項2、図93)、WO2001/66689(実施例6)、相互参照:LocusID:54894、NP_060233.2、NM_017763_1。
(11)STEAP2(HGNC_8639、IPCA-1、PCANAP1、STAMP1、STEAP2、STMP、前立腺癌関連遺伝子1、前立腺癌関連タンパク質1、前立腺の6回膜貫通上皮抗原2、6回膜貫通前立腺タンパク質、Genbank受託番号AF455138)Lab.Invest.82(11):1573-1582(2002))、WO2003/087306、US2003/064397(請求項1、図1)、WO2002/72596(請求項13、54~55頁)、WO2001/72962(請求項1、図4B)、WO2003/104270(請求項11)、WO2003/104270(請求項16)、US2004/005598(請求項22)、WO2003/042661(請求項12)、US2003/060612(請求項12、図10)、WO2002/26822(請求項23、図2)、WO2002/16429(請求項12、図10)、相互参照:GI:22655488、AAN04080.1、AF455138_1。
(12)TrpM4(BR22450、FLJ20041、TRPM4、TRPM4B、一過性受容器電位カチオンチャネル、サブファミリーM、メンバー4、Genbank受託番号NM_017636)。Xu,X.Z.,et al Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.98(19):10692-10697(2001),Cell 109(3):397-407(2002),J.Biol.Chem.278(33):30813-30820(2003))、US2003/143557(請求項4)、WO2000/40614(請求項14、100~103頁)、WO2002/10382(請求項1、図9A)、WO2003/042661(請求項12)、WO2002/30268(請求項27、391頁)、US2003/219806(請求項4)、WO2001/62794(請求項14、図1A~D)、相互参照:MIM:606936、NP_060106.2、NM_017636_1。
(13)CRIPTO(CR、CR1、CRGF、CRIPTO、TDGF1、奇形癌種由来の成長因子、Genbank受託番号NP_003203またはNM_003212)。Ciccodicola,A.,et al EMBOJ.8(7):1987-1991(1989),Am.J.Hum.Genet.49(3):555-565(1991))、US2003/224411(請求項1)、WO2003/083041(実施例1)、WO2003/034984(請求項12)、WO2002/88170(請求項2、52~53頁)、WO2003/024392(請求項2、図58)、WO2002/16413(請求項1、94~95頁、105頁)、WO2002/22808(請求項2、図1)、US5,854,399(実施例2、欄17~18)、US5,792,616(図2)、相互参照:MIM:187395、NP_003203.1、NM_003212_1。
(14)CD21(CR2(補体受容体2)またはC3DR(C3d/Epstein Barrウィルス受容体)またはHs.73792 Genbank受託番号M26004)。Fujisaku et al(1989)J.Biol.Chem.264(4):2118-2125)、Weis J.J.,et alJ.Exp.Med.167,1047-1066,1988、Moore M.,et al.Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.84,9194-9198,1987、Barel M.,et al.Mol.Immunol.35,1025-1031,1998、Weis J.J.,et al.Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.83,5639-5643,1986、Sinha S.K.,et al.(1993)J.Immunol.150,5311-5320、WO2004/045520(実施例4)、US2004/005538(実施例1)、WO2003/062401(請求項9)、WO2004/045520(実施例4)、WO9102536(図9.1~9.9)、WO2004/020595(請求項1)、受託番号:P20023、Q13866、Q14212、EMBL、M26004、AAA35786.1。
(15)CD79b(CD79B、CD79b、IGb(免疫グロブリン関連ベータ)、B29、Genbank受託番号NM_000626または11038674)。Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.(2003)100(7):4126-4131,Blood(2002)100(9):3068-3076、Muller et al(1992)Eur.J.Immunol.22(6):1621-1625)、WO2004/016225(請求項2、図140)、WO2003/087768、US2004/101874(請求項1、102頁)、WO2003/062401(請求項9)、WO2002/78524(実施例2)、US2002/150573(請求項5、15頁)、US5644033、WO2003/048202(請求項1、306頁及び309頁)、WO99/558658、US6,534,482(請求項13、図17A/B)、WO2000/55351(請求項11、1145~1146頁)、相互参照:MIM:147245、NP_000617.1、NM_000626_1。
(16)FcRH2(IFGP4、IRTA4、SPAP1A(SH2ドメイン含有ホスファターゼアンカータンパク質1a)、SPAP1B、SPAP1C、Genbank受託番号NM_030764、AY358130)。Genome Res.13(10):2265-2270(2003)、Immunogenetics54(2):87-95(2002)、Blood 99(8):2662-2669(2002)、Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.98(17):9772-9777(2001)、Xu,M.J.,et al.(2001)Biochem.Biophys.Res.Commun.280(3):768-775、WO2004/016225(請求項2)、WO2003/077836、WO2001/38490(請求項5、図18D-1~18D-2)、WO2003/097803(請求項12)、WO2003/089624(請求項25)、相互参照:MIM:606509、NP_110391.2、NM_030764_1。
(17)HER2(ErbB2、Genbank受託番号M11730)Coussens L.,et al.Science(1985)230(4730):1132-1139)、Yamamoto T.,et al.Nature 319,230-234,1986、Semba K.,et al.Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.82,6497-6501,1985、Swiercz J.M.,et al.J.Cell Biol.165,869-880,2004、Kuhns J.J.,et al.J.Biol.Chem.274,36422-36427,1999、Cho H.-S.,et al Nature 421,756-760,2003、Ehsani A.,et al(1993)Genomics 15,426-429、WO2004/048938(実施例2)、WO2004/027049(図1I)、WO2004/009622、WO2003/081210、WO2003/089904(請求項9)、WO2003/016475(請求項1)、US2003/118592、WO2003/008537(請求項1)、WO2003/055439(請求項29、図1A~B)、WO2003/025228(請求項37、図5C)、WO2002/22636(実施例13、95~107頁)、WO2002/12341(請求項68、図7)、WO2002/13847(71~74頁)、WO2002/14503(114~117頁)、WO2001/53463(請求項2、41~46頁)、WO2001/41787(15頁)、WO2000/44899(請求項52、図7)、WO2000/20579(請求項3、図2)、US5,869,445(請求項3、欄31~38)、WO9630514(請求項2、56~61頁)、EP1439393(請求項7)、WO2004/043361(請求項7)、WO2004/022709、WO2001/00244(実施例3、図4)、受託番号:P04626、EMBL、M11767、AAA35808.1。EMBL、M11761、AAA35808.1。
(18)NCA(CEACAM6、Genbank受託番号M18728)、Barnett T.,et al.Genomics 3,59-66,1988、Tawaragi Y.,et al.Biochem.Biophys.Res.Commun.150,89-96,1988、Strausberg R.L.,et al.Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.99:16899-16903,2002、WO2004/063709、EP1439393(請求項7)、WO2004/044178(実施例4)、WO2004/031238、WO2003/042661(請求項12)、WO2002/78524(実施例2)、WO2002/86443(請求項27、427頁)、WO2002/60317(請求項2)、
受託番号:P40199、Q14920、EMBL、M29541、AAA59915.1。EMBL、M18728。
(19)MDP(DPEP1、Genbank受託番号BC017023)Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.99(26):16899-16903(2002))、WO2003/016475(請求項1)、WO2002/64798(請求項33、85~87頁)、JP05003790(図6~8)、WO9946284(図9)、相互参照:MIM:179780、AAH17023.1、BC017023_1。
(20)IL20Ra(IL20Ra、ZCYTOR7、Genbank受託番号AF184971)、Clark H.F.,et al.Genome Res.13,2265-2270,2003、Mungall A.J.,et al Nature 425,805-811,2003、Blumberg H.,et al Cell 104,9-19,2001、Dumoutier L.,et al J.Immunol.167,3545-3549,2001、Parrish-Novak J.,et al.J. Biol.Chem.277,47517-47523,2002、Pletnev S.,et al(2003)Biochemistry 42:12617-12624、Sheikh F.,et al(2004)J.Immunol.172,2006-2010、EP1394274(実施例11)、US2004/005320(実施例5)、WO2003/029262(74~75頁)、WO2003/002717(請求項2、63頁)、WO2002/22153(45~47頁)、US2002/042366(20~21頁)、WO2001/46261(57~59頁)、WO2001/46232(63~65頁)、WO9837193(請求項1、55~59頁)、受託番号:Q9UHF4、Q6UWA9、Q96SH8、EMBL、AF184971、AAF01320.1。
(21)Brevican(BCAN、BEHAB、Genbank受託番号AF229053)。Gary S.C.,et al.Gene 256,139-147,2000、Clark H.F.,et al.Genome Res.13,2265-2270,2003、Strausberg R.L.,et al.Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.99,16899-16903,2002、US2003/186372(請求項11)、US2003/186373(請求項11)、US2003/119131(請求項1、図52)、US2003/119122(請求項1、図52)、US2003/119126(請求項1)、US2003/119121(請求項1、図52)、US2003/119129(請求項1)、US2003/119130(請求項1)、US2003/119128(請求項1、図52)、US2003/119125(請求項1)、WO2003/016475(請求項1)、WO2002/02634(請求項1)。
(22)EphB2R(DRT、ERK、Hek5、EPHT3、Tyro5、Genbank受託番号NM_004442)Chan,J.and Watt,V.M.,Oncogene 6(6),1057-1061(1991)Oncogene10(5):897-905(1995),Annu.Rev.Neurosci.21:309-345(1998),Int.Rev.Cytol.196:177-244(2000))、WO2003/042661(請求項12)、WO2000/53216(請求項1、41頁)、WO2004/065576(請求項1)、WO2004/020583(請求項9)、WO2003/004529(128~132頁)、WO2000/53216(請求項1、42頁)、相互参照:MIM:600997、NP_004433.2、NM_004442_1。
(23)ASLG659(B7h、Genbank受託番号AX092328)。US2004/0101899(請求項2)、WO2003/104399(請求項11)、WO2004/000221(図3)、US2003/165504(請求項1)、US2003/124140(実施例2)、US2003/065143(図60)、WO2002/102235(請求項13、299頁)、US2003/091580(実施例2)、WO2002/10187(請求項6、図10)、WO2001/94641(請求項12、図7b)、WO2002/02624(請求項13、図1A~1B)、US2002/034749(請求項54、45~46頁)、WO2002/06317(実施例2;320~321頁、請求項34;321~322頁)、WO2002/71928(468~469頁)、WO2002/02587(実施例1、図1)、WO2001/40269(実施例3、190~192頁)、WO2000/36107(実施例2、205~207頁)、WO2004/053079(請求項12)、WO2003/004989(請求項1)、WO2002/71928(233~234頁、452~453頁)、WO0116318。
(24)PSCA(前立腺幹細胞抗原前駆体、Genbank受託番号AJ297436)Reiter R.E.,et al.Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.95,1735-1740,1998、Gu Z.,et al.Oncogene 19,1288-1296,2000、Biochem.Biophys.Res.Commun.(2000)275(3):783-788、WO2004/022709、EP1394274(実施例11)、US2004/018553(請求項17)、WO2003/008537(請求項1)、WO2002/81646(請求項1、164頁)、WO2003/003906(請求項10、288頁)、WO2001/40309(実施例1、図17)、US2001/055751(実施例1、図1b)、WO2000/32752(請求項18、図1)、WO9851805(請求項17、97頁)、WO9851824(請求項10、94頁)、WO9840403(請求項2、図1B)、受託番号:O43653、EMBL、AF043498、AAC39607.1。
(25)GEDA(Genbank受託番号AY260763)、AAP14954脂肪腫HMGIC融合パートナー様タンパク質/pid=AAP14954.1-ホモサピエンス種:ホモサピエンス(ヒト)WO2003/054152(請求項20)、WO2003/000842(請求項1)、WO2003/023013(実施例3、請求項20)、US2003/194704(請求項45)、相互参照:GI:30102449、AAP14954.1、AY260763_1。
(26)BAFF-R(B細胞活性化因子受容体、BLyS受容体3、BR3、Genbank受託番号AF116456)、BAFF受容体/pid=NP_443177.1-Homo sapiens。Thompson,J.S.,et al Science 293(5537),2108-2111(2001)、WO2004/058309、WO2004/011611、WO2003/045422(実施例、32~33頁)、WO2003/014294(請求項35、図6B)、WO2003/035846(請求項70、615~616頁)、WO2002/94852(欄136~137)、WO2002/38766(請求項3、133頁)、WO2002/24909(実施例3、図3)、相互参照:MIM:606269、NP_443177.1、NM_052945_1、AF132600。
(27)CD22(B細胞受容体CD22-Bアイソフォーム、BL-CAM、Lyb-8、Lyb8、SIGLEC-2、FLJ22814、Genbank受託番号AK026467)、Wilson et al.(1991)J.Exp.Med.173:137-146、WO2003/072036(請求項1、図1)、相互参照:MIM:107266、NP_001762.1、NM_001771_1。
(28)CD79a(CD79A、CD79a、免疫グロブリン関連アルファ、Igベータ(CD79B)と共有結合により相互作用し、IgM分子と表面上で複合体を形成し、B細胞分化に関与するシグナルを伝達するB細胞特異的タンパク質)、pI:4.84、分子量:25028TM:2[P]遺伝子染色体:19q13.2、Genbank受託番号NP_001774.10)WO2003/088808、US2003/0228319、WO2003/062401(請求項9)、US2002/150573(請求項4、13~14頁)、WO9958658(請求項13、図16)、WO9207574(図1)、US5,644,033、Ha et al.(1992)J.Immunol.148(5):1526-1531、Mueller et al(1992)Eur.J.Biochem.22:1621-1625、Hashimoto et al(1994)Immunogenetics 40(4):287-295、Preud’homme et al(1992)Clin.Exp.Immunol.90(1):141-146、Yu et al(1992)J.Immunol.148(2)633-637、Sakaguchi et al.(1988)EMBOJ.7(11):3457-3464。
(29)CXCR5(バーキットリンパ腫受容体1、CXCL13ケモカインによって活性化され、リンパ球移動及び体液性免疫において機能し、HIV-2感染症、ならびに恐らく、AIDS、リンパ腫、骨髄腫、及び白血病の発症において働くGタンパク質共役型受容体)、372aa、pI:8.54分子量:41959TM:7[P]遺伝子染色体:11q23.3、Genbank受託番号NP_001707.1)、WO2004/040000、WO2004/015426、US2003/105292(実施例2)、US6555339(実施例2)、WO2002/61087(図1)、WO2001/57188(請求項20、269頁)、WO2001/72830(12~13頁)、WO2000/22129(実施例1、152~153頁、実施例2、254~256頁)、WO9928468(請求項1、38頁)、US5,440,021(実施例2、欄49~52)、WO9428931(56~58頁)、WO9217497(請求項7、図5)、Dobner et al.(1992)Eur.J.Immunol.22:2795-2799、Barella et al.(1995)Biochem.J.309:773-779。
