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  • 特許-フレキソ印刷用現像液および使用法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-02-08
(45)【発行日】2022-02-17
(54)【発明の名称】フレキソ印刷用現像液および使用法
(51)【国際特許分類】
   G03F 7/32 20060101AFI20220209BHJP
   G03F 7/00 20060101ALI20220209BHJP
   B41C 1/00 20060101ALI20220209BHJP
【FI】
G03F7/32
G03F7/00 502
B41C1/00
【請求項の数】 12
(21)【出願番号】P 2019527147
(86)(22)【出願日】2017-11-02
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2019-12-19
(86)【国際出願番号】 US2017059678
(87)【国際公開番号】W WO2018093572
(87)【国際公開日】2018-05-24
【審査請求日】2020-08-25
(31)【優先権主張番号】15/352,666
(32)【優先日】2016-11-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】15/718,357
(32)【優先日】2017-09-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】519174148
【氏名又は名称】ミラクロン コーポレーション
【氏名又は名称原語表記】MIRACLON CORPORATION
(74)【代理人】
【識別番号】110002745
【氏名又は名称】特許業務法人河崎・橋本特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】オルマン,ジュニア,リチャード アール.
(72)【発明者】
【氏名】フォーレンカム,エルシー,アンダーソン
(72)【発明者】
【氏名】メルマ,フレドリック チャールズ
(72)【発明者】
【氏名】アリ,エム.ザキ
【審査官】野田 定文
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2012/111238(WO,A1)
【文献】特開平10-301298(JP,A)
【文献】特表2002-507769(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2012/0237871(US,A1)
【文献】特表2016-524718(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03F 7/00 - 7/42
B41C 1/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
フレキソ印刷用現像水溶液であって、
前記フレキソ印刷用現像水溶液の総重量に対して、
a)それぞれ独立して12~20の炭素原子を有する1つ以上の飽和脂肪酸または不飽和脂肪酸またはそれらのアルカリ金属塩からなる脂肪酸組成物が、少なくとも0.25重量%~2.0重量%以内の量で存在し、前記脂肪酸組成物の少なくとも85重量%が、1つ以上の炭素数18のモノ不飽和脂肪酸またはポリ不飽和脂肪酸またはそれらのアルカリ金属塩で構成され、
b)少なくとも0.05重量%~0.30重量%以内の量の1つ以上のアミノポリカルボン酸またはそれらのアルカリ金属塩、
c)少なくとも0.05重量%~0.60重量%以内の量のpH緩衝剤化合物、および
d)少なくとも97重量%~99.5重量%以内の量の水
を含有するフレキソ印刷用現像水溶液。
【請求項2】
さらに、前記フレキソ印刷用現像水溶液の総重量に対して少なくとも0.05重量%~0.30重量%以内の量の150未満の分子量を有するグリコール・ポリグリコールモノエーテル共溶媒を含有する、請求項に記載のフレキソ印刷用現像水溶液。
【請求項3】
フレキソ印刷部材を提供する方法であって、
画像露光されたフレキソ印刷部材前駆体を、請求項1または2に記載のフレキソ印刷用現像水溶液で現像してフレキソ印刷版にレリーフ画像を形成することを含む方法。
【請求項4】
さらに、前記フレキソ印刷用現像水溶液に、成分a)~c)のうちの1つ以上と同じまたはそれよりも高い濃度を有する補充現像液組成物を補充することを含む、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
フレキソ印刷用現像液濃縮物であって、
前記フレキソ印刷用現像液濃縮物の総重量に対して、
a)それぞれ独立して12~20の炭素原子を有する1つ以上の飽和脂肪酸または不飽和脂肪酸またはそれらのアルカリ金属塩からなる脂肪酸組成物が、少なくとも10重量%~60重量%以内の量で存在し、前記脂肪酸組成物の少なくとも85重量%が、1つ以上の炭素数18のモノ不飽和脂肪酸またはポリ不飽和脂肪酸またはそれらのアルカリ金属塩で構成され、
b)少なくとも1.5重量%~15重量%以内の量の1つ以上のアミノポリカルボン酸またはそれらのアルカリ金属塩、および
c)少なくとも3.5重量%~25重量%以内の量のpH緩衝剤化合物
を含むフレキソ印刷用現像液濃縮物。
【請求項6】
さらに、前記フレキソ印刷用現像液濃縮物の総重量に対して少なくとも1.5重量%~15重量%以内の量の150未満の分子量を有するグリコール・ポリグリコールモノエーテル共溶媒を含有する、請求項5に記載のフレキソ印刷用現像液濃縮物。
【請求項7】
固体状である、請求項5または6に記載のフレキソ印刷用現像液濃縮物。
【請求項8】
フレキソ印刷部材を提供する方法であって、
請求項5~7のいずれかに記載のフレキソ印刷用現像液濃縮物を用意することと、
前記フレキソ印刷用現像液濃縮物が固体状の場合、前記フレキソ印刷用現像液濃縮物を水に溶解することにより、または、前記フレキソ印刷用現像液濃縮物が液体状の場合、1部の前記フレキソ印刷用現像水溶液濃縮物と少なくとも2部~99.8部以内の水を混合して前記フレキソ印刷用現像液濃縮物を希釈することにより、フレキソ印刷用現像水溶液を形成することと、
画像露光されたフレキソ印刷部材前駆体を、前記フレキソ印刷用現像水溶液で現像してフレキソ印刷部材にレリーフ画像を形成することを含む方法。
【請求項9】
フレキソ印刷部材を提供する方法であって、
フレキソ印刷部材前駆体を画像露光して、画像露光されたフレキソ印刷部材前駆体にレリーフ潜像を形成することと、
請求項5~7のいずれかに記載のフレキソ印刷用現像液濃縮物を用意することと、
前記フレキソ印刷用現像液濃縮物が固体状の場合、前記フレキソ印刷用現像液濃縮物を水に溶解することにより、または、前記フレキソ印刷用現像液濃縮物が液体状の場合、1部の前記フレキソ印刷用現像水溶液濃縮物と少なくとも2部~99.8部以内の水を混合して前記フレキソ印刷用現像液濃縮物を希釈することにより、フレキソ印刷用現像水溶液を形成することと、
前記画像露光されたフレキソ印刷部材前駆体を、前記フレキソ印刷用現像水溶液で現像してフレキソ印刷部材にレリーフ画像を形成することを含む方法。
【請求項10】
フレキソ印刷版を形成する方法であって、
A)本質的に、
バッキングフィルムと、
感光性樹脂組成物を含有し、前記バッキングフィルムに接触し、表側画像形成面と裏側画像形成面とを有する水溶性または水分散性感光層と、
前記表側画像形成面に直接的に接触するカバーシートと、からなるフレキソ印刷版前駆体を用意することと、
B)前記感光層の前記表側画像形成面から前記カバーシートを除去することと、
C)マスク要素を、前記水溶性または水分散性感光層の前記表側画像形成面に直接的に接触させて積層することと、
D)前記マスク要素と表側画像形成面とを介して前記感光層を表側画像露光して、露光領域と非露光領域とを有する露光感光層を形成することと、
E)請求項1または2に記載のフレキソ印刷用現像水溶液または請求項5~7のいずれかに記載のフレキソ印刷用現像液濃縮物を用いて、前記露光感光層を処理して、前記露光感光層の非露光領域を除去することにより、レリーフ画像を有するフレキソ印刷版を形成することを含方法。
【請求項11】
前記マスク要素は、少なくとも30ダイン/cmの表面張力を有する非ハロゲン化銀熱感応性フィルムである、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記カバーシートは、32ダイン/cm未満の表面張力を有する、請求項10または11に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、使用強度を有するフレキソ印刷用現像水溶液とフレキソ印刷用現像液濃縮物、および、これらを用いて、画像露光されたフレキソ印刷前駆体にレリーフを形成することに関する。これら現像液組成物は、1つ以上の飽和脂肪酸または不飽和脂肪酸またはそれらのアルカリ金属塩(少なくとも1つの炭素数18の不飽和脂肪酸(または、そのアルカリ金属塩)が濃度の大半を占め)、アミノポリカルボン酸またはその塩、および緩衝剤化合物を含有する。これら組成物の使用により、特に、徐放量が少なくとも5g/cmのフレキソ印刷版前駆体をマスク要素と密着させた場合に、処理済フレキソ印刷部材上に残存するデブリの量を減らすことができる。
【背景技術】
【0002】
フレキソ印刷用レリーフ画像の製造は、一般的に、UV放射線などの適した画像形成放射線を使ってフレキソ印刷前駆体の感光層を画像露光することによって実施される。感光層の非露光領域は、露光時に適した現像液や処理溶液で洗浄(現像または「洗浄」)され、架橋領域はそのまま残される。残存した現像液は、一般的に、蒸発によって除去され、必要であれば、粘着性除去処理を現像面に施す。得られたレリーフ画像を有するフレキソ印刷版は、印刷機のシリンダーに巻き付けられ、様々な紙、ポリマーフィルム、織物、セラミックおよび他の材料で構成される適した基材にインクを転写するのに用いることができる。あるいは、得られたフレキソ印刷部材は、適したマンドレルの上をスライドするフレキソ印刷スリーブとして、同様に基材にインクを転写するのに用いることができる。
【0003】
しかし、様々な環境および安全性に対する懸念から、溶媒系現像液を使わずに、環境に対する懸念を避けながら有機溶媒系現像液と同じ処理品質を提供する水性フレキソ印刷用現像液を発見しようという気運が業界で高まっている。フレキソ印刷前駆体用に設計された様々なフォトポリマー組成物の性質により、これを達成するのは困難であった。水混和性有機溶媒の有無に関わらず、どんな種類の水溶液でも過酷な処理および性能要件をすべて満たすわけではない。
【0004】
例えば、画像露光されたフレキソ印刷前駆体の効果的な処理では、きちんと画定された境界(高解像度)および適切なレリーフ深度を有するレリーフ画像を残しながら、非露光フォトポリマーをすべて除去する必要がある。水性や非水性に関わらず、どんな現像液でも、所与のフォトポリマー組成物と効果を発揮するわけではない。
【0005】
