(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-02-08
(45)【発行日】2022-02-17
(54)【発明の名称】ワーク搬送システム、搬送ワーク枚数検出装置及びワーク搬送システムの制御方法
(51)【国際特許分類】
B21D 43/24 20060101AFI20220209BHJP
B21D 43/00 20060101ALI20220209BHJP
B25J 13/08 20060101ALI20220209BHJP
【FI】
B21D43/24 B
B21D43/00 A
B25J13/08 A
(21)【出願番号】P 2019010167
(22)【出願日】2019-01-24
【審査請求日】2020-07-22
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000100861
【氏名又は名称】アイダエンジニアリング株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100134212
【氏名又は名称】提中 清彦
(72)【発明者】
【氏名】竹田 桂輔
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 聡
【審査官】豊島 唯
(56)【参考文献】
【文献】実開昭62-173335(JP,U)
【文献】特開2008-93698(JP,A)
【文献】特開平08-192236(JP,A)
【文献】欧州特許出願公開第2177326(EP,A2)
【文献】特開2014-155965(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B21D 43/24
B21D 43/00
B25J 13/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
シート状のワークを下流工程へ搬送するワーク搬送システムであって、
ワークを吸着保持・解放可能に構成されたワーク保持ユニットを備え、複数枚のワークが積層されたスタックの最上部のワークを当該ワーク保持ユニットによって吸着保持して上昇した後、下流工程へ向けて当該ワーク保持ユニットを移動させて、当該スタックの最上部のワークを1枚ずつ下流工程へ搬送するワーク搬送機と、
前記ワーク搬送機による通常のワークの搬送動作に従って前記ワーク保持ユニットに保持されて上昇されるワークがその上昇方向への移動速度成分が0となる上昇上限位置にて前記ワーク保持ユニットに保持された状態のワークの上面と当接するワークストッパ
であって、当該ワークストッパのワーク接触部は磁石或いは真空吸着構造を有するワークストッパと、
前記ワークストッパがワークに当接した状態で、前記ワーク保持ユニットが保持しているワークの枚数を
、カメラ或いはレーザーからの取得データに基づいて検出する搬送ワーク枚数検出装置と、
を含んで構成されたことを特徴とするワーク搬送システム。
【請求項2】
前記搬送ワーク枚数検出装置が、前記ワーク保持ユニットに保持しているワークの枚数が1枚であると検出した場合には、そのまま通常のワーク搬送動作を継続して次工程へワークを搬送する一方、
前記搬送ワーク枚数検出装置が、前記ワーク保持ユニットに保持しているワークの枚数が複数枚であると検出した場合には、それら複数枚のワークを次工程へ搬送することなく回収ボックスへ排出すること
を特徴とする請求項1に記載のワーク搬送システム。
【請求項3】
シート状のワークを下流工程へ搬送するワーク搬送システムであって、
ワークを吸着保持・解放可能に構成されたワーク保持ユニットを備え、複数枚のワークが積層されたスタックの最上部のワークを当該ワーク保持ユニットによって吸着保持して上昇した後、下流工程へ向けて当該ワーク保持ユニットを移動させて、当該スタックの最上部のワークを1枚ずつ下流工程へ搬送するワーク搬送機と、
前記ワーク搬送機による通常のワークの搬送動作に従って前記ワーク保持ユニットに保持されて上昇されるワークがその上昇方向への移動速度成分が0となる上昇上限位置にて前記ワーク保持ユニットに保持された状態のワークの上面と当接するワークストッパ
であって、当該ワークストッパのワーク接触部は磁石或いは真空吸着構造を有するワークストッパと、
前記ワークストッパがワークに当接した状態で、前記ワーク保持ユニットが保持しているワークの姿勢を
、カメラの撮影データに基づいて検出する搬送ワーク姿勢検出装置と、
を含んで構成されたことを特徴とするワーク搬送システム。
【請求項4】
前記搬送ワーク姿勢検出装置が、前記ワーク保持ユニットに保持しているワークの姿勢が正常であると検出した場合には、そのまま通常のワーク搬送動作を継続して次工程へワークを搬送する一方、
前記搬送ワーク姿勢検出装置が、前記ワーク保持ユニットに保持しているワークの姿勢が異常であると検出した場合には、ワークの姿勢を正常な状態に修正しつつ、次工程へワークを搬送すること
を特徴とする請求項3に記載のワーク搬送システム。
【請求項5】
シート状のワークを下流工程へ搬送するワーク搬送システムであって、
ワークを吸着保持・解放可能に構成されたワーク保持ユニットを備え、複数枚のワークが積層されたスタックの最上部のワークを当該ワーク保持ユニットによって吸着保持して上昇した後、下流工程へ向けて当該ワーク保持ユニットを移動させて、当該スタックの最上部のワークを1枚ずつ下流工程へ搬送するワーク搬送機と、
前記ワーク搬送機による通常のワークの搬送動作に従って前記ワーク保持ユニットに保持されて上昇されるワークがその上昇方向への移動速度成分が0となる上昇上限位置にて前記ワーク保持ユニットに保持された状態のワークの上面と当接するワークストッパ
であって、当該ワークストッパのワーク接触部は磁石或いは真空吸着構造を有するワークストッパと、
前記ワークストッパがワークに当接した状態で、前記ワーク保持ユニットが保持しているワークの枚数を
、カメラ或いはレーザーからの取得データに基づいて検出する搬送ワーク枚数検出装置と、
前記ワークストッパがワークに当接した状態で、前記ワーク保持ユニットが保持しているワークの姿勢を
、カメラの撮影データに基づいて検出する搬送ワーク姿勢検出装置と、
を含んで構成されたことを特徴とするワーク搬送システム。
【請求項6】
前記搬送ワーク枚数検出装置が、前記ワーク保持ユニットに保持しているワークの枚数が1枚であると検出し、かつ、前記搬送ワーク姿勢検出装置が、前記ワーク保持ユニットに保持しているワークの姿勢が正常であると検出した場合には、そのまま通常のワーク搬送動作を継続して次工程へワークを搬送し、
