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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-02-08
(45)【発行日】2022-02-17
(54)【発明の名称】濃縮ラムノリピド組成物の脱色
(51)【国際特許分類】
   C12P 19/44 20060101AFI20220209BHJP
   C07H 1/06 20060101ALN20220209BHJP
   A61Q 19/10 20060101ALN20220209BHJP
   C07H 15/04 20060101ALN20220209BHJP
   A61K 8/60 20060101ALN20220209BHJP
【FI】
C12P19/44
C07H1/06
A61Q19/10
C07H15/04 F
A61K8/60
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2019542480
(86)(22)【出願日】2017-06-01
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2020-02-27
(86)【国際出願番号】 US2017035403
(87)【国際公開番号】W WO2018144053
(87)【国際公開日】2018-08-09
【審査請求日】2020-05-26
(31)【優先権主張番号】62/455,562
(32)【優先日】2017-02-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】591066100
【氏名又は名称】ステパン カンパニー
(74)【代理人】
【識別番号】100092783
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100093676
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 純子
(74)【代理人】
【識別番号】100120134
【弁理士】
【氏名又は名称】大森 規雄
(74)【代理人】
【識別番号】100128761
【弁理士】
【氏名又は名称】田村 恭子
(74)【代理人】
【識別番号】100104282
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 康仁
(72)【発明者】
【氏名】ロヒサーン,ナッタポーン
【審査官】林 康子
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2016/115048(WO,A1)
【文献】特開平08-231578(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12P 19/00~19/64
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
1種または複数のラムノリピドを含む中和および脱色された組成物を得る、有機溶媒を使用しない方法であって、
(a)少なくとも1種のラムノリピドを含む水性培地を用意するステップ、
(b)用意された前記培地を酸で処理して、固体相、液体相および油性相を含む酸性培地を得るステップ、
(c)ステップ(b)の前記酸性培地から少なくとも前記液体相を除去して、酸性固体相および場合によって酸性油性相を得るステップ、
(d)テップ(c)において得られた前記酸性固体相および場合によって前記酸性油性相を、過炭酸塩を含む組成物で処理し、ここで、前記組成物は、前記酸性固体相および場合によって前記酸性油性相を中和および脱色するのに有効な量であり、前記中和および脱色された組成物を得るステップ
を含み、
前記中和および脱色が、0.5時間から4時間以内で、45~60℃の間の温度で起こる、方法。
【請求項2】
ステップ(d)における前記過炭酸塩が、0.5~3%w/w当量過酸化水素濃度(EHPC)の量で存在する、請求項1に記載の有機溶媒を使用しない方法。
【請求項3】
請求項1または2に記載の有機溶媒を使用しない方法のステップ(b)において得られた前記液体相の質を向上させる方法であって、前記質を向上させるのに有効な量の過炭酸塩で、前記液体相を処理するステップを含む、方法。
【請求項4】
請求項1または2に記載の方法のステップ(b)において得られた前記液体相中でBODおよび/またはTSSを少なくとも25%減少させる方法であって、前記液体相中でBODおよび/またはTSSを少なくとも25%減少させるのに有効な量の過炭酸塩を含む組成物で、前記液体相を処理するステップを含む、方法。
【請求項5】
前記過炭酸塩が、0.2%~0.8%w/wEHPCの量で存在する、請求項に記載の方法。
【請求項6】
ステップ(d)において、前記酸性固体相および場合によって前記酸性油性相を処理するために用いられる前記過炭酸塩を含む組成物が第2の塩基をさらに含む、請求項1または2に記載の有機溶媒を使用しない方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
ラムノリピド組成物を過炭酸塩で処理するステップを含む、前記組成物を脱色および場合によって中和する方法、およびその方法から得ることができる、脱色および場合によって中和された組成物が提供される。また、前記脱色方法の間の発酵の間に、多様な有機および/または無機の物質を含有する、生じた液体相(水性層または廃水とも呼ばれる)の質を改善する方法が提供される。
【背景技術】
【0002】
