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特許7022136非アルコール性脂肪性肝炎の治療のための方法及び医薬組成物
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-02-08
(45)【発行日】2022-02-17
(54)【発明の名称】非アルコール性脂肪性肝炎の治療のための方法及び医薬組成物
(51)【国際特許分類】
   A61K 31/198 20060101AFI20220209BHJP
   A61K 45/06 20060101ALI20220209BHJP
   A61P 1/16 20060101ALI20220209BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20220209BHJP
【FI】
A61K31/198
A61K45/06
A61P1/16
A61P43/00 121
【請求項の数】 37
(21)【出願番号】P 2019538108
(86)(22)【出願日】2017-09-28
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2019-10-17
(86)【国際出願番号】 US2017054087
(87)【国際公開番号】W WO2018064373
(87)【国際公開日】2018-04-05
【審査請求日】2020-05-21
(31)【優先権主張番号】62/400,963
(32)【優先日】2016-09-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/460,606
(32)【優先日】2017-02-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/469,722
(32)【優先日】2017-03-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】516326575
【氏名又は名称】アイガー・バイオファーマシューティカルズ・インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】Eiger Biopharmaceuticals, Inc.
(74)【代理人】
【識別番号】100101454
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 卓二
(74)【代理人】
【識別番号】100156144
【弁理士】
【氏名又は名称】落合 康
(74)【代理人】
【識別番号】100103230
【弁理士】
【氏名又は名称】高山 裕貢
(72)【発明者】
【氏名】シャオフェン・シオン
(72)【発明者】
【氏名】デイビッド・エイ・コリー
【審査官】新熊 忠信
(56)【参考文献】
【文献】特表平11-508247(JP,A)
【文献】特表2016-505613(JP,A)
【文献】特開2009-109426(JP,A)
【文献】International Journal of Oncology,2016年,Vol.49,pp.89-98
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 31/00-33/44
A61K 45/00-45/08
A61P 1/00
A61P 43/00
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)を対象において治療するための、治療有効量のウベニメクスを含む医薬。
【請求項2】
対象が、早期又は中期NASHを有する、請求項1に記載の医薬。
【請求項3】
ウベニメクスが、5mg~1000mgの範囲の総1日用量で投与される、請求項1又は2に記載の医薬。
【請求項4】
ウベニメクスが、約5mg~約450mgの1日用量で投与される、請求項1~3のいずれか1項に記載の医薬。
【請求項5】
ウベニメクスが、約20mg~約450mgの用量でQD投与される、請求項4に記載の医薬。
【請求項6】
ウベニメクスが、約10mg~約200mgの用量でBID投与される、請求項4に記載の医薬。
【請求項7】
ウベニメクスが、約10mg~約150mgの用量でTID投与される、請求項4に記載の医薬。
【請求項8】
ウベニメクスが、少なくとも4週間投与される、請求項1~7のいずれか1項に記載の医薬。
【請求項9】
ウベニメクスが、少なくとも12週間投与される、請求項8に記載の医薬。
【請求項10】
対象の血漿CK-18レベルの低下をもたらす、請求項1~9のいずれか1項に記載の医薬。
【請求項11】
対象の肝細胞風船様腫大の軽減をもたらす、請求項1~10のいずれか1項に記載の医薬。
【請求項12】
ウベニメクスが、第2治療薬と組み合わせて投与される、請求項1~11のいずれか1項に記載の医薬。
【請求項13】
第2治療薬が、ファルネソイドX受容体(FXR)アゴニスト、ペルオキシソーム増殖因子活性化受容体(PPAR)アゴニスト、アラムコール、カスパーゼ阻害剤、ガレクチン3阻害剤、マイトジェン活性化タンパク質キナーゼ5(MAPK5)阻害剤、線維芽細胞増殖因子19(FGF19)アゴニスト、FGF21アゴニスト、ロイコトリエンD4(LTD4)受容体アンタゴニスト、ニアシン類似体、頂端側ナトリウム胆汁酸共輸送体(ASBT)阻害剤、アポトーシスシグナル調節キナーゼ1(ASK1)阻害剤、アンジオテンシン変換酵素(ACE)阻害剤、アンジオテンシン受容体遮断薬、ケモカイン受容体阻害剤、チオゾリジンジオン、GLP-1類似体、ビグアニド、又は非ステロイド性抗炎症薬(NSAID)である、請求項12に記載の医薬。
【請求項14】
非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD)を有する対象においてNAFLDからNASHへの進行を遅延させる、又は予防するための、治療有効量のウベニメクスを含む医薬。
【請求項15】
対象の肝細胞風船様腫大の軽減をもたらす、請求項14に記載の医薬。
【請求項16】
ウベニメクスが、5mg~1000mgの範囲の総1日用量で投与される、請求項14又は15に記載の医薬。
【請求項17】
ウベニメクスが、約5mg~約450mgの1日用量で投与される、請求項14~16のいずれか1項に記載の医薬。
【請求項18】
ウベニメクスが、約20mg~約450mgの用量でQD投与される、請求項17に記載の医薬。
【請求項19】
ウベニメクスが、約10mg~約200mgの用量でBID投与される、請求項17に記載の医薬。
【請求項20】
ウベニメクスが、約10mg~約150mgの用量でTID投与される、請求項17に記載の医薬。
【請求項21】
ウベニメクスが、少なくとも4週間投与される、請求項14~20のいずれか1項に記載の医薬。
【請求項22】
ウベニメクスが、少なくとも12週間投与される、請求項21に記載の医薬。
【請求項23】
NASHを有する対象の肝細胞風船様腫大を低減するための、ウベニメクスを含む医薬であって、治療有効量のウベニメクスが、少なくとも4週間投与される、医薬。
【請求項24】
ウベニメクスが、少なくとも12週間投与される、請求項23に記載の医薬。
【請求項25】
NASHを有する対象の線維症を低減するための、ウベニメクスを含む医薬であって、治療有効量のウベニメクスが、少なくとも24週間投与される、医薬。
【請求項26】
ウベニメクスが、少なくとも48週間投与される、請求項25に記載の医薬。
【請求項27】
ウベニメクスが、第2治療薬と組み合わせて投与される、請求項14~26のいずれか1項に記載の医薬。
【請求項28】
第2治療薬が、FXRアゴニスト、PPARアゴニスト、アラムコール、カスパーゼ阻害剤、ガレクチン3阻害剤、MAPK5阻害剤、FGF19アゴニスト、FGF21アゴニスト、LTD4受容体アンタゴニスト、ニアシン類似体、ASBT阻害剤、ASK1阻害剤、ACE阻害剤、アンジオテンシン受容体遮断薬、ケモカイン受容体阻害剤、チオゾリジンジオン、GLP-1類似体、ビグアニド、又はNSAIDである、請求項27に記載の医薬。
【請求項29】
NASHを治療する、又はNAFLDからNASHへの進行を遅らせるための、ウベニメクス及び第2治療薬を含む医薬であって、第2治療薬が、FXRアゴニスト、PPARアゴニスト、アラムコール、カスパーゼ阻害剤、ガレクチン3阻害剤、MAPK5阻害剤、FGF19アゴニスト、FGF21アゴニスト、LTD4受容体アンタゴニスト、ニアシン類似体、ASBT阻害剤、ASK1阻害剤、ACE阻害剤、アンジオテンシン受容体遮断薬、ケモカイン受容体阻害剤、チオゾリジンジオン、GLP-1類似体、ビグアニド、又はNSAIDである、医薬。
【請求項30】
ウベニメクスが、少なくとも4週間投与される、請求項29に記載の医薬。
【請求項31】
ウベニメクスが、少なくとも12週間投与される、請求項30に記載の医薬。
【請求項32】
ウベニメクスが、少なくとも24週間投与される、請求項31に記載の医薬。
【請求項33】
NASHを治療する、又はNAFLDからNASHへの進行を遅らせるための、ウベニメクスの単位製剤を含み、第2治療薬の単位製剤をさらに含む医薬品パッケージであって、第2治療薬が、FXRアゴニスト、PPARアゴニスト、アラムコール、カスパーゼ阻害剤、ガレクチン3阻害剤、MAPK5阻害剤、FGF19アゴニスト、FGF21アゴニスト、LTD4受容体アンタゴニスト、ニアシン類似体、ASBT阻害剤、ASK1阻害剤、ACE阻害剤、アンジオテンシン受容体遮断薬、ケモカイン受容体阻害剤、チオゾリジンジオン、GLP-1類似体、ビグアニド、又はNSAIDである、医薬品パッケージ。
【請求項34】
ウベニメクスの各単位製剤が、約5mg~約450mgの量でウベニメクスを含む、請求項33に記載の医薬品パッケージ。
【請求項35】
ウベニメクスが、即放用に製剤化される、請求項33又は34に記載の医薬品パッケージ。
【請求項36】
ウベニメクスが、制御放出用に製剤化される、請求項33又は34に記載の医薬品パッケージ。
【請求項37】
ウベニメクスが、錠剤、カプセル、又は丸薬の形態である、請求項33~36のいずれか1項に記載の医薬品パッケージ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2016年9月28日に提出された米国仮出願第62/400,963号明細書;2017年2月17日に提出された米国仮出願第62/460,606号明細書;及び2017年3月10日に提出された米国仮出願第62/469,722号明細書に対する優先権を主張する。尚、これら文献の各々の全内容をあらゆる目的のために参照により本明細書に組み込むものとする。
【0002】
本開示は、非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)の治療、並びに肝臓の線維症及び硬変、さらにはそれらに起因する肝細胞癌(HCC)への進行の予防のための方法及び組成物を提供し、従って、医学、医化学、薬理学、化学、及び生物学の分野に関する。
【背景技術】
【0003】
脂肪性肝疾患(FLD)又は肝脂肪症としても知られる脂肪肝は、脂肪症(すなわち、細胞内の脂質の異常な貯留)の過程を通してトリグリセリド脂肪の大きな空胞が肝細胞中に蓄積する可逆的状態である。原因は複数あるが、脂肪肝は、最も一般的に過剰なアルコール摂取及び肥満と関連する。脂肪代謝に影響を及ぼす他の疾患に関連するFLDは、「非アルコール性」FLD又は「NAFLD」と呼ばれている。
【0004】
脂肪変化は、トリグリセリド(中性脂肪)の細胞質内蓄積を表すものである。FLDの開始時に、肝細胞は、核の周囲に小さな脂肪空胞(リポソーム)を呈示する(微小空胞変化)。FLDの後期には、空胞のサイズが増大し、空胞は合体して、不可逆的な脂肪嚢胞又は病変を生成する。広範囲の炎症及び高度の脂肪症を伴う肝疾患は、多くの場合、より重症形態の疾患に進行する。
【0005】
非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)は、NAFLDの極端な進行性の形態であり、これは、アルコール摂取とは無関係で、炎症(肝炎)も伴う。NASHは、肝細胞の風船様変性(本明細書では「肝細胞の風船様腫大」とも呼ぶ)を伴い、これは、アポトーシスの1形態と考えられる上記過程での細胞のサイズの増大(すなわち、風船様腫大)を指す。腫大した細胞は、典型的に、隣接する肝細胞のサイズの2~3倍であり、H&E染色切片上のわずかに透明化した細胞質を特徴とする。肝細胞死及び炎症応答は、星細胞の活性化を招き、これが、肝線維症に枢要な役割を果たす。疾患がさらに進行すると、硬変及び肝細胞癌(HCC)を引き起こし、肝不全となり、最終的には死に至る。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
早期のNASHに罹患した患者の場合、相当の減量などのライフスタイルへの介入は、脂肪症の過程を遅くするか、あるいは逆転させる場合もある。しかし、進行型NASHを有する患者の場合、現時点で利用可能な治療法はない。例えば、進行型NASHを治療するためのセニクリビロックの近年の臨床試験は、1年の処置後、炎症及び肝損傷を改善するその主要エンドポイントを満たすことができなかった。FLD及びNASHの重症度及び臨床上のアンメットニーズを考慮すると、有効な治療処置が緊急に求められる。
【課題を解決するための手段】
【0007】
一態様において、本開示は、FLD及びNASHを治療し、その進行を予防するための方法、材料、及び医薬組成物を提供する。本明細書に記載する方法及び組成物は、NAFLD患者がNASHへと進行するのを遅らせる、又は予防することができ、NASH患者を治療するために使用することができ、その際、こうした患者においてNASH疾患進行を遅らせる、停止する、又は逆転させる有益な効果を有することが考慮される。
【0008】
一態様において、本開示は、FLD及びNASH患者を治療することを目的とし、並びに疾患が線維症、硬変、HCC、及び死亡へと進行するのを予防及び/又は遅らせることを目的とするウベニメクス((2S)-2-[[(2S,3R)-3-アミノ-2-ヒドロキシ-4-フェニルブタノイル]アミノ]-4-メチルペンタン酸;別名:N-[(2S,3R)-3-アミノ-2-ヒドロキシ-4-フェニルブチリル-L-ロイシン、又は日本化薬(日本)により市販されているBestain(商標))の経口送達のための医薬組成物及び方法に関する。多くの実施形態では、経口投与用のこれらの組成物は、即放性製剤、例えば、錠剤、カプセル、若しくは丸薬として製剤化され、例えば、患者又はその医療提供者が治療有効量で投与するために、薬瓶若しくはブリスターパッケージの形態で製剤化される。
【0009】
