(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-02-08
(45)【発行日】2022-02-17
(54)【発明の名称】ポリカルボジイミド化合物及びその製造方法、並びに樹脂組成物
(51)【国際特許分類】
C08G 18/09 20060101AFI20220209BHJP
C08G 18/83 20060101ALI20220209BHJP
C08G 18/28 20060101ALI20220209BHJP
C08G 18/00 20060101ALI20220209BHJP
C08G 18/40 20060101ALI20220209BHJP
C09D 133/04 20060101ALI20220209BHJP
C09D 135/02 20060101ALI20220209BHJP
C09D 175/04 20060101ALI20220209BHJP
C09D 179/08 20060101ALI20220209BHJP
C09D 11/102 20140101ALI20220209BHJP
【FI】
C08G18/09 050
C08G18/83
C08G18/28 015
C08G18/00 C
C08G18/40
C09D133/04
C09D135/02
C09D175/04
C09D179/08
C09D11/102
(21)【出願番号】P 2019513671
(86)(22)【出願日】2018-04-18
(86)【国際出願番号】 JP2018016036
(87)【国際公開番号】W WO2018194102
(87)【国際公開日】2018-10-25
【審査請求日】2021-02-12
(31)【優先権主張番号】P 2017084476
(32)【優先日】2017-04-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2017253219
(32)【優先日】2017-12-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】309012122
【氏名又は名称】日清紡ケミカル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002620
【氏名又は名称】特許業務法人大谷特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】西川 直毅
(72)【発明者】
【氏名】塚本 奈巳
(72)【発明者】
【氏名】柳沢 健一
(72)【発明者】
【氏名】山崎 善宏
【審査官】小森 勇
(56)【参考文献】
【文献】特開2002-003564(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08G 18/00-18/87
C09D 133/04
C09D 135/02
C09D 175/04
C09D 179/08
C09D 11/102
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第一級イソシアネート基を少なくとも1つ有する脂肪族ジイソシアネート化合物由来のポリカルボジイミド化合物であって、
前記ポリカルボジイミド化合物は、すべての末端に、イソシアネート基と反応する官能基を有する有機化合物で封止された構造を有しており、
前記ポリカルボジイミド化合物のカルボジイミド基濃度A(%)、及び該ポリカルボジイミド化合物のゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)を用いて測定されたポリスチレン換算重量平均分子量Mwが、下記式(1)
を満たし、
前記ポリカルボジイミド化合物のカルボジイミド基濃度A(%)が5~30%であり、
前記ポリカルボジイミド化合物のカルボジイミド基濃度A(%)は、カルボジイミド基の式量40と、滴定により求めたポリカルボジイミド化合物1g中のカルボジイミド基のモル量nとから、次式A=40×n×100で定義される値である、ポリカルボジイミド化合物。
(A/Mw)×1000≧0.55 (1)
【請求項2】
前記脂肪族ジイソシアネート化合物が、ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、1,3-ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン、及びキシリレンジイソシアネートからなる群より選ばれる少なくとも1種である、請求項1に記載のポリカルボジイミド化合物。
【請求項3】
前記有機化合物が有する前記官能基が、水酸基、アミノ基、イソシアネート基、エポキシ基、及びカルボキシ基から選ばれる少なくとも1種である、請求項1又は2に記載のポリカルボジイミド化合物。
【請求項4】
前記有機化合物が、前記官能基以外に、さらに親水性基を有する、請求項1~3のいずれか1項に記載のポリカルボジイミド化合物。
【請求項5】
前記親水性基が、下記一般式(I)で示す有機基である、請求項4に記載のポリカルボジイミド化合物。
R
1-(O-CHR
2-CH
2)
m- ・・・(I)
(式中、R
1は炭素数1~4のアルキル基、R
2は水素原子又はメチル基である。R
2が複数存在する場合、該R
2は、互いに同一でも異なっていてもよい。mは1~30の整数を表す。)
【請求項6】
前記一般式(I)のR
2が水素原子である、請求項5に記載のポリカルボジイミド化合物。
【請求項7】
前記一般式(I)のR
1がメチル基又はエチル基である、請求項5又は6に記載のポリカルボジイミド化合物。
【請求項8】
水溶性又は水分散性である、請求項4~7のいずれか1項に記載のポリカルボジイミド化合物。
【請求項9】
1分子中のカルボジイミド基の数が3以上7以下である、請求項1~8のいずれか1項に記載のポリカルボジイミド化合物。
【請求項10】
さらに第一級イソシアネート基を有しないジイソシアネート化合物を由来とするカルボジイミド基を有する、請求項1~9のいずれか1項に記載のポリカルボジイミド化合物。
【請求項11】
さらに第二級イソシアネート基を2個有するジイソシアネート化合物を由来とするカルボジイミド基、第三級イソシアネート基を2個有するジイソシアネート化合物を由来とするカルボジイミド基、及び芳香族イソシアネート基を2個有するジイソシアネート化合物を由来とするカルボジイミド基からなる群より選ばれる少なくとも1種を有する、請求項10に記載のポリカルボジイミド化合物。
【請求項12】
第二級イソシアネート基を2個有するジイソシアネート化合物を由来とするカルボジイミド基、及び第三級イソシアネート基を2個有するジイソシアネート化合物を由来とするカルボジイミド基からなる群より選ばれる少なくとも1種を有する、請求項11に記載のポリカルボジイミド化合物。
【請求項13】
請求項1~12のいずれか1項に記載のポリカルボジイミド化合物の製造方法であって、
カルボジイミド重合反応が溶媒中で行われ、該カルボジイミド重合反応の温度が115℃以上165℃以下である、ポリカルボジイミド化合物の製造方法。
【請求項14】
前記有機化合物が、カルボジイミド重合反応開始前、カルボジイミド重合反応の開始時又はカルボジイミド重合反応中に添加される、請求項13に記載のポリカルボジイミド化合物の製造方法。
【請求項15】
前記溶媒が、非プロトン性溶媒である、請求項13又は14に記載のポリカルボジイミド化合物の製造方法。
【請求項16】
前記非プロトン性溶媒が、非プロトン性水溶性溶媒である、請求項15に記載のポリカルボジイミド化合物の製造方法。
【請求項17】
請求項1~12のいずれか1項に記載のポリカルボジイミド化合物、及び酸価を有する水性樹脂を含み、
前記水性樹脂の固形分酸価が5mgKOH/g以上であり、前記水性樹脂の固形分酸価から算出される、カルボジイミド基と反応する官能基のモル数bに対する前記ポリカルボジイミド化合物のカルボジイミド基のモル数aの比a/bが、0.4以上4.5以下である、樹脂組成物。
【請求項18】
前記水性樹脂が有する官能基がカルボキシ基である、請求項17に記載の樹脂組成物。
【請求項19】
前記水性樹脂が、ポリウレタン樹脂、アクリル樹脂、及びポリエステル樹脂からなる群より選ばれる少なくとも1種の樹脂である、請求項17又は18に記載の樹脂組成物。
【請求項20】
請求項17~19のいずれか1項に記載の樹脂組成物を含有する塗料組成物。
【請求項21】
請求項17~19のいずれか1項に記載の樹脂組成物を含有するコーティング剤組成物。
【請求項22】
請求項17~19のいずれか1項に記載の樹脂組成物を含有するインキ組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリカルボジイミド化合物及びその製造方法、並びに前記ポリカルボジイミド化合物及び酸価を有する水性樹脂を含む樹脂組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
水溶性又は水分散性である水性樹脂は、塗料、インキ、繊維処理剤、接着剤、コーティング剤等、多くの分野で使用されている。水性樹脂には、樹脂自体に水溶性又は水分散性を付与するために、一般にカルボキシ基が導入されている。このような水性樹脂の塗膜の強度、耐水性、耐久性等の諸物性を向上させる手段として、該水性樹脂が有するカルボキシ基と反応して架橋構造を形成し得るカルボジイミド化合物等の架橋剤を併用する方法が採用されている。
【0003】
例えば、特許文献1には、重合性不飽和基を有するウレタン樹脂、カルボジイミド系架橋剤、及び水性媒体を含有する水性樹脂組成物が開示されている。
【0004】
カルボジイミド化合物は、カルボジイミド化触媒の存在下、加熱条件下で、有機ポリイソシアネートを脱二酸化炭素縮合させることで一般的に製造されている(例えば、特許文献2~4)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2016-69391号公報
【文献】特開平10-315615号公報
【文献】特開2008-156506号公報
【文献】特開2007-270046号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に記載の水性樹脂組成物では、塗膜形成時に140℃に加熱する必要があり、しかも、作製した塗膜の耐溶剤性が不十分であった。
【0007】
