(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-02-08
(45)【発行日】2022-02-17
(54)【発明の名称】匂いの再現のための方法および試験キット
(51)【国際特許分類】
C11B 9/02 20060101AFI20220209BHJP
B01D 11/04 20060101ALI20220209BHJP
【FI】
C11B9/02
B01D11/04 C
(21)【出願番号】P 2019542169
(86)(22)【出願日】2017-02-03
(86)【国際出願番号】 EP2017052397
(87)【国際公開番号】W WO2018141402
(87)【国際公開日】2018-08-09
【審査請求日】2019-12-12
(73)【特許権者】
【識別番号】511008850
【氏名又は名称】シムライズ アーゲー
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100104592
【氏名又は名称】森住 憲一
(72)【発明者】
【氏名】エディソン・ディアス
(72)【発明者】
【氏名】ダニエル・コーアス
(72)【発明者】
【氏名】カタリーナ・ミヒェルス
(72)【発明者】
【氏名】ゼバスティアン・ブッフ
【審査官】小久保 敦規
(56)【参考文献】
【文献】特表2006-505663(JP,A)
【文献】特表2009-504816(JP,A)
【文献】米国特許第09296979(US,B1)
【文献】米国特許出願公開第2014/0323787(US,A1)
【文献】中国特許出願公開第105368573(CN,A)
【文献】特開昭62-071501(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C11B 1/00- 15/00
C11C 1/00- 5/02
B01D 11/00- 12/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)天然出発原料のサンプルを
内壁と外壁とからなる二重壁である耐圧サンプルコンテナ内に用意する工程;
(b)サンプルを好ましくはプロパンおよび/またはブタンガスの液化石油ガスと接触させる工程;
(c)工程(b)で用意した天然出発原料からフレグランスを抽出する工程;
(d)液化石油ガスを蒸発させ、フレグランスを残留物としてコンテナ内に保持しながら、耐圧サンプルコンテナを排気する工程;および、場合により
(e)フレグランスを適切な溶媒に溶解する工程
からなる、天然出発原料からのフレグランスの抽出方法。
【請求項2】
前記工程(b)は
、5℃
~70℃の温度および/また
は0.5バール
~10バールの圧力で行われる、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記天然出発原料は、植物全体、葉、花、茎、種子、樹皮、木、樹脂、花弁、雄しべ、花粉、果実、根または植物苗、果実または花の部分からなる群から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記天然出発原料を、抽出(工程c)前に小袋中に入れる、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記溶媒は、それぞれ1~5個の炭素原子を有するアルコール、エステル、ケトン、または5~8個の炭素原子を有するアルカンである、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記溶媒は、メタノールおよび/またはエタノールである、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記工程(c)から得られた抽出物は、フレグランスの混合物を含むか、またはフレグランスの混合物からなる、請求項5に記載の方法。
【請求項8】
匂い試験のためのミクロ抽出法を表す、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記天然出発原料の前記サンプルは、50gの最大重量を有する、請求項1に記載の方
法。
【請求項10】
(i)交換可能なバルブを有
し、内壁と外壁とからなる二重壁である耐圧サンプルコンテナ;
(ii)プロパンおよび/またはブタンガスの液化石油ガスを含み、取出口装置を備え高圧容器またはコンテナ;
(iii)(i)と(ii)を接続するための連結器;
(iv)サンプル原料の取入に適した小袋、および場合により
(v)抽出された化合物を吸収するのに適した貯蔵コンテナ
を含むか、またはそれらからなる、天然出発原料からのフレグランスのミクロ抽出のためのキット。
【請求項11】