一部の実施形態では、ウベニメクスは、本開示に従うNASHの治療において、1日当たり1回(QD投与)、2回(BID投与)、又は3回(TID投与)の投薬頻度で、1日当たり5mgという少量から1日当たり最大500mgまでの範囲の用量の経口投与により投与される。一部の実施形態では、1日当たり1回~3回投与される約30mg~約150mgの用量の投与がFLD及びNASH患者の大部分の治療に有効であるが、一部の患者ではこれより低い用量が有効であり得る。
【0010】
一部の実施形態では、患者は、ウベニメクスの連続的な1日用量を受けるが、その場合、患者は、長期間にわたって毎日少なくとも1回治療有効量を摂取する。測定可能な症状の改善又は疾患進行の検出可能な遅延は、数週間若しくはそれ以上の処置が経過するまで起こらない可能性がある。効果を実証するための臨床試験は、恐らく少なくとも12週間実施され、さらには48週間の処置期間にわたり実施される可能性が高い。従って、患者は、多数の連続日、週(例えば、少なくとも12、24、36、若しくは48週)、月(例えば、少なくとも4若しくは6ヶ月)、又は患者の生涯を含め、数年にわたって処置され得る。
【0011】
一部の実施形態では、患者は、ウベニメクス療法を受ける期間の少なくとも一部の期間にわたり、併用療法で1又は複数種の追加薬剤を投与される。こうした追加薬剤として、限定されないが、以下のものが挙げられる:ファルネソイドX受容体(FXR)アゴニスト(限定されないが、オベチコール酸など);ペルオキシソーム増殖因子活性化受容体(PPAR)アゴニスト、例えば、PPAR-αアゴニスト、PPAR-β/Δアゴニスト、又はPPAR-γアゴニスト(限定されないが、エラフィブラノールなど);アラムコール;カスパーゼ阻害剤(限定されないが、エムリカサンなど);ガレクチン3阻害剤(限定されないが、GR-MD-02、ガレクチン治療薬(Galectin Therapeutics)など);MAPKS阻害剤(限定されないが、GS-4997、Gilead Sciencesなど);FGF21アゴニスト(限定されないが、BMS-986036、Bristol-Myers Squibbを含む);LTD4受容体アンタゴニスト(限定されないが、チペルカストを含む);ニアシン類似体(限定されないが、ARI 3037MO、Arisaph Pharmaceuticalsを含む);ASBT阻害剤(限定されないが、ボリキシバトを含む);アポトーシスシグナル調節キナーゼ1(ASK1)阻害剤;アンジオテンシン変換酵素(ACE)阻害剤;アンジオテンシン受容体遮断薬(ARB、限定されないが、テルミサルタンなど);ケモカイン受容体阻害剤(例えば、CCR2及び/又はCCR5阻害剤、限定されないが、セニクリビロックなど);チオゾリジンジオン(限定されないが、ロシグリタゾン及びピオグリタゾンなど);GLP-1類似体(限定されないが、セマグルチド、リラグルチドなど);並びにビグアニド(限定されないが、メトホルミンなど)。一部の実施形態では、本開示のこうした処置は、PPARを活性化することにより、脂肪組織中のインスリン感受性を改善して、NASHにおいて生化学的及び組織学的改善を生み出す。
【0012】
一部の実施形態では、NASHを治療する方法が提供され、前記方法は、治療が必要な患者へのウベニメクスの投与を含む。一部の実施形態では、ウベニメクスを経口投与する。一部の実施形態では、ウベニメクスを1000mg以下の1日用量で投与する。一部の実施形態では、1日用量は、約5mg~約450mgである。一部の実施形態では、1日用量は、5~450mgの範囲であり、QD、BID又はTIDで投与され、ここで、1日用量は、5、10、15、30、60、75、90若しくは150mgの量でウベニメクスを含む単位剤形を用いて投与される。一部の実施形態では、1日用量は、BIDで投与され、各用量は、250mg、240mg、225mg、210mg、200mg、180mg、150mg、125mg、120mg、100mg、90mg、75mg、60mg、50mg、30mg、15mg、10mg、又は5mgの用量で投与される。一部の実施形態では、1日用量は、TIDで投与され、各用量は、150mg、125mg、120mg、100mg、90mg、75mg、60mg、50mg、30mg、15mg、10mg、又は5mgの用量で投与される。一部の実施形態では、ウベニメクスを少なくとも4週間投与する。一部の実施形態では、治療により患者の線維症が軽減する。一部の実施形態では、治療により患者の肝細胞風船様腫大を軽減する。一部の実施形態では、治療により患者の炎症を軽減する。
【0013】
一部の実施形態では、NAFLD又はNASH患者の肝細胞風船様腫大を軽減する方法が提供され、前記方法は、少なくとも4週間にわたり連続した毎日投与を用いて、5~450mgの1日用量でウベニメクスを投与するステップを含む。一部の実施形態では、ウベニメクスを少なくとも12週間投与する。
【0014】
一部の実施形態では、NASH患者の炎症及び/又は線維症を低減する方法が提供され、前記方法は、少なくとも24週間にわたり連続した毎日投与を用いて、5~450mgの1日用量でウベニメクスを投与するステップを含む。一部の実施形態では、ウベニメクスを少なくとも48週間投与する。
【0015】
一部の実施形態では、非アルコール性脂肪性肝炎若しくはその進行の治療又は予防方法が提供され、前記方法は、治療が必要な患者にウベニメクスと、任意選択で二次医薬剤の投与を含む。一部の実施形態では、二次医薬剤は、ファルネソイドX受容体(FXR)アゴニスト、ペルオキシソーム増殖因子活性化受容体(PPAR)アゴニスト、アラムコール、カスパーゼ阻害剤、ガレクチン3阻害剤、FGF19アゴニスト、FGF21アゴニスト、LTD4受容体アンタゴニスト、ニアシン類似体、ASBT阻害剤、アポトーシスシグナル調節キナーゼ1(ASK1)阻害剤、アンジオテンシン変換酵素(ACE)阻害剤、アンジオテンシン受容体遮断薬(ARB)、ケモカイン受容体阻害剤、チオゾリジンジオン、GLP-1類似体、ビグアニド、又はNSAIDである。一部の実施形態では、ウベニメクスを1000mg以下の1日用量で投与する。一部の実施形態では、ウベニメクスと二次医薬剤を少なくとも4週間にわたって投与する。
【0016】
別の態様では、本開示は、NASHの治療及び/又はNAFLDからNASHへの進行の予防のための薬剤の製造も提供し、ここで、薬剤中の活性成分は、ウベニメクスである。一部の実施形態では、薬剤は、ウベニメクスと少なくとも1種の薬学的に許容される担体を含む医薬組成物である。様々な実施形態では、薬剤は、即放性及び徐放性製剤を含む経口投与のために製剤化される。本開示は、患者の治療に有用な薬剤の単位剤形、並びに本明細書に記載のウベニメクスの固体又は液体製剤と共に1若しくは複数個の容器を含む医薬品パック及びキットの製造も提供する。
【0017】
一部の実施形態では、非アルコール性脂肪性肝炎の治療のためのウベニメクスを含む医薬製剤が提供される。一部の実施形態では、医薬製剤は、経口投与用の錠剤、カプセル、又は丸薬の形態である。一部の実施形態では、医薬製剤は、約5mg~約450mgの量でウベニメクスを含む。
【0018】
別の態様では、非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)を治療する方法が提供され、これは、治療が必要な対象に、治療有効量のウベニメクスを投与するステップを含む。一部の実施形態では、対象は、早期又は中期NASHを有する。一部の実施形態では、5mg~1000mgの範囲の総1日用量でウベニメクスを投与する。一部の実施形態では、約5mg~約450mgの総1日用量でウベニメクスを投与する。一部の実施形態では、約20mg~約450mgの総1日用量でウベニメクスをQD投与する。一部の実施形態では、約10mg~約200mgの総1日用量でウベニメクスをBID投与する。一部の実施形態では、約10mg~約150mgの総1日用量でウベニメクスをBID投与する。一部の実施形態では、ウベニメクスを少なくとも4週間にわたり投与する。一部の実施形態では、ウベニメクスを少なくとも12週間にわたり投与する。一部の実施形態では、治療によって対象の血漿CK-18レベルの低下がもたらされる。一部の実施形態では、治療によって対象の肝細胞風船様腫大の軽減がもたらされる。
【0019】
一部の実施形態では、NASHを治療する方法は、第2治療薬と組み合わせてウベニメクスを投与するステップを含む。一部の実施形態では、第2治療薬は、ファルネソイドX受容体(FXR)アゴニスト、ペルオキシソーム増殖因子活性化受容体(PPAR)アゴニスト、アラムコール、カスパーゼ阻害剤、ガレクチン3阻害剤、マイトジェン活性化タンパク質キナーゼ5(MAPK5)阻害剤、線維芽細胞増殖因子19(FGF19)アゴニスト、FGF21アゴニスト、ロイコトリエンD4(LTD4)受容体アンタゴニスト、ニアシン類似体、頂端側ナトリウム胆汁酸共輸送体(ASBT)阻害剤、アポトーシスシグナル調節キナーゼ1(ASK1)阻害剤、アンジオテンシン変換酵素(ACE)阻害剤、アンジオテンシン受容体遮断薬、ケモカイン受容体阻害剤、チオゾリジンジオン、GLP-1類似体、ビグアニド、又は非ステロイド性抗炎症薬(NSAID)である。
【0020】
別の態様では、NAFLDを有する対象において非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD)からNASHへの進行を遅延させる、又は予防する方法が提供される。一部の実施形態では、本方法は、治療有効量のウベニメクスを対象に投与するステップを含む。一部の実施形態では、治療によって対象の肝細胞風船様腫大の軽減がもたらされる。一部の実施形態では、約5mg~1000mgの範囲の総1日用量でウベニメクスを投与する。一部の実施形態では、約5mg~約450mgの総1日用量でウベニメクスを投与する。一部の実施形態では、約20mg~約450mgの総1日用量でウベニメクスをQD投与する。一部の実施形態では、約10mg~約200mgの総1日用量でウベニメクスをBID投与する。一部の実施形態では、約10mg~約150mgの総1日用量でウベニメクスをBID投与する。一部の実施形態では、ウベニメクスを少なくとも4週間にわたり投与する。一部の実施形態では、ウベニメクスを少なくとも12週間にわたり投与する。
【0021】
一部の実施形態では、NAFLDからNASHへの進行を遅延させる、又は予防する方法は、第2治療薬と組み合わせてウベニメクスを投与するステップを含む。一部の実施形態では、第2治療薬は、ファルネソイドX受容体(FXR)アゴニスト、ペルオキシソーム増殖因子活性化受容体(PPAR)アゴニスト、アラムコール、カスパーゼ阻害剤、ガレクチン3阻害剤、マイトジェン活性化タンパク質キナーゼ5(MAPK5)阻害剤、線維芽細胞増殖因子19(FGF19)アゴニスト、FGF21アゴニスト、ロイコトリエンD4(LTD4)受容体アンタゴニスト、ニアシン類似体、頂端側ナトリウム胆汁酸共輸送体(ASBT)阻害剤、アポトーシスシグナル調節キナーゼ1(ASK1)阻害剤、アンジオテンシン変換酵素(ACE)阻害剤、アンジオテンシン受容体遮断薬、ケモカイン受容体阻害剤、チオゾリジンジオン、GLP-1類似体、ビグアニド、又は非ステロイド性抗炎症薬(NSAID)である。
【0022】
また別の態様では、NAFLD及び/又はNASHを有する対象の肝細胞風船様腫大を低減する方法が提供される。一部の実施形態では、本方法は、少なくとも4週間にわたり治療有効量のウベニメクスを対象に投与するステップを含む。一部の実施形態では、本方法は、少なくとも12週間にわたり治療有効量のウベニメクスを対象に投与するステップを含む。一部の実施形態では、対象は、NAFLDを有する。一部の実施形態では、対象は、NASHを有する。
【0023】
さらに別の態様では、NAFLD及び/又はNASHを有する対象の炎症を低減する方法が提供される。一部の実施形態では、本方法は、少なくとも24週間にわたり治療有効量のウベニメクスを対象に投与するステップを含む。一部の実施形態では、本方法は、少なくとも48週間にわたり治療有効量のウベニメクスを対象に投与するステップを含む。一部の実施形態では、対象は、NAFLDを有する。一部の実施形態では、対象は、NASHを有する。
【0024】
また別の態様では、NASHを有する対象の線維症を低減する方法が提供される。一部の実施形態では、本方法は、少なくとも24週間にわたり治療有効量のウベニメクスを対象に投与するステップを含む。一部の実施形態では、本方法は、少なくとも48週間にわたり治療有効量のウベニメクスを対象に投与するステップを含む。
【0025】
さらにまた別の態様では、ウベニメクスの単位剤形を含み、第2治療薬の単位剤形をさらに含む医薬品パッケージが提供される。一部の実施形態では、第2治療薬は、FXRアゴニスト、PPARアゴニスト、アラムコール、カスパーゼ阻害剤、ガレクチン3阻害剤、MAPK5阻害剤、FGF19アゴニスト、FGF21アゴニスト、LTD4受容体アンタゴニスト、ニアシン類似体、ASBT阻害剤、ASK1阻害剤、ACE阻害剤、アンジオテンシン受容体遮断薬、ケモカイン受容体阻害剤、チオゾリジンジオン、GLP-1類似体、ビグアニド、又はNSAIDである。一部の実施形態では、第2治療薬は、化学療法薬ではない。一部の実施形態では、ウベニメクスの各単位剤形は、5mg~1000mgの量でウベニメクスを含む。一部の実施形態では、ウベニメクスの各単位剤形は、約5mg~約450mgの量でウベニメクスを含む。一部の実施形態では、ウベニメクスは、即放用に製剤化される。一部の実施形態では、ウベニメクスは、制御放出用に製剤化される。一部の実施形態では、ウベニメクスは、錠剤、カプセル、又は丸薬の形態である。
【図面の簡単な説明】
【0026】
図1A-1D】ビヒクル、ウベニメクスQDで5週間、ウベニメクスBIDで5週間、ウベニメクスBIDで2週間、又はテルミサルタンで5週間処置したマウスにおけるNAFLD活動性スコア及び成分スコア。(A)5つの群のNAFLD活動性スコア。(B)5つの群の脂肪症成分スコア。(C)5つの群の炎症成分スコア。(D)5つの群の肝細胞風船様腫大スコア。
【発明を実施するための形態】
【0027】
I.導入
非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD)は、単純な脂肪症から非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)、線維症、及び硬変まで、広範囲の肝疾患である。NASHの重要な組織学的特徴としては、脂肪症、肝細胞風船様腫大、及び実質炎症が挙げられ、一般に線維症も観察される。Takahashi et al.,World J Gastroenterol,2014,20:15539-15548.