さらに、フレキソ印刷用現像水溶液は、数多くの画像露光された前駆体を処理するのに連続的に用いられるため、現像液のpHが変化することにより、それに分散したフォトポリマー成分の多くが溶液から外に出て、レリーフ画像の表面に再堆積することがある。これにより、レリーフ画像の解像度が低減し、その結果、印刷時に重大な画像欠陥が生じる。このような分散したフォトポリマー成分は、処理中に用いられるブラシにくっついて、レリーフ画像部材上で「スカム」を生じることもある。この課題は、現像液のpHが酸性側になると大きくなる。
【0006】
米国特許公開公報第2007/0117039号(Wada et al)および米国特許公開公報第2012/0288682号(Inoue et al)は、非露光フォトポリマー組成物を可溶化するのに用いられる現像水溶液を記載しており、現像水溶液は、1つ以上の非イオンまたは陰イオン界面活性剤と、適したpH調整剤とを含有する。
【0007】
米国特許第9,005,884号(Yawata et al)は、飽和脂肪酸と不飽和脂肪酸の両方を20:80~80:20の重量比で含有するフレキソ印刷用現像水溶液を、アルカリ剤と一緒に使うことにより、このような課題を解決することを提案している。飽和脂肪酸と不飽和脂肪酸の特定の比率によっては、このような組成物(「石鹸」としても知られる)は、露光されたフレキソ印刷前駆体を十分に「現像」せず、得られたフレキソ印刷版上にデブリを残し、得られた印刷に重大な印刷欠陥が生じることがある。
【0008】
加えて、このような現像水溶液のpHは、連続使用により酸性に傾くことがわかっているため、現像水溶液に含有されている脂肪酸は、塩基型(イオン型)から酸型になり、水に対する脂肪酸の溶解度およびミセル形成性が著しく低減する。これが起こると、適切なミセルの欠如により、非露光フォトポリマーからのデブリが可溶化しにくくなる。沈殿した(固体)脂肪酸とフォトポリマーのデブリの両方が、フレキソ印刷用現像水溶液中に浮遊して処理中に用いられるブラシに集まり、最終的に、印刷版のレリーフ画像上でスカムとなる。これらは、業界では許容できない結果であり、本発明は、これら課題に取り組むものである。
【0009】
さらに、現像水溶液の最も効果的な使用は、使用される特定の感光性フレキソ印刷版前駆体に左右され得ることがわかっている。このため、感光性フレキソ印刷版前駆体と、マスキング素子と、望ましいレリーフ画像を提供する際に最適な画像形成機能および現像機能を提供することができる現像水溶液との組み合わせを設計する必要がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【文献】米国特許公開公報第2007/117039号明細書
【文献】米国特許公開公報第2012/288682号明細書
【文献】米国特許第9,005,884号明細書
【発明の概要】
【0011】
本発明は、フレキソ印刷用現像水溶液であって、
前記フレキソ印刷用現像水溶液の総重量に対して、
a)それぞれ独立して12~20の炭素原子を有する1つ以上の飽和脂肪酸または不飽和脂肪酸またはそれらのアルカリ金属塩からなる脂肪酸組成物が、少なくとも0.25重量%~2.0重量%以内の量で存在し、前記脂肪酸組成物の少なくとも85重量%が、1つ以上の炭素数18のモノ不飽和脂肪酸またはジ不飽和脂肪酸またはそれらのアルカリ金属塩で構成され、
b)少なくとも0.05重量%~0.30重量%以内の量の1つ以上のアミノポリカルボン酸またはそれらのアルカリ金属塩、
c)少なくとも0.05重量%~0.60重量%以内の量の緩衝剤化合物、および
d)少なくとも97重量%~99.5重量%以内の量の水
を含有するフレキソ印刷用現像水溶液を提供する。
【0012】
また、本発明は、フレキソ印刷部材を提供する方法であって、
画像露光されたフレキソ印刷部材前駆体を、上述したフレキソ印刷用現像水溶液のいずれかの実施形態で現像してフレキソ印刷版にレリーフ画像を形成することを含む方法も提供する。
いくつかの実施形態では、上記方法は、さらに、前記フレキソ印刷用現像水溶液に、成分a)~c)のうちの1つ以上と同じまたはそれよりも高い濃度を有する補充現像液組成物を補充することを含む。
【0013】
さらに、本発明は、フレキソ印刷用現像液濃縮物であって、
前記フレキソ印刷用現像液濃縮物の総重量に対して、
a)それぞれ独立して12~20の炭素原子を有する1つ以上の飽和脂肪酸または不飽和脂肪酸またはそれらのアルカリ金属塩からなる脂肪酸組成物が、少なくとも10重量%~60重量%以内の量で存在し、前記脂肪酸組成物の少なくとも85重量%が、1つ以上の炭素数18のモノ不飽和脂肪酸またはポリ不飽和脂肪酸またはそれらのアルカリ金属塩で構成され、
b)少なくとも1.5重量%~15重量%以内の量の1つ以上のアミノポリカルボン酸またはそれらのアルカリ金属塩、および
c)少なくとも3.5重量%~25重量%以内の量の緩衝剤化合物
を含むフレキソ印刷用現像液濃縮物も提供する。
【0014】
加えて、本発明は、フレキソ印刷部材を提供する方法であって、
本明細書に記載のフレキソ印刷用現像液濃縮物を用意することと、
前記フレキソ印刷用現像液濃縮物が固体状の場合、前記フレキソ印刷用現像液濃縮物を水に溶解することにより、または、前記フレキソ印刷用現像液濃縮物が液体状の場合、1部の前記フレキソ印刷用現像水溶液濃縮物と少なくとも2部~99.8部以内の水を混合して前記フレキソ印刷用現像液濃縮物を希釈することにより、フレキソ印刷用現像水溶液を形成することと、
画像露光されたフレキソ印刷部材前駆体を、前記フレキソ印刷用現像水溶液で現像してフレキソ印刷部材にレリーフ画像を形成することを含む方法を提供する。
【0015】
フレキソ印刷部材を提供する別の方法は、フレキソ印刷部材前駆体を画像露光して、画像露光されたフレキソ印刷部材前駆体にレリーフ潜像を形成することと、
本明細書に記載のフレキソ印刷用現像液濃縮物を用意することと、
前記フレキソ印刷用現像液濃縮物が固体状の場合、前記フレキソ印刷用現像液濃縮物を水に溶解することにより、または、前記フレキソ印刷用現像液濃縮物が液体状の場合、1部の前記フレキソ印刷用現像水溶液濃縮物と少なくとも2部~99.8部以内の水を混合して前記フレキソ印刷用現像液濃縮物を希釈することにより、フレキソ印刷用現像水溶液を形成することと、
前記画像露光されたフレキソ印刷部材前駆体を、前記フレキソ印刷用現像水溶液で現像してフレキソ印刷部材にレリーフ画像を形成することを含む。
【0016】
さらに、本発明は、フレキソ印刷版を形成する方法であって、
A)本質的に、
バッキングフィルムと、
感光性樹脂組成物を含有し、前記バッキングフィルムに接触し、表側画像形成面と裏側画像形成面とを有する水溶性または水分散性感光層と、
前記表側画像形成面に直接的に接触するカバーシートと、からなるフレキソ印刷版前駆体を用意することと、
B)前記感光層の前記表側画像形成面から前記カバーシートを除去することと、
C)マスク要素を、前記水溶性または水分散性感光層の前記表側画像形成面に直接的に接触させて積層することと、
D)前記マスク要素と表側画像形成面とを介して前記感光層を表側画像露光して、露光領域と非露光領域とを有する露光感光層を形成することと、
E)少なくとも9~12以内のpHを有するフレキソ印刷用現像水溶液を用いて、前記露光感光層を処理して、前記露光感光層の非露光領域を除去することにより、レリーフ画像を有するフレキソ印刷版を形成することを含み、
前記フレキソ印刷用現像水溶液は、前記フレキソ印刷用現像水溶液の総重量に対して、
a)それぞれ独立して12~20の炭素原子を有する1つ以上の飽和脂肪酸または不飽和脂肪酸またはそれらのアルカリ金属塩からなる脂肪酸組成物が、少なくとも0.25重量%~2.0重量%以内の量で存在し、前記脂肪酸組成物の少なくとも85重量%が、1つ以上の炭素数18のモノ不飽和脂肪酸またはポリ不飽和脂肪酸またはそれらのアルカリ金属塩で構成され、
b)少なくとも0.05重量%~0.30重量%以内の量の1つ以上のアミノポリカルボン酸またはそれらのアルカリ金属塩、
c)少なくとも0.05重量%~0.60重量%以内の量の緩衝剤化合物、および
d)少なくとも97重量%~99.5重量%以内の量の水を含有し、
前記水溶性または水分散性感光層において、ASTM D-3330法Dによって制定される前記表側画像形成面と前記マスク要素との間の徐放量が、少なくとも5g/cm~500g/cm以内である、方法を提供する。
【0017】
これら方法のいずれかは、さらに、前記フレキソ印刷用現像液濃縮物に、成分a)~c)のうちの1つ以上と同じまたはそれよりも高い濃度を有する補充現像液濃縮物を補充することを含むことができる。
【0018】
本発明は、いくつかの利点を提供する。本発明に係る使用強度を有するフレキソ印刷用現像液および濃縮フレキソ印刷用現像液を使うことにより、露光されたフレキソ印刷前駆体を現像(処理)する間に発生するデブリの量が低減するため、得られたフレキソ印刷部材上に堆積(または、「再堆積」)するデブリが減ることがわかっている。この利点は、主に、組成物における特有の緩衝作用、および、EDTAなどのアミノポリカルボン酸キレート剤またはそのアルカリ金属塩(下記で説明する)の存在により、組成物のpHが安定することにより達成される。このようなデブリの形成および再堆積の低減により、向上した画像が様々な基材に再現される。
【0019】
本発明に係る使用強度を有するフレキソ印刷用現像水溶液およびそれらの濃縮形態(固体状または液体状)は、飽和脂肪酸と不飽和脂肪酸(または、それらのアルカリ金属塩)で構成され、モノ不飽和脂肪酸またはポリ不飽和脂肪酸は、これら脂肪酸の少なくとも85%を占める。本発明のフレキソ印刷用現像水溶液は、高濃度では粘度が低減し、ある一定の低濃度で最大粘度を示す点においても特有である。
【0020】
本発明は、特定の機構に限定されたり、それによって説明されるものではないが、処理されたフレキソ印刷部材上のデブリの再堆積を極力抑えながら、処理溶液において脂肪酸の特有な組み合わせを使って安定したエマルジョンを形成することが、効率的なフレキソ印刷処理(現像)に重要であると考えられる。
【0021】
本発明の別の利点は、使用強度を有するフレキソ印刷用現像水溶液およびそれらの濃縮形態では、主溶媒が有機溶媒ではなく水であるため、業界で使用される多くのフレキソ印刷用現像液よりも環境に優しく、毒性や有害性が低い点にある。
【0022】
また、本発明は、フレキソ印刷版前駆体と、マスク要素と、フレキソ印刷用現像水溶液との特有な組み合わせを用いて、より環境的に受容可能な方法で効果的にフレキソ印刷版を提供する方法も提供する。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1図1は、以下に説明する実施例の一部において得られたデブリと処理されたフレキソ印刷版との関係を表すデータのグラフを示す。
【発明を実施するための形態】
【0024】
下記の説明は、本発明の様々な実施形態に関する。いくつかの実施形態は特定の用途に望ましいが、開示されている実施形態は、下記でクレームする本発明の範囲を限定するよう解釈されたり考えられたりする主旨ではない。加えて、当業者であれば、下記の開示には、実施形態の説明で明示的に記載されているよりも広範な利用可能性があることを理解するものと考える。
【0025】