前記搬送ワーク枚数検出装置が、前記ワーク保持ユニットに保持しているワークの枚数が1枚であると検出し、かつ、前記搬送ワーク姿勢検出装置が、前記ワーク保持ユニットに保持しているワークの姿勢が異常であると検出した場合には、ワークの姿勢を正常な状態に修正しつつ、次工程へワークを搬送し、
前記搬送ワーク枚数検出装置が、前記ワーク保持ユニットに保持しているワークの枚数が複数枚であると検出した場合には、それら複数枚のワークを次工程へ搬送することなく回収ボックスへ排出すること
を特徴とする請求項5に記載のワーク搬送システム。
【請求項7】
前記ワークストッパのワーク接触部は、複数枚のワークが積層されたスタックとの平面的位置関係において重なっていることを特徴とする請求項1~請求項6の何れか1つに記載のワーク搬送システム。
【請求項8】
複数枚のワークが積層されたスタックの最上部のワークをワーク保持ユニットにより吸着保持して持ち上げた後、下流工程へ向けて当該ワーク保持ユニットを移動させて、当該スタックの最上部のワークを1枚ずつ下流工程へ搬送するワーク搬送システムにおける搬送ワーク枚数検出装置であって、
ワーク搬送システムによる通常のワークの搬送動作に従って前記ワーク保持ユニットに保持されて上昇されるワークがその上昇方向への移動速度成分が0となる上昇上限位置にて前記ワーク保持ユニットに保持された状態のワークの上面と当接するワークストッパ
であって、当該ワークストッパのワーク接触部は磁石或いは真空吸着構造を有するワークストッパを備えると共に、
前記ワークストッパがワークに当接した状態で、前記ワーク保持ユニットが保持しているワークの枚数
をカメラ或いはレーザーからの取得データに基づいて、又はワーク姿勢を
カメラの撮影データに基づいて、検出することを特徴とする搬送ワーク枚数検出装置。
【請求項9】
前記ワークストッパのワーク接触部は、複数枚のワークが積層されたスタックとの平面的位置関係において重なっていることを特徴とする請求項9に記載の搬送ワーク枚数検出装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数枚のシート状のワークが積層されたスタック(束)の最上部からシート状部材を1枚ずつ順に取り出してプレス機械などの次工程(下流工程)に搬送するワーク搬送システムの改良技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種のシート状のワーク(薄い板状のワーク)をプレスマシンに供給する技術として、例えば特許文献1には、
図9に示すようなワーク搬送システムが記載されている。なお、ワーク搬送システムとは、束状シート群(複数のシート状のワークが積み重ねられた束(スタック))の最上部から1枚ずつワークを取り出して次工程(プレスマシンなど)へ搬送(供給)するシステムである。
【0003】
ところで、シート状のワークWを積み重ねておくと、ワークWの表面に付着している油などの存在により上下のワークWが密着し、最上部のワークWを持ち上げて搬送しようとする際に、直下のワークWも一緒に持ち上げてしまうといった所謂2枚取りが生じることがある。このような2枚取りした状態のまま次工程のプレスマシンなどにセットしてしまうと、様々な不具合が生じるため、次工程へ搬送してしまう前に、2枚取りを検出し、2枚取りした状態のまま次工程へ搬送することを未然に防止することが求められている。
【0004】
このようなことから、
図9に示す特許文献1に記載のワーク搬送システム1においては、束(スタック)状に積み重ねられたワークWは、多関節アームロボットからなるワーク搬送装置9のワーク保持手段7により、その最上部のワークWが1枚ごとに持ち上げられると、ワークWの次工程(下流工程)への搬送前に、その持ち上げられたワークWと、残りの積み上げられたワークWと、の間に、ワーク受け部材13を移動させ、このワーク受け部材13に備えられた2枚取り検出手段17により、2枚取りしているか否かを検出する。
【0005】
そして、その検出結果が、ワークWが1枚であった場合(正常な場合)には、そのままワーク搬送装置9により次工程へワークWを搬送する。
【0006】
一方、その検出結果が、ワークWが2枚であった場合(異常な場合)には、素材台19の上方位置へワーク受け部材13及びワークW(ワーク保持手段7)を移動し、ワーク受け部材13を素材台19の上方位置から退避した後に、ワーク保持手段7に保持されているワークW(2枚取りされたワークW)を素材台19上に載置するように、特許文献1に記載のワーク搬送システム1は構成されている。
【0007】
なお、引用文献1の2枚取り検出手段17は、引用文献1に記載されている内容から、ワーク保持手段7が保持してワークWの厚さを検出し、その検出結果に基づいて、ワーク保持手段7が保持しているワークWが1枚であるか2枚であるかを検出している(
図10参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、特許文献1に記載のワーク搬送システム1のような2枚取りの検出方法では、2枚取り検出のためにワーク搬送の途中でその動作を停止させるような通常のワーク搬送動作とは異なる工程(ステップ)が必要で、ワークの高速搬送が要求される状況下では、このような従来の検出方法を採用することは難しいといった実情がある。
【0010】
本発明は、かかる実情に鑑みなされたもので、簡単かつ低コストな構成でありながら、ワークの2枚取り検出やワークの姿勢検出を効率良く正確に行わせることができ、以ってワークの高速搬送の要求に応えることができるワーク搬送システムを提供することを目的とする。また、当該ワーク搬送システムに利用される搬送ワーク枚数検出装置、及びワーク搬送システムの制御方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
このため、本発明は、
シート状のワークを下流工程へ搬送するワーク搬送システムであって、
ワークを吸着保持・解放可能に構成されたワーク保持ユニットを備え、複数枚のワークが積層されたスタックの最上部のワークを当該ワーク保持ユニットによって吸着保持して上昇した後、下流工程へ向けて当該ワーク保持ユニットを移動させて、当該スタックの最上部のワークを1枚ずつ下流工程へ搬送するワーク搬送機と、
前記ワーク搬送機による通常のワークの搬送動作に従って前記ワーク保持ユニットに保持されて上昇されるワークがその上昇方向への移動速度成分が0となる上昇上限位置にて前記ワーク保持ユニットに保持された状態のワークの上面と当接するワークストッパであって、当該ワークストッパのワーク接触部は磁石或いは真空吸着構造を有するワークストッパと、
前記ワークストッパがワークに当接した状態で、前記ワーク保持ユニットが保持しているワークの枚数を、カメラ或いはレーザーからの取得データに基づいて検出する搬送ワーク枚数検出装置と、