【0028】
以下の実施例のセクションに記載するように、NASHの動物モデルにおいて、ウベニメクスは、肝細胞風船様腫大を遅らせ、予防する上で効果を示すと共に、わずか3週間の投与後に、脂肪症及び実質炎症を軽減した。従って、一態様では、肝細胞風船様腫大、脂肪症及び実質炎症などのNAFLD及び/又はNASHの1つ又は複数の症状を治療する方法が提供される。さらに、実施例1は、血漿CK-18レベルが、対照動物で測定されたものに対して、有意に低下したことを説明する。従って、一部の実施形態では、本明細書に記載のウベニメクスの投与によって、治療開始からわずか3~12週間のうちに、腫大が低減すると共に、血漿及び/又は肝CK-18レベルが測定可能に低下する。一部の実施形態では、ウベニメクスの連続的な毎日の投与は、治療開始から24~48週間以内に、NASHにおける炎症及び線維症を低減する上で有効である。一部の実施形態では、本明細書に記載のウベニメクスによる治療によって、ALT酵素レベルの改善、炎症の軽減、脂肪症の軽減、NASH症状の重症度の軽減、CK-18などのNASHバイオマーカのレベルの低下、又は肝線維症の遅延、停止若しくは逆転といった一つ以上のパラメータの改善がもたらされる。
【0029】
II.定義
本明細書で使用する用語は、特定の実施形態を表すことを目的とし、限定を意図するものではない。本明細書及び続く特許請求の範囲では、いくつかの用語に言及がなされるが、これらの用語は、以下に記載する定義を有すると規定される。別に定義されない限り、本明細書で使用される全ての技術及び科学用語は、本発明が属する技術分野の当業者により一般に理解されるものと同じ意味を有する。文脈から明らかに反対の解釈が要求されない限り、単数形は複数形も含む。従って、文脈から明らかに反対の解釈が要求されない限り、単数形「1つの(a)」、「1つの(an)」及び「その(the)」は、複数の指示物も含む。
【0030】
全ての数値表示、例えば、pH、温度、時間、濃度及び分子量は、範囲を含め、適宜、0.1又は1.0の増分ずつ(+)又は(-)変動する近似値である。常に明記されているとは限らないが、全ての数値表示の前に「約」という用語が付く。
【0031】
頭字語。本明細書全体を通して下記の頭字語が使用され、これらは以下のように定義される:NASH:非アルコール性脂肪性肝炎;NAFLD:非アルコール性脂肪性肝疾患;QD:1日1回;BID:1日2回;TID:1日3回。
【0032】
本明細書で使用される場合、「活性薬剤」は、疾患又は状態に対して予防若しくは治療効果をもたらす化合物又は薬剤を指す。本明細書で使用される場合、「活性薬剤」は、単一の薬剤又は2種以上の異なる活性薬剤の組合せを指す場合もある。
【0033】
「投与する」及び「投与」という用語は、化合物、組成物、又は薬剤を生物活性の所望の部位に送達する方法を指す。これらの方法は、限定されないが、経口送達、静脈内送達、非経口送達、筋肉内送達、腹腔内送達、又は皮下送達を含む。
【0034】
本明細書で使用される場合、「カプセル」は、単位剤形(例えば、経口投与用の)であり、その中に、活性薬剤含有組成物が液体又は固体(例えば、顆粒、ビーズ、粉末若しくはペレットなどの粒子を含む)の形態で封入されている。好適なカプセルは、硬質若しくは軟質のいずれであってもよく、典型的にはゼラチン、デンプン、又はセルロース材料から製造される。一部の実施形態では、カプセルは、ゼラチンカプセルである。
【0035】
「化合物」という用語は、分子を指し、指定される分子実体だけではなく、化合物が活性薬剤若しくは薬物である場合には、その薬学的に許容される、薬理学的に活性の類似体も含み、限定されないが、活性代謝物、アミド、コンジュゲート、エステル、水和物、多形体、プロドラッグ、塩、水和物、並びに、他のそのような誘導体、類似体も含み、そうしたものとして、重水素化類似体及び放射性原子又はその他の標識分子を含有する類似体、並びに関連化合物が挙げられる。
【0036】
「含む」という用語は、化合物、組成物及び方法が、記載される要素を含むが、他のものを排除しないことを意味する。「から本質的に構成される」は、化合物、組成物及び方法を定義するために使用されるとき、請求される本発明の基本的及び新規の特徴に大きく影響を及ぼし得る他の要素を排除することを意味する。「から構成される」は、請求項に記載されないあらゆる要素、ステップ、又は成分を排除することを意味する。これらの転換用語の各々により定義される実施形態は、本発明の請求の範囲に含まれる。
【0037】
「CK-18」という用語は、サイトケラチン-18断片を指し、これは、NASHの非侵襲性バイオマーカとして同定されており、組織学により決定されるように、NASHを有する患者において顕著に増加し、この断片の高血漿レベルは、肝生検に線維症を有する可能性と相関する。本明細書に参照により組み込まれるFeldstein et al.,Hepatology,2009,50:1072-8を参照されたい。
【0038】
「剤形」という用語は、対象(例えば、治療しようとする疾患若しくは状態を有するヒト又はヒト以外の動物)への投与のための医薬組成物の形態を指す。「用量」は、活性薬剤の量を指す。「単位剤形」は、固定量の活性薬剤を含有する剤形を指す。例えば、単一の錠剤又はカプセルは、単位剤形である。一部の実施形態では、治療有効用量を供給するために、複数の単位剤形が投与される。
【0039】
「経口単位剤形」という用語は、本明細書で使用される場合、経口投与が意図される単位剤形を指す。
【0040】
「有効量」及び「治療有効量」という用語は、疾患、障害、又は状態をある程度治療する、例えば、治療対象の疾患(例えば、NASH)の1つ若しくは複数の症状を軽減する活性薬剤の投与量、及び/又は治療対象の対象が有する、若しくは発症するリスクがある疾患の1つ若しくは複数の症状をある程度予防する量を指す。例えば、所与のパラメータについて、治療有効量は、少なくとも5%、10%、15%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、若しくは100%の治療効果の増加又は減少を示し得る。治療効果はまた、「倍の」増加又は減少として表現することもできる。例えば、治療有効量は、対照に対して、少なくとも1.2倍、1.5倍、2倍、5倍、又はそれ以上の効果を有し得る。
【0041】
本明細書で使用される場合、「賦形剤」又は「担体」は、製剤の活性薬剤と組み合わせて用いられる生物学的に不活性の物質を指す。賦形剤は、例えば、可溶化剤、安定剤、希釈剤、不活性担体、保存料、結合剤、崩壊剤、コーティング剤、香味料、又は着色料として使用することができる。様々な薬学的に許容される賦形剤、例えば、ビヒクル、アジュバント、担体若しくは希釈剤、並びに補助物質、例えば、pH調節及び緩衝剤、等張化剤、安定剤、湿潤剤などが当技術分野で知られている。薬学的に許容される賦形剤は、例えば、A.Gennaro(2000)“Remington:The Science and Practice of Pharmacy,”20th edition,Lippincott,Williams,&Wilkins;Pharmaceutical Dosage Forms and Drug Delivery Systems(1999)H.C.Ansel et al.,eds.,7th ed.,Lippincott,Williams,&Wilkins;及びHandbook of Pharmaceutical Excipients(2000)A.H.Kibbe et al.,eds.,3rd ed.Amer.Pharmaceutical Assocをはじめとする様々な刊行物に詳細に記載されている。
【0042】
「非経口投与」という用語は、本明細書で使用される場合、非経口の投与手段を指し、皮下、静脈内、及び筋肉内の投与経路を含む。
【0043】
「医薬組成物」という用語は、対象への投与に好適な組成物を指す。一般に、「医薬組成物」は、滅菌され、好ましくは、対象において望ましくない応答を誘発し得る混入物を含まない(例えば、医薬組成物中の化合物は、医薬品グレードである)。医薬組成物は、経口、静脈内、口腔内、直腸、非経口、腹腔内、皮内、気管内、筋肉内、皮下、吸入などを含むいくつかの異なる投与経路を介して、治療が必要な対象又は患者への投与のために設計することができる。
【0044】
「薬学的に許容される」という用語は、化合物又は成分に関して使用される場合、化合物又は成分が、概して安全、非毒性であり、且つ生物学的に望ましくないものではないことを意味する。「薬学的に許容される」という用語が、本明細書で、医薬担体又は賦形剤を指すために使用される場合、担体又は賦形剤は、毒物学試験及び製造試験の必要な基準を満たすこと、又は米国食品医薬局(U.S.Food and Drug Administration)により作成されたInactive Ingredient Guideに沿って含まれることが意味される。
【0045】
「薬学的に許容される塩」という用語は、その酸又塩基塩を製造することにより生成される活性薬剤の誘導体を指す。薬学的に許容される塩の例として、限定されないが、アミン、アルカリなどの塩基性残基の無機若しくは有機酸塩、又はカルボン酸などの酸性残基の有機塩などが挙げられる。薬学的に許容される塩は、通常の非毒性塩又は例えば、非毒性有機若しくは有機酸から形成される親化合物の4級アンモニウム塩を含む。薬学的に許容される塩は、親化合物中に存在する酸性プロトンが、金属イオン、例えば、アルカリ金属イオン、アルカリ土類イオン、若しくはアルミニウムイオンにより置換されるか;又はエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、トロメタミン、N-メチルグルカミンなど有機塩基と配位結合するとき形成されるものを含む。薬学的に許容される塩は、同じ塩の、本明細書で定義される溶媒付加形態(溶媒和物)又は結晶形態(多形体)を含む。
【0046】
「予防」、「予防すること」、及び「予防する」という用語は、臨床的に明らかな疾患進行の開始を完全に回避する、又はリスクを有する固体における疾患の明らかな発症前段階の開始を遅らせることを意味する。予防は、疾患を発症するリスクがある者の予防処置を含む。
【0047】
「徴候」という用語は、本明細書で使用される場合、疾患の前兆を意味し、医師、看護師、又は他の医療専門家により認められ得る状態を含む。
【0048】
「対象」及び「患者」という用語は、置き換え可能に、活性薬剤による治療に好適なヒト又はヒト以外の動物(例えば、哺乳動物)を指す。治療が必要な対象は、疾患(例えば、NASH)を有し得るか、又は一般の集団と比較して、疾患(例えば、NASH)を発症するリスクが高い可能性がある。一部の実施形態では、対象は、疾患(例えば、NASH)を有すると診断されている。
【0049】
「症状」という用語は、疾患、疾病、又は傷害の徴候又は他の前兆を意味する。症状は、それらを経験する個体又は非医療専門家を含む他の者によって感じられるか、若しくは気付かれ得る。
【0050】
「治療(処置)」、「治療(処置)すること」及び「治療(処置)する」という用語は、傷害、疾患、若しくは状態の治療又は改善における成功のあらゆる証拠を指し、減退、寛解、患者生存の改善、生存期間若しくは生存率の増加、症状の減少、又は傷害、疾患若しくは状態を患者にとってより忍容性にすること、変性若しくは衰微速度の遅延、又は患者の身体若しくは精神的安定状態の改善などのいずれかの客観的若しくは主観的パラメータを含む。症状の治療又は改善は、客観的若しくは主観的パラメータに基づく。治療の効果は、治療を受けない個体若しくは個体のプール、又は治療前又は治療中の様々な時点での同じ患者と比較することができる。
【0051】
「ウベニメクス」は、(2S)-2-[[(2S,3R)-3-アミノ-2-ヒドロキシ-4-フェニルブタノイル]アミノ]-4-メチルペンタン酸を指し、N-[(2S,3R)-3-アミノ-2-ヒドロキシ-4-フェニルブチリル-L-ロイシンとしても知られ、その構造を以下に示す:
【化1】
ウベニメクスは、水中1.27mg/mLの溶解度を有し、融点が約251℃の双性イオン性分子である。ウベニメクスは、参照により本明細書に組み込まれる米国特許第4,029,547号明細書及び同第4,502,449号明細書に記載されている。本明細書でウベニメクスと言うとき、別に記載されているか、又は文脈から別の解釈が明らかでない限り、薬学的に許容される塩を指す場合もある。一部の実施形態では、ウベニメクスは、塩酸ウベニメクスの形態である。ウベニメクス及びその薬学的に許容される塩は、市販されている(例えば、Tocris Bioscience)。ウベニメクスは、当技術分野で公知の方法に従って調製することもできる。例えば、米国特許第4,029,547号明細書(参照により本明細書に組み込まれる)を参照されたい。