[定義]
本発明の実施に使われる使用強度を有するフレキソ印刷用現像水溶液、フレキソ印刷用現像液濃縮物および他の材料の様々な成分を定義するために本明細書で使用される場合、特に断らない限り、単数形(「a」、「an」および「the」)は、1つ以上の(つまり、複数の)成分を含むものとする。
【0026】
本願で明示的に定義されない用語は、当業者に一般的に認知された意味を有するものと理解される。用語の解釈により、文脈において無意味または本質的に無意味になる場合、その用語は、一般的な辞書の意味を有すると解釈されるべきである。
【0027】
本明細書で特定される様々な範囲の数値は、特に明記しない限り、記載された範囲内の最小値および最大値のいずれも、「約」という字が付された場合と同じように近似値であると認識されるものとする。同様に、記載された範囲を超えたり下回るわずかなバラツキは、範囲内の数値と実質的に同じ結果を達成するのに有用であると考えられる。加えて、開示のこれら範囲は、最小値と最大値の間のすべての値およびその範囲の端点を含む連続した範囲であるものとする。
【0028】
本発明に係るフレキソ印刷用現像水溶液は、「洗浄」溶液または「処理溶液」として知られている場合もある。
【0029】
本発明で用いられる脂肪酸組成物は、1つ以上の脂肪酸または様々な化学組成物および濃度からなるため、当該技術において「石鹸」として知られている場合もある。このような脂肪酸組成物は、液体状、ゲル状または固体状のいずれかである。
【0030】
本明細書では特に断らない限り、「濃縮物」、「濃縮フレキソ印刷用現像液」および「濃縮フレキソ印刷用現像水溶液」という用語は、同じ組成物や溶液を指すものとする。
本明細書では特に断らない限り、「感光性レリーフ画像前駆体」、「フレキソ印刷部材前駆体」および「前駆体」という用語は、同じものを指すものとする。
【0031】
[発明の用途]
本発明に係る組成物は、適切な「前駆体」を適切に画像形成した後にフレキソ印刷部材を製造するのに有用である。
【0032】
一般的に、フレキソ印刷部材は、本発明に係る処理組成物を使って前駆体に画像形成を施すことにより潜像を形成して得ることができる。例えば、いくつかの有用な前駆体が、米国特許第8,492,449号(Inoue et al)および下記に記す引例に記載されている。この処理が実施される前に、潜像は、当該技術で知られている任意の適切な方法で(例えば、米国特許第9,250,527号(Kidnie et al)に記載されているようにマスク画像を使って)、前駆体に形成することができる。
【0033】
[フレキソ印刷用現像液(使用強度および濃縮物)]
本発明に係るフレキソ印刷用現像液は、希釈された成分濃度の「使用強度を有する」水性形態で、または、固体状または液体状のフレキソ印刷用現像液濃縮物として製造、提供および使用され得る。しかし、実際には、濃縮物は一般的に量産されて使用者に販売され、典型的には、水に溶解または適した希釈率に希釈されることにより、典型的なフレキソ印刷の環境および設備に有用な使用強度を有する組成物が提供される。使用強度を有するフレキソ印刷用現像液および濃縮フレキソ印刷用現像液はどちらも、構成成分は概ね同じであるが、その量、組成物のpH、組成物の粘度、およびその他の組成物特性は同じであっても異なっていてもよい。
【0034】
下記の説明では、使用強度を有するフレキソ印刷用現像液および濃縮フレキソ印刷用現像液に共通する様々な成分を説明し、その後に、本発明に係る使用強度を有するフレキソ印刷用現像水溶液およびフレキソ印刷用現像液濃縮物に関する特徴について具体的に説明する。
【0035】
(脂肪酸組成物)
フレキソ印刷用現像水溶液およびフレキソ印刷用現像液濃縮物の必須成分は、1つ以上の飽和脂肪酸または不飽和脂肪酸(または、それらのアルカリ金属塩)からなる「脂肪酸組成物」である。本明細書に記載のフレキソ印刷用現像水溶液(および「脂肪酸組成物」)には、以下に説明する、プロトン型、イオン型、または、両形態の脂肪酸が、pHに応じて変化する量で存在し得るものとする。
【0036】
これら飽和脂肪酸または不飽和脂肪酸(または、それらのアルカリ金属塩)はそれぞれ独立して12~20の炭素原子を有する。複数の飽和脂肪酸または不飽和脂肪酸(または、それらのアルカリ金属塩)が存在する場合、これらが有する炭素原子の数は同じであっても異なっていてもよい。脂肪酸のアルカリ金属塩は、ナトリウム塩、カリウム塩、リチウム塩、またはこれら塩の混合物であってもよい。典型的には、カリウム塩が望ましく、カリウム塩は、カリウムイオン(例えば、水酸化カリウム形態)と脂肪酸とを混合することによって得ることができる。
【0037】
本発明の利点を提供するためには、脂肪酸組成物の総重量の少なくとも85重量%~100重量%は、1つ以上のモノ不飽和脂肪酸またはポリ不飽和脂肪酸(または、それらのアルカリ金属塩)であることが不可欠である。具体的に、このような不飽和脂肪酸は、炭素数12~20のモノ不飽和脂肪酸またはポリ不飽和脂肪酸(または、それらのアルカリ金属塩)である。多くの実施形態では、1つ以上のモノ不飽和脂肪酸またはポリ不飽和脂肪酸(または、それらのアルカリ金属塩)は、脂肪酸組成物の総重量に対して少なくとも85重量%~95重量%以内、またはさらに、少なくとも85重量%から90重量%以内の量で存在する。ポリ不飽和脂肪酸(または、それらのアルカリ金属塩)は一般的に、ジ不飽和脂肪酸およびトリ不飽和脂肪酸であり、ジ不飽和脂肪酸(または、それらのアルカリ金属塩)が特に有用である。
【0038】
炭素原子が12~20の有用な飽和脂肪酸(および、それらのアルカリ金属塩)の代表的なものとしては、これに限定されないが、ラウリン酸、ラウリン酸ナトリウム、ラウリン酸カリウム、ミリスチン酸、ミリスチン酸ナトリウム、ミリスチン酸カリウム、パルミチン酸、パルミチン酸ナトリウム、パルミチン酸カリウム、ステアリン酸、ステアリン酸ナトリウムおよびステアリン酸カリウムが挙げられる。必要であれば、これら脂肪酸(または、それらのアルカリ金属塩)の2つ以上の混合物を用いることができる。このような飽和脂肪酸の1つ以上のカリウム塩が、特に有用である。
【0039】
炭素原子が12~20の有用な不飽和脂肪酸(モノ不飽和化合物およびポリ不飽和化合物を含む)およびそれらのアルカリ金属塩の代表的なものとしては、これに限定されないが、パルミトレイン酸、パルミトレイン酸ナトリウム、パルミトレイン酸カリウム、オレイン酸、オレイン酸ナトリウム、オレイン酸カリウム、リノール酸、リノール酸ナトリウム、リノール酸カリウム、リノレン酸、リノレン酸ナトリウム、リノレン酸カリウム、リシノール酸、リシノール酸ナトリウム、リシノール酸カリウム、アラキドン酸、アラキドン酸ナトリウム、およびアラキドン酸カリウムが挙げられる。このようなモノ不飽和脂肪酸およびポリ不飽和脂肪酸のカリウム塩が特に有用である。いくつかの実施形態では、オレイン酸、オレイン酸ナトリウム、オレイン酸カリウム、またはその混合物が、不飽和脂肪酸として存在し、このような不飽和脂肪酸(または、それらのアルカリ金属塩)は、脂肪酸組成物の総重量の少なくとも85重量%~100重量%以内を占めることができる。様々なモノ不飽和脂肪酸またはポリ不飽和脂肪酸(または、それらのアルカリ金属塩)の混合物を使うこともできる。
【0040】
有用な脂肪酸およびそれらのアルカリ金属塩の上記例示から、本発明で有用な飽和脂肪酸または不飽和脂肪酸はいずれも、水酸化ナトリウムや水酸化カリウムなどのアルカリ金属剤で中和することができる。
【0041】
上述したように、脂肪酸組成物は、主に(少なくとも85重量%)、1つ以上のモノ不飽和脂肪酸またはポリ不飽和脂肪酸からなる。このため、不飽和脂肪酸の飽和脂肪酸(存在する場合)に対する重量比は、5.67:1~約999:1であってもよい。
本発明で有用な飽和脂肪酸および不飽和脂肪酸(または、それらのアルカリ金属塩)はいずれも、様々な商業的供給源から入手したり、当業者が容易に理解し得る公知の出発材料および化学合成を使って調製したりすることができる。
【0042】
(アミノポリカルボン酸)
フレキソ印刷用現像水溶液およびフレキソ印刷用現像液濃縮物の第2の必須成分は、1つ以上のアミノポリカルボン酸またはそれらの塩(例えば、アルカリ金属塩)である。このような化合物は、同じ分子内に、1つ以上のアミノ基と、2つ以上のカルボン酸基(または、塩基)とを有する。このような化合物は、当該技術ではキレート剤としても知られており、これまで写真産業において鉄イオンと錯体を形成して、漂白剤として使われてきた。
【0043】
この種の有用な化合物としては、これに限定されないが、EDTA(または、その塩)として当該技術で知られているエチレンジアミン四酢酸(または、その塩)、PDTAとして当該技術で知られているプロピレンジアミン四酢酸(または、その塩)または他のアルキレンジアミン四酢酸(または、それらの塩);ジエチレントリアミン五酢酸(または、その塩);o-ジアミンシクロヘキサン四酢酸(または、その塩);エチレングリコールビス(アミノエチルエーテル)四酢酸(または、その塩);ジアミノプロパノール四酢酸(または、その塩);N-(2-ヒドロキシエチル)エチレンジアミン三酢酸(または、その塩);NTAとして当該技術で知られているニトリロ三酢酸(または、その塩);ITAとして当該技術で知られているイミノ二酢酸(または、その塩);EIDPAとして当該技術で知られているエチルイミノジプロピオン酸(または、その塩)、または他のアルキルイミノジプロピオン酸(または、その塩);MIDAとして当該技術で知られているメチルイミノ二酢酸(または、その塩)、EIDAとして当該技術で知られているエチルイミノ二酢酸(または、その塩)、または他のアルキルイミノ二酢酸(または、それらの塩);および、これら代表的な化合物から当業者が容易に理解し得る他の化合物が挙げられる。EDTAのナトリウム塩またはカリウム塩が特に有用である。
【0044】
必要であれば、これら様々な化合物の混合物を使うことができる。
【0045】
有用なアミノポリカルボン酸(または、それらの塩)は、様々な商業的供給源から入手したり、当業者が容易に理解し得る公知の出発材料および化学合成を使って調製したりすることができる。
【0046】
(緩衝剤化合物)
フレキソ印刷用現像水溶液およびフレキソ印刷用現像液濃縮物の第3の必須成分は、保存時や使用時に望ましいpHを維持するのに役立つ緩衝剤化合物(または、その混合物)である。有用な緩衝剤化合物は、緩衝能と、これら化合物が効果を発揮し、かつ、本発明に望ましいpH条件に合致するpH範囲とを有する公知の化合物を記載している文献を当業者が参照して選択することができる。例えば、本発明で有用な緩衝剤化合物の代表的なものとしては、これに限定されないが、炭酸塩(例えば、炭酸カリウムまたは炭酸ナトリウム)、四ホウ酸ナトリウム、四ホウ酸カリウム、リン酸ナトリウム、およびリン酸カリウムが挙げられる。このような材料は、様々な商業的供給源から容易に入手可能である。
【0047】
(水)
