(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-02-08
(45)【発行日】2022-02-17
(54)【発明の名称】統合された製造におけるイソシアネートおよび少なくとも1つの追加の化学製品の製造方法
(51)【国際特許分類】
C07C 263/10 20060101AFI20220209BHJP
C07C 265/14 20060101ALI20220209BHJP
C07C 263/18 20060101ALI20220209BHJP
【FI】
C07C263/10
C07C265/14
C07C263/18
(21)【出願番号】P 2019508845
(86)(22)【出願日】2017-08-15
(86)【国際出願番号】 EP2017070675
(87)【国際公開番号】W WO2018033536
(87)【国際公開日】2018-02-22
【審査請求日】2020-08-17
(32)【優先日】2016-08-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(32)【優先日】2017-06-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】515266223
【氏名又は名称】コベストロ、ドイチュラント、アクチエンゲゼルシャフト
【氏名又は名称原語表記】COVESTRO DEUTSCHLAND AG
(74)【代理人】
【識別番号】110000796
【氏名又は名称】特許業務法人三枝国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100104617
【氏名又は名称】池田 伸美
(72)【発明者】
【氏名】ユルゲン、スプリーバルト
(72)【発明者】
【氏名】リチャード、アダムソン
(72)【発明者】
【氏名】トーマス、クナーフ
【審査官】水島 英一郎
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2008/148608(WO,A1)
【文献】欧州特許出願公開第02096102(EP,A1)
【文献】国際公開第2013/083230(WO,A1)
【文献】独国特許出願公開第102013205492(DE,A1)
【文献】特表2013-522261(JP,A)
【文献】特表2013-514815(JP,A)
【文献】特表2014-504278(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第102803206(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07C
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
m個のプロセス連鎖(process chains)におけるm種のイソシアネートの製造方法であって、各々においてイソシアネートが少なくとも1つの中間体を介して最終生産物として製造され、
該m個のプロセス連鎖の各々が、少なくとも2つの製造プラント(100000-1、100000-2、...)において、すなわち少なくとも1つの中間体の製造のために設計された、第一製造プラント(100000-1)およびイソシアネート最終生産物の製造のために設計された第二製造プラント(100000-2)において行われ、該少なくとも2つの製造プラント(100000-1、100000-2、...、)が、統合された製造システム(1000000)の一部であって、
中間体、触媒およびイソシアネート最終生産物からなる群から選択されるn種の化学製品のすべてが、統合された製造システム(1000000)で調製され、nは2~40の範囲の自然数であり、かつmは1~nの範囲の自然数であって、
該n種の化学製品の各々の調製において、少なくとも1回の熱放出または熱消費の操作が行なわれ、m種のイソシアネートを調製する方法において、合計で少なくとも1回の熱放出操作および少なくとも1回の熱消費の操作が行われ、 (i)第一製造プラント(100000-1)における化学製品のうちの1つの調製における熱放出操作において放出された熱エネルギーが、1.31bar
(絶対)~1.91bar
(絶対)の圧力、および107℃~119℃の温度で、蒸気の生成のために少なくとも部分的に利用され;
(ii)(i)で生成された該蒸気が、工程(i)で調製された化学製品とは異なる化学製品の調製における熱消費操作の実行に使用され、この工程(i)で調製された化学製品とは異なる化学製品の調製が第二製造プラント(100000-2)で行われ、(i)で生成された蒸気が、パイプラインを介して工程(i)中の蒸気放出点から、工程(ii)における熱消費操作の位置へ誘導される、方法。
【請求項2】
前記イソシアネート最終生成物が、メチレンジフェニレンジイソシアネート、ポリメチレンポリフェニレンポリイソシアネート、メチレンジフェニレンジイソシアネートとポリメチレンポリフェニレンポリイソシアネートの混合物、トリレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、ペンタン1,5-ジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネートおよびナフチルジイソシアネートからなる群から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記イソシアネート最終生成物が、芳香族イソシアネートであって、かつ
第一のプロセス連鎖(α)において、
A)第一プロセス段階で、芳香族炭化水素がニトロ化されて芳香族ニトロ化合物となり;
B)芳香族ニトロ化合物が水素化により第二プロセス段階で水素化されて芳香族アミンが得られ;
C)芳香族アミンがホスゲン化によって第三プロセス段階で転換されて芳香族イソシアネート最終生産物が得られ;ならびに/あるいは
第二プロセス連鎖(β)において
A)第一プロセス段階で芳香族炭化水素がニトロ化されて芳香族ニトロ化合物が得られ;
B)芳香族ニトロ化合物が水素化により第二プロセス段階で水素化されて芳香族アミンが得られ;
C)芳香族アミンが第三プロセス段階で別の芳香族アミンに転換され;
D)芳香族アミンがホスゲン化によって第四プロセス段階で転換されて芳香族イソシアネート最終生産物が得られる、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
プロセス段階(α)C)、および/またはプロセス段階(β)D)における前記ホスゲン化が、下記:
I)ホスゲン化するアミン(2)を液相中でホスゲン(3)と反応させ、得られたプロセス製品を、粗製イソシアネートおよび溶媒を含む液体流(60)と、ホスゲンおよび塩化水素を含む気体流(70)に分離すること;
II)蒸留装置(2100)中で、工程I)からの液体流(60)を、溶媒および粗製イソシアネートを含む液体流(80)と、ホスゲンおよび塩化水素を含む気体流(90)に分離すること;
III)蒸留装置(2200)中で、液体流(80)を、溶媒を含む気体流(110)と、粗製イソシアネートを含む液体流(100)に分離すること; IV)コンデンサー(2310)中で、気体流(110)を少なくとも部分的に液化した後に、蒸留装置(2300)中で、溶媒を含む液体流(120)と、ホスゲンを含む気体流(130)に分離すること;
V)液体流(100)から液体イソシアネート流(140)を得て、蒸留装置(2400)中で、第二成分および場合により溶媒を含む気体流(150)をもたらすこと(場合により、ポリマー除去のための上流装置(2410)中でポリマーイソシアネート画分を流(141)として除去する工程V.1)を含む)を含んでなる、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
プロセス段階(β)D)においてホスゲン化されるアミンが、メチレンジフェニレンジアミンとポリメチレンポリフェニレンポリアミンの混合物であり、工程V.1)が同様に行われるためにイソシアネート最終生産物が2つの流140および141において得られ、流140がメチレンジフェニレンジイソシアネートを含み、流141がメチレンジフェニレンジイソシアネートとポリメチレンポリフェニレンポリイソシアネートの混合物を含むものである、プロセス連鎖(β)を含んでなる、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記工程(i)からの熱放出操作が、コンデンサー(2310)中の気体流(110)の少なくとも部分的な液化であり、かつ熱放出により生成された蒸気がプロセス段階(β)C)に誘導される、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
プロセス段階(β)C)が、以下の工程:
IA)反応器(3000)中で酸性触媒がない状態でアニリンおよびホルムアルデヒドを反応させてアミナールを形成し、その後得られた反応混合物を、反応器内に統合された相分離装置内にて、または個々の相分離装置(4000)内にて、水相とアミナールを含む有機相とに分離する工程;
IIA)反応器(5000)内で工程IA)で得られたアミナールを含む有機相の少なくとも一部を酸と反応させて、アミナールとの反応でメチレンジフェニレンジアミンとポリメチレンポリフェニレンポリアミンの混合物を得る工程;あるいは
IB)反応器内でアニリンと酸を反応させる工程;
IIB)反応器内で工程IB)中で得られた反応混合物の少なくとも一部をホルムアルデヒドと反応させてメチレンジフェニレンジアミンとポリメチレンポリフェニレンポリアミンの混合物を得る工程;
III)反応器(6000)内で工程IIA)またはIIB)で得られた反応混合物を中和する工程;
IV) 分離容器(7000)内で、工程III)で得られた中和された反応混合物を、メチレンジフェニレンジアミンとポリメチレンポリフェニレンポリアミンの混合物を含む有機相と、水相へ分離する工程;
V)洗浄容器(8000)内で有機相を洗浄液で洗浄する工程;
VI)分離容器(7000)内で、工程V)で得られた混合物を、メチレンジフェニレンジアミンとポリメチレンポリフェニレンポリアミンの混合物を含む有機相と、水相へ分離する工程;
VII)水およびアニリンを含有している流を除去するための第一蒸留段階(10000-1)と、水およびアニリンを含有している流を除去した後の第一段階に残るプロセス生成物のさらなる精製のための第二蒸留段階(10000-2)を含む蒸留装置(10000)内で、工程VI)からの有機相を蒸留し、場合により、熱の直接転送のための第二段階(10000-2)におけるストリッピング蒸気を用いながら、メチレンジフェニレンジアミンとポリメチレンポリフェニレンポリアミンの混合物を得る工程;
VIII)場合により、工程VII)で得られたメチレンジフェニレンジアミンとポリメチレンポリフェニレンポリアミンの混合物から、メチレンジフェニレンジアミンを分離する工程を含んでなる、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
プロセス段階(β)C)が、さらに下記:
IX)排水収集容器(11000-1)、場合により排水ヒーター(11000-2)、分離容器(11000-3)、場合により抽出容器(11000-4)、および排水蒸留塔(11000-5)を含む排水後処理装置(11000)における
・工程IA)からの水相の、または
・工程IV)からの水相の、または
・工程VI)からの水相の、または
・工程VII)からの水およびアニリンを含有している流の、または
・上述の2つ以上の水性プロセス生成物の混合物の
後処理であって、
工程(ii)からの熱消費操作が、
・蒸留段階(10000-1)において工程VI)からの有機相からの水およびアニリンを含んでいる流を分離すること、
・蒸留段階(10000-2)において水およびアニリンを含有している流を除去した後に第一蒸留段階(10000-1)に残るプロセス製品のさらなる精製を行うことであって、(10000-2)にて直接の熱転送のため
にストリッピング蒸気
が使用
され、このストリッピング蒸気が、工程(i)で生成された蒸気を含
む、精製を行うこと
・排水ヒーター(11000-2)が存在する場合、この排水ヒーター(11000-2)の加熱を行うこと、および
・前述の操作の2つ以上の組み合わせ
からなる群から選択されるものである、後処理