【0052】
別に指定されていない限り、パーセンテージは全て%w/wである。別に記載されていない限り、「%重量」は、単位剤形(例えば、錠剤又はカプセル)の総重量と比較して、指定成分の重量パーセントである。四捨五入又は数量測定の実際的な限界のために、剤形中のAPI又は賦形剤の量を指す場合、±0.10%又は±0.5%などの幾分の変動を含み得る。
【0053】
III.NAFLD及びNASHの治療方法
一態様では、本開示は、NASHの治療のための療法を提供し、これは、治療が必要な患者に、治療有効量のウベニメクスを投与するステップを含む。一部の実施形態では、治療が必要な患者は、NASHと診断された患者である。一部の実施形態では、本明細書に記載のウベニメクスによる治療は、NASH疾患の進行を遅延、停止、又は逆転させる。
【0054】
別の態様では、別の本開示は、治療が必要な患者に、治療有効量のウベニメクスを投与することによって、NASHを予防する、又はNAFLDからNASHへの進行を遅らせる療法を提供する。一部の実施形態では、治療が必要な患者は、NAFLDと診断された患者である。
【0055】
患者集団
本開示の治療法から利益を受ける可能性がある患者は、本明細書で論じる、又は当業者には周知の様々な手段によって容易に識別することができる。加えて、患者がこの治療法に応答しているか否かを決定するための方法も提供する。一部の実施形態では、超音波試験、コンピュータ断層撮影(CT)、及び/又は磁気共鳴イメージング(MRI)をはじめとする腹部画像検査を用いて、疾患を有する患者を診断する、例えば、疾患が存在するか否か、及びその重症度を評価することができる。こうした非侵襲性診断は、要望されれば、肝生検によってさらに決定的に確認することができる。一部の実施形態では、1つ若しくは複数のバイオマーカを用いて、NAFLD又はNASHを診断する。一部の実施形態では、本開示に従って治療しようとする患者は、NASH又はNAFLDの一次診断を受けており、現時点で治療の必要が示される、又は臨床的に発症しているいずれか他の状態(例えば、特定の癌患者、PAH適応、若しくはリンパ浮腫適応)についてウベニメクスによる治療を受けていない。
【0056】
NAFLDは、肝細胞中の有意な脂質沈着を特徴とし、典型的には、肝臓内の過剰な脂肪蓄積(目に見える細胞内トリグリセリドを含有する肝細胞の5%超を含む)又は肝臓体積若しくは重量の少なくとも5%に影響を及ぼす脂肪症のいずれかとして定義される。El-Kader et al.,World J Hepatol,2015,7:846-858。一部の実施形態では、治療しようとする患者は、NAFLDを有する。一部の患者は、例えば、高い血清アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ(ALT)、γグルタミルトランスペプチダーゼ、又はアルカリホスファターゼレベルの存在によって決定されるように、異常な肝機能を示す。一部の実施形態では、治療しようとする患者は、NAFLDを有し、さらには、高いALTレベル、高いγグルタミルトランスペプチダーゼ、又は高いアルカリホスファターゼレベル(例えば、正常の上限の約1.5~4倍のレベル)を有する。一部の実施形態では、治療しようとする患者は、NAFLDを有すると共に、正常の上限以内のALTレベル、γグルタミルトランスペプチダーゼ、又はアルカリホスファターゼレベルを有する。
【0057】
一部の実施形態では、画像検査を用いてNAFLDを診断する。一部の実施形態では、限定されないが、脂肪肝指数(この場合、スコア>60は、NAFLDの高リスクを示す)、NAFLD脂肪肝スコア、NAFLD活動性スコア、又は肝脂肪症指数などのスコアリングシステムを用いてNAFLDを診断する。一部の実施形態では、NAFLD活動性スコア(NAS)を用いてNAFLDを診断するが、これは、脂肪症(0~3)、実質炎症(0~3)、及び肝細胞風船様腫大(0~2)の程度に基づく複合スコアを提供する。Kleiner et al.,Hepatology,2005,41:1313-1321;Bugianesi et al.,J Hepatology,2016,65:643-644を参照されたい。
【0058】
NASHは、病理学的に1型及び2型に分類され、そのうち1型は、一般に成人患者にみられるのに対し、2型は、小児にみられることが多い。1型NASHは、典型的に、脂肪症、肝細胞風船様腫大、及び類洞周囲線維症を特徴とする。2型NASHは、典型的に、脂肪症、門脈炎症、及び門脈線維症を特徴とする。例えば、Schwimmer et al.,Hepatology,2005,42:641-649を参照されたい。NASHがさらに進行すると、重症線維症、硬変、及び末期肝疾患を招く恐れがある。一部の実施形態では、治療しようとする患者は、1型NASHを有する。一部の実施形態では、治療しようとする患者は、2型NASHを有する。一部の実施形態では、治療しようとする患者は、早期NASHを有する。一部の実施形態では、治療しようとする患者は、中期NASHを有する。一部の実施形態では、治療しようとする患者は、後期NASH(例えば、肝臓の重症線維症及び/又は硬変)を有する。
【0059】
一部の実施形態では、画像検査を用いて、NASHを診断する。一部の実施形態では、限定されないが、NAFLD活動性スコア(例えば、スコア≧5)又は脂肪症、活性、及び線維症(SAF)スコア、又はNAFLD線維症スコア;血清バイオマーカ(例えば、サイトケラチン-18);又はこれらの組合せなどのスコアリングシステムを用いて診断する。Hepatology,2012,56:1751-1759;Arab et al.,Gastroenterol Hepatol,2017,40:388-394を参照されたい。一部の実施形態では、エラストグラフィー(例えば、Fibroscan(登録商標))を用いて、線維症を検出及び/又は測定する。
【0060】
一部の実施形態では、治療しようとする患者は、CK-18などの1つ又は複数のバイオマーカの使用により識別する。CK-18レベルは、免疫組織化学、肝生検からの組織学、又は疾患に対してリスクを有することが疑われる患者若しくは個体中の血漿レベルの測定のいずれによって測定されるかにかかわらず、健常な個体で測定されたレベルと比べ、治療しようとする対象で高い。本発明は特定の、又はいずれかの提案される作用機構に限定されるものではないが、NASH患者におけるCK-18レベルの低下は、肝細胞アポトーシスの減少と相関することが予測される。従って、本開示に従い、ウベニメクスで治療するNAFLD又はNASH患者は、治療を全く受けないか、標準治療を受ける場合と比較して、肝細胞アポトーシスの減少により利益を受けるはずである。
【0061】
一部の実施形態では、治療しようとする患者は、ヒト成人である。一部の実施形態では、治療しようとする患者は、18歳未満(例えば、2歳~17歳までの)ヒト小児である。
【0062】
一部の実施形態では、治療しようとする患者は、癌に罹患していない。一部の実施形態では、治療しようとする患者は、急性リンパ性白血病に罹患していない。一部の実施形態では、治療しようとする患者は、リンパ浮腫に罹患していない。一部の実施形態では、治療しようとする患者は、肺動脈性肺高血圧症に罹患していない。
【0063】
投与レジメン
一部の実施形態では、約1000mg未満(例えば、900mg未満、800未満、750未満、700未満、600mg未満、又は500mg未満)の総1日用量でウベニメクスを投与する。本明細書に記載される場合、用量は、1用量当たり投与される活性成分の量を指し、医薬製剤の量ではない。一部の実施形態では、約5mg~約450mg、例えば、約10mg~約450mg、約20mg~約450mg、約30mg~約450mg、約10mg~約350mg、約20mg~約350mg、約30mg~約350mg、約10mg~約250mg、約20mg~約250mg、又は約30mg~約250mgの総1日用量でウベニメクスを投与する。この1日用量は、1度に全部:1日1回で投与してもよいが、一部の実施形態では、1日1回用量(QD投与)は、少なくとも30mg以上であり得る。BID投与の場合、1日用量は、1日2回10~450mg、例えば、5~225mgであり得るが、一部の実施形態では、BID投与の場合、用量は、少なくとも15mg以上であり得る。TID投与の場合、一部の実施形態では、1日用量は、1日3回15~450mg、例えば、5~150mgであり得るが、一部の実施形態では、TID投与の場合、用量は、少なくとも10mg以上であり得る。一部の実施形態では、少なくとも20mg、少なくとも30mg、少なくとも40mg、又は少なくとも50mgの1日用量でウベニメクスを投与する。一部の実施形態では、約20mg、30mg、40mg、50mg、60mg、70mg、80mg、90mg、100mg、110mg、120mg、130mg、140mg、150mg、160mg、170mg、180mg、190mg、200mg、210mg、220mg、230mg、240mg、250mg、260mg、270mg、280mg、290mg、300mg、310mg、320mg、330mg、340mg、350mg、360mg、370mg、380mg、390mg、400mg、410mg、420mg、430mg、440mg、又は450mgの1日用量でウベニメクスを投与する。
【0064】
一部の実施形態では、約10mg~約450mgQD、例えば、約15mg~約400mgQD、約20mg~約350mgQD、約20mg~約300mgQD、約25mg~約250mgQD、又は約25mg~約200mgQDの投与量でウベニメクスを投与する。一部の実施形態では、約20mg、25mg、30mg、40mg、50mg、60mg、70mg、80mg、90mg、100mg、110mg、120mg、130mg、140mg、150mg、160mg、170mg、180mg、190mg、200mg、210mg、220mg、230mg、240mg、250mg、260mg、270mg、280mg、290mg、300mg、310mg、320mg、330mg、340mg、350mg、360mg、370mg、380mg、390mg、400mg、410mg、420mg、430mg、440mg、又は450mgQDの投与量でウベニメクスを投与する。
【0065】
一部の実施形態では、約10mg~約200mgBID、例えば、約20mg~約150mgBID、約20mg~約100mgBID、又は約25mg~約150mgBIDの用量でウベニメクスを投与する。一部の実施形態では、約20mg、25mg、30mg、40mg、50mg、60mg、70mg、80mg、90mg、100mg、110mg、120mg、130mg、140mg、150mg、160mg、170mg、180mg、190mg、又は200mgBIDの用量でウベニメクスを投与する。
【0066】
一部の実施形態では、約10mg~約150mgTID、例えば、約20mg~約150mgTID、約20mg~約100mgBID、又は約25mg~約150mgTIDの用量でウベニメクスを投与する。一部の実施形態では、約20mg、25mg、30mg、40mg、50mg、60mg、70mg、80mg、90mg、100mg、110mg、120mg、130mg、140mg、又は150mgTIDの用量でウベニメクスを投与する。
【0067】
ウベニメクスの製剤及び単位剤形については、以下のセクションIVにさらに開示する。一部の実施形態では、ウベニメクスを経口投与する。一部の実施形態では、ウベニメクスは、少なくとも1週間、典型的にはそれ以上にわたり連続して1日少なくとも1回、多くても3回治療有効量で経口投与する。
【0068】
一部の実施形態では、治療期間の一部又は全部にわたり、ウベニメクスを単独で(すなわち、別の薬剤と組み合わせずに)投与する。一部の実施形態では、ウベニメクスは、1若しくは複数種の他の薬剤、例えば、限定されないが、ファルネソイドX受容体(FXR)アゴニスト(限定されないが、オベチコール酸を含む)、ペルオキシソーム増殖因子活性化受容体(PPAR)アゴニスト、例えば、PPAR-αアゴニスト、PPAR-β/Δアゴニスト、又はPPAR-γアゴニスト(限定されないが、エラフィブラノールなど);アラムコール;カスパーゼ阻害剤(限定されないが、エムリカサンなど);ガレクチン3阻害剤(限定されないが、GR-MD-02、ガレクチン治療薬(Galectin Therapeutics)など);MAPKS阻害剤(限定されないが、GS-4997、Gilead Sciencesなど);FGF21アゴニスト(限定されないが、BMS-986036、Bristol-Myers Squibbなど);LTD4受容体アンタゴニスト(限定されないが、チペルカストを含む);ニアシン類似体(限定されないが、ARI 3037MO、Arisaph Pharmaceuticalsを含む);ASBT阻害剤(限定されないが、ボリキシバトを含む);アポトーシスシグナル調節キナーゼ1(ASK1)阻害剤;ACE阻害剤若しくはARB(テルミサルタンなど);CCR2及び/又はCCR5阻害剤(セニクリビロックなど);チオゾリジンジオン(ロシグリタゾン及びピオグリタゾンなど);GLP-1類似体(限定されないが、セマグルチド、リラグルチドなど);又はメトホルミンなどのビグアニドと組み合わせて投与する。特定の理論に拘束されるわけではないが、本開示のこうした治療は、PPARを活性化することにより、脂肪組織中のインスリン感受性を改善して、NASHの生化学的及び組織学的改善を生み出すと見なされている。ウベニメクスと第2治療薬の併用療法は、以下のセクションVでも開示する。