(30)HLA-DOB(ペプチドに結合し、CD4+Tリンパ球にそれらを提示する、MHCクラスII分子のベータサブユニット(Ia抗原))、273aa、pI:6.56、分子量:30820TM:1[P]遺伝子染色体:6p21.3、Genbank受託番号NP_002111.1)Tonnelle et al.(1985)EMBO J.4(11):2839-2847、Jonsson et al.(1989)Immunogenetics 29(6):411-413、Beck et al.(1992)J.Mol.Biol.228:433-441、Strausberg et al.(2002)Proc.Natl.Acad.Sci USA 99:16899-16903、Servenius et al.(1987)J.Biol.Chem.262:8759-8766、Beck et al(1996)J.Mol.Biol.255:1-13、Naruse et al(2002)Tissue Antigens 59:512-519、WO9958658(請求項13、図15)、US6,153,408(欄35~38)、US5976551(欄168~170)、US6,011,146(欄145~146)、Kasahara et al(1989)Immunogenetics 30(1):66-68、Larhammar et al(1985)J.Biol.Chem.260(26):14111-14119。
(31)P2X5(プリン受容体P2Xリガンド開口型イオンチャネル5、シナプス伝達及び神経発生に関与し得る、細胞外ATPによって開閉されるイオンチャネル、欠損すると特発性の排尿筋不安定の病態生理に寄与し得る)、422aa)、pI:7.63、分子量:47206TM:1[P]遺伝子染色体:17p13.3、Genbank受託番号NP_002552.2)、Le et al.(1997)FEBS Lett.418(1-2):195-199、WO2004/047749、WO2003/072035(請求項10)、Touchman et al.(2000)Genome Res.10:165-173、WO2002/22660(請求項20)、WO2003/093444(請求項1)、WO2003/087768(請求項1)、WO2003/029277(82頁)。
(32)CD72(B細胞分化抗原CD72、Lyb-2)、pI:8.66、分子量:40225TM:1[P]遺伝子染色体:9p13.3、Genbank受託番号NP_001773.1)、WO2004/042346(請求項65)、WO2003/026493(51~52頁、57~58頁)、WO2000/75655(105~106頁)、Von Hoegen et al(1990)J.Immunol.144(12):4870-4877、Strausberg et al.(2002)Proc.Natl.Acad.Sci USA 99:16899-16903。
(33)LY64(リンパ球抗原64(RP105)、ロイシンリッチ反復(LRR)ファミリーのI型膜タンパク質、B細胞の活性化及びアポトーシスを制御し、機能消失は、全身性エリテマトーデス患者における疾患活性の増加に関連する)、661aa、pI:6.20、分子量:74147TM:1[P]遺伝子染色体:5q12、Genbank受託番号NP_005573.1)、US2002/193567、WO9707198(請求項11、39~42頁)、Miura et al(1996)Genomics 38(3):299-304、Miura et al(1998)Blood 92:2815-2822、WO2003/083047、WO9744452(請求項8、57~61頁)、WO2000/12130(24~26頁)。
(34)FcRH1(Fc受容体様タンパク質1、C2型Ig様及びITAMドメインを含有する免疫グロブリンFcドメインの推定上の受容体、B-リンパ球分化において役割を有し得る)、429aa、pI:5.28、分子量:46925TM:1[P]遺伝子染色体:1q21-1q22、Genbank受託番号NP_443170.1)、WO2003/077836、WO2001/38490(請求項6、図18E-1~18-E-2)、Davis et al.(2001)Proc.Natl.Acad.Sci USA 98(17):9772-9777、WO2003/089624(請求項8)、EP1347046(請求項1)、WO2003/089624(請求項7)。
(35)IRTA2(免疫グロブリンスーパーファミリー受容体転座関連2、B細胞の成長及びリンパ腫形成に潜在的な役割を有する推定上の免疫受容体、転座による遺伝子の制御解除が一部のB細胞悪性腫瘍で生じる)、977aa、pI:6.88分子量:106468TM:1[P]遺伝子染色体:1q21、Genbank受託番号Human:AF343662、AF343663、AF343664、AF343665、AF369794、AF397453、AK090423、AK090475、AL834187、AY358085;Mouse:AK089756、AY158090、AY506558;NP_112571.1、WO2003/024392(請求項2、図97)、Nakayama et al(2000)Biochem.Biophys.Res.Commun.277(1):124-127、WO2003/077836、WO2001/38490(請求項3、図18B-1~18B-2)。
(36)TENB2(TMEFF2、トモレグリン、TPEF、HPP1、TR、推定上の膜貫通プロテオグリカン、成長因子のEGF/ヘレグリンファミリー及びフォリスタチンに関連する)、374aa、NCBI受託番号:AAD55776、AAF91397、AAG49451、NCBI参照配列:NP_057276、NCBI遺伝子:23671、OMIM:605734、SwissProt Q9UIK5、Genbank受託番号AF179274、AY358907、CAF85723、CQ782436、WO2004/074320、JP2004/113151、WO2003/042661、WO2003/009814、EP1295944(69~70頁)、WO2002/30268(329頁)、WO2001/90304、US2004/249130、US2004/022727、WO2004/063355、US2004/197325、US2003/232350、US2004/005563、US2003/124579、Horie et al.(2000)Genomics 67:146-152、Uchida et al(1999)Biochem.Biophys.Res.Commun.266:593-602、Liang et al(2000)Cancer Res.60:4907-12、Glynne-Jones et al(2001)Int J Cancer.Oct 15;94(2):178-84。
(37)PMEL17(シルバーホモログ(silver homolog)、SILV、D12S53E、PMEL17、SI、SIL)、ME20、gp100)BC001414、BT007202、M32295、M77348、NM_006928、McGlinchey,R.P.et al(2009)Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.106(33),13731-13736、Kummer,M.P.et al(2009)J.Biol.Chem.284(4),2296-2306。
(38)TMEFF1(EGF様ドメイン及び2つのフォリスタチン様ドメイン1を有する膜貫通タンパク質、トモレグリン1)、H7365、C9orf2、C9ORF2、U19878、X83961、NM_080655、NM_003692、Harms,P.W.(2003)Genes Dev.17(21),2624-2629、Gery,S.et al(2003)Oncogene 22(18):2723-2727。
(39)GDNF-Ra1(GDNFファミリー受容体アルファ1、GFRA1、GDNFR、GDNFRA、RETL1、TRNR1、RET1L、GDNFR-アルファ1、GFR-ALPHA-1)、U95847、BC014962、NM_145793 NM_005264、Kim,M.H.et al(2009)Mol.Cell.Biol.29(8),2264-2277、Treanor,J.J.et al(1996)Nature 382(6586):80-83。
(40)Ly6E(リンパ球抗原6複合物、遺伝子座E、Ly67、RIG-E、SCA-2、TSA-1)、NP_002337.1、NM_002346.2、de Nooij-van Dalen,A.G.et al(2003)Int.J.Cancer 103(6),768-774、Zammit,D.J.et al(2002)Mol.Cell.Biol.22(3):946-952。
(41)TMEM46(シサホモログ(shisa homolog)2(Xenopus laevis)、SHISA2)、NP_001007539.1、NM_001007538.1、Furushima,K.et al.(2007)Dev.Biol.306(2),480-492、Clark H.F.,et al(2003)Genome Res.13(10):2265-2270。
(42)Ly6G6D(リンパ球抗原6複合物、遺伝子座G6D、Ly6-D、MEGT1)、NP_067079.2、NM_021246.2、Mallya,M.et al(2002)Genomics 80(1):113-123、Ribas,G.et al(1999)J.Immunol.163(1):278-287。
(43)LGR5(ロイシンリッチ反復含有Gタンパク質結合型受容体5、GPR49、GPR67)、NP_003658.1、NM_003667.2、Salanti,G.et al.(2009)Am.J.Epidemiol.170(5):537-545、Yamamoto,Y.et al(2003)Hepatology 37(3):528-533。
(44)RET(retがん原遺伝子、MEN2A、HSCR1、MEN2B、MTC1、PTC、CDHF12、Hs.168114、RET51、RET-ELE1)、NP_066124.1、NM_020975.4、Tsukamoto,H.et al(2009)Cancer Sci.100(10):1895-1901、Narita,N.et al(2009)Oncogene 28(34):3058-3068。
(45)LY6K(リンパ球抗原6複合物、遺伝子座K、LY6K、HSJ001348、FLJ35226)、NP_059997.3、NM_017527.3、Ishikawa,N.et al.(2007)Cancer Res.67(24):11601-11611、de Nooij-van Dalen,A.G.et al(2003)Int.J.Cancer 103(6):768-774。
(46)GPR19(Gタンパク質結合型受容体19、Mm.4787)、NP_006134.1、NM_006143.2、Montpetit,A.and Sinnett,D.(1999)Hum.Genet.105(1-2):162-164、O’Dowd,B.F.et al(1996)FEBS Lett.394(3):325-329。
(47)GPR54(KISS1受容体、KISS1R、GPR54、HOT7T175、AXOR12)、NP_115940.2、NM_032551.4、Navenot,J.M.et al.(2009)Mol.Pharmacol.75(6):1300-1306、Hata,K.et al(2009)Anticancer Res.29(2):617-623。
(48)ASPHD1(アスパラギン酸ベータヒドロキシラーゼドメイン含有1、LOC253982)、NP_859069.2、NM_181718.3、Gerhard,D.S.et al.(2004)Genome Res.14(10B):2121-2127。
(49)チロシナーゼ(TYR、OCAIA、OCA1A、チロシナーゼ、SHEP3)、NP_000363.1、NM_000372.4、Bishop,D.T.et al.(2009)Nat.Genet.41(8):920-925、Nan,H.et al(2009)Int.J.Cancer 125(4):909-917。
(50)TMEM118(ringフィンガータンパク質、膜貫通2、RNFT2、FLJ14627)、NP_001103373.1、NM_001109903.1、Clark,H.F.et al.(2003)Genome Res.13(10):2265-2270、Scherer,S.E.et al.(2006)Nature 440(7082):346-351。
(51)GPR172A(Gタンパク質結合型受容体172A、GPCR41、FLJ11856、D15Ertd747e)、NP_078807.1、NM_024531.3、Ericsson,T.A.et al(2003)Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.100(11):6759-6764、Takeda,S.et al(2002)FEBS Lett.520(1-3):97-101。
(52)シアル酸に結合する免疫グロブリン様レクチンファミリーのメンバーであるCD33は、67kDaのグリコシル化膜貫通タンパク質である。CD33は、委任骨髄単球性前駆細胞及び赤血球前駆細胞に加えて、ほとんどの骨髄性白血病細胞及び単球性白血病細胞上で発現する。これは、最も初期の多能性幹細胞、成熟顆粒球、リンパ系細胞、または非造血系細胞には見られない(Sabbath et al.,(1985)J.Clin.Invest.75:756-56、Andrews et al.,(1986)Blood 68:1030-5)。CD33は、その細胞質尾部に2つのチロシン残基を含有し、これらの各々に、多くの阻害性受容体に見られる免疫受容体チロシン系阻害モチーフ(ITIM)に類似する疎水性残基が続いている。
(53)CLL-1(CLEC12A、MICL、及びDCAL2)は、C型レクチン/C型レクチン様ドメイン(CTL/CTLD)スーパーファミリーのメンバーをコードする。このファミリーのメンバーは、共通のタンパク質折り畳みを共有し、細胞接着、細胞間シグナル伝達、糖タンパク質ターンオーバー、ならびに炎症及び免疫応答における役割等の多様な機能を有する。この遺伝子によりコードされるタンパク質は、顆粒球及び単球の機能の負の制御因子である。この遺伝子のいくつかの代替的なスプライス転写物変異形が記載されているが、これらの変異形のうちのいくつかに関しては全長の性質が決定されていない。この遺伝子は、染色体12p13上のナチュラルキラー遺伝子複合体領域内の他のCTL/CTLDスーパーファミリーメンバーに緊密に結合している(Drickamer K(1999)Curr.Opin.Struct.Biol.9(5):585-90、van Rhenen A,et al.,(2007)Blood 110(7):2659-66、Chen CH,et al.(2006)Blood 107(4):1459-67、Marshall AS,et al.(2006)Eur.J.Immunol.36(8):2159-69、Bakker AB,et al.(2005)Cancer Res.64(22):8443-50、Marshall AS,et al.(2004)J.Biol.Chem.279(15):14792-802)。CLL-1は、単一のC型レクチン様ドメイン(カルシウムまたは糖のいずれにも結合することが予測されていない)、ストーク領域、膜貫通ドメイン、及びITIMモチーフを含有する短い細胞質尾部を含む、II型膜貫通受容体であることが示されている。
【0077】
抗体誘導体
本明細書に提供される抗体は、当該技術分野で既知であり、かつ容易に入手可能な追加の非タンパク質性部分を含有するようにさらに修飾され得る。抗体の誘導体化に好適な部分には、水溶性ポリマーが含まれるが、これに限定されない。水溶性ポリマーの非限定的な例には、ポリエチレングリコール(PEG)、エチレングリコール/プロピレングリコールのコポリマー、カルボキシメチルセルロース、デキストラン、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリ-1,3-ジオキソラン、ポリ-1,3,6-トリオキサン、エチレン/無水マレイン酸コポリマー、ポリアミノ酸(ホモポリマーまたはランダムコポリマーのいずれか)、及びデキストランまたはポリ(n-ビニルピロリドン)ポリエチレングリコール、プロピレングリコールホモポリマー、ポリプロピレンオキシド/エチレンオキシドコポリマー、ポリオキシエチル化ポリオール(例えば、グリセロール)、ポリビニルアルコール、ならびにこれらの混合物が挙げられる。ポリエチレングリコールプロピオンアルデヒドは、水中でのその安定性のため、製造時に有利であり得る。ポリマーは、任意の分子量のものであり得、分岐状または非分岐状であり得る。抗体に結合したポリマーの数は異なり得、1つより多くのポリマーが結合している場合、それらは同じ分子または異なる分子であり得る。一般に、誘導体化に使用されるポリマーの数及び/または種類は、改善される抗体の特定の特性または機能、抗体誘導体が定義された条件下である療法に使用されるか等を含むが、これらに限定されない考慮すべき事項に基づいて決定され得る。
【0078】
抗体及び非タンパク質性部分の複合体は、放射線への曝露により選択的に加熱することにより形成され得る。かかる複合体の非タンパク質性部分は、カーボンナノチューブであり得る(Kam et al.(2005)Proc.Natl.Acad.Sci.USA,102:11600-605)。放射線は、任意の波長のものであり得、通常の細胞を傷つけないが、抗体-非タンパク質性部分に隣接する細胞が殺滅される温度まで非タンパク質性部分を加熱する波長を含むが、これらに限定されない。
【0079】
「超可変領域」または「HVR」という用語は、本明細書で使用される場合、配列中で超可変であり、及び/または構造的に定義されたループ(「超可変ループ」)を形成する、抗体可変ドメインの領域の各々を指す。一般に、天然4本鎖抗体は、6つのHVRを含み、3つはVH(H1、H2、H3)中にあり、3つはVL(L1、L2、L3)中にある。HVRは一般に、超可変ループ及び/または「相補性決定領域」(CDR)からのアミノ酸残基を含み、後者は、最も高い配列可変性を有し、及び/または抗原認識に関与する。例示的な超可変ループは、アミノ酸残基26~32(L1)、50~52(L2)、91~96(L3)、26~32(H1)、53~55(H2)、及び96~101(H3)において起こる(Chothia and Lesk,(1987)J.Mol.Biol.196:901-917)。例示的なCDR(CDR-L1、CDR-L2、CDR-L3、CDR-H1、CDR-H2、及びCDR-H3)は、アミノ酸残基L1の24~34、L2の50~56、L3の89~97、H1の31~35B、H2の50~65、及びH3の95~102において生じる(Kabat番号付け)。VH内のCDR1を除いて、CDRは一般に、超可変ループを形成するアミノ酸残基を含む。CDRは、抗原と接触する残基である「特異性決定残基」または「SDR」も含む。SDRは、短縮(abbreviated)-CDR、またはa-CDRと呼ばれるCDRの領域内に収容される。例示的なa-CDR(a-CDR-L1、a-CDR-L2、a-CDR-L3、a-CDR-H1、a-CDR-H2、及びa-CDR-H3)は、アミノ酸残基L1の31~34、L2の50~55、L3の89~96、H1の31~35B、H2の50~58、及びH3の95~102で起こる(Almagro and Fransson,(2008)Front.Biosci.13:1619-1633)。別途指定されない限り、HVR残基及び可変ドメイン内の他の残基(例えば、FR残基)は、Kabat et al.(上記参照)に従って本明細書で番号付けされる。
【0080】
「単離された」抗体とは、その天然環境の構成成分から分離された抗体である。いくつかの実施形態において、抗体は、例えば、電気泳動(例えば、SDS-PAGE、等電点電気泳動法(IEF)、キャピラリー電気泳動法)またはクロマトグラフィー(例えば、イオン交換もしくは逆相HPLC)法により決定される場合、95%または99%を超える純度に精製される。抗体純度の評定のための方法の概説に関して、例えばFlatman et al.(2007)J.Chromatogr.B 848:79-87を参照されたい。
【0081】
「モノクローナル抗体」という用語は、本明細書で使用される場合、実質的に同種の抗体の集団から得られる抗体を指し、すなわち、その集団を構成する個々の抗体は、同一であり、及び/または同じエピトープに結合するが、例えば、天然に存在する突然変異を含有するか、またはモノクローナル抗体調製物の産生中に発生する生じ得る変異形抗体を除き、かかる変異形は一般に、少量で存在する。異なる決定基(エピトープ)に対して指向される異なる抗体を典型的に含むポリクローナル抗体調製物とは対照的に、モノクローナル抗体調製物内の各モノクローナル抗体は、抗原上の単一の決定基に対して指向される。それ故に、「モノクローナル」という修飾語は、実質的に同種の抗体の集団から得られるときの抗体の特徴を示しており、いかなる特定の方法による抗体の産生を必要とするものとして解釈されない。例えば、本発明に従って使用されるモノクローナル抗体は、ハイブリドーマ法、組換えDNA法、ファージディスプレイ法、及びヒト免疫グロブリン座の全てまたは部分を含有するトランスジェニック動物を活用する方法を含むが、これらに限定されない種々の技法により作製されてもよい。
【0082】