水が、本発明に係る液体状で提供されるフレキソ印刷用現像水溶液およびフレキソ印刷用現像液濃縮物に不可欠であることは明らかであり、それらに用いられる主溶媒である。つまり、有機溶媒(水混和性有機溶媒および非水混和性有機溶媒の両方)は、一般的に、少量、具体的には、フレキソ印刷用現像水溶液またはフレキソ印刷用現像液濃縮物の総重量の10重量%未満の量でしか存在しない。ほとんどの実施形態において、このような有機溶媒は、フレキソ印刷用現像液(液体状または固体状に関わらず)の総重量に対して0重量%~5重量%以内の量で存在する。任意の適した水質の水を用いることができるが、一般的に、当該水は、脱イオン水、または、蒸留や逆浸透により得られた水である。
【0048】
(任意選択の付加物)
フレキソ印刷用現像水溶液またはフレキソ印刷用現像液濃縮物に、特定の目的で含むことのできる任意選択の材料として、グリコール・ポリグリコールモノエーテル共溶媒、酵素、蛍光性白色化剤、香料、殺虫剤、殺菌剤、消泡剤、着色剤、漂白剤、漂白活性剤、および界面活性剤が挙げられる。
【0049】
例えば、1つ以上のグリコール・ポリグリコールモノエーテル共溶媒は、一般的に150未満の分子量を有し、水溶性で、かつ、少なくとも1つのヒドロキシ基を有し、どのタイプの組成物にも存在することができる。この種の有用な化合物として、ダウ・ケミカル・カンパニーからDOWANOL(登録商標)PnBとして入手可能なプロピレングリコールブチルエーテルがある。このようなグリコール・ポリグリコールモノエーテル共溶媒は、フレキソ印刷用現像水溶液の総重量に対して少なくとも0.05重量%~0.30重量%以内の量で存在することができる。フレキソ印刷用現像液濃縮物(固体状または液体状)におけるグリコール・ポリグリコールモノエーテル共溶媒の量は、望ましい使用強度を有するフレキソ印刷用現像水溶液を提供する液体状濃縮物の溶解率または希釈率に基づいて簡単に算出できる。典型的には、濃縮物における1つ以上のグリコール・ポリグリコールモノエーテル共溶媒の量は、フレキソ印刷用現像液濃縮物の総重量に対して少なくとも1.5重量%~15重量%以内である。他の有用なグリコールおよびポリグリコールモノエーテルとしては、これに限定されないが、2-フェノキシエタノール、1-エトキシ-2-プロパノール、2-メトキシプロパノール、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、2-ブトキシエタノール、およびプロピレングリコールプロピルエーテルが挙げられる。
【0050】
(使用強度を有するフレキソ印刷用現像水溶液)
一般的に、使用強度で、フレキソ印刷用水溶液のpHは、少なくとも9.5~11.5以内、より適切には少なくとも9.8~11.2以内、または最も適切には少なくとも10.1~10.5以内である。使用時には、このような使用強度を有するフレキソ印刷用現像水溶液のpHを、当初のpH(処理開始時のpH)の±0.5以内に保つことが望ましい。本発明に係るフレキソ印刷用現像水溶液は、一般的に、保存時や使用時に向上したpH安定性を示す。
【0051】
使用強度を有するフレキソ印刷用現像水溶液に含有される様々な成分(下記で説明する)の量はかなり低いため、使用強度を有する組成物の粘度は、水の粘度とそれほど変わらない。
【0052】
上述した脂肪酸組成物は、一般的に、使用強度を有するフレキソ印刷用現像水溶液において、フレキソ印刷用現像水溶液の総重量に対して少なくとも0.25重量%~2.0重量%以内、または少なくとも0.5重量%~1.25重量%以下の量で存在する。
【0053】
上述した1つ以上のアミノポリカルボン酸(または、それらの塩)は、使用強度を有するフレキソ印刷用現像水溶液において、フレキソ印刷用現像水溶液の総重量に対して少なくとも0.05重量%~0.30重量%以内、より適切には、少なくとも0.05~0.25重量%以内の量で存在することができる。
【0054】
1つ以上の緩衝剤化合物は、一般的に、使用強度を有するフレキソ印刷用現像水溶液において、望ましいpHを維持するのに適した量で存在する。例えば、フレキソ印刷用現像水溶液の総重量に対して少なくとも0.05重量%~0.60重量%以内、または少なくとも0.20重量%~0.60重量%以内の量で存在することができる。
【0055】
水は、一般的に、使用強度を有するフレキソ印刷用現像水溶液において、フレキソ印刷用現像水溶液の総重量に対して少なくとも97重量%~99.5重量%以内、さらに少なくとも97.5重量%~99.0重量%以内の量で存在する。
【0056】
(フレキソ印刷用現像液濃縮物)
フレキソ印刷用現像液濃縮物(液体状)のpHは、希釈により形成される使用強度を有するフレキソ印刷用現像水溶液のpHと同じであっても異なっていてもよい。一般的に、濃縮物のpHは、少なくとも9.5~11.5以内、より適切には少なくとも9.8~11.2以内、最も適切には少なくとも10.3~10.9以内であってよい。
【0057】
濃縮物の粘度は、少なくとも100センチポアズ(0.1パスカル秒)~900センチポアズ(0.9パスカル秒)以内、より適切には少なくとも300センチポアズ(0.3パスカル秒)~600センチポアズ(0.6パスカル秒)以内であってよく、粘度はすべて、標準的な粘度計を使って25℃で測定される。
【0058】
上述した脂肪酸組成物は、一般的に、濃縮物において、その総重量に対して少なくとも10重量%~60重量%以内、またはさらに、少なくとも12重量%~25重量%以下の量で存在する。
【0059】
上述した1つ以上のアミノポリカルボン酸(または、それらの塩)は、濃縮物において、フレキソ印刷用現像液濃縮物の総重量に対して少なくとも1.5重量%~15重量%以内、より適切には、少なくとも1.5~10重量%以内の量で存在することができる。
【0060】
1つ以上の緩衝剤化合物は、一般的に、フレキソ印刷用現像液濃縮物において、望ましいpHを維持するのに適した量で存在する。例えば、フレキソ印刷用現像液濃縮物の総重量に対して少なくとも3.5重量%~25重量%以内、または少なくとも4重量%~8重量%以内の量で存在することができる。
【0061】
フレキソ印刷用現像液濃縮物における水の量は、フレキソ印刷用現像液濃縮物が液体状の場合、上述の適した使用強度を有するフレキソ印刷用現像水溶液または適した補充液濃度(下記で説明する)を提供するのに必要な希釈率を考慮して決定される。一般的に、濃縮物における水の量は、液体状のフレキソ印刷用現像液濃縮物の総重量に対して85重量%以内、または少なくとも60重量%~80重量%以内であってよい。
【0062】
本発明に係るフレキソ印刷用現像水溶液は、上述した3つの必須成分と任意選択の付加物とを、望ましい順序で水に加え、得られた溶液または組成物を撹拌して均質化する方法で調製することができる。この混合方法は、露光されたフレキソ印刷部材前駆体を処理するための組成物やその有用性を損なわない、適した温度で実施することができる。必須成分および任意選択の付加物は、望ましい濃度および粘度を有する濃縮物(液体状)または使用強度を有する組成物のいずれかを形成するのに適した量で、水に含まれる。
【0063】
固体状のフレキソ印刷用現像液濃縮物は、脂肪酸(または、その混合物)とアルカリ金属塩基とを水中で反応させ、水を蒸発し、残りの望ましい成分を加えて、得られた乾燥組成物を粉砕することによって調製することができる。このため、水が存在せず、固体濃縮物を適した量の水に溶解して混合することにより、i)望ましいフレキソ印刷用現像水溶液、ii)液体状のフレキソ印刷用現像液濃縮物、iii)補充現像液組成物、またはiv)補充現像液濃縮物のいずれかを提供することができる。
【0064】
[フレキソ印刷部材の形成]
レリーフ画像を有する、フレキソ印刷版やフレキソ印刷スリーブなどのフレキソ印刷部材を提供するため、適したフレキソ印刷版前駆体(以下に説明する感光層を有する「前駆体」)の表側を画像露光し(以下に説明する)、カバーシートを除去してマスク要素を前駆体に積層した後、フレキソ印刷用現像水溶液を用いて適した処理を行うことにより、露光された感光層の非露光領域を除去してレリーフ画像を形成する。
【0065】
有用なフレキソ印刷版前駆体について、フレキソ印刷版の形成を参照して下記に詳述するが、フレキソ印刷スリーブも同様に形成可能であることを理解されたい。
【0066】
フレキソ印刷版前駆体や、それらの様々な構造および組成は、米国特許第8,142,987号(Ali et al)、米国特許第7,226,709号(Kidnie et al)、米国特許第7,348,123号(Mengel et al)、米国特許第8,492,449号(前述)、米国特許第8,945,813号(Kidnie)、米国特許第9,005,884号(前述)および米国特許公開公報第2007/0117039号(Wada et al)に記載されており、これらすべての開示を本明細書において参照することにより援用する。
【0067】
このような有用な前駆体は、一般的に、必須構成要素として、バッキングフィルムと、1つ以上の感光性樹脂を含有し、前記バッキングフィルムに接触し、表側画像形成面と裏側画像形成面とを有する水溶性または水分散性感光層(「感光層」)と、前記感光層の表側画像形成面と直接接触するカバーシートとを含む。
【0068】
このような前駆体に適したバッキング層は、「支持体」または「基材」と見なすことができ、一般的に、ポリマーフィルムやアルミニウムシートなどの適した寸法安定性のある材料からなるが、ポリ(エチレンテレフタレート)およびポリ(ポリエチレンナフタレート)などのポリエステルを含むポリマーフィルムが、特に裏側露光も行うことが望ましい場合に有用である。
【0069】
水溶性または水分散性感光層の裏側画像形成面に対するバッキング層の接着性を高めるために、バッキング層には、接着剤層が任意に存在する。
【0070】
本発明で有用な感光性層は、様々な感光性または光重合可能なエラストマーまたは感光性エラストマー組成物を使って設計することができる。「感光性」または「光重合可能な」という用語は、エラストマー組成物が、適した放射線の照射で重合可能または架橋可能である、あるいは、重合および架橋のどちらも可能であることを意味する。感光性エラストマー組成物は、一般的に、熱可塑性バインダーと、少なくとも1つのモノマーと、可視光放射線またはUV放射線のいずれか一方またはその両方など、適した放射線にセンシティブな開始剤(光開始剤)とを含む。適した開始剤組成物としては、これに限定されないが、米国特許第4,323,637号(Chen et al)、米国特許第4,427,749号(Gruetzmacher et al)および米国特許第4,894,315号(Fienberg et al)に記載されたものが挙げられる。これらすべての開示を本明細書において参照することにより援用する。光開始剤は、これに限定されないが、化学線照射により遊離基を生成する化合物、例えば、キノン、ベンゾフェノン、ベンゾインエーテル、アリールケトン、過酸化物、ビイミダゾール、ベンジルジメチルケタール、および他の当該技術で公知の化合物を含む。代表的な有用な光開始剤は、米国特許第8,492,449号(前述)の第5欄(44~55行目)に記載されている。
【0071】