界面活性剤またはサーファクタントは、起泡、洗浄、分散、乳化の能力および低い表面張力に起因して、産業用途、特に、身体の手入れ(パーソナルケア)および家庭用洗浄製品において必要不可欠な役割を果たす。市販されているほとんどのサーファクタントは、石油から化学的に誘導される。その結果、バイオサーファクタントの需要が、環境に優しい特性(つまり、生分解性および生体適合性)に起因して、著しく増加している[1]。
【0003】
ラムノリピド(RL)は、高い生分解性、低い毒性、高い起泡性および再生可能な原料から合成される能力を有しているので、最も研究され、よく知られたバイオサーファクタントの1つである[2~4]。ラムノリピドは、炭水化物(ラムノース)および脂肪酸(ヒドロキシ脂肪酸)を含有する界面活性糖脂質である。RLは、1つのラムノース単位(モノラムノシルリピッドもしくはモノ-ラムノリピド)または2つのラムノース単位(ジラムノシルリピッドもしくはジ-ラムノリピド)および1つまたは2つ(主に2つ)の3-ヒドロキシ脂肪酸残基からなる。いくつかの産業用途は、洗剤および洗浄剤、抗真菌剤[5、6]、化粧品、バイオレメディエーションおよび石油増進回収法(EOR)を含む[7]。
【0004】
ラムノリピドの生成は、多様な炭素および窒素源、例えば、植物油、粗グリセロール、糖蜜、ソープストックでの、細菌、主に緑膿菌(Pseudomonas aeruginosa)の好気性発酵を含む[8、9]。RL濃度は、原料の種類、発酵条件および発酵方法に応じて、典型的には1~50g/Lの範囲内である[10~12]。発酵から得られたRL濃度は非常に低いので、濃縮RL生成物(つまり、30~90%RL濃度)を生成するため、分離および精製が、その後に必要となる。最も一般的な分離方法は、酸沈殿から始まる。発酵ブロスのpHを2~3に調整することによって、水性溶液中でラムノリピドを不溶性にし、その結果、沈殿させる。酢酸エチル、ヘキサン、クロロホルム-メタノール、ブタノールでの溶媒抽出[13、14]もまた実施して、廃棄される水性層からラムノリピドをさらに精製する。溶媒を取り除いた後[15]、濃縮された粘性のある茶色みがかった黒色の油性ラムノリピド液が得られる。
【0005】
しかし、ラムノリピドのほんの少量のみが、高額で市場から入手できる。リクエストの注文書を提出せずにオンラインで入手することは、非常に難しい。販売用にリストされたものの中で、90%以下のラムノリピドの濃度は、暗褐色を含有する[16、17]。濃縮ラムノリピドの茶色みがかった黒色は、発酵の間に緑膿菌(P. aeruginosa)によって生成される色素、ピオシアニンに起因していると考えられる[18~20]。濃縮ラムノリピドの暗色は、身体の手入れおよび家庭用洗浄製品のためのバイオサーファクタントとして使用される場合、問題になるように思われる。この色を除去する現在の可能な経路は、薄層クロマトグラフィー(TLC)をさらに使用し、濃縮ラムノリピドを精製して、色を除去することであるが、この方法は費用および時間がかかり、これらの製品に使用されるラムノリピド濃度は非常に低い(5%未満)ので、身体の手入れおよび家庭用洗浄用途のためにこれを行う必要はない。
【0006】
水性層は、発酵の間に消費されない、多様な無機および有機の物質を含有しているので、ラムノリピドを分離した後、廃水処理プラントへ送られる。廃水の最も一般的に測定される質は、生化学的酸素要求量(BOD)である。BODが高ければ高いほど、水中の有機物が多く、したがって、それらの化学物質を分解するためにより多くの酸素が必要とされ、それは、水処理のためにより高い作業経費がかかることを意味する。水生生物に問題を引き起こすので、総懸濁固体量(TSS)のための測定もまた、廃水の質を認定するために使用される。
【発明の概要】
【0007】
1種または複数のラムノリピド(RL)を含む中和された組成物を得る、有機溶媒を使用しない方法であって、(a)少なくとも1種のラムノリピドを含む水性培地を用意するステップ、(b)用意された前記培地を酸で処理して、固体相、液体相および油性相を含む酸性培地を得るステップ、(c)ステップ(b)の前記酸性培地から少なくとも液体相を除去して、酸性固体相および場合によって酸性油性相を得るステップ、ならびに(d)ステップ(c)の前記酸性固体相および場合によって前記酸性油性相を中和および脱色するのに有効な量の過炭酸塩を含む組成物で、ステップ(c)において得られた前記酸性固体相および場合によって酸性油性相を処理して、前記中和された組成物を得るステップを含む方法が提供される。また、その方法から得ることができる、中和および脱色された溶液を含む組成物が提供される。特定の実施形態において、中和および脱色ステップは、少なくとも約30分間、さらに特定の実施形態においては約1週間までの間、約30~80℃の間の温度で起こる。特定の実施形態において、脱色および中和するステップ(d)において使用される組成物は、第2の塩基、例えば、NaOHをさらに含んでよい。特定の実施形態において、過炭酸塩は、約0.5~3%w/w当量過酸化水素濃度(EHPC)の濃度で存在する。
【0008】
ステップ(b)において得られた液体相の質を向上させる方法であって、前記液体相の前記質を向上させるのに有効な量の過炭酸塩で、前記液体相を処理するステップを含む方法もまた提供される。液体相の質は、生化学的酸素要求量(BOD)および/または総懸濁固体量(TSS)を測定することによって判定されてよい。特定の実施形態において、液体相中で少なくとも約25%のBODおよび/またはTSSを減少させる方法であって、前記液体相中で少なくとも約25%のBODおよび/またはTSSを減少させるのに有効な量の過炭酸塩を含む組成物で、前記液体相を処理するステップを含む方法が提供される。さらに特定の実施形態において、BODおよび/またはTSSを、少なくとも約30%、より詳細には少なくとも約40%、さらに詳細には少なくとも約45%、さらに詳細には約50%、さらに詳細には少なくとも約55%、さらに詳細には少なくとも約60%減少させ、ここにおいて、過炭酸塩は、約0.2%~約0.8%w/wEHPCの濃度で存在する。