を含んで構成されたことを特徴とする。
【0012】
上記本発明において、
前記搬送ワーク枚数検出装置が、前記ワーク保持ユニットに保持しているワークの枚数が1枚であると検出した場合には、そのまま通常のワーク搬送動作を継続して次工程へワークを搬送する一方、
前記搬送ワーク枚数検出装置が、前記ワーク保持ユニットに保持しているワークの枚数が複数枚であると検出した場合には、それら複数枚のワークを次工程へ搬送することなく回収ボックスへ排出すること
を特徴とすることができる。
【0013】
また、本発明は、
シート状のワークを下流工程へ搬送するワーク搬送システムであって、
ワークを吸着保持・解放可能に構成されたワーク保持ユニットを備え、複数枚のワークが積層されたスタックの最上部のワークを当該ワーク保持ユニットによって吸着保持して上昇した後、下流工程へ向けて当該ワーク保持ユニットを移動させて、当該スタックの最上部のワークを1枚ずつ下流工程へ搬送するワーク搬送機と、
前記ワーク搬送機による通常のワークの搬送動作に従って前記ワーク保持ユニットに保持されて上昇されるワークがその上昇方向への移動速度成分が0となる上昇上限位置にて前記ワーク保持ユニットに保持された状態のワークの上面と当接するワークストッパであって、当該ワークストッパのワーク接触部は磁石或いは真空吸着構造を有するワークストッパと、
前記ワークストッパがワークに当接した状態で、前記ワーク保持ユニットが保持しているワークの姿勢を、カメラの撮影データに基づいて検出する搬送ワーク姿勢検出装置と、
を含んで構成されたことを特徴とする。
【0014】
上記本発明において、
前記搬送ワーク姿勢検出装置が、前記ワーク保持ユニットに保持しているワークの姿勢が正常であると検出した場合には、そのまま通常のワーク搬送動作を継続して次工程へワークを搬送する一方、
前記搬送ワーク姿勢検出装置が、前記ワーク保持ユニットに保持しているワークの姿勢が異常であると検出した場合には、ワークの姿勢を正常な状態に修正しつつ、次工程へワークを搬送すること
を特徴とすることができる。
【0015】
また、本発明は、
シート状のワークを下流工程へ搬送するワーク搬送システムであって、
ワークを吸着保持・解放可能に構成されたワーク保持ユニットを備え、複数枚のワークが積層されたスタックの最上部のワークを当該ワーク保持ユニットによって吸着保持して上昇した後、下流工程へ向けて当該ワーク保持ユニットを移動させて、当該スタックの最上部のワークを1枚ずつ下流工程へ搬送するワーク搬送機と、
前記ワーク搬送機による通常のワークの搬送動作に従って前記ワーク保持ユニットに保持されて上昇されるワークがその上昇方向への移動速度成分が0となる上昇上限位置にて前記ワーク保持ユニットに保持された状態のワークの上面と当接するワークストッパであって、当該ワークストッパのワーク接触部は磁石或いは真空吸着構造を有するワークストッパと、
前記ワークストッパがワークに当接した状態で、前記ワーク保持ユニットが保持しているワークの枚数を、カメラ或いはレーザーからの取得データに基づいて検出する搬送ワーク枚数検出装置と、
前記ワークストッパがワークに当接した状態で、前記ワーク保持ユニットが保持しているワークの姿勢を、カメラの撮影データに基づいて検出する搬送ワーク姿勢検出装置と、
を含んで構成されたことを特徴とする。
【0016】
上記本発明において、
前記搬送ワーク枚数検出装置が、前記ワーク保持ユニットに保持しているワークの枚数が1枚であると検出し、かつ、前記搬送ワーク姿勢検出装置が、前記ワーク保持ユニットに保持しているワークの姿勢が正常であると検出した場合には、そのまま通常のワーク搬送動作を継続して次工程へワークを搬送し、
前記搬送ワーク枚数検出装置が、前記ワーク保持ユニットに保持しているワークの枚数が1枚であると検出し、かつ、前記搬送ワーク姿勢検出装置が、前記ワーク保持ユニットに保持しているワークの姿勢が異常であると検出した場合には、ワークの姿勢を正常な状態に修正しつつ、次工程へワークを搬送し、
前記搬送ワーク枚数検出装置が、前記ワーク保持ユニットに保持しているワークの枚数が複数枚であると検出した場合には、それら複数枚のワークを次工程へ搬送することなく回収ボックスへ排出すること
を特徴とすることができる。
【0017】
上記本発明において、
前記ストッパのワーク接触部は、複数枚のワークが積層されたスタックとの平面的位置関係において重なっていることを特徴とすることができる。
【0018】
また、本発明に係る搬送ワーク枚数検出装置は、
複数枚のワークが積層されたスタックの最上部のワークをワーク保持ユニットにより吸着保持して持ち上げた後、下流工程へ向けて当該ワーク保持ユニットを移動させて、当該スタックの最上部のワークを1枚ずつ下流工程へ搬送するワーク搬送システムにおける搬送ワーク枚数検出装置であって、
ワーク搬送システムによる通常のワークの搬送動作に従って前記ワーク保持ユニットに保持されて上昇されるワークがその上昇方向への移動速度成分が0となる上昇上限位置にて前記ワーク保持ユニットに保持された状態のワークの上面と当接するワークストッパであって、当該ワークストッパのワーク接触部は磁石或いは真空吸着構造を有するワークストッパを備えると共に、
前記ワークストッパがワークに当接した状態で、前記ワーク保持ユニットが保持しているワークの枚数をカメラ或いはレーザーからの取得データに基づいて、又はワーク姿勢をカメラの撮影データに基づいて、検出することを特徴とする。
【0019】
上記本発明に係る搬送ワーク枚数検出装置において、
前記ストッパのワーク接触部は、複数枚のワークが積層されたスタックとの平面的位置関係において重なっていることを特徴とすることができる。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、簡単かつ低コストな構成でありながら、ワークの2枚取り検出やワークの姿勢検出を効率良く正確に行わせることができ、以ってワークの高速搬送の要求に応えることができるワーク搬送システムを提供することができる。また、当該ワーク搬送システムに好適な搬送ワーク枚数検出装置、及びワーク搬送システムの制御方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】本発明の一実施の形態に係るワーク搬送システムを概略的に示す全体構成図(ワーク搬送方向と直交する水平方向から見た図)である。
【
図2】同上実施例に係るワーク搬送システムのワーク搬送動作(ワークを一枚取りした正常時の例)を説明する図である。
【
図3】同上実施例に係るワーク搬送システムのワーク搬送動作(ワークを2枚取りした正常時の例)を説明する図である。
【
図4】同上実施例に係るワーク搬送システムが行うワーク搬送制御(ワークの2枚取り検出を行う場合)を説明するフローチャートの一例である。