【0069】
一部の実施形態では、ウベニメクスは、経口、鼻内、直腸、局所、腹腔内、静脈内、筋肉内、皮下、真皮下、経皮、又は髄腔内投与に好適な医薬製剤として投与する。一部の実施形態では、本開示に従う使用のための医薬製剤は、経口投与のために、QD、BID又はTID投与に適した即放形態に調製され、投与レジメンは、患者のタイプ、種、年齢、体重、性別及び医学的状態;治療しようとする状態の重症度;投与経路;患者の腎及び肝機能;並びに使用する具体的な製剤を含む様々な要因に応じて、本明細書に記載の範囲内で選択する。通常の知識を有する医師又は獣医は、本明細書の教示内容を考慮して、状態の進行を予防、拮抗する、又は停止させるのに必要な薬剤の有効量を容易に決定し、処方することができる。
【0070】
治療期間、治療エンドポイント、及び効果のモニタリング
一部の実施形態では、ウベニメクス(及び任意選択で第2治療薬)による治療は、予定期間にわたって、不定期間にわたって、又はエンドポイントが達成されるまで投与する。一部の実施形態では、治療は、少なくとも30日若しくは1ヶ月、少なくとも60日若しくは2ヶ月、少なくとも90日若しくは3ヶ月、少なくとも120日若しくは4ヶ月、少なくとも150日若しくは5ヶ月、又は少なくとも180日若しくは6ヶ月にわたる。一部の実施形態では、治療は、少なくとも6ヶ月~1年間継続する。一部の実施形態では、ウベニメクスを少なくとも1ヶ月、少なくとも3ヶ月、又は少なくとも6ヶ月~少なくとも1年にわたって投与する(例えば、本明細書に記載するように、ウベニメクスの継続的な毎日の投与により)。他の実施形態では、患者の生涯にわたって又は投与が有意な治療利益をもたらす上でもはや有効ではなくなるまで、治療を継続する。一部の実施形態では、治療は、継続的に毎日投与する。一部の実施形態では、治療は、ほぼ継続的に毎日投与する(例えば、ウベニメクスを毎日患者に投与するが、患者が1日の処置を受けそこなう場合もある)。
【0071】
一部の実施形態では、概して継続的(またはほぼ継続的な)毎日の投与は、治療がもはや有益な効果をもたらさないことが明らかになるまで、又は許容できない副作用が出現するまで、継続する。多くの患者が、少なくとも1週間、少なくとも1ヶ月、及び少なくとも1年又はそれ以上にわたって薬剤投与を受けることになる。いくつかの事例では、患者は、約6ヶ月~約1年にわたって薬剤投与を受ける。いくつかの事例では、患者は、1年超にわたって薬剤投与を受ける。多くの患者は、その生涯にわたって薬剤投与を受けることになるだろう。
【0072】
一部の実施形態では、本明細書に記載の方法に従う治療によって、限定されないが、硬変、死亡、肝移植、血液細胞癌、並びに肝性脳症、入院が必要な静脈瘤出血、介入を要する腹水、及び特発性細菌性腹膜炎などの代償不全の病理組織学評価によって測定されるように、NAS(腫大及び炎症)及び/又は線維症の改善;SAF(脂肪症、活性、及び線維症)スコアの改善;脂肪性肝炎の完全分解;線維症の悪化なし;脂肪性肝炎の悪化を伴わない線維症の改善;又は疾患の進行までの時間の延長などの1つ又は複数のパラメータの改善をもたらす。一部の実施形態では、本明細書に記載の方法に従う治療によって、肝細胞風船様腫大の改善(すなわち、軽減)が達成される。一部の実施形態では、ヘマトキシリン及びエオン染色を用いて、肝細胞風船様腫大を視覚化する。
【0073】
一部の実施形態では、本明細書に記載の方法に従う治療によって、限定されないが、アポトーシスのマーカ(例えば、サイトケラチン18(CK-18)断片)、アディポカイン(例えば、アディポネクチン、レプチン、レジスチン、又はビスファチン)、炎症性マーカ(例えば、TNF-α、IL-6、走化性タンパク質1、又は高感度C反応性タンパク質)など、NAFLD又はNASHの1つ若しくは複数のバイオマーカに改善がもたらされる。例えば、Neuman et al.,Can J Gastroenterol Hepatol,2014,28:607-618;Castera et al.,Nat Rev Gastroenterol Hepatol.,2013,10:666-675を参照されたい。一部の実施形態では、バイオマーカ値は、流体、例えば、血液、血漿、血清、尿、又は脳脊髄液を含むサンプルを用いて測定する。一部の実施形態では、バイオマーカ値は、細胞及び/又は組織、例えば、肝細胞若しくは肝組織を含むサンプルを用いて測定する。一部の実施形態では、治療によって、バイオマーカCK-18の改善がもたらされる。一部の実施形態では、治療によって、対象の血漿CK-18レベルの低下がもたらされる。
【0074】
一部の実施形態では、本明細書に記載する診断テストを用いて(例えば、腹部画像検査を用いて)、ウベニメクス療法過程中に患者をモニターする。一部の実施形態では、本方法は、さらに治療過程(例えば、本明細書に記載のウベニメクスの投与)を継続することを含む。一部の実施形態では、本方法は、さらに、診断によって保証される場合、例えば、治癒が達成されるとき、より低い用量がより安全であるか、若しくは高い用量と同様に有効であることが明らかであるとき、又は治療効果の持続が全く見込まれないとき、ウベニメクスの投与量を漸減、減少、又は停止することも含む。一部の実施形態では、本方法は、有効でないと判断される場合、ウベニメクスの投与量を増加すること、並びに用量の漸増若しくは任意の用量での投与の継続が有効となる見込みがないと判断される場合、療法を停止することを含み得る。
【0075】
患者が本開示に従う治療を受けている一部の実施形態では、腹部画像検査、超音波検査、磁気共鳴画像法、CTスキャン、及び/又は生検によるNASHの兆候は、治療前に同じ患者で測定されたものより低い可能性があるが、これは、患者がこの療法に好ましく応答していることを示している。患者が本開示の療法に好ましく応答している場合、状態の存在が、正常な対照レベルと同等のレベルに低減するまで、療法を継続する。任意選択で、NASH症状の軽減を維持するために療法を継続する。あるいは、患者において要望されるレベルの脂肪症(脂肪症の非存在を含む)が達成されるまで、療法を継続する。腹部画像検査、超音波検査、磁気共鳴画像法、CTスキャン、及び/又は生検による評価によって有効であると判断される限り、治療を継続してもよい。治療は、脂肪症、風船様腫大、及び壊死性炎症の1つ若しくは複数について測定された改善を通して有効であると判断され得る。一部の実施形態では、治療は、風船様腫大の軽減の誘導により示される、測定された改善を通して有効であると判断される。一部の実施形態では、治療は、炎症の軽減により示される、測定された改善を通して有効であると判断される。一部の実施形態では、治療は、血清ALTレベルの低下、インスリン感受性の改善、脂肪症の軽減、炎症の軽減、線維症の軽減、及びPPAR(例えば、PPAR-α、PPAR-β/Δ、又はPPAR-γ)活性化の少なくとも1つにより示される、測定された改善を通して有効であると判断される。一実施形態では、治療は、線維症及び/又は硬変の退縮若しくは逆転の誘導により示される、測定された改善を通して有効であると判断される。
【0076】
一部の実施形態では、治療によって、対照値と比較して、少なくとも10%、少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、又は少なくとも90%の1つ若しくは複数のパラメータの改善(例えば、NAS若しくはSAFスコアの低下、肝細胞風船様腫大の軽減、線維症の軽減、若しくはCK-18レベルの低下)がもたらされる。一部の実施形態では、治療によって、対照値と比較して、少なくとも2倍、少なくとも3倍、少なくとも4倍、少なくとも5倍、少なくとも6倍、少なくとも7倍、少なくとも8倍、少なくとも9倍、又は少なくとも10倍の1つ若しくは複数のパラメータの改善がもたらされる。一部の実施形態では、対照値は、治療の開始前に決定される対象のベースライン値である。
【0077】
一部の実施形態では、本開示は、(a)治療が必要な対象の腹部画像検査、超音波検査、磁気共鳴画像法、CTスキャン、及び/又は肝生検を介してNASHのレベル及び重症度を測定するステップであって、NASHのレベル及び重症度は、治療を開始した後に測定されるステップ、(b)ステップ(a)で測定したNASHのレベル及び重症度をNASHのベースラインレベル及び重症度と比較するステップであって、ベースラインレベル及び重症度は、治療を開始する前に同じ対象で測定されるステップ、並びに(c)比較ステップに基づいてNASH治療の効果を決定するステップにより、治療が必要な対象におけるNASH治療の効果を決定する方法を提供する。
【0078】
さらに、一部の実施形態では、(a)治療が開始した後に、治療が必要な対象におけるNASHのレベル及び重症度を測定するステップ、(b)NASHのレベル及び重症度を基準値と比較するステップであって、基準値は、NASHに罹患した患者の集団から決定された平均値を表すステップ、並びに(c)比較ステップに基づいてNASH治療の効果を決定するステップにより、治療が必要な対象におけるNASH治療の効果を決定する方法を提供する。一部の実施形態では、療法の効果は、NAFLD活動性スコア(NAS)及び線維症を評価するために、肝生検及び分析により決定され;この目的のために、経頸静脈的肝生検法を使用することができる。好適な患者は、NASHが証明された生検を有する患者、NASHについて高いリスクを有する患者、4以上のNASを有する患者、肝線維症を有するNASH患者、及び2期若しくはそれ以上の線維症を有する患者を含む。
【0079】
一部の実施形態では、本発明の療法に応答する患者は、療法を継続するにつれて、CK-18レベルの何らかの増加の少なくとも遅延を示すことが見込まれる。一部の実施形態では、療法に最も好ましく応答する患者は、十分な治療利益が実現されるに従い、時間の経過と共に安定化し、低下するCK-18レベルを有する。従って、一部の実施形態では、本開示は、(a)対象由来のサンプル(例えば、血液、血漿、若しくは組織サンプル)からのサンプル中のバイオマーカCK-18レベルの測定を介してNASHのレベル及び重症度を測定するステップであって、NASHのレベル及び重症度は、治療を開始した後に測定されるステップ、(b)(a)で測定したNASHのレベル及び重症度を、治療を開始する前に同じ対象で測定した対象のNASHのベースラインレベル及び重症度と比較するステップ、並びに(c)比較ステップに基づいてNASH治療の効果を決定するステップにより、治療が必要な対象におけるNASH治療の効果を決定する方法を提供し;ここで、CK-18レベルの高原状態又は低下は、NASH治療の効果を示している。
【0080】
IV.ウベニメクスを含む組成物、単位剤形、及びキット
別の態様では、本明細書に記載の方法で使用するためのウベニメクスを含む組成物、単位剤形、医薬品パッケージ、及びキットが提供される。一部の実施形態では、製剤、単位剤形、医薬品パッケージ、及び/又はキットは、NASHの治療に使用することを目的とする。一部の実施形態では、製剤、単位剤形、医薬品パッケージ、及び/又はキットは、NAFLDを有する対象におけるNAFLDからNASHへの進行を遅延又は予防に使用することを目的とする。
【0081】
一部の実施形態では、組成物、単位剤形、医薬品パッケージ、及び/又はキットは、ウベニメクス又はその薬学的に許容される塩を含む。一部の実施形態では、組成物、単位剤形、医薬品パッケージ、又はキットは、ウベニメクス又はウベニメクス塩酸塩を含む。一部の実施形態では、組成物又は単位剤形は、重量基準で全組成物の約10%~50%、又は約20%~40%、又は約30%~35%、又は約15%~約25%の量のウベニメクス又はその薬学的に許容される塩を含む。一部の実施形態では、ウベニメクスは、非晶質固体分散体として提供される。
【0082】