「裸の抗体」は、異種性部分(例えば、細胞傷害性部分)または放射標識もしくは蛍光体に複合体化されていない抗体を指す。裸の抗体は、薬学的製剤中に存在し得る。
【0083】
「天然抗体」とは、多様な構造を有する天然に存在する免疫グロブリン分子を指す。例えば、天然IgG抗体は、ジスルフィド結合されている2つの同一の軽鎖及び2つの同一の重鎖から構成される、約150,000ダルトンのヘテロ四量体糖タンパク質である。N末端からC末端まで、各重鎖は、可変重ドメイン(variable heavy domain)または重鎖可変ドメインとも呼ばれる可変領域(VH)を有し、その後に3つの定常ドメイン(CH1、CH2、及びCH3)を有する。同様に、N末端からC末端まで、各軽鎖は、可変軽ドメイン(variable light domain)または軽鎖可変ドメインとも呼ばれる可変領域(VL)を有し、その後に定常軽(CL)ドメインを有する。抗体の軽鎖は、その定常ドメインのアミノ酸配列に基づいて、カッパ(κ)及びラムダ(λ)と呼ばれる2つの型うちの1つに割り当てられ得る。
【0084】
多重特異性抗体
本明細書に提供される抗体は、多重特異性抗体、例えば、二重特異性抗体であり得る。本明細書に使用される「多重特異性抗体」という用語は、多重エピトープ特異性を有する(すなわち、1つの分子上の2つもしくはそれ以上の異なるエピトープに結合することができるか、または2つもしくはそれ以上の異なる分子上のエピトープに結合することができる)抗原結合ドメインを含む抗体を指す。
【0085】
例としての実施形態において、多重特異性抗体は、少なくとも2つの異なる抗原結合部位に対する結合特異性を有するモノクローナル抗体である(二重特異性抗体等)。多重特異性抗体の第1の抗原結合ドメイン及び第2の抗原結合ドメインは、1つの同一分子内の2つのエピトープに結合してもよい(分子内結合)。例えば、多重特異性抗体の第1の抗原結合ドメイン及び第2の抗原結合ドメインは、同じ分子上の2つの異なるエピトープに結合することができる。ある特定の実施形態において、多重特異性抗体が結合する2つの異なるエピトープは、通常、1つの単一特異性抗体、例えば、従来の抗体等、または1つの免疫グロブリン単一可変ドメインによって同時に結合されないエピトープである。多重特異性抗体の第1の抗原結合ドメイン及び第2の抗原結合ドメインは、2つの別個の分子内に位置するエピトープに結合してもよい(分子間結合)。例えば、多重特異性抗体の第1の抗原結合ドメインは、1つの分子上のあるエピトープに結合することができ、一方でその多重特異性抗体の第2の抗原結合ドメインは、異なる分子上の別のエピトープに結合することができ、それによって2つの分子が架橋され得る。
【0086】
多重特異性抗体(二重特異性抗体等)の抗原結合ドメインは、2つのVH/VLユニットを含み、第1のVH/VLユニットは、第1のエピトープに結合し、第2のVH/VLユニットは、第2のエピトープに結合し、各VH/VLユニットは、重鎖可変ドメイン(VH)及び軽鎖可変ドメイン(VL)を含む。かかる多重特異性抗体には、限定されないが、完全長抗体、2つ以上のVL及びVHドメインを有する抗体、及び抗体断片(Fab、Fv、dsFv、scFv、ダイアボディ、二重特異性ダイアボディ及びトリアボディ、共有結合または非共有結合された抗体断片等)が含まれる。重鎖可変領域の少なくとも一部分及び/または軽鎖可変領域の少なくとも一部分をさらに含むVH/VL単位は、「アーム」または「ヘミマー」または「半抗体」とも称され得る。ヘミマーは、分子内ジスルフィド結合が第2のヘミマーと形成されることを可能にするのに十分な重鎖可変領域の一部分を含み得る。いくつかの実施形態では、ヘミマーは、例えば、相補的ホール突然変異またはノブ突然変異を含む第2のヘミマーまたは半抗体とのヘテロ二量体化を可能にする、ノブ突然変異またはホール突然変異を含む。ノブ突然変異及びホール突然変異は、以下で論じられる。
【0087】
本明細書に提供される多重特異性抗体は、二重特異性抗体であり得る。本明細書に使用される「二重特異性抗体」という用語は、1つの分子上の2つの異なるエピトープに結合できるか、または2つの異なる分子上のエピトープに結合できる抗原結合ドメインを含む多重特異性抗体を指す。二重特異性抗体は、本明細書において、「二重特異性」を有するもの、または「二重特異性」であるとも称される。例示的な二重特異性抗体は、両方及び任意の他の抗原を結合し得る。結合特異性のうちの一方は、HER2に対するものであり、他方はCD3に対するものであり得る。例えば、米国特許第5,821,337号を参照されたい。二重特異性抗体は、同じ分子の2つの異なるエピトープに結合し得る。二重特異性抗体は、2つの異なる分子上の2つの異なるエピトープに結合し得る。二重特異性抗体は、がん関連抗原を発現する細胞に細胞傷害性薬剤を局在化させるためにも使用され得る。二重特異性抗体は、完全長抗体または抗体断片として調製され得る。
【0088】
多重特異性抗体を作製するための技法としては、異なる特異性を有する2つの免疫グロブリン重鎖-軽鎖対の組換え共発現(Milstein and Cuello,Nature 305:537(1983)、WO93/08829、及びTraunecker et al.,EMBO J.10:3655(1991)を参照されたい)、ならびに「ノブ・イン・ホール」操作(例えば、米国特許第5,731,168号、WO2009/089004、US2009/0182127、US2011/0287009、Marvin and Zhu,Acta Pharmacol.Sin.(2005)26(6):649-658、及びKontermann(2005)Acta Pharmacol.Sin.,26:1-9を参照されたい)が挙げられるが、これらに限定されない。本明細書で使用される「ノブ・イントゥ・ホール」または「KnH」技術という用語は、2つのポリペプチドを、それらが相互作用する界面で一方のポリペプチドに隆起(ノブ)を導入し、他方のポリペプチドに空洞(ホール)を導入することによって、インビトロまたはインビボで一緒に対合することを誘導する技術を指す。例えば、KnHは、抗体のFc:Fc結合界面、CL:CH1界面、またはVH/VL界面に導入されている(例えば、US2011/0287009、US2007/0178552、WO96/027011、WO98/050431、Zhu et al.,1997,Protein Science 6:781-788、及びWO2012/106587を参照されたい)。いくつかの実施形態では、KnHにより、多重特異性抗体の製造中に2つの異なる重鎖を一緒に対合することが駆動される。例えば、Fc領域内にKnHを有する多重特異性抗体は、各Fc領域に結合された単一の可変ドメインをさらに含み得るか、または同様のもしくは異なる軽鎖可変ドメインと対合する異なる重鎖可変ドメインをさらに含み得る。KnH技術を使用して、2つの異なる受容体細胞外ドメインを一緒に、または異なる標的認識配列(例えば、アフィボディ(affibody)、ペプチボディ(peptibody)、及び他のFc融合物を含む)を含む任意の他のポリペプチド配列を対合することもできる。
【0089】
本明細書で使用される「ノブ突然変異」という用語は、ポリペプチドが別のポリペプチドと相互作用する界面で隆起(ノブ)をポリペプチドに導入する突然変異を指す。いくつかの実施形態において、他のポリペプチドは、ホール突然変異を有する。本明細書で使用される「ホール突然変異」という用語は、ポリペプチドが別のポリペプチドと相互作用する界面で空洞(ホール)をポリペプチドに導入する突然変異を指す。いくつかの実施形態において、他のポリペプチドは、ノブ突然変異を有する。
【0090】
「隆起」とは、第1のポリペプチドの界面から突出し、したがって、隣接界面(すなわち、第2のポリペプチドの界面)の補償空洞内に位置付け可能となり、これにより、例えば、ヘテロ多量体を安定させ、それによりホモ多量体形成よりもヘテロ多量体形成が好都合になる、少なくとも1つのアミノ酸側鎖を指す。隆起は、元々の界面内に存在してもよく、または、合成により(例えば、界面をコードする核酸を改変することによって)導入してもよい。一部の実施形態では、第1のポリペプチドの界面をコードする核酸を、隆起をコードするように改変する。これを達成するために、第1のポリペプチドの界面の少なくとも1つの「元の」アミノ酸残基をコードする核酸が、元のアミノ酸残基よりも大きい側鎖体積を有する少なくとも1つの「移入」アミノ酸残基をコードする核酸で置き換えられる。2つ以上の元の残基及び対応する移入残基が存在し得る。様々なアミノ残基の側鎖体積は、例えば、US2011/0287009の表1に示される。「隆起」を導入する突然変異は、「ノブ突然変異」と称され得る。
【0091】
隆起の形成のための移入残基は、アルギニン(R)、フェニルアラニン(F)、チロシン(Y)、及びトリプトファン(W)から選択される天然に存在するアミノ酸残基である。移入残基は、トリプトファンまたはチロシンである。隆起の形成のための元の残基は、アラニン、アスパラギン、アスパラギン酸、グリシン、セリン、トレオニン、またはバリン等の小さい側鎖体積を有し得る。
【0092】
「空洞」とは、第2のポリペプチドの界面から凹んでおり、それ故に隣接する第1のポリペプチドの界面上の対応する隆起を収容する少なくとも1つのアミノ酸側鎖を指す。空洞は、元の界面に存在し得るか、または合成的に(例えば、界面をコードする核酸を改変することによって)導入され得る。いくつかの実施形態において、第2のポリペプチドの界面をコードする核酸は、空洞をコードするように改変する。これを達成するために、第2のポリペプチドの界面の少なくとも1つの「元の」アミノ酸残基をコードする核酸が、元のアミノ酸残基よりも小さい側鎖体積を有する少なくとも1つの「移入」アミノ酸残基をコードするDNAで置き換えられる。2つ以上の元の残基及び対応する移入残基が存在し得ることが理解される。空洞の形成のための移入残基は、アラニン(A)、セリン(S)、トレオニン(T)、及びバリン(V)から選択される、天然に存在するアミノ酸残基であり得る。移入残基は、セリン、アラニン、またはトレオニンであり得る。いくつかの実施形態において、空洞の形成のための元の残基は、チロシン、アルギニン、フェニルアラニン、またはトリプトファン等の大きい側鎖体積を有する。「空洞」を導入する突然変異は、「ホール突然変異」と称され得る。
【0093】
隆起は、空洞内で「位置付け可能」であり、これは、それぞれ、第1のポリペプチド及び第2のポリペプチドの界面の隆起及び空洞の空間的位置、ならびに隆起及び空洞の大きさが、界面での第1のポリペプチドと第2のポリペプチドとの正常な会合を著しく乱すことなく隆起が空洞内に位置し得るようなものであることを意味する。Tyr、Phe、及びTrp等の隆起は、典型的に界面の軸から垂直に延出せず、好ましい構造を有さないため、対応する空洞を有する隆起のアラインメントは、場合によっては、X線結晶学または核磁気共鳴(NMR)によって得られるもの等の3次元構造に基づいて、隆起/空洞の対をモデル化することに依存する。これは、当該技術分野で広く受け入れられている技法を使用して達成され得る。
【0094】
IgG1定常領域内の例示的なノブ突然変異は、T366W(EU番号付け)である。IgG1定常領域内の例示的なホール突然変異は、T366S、L368A、及びY407V(EU番号付け)から選択される1つ以上の突然変異を含み得る。IgG1定常領域内の例示的なホール突然変異は、T366S、L368A、及びY407V(EU番号付け)を含み得る。
【0095】
IgG4定常領域内の例示的なノブ突然変異は、T366W(EU番号付け)である。IgG4定常領域内の例示的なホール突然変異は、T366S、L368A、及びY407V(EU番号付け)から選択される1つ以上の突然変異を含み得る。IgG4定常領域内の例示的なホール突然変異は、T366S、L368A、及びY407V(EU番号付け)を含む。
【0096】
参照ポリペプチド配列に対する「アミノ酸配列同一性パーセント(%)」は、配列を整列させ、必要に応じてギャップを導入して、最大配列同一性パーセントを達成した後、及びいずれの保存的置換も配列同一性の一部として考慮せずに、参照ポリペプチド配列におけるアミノ酸残基と同一である候補配列におけるアミノ酸残基の割合と定義される。アミノ酸配列同一性パーセントを決定するための整列は、当業者が備えている技能の範囲内の様々な方法で、例えば、BLAST、BLAST-2、ALIGN、またはMegalign(DNASTAR)ソフトウェア等の公的に入手可能なコンピュータソフトウェアを使用して達成され得る。当業者であれば、比較される配列の全長にわたる最大整列を達成するのに必要な任意のアルゴリズムを含む、配列の整列に適切なパラメータを決定することができる。しかしながら、本開示の目的のために、アミノ酸配列同一性%値は、配列比較コンピュータプログラムALIGN-2を使用して生成される。ALIGN-2配列比較コンピュータプログラムは、Genentech,Inc.によって記述され、ソースコードは、ユーザ文書と共に米国著作権庁(U.S.Copyright Office),Washington D.C.,20559に提出されており、米国著作権番号TXU510087の下に登録されている。ALIGN-2プログラムは、Genentech,Inc.,South San Francisco,Calif.から公的に入手可能であるか、またはソースコードからコンパイルされ得る。全ての配列比較パラメータは、ALIGN-2プログラムにより設定されており、変動しない。
【0097】
アミノ酸配列比較のためにALIGN-2が用いられる状況下で、所与のアミノ酸配列Aの、所与のアミノ酸配列Bへの、所与のアミノ酸配列Bとの、または所与のアミノ酸配列Bに対するアミノ酸配列同一性%(代替的に、所与のアミノ酸配列Bへの、所与のアミノ酸配列Bとの、または所与のアミノ酸配列Bに対するある特定のアミノ酸配列同一性%を有するか、または含む所与のアミノ酸配列Aと表現され得る)は、以下のように計算される:100×分数X/Y、式中、Xは、配列整列プログラムALIGN-2によりそのプログラムのAとBとの整列において完全な一致とスコア化されるアミノ酸残基の数であり、Yは、B内のアミノ酸残基の総数である。アミノ酸配列Aの長さがアミノ酸配列Bの長さと等しくない場合、AのBに対するアミノ酸配列同一性%が、BのAに対するアミノ酸配列同一性%と等しくないことが理解される。別途具体的に明記されない限り、本明細書で使用される全てのアミノ酸配列同一性%値は、直前の段落に記載されるようにALIGN-2コンピュータプログラムを使用して得られる。
【0098】
「可変領域」または「可変ドメイン」という用語は、抗体の抗原への結合に関与する抗体の重鎖または軽鎖のドメインを指す。天然抗体の重鎖及び軽鎖の可変ドメイン(それぞれ、VH及びVL)は一般に、類似の構造を有し、各ドメインが4つの保存フレームワーク領域(FR)及び3つの超可変領域(HVR)を含む。例えば、Kindt et al.Kuby Immunology,6th ed.,W.H. Freeman and Co.,page 91(2007)を参照されたい。単一のVHドメインまたはVLドメインは、抗原結合特異性を付与するのに十分であり得る。さらに、特定の抗原に結合する抗体は、VHドメインまたはVLドメインを使用して抗原に結合する抗体から単離されて、それぞれ、相補的VLドメインまたはVHドメインのライブラリをスクリーニングすることができる(Portolano et al.(1993)J.Immunol.150:880-887、Clarkson et al.(1991)Nature 352:624-628)。
【0099】
「腫瘍関連抗原」(TAA)は、上記に提供されている例示的なTAAの一覧に提供されているように当該技術分野で既知であり、当該技術分野で周知の方法及び情報を使用してヒトまたはヒト化抗体を産生するのに使用するために調製され得る。がんの診断及び療法のための有効な細胞標的を発見するための試みにおいて、研究者らは、1つ以上の正常な非がん性細胞(複数可)と比較して、1つ以上の特定の種類(複数可)のがん細胞の表面上に特異的に発現する膜貫通ポリペプチドまたは他の様式で腫瘍に関連するポリペプチドを特定しようとした。しばしば、かかる腫瘍関連ポリペプチドは、非がん性細胞の表面上と比較して、がん細胞の表面上でより豊富に発現する。かかる腫瘍関連細胞表面の抗原ポリペプチドの特定により、抗体に基づく療法を介してがん細胞の破壊のために特異的に標的化する能力が生じた。TAAの例には、米国特許第8,679,767号及び同第8,541,178号に記載されているものが挙げられるが、これらに限定されず、これらは、本明細書に明示的に組み込まれる。
【0100】
本開示の方法で有用なADCの抗体構成成分は、例えば、US4,816,567に記載されているように、組換え方法及び組成物を使用して産生され得る。本明細書に記載されるかかる抗体をコードする単離核酸が提供される。かかる核酸は、抗体のVLを含むアミノ酸配列及び/または抗体のVHを含むアミノ酸配列(例えば、抗体の軽鎖及び/または重鎖)をコードし得る。かかる核酸を含む1つ以上のベクター(例えば、発現ベクター)も提供される。かかる核酸を含む宿主細胞も提供される。宿主細胞は、(1)抗体のVLを含むアミノ酸配列及び抗体のVHを含むアミノ酸配列をコードする核酸を含むベクター、または(2)抗体のVLを含むアミノ酸配列をコードする核酸を含む第1のベクター、及び抗体のVHを含むアミノ酸配列をコードする核酸を含む第2のベクターを含み得る(例えば、それらで形質転換されている)。宿主細胞は、真核細胞、例えば、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞またはリンパ系細胞(例えば、Y0、NS0、Sp20細胞)であり得る。それ故に、抗体を作製する方法が提供され、本方法は、上述される抗体をコードする核酸を含む宿主細胞を、抗体の発現に好適な条件下で培養することと、任意に、抗体を宿主細胞(または宿主細胞培養培地)から回収することとを含む。
【0101】
抗体の組換え産生に関しては、抗体をコードする核酸が単離され、宿主細胞内でのさらなるクローニング及び/または発現のために、1つ以上のベクター中に挿入され得る。かかる核酸は、従来の手順を使用して(例えば、抗体の重鎖及び軽鎖をコードする遺伝子に特異的に結合することができるオリゴヌクレオチドプローブを使用することにより)、容易に単離され、配列決定され得る。
【0102】
抗体をコードするベクターのクローニングまたは発現に好適な宿主細胞には、原核生物細胞または真核生物細胞が含まれる。例えば、抗体は、特に、グリコシル化及びFcエフェクター機能が必要とされない場合に、細菌中で産生され得る。細菌中での抗体断片及びポリペプチドの発現に関しては、例えば、US5648237、US5789199、US5840523、Charlton,Methods in Molecular Biology,Vol.248(E.coliにおける抗体断片の発現を記載する、B.K.C.Lo,ed.,Humana Press,Totowa,N.J.,(2003),pp.245-254)を参照されたい。発現後、抗体は、可溶性画分中で細菌細胞ペーストから単離され得、さらに精製され得る。
【0103】
原核生物に加えて、糸状菌または酵母等の真核微生物は、抗体をコードするベクターに好適なクローニングまたは発現宿主であり、そのグリコシル化経路が「ヒト化」されており、部分的または完全なヒトグリコシル化パターンを有する抗体の産生をもたらす、真菌株及び酵母株を含む(Gerngross,(2004)Nat.Biotech.22:1409-1414、Li et al.(2006)Nat.Biotech.24:210-215)。
【0104】
グリコシル化抗体の発現に好適な宿主細胞は、多細胞生物(無脊椎動物及び脊椎動物)にも由来する。無脊椎動物細胞の例には、植物細胞及び昆虫細胞が含まれる。特にSpodoptera frugiperda細胞のトランスフェクションのために昆虫細胞と併せて使用され得る、多数のバキュロウイルス株が特定されている。
【0105】
植物細胞培養物は、宿主としても利用され得る(トランスジェニック植物において抗体を産生するためのPLANTIBODIES(商標)技術を記載している、米国特許第5,959,177号、米国特許第6,040,498号、米国特許第6,420,548号、米国特許第7,125,978号、米国特許第6,417,429号)。
【0106】