また、特許文献2~4に記載のカルボジイミド化合物では保存安定性が十分なものではなく、架橋剤としての性能が十分ではない場合があった。
【0008】
本発明は、このような実情に鑑みてなされたものであり、保存安定性及び架橋剤としての性能に優れたカルボジイミド化合物、及びその製造方法、並びに、低温で作製した塗膜の成膜性と耐溶剤性に優れた樹脂組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、上記の課題を解決するべく鋭意検討した結果、下記の発明により当該課題を解決できることを見出した。
【0010】
すなわち、本願開示は、以下に関する。
[1]第一級イソシアネート基を少なくとも1つ有する脂肪族ジイソシアネート化合物由来のポリカルボジイミド化合物であって、前記ポリカルボジイミド化合物は、すべての末端に、イソシアネート基と反応する官能基を有する有機化合物で封止された構造を有しており、前記ポリカルボジイミド化合物のカルボジイミド基濃度A(%)、及び該ポリカルボジイミド化合物のゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)を用いて測定されたポリスチレン換算重量平均分子量Mwが、下記式(1)を満たす、ポリカルボジイミド化合物。
(A/Mw)×1000≧0.55 (1)
[2]前記脂肪族ジイソシアネート化合物が、ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、1,3-ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン、及びキシリレンジイソシアネートからなる群より選ばれる少なくとも1種である、上記[1]に記載のポリカルボジイミド化合物。
[3]前記有機化合物が有する前記官能基が、水酸基、アミノ基、イソシアネート基、エポキシ基、及びカルボキシ基から選ばれる少なくとも1種である、上記[1]又は[2]に記載のポリカルボジイミド化合物。
[4]前記有機化合物が、前記官能基以外に、さらに親水性基を有する、上記[1]~[3]のいずれか1項に記載のポリカルボジイミド化合物。
[5]前記親水性基が、下記一般式(I)で示す有機基である、上記[4]に記載のポリカルボジイミド化合物。
R1-(O-CHR2-CH2)m- ・・・(I)
(式中、R1は炭素数1~4のアルキル基、R2は水素原子又はメチル基である。R2が複数存在する場合、該R2は、互いに同一でも異なっていてもよい。mは1~30の整数を表す。)
[6]前記一般式(I)のR2が水素原子である、上記[5]に記載のポリカルボジイミド化合物。
[7]前記一般式(I)のR1がメチル基又はエチル基である、上記[5]又は[6]に記載のポリカルボジイミド化合物。
[8]水溶性又は水分散性である、上記[4]~[7]のいずれか1項に記載のポリカルボジイミド化合物。
[9]1分子中のカルボジイミド基の数が3以上7以下である、上記[1]~[8]のいずれか1項に記載のポリカルボジイミド化合物。
[10]さらに第一級イソシアネート基を有しないジイソシアネート化合物を由来とするカルボジイミド基を有する、上記[1]~[9]のいずれか1項に記載のポリカルボジイミド化合物。
[11]さらに第二級イソシアネート基を2個有するジイソシアネート化合物を由来とするカルボジイミド基、第三級イソシアネート基を2個有するジイソシアネート化合物を由来とするカルボジイミド基、及び芳香族イソシアネート基を2個有するジイソシアネート化合物を由来とするカルボジイミド基からなる群より選ばれる少なくとも1種を有する、上記[10]に記載のポリカルボジイミド化合物。
[12]第二級イソシアネート基を2個有するジイソシアネート化合物を由来とするカルボジイミド基、及び第三級イソシアネート基を2個有するジイソシアネート化合物を由来とするカルボジイミド基からなる群より選ばれる少なくとも1種を有する、上記[11]に記載のポリカルボジイミド化合物。
【0011】
[13]上記[1]~[12]のいずれか1項に記載のポリカルボジイミド化合物の製造方法であって、カルボジイミド重合反応が溶媒中で行われ、該カルボジイミド重合反応の温度が115℃以上165℃以下である、ポリカルボジイミド化合物の製造方法。
[14]前記有機化合物が、カルボジイミド重合反応開始前、カルボジイミド重合反応の開始時又はカルボジイミド重合反応中に添加される、上記[13]に記載のポリカルボジイミド化合物の製造方法。
[15]前記溶媒が、非プロトン性溶媒である、上記[13]又は[14]に記載のポリカルボジイミド化合物の製造方法。
[16]前記非プロトン性溶媒が、非プロトン性水溶性溶媒である、上記[15]に記載のポリカルボジイミド化合物の製造方法。
【0012】
[17]上記[1]~[12]のいずれか1項に記載のポリカルボジイミド化合物、及び酸価を有する水性樹脂を含み、前記水性樹脂の固形分酸価が5mgKOH/g以上であり、前記水性樹脂の固形分酸価から算出される、カルボジイミド基と反応する官能基のモル数bに対する前記ポリカルボジイミド化合物のカルボジイミド基のモル数aの比a/bが、0.4以上4.5以下である、樹脂組成物。
[18]前記水性樹脂が有する官能基がカルボキシ基である、上記[17]に記載の樹脂組成物。
[19]前記水性樹脂が、ポリウレタン樹脂、アクリル樹脂、及びポリエステル樹脂からなる群より選ばれる少なくとも1種の樹脂である、上記[17]又は[18]に記載の樹脂組成物。
[20]上記[17]~[19]のいずれか1項に記載の樹脂組成物を含有する塗料組成物。
[21]上記[17]~[19]のいずれか1項に記載の樹脂組成物を含有するコーティング剤組成物。
[22]上記[17]~[19]のいずれか1項に記載の樹脂組成物を含有するインキ組成物。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、保存安定性及び架橋剤としての性能に優れたカルボジイミド化合物、及びその製造方法を提供することができる。また、低温で作製した塗膜の成膜性と耐溶剤性に優れた樹脂組成物を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0014】
[ポリカルボジイミド化合物]
本発明のポリカルボジイミド化合物は、第一級イソシアネート基を少なくとも1つ有する脂肪族ジイソシアネート化合物由来のポリカルボジイミド化合物であって、前記ポリカルボジイミド化合物は、すべての末端に、イソシアネート基と反応する官能基を有する有機化合物で封止された構造を有しており、前記ポリカルボジイミド化合物のカルボジイミド基濃度A(%)、及び該ポリカルボジイミド化合物のゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)を用いて測定されたポリスチレン換算重量平均分子量Mwが、下記式(1)を満たすことを特徴とする。
(A/Mw)×1000≧0.55 (1)
【0015】
前記カルボジイミド基濃度Aは、カルボジイミド基の式量40と、滴定により求めたカルボジイミド化合物1g中のカルボジイミド基のモル量nとから、下記式(2)で定義される値である。具体的には下記実施例に記載の方法で求められる。
A=40×n×100 (2)
【0016】
本発明のポリカルボジイミド化合物は、前記式(1)において、(A/Mw)×1000が0.55以上である。ポリカルボジイミド化合物の合成においてカルボジイミド化反応とともに、副反応として、生成したカルボジイミド基同士の反応、及び生成したカルボジイミド基とイソシアネート基との反応が進行する。また、必要以上に高分子量化したポリカルボジイミド化合物が生成する場合がある。前記式(1)において、(A/Mw)×1000が0.55未満では、このような副反応や、必要以上に高分子量化したポリカルボジイミド化合物が多くなり、該ポリカルボジイミド化合物の保存安定性、及び架橋剤としての性能が低下するおそれがある。また、該ポリカルボジイミド化合物を含む樹脂組成物を用いて低温で作製した塗膜の成膜性と耐溶剤性を低下させるおそれがある。このような観点から、(A/Mw)×1000は好ましくは0.56以上、より好ましくは0.57以上である。
【0017】
前記カルボジイミド基濃度Aは、好ましくは5~30%、より好ましくは6~25%、さらに好ましくは9~20%である。Aを上記範囲内とすることで、上記式(1)を満たすポリカルボジイミド化合物を得ることが容易になる。
【0018】
前記ポリカルボジイミド化合物は、第一級イソシアネート基を少なくとも1つ有する脂肪族ジイソシアネート化合物由来のカルボジイミド構造を有する。そして、前記ポリカルボジイミド化合物は、すべての末端に、イソシアネート基と反応する官能基を有する有機化合物(以下、単に「有機化合物」ともいう)で封止された構造を有する。前記ポリカルボジイミド化合物が、第一級イソシアネート基を少なくとも1つ有する脂肪族ジイソシアネート化合物を由来とするカルボジイミド基を有することにより、該ポリカルボジイミド化合物を含む樹脂組成物を用いて低温で作製した塗膜の成膜性、塗膜の耐溶剤性、密着性及び耐温水性を向上させることができる。また、該ポリカルボジイミド化合物は、水性樹脂との相溶性を高める観点から、少なくとも一つの末端が親水性基で封止された構造であることが好ましく、すべての末端が親水性基で封止された構造であることがより好ましい。
【0019】
前記第一級イソシアネート基を少なくとも1つ有する脂肪族ジイソシアネート化合物(以下、単に「脂肪族ジイソシアネート化合物」ともいう)としては、例えば、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、エチレンジイソシアネート、テトラメチレンジイソシアネート、ドデカメチレンジイソシアネート等の直鎖状の脂肪族ジイソシアネート化合物;2,2,4-トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート等の枝分かれ構造を有する脂肪族ジイソシアネート化合物;1,3-ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン(HXDI)、イソホロンジイソシアネート(IPDI)、ノルボルナンジイソシアネート(NBDI)等の脂環構造を有する脂肪族ジイソシアネート化合物、キシリレンジイソシアネート等の芳香環を有する脂肪族ジイソシアネート化合物等が挙げられる。中でも、入手容易性の観点から、ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、1,3-ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン及びキシリレンジイソシアネートからなる群より選ばれる少なくとも1種であることが好ましく、ヘキサメチレンジイソシアネートがより好ましい。これらは、単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0020】