一部の実施形態では、ウベニメクスは、1又は複数の薬学的に許容される賦形剤を含む医薬組成物中に製剤化される。一部の実施形態では、賦形剤は、可溶化剤、安定剤、希釈剤、不活性担体、保存料、結合剤、崩壊剤、コーティング剤、香味料、又は着色料を含む。好適な医薬組成物、製剤、及び単位剤形は、医薬製剤の分野の当業者には周知であり、関連テキスト及び文献、例えば、Remington:The Science and Practice of Pharmacy(Easton,Pa.:Mack Publishing Co.,1995)などに記載されている方法を用いて調製することができる。典型的には、本開示の医薬製剤は、ウベニメクスと、1若しくは複数種の薬学的に許容される(ヒトへの使用のために州若しくは連邦取締機関により承認されているか、又は米国薬局方(U.S.Pharmacopia)、欧州薬局方(European Pharmacopia)に列記されている)賦形剤又は担体を含む。
【0083】
一部の実施形態では、活性薬剤の安定性及び/又は可溶性の向上など、製剤に対する1つ若しくは複数の有益な物理的特性を賦与するように、少なくとも1種の賦形剤を選択する。好適な賦形剤の例として、アルブミンなどの特定の不活性タンパク質;ポリビニルピロリドンなどの親水性ポリマー;アスパラギン酸(あるいは、アスパラギン酸塩と呼ばれることもある)、グルタミン酸(あるいは、グルタミン酸塩と呼ばれることもある)、リシン、アルギニン、グリシン、及びヒスチジンなどのアミノ酸;スルホン酸アルキル及びカプリン酸塩などの脂肪酸及びリン脂質;ドデシル硫酸ナトリウム及びポリソルベートなどの界面活性剤;TWEEN(登録商標)、PLURONIC(登録商標)、又はポリエチレングリコール(PEG)などのノニオン性界面活性剤;グルコース、スクロース、マンノース、マルトース、トレハロース、及びシクロデキストリンを含むデキストリンなどの炭水化物;マンニトール及びソルビトールなどのポリオール;EDTAなどのキレート剤;並びにナトリウムなどの塩形成対イオンが挙げられる。
【0084】
一部の実施形態では、ウベニメクスは、液体医薬組成物、例えば、油性若しくは水性ビヒクル中の懸濁液、溶液、又はエマルジョン中にウベニメクスを含有する組成物などとして製剤化する。一部の実施形態では、液体組成物は、懸濁剤、安定剤、及び/又は分散剤などの1若しくは複数種の配合剤(formulatory agent)をさらに含む。一部の実施形態では、液体製剤中の薬剤の送達のために使用される溶液又は懸濁液は、以下の成分を含み得る:注射液、食塩溶液、不揮発性油、ポリエチレングリコール、グリセリン、プロピレングリコール、ポリソルベート、トコフェロール、ポリエチレングリコールコハク酸(TPGS)、又は他の合成溶媒などの滅菌希釈剤;ベンジルアルコール又はメチルパラベンなどの抗菌剤;アスコルビン酸又は亜硫酸ナトリウムなどの抗酸化剤;エチレンジアミン四酢酸などのキレート剤;酢酸塩、クエン酸塩又はリン酸塩などの緩衝剤、並びに塩化ナトリウム又はデキストロースなどの等張化のための薬剤。塩酸又は水酸化ナトリウムなどの酸又は塩基でpHを調節することができる。これらの調製物は、ガラス又はプラスチック製のアンプル、使い捨て注射器若しくは複数回用量バイアル中に封入することができる。
【0085】
一部の実施形態では、ウベニメクスは、即放用に製剤化する。本明細書で使用される場合、「即放」は、投与後比較的短時間で(例えば、約1時間以内に)少なくとも薬剤の大部分の放出を可能にする製剤を意味する。一部の実施形態では、即放性製剤は、投与後約30~60分以内で、薬剤の少なくとも約80%の放出を可能にする。
【0086】
一部の実施形態では、ウベニメクスは、徐放又は持続放出のために製剤化する。本明細書で使用される場合、「徐放」及び「持続放出」は、長期間にわたって薬剤を徐々に放出する製剤を意味し、典型的には、必ずではないが、長期間にわたって実質的に一定の血中薬剤レベルを達成する。一部の実施形態では、徐放性製剤は、約4~約12時間の範囲、典型的には約6~約10時間の範囲の時間にわたって実質的に一定の血中薬剤レベルを可能にする。例えば、徐放性製剤は、少なくとも4~6時間が経過するまでピーク血中レベルに到達しないように、投与後の薬剤の血中レベルの非常に漸次的な増加を提供することができ、薬剤の血中レベルの線形増加速度の後、ピーク血中レベルの持続期間が続き、持続期間の終わりに同様に血中レベルの漸次的減少が続く。
【0087】
一部の実施形態では、ウベニメクスは、遅延放出用に製剤化される。本明細書で使用される場合、「遅延放出」は、患者への投与後、薬剤が製剤から患者の身体に放出される前に、測定可能な遅延時間を賦与する製剤を指す。
【0088】
一部の実施形態では、経口ウベニメクス製剤は、即放性製剤として製剤化された後、例えば、丸薬、カプセル、若しくは錠剤の形態の単位剤形に好都合にパッケージされ、次にこれらを薬瓶若しくはブリスターパッケージ内に入れるか、又は液体製剤の場合には、液体適合性容器に入れてもよい。本開示の医薬組成物の用量及び所望の薬剤濃度は、考慮される具体的な用途に応じて変動し得る。適切な用量及び投与経路の決定は、十分に当業者の技術の範囲内である。好適な用量は、上のセクションIIIにも記載されている。一部の実施形態では、ウベニメクスは、5~1000mg、10~800mg、20~750mg、30~600mg、40~500mg、50~450mg、60~375mg、75~300mg、90~250mg、又は100~150mgの範囲のウベニメクスの量を含む丸薬、錠剤、若しくはカプセルである単位剤形中の固定用量の経口形態として提供される。具体的な単位剤形は、投与される用量に左右され、これは、患者が成人若しくは小児のいずれであるか、又は疾患の重症度に応じて変動し得る。
【0089】
一部の実施形態では、ほとんどの成人患者(60~100kg若しくはそれ以上)は、1日当たり5~1000mgの範囲の1回用量により治療利益を受け、一部は、少なくとも1日1回5~450mg、1日2回10~225mg、又は1日3回5~150mgで十分な治療効果を達成し得る。しかし、これらのスケジュール(QD、BID及びTID)で投与される10mg、30mg、及び150mgの最小用量が臨床用途について承認され得る。一部の患者には、毎回食事と一緒に処方用量を投与し得る。一部の患者にはこの用量を食前に投与し得る。一部の患者は、長期投薬治療としてこの用量を投与し得;一部の患者は、6ヵ月以上の期間にわたって毎日薬剤を服用することが予想される。
【0090】
本開示は、また、本明細書に記載の治療方法での使用に適した多様な具体的単位剤形も提供する。例えば、ウベニメクスは、5、25、30、60、90、又は150mgのウベニメクスを含有する単位剤形として投与することができ、これは、本開示に従って医師が処方した1日用量を供給するために1日1回、2回、若しくは3回送達するのに好適である。さらに、以前のウベニメクスの製剤及び単位剤形を本開示の方法に使用することができる。ウベニメクスは、日本でBestatin(商標)の商標名で、急性非リンパ性白血病の治療後の生存を延長し、寛解を維持するために化学療法薬の補助剤として癌の治療のために市販されており、PAH(各々が、参照により本明細書に組み込まれる国際公開第2013/142369号パンフレット及び米国特許第9,233,089号明細書を参照)及びリンパ浮腫(参照により本明細書に組み込まれる国際公開第2016/149126号パンフレットを参照)の治療のために臨床試験されている。本開示の様々な実施形態では、限定されないが、市販されているBestatin(商標)10mg若しくは30mg単位剤形、又はPAH及びリンパ浮腫臨床試験に使用されている形態のウベニメクスなどのウベニメクスをNASH患者に投与する。
【0091】
一部の実施形態では、ウベニメクスと第2治療薬を含む医薬品パッケージ及びキットが提供される。一部の実施形態では、医薬品パッケージは、ウベニメクス(例えば、即放性、遅延放出、又は徐放性形態)と第2治療薬を含み、ここで、第2治療薬は、ファルネソイドX受容体(FXR)アゴニスト(限定されないが、オベチコール酸など);ペルオキシソーム増殖因子活性化受容体(PPAR)アゴニスト、例えば、PPAR-αアゴニスト、PPAR-β/Δアゴニスト、又はPPAR-γアゴニスト(限定されないが、エラフィブラノールなど);アラムコール;カスパーゼ阻害剤(限定されないが、エムリカサンなど);ガレクチン3阻害剤(限定されないが、GR-MD-02、ガレクチン治療薬(Galectin Therapeutics)など);MAPKS阻害剤(限定されないが、GS-4997、Gilead Sciencesなど);FGF21アゴニスト(限定されないが、BMS-986036、Bristol-Myers Squibbなど);LTD4受容体アンタゴニスト(限定されないが、チペルカストを含む);ニアシン類似体(限定されないが、ARI 3037MO、Arisaph Pharmaceuticalsなど);ASBT阻害剤(限定されないが、ボリキシバトを含む);アポトーシスシグナル調節キナーゼ1(ASK1)阻害剤;アンジオテンシン変換酵素(ACE)阻害剤;アンジオテンシン受容体遮断薬(ARB、限定されないが、テルミサルタンなど);ケモカイン受容体阻害剤(例えば、CCR2及び/又はCCR5阻害剤、限定されないが、セニクリビロックなど);チオゾリジンジオン(限定されないが、ロシグリタゾン及びピオグリタゾンなど);GLP-1類似体(限定されないが、セマグルチド、リラグルチドなど);ビグアニド(限定されないが、メトホルミンなど);又はNSAIDである。一部の実施形態では、第2治療薬は、化学療法薬ではない。
【0092】
一部の実施形態では、医薬品パッケージ又はキットは、ウベニメクスの単位剤形を含み、さらには、第2治療薬の単位剤形も含み、ここで、第2治療薬は、FXRアゴニスト、PPARアゴニスト、アラムコール、カスパーゼ阻害剤、ガレクチン3阻害剤、MAPK5阻害剤、FGF21アゴニスト、LTD4受容体アンタゴニスト、ニアシン類似体、ASBT阻害剤、ASK1阻害剤、ACE阻害剤、アンジオテンシン受容体遮断薬、ケモカイン受容体阻害剤、チオゾリジンジオン、GLP-1類似体、ビグアニド、又はNSAIDである。
【0093】
一部の実施形態では、医薬品パッケージ又はキットは、NASHの治療に使用することを目的とする。一部の実施形態では、医薬品パッケージ又はキットは、NAFLDを有する対象においてNAFLDからNASHへの進行の遅延又は予防に使用することを目的とする。一部の実施形態では、医薬品パッケージ又はキットは、本明細書に開示する方法に従う使用についての指示資料をさらに含む。指示資料は、典型的に、文書又は印刷物を含むが、それに限定されない。こうした指示内容を保存し、且つ、それらとエンドユーザを連絡させることができるあらゆる媒体が本発明により考慮される。そうした媒体として、限定されないが、電子記憶媒体(例えば、磁気ディスク、テープ、カートリッジ、チップ)、光学媒体(例えば、CD-ROM)などが挙げられる。こうした媒体は、指示資料を提供するインターネットサイトへのアドレスを含んでもよい。
【0094】
V.NASHの治療のための併用療法
別の態様では、ウベニメクスは、1又は複数種の追加治療薬と組み合わせて投与する。一部の実施形態では、NASH(及び/又はNAFLD)を治療する方法は、本開示に従って、さらに併用療法を含んでもよく、併用療法では、治療が必要な患者に、NASH(今日、存在しないが、そのような薬剤は、もしあれば、後に承認されることになる臨床試験中の薬剤を含む)、及び/又はNASHに関連する状態、又はそれらの組合せの治療のために承認される1若しくは複数種の薬剤と組み合わせて、ウベニメクスを投与する。NASHの治療のための併用療法は、さらに1又は複数のライフスタイルの変化と組み合わせてウベニメクスの投与を含んでもよく、そうした変化として、例えば、体重を減らすための運動並びに/又は身体及び/若しくは精神的健康を改善するための活動がある。
【0095】
