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特許7022099基本セル及びこのような基本セルを備えるチャージポンプ
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-02-08
(45)【発行日】2022-02-17
(54)【発明の名称】基本セル及びこのような基本セルを備えるチャージポンプ
(51)【国際特許分類】
   H02M 3/07 20060101AFI20220209BHJP
【FI】
H02M3/07
【請求項の数】 5
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2019097323
(22)【出願日】2019-05-24
(65)【公開番号】P2019213449
(43)【公開日】2019-12-12
【審査請求日】2019-05-24
【審判番号】
【審判請求日】2021-04-22
(31)【優先権主張番号】18175744.4
(32)【優先日】2018-06-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】596162740
【氏名又は名称】イーエム・ミクロエレクトロニク-マリン・エス アー
(74)【代理人】
【識別番号】100098394
【弁理士】
【氏名又は名称】山川 茂樹
(74)【代理人】
【識別番号】100153006
【弁理士】
【氏名又は名称】小池 勇三
(72)【発明者】
【氏名】マテュー・クスタン
(72)【発明者】
【氏名】ルボミール・プラヴェツ
(72)【発明者】
【氏名】マリオ・デッラ
【合議体】
【審判長】田中 秀人
【審判官】篠原 功一
【審判官】山澤 宏
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-184879(JP,A)
【文献】特開2015-126595(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02M 3/00-3/44
H03K 17/00-17/70
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基本ポンピングセル(CE1)であって、前記基本ポンピングセル(CE1)は:
‐入力電圧(Vin)を受信するよう配設された入力端子(E)、第1のクロック信号(CK1)を受信するよう配設されたクロック端子(H)、及び出力端子(S);
‐前記クロック端子に接続された第1の端子及び第2の端子を備える、第1のキャパシタ(C1);
‐前記入力端子(E)に連結された第1のソース/ドレイン端子、第2のソース/ドレイン端子、及びゲート端子を備える、第1のトランジスタ(A1);
‐前記基本ポンピングセルの前記出力端子に連結された第1のソース/ドレイン端子、前記入力端子に連結された第2のソース/ドレイン端子、及び前記第1のキャパシタ(C1)の前記第2の端子に連結されたゲート端子を備える、第2のトランジスタ(A2);
‐前記第2のトランジスタ(A2)の前記第1のソース/ドレイン端子に連結された第1のソース/ドレイン端子、前記第2のトランジスタ(A2)の前記ゲート端子に連結された第2のソース/ドレイン端子、及び前記入力端子に連結されたゲート端子を備える、第3のトランジスタ(A3);並びに
‐前記第1のトランジスタ(A1)の前記第2のソース/ドレイン端子に連結された第1のソース/ドレイン端子、前記第2のトランジスタ(A2)及び第3のトランジスタ(A3)の前記第1のソース/ドレイン端子に連結された第2のソース/ドレイン端子、並びに前記入力端子に連結されたゲート端子を備える、第4のトランジスタ(A4)
を備え、
前記基本ポンピングセルは、前記第1のトランジスタ(A1)の前記ゲート端子が、前記第2のトランジスタ(A2)の前記ゲート端子に連結され
前記第1のトランジスタ(A1)、前記第2のトランジスタ(A2)、前記第3のトランジスタ(A3)及び前記第4のトランジスタ(A4)は、PMOSタイプのトランジスタである、
ことを特徴とする、基本ポンピングセル(CE1)。
【請求項2】