を含んでなる、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
さらなる化学製品として塩酸を調製するプロセス段階であって、該塩酸が水中に塩化水素を吸収させること、または吸収カラム内に0.1%~20%の塩酸を吸収させることによって調製され、このように調製された該塩酸が、工程(β)C)IIA)または(β)C)IB)において酸として使用され、
熱消費操作が塩酸を調製するためのプロセス段階からの吸収カラムの塔底の直接的または間接的な加熱である、プロセス段階をさらに含んでなる、請求項7または8に記載の方法。
【請求項10】
前記溶剤がモノクロロベンゼンであり、かつ工程(i)において生成する蒸気がスチームである、請求項5~9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
プロセス連鎖(α)を含み、プロセス段階(α)C)中でのホスゲン化が、下記:
0)液体ホスゲンを蒸発させることにより気体ホスゲン(3)を提供する工程;
I)ホスゲン化するアミン(2)を蒸発させ、蒸発したアミンを気相中で工程0)からの気相ホスゲン(3)と反応させ、アミンの沸点未満の温度で溶媒含有流と接触させることによって反応を停止させ、かつ得られたプロセス製品を、粗製イソシアネートおよび溶媒を含む液体流(60)と、ホスゲンおよび塩化水素を含む気体流(70)に分離する工程;
II)蒸留装置(2100)中で、工程I)からの液体流(60)を、溶媒および粗製イソシアネートを含む液体流(80)と、ホスゲンおよび塩化水素を含む気体流(90)に分離する工程;
III)蒸留装置(2200)中で、液体流(80)を、溶媒を含む気体流(110)と、粗製イソシアネートを含む液体流(100)に分離する工程;
IV)コンデンサー(2310)中で、気体流(110)を、少なくとも部分的に液化した後に、蒸留装置(2300)中で、溶媒を含む液体流(120)と、ホスゲンを含む気体流(130)に分離する工程;
V)液体流(100)から液体イソシアネート流(140)を得て、蒸留装置(2400)中で、第二成分を含み溶媒を含むかもしくは含まない気体流(150)、ならびに流(143)としてポリマー成分とモノマーイソシアネートの混合物を得る工程を含んでな
り、
工程(ii)からの熱消費操作が、少なくとも工程0)における液体ホスゲンの蒸発の部分的な工程であって、工程(i)からの熱放出操作がプロセス段階(α)B)から開始するプロセス連鎖(α)を含んでなる、請求項
3に記載の方法。
【請求項12】
工程(i)からの少なくとも1回の熱放出操作がプロセス連鎖(α)の一部であり、工程(ii)からの少なくとも1回の熱消費操作がプロセス連鎖(β)の一部であるか、あるいは
工程(i)からの少なくとも1回の熱放出操作がプロセス連鎖(β)の一部であり、工程(ii)からの少なくとも1回の熱消費操作がプロセス連鎖(α)の一部である、プロセス連鎖(α)およびプロセス連鎖(β)を含んでなる、請求項3に記載の方法。
【請求項13】
・工程(i)において、蒸気が、自然循環ボイラー、強制循環ボイラー、強制経路ボイラー、シェルおよびチューブ熱交換器、U字チューブ熱交換器、二重チューブコイル熱交換器、プレート熱交換器、チューブ熱交換器、螺旋状熱交換器および挿入されたコンデンサーからなる群から選択される間接伝熱用装置によって生成されるか、または
・工程(ii)において、熱消費操作の実行に必要な熱の量が、自然循環蒸発装置、強制循環型蒸発装置、挿入蒸発装置、自己循環蒸発装置、上昇膜蒸発装置、流下膜式蒸発装置、プレート蒸発装置、螺旋状チューブ蒸発装置、薄膜型蒸発装置、短経路蒸発装置、シェルおよびチューブ熱交換器ならびに螺旋状の熱交換器からなる群から選択される間接伝熱用装置によって提供されるか、または
・工程(i)において、蒸気が、自然循環ボイラー、強制循環ボイラー、強制経路ボイラー、シェルおよびチューブ熱交換器、U字チューブ熱交換器、二重チューブコイル熱交換器、プレート熱交換器、チューブ熱交換器、螺旋状熱交換器ならびに挿入されたコンデンサーからなる群から選択される間接伝熱用装置によって生成され、かつ工程(ii)において、熱消費操作の実行に必要な熱の量が、自然循環蒸発装置、強制循環型蒸発装置、挿入蒸発装置、自己循環蒸発装置、上昇膜蒸発装置、流下膜式蒸発装置、プレート蒸発装置、螺旋状チューブ蒸発装置、薄膜型蒸発装置、短経路蒸発装置、シェルおよびチューブ熱交換器ならびに螺旋状の熱交換器からなる群から選択される間接伝熱用装置によって提供される、請求項1~12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
・工程(i)における蒸気放出点から工程(ii)における熱消費操作の位置へ誘導される蒸気流の規模または
・工程(ii)において使用されるパイプラインの名目幅または
・工程(i)における蒸気放出点から工程(ii)における熱消費操作の位置へ誘導される蒸気流の規模、および工程(iii)からのパイプラインの名目幅を調節することによって、
蒸気の体積流量率とパイプラインの断面の商から計算されたパイプラインの蒸気流の速度として、10.0m/s~40.0m/sの範囲がもたらされる、請求項1~13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
前記パイプラインが、400m以下の長さと300.0mm~1000nmの範囲の内径d
iを有している、請求項1~14のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プロセス連鎖(process chains)におけるイソシアネートの製造方法であって、それぞれにおいてイソシアネートが少なくとも1つの中間体によって最終生産物として製造され、中間体の調製における熱放出操作においての第一製造プラントで放出される熱エネルギー、イソシアネート最終生産物またはプロセス連鎖における部分的工程に必要な触媒(第一化学製品)が、1.31bar(絶対)~1.91bar(絶対)の圧力および107℃~119℃の温度で、蒸気(vapor)(特にスチーム(steam))の生成のために少なくとも部分的に利用され、かつこのように生成された蒸気が第二製造プラントにおける別の化学製品(第二化学製品)の調製での熱消費操作の実施のために使用される、方法に関する。
【背景技術】
【0002】
イソシアネートおよびその調製に必要な前駆体を調製するための工業規模の化学的方法は利用可能である。方法はバッチ式に、半連続的に、連続的に、またはこれらの3つの変形のうちの1つの組み合わせで操作することができる。方法は吸熱性または発熱性であり、等温的または断熱的に行うことができる。方法は調製されるイソシアネートによって、溶媒を用いてか、または溶媒を用いずに、またはメルト中で、気相または液相において行うことができる。このように得られたイソシアネートの後処理(work up)および精製は、当技術分野における標準法(例えば結晶化、洗浄、蒸留)のうちの一つ、またはこれらの後処理法の組み合わせによって達成することができる。
【0003】
イソシアネートの調製方法の品質は、第一に方法の製品中の所望しない副産物の含有量によって決定される。第二に方法の品質は、プロセスの立ち上げ(start up)および目標状態での製造から停止(shut down)までの全体の操作が、技術的な生産停止なく、かつ操作中の中断を必要とする問題なく実行され得ること、ならびに供給材料、中間体または最終生産物の損失がないことによって定義される。
【0004】
したがって理想的には、そのような製造方法を実施するための工業規模によるプラントは、適切な品質の補助物および供給材料の使用、ならびに圧力、温度、補助物および供給材料の量の比および濃度等のプロセスパラメータの正確な選択の場合に、プロセスが確実な方法で流れるように設計される。これは、そのような連続的に操作される大規模プラントでは、プラント設備に沈殿し得るかまたはパイプラインを詰まらせ得る沈殿物の形成などの問題が理想的にはなくなることを意味する。
【0005】
さらに経済的有益性を向上させるために、そのような工業規模プラントのエネルギー消費の効率性は初期段階でさえも向上された。エネルギー消費は、製造プラントの個々のプラント構成要素間の顕熱統合によって大幅に縮小することができる。目標は、例えば断熱法から可能な限り過剰エネルギーを顕著に利用することを産業的に実施することである。
【0006】
例えば、WO2004/056761A1は、反応器内の不活性有機溶媒の存在下でアミンとホスゲンを反応させ、続けて反応器を離れる反応混合物の後処理によるイソシアネートの製造方法での熱統合に関する。熱統合は溶媒の除去が二段階式または多段階式、好ましくは二段階式の蒸留法において達成されるように、かつ溶媒が第一装置、好ましくは蒸留カラムで0.1~1.5bar、好ましくは0.5~3barにて、および第二装置または追加の装置、好ましくは同様に蒸留カラムで1~900mbar、好ましくは50~500mbarにて除去されるように実施され、ここで第一装置からの溶媒蒸気(蒸気とも称する)の凝縮の熱が第二装置内の溶媒の部分的または完全な蒸発のために使用される。
【0007】
第一カラムにおいて、溶媒蒸気は蒸留によって除去される。第二装置の中にあるか、または上流にあるこのカラムから塔底排出液として得られる液体成分は、第二装置のより低い圧力レベルに展開されて、溶媒の残りが除去される第二装置に供給される。第一装置からの第二装置の液相への蒸気内のエネルギーの伝達は、特に熱交換器(例えば交差流装置)を使用して達成することができ、その中で凝縮する蒸気が第二カラムの第二装置からの液相の蒸発をもたらす。ここでは並流または向流中の蒸気および液相を導くことが可能である。蒸気は、シェル空間、または熱交換器の生成物の空間内で凝縮させてもよい。第二カラム中の液体は塔底、トレイ、液体回収器または仕込みから引き出すことができる。内部の熱統合の後の残りのエネルギーのさらなる使用については記載されていない。
【0008】
またEP1854783A2もイソシアネートの調製に関する。この出願で同様に記載されているのは、溶媒の回収における熱統合である。方法の好ましい実施態様において、工程d)で得られ、かつ工程e)で少なくとも部分的に再利用された溶媒含有流は、特別な蒸留段階においてホスゲンの残余量を除去される。より好ましくは、このホスゲンの残余量の蒸留による分離では、回収された溶媒流の明確な熱はこの分離工程のためのエネルギー源として全体的または部分的に使用される。これは、例えば蒸留塔への材料が熱交換器によってカラム塔底液を熱するという点で達成することができる。通常蒸留によって分離された溶媒は>100℃の温度で得られるので(しかし最適なホスゲン化条件のための溶媒中のアミン溶液の生成のためには、<50℃であるべきである)、このようにホスゲンの残余量の分離は溶媒の同時冷却と併に組み合わせることができる。内部の熱統合の後の残りのエネルギーのさらなる使用については記載されていない。
【0009】
欧州特許出願EP2096102A1も同様にイソシアネートの調製に関する。記載されているのはジフェニルメタンシリーズ(MDI;以下ではメチレンジフェニレンジイソシアネート-(OCN)C6H4-CH2-C6H4(NCO)-とポリメチレンポリフェニレンポリイソシアネート-(OCN)C6H4-CH2-[C6H3(NCO)CH2-]XC6H4(NCO)との混合物(式中xは≧1の自然数である)とも称する))のジイソシアネートおよびポリイソシアネートを製造するための統合された方法であって、ジフェニルメタンシリーズ(MDA;以下ではメチレンジフェニレンジアミンとポリメチレンポリフェニレンポリアミンの混合物とも称する)のジイソシアネートおよびポリイソシアネートの前駆化合物の製造において得られた塩含有排水が塩素に電気分解され、このように得られた塩素がホスゲンに転換され、次いでこれをMDAのMDIへの転換に使用する方法である。したがってこの発明はMDAおよびMDIのための製造プラント間の質量移動による統合に関する。この特許出願は熱統合について提起していない。
【0010】
国際特許出願WO2008/148608A1は、ベンゼン出発材料からの、ニトロ化、水素化、ホルムアルデヒドとの凝縮および酸触媒の再配列、最後にホスゲン化の工程によりMDIに転換されるMDIプロセス連鎖進行全体について記載している。この特許出願はMDIの製造方法を提供する技術的な目的に基づくものであり、出発材料として先行技術において典型的に使用されるより低い純度のベンゼンの使用を可能にする。この目的を達成する1つの提案される方法は、出発材料として先行技術において典型的に使用されるものより低い純度のベンゼンを使用することである。このより低い純度は、アルキル置換芳香族中の500~5000ppmのベンゼン含有量によって特徴づけられている。MDIプロセス連鎖の個々のプロセス段階間の熱統合はこの出願の主題ではない。