【
図5】同上実施例に係るワーク搬送システムのワーク搬送動作(ワークの姿勢検出を行う場合の例)を説明する図である。
【
図6】同上実施例に係るワーク搬送システムにおけるワークの姿勢修正を説明する平面図である。
【
図7】同上実施例に係るワーク搬送システムが行うワーク搬送制御(ワークの姿勢検出を行う場合)を説明するフローチャートの一例である。
【
図8】同上実施例に係るワーク搬送システムが行うワーク搬送制御(ワークの2枚取り検出とワークの姿勢検出を行う場合)を説明するフローチャートの一例である。
【
図9】従来のディスタックフィーダの構成の一例を示す斜視図である。
【
図10】従来のディスタックフィーダの構成の一例を示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の一実施の形態に係るワーク搬送システムについて、添付の図面に従って説明する。なお、以下で説明する実施例により、本発明が限定されるものではない。
【0024】
図1に、本実施形態に係るワーク搬送システム100を示す。
図1は、ワーク搬送システム100の全体構成を概略的に示す全体構成図(ワーク搬送方向と略直交する水平方向から見た図である)。
【0025】
本実施の形態に係るワーク搬送システム100は、
図1に示すように、プレス機械200の加工工程上流(前工程)に配置され、スタッカ101上に載置されたスタック(複数枚のシート状(薄板状)のワークWが積層された束)102の最上部のワークWを1枚ずつ取り出し、次工程(下流工程)のプレス機械200へワークWを1枚ずつ搬送(供給)するように構成されている。
【0026】
スタック102の最上部のワークWの取り出しは、ワーク搬送機110により行われる。
ワーク搬送機110は、
上下方向に移動可能に構成されている昇降フレーム111と、
該昇降フレーム111に、第1関節Aを介して略水平面内を揺動自在にその基端部が支持されている第1アーム112と、
該第1アーム112の先端部に、第2関節Bを介して略水平面内を揺動自在にその基端部が支持されている第2アーム113と、
該第2アーム113の先端に第3関節Cを介して略水平面内を揺動自在に支持されると共に、ワークWを保持・解放可能に構成されているワーク保持ユニット114と、
を含んで構成されている。ここで、ワーク保持ユニット114は複数のワーク保持部から構成されている。
【0027】
そして、ワーク搬送機110は、以下のようなステップで、ワークWを搬送するように制御される。
【0028】
すなわち、まず、昇降フレーム111を所定高さに上昇させた状態で、第1アーム112と第2アーム113を略水平面内で、それぞれ第1関節A及び第2関節B廻りに揺動させることで、ワーク保持ユニット114を、スタック102の最上部のワークWの上方へ移動させる。
【0029】
そして、ワーク保持ユニット114を、スタック102の最上部のワークWの上方の所定位置へ移動させたら、昇降フレーム111を下降させることで、ワーク保持ユニット114を、スタック102の最上部のワークWの上面に接触させる。
【0030】
この状態で、ワーク保持ユニット114は、例えば、真空吸着(或いは磁気吸着)などの方法で、スタック102の最上部のワークWを保持し、その後、昇降フレーム111を上昇させることで、ワーク保持ユニット114が保持しているワークWをスタック102から分離して上方へと持ち上げる。
【0031】
その後、昇降フレーム111を所定高さに上昇させた状態で、第1アーム112と第2アーム113を略水平面内でそれぞれ第1関節A及び第2関節B廻りに揺動させて、ワーク保持ユニット114及びワークWを、プレス機械200の下型201の上方へ移動させる。
【0032】
この状態から昇降フレーム111を所定位置まで下降させたら、ワーク保持ユニット114は真空吸着を解いてワークWを解放し、ワークWを下型201へ供給してワーク搬送を終了する。なお、プレス機械200では、上下動可能に構成されている上型202により、下型201にセットされたワークWをプレス成形する。
【0033】
その後は、上記を繰り返すことで、ワーク搬送機110は、スタック102の最上部のワークWを一枚ずつ持ち上げて取り出し、次工程のプレス機械200へワークWを一枚ずつ搬送(供給)することができるように制御される。
【0034】
このように、スタック102から直接的にプレス機械200へワークWを搬送することでワーク搬送の高速化が実現可能となっている。
【0035】
ここで、本実施の形態に係るワーク搬送システム100は搬送ワーク状態検出装置120を備えて構成されていて、当該搬送ワーク状態検出装置120により、ワーク搬送機110によるスタッく102の最上部からのかワークWの取り出しの際に発生する所謂2枚取りを、ワーク搬送速度を低下させることなく、効率良く高精度に検出することができるようになっている。
【0036】
以下に、本実施の形態に係る搬送ワーク状態検出装置120について説明する。
搬送ワーク状態検出装置120は、ワークWの上昇上限位置(ワーク上昇動作の終了高さ位置)において、ワーク保持ユニット114に保持されて持ち上げられ上昇してくるワークWの上面と、ワーク接触部121Aにおいて当接(接触)するワークストッパ121を備えている。ここで、ワークストッパ121のワーク接触部121Aは、たとえば、ワークWの上方から見て、ワーク保持ユニット114のうちの少なくとも二つのワーク保持部に挟まれるような平面的位置関係にある。
【0037】
また、搬送ワーク状態検出装置120は、ワークストッパ121の下端(ワーク接触部121A)と、ワークWの上面とが当接(接触)した位置で、ワークW(の厚さ)を検出可能な2枚取り検出装置122を備えて構成されている。なお、2枚取り検出装置122は、カメラ122A等の撮影データに基づく搬送コントローラ(制御装置)130での画像解析によりワークWの厚さ或いは2枚取りを検出する構成、或いはレーザー122Bからのレーザー照射により得られるデータに基づいて搬送コントローラ130がワークWの厚さを検出する構成などとすることができる。
なお、2枚取り検出装置122が、本発明に係る搬送ワーク枚数検出装置に相当する。
【0038】
また、搬送ワーク状態検出装置120は、カメラ123A等の撮影データに基づく搬送コントローラ130での画像解析によりワークWの姿勢を検出する搬送ワーク姿勢検出装置123を備えて構成されている。
【0039】