前記第1のトランジスタ(A1)、前記第2のトランジスタ(A2)、前記第3のトランジスタ(A3)及び前記第4のトランジスタ(A4)はそれぞれウェル端子を備え、前記ウェル端子は、前記第1のトランジスタ(A1)の前記第2のソース/ドレイン端子において一体に連結される、請求項1に記載の基本ポンピングセル。
【請求項3】
チャージポンプハーフセルであって、前記チャージポンプハーフセルは:
‐第1のクロック信号(CK1)を受信するよう構成されたクロック端子(H)、及び出力端子(S)を備える、請求項1または2に記載の基本ポンピングセル(CE1);
‐第2のクロック信号(CK2)を受信するよう構成された第1の端子、及び第2の端子を備える、第2のキャパシタ(C2);
‐第3のクロック信号(CK3)を受信するよう構成された第1の端子、及び前記基本ポンピングセル(CE1)の前記出力端子(S)に連結された第2の端子を備える、第3のキャパシタ(C3);
‐前記CPハーフセルの出力端子(Vout)に連結された第1のソース/ドレイン端子、前記基本ポンピングセル(CE1)の前記出力端子(S)に連結された第2のソース/ドレイン端子、及び前記第2のキャパシタ(C2)の前記第2の端子に連結されたゲート端子を備える、PMOSタイプの第5のトランジスタ(A5)
を備える、チャージポンプハーフセル。
【請求項4】
Dickson型チャージポンプであって、前記Dickson型チャージポンプは:
‐請求項1または2に従って製造された第1の基本ポンピングセル(CE11)及び第2の基本ポンピングセル(CE12)であって、各前記基本ポンピングセル(CE11、CE12)は、入力端子(E1、E2)、クロック端子(H1、H2)及び出力端子(S1、S2)を備え、前記第2の基本ポンピングセル(CE12)の前記入力端子(E2)は、前記第1の基本ポンピングセル(CE11)の前記出力端子(S1)に連結される、第1の基本ポンピングセル(CE11)及び第2の基本ポンピングセル(CE12);
‐第4のクロック信号(CK11)を受信するよう構成された第1の端子、及び前記第1の基本ポンピングセル(CE11)の前記出力端子(S1)に連結された第2の端子を備える、第4のキャパシタ(C11);
‐第5のクロック信号(CK12)を受信するよう構成された第1の端子、及び前記第2の基本ポンピングセル(CE12)の前記出力端子(S2)に連結された第2の端子を備える、第5のキャパシタ(C12)
を備える、Dickson型チャージポンプ。
【請求項5】
クロスカップルドタイプチャージポンプであって、前記クロスカップルドタイプチャージポンプは:
‐請求項1または2のいずれか1項に従って製造された第1の基本ポンピングセル(CE21)及び第2の基本ポンピングセル(CE22)であって、各前記基本ポンピングセル(CE21、CE22)は、入力端子(E1、E2)、クロック端子(H1、H2)及び出力端子(S1、S2)を備え、前記第2の基本ポンピングセル(CE22)の前記入力端子(E2)は前記第1の基本ポンピングセル(CE21)の前記入力端子(E1)に連結され、前記第1の基本ポンピングセル(CE21)の前記クロック端子(H1)は第1のクロック信号(CK1)を受信するよう構成され、前記第2の基本ポンピングセル(CE22)の前記クロック端子(H2)は第2のクロック信号(CK2)を受信するよう構成される、第1の基本ポンピングセル(CE21)及び第2の基本ポンピングセル(CE22);
‐第6のクロック信号(CK21)を受信するよう構成された第1の端子、及び前記第2の基本ポンピングセル(CE22)の前記出力端子(S2)に連結された第2の端子を備える、第6のキャパシタ(C21);
‐第7のクロック信号(CK22)を受信するよう構成された第1の端子、及び前記第1の基本ポンピングセル(CE21)の前記出力端子(S1)に連結された第2の端子を備える、第7のキャパシタ(C22);
‐前記クロスカップルドタイプチャージポンプの出力端子(Vout)に連結された第1のソース/ドレイン端子、前記第1の基本ポンピングセル(CE21)の前記出力端子(S1)に連結された第2のソース/ドレイン端子、及び前記第6のキャパシタ(C21)の前記第2の端子に連結されたゲート端子を備える、PMOSタイプの第6のトランジスタ(A21);
‐前記クロスカップルドタイプチャージポンプの前記出力端子(Vout)に連結された第1のソース/ドレイン端子、前記第2の基本ポンピングセル(CE22)の前記出力端子(S2)に連結された第2のソース/ドレイン端子、及び前記第7のキャパシタ(C22)の前記第2の端子に連結されたゲート端子を備える、PMOSタイプの第7のトランジスタ(A22)
