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特許7022126合成のラクダ臓器抽出物、その製造方法およびその使用
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-02-08
(45)【発行日】2022-02-17
(54)【発明の名称】合成のラクダ臓器抽出物、その製造方法およびその使用
(51)【国際特許分類】
   A61K 35/50 20150101AFI20220209BHJP
   A61K 35/26 20150101ALI20220209BHJP
   A61K 35/407 20150101ALI20220209BHJP
   A61K 38/02 20060101ALI20220209BHJP
   A61K 31/198 20060101ALI20220209BHJP
   A61K 31/7068 20060101ALI20220209BHJP
   A61K 31/7072 20060101ALI20220209BHJP
   A61K 31/7076 20060101ALI20220209BHJP
   A61K 31/708 20060101ALI20220209BHJP
   A61K 36/06 20060101ALI20220209BHJP
   A61K 35/12 20150101ALI20220209BHJP
   A61K 38/39 20060101ALI20220209BHJP
   A61K 31/728 20060101ALI20220209BHJP
   A61P 9/10 20060101ALI20220209BHJP
   A61P 17/02 20060101ALI20220209BHJP
   A61K 8/98 20060101ALI20220209BHJP
   A61Q 19/00 20060101ALI20220209BHJP
   A23L 33/28 20160101ALI20220209BHJP
【FI】
A61K35/50
A61K35/26
A61K35/407
A61K38/02
A61K31/198
A61K31/7068
A61K31/7072
A61K31/7076
A61K31/708
A61K36/06 A
A61K35/12
A61K38/39
A61K31/728
A61P9/10 101
A61P17/02
A61K8/98
A61Q19/00
A23L33/28
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2019522946
(86)(22)【出願日】2016-11-29
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2019-11-14
(86)【国際出願番号】 EP2016079098
(87)【国際公開番号】W WO2018082795
(87)【国際公開日】2018-05-11
【審査請求日】2019-10-31
(31)【優先権主張番号】01466/16
(32)【優先日】2016-11-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CH
(73)【特許権者】
【識別番号】506058543
【氏名又は名称】リームシュナイダー、ランドルフ
【氏名又は名称原語表記】RIEMSCHNEIDER, Randolph
【住所又は居所原語表記】Oldenburgallee 55/56, 14052 Berlin Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100077012
【弁理士】
【氏名又は名称】岩谷 龍
(72)【発明者】
【氏名】リームシュナイダー,ランドルフ
【審査官】柴原 直司
(56)【参考文献】
【文献】Camel in Chemistry II Camel Placenta Extracts, [online], 2016-AUG-01 uploaded, The Pellam Journal of Science, [Retrieved on 2020-OCT-19], Retrieved from the internet:<URL:http://www.bwwsociety.org/journal/science/archive/2016-07/camelii/Camel%20in%20Chemistry%20II.htm>&<http://www.bwwsociety.org/journal/science/archive/2016-07/editorsletter/Journal%20of%20Science%20Editor's%20Letter.htm>
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 35/12
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
a.1つまたは複数の、グリシン、グルタミン酸、アルファ‐アラニン、アスパラギン酸、ヒドロキシプロリン、プロリン、セリン、リシン、アルギニン、ヒスチジン、オルニチン、アスパラギン、バリン、チロシン、DL‐トレオニン、フェニルアラニン、ロイシン、トレオニン、トリプトファン、メチオニン、β‐アラニン、イソロイシン、システイン、クレアチニンおよび馬尿酸を含む群から選択されるL‐アミノ酸および/またはその誘導体、
b.ラクダ胎盤、ラクダ胸腺及びラクダ肝臓からなる群から選択されるラクダ臓器抽出物から得た1つのペプチド画分、
c.1つまたは複数の、アデニン、アデノシン、シチジン、グアニン、シトシン、ウラシル、グアノシン、ウリジン、ヒポキサンチン、キサンチン、環状AMP、アデノシン一リン酸、イノシン、尿酸およびオロト酸を含む群から選択される核酸成分および/またはその誘導体、
d.1つまたは複数のビタミンおよび無機塩類、