一部の実施形態では、以下:ファルネソイドX受容体(FXR)アゴニスト(限定されないが、オベチコール酸;EDP-305、Enanta Pharmaceuticals;及びGS-9674、Gilead Sciencesなど);ペルオキシソーム増殖因子活性化受容体(PPAR)アゴニスト、例えば、PPAR-αアゴニスト、PPAR-β/Δアゴニスト、及び/若しくはPPAR-γアゴニスト(限定されないが、エラフィブラノールなど);アラムコール;カスパーゼ阻害剤(限定されないが、エムリカサンなど);ガレクチン3阻害剤(限定されないが、GR-MD-02、ガレクチン治療薬(Galectin Therapeutics)など);MAPKS阻害剤(限定されないが、GS-4997、Gilead Sciencesなど);FGF19アゴニスト(限定されないが、NGM282、NGM Bioなど);FGF21アゴニスト(限定されないが、BMS-986036、Bristol-Myers Squibbなど);LTD4受容体アンタゴニスト(限定されないが、チペルカストなど);ニアシン類似体(限定されないが、ARI 3037MO、Arisaph Pharmaceuticalsなど);ASBT阻害剤(限定されないが、ボリキシバトなど);アポトーシスシグナル調節キナーゼ1(ASK1)阻害剤;ケモカイン受容体阻害剤(例えば、CCR2及び/又はCCR5阻害剤、限定されないが、セニクリビロックなど);チオゾリジンジオン(限定されないが、ロシグリタゾン及びピオグリタゾンなど);GLP-1類似体(限定されないが、セマグルチド、リラグルチドなど);ビグアニド(例えば、メトホルミン);非ステロイド性抗炎症薬(「NSAID」)(例えば、アセクロフェナク、アセメタシン、アスピリン、セレソキシブ、デキシブプロフェン、デキスケトプロフェン、ジクロフェナク、エトドラク、エトリコキシブ、フェノプロフェン、フルルビプロフェン、イブプロフェン、インドメタシン、ケトプロフェン、メフェナム酸、メロキシカム、ナブメトン、ナプロキセン、スリンダク、テノキシカム、及びチアプロフェン酸);抗糖尿病薬(例えば、ビグアニド、スルホニルウレア、メグリチニド、チアゾリジンジオン、チアゾリジンジオン、ピオグリタゾン、ジペプリジルペプチダーゼIV阻害剤、及びa-グルコシダーゼ阻害剤);脂質低下薬(例えば、アトルバスタチン、ロスバスタチン、フルバスタチン、ロバスタチン、シムバスタチン、プラバスタチン、ピタバスタチン、ニアシン、フェノフィブラート、フェノフィブリン酸、ゲムフィブロジル、及びオメガ-3-高度飽和脂肪酸)、アンジオテンシン変換酵素(ACE)阻害剤(例えば、カプトプリル、エナラプリル、リシノプリル、ベナゼプリル、フォシノプリル、キナプリル、及びラミプリル);アンジオテンシンII受容体遮断薬(「ARB」)(例えば、リベサルタン、ロサルタン、オルメサルタン、バルサルタン、及びテルミサルタン)、抗血管新生薬(例えば、ソラフェニブ);ビタミンE;抗血小板薬(例えば、アスピリン);抗肥満若しくは食欲抑制剤(例えば、フェンテルミン、オルリスタト、ロルカセイン、フェンジメトラジン、メタムフェタミン、ベンズファタミン、ジエチルプロピオン、シブトラミン、トピラマート、及びブプロピオン);心身症薬(例えば、抗うつ薬、及び抗精神病薬)、アセチル-CoAカルボキシラーゼ阻害剤(限定されないが、GS-0976、Gileadなど);PDE-5阻害剤;又はデアセチラーゼサーチュイン刺激因子の1つ若しくは複数と組み合わせてウベニメクスを投与する。一部の実施形態では、ウベニメクスは、化学療法薬と組み合わせて投与しない。
【0096】
一実施形態では、本開示は、ACE阻害剤と組み合わせてウベニメクスを投与する、併用療法を含む。一実施形態では、テルミサルタンと組み合わせてウベニメクスを投与する。一実施形態では、1又は複数種のCCR2/CCR5阻害剤と組み合わせてウベニメクスを投与する。一実施形態では、セニクリビロックと組み合わせてウベニメクスを投与する。一実施形態では、チアゾリジンジオン、例えば、ロシグリタゾン又はピオグリタゾンと組み合わせてウベニメクスを投与する。一実施形態では、メトホルミンと組み合わせてウベニメクスを投与する。一実施形態では、FXRアゴニスト、限定されないが、胆汁性胆管炎について承認されているOcaliva(オベチコール酸)などと組み合わせてウベニメクスを投与する。一実施形態では、PPARα/Δアゴニスト、限定されないが、現在臨床試験中のエラフィブラノル(Elafibranor)などと組み合わせてウベニメクスを投与する。一実施形態では、Musso et al.,Nature Reviews Drug Discovery,2016,15:249-274に開示される化合物と組み合わせてウベニメクスを投与する。
【0097】
一部の実施形態では、テルミサルタン又はロサルタンと組み合わせてウベニメクスを投与する。一部の実施形態では、ウベニメクスは、約10mg~約450mgの用量で投与し、テルミサルタンは、約20mg~80mgの用量(例えば、QD又はBID)で投与する。
【0098】
一部の実施形態では、オベチコール酸(OCA)と組み合わせてウベニメクスを投与する。一部の実施形態では、ウベニメクスは、約10mg~約450mgの用量で投与し、OCAは、10、25、又は40mgの用量(例えば、QD又はBID)で投与する。
【0099】
一部の実施形態では、ボリキシバトと組み合わせてウベニメクスを投与する。一部の実施形態では、ウベニメクスは、約10mg~約450mgの用量で投与し、ボリキシバトは、約5mg~20mgの用量(例えば、QD又はBID)で投与する。
【0100】
一部の実施形態では、アラムコールと組み合わせてウベニメクスを投与する。一部の実施形態では、ウベニメクスは、約10mg~約450mgの用量で投与し、アラムコールは、約100mg~300mgの用量(例えば、QD又はBID)で投与する。
【0101】
一部の実施形態では、エラフィブラノールと組み合わせてウベニメクスを投与する。一部の実施形態では、ウベニメクスは、約10mg~約450mgの用量で投与し、エラフィブラノールは、約120mgの用量(例えば、QD又はBID)で投与する。
【0102】
併用療法、すなわち、ウベニメクスと第2治療薬の有益な効果は、限定されないが、治療薬の組合せから生じる薬物動態又は薬力学的相互作用を含み得る。こうした療法は、限定されないが、NASHスコア(例えば、NAFLD活動性スコアにより測定される)の改善、線維症スコアの低下、及び血清アラニンアミノトランスフェラーゼ(ALT)レベルの低下;脂肪組織中のインスリン感受性の改善(限定されないが、PPARγの活性化によるものなど);NASHの生化学的及び組織学的改善;インスリン抵抗性の改善(低下);並びに脂肪症、炎症、及び線維症の改善などのパラメータの改善をもたらすことができる。
【0103】
組み合わせた治療薬の投与は、典型的に、規定された期間(例えば、選択した組合せに応じて、数日、数週間、又は数ヶ月)にわたって実施する。併用療法は、各治療薬が、異なる時点で投与される、連続様式での少なくとも2種の異なる治療薬の投与、並びに実質的に同時に行う少なくとも2種の治療薬の投与を含む。実質的に同時の投与は、例えば、各治療薬を固定比で含む単一カプセル、又は治療薬各々を個別のカプセルで対象に投与することによって達成することができる。一部の実施形態では、ウベニメクスと第2治療薬を個別に製剤化する。一部の実施形態では、ウベニメクスと第2治療薬を単一組成物に製剤化する。
【0104】
各治療薬の連続投与又は実質的に同時投与は、限定されないが、経口経路、静脈内経路、筋肉内経路、及び粘膜組織を介した直接吸収によって実施することができる。2種の異なる治療薬は、同じ経路、又は異なる経路により投与することができる。例えば、選択した組合せの第1治療薬を静脈内注射により投与し、組合せの第2治療薬は経口投与してもよい。あるいは、例えば、全ての治療薬を経口投与してもよいし、又は全ての治療薬を静脈内注射により投与してもよい。
【0105】
本明細書に開示する併用療法の場合、各々の薬剤を「即放」様式又は「制御放出」若しくは「遅延放出」様式で投与することができる。追加薬剤が抗炎症薬であるとき、例えば、両方の活性剤、すなわち、ウベニメクスと抗炎症薬の両方を含有する任意の剤形は、抗炎症薬の即放又は制御放出、並びにウベニメクスの即放又は制御放出を達成し得る。
【0106】
非限定的な例として、1日1回投与の併用剤形は、制御放出(例えば、徐放若しくは持続放出)又は即放性形態の約5mg~約450mgのウベニメクスと、即放性形態又は制御放出形態の二次薬剤を含有してもよく、その際、追加活性剤は、ウベニメクスと二次薬剤の特定の重量比をもたらす量で存在する。他の製剤では、2種以上の二次薬剤は、同じクラスの薬剤(例えば、抗炎症薬)であっても、又はそうでなくてもよく、これらは、ウベニメクスと一緒に組み合わせて存在してよい。こうしたケースでは、個別の二次薬剤のいずれか、又は各二次薬剤の有効量は、一般に、単一の追加薬剤のみが使用される場合に必要とされる量より低くなる。
【0107】
併用療法はまた、他の生物活性成分及び非薬剤療法(例えば、手術又は理学療法)とさらに組み合わせた、前述の異なる治療薬の投与も含む。併用療法が、非薬剤治療を含む場合、非薬剤治療は、治療薬と非薬剤治療の組合せの相互作用からの有益な効果が達成される限り、任意の好適な時点で実施してよい。例えば、適切なケースでは、治療薬の投与から非薬剤治療を一時的に、恐らく数日又は数週間除去しても、有益な効果が依然として達成される。
【実施例
【0108】
特許請求する発明を説明するために、以下の実施例を提供するが、本発明を限定することは意図しない。
【0109】
実施例1:動物モデルにおけるウベニメクスの抗NASH効果
STAM(商標)マウスは、約8週間でNASHを発現するC57BL/6マウスへの化学及び食餌介入の組合せにより作出されたNASHのモデルであり、NASHは、約12週間で線維症に進行した後、約16週間でHCCに進行する。Saito et al.,Sci.Rep.2015,5:12466を参照。NASHの治療におけるウベニメクスの効果を実証するために、このモデルを本試験で使用した。
【0110】
この試験では、対照群は以下の通りであった:(i)非処置の疾患対照-2日齢でストレプトゾトシン(STZ,Sigma-Aldrich,USA)を注射し、4週齢で開始した高脂肪飼料(HFD、57kcal%脂肪、Cat♯HFD32、CLEA Japan、日本)を給餌したSTAMマウスの1群;及び(ii)陽性対照-テルミサルタン(7~9週間10mg/kgQD)で処置したSTAMマウスの1群。これらの対照マウス以外に、低用量のウベニメクス(7~9週間5mg/kgのウベニメクスBID)又は高用量のウベニメクス(7~9週間25mg/kgBID)で処置したSTAMマウスの試験群をこの試験に加えた。低用量は、30mgBIDのヒト用量に相当する。高用量は、150mgBIDのヒト用量に相当する。体重、毒性の徴候、瀕死状態及び死亡率を含め、生存率、臨床徴候及び挙動を毎日モニターした。マウスは、温度(23±2℃)、湿度(45±10%)、照明(12時間の人工の明暗サイクル;8:00から20:00まで明)及び換気の制御条件下で、SPF施設内に維持した。施設の汚染を防ぐために実験室内で高圧を維持した。マウスは、ケージ当たり最大4匹で、TPXケージ(CLEA Japan)内に収容した。
【0111】
全ての群のマウスを9週間で犠牲にした。一旦犠牲にしたら、各マウスの体重を記録した。各マウスの肝臓を摘出し、計量した。各々のマウスについて肝臓-体重比を決定した。各々のマウスについてCK-18、ALT、及び肝臓トリグリセリドの血清レベルを決定した。次に、肝臓を切断し、ヘマトキシリン及びエオシン(「HE」)色素、並びにシリウス(Sirius)レッド染色で染色して、それぞれ脂肪症(風船様腫大)及び線維症を決定した。
【0112】
以下の表1は、身体及び肝臓重量試験の結果を示し、これらは、概してウベニメクス処置が安全であることを示した。一般に、テルミサルタン群は、対照群と比較して、犠牲にした日の平均体重に有意な減少を示した。低用量及び高用量群は、対照群と比較して、犠牲日の平均体重を低減する傾向があった。高用量、低用量、及びテルミサルタン群は、対照群と比較して、平均肝臓重量に有意な減少を示した。高用量及びテルミサルタン群は、対照群と比較して、平均肝臓-体重比を低減する傾向があった。対照群と低用量群の間で平均肝臓-体重比に有意な差はなかった。
【表1】
【0113】
以下の表2から、高用量及び低用量ウベニメクス群と陽性対照テルミサルタン群全てが、対照群と比較して、NAFLD活動性スコア(NAS)に有意な低減を示したことがわかる。
【表2】
【0114】
表2に示すように、ウベニメクス療法は、陰性対照群と比較して、NASの有意な軽減を示した。NASは、NASHの活性を評価するための臨床エンドポイントの1つであり(Sanyal et al.,Hepatology,2011,54:344)、従って臨床解釈において重要な臨床前エンドポイントである。ウベニメクスによるNASの改善は、この時点で、対照群と比較して有意に低減した肝細胞風船様腫大の変化によるものであった。Rangwalaは、肝細胞風船様腫大とNASH関連線維症との密接な関連を報告した(Rangwala et al.,J.Pathol,2011,224:401)が、これは、継続的処置が、線維症にプラスの影響をもたらすに違いないことを示している。これと一致して、ウベニメクスによる処置は、低用量(例えば、5mg/kgBID)群において、シリウスレッド染色により示されるように、肝臓中の病因性コラーゲン沈着を低減する傾向があることが観察された。従って、高用量及び低用量ウベニメクス群における肝細胞風船様腫大の軽減は、プラスの治療影響だけではなく、この治療の抗線維症効果を増大する上での継続療法に対する強い支持も示している。