を備える、クロスカップルドタイプチャージポンプ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は集積回路の分野に関し、より詳細には、一次電圧源から、より大きな絶対値の二次電圧を生成する、チャージポンプ回路に関する。
【背景技術】
【0002】
多くの電子システムは、動作するために2つ以上の電源電圧レベルを必要とする。例えば、一般に単一の0.9V電源を一次電源として使用できる一部のタイプの不揮発性メモリ回路は、機能をプログラムする又は消去するために、例えば10V~15Vという更に高い電源電圧も必要とすることが多い。同様に、液晶スクリーン、高周波電力増幅器、及びある程度、スイッチトキャパシタブートストラップ回路において使用するために開発された回路は、動作するために一次電圧より高い電源電圧を必要とすることが多い。従って、追加の外部電源の必要を回避するために、集積回路の一次電源電圧から所要の電源電圧を生成するための電圧ブースト回路を、集積回路に設けることが不可欠である。そのために、一次電源電圧からより高い電圧を生成する、電圧ステップ回路又はチャージポンプ回路が開発された。
【0003】
図1a、1bは、理想的なチャージポンプセルの動作を概略的に示し、ここで出力電圧Voutは入力電圧Vinの2倍に略等しい。上記セルは:
‐入力端子E及び出力端子S(入力電圧Vinを上記入力端子に印加すると、上記出力端子上で電圧Voutが得られる)、クロック信号CKを受信するためのクロック端子H;
‐クロック端子Hに連結された第1の端子、及び第2の端子を備える、いわゆるポンピングキャパシタC;
‐上記セルの接地に連結された第1の端子、及び出力端子Sに連結された第2の端子を備える、キャパシタC’(電圧VoutはキャパシタC’の上記2つの端子の間で利用可能である);
‐キャパシタCの上記第2の端子を、クロック信号CKに応じて入力端子E又は出力端子Sに交互に連結するよう配設された、スイッチINT
を備える。
【0004】
上記チャージポンプセルの一般的な動作は以下の通りである。上記クロック信号は従来、上記回路の上記接地に対応するゼロ電位と、上記回路の一次電源電位Vddに概ね等しい高い電位との間を行き来する、周期的な矩形信号である。第1相(図1a)の間、クロック信号CKがゼロであるとき、キャパシタCの上記第1の端子は接地され、スイッチINTは、キャパシタCの上記第2の端子を、電圧Vinが印加される上記セルの入力端子Eに連結する。キャパシタCは、キャパシタCの上記第2の端子の電位がVinとなるまで、電流Iinで充電される。第2相(図1b)の間、クロック信号CKはゼロ電位からVdd電位に切り替わり、スイッチINTはトグルで切り替わって、キャパシタCの上記第2の端子をキャパシタC’の上記第2の端子に連結する。キャパシタCの上記第1の端子上の電位が0からVddに切り替わることにより、キャパシタCの上記第2の端子上の電位は、VinからVin+Vddに押し上げられる。キャパシタCの上記第2の端子上の電位は第2のキャパシタC’の上記第2の端子上の電位より大きいため、キャパシタCはキャパシタC’へと放電して電流Ioを生成し、これにより出力端子S上の電位が上昇する。上記第1相及び上記第2相は、上記クロック信号の状態の変化に従って繰り返され、これにより、定常状態の動作において、入力電位Vinから、Vinより大きい電位Vin+Vddが上記セルの出力端子において得られる。Vin=Vddを選択することにより、上記セルの上記出力端子における電位は、上記入力端子に印加される電位の2倍となる。
【0005】
例えばR. Pelliconi、D. Iezzi、A. Baroni、M. Pasotti、P. L. Rolandiによる非特許文献1に記載されている、チャージポンプのある実施形態を参照できる。しかしながらこの実施形態は、電気回路が、1タイプの伝導性を有するトランジスタを用いて製造されないため、分離されたウェルを必要とし、これは欠点を構成する。
【0006】
チャージポンプハーフセル(又はCPハーフセル)の1つの可能な実装形態が、N. Li、Z. Huan、 M. Jiang、Y. Inoueによる非特許文献2において提案されている。この文献は、基本ポンピングセルCE0を備える、図2に従ったCPハーフセルを提案し、基本ポンピングセルCE0は:
‐入力電圧Vinを受信するよう配設された入力端子E、第1のクロック信号CK1を受信するよう配設されたクロック端子H、及び出力端子S;
‐クロック端子Hに接続された第1の端子、及び第2の端子を備える、第1のキャパシタC1;
‐入力端子Eに連結された第1のソース/ドレイン端子、第2のソース/ドレイン端子、及びゲート端子を備える、第1のトランジスタA1;
‐上記基本セルの出力端子Sに連結された第1のソース/ドレイン端子、入力端子Eに連結された第2のソース/ドレイン端子、及び第1のキャパシタC1の上記第2の端子に連結されたゲート端子を備える、第2のトランジスタA2;
‐第2のトランジスタA2の上記第1のソース/ドレイン端子に連結された第1のソース/ドレイン端子、第2のトランジスタA2の上記ゲート端子に連結された第2のソース/ドレイン端子、及び入力端子Eに連結されたゲート端子を備える、第3のトランジスタA3;並びに
‐第1のトランジスタA1の上記第2のソース/ドレイン端子に連結された第1のソース/ドレイン端子、第2のトランジスタA2及び第3のトランジスタA3の上記第1のソース/ドレイン端子並びに第1のトランジスタA1の上記ゲート端子に連結された第2のソース/ドレイン端子、並びに入力端子Eに連結されたゲート端子を備える、第4のトランジスタA4
を備える。
【0007】
基本セルCE0に加えて、図2のCPハーフセルは:
‐第2のクロック信号CK2を受信するよう構成された第1の端子、及び第2の端子を備える、第2のキャパシタC2;
‐第3のクロック信号CK3を受信するよう構成された第1の端子、及び基本セルCE1の出力端子Sに連結された第2の端子を備える、第3のキャパシタC3;
‐上記CPハーフセルの出力端子Voutに連結された第1のソース/ドレイン端子、基本セルCE0の出力端子Sに連結された第2のソース/ドレイン端子、及び第2のキャパシタC2の第2の端子に連結されたゲート端子を備える、第5のトランジスタA5
も備える。
【0008】
これ以前のセル構造と比較して、図2のCPハーフセルの構造は、NMOSトランジスタとPMOSトランジスタとの組み合わせではなく、PMOSタイプのトランジスタのみを使用するという利点を提供する。従ってこれは、Nタイプ基板上に直接製造でき、NMOSトランジスタ及びPMOSトランジスタを備える回路の場合には一般的であるように、1つ又は複数のNウェルをP基板上に製造する必要がない。よって、上記セルの製造は大幅に簡略化される。
【0009】
それにもかかわらず、図2のCPハーフセルの動作は最適ではない。特に、トランジスタA1の状態の変化は完璧でない。実際、第3のクロック信号CK3がVddからゼロに下降すると、出力端子Sと接地との間の電圧V1はVoutからVout-Vdd<Vinに下降し、これによりトランジスタA3及びA4がオフに切り替わる。トランジスタA1は、オンに切り替わることが想定されるが、これは部分的なものにすぎないため、トランジスタA2のウェル電位はVinに下降できない。ウェルの効果により、トランジスタA2の伝導閾値は高くなり、トランジスタA2の切り替えが困難を伴うものとなるため、入力端子と出力端子との間の電荷移動は効率的でない。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0010】
【文献】R. Pelliconi, D. Iezzi, A. Baroni, M. Pasotti, and P. L. Rolandi, “Power efficient charge pump in deep submicron standard CMOS technology,” IEEE J. Solid‐State Circuits, vol. 38, no. 6, pp. 1068‐1071, 2003
【文献】N. Li, Z. Huan, M. Jiang and Y. Inoue, “High efficiency four‐phase all PMOS charge pump without body effect”, 2008 Int. Conf. Commun. Circuits Syst. Proceedings, ICCCAS 2008, no. 1, pp1083‐1087, 2008