前記内壁はガラス製であり、前記外壁は合成熱可塑性材料製である、請求項
10に記載のキット。
【請求項12】
前記内壁はホウケイ酸ガラス製である、請求項
10に記載のキット。
【請求項13】
前記内壁の底面は、フレグランス抽出物を容易に除去するために丸みを帯びている、請求項
10に記載のキット。
【請求項14】
前記外壁はポリプロピレングリコール製である、請求項
10に記載のキット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、天然出発原料からフレグランスを抽出するための方法および試験キットに関する。提供された抽出物は、元の生成物の香りまたは香味の真の表現であるような方法で植物または果物の香りを捉えており、したがって匂いの再現に適している。
【背景技術】
【0002】
香料およびフレーバー製造の分野では、新規または改良されたフレグランスおよびアロマがそれぞれ常に必要とされており、最も多様な要求を満たさなければならない。フレグランスおよびアロマそれぞれの知覚と、香りおよび香味物質の化学構造との間の関係は、十分に知られていないという事実のために、適切なフレグランスおよびアロマの探索は特に困難になっている。さらに、既知の香りおよび香味物質の構造組成におけるわずかな変化が、しばしばそれぞれの嗅覚および香味特性の強い変化を生み出せることが見出された。複数の香りおよび香味物質の混合物からなる、一般的に使用されているフレグランスおよびアロマ組成物における関係はよりさらに複雑である。
【0003】
すでに存在するフレグランスおよび香味物質が多数にもかかわらず、変化するファッショントレンドへの必要な適応、および単独または組成物の形での新しいフレグランスに対する絶え間なく増大する要求は、価値のある香料物質または興味深い香調を有する香料であり、香料業界においては、香水において新規な効果を達成することができ、それによって新規なファッショントレンドを創出することができる新規なフレグランスおよびフレーバーに対する、進行中の絶え間ないかつ一般的な需要が依然として存在している。
【0004】
抽出溶媒として超臨界二酸化炭素を使用する抽出は当該技術分野においてよく知られている。精油、フレグランスおよび他の薬草留出物を製造するための超臨界二酸化炭素を使用する抽出も既に既知である。二酸化炭素は主に抽出溶媒として使用されるが、これはヘキサンおよびアセトンなどの典型的に使用される溶媒とは対照的に、非毒性であり不燃性だからである。超臨界CO2を用いた抽出の他の利点は、例えば、水蒸気蒸留で失われる傾向がある揮発性成分のほとんどは、超臨界抽出物中に存在する;さらに、二酸化炭素は、抽出後に抽出した出発原料からの蒸発または低温回収容器などへの凝縮による再利用によって、容易に分離することができる等であり、例えば欧州特許第0711508号(SKW TROSTBERG)は、溶媒として例えばブタンまたはプロパンを使用する予備抽出とそれに続く超臨界二酸化炭素を使用する主抽出を要する、天然資源からフレグランスを製造するための工業的方法を教示する。
【0005】
しかしながら、超臨界二酸化炭素を使った抽出は、通常、CO2を再利用する手続型の循環法である。特に圧力は非常に高く、したがって極めて高耐圧の装置を必要とする。さらに、それは大きな機器であり、小さなモバイルキットには収まらない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
したがって、本発明の目的は、匂いを再現するための簡単な方法を提供することである。特に、本発明の目的は、超臨界条件における流体を用いる手続型の循環抽出法の欠点を示さず、穏やかな条件、速い抽出などのガス抽出の利点を有する、抽出方法を開発することである。さらに、取扱いが容易で、どこへでも持っていくことができ、および抽出される広範囲の原料に使用することができ、同時に元の生成物の香りまたは香味の真の表現であるような方法で植物または果物の香りを捉える抽出試料をもたらす、簡単な解決法を提供することが重要な目的であった。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の目的は、
(a)天然出発原料のサンプルを耐圧サンプルコンテナ内に用意する工程;
(b)サンプルを好ましくはプロパンおよび/またはブタンガスの液化石油ガスと接触させる工程;
(c)工程(b)で用意した天然出発原料からフレグランスを抽出する工程;
(d)液化石油ガスを蒸発させ、フレグランスを残留物としてコンテナ内に保持しながら、耐圧サンプルコンテナを排気する工程:および、場合により
(e)フレグランスを適切な溶媒に溶解する工程
からなる、天然出発原料からのフレグランスの抽出方法に関する。
【0009】