.並びに必要に応じてその他の添加物
を、6.0から7.4の間のpHにおいて30~40vol%の水と混合することを含む、合成のラクダ臓器抽出物の製造方法であって、
ラクダ臓器からペプチド画分を獲得するために、
b1)無血液の洗浄されたラクダ臓器組織を機械的破砕によってピューレ状にして、1つまたは複数の適切な溶媒、または溶媒混合物と混合し、
b2)前記の混合物を数日間冷却保存して、続いて遠心分離機で分離し、
b3)前記被分離物において、浸透圧条件を変化させ、同時に55~65℃へ加熱することによって、前記被分離物中に含まれるペプチドを分離し、
b4)残留タンパク質を除去するために、pHを3.2から3.5にまで下げて、
b5)最後に滅菌濾過を行う、製造方法。
【請求項2】
i)前記ビタミンおよび無機塩類が、ピリドキソール塩酸塩、ビオチン、チアミン塩化物、パントテン酸カルシウム、トコフェロールコハク酸エステル、ミオ‐イノシトール、ニコチンアミド、硫酸マグネシウム、アスパラギン酸マグネシウム、リン酸二水素ナトリウム一水和物、酢酸亜鉛、グルコン酸コバルトおよびグルコン酸マンガンを含む群から選択され、
ii)前記その他の添加物が、グルコース、ソルビトール、マンニトール、クエン酸、リンゴ酸、コハク酸、ベンジルアルコール、グリセリン、エタノール、N‐メチルグルカミン、乳酸ナトリウムおよびコハク酸ナトリウムを含む群から選択される、
請求項1に記載の方法。
【請求項3】
更に酵母細胞製剤を追加混合する、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記ラクダ臓器抽出物の細胞代謝活性を増加させる作用を強化する、および/または代謝活性を増加させる固有の作用を有する、更に別の成分を追加混合する、請求項1から3までのいずれか1つに記載の方法。
【請求項5】
に別の天然または合成の哺乳類臓器抽出物を追加混合する、請求項1から4までのいずれか1つに記載の方法。
【請求項6】
動脈硬化症または放射線損傷を治療するための、外傷または内傷治癒を目的とした、局所、皮下、静脈または筋肉内において適用するための医療用組成物を製造することを目的とした、請求項1から5までのいずれか1つに記載の方法に従って獲得可能な、合成のラクダ臓器抽出物の使用。
【請求項7】
請求項1から5までの少なくとも1つに記載の方法に従って獲得可能な、化粧品添加物または栄養強化剤としての、合成のラクダ臓器抽出物の使用。
【請求項8】
更に各型のコラーゲン、エラスチン、フィブロネクチン、クレアチンおよびヒアルロン酸を含む群から選択され得る、1つまたは複数のラクダ結合組織成分と混合する、請求項1から5までのいずれか1つに記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
動物臓器抽出物は、調合薬および化粧品の原料として非常に重要である。特に、動物胎盤抽出物はその中に含まれる有効成分に基づき、調合薬および化粧品において広範囲にわたって使用され[「石鹸‐油‐脂肪‐蝋」112、211‐218(1986年)を参照のこと]、多くの場合必要に応じて更に低分子添加物が付加される。
【0002】
飼育コストが低いラクダは、a)気候変動によって引き起こされる地球上の砂漠地帯の増加、b)地球人口の制御不能な増加により、これまでと同様に続けていけば(例えば、費用のかかりすぎる養豚および牧畜)いつか引き起こされる食料問題によって、家畜としての重要性がますます高くなる。ラクダ科に属するもの:フタコブラクダ(300~950kg)(アジア)、ヒトコブラクダ(300~500kg)(アフリカ)、リャマ、アルパカ、グアナコ、ビクーニャ。ラクダのコブは脂肪の貯蔵庫である。
【背景技術】
【0003】
1947年以降、本発明者は豚、牛、馬からの動物臓器抽出物に関する研究にラクダも含め、例えば、天然のラクダ胎盤抽出物(I)およびラクダ胸腺抽出物(II)も製造し、対応するタンパク質非含有の合成抽出物I(合成I)およびII(合成II)を開発するための前提条件を作るために、その組成解析を詳細に行った。IおよびIIの前駆体は本発明者が開発した日本の合成注射製剤セルリール(基剤:子牛の血液SR71)であり、これは細胞代謝活性化特性において既に傑出していた:ミトコンドリア内のATP産生の増加はワールブルク法を用いて測定可能であり、その増加係数は1.8である。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
【文献】「石鹸‐油‐脂肪‐蝋」112、211‐218(1986年)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
したがって本発明の課題は、合成のラクダ臓器抽出物の製造方法の提供、並びにその結果として生じる、周知の天然および合成の動物由来の臓器抽出物の生化学的作用プロファイルを好ましくは本質的に改善させる合成のラクダ臓器抽出物である。前記の課題は本発明によって解決される。本発明による方法で製造された合成のラクダ臓器抽出物は、特に改善された細胞代謝活性化特性において傑出しており、(例えば、創傷治癒促進のための)薬剤組成物の成分、(例えばスキンクリーム中の)化粧品用添加剤、または栄養補助食品としての使用を含めて、日常生活の多くの領域において使用される。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の課題を解決するために、(1)
a.1つまたは複数のL‐アミノ酸およびその誘導体、
b.ラクダ臓器抽出物から得た1つのペプチド画分、
c.1つまたは複数の核酸成分およびその誘導体、
d.1つまたは複数のビタミンおよび無機塩類、
c.並びにその他の添加物
を、6.0から7.4の間のpHにおいて30~40vol%の水と混合することを含む、合成のラクダ臓器抽出物の製造方法が提供される。
【0007】