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明の目的は、図2の公知の解決策に代わる解決策を提供することであり、この解決策では、基本ポンピングセルの入力端子と出力端子との間が電荷移動はより効率的となる。
【課題を解決するための手段】
【0012】
この目的のために、本発明は、請求項1の前提部分にも従いながら図2の基本セルに部分的に従った、新規の基本ポンピングセルを提案し、上記基本ポンピングセルは、第1のトランジスタのゲート端子が、図2に記載されるように基本セルの出力端子に接続されるのではなく、ここでは基本セルの第2のトランジスタのゲート端子に接続されることを特徴とする。後で更に明らかにするが、第1のトランジスタのゲート端子のこの新規の接続により、第1のクロック信号及び/又は第3のクロック信号の状態の変化が生じたときに、第1のトランジスタをより完全にオンにでき、これにより、基本セルの入力端子と第2のトランジスタのウェルとの間の電荷移動をより良好なものとすることができる。これにより、第2のトランジスタのソース/ウェル電圧のより良好な制御、及びその結果としての、第2のトランジスタに関してより良好に制御された状態変化閾値が得られる。従って基本チャージポンプセルの全体的な効率が向上する。
【0013】
基本セルのトランジスタは有利には同一タイプのものであり、好ましくはP型のものである。P型トランジスタの使用は単に、NMOSトランジスタを基板から分離するために、いわゆる三重ウェル半導体ドーピングウェルを必要とする技術の使用を必要としないという利点を提供するものである。基本セルの各トランジスタはウェル端子も備え、基本セルの全てのトランジスタのウェル端子は、好ましくは第1のトランジスタの第2のソース/ドレイン端子において一体に連結される。
【0014】
有利なことに、この新規の基本ポンピングセルを用いて、チャージポンプハーフセル(又はCPハーフセル)を製造でき、上記CPハーフセルは:
‐第1のクロック信号を受信するよう構成されたクロック端子、及び出力端子を備える、本発明による上述の基本セル;
‐第2のクロック信号を受信するよう構成された第1の端子、及び第2の端子を備える、第2のキャパシタ;
‐第3のクロック信号を受信するよう構成された第1の端子、及び上記基本セルの上記出力端子に連結された第2の端子を備える、第3のキャパシタ;
‐上記CPハーフセルの出力端子に連結された第1のソース/ドレイン端子、上記基本セルの上記出力端子に連結された第2のソース/ドレイン端子、及び上記第2のキャパシタの上記第2の端子に連結されたゲート端子を備える、第5のトランジスタ
を備える。
【0015】
本発明によるCPハーフセルは、概して以下のように動作する。第2のトランジスタ及び第5のトランジスタは両方とも、スイッチINTと同じ役割を有し、第3のキャパシタはポンピング機能を有する。第2のトランジスタがオンのとき、第3のキャパシタは基本セルの入力端子に連結され、充電される。第5のトランジスタがオンのとき、第3のキャパシタは放電し、CPハーフセルの出力端子に連結された下流の回路に給電する。
【0016】
第3のトランジスタは、第2のトランジスタがオンのとき、又は第5のトランジスタがオンのときにオンである。第3のトランジスタは、ブーストステージトランジスタ機能を有する。これにより、第3のキャパシタの充放電中の電荷移動が向上する。
【0017】
第1のトランジスタ及び第4のトランジスタの主な機能は、基本セルのトランジスタのウェルの電位を、第1のトランジスタがオンのときには基本セルの入力端子に印加される電位に、又は第4のトランジスタがオンのときには基本セルの出力端子において得られる電位に設定することである。第1のトランジスタ、特に本発明による上記第1のトランジスタの新規のゲート接続、及び第4のトランジスタにより、基本セルの入力端子と出力端子との間のより効率的な電荷移動のために、閾値及び第2のトランジスタの状態の変化を最も良好に制御できるようになる。
【0018】
新規の基本ポンピングセルは有利なことに、以下でより詳細に確認できるように、Dickson型チャージポンプ、クロスカップルドタイプチャージポンプ又はブートストラップ回路の製造にも使用できる。
【0019】