脊椎動物細胞も宿主として使用することができる。例えば、懸濁液中で成長するように適合される哺乳動物細胞株が、有用であり得る。有用な哺乳動物宿主細胞株の他の例は、SV40により形質転換されたサル腎臓CV1株(COS-7);ヒト胚性腎臓株(例えば、Graham et al.(1977,J.Gen Virol.36:59)に記載されているような293または293細胞);ベビーハムスター腎臓細胞(BHK);マウスセルトリ細胞(例えば、Mather,(1980)Biol.Reprod.23:243-251に記載されているようなTM4細胞);サル腎臓細胞(CV1);アフリカミドリザル腎臓細胞(VERO-76);ヒト子宮頸癌種細胞(HELA);イヌ腎臓細胞(MDCK、バッファローラット肝臓細胞(BRL3A);ヒト肺細胞(W138);ヒト肝臓細胞(Hep G2);マウス乳房腫瘍(MMT060562);例えば、Mather et al.Annals N.Y.Acad.Sci.383:44-68に記載されているようなTR1細胞;MRC5細胞;及びFS4細胞である。他の有用な哺乳動物宿主細胞株は、DHFR-CHO細胞(Urlaub et al.,(1980)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 77:4216)を含むチャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞、ならびにY0、NS0、及びSp2/0等の骨髄腫細胞株を含む。抗体産生に好適なある特定の哺乳動物宿主細胞株の概説に関しては、例えば、Yazaki and Wu,Methods in Molecular Biology,Vol.248(B.K.C.Lo,ed.,Humana Press,Totowa,N.J.),pp.255-268(2003)に提供されている。
【0107】
ADCの抗体構成成分は、それらの物理的/化学的特性及び/または生物学的活性に関して、当該技術分野で既知の様々なアッセイにより、特定され、スクリーニングされ、または特徴付けられ得る。抗体は、例えば、ELISA、ウェスタンブロット等の既知の方法により、その抗原結合活性に関して試験され得る。抗原への結合に関して別の既知の抗体と競合する抗体を特定するために、競合アッセイも使用され得る。競合抗体は、既知の抗体により結合されるのと同じエピトープ(例えば、線状または立体構造エピトープ)に結合し得る。抗体が結合するエピトープをマッピングするための詳細な例示的な方法が、Morris(1996)“Epitope Mapping Protocols,”in Methods in Molecular Biology,Vol.66(Humana Press,Totowa,N.J.)に提供されている。
【0108】
部位特異的ADCを形成する例示的な抗体には、トラスツズマブ、オクレリズマブ、ペルツズマブ、抗PD1、抗PD-L1、抗ニューロピリン-1、抗MUC16、リツキシマブ、抗メソテリン、抗LY6E、抗STEAP1、抗FcRH5、抗CD22、抗B7H4、抗LGR5、抗CD79b、及び抗Napi2bを含み得るが、これらに限定されない。
【0109】
ADCの薬物構成成分を形成する薬物部分は、リンカー単位により抗体に共有結合して、標的療法効果のための抗体-薬物複合体を形成し得る。ADC化合物の例示的な実施形態は、例えば、腫瘍細胞を標的化する抗体(Ab)と、細胞傷害性薬物部分または細胞増殖抑制性薬物部分(D)と、AbをDに結合させるリンカー部分(L)とを含む。本抗体は、リンカー部分(L)により、リジン及びシステイン等の1つ以上のアミノ酸残基を通してDに結合し、本組成物は、式:Ab-(L-D)を有し、式中、pは、1~約20、または約2~約5である。反応性リンカー部分を介して抗体分子に複合体化され得る薬物部分の数は、抗体中に存在するか、もしくは本明細書に記載される方法により導入され得る遊離システイン残基を含むシステイン残基、または抗体の鎖間ジスルフィド結合を形成する天然システインの数により限定され得る。
【0110】
ADCの薬物部分(D)は、任意の療法化合物、部分、または基、特に細胞傷害性効果もしくは細胞増殖抑制性効果を有する基を含み得る。例示的な薬物部分は、チューブリン結合、DNA結合またはインターカレーション、ならびにRNAポリメラーゼ、タンパク質合成、及びトポイソメラーゼの阻害を含むが、これらに限定されない機序により、かかる細胞傷害性効果及び細胞増殖抑制性効果を付与し得る。いくつかの細胞傷害性薬物は、大きな抗体またはタンパク質受容体リガンドに複合体化されると、不活性になるか、または活性がより低減される傾向がある。例示的な薬物部分として、ペプチド(環状ペプチド、ベータペプチド、安定なペプチド、及びシステインノットペプチド等の1つ以上の非天然アミノ酸を含む治療用ペプチドを含む)、ポリアミド、マイタンシノイド、ドラスタチン、オーリスタチン、カリケアマイシン、ピロロベンゾジアゼピン(PBD)、PNU-159682、アントラサイクリン、デュオカルマイシン、ビンカアルカロイド、タキサン、トリコテセン、CC1065、デュオカルマイシン、カンプトテシン、エリナフィド、リファマイシンまたはリファマイシン類似体を含む抗生物質、フルオロフォア、放射性同位体、ならびに細胞傷害性活性を有するこれらの薬物の誘導体を含む、それらの立体異性体、イソスター(isosteres)、代謝物、類似体、または誘導体が挙げられるが、これらに限定されない。
【0111】
Fc領域変異体
1つ以上のアミノ酸修飾が本明細書に提供される部位特異的ADCを形成する抗体のFc領域に導入され、それによりFc領域変異形が産生され得る。Fc領域変異形は、1つ以上のアミノ酸位置にアミノ酸修飾(例えば、置換)を含むヒトFc領域配列(例えば、ヒトIgG1、IgG2、IgG3、またはIgG4Fc領域)を含み得る。
【0112】
本発明は、全てではないが、いくつかのエフェクター機能を有することにより、インビボでの抗体の半減期が重要であるが、ある特定のエフェクター機能(補体及びADCC等)が不要または有害である用途に望ましい候補となる抗体変異体を企図する。インビトロ及び/またはインビボ細胞傷害性アッセイを行って、CDC及び/またはADCC活性の低減/欠乏が確認され得る。例えば、Fc受容体(FcR)結合アッセイを実行して、抗体がFcγR結合を欠く(故にADCC活性を欠く可能性が高い)が、FcRn結合能力を保持していることを確実にすることができる。ADCCを媒介するための初代細胞であるNK細胞が、FcγRIIIのみを発現する一方で、単球は、FcγRI、FcγRII、及びFcγRIIIを発現する。造血細胞でのFcR発現は、Ravetch and Kinet,Annu.Rev.Immunol.9:457-492(1991)の464頁表3に要約されている。目的の分子のADCC活性を評価するためのインビトロアッセイの非限定的な例は、米国特許第5,500,362号(例えば、Hellstrom,I.et al.Proc.Nat’l Acad.Sci.USA 83:7059-7063(1986)を参照されたい)及びHellstrom,I et al.,Proc.Nat’l Acad.Sci.USA 82:1499-1502(1985)、第5,821,337号(Bruggemann,M.et al.,J.Exp.Med.166:1351-1361(1987)を参照されたい)に記載されている。代替的に、非放射性アッセイ法を用いてもよい(例えば、フローサイトメトリーのためのACTI(商標)非放射性細胞傷害性アッセイ(CellTechnology,Inc.Mountain View,CA、及びCytoTox96(登録商標)非放射性細胞傷害性アッセイ(Promega,Madison,WI)を参照されたい)。かかるアッセイに有用なエフェクター細胞には、末梢血単核細胞(PBMC)及びナチュラルキラー(NK)細胞が含まれる。代替的に、または追加的に、目的の分子のADCC活性は、例えば、Clynes et al.Proc.Nat’l Acad.Sci.USA 95:652-656(1998)に開示されるもの等の動物モデルにおいて、インビボで評価されてもよい。C1q結合アッセイを実行して、抗体がC1qに結合することができず、故にCDC活性を欠くことを確認することもできる。例えば、WO2006/029879及びWO2005/100402におけるC1q及びC3c結合ELISAを参照されたい。補体活性化を評定するために、CDCアッセイが行われ得る(例えば、Gazzano-Santoro et al.,J.Immunol.Methods 202:163(1996)、Cragg,M.S.et al.,Blood 101:1045-1052(2003)、及びCragg,M.S.and M.J.Glennie,Blood 103:2738-2743(2004)を参照されたい)。FcRn結合及びインビボクリアランス/半減期決定も、当該技術分野で既知の方法を使用して行われ得る(例えば、Petkova,S.B.et al.,Int’l.Immunol.18(12):1759-1769(2006)を参照されたい)。
【0113】
新生児Fc受容体へのIgG結合を増加させるために、1つ以上のアミノ酸修飾が、抗体のFc部分に導入されてもよい。本抗体は、EU番号付けに従う以下の3つの突然変異、すなわちM252Y、S254T、及びT256E(「YTE突然変異」を含む(米国特許第8,697,650号、Dall’Acqua et al.,Journal of Biological Chemistry 281(33):23514-23524(2006)も参照されたい)。YTE突然変異は、抗体がその同族抗原に結合する能力に影響を及ぼさない。YTE突然変異は、抗体の血清半減期を、天然(すなわち、非YTE突然変異体)抗体と比較して増加させ得る。YTE突然変異は、抗体の血清半減期を、天然(すなわち、非YTE突然変異体)抗体と比較して2~10倍増加させ得る。例えば、米国特許第8,697,650号を参照されたい。また、Dall’Acqua et al.,Journal of Biological Chemistry 281(33):23514-23524(2006)も参照されたい。
【0114】
YTE突然変異体は、抗体のADCC活性を調節する手段を提供し得る。YTEO突然変異体は、ヒト抗原に対して指向されるヒト化IgG抗体のADCC活性を調節する手段を提供し得る。例えば、米国特許第8,697,650号を参照されたい。また、Dall’Acqua et al.,Journal of Biological Chemistry 281(33):23514-23524(2006)も参照されたい。
【0115】
YTE変異体は、血清半減期、組織分布、及び抗体活性(例えば、IgG抗体のADCC活性)の同時調節を可能にし得る。例えば、米国特許第8,697,650号を参照されたい。また、Dall’Acqua et al.,Journal of Biological Chemistry(2006)281(33):23514-24も参照されたい。
【0116】
エフェクター機能が低下した抗体には、EU番号付けに従うFc領域残基238、265、269、270、297、327、及び329のうちの1つ以上の置換を有するものが含まれる(米国特許第6,737,056号)。かかるFc突然変異体には、EU番号付けに従うアラニンへの残基265及び297の置換(すなわち、EU番号付けに従うD265A及びN297A)を有する、いわゆる「DANA」Fc突然変異体を含む、EU番号付けに従うアミノ酸位置265、269、270、297、及び327のうちの2つ以上において置換を有するFc突然変異体が含まれる(米国特許第7,332,581号)。ある特定の実施形態において、Fc突然変異体は、以下の2つのアミノ酸置換、すなわちD265A及びN297Aを含む。ある特定の実施形態において、Fc突然変異体は、以下の2つのアミノ酸置換、すなわちD265A及びN297Aからなる。
【0117】
野生型ヒトFc領域の329位(EU番号付け)(P329)におけるプロリンは、グリシンもしくはアルギニン、またはFcのP329とFcgRIIIのトリプトファン残基W87及びW110との間に形成されるFc/Fcγ受容体界面内でプロリンサンドイッチを破壊するのに十分に大きいアミノ酸残基で置換され得る(Sondermann et al.:Nature 406,267-273(20 July 2000))。さらなる一実施形態において、Fc変異形内の少なくとも1つのさらなるアミノ酸置換は、S228P、E233P、L234A、L235A、L235E、N297A、N297D、またはP331Sであり、さらに別の実施形態において、上記の少なくとも1つのさらなるアミノ酸置換は、ヒトIgG1 Fc領域のL234A及びL235A、またはヒトIgG4 Fc領域のS228P及びL235Eであり、全てEU番号付けに従う(その全体が参照により組み込まれる、US8969526)。
【0118】
ポリペプチドは、野生型ヒトIgG Fc領域のFc変異形を含み、このポリペプチドは、グリシンで置換されたヒトIgG Fc領域のP329を有し、Fc変異形は、ヒトIgG1 Fc領域のL234A及びL235A、またはヒトIgG4 Fc領域のS228P及びL235Eにおいて少なくとも2つのさらなるアミノ酸置換を含み、残基は、EU番号付けに従って番号付けされる(参照により組み込まれる、US8969526)。P329G、L234A、及びL235A(EU番号付け)置換を含むポリペプチドでは、野生型ヒトIgG Fc領域を含むポリペプチドによりADCCが少なくともその20%に下方調節される場合、及び/またはADCPが下方調節される場合は、ヒトFcγRIIIA及びFcγRIIAに対する親和性の低下が示され得る(参照により組み込まれる、米国特許第8,969,526号)。
【0119】
野生型ヒトFcポリペプチドのFc変異形を含むポリペプチドは、三重突然変異、EU番号付け(P329/LALA)に従いPro329、L234A、及びL235A位にアミノ酸置換を含み得る(US8969526、参照によりその全体が組み込まれる)。例としての実施形態において、ポリペプチドは、以下のアミノ酸置換、すなわち、EU番号付けに従いP329G、L234A、及びL235Aを含む。
【0120】
FcRへの結合が改善または低減されたある特定の抗体変異体が記載されている。(例えば、US6,737,056、WO2004/056312、及びShields et al.,J.Biol.Chem.9(2):6591-6604(2001)を参照されたい。)
【0121】
抗体変異形は、ADCCを改善する1つ以上のアミノ酸置換、例えば、Fc領域の298位、333位、及び/または334位(EU番号付け)での置換を有するFc領域を含み得る。
【0122】
改変は、例えば、US6194551、WO99/51642、及びIdusogie et al.(2000)J.Immunol.164:4178-4184に記載されているように、改変された(すなわち、改善または低減された)C1q結合及び/または補体依存性細胞傷害(CDC)をもたらすFc領域で行われ得る。
【0123】
母体IgGの胎児への移入に関与する、半減期が増加し、かつ新生児型Fc受容体(FcRn)への結合が改善された抗体(Guyer et al.,J.Immunol.117:587(1976)及びKim et al.,J.Immunol.24:249(1994))は、US2005/0014934に記載されている。それらの抗体は、Fc領域のFcRnへの結合を改善する1つ以上の置換を有するFc領域を含む。かかるFc変異形には、Fc領域残基:238、256、265、272、286、303、305、307、311、312、317、340、356、360、362、376、378、380、382、413、424、または434のうちの1つ以上における置換、例えば、EU番号付けに従うFc領域残基434の置換(US7371826)を有するものが含まれる。Fc領域変異形の他の例に関して、Duncan&Winter,Nature 322:738-40(1988)、US5648260、US5624821、及びWO94/29351も参照されたい。
【0124】
システイン操作抗体変異形
抗体の1つ以上の残基がシステイン残基で置換されている、システイン操作抗体、例えば、「THIOMAB(商標)抗体」を作製することが望ましい場合がある。特定の実施形態では、置換された残基は、抗体の到達可能な部位で生じる。それらの残基をシステインで置換することによって、反応性のチオール基は、抗体の到達可能な部位に位置付けられ、それを使用して、抗体を、薬物部分またはリンカー-薬物中間体等の他の部分に複合体化して、本明細書にさらに記載される、免疫複合体を作成してもよい。ある特定の実施形態において、次の残基、すなわち軽鎖のV205(Kabat番号付け)、重鎖のA140(EU番号付け)、重鎖のL174(EU番号付け)、重鎖のY373(EU番号付け)、軽鎖のK149(Kabat番号付け)、重鎖のA118(EU番号付け)、及び重鎖Fc領域のS400(EU番号付け)のうちの任意の1個以上が、システインで置換されてもよい。特定の実施形態において、本明細書に記載される抗体は、HC-A140C(EU番号付け)システイン置換を含む。特定の実施形態において、本明細書に記載される抗体は、LC-K149C(Kabat番号付け)システイン置換を含む。特定の実施形態において、本明細書に記載される抗体は、HC-A118C(EU番号付け)システイン置換を含む。システイン操作抗体は、例えば、米国特許第7,521,541号、第9,000,130号に記載されるように生成され得る。
【0125】
抗体は、以下の重鎖システイン置換のうちの1つを含み得る。
抗体は、以下の軽鎖システイン置換のうちの1つを含み得る。
【0126】
リンカー
「リンカー」(L)は、1つ以上の薬物部分(D)を抗体(Ab)に結合させて、式IのADCを形成させるために使用することができる、二機能性または多機能性部分である。いくつかの実施形態において、ADCは、薬物に及び抗体に共有結合するための反応性官能基を有するリンカーを使用して調製することができる。例えば、いくつかの実施形態において、システイン操作抗体(Ab)のシステインチオールは、リンカーの反応性官能基または薬物-リンカー中間体と結合を形成して、ADCを作製することができる。
【0127】
リンカーは、抗体上に存在する遊離システインと反応して、共有ジスルフィド結合を形成することができる官能性を有し得る(例えば、Klussman,et al(2004),Bioconjugate Chemistry 15(4):765-773の766頁の複合体化方法、及び本明細書中の実施例を参照されたい)。
【0128】
例示的なスペーサ構成成分としては、バリン-シトルリン(「val-cit」または「vc」)、アラニン-フェニルアラニン(「ala-phe」)、及びp-アミノベンジルオキシカルボニル(「PAB」)が挙げられる。様々なリンカー構成成分が当技術分野において既知である。
【0129】
リンカーは、抗体上に存在する遊離システインと反応して共有結合を形成することが可能である官能性を有し得る。非限定的で例示的なかかる反応性官能基には、マレイミド、ハロアセトアミド、α-ハロアセチル、コハク酸イミドエステル、4-ニトロフェニルエステル、ペンタフルオロフェニルエステル、テトラフルオロフェニルエステル等の活性化エステル、無水物、酸塩化物、塩化スルホニル、イソシアン酸塩、及びイソチオシアン酸塩が挙げられる。例えば、Klussman,et al(2004),Bioconjugate Chemistry 15(4):765-773の766頁における複合方法、及びその中の実施例を参照されたい。
【0130】
リンカーは、抗体上に存在する求電子基と反応することが可能である官能性を有し得る。かかる求電子基の例には、アルデヒド基及びケトンカルボニル基が含まれるが、これらに限定されない。リンカーの反応性官能基のヘテロ原子が、抗体上の求電子基と反応して抗体単位との共有結合を形成することができる。かかる反応性官能基の非限定的な例には、ヒドラジド、オキシム、アミノ、ヒドラジン、チオセミカルバゾン、ヒドラジンカルボン酸塩、及びアリールヒドラジドが挙げられるが、これらに限定されない。
【0131】
リンカーは、1つ以上のリンカー構成成分を含んでもよい。例示的なリンカー構成成分には、6-マレイミドカプロイル(「MC」)、マレイミドプロパノイル(「MP」)、バリン-シトルリン(「val-cit」または「vc」)、アラニン-フェニルアラニン(「ala-phe」)、p-アミノベンジルオキシカルボニル(「PAB」)、N-コハク酸イミジル4-(2-ピリジルチオ)ペンタン酸塩(「SPP」)、及び4-(N-マレイミドメチル)シクロヘキサン-1カルボン酸塩(「MCC」)が含まれる。種々のリンカー構成成分が当該技術分野で知られており、このうちのいくつかが以下に記載される。
【0132】
リンカーは、薬物の放出を容易にする「切断可能なリンカー」であってもよい。非限定的で例示的な切断可能なリンカーには、酸不安定性リンカー(例えば、ヒドラゾンを含む)、プロテアーゼ感受性(例えば、ペプチダーゼ感受性)リンカー、感光性リンカー、またはジスルフィド含有リンカー(Chari et al.,Cancer Research 52:127-131(1992)、US5208020)が挙げられる。
【0133】
リンカーは、ジスルフィド基と薬物部分との間に1つ以上のスペーサ単位を含んでもよい。一実施例は、以下の式を有するリンカーを含み、