先行技術の教示にもかかわらず、驚くべきことに、匂いの再現のためには、例えばn-ブタンのような単純な抽出溶媒を用いた一段階抽出による天然物質の抽出を実施することが極めて十分であることが見出された。工業レベルで天然資源からフレグランスを製造するために必要であると考えられる超臨界二酸化炭素の使用は、不要であることが見出された。従って、本発明による方法は、匂いの印象の完全性に関して、最小限の技術的装置および最大限の信頼性で、短時間で様々な供給源から少量のフレグランスサンプルを得るための簡単な代替法を提供するための条件と完全に一致する。
【発明を実施するための形態】
【0010】
<抽出方法>
本発明の意味において液化石油ガスは、ここでは抽出溶媒として使用され、好ましくは室温(20℃~25℃)、約1.5バールの圧力で液化されるプロパンおよび/またはブタンを指す。最も好ましいのはn-ブタンである。
【0011】
本発明による方法の好ましい態様において、天然出発原料は植物全体、葉、花、茎、種子、樹皮、木、樹脂、花弁、雄しべ、花粉、果実、根、または植物苗、果実または花の部分からなる。前記植物原料は、収穫後および抽出前に処理してよい。前記植物原料は、粉砕、摩砕、すりつぶし、細断、または原料を抽出に適合させるためにいかなる方法で処理してよく、またはそのまま使用することができる。
【0012】
本発明による方法のさらに好ましい態様では、天然サンプル原料は抽出前に小袋に入れられる。好ましくは、天然出発原料用の前記小袋は、抽出溶媒の浸透を可能にする透過性材料からなり、それにより天然出発原料サンプルを抽出溶媒で十分に湿潤させることができる。前記透過性原料は抽出溶媒に対して不活性であり、好ましくはセルロース(天然材料との類似性および香味および香りに関する良好な特性のため)または綿、ガラス繊維または抽出溶媒が浸透可能な任意の不活性ポリマー材料から作られる。
【0013】
抽出物からの液化石油ガスの分離は、好ましくは耐圧サンプルコンテナからの単純な膨張圧により、その結果ブタンおよび/またはプロパンはコンテナから空気中に蒸発することができ、フレグランス化合物を残留物としてコンテナ内に保持することができる(抽出物)。有利には、n-ブタンおよびプロパンを除去することは、安全面においても蒸発によって容易に行われ、例えば、プロパンの引火点は約470℃であり、n-ブタンは約365℃であるので、引火の危険性はない。
【0014】
本発明による方法の好ましい態様では、フレグランスを吸収するための溶媒は、1~5個の炭素原子を有する短鎖アルコール、好ましくはメタノールまたはエタノールである。最も好ましいのはエタノールである。有利には、本発明の抽出方法によって得られる前記フレグランスは、溶媒との反応または分解による(匂いの)品質の損失なく、前記溶媒に最もよく吸収される(下記のコメントを参照)。
【0015】
本発明による方法の好ましい態様では、得られた抽出物は、フレグランス(および溶媒)の混合物を含むか、またはフレグランスの混合物からなり、好ましくは植物出発原料の官能的特性を反映し、特に元の生成物の香りまたは香味の真の表現であるような方法で、抽出された植物または果物の香りをとらえる。
【0016】
本発明による方法の好ましい態様では、この方法は匂い試験のためのミクロ抽出方法である。
【0017】
ミクロ抽出という用語は、大規模ではなく、かつ手続型循環法ではない抽出法を指す。特に、ミクロ抽出という用語は、抽出される原料の量が多くなく、得られる抽出物がごくわずかであるため、前記抽出方法はどこへでも持ち運び可能であるという事実を反映するべきであり、したがって、好ましくはどこででも実施可能な小規模の手順である。
【0018】
本発明による方法の好ましい態様において、天然出発原料のサンプル、好ましくは上記のような植物原料は、50g、好ましくは約1~30g、より好ましくは約1~20g、最も好ましくは約1~10gの最大重量を有する。
【0019】
上で説明したように、本発明の(ミクロ)抽出法は取り扱いが簡単であり、大規模法または循環抽出法に統合されてはならないとされ、したがって、本発明の方法を通じて得られる抽出物が高品質の官能的特性および匂いを示すと同時に、どこででも実施できる手続き的であり得る。特に、得られた抽出物が、元の生成物の香りまたは風味の真の表現であるような方法で抽出された、植物または果物の香りを捉えるとされている。これにより、調香師は、元来の匂いを高品質に再現することが可能になる。
【0020】
特に、本発明の抽出方法は、任意のさらなる実施工程を必要とせずに、匂いの官能的側面において高品質の抽出物を与える。精製工程または任意のさらなる溶媒を必要とする任意のさらなる抽出工程はない。それは一段階の、移動式であり、携帯できる一種の抽出方法(ミクロ抽出)である。
【0021】
<キット>