これより本発明を、非限定的な例として与えられた添付の図面を用いて、更に詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1a】既に参照した図1aは、チャージポンプの動作のある相の概略図である。
図1b】既に参照した図1bは、チャージポンプの動作の図1aとは異なる相の概略図である。
図2】既に参照した図2は、公知のチャージポンプ構造を示す図である。
図3a図3aは、本発明による基本セルを備えるチャージポンプハーフセルの図である。
図3b図3bは、図3aのチャージポンプハーフセルを制御するために使用され得るクロック信号の例を示す。
図3c図3cは、図3bのクロック信号によって制御される図3aのチャージポンプハーフセルの動作を経時的に示した概略図である。
図4図4は、本発明による基本セルを備えるDickson型チャージポンプの図である。
図5図5は、本発明による基本セルを備えるクロスカップルドタイプチャージポンプの図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
上述したように、本発明は、図3aに示した基本ポンピングセルCE1を備えるチャージポンプハーフセルを提案し、上記基本ポンピングセルCE1は:
‐入力電圧Vinを受信するよう配設された入力端子E、第1のクロック信号CK1を受信するよう配設されたクロック端子H、及び出力端子S;
‐上記クロック端子Hに接続された第1の端子及び第2の端子を備える、第1のキャパシタC1;
‐入力端子Eに連結された第1のソース/ドレイン端子、第2のソース/ドレイン端子、及びゲート端子を備える、第1のトランジスタA1;
‐上記基本セルCE1の上記出力端子Sに連結された第1のソース/ドレイン端子、上記入力端子Eに連結された第2のソース/ドレイン端子、及び上記第1のキャパシタC1の上記第2の端子に連結されたゲート端子を備える、第2のトランジスタA2;
‐上記第2のトランジスタA2の上記第1のソース/ドレイン端子に連結された第1のソース/ドレイン端子、上記第2のトランジスタA2の上記ゲート端子に連結された第2のソース/ドレイン端子、及び上記入力端子Eに連結されたゲート端子を備える、第3のトランジスタA3;並びに
‐上記第1のトランジスタA1の上記第2のソース/ドレイン端子に連結された第1のソース/ドレイン端子、上記第2のトランジスタA2及び第3のトランジスタA3の上記第1のソース/ドレイン端子に連結された第2のソース/ドレイン端子、並びに上記入力端子Eに連結されたゲート端子を備える、第4のトランジスタA4
を備える。
【0022】
本発明による基本セルCE1は、第1のトランジスタA1の上記ゲート端子が、第2のトランジスタA2の上記ゲート端子に連結されることを特徴とする。
【0023】
図3aでは、第1のトランジスタA1、第2のトランジスタA2、第3のトランジスタA3及び第4のトランジスタA4は、PMOSタイプトランジスタである。これらはそれぞれウェル端子を備え、上記ウェル端子は、第1のトランジスタA1の上記第2のソース/ドレイン端子において一体に連結される(従って同一の電位にある)。
【0024】
基本セルCE1は被制御スイッチとして動作する。そのクロック端子Hに印加されるクロック信号CK1が低電位である場合、基本セルCE1の出力Sはその入力Eに連結される。反対に、クロック信号CK1が高電位である場合、基本セルの出力はその入力Eから分離される。
【0025】
一実装形態によると、本発明による基本セルCE1を用いてチャージポンプハーフセル(図3a)が製造され、上記チャージポンプハーフセルは:
‐第1のクロック信号CK1を受信するよう構成されたクロック端子H、及び出力端子Sを備える、図3aの基本セルに従った基本セルCE1;
‐第2のクロック信号CK2を受信するよう構成された第1の端子、及び第2の端子を備える、第2のキャパシタC2;
‐第3のクロック信号CK3を受信するよう構成された第1の端子、及び上記基本セルCE1の上記出力端子Sに連結された第2の端子を備える、第3のキャパシタC3;
‐上記CPハーフセルの出力端子Voutに連結された第1のソース/ドレイン端子、上記基本セルCE1の上記出力端子Sに連結された第2のソース/ドレイン端子、及び上記第2のキャパシタC2の上記第2の端子に連結されたゲート端子を備える、第5のトランジスタA5
を備える。
【0026】