(2)L‐アミノ酸およびその誘導体を、グリシン、グルタミン酸、アルファ‐アラニン、アスパラギン酸、ヒドロキシプロリン、プロリン、セリン、リシン、アルギニン、ヒスチジン、オルニチン、アスパラギン、バリン、チロシン、DL‐トレオニン、フェニルアラニン、ロイシン、トレオニン、トリプトファン、メチオニン、β‐アラニン、イソロイシン、システイン、クレアチニンおよび馬尿酸を含む群から選択する、第1項に記載の方法。
【0008】
(3)ラクダ臓器からペプチド画分を獲得するために、
b1)無血液の洗浄されたラクダ臓器組織を機械的破砕によってピューレ状にして、適切な溶媒、または溶媒混合物と混合し、
b2)該混合物を数日間冷却保存して、続いて遠心分離機で分離し、
b3)該被分離物において浸透圧条件を変化させ、同時に55~65℃へ加熱することによって、存在しているタンパク質からペプチドを分離し、
b4)空気または酸素を十分に長く流出させることによって残留タンパク質を除去するために、pHを3.2から3.5にまで下げ、
b5)最後に滅菌濾過を行う、
第1項または第2項に記載の方法。
【0009】
(4)適切な溶媒混合物として対象となるのがエーテルとエタノールであり、段階b3)の後にエーテルを除去するために、7.2から7.5の間のpHにおいて空気混合物を被分離物を通して通過させる、第1項~第3項のいずれか1つに記載の方法。
【0010】
(5)ラクダ胎盤抽出物、ラクダ胸腺抽出物またはラクダ肝臓抽出物からペプチド画分を獲得する、第1項~第4項のいずれか1つに記載の方法。
【0011】
(6)核酸成分およびその誘導体を、アデニン、アデノシン、シチジン、グアニン、シトシン、ウラシル、グアノシン、ウリジン、ヒポキサンチン、キサンチン、環状AMP、アデノシン一リン酸、イノシン、尿酸およびオロト酸を含む群から選択する、第1項~第5項のいずれか1つに記載の方法。
【0012】
(7)ビタミンおよび無機塩類を、ピリドキソール塩酸塩、ビオチン、チアミン塩化物、パントテン酸カルシウム、トコフェロールコハク酸エステル、ミオ‐イノシトール、ニコチンアミド、硫酸マグネシウム、アスパラギン酸マグネシウム、リン酸二水素ナトリウム一水和物、酢酸亜鉛、グルコン酸コバルトおよびグルコン酸マンガンを含む群から選択する、第1項~第6項のいずれか1つに記載の方法。
【0013】
(8)その他の添加物を、グルコース、ソルビトール、マンニトール、クエン酸、リンゴ酸、コハク酸、ベンジルアルコール、グリセリン、エタノール、N‐メチルグルカミン、グルコサミン、乳酸ナトリウムおよびコハク酸ナトリウムを含む群から選択する、第1項~第7項のいずれか1つに記載の方法。
【0014】
(9)合成のラクダ臓器抽出物を製造するために、
a.0.1~50g/l、2~10g/l、または4g/lのL‐アミノ酸またはL‐アミノ酸誘導体、
b.合成のラクダ臓器抽出物1リットルにつき、0.1~10kg、1~5kg、あるいは2kgのラクダ臓器組織から生じるペプチド画分、
c.0.01~50g/l、0.1~5g/l、または1.0g/lの核酸成分およびその誘導体、
d.0.1~1.0g/l、0.6~0.9g/l、または0.7g/lのビタミン、および0.1~20g/l、1~5g/l、または1.5g/lの無機塩類、並びに、
e.0~200g/l、5~100g/l、80g/l、60g/lまたは20g/lのその他の添加物
を、6.0から7.4の間のpHにおいて30~40vol%の水と混合する、第1項~第8項のいずれか1つに記載の方法。
(重量/体積および体積/体積の表示は合成のラクダ臓器抽出物の最終体積に対するものである)。
【0015】
(10)合成のラクダ臓器抽出物を製造するために、
a.L‐アミノ酸またはL‐アミノ酸誘導体として、グリシン、グルタミン酸各0.3~0.4g/l、アルファ‐アラニン、アスパラギン酸、ヒドロキシプロリン、プロリン、セリン、リシン、アルギニン各0.2~0.4g/l、ヒスチジン、オルニチン、アスパラギン、バリン、チロシン、DL‐トレオニン、フェニルアラニン、ロイシン各0.03~0.06g/l、トレオニン、トリプトファン、メチオニン、β‐アラニン各0.01~0.03g/l、イソロイシン、システイン、クレアチニン、馬尿酸各<0.02g/l、尿素0.5~0.9g/l、
b.ペプチド画分として、合成のラクダ臓器抽出物1リットルにつき、2kgのラクダ臓器組織から生じるペプチド画分、
c.核酸成分およびその誘導体として、アデニン、アデノシン、シチジン、グアニン、シトシン、ウラシル、グアノシン、ウリジン、ヒポキサンチン、キサンチン、環状AMP、アデノシン一リン酸各0.01~0.03g/l、イノシン0.08g/l、尿酸およびオロト酸各0.02~0.03g/l、
d.ビタミンとして、ピリドキソール塩酸塩0.5~0.7g/l、ビオチン0.1g/l、チアミン塩化物、パントテン酸カルシウム、トコフェロールコハク酸エステル各<0.002g/l、ミオ‐イノシトール、ニコチン酸アミド各<0.03g/l、および無機塩類として、硫酸マグネシウム、アスパラギン酸マグネシウムおよびリン酸二水素ナトリウム一水和物各<0.07g/l、酢酸亜鉛0.1g/l、グルコン酸コバルト、グルコン酸マンガン各0.005g/l、
e.並びに、その他の添加物として、グルコース、ソルビトールおよびマンニトール各0.1~0.5g/l、クエン酸1~5g/l、リンゴ酸1~2g/l、コハク酸5~15g/l、エタノール10~50ml/l、ベンジルアルコール1~4ml/l、グリセリン0.4~1.0g/l、N‐メチルグルカミン<0.5g/l、グルコサミン1~2.5g/l、乳酸ナトリウム1~4g/l、コハク酸ナトリウム2~15g/l
を、6.0から7.4の間のpHにおいて30~40vol%の水と混合する、第1項~第9項のいずれか1つに記載の方法(数値は最終体積に対するものである)。
【0016】
(11)更に酵母細胞製剤を追加混合する、第1項~第10項のいずれか1つに記載の方法。
【0017】
(12)ラクダ臓器抽出物の細胞代謝活性を増加させる作用を強化する更に別の成分を追加混合する、第1項~第11項のいずれか1つに記載の方法。
【0018】