【0011】
今日、化学製品のための工業規模による製造プラントは、既存の化学的場所でも普及されていることが多い、場所の不足に対抗するために設計されたスチール骨格で建設されている。ロジスティックコストを下げるために、統合された製造システムでは1つのサイトでプロセス連鎖において様々な段階(例えば、様々なイソシアネートの調製では、ニトロ化、水素化、場合により水素化製品のさらなる転換およびホスゲン化の段階)を確立することが有利である。そのような統合された製造システムでの個々の製造プラントは、典型的には連続して配置されている。また狭い場所での建設も最小化しなければならない欠点を含んでいる。欠点は、統合された製造システムでの個々の製造プラントを建設するにあたり場所が不足することであり;整備手段(例えば、クレーンの組み立て)に課題がある場合がある。製造プラント間の正当な安全マージンに適合することなど、安全面を観察しなければならない。製造プラント間の狭い道および領域に起因して場合によって補助物と供給材料の調製には問題がある。中央槽ファーム(central tank farm)からの距離をより遠くする必要があるため(補助物、供給材料、製品のため)に、より大きいポンプを備えたより長いパイプラインとの使用が必要となる。
【0012】
上記による直接または間接法による加熱および冷却のためのエネルギー消費は、他のエネルギー消費(特に電気エネルギー)の様式と比較して、工業規模による製造プラントの操作において主要なコストプール(cost pool)であり、このエネルギー消費を最適化する手段は費用削減の最大のポテンシャルをもたらす。ここではピンチ分析(pinch analysis)に基づく熱統合が溶液をもたらす。このようにして、例えばカラムのエネルギー要求、排出熱蒸気の生成、ならびにヒートポンプおよび蒸気圧縮の使用、あるいは吸収冷却器内の冷却液(coolant)の生成を減少させるための仕込み予熱/冷却の最適な構造を確認することが可能となる。製造プラントにおいて利用可能な残余熱は同一の方法における他の地点で使用することができ、または近接する管理棟の加熱のために使用することができる。また建物を加温するための蒸気生成にもはや適切ではない残余熱を使用することも可能である。比較的低い仕込み温度は建物の加温に十分であるので、蒸気生成にもはや適していない残余熱でさえも利用可能である。また吸収冷却器における冷却液を生成するために残余熱を使用することも考慮し得る。
【0013】
イソシアネートおよびその前駆体の工業規模による調製についての現在の先行技術のプロセスは、一般に高い収率で所望の製品を調製すること、および個々の製造プラント内の熱統合によって分別よく過剰エネルギーを利用することに成功している。これは、化学製品の調製プロセス内での操作からの過剰エネルギーが、蒸気の生成、特にスチームの生成に好適な装置(例えば熱交換器)によって使用され、かつこのように得られた蒸気が、同一の調製プロセスでの熱消費操作において使用される(この点に関して上述の特許文献の実施例も参照のこと)ように達成されることが多い。しかしながら、この「内部」熱統合(即ち化学製品の製造プラント内の熱統合)の最大の活用の後にでさえ、過剰な「残余エネルギー」が依然として残ることが多い。そのような残余エネルギーは比較的低い圧力および低い温度(口語では「弱い蒸気」とも呼ばれる)での蒸気を単に生成するために一般に使用することができる。次いでこの種の蒸気は単に管理棟の加温のために利用されるか、または分別よい利用なく残余エネルギーが廃熱の形態で失われるか、または例えば空気冷却器の「エネルギー破壊」の必要性を通じて追加費用の負担さえも発生する。
【0014】
そのような残余エネルギーでの「実際の(true)」熱統合は、今日まで現状の知識にてイソシアネートの調製に関する先行技術に記載されていることはなく、通常の先行技術中に記載されてきたことはほとんどない:
国際特許出願WO2013/083230A1は、1,2-ジクロロエタン(DCE)中間体を介した、エチレン、塩化水素および酸素からの、またはエチレンおよび塩素から塩化ビニル(VCM)を調製するための複合体中の熱統合を開示している。VCMは、ポリ塩化ビニル(PVC)を調製するための出発モノマーとして産業的に重要である。記載された方法では、DCE中間体の精製のための高沸騰カラムからの塔頂流の凝縮で得られた熱は、低圧蒸気を得るために利用され、これは次いで例えばVCMの精製用のストリッピングカラム、または下流のPVCプラント中の様々な設備の操作のための使用が見出される。しかしながら、VCM複合体またはVCM/PVC複合体の個々の構成要素は、統合されたイソシアネート製造システム内の個々の製造プラントと同程度の複雑さではない。化学プロセスは、統合されたイソシアネート製造システム中のものとはさらに完全に異なる。異なる化学プロセスの多様性(例として次のものを含む:塩素生成、一酸化炭素生成、ホスゲン生成、目的に必要な硝酸の調製を含むニトロ化、目的に必要な水素の調製を含む水素化、場合により凝縮および転位反応、ホスゲン化)のために、統合されたイソシアネート製造システム中の個々の製造プラント間の熱統合は、操作員に対して完全に異なる課題を提起する。
【0015】
ドイツの特許出願DE102013205(492)A1では、酢酸ビニルの調製で得られる、典型的に120℃~170℃の温度および典型的に2~8barの絶対圧での「固有の蒸気」を、統合された工場(integrated works)における他の操作に送ることができること、または製品パイプラインもしくは建物の加温に使用することができることが開示されている。これらの利用の様式はすべて不利なものと記載され;そのような蒸気を受け付けることができる種類の操作の開示はない。この出願の目的は固有の蒸気の利用の様式をプロセス内での利用を容認して溶液することを可能にすることである。提案された溶液としては、酢酸ビニルを調製する方法において特定のカラムにランダムパッキングを備えることであって、したがって備えられたカラムのエネルギー供給のために固有の蒸気を使用することが可能となった。
【0016】
したがってイソシアネートの製造方法におけるエネルギー統合の、そのような残余エネルギーが化学製品の調製において分別のある使用に送ることができるさらなる改善が望まれる。そのような改善は、持続性および環境上の態様からも望ましい。
【発明の概要】
【0017】
本発明は、上記を考慮してm個のプロセス連鎖におけるm種のイソシアネートの製造方法であって、各々においてイソシアネートが少なくとも1つの中間体を介して最終生産物として製造され、
当該m個のプロセス連鎖の各々が、少なくとも2つの製造プラント(100000-1、100000-2、...)において、すなわち少なくとも1つの中間体の製造のために設計された、第一製造プラント(100000-1)およびイソシアネート最終生産物の製造のために設計された第二製造プラント(100000-2)において行われ、この少なくとも2つの製造プラント(100000-1、100 000-2、...、)は、統合された製造システム(1000000)の一部であって、
中間体、触媒およびイソシアネート最終生産物からなる群から選択されるn種の化学製品のすべてが統合された製造システム(1000000)で調製され、nは2~40の範囲、好ましくは2~20の範囲、より好ましくは2~15の範囲の自然数であり、かつmは1~nの範囲の自然数であって、
n種の化学製品の各々の調製において、少なくとも1回の熱放出または熱消費の操作が行なわれ、m種のイソシアネートを調製する方法において、合計で少なくとも1回の熱放出操作および少なくとも1回の熱消費の操作が行われ、
(i)第一製造プラント(100000-1)における化学製品のうちの1つの調製における熱放出操作において放出された熱エネルギーが、1.31bar(絶対)~1.91bar(絶対)の圧力、および107℃~119℃の温度で、蒸気、特にスチームの生成のために少なくとも部分的に利用され;
(ii)(i)で生成された蒸気が、工程(i)で調製された化学製品とは異なる化学製品の調製における熱消費操作の実行に使用され、この工程(i)で調製された化学製品とは異なる化学製品の調製が第二製造プラント(100000-2)で行われ、(i)で生成された蒸気が、パイプラインを介して工程(i)中の蒸気放出点から工程(ii)における蒸気消費操作の位置へ誘導される、
方法を提供する。
【発明の具体的説明】
【0018】
本発明の文脈における統合された製造システム(1000000)は、少なくとも2つの製造プラント(100000-1、100000-2、...)からなる総合されたシステムを指し、各製造プラント(100000-1、100000-2、...)は少なくとも1つの化学製品の調製のために設計されたものである。本発明の統合された製造システム(1000000)では、少なくとも2つの化学製品(すなわちイソシアネート最終生産物および少なくとも1つの中間体)が調製される。本発明の最も単純な考えられる配置では、m=1(ちょうど1つのプロセス連鎖におけるちょうど1つのイソシアネートの調製)およびn=2(2つの化学製品(すなわち1つの中間体およびイソシアネート最終生産物)の調製)である。そのような本発明の配置の1つの例は、ジニトロトルエンがトリレンジアミンに水素化する第一製造プラント(100000-1) およびトリレンジアミンがホスゲン化されてトリレンジイソシアネートが得られる第二製造プラント(100000-2)から構成される統合された製造システム(1000000)である。数nは、統合された製造システム(1000000)で全体として調製された化学製品の数を示す。統合された製造システム(1000000)で実際に処理された化学製品の数は、統合された製造システムの外部で調製された(例えば、購入した)出発材料の数よりも少なくとも多い。また外部から特定の補助試薬を、本発明の文脈において化学製品と見なされない程度に提供することも可能である。
【0019】
製造プラント(100000)は、化学製品の調製と、そこで調製された化学製品の精製に必要な設備からなる。本発明の文脈における統合された製造システム(1000000)の特徴として、その一部を形成するすべての製造プラント(100000)が少なくとも1つの他の製造プラント(100000)にエネルギー目的のために連結していることである。製造プラント(100000)の数は化学製品の数nより少なくてもよく、それよち大きくない(つまり、n以下である)。
【0020】
本発明の文脈における化学製品は、m種のイソシアネート最終生産物だけでなく統合された製造システム(1000000)で調製されたm個のプロセス連鎖からのすべての中間体、およびそれらが統合された製造システム(1000000)で調製された場合に、個々の化学転換に必要な任意の触媒である(例えば、メチレンジフェニレンジイソシアネート、ポリメチレンポリフェニレンポリイソシアネートの調製での転位触媒としての塩酸、および/または塩酸がサイト上に完全に持ち込まれたのではなく少なくとも部分的に調製されました場合に2つの混合物)。
【0021】
本発明のプロセスはm個のプロセス連鎖を含む。本発明の文脈におけるそのようなプロセス連鎖は、少なくとも1つの中間体によって提供された出発材料から始まる所望のイソシアネート最終生産物の調製に必要な化学転換の順序を意味する。ここで熱統合は、これらのプロセス連鎖の間、または1つのプロセス連鎖内に行うことができるがその場合はこのプロセス連鎖における異なる部分的工程の間である(1つの部分的工程または同一の部分的な工程内ではない)。本発明の文脈におけるそのようなプロセス連鎖の例は(概略的かつ単純化された形式で):
(α)A)トルエン→ジニトロトルエン;
B)ジニトロトルエン→トリレンジアミン;
C)トリレンジアミン→トリレンジイソシアネート;-部分的工程A)~C)およびイソシアネート最終生産物であるトリレンジイソシアネートを含む第一のプロセス連鎖;
(β)A)ベンゼン→ニトロベンゼン;
B)ニトロベンゼン→アニリン;
C)アニリン→メチレンジフェニレンジアミンとポリメチレンポリフェニレンポリアミンの混合物(MDA);