特に明細書に記載の本発明に係るフレキソ印刷用現像水溶液において、熱可塑性バインダーは、水溶性または水分散性の1つ以上のポリマーまたは樹脂であってよい。そのような特性を有する様々なポリマーバインダーは、先の段落で列記した公報(例えば、米国特許第8,492,449号(前述))に記載されているように、当該技術で公知である。例えば、このような材料は、ポリマーからなる水分散性ラテックスを含有することができ、例えば、ポリブタジエンラテックス、天然ゴムラテックス、スチレン・ブタジエン共重合体ラテックス、アクリロニトリル・ブタジエン共重合体ラテックス、ポリウレタンラテックス、ポリクロロプレンラテックス、ポリイソプレンラテックス、メチルメタクリレート・ブタジエン共重合体ラテックス、アクリレート・メチルメタクリレート・ブタジエンラテックス、ビニルピリジンポリマーラテックス、ブチルポリマーラテックス、チオコールポリマーラテックス、アクリレートポリマーラテックス、さらに、上記ラテックスポリマーのうち1つと、アクリル酸またはメタクリル酸などの別の成分との共重合体が挙げられる。これら材料は、個別にまたは混合して用いることができる。分子鎖にブタジエン骨格またはイソプレン骨格を含む水分散性ラテックスが、特に有用である。
【0072】
感光層は、感光層組成物のゴム弾性を高める作用をする1つ以上の「ゴム」も含むことができる。有用なゴム材料としては、これに限定されないが、ブタジエンゴム、ニトリルゴム、アクリルゴム、エピクロロヒドリンゴム、ウレタンゴム、イソプレンゴム、スチレン・イソプレンゴム、スチレン・ブタジエンゴム、エチレン・プロピレン共重合体、および塩素化ポリエチレンが挙げられる。このようなゴムは、個別にまたは混合して用いることができる。ブタジエンゴムまたはニトリルゴムが特に有用である。
【0073】
感光層組成物は、水分散性を向上するために、1つ以上の界面活性剤も含むことができる。有用な界面活性剤は、アニオン性、カチオン性、または非イオン性の性質を有することができ、アニオン性界面活性剤が、特に有用である。具体例は、米国特許第8,492,449号(前述)の第4欄(29行目以降)に記載されている。
【0074】
「モノマー」は、一般的に、ポリマーバインダーとの相溶性を有し、UV放射線などの化学線照射に反応して付加重合可能な化合物であると考えられている。必要であれば、モノマーの混合物であってもよい。必要であれば、高分子量の化合物を用いることができるが、典型的には、5000未満の分子量を有する。有用なモノマーとしては、これに限定されないが、様々なアクリレート、メタクリレート、ポリアクリレートおよびポリメタクリレートなどのアルコールおよびポリオールのモノエステルおよびポリエステル、、(メタ)アクリル酸変性ブタジエンゴムまたは変性ニトリルゴムなどの(メタ)アクリル酸またはオリゴマーが挙げられる。モノマーは、1つまたは複数のエチレン性不飽和重合可能結合を含むことができる。代表的な有用なモノマーは、米国特許第8,492,449号(前述)の第5欄(1~43行目)に記載されている。
【0075】
感光性エラストマー画像形成層の組成物も、着色剤、紫外線吸収剤、顔料、消泡剤、赤外線吸収剤、可塑剤、処理助剤、酸化防止剤、熱重合抑制剤、および抗オゾン剤など、当該技術で公知の様々な添加剤を含むことができる。有用な可塑剤および量は、米国特許第8,492,449号(前述)の第6欄(51~64行目)に記載されている。
【0076】
感光層の様々な成分の量は、所与の効用に応じて設計できるが、特に有用な量は、例えば、米国特許第8,492,449号(前述)の第5欄(56行目)~第6欄42行目に記載されている。例えば、水分散性ラテックスの量は、水分散性ラテックスとゴムの総重量の総和に対するモル比で求めることができ、少なくとも20%~90%以内、または少なくとも約30%~80%以内である。有用な界面活性剤の量は、水分散性ラテックス、ゴム、および界面活性剤の総重量の総和に対するモル比で求めることができ、一般的に、少なくとも0.1%~20%以内、または少なくとも0.1%~15%以内である。モノマーは、感光層組成物の総乾燥質量に対して少なくとも10%~80%以内、または少なくとも20%~50%以内の量で存在することができる。開始剤の有用な量としては、これに限定されないが、感光層組成物の総乾燥質量に対して少なくとも0.3質量%~5質量%以内、または少なくとも0.5質量%~3質量%以内である。
【0077】
水溶性または水分散性感光層は、おそらく通常の試行錯誤により、マスク要素(下記で説明する)に対してASTM D-3330法で求められる徐放量が、少なくとも5g/cm~500g/cm以内、または少なくとも30g/cm~200g/cm以内、またはさらに、少なくとも40g/cm~110g/cm以内である表側画像形成層を有するように設計される。この特徴は、下記の発明例6で実証されている。
【0078】
このような感光層組成物の調製に関する詳細は、例えば、米国特許第8,492,449号(前述)の第6欄(19~55行目)を含む当該技術に記載されている。
【0079】
本発明で用いられるフレキソ印刷版前駆体は、当該技術において「抗粘着」層または抗接着層として知られているものを含有しないことが重要である。このような層は、例えば、米国特許第8,492,449号(前述)の第8欄(3~10行目)に記載されている。
【0080】
加えて、保護層(または、カバーシート)は、感光層の表側画像形成面全体を覆うように配され、カバーシートは、一般的に、1つ以上の保護ポリマーを含有する。一般的に、カバーシートは透明で、照射前は、粘着性がほとんどない。上述した本発明に係るフレキソ印刷用現像水溶液を使って、洗浄または除去することができる。このため、カバーシートの材料は、一般的に水分散性または水溶性である。このカバーシートを形成するのに適したポリマーとしては、これに限定されないが、ポリアミド、および、セルロースアセテートブチレートやセルロースアセテートプロピオネートなどのセルロースエステルが挙げられる(例えば、米国特許第6,030,749号(Takahashi et al)の第4~8欄;および米国特許第9,005,884号の(前述)第7~8欄)。これら2つの開示を本明細書において参照することにより援用する。このカバーシートは、感光層の表側画像形成面を損傷せずに、感光層を剥離しやすいように(下記参照)設計できる。カバーシートの設計は、当該技術の教示を使った通常の実験によって決定することができる。
【0081】
また、フレキソ印刷版前駆体の水溶性または水分散性感光層では、ASTM D-3330法Dによって制定される感光層の表側画像形成面とカバーシートとの間の徐放量が、少なくとも5g/cm~500g/cm以内であることが望ましい。加えて、カバーシートが一般的に有する、例えば、Jemmco社のAccu-Florダインペンを使って得られる表面張力は、32ダイン/cm未満である。
【0082】
本発明を実施するために、上述の適したフレキソ印刷版前駆体が使われ、この前駆体は、本質的に、上記バッキング層と、前記バッキング層と接触(通常、直接接触)する裏側画像形成面を有する上記水溶性または水分散性感光層と、前記感光層の表側画像形成面と直接的に接触する上記カバーシートとからなる。
【0083】
感光層を画像形成する前に、通常、カバーシートを、表側画像形成面から剥離することにより除去する。
【0084】
マスク要素は、一般的に、米国特許第8,945,813号(前述)の第4~12欄に記載されているような適した非ハロゲン化銀画像形成材料から得られる。当該文献の詳細な説明を参照することにより援用し、ここでは繰り返さない。最も単純な形態では、非ハロゲン化銀画像形成材料(業界では「熱画像形成層」としても知られる)は、透明ポリマーキャリアシートと、バリア層と、非ハロゲン化銀熱感応性画像形成層の3つの不可欠な層を有する。必要であれば、透明ポリマーオーバーコートまたはスペーサー層といった他の任意選択の層を含むことができる。非ハロゲン化銀画像形成材料の不可欠な特徴は、1つ以上の層に1つ以上の赤外線吸収化合物が存在することにより、望ましい熱感度を提供することである。
【0085】
多くの実施形態では、マスク要素は、例えば、Jemmco社のAccu-Florダインペンを使って得られる表面張力が少なくとも30ダイン/cmの非ハロゲン化銀熱感応性フィルムである。
【0086】
例えば、マスク要素は、ポリウレタン;ポリ(ビニルブチラール);(メタ)アクリルアミドポリマー;ニトロセルロース;ポリ(シアノアクリレート);ポリアセタール;または、メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、n-ブチルメタクリレートおよびイソブチルメタクリレートのいずれかに少なくとも部分的に由来するポリマーのうちの1つ以上を含有するポリマーバインダーに分散される1つ以上の赤外放射線吸収化合物を含有し得る。
【0087】
マスク要素は、コンピュータ制御下で走査またはラスタライズされる熱レーザーまたは赤外レーザーからの熱放射線を使って、非ハロゲン化銀熱感応性画像形成層に露光領域と非露光領域とを形成することにより得られる。フラットベッドスキャナー、外部ドラムスキャナー、内部ドラムスキャナーなど公知のスキャン装置を使うことができ、スキャン装置において、非ハロゲン化銀画像形成材料はドラムまたはベッドに固定され、非ハロゲン化銀画像形成材料に当たるスポットにレーザービームを集中させる。2つ以上のレーザーによって、異なる領域が同時に走査できる。
【0088】
例えば、適した赤外線吸収化合物を含有する非ハロゲン化銀画像形成材料を、コンピュータ制御下で走査され得るダイオードレーザーまたはNd:YAGレーザーなどの赤外レーザーを使って、適した赤外線撮像装置に載置した状態で、少なくとも700nm~1400nm以内の範囲の近赤外放射線または赤外放射線に暴露することができる。適した赤外線撮像装置としては、これに限定されないが、TRENDSETTERイメージセッター、ThermoFlexフレキソCTP撮像装置(イーストマン・コダック社)、DIMENSIONイメージセッター(Presstek)、CYREL(登録商標)デジタル撮像装置(CDI SPARK、Esko-Graphics)が挙げられる。
【0089】
マスク要素形成工程は、非ハロゲン化銀熱感応性画像形成層の露光領域または非露光領域のいずれかを除去し、透明キャリアシート上にマスク画像を残すことを含む。
【0090】
いくつかの実施形態では、米国特許第8,945,813号((前述)第13~15欄)に記載の手段を使って、画像露光領域または非露光領域をレシーバーシートまたはレセプタに転写することができる。
【0091】
マスク要素は、マスク要素ごとに構築される標準条件でFlexcel NXラミネーター(イーストマン・コダック社製)などの適した積層装置を使って、感光層の表側画像形成面に直接的に光接触して積層できる。積層は、一般的に、加圧または加熱と加圧の両方を行うことにより、そのように本質的にマスク要素と感光層の表側画像形成面との間に空隙がなくなるよう行われる。つまり、「空気を含まないギャップ」または「空気を含まない境界面」が形成される。上述したように、マスク要素と感光層の表側画像形成面との間には抗粘着層が配置されない。この2つを、適した速度、温度および圧力でラミネーターに供給することができる。その結果、マスク要素とフレキソ印刷版前駆体との集合体が得られる。
【0092】