このような構成の搬送ワーク状態検出装置120は、通常のワークの搬送動作(制御)に従ってワーク保持ユニット114に保持されて持ち上げられ上昇してくるワークWが、その上昇方向への移動速度成分が0(ゼロ)となる位置(最高位置、上昇上限位置、水平方向へのワーク搬送時の高さ位置)に至ったタイミング、例えば、ワークの搬送速度成分に関し上昇方向の移動速度成分が0となり水平方向への移動速度成分のみへと切り替わるタイミングを有効活用してワーク枚数(2枚取り)及び/又はワークの姿勢(例えば水平面内での姿勢)を検出する。
ここで、前記タイミングが、本発明に係る検出タイミングに相当する。
【0040】
なお、搬送中のワークWの上昇方向への移動速度成分が0(ゼロ)となるタイミングであれば、ワークWの厚さ方向(ワーク搬送方向と略直交水平方向)からワークWを見たときにワークWの上昇方向への移動は停止されている状態であるため、かかる状態であれば高精度にワークの厚さ延いては2枚取りなどを検出することができる。しかも、通常のワーク搬送動作中のこのようなタイミングを利用すれば、ワーク搬送速度を低下させることなく、高精度にワーク枚数(2枚取り)及び/又はワークの姿勢を検出することができる。本実施の形態に係る搬送ワーク状態検出装置120は、このことを利用したものである。
【0041】
すなわち、本実施の形態に係る搬送ワーク状態検出装置120によれば、従来のように、ワークの2枚取り検出のためにワークの搬送を停止させるなどワークの搬送速度を低下させるような工程を設けることなく、迅速かつ高精度にワークの厚さ延いては2枚取り、姿勢などを検出することができる。
【0042】
なお、ワークストッパ121は、搬送動作に伴いワークWが振動などする場合に、ワークWと当接することでその振動を抑えて、搬送ワーク状態検出装置120によるワークの2枚取り検出やワークの姿勢検出の検出精度を高めるといった作用効果を奏する。従って、振動等が生じないワークなどを搬送する場合には省略することも可能である。また、ワークストッパ121は、ワークWが磁性材料から成る場合はワーク接触部121Aとして磁石を有し、ワークWが非磁性材料から成る場合はワーク接触部121Aとして真空吸着構造を有する。これらの場合は、大面積のワークWであっても、ワークWが上昇動作を停止する際の振動をより確実に抑制することができ、ワークの枚数やワークの姿勢を制度良く速やかに実行することが可能となる。
【0043】
このような構成の本実施の形態に係る搬送ワーク状態検出装置120(2枚取り検出装置122)を備えたワーク搬送システム100が行うワークの枚数の検出及びワークの搬送方法(制御方法)について、
図4のフローチャートに従い説明する。
図4のフローチャートは、ワーク枚数(2枚取り)の検出する場合のフローを説明している。また、
図2、
図3は、
図4のフローチャートにより行われるワーク搬送システム100の動作例を示す側面図である。なお、当該制御は、搬送コントローラ130により実行される。
【0044】
ステップ(図では「S」と記す。以下同様)1では、ワーク搬送機110(搬送機)が、通常のワークの搬送動作(制御)に従って、スタック102の最上部のワークWを保持し、上昇上限位置(以下、上昇限とも称する)へ向けて移動(上昇)する。
【0045】
ステップ2では、ワークWの上面がワークストッパ121のワーク接触部121Aに当接(接触)したタイミングで、2枚取り検出装置122により2枚取り(ダブルワーク)を検出する。具体的には、2枚取り検出装置122は、カメラ122A或いはレーザー122Bからの取得データに基づいて、ワーク搬送機110のワーク保持ユニット114に保持されて持ち上げられ上昇してくるワークWが1枚であるか否かを検出する。
Yes(1枚取り(シングルワーク):正常)の場合にはステップ3へ進み、No(2枚取り:異常)の場合にはステップ5へ進む。
なお、ステップ3へ進む場合は、ワーク搬送システム100は、
図2のように動作することになり、ステップ5へ進む場合は、
図3のように動作する。
【0046】
ステップ3では、ワーク保持ユニット114が保持しているワークWは1枚である正常な状態であるので、そのまま通常のワーク搬送動作(制御)を継続して、次工程のプレス機械200へワークWを搬送して、下型201(金型)へワークWを搬送(投入、供給)する。
【0047】
続く、ステップ4では、ワークWの搬送が終了したので、ワーク搬送機110のワーク保持ユニット114を、プレス機械200からスタック102(スタッカ101)へ向けて移動させて、次のワークWの搬送のために、ステップ1へ戻る。
【0048】
この一方、ステップ5では、ワーク保持ユニット114が保持しているワークWは2枚(或いはそれ以上)である異常な状態(所謂2枚取り状態)であるので、通常のワーク搬送を行うことなく(停止して)、ワーク保持ユニット114が保持している複数のワークWを回収ボックス140へ搬送して回収ボックス140内に複数のワークWを解放(排出)して、ステップ6へ進む。
なお、ここでは、「2枚取り」と称しているが、実際には2枚以上の複数枚のワークWを同時に持ち上げる場合も含まれる概念として本明細書では用いている。
【0049】
ステップ6では、ワーク搬送機110のワーク保持ユニット114を、回収ボックス140からスタック102(スタッカ101)へ向けて移動させて、次のワークWの搬送のために、ステップ1へ戻る。
【0050】
このように、本実施の形態に係るワーク搬送システム100によれば、搬送ワーク状態検出装置120を備え、ワーク搬送機110が、通常のワークの搬送動作(制御)に従ってワークWを搬送する途中のワークWの上昇速度成分が0(ゼロ)となるタイミング、具体的には、「ワーク搬送機110がスタック102の最上部のワークWを保持し上昇限へ向けて移動(上昇)し、ワークWの上面がワークストッパ121のワーク接触部121Aに当接(接触)したタイミング」で、2枚取り検出装置122により、ワークの2枚取りを検出するようにしたので、従来のように、ワーク搬送を遅らせるような2枚取り検出のための専用の工程(2枚取り検出のためにワーク搬送途中でワークを停止させるような工程)を設ける必要がないため、ワークの高速搬送に対する要求に応えながら、高精度に2枚取りの有無を検出することができる。
【0051】
すなわち、本実施の形態によれば、簡単かつ低コストな構成でありながら、ワークの2枚取り検出を効率良く正確に行わせることができ、以ってワークの高速搬送の要求に応えることができるワーク搬送システムを提供することができる。また、当該ワーク搬送システムに好適な搬送ワーク枚数検出装置、及びワーク搬送システムの制御方法を提供することができる。
【0052】
そして、本実施の形態によれば、ワークの高速搬送に対する要求に応えながら高精度に2枚取りの有無を検出することができるため、2枚取りした状態のまま次工程のプレスマシンなどにワークを搬送してしまうことにより発生する様々な不具合を未然に防止することが可能である。
【0053】