(13)合成のラクダ臓器抽出物に、細胞代謝活性を増加させる更に別の成分を追加混合する、第1項~第12項のいずれか1つに記載の方法。
【0019】
(14)合成のラクダ臓器抽出物に、更に別の天然または合成の哺乳類臓器抽出物を追加混合する、第1項~第13項のいずれか1つに記載の方法。
【0020】
(15)合成のラクダ臓器抽出物に、更に別の天然または合成の植物抽出物を追加混合する、第1項~第14項のいずれか1つに記載の方法。
【0021】
(16)第1項~第15項のいずれか1つに記載の方法に従って獲得可能な、合成のラクダ臓器抽出物およびその抽出物混合物。
【0022】
(17)第1項から第15項までのいずれか1つに記載の方法に従って獲得可能な、合成のラクダ臓器抽出物およびその抽出物混合物を含み、動脈硬化症または放射線損傷を治療するための、外傷または内傷治癒を目的とした、局所、皮下、静脈または筋肉内において適用するための薬剤組成物。
【0023】
(18)動脈硬化症または放射線損傷を治療するための、外傷または内傷治癒を目的とした、局所、皮下、静脈または筋肉内において適用するための医療用組成物を製造するための、第1項から第15項までのいずれか1つに記載の合成のラクダ臓器抽出物およびその抽出物混合物の使用。
【0024】
(19)第1項から第15項までのいずれか1つに記載の方法に従って獲得可能な、化粧品添加物としての、合成のラクダ臓器抽出物および抽出物混合物の使用。
【0025】
(20)第1項から第15項までのいずれか1つに記載の方法に従って獲得可能な、栄養強化剤としての、合成のラクダ臓器抽出物および抽出物混合物の使用。
【0026】
(21)合成のラクダ臓器抽出物を、1つまたは複数のラクダ結合組織成分と混合する、第1項~第15項のいずれか1つに記載の方法。
【0027】
(22)ラクダ結合組織成分を、各型のコラーゲン、エラスチン、フィブロネクチン、クレアチンおよびヒアルロン酸を含む群から選択し得る、第21項に記載の方法。
【発明を実施するための形態】
【0028】
本発明の第一の態様により、合成のラクダ臓器抽出物の製造方法が提供される。その際、1つまたは複数のL‐アミノ酸およびその誘導体、ラクダ臓器抽出物から得た1つのペプチド画分、1つまたは複数の核酸成分およびその誘導体、1つまたは複数のビタミンおよび無機塩類、並びに任意で更に別の添加物を、6.0から7.4の間のpHにおいて30~40vol%(体積パーセント)の水、好ましくは再蒸留(bidest.)水と溶解または混合する。個々の成分を撹拌しながら無菌状態で混合する。
【0029】
本発明による、L‐アミノ酸およびL‐アミノ酸誘導体の群に対する更なる制限はない。本発明の実施形態の1つにおいて、適切なL‐アミノ酸およびL‐アミノ酸誘導体は、アスパラギン、アスパラギン酸、システイン、システイン、グルタミン酸、グルタミン、アルファ‐アラニン、ベータ‐アラニン、アルギニン、グリシン、ヒスチジン、デルタ‐ヒドロキシリシン、ヒドロキシプロリン、ロイシン、イソロイシン、リシン、メチオニン、ノルロイシン、フェニルアラニン、プロリン、セリン、トレオニン、トリプトファン、チロシン、バリン、アルファ‐アミノアジピン酸、アルファ‐アミノ酪酸(標準)、ガンマ‐アミノ‐n‐酪酸、ベータ‐アミノ‐イソ酪酸、デルタ‐アミノレブリン酸、カルバミルアスパラギン酸、シトルリン、クレアチン、クレアチニン、シスタチオニン、システイン酸、エルゴチオネイン(チオールヒスチジンのベタイン)、グリコシアミン(グイニジン酢酸)、ホモセリン、オルニチン、タウリン、ジエンコル酸(システインチオホルムアセタール)、グアニジン塩、オルニツル酸、フェナセツル酸、馬尿酸、尿素、N‐アセチル‐L‐アラニン、N‐アセチル‐L‐アルギニン、N‐アセチルグリシン、N‐アセチル‐L‐ヒドロキシプロリン、N‐アセチル‐L‐イソアスパラギン、N‐アセチル‐L‐イソロイシン、N‐アセチル‐L‐ロイシン、N‐アセチル‐L‐リシン、N‐アセチル‐L‐メチオニン、N‐アセチルムラミン酸、N‐アセチル‐L‐オルニチン、N‐アセチル‐L‐フェニルアラニン、N‐アセチル‐L‐プロリン、O‐アセチル‐L‐セリン、N‐アセチル‐L‐トレオニン、N‐アセチル‐L‐トリプトファン、N‐アセチル‐L‐バリン、L‐アロ‐イソロイシン、L‐アロ‐トレオニン、N‐ベンゾイル‐L‐アルギニン、N‐ベンゾイル‐L‐ヒスチジン、N‐ベンゾイル‐L‐リシン、N‐ベンゾイル‐L‐メチオニン、N‐ベンゾイル‐L‐オルニチン、N‐ベンゾイル‐L‐フェニルアラニン、N‐ベンゾイル‐L‐トリプトファン、N‐ベンゾイル‐L‐バリン、S‐ベンゾイル‐L‐システイン、O‐ベンゾイル‐L‐セリン、O‐ベンゾイル‐L‐チロシン、L‐カルノシン(β‐アラニル‐L‐ヒスチジン)、N,O‐ジアセチル‐L‐トレオニン、およびO‐ホスホ‐L‐セリンである。
【0030】
本発明の代替実施形態において、適切なL‐アミノ酸およびL‐アミノ酸誘導体の群は、グリシン、グルタミン酸、アルファ‐アラニン、アスパラギン酸、ヒドロキシプロリン、プロリン、セリン、リシン、アルギニン、ヒスチジン、オルニチン、アスパラギン、バリン、チロシン、DL‐トレオニン、フェニルアラニン、ロイシン、トレオニン、トリプトファン、メチオニン、β‐アラニン、イソロイシン、システイン、クレアチニンおよび馬尿酸からなる。
【0031】
本発明により、ペプチド画分がラクダ臓器から以下の通りに獲得される。無血液の洗浄されたラクダ臓器組織を機械的破砕によってピューレ状にして、1つまたは複数の適切な溶媒と混合し、数日間、例えば5、10または15日間、冷却(好ましくは<-10℃で)保存し、その後、遠心分離によって(例えば、防爆仕様のドラム型遠心分離機で)分離する。適切な溶媒混合物は例えばエーテルとエタノールで、好ましくは13.3:1の割合である。被分離物の浸透圧条件の変化と、同時に行う約60℃への加熱の下で、被分離物中に含まれるタンパク質からペプチドが分離する。次に溶媒(エーテル)を除去するために、7.2から7.5までのpHにおいて空気を通過させることができる。その後、空気または酸素の通過によって残留タンパク質を除去するために、pHを約3.4に下げる。タンパク質非含有は、スルホサリチル酸を用いて確認することができる。滅菌濾過(孔径:0.22μm)の後に、必要なペプチド画分(透過)が獲得される。