2つの要素からなる集合体を形成した後、マスク要素と表側画像形成面とを介して、感光層の表側を硬化放射線に暴露することにより、感光層に、露光領域と非露光領域とを有する露光感光層が形成される。このため、マスク領域には硬化放射線を優先的に遮断するマスク画像を介して感光層に硬化放射線が照射され、非マスク領域では硬化放射線が透過して、これら領域の感光層を固化または硬化する。このため、マスク画像は、マスク領域の露光放射線または硬化放射線に対して実質的に不透過性でなければならない。すなわち、マスク要素の透過光学濃度は2以上でなければならない。非マスク領域(露光領域)は、実質的に透明、すなわち、透過光学濃度が、0.5以下、またはさらに、0.1以下で0.3を超えない透過光学濃度でなければならない。透過光学濃度は、濃度計(例えば、MACBETH TR927濃度計)に適したフィルターを使って測定される。
【0093】
一般的に、このような表側画像形成面の露光は、適した照射源(例えば、波長が少なくとも150nm~700nm以内のUV放射線源または可視光放射線源)からのフラッドワイズ露光(floodwise exposure)によって達成される。そのような照射源の多くは商業的に入手可能である(米国特許第8,945,813号(前述)の第16欄(41行目以降)に記載の様々な照射源を参照)。この露光に最適な時間および温度は、当該技術において公知である。
【0094】
いくつかの実施形態では、表側画像形成露光の実施前に、前駆体の感光層の裏側に、バッキングフィルムを介した均一露光を行うことにより、感光層の裏側画像形成面に、均一に硬化した薄層を形成することができる。この裏側露光は、マスク要素の積層前および後のいずれで実施してもよい。このような裏側露光は、上記で表側画像形成面の露光で説明したのと同じ露光手段でも、異なる露光手段でも実施できる。この露光に最適な時間および温度は、当該技術において公知である。
【0095】
すべての露光が実施された後、本明細書に記載の適したフレキソ印刷用現像水溶液および条件を使って露光感光層を処理することにより、露光感光層から非露光領域を除去することができる。
【0096】
一般的に、当該方法は、この処理が実施される前に、露光感光層を有する露光された前駆体からマスク要素を除去することを含むことができる。これは、例えば、露光されたフレキソ印刷版前駆体の露光感光層を損傷しないように、この2つの要素を引き離すといった適した方法で行うことができる。
【0097】
本発明に係るフレキソ印刷用現像水溶液は、露光されたフレキソ印刷版前駆体に、適した方法で塗布することができる。適した方法としては、これに限定されないが、スプレー、ブラッシング、ローリング、ディッピング(浸漬)、または、これらの組み合わせが挙げられる。これにより、感光層の非露光領域から、未硬化または非重合材料が除去される。
【0098】
この処理は、典型的には、本発明に係る使用強度を有するフレキソ印刷用現像水溶液を製造された状態のまま使って実施できるが、より適切には、本発明に係るフレキソ印刷用現像液濃縮物を溶解または希釈することにより得られる使用強度を有するフレキソ印刷用現像水溶液を使って実施される。液体における濃縮物の許容希釈率は、1部の濃縮物を、少なくとも2部~99.8部以内の水、より適切には、少なくとも20部~99部以内の水に混合する。
【0099】
現像や処理は、少なくとも30℃~60℃以内の温度で実施できる。特定の現像条件は、用いられる装置の種類およびフレキソ印刷用現像水溶液の成分の特定の濃度によって決定される。
【0100】
処理中、蒸発および得られるフレキソ印刷部材は、使用強度を有するフレキソ印刷用現像水溶液の水の一部を奪取し得る。その結果、様々な成分の有用性の現像強度(活性)が減少し得る。この場合、使用強度を有するフレキソ印刷用現像水溶液に、当初の使用強度を有するフレキソ印刷用現像水溶液の必須成分a)~c)および任意選択の成分のうちの1つ以上と同じまたはそれよりも高い濃度を有する補充現像液組成物を「補充」することが有用である。当業者であれば、所与の装置および処理能力に適した補充現像液組成物を調製することができると思われる。
【0101】
上述したように液体状のフレキソ印刷用現像液濃縮物を処理装置に供給して適切に希釈して、フレキソ印刷用現像水溶液を調製する場合、公知の手順および装置機能を使って処理装置に、補充現像液組成物を供給することができる。この補充手順に代えて、または、これに加えて、フレキソ印刷用現像液濃縮物(液体状)を、「当初の」フレキソ印刷用現像液濃縮物の成分a)~c)および任意選択の成分と同じまたは異なる濃度を有する補充現像液濃縮物を使った希釈処理の前に、補充することもできる。
【0102】
本発明を実施するのに特に有用な処理方法、装置およびシステムは、米国特許出願第15/196,122号および米国特許出願第15/196,132号(いずれも前述)に記載されている。
【0103】
露光感光層の上述した処理は、平ブラシや回転ブラシ、またはナイロンからなるブラシなど適した清掃装置を使った機械清掃を露光感光層に行いながら、実施することが望ましい。このような機械清掃は、適した温度で、水または適した清掃界面活性剤水溶液などの二次処理水溶液を使った洗浄で実施しても、洗浄なしで実施してもよい。すべての機械清掃および洗浄操作が終わった後、レリーフ画像を有する得られたフレキソ印刷版を、適した時間および適した温度で水で洗浄することができる。
【0104】
状況下によっては、フレキソ印刷版のレリーフ画像に現像後処理をすることが望ましい。典型的な現像後処理は、レリーフ画像を乾燥して過剰なフレキソ印刷用現像水溶液および洗浄液を除去することと、レリーフ画像を硬化放射線に暴露して後硬化させ、レリーフ画像をさらに固化または架橋させることを含む。これら処理の条件は、当業者に周知である。例えば、レリーフ画像をふき取ったり(blotted or wiped)、強制空気または赤外線加熱炉中で、乾燥したりしてもよい。当業者であれば、乾燥時間および乾燥温度を容易に理解し得ると思われる。
【0105】
乾燥後もフレキソ印刷版に粘着性が残っている場合、粘着除去処理を実施することができる。このような処理は、例えば、臭化物溶液または塩素溶液を使った処理や、UV放射線または可視光放射線への暴露により行われ、当業者に周知である。
【0106】
得られたレリーフ画像は、フレキソ印刷版前駆体の水溶性または水分散性感光層の当初の厚みの約2%~約100%(典型的には約10~約80%)の深さを有し得る。水溶性または水分散性感光層組成物が非感光性バッキングフィルムに配される場合、それを、レリーフ画像の一部またはすべてにおいて最大100%まで除去することができる。レリーフ画像の深さは、約150~約2000μmとすることができる。
【0107】
フレキソ印刷版は、シームレスで連続したフレキソ印刷用ウェブの形成に有利に用いることができる。あるいは、フレキソ印刷版は、シリンダー形状に巻き付けることのできる平面シートとして形成することができる。
【0108】
本発明は、少なくとも下記の実施形態およびそれらの組み合わせを提供する。当業者であれば、下記の開示の教示から理解すると思われるが、他の特徴の組み合わせも本発明に包含されるものとする。
【0109】
1.フレキソ印刷用現像水溶液であって、
前記フレキソ印刷用現像水溶液の総重量に対して、
a)それぞれ独立して12~20の炭素原子を有する1つ以上の飽和脂肪酸または不飽和脂肪酸またはそれらのアルカリ金属塩からなる脂肪酸組成物が、少なくとも0.25重量%~2.0重量%以内の量で存在し、前記脂肪酸組成物の少なくとも85重量%が、1つ以上の炭素数18のモノ不飽和脂肪酸またはポリ不飽和脂肪酸またはそれらのアルカリ金属塩で構成され、
b)少なくとも0.05重量%~0.30重量%以内の量の1つ以上のアミノポリカルボン酸またはそれらのアルカリ金属塩、
c)少なくとも0.05重量%~0.60重量%以内の量の緩衝剤化合物、および
d)少なくとも97重量%~99.5重量%以内の量の水
を含有するフレキソ印刷用現像水溶液。
【0110】
2.実施形態1に記載のフレキソ印刷用現像水溶液であって、少なくとも9.5~11.5以内のpHを有する。
【0111】
3.実施形態1または2に記載のフレキソ印刷用現像水溶液であって、前記脂肪酸組成物は、前記脂肪酸組成物の総重量に対して少なくとも85重量%~90重量%以内の量が、本質的に、オレイン酸またはそのアルカリ金属塩からなる。
【0112】
4.実施形態1~3のいずれかに記載のフレキソ印刷用現像水溶液であって、前記緩衝剤化合物は炭酸塩である。
【0113】
5.実施形態1~4のいずれかに記載のフレキソ印刷用現像水溶液であって、前記脂肪酸組成物は、前記フレキソ印刷用現像水溶液の総重量に対して1.25重量%以下の量で存在する。
【0114】
6.実施形態1~5のいずれかに記載のフレキソ印刷用現像水溶液であって、前記フレキソ印刷用現像水溶液の総重量に対して少なくとも0.05重量%~0.30重量%以内の量でエチレンジアミンテトラカルボン酸またはそのアルカリ金属塩を含有する。
【0115】
7.実施形態1~6のいずれかに記載のフレキソ印刷用現像水溶液であって、さらに、前記フレキソ印刷用現像水溶液の総重量に対して少なくとも0.05重量%~0.30重量%以内の量の150未満の分子量を有するグリコール・ポリグリコールモノエーテル共溶媒を含有する。
【0116】
8.実施形態7に記載のフレキソ印刷用現像水溶液であって、
前記フレキソ印刷用現像水溶液の総重量に対して、
a)前記脂肪酸組成物は、前記脂肪酸組成物の少なくとも90重量%~100重量%以内の量が、本質的に、オレイン酸またはそのアルカリ金属塩からなり、前記脂肪酸組成物は、少なくとも0.50重量%~1.25重量%以内の量で存在し、
b)少なくとも0.05重量%~0.25重量%以内の量で、エチレンジアミンテトラカルボン酸またはそのアルカリ金属塩が、前記1つ以上のアミノポリカルボン酸またはそれらのアルカリ金属塩として存在し、
c)少なくとも0.20重量%~0.60重量%以内の量で、炭酸塩が、前記緩衝剤化合物として存在する。
【0117】
9.フレキソ印刷部材を提供する方法であって、
画像露光されたフレキソ印刷部材前駆体を、実施形態1~8のいずれかに記載のフレキソ印刷用現像水溶液で現像してフレキソ印刷版にレリーフ画像を形成することを含む方法。
【0118】
10.実施形態9に記載の方法であって、さらに、
前記フレキソ印刷用現像水溶液に、成分a)~c)のうちの1つ以上と同じまたはそれよりも高い濃度を有する補充現像液組成物を補充することを含む。
【0119】
11.フレキソ印刷用現像液濃縮物であって、
前記フレキソ印刷用現像液濃縮物の総重量に対して、
a)それぞれ独立して12~20の炭素原子を有する1つ以上の飽和脂肪酸または不飽和脂肪酸またはそれらのアルカリ金属塩からなる脂肪酸組成物が、少なくとも10重量%~60重量%以内の量で存在し、前記脂肪酸組成物の少なくとも85重量%が、1つ以上の炭素数18のモノ不飽和脂肪酸またはポリ不飽和脂肪酸またはそれらのアルカリ金属塩で構成され、
b)少なくとも1.5重量%~15重量%以内の量の1つ以上のアミノポリカルボン酸またはそれらのアルカリ金属塩、および
c)少なくとも3.5重量%~25重量%以内の量の緩衝剤化合物
を含むフレキソ印刷用現像液濃縮物。
【0120】
12.実施形態11に記載のフレキソ印刷用現像液濃縮物であって、さらに、
