(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-02-08
(45)【発行日】2022-02-17
(54)【発明の名称】ストッパ
(51)【国際特許分類】
B22D 41/18 20060101AFI20220209BHJP
【FI】
B22D41/18
(21)【出願番号】P 2019063135
(22)【出願日】2019-03-28
【審査請求日】2020-12-25
(73)【特許権者】
【識別番号】320005154
【氏名又は名称】日本製鋼所M&E株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100140671
【氏名又は名称】大矢 正代
(73)【特許権者】
【識別番号】000220767
【氏名又は名称】東京窯業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100140671
【氏名又は名称】大矢 正代
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 忠
(72)【発明者】
【氏名】生方 貴
(72)【発明者】
【氏名】村山 明浩
(72)【発明者】
【氏名】川崎 正清
(72)【発明者】
【氏名】柳 憲治
(72)【発明者】
【氏名】古澤 栄二
【審査官】中西 哲也
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-075943(JP,A)
【文献】特開2008-080397(JP,A)
【文献】特開2014-034052(JP,A)
【文献】特表2008-506536(JP,A)
【文献】実開昭61-027554(JP,U)
【文献】実開昭60-052052(JP,U)
【文献】実開昭50-155314(JP,U)
【文献】特表2008-540130(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B22D 11/10
B22D 41/18
F27D 3/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
溶融金属を収容する容器から、該容器の底部に設けられたノズルを介して排出される溶融金属の流量を、前記ノズルをヘッド部で閉塞する度合いによって調整すると共に、排出される溶融金属にガスの吹き込みを行うストッパであって、
内部にガスを流通させる円筒状または楕円筒状の芯金と、
該芯金の下端部の外周面を被覆しているセラミックス焼結体層と、
該セラミックス焼結体層の外周面及び上端面と、前記芯金の外周面とを被覆している耐火物層と、を具備し、
該耐火物層は、下端部が連続的に湾曲しつつ膨出している形状で前記ヘッド部を構成していると共に、少なくとも溶融金属に浸漬される浸漬部が、前記ヘッド部を含めてキャスタブル耐火材料によって形成された不定形耐火物層の一体構造物であり、
前記セラミックス焼結体層は、セラミックス繊維を含有していないと共に、
前記セラミックス焼結体層の外周面は、下端に向かって縮径している縮径面部と下端に向かって拡径している拡径面部とが隣接していることにより、その間が凹状となった凹面部を少なくとも一つ有しており、
前記セラミックス焼結体層の下端面は、前記拡径面部と隣接している
と共に、
前記セラミックス焼結体層の下端面は、前記ヘッド部の外表面と連続している湾曲面である
ことを特徴とするストッパ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鋳造時に取鍋等の容器から排出される溶融金属の流量を調整すると共に、溶融金属にガスの吹き込みを行うストッパに関するものである。
【背景技術】
【0002】
鋳造には、取鍋で移送された溶融金属を取鍋から排出して鋳型へ直接注入する場合や、取鍋から排出した溶融金属をタンディッシュ等の中間容器を介して鋳型へ注入する場合があるが、取鍋やタンディッシュ等の容器から溶融金属を排出する際に、ストッパが用いられている。容器の底部に設けられたノズルを、ストッパのヘッド部で閉塞する度合いにより、溶融金属の流量が調整される。