式中、Aは、「ストレッチャー(stretcher)単位」であり、aは、0~1の整数であり、Wは、「アミノ酸単位」であり、wは、0~12の整数であり、Yは「スペーサ単位」であり、yは、0、1、または2であり、Ab、D、及びpは上記式Iで定義されるものである。かかるリンカーの例示的な実施形態は、米国特許第7,498,298号に記載され、それは参照により本明細書に明示的に組み込まれる。
【0134】
リンカー構成成分は、抗体を別のリンカー構成成分にまたは薬物部分に結合させる「ストレッチャー単位」を含み得る。例示的なストレッチャー単位は、以下に示される(ここで波線は、抗体、薬物、または追加のリンカー構成成分への共有結合の部位を示す)。
【0135】
リンカーは、WO2015/095227、WO2015/095124、またはWO2015/095223に記載されるもの等のペプチド模倣体リンカーであってもよく、これらの文書は参照により本明細書に組み込まれる。
【0136】
薬物部分
本発明の部位特異的ADC化合物は、以下を含む、1つ以上の薬物部分に複合体化された抗体を含む。
【0137】
マイタイシン及びマイタンシノイド
いくつかの実施形態において、ADCは、1つ以上のマイタンシノイド分子に複合体化された抗体を含む。マイタンシノイドは、マイタンシンの誘導体であり、チューブリン重合を阻害することによって作用する有糸分裂阻害剤である。マイタンシンは、東アフリカの低木であるMaytenus serrataから最初に単離された(US3896111)。その後、特定の微生物もまた、マイタンシノール及びC-3マイタンシノールエステル等のマイタンシノイドを産生することが発見された(US4151042)。合成マイタンシノイドは、例えば、US4137230、US4248870、US4256746、US4260608、US4265814、US4294757、US4307016、US4308268、US4308269、US4309428、US4313946、US4315929、US4317821、US4322348、US4331598、US4361650、US4364866、US4424219、US4450254、US4362663、及びUS4371533に開示されている。
【0138】
マイタンシノイド薬物部分は、(i)発酵または化学修飾または発酵産生物の誘導体化による調製に比較的利用しやすく、(ii)非ジスルフィドリンカーによる抗体への複合体化に好適な官能基との誘導体化に適しており、(iii)血漿中で安定しており、かつ(iv)様々な腫瘍細胞株に対して有効であるため、抗体-薬物複合体中の魅力的な薬物部分である。
【0139】
マイタンシノイド薬物部分としての使用に好適なある特定のマイタンシノイドは、当該技術分野において既知であり、既知の方法に従って天然源から単離され得るか、または遺伝子操作技法を使用して産生され得る(例えば、Yu et al(2002)Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.99:7968-7973を参照されたい)。マイタンシノイドはまた、既知の方法に従って合成的にも調製され得る。
【0140】
例示的なマイタンシノイド薬物部分として、C-19-デクロロ(米国特許第4256746号)(例えば、アンサミトシン(ansamytocin)P2の水素化アルミニウムリチウム還元によって調製される)、C-20-ヒドロキシ(またはC-20-デメチル)+/-C-19-デクロロ(米国特許第4361650号及び同第4307016号)(例えば、StreptomycesもしくはActinomycesを使用する脱メチル化、またはLAHを使用する脱塩素化によって調製される)、ならびにC-20-デメトキシ、C-20-アシルオキシ(-OCOR)、+/-デクロロ(米国特許第4,294,757号)(例えば、アシル塩化物を使用するアシル化によって調製される)等の、修飾芳香族環を有するものと、芳香族環の他の位置における修飾を有するものとが挙げられるが、これらに限定されない。
【0141】
例示的なマイタンシノイド薬物部分として、C-9-SH(米国特許第4424219号)(例えば、マイタンシノールのHSまたはPとの反応によって調製される)、C-14-アルコキシメチル(デメトキシ/CHOR)(US4331598)、C-14-ヒドロキシメチルまたはアルコキシメチル(CHOHまたはCHOAc)(US4450254)(例えば、Nocardiaによって調製される)、C-15-ヒドロキシ/アシルオキシ(US4364866)(例えば、Streptomycesによるマイタンシノールの転換によって調製される)、C-15-メトキシ(US4313946及びUS4315929)(例えば、Trewia nudlfloraから単離される)、C-18-N-デメチル(US4362663及びUS4322348)(例えば、Streptomycesによるマイタンシノールの脱メチル化によって調製される)、ならびに4,5-デオキシ(US4371533)(例えば、マイタンシノールの三塩化チタン/LAH還元によって調製される)等の修飾を有するものもまた挙げられる。
【0142】
マイタンシノイド化合物上の多くの位置は、結合位置として有用である。例えば、エステル結合は、従来のカップリング技法を使用してヒドロキシル基との反応によって形成され得る。反応は、ヒドロキシル基を有するC-3位、ヒドロキシメチルで修飾したC-14位、ヒドロキシル基で修飾したC-15位、及びヒドロキシル基を有するC-20位で生じ得る。結合は、マイタンシノールまたはマイタンシノール類似体のC-3位で形成される。
【0143】
マイタンシノイド薬物部分としては、構造:
を有するものが挙げられ、式中、波線は、マイタンシノイド薬物部分の硫黄原子がADCのリンカーに対する共有結合を示す。各Rは独立して、HまたはC-Cアルキルであり得る。アミド基を硫黄原子に結合させるアルキレン鎖は、メタニル、エタニル、またはプロピルであり得、すなわち、mは、1、2、または3である(US633410、US5208020、Chari et al(1992)Cancer Res.52:127-131、Liu et al(1996)Proc.Natl.Acad.Sci USA 93:8618-8623)。
【0144】
マイタンシノイド薬物部分の全ての立体異性体は、本発明のADC、すなわち、キラル炭素におけるR及びS構成の任意の組み合わせに対して企図される(US7276497、US6913748、US6441163、US633410(RE39151)、US5208020、Widdison et al(2006)J.Med.Chem.49:4392-4408、これは参照により全体が組み込まれる)。いくつかの実施形態において、マイタンシノイド薬物部分は、以下の立体化学を有する。
【0145】
マイタンシノイド薬物部分の例示的な実施形態としては、構造:
を有するDM1、DM3、及びDM4が含まれるが、これらに限定されず、式中、波線は、薬物の硫黄原子の、抗体-薬物複合体のリンカー(L)への共有結合を示す。
【0146】
マイタンシノイドを含有する免疫複合体、その作製方法、及びそれらの治療的使用は、例えば、US5208020及びUS5416064、US2005/0276812A1、ならびに欧州特許第EP0425235B1号に開示され、それらの開示は、参照により本明細書に明示的に組み込まれる。Liu et al.Proc.Natl.Acad.Sci.USA 93:8618-8623(1996)、及びChari et al.Cancer Research 52:127-131(1992)もまた参照されたい。
【0147】
抗体-マイタンシノイド複合体は、抗体またはマイタンシノイド分子のいずれかの生物活性を著しく減少させることなく、抗体をマイタンシノイド分子に化学的に結合させることによって調製されてもよい。例えば、米国特許第5,208,020号を参照されたい(その開示は、参照により本明細書に明示的に組み込まれる)。抗体分子当たり平均3~4個のマイタンシノイド分子が複合体化されたADCは、抗体の機能または可溶性に悪影響を与えることなく、標的細胞の細胞傷害性を増強することにおいて効能を示している。いくつかの例において、毒素/抗体の1つの分子でさえも、裸抗体を使用するより細胞傷害性を増強することが予測される。
【0148】
抗体-マイタンシノイド複合体を作製するための例示的な結合基としては、例えば、本明細書に記載されるもの、及び米国特許第5208020号、欧州特許第0425235B1号、Chari et al.Cancer Research 52:127-131(1992)、US2005/0276812、及びUS2005/016993に記載されるものが挙げられ、それらの開示は、参照により本明細書に明示的に組み込まれる。
【0149】
オーリスタチン及びドラスタチン
薬物部分は、ドラスタチン、オーリスタチン、ならびにそれらの類似体及び誘導体を含み得る(US5635483、US5780588、US5767237、US6124431)。オーリスタチンは、海生軟体動物化合物ドラスタチン-10の誘導体である。理論によって拘束されることを意図するものではないが、ドラスタチン及びオーリスタチンは、微小管動態、GTP加水分解、ならびに核分裂及び細胞分裂に干渉し(Woyke et al(2001)Antimicrob.Agents and Chemother.45(12):3580-3584)、抗癌活性(US5663149)及び抗菌活性(Pettit et al(1998)Antimicrob.Agents Chemother.42:2961-2965)を有することが示されている。ドラスタチン/オーリスタチン薬物部分は、ペプチド薬物部分のN(アミノ)末端またはC(カルボキシル)末端を通して抗体に結合し得る(WO02/088172、Doronina et al(2003)Nature Biotechnology 21(7):778-784、Francisco et al(2003)Blood 102(4):1458-1465)。
【0150】
例示的なオーリスタチン実施形態としては、US7498298及びUS7659241に開示されるN末端結合されたモノメチルオーリスタチン薬物部分が挙げられ、それらの開示は、参照にその全体が明示的に組み込まれ、式Dの例示的なオーリスタチンの一実施形態は、MMAEであり、式中、波線は、抗体-薬物複合体:MMAEのリンカー(L)への共有結合を示す。
【0151】
式Dの例示的なオーリスタチンの一実施形態は、MMAFであり、式中、波線は、抗体-薬物複合体:MMAFのリンカー(L)への共有結合を示す。
【0152】
他の例示的な実施形態としては、ペンタペプチドオーリスタチン薬物部分のC末端にフェニルアラニンカルボキシ修飾を有するモノメチルバリン化合物(WO2007/008848)及びペンタペプチドオーリスタチン薬物部分のC末端にフェニルアラニン側鎖修飾を有するモノメチルバリン化合物(WO2007/008603)が挙げられる。
【0153】
典型的には、ペプチド系薬物部分は、2つ以上のアミノ酸及び/またはペプチド断片の間にペプチド結合を形成することによって調製することができる。かかるペプチド結合は、例えば、液相合成法に従って調製することができる(例えば、E.Schroder and K.Lubke,“The Peptides”,volume1,pp76-136,1965,Academic Pressを参照されたい)。オーリスタチン/ドラスタチン薬物部分は、US7498298、US5635483、US5780588、Pettit et al(1989)J.Am.Chem.Soc.111:5463-5465、Pettit et al(1998)Anti-Cancer Drug Design 13:243-277、Pettit,G.R.,et al.Synthesis,1996,719-725、Pettit et al(1996)J.Chem.Soc.Perkin Trans.1 5:859-863、及びDoronina(2003)Nat.Biotechnol.21(7):778-784の方法に従って調製され得る。
【0154】
MMAE等の式D及びMMAF等の式Dのオーリスタチン/ドラスタチン薬物部分、ならびにそれらの薬物-リンカー中間体及び誘導体(MC-MMAF、MC-MMAE、MC-vc-PAB-MMAF、及びMC-vc-PAB-MMAE等)は、US7498298、Doronina et al.(2006)Bioconjugate Chem.17:114-124、及びDoronina et al.(2003)Nat.Biotech.21:778-784に記載されている方法を使用して調製され得、次に対象の抗体に複合体化され得る。
【0155】
カリケアミシン
カリケアミシンファミリーの抗生物質、及びそれらの類似体は、ピコモル以下の濃度で二重鎖DNA切断を産生することができる(Hinman et al.,(1993)Cancer Research 53:3336-3342、Lode et al.,(1998)Cancer Research 58:2925-2928)。カリケアマイシンは、細胞内作用部位を有するが、特定の例において、血漿膜を容易には横断しない。したがって、いくつかの実施形態において、抗体媒介性内部移行を通したこれらの薬剤の細胞取り込みによって、それらの細胞傷害性効果を大いに増強することができる。非限定的で例示的なカリケアミシン薬物部分を有する抗体-薬物複合体を調製する方法は、例えば、US5712374、US5714586、US5739116、US5767285、及びWO2017/068511に記載されている。
【0156】
抗体に複合体化される薬物部分は、式:
を有するカリケアマイシン化合物であり、式中、Xは、BrまたはIであり、Lは、リンカーであり、Rは、水素、C1-6アルキル、または-C(=O)C1-6アルキルであり、Rは、水素またはC1-6アルキルである。
【0157】
ピロロベンゾジアゼピン
ADCは、ピロロベンゾジアゼピン(PBD)薬物部分を含み得る。PDB二量体は、特定のDNA配列を認識し、それに結合する。天然産物アントラマイシンであるPBDは、1965年に最初に報告された(Leimgruber,et al.,(1965)J.Am.Chem.Soc.,87:5793-5795、Leimgruber,et al.,(1965)J.Am.Chem.Soc.,87:5791-5793)。それ以来、三環式PBD足場の二量体を含む、いくつかのPBD(天然に存在するもの及び類似体の両方)が報告されている(Thurston,et al.,(1994)Chem.Rev.1994,433-465(US6884799、US7049311、US7067511、US7265105、US7511032、US7528126、US7557099)。理論によって拘束されることを意図するものではないが、二量体構造が、B型DNAの副溝との等螺旋性(isohelicity)に適切な三次元形状を付与し、それによって結合部位において滑合がもたらされると考えられている(Kohn,In Antibiotics III.Springer-Verlag,New York,pp.3-11(1975)、Hurley and Needham-VanDevanter,(1986)Acc.Chem.Res.,19:230-237)。C2アリール置換基を担持する二量体PBD化合物は、細胞傷害性薬剤として有用であることが示されてきた(Hartley et al(2010)Cancer Res.70(17):6849-6858、Antonow(2010)J.Med.Chem.53(7):2927-2941、Howard et al(2009)Bioorganic and Med.Chem.Letters 19(22):6463-6466)。
【0158】
PBD化合物は、それらをN10位において、インビボで除去可能である窒素保護基で保護することによって、プロドラッグとして用いることができる(WO00/12507、WO2005/023814号)。
【0159】
PBD二量体は、抗体に複合体化されており、結果として生じるADCは、抗がん特性を有することが示されている(US2010/0203007)。PBD二量体上の非限定的で例示的な結合部位としては、5員のピロロ環、PBD単位の間のテザー、及びN10-C11イミン基が挙げられる(WO2009/016516、US2009/304710、US2010/047257、US2009/036431、US2011/0256157、WO2011/130598)。
【0160】
リンカーは、B環のN10イミン、C環のC-2エンド/エキソ位、またはA環を結合するテザー単位を含む、PBD二量体薬物部分の様々の部位のうちの1つで結合してもよい(以下の構造C(I)及びC(II)を参照されたい)。
【0161】
いくつかの実施形態において、例示的なADCのPBD二量体構成成分は、式A-1の構造を有し、
式中、nは、0または1である。
【0162】
いくつかの実施形態において、ADCの例示的なPBD二量体構成成分は、式A-2の構造を有し、
式中、nは、0または1である。
【0163】
いくつかの実施形態において、ADCの例示的なPBD二量体構成成分は、式A-3の構造を有し、
式中、R及びRE”はそれぞれ独立して、HまたはRから選択され、式中、Rは、上記のように定義され、
式中、nは、0または1である。
【0164】
いくつかの実施形態において、nは、0である。いくつかの実施形態において、nは、1である。いくつかの実施形態において、R及び/またはRE”は、Hである。いくつかの実施形態において、R及びRE”は、Hである。いくつかの実施形態において、R及び/またはRE”は、Rであり、Rは任意に置換されるC1-12アルキルである。いくつかの実施形態において、R及び/またはRE”は、Rであり、Rは、メチルである。
【0165】
いくつかの実施形態において、例示的なADCのPBD二量体構成成分は、式A-4の構造を有し、
式中、Ar及びArはそれぞれ独立して、任意に置換されるC5-20アリールであり、Ar及びArは、同じであっても異なってもよく、
式中、nは、0または1である。
【0166】
ADCの例示的なPBD二量体構成成分は、式A-5の構造を有し、
式中、Ar及びArはそれぞれ独立して、任意に置換されるC5-20アリールであり、Ar及びArは、同じであっても異なってもよく、
式中、nは、0または1である。
【0167】
Ar及びArはそれぞれ独立して、任意で置換されたフェニル、フラニル、チオフェニル、及びピリジルから選択される。いくつかの実施形態において、Ar及びArはそれぞれ独立して、任意に置換されるフェニルである。いくつかの実施形態において、Ar及びArはそれぞれ独立して、任意に置換されるチエン-2-イルまたはチエン-3-イルである。いくつかの実施形態において、Ar及びArは各々独立して、任意で置換されたキノリニルまたはイソキノリニルである。キノリニルまたはイソキノリニル基は、任意の利用可能な環の位置を通して、PBDコアに結合されてもよい。例えば、キノリニルは、キノリン-2-イル、キノリン-3-イル、キノリン-4イル、キノリン-5-イル、キノリン-6-イル、キノリン-7-イル、及びキノリン-8-イルであり得る。いくつかの実施形態において、キノリニルは、キノリン-3-イル及びキノリン-6-イルから選択される。イソキノリニルは、イソキノリン-1-イル、イソキノリン-3-イル、イソキノリン-4イル、イソキノリン-5-イル、イソキノリン-6-イル、イソキノリン-7-イル、及びイソキノリン-8-イルであり得る。いくつかの実施形態において、イソキノリニルは、イソキノリン-3-イル及びイソキノリン-6-イルから選択される。
【0168】
ADCの例示的なPBD二量体構成成分は、式A-6の構造を有し、
さらなる非限定的で例示的なPBD二量体薬物構成成分は、式B、
ならびにその塩及び溶媒和物を有し、式中、
波線は、リンカーへの共有結合部位を示し、
OHに接続された波線は、SまたはR配置を示し、
V1及びRV2は独立して、H、メチル、エチル、及びフェニル(このフェニルは、特に4位において、フルオロで任意に置換されてもよい)、C5-6ヘテロシクリルから選択され、式中、RV1及びRV2は、同じであっても異なってもよく、
nは、0または1である。
V1及びRV2は独立して、H、フェニル、及び4-フルオロフェニルから選択され得る。
ADCの非限定的な例示的なPBD二量体構成成分は、テザー結合された式C(I)及びC(II)が含まれる。
【0169】
式C(I)及びC(II)は、それらのN10-C11イミン型で示される。例示的なPBD薬物部分はまた、以下の表に示される、カルビノールアミン及び保護されたカルビノールアミン型も含まれる。
式中、
Xは、CH(n=1~5)、N、またはOであり、
Z及びZ’は独立して、OR及びNRから選択され、式中、Rは、1~5個の炭素原子を含む第一級、第二級、または第三級アルキル鎖であり、
、R’、R、及びR’はそれぞれ独立して、H、C-Cアルキル、C-Cアルケニル、C-Cアルキニル、C5-20アリール(置換されたアリールを含む)、C5-20ヘテロアリール基、-NH、-NHMe、-OH、及び-SHから選択され、いくつかの実施形態において、アルキル、アルケニル、及びアルキニル鎖は、最大5個の炭素原子を含み、