特に、本実施の形態に係る搬送ワーク状態検出装置120(2枚取り検出装置122)は、通常のワークの搬送動作(制御)に従ってワーク保持ユニット114に保持されて持ち上げられ上昇してくるワークWが、その上昇方向への移動速度成分が0となる位置(最高位置、上昇上限位置)に至ったタイミング、例えば、ワークの搬送速度成分に関し上昇方向の移動速度成分が0となり水平方向への移動速度成分のみへと切り替わるタイミングを有効活用してワーク枚数(2枚取り)を検出するので、従来のように、ワークの上昇方向や水平方向への搬送動作の途中において、2枚取り検出のために減速から加速などへワーク搬送の加速度が切り替わる(特別に変化される)ようなことがないため、ワーク保持ユニット114が支持するワークWに搬送には本来必要のない不必要な慣性力が作用することがなく、ワーク保持ユニット114延いてはワーク搬送機110の構成の簡略化、軽量化、低コストを維持しながらワークの高速搬送の実現に貢献することができる。
【0054】
また、本実施の形態に係る搬送ワーク状態検出装置120(2枚取り検出装置122)は、通常のワークの搬送動作(制御)に従ってワーク保持ユニット114に保持されて持ち上げられ上昇してくるワークWが、その上昇方向への移動速度成分が0となる位置(最高位置、上昇上限位置)に至ったタイミング、例えば、ワークの搬送速度成分に関し上昇方向の移動速度成分が0となり水平方向への移動速度成分のみへと切り替わるタイミングを有効活用してワーク枚数(2枚取り)を検出するので、スタック102の最上部からワークWを持ち上げて次工程へ搬入するまでのワーク搬送に要する時間が増大することを抑制しながら、高精度にワーク枚数(2枚取り)を検出することができ、以ってワークの高速搬送の実現に貢献することができる。
【0055】
また、本実施の形態に係る搬送ワーク状態検出装置120(2枚取り検出装置122)は、ワークの上昇方向への移動速度成分が0となる位置(最高位置、上昇上限位置)に至るタイミング(ワーク上昇動作の終了のタイミング)で、搬送されてくるワークWがワークストッパ121の下端(ワーク接触部121A)に当接(接触)する構成であり、ワークWの搬送に伴うワークの移動を利用して当接させる構成であるため、ワークストッパ121それ自体を移動させるといった複雑な構成を採用する必要がないため、構成の簡略化が図れ、以ってコストの増大も抑制することができる。
【0056】
次に、本実施の形態に係る搬送ワーク状態検出装置120(搬送ワーク姿勢検出装置123)を備えたワーク搬送システム100が行うワークの姿勢の検出及びワークの搬送方法(制御方法)について、
図7のフローチャートに従い説明する。なお、当該制御は、搬送コントローラ130により実行される。
また、
図5、
図6は、
図7のフローチャートにより行われるワーク搬送システム100の動作例を示す図である。
【0057】
ステップ11では、ワーク搬送機110(搬送機)が、通常のワークの搬送制御に従って、スタック102の最上部のワークWを保持し、上昇限へ向けて移動(上昇)する。
【0058】
ステップ12では、ワークWの上面がワークストッパ121のワーク接触部121Aに当接(接触)したタイミングで、搬送ワーク姿勢検出装置123により搬送中のワークWの姿勢を検出する。具体的には、搬送ワーク姿勢検出装置123は、カメラ123A等の撮影データに基づく画像解析等により、水平面におけるワーク搬送方向軸Xに関するワークWの姿勢を検出し(
図7参照)、ワーク保持ユニット114が保持しているワークWは正規の位置に保持されているか否かを検出する。
Yes(姿勢が正常)の場合にはステップ13へ進み、No(姿勢が異常)の場合にはステップ15へ進む。
【0059】
ステップ13では、ワーク保持ユニット114が保持しているワークWの姿勢が正常な状態であるので、そのまま通常のワーク搬送動作(制御)を継続して、次工程のプレス機械200へワークWを搬送して、下型201(金型)へワークWを搬送(投入、供給)する。
【0060】
続く、ステップ14では、ワークWの搬送が終了したので、ワーク搬送機110のワーク保持ユニット114を、プレス機械200からスタック102(スタッカ101)へ向けて移動させて、次のワークWの搬送のために、ステップ1へ戻る。
【0061】
この一方、ステップ15では、ワーク保持ユニット114が保持しているワークWの姿勢は異常な状態であるので(
図7参照)、ワーク保持ユニット114が保持しているワークWの姿勢が所定となるように(正規位置とのズレ量(傾斜角)Yが0となるように)、第2アーム113に対するワーク保持ユニット114の相対位置(第3関節C廻りの相対回転角度位置)を変化させることでワークの姿勢を正常な状態に修正(補正)しつつ(
図6参照)、次工程のプレス機械200へワークWを搬送して、下型201(金型)へワークWを搬送(投入、供給)した後、ステップ14へ進んだ後、次のワークWの搬送のために、ステップ1へ戻る。
【0062】
このように、本実施の形態に係るワーク搬送システム100によれば、搬送ワーク状態検出装置120を備え、ワーク搬送機110が、通常のワークの搬送動作(制御)に従ってワークWを搬送する途中のワークWの上昇速度成分が0(ゼロ)となるタイミング、具体的には、「ワーク搬送機110がスタック102の最上部のワークWを保持し上昇限へ向けて移動(上昇)し、ワークWの上面がワークストッパ121のワーク接触部121Aに当接(接触)したタイミング」で、搬送ワーク姿勢検出装置123により、ワークの姿勢を検出するようにしたので、従来のように、ワーク搬送を遅らせるようなワークの姿勢検出のための専用の工程(ワークの姿勢検出のためにワーク搬送途中でワークを停止させるような工程)を設ける必要がないため、ワークの高速搬送に対する要求に応えながら、高精度にワークの姿勢を検出することができる。
【0063】
すなわち、本実施の形態によれば、簡単かつ低コストな構成でありながら、ワークの姿勢の検出を効率良く正確に行わせることができ、以ってワークの高速搬送の要求に応えることができるワーク搬送システムを提供することができる。
【0064】
そして、本実施の形態によれば、ワークの高速搬送に対する要求に応えながら高精度にワークの姿勢を検出することができるため、ワークの姿勢が正常でない状態のまま次工程のプレスマシンなどにワークを搬送してしまうことにより発生する様々な不具合を未然に防止することが可能である。
【0065】