前記ポリカルボジイミド化合物は、その由来成分として、第一級イソシアネート基を少なくとも1つ有する脂肪族ジイソシアネート化合物を有するが、本発明の効果を損なわない範囲で、その他のジイソシアネート化合物(以下、「任意のジイソシアネート化合物」ということがある。)を有していてもよい。
ここで、その他のジイソシアネート化合物(任意のジイソシアネート化合物)とは、第一級イソシアネート基を有しないジイソシアネート化合物のことを意味する。
任意のジイソシアネート化合物とは、例えば、第二級イソシアネート基、第三級イソシアネート基、及び芳香族イソシアネート基からなる群より選ばれる2つのイソシアネート基を有するジイソシアネート化合物が挙げられる。一態様として、任意のジイソシアネート化合物としては、第二級イソシアネート基を2個有するジイソシアネート化合物、第三級イソシアネート基を2個有するジイソシアネート化合物、及び芳香族イソシアネート基を2個有するジイソシアネート化合物が挙げられる。
【0021】
第二級イソシアネート基を2個有するジイソシアネート化合物としては、例えば、4,4’-ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート(HMDI)、シクロヘキサンジイソシアネート(CHDI)等が挙げられる。第三級イソシアネート基を2個有するジイソシアネート化合物としては、例えば、テトラメチルキシリレンジイソシアネート(TMXDI)等が挙げられる。芳香族イソシアネート基を2個有するジイソシアネート化合物としては、例えば、4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート、4,4’-ジフェニルエーテルジイソシアネート、p-フェニレンジイソシアネート、m-フェニレンジイソシアネート、3,3’-ジメトキシ-4,4’-ビフェニルジイソシアネート、o-トリジンジイソシアネート、ナフチレンジイソシアネート、2,4-トリレンジイソシアネート、2,6-トリレンジイソシアネート、3,3’-ジメチル-4,4’-ジフェニルエーテルジイソシアネート、3,3’-ジメチル-4,4’-ジフェニルエーテルジイソシアネート、2,3,6-トリイソプロピルベンゼン-1,3-ジイルジイソシアネート等が挙げられる。これらは、単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
前記任意のジイソシアネート化合物を用いる場合、その配合量は、第一級イソシアネート基を有するジイソシアネート化合物1モルに対して、好ましくは3モル以下、より好ましくは2モル以下である。
【0022】
また、前記任意のジイソシアネート化合物を用いる場合、これを用いて得られたポリカルボジイミド化合物を含む、塗料組成物、コーティング剤組成物、及びインキ組成物の耐候性の観点から、第二級イソシアネート基を2個有するジイソシアネート化合物及び第三級イソシアネート基を2個有するジイソシアネート化合物がより好ましい。
【0023】
前記ポリカルボジイミド化合物は、そのすべての末端に、前記脂肪族ジイソシアネート化合物を由来とするイソシアネート基と反応する官能基を有する有機化合物で封止された構造を有する。
前記有機化合物で封止されるイソシアネート基は、第一級イソシアネート基であってもよく、また、第二級イソシアネート基、第三級イソシアネート基、又は芳香族イソシアネート基であってもよい。
前記ポリカルボジイミド化合物は、例えば、前記脂肪族ジイソシアネート化合物を重合してなる、末端のイソシアネート基が封止されていないポリカルボジイミドにおいて、該すべての末端のイソシアネート基を、前記有機化合物で封止することにより得ることができる。ここで、前記末端のイソシアネート基は、第一級イソシアネート基であってもよく、また、第二級イソシアネート基、第三級イソシアネート基、又は芳香族イソシアネート基であってもよい。
【0024】
前記有機化合物が有する官能基としては、水酸基、アミノ基、イソシアネート基、エポキシ基、及びカルボキシ基から選ばれる少なくとも1種であることが好ましい。これらの中でも、イソシアネート基との反応の容易さから、水酸基がより好ましい。
【0025】
前記有機化合物は、水性樹脂との相溶性を高める観点から、前記官能基以外に、さらに親水性を有する基を有することが好ましい。
また、上記親水性を有する基は、水性樹脂との相溶性を高める観点から、下記一般式(I)で示す有機基であることが好ましい。
R1-(O-CHR2-CH2)m- ・・・(I)
(式中、R1は炭素数1~4のアルキル基、R2は水素原子又はメチル基である。R2が複数存在する場合、該R2は、互いに同一でも異なっていてもよい。mは1~30の整数を表す。)
【0026】
R1の炭素数1~4のアルキル基としては、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、sec-ブチル基、イソブチル基、及びtert-ブチル基が挙げられる。中でも、親水性の観点からメチル基、エチル基が好ましく、メチル基がより好ましい。
R2としては水素原子が好ましい。
mは1~30の整数であり、入手容易性の観点から1~20の整数が好ましく、4~15の整数がより好ましい。
【0027】
前記イソシアネート基と反応する官能基を有する有機化合物の具体例としては、ポリエチレングリコールモノメチルエーテル、ポリエチレングリコールモノエチルエーテル、ポリエチレングリコールモノフェニルエーテル、ポリプロピレングリコールモノメチルエーテル、ポリプロピレングリコールモノエチルエーテル、ポリプロピレングリコールモノフェニルエーテル、テトラエチレングリコールモノメチルエーテル、テトラエチレングリコールモノエチルエーテル、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ドデシルアルコール、オクチルアルコール、ヘキシルアルコール、ペンチルアルコール、ブチルアルコール、プロピルアルコール、エチルアルコール等の水酸基を有する有機化合物;メチルアミン、エチルアミン、プロピルアミン、ブチルアミン、ペンチルアミン、ヘキシルアミン、オクチルアミン、ドデシルアミン、ジエチルアミン、ジプロピルアミン、ジブチルアミン、シクロヘキシルアミン、アダマンタンアミン、アリルアミン、ポリオキシエチレンラウリルアミン、ポリオキシメチレンステアリルアミン、アニリン、ジフェニルアミン、3-アミノプロピルトリメトキシシラン、3-アミノプロピルトリエトキシシラン、N-フェニル-3-アミノプロピルトリメトキシシラン、2,2-ジフルオロアミン、フルオロベンジルアミン、トリフルオロエチルアミン、[[4-(トリフルオロメチル)シクロヘキシル]メチル]アミンやそれらの誘導体等のアミノ基を有する有機化合物;ブチルイソシアネート、ペンチルイソシアネート、ヘキシルイソシアネート、オクチルイソシアネート、ドデシルイソシアネート、シクロヘキシルイソシアネート、イソシアン酸1-アダマンチル、3-イソシアネートプロピルトリエトキシシラン、アクリル酸2-イソシアナトエチル、イソシアン酸ベンジル、2-フェニルエチルイソシアナートやそれらの誘導体等のイソシアネート基を有する有機化合物;1,2-エポキシヘプタン、1,2-エポキシヘキサン、1,2-エポキシデカン、1,2-エポキシ-5-ヘキセン、エチルグリシジルエーテル、2-エチルヘキシルグリシジルエーテル、グリシジルラウリルエーテル、アリルグリシジルエーテル、ジエトキシ(3-グリシジルオキシプロピル)メチルシラン、3-[2-(ペルフルオロヘキシル)エトキシ]-1,2-エポキシプロパンやそれらの誘導体等のエポキシ基を有する有機化合物;酢酸、エタン酸、プロピオン酸、ブタン酸、ペンタン酸、ヘキサン酸、へプタン酸、オクタン酸、ノナン酸、デカン酸、シクロヘキサンカルボン酸、アダマンタン酢酸、フェニル酢酸、安息香酸、ウンデセン酸やそれらの誘導体等のカルボキシ基を有する有機化合物等が挙げられる。
中でも、ポリエチレングリコールモノメチルエーテル(MPEG)、テトラエチレングリコールモノメチルエーテル(MTEG)、ドデシルアルコール(DA)が好ましく、ポリエチレングリコールモノメチルエーテル、テトラエチレングリコールモノメチルエーテルがより好ましい。これらは、単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0028】
前記ポリカルボジイミド化合物は、水溶性又は水分散性であることが好ましい。
また、前記ポリカルボジイミド化合物1分子中のカルボジイミド基の数は、保存安定性の観点から、また、樹脂組成物の保存安定性及び低温で作製した塗膜の成膜性と耐溶剤性の観点から、好ましくは3以上7以下である。
【0029】
本発明のポリカルボジイミド化合物は、保存安定性及び架橋剤としての性能に優れることから、水性の塗料、水性インキ、繊維処理剤、接着剤、コーティング剤等の架橋剤に好適に用いることができる。
【0030】
[ポリカルボジイミド化合物の製造方法]
本発明のポリカルボジイミド化合物の製造方法は、特に限定されないが、例えば、カルボジイミド重合反応を溶媒中で行う方法が挙げられる。該カルボジイミド重合反応の温度としては、好ましくは115℃以上175℃以下、より好ましくは115℃以上165℃以下、さらに好ましくは120℃以上160℃以下、よりさらに好ましくは130℃以上150℃以下、よりさらに好ましくは135℃以上150℃以下である。
カルボジイミド重合反応の温度を上記範囲内とすることで、副反応の進行や、必要以上に高分子量化したポリカルボジイミド化合物の生成を抑えることができ、保存安定性、及び架橋剤としての性能を高めることができる。また、得られるポリカルボジイミド化合物を含む樹脂組成物を用いて作製した塗膜の成膜性と耐溶剤性を向上させることができる。さらに、カルボジイミド重合反応温度を上記範囲内とすることで、前記式(1)を満たすポリカルボジイミド化合物を得ることが容易になる。
【0031】