【0032】
本発明によるラクダ臓器またはラクダ臓器組織とは、ラクダ由来のあらゆる臓器または臓器の一部(臓器組織)と理解され得る。本発明の代替実施形態においてラクダ臓器またはラクダ臓器組織として対象となるのは、胎盤、胸腺、肝臓、脾臓、心筋、結合組織、または唾液腺である。本発明の好ましい実施形態においてラクダ臓器またはラクダ臓器組織として対象となるのは、ラクダ胎盤、ラクダ胸腺、ラクダ肝臓、またはラクダ唾液腺である。本発明の更に別の好ましい実施形態においてラクダ臓器またはラクダ臓器組織として対象となるのは、ラクダ胎盤またはラクダ胸腺である。
【0033】
本発明による核酸成分および核酸誘導体の群に更なる制限はない。核酸成分およびその誘導体の例は、2‐アミノプリン、ヒポキサンチン、1‐メチルヒポキサンチン、アデニン、2‐メチルアデニン、6‐メチルアミノプリン、グアニン、1‐メチルグアニン、7‐メチルグアニン、2‐メチルアミノ‐6‐オキソジヒドロプリン、8‐ヒドロキシグアニン、イソグアニン、2,6‐ジアミノプリン、キサンチン、1‐メチルキサンチン、3‐メチルキサンチン、7‐メチルキサンチン、3,9‐ジメチルキサンチン、尿酸、1‐メチル尿酸、9‐メチル尿酸、1,9‐ジメチル尿酸、3,7‐ジメチル尿酸、1,3,7‐トリメチル尿酸、アデノシン、3’‐アミノ‐3’‐デソキシ‐アデノシン、9‐β‐D‐リボフラノシル‐6‐メチルアミノプリン、2’‐デソキシイノシン、2’‐アデニル酸、3’‐アデニル酸、5’‐アデニル酸、アデノシン‐5’‐二リン酸、アデノシン‐5’‐三リン酸、デソキシアデニル酸、2’‐デソキシアデノシン‐5’‐三リン酸塩、N‐スクシニルアデニル酸、3’‐グアニル酸、グアノシン‐5’‐二リン酸、グアノシン‐5’‐三リン酸、イノシン‐3’‐リン酸、イノシン‐5’‐リン酸、イノシン‐5’‐二リン酸、キサンチル酸、キサントシン‐5’‐一リン酸、グアノシン二リン酸塩‐マンノース、グアノシン二リン酸塩‐フルクトース、グアノシン二リン酸塩‐フコース、ジホスホピリジンヌクレオチド、トリホスホピリジンヌエロチド、シトシン、5‐メチルシトシン、5‐ヒドロキシメチルシトシン、シチミジン、チミン、ウラシル、ウィラルジイン、5‐アミノウラシル、4,5‐ジヒドロウラシル、4‐アミノウラシル、ウリジン、4,5‐ジヒドロウリジン、2’‐デソキシウリジン、5‐メチルウリジン、プソイドウリジン、オロチジン、シチジン、2’‐デソキシシチジン、5‐メチルシチジン、チミジン、a‐チミジン、シチジン‐2’‐一リン酸塩、シチジン‐3’‐一リン酸塩、シチジン‐5’‐一リン酸塩、シチジン‐5’‐二リン酸塩、ウリジン‐2’‐一リン酸塩、ウリジン‐3’‐一リン酸塩、オロト酸、ウリジン‐5’‐一リン酸塩、ウリジン‐5’‐二リン酸塩、5‐メチルシチジン‐3’‐一リン酸塩、オロチジン‐5’‐一リン酸塩、チミジン‐5’一リン酸塩、チミジン‐5’‐三リン酸塩、2’‐デソキシシチジン‐5’一リン酸塩、2’‐デソキシシチジン‐5‐二リン酸塩、ウリジン二リン酸塩‐グルコース、ウリジン二リン酸塩ガラクトース、ウリジン二リン酸塩‐アラビノース、ウリジン二リン酸塩‐キシロース、ウリジン二リン酸塩‐グルクロン酸、ウリジン二リン酸塩‐N‐アセチルガラクトサミン、シチジン二リン酸塩‐a‐グリセリン、シチジン二リン酸塩‐リビトール、環状AMP、環状GMPなどである。
【0034】
本発明の特別な実施形態において、核酸成分および核酸誘導体の群は、アデニン、アデノシン、シチジン、グアニン、シトシン、ウラシル、グアノシン、ウリジン、ヒポキサンチン、キサンチン、環状AMP、アデノシン一リン酸、イノシン、尿酸およびオロト酸からなる。
【0035】
本発明に関するビタミンおよび無機塩類の群には、周知のビタミンおよび無機塩類が全て含まれる。ビタミンおよび無機塩類の一部の例を示すリストには、ピリドキソール塩酸塩、ビオチン、チアミン塩化物、D‐パンテノール、パントテン酸カルシウム、トコフェロールコハク酸エステル、ミオ‐イノシトール、ニコチンアミド、硫酸マグネシウム、アスパラギン酸マグネシウム、リン酸二水素ナトリウム‐一水和物、酢酸亜鉛、グルコン酸コバルトおよびグルコン酸マンガンが含まれる。
【0036】
本発明に関するその他の添加物の群には、例えば、安定性、個々の成分の可溶性、緩衝作用または有効性を向上させることによって、合成のラクダ臓器抽出物の効力と作用を向上させる物質が含まれる。その他の添加物の群には、特に、グルコース、ソルビトール、マンニトール、クエン酸、リンゴ酸、コハク酸、ベンジルアルコール、グリセリン、エタノール、N‐メチルグルカミン、乳酸ナトリウムおよびコハク酸ナトリウムが含まれる。
【0037】
本発明による方法の代替実施形態において、合成のラクダ臓器抽出物を製造するために、
a.0.1~50g/l、2~10g/l、または4g/lのL‐アミノ酸またはL‐アミノ酸誘導体、
b.合成のラクダ臓器抽出物1リットルにつき、0.1~10kg、1~5kg、あるいは2kgのラクダ臓器組織から生じるペプチド画分、
c.0.01~50g/l、0.1~5g/l、または1g/lの核酸成分およびその誘導体、
d.0.1~1.0g/l、0.6~0.9g/l、または0.7g/lのビタミンおよび0.1~20g/l、1~5g/l、または1.5g/lの無機塩類、並びに、
e.0~200g/l、5~100g/l、80g/l、60g/lまたは20g/lのその他の添加物
を、6.0から7.4の間のpHにおいて30~40vol%の水と混合する(重量/体積および重量/重量の表示は合成のラクダ臓器抽出物の最終体積に対するものである)。
【0038】
本発明による方法の更に別の実施形態においては、合成のラクダ臓器抽出物を製造するために、