【0003】
このストッパの中には、内部にガス流通路を有し、アルゴン等の不活性ガスや窒素ガスを溶融金属に吹き込むタイプがある。溶融金属がノズルに流入する際には、その流れに伴って負圧が発生して空気が巻き込まれることにより、溶融金属が酸化するおそれがあるところ、ストッパを介してアルゴン等のガスを吹き込むことにより、溶融金属の酸化が防止される。また、鋳型が設置された槽を減圧し、この減圧槽内に溶融金属を注入する際にガス吹き込みタイプのストッパを用いることにより、ガスの吹き込みによって溶融金属の粒滴を微細化し、効果的に脱水素、脱窒素等の脱ガスを行う精錬も行われている。
【0004】
従前のガス吹き込みタイプのストッパは、ガス流通路を構成する管状の芯金の外周面が耐火煉瓦で被覆されていた。より具体的には、ストッパの被覆層は、スリーブ状の耐火煉瓦の複数と、耐火煉瓦で形成されたヘッド部とからなり、これらの耐火煉瓦同士がモルタルで接合されていることにより、隣接する耐火煉瓦の間に目地部が形成されているものであった。
【0005】
ストッパは極めて高温の溶融金属に浸漬された際に膨張するが、金属製の芯金の熱膨張率は耐火物に比べて極めて大きい。そのため、従前のストッパでは、芯金の熱膨張に伴い、耐火煉瓦間の目地部に開きが生じる。そして、開いた目地部を介して溶融金属が浸入することにより芯金が溶損し、芯金を流通するガスが溶損部から噴出して溶融金属を飛散させるおそれがあった。
【0006】
そこで、本出願人は過去に、芯金の溶損が抑制されているガス吹き込みタイプのストッパを提案している(特許文献1参照)。これは、芯金の外周面を被覆している耐火物層のうち、少なくとも溶融金属に浸漬される浸漬部を、ヘッド部も含めて、キャスタブル耐火材料によって形成された不定形耐火物層の一体構造物としたものである。
【0007】
このような構成のストッパは、少なくとも溶融金属に浸漬される浸漬部において、耐火物層に目地部が存在しないため、高温の溶融金属に浸漬された際に芯金が熱膨張したとしても、目地部を介した溶融金属の浸入により芯金が溶損するという問題を回避することができる。また、キャスタブル耐火材料による不定形耐火物は、相当する材質の耐火煉瓦より一般的に熱伝導率が低いため、高温の溶融金属から芯金への伝熱を抑制し、芯金の熱膨張を低減することができる。
【0008】
加えて、従前のストッパでは、ヘッド部の耐火煉瓦とスリーブ状の耐火煉瓦との間に存在する目地部の開きによって、ヘッド部が脱落するおそれがあった。特に、ノズルをヘッド部で閉塞している状態でヘッド部が脱落すると、溶融金属の流量調整ができなくなる。これに対し、特許文献1のストッパは、少なくとも浸漬部における耐火物層が、ヘッド部も含めてキャスタブル耐火材料による不定形耐火物層の一体構造物であるため、ヘッド部が脱落するおそれが大幅に低減されているという利点を有している。
【0009】
従って、特許文献1のストッパは、従前のストッパに比べて、使用時間を大幅に延長することができ、長時間にわたる大規模な鋳造に使用することが可能である。しかしながら、特許文献1のストッパも、ヘッド部の下端部が損傷し易い点で、改善の余地を有するものであった。
【0010】
具体的には、
図4に模式的に示すように、ヘッド部122の不定形耐火物層120が、芯金110の下端開口115の周縁で、部分的に失われるように損傷し易いという問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
そこで、本発明は、上記の実情に鑑み、容器の底部のノズルから排出される溶融金属の流量を、ヘッド部でノズルを閉塞する度合いによって調整すると共に、排出される溶融金属にガスの吹き込みを行うストッパであって、ヘッド部の下端部の損傷が抑制されているストッパの提供を、課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記の課題を解決するため、本発明にかかるストッパは、
「溶融金属を収容する容器から、該容器の底部に設けられたノズルを介して排出される溶融金属の流量を、前記ノズルをヘッド部で閉塞する度合いによって調整すると共に、排出される溶融金属にガスの吹き込みを行うストッパであって、