D)MDA→メチレンジフェニレンジイソシアネートとポリメチレンポリフェニレンポリジイソシアネートの混合物(MDI);-部分的工程A)~D)およびイソシアネート最終生産物であるMDIを含む第二のプロセス連鎖;
である。
【0022】
その後本発明による熱統合は、プロセス連鎖(1)とプロセス連鎖(2)の間、またはプロセス連鎖(α)および(β)のうちの1つの内の異なる部分的工程A)~C)もしくはA)~D)の間で行うことができる。
【0023】
本発明によれば、プロセスでの少なくとも1点で、または統合された製造システムでの1点で、1.31bar(絶対)~1.91bar(絶対)の圧力および107℃~119℃の温度で蒸気(産業的専門用語で「弱い蒸気」と呼ばれる)が生成される。圧力の決定に好適な圧力計測器は当業者に知られている。ここでは特別に、高精度を特色とする薄膜圧力伝送器が言及されるべきである。この種の機器は、例えばWikaによって、Endress+Hauserによって、またはEmersonによって供給される。上述の温度および圧力の範囲での蒸気の分別のある使用が、蒸気が得られる化学製品の製造方法において全くもって完全に可能でない場合、いずれにしてもそれを別の化学製品の製造方法において使用することができる。工程(i)で調製された化学製品以外の化学製品の調製における熱消費操作の実施のために(i)で生成された蒸気を使用する本発明の手順には、生成された蒸気の単なる一部が工程(i)で調製された化学製品以外の化学製品の調製での熱消費操作の実行に使用される場合を包含し、残りは別の使用に送付される。本発明によれば、工程(ii)における熱消費操作の実行のために、少なくとも30.0%、より好ましくは少なくとも50.0%、一層より好ましくは少なくとも70.0%、非常に例外的に好ましくは少なくとも90.0%の工程(i)で生成された蒸気を使用することが好ましい。
【0024】
本発明のすべての実施態様において、本発明の方法の工程(ii)からのパイプラインは鋼(例えば黒鋼、ステンレス鋼)から好ましくは製造される。黒鋼が特に好ましい。
【0025】
本発明の文脈における熱放出操作は、発熱性化学反応または物理的操作、例えばガス性製品の凝縮熱の放出での液化のいずれかであってよい。従って本発明の文脈における熱消費操作は、吸熱性化学反応または物理的操作、例えば液体出発材料または中間体の熱供給での蒸発)のいずれかであってよい。蒸気は、本発明の方法の工程(ii)において、間接加熱(つまり例えば熱交換器による加熱による熱消費操作において、蒸気の化学化合物-出発材料、中間体、最終生産物、補助試薬等-との直接接触がない)によるか、蒸気を直接に入力することにより(つまり例えばカラムにストリッピングした蒸気を供給することによる熱消費操作において、蒸気を化学化合物-出発材料、中間体、最終生産物、補助試薬等-と混合することにより)熱消費操作を実行する利用可能にできる。
本発明の文脈において好適な蒸気は、利用可能な残余エネルギーで蒸発することができる任意の液体であり、本発明の範囲内の圧力および温度で蒸気をもたらし、この蒸気は装置およびパイプラインで使用される材料に対して十分に不活性な蒸気である。蒸気が蒸気の直接の入力により熱消費操作の実行に利用可能となる場合、熱消費操作において化合物との望まれない反応(それは好適な蒸気源の選択を制限し得る)がないことが確保されるべきである。本発明によればスチームが特に好ましい。本発明のすべての実施態様においてしたがって少なくとも1回の熱放出操作において、間接加熱または蒸気の直接の入力による少なくとも1回の熱消費操作の実行に使用される蒸気の製造が好ましい。目的に必要な水は、様々な出所から生じ得る。特に好適なものは、既存の水グリッドからの真水、飲料水、脱塩水および蒸気凝縮液であり、脱塩水およびスチーム凝縮液などの無視できる塩分を有する水品質が好ましく、その理由としては装置およびパイプラインでの石灰堆積を回避するための使用を通じて可能であるためである。
【0026】
第一に様々な可能な本発明の実施態様の概要が続く。
【0027】
他のすべての実施態様と組み合わせることができる本発明の第一の実施態様では、イソシアネート最終生産物は、メチレンジフェニレンジイソシアネート、ポリメチレンポリフェニレンポリイソシアネート、メチレンジフェニレンジイソシアネートとポリメチレンポリフェニレンポリイソシアネートとの混合物、トリレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、ペンタン1,5-ジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネートおよびナフチルジイソシアネートからなる群から選択される。
【0028】
芳香性イソシアネートの形成を含めたすべての実施態様と組み合わせることができる本発明の第二の実施態様では、
第一のプロセス連鎖(α)において、
A)第一プロセス段階で芳香族炭化水素(特にトルエン)がニトロ化されて芳香族ニトロ化合物(特にジニトロトルエン)となる;
B)芳香族ニトロ化合物(特にジニトロトルエン)は水素化により第二プロセス段階で水素化されて芳香族アミン(特にトリレンジアミン)が得られる;
C)芳香族アミン(特にトリレンジアミン)はホスゲン化によって第三プロセス段階で転換されて芳香族イソシアネート最終生産物(特にトリレンジイソシアネート)を得る;
および/または
第二プロセス連鎖(β)において
A)第一プロセス段階で芳香族炭化水素(特にベンゼン)がニトロ化されて芳香族ニトロ化合物(特にニトロベンゼン)が得られる;
B)芳香族ニトロ化合物(特にニトロベンゼン)は水素化により第二プロセス段階で水素化されて芳香族アミン(特にアニリン)が得られる;
C)芳香族アミン(特にアニリン)は第三プロセス段階で別の芳香族アミン(特にメチレンジフェニレンジアミン、ポリメチレンポリフェニレンポリアミンおよび/またはメチレンジフェニレンジアミンとポリメチレンポリフェニレンポリアミンの混合に転換される)に転換される;
D)芳香族アミン、特にメチレンジフェニレンジアミン、ポリメチレンポリフェニレンポリアミン、および/またはメチレンジフェニレンジアミンとポリメチレンポリフェニレンポリアミンの混合物がホスゲン化によって第四プロセス段階で転換されて芳香族イソシアネート最終生産物、特にメチレンジフェニレンジイソシアネート、ポリメチレンポリフェニレンポリイソシアネート、および/またはメチレンジフェニルジイソシアネートとポリメチレンポリフェニレンポリイソシアネートとの混合物が得られる。
【0029】
第二の実施態様の特定の構成である本発明の第三の実施態様では、プロセス段階(α)C)、および/またはプロセス段階(β)D)におけるホスゲン化は、下記を含む:
I)ホスゲン化するアミン(2)を液相中でホスゲン(3)と反応させ、得られたプロセス製品を、粗製イソシアネートおよび溶媒を含んでなる液体流(60)と、ホスゲンおよび塩化水素を含んでなる気体流(70)に分離すること;
II)蒸留装置(2100)中で、工程I)からの液体流(60)を溶媒および粗製イソシアネートを含んでなる液体流(80)と、ホスゲンおよび塩化水素を含んでなる気体流(90)に分離すること;
III)蒸留装置(2200)中で、液体流(80)を溶媒を含んでなる気体流(110)と、粗製イソシアネートを含んでなる液体流(100)に分離すること;
IV)コンデンサー(2310)中で気体流(110)を少なくとも部分的に液化した後に、蒸留装置(2300)中で、溶媒を含んでなる液体流(120)と、ホスゲンを含んでなる気体流(130)に分離すること;
V)液体流(100)から液体イソシアネート流(140)を得て、蒸留装置(2400)中で第二成分および場合により溶媒を含んでなる気体流(150)をもたらすこと(場合により、流(141)としてポリマー除去のための上流装置(2410)中でポリマーイソシアネート画分の除去である工程V.1)を含んでなる)。
【0030】
第三の実施態様の特定の構成である本発明の第四の実施態様では、プロセスは、プロセス段階(β)D)においてホスゲン化されるアミンがメチレンジフェニレンジアミンとポリメチレンポリフェニレンポリアミンの混合物であり、工程V.1)も同様に行われるのでイソシアネート最終生産物が2つの流140および141において得られ、流140がメチレンジフェニレンジイソシアネートを含み流141がメチレンジフェニレンジイソシアネートとポリメチレンポリフェニレンポリイソシアネートの混合物を含むものである、プロセス連鎖(β)を含む。
【0031】
第四の実施態様の特定の構成である本発明の第五の実施態様では、工程(i)からの熱放出操作がコンデンサー(2310)中の気体流(110)の少なくとも部分的な液化であり、熱放出により生成された蒸気がプロセス段階(β)C)に誘導される。
【0032】
第五の実施態様の特定の構成である本発明の第六の実施態様では、プロセス段階(β)C)は次の工程を含む:
IA)反応器(3000)中で酸性触媒がない状態でアニリンおよびホルムアルデヒドを反応させてアミナールを形成し、その後得られた反応混合物を反応器内に統合された相分離装置内にて、または個々の相分離装置(4000)内にて、水相とアミナールを含んでなる有機相とに分離する工程;
IIA)反応器(5000)内で工程IA)で得られたアミナールを含んでなる有機相の少なくとも一部を酸と反応させて、アミナールとの反応でメチレンジフェニレンジアミンとポリメチレンポリフェニレンポリアミンの混合物を得る工程;
あるいは
IB)反応器内でアニリンと酸を反応させる工程;
IIB)工程IB)中で得られた反応混合物の少なくとも一部をホルムアルデヒドと反応させてメチレンジフェニレンジアミンとポリメチレンポリフェニレンポリアミンの混合物を得る工程;
III)反応器(6000)内で工程IIA)またはIIB)で得られた反応混合物を中和する工程;
IV) 分離容器(7000)内で、工程III)で得られた中和された反応混合物をメチレンジフェニレンジアミンとポリメチレンポリフェニレンポリアミンの混合物を含んでなる有機相と、水相へ分離する工程;
V)洗浄容器(8000)内で有機相を洗浄液で洗浄する工程;
VI)分離容器(7000)内で、工程V)で得られた混合物をメチレンジフェニレンジアミンとポリメチレンポリフェニレンポリアミンの混合物を含んでなる有機相と、水相へ分離する工程;
VII)水およびアニリンを含有している流を除去するための第一蒸留段階(10000-1)と水およびアニリンを含有している流を除去した後の第一段階に残るプロセス生成物のさらなる精製のための第二蒸留段階(10000-2)を含んでなる蒸留装置(10000)内で工程VI)からの有機相を蒸留し、熱の直接転送のための第二段階(10000-2)におけるストリッピング蒸気を場合により用いながらメチレンジフェニレンジアミンとポリメチレンポリフェニレンポリアミンの混合物を得る工程;
VIII)工程VII)で得られたメチレンジフェニレンジアミンとポリメチレンポリフェニレンポリアミンの混合物から任意にメチレンジフェニレンジアミンを分離する工程。
【0033】
第六の実施態様の特定の構成である本発明の第七の実施態様では、プロセス段階(β)C)はさらに下記を含む:
IX)排水収集容器(11000-1)、任意に排水ヒーター(11000-2)、分離容器(11000-3)、任意に抽出容器(11000-4)、および排水蒸留塔(11000-5)を備える排水後処理装置(11000)における
・工程IA)からの水相の、または
・工程IV)からの水相の、または
・工程VI)からの水相の、または
・工程VII)からの水およびアニリンを含有している流の、または
・2つ以上の上述の水性プロセス生成物の混合物の
後処理であって、
工程(ii)からの熱消費操作が、
・蒸留段階(10000-1)において工程VI)からの有機相からの水およびアニリンを含んでいる流を分離すること、
・蒸留段階(10000-2)において水およびアニリンを含有している流除去した後に第一蒸留段階(10000-1)に残るプロセス製品のさらなる精製を行うことであって、(10000-2)にて直接の熱転送のためのストリッピング蒸気を使用する場合に、このストリッピング蒸気が、工程(i)で生成された蒸気を含んでなり、好ましくは工程(i)で生成された蒸気のみからなるものである、
・排水ヒーター(11000-2)が存在する場合、この排水ヒーター(11000-2)の加熱を行うこと、および
・前述の操作の2つ以上の組み合わせ。
【0034】