【0115】
下の表3に示すように、試験群に血漿ALT又は肝トリグリセリドレベルに対する有意な効果は見られなかったが、テルミサルタン陽性対照群は、疾患(陰性)対照群に対して、両方のレベル低下の傾向を表した。ウベニメクスの継続的投与は、これらのレベルを低下させると考えられる。
【表3】
【0116】
表4に示すように、疾患対照群からの肝臓切片は、肝小葉の中心周囲領域に増大したコラーゲン沈着を示した。テルミサルタン群は、対照群と比較して、線維症面積(シリウスレッド陽性面積)の有意な減少を示した。低用量群は、疾患対照群と比較して、線維症面積を減少する傾向を示したが、これは、高用量には認められなかった(対照群と高用量群の間に線維症面積の有意な差はなかった)。NASHのみに対するウベニメクスの効果を評価するために設計されたこの概念実証試験では、9週齢で動物を犠牲にしたが、この動物モデルでは肝線維症の十分な発症は、典型的に12週齢で起こる。線維症を十分に発症させることができる動物をより長期に処置すれば、いずれの処置用量群においても、より大きな治療効果をもたらしたであろうと考えられる。
【表4】
【0117】
血漿CK-18(mlU/mLの単位で)を測定したところ、低用量及び高用量ウベニメクス群(それぞれ、238.5±7.7及び230.8±28.6)で有意に低く、また、対照群とテルミサルタン群(それぞれ、292.3±28.5及び284.5±38.4)の間で比較的不変であることが判明した。これらの結果は、ウベニメクスが、テルミサルタンとは異なり、潜在的により強力な治療利益を有することを納得のいくように実証するものである。
【0118】
血漿LTB4レベルを測定したが、ウベニメクス低用量及びテルミサルタン群が、対照に対して血漿LTB4を増加するいくらかの傾向を示したが、測定された対照及びウベニメクス高用量のレベルは、統計的に差がなく、対照群以外の全てに有意なばらつきがあった点で有意義とは考えられなかった。
【0119】
これらの結果は、NASH動物モデル及びヒト臨床試験におけるウベニメクスの一連の試験を支持するものである。
【0120】
実施例2:ウベニメクスヒト臨床試験
NASHに罹患したヒト対象の2つ以上の群の各々に、ウベニメクスを含む30mgの薬学的有効量を投与するが、1群はQD投与(すなわち、総1日用量30mg)を受け、他の群はBID(すなわち、総1日用量60mg)を受ける。NASHに罹患したヒト対照群にはプラセボを投与する。試験は約6ヶ月にわたって実施し、その間、参加者は、NAFLD活動性スコア、脂肪症スコア、炎症スコア、及び風船様腫大スコアの少なくとも1つの改善についてモニターされる。処置は、前記スコアの1つ又は複数を改善することが予想される。
【0121】
実施例3:線維症を有するNASHのSTAMモデルにおけるウベニメクスのin vivo効果試験
この試験では、複数の投与レジメンで、NASH線維症のSTAMモデルにおけるウベニメクスの効果を調べた。
【0122】
材料及び方法
生後2日で200μgのストレプトゾトシン(STZ,Sigma-Aldrich,USA)溶液の単回皮下注射を実施し、4週齢後に高脂肪飼料(HFD、57kcal%脂肪、Cat♯HFD32、CLEA Japan Inc.、日本)を給餌することによって40匹の雄マウスにNASHを誘導した。
【0123】
ウベニメクス又はテルミサルタンを10mL/kgの量で経口投与した。ウベニメクスは、5mg/kgの用量で1日1回又は1日2回投与した。テルミサルタンは、5mg/kgの用量で1日1回投与した。
【0124】
C57Bl/6マウス(妊娠14日の雌)をJapan SLC,Inc.(日本)から取得した。試験で使用する動物は全て、動物使用に関する日本薬学協会ガイドライン(Japanese Pharmacological Society Guidelines for Animal Use)に従って収容及び維持した。温度(23±2℃)、湿度(45±10%)、照明(12時間の人工の明暗サイクル;8:00から20:00まで明)及び換気の制御条件下で、SPF施設内に動物を維持した。施設の汚染を防ぐために実験室内で高圧を維持した。マウスは、ケージ当たり最大4匹で、TPXケージ(CLEA Japan)内に収容した。滅菌した固体HFD及び純水を自由摂取させた。
【0125】
血漿生化学の測定:血漿生化学のために、抗凝結剤(Novo-Heparin,Mochida Pharmaceutical Co. Ltd.、日本)を含むポリプロピレンチューブ内に血液を収集し、4℃、1,000gで15分間遠心分離した。上清を収集し、使用まで-80℃で保存した。FUJI DRI-CHEM 7000(富士フィルム、日本)により血漿ALTレベルを測定した。
【0126】
肝臓トリグリセリド含量の測定:Folch法(Folch et al.,J.Biol Chem,1957,226:497)により肝臓全脂質抽出物を取得した。肝臓サンプルをクロロホルム-メタノール(2:1v/v)中で均質化し、室温で一晩インキュベートした。クロロホルム-メタノール-水(8:4:3v/v/v)で洗浄した後、抽出物を乾燥まで蒸発させて、イソプロパノールに溶解させた。肝臓トリグリセリド含量をトリグリセリドEテスト(Wako Pure Chemical Industries,Ltd.、日本)により測定した。
【0127】
組織学的分析:HE染色のために、ブアン(Bouin)液中で予め固定した肝臓組織のパラフィンブロックから切片を切断して、リリー・マイヤー(Lillie-Mayer)ヘマトキシリン(Muto Pure Chemicals Co.,Ltd.、日本)及びエオシン溶液(Wako Pure Chemical Industries,Ltd.、日本)で染色した。クライナー(Kleiner)の基準(Kleiner et al.,Hepatology,2005,41:1313)に従ってNAFLD活動性スコア(NAS)を計算した。コラーゲン沈着を視覚化するために、ブアン(Bouin)固定肝臓切片をピクロ-シリウスレッド液(Waldeck,Germany)を用いて染色した。線維症面積の定量分析のために、倍率200倍のデジタルカメラ(DFC295;Leica,Germany)を用いて、シリウスレッド染色切片の明視野像を中心静脈周辺で取得した後、ImageJソフトウェア(National Institutes of Health,USA)を用いて、5フィールド/セクションの陽性面積を測定した。
【0128】
統計的検定:Bonferroni Multiple Comparison Test on GraphPad Prism 6(GraphPad Software Inc.,USA)を用いて、統計解析を実施した。P値<0.05は、統計的に有意であるとみなされる。片側t検定が、P値<0.1に回復したら、トレンド又は傾向が想定された。結果を平均±SDとして表した。
【0129】
実験設計及び治療
試験群:以下の試験群を使用した。群1(ビヒクル):8匹のNASHマウスに、10mL/kgの量でビヒクル(RO水)を6~11週齢まで1日2回経口投与した。群2(ウベニメクスQD、5週間):8匹のNASHマウスに、5mg/kgの用量でウベニメクスを添加したビヒクルを6~11週齢まで1日1回経口投与した。群3(ウベニメクスBID、5週間):8匹のNASHマウスに、5mg/kgの用量でウベニメクスを添加したビヒクルを6~11週齢まで1日2回経口投与した。群4(ウベニメクスBID、2週間):8匹のNASHマウスに、5mg/kgの用量でウベニメクスを添加したビヒクルを9~11週齢まで1日2回経口投与した。群5(テルミサルタン、5週間):8匹のNASHマウスに、5mg/kgの用量でテルミサルタンを添加した純水を6~11週齢まで1日1回経口投与した。
【0130】
動物のモニタリング及び犠牲:生存、臨床徴候、及び挙動を毎日モニターした。処置前に体重を記録した。マウスは、毎回投与から約60分後に毒性、瀕死状態及び死亡の有意な臨床徴候について観察した。イソフルラン麻酔で、直接心臓穿刺による放血により動物を犠牲にした。
【0131】
結果
犠牲日の平均体重、平均肝臓重量、及び平均肝臓-体重比を全5群について以下の表5に示す。犠牲日の平均体重は、ビヒクル群と比較して、ウベニメクスBID5週間群及びテルミサルタン陽性対照群で有意に低かった。犠牲日の平均体重は、ビヒクル群と比較して、ウベニメクスQD群で減少する傾向があった。ビヒクル群とウベニメクスBID2週間群の間で犠牲日の平均体重に有意な差はなかった。肝臓重量については、テルミサルタン群が、ビヒクル群と比較して平均肝臓重量に有意な減少を示した。平均肝臓重量は、ビヒクル群と比較して、ウベニメクスQD及びウベニメクスBID5週間群で減少する傾向があった。ビヒクル群とウベニメクスBID2週間群の間で、平均肝臓重量に有意な差はなかった。テルミサルタン群は、ビヒクル群と比較して、平均肝臓-体重比に有意な減少を示した。ビヒクル群とウベニメクス処置群の間で、平均肝臓-体重比に有意な差はなかった。
【表5】
【0132】
以下の表6に示すように、血漿ALTレベルは、ビヒクル群と比較して、テルミサルタン群で低下する傾向があったが、この差は統計的に有意ではなかった。ビヒクル群とウベニメクス処置群の間で、血漿ALTレベルに有意な差はなかった。
【0133】
肝臓トリグリセリド含量は、ビヒクル群と比較して、テルミサルタン群で減少する傾向があった(表6)が、この差は統計的に有意ではなかった。ビヒクル群とウベニメクス処置群の間で、肝臓トリグリセリド含量に有意な差はなかった。
【表6】
【0134】
図1A及び表7は、NAFLD活動性スコア(NAS)が、対照群と比較して、ウベニメクス処置群及び陽性対照テルミサルタン群で低下する傾向があったことを示す。NAFLD活動性スコアは、脂肪症スコア、炎症スコア、及び肝細胞風船様腫大スコアの組合せから決定する。図1B~D及び表7に示すように、脂肪症スコア又は炎症スコアに関してビヒクル群とウベニメクス療法又はテルミサルタン群の間に有意な差は観察されなかったが、肝細胞風船様腫大は、ビヒクル群と比較して、ウベニメクス処置群及び陽性対照テルミサルタン群で減少する傾向があった。スチューデントのt検定を用いて、ウベニメクスBIDで5週間処置した群と対照群との間に肝細胞風船様腫大スコアの有意な減少が観察された(p=0.0493)。上述の実施例1で述べたように、Rangwalaは、肝細胞風船様腫大とNASH関連線維症の密接な関係を報告したが、これは、継続的な処置が、線維症に対してプラスの影響をもたらすに違いないことを示している。この仮定と一致して、5週間のQDウベニメクスによる処置は、シリウスレッド染色によって明らかにされるように、線維症面積を減少する傾向があることが認められた(以下の表8を参照)。ウベニメクス処置群における肝細胞風船様腫大の軽減は、NASHの治療でのウベニメクスによるプラスの治療効果を示すものである。
【表7】
【0135】
ビヒクル対照群からの肝臓切片は、肝小葉の中央周囲領域にコラーゲン沈着増加を示した。以下の表8からわかるように、テルミサルタン陽性群は、ビヒクル群と比較して、線維症面積(シリウスレッド陽性面積)の有意な減少を示した。線維症面積は、ビヒクル群と比較して、ウベニメクスQD群で減少する傾向があった。
【表8】
【0136】
要約すると、より長期間(5週間)にわたる1日1回のウベニメクスによる処置は、図1A及び表7及び8のデータに示されるように、NASスコア及び線維症に減少傾向を示した。より短期間(2週間)にわたる1日2回のウベニメクスによる処置は、図1A及び表7のデータに示されるように、NASスコアに減少傾向を示した。図1D及び表7に示されるように、NASスコアの改善は、肝細胞風船様腫大スコアの軽減によって特徴付けられる。
【0137】
本開示をその好ましい実施形態を参照にしながら具体的に示し、説明してきたが、当業者であれば、添付の特許請求の範囲に含まれる本開示の範囲を逸脱することなく、形態及び詳細に様々な変更を実施し得ることは理解されよう。
【0138】
本明細書に引用するあらゆる刊行物、特許、特許出願、又はその他の文献は、各刊行物、特許、特許出願、又はその他の文献が、あらゆる目的のために参照により本明細書に組み込まれると個別に示されているのと同じ範囲まで、あらゆる目的のためにその全体が参照により本明細書に組み込まれる。
図1-1】
図1-2】