また、上記カルボジイミド重合反応の反応時間は、上記カルボジイミド重合反応温度により適宜調節されるが、好ましくは8~100時間、より好ましくは10~80時間、さらに好ましくは15~60時間である。
【0032】
本発明のポリカルボジイミド化合物の製造方法で用いられる第一級イソシアネート基を少なくとも1つ有する脂肪族ジイソシアネート化合物、及びイソシアネート基と反応する官能基を有する有機化合物としては、それぞれ、上記の[ポリカルボジイミド化合物]の項で挙げた化合物を用いることができる。
【0033】
前記有機化合物は、反応生成物のゲル化抑制の観点から、カルボジイミド重合反応開始前、カルボジイミド重合反応開始時又はカルボジイミド重合反応中に添加されることが好ましく、カルボジイミド重合反応開始前、又はカルボジイミド重合反応開始時に添加されることがより好ましい。
【0034】
前記脂肪族ジイソシアネート化合物及び/又は重合反応中のカルボジイミド化合物と、有機化合物とを反応させることにより、該脂肪族ジイソシアネート化合物が有するイソシアネート基及び/又は重合反応中のカルボジイミド化合物が有するイソシアネート基が、前記有機化合物により封止される。
前記封止における反応温度としては、好ましくは0~250℃、より好ましくは50~230℃、さらに好ましくは80~200℃である。また、上記反応における反応時間は、上記反応温度により適宜調節されるが、好ましくは0.5~24時間、より好ましくは1~8時間、さらに好ましくは2~5時間である。
【0035】
前記有機化合物の配合量は、前記脂肪族ジイソシアネート化合物100質量部に対して、好ましくは30~200質量部、より好ましくは60~180質量部、さらに好ましくは70~165質量部である。30質量部以上とすることでゲル化を抑制し、200質量部以下とすることで前記ポリカルボジイミド化合物のカルボジイミド基濃度を高めることができる。
【0036】
また、カルボジイミド重合反応で用いられる触媒としては、例えば、1-メチル-2-ホスホレン-1-オキシド、1-フェニル-2-ホスホレン-1-オキシド、3-メチル-1-フェニル-2-ホスホレン-1-オキシド、1-エチル-2-ホスホレン-1-オキシド、3-メチル-2-ホスホレン-1-オキシド及びこれらの3-ホスホレン異性体等のホスホレンオキシド等が挙げられる。中でも、反応性の観点から、3-メチル-1-フェニル-2-ホスホレン-1-オキシド(MPO)が好ましい。
前記触媒の使用量は、前記脂肪族ジイソシアネート化合物100質量部に対して、好ましくは0.5~5質量部、より好ましくは1~3質量部である。
【0037】
前記カルボジイミド重合反応は、溶媒中で行われることが好ましい。前記カルボジイミド重合反応を無溶媒で行うと、副反応が進行し、必要以上に高分子量化したポリカルボジイミド化合物が生成するおそれがある。
前記カルボジイミド重合反応で用いられる溶媒としては、ゲル化抑制の観点から、非プロトン性溶媒が好ましい。
前記非プロトン性溶媒としては、例えば、キシレン、酢酸ブチル、シクロヘキサノン、メチルシクロヘキサノン、酢酸ペンチル、ミネラルスピリット、安息香酸ベンジル等の非プロトン性非水溶性溶媒;ジエチレングリコールメチルエチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジプロピレングリコールメチルエチルエーテル、ジプロピレングリコールジエチルエーテル、ジプロピレングリコールジメチルエーテル、トリエチレングリコールメチルエチルエーテル、トリエチレングリコールジエチルエーテル、トリエチレングリコールジメチルエーテル、テトラエチレングリコールメチルエチルエーテル、テトラエチレングリコールジエチルエーテル、テトラエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジプロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、γ-ブチロラクトン、N-メチルピロリドン、N-エチルピロリドン、N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド等の非プロトン性水溶性溶媒が挙げられる。中でも、非プロトン性水溶性溶媒が好ましく、ジエチレングリコールメチルエチルエーテル(MEDG)、ジエチレングリコールジエチルエーテル(DEDG)、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート(ECA)がより好ましく用いられる。これらは、単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
なお、溶媒中の前記脂肪族ジイソシアネート化合物の濃度は、10~90質量%が好ましく、20~60質量%がより好ましく、30~60質量%がさらに好ましい。
【0038】
このようにして得られたポリカルボジイミド化合物は、第一級イソシアネート基を少なくとも1つ有する脂肪族ジイソシアネート化合物由来のカルボジイミド構造と、すべての末端に、イソシアネート基と反応する官能基を有する有機化合物で封止された構造とを有する。該ポリカルボジイミド化合物は、保存安定性及び架橋剤としての性能に優れる。
【0039】
[樹脂組成物]
本発明の樹脂組成物は、前記ポリカルボジイミド化合物、及び酸価を有する水性樹脂を含み、前記水性樹脂の固形分酸価が5mgKOH/g以上であり、前記水性樹脂の固形分酸価から算出されるカルボジイミド基と反応する官能基のモル数bに対する該ポリカルボジイミド化合物のカルボジイミド基のモル数aの比a/bが、0.4以上4.5以下であることを特徴とする。
前記ポリカルボジイミド化合物(以下、樹脂架橋剤ともいう)は、前記水性樹脂の架橋剤として作用する。
本発明の樹脂組成物は、低温における塗膜の成膜性と耐溶剤性に優れることから、塗料組成物、コーティング剤組成物、インキ組成物等に含有させて好適に用いることができる。
【0040】
(水性樹脂)
前記水性樹脂は、固形分酸価が5mgKOH/g以上である。固形分酸価が5mgKOH/g以上であれば、十分に架橋され、得られる樹脂組成物の塗膜の耐溶剤性が向上し、さらに、密着性及び耐温水性が向上する。また、前記水性樹脂の固形分酸価は、入手の容易さの観点から、好ましくは5~100mgKOH/g、より好ましくは5~80mgKOH/gである。
ここで、固形分酸価とは、樹脂に含まれるカルボキシ基、スルホ基、及びリン酸基等のカルボジイミド基と反応する官能基の量を表す数値であり、樹脂1g中に含まれるカルボジイミド基と反応する酸成分である官能基を中和するために要する水酸化カリウムのmg数である。酸成分である官能基としては、中でも、カルボキシ基が好ましい。
なお、前記固形分酸価は、電位差滴定で滴定に用いた1N水酸化カリウム水溶液の量を測定し、下記式(3)により算出することができる。具体的には、下記実施例に記載の方法により求めることができる。
固形分酸価(mgKOH/g)=(B×f×56.11)/S (3)
(式中、Bは滴定に用いた1N水酸化カリウム水溶液の量(ml)、fは1N水酸化カリウム水溶液のファクター、Sは乾燥した水性樹脂の質量(g)を示す。)
【0041】
前記水性樹脂の固形分酸価から算出されるカルボジイミド基と反応する官能基のモル数bに対する、前記ポリカルボジイミド化合物のカルボジイミド基のモル数aの比a/bは0.4以上4.5以下であり、好ましくは0.4以上3.0以下、より好ましくは0.4以上2.5以下である。0.4以上であれば、該樹脂組成物を用いて低温で作製した塗膜の成膜性と耐溶剤性が向上する。また、4.5以下であれば、該樹脂組成物の塗膜の耐溶剤性及び平滑性が向上する。
なお、前記水性樹脂のカルボジイミド基と反応する官能基のモル数bは、下記式(4)により算出することができる。ここで、前記水性樹脂のカルボジイミド基と反応する官能基とは、酸価を示す官能基のことである。
b=水性樹脂の固形分配合量(g)×水性樹脂の固形分酸価(mgKOH/g)/56,110(mg) (4)
【0042】
前記水性樹脂としては、固形分酸価が5mgKOH/g以上を満たす水性樹脂であれば特に限定されないが、ポリウレタン樹脂、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、酸変性ポリビニルアルコール、酸変性ポリオレフィン、及びその他の酸変性水性樹脂からなる群より選ばれる少なくとも1種の樹脂であることが好ましく、中でも、ポリウレタン樹脂、アクリル樹脂、及びポリエステル樹脂からなる群より選ばれる少なくとも1種の樹脂であることが好ましい。
なお、本明細書において、「ポリウレタン樹脂」は、ウレタン結合及びアクリル基の両方を有し、ウレタン結合及びアクリル基の両方を有するアクリルウレタン樹脂を含むものとする。
【0043】
<ポリウレタン樹脂>
前記ポリウレタン樹脂としては、固形分酸価が5mgKOH/g以上を満たせば特に限定されず、例えば、ポリイソシアネート化合物と、酸成分含有ポリオール化合物及び酸成分含有ポリオール化合物以外のポリオール化合物とを反応させることにより製造される樹脂を挙げることができる。
【0044】
前記ポリイソシアネート化合物としては、例えば、リジンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、トリメチルヘキサンジイソシアネート等の脂肪族ジイソシアネート化合物;イソホロンジイソシアネート、メチルシクロヘキサン-2,4-ジイソシアネート、メチルシクロヘキサン-2,6-ジイソシアネート、4,4’-メチレンビス(シクロヘキシルイソシアネート)、1,3-(イソシアナトメチル)シクロヘキサン等の脂環族ジイソシアネート化合物;トリレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート等の芳香族ジイソシアネート化合物;リジントリイソシアネート等の3価以上のポリイソシアネート等の有機ポリイソシアネート;上記有機ポリイソシアネートと、多価アルコール、低分子量ポリエステル樹脂、水等との付加物;上記有機ポリイソシアネート同士の環化重合体(例えば、イソシアヌレート)、ビウレット型付加物等、並びにそれらの任意の組み合わせが挙げられる。
【0045】