内部にガスを流通させる円筒状または楕円筒状の芯金と、
該芯金の下端部の外周面を被覆しているセラミックス焼結体層と、
該セラミックス焼結体層の外周面及び上端面と、前記芯金の外周面とを被覆している耐火物層と、を具備し、
該耐火物層は、下端部が連続的に湾曲しつつ膨出している形状で前記ヘッド部を構成していると共に、少なくとも溶融金属に浸漬される浸漬部が、前記ヘッド部を含めてキャスタブル耐火材料によって形成された不定形耐火物層の一体構造物であり、
前記セラミックス焼結体層は、セラミックス繊維を含有していないと共に、
前記セラミックス焼結体層の外周面は、下端に向かって縮径している縮径面部と下端に向かって拡径している拡径面部とが隣接していることにより、その間が凹状となった凹面部を少なくとも一つ有しており、
前記セラミックス焼結体層の下端面は、前記拡径面部と隣接している」ものである。
【0014】
「溶融金属を収容する容器」は、取鍋、或いはタンディッシュ等の中間容器を指している。
【0015】
「ストッパ」における「下端」及び「上端」など、本書面における「上下」は、容器の底部のノズルをストッパのヘッド部で閉塞する使用状態にあるストッパに対する「上下」である。
【0016】
図4を用いて上述したように、従来のストッパにおいてヘッド部122の不定形耐火物層120が、芯金110の下端開口115の周縁で部分的に失われるように損傷し易い原因を、本発明者らは次のように考察した。すなわち、
図5に模式的に示すように、容器の底部152bで開口しているノズル152nを、ストッパのヘッド部122で部分的に閉塞すると、ヘッド部122とノズル152nの開口縁との間隙を通って溶融金属がノズル152nに流入する(図示、一点鎖線の矢印参照)。その際、芯金110を介して溶融金属にガスGを吹き込むと(図示、点線の矢印参照)、吹き込まれたガスGがノズル152nの開口縁の近傍に当たって跳ね返ることにより、溶融金属が巻き上げられるように撹拌される(図示、実線の矢印参照)。このように、巻き上げられるように流動する溶融金属と繰り返し接触することにより、不定形耐火物層120は物理的な侵食を受ける。また、不定形耐火物層120には、溶融金属との化学的な反応による成分の溶出や、変質に起因した剥離等も生じる。これにより、巻き上げられるように流動する溶融金属と接触する部分であるヘッド部122の下端部では、芯金110の下端開口115の周縁で不定形耐火物層120が損傷する。
【0017】
これに対し、本発明のストッパは、芯金の下端部で外周面を被覆しているセラミックス焼結体層を有している。セラミックス焼結体は、キャスタブル耐火材料によって形成された不定形耐火物層より、耐熱性、高温下での機械的強度が高いと共に、耐熱衝撃性、耐スポーリング性に優れているため、溶融金属に対する耐性も高い。このようなセラミックス焼結体層が、ガスの吹き込みに伴って巻き上げられるように流動する溶融金属と接触する部分に設けられている本構成のストッパは、溶融金属と接触する部分が不定形耐火物層である従来のストッパに比べて、溶融金属との接触による損傷が大幅に抑制される。
【0018】
しかも、本構成のストッパでは、セラミックス焼結体層の外周面のうち、セラミックス焼結体層の下端面と隣接しているのは拡径面部である。すなわち、セラミックス焼結体層の下端部は、下端に向かって厚くなるように形成されている。従って、溶融金属と接触する部分である下端部でセラミックス焼結体層が厚く形成されていることによって、溶融金属との接触による損傷が、より効果的に抑制される。
【0019】
加えて、セラミックス焼結体層の上端面及び外周面は不定形耐火物層で被覆されているが、セラミックス焼結体層の外周面は少なくとも一つの凹面部を有している。この凹面部の内部には不定形耐火物層が入り込むため、セラミックス焼結体層と不定形耐火物層とが噛み合うように接合される。従って、芯金と不定形耐火物層との間に介在するセラミックス焼結体層が、不定形耐火物層と強固に一体化されるため、不定形耐火物層とセラミックス焼結体層との間に亀裂が発生するおそれや、セラミックス焼結体層が脱落するおそれが、大幅に低減されている。
【0020】