第六および七の実施態様の特定の構成である本発明の第八の実施態様では、方法はさらなる化学製品として塩酸を調製するプロセス段階であって、塩酸が水中に塩化水素を吸収させること、または吸収カラム内に0.1%~20%の塩酸を吸収させることによって調製され、ここでこのように調製された塩酸は、工程(β)C)IIA)または(β)C)IB)において酸として使用され、熱消費操作が塩酸を調製するためのプロセス段階からの吸収カラムの塔底の直接的または間接的な加熱である。
【0035】
第九の実施態様の特定の構成である本発明の第十の実施態様では、方法はプロセス連鎖(α)を含み、ここでは工程(ii)からの熱消費操作が、少なくとも工程0)における液体のホスゲンの蒸発の部分的な工程であって、ここでは工程(i)からの熱放出操作がプロセス段階(α)B)から開始する。
【0036】
第二の実施態様の特定の構成である本発明の第十一の実施態様では、プロセスはプロセス連鎖(α)およびプロセス段階(β)を含み、ここでは
工程(i)からの少なくとも1回の熱放出操作がプロセス連鎖(α)の一部であり、工程(ii)からの少なくとも1回の熱消費操作がプロセス連鎖(β)の一部であるか、あるいは
工程(i)からの少なくとも1回の熱放出操作がプロセス連鎖(β)の一部であり、工程(ii)からの少なくとも1回の熱消費操作がプロセス連鎖(α)の一部である。
【0037】
他の実施態様と組み合わせてもよい本発明の第十二の実施態様では、
・工程(i)において、蒸気が、好ましくは自然循環ボイラー、強制循環ボイラー、強制経路ボイラー(forced passage boiler)、シェルおよびチューブ熱交換器、U字チューブ熱交換器、二重チューブコイル熱交換器、プレート熱交換器、チューブ熱交換器、螺旋状熱交換器および挿入されたコンデンサーからなる群から選択される間接伝熱用装置によって生成されるか、または
・工程(ii)において、熱消費操作の実行に必要な熱の量が、好ましくは自然循環蒸発装置、強制循環型蒸発装置、挿入蒸発装置、自己循環蒸発装置、上昇膜(rising film)蒸発装置、流下膜式蒸発装置、プレート蒸発装置、螺旋状チューブ蒸発装置、薄膜型蒸発装置、短経路(short path)蒸発装置、シェルおよびチューブ熱交換器および螺旋状の熱交換器からなる群から選択される間接伝熱用装置によって提供されるか、または
・工程(i)において、蒸気は、好ましくは自然循環ボイラー、強制循環ボイラー、強制経路ボイラー、シェルおよびチューブ熱交換器、U字チューブ熱交換器、二重チューブコイル熱交換器、プレート熱交換器、チューブ熱交換器、螺旋状熱交換器ならびに挿入されたコンデンサーからなる群から選択される間接伝熱用装置によって生成され、かつ工程(ii)において、熱消費操作の実行に必要な熱の量が、好ましくは自然循環蒸発装置、強制循環型蒸発装置、挿入蒸発装置、自己循環蒸発装置、上昇膜蒸発装置、流下膜式蒸発装置、プレート蒸発装置、螺旋状チューブ蒸発装置、薄膜型蒸発装置、短経路蒸発装置、シェルおよびチューブ熱交換器ならびに螺旋状の熱交換器からなる群から選択される間接伝熱用装置によって提供される。
【0038】
他の実施態様と組み合わせてもよい本発明の第十三の実施態様では、
・工程(i)における蒸気放出点から工程(ii)における熱消費操作の位置へ誘導される蒸気流の規模または
・工程(ii)において使用されるパイプラインの名目幅または
・工程(i)における蒸気放出点から工程(ii)における熱消費操作の位置へ誘導される蒸気流の規模、および工程(iii)において使用されたパイプラインの名目幅、を調節することによって、
蒸気の体積流量率とパイプラインの断面の商から計算されたパイプラインの蒸気流の速度として、10.0m/s~40.0m/sの範囲がもたらされる。
【0039】
他の実施態様と組み合わせてもよい本発明の第十四の実施態様では、パイプラインは400m以下の長さと300.0mm~1000nmの範囲の内径diを有している。
【0040】
本発明の上で簡潔に概説された実施態様およびさらなる可能な構成は、いかに詳細に説明される。当業者にとって文脈から反対が明白でない限り、所望に応じで様々な実施態様を互いに組み合わせてもよい。
【0041】
本発明の方法によって調製可能なイソシアネートとしてここで言及されるべきジイソシアネートおよびポリイソシアネートには、芳香性のジイソシアネートおよびポリイソシアネート、例えば特定の異性体または異性体混合物としてのメチレンジフェニレンジイソシアネート(mMDI)、ポリメチレンポリフェニレンポリイソシアネート(pMDI)、メチレンジフェニレンジイソシアネートとポリメチレンポリフェニレンポリイソシアネート(MDI)の混合物、純粋異性体または異性体混合としてのトリレンジイソシアネート(TDI)、キシリレンジイソシアネート(XDI)の異性体、ジイソシアナートベンゼンの異性体、キシレン2、6-イソシアネート、ナフチレン1,5-ジイソシアネート(1,5-NDI)、2~18個の炭素原子を有する脂肪族または脂環式の炭化水素に基づくジイソシアネート、例えばブタン1,4-ジイソシアネート、ペンタン1,5-ジイソシアネート(PDI)、ヘキサン1,6-ジイソシアネート(HDI)、オクタン1,8-ジイソシアネート、ノナン1,9-ジイソシアネート、デカン1,10-ジイソシアネート、2,2-ジメチルペンタン1,5-ジイソシアネート、2-メチルペンタン1,5-ジイソシアネート(MPDI)、2,4,4(または2,2,4)-トリメチルヘキサン1,6-ジイソシアネート(TMDI)、シクロヘキサン1,3-および1,4-ジイソシアネートなど、1-イソシアナート-3,3,5-トリメチル-5-イソシアナートメチルシクロヘキサン(IPDI)、2,4-または2,6-ジイソシアナート-1-メチルシクロヘキサン(H6-TDI)、1-イソシアナート-1-メチル-4(3)-イソシアナートメチルシクロヘキサン(AMCI)、1,3(および/または1,4)-ビス(イソシアナートメチル)シクロヘキサン、ビス(イソシアナートメチル)ノルボルナン(NBDI)、4,4’(および/または2,4’)-ジイソシアナートジシクロヘキシルメタン、および最大で22個の炭素原子を有する(シクロ)脂肪族トリイソシアネート、例えばトリイソシアナートシクロヘキサン、トリス(イソシアナートメチル)シクロヘキサン、トリイソシアナートメチルシクロヘキサン、1,8-ジイソシアナート-4-(イソシアナートメチル)オクタン、ウンデカン1,6,11-トリイソシアネート、1,7-ジイソシアナート-4-(3-イソシアナートプロピル)ヘプタン、1,6-ジイソシアナート-3-(イソシアナートメチル)ヘキサンまたは1,3,5-トリス(イソシアナートメチル)シクロヘキサンが挙げられる。
【0042】
上記のポリイソシアネートに対応するアミンは芳香性のジアミンまたはポリアミン、例えば異性体としてのまたは異性体混合物としてのメチレンジフェニレンジアミン(mMDA)、ポリメチレンポリフェニレンポリアミン(pMDA)、メチレンジフェニレンジアミンとポリメチレンポリフェニレンポリアミン(MDA)との混合物、純粋な異性体または異性体混合物としてのトリレンジアミン(TDA)、キシリレンジアミン(XDA)の異性体、ジアミノベンゼンの異性体、2,6-キシリジン、ナフチレン-1,5-ジアミン(1,5-NDA)、2~18個の炭素原子を有する脂肪族または脂環式の炭化水素に基づくジアミン、例えば1,4-ジアミノブタン、1,5-ジアミノペンタン(PDA)、1,6-ジアミノヘキサン(HDA)、1,8-ジアミノオクタン、1,9-ジアミノノナン、1,10-ジアミノデカン、2,2-ジメチル-1,5-ジアミノペンタン、2-メチル-1,5-ペンタンジアミン(MPDA)、2,4,4(または2,2,4)-トリメチル-1,6-ジアミノヘキサン(TMDA),1,3-および1,4-ジアミノシクロヘキサンなど、1-アミノ-3,3,5-トリメチル-5-アミノメチルシクロヘキサン(IPDA)、2,4-または2,6-ジアミノ-1-メチルシクロヘキサン(H6-TDA)、1-アミノ-1-メチル-4(3)-アミノメチルシクロヘキサン(AMCA)、1,3(および/または1,4)-ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、ビス(アミノメチル)ノルボルナン(NBDA)、4,4’(および/または2,4’)-ジアミノジシクロヘキシルメタン、最大で22個の炭素原子を有する(シクロ)脂肪族トリアミン、例えばトリアミノシクロヘキサン、トリス(アミノメチル)シクロヘキサン、トリアミノメチルシクロヘキサン、1,8-ジアミノ-4-(アミノメチル)オクタン、ウンデカン-1,6,11-トリアミン、1,7-ジアミノ-4-(3-アミノプロピル)ヘプタン)、1,6-ジアミノ-3-(アミノメチル)ヘキサンまたは1,3,5-トリス(アミノメチル)シクロヘキサンなどである。
【0043】
対応するアミンをホスゲンと反応させることによる上記で列挙されたイソシアネートの工業規模による調製は、先行技術より長く基本的に知られていて、反応は気相または液相において、バッチ式または連続式に行われてきた(W. Siefken, Liebigs Ann. 562, 75-106 (1949))。第一級アミンおよびホスゲンから有機的イソシアネートを調製する方法は既に何度も以前より記載されてきていて;例えば、G. Wegenerら、Applied Catalysis A: General 221 (2001), 303~335ページ, Elsevier Science B.V. and Ullmanns Enzyklopadie der technischen Chemie [Ullmann's Encyclopedia of Industrial Chemistry], 第4版 (1977),第13巻, 351~353ページを参照のこと。
【0044】
生産量の点では、MDIおよびTDIが世界的に最も重要なイソシアネート製品である。
【0045】
現代のMDIの工業規模による調製は連続的であり、反応は、好ましくはEP1616857B2およびEP1873142B1に記載されているように断熱性のホスゲン化として行われる。粗製MDIの後処理は、例示を目的としてUS5136087(B)、EP1854783A2、EP1475367B1あるいはEP1686112A1において記載されている。MDIは最初にメチレンジフェニレンジイソシアネートとポリメチレンポリフェニレンポリイソシアネートの混合物の形態で得られる。純粋モノマー成分(mMDI)がこの混合物から分離されるか否かに関係なく、MDIは本発明の文脈における一つの化学製品であると考えられる。
【0046】
産業におけるTDIの連続的製造は例えば、EP-A-2196455、EP-A-0289840、EP-A-0570799、EP-B-1935875およびEP-B-1935876に記載のように気相中で達成され、または例えばEP0322647B1、WO2013/139703A1、EP314985B1、EP1371636B1、EP1371635B1およびEP1413571B1に記載のように液相中で達成される。
【0047】
MDIの前駆体はMDAである。MDAは、アニリンとホルムアルデヒドの凝縮によって調製される。アニリンはニトロベンゼンの水素化によって得られる。ニトロベンゼンは、ベンゼンの硝酸とのニトロ化によって発生し、ベンゼンは個々の中間体によるMDIの調製のための石油化学的ベースを構成するものである。あるいはWO2015/124686A1およびWO2015/124687A1ならびに未公開の特許出願EP15195527.5およびEP16157777.0に記載されているような生化学方法によってアニリンを得ることもできる。
【0048】
MDAの連続式またはバッチ式の調製は、例えばEP1616890A1、US-A-5286760、EP-A-451442およびWO-A-99/40059に開示されている。
【0049】
等温モードまたは断熱モードでのアニリンの連続的製造は、例えば、GB1452466A1、EP0011090A1またはEP0944578A2(等温モード)、およびEP0696574B1、EP0696573B1、EP1882681A1(断熱モード)において記載されているように、一般にニトロベンゼンの接触水素化によって工業規模で達成される。静止している触媒床と共に言及されている方法と同様に、流体化された触媒床を有するものも、例えばDE1114820B、DE1133394BまたはWO2008/034770A1に記載されている。
【0050】