及びR’は独立して、H、OR、NHR、及びNRから選択され、Rは、1~5個の炭素原子を含む第一級、第二級、または第三級アルキル鎖であり、
及びR’は独立して、H、Me、及びOMeから選択され、
は、C-Cアルキル、C-Cアルケニル、C-Cアルキニル、C5-20アリール(ハロ、ニトロ、シアノ、アルコキシ、アルキル、ヘテロシクリルによって置換されたアリールを含む)、及びC5-20ヘテロアリール基から選択され、いくつかの実施形態において、アルキル、アルケニル、及びアルキニル鎖は、最大5個の炭素原子を含み、
11は、H、C-Cアルキル、または保護基(アセチル、トリフルオロアセチル、t-ブトキシカルボニル(BOC)、ベンジルオキシカルボニル(CBZ)、9-フルオレニルメチレンオキシカルボニル(Fmoc)、またはバリン-シトルリン-PAB等の自己犠牲単位を含む部分等)であり、
12は、H、C-Cアルキル、または保護基であり、
、R’、R、R’、R、もしくはR12のうちの1つの水素、またはA環の間の-OCHCH(X)CHCHO-スペーサの水素は、ADCのリンカーに接続している結合で置き換えられる。
【0170】
本明細書に記載されるPBD二量体を含むADCは、ピリジン脱離基を含むリンカー-薬物中間体を、硫黄原子を介して抗体のシステインチオールに複合体化して、ジスルフィド結合を形成することによって作製され得る。さらに、いくつかの実施形態において、本明細書に記載されるPBD二量体を含むADCは、ピリジン環が1つ以上のニトロ基で置換されているチオピリジル脱離基を含むリンカー-薬物中間体を複合体化することによって作製され得る。いくつかの実施形態において、ピリジル環は、-NOで一置換される。いくつかの実施形態において、-NO一置換は、ジスルフィドに対してパラである。いくつかの実施形態において、PBD二量体は、N10位を介して接続される。例えば、PBD二量体を含む非限定的な例示的なADCは、モノメチルエチルピリジルジスルフィド、N10結合されたPBDリンカー中間体(以下に示される)を、抗体に複合体化することによって作製され得る。
【0171】
PBD二量体及びPBD二量体を含むADCは、当技術分野において既知の方法に従って調製することができる。例えば、WO2009/016516、US2009/304710、US2010/047257、US2009/036431、US2011/0256157、WO2011/130598、WO2013/055987を参照されたい。
【0172】
アントラサイクリン
本開示の部位特異的ADCは、アントラサイクリンを含み得る。アントラサイクリンは、細胞傷害性活性を呈する抗生物質化合物である。理論によって拘束されることを意図しないが、アントラサイクリンは、1)薬物分子の、細胞のDNAへのインターカレーションによってDNA依存的核酸合成を阻害すること、2)次に細胞巨大分子と反応して細胞への損傷を引き起こすフリーラジカルの薬物による産生、及び/または3)薬物分子と細胞膜との相互作用を含む、多くの異なる機序によって、細胞を死滅させるように動作し得る(例えば、C.Peterson et al.,“Transport And Storage Of Anthracycline In Experimental Systems And Human Leukemia”in Anthracycline Antibiotics In Cancer Therapy、N.R.Bachur,“Free Radical Damage”id.at pp.97-102を参照されたい)。それらの細胞傷害能のため、アントラサイクリンは、白血病、乳癌、肺癌、卵巣腺癌、及び肉腫等の多くの癌の治療に使用されてきた(例えば、P.H-Wiernik,in Anthracycline:Current Status And New Developments p11を参照されたい)。
【0173】
例示的なアントラサイクリンとしては、ドキソルビシン、エピルビシン、イダルビシン、ダウノマイシン、ネモルビシン、及びそれらの誘導体が挙げられる。ダウノルビシン及びドキソルビシンの免疫複合体及びプロドラッグが調製され、研究されている(Kratz et al(2006)Current Med.Chem.13:477-523、Jeffrey et al(2006)Bioorganic&Med.Chem.Letters 16:358-362、Torgov et al(2005)Bioconj.Chem.16:717-721、Nagy et al(2000)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 97:829-834、Dubowchik et al(2002)Bioorg.&Med.Chem.Letters 12:1529-1532、King et al(2002)J.Med.Chem.45:4336-4343、EP0328147、US6630579)。抗体-薬物複合体BR96-ドキソルビシンは、腫瘍関連抗原ルイス-Yと特異的に反応し、第I相及び第II相試験において評価されている(Saleh et al(2000)J.Clin.Oncology 18:2282-2292、Ajani et al(2000)Cancer Jour.6:78-81、Tolcher et al(1999)J.Clin.Oncology 17:478-484)。
【0174】
PNU-159682は、ネモルビシンの有力な代謝物(または誘導体)である(Quintieri,et al.(2005))Clinical Cancer Research 11(4):1608-1617)。ネモルビシンは、ドキソルビシンのグリコシドアミノ上に2-メトキシモルホリノ基を有するドキソルビシンの半合成類似体であり、臨床評価されている(Grandi et al(1990)Cancer Treat.Rev.17:133、Ripamonti et al(1992)Brit.J.Cancer 65:703)(肝細胞癌についてのII相/III相治験を含む(Sun et al(2003)、Proceedings of the American Society for Clinical Oncology 22,Abs1448、Quintieri(2003)Proceedings of the American Association of Cancer Research,44:1st Ed,Abs4649、Pacciarini et al(2006)Jour.Clin.Oncology 24:14116)。
【0175】
いくつかの実施形態において、ネモルビシン含有ADCのネモルビシン構成成分は、PNU-159682である。
式中、波線は、リンカー(L)への結合を示す。
【0176】
PNU-159682を含むアントラシクリンは、いくつかの結合部位及び本明細書に記載されるリンカーを含む種々のリンカー(US2011/0076287、WO2009/099741、US2010/0034837、WO2010/009124)を介して抗体に複合体化され得る。
【0177】
例示的なADCは、ピリジルジスルフィドPNUアミド(以下に示される)を抗体に複合体化することによって作製され、
ジスルフィド結合されたPNU-159682抗体-薬物複合体を産生し得る。
【0178】
PNU-159682マレイミドアセタール-Abのリンカーは、酸不安定性である一方で、PNU-159682-val-cit-PAB-Ab、PNU-159682-val-cit-PAB-スペーサ-Ab、及びPNU-159682-val-cit-PAB-スペーサ(R)-Abのリンカーは、プロテアーゼ切断可能である。
【0179】
1-(クロロメチル)-2,3-ジヒドロ-1H-ベンゾ[e]インドール(CBI)二量体薬物部分
いくつかの実施形態において、ADCは、1-(クロロメチル)-2,3-ジヒドロ-1H-ベンゾ[e]インドール(CBI)を含む。5-アミノ-1-(クロロメチル)-1,2-ジヒドロ-3H-ベンゾ[e]インドール(アミノCBI)クラスのDNA小溝アルキル化剤は、強力な細胞毒であり(Atwell,et al(1999)J.Med.Chem.,42:3400)、癌療法のために設計された多くのクラスのプロドラッグ中のエフェクター単位として利用されてきた。これらは、抗体複合体(Jeffrey,et al.(2005)J.Med.Chem.,48:1344)、ニトロベンジルカルバメートに基づく遺伝子療法のためのプロドラッグ(Hay,et al(2003)J.Med.Chem.46:2456)、及び低酸素活性化プロドラッグとしての対応するニトロ-CBI誘導体(Tercel,et al(2011)Angew.Chem.,Int.Ed.,50:2606-2609)を含んでいた。CBI及びピロロ[2,1-c][1,4]ベンゾジアゼピン(PBD)ファルマコフォアは、アルキル鎖によって一緒に結合されている(Tercel et al(2003)J.Med.Chem 46:2132-2151)。
【0180】
部位特異的ADCは、1-(クロロメチル)-2,3-ジヒドロ-1H-ベンゾ[e]インドール(CBI)二量体(WO2015/023355)を含み得る。二量体は、ヘテロ二量体であり、その二量体の半分がCBI部分であり、二量体のもう半分がPBD部分であり得る。
【0181】
例示的なCBI二量体は、式:
を含み、
式中、
は、H、P(O)、C(O)NR、またはリンカー(L)への結合から選択され、
は、H、P(O)、C(O)NR,、またはリンカー(L)への結合から選択され、
及びRは独立して、H及び1つ以上のFで任意に置換されたC-Cアルキルから選択されるか、またはR及びRは、5員または6員ヘテロシクリル基を形成し、
Tは、C-C12アルキレン、Y、(C-Cアルキレン)-Y-(C-Cアルキレン)、(C-Cアルキレン)-Y-(C-Cアルキレン)-Y-(C-Cアルキレン)、(C-Cアルケニレン)-Y-(C-Cアルケニレン)、及び(C-Cアルキニレン)-Y-(C-Cアルキニレン)から選択されるテザー基であり、
Yは、独立して、O、S、NR、アリール、及びヘテロアリールから選択され、
アルキレン、アルケニレン、アリール、及びヘテロアリールが独立してかつ任意に、F、OH、O(C-Cアルキル)、NH、NHCH、N(CH、OP(O)、及びC-Cアルキルで置換され、式中、アルキルが、1つ以上のFで任意に置換されるか、
またはアルキレン、アルケニレン、アリール、及びヘテロアリールが独立してかつ任意に、Lへの結合で置換され、
D’が、
から選択される薬物部分であり、
式中、波線が、Tへの結合部位を示し、
X及びXは独立して、O及びNRから選択され、Rが、H、及び1つ以上のFで任意に置換されるC-Cアルキルから選択され、
は、H、COR、またはリンカー(L)への結合であり、Rが、C-Cアルキル、またはベンジルであり、
は、HまたはC-Cアルキルである。
【0182】
アマトキシン及びアマニチン
部位特異的ADCは、1つ以上のアマトキシン分子を含み得る。アマトキシンは、8個のアミノ酸からなる環状ペプチドである。それらは、タマゴテングダケ(Amanita phalloide)マッシュルームから単離され得るか、または合成的に調製され得る。アマトキシンは、哺乳動物細胞のDNA依存性RNAポリメラーゼIIを特異的に阻害し、それにより患部細胞の転写及びタンパク質生合成も阻害する。細胞内の転写の阻害により、成長及び増殖が停止する。Moldenhauer et al.JNCI 104:1-13(2012)、WO2010115629、WO2012041504、WO2012119787、WO2014043403、WO2014135282、及びWO2012119787を参照されたく、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。1つ以上のアマトキシン分子は、1つ以上のα-アマニチン分子である。
【0183】
他の薬物部分
薬物部分はまた、ゲルダナマイシン(Mandler et al(2000)J.Nat.Cancer Inst.92(19):1573-1581、Mandler et al(2000)Bioorganic&Med.Chem.Letters 10:1025-1028、Mandler et al(2002)Bioconjugate Chem.13:786-791)、ならびにジフテリアA鎖、ジフテリア毒素の非結合活性断片、外毒素A鎖(Pseudomonas aeruginosa由来)、リシンA鎖、アブリンA鎖、モデシンA鎖、アルファ-サルシン、Aleurites fordiiタンパク質、ジアンシンタンパク質、Phytolaca americanaタンパク質(PAPI、PAPII、及びPAP-S)、momordica charantia阻害剤、クルシン、クロチン、sapaonaria officinalis阻害剤、ゲロニン、ミトゲリン、レストリクトシン、フェノマイシン、エノマイシン、及びトリコテセンを含み得るが、これらに限定されない、酵素的活性毒素及びその断片が挙げられる。例えば、WO93/21232を参照されたい。薬物部分はまた、核酸分解活性を有する化合物(例えば、リボヌクレアーゼまたはDNAエンドヌクレアーゼ)も含み得る。
【0184】
2つ以上の求核基が薬物-リンカー中間体またはリンカー試薬と反応する場合、結果として生じる産生物は、抗体に結合する1つ以上の薬物部分が分布するADC化合物の混合物であることを理解されたい。
【0185】
リンカー-薬物中間体は、薬物部分をリンカー試薬と結合させ、WO2013/055987、WO2015/023355、WO2010/009124、WO2015/095227に従って、本明細書に記載されるシステイン操作抗体を含むタンパク質と複合体化することによって調製することができる。
【0186】
部位特異的ADCにおける抗体及び薬物部分の分析及び定量化する方法
ADCは、非特異的な毒性を低減し、従来の小分子及び抗体がん化学療法と比較して効能を増加するように設計された標的化抗がん療法薬である。それらは、モノクローナル抗体の強力な標的能力を用いて、効力の高い複合体化小分子療法薬をがん細胞に特異的に送達する。これらのADCの効能、安定性、相同性、薬物動態、及び毒性等の特性を評価するために、試料分析的分析を介して、溶液、血漿、尿、及び他の生体試料からの抗体構成成分及び薬物部分を正確に特徴付けし、定量化することは有用である。
【0187】
本開示は、部位特異的ADC療法構築物の抗体及び薬物構成成分の特徴の定量化及び分析に関して、再現可能で正確、かつ効率的な分析方法を提供する。図1bは、試料からのADCの任意の親和性捕捉、ADCの薬物切断及び放出を含み得る部位特異的酵素消化、ならびに、続いてクロマトグラフィー及び/または分光方法による薬物及びペプチド断片の分析を含む、本開示のADC試料アッセイにおける作業フローの図を示す。
【0188】
これらの方法において、部位特異的ADC構築物は、1つ以上の特異的酵素で消化され、薬物部分に結合していない少なくとも1つのペプチド断片と、薬物部分に結合している少なくとも1つのペプチド断片とを含む消化されたADC組成物を形成する。次いで、薬物及び消化された抗体構成成分(複数可)/断片のいずれか1つまたは両方を、クロマトグラフィー/分光法によって分析し、ADC組成物のタンパク質濃度、ADCの全抗体濃度、ADCの薬物濃度及び/または平均DAR、ADC代謝物または異化物構造、及びADCの吸光係数を含み得るが、これらに限定されない、ADCの特徴を決定する。
【0189】
ADC試料のタンパク質構成成分は、IdeSプロテアーゼ、IdeZプロテアーゼ、IgdEプロテアーゼ、SpeBプロテアーゼ、ジンジパインプロテアーゼ、エンドグリコシダーゼ、及びこれらの酵素の組み合わせ等のタンパク質分解性酵素で消化され得る。
【0190】
IdeSは、S.pyogenesによって製造され、Promega(Madison,WI)及びGenovis AB(Cambridge,MA)から市販されている、細胞外システインプロテアーゼである。S.pyogenesの免疫グロブリンG分解酵素への指定のIdeSであるこの酵素は、高度の特異性と共にヒンジ領域下でヒトIgGを切断し、F(ab´)2及びFc断片の同質のプールが生じる。それ故に、免疫グロブリンM、A、D、及びEを含む他のヒトタンパク質は、IdeSによって消化されない。酵素は、連鎖球菌表面構造に結合しているIgG抗体を効率的に切断し、それによって、食細胞によるS.pyogenesの死滅を阻害し、細菌病原性の決定基としてこの酵素の特定、及び潜在的治療標的(von Pawel-Rammingen,et al.EMBO J.(2002)21(7):1607-15)をもたらす。IdeS酵素のタンパク質分解性切断は、以下の表に示される。
HTCPPCPAPELLGGPSVF 配列番号:1
HTCPPCPAPPVAGPSVF 配列番号:2
【0191】
IdeZプロテアーゼ(IgG-特異的)は、全てのヒト、ヒツジ、サル、及びウサギのIgGサブクラスを認識するStreptococcus equi subspecies zooepidemicusからクローニングされた抗体-特異的プロテアーゼであり、特にヒンジ領域下の単一認識部位で切断し、F(ab’)2及びFc断片の同質のプールを生じ、かつNew England Biolabs(Ipswich,MA)、Promega(Madison,WI)、及びGenovis AB(Cambridge,MA)から市販されている。IdeZプロテアーゼは、IdeSプロテアーゼと比較して、マウスのIgG2a及びIgG3サブクラスに対して著しく改善された活性を有する。
【0192】
IgdEは、ブタのIgGを排他的に標的化するStreptococcus suisのプロテアーゼである。S.suisの免疫グロブリンG分解酵素への指定のIgdEであるこの酵素は、IdeSファミリーの連鎖球菌免疫グロブリン分解プロテアーゼとは異なるシステインプロテアーゼであり、高度の特異性でブタのIgGのヒンジ領域を切断する(Spoerry,et al.,J Biol Chem.(2016)291(15):7915-25)。
【0193】
SpeBは、Streptococcus pyogenesから単離されるシステインプロテアーゼであり、それはIgA、IgM、IgE、及びIgDを分解し、還元後にヒンジ領域でIgG抗体を切断、すなわち、還元状態、例えば、ジチオールトレイトール(DTT)、β-メルカプトエタノール、またはL-システインの存在下でIgG分子を切断する(Persson,et al.,Infect.Immun.(2013)81(6):2236-41)。
【0194】
ジンジパインKgp(Lys-ジンジパインとも称される)は、Porphyromonas gingivalisによって選択されるシステインプロテアーゼであり、それは温和な還元条件下、上部ヒンジ領域(K223及びT224の間)断片においてヒトIgG1を切断し、Fab及びFcの同質のプールを産生する。組換え形態のジンジパインKgpは、Genovis AB(Cambridge,MA)から市販されている。
【0195】
エンドグリコシダーゼは、免疫グロブリン、及び特にIgGのAsp279糖タンパク質から末端シアル酸残基を放出することができるStreptococcus pyogenesによって発現された酵素のファミリーを表す。EndoSは、抗体を脱グリコシル化するために使用される特異的エンドグリコシダーゼである。本開示の方法において有用であり得る追加のエンドグリコシダーゼは、Endo S2、EndoH、EndoA、EndoM、EndoF、EndoF1、EndoF2、及びEndoF3のうちの1つ以上を含む。エンドグリコシダーゼは、クロマトグラフィー/分光法分析のための消化された部位特異的ADCの調製において上述のプロテアーゼの1つ以上と組み合わせる本開示のアッセイにおいて有用であり得る。
【0196】
部位特異的ADC構築物を消化するために使用されるタンパク質分解性酵素(複数可)は、検出及び定量化のための固有のペプチド断片を産生するために選択される。ADCの抗体に対して固有のペプチド断片のうちの1つ以上が、検出及び定量化され、それにより、ADCの一部分を形成しない、クロマトグラフィーまたは分光法に適用される分析試料中に存在し得るバックグラウンドタンパク質もしくは非特異的タンパク質、または他の夾雑物を排除する。
【0197】
例としての実施形態において、ADC試料は、トリプシン、パパイン、ペプシン、エンドプロテアーゼLysC、エンドプロテアーゼArgC、staph aureus V8、キモトリプシン、Asp-N、Asn-C、PNGaseF、エンドプロテアーゼGluC、LysN、またはこれらの酵素の任意の組み合わせで消化されない。それ故に、例としての実施形態において、ADC試料は、消化または分析手順において、検出可能な量のトリプシン、パパイン、ペプシン、エンドプロテアーゼLysC、エンドプロテアーゼArgC、staph aureus V8、キモトリプシン、Asp-N、Asn-C、PNGaseF、エンドプロテアーゼGluC、またはLysNを含まない。