本発明にかかるストッパは、上記構成に加え、
「前記セラミックス焼結体層の下端面は、前記ヘッド部の外表面と連続している湾曲面で
ある」ものである。
【0021】
本構成では、ヘッド部の外表面とセラミックス焼結体層の下端面とを合わせて、ストッパの下端部の外形が全体的に「連続的に湾曲しつつ膨出している形状」となる。仮に、セラミックス焼結体層の下端面が平面であると、ストッパの下端部が平面となり、巻き上がるように流動する溶融金属と接触したときの抵抗が大きい。これに対し、本構成では、溶融金属がストッパの下端部の外形に沿って流れ易く、溶融金属との接触による抵抗が小さい。これにより、溶融金属との接触に起因するヘッド部の下端部の損傷が、更に効果的に抑制される。
【0022】
加えて、ヘッド部の外表面とセラミックス焼結体層の下端面とを合わせて、ストッパの下端部の外形が全体的に「連続的に湾曲しつつ膨出している形状」となっている本構成のストッパは、ノズルに挿入する深さによってノズルを閉塞する度合いを調整し易く、溶融金属の流量を調整し易い利点を有している。
【発明の効果】
【0023】
以上のように、本発明の効果として、容器の底部のノズルから排出される溶融金属の流量を、ヘッド部でノズルを閉塞する度合いによって調整すると共に、排出される溶融金属にガスの吹き込みを行うストッパであって、ヘッド部の下端部の損傷が抑制されているストッパを、提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【
図1】(a)本発明の第一実施形態のストッパの要部の縦断面図、及び、(b)
図1(a)のストッパにおけるセラミックス焼結体層の縦断面図である。
【
図2】(a)本発明の第二実施形態のストッパの要部の縦断面図、及び、(b)
図2(a)のストッパにおけるセラミックス焼結体層の縦断面図である。
【
図4】従来のストッパのヘッド部における損傷を示す縦断面図である。
【
図5】
図4のストッパの損傷の原因として考えられる現象の模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明の第一実施形態のストッパ1及び第二実施形態のストッパ1bについて、
図1乃至
図3に基づいて説明する。
【0026】
ストッパ1,1bは、
図3に示すように、取鍋51から溶融金属Mを中間容器52に排出し、更に中間容器52の底部52bに設けられたノズル52nから減圧槽53内の鋳型54に溶融金属Mを注入する場合に、ノズル52nから排出される溶融金属Mの流量を調整すると共に溶融金属Mにガスを吹き込むストッパである。すなわち、ストッパ1,1bは、いわゆる「真空上注ぎ鋳造」を行う場合に、中間容器において使用されるストッパである。
【0027】
例えば、ストッパ1,1bのヘッド部22でノズル52nを閉塞した状態で、取鍋51から溶融金属Mを排出して中間容器52内に受鋼する。そして、ストッパ1,1bを上昇させてノズル52nを開放すると、ノズル52nを介して溶融金属Mが減圧槽53内の鋳型54に注入される。このとき、ノズル52nを完全に開放せず、ヘッド部22によって部分的にノズル52nを閉塞し、その閉塞の度合いを調整することにより、中間容器52から排出される溶融金属Mの流量を調整することができる。
【0028】
また、芯金10の内部を流通させたアルゴン等のガスを、芯金10の下端開口15から溶融金属M中に吹き込むことにより、溶融金属Mがノズル52nに流入する際に発生する負圧によって空気が巻き込まれることに起因する溶融金属Mの酸化が防止される。また、鋳型54が設置された減圧槽53内に溶融金属Mが注入される際に、吹き込まれたガスによって溶融金属Mの粒滴が微細化されるため、脱水素、脱窒素等による精錬効果が高められる。
【0029】
第一実施形態のストッパ1は、
図1に示すように、内部にガスを流通させる筒状の芯金10と、芯金10の下端部で外周面を被覆しているセラミックス焼結体層30と、セラミックス焼結体層30の外周面及び上端面35bと芯金10の外周面とを被覆しており、下端部がヘッド部22を構成している耐火物層と、を具備している。
【0030】