特に、本実施の形態に係る搬送ワーク状態検出装置120(搬送ワーク姿勢検出装置123)は、通常のワークの搬送動作(制御)に従ってワーク保持ユニット114に保持されて持ち上げられ上昇してくるワークWが、その上昇方向への移動速度成分が0となる位置(最高位置、上昇上限位置)に至ったタイミング、例えば、ワークの搬送速度成分に関し上昇方向の移動速度成分が0となり水平方向への移動速度成分のみへと切り替わるタイミングを有効活用してワークの姿勢を検出するので、従来のように、ワークの上昇方向や水平方向への搬送動作の途中において、ワーク姿勢検出のために減速から加速などへワーク搬送の加速度が切り替わる(特別に変化される)ようなことがないため、ワーク保持ユニット114が支持するワークWに搬送には本来必要のない不必要な慣性力が作用することがなく、ワーク保持ユニット114延いてはワーク搬送機110の構成の簡略化、軽量化、低コストを維持しながらワークの高速搬送の実現に貢献することができる。
【0066】
また、本実施の形態に係る搬送ワーク状態検出装置120(搬送ワーク姿勢検出装置123)は、通常のワークの搬送動作(制御)に従ってワーク保持ユニット114に保持されて持ち上げられ上昇してくるワークWが、その上昇方向への移動速度成分が0となる位置(最高位置、上昇上限位置)に至ったタイミング、例えば、ワークの搬送速度成分に関し上昇方向の移動速度成分が0となり水平方向への移動速度成分のみへと切り替わるタイミングを有効活用してワークの姿勢を検出するので、スタック102の最上部からワークWを持ち上げて次工程へ搬入するまでのワーク搬送に要する時間が増大することを抑制しながら、高精度にワークの姿勢を検出することができ、以ってワークの高速搬送の実現に貢献することができる。
【0067】
また、本実施の形態に係る搬送ワーク状態検出装置120(搬送ワーク姿勢検出装置123)は、ワークの上昇方向への移動速度成分が0となる位置(最高位置、上昇上限位置)に至るタイミング(ワーク上昇動作の終了のタイミング)で、搬送されてくるワークWがワークストッパ121の下端(ワーク接触部121A)に当接(接触)する構成であり、ワークWの搬送に伴うワークの移動を利用して当接させる構成であるため、ワークストッパ121それ自体を移動させるといった複雑な構成を採用する必要がないため、構成の簡略化が図れ、以ってコストの増大も抑制することができる。
【0068】
なお、上記では、搬送ワーク状態検出装置120に関し、2枚取り検出装置122と、搬送ワーク姿勢検出装置123と、を別々に説明したが、同時に備えることが可能である。
同時に備える場合の「2枚取り検出」と「ワークの姿勢検出」とワーク搬送の制御方法について、
図8のフローチャートに従って、以下に説明する。
【0069】
ステップ21では、
図4のS1と同様に、ワーク搬送機110(搬送機)が、通常のワークの搬送動作(制御)に従って、スタック102の最上部のワークWを保持し、上昇限へ向けて移動(上昇)する。
【0070】
ステップ22では、
図4のS2と同様に、ワークWの上面がワークストッパ121のワーク接触部121Aに当接(接触)したタイミングで、2枚取り検出装置122により2枚取り(ダブルワーク)を検出する。
Yes(1枚取り:正常)の場合にはステップ23へ進み、No(2枚取り:異常)の場合にはステップ26へ進む。
【0071】
ステップ23では、上記ステップ22と同じタイミングで、
図7のS12と同様に、搬送ワーク姿勢検出装置123により搬送中のワークWの姿勢を検出する。
Yes(姿勢が正常)の場合にはステップ24へ進み、No(姿勢が異常)の場合にはステップ28へ進む。
【0072】
ステップ24では、ワーク保持ユニット114が保持しているワークWは1枚である正常な状態であると共にワークの姿勢も正常であるので、そのまま通常のワーク搬送動作(制御)を継続して、次工程のプレス機械200へワークWを搬送して、下型201(金型)へワークWを搬送(投入、供給)する。
【0073】
続く、ステップ25では、ワークWの搬送が終了したので、ワーク搬送機110のワーク保持ユニット114を、プレス機械200からスタック102(スタッカ101)へ向けて移動させて、次のワークWの搬送のために、ステップ1へ戻る。
【0074】
この一方、ステップ22でNo判定(2枚取り判定)された場合に進むステップ26では、
図4のS5と同様に、ワーク保持ユニット114が保持しているワークWは2枚(或いはそれ以上)である異常な状態(所謂2枚取り状態)であるので、通常のワーク搬送を行うことなく(停止して)、ワーク保持ユニット114が保持している複数のワークWを回収ボックス140へ搬送して回収ボックス140内に複数のワークWを解放(排出)して、ステップ27へ進む。
【0075】
ステップ27では、
図4のS6と同様に、ワーク搬送機110のワーク保持ユニット114を、回収ボックス140からスタック102(スタッカ101)へ向けて移動させて、次のワークWの搬送のために、ステップ1へ戻る。
【0076】
また、ステップ23でNo判定(姿勢異常判定)された場合に進むステップ28では、
図7のS15と同様に、ワーク保持ユニット114が保持しているワークWの姿勢は異常な状態であるので、ワーク保持ユニット114が保持しているワークWの姿勢が所定となるように(正規位置とのズレ量(傾斜角)Yが0となるように)、第2アーム113に対するワーク保持ユニット114の相対位置(第3関節C廻りの相対回転角度位置)を変化させることでワークの姿勢を正常な状態に修正(補正)しつつ(
図6参照)、次工程のプレス機械200へワークWを搬送して、下型201へワークWを搬送(投入、供給)した後、ステップ25へ進んだ後、次のワークWの搬送のために、ステップ21へ戻る。
【0077】
なお、
図8のフローチャートでは、2枚取りの検出(判定)とワークの姿勢検出(判定)の間に時間的な前後関係が存在するように表現されておりますが、実際には、両検出(判定)にそのような関係はなく、ほぼ同時に行うことができるものであります。
【0078】
すなわち、
図8のフローチャートは、「2枚取り検出(判定)の後にワークの姿勢検出(判定)を行う」というフローを説明しているわけではなく、「1枚取りの場合(2枚取りでない場合)には、ワーク姿勢が正規の位置(所望の幅を持った所定位置)で保持されているかどうかによって搬送態様が異なる」ということを示すものである。
【0079】
以上のように、本実施の形態に係るワーク搬送システム100によれば、搬送ワーク状態検出装置120を備え、ワーク搬送機110が、通常のワークの搬送動作(制御)に従ってワークWを搬送する途中のワークWの上昇速度成分が0(ゼロ)となるタイミング、具体的には、「ワーク搬送機110がスタック102の最上部のワークWを保持し上昇限へ向けて移動(上昇)し、ワークWの上面がワークストッパ121のワーク接触部121Aに当接(接触)したタイミング」で、2枚取り検出装置122及び搬送ワーク姿勢検出装置123により、ワークの2枚取りの有無及びワークの姿勢を検出するようにしたので、従来のように、ワーク搬送を遅らせるようなワークの姿勢検出のための専用の工程(ワークの姿勢検出のためにワーク搬送途中でワークを停止させるような工程)を設ける必要がないため、ワークの高速搬送に対する要求に応えながら、高精度にワークの2枚取り及びワークの姿勢を検出することができる。