今日標準とされるニトロベンゼンの工業規模による製造方法は、本質的に硫酸と硝酸の混合物(一般に混合酸と呼ばれる)によるベンゼンの断熱ニトロ化の概念に相当する。そのようなプロセスはUS2,256,999で初めて特許請求され、例えばEP0436443B1、EP0771783B1およびUS6562247B2において現在の実施態様に記載されている。例えばEP0156199B1に記載のように、混合酸でのベンゼンのニトロ化のための等温方法も知られている。
【0051】
TDIの前駆体はTDAである。TDAは、ジニトロトルエン(DNT)の水素化処理によって得られる。DNTはトルエンのニトロ化によって発生し、個々の中間体によりTDIを調製するための石油化学ベースを構成する。
【0052】
等温モードまたは断熱モードでのTDAの現代の連続的調製は、例えばWO2011/086050A1およびそこに引用された引用文献において詳細に記載されているように、DNTの接触水素化によって工業規模で一般に達成される。
【0053】
硝化酸(硝酸と硫酸の混合物)でのトルエンのニトロ化によるジニトロトルエンの調製は、既に多数の出版物および特許出願の主題となってきた(Ullmanns Enzyklopedie der technischen Chemie, 第4版, 第17巻, 391~ffページ, 1979, Verlag Chemie Weinheim / New York)。工業規模による調製は、H. Hermann, J. Gebauer, P. Konieczny, "Industrial Nitration of Toluene to Dinitrotoluene" in ACS-Symposium, Series 623, 234-249, 1996, ed. L.F.Albright, R.V.C Carr, R.J. Schmittに記載されているように、連続モードで触媒としての硫酸の存在下で硝酸との等温手法によって主に達成される。
【0054】
硝酸の調製は多数の出版物および特許出願で記載されている。プラントの寸法は、典型的には様々なプロセス連鎖(例えばTDIプロセス連鎖、MDIプロセス連鎖)を、1つの硝酸プラントから供給することができるような状態である。
【0055】
本発明によれば、イソシアネートはより好ましくは、メチレンジフェニレンジイソシアネート、ポリメチレンポリフェニレンポリイソシアネート、メチレンジフェニレンジイソシアネートとポリメチレンポリフェニレンポリイソシアネートの混合物、トリレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、ペンタン1,5-ジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネートおよびナフチルジイソシアネートからなる群から選択される。
【0056】
芳香族イソシアネートについては、
第一のプロセス連鎖(α)において、
A)第一プロセス段階で、芳香族炭化水素(特にトルエン)がニトロ化されて芳香族ニトロ化合物(特にジニトロトルエン)を得る;
B)芳香族ニトロ化合物(特にジニトロトルエン)を水素化によって第二プロセス段階で水素化して芳香族アミン(特にトリレンジアミン)を得る;
C)芳香族アミン(特にトリレンジアミン)をホスゲン化によって第三プロセス段階で転換させて芳香族イソシアネート製品(特にトリレンジイソシアネート)を得る;
および/または
第二のプロセス連鎖(β)において
A)第一プロセス段階で芳香族炭化水素(特にベンゼン)をニトロ化して芳香族ニトロ化合物(特にニトロベンゼン)を得る;
B)芳香族ニトロ化合物(特にニトロベンゼン)を水素化によって第二プロセス段階で水素化されて芳香族アミン(特にアニリン)を得る;
C)芳香族アミン(特にアニリン)をホスゲン化によって第三プロセス段階で別の芳香族アミン(特にメチレンジフェニレンジアミン、ポリメチレンポリフェニレンポリアミンおよび/またはメチレンジフェニレンジアミンとポリメチレンポリフェニレンポリアミンの混合に転換する)に転換する;
D)芳香族アミン、特にメチレンジフェニレンジアミン、ポリメチレンポリフェニレンポリアミン、および/またはメチレンジフェニレンジアミンとポリメチレンポリフェニレンポリアミンの混合物をホスゲン化によって第四プロセス段階で転換させて芳香族イソシアネート最終生産物、特にメチレンジフェニレンジイソシアネート、ポリメチレンポリフェニレンポリイソシアネート、および/またはメチレンジフェニルジイソシアネートとポリメチレンポリフェニレンポリイソシアネートとの混合物を得る
場合が好ましい。
【0057】
芳香族イソシアネートの製造に関する本発明の好ましい構成では、ホスゲン化は液相中で行われる(この点に関しては
図1をさらに参照のこと)。より詳しくは、この実施態様はプロセス段階(α)C)、および/またはプロセス段階(β)D)におけるホスゲン化が、下記を含む方法に関する:
I)ホスゲン化するアミン(2)を液相中でホスゲン(3)と反応させ、得られたプロセス製品を、粗製イソシアネートおよび溶媒を含む液体流(60)と、ホスゲンおよび塩化水素を含む気体流(70)に分離すること;
II)工程I)から液体流(60)を蒸留装置(2100)中で溶媒および粗製イソシアネートを含む液体流(80)と、ホスゲンおよび塩化水素を含む気体流(90)に分離すること;
III)液体流(80)を蒸留装置(2200)中で、溶媒を含む気体流(110)と、粗製イソシアネートを含む液体流(100)に分離すること;
IV)気体流(110)をコンデンサー(2310)中で少なくとも部分的に液化した後に、蒸留装置(2300)中で溶媒を含む液体流(120)と、ホスゲンを含む気体流(130)に分離すること;
V)液体流(100)から液体イソシアネート流(140)を得て、蒸留装置(2400)中で第二成分および場合により溶媒を含む気体流(150)をもたらすこと(場合により、流(141)としてポリマー除去(2410)のための上流装置内でポリマーイソシアネート画分の除去である工程V.1)を含む)。
【0058】
この実施態様におけるホスゲン化のプロセス段階の好ましい装置の配置は、
図1に示されている。気体流(70、90、130、150)の後処理用装置は本発明の方法の理解に重要ではないため、単純化を目的に示されていない。1桁~3桁の参照数字は、上で与えられた意味を有する物質の流れを表示する。すべての装置には4桁の参照数字が与えられている。参照数字は次の意味を有する:
1000:反応域;
1020:溶媒(4)中でアミン溶液(20)の形態でアミン(2)を提供するための装置;
1030:溶媒(4)中でホスゲン溶液(30)の形態でホスゲン(3)を提供するための装置;
1040:溶媒(4)を提供するための装置;
1100:アミン溶液(20)をホスゲン溶液(20)および任意にさらなる溶媒(4)と混合するための混合装置;
1200:任意の下流の分離装置(1210)を有する、ホスゲン化を行うための反応空間(反応空間または分離装置には液体流(60)および気体流(70)のための出口導管が提供されている);
2100:液体流(60)を液体流(80)と気体流(90)へ分離するための蒸留装置(「脱ホスゲン化カラム」);
2200:液体流(80)を気体流(110)と液体流(100)へ分離するための蒸留装置(「溶媒カラム」);
2300:気体流(110)を、コンデンサー(2310)中で液化した後に液体流(120)と気体流(130)へ分離するための蒸留装置(「溶媒ストリッピング装置」);
2400:液体流(100)から液体イソシアネート流(140)を得て溶媒を用いてか溶媒を用いずに第二成分を含む気体流(150)を得るための蒸留装置(2400)、これは場合により、次を備えるものである
2410:ポリマーイソシアネート画分(141)を除去するためのポリマー除去(「ポリマー除去」(PMA))用の上流装置。
【0059】
本発明の方法のこの実施態様は、プロセス連鎖(β)においてメチレンジフェニレンジイソシアネート、およびメチレンジフェニレンジイソシアネートとポリメチレンポリフェニレンポリイソシアネートの混合物の調製に特に適している。プロセスのこの構成では、ホスゲン化のために想定されたアミンは、そうするとメチレンジフェニレンジアミンおよびポリメチレンポリフェニレンポリアミンの混合物であり、ここで工程V.1)(「ポリマー除去」)が行われ、それゆえにイソシアネート最終生産物が2つの流、140および141で得られ、ここで流140メチレンジフェニレンジイソシアネートであり、流141はメチレンジフェニレンジイソシアネートとポリメチレンポリフェニレンポリイソシアネートの混合物である。
【0060】
本発明のプロセスのこの実施態様では、工程(i)からの熱放出操作は、好ましくはコンデンサー(2310)中の気体流(110)の少なくとも部分的な液化であり、熱の放出によって生成された蒸気はホスゲン化されるアミンを調製するためのプロセス段階へ誘導される(つまりMDA調製)(プロセス段階(β)C))。
【0061】
MDAプロセス段階(β)C))は好ましくは次の工程を含む:
IA)アニリン(5)およびホルムアルデヒド(6)を、酸性触媒がない状態で反応器(3000)中で反応させてアミナールを形成し、その後得られた反応混合物を反応器内に統合された相分離装置内にて、または個々の相分離装置(4000)内にて、水相(8)とアミナールを含む有機相(9)とに分離する工程;
IIA)反応器(5000)内で工程IA)で得られたアミナールを含む有機相の少なくとも一部を酸(10)と反応させて、アミナールとの反応でメチレンジフェニレンジアミンとポリメチレンポリフェニレンポリアミンの混合物(11)を得る工程;
-「アミナールプロセス」-
あるいは
IB)反応器内でアニリン(5)と酸(10)を反応させる工程;
IIB)工程IB)中で得られた反応混合物の少なくとも一部をホルムアルデヒド(6)と反応させてメチレンジフェニレンジアミンとポリメチレンポリフェニレンポリアミンの混合物(11)を得る工程;
-「中和プロセス」-
III)反応器(6000)内で工程IIA)またはIIB)で得られた反応混合物(11)を中和する工程;
IV)工程III)で得られた、中和された反応混合物(12)を分離容器(7000)内でメチレンジフェニレンジアミンとポリメチレンポリフェニレンポリアミンの混合物を含む有機相(13)と、水相(14)へ分離する工程;
V)洗濯容器(8000)内で有機相(13)を洗浄液(15)で洗浄する工程;
VI)工程V)で得られた混合物(16)を分離容器(7000)内でメチレンジフェニレンジアミンとポリメチレンポリフェニレンポリアミンの混合物を含む有機相(17)と、水相(18)へ分離する工程;
VII)熱の直接転送のための第二段階(10000-2)におけるストリッピング蒸気を場合により用いながらメチレンジフェニレンジアミンとポリメチレンポリフェニレンポリアミンの混合物(21)を得るための(水性)アニリン含有流(22)の除去を行いながら、水およびアニリンを含有している流(19)を除去するための第一蒸留段階(10000-1)と水およびアニリンを含有している流を除去した後の第一段階に残るプロセス生成物(20)のさらなる精製のための第二蒸留段階(10000-2)を含む蒸留装置(10000)内で工程VI)からの有機相を蒸留する工程;
VIII)工程VII)で得られたメチレンジフェニレンジアミンとポリメチレンポリフェニレンポリアミンの混合物(21)から任意にメチレンジフェニレンジアミンを分離する工程。
【0062】
より好ましくは、工程VIII)の後に、
IX)排水収集容器(11000-1)、任意に排水ヒーター(11000-2)、分離容器(11000-3)、任意に抽出容器(11000-4)、および排水蒸留塔(11000-5;例えば排水ストリッパー)を備える排水後処理装置(11000)における
・工程IA)からの水相の、または
・工程IV)からの水相の、または
・工程VI)からの水相の、または
・工程VII)からの水およびアニリンを含む流の、または
・2つ以上の上述の水性プロセス生成物の混合物の
後処理であって、
工程(ii)からの熱消費操作が、
・蒸留段階(10000-1)において工程VI)からの有機相からの水およびアニリンを含んでいる流を分離すること、
・蒸留段階(10000-2)において水およびアニリンを含んでいる流を除去した後に第一蒸留段階(10000-1)に残るプロセス製品のさらなる精製を行うことであって、(10000-2)にて直接の熱転送のためのストリッピング蒸気を使用する場合に、このストリッピング蒸気が、工程(i)で生成された蒸気を含み、好ましくは工程(i)で生成された蒸気のみからなるものである、