前記酸成分含有ポリオール化合物としては、例えば、2,2-ジメチロールプロピオン酸、2,2-ジメチロールブタン酸、2,2-ジメチロール吉草酸、カルボキシ基を有するポリオールと多価カルボン酸とを反応させて得られるカルボキシ基を有するポリエステルポリオールや5-スルホイソフタル酸、スルホテレフタル酸、4-スルホフタル酸、5-(4-スルホフェノキシ)イソフタル酸等のジカルボン酸又はそれらの塩と、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,4-ブタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、ジエチレングリコール、ネオペンチルグリコール等の低分子ポリオールとを反応させて得られるポリエステルポリオール等が挙げられる。
【0046】
前記酸成分含有ポリオール化合物以外のポリオール化合物は、特に限定されず、例えば、脂肪族ポリオール、脂環構造を有するポリオール、芳香族ポリオール、ポリエステルポリオール、ポリカーボネートポリオール、ポリエーテルポリオール等が挙げられる。本明細書において、脂環構造には、環内に酸素原子や窒素原子等のヘテロ原子を有するものも含む。
【0047】
前記脂肪族ポリオールは、特に限定されず、例えば、炭素数3~12の脂肪族ポリオール等が挙げられる。具体的には、1,3-プロパンジオール、1,4-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、1,7-ヘプタンジオール、1,8-オクタンジオール、1,9-ノナンジオール等の直鎖状脂肪族ジオール;2-メチル-1,3-プロパンジオール、2-メチル-1,5-ペンタンジオール、3-メチル-1,5-ペンタンジオール、2-メチル-1,9-ノナンジオール等の分岐鎖状脂肪族ジオール;1,1,1-トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール等の3官能以上の多価アルコール等が挙げられる。
【0048】
前記脂環構造を有するポリオールは、特に限定されず、例えば、主鎖に炭素数5~12の脂環式基を有するポリオール等が挙げられる。具体的には、1,4-シクロヘキサンジメタノール、1,3-シクロヘキサンジメタノール、1,4-シクロヘキサンジオール、1,3-シクロペンタンジオール、1,4-シクロヘプタンジオール、2,5-ビス(ヒドロキシメチル)-1,4-ジオキサン、2,7-ノルボルナンジオール、テトラヒドロフランジメタノール、1,4-ビス(ヒドロキシエトキシ)シクロヘキサン、トリシクロ[5.2.1.02,6]デカンジメタノールに代表されるトリシクロデカンジメタノールの各構造異性体又はその混合物等の主鎖に脂環構造を有するジオール等が挙げられる。中でも、入手の容易さの観点から、1,4-シクロヘキサンジメタノールが好ましい。
【0049】
前記芳香族ポリオールは、特に限定されず、例えば、1,4-ベンゼンジメタノール、1,3-ベンゼンジメタノール、1,2-ベンゼンジメタノール、4,4’-ナフタレンジメタノール、3,4’-ナフタレンジメタノール等が挙げられる。
前記ポリエステルポリオールは、特に限定されず、例えば、6-ヒドロキシカプロン酸とヘキサンジオールとのポリエステルポリオール等のヒドロキシカルボン酸とジオールとのポリエステルポリオール、アジピン酸とヘキサンジオールとのポリエステルポリオール等のジカルボン酸とジオールとのポリエステルポリオール等が挙げられる。
前記ポリエーテルポリオールは、特に限定されず、例えば、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール等のポリエチレングリコール;ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコール等のポリアルキレングリコール等が挙げられる。
【0050】
<アクリル樹脂>
前記アクリル樹脂としては、固形分酸価が5mgKOH/g以上を満たせば特に限定されず、例えば、酸成分含有重合性不飽和モノマー、及びこれと共重合可能な他の重合性不飽和モノマーを、公知の方法、例えば、有機溶媒中での溶液重合法、水中での乳化重合法、水中でのミニエマルション重合法等の方法により共重合することによって製造することができる。
【0051】
前記酸成分含有重合性不飽和モノマーは、1分子中にカルボキシ基、スルホ基、又はリン酸基を1個以上と、重合性不飽和結合を1個以上とを有する化合物である。前記酸成分含有重合性不飽和モノマーとしては、例えば、(メタ)アクリル酸、マレイン酸、フマル酸、クロトン酸、イタコン酸、シトラコン酸、無水マレイン酸、マレイン酸モノメチル、マレイン酸モノブチル、イタコン酸モノメチル、イタコン酸モノブチル、ビニル安息香酸、シュウ酸モノヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、カルボキシ基末端カプロラクトン変性アクリレート、カルボキシ基末端カプロラクトン変性メタクリレート、スチレンスルホン酸及びその塩等のスチレン誘導体、2-アクリルアミド-2-メチルプロパンスルホン酸、2-スルホエチル(メタ)アクリレート、アリルスルホン酸、4-スチレンスルホン酸等のスルホン酸のナトリウム塩及びアンモニウム塩等、アシッドホスホオキシエチル(メタ)アクリレート、アシッドホスホオキシプロピル(メタ)アクリレート、アシッドホスホオキシポリ(オキシエチレン)グリコール(メタ)アクリレート、アシッドホスホオキシポリ(オキシプロピレン)グリコール(メタ)アクリレート等並びにそれらの任意の組み合わせが挙げられる。
【0052】
前記他の重合性不飽和モノマーとしては、特に限定はないが、例えば、以下の(1)~(16)のようなものを挙げることができ、モノマー由来の性能を発揮させるために、それらの1種又は2種以上を適宜選択して用いることができる。
【0053】
(1)アルキル又はシクロアルキル(メタ)アクリレート:
メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n-プロピル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、n-ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、tert-ブチル(メタ)アクリレート、n-ヘキシル(メタ)アクリレート、n-オクチル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ノニル(メタ)アクリレート、トリデシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、イソステアリル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、メチルシクロヘキシル(メタ)アクリレート、tert-ブチルシクロヘキシル(メタ)アクリレート、シクロドデシル(メタ)アクリレート、トリシクロデカニル(メタ)アクリレート等
【0054】
(2)イソボルニル基を有する重合性不飽和モノマー:
イソボルニル(メタ)アクリレート等
(3)アダマンチル基を有する重合性不飽和モノマー:
アダマンチル(メタ)アクリレート等
(4)トリシクロデセニル基を有する重合性不飽和モノマー:
トリシクロデセニル(メタ)アクリレート等
(5)芳香環含有重合性不飽和モノマー:
ベンジル(メタ)アクリレート、スチレン、α-メチルスチレン、ビニルトルエン等
(6)アルコキシシリル基を有する重合性不飽和モノマー:
ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリス(2-メトキシエトキシ)シラン、γ-(メタ)アクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン、γ-(メタ)アクリロイルオキシプロピルトリエトキシシラン等
【0055】
(7)フッ素化アルキル基を有する重合性不飽和モノマー:
パーフルオロブチルエチル(メタ)アクリレート、パーフルオロオクチルエチル(メタ)アクリレート等のパーフルオロアルキル(メタ)アクリレート;フルオロオレフィン等
(8)マレイミド基等の光重合性官能基を有する重合性不飽和モノマー
(9)ビニル化合物:
N-ビニルピロリドン、エチレン、ブタジエン、クロロプレン、プロピオン酸ビニル、酢酸ビニル等
(10)含窒素重合性不飽和モノマー:
(メタ)アクリロニトリル、(メタ)アクリルアミド、N,N-ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N-ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N-ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド、メチレンビス(メタ)アクリルアミド、エチレンビス(メタ)アクリルアミド、グリシジル(メタ)アクリレートとアミン化合物との付加物等
(11)重合性不飽和基を1分子中に2個以上有する重合性不飽和モノマー:
アリル(メタ)アクリレート、1,6-ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート等
(12)エポキシ基含有重合性不飽和モノマー:
グリシジル(メタ)アクリレート、β-メチルグリシジル(メタ)アクリレート、3,4-エポキシシクロヘキシルメチル(メタ)アクリレート、3,4-エポキシシクロヘキシルエチル(メタ)アクリレート、3,4-エポキシシクロヘキシルプロピル(メタ)アクリレート、アリルグリシジルエーテル等
(13)分子末端がアルコキシ基であるポリオキシエチレン鎖を有する(メタ)アクリレート
【0056】
(14)紫外線吸収性官能基を有する重合性不飽和モノマー:
2-ヒドロキシ-4-(3-メタクリロイルオキシ-2-ヒドロキシプロポキシ)ベンゾフェノン、2-ヒドロキシ-4-(3-アクリロイルオキシ-2-ヒドロキシプロポキシ)ベンゾフェノン、2,2’-ジヒドロキシ-4-(3-メタクリロイルオキシ-2-ヒドロキシプロポキシ)ベンゾフェノン、2,2’-ジヒドロキシ-4-(3-アクリロイルオキシ-2-ヒドロキシプロポキシ)ベンゾフェノン、2-(2’-ヒドロキシ-5’-メタクリロイルオキシエチルフェニル)-2H-ベンゾトリアゾール等
【0057】
(15)紫外線安定性重合性不飽和モノマー:
4-(メタ)アクリロイルオキシ-1,2,2,6,6-ペンタメチルピペリジン、4-(メタ)アクリロイルオキシ-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン、4-シアノ-4-(メタ)アクリロイルアミノ-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン、1-(メタ)アクリロイル-4-(メタ)アクリロイルアミノ-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン、1-(メタ)アクリロイル-4-シアノ-4-(メタ)アクリロイルアミノ-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン、4-クロトノイルオキシ-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン、4-クロトノイルアミノ-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン、1-クロトノイル-4-クロトノイルオキシ-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン等
【0058】
(16)カルボニル基を有する重合性不飽和モノマー:
アクロレイン、ダイアセトンアクリルアミド、ダイアセトンメタクリルアミド、アセトアセトキシエチルメタクリレート、ホルミルスチロール、炭素数4~7のビニルアルキルケトン(例えば、ビニルメチルケトン、ビニルエチルケトン、ビニルブチルケトン)等
【0059】
<ポリエステル樹脂>
前記ポリエステル樹脂としては、固形分酸価が5mgKOH/g以上を満たせば特に限定されず、例えば、酸成分とアルコール成分とのエステル化反応又はエステル交換反応によって製造することができる。
【0060】
前記酸成分としては、ポリエステル樹脂の製造に際して、酸成分として通常使用される化合物が挙げられ、例えば、脂肪族多塩基酸、脂環族多塩基酸、芳香族多塩基酸等、並びにそれらの無水物及びエステル化物を挙げることができる。
【0061】
前記脂肪族多塩基酸、並びにそれらの無水物及びエステル化物としては、一般に、1分子中に2個以上のカルボキシ基を有する脂肪族化合物、該脂肪族化合物の酸無水物及びエステル化物、例えば、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ウンデカン二酸、ドデカン二酸、ブラシル酸、オクタデカン二酸、クエン酸、ブタンテトラカルボン酸等の脂肪族多価カルボン酸;前記脂肪族多価カルボン酸の無水物;前記脂肪族多価カルボン酸の炭素数1~4の低級アルキルのエステル化物等、並びにそれらの任意の組み合わせが挙げられる。
前記脂肪族多塩基酸としては、得られる塗膜の平滑性の観点から、アジピン酸及び/又はアジピン酸無水物が好ましい。
【0062】
前記脂環族多塩基酸、並びにそれらの無水物及びエステル化物としては、一般に、1分子中に1個以上の脂環式構造と2個以上のカルボキシ基とを有する化合物、該化合物の酸無水物及びエステル化物が挙げられる。前記脂環式構造は、主として4~6員環構造である。前記脂環族多塩基酸、並びにそれらの無水物及びエステル化物としては、例えば、1,2-シクロヘキサンジカルボン酸、1,3-シクロヘキサンジカルボン酸、1,4-シクロヘキサンジカルボン酸、4-シクロヘキセン-1,2-ジカルボン酸、3-メチル-1,2-シクロヘキサンジカルボン酸、4-メチル-1,2-シクロヘキサンジカルボン酸、1,2,4-シクロヘキサントリカルボン酸、1,3,5-シクロヘキサントリカルボン酸等の脂環族多価カルボン酸;前記脂環族多価カルボン酸の無水物;前記脂環族多価カルボン酸の炭素数1~4の低級アルキルのエステル化物等、並びにそれらの任意の組み合わせが挙げられる。中でも、得られる塗膜の平滑性の観点から、1,2-シクロヘキサンジカルボン酸、1,2-シクロヘキサンジカルボン酸無水物、1,3-シクロヘキサンジカルボン酸、1,4-シクロヘキサンジカルボン酸、4-シクロヘキセン-1,2-ジカルボン酸、4-シクロヘキセン-1,2-ジカルボン酸無水物が好ましく、1,2-シクロヘキサンジカルボン酸、1,2-シクロヘキサンジカルボン酸無水物がより好ましい。
【0063】
前記芳香族多塩基酸、並びにそれらの無水物及びエステル化物は、一般に、1分子中に2個以上のカルボキシ基を有する芳香族化合物、該芳香族化合物の酸無水物及びエステル化物、例えば、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、ナフタレンジカルボン酸、4,4’-ビフェニルジカルボン酸、トリメリット酸、ピロメリット酸等の芳香族多価カルボン酸;前記芳香族多価カルボン酸の無水物;前記芳香族多価カルボン酸の炭素数1~4の低級アルキルのエステル化物等、並びにそれらの任意の組み合わせが挙げられる。
前記芳香族多塩基酸、並びにそれらの無水物及びエステル化物としては、フタル酸、無水フタル酸、イソフタル酸、トリメリット酸、及び無水トリメリット酸が好ましい。
【0064】
また、前記酸成分として、前記脂肪族多塩基酸、前記脂環族多塩基酸及び前記芳香族多塩基酸以外の酸成分、例えば、ヤシ油脂肪酸、綿実油脂肪酸、麻実油脂肪酸、米ぬか油脂肪酸、魚油脂肪酸、トール油脂肪酸、大豆油脂肪酸、アマニ油脂肪酸、桐油脂肪酸、ナタネ油脂肪酸、ヒマシ油脂肪酸、脱水ヒマシ油脂肪酸、サフラワー油脂肪酸等の脂肪酸;ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸、安息香酸、p-tert-ブチル安息香酸、シクロヘキサン酸、10-フェニルオクタデカン酸等のモノカルボン酸;乳酸、3-ヒドロキシブタン酸、3-ヒドロキシ-4-エトキシ安息香酸等のヒドロキシカルボン酸等、並びにそれらの任意の組み合わせが挙げられる。
【0065】
前記アルコール成分としては、1分子中に2個以上の水酸基を有する多価アルコール、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、トリメチレングリコール、テトラエチレングリコール、トリエチレングリコール、ジプロピレングリコール、1,4-ブタンジオール、1,3-ブタンジオール、2,3-ブタンジオール、1,2-ブタンジオール、2-メチル-1,3-プロパンジオール、3-メチル-1,2-ブタンジオール、2-ブチル-2-エチル-1,3-プロパンジオール、1,2-ペンタンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,4-ペンタンジオール、2,4-ペンタンジオール、2,3-ジメチルトリメチレングリコール、テトラメチレングリコール、3-メチル-4,3-ペンタンジオール、3-メチル-1,5-ペンタンジオール、2,2,4-トリメチル-1,3-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、1,5-ヘキサンジオール、1,4-ヘキサンジオール、2,5-ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、1,4-シクロヘキサンジメタノール、トリシクロデカンジメタノール、ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールエステル、水添ビスフェノールA、水添ビスフェノールF、ジメチロールプロピオン酸等の2価アルコール;前記2価アルコールにε-カプロラクトン等のラクトン化合物を付加したポリラクトンジオール;ビス(ヒドロキシエチル)テレフタレート等のエステルジオール化合物;ビスフェノールAのアルキレンオキサイド付加物、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリブチレングリコール等のポリエーテルジオール化合物;グリセリン、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、ジグリセリン、トリグリセリン、1,2,6-ヘキサントリオール、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、トリス(2-ヒドロキシエチル)イソシアヌル酸、ソルビトール、マンニット等の3価以上のアルコール;前記3価以上のアルコールにε-カプロラクトン等のラクトン化合物を付加させたポリラクトンポリオール化合物;グリセリンの脂肪酸エステル化物、2,2-ジメチロールプロピオン酸、2,2-ジメチロールブタン酸、2,2-ジメチロール吉草酸、カルボキシル基を有するポリオールと多価カルボン酸とを反応させて得られるカルボキシル基を有するポリエステルポリオールや5-スルホイソフタル酸、スルホテレフタル酸、4-スルホフタル酸、5-(4-スルホフェノキシ)イソフタル酸等のジカルボン酸又はそれらの塩と、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,4-ブタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、ジエチレングリコール、ネオペンチルグリコール等の低分子ポリオールとを反応させて得られるポリエステルポリオール等が挙げられる。
【0066】
前記酸成分及びアルコール成分をエステル化反応又はエステル交換反応させる際には、反応を促進させるための触媒として、ジブチル錫オキサイド、三酸化アンチモン、酢酸亜鉛、酢酸マンガン、酢酸コバルト、酢酸カルシウム、酢酸鉛、テトラブチルチタネート、テトライソプロピルチタネート等の公知の触媒を反応系に添加することができる。
また、ポリエステル樹脂は、該ポリエステル樹脂の調製中又は調製後に、脂肪酸、モノエポキシ化合物、ポリイソシアネート化合物等で変性されていてもよい。
【0067】
本発明の樹脂組成物は、前記ポリカルボジイミド化合物及び前記水性樹脂の他に、本発明の効果を阻害しない範囲で、任意の添加剤を配合することができる。添加剤の具体例としては、粘度調製剤、溶剤、可塑剤、無機又は有機充填剤、着色顔料、染料、分散剤、湿潤剤、消泡剤、防腐剤、防カビ剤、防錆剤等が挙げられる。
また、本発明の樹脂組成物は、前述した各成分を所定量配合したものを均一に分散混合することにより調製することができる。
【0068】
本発明の樹脂組成物中の固形分100質量%における、ポリカルボジイミド化合物及び水性樹脂の含有量は、添加剤の種類及び組み合わせにもよるが、好ましくは15質量%以上、より好ましくは30質量%以上、さらに好ましくは60質量%以上、よりさらに好ましくは95質量%以上である。