図3bは、図3aの回路を制御するために使用され得るクロック信号のセットを示す。クロック信号CK1、CK2、CK3は、同一周期の周期的な信号であり、2つの値0又はVddをとるよう構成され、Vddは上記回路の一次電源電位である。
【0027】
これより、定常状態の動作中である図3aのポンピングハーフセルの動作を、図3b及び3cに関連して説明する。
【0028】
時点t1において、第2のクロック信号CK2はVddから0に下降し、従って第5のトランジスタA5をオンに切り替える。信号CK1はVdd電位にあるため、第3のキャパシタC3は、その第1の端子がVdd電位、その第2の端子が最高電位Vin+Vddとなり、これにより、第1相P[1]の間にC3が放電し、CPハーフセルの出力端子上の電位Voutを増大させる。第3のキャパシタC3の第2の端子上の電位は、Voutと等しくなる。
【0029】
時点t2において、第2のクロック信号CK2は0からVddに上昇し、これにより第5のトランジスタA5がオフに切り替わる。第2相P[2]の間、第3のキャパシタC3は分離される。
【0030】
時点t3において、第3のクロック信号CK3はVddから0に下降し、これは、第3相P[3]の間に、第3のキャパシタC3の第2の端子上の電位のVoutからVout-Vddへの下降を引き起こし、第3のキャパシタC3は分離されたままである。以前にオンであった第4のトランジスタA4はオフに切り替わり、以前にオフであった第1のトランジスタA1はオンに切り替わり、これにより、トランジスタA1~A4のウェル電位はVoutからVinに切り替わり、トランジスタA2のソース/ウェル電圧は低下する。
【0031】
時点t4において、第1のクロック信号CK1はVddから0に下降し、これは、トランジスタA2、A1のゲート電位における-Vddの下降をもたらす。A2はオンに切り替わり、A1はオンのままである。第3のキャパシタC3の第1の端子はゼロ電位にあり、第3のキャパシタC3の第2の端子は、Vin電位が印加される入力端子Eに連結される。第4相P[4]の間、第3のキャパシタC3は充電される。オンであるトランジスタA3は、第3のキャパシタC3への電荷移動を増強する。
【0032】
時点t5において、第1のクロック信号の電位は0からVddに上昇する。トランジスタA2、A3のゲート/ソース電圧は正となり、これによりトランジスタA2、A3はオフに切り替わる。トランジスタA1のゲート/ソース電圧もVddだけ上昇するものの、依然として負であるため、トランジスタA1はオンのままである。第5相P[5]の間、第3のキャパシタC3は分離される。
【0033】
時点t6において、第3のクロック信号CK3は0からVddに上昇し、これは、第6相P[6]の間に、第3のキャパシタC3の第2の端子上の電位の、Vout-VddからVoutへの上昇をもたらす。トランジスタA2、A3、A4は、トランジスタA5と同様にオフのままである。よって第3のキャパシタC3は分離されたままである。
【0034】
その後、相P[1]~P[6]は周期的に繰り返される。相P[1]、P[4]は、電荷移動相に対応する。相P[1]の間、第3のキャパシタC3は、CPハーフセルの出力端子Voutに放電し、そして相P[4]の間、第3のキャパシタC3は、基本セルCE1の入力端子E上で充電される。相P[2]、P[3]及びP[5]、P[6]は、トランジスタの切替えを保証する短時間の中間相である。
【0035】
別の実装形態によると、本発明による基本セルを用いて、Dickson型チャージポンプ(図4)が製造され、上記Dickson型チャージポンプは:
‐請求項1~3のいずれか1項に従って製造された第1の基本セルCE11及び第2の基本セルCE12であって、各上記基本セルCE11、CE12は、入力端子E1、E2、クロック端子H1、H2及び出力端子S1、S2を備え、上記第2の基本セルCE12の上記入力端子E2は、上記第1の基本セルCE11の上記出力端子S1に連結される、第1の基本セルCE11及び第2の基本セルCE12;
‐第4のクロック信号CK11を受信するよう構成された第1の端子、及び上記第1の基本セルCE11の上記出力端子S1に連結された第2の端子を備える、第4のキャパシタC11;
‐第5のクロック信号CK12を受信するよう構成された第1の端子、及び上記第2の基本セルCE12の上記出力端子S2に連結された第2の端子を備える、第5のキャパシタC12