・排水ヒーター(11000-2)が存在する場合、この排水ヒーター(11000-2)の加熱を行うこうと、および
・前述の操作の2つ以上の組み合わせ
からなる群から選択されるものである、後処理が続く。
【0063】
アミナールプロセスを使用した、この実施態様におけるホスゲン化されるアミンを調製するためのプロセス段階の好ましい装置の配置は、
図2に示される(任意の工程VIII)のための装置は示されていない)。一桁から二桁の参照数字は、上で意味が記された物質の流れを示す。装置にはすべて4または5桁参照数字が与えられている。参照数字は次を意味する:
3000:反応器;
4000:分離容器;
5000:4000から得られた有機相の酸との反応のための反応器;
6000:5000からの反応混合物の中和のための反応器;
7000:5000からの中和された反応混合物の有機相と水相への分離のための分離容器;
8000:7000からの有機相を洗浄するための容器;
9000:8000からの混合の有機相と水相へ分離するための分離容器;
10000:9000からの有機相を蒸留するための蒸留装置;
10000-1:第一蒸留段階(「予備蒸発装置」);
10000-2:第二蒸留段階(「MDAカラム」);
11000:4000からおよび/または7000から、または9000から、または10000-1からの水性プロセス製品の後処理のための排水後処理装置;
11000-1:言及した排水流を受入れるための排水収集容器;
11000-2:組み合わせた排水流(23)を加熱するための任意の排水ヒーター;
11000-3:(23)からの有機アニリン含有成分要素(24)を除去するための分離容器;
11000-4:アニリンとMDAを含む有機相(27)の除去と共に、(23)からアニリン(26)と一緒に有機的、アニリンを含有している成分(24)を除去した後に残る水性プロセス製品(25)を抽出するための1つ以上の段階で設計され得る任意の抽出容器;
11000-5:11000-3、または11000-4(25)または(28)からの水性プロセス製品を精製して清浄された排水(29)およびアニリンを含んでいる流(31)を得るための排水蒸留塔。
【0064】
本発明の一つの実施態様において、蒸気の形での、特に蒸留装置(2200)(「溶媒カラム」)のコンデンサー(2310)の蒸気生成装置からの蒸気の形でのMDI調製プロセス(ホスゲン化プロセス段階)からの過剰エネルギーは、パイプラインによってMDAプロセスに(ホスゲン化されるアミンの調製に)供給され、ここで例えば、蒸留段階(8000-2)のストリッピング蒸気として、または蒸留段階(10000-1)(「MDAカラムのための予備蒸発装置」)の加熱蒸気として、または排水ヒーター(10000-2)の加熱のための加熱蒸気として、または排水蒸留塔(11000-5;「アニリンストリッピング装置」)のための加熱蒸気として利用される。しかしながら、コンデンサー(2310)の蒸気生成装置中で得られた蒸気を完全にMDA段階へ供給することは絶対的に必要ではなく、他のある方法でその部分を使用することができる。
【0065】
本発明の一層の実施例において、MDI調製プロセス(ホスゲン化のプロセス段階)からの過剰エネルギーが、水または希釈された塩酸(質量に基づき0.1%~20%)中での塩化水素の吸収による、さらなる化学製品としての塩酸を調製するための方法において使用される。このように調製された塩酸は、工程(β)C)IIA)または(β)C)IB)において酸として使用され、
ここでは、工程(i)からの熱放出操作が、コンデンサー(2310)中の気体流(110)の少なくとも部分的な液化であって、かつ熱消費操作が塩酸を調製するためのプロセス段階からの吸収カラムの底部の直接的または間接的な加熱である。
【0066】
芳香族イソシアネートの製造(特にTDIの製造)に関する本発明の一層好ましい実施態様において、ホスゲン化は気相中で発生する。より詳しくは、この実施態様は、プロセス段階(α)C)、および/またはプロセス段階(β)D)中でのホスゲン化が下記を含むプロセスに関係する:
0)液体ホスゲンを蒸発させることにより気体ホスゲン(3)を提供する工程;
I)ホスゲン化するアミン(2)を蒸発させ、蒸発したアミンを気相中で工程0)からの気相ホスゲン(3)と反応させ、アミンの沸点未満の温度で溶媒含有流と接触させることによって反応を停止させ、かつ得られたプロセス製品を粗製イソシアネートおよび溶媒を含んでなる液体流(60)と、ホスゲンおよび塩化水素を含んでなる気体流(70)に分離する工程;
II)蒸留装置(2100)中で工程I)からの液体流(60)を溶媒および粗製イソシアネートを含んでなる液体流(80)と、ホスゲンおよび塩化水素を含んでなる気体流(90)に分離する工程;
III)蒸留装置(2200)中で液体流(80)を溶媒を含んでなる気体流(110)と、粗製イソシアネートを含んでなる液体流(100)に分離する工程;
IV)コンデンサー(2310)中で気体流(110)を少なくとも部分的に液化した後に、蒸留装置(2300)中で溶媒を含んでなる液体流(120)と、ホスゲンを含んでなる気体流(130)に分離する工程;
V)液体流(100)から液体イソシアネート流(140)を得て、好ましくは分断壁カラムとして設計された蒸留装置(2400)中で第二成分および溶媒を含むかもしくは含まない気体流(150)ならびに流(143)としてポリマー成分(「残留物」)とモノマーイソシアネート(TDI)の混合物を得る工程。
【0067】
TDIは特に本発明のこの実施態様によりプロセス連鎖(α)において有利に調製可能である。この実施態様において、工程(ii)からの熱消費操作は好ましくは工程0)における液体ホスゲンの蒸発の少なくとも一つの部分的工程である。好ましくは、この蒸発は液体ホスゲンが第一段階で予熱され、第二段階でさらに加熱されて蒸発されるように行われる。この二段階蒸発の第一段階は本発明の文脈において少なくとも1つの熱消費操作として工程され、これは液体ホスゲンが工程(i)で生成された蒸気により間接的加熱によって予熱させられることを意味する。工程0)は本発明の好ましい構成において、ホスゲンの直接的な(straight)蒸発と同様にさらなる工程も含み得る。したがって、得られた気体ホスゲン流は第一にCOまたは不活性ガスなどの不純物が除去されるカラム(「ホスゲン脱離カラム」)へ誘導することが可能であり、かつ工程I)での精製されたホスゲン気体流を使用することが可能である。
【0068】
工程0)中での液体ホスゲンの蒸発に使用された蒸気は、好ましくはプロセス段階(α)B)(つまり特にTDAの調製)におけるホスゲン化されるアミンの調製のためのプロセス段階から生じる。より好ましくは、この実施態様における工程(i)からの熱放出操作は、芳香族アミン(特にTDA)を得るための芳香族ニトロ化合物(特にジニトロトルエン)の(発熱性)水素化処理であり、ここで放出された反応熱は、1.31bar (絶対)~1.91bar(絶対)の圧力、および107℃~119℃の温度で蒸気の生成のために利用される。しかしながら、この蒸気はプラントから別のプロセス連鎖(例えばMDIプロセス連鎖中のMDAからMDIへの液相ホスゲン化の工程段階)において得ることも可能である。
【0069】
気相中のイソシアネートの調製についても
図1を参照してよく、しかしその場合には装置(2410)はなく(流100が蒸留装置2400へ直接誘導されることを意味する;
図1中の流100について点線で示された導管を参照)、蒸留装置(2400)は分断壁カラムとして形成されることが好ましい。精製されたイソシアネート(140)(つまり具体的に純粋TDI)は副流としてカラム(2400)から引き出される一方、ポリマー成分(「残留物」)とモノマーイソシアネート(特にTDI)の混合物は流(143)としてカラムの底部で得られる。この実施態様では、ポリマーイソシアネート画分の除去は、したがって装置の観点から蒸留装置(2400)へ統合される。工程0)(ホスゲンの蒸発)およびアミンの蒸発は単純化を引き出すために示されていない。この実施態様において、ホスゲンとアミンを溶液の形で使用することは義務ではない。反応を止める(「クエンチ」)ために溶媒(4)を反応空間(1200)の後部部分に流動方向に初めて仕込むことも可能である(同様に
図1に示されていない)。
【0070】
これまでのところ、プロセス連鎖(α)または(β)のうちの1つの内での熱統合のための特定の例が説明されてきた。しかしながら、両方のプロセスを同一の統合された製造システムで行い、それらの間の熱統合を確保することも可能である。この実施態様において、したがって本発明のプロセスはプロセス連鎖(α)およびプロセス連鎖(β)を含み、ここで
工程(i)からの少なくとも1回の熱放出操作がプロセス連鎖(α)の一部であり、かつ工程(ii)からの少なくとも1回の熱消費操作がプロセス連鎖(β)の一部であり、あるいはここで
工程(i)からの少なくとも1回の熱放出操作がプロセス連鎖(β)の一部であり、かつ、工程(ii)からの少なくとも1回の熱消費操作がプロセス連鎖(α)の一部である。
【0071】
この手順の特定の構成は実施例3において示されている。
【0072】
本発明の方法のすべての実施態様において、
・工程(i)において、好ましくは自然循環ボイラー、強制循環ボイラー、強制経路ボイラー、シェルおよびチューブ熱交換器、U字チューブ熱交換器、二重チューブコイル熱交換器、プレート熱交換器、チューブ熱交換器、螺旋状熱交換器および挿入されたコンデンサーからなる群から選択される間接伝熱用装置によって蒸気が生成されるか、(および/または蒸気の直接投入によって熱が移送されない場合)
・工程(ii)において、好ましくは自然循環蒸発装置、強制循環型蒸発装置、挿入蒸発装置、自己循環蒸発装置(例えばRobert 蒸発装置;Reinhard Billet: Verdampfung und ihre technischen Anwendungen [Evaporation and Its Industrial Applications], Weinheim, 1981, p. 119 ff.を参照のこと)、上昇膜蒸発装置、流下膜式蒸発装置、プレート蒸発装置、螺旋状チューブ蒸発装置、薄膜型蒸発装置、短経路(short path)蒸発装置、シェルおよびチューブ熱交換器および螺旋状の熱交換器からなる群から選択される、間接伝熱用装置によって熱消費操作の実行に必要な熱の量が提供される
ことが好ましい。
【0073】
本発明の方法のすべての実施態様において、
・工程(i)における蒸気放出点から工程(ii)における熱消費操作の位置へ誘導される蒸気流の規模または
・工程(ii)において使用されるパイプラインの名目幅または
・工程(i)における蒸気放出点から工程(ii)における熱消費操作の位置へ誘導される蒸気流の規模、および工程(iii)において使用されたパイプラインの名目幅、を調節することによって、
蒸気の体積流量率とパイプラインの断面の商から計算されたパイプラインの蒸気流の速度として、10.0m/s~40.0m/sの範囲がもたらされることも好ましい。
【0074】
この手順は、過度に低い蒸気速度のためにプロセスが非経済的にはならず(その理由としては過度に低い蒸気速度の場合に、蒸気導管に選択する直径は比較的高くなければならず、それは材料および絶縁体(insulation)の消費を上昇させることを含む)、さらに過度に高い蒸気速度のために操作上の問題、そして安全上の問題さえ発生しない(その理由としては過度に高い蒸気速度の場合に、蒸気パイプの内壁で壁材料が損失するまで腐食が生じ、この損失を含むためである)。
【0075】
ここで工程(i)中における蒸気放出場所により提供される蒸気の量は、多数の成分流に分割されるかもしれず、その各々は異なる熱消費操作に送りだされる。ここで蒸気の体積流量率は、既存の圧力および温度の条件下の蒸気および密度の既知の質量流量から容易に計算することができ、これは当業者であれば利用可能な表状の作業から単純なやり方で確認することができる。上述の範囲内での蒸気速度を設定する効果は、一方では過度に大きなパイプラインの断面と、他方では過度な圧力降下および浸食の危険性(蒸気中の滴状物形成の場合)が回避されることである。
【0076】