【実施例】
【0069】
以下、実施例及び比較例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明は、実施例に記載の形態に限定されるものではない。
【0070】
下記のポリカルボジイミド化合物の合成に使用した各成分の詳細は、以下のとおりである。
<第一級イソシアネート基を少なくとも1つ有する脂肪族ジイソシアネート化合物>
・HDI:ヘキサメチレンジイソシアネート
・IPDI:イソホロンジイソシアネート
・HXDI:1,3-ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン
・XDI:キシリレンジイソシアネート
<第一級イソシアネート基を有しないジイソシアネート化合物(その他のジイソシアネート化合物)>
・HMDI:4,4’-ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート
・TMXDI:テトラメチルキシリレンジイソシアネート
・TDI:トリレンジイソシアネート
<イソシアネート基と反応する官能基を有する有機化合物>
・MPEG400:ポリエチレングリコールモノメチルエーテル、平均分子量:400
・MPEG550:ポリエチレングリコールモノメチルエーテル、平均分子量550
・MTEG:テトラエチレングリコールモノメチルエーテル、分子量208
・DA:ドデシルアルコール、分子量186
<カルボジイミド化触媒>
・MPO:3-メチル-1-フェニル-2-ホスホレン-1-オキシド
<溶媒>
・MEDG:ジエチレングリコールメチルエチルエーテル、日本乳化剤(株)製
・DEDG:ジエチレングリコールジエチルエーテル、日本乳化剤(株)製
・ECA:ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート
【0071】
[ポリカルボジイミド化合物の合成(1)]
下記実施例及び比較例で得られた各ポリカルボジイミド化合物について、以下の各評価項目について分析評価を行った。評価結果を下記表1~3に示す。
なお、比較例A2及びA5で得られたポリカルボジイミド化合物はゲル状物であったため、分析評価は行わなかった。
【0072】
(評価項目)
(1)重量平均分子量Mwの測定
ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)法により、重量平均分子量Mwを測定した。測定には、下記の装置および条件を使用し、ポリスチレン換算の重量平均分子量を得た。
<GPC測定装置>
RI検出器 :RID-6A、(株)島津製作所製
カラム :KF-806、KF-804L、KF-804L、昭和電工(株)製
<測定条件>
展開溶媒 :THF
測定温度 :40℃
流速 :1.0mL/分
試料濃度 :0.005mg/mL
注入量 :50μl
検量線 :STANDARD SL-105、SM-105、昭和電工(株)製
【0073】
(2)ポリカルボジイミド化合物のカルボジイミド基濃度A(%)の測定
平沼自動滴定装置COM-1700A(平沼産業(株)製)を使用し、ポリカルボジイミド化合物B(g)に既知濃度のシュウ酸/ジオキサン溶液を規定量加え、テトラヒドロフラン中で十分に反応させたのち水酸化ナトリウム水溶液での電位差滴定により未反応のシュウ酸の量を求め、ポリカルボジイミド化合物中のカルボジイミド基と反応したシュウ酸のモル量bを算出した。この値からポリカルボジイミド化合物1g中に含まれるカルボジイミド基のモル量n=b/Bを算出し、さらに、下記式(2)よりポリカルボジイミド化合物のカルボジイミド基濃度A(%)を求めた。
A=40×n×100 (2)
【0074】
(3)(A/Mw)×1000〔A:ポリカルボジイミド化合物のカルボジイミド基濃度(%)、Mw:ポリカルボジイミド化合物の重量平均分子量〕の算出
前記(1)で測定したポリカルボジイミド化合物の重量平均分子量Mw及び前記(2)で算出したポリカルボジイミド化合物のカルボジイミド基濃度A(%)から、(A/Mw)×1000〔A:ポリカルボジイミド化合物のカルボジイミド基濃度(%)、Mw:ポリカルボジイミド化合物の重量平均分子量〕を算出した。
【0075】
(4)シェルフライフ測定
各ポリカルボジイミド化合物(樹脂架橋剤)それぞれについて、50℃及び室温(25℃)で30日間保管し、30日経過後の状態を目視にて観察し、以下の基準で評価した。
G:固形物が析出しておらず、流動性を保っている
F:固形物が析出している、もしくは流動性を消失している
【0076】
(5)ラビング試験
各ポリカルボジイミド化合物(樹脂架橋剤)1.0gと、ポリウレタン樹脂(商品名:Sancure777、Lubrizol社製)10gとを混合して、水性樹脂組成物を調製した。調製後、水性塗料組成物を、アルミ板(200mm×100mm×1mm)上に、厚みが20μmとなるようにキャスティングして塗膜を形成し、80℃で10分間もしくは25℃で24時間架橋させ、試験片を作製した。
作製した試験片について、溶剤にエタノールを用い、加重900g/cm2にて摩擦試験機ER-1B(スガ試験機(株)製)によりダブルラビング(ラビング回数:100回)を行ない、塗膜状態を目視にて観察し、以下の基準で評価した。
G:塗膜が溶解していない
F:塗膜が溶解している
【0077】
(実施例A1)
ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)100質量部、ポリエチレングリコールモノメチルエーテル(MPEG400)(平均分子量:400)80質量部、及び溶媒としてジエチレングリコールメチルエチルエーテル(MEDG)221質量部を還流管及び撹拌機付き反応容器に入れ、窒素気流下、115℃で2時間撹拌した。その後、カルボジイミド化触媒として3-メチル-1-フェニル-2-ホスホレン-1-オキシド(MPO)2質量部を加え、窒素気流下、115℃で72時間撹拌し、ポリエチレングリコールモノメチルエーテル末端ヘキサメチレンポリカルボジイミド(ポリカルボジイミド化合物)を得た。
【0078】
(実施例A2~A9)
実施例A1において、各成分の種類及び配合量、カルボジイミド重合反応温度及び重合反応時間を下記表1に示す条件とし、それ以外は実施例A1と同様にして、ポリカルボジイミド化合物を得た。なお、表1中、空欄は配合なしを表す。
【0079】
【0080】
(実施例A10)
ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)100質量部、ポリエチレングリコールモノメチルエーテル(MPEG400)(平均分子量:400)80質量部、溶媒としてジエチレングリコールメチルエチルエーテル(MEDG)158質量部、及びカルボジイミド化触媒として3-メチル-1-フェニル-2-ホスホレン-1-オキシド(MPO)2質量部を還流管及び撹拌機付き反応容器に入れ、窒素気流下、140℃で24時間撹拌し、ポリエチレングリコールモノメチルエーテル末端ヘキサメチレンポリカルボジイミド(ポリカルボジイミド化合物)を得た。
【0081】
(実施例A11)
ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)100質量部、イソホロンジイソシアネート(IPDI)132質量部、ポリエチレングリコールモノメチルエーテル(MPEG400)(平均分子量:400)80質量部、及び溶媒としてジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート(ECA)158質量部を還流管及び撹拌機付き反応容器に入れ、窒素気流下、140℃で2時間撹拌した。その後、カルボジイミド化触媒として3-メチル-1-フェニル-2-ホスホレン-1-オキシド(MPO)2質量部を加え、窒素気流下、140℃で24時間撹拌し、ポリエチレングリコールモノメチルエーテル末端ヘキサメチレン/イソホロンポリカルボジイミド(ポリカルボジイミド化合物)を得た。
【0082】
(実施例A12~A16)
実施例A11において、各成分の種類及び配合量、カルボジイミド重合反応温度及び重合反応時間を下記表2に示す条件とし、実施例A11と同様にしてポリカルボジイミド化合物を得た。なお、表2中、空欄は配合なしを表す。
【0083】
【0084】
(比較例A1)
ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)100質量部、ポリエチレングリコールモノメチルエーテル(MPEG400)(平均分子量:400)80質量部、及び溶媒としてジエチレングリコールジエチルエーテル(DEDG)158質量部を還流管及び撹拌機付き反応容器に入れた。窒素気流下、165℃で2時間撹拌した後、カルボジイミド化触媒として3-メチル-1-フェニル-2-ホスホレン-1-オキシド(MPO)2質量部を加え、180℃で8時間撹拌し、ポリエチレングリコールモノメチルエーテル末端ヘキサメチレンポリカルボジイミド(ポリカルボジイミド化合物)を得た。
【0085】
(比較例A2~A5)
比較例A1において、各成分の種類及び配合量、カルボジイミド重合反応温度及び重合反応時間を下記表3に示す条件とし、比較例A1と同様にして、ポリカルボジイミド化合物を得た。なお、表3中、空欄は配合なしを表す。
【0086】
【0087】
実施例A1~A16で得られたポリカルボジイミド化合物は、いずれも式(1)を満たし、保存安定性及び架橋剤としての性能に優れる結果が得られた。
【0088】
[ポリカルボジイミド化合物の合成(2)]
下記合成例で得られた各ポリカルボジイミド化合物について、上記[ポリカルボジイミド化合物の合成(1)]の評価項目(1)~(3)と同様にして、分析評価を行った。評価結果を下記表4に示す。
【0089】
(合成例1)
ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)100質量部、ポリエチレングリコールモノメチルエーテル(MPEG400)(平均分子量:400)80質量部、溶媒としてジエチレングリコールメチルエチルエーテル(MEDG)158質量部、及びカルボジイミド化触媒として3-メチル-1-フェニル-2-ホスホレン-1-オキシド(MPO)2質量部を還流管及び撹拌機付き反応容器に入れ、窒素気流下、140℃で24時間撹拌し、ポリカルボジイミド化合物1を得た。
【0090】
(合成例2)
ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)100質量部、ポリエチレングリコールモノメチルエーテル(MPEG550)(平均分子量:550)82質量部、ドデシルアルコール(DA)28質量部、及び溶媒としてジエチレングリコールメチルエチルエーテル(MEDG)190質量部を還流管及び撹拌機付き反応容器に入れ、窒素気流下、140℃で2時間撹拌した。その後、カルボジイミド化触媒として3-メチル-1-フェニル-2-ホスホレン-1-オキシド(MPO)2質量部を加え、窒素気流下、140℃で24時間撹拌し、ポリカルボジイミド化合物2を得た。
【0091】
(合成例3~11及び13~16)
合成例2において、各成分の種類及び配合量、カルボジイミド重合反応温度及び重合反応時間を下記表4に示す条件とし、合成例2と同様にして、ポリカルボジイミド化合物3~11及び13~16を得た。なお、表4中、空欄は配合なしを表す。
【0092】
(合成例12)
ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート(HMDI)156質量部、ポリエチレングリコールモノメチルエーテル(MPEG400)(平均分子量:400)159質量部、及び溶媒としてジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート(ECA)347質量部を還流管及び撹拌機付き反応容器に入れ、窒素気流下、170℃で2時間撹拌した。その後、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)67質量部及びカルボジイミド化触媒として3-メチル-1-フェニル-2-ホスホレン-1-オキシド(MPO)2.2質量部を加え、窒素気流下、170℃で24時間撹拌し、ポリカルボジイミド化合物12を得た。
【0093】
【0094】
[樹脂組成物の調製(1)]
下記実施例及び比較例で用いた水性樹脂及び調製した各樹脂組成物について、以下の各評価項目について分析評価を行った。評価結果を下記表5に示す。
【0095】
(評価項目)
(1)水性樹脂の固形分酸価の測定
JIS K 5601-2-1:1999「塗料成分試験方法-第2部:溶剤可溶物中の成分分析-第1節:酸価(滴定法)」に準拠して、電位差滴定装置(COM-1700A、平沼産業(株)製)にて、1N水酸化カリウム水溶液を用いて滴定し、下記式(5)により固形分酸価を求めた。
固形分酸価(mgKOH/g)=(B×f×56.11)÷S (5)
(式中、Bは滴定に用いた1N水酸化カリウム水溶液の量(mg)、fは1N水酸化カリウム水溶液のファクター、Sは乾燥樹脂の質量(g)を示す。)
【0096】
(2)塗膜外観(成膜性)
各樹脂組成物を、ABS板(200mm×100mm×1mm)上に、厚みが20μmとなるようにキャスティングして塗膜を形成し、25℃で6時間架橋させ、試験片を作製した。
得られた試験片の塗膜状態を目視にて観察し、以下の基準で評価した。
○:平滑な塗膜が作製できた
×:ゲル状物が観察された
【0097】
(3)ラビング試験(耐溶剤性)
(3-1)メチルエチルケトン(MEK)
上記(2)の塗膜外観評価で作製した試験片の塗膜形成面について、溶剤にメチルエチルケトン(MEK)を用い、加重900g/cm2にて摩擦試験機ER-1B(スガ試験機(株)製)によりダブルラビング(ラビング回数:10回)を行ない、塗膜状態を目視にて観察し、以下の基準により5点満点で評価した。
5点:白化なし
4点:わずかに白化が観察された
3点:白化が観察された
2点:試験片の一部が溶解した
1点:試験片が溶解した
(3-2)キシレン
溶剤にキシレンを用い、上記(3-1)と同様に評価した。
(3-3)エタノール
溶剤にエタノール(99.5%)を用い、ラビング回数を50回に変更し、上記(3-1)と同様に評価した。
【0098】
(4)密着性(クロスカット法)
JIS K5600-5-6:1999に規定されたクロスカット法に従って、試験を行なった。具体的には、上記(2)で作製した試験片の塗膜形成面に、1mm間隔で6本×6本の切れ目を入れ、1mm四方のマス目を25個形成した。次いで、セロテープ(登録商標)(ニチバン(株)製)を貼り付けた後1分間放置し、0.5~1秒で60°に近い角度で剥離したときの試験片を目視で確認し、試験結果を下記の0~5に分類した。なお、この6段階の分類は、上記のJIS K5600-5-6:1999に記載のとおりである。
0:カットの縁が完全に滑らかで、どの格子の目にも剥がれがない。
1:カットの交差点における塗膜の小さな剥がれがある。クロスカット部分で影響を受ける剥がれは、明確に5%以下である。
2:塗膜がカットの縁に沿って、及び/又は交差点において剥がれている。クロスカット部分で影響を受ける剥がれは明確に5%を超えるが15%以下である。
3:塗膜がカットの縁に沿って,部分的又は全面的に大剥がれを生じており、及び/又は目のいろいろな部分が、部分的又は全面的に剥がれている。クロスカット部分で影響を受ける剥がれは、明確に15%を超えるが35%以下である。
4:塗膜がカットの縁に沿って、部分的又は全面的に大剥がれを生じており、及び/又は数か所の目が部分的又は全面的に剥がれている。クロスカット部分で影響を受ける剥がれは、明確に35%以下である。
5:分類4でも分類できない剥がれ程度のいずれかである。
【0099】
(5)耐温水性試験(80℃1時間)
(5-1)クロスカット法
JIS K5600-5-6:1999に規定されたクロスカット法に従って、試験を行なった。具体的には、上記(2)で作製した試験片を80℃の温水に1時間浸漬した後、上記(4)の密着性の評価と同様に試験を行い、試験結果を0~5に分類した。
【0100】
(5-2)外観
上記(2)で作製した試験片を80℃の温水に1時間浸漬した後、塗膜状態を目視にて観察し、以下の基準で評価した。
○:変化なし
×:白化、小泡の発生、及び浸透の少なくとも1つが確認された
【0101】
(6)保存安定性
各樹脂組成物を室温(25℃)で24時間もしくは48時間保管し、保管後の状態を目視にて観察し、以下の基準で評価した。
○:調製直後から変化なし
△:粘度上昇がみられるが流動性はある
×:ゲル化した
【0102】
(実施例B1)
ポリカルボジイミド化合物として合成例1で得られたポリカルボジイミド化合物1(樹脂架橋剤)0.92質量部と、水性樹脂としてNeoRez R-966(水性ポリウレタン樹脂、DSM社製、商品名、固形分33%、固形分酸価19mgKOH/g)10質量部とを混合して、樹脂組成物を調製した。
【0103】
(実施例B2~B18、及び比較例B1~B5)
各成分の種類及び配合量を下記表5に示す条件とし、実施例B1と同様にして、樹脂組成物を調製した。なお、表5中、空欄は配合なしを表す。
【0104】
【0105】
実施例B1~B18では、いずれも25℃で作製した塗膜の成膜性、耐溶剤性、密着性、及び耐温水性に優れることが示された。
一方、a/bが0.2である比較例B1は、耐溶剤性及び密着性に劣り、a/bが5.0である比較例B2は、塗膜の成膜性、密着性、及び樹脂組成物の保存安定性に劣る結果が示された。また、式(1)を満たさないポリカルボジイミド化合物を使用した比較例B3は、耐溶剤性、密着性、耐温水性試験、及び樹脂組成物の保存安定性に劣る結果が示された。第一級イソシアネート基を少なくとも1つ有する脂肪族ジイソシアネート化合物を由来とするカルボジイミド基を有さないポリカルボジイミド化合物を使用した比較例4は、耐溶剤性に劣る結果が示された。さらに、ポリカルボジイミド化合物を添加しない比較例B5では、耐溶剤性に劣る結果が示された。
【0106】
[樹脂組成物の調製(2)]
下記実施例及び比較例で用いた水性樹脂及び調製した各樹脂組成物について、上記[樹脂組成物の調製(1)]の評価項目(1)~(6)と同様にして、分析評価を行った。評価結果を下記表6に示す。
【0107】
樹脂組成物の調製に使用した表6に記載の各成分の詳細は、以下のとおりである。
<固形分酸価が5mgKOH/g以上の水性ポリウレタン樹脂>
・NeoRez R-650:DSM社製、商品名、固形分38質量%、固形分酸価5.6mgKOH/g
・NeoRez R-940:DSM社製、商品名、固形分31質量%、固形分酸価37mgKOH/g
<固形分酸価が5mgKOH/g未満の水性ポリウレタン樹脂>
・NeoRez R-4000:DSM社製、商品名、固形分35質量%、固形分酸価2mgKOH/g
【0108】
<固形分酸価が5mgKOH/g以上の水性アクリル樹脂>
・Primal AC-261P:ダウ・ケミカル社製、商品名、固形分50質量%、固形分酸価15mgKOH/g
・NeoCryl(登録商標) A639:DSM社製、商品名、固形分45質量%、固形分酸価42mgKOH/g
<固形分酸価が5mgKOH/g未満の水性アクリル樹脂>
・NeoCryl(登録商標) XK-103:DSM社製、商品名、固形分45質量%、固形分酸価3.2mgKOH/g
【0109】
<固形分酸価が5mgKOH/g以上の水性ポリエステル樹脂>
・Z-730:互応化学工業(株)製、商品名、固形分25質量%、固形分酸価60mgKOH/g
<固形分酸価が5mgKOH/g未満の水性ポリエステル樹脂>
・RZ-105:互応化学工業(株)製、商品名、固形分25質量%、固形分酸価4mgKOH/g
【0110】
(実施例B19)
ポリカルボジイミド化合物として合成例1で得られたポリカルボジイミド化合物1(樹脂架橋剤)0.31質量部、水性樹脂としてNeoRez R-650(水性ポリウレタン樹脂、DSM社製、商品名)10質量部、粘度調整剤としてRHEOLATE210(稲畑産業(株)製、商品名)0.24質量部、及び青色顔料としてEmacol NS Blue KRN(山陽色素(株)製、商品名)0.02質量部を混合して樹脂組成物を調製した。
【0111】
(実施例B20~B28、及び比較例B6~B14)
各成分の種類及び配合量を下記表6に示す条件とし、実施例B19と同様にして、樹脂組成物を調製した。なお、表6中、空欄は配合なしを表す。
【0112】
【0113】
実施例B19~B28では、いずれも25℃で作製した塗膜の成膜性、耐溶剤性、密着性、及び耐温水性に優れることが示された。
一方、ポリカルボジイミド化合物とともに固形分酸価が5mgKOH/g未満の水性樹脂を含む比較例B6~B14の樹脂組成物は、いずれも塗膜が溶剤に一部溶解し、また、密着性及び耐温水性に劣る結果が示された。