【0198】
ADCのリンカー構成成分の同一性、ならびに試料のタンパク質構成成分を減少、変性、及び/または消化するために適用される化学処理に応じて、ADCの薬物部分は、ADCの抗体/ペプチド構成成分から切断され得、よって、LC-MS/MS分析において非複合体化薬物構成成分として検出及び定量化され得る。
【0199】
代替的に、または追加的に、ADCの薬物部分構成成分は、ADCの還元及び変性後に、ADCの抗体/ペプチド構成成分に結合したままであり得、よって、分析においてペプチド結合薬物部分として検出及び定量化され得る。
【0200】
分析/定量化のためのADCを含有する試料は、試料を予備清浄または富化しない、消化(及び任意に還元及び/または変性)(すなわち、試料の「直接消化」)の対象となり得る。代替的に、または追加的に、ADCを含有する試料は、消化の前に、さらなる分析のために富化または濃縮され得る。低存在量ペプチドまたは薬物のかかる濃縮法には、サイズ排除クロマトログラフィー、透析、選択的沈降、分画遠心分離、ろ過、ゲル電気泳動、液体クロマトグラフィー、逆相クロマトグラフィー、免疫沈降、プロテインA及びプロテインG、NHS及びストレプトアビジン鉄もしくはリン、または固定化抗体もしくはレクチンを含むスピントラップカラム、常磁性ビーズ、免疫除去、分画、固相抽出法、リンペプチド富化、ポリアクリルアミドゲル電気泳動、脱塩処理等の富化技法が含まれ得る。
【0201】
ADCは、少なくとも1つの還元剤、例えば、ジチオールトレイトール(DTT)、2-メルカプトエタノール、またはトリス(2-カルボキシエチル)ホスフィン(TCEP)を含む組成物との接触により還元され得る。ADCは、少なくとも1つの変性剤、例えば、ホルムアミド、ジメチルホルムアミド、アセトニトリル、SDS、尿素、グアニジン、ナトリウム3-((1-(フラン-2-イル)ウンデシルオキシ)カルボニルアミノ)プロパン-1-スルホネート(ProteaseMax(商標))、及び/またはRapiGest(商標)-SF-界面活性剤等の、ジオキソランもしくはジオキサン官能基を含有するもの等の酸分解性界面活性剤(複数可)(参照により本明細書に組み込まれる、US7,229,539及びUS8,580,533に記載されているような)を含む組成物との接触により変性もされ得る。ADCは、少なくとも1つの還元剤及び少なくとも1つの変性剤を含む組成物との接触により同時に還元及び変性され得る。かかる組成物は、追加の溶媒、緩衝液、及び/またはpH変性剤、例えば、アセトニトリル、メタノール、エタノール、HCl、重炭酸アンモニウム、酢酸アンモニウム、及び/またはギ酸、脱リン酸剤、例えば、仔ウシ腸アルカリ性ホスファターゼ、ウシ腸アルカリ性ホスファターゼ、もしくはラムダタンパク質ホスファターゼ等のホスファターゼを含み得る。
【0202】
分析のために提示されるADCは、動物もしくはヒトへの投与のために製剤化された薬学的組成物等の溶液もしくは懸濁液、またはADCの産生ステップ中に存在し得る細胞培養液もしくは上清、または動物もしくはヒトから得られる生体試料中にも存在し得る。それ故に、ADCは、緩衝液、全血、血清、血漿、脳脊髄液、唾液、尿、リンパ液、胆汁、糞便、汗、硝子体、涙、及び組織から選択されるマトリックス中に存在し得る。ADCの様々な安全性、効能、及び薬物動態/生体分布パラメータの分析のために頻繁に提示される生体試料には、ヒト、カニクイザル、ラット、及びマウスの血漿及び組織試料、ならびに他の非ヒト種由来の生体試料が含まれる。
【0203】
ADCは、かかる生体試料の一部として提示されるとき、親和性捕捉培地と接触され得る。親和性捕捉は、インタクトなタンパク質を富化/単離して、結合パートナー及びタンパク質複合物を特定するためか、または翻訳後修飾を調査するために幅広く使用される方法である。タンパク質またはタンパク質複合物は、非特異的手段(例えば、ゲル電気泳動、プロテインAまたはG培地、1型抗神経細胞核自己抗体(ANNA-1、「抗Hu」としても既知である)、または特異的手段(例えば、細胞外ドメイン(ECD)抗体、または抗アイドタイプ(anti-idotypic)抗体)により分離され得る。次いで、ADCは、消化(任意に還元及び/または変性を含む)の前に試料の清浄手段として親和性捕捉培地から溶出され、続いて、消化のクロマトグラフィー/分光法分析にかけられ得る。
【0204】
代替的に、または追加的に、ADC試料は、富化され消化された抗体試料の親和性捕捉培地からの溶出、及びクロマトグラフィー/分光法分析の前に、ビーズまたは樹脂により支持されたプロテインA/Gによる親和性捕捉、その後のビーズ上消化(タンパク質分解、脱グリコシル化、脱リン酸、還元、及び/または変性を含み得る)を用いて分析される。ビーズに基づく親和性捕捉方法(US8541178)を含む、免疫親和性膜(IAM)捕捉及び質量分析による抗体-薬物複合体を検出及びスクリーニングする方法が開示されている(US7662936)。
【0205】
次いで、薬物(またはペプチド-リンカー-薬物)及び部位特異的ADCの消化された抗体構成成分の一方または両方を含む分析試料(複数可)(またはそれらの少なくとも一部分)は、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)、逆相液体クロマトグラフィー(RP-LC)、質量分析(MS)またはタンデム質量分析(MS/MS)、RP-LC/MS、及びLC-MS/MSを含み得る検出方法論に適用され、ADCの薬物及び抗体構成成分の両方を検出及び定量化する。
【0206】
質量分析は、次いで、消化された抗体の少なくとも1つのペプチド断片の質量対電荷比、及び/またはADCの薬物(または、ペプチド-リンカー-薬物)部分の質量対電荷比を確立するために使用され得る。
【0207】
モル吸光係数(または質量減衰係数)は、モル減衰係数×モル質量に等しい。280nmでのタンパク質のモル吸光係数は、ほぼ排他的に芳香族残基、特にトリプトファンに依存し、アミノ酸の配列から予測され得る。したがって、モル吸光係数が既知である場合、それは溶液中のタンパク質の濃度を測定するために使用され得る。
【0208】
本明細書に引用される各公開または特許は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0209】
ここに概して記載されている本開示は、以下の実施例を参照することによってより容易に理解され、それらは、単に本開示の実施形態のある特定の態様の例示の目的のために含まれる。実施例は、当業者が上の教示及び以下の実施例から、他の技法及び方法が特許請求の範囲を満たし得、本開示の範囲を逸脱することなく用いられ得ることを認識するように、本開示を限定することを意図しない。
【実施例
【0210】
材料。ヒトリチウムヘパリン血漿を、BioreclamationIVT(New York,U.S.A.)から購入した。ストレプトアビジン被覆ダイナビーズM-280を、Invitrogen(CA,U.S.A.)から購入した。IdeS、すなわち、FabRICATORを、Genovis,Inc.(Cambridge,MA)から購入した。他の試薬は、0.01M HEPES、pH7.4、0.15M NaCl、3mM EDTA、0.005%ポリソルベート20(GE Healthcare、Little Chalfont,U.K.)、及びペプチドN-グリコシダーゼF(PNGase F、ProZyme、CA,U.S.A.)を含むHBS-EP緩衝液を含む。全てのTDC及び特異的ADC捕捉試薬、例えば、ECDを、Genentech(South San Francisco,CA,USA)で産生した。ECDを、10モル当量のスルホ-NHS-LC-ビオチン(Pierce/Thermo Fisher Scientific,Rockford,IL,U.S.A.)でECDに、10mMのリン酸ナトリウム/150mM NaCl、pH7.8中で、室温で60分間ビオチン化した。過剰な結合していないビオチンを、Zebaスピン脱塩カラム(Pierce/Thermo Fisher Scientific)を製品の手順書通りに使用して除去した。ビオチン化されたECD濃度を、GeneQuant 1300(GE Healthcare)を使用して280nmで吸光度を測定することによって分光光度的に測定した。
【0211】
動物血漿試料。全ての動物研究は、実験動物の管理及び使用に関する国立衛生研究所のガイドラインに準拠して実行し、Genentech,Inc.のInstitutional Animal Care and Use Committeeにより承認された。PK研究については、雌のC.B-17 SCIDマウス(Charles River Laboratories)に、単回用量のADCを静脈内ボーラス注射で投与し、終末心臓穿刺を介して動物から全血を抜いた。リチウムヘパリンを含むチューブ内に血液試料を収集し、遠心分離まで濡れた氷の上に放置した(収集の15分以内)。収集した血漿試料を、-70℃で分析まで保管した。スプラーグドーリーラットからの血漿試料を同様の方法で得た。
【0212】
器具。親和性捕捉を、2mLの正方形上部の96ディープウェルプレート(Analytical Sales and Service,Pompton Plains,NJ,U.S.A.)を使用して、KingFisher 96磁気粒子プロセッサ(Thermo Electron)上で実施した。溶出液を、VWR Dynablock 96ウェル 0.5mLプレート(VWR Scientific Products)に移動させた。キャピラリーRPLC-MSを、Sciex TripleTOF(登録商標)5600質量分析計(Redwood City,CA,USA)に連結されているWaters nanoACQUITY UPLCシステム(Cambridge,MA,U.S.A.)上で実施した。
【0213】
実施例1:IdeS(第2世代)親和性捕捉LC-MSアッセイの設計及び検証
親和性捕捉LC-MSアッセイを、Fab領域で複合体化部位を有するTDCを含む部位特異的ADCについて行った(SuD.et al(2016)Anal.Chem.,88(23):11340-11346、Xu,K.et al.(2013)Bioanalysis,5,1057-1071、US8541178、Xu,K.et al Anal.Biochem.(2011)412:56-66)。本開示の多重アッセイを試験及び検証するために、IdeSプロテアーゼ(図1A)は、特異的部位でグリカン含有Fc領域を除去し、それによって分析物のサイズ及びADC異化物の異質性を低減した。IdeSを使用したビーズ上消化が、インタクトADC(約150kDa)の代わりに、最終LC-MS分析のためにF(ab’)2(約100kDa)を素早く生成することを予測した。IdeSによって提供された分析物の低減されたサイズ及び素早い消化は、TDCのインビボ安定性及びPK評定を試験するために使用される第1世代親和性捕捉LC-MSと比較して、富化プロセス中に、改善された感受性及び分解度、ならびに最小の人工薬物修飾または分解及び個々のDAR種の等しい回復をもたらした。この第2世代親和性捕捉LC-MSは、異なる抗体、リンカー-薬物、及び複合体化部位を用いて種々のTDCを試験した際に、部位特異的ADCのDAR及び異化物の特徴付けを分析するために、驚くべき改善を示した。
【0214】
図1Bは、本実施例で試験された第2世代LC-MSアッセイの描写を提供し、図1Cは、本実施例で試験され比較された第1世代及び第2世代アッセイの実施形態を比較している描写を示す。
【0215】
インビボ血漿試料を、TDCを静脈内に投与されていたマウス、ラット、及びカニクイザルモデルから収集した。全ての動物研究を、実験動物の管理及び使用に関する国立衛生研究所のガイドラインに準拠して行った。血漿を、BioreclamationIVT(New York,USA)から購入した。全てのTDC及び特異的ADC捕捉試薬、例えば、細胞外ドメイン(ECD)及び抗ヒト(Fab領域)抗体を、Genentech(South San Francisco,CA,USA)で産生した。ECD及び抗ヒト(Fab領域)抗体を、10モル当量のスルホ-NHS-LC-ビオチン(Pierce/Thermo Fisher Scientific,Rockford,IL,USA)でECDまたは抗ヒト(Fab領域)抗体に、10mMのリン酸ナトリウム/150mM NaCl、pH7.8中で、室温で60分間ビオチン化した。過剰な結合していないビオチンを、Zeba(商標)スピン脱塩カラム(Pierce/Thermo Fisher Scientific)を製品の手順書通りに使用して除去した。ビオチン化されたECDまたは抗ヒト(Fab領域)抗体濃度を、GENEQUANT(商標)1300(GE Healthcare)を使用して280nmで吸光度を測定することによって分光光度的に測定した。
【0216】
第1世代親和性捕捉LC-MSのアッセイの実験的詳細は、先行して説明されている(Kaur et alのUS8541178、Xu,et al.,Anal.Biochem.2011,412(1):56-66)。第2世代のアッセイを試験する比較について、100μLのストレプトアビジン常磁性ビーズ(ストレプトアビジン被覆ダイナビーズM-280、Invitrogen(CA,USA)をビオチン化された特異的捕捉試薬の過剰量、例えば、HBS-EP緩衝液(300μL、0.01M HEPES、pH7.4、0.15M NaCl、3mM EDTA、0.005% P20(GE Healthcare、Little Chalfont,UK)中のECDを含む96ディープウェルプレートに添加し、1時間室温(RT)で、撹拌しながらインキュベートした。次いで、TDC含有血漿試料を、300~500μLの全体積までECD固定化ビーズに添加し(2μg~250μL最大量、いずれか少ない方)、室温で1.5時間、撹拌しながらインキュベートした。
【0217】
一般的な捕捉試薬、ビオチン化抗ヒトIgG F(ab’)2抗体を有する親和性捕捉は、全ての異なるヒト化治療的抗体ADCへの捕捉に有用であり、異なる治療群を用いた研究、または特異的なEDCが利用不可である研究において、適切である。第2世代LC-MSアッセイからの結果は、一般的な抗ヒトIgG F(ab’)2がADC分析物の特異的ECD捕捉に類似していることを示した。
【0218】
親和性捕捉を、2mLの正方形上部の96ディープウェルプレート(Analytical Sales and Service,Pompton Plains,NJ,USA)を使用して、KingFisher 96磁気粒子プロセッサ(Thermo Electron)上で実施した。溶出液を、VWR Dynablock 96ウェル 0.5mLプレート(VWR Scientific Products)に移動させた。キャピラリーRPLC-MSを、AB Sciex 5600 triple飛行時間型(TOF)質量分析計(Redwood City,USA)に連結されているWaters nanoACQUITY UPLC(Cambridge,MA,USA)上で実施した。
【0219】
親和性捕捉TDCを、第1世代方法に説明されるような一晩にわたるPNGase F(PROZYME(商標)、CA)消化とは対照的に、37℃で1時間、HBS-EP緩衝液(300μL)中でIdeSプロテアーゼ(FABRICATOR(商標)、Genovis AB)(40単位)で消化した。全ての撹拌を慎重に実施し、ビーズが消化手順を通して溶液中で良好に懸濁されていることを確実にした。新しく生成されたF(ab’)2断片を、ビーズ上でHBS-EP緩衝液、水、及び10%ACNで続けて洗浄し、次いで、室温で10分間、1%のギ酸を有する50μLの30%アセトニトリル中でインキュベートによって溶出した。続いてF(ab’)2溶出を、室温で10分間、4000rpmのBruker遠心分離機でスピンし、次いで、96ウエルプレートに移動させて残りのビーズを磁石で除去した。最終溶出を、LC-MSの前に、室温で10分間、4000rpmでスピンし、任意の残りのビーズの注入を回避した。5μLのF(ab’)2溶出のアリコートを、LC-MS分析のために提出した。
【0220】
キャピラリーLC-MSを、Waters NanoAcquityに連結されているTripleTOF 5600質量分析計上で行った。オンライン脱塩及び予備濃縮を、0.1%のギ酸(FA)及びB、0.1%FAを有するアセトニトリル(ACN)の移動相Aで、15μL/分の流量で勾配条件を使用して、65℃で、PS-DVB一体型カラム(500-μm i.d.×5cm、Thermo Fisher Scientific、Waltham,MA)上で行った。LC勾配は、0%B(0~4分)、0~40%B(4~8分)、40%B(8~11分)、40~100%B(11~12.5分)、100%B(12.5~13.5分)、100~0%B(13.5~14.2分)、0%B(14.2~15分)であった。LC流体を、廃棄するために最初の6分間流用した。TripleTOF 5600を、以下のキー設定:イオン源温度、425.0°C;イオン源ガス(GS)1、40;GS2、35;カーテンガス、30;イオンスプレー電圧浮遊、5000V;デクラスタリング電位、250;衝突エネルギー、20で、DuoSpray Ion Sourceを使用して操作した。質量スペクトルを、ANALYST(商標)TF1.6を使用して、インタクトタンパク質形式で得た。デコンボリューションを、BIOANALYST(商標)1.5.1.を使用して行った。個々のTDC DAR種の相対比を、デコンボリューションされた質量スペクトル中でピーク領域に基づいて得た。±15%以内の計算結果は、有意に異なっていないと見なされた:平均DAR=Σ(ピーク領域%×複合体化薬物の数)/100。
【0221】
方法開発ついて、直接的LC-MSを試験し、第1世代、及び第2世代の両方、親和性捕捉LC-MSと比較した。裸の抗体(DAR0)及びTDC標準(DAR2)を、100μg/mLの全濃度で、DAR0:DAR2≒1:1として混合した。20μLのTDC混合物のアリコートを、第1世代及び第2世代親和性捕捉LC-MSのそれぞれについて、100μLのヒト血漿中に、20μg/mLの最終濃度まで添加した。10μLのTDC混合物のアリコートを、50μLの1%FAを有する30%ACN中に添加し、LC-MS分析のために直接提出した。既知の比率でのTDC混合物の直接的LC-MSによるDARプロファイリングは、全ての個々のDARが類似のLC-MS反応を有するかどうかの決定を可能にした。例えば、直接的LC-MSによる相対的DAR比が理論値と一貫している場合、LC回復及びイオン化効率において任意の個々のDAR種に対する有意な偏りはない。親和性捕捉LC-MS及び直接的LC-MSによるDARプロファイリングの一貫性は、親和性富化の間に、個々のDAR種の偏りのない回復を提案するであろう。
【0222】
図1Dは、開始TDC標準混合物の同じ量を注入することによる、直接的LC-MS(1D-1)、第1世代(1D-3)及び第2世代(1D-2)親和性捕捉LC-MS間の比較を示す。例としてのTDCは、細胞傷害性薬物ペイロードとしてピロロベンゾジアゼピン二量体(PBD)を含有する。類似の保持時間及びチャージエンベロープは、デコンボリューションされた質量スペクトル中でそれらのピーク領域に基づく、個々のDAR種の相対比を使用して半定量化を見込んでいる異なるTDC DAR種のイオン化効率性において、有意な差異を提案しなかった。ADC異化物は、糖化及び/または他の修飾を含んだ。DAR0及びDAR2の相対比において、直接的LC-MSと第2世代親和性捕捉LC-MSとの間に有意な差異はなく、DAR種(DAR0及びDAR2)の偏りのない捕捉を示した。第2世代親和性捕捉方法を、異なる抗体、Fab領域中の複合体化部位、リンカー(マレイミド及びジスルフィド)、及び毒素(アントラサイクリン、CBI二量体及びPBD二量体、ならびにチューブリン結合剤を含むDNA損傷剤)を使用して、幅広い種類のTDC標準(DAR0及びDAR2)でさらに試験した。類似のイオン化効率及びDAR0及びDAR2の相対比は、直接的LC-MS手法によって観察され、第2世代親和性捕捉LC-MSが、幅広い種類のFab部位特異的抗体薬物複合体に適用可能であることを確認した。
【0223】
PNGaseF消化、第1世代、親和性捕捉LC-MSアッセイ方法は、マレイミド-カプロイル-バリン-シトルリン-アミノ-ベンジルオキシカルボニル(MC-vc-PAB)リンカーを介して細胞傷害性薬物モノメチルオーリスタチンE(MMAE)に複合体化された、システイン操作された、抗MUC16抗体を含んだTDC(THIOMAB(登録商標)抗体薬物複合体)標準混合物を使用する。この方法は、リンカー-薬物及び抗体に応じて個々のDARに対して異なる反応を示すことが後に見出された。測定されたDAR0:DAR2を1の理論値と比較すると、計算結果は±15%以内で有意に異なってはいなかった。理論値との測定されたDAR0:DAR2の差異は、第1世代及び/またはIdeSプロテアーゼ-一晩にわたる消化の親和性捕捉LC-MSによって言明され、長時間(例えば、一晩にわたる)のビーズ上消化が、親和性富化ステップ中に個々のDARの潜在的な偏った回復を引き起こすことを示した。第2世代親和性捕捉LC-MSにおいて、ECD固定化、ADC及びECD結合、ならびにビーズ上消化ステップの低減及び最適化されたインキュベート時間は、異なるDARの潜在的な偏った捕捉を最小化し、それによって、DARプロファイリングのためにより正確な情報を提供した。それ故に、第2世代親和性捕捉LC-MSの利点は、