本発明のすべての実施態様において、工程(ii)で使用されるパイプラインは好ましくは400m以下、好ましくは350m以下、より好ましくは300m以下の長さ、および300.0mm~1000mmの範囲の内径diを有することがさらに好ましい。パイプラインの最小の長さは、安全条件を含む建築事情(例えば特定のプラント部品からの当然の最小距離)に起因し、その他は任意の制限を受けない。建築事情を考慮して確認された最小のパイプライン長さを制限することは好ましい。選択されたすべてのパイプライン長さについては、300.0mm~1000mmの範囲のパイプラインの内径を使用してもよい。一般に、パイプライン製造会社からの標準仕様データから、特定のパイプが指定された範囲内の内径を有しているか読み取ることはすぐに可能であるだろう。疑念がある場合、内径は単純なやり方で測定することができる。長さおよび内径の両方を決定するために、20℃でのそれぞれの値が重大である。必要に応じてパイプライン部分はその統合された製造システム中への組み込みに先立って20℃の制御された温度でホールの中で測定することができる。これらのパラメーターを観察することは、パイプラインにわたる圧力低下と熱損失を最小化することを可能にする。上記の定義された範囲内の長さおよび内径の最適な組み合わせは、当業者であれば境目の条件(蒸気放出場所と蒸気消費場所との間の空間距離、蒸気圧、得られた蒸気の質量流量)に依存し、ルーチン的な実験および/またはコンピューターによるシミュレーションを通じて容易に確認することができる。熱損失のさらなる最小化については、パイプラインの単離が好ましい。これは本発明に従って、および/または低い年平均温度の場所での統合された製造システムの構築などの特別な条件下で、最大に近い可能なパイプライン長さの場合に特に真実である。原則として別の可能性は蒸気のわずかな加熱であるが、これは方法の経済実行可能性を悪化させるためにこの手順は一般に選択上の手順ではない。
【0077】
本発明の方法および本発明の統合された製造システムは、少なくとも次の利点をもたらす:
i)そのほかに利用されなかった蒸気を冷却するための費用がない;
ii)製造プラントが残余熱を使用するので高い値の形式でエネルギーが削減される(例えば6000mbarゲージの圧力での蒸気)、
iii)全面的な統合された製造システムの蒸気の正味の必要量が減少する(統合された製造システムのための主要蒸気生成の減少)。
【0078】
これらのi)~iii)の利点は各々個々にまたは有利に組み合わせて生じ得る。
【0079】
本発明は、例を用いて以下に説明される。
【実施例】
【0080】
例
メチレンジフェニレンジイソシアネートとポリメチレンポリフェニレンポリイソシアネート(以下総称して、MDI)の混合物を第一溶媒カラムで得られた蒸気の内部熱統合で調製するための一般的条件-図1も参照のこと
115℃の温度でのメチレンジフェニレンジアミンとポリメチレンポリフェニレンポリアミン(2、以下総称してMDA)の46t/hの混合物を、静的ミキサー(図示せず)を用いて、溶媒として60℃の温度での118.5t/hのモノクロロベンゼン(4、MCB)と混合させて30%MDA溶液(20)を得た。ホスゲン生成装置およびホスゲン液化装置(両方とも図示せず)によってホスゲンを得た。その後、ホスゲンをホスゲン分解槽(1030)中にてMCBで55%ホスゲン溶液(30)に希釈した。EP1873142B1に記載のように、断熱反応で-3℃の温度の55%ホスゲン溶液(30)を1時間当たり165トン、76℃の温度での30%MDA溶液(20)の形態で、1時間当たり46メートルトンのMDAと反応させた。2つの原料溶液を混合装置(1100)内で混合した後に、得られた反応溶液(50)を懸濁導管を介して熱したホスゲン化塔(1200)へ95℃の温度で流した。ホスゲン化塔の頂部では絶対圧は2.5barであり、温度は105℃であった。反応で形成された塩化水素は、ガス流(70)として微量のホスゲンとMCBと一緒に除去された。液体の反応混合物(60)はホスゲン化塔から引き出され、連続する後処理に送られた。この目的のために、それは材料流として熱した脱ホスゲン化カラム(2100)へ導入された。136℃の頂部の温度および2.5barの絶対圧で、ホスゲンは、微量のMCBおよび塩化水素(90)と一緒に上(overhead)で除去された。ホスゲンはホスゲン吸収カラム(図示せず)で吸収されホスゲン分解槽(1030)へ流され、塩化水素は、塩化水素吸収器(図示せず)そして次に塩酸槽(図示せず)にさらなる使用のために向かった。イソシアネート含有反応溶液からの塩化水素および過剰ホスゲンの除去後、粗製イソシアネート溶液(80)を得て、それを脱ホスゲン化カラム(2100)の底部から放出し、175℃の温度で第一蒸留段階(2200)に流しMCB溶媒を除去した。この溶媒蒸留塔の頂部の絶対圧は、155℃の底部温度で800mbarであった。MCBは124℃でガス状(110)にて上から引きだされ、119℃にてコンデンサー(2310)で液化された。コンデンサー(2310)には凝縮液が仕込まれ、112℃の温度で1.51bar
(絶対)の圧力で20t/hの蒸気を得た。この1t/hの蒸気は塩化水素吸収器(図示せず)中の塩酸から微量のMCBを引き出すために利用された。このさらなる1t/hの蒸気は、MDIプラントにおける微量の加熱のために消費される。依然として残存する圧力1.51bar
(絶対)のこの18t/hの蒸気は、空気冷却器によって「破壊され」、および残りの凝縮液は凝縮液システムの回路に送られた。反応生成物(100)はカラムの底部から放出され、残余MCBを第二カラム(図示せず)にて1%まで除去した。その後8mbarの絶対圧および214℃の底部温度で、向流蒸発装置において、製品からフェニルイソシアネートおよび残余MCBなどの第二成分を除去した。これによって第二カラム(図示せず)からの底部生成物として、58t/hのMDIが得られ、さらなる蒸留(2410/2400)によって分離されるか精製されて、ポリマー画分141(モノマーMDI、mMDIの割合も含む)およびモノマー画分140が得られ、その両者はその後、一層の使用のために対応するMDI製品槽に流された。
【0081】
メチレンジフェニレンジアミンおよびポリメチレンポリフェニレンポリアミン(以下総称して、MDA)を調製するための一般的条件-図2も参照のこと
連続的な反応プロセスにおいて、30℃の温度の76t/hの入力アニリン(5)(95質量%のアニリンに相当)および40℃の温度の23.3t/hの37%ホルマリン水溶液(6)を混合し、撹拌反応槽(3000)中で93℃および1.04barの絶対圧にてアミナールに変換した。反応槽から出る反応混合物(7)を相分離装置(4000、「アミナール分離器」)へ誘導した。排水収集容器(11000-1)に誘導される水相(8)を除去するための相分離後に有機相(9)を9.4t/hの30%塩酸水溶液(3)とミキシングノズル(図示せず)中で混合し、第一転位反応器に流した。転位反応は50℃~130℃の反応カスケード(5000)の中で行なわれた。反応の完了において、得られた反応混合物(11)は10.7t/hの32%水酸化ナトリウム溶液(32)と混合し、撹拌中和容器(stirred neutralization vessel)(6000)の中で変換した。温度は105℃であり、絶対圧は1.04barであった。その後中和された反応混合物(12)は、中和分離機(neutralization separator)(7000)の中で排水収集容器(11000-1)に誘導される低度の水相(14)と有機相(13)へ分離された。有機上部相は洗浄操作に送られ、凝縮液および/または内部水回路からの水(アニリン/水混合物)(15)で撹拌洗浄容器(8000)の中で洗浄された。洗浄水分離機(9000)中の洗浄水(18)を除去した後に、このように得た粗製MDA(17)を8.6t/hの6bar(ゲージ)蒸気で(10000-1)中で事前蒸発させ、蒸留装置(10000-2)中で2t/hの6bar(ゲージ)ストリッピング蒸気を用いて水およびアニリン(22)を除去して底部生成物(21)として50t/hのMDAを得た。蒸留装置(10000-1)からの-アニリンおよび水を含む流(19)-からの、ならびに蒸留装置(10000-2)からの-アニリンおよび水を含む流(22)-からの、洗浄水(18)および凝縮された頂部製品は排水収集容器(11000-1)に誘導される。回収した排水は、分離容器(11000-3)中でアニリン(ウェット、溶解限度まで水で飽和化)を含む有機相(24)と、有機成分を含む水相(25)とに分離された。水相(25)は最終の排水処理に入る前に、13t/hの6bar(ゲージ)のストリッピング蒸気を用いて排水ストリッピング装置(11000-5)中でアニリン(29)を取り除いた。
【0082】
実施例1(本発明):MDAプロセスにおける1.51bar
(絶対)
蒸気としてのMDIのための第一溶媒カラムの熱統合からの残余エネルギーの利用
一般条件に記載されているように、連続モードで58t/hのMDIの調製が行なわれた。MDIプラントの溶媒蒸留塔の熱統合からの残余熱は、MDAプラントへDN700パイプライン(内径695.0mm)を介して112℃の温度で1.51bar(絶対)の圧力にて蒸気として送られた。MDIプラントの溶媒蒸留塔とMDAプラント中のブランチ(branch)間のパイプラインの長さは235mであった。8t/hのこの蒸気は、MDAカラム(さらに25mのDN300パイプライン;内径309.7mm)への入力流の予備蒸発(10000-1)中の加熱のためにMDAプラント中で利用され、この2t/hのさらなる蒸気は、MDAカラム(10000-2)(さらに15mのパイプライン)のストリッピング蒸気として利用され、この残りの8t/hの蒸気は排水ストリッピング装置(11000-5)(さらに40mのDN300パイプライン)の中で使用された。排水ストリッピング装置(11000-5)の操作にそのほかに必要な7.01bar(絶対)蒸気の完全な置換のための残りの量としての4.1t/hの1.51bar(絶対)蒸気は、MDIプロセス連鎖中の隣接したアニリンプラントから供給された。
【0083】
結論:本発明の手順は、MDAプラント中で7.01bar(絶対)の圧力で合計19.2t/hの蒸気を節約する。
【0084】
実施例2(本発明):MDAプロセスでの1.51bar
(絶対)
蒸気としてのMDIの第一溶媒カラムの熱統合からの残余エネルギーの利用
一般条件に記載のように、連続モードで58t/hのMDIの調製を行なった。第一溶媒蒸留塔(2200)は異なるパラメーターで操作するとより高い等級の蒸気が生じた。一般条件に記載のように、粗製イソシアネート溶液は脱ホスゲン化カラム(2100)の底部から放出されて177℃の温度で第一蒸留段階(2200)に流された。この溶媒蒸留塔の頂部の絶対圧は155℃の底部温度で1.5barであった。MCB(110)は147℃にてガス状で上から引き出され、140℃にてコンデンサー(2310)で液化された。コンデンサー(2310)に凝縮液を与え、112℃の温度で1.51bar(絶対)の圧力にて19.6t/hの蒸気を得た。この0.8t/hの蒸気を塩化水素吸収器(図示せず)中で塩酸から微量のMCBを引き出すために利用した。このさらなる0.8t/hの蒸気は、MDIプラント中でわずかに加熱するために消費された。MDIのプラントの溶媒蒸留塔の熱統合からの残余熱から依然として残っているこの1.51bar(絶対)蒸気の18t/hを、MDAプラント内へ分配パイプ導管によって112℃の温度で1.51bar(絶対)蒸気として送り出した。この2t/hの蒸気は、MDAカラム(10000-2)中の蒸気のストリッピング蒸気として使用され、このさらなる12.1t/hの蒸気は排水ストリッピング装置(11000-5)において使用され、残りの量の蒸気は、MDIプロセス連鎖中のニトロベンゼンプラントにおいて使用された。
【0085】
結論:本発明の手順はMDAプラント中で、7.01bar(絶対)の圧力にて14t/hの蒸気を節約し、かつ実施例1と比較して残余熱蒸気のより高い蒸気圧のために、プラント間の伝熱導管のパイプライン直径は33%小さく、これはパイプラインの資本費用がより低く、かつより低い熱損失も記録されることを意味する。
【0086】
実施例3(本発明):MDAプロセスにおける1.51bar
(絶対)
蒸気としてのMDIの第一溶媒カラムの熱統合からの残余エネルギーの利用
その手順は実施例2のとおりであるが、ただし実施例2におけるようにMDIプロセス連鎖中のニトロベンゼンプラント中では蒸気の残余量が使用されず、その代わりに隣接したTDIプロセス連鎖中でTDIプラントの塩化水素吸収において使用される。
【図面の簡単な説明】
【0087】