より詳細に説明すると、芯金10は、鋼や合金鋼等の耐熱性を有する金属で、円筒状に形成されており、下端に向かって段階的に縮径している。芯金10は、その内部空間にガスを流通させることができる。芯金10に流通させる「ガス」としては、アルゴン等の不活性ガスや窒素ガスを例示することができる。
【0031】
耐火物層は、芯金10と同心の略円筒状に形成されているストッパロッド部21と、下端部のヘッド部22とから構成されている。ヘッド部22は、連続的に湾曲しつつ下方に向かって膨出している形状である。「連続的に湾曲しつつ膨出している」形状としては、半球形状や紡錘形状を例示することができる。
【0032】
耐火物層のうち、少なくとも溶融金属に浸漬される浸漬部は、ヘッド部22を含めて、キャスタブル耐火材料によって形成された不定形耐火物層20の一体構造物である。ここで、浸漬部は、
図3において長さLで表されている範囲の耐火物層であり、例えば、耐火物層の全長の1/4~2/3の長さに相当する部分とすることができる。ここで、耐火物層がキャスタブル耐火材料により形成された不定形耐火物層20の一体構造物とされる部分は、「少なくとも溶融金属に浸漬される浸漬部」であれば良く、浸漬部以外の部分は、プレキャストブロックや耐火煉瓦がモルタルで接合された構成、或いは、浸漬部以外の部分を含めて耐火物層の全体がキャスタブル耐火材料による一体構造物である構成、とすることができる。
【0033】
キャスタブル耐火材料の種類は、特に限定されるものではないが、例えば、アルミナ-シリカ質、アルミナ-マグネシア質、アルミナ-カーボン質、アルミナ-マグネシア-カーボン質、アルミナ-スピネル質のキャスタブル耐火材料を使用することができる。また、不定形耐火物層20は、キャスタブル耐火材料の粉末に、水、結合剤、硬化剤、分散剤等の調整剤を混合して調製した泥しょうを固化、乾燥させることによって形成することができる。
【0034】
セラミックス焼結体層30を構成するセラミックス材料は、特に限定されるものではないが、ムライト、アルミナ、マグネシア、スピネル等、酸化物セラミックスを好適に使用することができる。
【0035】
セラミックス焼結体層30は、円筒状の芯金10の下端部でその外周面を被覆しているため筒状であり、外周面に凹凸を有している。具体的には、セラミックス焼結体層30の外周面は、下端に向かって縮径している縮径面部32と下端に向かって拡径している拡径面部31とが隣接していることにより、その間が凹状となった凹面部33を有している。第一実施形態のストッパ1は、隣接している拡径面部31と縮径面部32、及びこれらの間に形成される凹面部33の組合せを、二つ備えている。
【0036】
また、セラミックス焼結体層30において、その下端面35aは、二つの拡径面部31のうち、下端側の拡径面部31と隣接している。つまり、セラミックス焼結体層30の外周面の下端部は、下端に向かって拡径している。加えて、セラミックス焼結体層30の下端面35aは、ヘッド部22の外表面22sと連続している湾曲面である。
【0037】
なお、セラミックス焼結体層30は、例えば、上記形状に対応させた成形型を使用して乾式成形または湿式成形した成形体を、焼成することにより形成することができる。或いは、押出成形によって円筒状の成形体を成形し、焼成前または焼成後に外周面を上記形状に切削加工することにより形成することができる。
【0038】
不定形耐火物層20は、その外形を規定する成形型の中央に芯金10を配し、芯金10の一端側に筒状のセラミックス焼結体層30が嵌め込まれた状態を保持しつつ、キャスタブル耐火材料を水、結合剤、硬化剤、分散剤等の調整剤と混合した泥しょうを成形型に流し込んで成形し、固化させた後乾燥させることにより形成することができる。
【0039】
上記構成のストッパ1は、芯金10の下端部で外周面を被覆しているセラミックス焼結体層30を有しており、セラミックス焼結体層30は、不定形耐火物層20より溶融金属に対する耐性が高い。そして、ストッパ1では、ガスの吹き込みに伴って巻き上げられるように流動する溶融金属と接触するのは、主にセラミックス焼結体層30であるため、溶融金属と接触する部分が不定形耐火物層20である従来のストッパと比べて、溶融金属との接触によるヘッド部22の下端部の損傷が抑制されている。