したがって、本発明のさらなる態様は、天然出発原料、好ましくは上記のような植物出発原料からのフレグランスの抽出、好ましくは上記のようなミクロ抽出のためのキットであり、
(i)セプタム付き耐圧サンプルコンテナ(下記コメントを参照);
(ii)プロパンおよび/またはブタンガスの液化石油ガスを耐圧サンプル容器内に放出するのに適した取出口装置を備えた、プロパンおよび/またはブタンガスの液化石油ガスを含む高圧容器(またはコンテナ)、好ましくは液化ガスが耐圧サンプルコンテナからバルブを有するセプタムを通じて、圧力コンテナ内にポンプ輸送される;
(iii)(i)および(ii)を接続するための連結器;
(iv)サンプル原料、特に上記で定義したような天然出発原料の取入に適した小袋;および、場合により
(v)抽出された化合物、好ましくは不活性溶媒、好ましくはメタノールまたはエタノールに可溶化されたフレグランスを吸収するのに適した貯蔵コンテナ、
を含むか、またはそれらからなるキットである。
【0022】
本発明のキットの一態様において、前記耐圧サンプルコンテナは二重壁コンテナであり、二重壁の外壁は好ましくは合成熱可塑性材料を含むか、またはそれからなる。好ましくは、二重壁の内壁は不活性材料、好ましくはガラスを含むか、またはそれからなる。最も好ましいのは、プラスチックからなる外壁を有する耐圧容器(内側容器の損傷を避け、内側容器が破裂した場合の潜在的な割れを防ぐために、外側容器はプラスチック、好ましくはポリプロピレングリコールでできている)であり、内側容器の底面は、フレグランス抽出物を容易に除去するために好ましくは丸みを帯びており、したがってPETおよびガラスからなる内壁は得られた抽出物の化合物と反応しない。さらに、貯蔵コンテナの二重壁の内壁は、好ましくは着色ガラスからなる。これは、光によって引き起こされるいかなる分解からも化合物が保護されるという点で、抽出物の化合物に有利に影響を及ぼす(内側容器は、迅速で容易な洗浄、特に単に少量の溶媒ですすぐことによって新たな抽出の準備ができることから、好ましくはガラス製、最も好ましくはホウケイ酸ガラス製である)。
【0023】
耐圧サンプルコンテナは、好ましくは約1~約10バール、好ましくは約2~約5バールの圧力に耐える。
【0024】
本発明のキットは、抽出物の匂いの定性的決定のための上記で定義されたような天然出発原料の抽出、特に小規模のミクロ抽出、方法として実施するのに特に適しており、したがって、本発明の方法を通じて得られる抽出物が高品質の官能特性および匂いを示すと同時に、どこででも実施できる手続き的であり得る。特に、得られた抽出物は、元の生成物の香りまたは香味の真の表現であるような方法で抽出された、植物または果物の香りを捉えるとされている。これにより調香師は、元来の匂いを高品質に再現することが可能になる。
【0025】
キットは、典型的には、約50×60×15cmの寸法を有する小型のスーツケースとして提供される。
【実施例】
【0026】
<実施例1>
植物の抽出のための一般的な手順
様々な抽出原料を最初に小袋の中に入れ、次いで前記小袋を気密シール(セプタム)を有する耐圧サンプルコンテナ(抽出コンテナ)の中に入れた。高圧容器から圧縮されたn-ブタンがセプタムのバルブを通って抽出コンテナ内に移送され、その結果、液体のn-ブタンガスが植物原料を湿らすことができ、抽出が行われた。液体ブタンが植物原料の全ての部分を湿らすことができるよう、抽出コンテナを約5~10分間回転させた。その後、バルブをゆっくりと開くことにより、抽出コンテナからn-ブタンガスを漏出させた。その後、エタノールを抽出コンテナに噴霧し、アルコール抽出物を貯蔵コンテナに移した。
【0027】
<実施例2>
サンプリング手順
1.手袋を使用して、サンプリングしたい対象物を取り出し、それを細かく刻んでフィルターバッグに満たす(取り扱いを容易にするために、付属のピンセットを使用する)。量は、対象物の匂いの強さによる。匂いが非常に少ない場合は、袋を完全に満たすことができる。匂いがより強い場合は、量を少なくする必要がある。
2.スクリューキャップをひねって抽出チューブを開き、バッグをチューブに入れる(
図1)。対象物を含む袋の端がチューブの底に近いことに注意する。もう一方の端はスクリューキャップの近くになければならない(
図2)。再びスクリューキャップを使ってチューブを閉じる。
3.ガスアダプターを1つ取り、それをブタンガスのボトルの1つに接続する(
図3)。
4.ガスボトルを抽出チューブに接続する(
図4および5)。
5.ガスボトルを抽出チューブに向かって押し、黒いマークまでチューブを満たす(
図6および7)。
6.チューブの端をスクリューキャップで固定し、チューブのもう一方の端を10分間向きを変えて、対象物を抽出する。
7.チューブを慎重に開ける。バッグを取り出し、バッグをチューブの内壁に押し付けることでバッグからチューブにブタンを絞り出す。