前記フレキソ印刷用現像液濃縮物の総重量に対して、
d)85重量%以内の量の水を含有する。
【0121】
13.実施形態11または12に記載のフレキソ印刷用現像液濃縮物であって、少なくとも9.8~11.2以内のpHを有する。
【0122】
14.実施形態11~13のいずれかに記載のフレキソ印刷用現像液濃縮物であって、前記脂肪酸組成物は、前記脂肪酸組成物の総重量に対して少なくとも85重量%~90重量%以内の量が、本質的に、オレイン酸またはそのアルカリ金属塩からなる。
【0123】
15.実施形態11~14のいずれかに記載のフレキソ印刷用現像液濃縮物であって、前記緩衝剤化合物は炭酸塩である。
【0124】
16.実施形態11~15のいずれかに記載のフレキソ印刷用現像液濃縮物であって、前記脂肪酸組成物は、前記フレキソ印刷用現像液濃縮物の総重量に対して25重量%以下の量で存在する。
【0125】
17.実施形態11~16のいずれかに記載のフレキソ印刷用現像液濃縮物であって、前記フレキソ印刷用現像液濃縮物の総重量に対して少なくとも1.5重量%~10重量%以内の量のエチレンジアミンテトラカルボン酸またはそのアルカリ金属塩を含有する。
【0126】
18.実施形態11~17のいずれかに記載のフレキソ印刷用現像液濃縮物であって、さらに、前記フレキソ印刷用現像液濃縮物の総重量に対して少なくとも1.5重量%~15重量%以内の量の150未満の分子量を有するグリコール・ポリグリコールモノエーテル共溶媒を含有する。
【0127】
19.実施形態18に記載のフレキソ印刷用現像液濃縮物であって、
前記フレキソ印刷用現像液濃縮物の総重量に対して、
a)前記脂肪酸組成物は、前記脂肪酸組成物の少なくとも90重量%~100重量%以内の量が、本質的に、オレイン酸またはそのアルカリ金属塩からなり、前記脂肪酸組成物は、25重量%以下の量で存在し、
b)少なくとも1.5重量%~10重量%以内の量で、エチレンジアミンテトラカルボン酸またはそのアルカリ金属塩が、前記1つ以上のアミノポリカルボン酸またはそれらのアルカリ金属塩として存在し、
c)少なくとも4重量%~8重量%以内の量で、炭酸塩が、前記緩衝剤化合物として存在し、
d)少なくとも60重量%~80重量%以内の量で、水が存在する。
【0128】
20.実施形態11~19のいずれかに記載のフレキソ印刷用現像液濃縮物であって、少なくとも100センチポアズ~900センチポアズ以内の粘度を有する。
【0129】
21.実施形態11および14~18のいずれかに記載のフレキソ印刷用現像液濃縮物であって、固体状である。
【0130】
22.実施形態11~20のいずれかに記載のフレキソ印刷用現像液濃縮物であって、液体状であり、
前記フレキソ印刷用現像水溶液濃縮物の総重量に対して最大85重量%までの水を含有する。
【0131】
23.フレキソ印刷部材を提供する方法であって、
実施形態11~22のいずれかに記載のフレキソ印刷用現像液濃縮物を用意することと、
前記フレキソ印刷用現像液濃縮物が固体状の場合、前記フレキソ印刷用現像液濃縮物を水に溶解することにより、または、前記フレキソ印刷用現像液濃縮物が液体状の場合、1部の前記フレキソ印刷用現像水溶液濃縮物と少なくとも2部~99.8部以内の水を混合して前記フレキソ印刷用現像液濃縮物を希釈することにより、フレキソ印刷用現像水溶液を形成することと、
画像露光されたフレキソ印刷部材前駆体を、前記フレキソ印刷用現像水溶液で現像してフレキソ印刷部材にレリーフ画像を形成することを含む方法。
【0132】
24.実施形態23に記載の方法であって、さらに、
前記フレキソ印刷用現像液濃縮物に、成分a)~c)のうちの1つ以上と同じまたはそれよりも高い濃度を有する補充現像液濃縮物を補充することを含む。
【0133】
25.フレキソ印刷部材を提供する方法であって、
フレキソ印刷部材前駆体を画像露光して、画像露光されたフレキソ印刷部材前駆体にレリーフ潜像を形成することと、
実施形態11~22のいずれかに記載のフレキソ印刷用現像液濃縮物を用意することと、
前記フレキソ印刷用現像液濃縮物が固体状の場合、前記フレキソ印刷用現像液濃縮物を水に溶解することにより、または、前記フレキソ印刷用現像液濃縮物が液体状の場合、1部の前記フレキソ印刷用現像水溶液濃縮物と少なくとも2部~99.8部以内の水を混合して前記フレキソ印刷用現像液濃縮物を希釈することにより、フレキソ印刷用現像水溶液を形成することと、
前記画像露光されたフレキソ印刷部材前駆体を、前記フレキソ印刷用現像水溶液で現像してフレキソ印刷部材にレリーフ画像を形成することを含む方法。
【0134】
26.フレキソ印刷版を形成する方法であって、
A)本質的に、
バッキングフィルムと、
感光性樹脂組成物を含有し、前記バッキングフィルムに接触し、表側画像形成面と裏側画像形成面とを有する水溶性または水分散性感光層と、
前記表側画像形成面に直接的に接触するカバーシートと、からなるフレキソ印刷版前駆体を用意することと、
B)前記感光層の前記表側画像形成面から前記カバーシートを除去することと、
C)マスク要素を、前記水溶性または水分散性感光層の前記表側画像形成面に直接的に接触させて積層することと、
D)前記マスク要素と表側画像形成面とを介して前記感光層を表側画像露光して、露光領域と非露光領域とを有する露光感光層を形成することと、
E)実施形態1~8のいずれかに記載のフレキソ印刷用現像水溶液または実施形態11~22のいずれかに記載のフレキソ印刷用現像液濃縮物を用いて、前記露光感光層を処理して、前記露光感光層の非露光領域を除去することにより、レリーフ画像を有するフレキソ印刷版を形成することを含み、
前記水溶性または水分散性感光層において、ASTM D-3330法Dによって制定される前記表側画像形成面と前記マスク要素との間の徐放量が、少なくとも5g/cm~700g/cm以内である、方法。
【0135】
27.実施形態26に記載の方法であって、前記マスク要素は、少なくとも30ダイン/cmの表面張力を有する非ハロゲン化銀熱感応性フィルムである。
【0136】
28.実施形態26または27に記載の方法であって、前記マスク要素は、ポリウレタン;ポリ(ビニルブチラール);(メタ)アクリルアミドポリマー;ニトロセルロース;ポリ(シアノアクリレート);ポリアセタール;または、メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、n-ブチルメタクリレートおよびイソブチルメタクリレートのいずれかに少なくとも部分的に由来するポリマーのうちの1つ以上を含有するポリマーバインダーに分散される1つ以上の赤外放射線吸収化合物を含有する。
【0137】
29.実施形態26~28のいずれかに記載の方法であって、前記水溶性または水分散性感光層において、ASTM D-3330法Dによって制定される前記表側画像形成面と前記カバーシートとの間の徐放量が、少なくとも5g/cm~500g/cm以内である。
【0138】
30.実施形態29に記載の方法であって、前記カバーシートは、32ダイン/cm未満の表面張力を有する。
【0139】
31.実施形態26~30のいずれかに記載の方法であって、前記水溶性または水分散性感光層において、ASTM D-3330法Dによって制定される前記表側画像形成面と前記マスク要素との間の徐放量が、少なくとも30g/cm~200g/cm以内である。
【0140】
32.実施形態26~31のいずれかに記載の方法であって、前記水溶性または水分散性感光層において、ASTM D-3330法Dによって制定される前記表側画像形成面と前記マスク要素との間の徐放量が、少なくとも40g/cm~110g/cm以内である。
【0141】
下記の実施例は、本発明を実施するために提示したものであり、いかなる方法でも限定するものではない。特に断らない限り、実施例で用いた材料は、様々な商業的供給源から入手したものである。
【0142】
[比較例1]
脂肪酸混合物を水酸化カリウムと反応させることにより、本発明の範囲外であるフレキソ印刷用現像液濃縮物を調製した。グリセリンを加えてpHを9.8に調整した。固体濃度が21重量%になるよう水を加えた。最終的に得られたフレキソ印刷用現像液濃縮物の成分および量は、以下の通りであった(重量%)。
【表1】
【0143】
このフレキソ印刷用現像液濃縮物1部を42部の水で希釈して、飽和脂肪酸と、不飽和脂肪酸と、脂肪酸塩と、グリセリンの総量が0.5重量%で、pHが9.5のフレキソ印刷用現像水溶液を得ることにより、当該フレキソ印刷用現像液濃縮物をフレキソ印刷用現像水溶液(使用強度を有する溶液)にした。得られたフレキソ印刷用現像水溶液を軌道処理ユニットに入れ、米国特許第8,492,449号(前述)に記載されているような露光されたフレキソ印刷版を、このようなフレキソ印刷部材前駆体用の公知の条件および手順で処理するのに用いた。但し、これら前駆体には、フォトポリマー層の上に抗接着層を設けなかった。処理されたフレキソ印刷版上のデブリの量を1~5の数値で評価した。1はデブリがないことを意味し、5は許容できないデブリの量を意味する。
【0144】
比較例2
脂肪酸混合物を水酸化カリウムと反応させることにより、本発明に係るフレキソ印刷用現像液濃縮物を調製した。pHを10.6に調整し、固体濃度が21重量%になるよう水を加えた。最終的に得られたフレキソ印刷用現像液濃縮物の成分および量は、以下の通りであった。
【表2】
【0145】
この濃縮物1部を42部の水で希釈して、脂肪酸と脂肪酸塩の合計濃度が0.5重量%で、pHが10.5のフレキソ印刷用現像水溶液を得た。得られたフレキソ印刷用現像水溶液を軌道処理ユニットに入れ、上記比較例1で記載したように、露光されたフレキソ印刷版を、このようなフレキソ印刷部材前駆体用の公知の条件および手順で処理するのに用いた。処理されたフレキソ印刷版上のデブリの量を、比較例1で記載した数値で評価した。
【0146】
比較例3
脂肪酸混合物を水酸化カリウムと反応させることにより、本発明に係るフレキソ印刷用現像液濃縮物を調製した。炭酸カリウムを加えてpHを10.6に調整した。固体濃度が21重量%になるよう水を加えた。最終的に得られたフレキソ印刷用現像液濃縮物の成分および量は、以下の通りであった。
【表3】
【0147】
得られたフレキソ印刷用現像液濃縮物1部を42部の水で希釈して、脂肪酸と脂肪酸塩の総量が0.5重量%で、pHが10.5のフレキソ印刷用現像水溶液を得た。
【0148】
このフレキソ印刷用現像水溶液を軌道処理ユニットに入れ、上記比較例1で記載したように、露光されたフレキソ印刷版を、このようなフレキソ印刷部材前駆体用の公知の条件および手順で処理するのに用いた。処理されたフレキソ印刷版上のデブリの量を、比較例1で記載した数値で評価した。
【0149】
[発明例
脂肪酸混合物を水酸化カリウムと反応させることにより、本発明に係るフレキソ印刷用現像液濃縮物を調製した。炭酸カリウムおよびEDTAジナトリウム塩を加えてpHを10.6に調整した。固体濃度が21重量%になるよう水を加えた。最終的に得られたフレキソ印刷用現像液濃縮物の成分および量は、以下の通りであった。
【表4】
【0150】
得られたフレキソ印刷用現像液濃縮物1部を42部の水で希釈して、脂肪酸と脂肪酸塩の合計含有量が0.5重量%で、pHが10.5のフレキソ印刷用現像水溶液を得た。