a.L‐アミノ酸またはL‐アミノ酸誘導体として、グリシン、グルタミン酸各0.3~0.4g/l、アルファ‐アラニン、アスパラギン酸、ヒドロキシプロリン、プロリン、セリン、リシン、アルギニン各0.2~0.4g/l、ヒスチジン、オルニチン、アスパラギン、バリン、チロシン、DL‐トレオニン、フェニルアラニン、ロイシン各0.03~0.06g/l、トレオニン、トリプトファン、メチオニン、β‐アラニン各0.01~0.03g/l、イソロイシン、システイン、クレアチニン、馬尿酸各<0.02g/l、尿素0.5~0.9g/l、
b.合成のラクダ臓器抽出物1リットル当たりのペプチド画分として、2kgのラクダ臓器組織から生じるペプチド画分、
c.核酸成分およびその誘導体として、アデニン、アデノシン、シチジン、グアニン、シトシン、ウラシル、グアノシン、ウリジン、ヒポキサンチン、キサンチン、環状AMP、アデノシン一リン酸各0.01~0.03g/l、イノシン0.08g/l、尿酸およびオロト酸各0.02~0.03g/l、
d.ビタミンとして、ピリドキソール塩酸塩0.5~0.7g/l、ビオチン0.1g/l、チアミン塩化物、パントテン酸カルシウム、トコフェロールコハク酸エステル各<0.002g/l、ミオ‐イノシトール、ニコチン酸アミド各<0.03g/l、および、無機塩類として、硫酸マグネシウム、アスパラギン酸マグネシウムおよびリン酸二水素ナトリウム‐一水和物各<0.07g/l、酢酸亜鉛0.1g/l、グルコン酸コバルト、グルコン酸マンガン各0.005g/l、
e.並びに、その他の添加物として、グルコース、ソルビトールおよびマンニトール各0.1~0.5g/l、クエン酸1~5g/l、リンゴ酸1~2g/l、コハク酸5~15g/l、エタノール10~50ml/l、ベンジルアルコール1~4ml/l、グリセリン0.4~1.0g/l、N‐メチルグルカミン<0.5g/l、グルコサミン1.0~2.5g/l、乳酸ナトリウム1~4g/l、コハク酸ナトリウム2~15g/l
を、6.0から7.4の間のpHにおいて30~40vol%の水と混合する(値は最終体積に対するものである)。
【0039】
本発明の代替実施形態では、合成のラクダ臓器抽出物の製造方法において代謝活性を更に増加させる特別な酵母細胞製剤が追加される。このような酵母細胞製剤の1つの例はH38である(「化学の75年:再読」、第II巻、448~449ページ(ISBN978‐1‐882292‐34‐9))。本発明による方法の更に別の代替実施形態において、(合成のラクダ臓器抽出物の最終体積に対して)5~500ml/l、10~150ml/l、あるいは50ml/lのH38酵母細胞製剤が追加される。また別の使用形態においては、合成の牛胸腺抽出物もラクダ臓器抽出物の細胞代謝活性化特性を強化することができる。
【0040】
本発明の更に別の代替実施形態においては、ペプチド抽出物、アミノ酸および核酸並びにそれらの誘導体、ビタミン、無機塩類、並びにその他の添加物の他に、ラクダ臓器抽出物の細胞代謝活性を増加させる作用を強化する更に別の成分が追加混合される。ラクダ臓器抽出物の細胞代謝活性を増加させる作用を強化する成分は、特に、例えばグルコース、転化糖、D‐マンノース、D‐リブロース、L‐エリトルロース‐1‐リン酸塩、D‐フルクトース‐6‐リン酸塩、D,L‐アラビノースおよびN‐メチルヘキソサミン、炭素原子数が3から6までの脂肪族カルボン酸といった炭水化物および炭水化物誘導体、並びに緩衝物質である。
【0041】
本発明の更に別の実施形態においては、合成のラクダ臓器抽出物に、代謝活性を増加させる更に別の成分が追加混合される。本発明による合成のラクダ臓器抽出物は、胎盤、胸腺、血液、血清、脾臓、肝臓、心筋、エラスチン、コラーゲン、結合組織、羊水、臍帯、クラゲおよび魚卵からの各抽出物、並びにこれらの組み合わせの形態において、多数の天然物抽出物、特に天然または合成の哺乳類臓器抽出物および植物抽出物に対する有効な代替物または補助剤である。本発明による合成のラクダ臓器抽出物はこのような天然物抽出物、例えば天然または合成の哺乳類臓器抽出物および植物抽出物と組み合わせることができる。
【0042】
本発明の更に別の態様は、本発明による方法で製造された合成のラクダ臓器抽出物に関する。合成のラクダ臓器抽出物の組成と品質は、最新の技術において一般的な解析方法を用いて検証することができる。この方法で試験され得る解析パラメータには、pH値、乾燥残留物(105℃で5時間)、窒素含有量(ケルダール法による)、アミノ酸分析(ニンヒドリン、薄層クロマトグラフィー(TLC)およびHPLCを用いた定性分析)、ペプチド検出(ビウレット試薬による)、タンパク質非含有(スルホサリチル酸による)、核酸成分(TLC)、およびDAB(ドイツ薬局方)10に従った無菌性試験が含まれる。
【表1】
【0043】
更に別の態様により、本発明は、特に免疫系の強化、細胞代謝の活性化、または消化器疾患、特に潰瘍の治療、および動脈硬化症または放射線損傷を治療するための、外傷または内傷治癒を目的とした局所、皮下、静脈または筋肉内での使用を目的とした医薬品組成物を製造するための、前述の合成のラクダ臓器抽出物の単独使用、またはラクダおよび他の生体から得た更に別のコラーゲン抽出物または他の臓器抽出物との混合または組み合わせの形態における使用に関する。合成のラクダ臓器抽出物の更に別の本発明による使用は、例えばクリーム製剤といった化粧品製剤の製造である。
【0044】
更に合成のラクダ臓器抽出物は、単独あるいは混合または組み合わせの形態で、希釈せず、または希釈して、例えば栄養補助食品または栄養強化剤として、直接経口摂取するための該抽出物を内包するカプセルの形態で使用され得る。
【0045】
合成のラクダ臓器抽出物の適用による、ラクダ用飼料栄養補助剤