を備える。
【0036】
従って図4のチャージポンプは、2つの基本セルCE11、CE12を直列に結合することによって製造され、ポンピングキャパシタC11、C12は、各基本セルの出力上に位置決めされる。クロック信号CK1、CK2、CK11、CK12は:
‐第1相の間、第4のキャパシタC11が充電され、第5のキャパシタC12が下流の回路(図示せず)へと放電し;
‐第2相の間、第4のキャパシタC11が第5のキャパシタC12へと放電する
ように選択される。
【0037】
3つ以上の基本セルを結合して、より高い出力電位Voutを得ることができる。
【0038】
更に別の実装形態によると、本発明による基本セルを用いて、クロスカップルドタイプチャージポンプ(図5)が製造され、上記クロスカップルドタイプチャージポンプは:
‐請求項1~3のいずれか1項に従って製造された第1の基本セルCE21及び第2の基本セルCE22であって、各上記基本セルCE21、CE22は、入力端子E1、E2、クロック端子H1、H2及び出力端子S1、S2を備え、上記第2の基本セルCE22の上記入力端子E2は上記第1の基本セルCE21の上記入力端子E1に連結され、上記第1の基本セルCE21の上記クロック端子H1は第1のクロック信号CK1を受信するよう構成され、上記第2の基本セルCE22の上記クロック端子H2は第2のクロック信号CK2を受信するよう構成される、第1の基本セルCE21及び第2の基本セルCE22;
‐第6のクロック信号CK21を受信するよう構成された第1の端子、及び上記第2の基本セルCE22の上記出力端子S2に連結された第2の端子を備える、第6のキャパシタC21;
‐第7のクロック信号CK22を受信するよう構成された第1の端子、及び上記第1の基本セルCE21の上記出力端子S1に連結された第2の端子を備える、第7のキャパシタC22;
‐上記クロスカップルドタイプチャージポンプの出力端子Voutに連結された第1のソース/ドレイン端子、上記第1の基本セルCE21の上記出力端子S1に連結された第2のソース/ドレイン端子、及び上記第6のキャパシタC21の上記第2の端子に連結されたゲート端子を備える、第6のトランジスタA21;
‐上記クロスカップルドタイプチャージポンプの上記出力端子Voutに連結された第1のソース/ドレイン端子、上記第2の基本セルCE22の上記出力端子S2に連結された第2のソース/ドレイン端子、及び上記第7のキャパシタC22の上記第2の端子に連結されたゲート端子を備える、第7のトランジスタA22
を備える。
【0039】
従って図5のチャージポンプは、2つの基本セルCE21、CE22を並列に結合することによって製造され、基本セルの出力は交差接続される。クロック信号CK1、CK2、CK21、CK22は:
‐第1相の間、基本セルCE21が第7のキャパシタC22を電位Vinに連結し、基本セルCE22が第6のキャパシタC21を電位Vinに連結し、トランジスタA21、A22はオフとなり、キャパシタC21、C22は充電され;
‐第2相の間、キャパシタC21、C22は基本セルCE21、CE22から分離され、トランジスタA21、A22はオンとなり、キャパシタC21、C22は出力端子Voutに放電する
ように選択される。
【符号の説明】
【0040】
A1 第1のトランジスタ
A2 第2のトランジスタ
A3 第3のトランジスタ
A4 第4のトランジスタ
A5 第5のトランジスタ
A21 第6のトランジスタ
A22 第7のトランジスタ
C1 第1のキャパシタ
C2 第2のキャパシタ
C3 第3のキャパシタ
C11 第4のキャパシタ
C12 第5のキャパシタ
C21 第6のキャパシタ
C22 第7のキャパシタ
CE1 基本ポンピングセル
CE11 第1の基本セル
CE12 第2の基本セル
CE21 第1の基本セル
CE22 第2の基本セル
CK1 第1のクロック信号
CK2 第2のクロック信号
CK3 第3のクロック信号
CK11 第4のクロック信号
CK12 第5のクロック信号
CK21 第6のクロック信号
CK22 第7のクロック信号
E 入力端子
E1 入力端子
E2 入力端子
H クロック端子
H1 クロック端子
H2 クロック端子
S 出力端子
S1 出力端子
S2 出力端子
Vin 入力電圧
Vout 出力端子
図1a
図1b
図2
図3a
図3b
図3c
図4
図5