8.ガスが完全に蒸発する前に、約2mlのエタノール(エタノールボトルのポンプバルブを10回押す)をチューブの内壁に加える(
図8)。
9.溶媒混合物中のブタンが蒸発するまで待つ。
10.チューブを回転させて抽出物を溶解し、ピペットを使用して抽出溶液を茶色のガラス瓶の1つに移す(
図9および10)。2mlのエタノールを使用して同じ茶色のガラス瓶に2回目の溶解を繰り返す。
11.茶色のガラス瓶を閉じて、対応する情報シートに記入する。考えられるすべての情報に注意すること。
12.抽出チューブを再度使用するには、チューブとシールをよく洗浄し、スクリューキャップのガスバルブを交換する。洗浄には、湯と使用可能な任意の溶媒(例えばアセトン)を使用する。
13.抽出物の匂いを確認するために付属の匂いストリップを使用する。
【0028】
<実施例3>
官能試験
実施例1に記載された一般的な抽出手順に従って得られる抽出物の官能特性を、欧州特許第0711508号に開示されているように、初めにn-ブタンを使用し次に臨界二酸化炭素を使用する2段階法によって抽出された同じ植物出発原料の抽出サンプルのそれぞれの官能特性と比較した。匂いは、20人の経験のある調香師からなるパネルにより評価され、以下の尺度、(10)=両方の匂いが同一である~(1)=両方の匂いが全く異なる、で評価された。結果は全てのパネリストの平均を表し、以下の表1にまとめた。
【0029】
【0030】
結果は、本発明によるミクロ法から得られた抽出物が、工業的条件下で得られた抽出物と比較して、かなり類似した同一の匂いを提供することを明らかに示している。
【0031】
<実施例4>
ブタン抽出、ソックスレー抽出およびSDEの比較
4つのオレンジから採取した20gの皮を本発明によるブタン抽出、標準的なソックスレー抽出およびSDE(pH=7、4時間、2gの消泡剤)にかけた。抽出物を官能特性および分析組成の両方に関して評価した。結果を表2にまとめる。
【0032】
【0033】
全ての方法がブラジル産の標準オレンジオイルに関して許容できる一致を示したが、本発明による方法から得られた生成物のみがオレンジオイルと同様の官能特性を与えた。
本発明の好ましい態様は、以下を包含する。
[1](a)天然出発原料のサンプルを耐圧サンプルコンテナ内に用意する工程;
(b)サンプルを好ましくはプロパンおよび/またはブタンガスの液化石油ガスと接触させる工程;
(c)工程(b)で用意した天然出発原料からフレグランスを抽出する工程;
(d)液化石油ガスを蒸発させ、フレグランスを残留物としてコンテナ内に保持しながら、耐圧サンプルコンテナを排気する工程;および、場合により
(e)フレグランスを適切な溶媒に溶解する工程
からなる、天然出発原料からのフレグランスの抽出方法。
[2]前記工程(b)は、約5℃~約70℃の温度および/または約0.5バール~約10バールの圧力で行われる、[1]に記載の方法。
[3]前記天然出発原料は、植物全体、葉、花、茎、種子、樹皮、木、樹脂、花弁、雄しべ、花粉、果実、根または植物苗、果実または花の部分からなる群から選択される、[1]に記載の方法。
[4]前記天然出発原料を、抽出(工程c)前に小袋中に入れる、[1]に記載の方法。
[5]前記溶媒は、それぞれ1~5個の炭素原子を有するアルコール、エステル、ケトン、または5~8個の炭素原子を有するアルカンである、[1]に記載の方法。
[6]前記溶媒は、メタノールおよび/またはエタノールである、[5]に記載の方法。
[7]前記工程(c)から得られた抽出物は、フレグランスの混合物を含むか、またはフレグランスの混合物からなる、[5]に記載の方法。
[8]匂い試験のためのミクロ抽出法を表す、[1]に記載の方法。
[9]前記天然出発原料の前記サンプルは、50gの最大重量を有する、[1]に記載の方法。
[10](i)交換可能なバルブを有する耐圧サンプルコンテナ;
(ii)プロパンおよび/またはブタンガスの液化石油ガスを含み、取出口装置を備えた高圧容器またはコンテナ;
(iii)(i)と(ii)を接続するための連結器;
(iv)サンプル原料の取入に適した小袋、および場合により
(v)抽出された化合物を吸収するのに適した貯蔵コンテナを含むか、またはそれらからなる、天然出発原料からのフレグランスのミクロ抽出のためのキット。
[11]前記耐圧容器またはコンテナは、内壁と外壁とからなる二重壁である、[10]に記載のキット。
[12]前記内壁はガラス製であり、前記外壁は合成熱可塑性材料製である、[11]に記載のキット。
[13]前記内壁はホウケイ酸ガラス製である、[11]に記載のキット。
[14]前記内壁の底面は、フレグランス抽出物を容易に除去するために丸みを帯びている、[11]に記載のキット。
[15]前記外壁はポリプロピレングリコール製である、[11]に記載のキット。