第2世代LC-MS(最大で230cps)によるMS強度が第1世代分析(最大で48cps)によるものより高いことを含む。
【0224】
第2世代親和性捕捉LC-MSは、およそ20ng(0.2μg/mL×100μL)と同程度に低いTDCの検出を可能にする。
【0225】
隣接するMSピークは、第2世代アッセイによってより良好に分解された。
【0226】
グリカンのより完全な除去は、第2世代捕捉LC-MSで観察される。
【0227】
PNGase Fの一晩にわたる消化による脱グリコシル化と比較して、IdeSプロテアーゼによるFc除去は、約1時間以内で完了し、アッセイ効率を大いに改善した(第2世代LC-MSに対して1日対第1世代LC-MSに対して2日)。
【0228】
親和性捕捉LC-MSを、特異的に設計して、ADC異化物を特定し、DARプロファイルを特徴付けし、それによって、循環するADCの最終結果及びPK作用を理解する。それによって、インビボでの生体内変化を正確に反映するために、試料調製プロセスを通してADCの完全性を保持することが重要である。しかしながら、PNGaseF消化、第1世代親和性捕捉LC-MSアッセイを使用して、不安定細胞傷害性薬物を含むADCが観察され、長時間のインキュベート後のエクスビボペイロード代謝等の意図しない変化を経た(図1F-1)。ラットの血漿中の不安定なTDC、TDC-L2の、親和性捕捉LC-MSインタクト抗体アッセイ(左)及びF(ab’)2アッセイによる、インビボ分析(図1F-2)。エクスビボペイロード代謝から生じる人工部分的薬物損失(-PD)を、37℃で1時間、IdeS消化及び親和性捕捉LC-MS F(ab’)2アッセイによって最小化した。TDC-L2は、CBI二量体薬物部分及びマレイミドリンカーを有する。かかる人工ADC異化物の産生を、第2世代親和性捕捉LC-MS(図1F-2)で最小化し、そこでIdeS消化を1時間以内で完了した。低減された消化時間は、ADCの完全性において最小の意図しない変化を可能にし、このように、インビボでのADC生体内変化及びPK作用に関するより正確に情報を提供する。
【0229】
図3Aは、3つの複製について、それぞれ、0.13、0.09、及び0.14の標準偏差を伴う、直接的LC-MSアッセイ、親和性捕捉LC-MS F(ab’)2アッセイ、及び親和性捕捉LC-MSインタクト抗体アッセイによる、TDC(PBD二量体薬物、ジスルフィドリンカー)標準混合物(DAR0:DAR2=1:1)のDARプロファイリングを示す。添加されたTDC標準混合物を含有するヒトの血漿(100μL)を、親和性捕捉のために使用し、5μL溶出液をLC-MS分析のために注入した。図3Bは、直接的LC-MS、1時間のIdeS消化を伴う親和性捕捉LC-MS F(ab’)2アッセイ、及び一晩にわたるIdeS消化を伴う親和性捕捉LC-MS F(ab’)2アッセイによる、ジスルフィドリンカーでシステイン操作抗体に共有結合しているPBD二量体(TDC1及びTDC4)、アントラサイクリン(TDC2)、及びCBI二量体(TDC5)薬物部分を有するTDCのTDC標準混合物(DAR0:DAR2=1:1)のDAR(薬物-抗体比)プロファイリングを示す。添加されたTDC標準混合物を含有するヒトの血漿(100μL)を、親和性捕捉のために使用し、5μL溶出液をLC-MS分析のために注入した。TDC2のために測定されたDAR0:DAR2の誤りは、IdeSの一晩にわたる消化親和性捕捉LC-MSによって言明され、延長したビーズ上インキュベート(例えば、一晩にわたる消化)が、試料調製の間に異なる薬物-負荷TDC2種の潜在的な偏った回復をもたらしたことを示した。例えば、親和性捕捉LC-MS F(ab’)2アッセイにおいて、有意に低減されたビーズ上消化時間は、異なるADC種の潜在的な偏った回復を最小化し、それによって、DAR推定に関するより正確な情報を提供した。
【0230】
複合ADC異化物の分析において、近接するデコンボリューションされたMSピークは、ADC異化物構造の正確な配置を可能にするために近ベースライン分離(near baseline separation)を必要とする。図1Eは、チオール-マレイミド結合の切断によるリンカー-薬物分解(-LD)を示す。複数のTDC異化物を、薬物分子から42Daの損失のために、インビボでマウスの血漿中で生成した。それらのMSピークは、PNGaseF消化、第1世代親和性捕捉LC-MS(図1E-1)によって分解されなかったが、IdeS消化、第2世代親和性捕捉LC-MS(図1E-2)によって近ベースライン分解され(near baseline-resolved)、それは確信した異化物の特定及びより正確なDARの計算を可能にした。この正確な情報は、ADCの効能及び毒性プロファイル、ならびにADC薬物代謝を理解するために役立ち、次に、抗体プラットフォーム、複合体化化学、リンカー、及び薬物の新型に焦点をあてられた新しい細胞傷害性ADC設計を最適化することを助ける。インビボでのADC及び複合異化物の薬物開発の間に検証されなければならない複数の薬物及び代謝パラメータは、生化学分析的分析における課題を提起する。例えば、第2世代親和性捕捉LC-MS、DARのための有用な試験的アッセイ及び異化物の特徴付けは、その限られた感受性、分解度、効率性、及び特定のDAR種に対する潜在的な偏った反応に起因して、次世代ADCに対して一般的には適用可能でないと見出された。このPNGaseF消化、第2世代アッセイは、薬物開発において有力になりつつある低用量及び不安定な部位特異的ADCを収容する。図1Eは、親和性捕捉LC-MSインタクト抗体アッセイ(1E-1)対親和性捕捉LC-MS F(ab’)2アッセイ(1E-2)による、インビボでのマウスの血漿中の複雑化されたTDC異化物の特徴付けを示す。リンカー-薬物分解による部分的薬物損失(-PD)は、TDC-L1の効力に著しく影響を与え、したがってDARの低減をもたらした。
【0231】
この比較例において用いられた第2世代親和性捕捉方法は、グリカンの大部分が位置するFc断片を除去することによって、脱グリコシル化のためにIdeSプロテアーゼを利用した。リンカー薬物を保持する結果として得られたF(ab’)2断片(約100kDa)を、伝統的なインタクトADC(約150kDa)の代わりに、LC-MSによって分析する。PNGaseを伴う一晩にわたる消化による脱グリコシル化と比較して、ビーズ上IdeS消化によるFcの素早い除去及びF(ab’)2分析物の低減されたサイズは、より高い感受性、分解度、及び効率性、ならびに以下の表に要約されるように試料処理中にADCプロファイルに対する最小の意図しない変化及び完全性を有する改善されたアッセイをもたらす。
表 第1世代アッセイに対する変化及び改善
【0232】
親和性捕捉LC-MS F(ab’)2アッセイを、薬物が鎖間ジスルフィドを介して結合される従来のADCの分析に拡張した。IdeSプロテアーゼ消化なしで、PNGase Fによる一晩にわたる脱グリコシル化の後、軽鎖断片(より小さなサイズ)が重鎖断片(より大きなサイズ)のイオン化/MS信号を抑制するため、軽鎖(25kD)及び重鎖(50kD)断片を溶出するためにLC分離を必要とした。IdeSプロテアーゼ消化によって、軽鎖及び重鎖は、類似のサイズ(約23~29Da)となり、同時に溶出、分析され、重鎖に対して最小のMS偏りとなり得る。ビオチン化抗ヒトIgG F(ab’)2抗体等の一般的な捕捉試薬を利用する際、親和性捕捉LC-MS F(ab’)2アッセイは、異なる抗体に複合体化された同じ薬物を有するADCにわたってADC生体内変化における並列比較を見込んだ。この比較的な実施例は、より正確で詳細な生体内変化及びPK情報のために、低用量、不安定、及び複合部位特異的ADC、例えばTDCを収容するためのIdeSプロテアーゼ消化、第2世代アッセイの可能性を示す。かかる情報は、細胞傷害性薬物設計を最適化し、適切なPK生化学分析的戦略の開発を容易するのを助け、新しいADC異化物の発見をもたらす。方法は、Fab領域中に複合体化部位を有する種々の部位特異的ADC、及び鎖間ジスルフィド複合体化を介する従来のADCの分析に適用可能である。
【0233】
実施例2:タンパク質濃度測定
正確なタンパク質濃度測定は、タンパク質-薬物複合体のインビトロ及びインビボでの効能、ならびに毒性を評価するために不可欠である。発明者らは、例えば、芳香族環の存在に起因して、特に280nmでの小分子の吸光係数及び/またはその最大吸光度が未知である際に、280nmでのタンパク質の吸光度に寄与する小分子ペイロードを含むADCのタンパク質濃度を測定するための方法を開発した。この実施例において、タンパク質濃度を、Streptococcus pyrogenes(IdeS)の免疫グロブリン分解酵素を伴うタンパク質分解性消化、及び続いてLC-MS分析によって複合体化ペイロードとは独立して測定した。
【0234】
IdeSは、ヒンジ領域下の部位で、高特異性でヒトIgG1を切断し、F(ab’)2及びFc断片を生成する(図1A)。これらの種は、逆相上でクロマトグラフィー的に分離される(図2A-1)。Fcの2つのアーム間の非共有結合性の相互作用は、移動相の酸性及び有機溶媒濃度によって崩壊され、およそ25kDサイズのFc/2ピークをもたらした。薬物ペイロードが鎖間ジスルフィドにまたはF(ab’)2もしくはFc領域に部位特異的に複合体化されるADCにおいて、薬物を含まず、Fc/2またはF(ab’)2断片ピークのいずれかである結果として生じる抗体断片は、試料のタンパク質濃度を定量化するために使用され得る。この方法は、鎖間ジスルフィドを介して複合体化された伝統的なADC、ならびに部位特異的複合体化のためにFabまたはFc領域のいずれかに位置する抗体当たり2つの操作システイン残基を有するTHIOMAB(商標)抗体薬物複合体(TDC)の両方を特徴付けるために有用である。抗体-薬物複合体を、IdeSで消化し、次いで、280nmの吸光度での検出を伴う逆相LC-MS上に注入する。Fab及び伝統的なADC上で複合体化されたTDCの場合、薬物を含む抗体断片を、Fc/2断片ピーク領域がタンパク質濃度の定量化のために使用されることを見込んでいるFc/2断片からクロマトグラフィー的に分離する。この値は、開始濃度がFc/2ピーク領域に対して示されるIdeSで消化された抗体標準の標準曲線の線形回帰を使用して補間されている(図2A)。Fc上で操作システインを介して複合体化されたTDCの場合、Fc/2断片を含む薬物を、F(ab’)2断片ピーク領域がタンパク質濃度の定量化のために使用されることを見込んでいるF(ab’)2断片からクロマトグラフィー的に分離する。この値は、開始濃度がF(ab’)2ピーク領域に対して示されるIdeSで消化された抗体標準の標準曲線の線形回帰を使用して補間されている(図2A)。
【0235】
0.5~20mg/mLの範囲にわたる標準曲線(Fc/2ピーク領域対濃度、図2B、上部)(F(ab’)2ピーク領域対濃度、図2B、下部)は、IdeSプロテアーゼで消化されたトラスツズマブを使用して生成した。F(ab)上で部位特異的に複合体化されたTDCのタンパク質濃度は、TDC(上部曲線)のFc/2のピーク領域及び線形回帰を使用して決定され得る。鎖間ジスルフィド上で複合体化される伝統的なADCはまた、Fc/2断片がまたこれらの複合体中に薬物がないときに、この方法を使用して特徴付けられ得る。Fc上で部位特異的に複合体化されたTDCのタンパク質濃度は、TDC(下部曲線)のF(ab’)2のピーク領域及び線形回帰を使用して決定され得る。
【0236】
方法
抗体当たり2つの操作システイン残基を有するTHIOMAB(商標)を、pH7.5で2時間、3倍モル過剰量のチオール反応性リンカー-薬物と共にインキュベートした。過剰なリンカー-薬物を、カチオン交換によって精製し、複合体をpH5.5の緩衝液中に配合した。TDCの薬物対抗体比(DAR)を、薬物による及び非薬物による種のデコンボリューションされた質量の存在量を使用してLC-MS分析によって測定した(図2A-2)。試験された全ての複合体は≧1.7のDARを有した。リンカー-薬物ペイロードは、700~1500Daのサイズの範囲であった。
【0237】
30単位(30単位/μl)のIdeS(FABRICATOR(商標)、Genovis AB)を、0.52~20mg/mlの濃度の範囲であった10μlの抗体または抗体-薬物複合体に添加した。反応混合物を、約pH6.5の最終反応pHでPBSを有する50μlの最終体積までもたらした。LC-MS分析前に37℃で1時間インキュベートされた試料。試料を、エレクトロスプレーイオン化飛行時間型質量分析計(Agilent 6224 TOF-LC)に連結されたHPLCシステム(Agilent 1260 infinity)を使用して逆相高速液体クロマトグラフィー(HPLC)上で分析した。10μlの体積の試料を、80℃まで加熱したPLRP-S1000A°、8μm 50x2.1mmカラム(Agilent)上に注入した。勾配を、0.5ml/分の流量で、0.05%のトリフルオロ酢酸(移動相A)及びアセトニトリル中の0.05%のトリフルオロ酢酸(移動相B)を使用して生成した。カラムを、5%Bで0.7分間、続いて、30%B~40%Bで4.3分勾配を保持した。5分で、濃度はそれが1分間保持された90%Bまで増加した。次いで、カラムを5%B中で2分間、再平衡させた。Agilent MassHunter softwareを使用して、データを得て、分析した。
【0238】
デコンボリューションされた質量スペクトルデータを使用して、全抗体及び抗体薬物複合体が完了するまで消化され、インタクト抗体を含まないことを確認した。
【0239】
標準曲線を、既知の濃度のIdeSで消化されたトラスツズマブ(HERCEPTIN(商標)、抗-Her2ヒトIgG1抗体)を使用して開発した。
1)操作システインK149CでF(ab)上で部位特異的に複合体化されたリンカー薬物(複合体A、図2C)、
2)操作システインS400CでFc上で部位特異的に複合体化されたリンカー薬物(複合体B、図2D)、または
3)鎖間ジスルフィド上で複合体化されたリンカー-薬物(複合体C、図2E
を有する部位特異的トラスツズマブ構築物を調製した。
【0240】
トラスツズマブを、20mMのヒスチジン酢酸pH5.5、240mMスクロース中で20mg/mL~0.52mg/mLの1.5倍に連続的に希釈した。この緩衝液を、多くのADCの最終配合のために使用される緩衝液であり、アッセイにおいて試験的試料の条件を模倣するため、希釈液のために選択した。試料を、合計10の濃度まで3倍に希釈した。
【0241】
10μlの体積の各希釈液を、39μlのリン酸緩衝サリンpH7.2に添加し、1μlのIdeS(30単位/μl)を50μlの全体積まで添加した。これらの試料の最終pHは、IdeS活性のために最適な活性範囲であった。試料を、37℃で1時間インキュベートした。次いで、試料をLC-MS上で順番に実行し、または濃度を増加させた。10μlの体積の抗体消化物を、逆相カラム上に注入し、勾配溶出して、Fc/2及びF(ab’)2ピークを分離した。>5μgの抗体の注入をもたらした試料には、続けて、注入を伴わない同じLC-MS方法の空の実行を行い、次の実行に繰り越す試料がないことを確実にした。
【0242】
抗体-薬物複合体のタンパク質濃度を、IdeSでのタンパク質分解性消化、及び続いてLC-MS分析によって測定した。標準曲線を、0.52mg/mL~20mg/mLの範囲である既知の濃度のIdeSで消化されたトラスツズマブを使用して開発した(図2C、2D、2E)。標準を、最小のエラーで3倍に消化及び実行した。開始濃度を、一連の基準(R=0.9999)への線形回帰をもたらすピーク領域に対して示した(図2F)。この線形回帰方程式を使用して、以下の表に従って未知の試料のタンパク質濃度を測定した。
1)F(ab)上で部位特異的に複合体化されたリンカー-薬物について(図2C
2)Fc上で部位特異的に複合体化されたリンカー-薬物について(図2D
3)鎖間ジスルフィド上で複合体化されたリンカー-薬物について(図2E
【0243】
81のTDCのタンパク質濃度を、この方法を使用して、ならびにタンパク質濃度測定のための幅広く受け入れられている測色アッセイである、BCAによって測定した。各方法によって測定された濃度値を、強い相関を示している各々に対して示し、IdeS消化方法の精度及び再現性を検証した(図2F)。次いで、この方法によって測定された濃度値は、ベール-ランベルトの法則を使用してA280の吸光度でTDCまたはADCの吸光係数を計算するために使用され得る。
【0244】
図3Aは、3つの複製について、それぞれ、0.13、0.09、及び0.14の標準偏差を伴う、直接的LC-MSアッセイ、Ides消化、親和性捕捉LC-MS F(ab’)2アッセイ、及びPNGaseF親和性捕捉LC-MSインタクト抗体アッセイによる、TDC(PBD二量体薬物、ジスルフィドリンカー)標準混合物(DAR0:DAR2=1:1)のDARプロファイリングを示す。添加されたTDC標準混合物を含有するヒトの血漿(100μL)を、親和性捕捉のために使用し、5μL溶出液をLC-MS分析のために注入した。
【0245】
図3Bは、直接的LC-MS、1時間のIdeS消化を伴うIdeS消化親和性捕捉LC-MS F(ab’)2アッセイ、及び一晩にわたるPNGaseF消化を伴う親和性捕捉LC-MS F(ab’)2アッセイ(グリーン)による、ジスルフィドリンカーでシステイン操作抗体に共有結合しているPBD二量体(TDC1及びTDC4)、アントラサイクリン(TDC2)、及びCBI二量体(TDC5)薬物部分を有するTDCのTDC標準混合物(DAR0:DAR2=1:1)のDAR(薬物-抗体比)プロファイリングを示す。添加されたTDC標準混合物を含有するヒトの血漿(100μL)を、親和性捕捉のために使用し、5μL溶出液をLC-MS分析のために注入した。TDC2のために測定されたDAR0:DAR2の誤りは、IdeSの一晩にわたる消化親和性捕捉LC-MSによって言明され、延長したビーズ上インキュベート(例えば、一晩にわたる消化)が、試料調製の間に異なる薬物-負荷TDC2種の潜在的な偏った回復をもたらしたことを示した。
【0246】
これらの方法は、それらの複合体化ペイロードのスペクトル特性に関わらず、ADCのタンパク質濃度測定のための、素早い、ロバストの、再現可能なアッセイを提供する。フルオロフォア等の他の試験的ペイロードで複合体化された抗体は、この方法を使用して分析され得、フルオロフォアまたは吸光度とは独立してそれらのタンパク質濃度を決定する。従来のADCのタンパク質濃度はまた、この方法によって、特にFc/2領域がこれらの複合体化部位を欠いている際にペイロードが鎖間ジスルフィドに複合体化されるADCのために測定されてもよい。
【0247】
本発明のアッセイは、比較的速い消化ステップを含み、過剰消化することなく完了まで継続する。このようにして、この方法論は、ペプシン、パパイン、及びエンドプロテアーゼリジンC等の従来のプロテアーゼの使用に対して、著しい利点を有する。例えば、IgG1のペプシン消化は遅く、pH5未満で最も良く生じる。パパイン消化を、中性pHで行い、タンパク質切断の部位は特異的でなく、複数のタンパク質切断イベントをしばしばもたらす。限られたLysC消化は、Fc領域を過剰消化し得る。IdeSは、それがヒンジ領域下の重鎖上の1つの特異的部位でIgG1抗体を切断する際に、過剰消化の危険性を有さない。溶液中で、IdeSは、4℃で最大1ヵ月間安定している。これらの特徴は、本明細書に示されるロバストタンパク質濃度アッセイに寄与する。
【0248】
日常濃度分析について、方法は、インラインでの質量分析計なしで、HPLC上で行われ得る。例えば、トラスツズマブ標準は、品質管理のために試験試料と共に、消化及び分析される。完全な消化は、インタクト抗体が既知の保持時間を有し、質量スペクトル分析なしで検出され得る。次いで、280nmでの吸光度のピーク領域は、MS分析の必要なしに、タンパク質濃度と直接的に相関している。
【0249】
前述の発明が明確な理解のために例証及び例により多少詳しく記載されているが、これらの記述及び例は、本発明の範囲を限定するものと解釈されるべきではない。本明細書で引用される全ての特許及び科学文献の開示は、参照によりそれらの全体が明示的に組み込まれる。
図1A
図1B
図1C
図1D-1】
図1D-2】
図1D-3】
図1E-1】
図1E-2】
図1F-1】
図1F-2】
図2A-1】
図2A-2】
図2B
図2C
図2D
図2E
図2F
図3A
図3B
【配列表】
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