【0080】
すなわち、本実施の形態によれば、簡単かつ低コストな構成でありながら、ワークの2枚取り検出やワークの姿勢検出を効率良く正確に行わせることができ、以ってワークの高速搬送の要求に応えることができるワーク搬送システムを提供することができる。
【0081】
そして、本実施の形態によれば、ワークの高速搬送に対する要求に応えながら高精度にワークの2枚取り及びワークの姿勢を検出することができるため、ワークの2枚取り状態のまま及びワークの姿勢が正常でない状態のまま次工程のプレスマシンなどにワークを搬送してしまうことにより発生する様々な不具合を未然に防止することが可能である。
【0082】
特に、本実施の形態に係る搬送ワーク状態検出装置120(2枚取り検出装置122及び搬送ワーク姿勢検出装置123)は、通常のワークの搬送動作(制御)に従ってワーク保持ユニット114に保持されて持ち上げられ上昇してくるワークWが、その上昇方向への移動速度成分が0となる位置(最高位置、上昇上限位置)に至ったタイミング、例えば、ワークの搬送速度成分に関し上昇方向の移動速度成分が0となり水平方向への移動速度成分のみへと切り替わるタイミングを有効活用してワークの2枚取り及びワークの姿勢を検出するので、従来のように、ワークの上昇方向や水平方向への搬送動作の途中において、ワーク姿勢検出のために減速から加速などへワーク搬送の加速度が切り替わる(特別に変化される)ようなことがないため、ワーク保持ユニット114が支持するワークWに搬送には本来必要のない不必要な慣性力が作用することがなく、ワーク保持ユニット114延いてはワーク搬送機110の構成の簡略化、軽量化、低コストを維持しながらワークの高速搬送の実現に貢献することができる。
【0083】
また、本実施の形態に係る搬送ワーク状態検出装置120(2枚取り検出装置122及び搬送ワーク姿勢検出装置123)は、通常のワークの搬送動作(制御)に従ってワーク保持ユニット114に保持されて持ち上げられ上昇してくるワークWが、その上昇方向への移動速度成分が0となる位置(最高位置、上昇上限位置)に至ったタイミング、例えば、ワークの搬送速度成分に関し上昇方向の移動速度成分が0となり水平方向への移動速度成分のみへと切り替わるタイミングを有効活用してワークの2枚取り及びワークの姿勢を検出するので、スタック102の最上部からワークWを持ち上げて次工程へ搬入するまでのワーク搬送に要する時間が増大することを抑制しながら、高精度にワークの姿勢を検出することができ、以ってワークの高速搬送の実現に貢献することができる。
【0084】
また、本実施の形態に係る搬送ワーク状態検出装置120(2枚取り検出装置122及び搬送ワーク姿勢検出装置123)は、ワークの上昇方向への移動速度成分が0となる位置(最高位置、上昇上限位置)に至るタイミング(ワーク上昇動作の終了のタイミング)で、搬送されてくるワークWがワークストッパ121の下端(ワーク接触部121A)に当接(接触)する構成であり、ワークWの搬送に伴うワークの移動を利用して当接させる構成であるため、ワークストッパ121それ自体を移動させるといった複雑な構成を採用する必要がないため、構成の簡略化が図れ、以ってコストの増大も抑制することができる。
【0085】
なお、本実施の形態においては、複数枚のシート状のワークWを積層したスタックからワークを取り出して次工程のプレス機械へ供給する場合について説明したが、本発明に係るワーク搬送システムは、プレス機械へのワークの供給に限定されるものではなく、シート状の部材を搬送するものであれば次工程は特に限定されるものではない。また、本発明においてワークの材質は金属に限定されるのもではなく、紙、ガラス、樹脂、木その他の材質にも適用可能である。
【0086】
また、本実施の形態に係るワーク搬送システム100では、上下方向に移動可能な昇降フレーム111と、水平面内で揺動自在な第1アーム112と、水平面内で揺動自在な第2アーム113と、水平面内で揺動可能自在なワーク保持ユニット114と、を含んで構成するワーク搬送機110を例示して説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、例えば、引用文献1に示されるような多関節ロボットを利用したワーク搬送機、その他のワーク搬送機を採用することが可能である。
【0087】
また、本実施の形態に係る搬送ワーク状態検出装置120では、搬送中のワークWの上昇方向への移動速度成分が0(ゼロ)となるタイミング(検出タイミング)のときに検出することで、ワークの厚さ延いては2枚取りなどを高精度に検出できるとして説明したが、このタイミング(検出タイミング)は、ワークWを垂直に持ち上げる際の上昇方向への移動速度成分が0(ゼロ)となるタイミング(検出タイミング)に限定されるものではなく、本発明は、ワークWを水平方向への移動を伴いながら上昇させる場合(すなわち、水平方向への移動速度成分と、上昇方向への移動速度成分と、が合成されている場合)における上昇方向への移動速度成分が0(ゼロ)となるタイミング(検出タイミング)にも適用可能である。
【0088】
以上で説明した本発明に係る実施の形態は、本発明を説明するための例示に過ぎず、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において、種々変更を加え得ることは可能である。
【産業上の利用可能性】
【0089】
本発明は、簡単かつ低コストな構成でありながら、ワークの2枚取り検出やワークの姿勢検出を効率良く正確に行わせることができ、以ってワークの高速搬送の要求に応えることができるワーク搬送システムを提供することができ有益である。また、当該ワーク搬送システムに好適な搬送ワーク枚数検出装置、及びワーク搬送システムの制御方法を提供することができ有益である。
【符号の説明】
【0090】
100 ワーク搬送システム
101 スタッカ
102 スタック
110 ワーク搬送機(搬送機)
111 昇降フレーム
112 第1アーム
113 第2アーム
114 ワーク保持ユニット
120 搬送ワーク状態検出装置
121 ワークストッパ
121A ワーク接触部
122 2枚取り検出装置(搬送ワーク枚数検出装置)
122A カメラ(撮像装置)
122B レーザー(厚さ計測装置)
123 搬送ワーク姿勢検出装置
123A カメラ(撮像装置)
130 搬送コントローラ(制御装置)
200 プレス機械(次工程)
W ワーク(シート状或いは板状ワーク)