【0040】
しかも、ストッパ1では、セラミックス焼結体層30の下端面35aと隣接しているのが拡径面部31であることにより、溶融金属と接触する部分である下端部で、下端に向かうほどセラミックス焼結体層30が厚くなるように形成されている。従って、溶融金属との接触による損傷が、より効果的に抑制されている。
【0041】
加えて、セラミックス焼結体層30の上端面及び外周面は不定形耐火物層20で被覆されているが、セラミックス焼結体層30の外周面は凹面部33を有している。この凹面部33の内部に不定形耐火物層20が入り込んでいることにより、セラミックス焼結体層30と不定形耐火物層20とが噛み合うように接合されているため、芯金10と不定形耐火物層20との間に介在するセラミックス焼結体層30が、不定形耐火物層20と強固に一体化されている。
【0042】
特に、本実施形態では、複数の凹面部33を有しているため、セラミックス焼結体層30と不定形耐火物層20とが噛み合う接合が、より強固である。加えて、隣接している拡径面部31と縮径面部32、及びこれらの間に形成される凹面部33の組合せを複数有していることにより、隣接する拡径面部31と縮径面部32との間に凸面部34をも有している。この凸面部34は不定形耐火物層20に食い込むため、セラミックス焼結体層30と不定形耐火物層20とが噛み合う接合が、より一層強固である。
【0043】
また、セラミックス焼結体層30の下端面35aが、ヘッド部22の外表面22sと連続している湾曲面であることにより、ストッパ1の下端部の外形の全体が連続的に湾曲しつつ膨出している形状となっている。そのため、流動する溶融金属と接触したときの抵抗が小さく、溶融金属との接触に起因するヘッド部22の下端部の損傷が、更に効果的に抑制されている。
【0044】
次に、第二実施形態のストッパ1bについて、
図2を用いて説明する。第一実施形態のストッパ1と同様の構成については同一の符号を付し、詳細な説明は省略する。ストッパ1bがストッパ1と相違する点は、セラミックス焼結体層30,30bの外周面の形状である。ストッパ1bのセラミックス焼結体層30bは、縮径面部32及び拡径面部31をそれぞれ一つ有しており、これらの間に形成される凹面部33も一つである。
【0045】
このような構成のストッパ1bによっても、第一実施形態のストッパ1と同様の作用効果を得ることができる。セラミックス焼結体層30,30bと不定形耐火物層20とが噛み合う作用は、凹面部33を複数有するストッパ1の方が大きいが、ストッパ1bのセラミックス焼結体層30bはストッパ1のセラミックス焼結体層30より、容易に製造できる利点がある。
【0046】
以上、本発明について好適な実施形態を挙げて説明したが、本発明は上記の実施形態に限定されるものではなく、以下に示すように、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、種々の改良及び設計の変更が可能である。
【0047】
例えば、上記の実施形態では、セラミックス焼結体層30の外周面に凹面部33を二つ有するストッパ1と、セラミックス焼結体層30bの外周面に凹面部33を一つ有するストッパ1bとを例示したが、セラミックス焼結体層の外周面における凹面部33の数は、一つ以上であれば限定されるものではない。ストッパの用途や要請されるサイズ等に応じて、セラミックス焼結体層の外周面の形状を設定することができる。
【0048】
また、上記では、真空上注ぎ鋳造の中間容器においてストッパ1,1bを使用する場合を例示したが、これに限定されない。例えば、取鍋から鋳型に溶融金属を直接注入する場合や、常圧鋳造において溶融金属の流量調整及びガス吹き込みのために使用されるストッパとして、本発明のストッパを使用することができる。
【符号の説明】
【0049】
1,1b ストッパ
10 芯金
20 不定形耐火物層
21 ストッパロッド部
22 ヘッド部
22s ヘッド部の外表面
30,30b セラミックス焼結体層
31 拡径面部
32 縮径面部
33 凹面部
35a 下端面(セラミックス焼結体層の下端面)
35b 上端面(セラミックス焼結体層の上端面)
M 溶融金属