研究結果:a)食べる量が十分でなかったラクダの子どもへの相応の使用:食欲不振に対して、このような処置の後しばらくして成果が現れた。それどころか、食欲不振から過食になったことにより、まもなくこのような抽出物の投与を中断しなければならなかった。b)栄養補助食品として、ラクダ臓器抽出物は回復期のラクダに適していた。c)ラクダ臓器抽出物の注射剤としての使用:ハンブルクの友人ヴォルフガング・ザイデル氏と、更にUFSM(サンタ・マリア連邦大学)の前学長であるジョゼ・マリアーノ・ダ・ロッチャ・フィルホ博士教授の仲介により、彼らが親しくしている首長所有のラクダを用いて、相応の試験を行うことができた:同首長は、所有するラクダがレースで成功を収めてから数年間、本発明者の調合に従って製造されたラクダ胸腺抽出物を注射液として獲得した。
【0046】
標準的なパン酵母の発酵が、筆者の開発した代謝を活性化する酵母製剤H38を添加することによって促進され得るのと同様に、ラクダの生体活性も、代謝を活性化するラクダ臓器抽出物の適用によって向上され得る。これは競争用ラクダまたは回復期のラクダには興味深いことである。
【0047】
本発明によって製造された合成のラクダ臓器抽出物の単独使用、あるいは該抽出物と別の臓器抽出物との混合または組み合わせの形態における使用は、特定の生物に制限されていない。本発明の実施形態の1つにおいて、本発明による合成のラクダ臓器抽出物は哺乳類に使用される:例えば、人間、ラクダ、馬、牛、羊、鶏または豚。別の実施形態において、本発明による合成のラクダ臓器抽出物は微生物または植物に使用される。
【0048】
クリーム製剤の製造(油中水滴エマルジョン):
1965年以降、本発明者は、例えばオムニサイマス、エバンジル(ポーラ)内のk‐PFE+セルリールといった、複数のタンパク質非含有(および酵素非含有)の化粧品添加物の使用において成功を収めている。
【0049】
化粧品添加物におけるタンパク質非含有の臓器抽出物の使用の根拠は、本発明者が「化学の75年:再読」、第II巻、320ページ(ISBN978‐1‐882292‐34‐9)において示しており、前記の文献524ページには、細胞培養において獲得された標準的合成抽出物による対比も示されている。
以下の組成に従って、合成抽出物Iを追加混合したハンドクリームが調製された。クリーム製剤の最終組成は以下の通りであった:
【表2】
【0050】
上記のクリーム製剤を製造するために、脂肪相の成分とヴァセリンを約75℃に加熱した。同時にPVAゲルを約80℃の熱湯中で分散させ、徐々に溶解させた。最終的な分散体に対して、EOユニット数が約25のエトキシル化脂肪族アミン、および必要に応じて更に乳化剤を加え、その後、予め用意し、加熱しておいた脂肪相をその中で乳化させた。混合温度で5分撹拌した後、60℃に冷却して、その後10%の苛性ソーダを混合し、更に40℃以下にまで冷却した。その後ゆっくり撹拌しながら、試験液製剤(合成抽出物I)を追加した。該調合物を十分に均質化した。完成したハンドクリームには安定性があり、被験物質を追加しない調合物に比べて皮膚調整の向上が見られた。
【0051】
ラクダ結合組織成分(ラクダコラーゲン)
製造:
ラクダの皮膚を、血液、肉および脂肪を除去した後に破砕して、次に抽出物の目的に応じて、中性塩または酸と混合し、冷凍乾燥した状態で、または溶液(保存のためにソルビン酸を添加)として保存した(ドイツ薬剤師新聞117、1557~62(1977年)を参照)。比較可能な方法が他の哺乳類コラーゲンを獲得するための最新技術で記載されている。
ラクダコラーゲン:N18%+-0.3
ヒドロキシプロリン含有量:14~15%
【0052】
本発明の代替実施形態により、本発明による方法で製造された合成のラクダ臓器抽出物を、1つまたは複数のラクダ結合組織成分と混合した。このような結合組織成分の例は、各型のコラーゲン、エラスチン、フィブロネクチン、クレアチンおよびヒアルロン酸である。
【実施例
【0053】
[実施例1]
1リットルの調合物としての、合成のラクダ胎盤抽出物(合成I)の製造
以下に示す、最終体積1l当たりで計算した量の成分を、最終体積の3/10から4/10までに相当する量の再蒸留H2O中で、撹拌しながら無菌状態で溶解した。pH値は6.0と7.4の間に保たれた:
L‐アミノ酸および誘導体:
【0054】
グリシン、グルタミン酸各0.3~0.4g、a‐アラニン、アスパラギン酸、ヒドロキシプロリン、プロリン、セリン、リシン、アルギニン各0.2~0.4g、ヒスチジン、オルニチン、アスパラギン、バリン、チロシン、DL‐トレオニン、フェニルアラニン、ロイシン各0.03~0.06g、トレオニン、トリプトファン、メチオニン、β‐アラニン各0.01~0.03g、イソロイシン、システイン、クレアチニン、馬尿酸各<0.02g、尿素0.5~0.9g。
ラクダ胎盤分泌腺から得たペプチド画分:
【0055】
10kgの、解凍し、無血液の状態に洗浄して、歯付きコロイドミルで(0.3mmのピューレ状になるまで)破砕した分泌腺を、-10℃未満の冷却室において4Lのエーテル+300mlのエタノール中で10日間保存し、その後、防爆仕様のドラム型遠心分離機で分離した。被分離物(+150gのNaCl)の浸透圧条件の変化と、同時に行う60℃への加熱の下で、被分離物に含まれるタンパク質からペプチドが分離し、その後、エーテルを除去するために、厳密にはpH7.5の状態で空気を通過させ、そして残留タンパク質を除去するために‐コハク酸を用いてpHを3.4に変化された後‐空気を通過させた[十分に長い時間、空気または酸素を通過させる:スルホサリチル酸を用いた試験]。ミリポアフィルタによる濾過(孔径0.22マイクロメートル)の後、該例において必要なペプチド画分が獲得された(透過)が、その際、10kgのラクダ胎盤分泌腺から得られた量は、合成のI‐抽出物5Lに対して十分な量である。すなわち該例においては1/5のみが使用される。
核酸成分および誘導体:
【0056】
アデニン、アデノシン、シチジン、グアニン、シトシン、ウラシル、グアノシン、ウリジン、ヒポキサンチン、キサンチン、環状AMP、アデノシン一リン酸各0.01~0.03g、イノシン0.08g、尿酸、オロト酸0.02~0.03g。
ビタミン:
【0057】
ピリドキソール塩酸塩0.5~0.7g、ビオチン0.1g、チアミン塩化物、パントテン酸カルシウム、トコフェロールコハク酸エステル各<0.002g、ミオ‐イノシトール、ニコチン酸アミド各<0.03g。