【0151】
フレキソ印刷用現像水溶液を軌道処理ユニットに入れ、上記比較例1で記載したように、露光されたフレキソ印刷版を、このようなフレキソ印刷部材前駆体用の公知の条件および手順で処理するのに用いた。処理されたフレキソ印刷版上のデブリの量を、比較例1で記載した数値で評価した。
【0152】
[発明例
脂肪酸混合物を水酸化カリウムと反応させることにより、本発明に係るフレキソ印刷用現像液濃縮物を調製した。炭酸カリウム、EDTAジナトリウム塩およびDOWANOL(登録商標)PnB共溶媒を加えた。pHを10.6に調整し、固体濃度が21重量%になるよう水を加えた。最終的に得られたフレキソ印刷用現像液濃縮物の構成は、以下の通りであった。
【表5】
【0153】
得られたフレキソ印刷用現像液濃縮物1部を199部の水で希釈して、脂肪酸塩の合計含有量が0.5重量%で、pHが10.5のフレキソ印刷用現像水溶液を得た。
【0154】
得られたフレキソ印刷用現像水溶液を軌道処理ユニットに入れ、上記比較例1で記載したように、露光されたフレキソ印刷版を、このようなフレキソ印刷部材前駆体用の公知の条件および手順で処理するのに用いた。処理されたフレキソ印刷版上のデブリの量を、比較例1で記載した数値で評価した。
【0155】
[処理されたフレキソ印刷版上のデブリレベルの評価]
FLEXELマスクと積層システムを用い、同じ標準的な裏露光と主露光により、上述したフレキソ印刷版前駆体を標準的な方法で露光した。業界で通常用いられる軌道ブラシ処理装置を使って、露光された前駆体を処理した。処理されたフレキソ印刷版のデブリレベルを光学顕微鏡を使って評価した。デブリレベルが高い場合には、上述したような高い点数を与えた。デブリの量が高くなると、印刷結果が悪くなる。
【0156】
上記実施例の結果は、下記の通りであった。
【表6】
【0157】
[比較例1および発明例を用いて製造された印刷版のデブリレベルの比較]
多数の画像露光されたフレキソ印刷版前駆体を、上述したように処理ユニットで処理した。処理されたフレキソ印刷版前駆体の数が増えると、フレキソ印刷用現像水溶液中の非露光材料からのデブリの量が増え、最終的に得られたフレキソ印刷版上のデブリが増えた。図1は、比較例1と発明例の両方のフレキソ印刷用現像水溶液を使って処理されたフレキソ印刷版の数と確認されたデブリレベルとの関係を示す。確認されたデブリは、得られたフレキソ印刷版上にあったものである。実線のデータは、比較例1を使って得た結果を表し、破線のデータは、発明例を使って得た結果を表す。図示された線はどちらも、それぞれのデータ点の平均を表しており、各データ点は、個々の処理されたフレキソ印刷版を表す。
【0158】
いずれの組成物においても、確認されたデブリは、処理されたフレキソ印刷版の数の増加に伴って増加しているが(つまり、現像水溶液組成物は、使用開始から「調味(seasoned)」されていた)、発明例のフレキソ印刷用現像水溶液では、処理されたフレキソ印刷版の数が増えても、比較例1の現像水溶液組成物と比べて、デブリの形成が低減したことは明白である。
【0159】
[発明例
下記の成分を含有し、pHが10.6の本発明に係るフレキソ印刷用現像液濃縮物を調製した。飽和脂肪酸(または、それらのアルカリ金属塩)を含有せず、脂肪酸組成物にはオレイン酸カリウムだけを含有させた。
オレイン酸カリウム:54.9重量%
炭酸カリウム:23.1重量%
EDTAジナトリウム塩:10.0重量%
プロピレングリコールn-ブチルエーテル:11.0重量%
【0160】
[比較例
米国特許第9,005,884号(前述)の教示に従って、本発明の範囲外であるフレキソ印刷用現像液濃縮物を調製した。不飽和脂肪酸(または、それらのアルカリ金属塩)の飽和脂肪酸(または、それらのアルカリ金属塩)に対する重量比は80:20であった。濃縮物の成分は以下の通りで、濃縮物のpHは10.6であった。
オレイン酸カリウム(モノ不飽和):79.4重量%
ステアリン酸カリウム(飽和):20.1重量%
水酸化カリウム:0.5重量%
【0161】
[比較例
米国特許第9,005,884号(前述)の教示に従って、本発明の範囲外である別のフレキソ印刷用現像液濃縮物を調製した。不飽和脂肪酸(または、それらのアルカリ金属塩)の飽和脂肪酸(または、それらのアルカリ金属塩)に対する重量比は20:80であった。濃縮物のpHは10.7で、濃縮物の成分は以下の通りであった。
オレイン酸カリウム:20.1重量%
ステアリン酸カリウム:79.4重量%
水酸化カリウム:0.5重量%
【0162】
発明例および比較例4~5の濃縮物を使って、各濃縮物1部を116.6部の水で希釈して、固体濃度を0.85重量%にして、使用強度を有するフレキソ印刷用現像水溶液を調製した。得られた使用強度を有するフレキソ印刷用現像水溶液のpHはそれぞれ10.4、10.5および10.5であった。
【0163】
Mekrom Concept 302 EDLF露光ユニットを使って、比較例1で記載したように、フレキソ印刷版のサンプルを、30秒、45秒、60秒および75秒のそれぞれの時間で裏露光し、「床版」(印刷版1)を形成した。75秒間露光した各印刷版サンプルの一部を8分間表面露光(「主露光」)して、十分に露光された印刷「天版」を得た。
【0164】
その後、Takano A-Flexo A2W印刷版処理装置において、発明例および比較例4~5の使用強度を有するフレキソ印刷用現像水溶液を使って、露光されたフレキソ印刷版前駆体を54℃の温度で4分間処理(現像)した。天版の厚みから床版の厚みを差し引くことにより、様々な裏露光に対するフレキソ印刷版レリーフ値を得て、望ましいレリーフ値に対応する裏露光値を求めた。
【0165】
発明例および比較例4~5のフレキソ印刷用現像水溶液に対して上記で求めた値を使って、比較例1に記載したのと同様にフレキソ印刷版(前駆体)を裏露光した。その後、主露光を様々な回数行うことで、これらフレキソ印刷版を画像露光し(印刷版2)、発明例3および比較例4~5のフレキソ印刷用現像水溶液を使って上述したように処理した。主露光値から特徴の質を検査することによって、フレキソ印刷用現像水溶液ごとに最適な主露光を決定した。
【0166】
上記フレキソ印刷版(前駆体)のサンプルを6つ追加し(印刷版3~8)、処理槽において、固形物の量を増加させるために、上記3つのフレキソ印刷用現像水溶液を用いて、これらサンプルを露光せずに処理した。
【0167】
さらに、上記比較例1に記載したフレキソ印刷版のサンプルを2つ追加し(印刷版9および10)、テストパターンおよび求めた最適値を包含する主露光値(上記印刷版1および2を用いて求めた値、下記表Iに示す)で、各サンプルを露光した。印刷版9および10のそれぞれのデブリレベルを検査し、相対値を与えた。1.0以下は良好を意味する。各フレキソ印刷用現像水溶液の当初pHを測定し、印刷版10の処理後、それぞれの下がったpH値を測定し、pHの絶対差を求めた。この実験の結果を下記の表Iに示す。
【0168】
表Iに示される結果から、印刷版9および10のデブリレベルおよび発明例のフレキソ印刷用現像水溶液のpH変化が、比較例およびのフレキソ印刷用現像水溶液のものよりもかなり低いことがわかる。
【0169】
[発明例および比較例
これら実施例は、本発明に係る徐放量の評価を示すために提示される。以下に説明する発明例および比較例のフレキソ印刷版前駆体の評価において、ASTM D-3330法Dの標準試験で概説される手順に従って剥離力(徐放量)を測定した。
【0170】
実験では、市販のKodak Flexcel NX画像形成装置と、様々なテストパターンからなる標準試験画像とを使って、Kodak Ultra NX熱画像形成層R(米国特許第9,250,257号(Kidnie)の実施例に記載の「マスク要素前駆体」(この開示を本明細書において参照することにより援用する))のサンプルに画像形成することにより、マスク要素を形成した。
【0171】
発明例では、前駆体は、(前述の米国特許第8,492,449号に記載の実施例で形成された感光層を有する)フレキソ印刷版前駆体であった。比較例では、前駆体は、市販の東洋紡コスモライトNS170Fプレート(感光層の表側画像形成面に抗粘着層を有する)であった。
【0172】
画像形成された要素(マスク要素)をフレキソ印刷版前駆体(上記「前駆体」)の表側画像形成面に積層した。上記フレキソ印刷版前駆体は、例えば、米国特許第8,492,449号(前述)に記載のような、カバーシートが除去されたフレキソ印刷版前駆体であって、裏側画像形成面にポリエチレンテレフタレートからなるバッキングフィルムと、感光性樹脂組成物からなる水溶性または水分散性感光層(「感光層」)とを備えたフレキソ印刷版前駆体である。積層は、標準設定のFlexcel Wide5080ラミネーターを用いて、マスク要素を前駆体の感光層の表側画像形成面に直接接触させて実施した。
【0173】
その後、感光層の裏側画像形成面を介して、積層されたマスク要素と前駆体を均一に露光し、Kodak Ultra NX処理ユニットで、マスク要素を介した感光層の表側画像露光を、用いた前駆体に適切な回数行った。剥離試験で使うために、積層され露光されたマスク要素と前駆体の組み合わせから2インチ(5cm)×2インチ(5cm)サイズの切断片を切り出した。剥離試験では、3M(登録商標)ブランドの透明両面粘着テープE1120Hを用いて、前駆体をステンレス鋼板にくっ付け、IMASS粘着力試験装置SP-2100(Imass社製、マサチューセッツ州ヒンガン)を使って、負荷5kg、剥離角度180°、剥離速度90インチ/分(228.6cm/分)の条件下で剥離力(グラム表示)を測定した。5秒と0.5秒遅延について、測定値を平均した。
【0174】
下記の表IIに、各前駆体の剥離試験の結果を示す。
【表8】
【0175】
表IIに示される結果から、抗粘着層がなく、感光層がマスク要素と密着(直接接触)している感光性印刷版前駆体は、高い接着度(剥離力または徐放量)を示すことがわかる。
【0176】
発明例と比較例の前駆体の他のサンプルをマスク要素に積層し、同様に裏側と表側を露光し、上記発明例に記載したフレキソ印刷用現像水溶液を用いて処理した。得られたレリーフ画像を、DigiCapパターン基準で評価した。0または1の値は優れていることを意味し、3より大きい値は許容できないことを意味し、6の値は、DigiCapパターンが存在しないことを意味する。これら試験の結果を下記の表IIIに示す。
【表9】
【0177】
上記結果から、比較例6で用いた前駆体は、とても許容できないDigiCapパターンであったが、発明例(発明例4)の前駆体は、許容性の高いDigiCapパターンであったことがわかる。これにより、発明例の前駆体(抗粘着層を有しない)は、マスク要素に対して望ましい徐放量(剥離力)を示したことがわかる。前駆体の表側画像形成面に抗粘着層が存在すると、積層時に、マスク要素と前駆体との組み合わせの接着性が不十分になり、当該組み合わせを取り扱う際に剥離が簡単に発生し得る。これらの結果は、開示の前駆体の水溶性または水分散性感光層において、ASTM D-3330法Dによって制定される前駆体の表側画像形成面とマスク要素との間の徐放量が、少なくとも25g/cmかつ700g/cm未満であることを実証している。
図1