【0058】
無機塩類:
硫酸マグネシウム、アスパラギン酸マグネシウム、NaH2PO4‐H2O各<0.07g、酢酸亜鉛0.1g、グルコン酸コバルト、グルコン酸マンガン各0.005g。
その他の添加物:
【0059】
グルコース、ソルビトール、マンニトール各0.1~0.5g、クエン酸1~5g、リンゴ酸1~2g、コハク酸5~15g、エタノール10~50ml、ベンジルアルコール1~4ml、グリセリン0.4~1.0g/l、N‐メチルグルカミン<0.5g、乳酸ナトリウム1~4g、コハク酸ナトリウム2~15g、塩化ナトリウム1~10g、保存料は必要がなければなし。
【0060】
溶液製造の際に、多くの成分がNaOHまたはHCl中において、例えばアミノ酸、Glu、Asp、Val、Tyr、Phe、Ile、Leuは2N NaOH中、キサンチンは3N NaOH中、グアニンは3N HCl中において、事前溶解し、中和する必要のあることが観察され得る。再蒸留水で満たして最終体積1lにした後、もう一度pHを調整して、滅菌濾過を行った。
[実施例2]
【0061】
合成抽出物IプラスH38(後のY20):
該製造方法は、例1に対して示した通りに実行された。満たして1lにする前に、特別な酵母細胞製剤であるH38(Y20)を50ml追加し、再蒸留水で満たして1lにした。
測定された呼吸数増加係数は2.6であった。
[実施例3]
パトベルク法:
【0062】
パトベルク試験においてメチレンブルーの皮膚への吸収の評価を行うが、吸収量は皮膚の乾燥度と関係している。これは皮膚に塗布されたメチレンブルーの吸収が皮膚の乾燥度に比例するという観察に基づいており、したがって粗さの度合いが大きいほどメチレンブルーは多く吸収される。
【0063】
パトベルク試験を実施するために、通常は35~65歳の被験者5~15人が考慮される。被験者は試験開始前の3日間、並びに試験中は、試験のために検査される皮膚領域に化粧品を使用しないように指示される。各被験者に対して、両前腕部内側にそれぞれ6か所の試験領域が記され、その際、試験領域の1つは処置を行わないでおく。まず、空試験値を測定するために、各試験領域に対してパトベルク試験を実施する。その後、試験するべき物質が被験者によって1日2回、朝夕に、14日間にわたって試験箇所に塗布される。最終塗布の4時間後にもう一度パトベルク試験を実施する。
【0064】
パトベルク試験は、例えば化粧薬品学会誌20、719~728、[1969年]に記載されている通りに実施される。
パトベルク試験の結果:表3
【0065】
以下の表3において、合成抽出物Iを添加したクリーム組成物、または添加しないもの(プラセボクリーム)に関して、処置を施した皮膚における数値をパーセント表示して、初期値に関連付けた測光器の測定値をまとめて示している。表3では平均値も計算して示してある。
【0066】
この結果によって、合成抽出物Iを添加したクリーム製剤を用いて皮膚の平滑化を達成し得ることが示される。添加物として合成胸腺抽出物を使用した場合も、同じことが示された。
【0067】
表3:合成のラクダ胎盤抽出物(合成抽出物I)を添加した、または添加しないクリーム製剤(油中水滴エマルジョン)を用いたパトベルク法による粗さ試験(使用期間14日)。
【表3】
[比較例4]
【0068】
ワールブルク法‐試験
ワールブルク装置において、製品の代謝活性を検圧計による測定により、厳密には、ラットあるいはモルモットの肝臓ホモジネートを使用した場合において、呼吸数の増加を‐O2摂取量の測定により算定した。注入計画に従って、容器側面の副容器に試験液または水を供給した。製品添加物ありおよびなしの反応プロセスが比較され得る。容器を検圧計と接続した。検圧計を恒温装置内に吊るして、規定温度まで加熱した。その後、傾けることによって試験液または水を副容器から主容器に移し入れた。これが実際の反応開始である。個々の検針は10分間隔で行った。結果を測定計画に記入する。ワールブルク試験は90分以上におよぶ。この結果から代謝活性の増加係数が得られる。
測定計画
例:係数が1.83のライ麦プラセンタ抽出物。対照群:1.0(前保温37℃で1時間):
【表4】
【表5】
[実施例5]
【0069】
比較例4と同様の方法で、合成抽出物I、合成抽出物II、合成のラクダ肝臓抽出物、およびラクダNGF(神経成長促進因子)に対して、呼吸数増加係数を測定した。
【表6】
【0070】
BSE危機の間に、ラクダ臓器抽出物は例えば望ましくない牛胎盤抽出物の代わりに用いることができた:ラクダが生育する国ではBSEの危険がないことが保証されていた。上記のラクダNGFに関する数値は重要である:臨床試験において、日本では顔面神経麻痺の治療にラクダNGFを用いて良好な成果を出すことに成功した。以前の他の動物のNGF製剤を用いた結果に関しては、筆者の「再読」、第II巻、295ページ:ISBN978‐1‐882292‐34‐9において報告された。ラクダNGFの獲得は、上記文献において他の哺乳類に関して記載した方法に従って行われた:ラクダNGFに関する以前の規定の比較用の解析データ:生成:ラクダ唾液腺1kgにつき1.8g、BUにおける生物活性は0.010~0.019μg/g。モンタルチーニが、癌研究14、49ページ以下(1954年)においてネズミNGFの獲得と特徴付けのために行った指示の通りに、ラクダNGFの生物学的同定と評価を実施。ラクダ唾液腺からのラクダNGFの獲得によって、同時に大型動物の唾液腺内にはNGF因子がないという文献の主張が否定された(T.山本博士教授との共同作業)。
【0071】
例えば特別な酵母細胞製剤であるH38(後のY20)との組み合わせによって(化学の75年‐再読、第II巻(ISBN978‐1‐828292)、448~449ページおよび参照[11、14])、該抽出物の活性が更に増加し得る。
[実施例6]
【0072】
以下に、合成抽出物Iおよび比較用に豚胎盤抽出物に対する活性試験の結果、並びに使用された作業方法に関する指示が記載されている:
【表7】