【0009】
定義
数値範囲が与えられる場合、文脈上、明白に別段の指示がない限り、下限単位の10分の1まで、その範囲の上限と下限との間の各介在値、およびその述べられた範囲中のその他のあらゆる述べられた値または介在値は、本発明内に包含されると理解される。これらのより小さい範囲の上限および下限は、述べられた範囲中の特に除外されたあらゆる限界値に従って、そのより小さい範囲中に独立して含まれてよく、また本発明内に包含される。述べられた範囲が限界値の一方または両方を含む場合、それらの含まれた限界値のいずれかまたは両方を除外する範囲もまた、本発明の中に含まれる。
【0010】
別段の定義がない限り、本明細書に使用される、全ての技術的および科学的用語は、本発明が属する分野の当業者によって一般的に理解されるのと同じ意味を有する。本明細書に記載されたものと同様のまたは等価のいずれの方法および材料も、本発明の実施または試験において使用できるが、好ましい方法および材料を、以下に記載する。
【0011】
本開示において引用される全ての公表文献および特許は、その全体が参照によって組み込まれる。本明細書の何も、先行発明を理由として、本発明がかかる開示に先行する資格がないという承認として解釈されるべきではない。参照によって組み込まれた資料が本明細書と矛盾するまたは一致しない限り、本明細書は、いずれのかかる資料にも優先することになる。
【0012】
本明細書および添付の特許請求の範囲に使用される場合、単数形「1つの(a)」、「および(and)」および「その(the)」は、文脈上、明白に別段の指示がない限り、複数の引用も含むことが、留意されなければならない。
【0013】
別段の指示がない限り、一連の要素に先行する用語「少なくとも(at least)」は、一連の要素の全てを意味すると理解されるべきである。当業者は、ごく普通の実験を使用して、本明細書に記載された発明の具体的な実施形態との多くの均等物を認識するまたは確認できるであろう。かかる均等物は、本発明によって包含されることが意図される。本明細書および以下の特許請求の範囲を通して、文脈上、別段の解釈が必要でない限り、用語「含む(comprise)」、ならびに「含む(comprises)」および「含む(comprising)」などの変化形は、述べられた整数もしくはステップまたは整数若しくはステップの群を包含するが、その他の整数もしくはステップまたは整数もしくはステップの群のいずれも除外しないことを暗示すると理解されるであろう。したがって、用語「含む(comprising)」、「含む(including)」、「含有する(containing)」、「有する(having)」などは、拡張的にまたは無制限におよび限界なく、読まれるべきである。本明細書で使用される場合、用語「含む(comprising)」は、用語「含有する(containing)」の代わりとなることができ、または時として、本明細書で使用される場合、用語「有する(having)」の代わりとなることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】過炭酸ナトリウムで処理された酸性型濃縮清澄ブロス(ACCB)によって、減色した濃縮清澄ブロス(CR-CCB)を生成する方法の全体を示す模式図である。
図2】2016年1月11日に出願された米国特許出願番号第14992995号明細書(米国特許出願公開第2016/0272667号明細書として公開されている)の実施例2において使用された反応スキームを示す模式図である。
図3】0.75、1、1.25、1.5、2、2.5および3%EHPC(左から右へ)での過炭酸ナトリウム添加による試料の色の比較を示す図である。写真は、60℃および250rpmでの加熱30分で撮影した。
図4】0.75、1、1.25、1.5、2、2.5および3%EHPC(左から右へ)での過炭酸ナトリウム添加による試料の色の比較を示す図である。写真は、60℃、250rpmでの加熱3時間で撮った。
図5】米国特許出願公開第2016/0272667号明細書の実施例2で得られたCCBの色(0%EHPC、1番左)対30分間、60℃、250rpmでの加熱後の2、2.5および3%EHPC(左2番目から右へ)での過炭酸ナトリウム添加から得られたCR-CCBの色を示す図である。
図6】CCB試料(0%EHPC)および3時間60℃での加熱後の多様な過炭酸ナトリウム濃度(2~3%EHPC)によるCR-CCBの光学密度を示す図である。
図7】CCB試料(0%EHPC)および4時間45℃での加熱後の多様な過炭酸ナトリウム濃度(1~2.5%EHPC)によるCR-CCBの光学密度を示す図である。
図8】4時間45℃での加熱後の、過炭酸ナトリウム添加なし(0%EHPC)と比較した、1~2.5%EHPCによるCR-CCB試料の光学密度(色)における減少%を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
過炭酸ナトリウム(NaCO×1.5H)を使用して、濃縮ラムノリピド溶液(30~90%)を減色させる方法が提供される。出発材料は、2016年1月11日に出願された米国特許出願番号第14992995号明細書(米国特許出願公開第2016/0272667号明細書として公開されている)に記載されている通り、約pH2.1での清澄ブロスからのラムノリピドの沈殿から得られた酸性ラムノリピドスラリー(固体ラムノリピド含有相)である。過炭酸ナトリウムを、約2~3%w/w当量過酸化水素濃度(EHPC)で、酸性ラムノリピドスラリー中に加える。必要な場合、pHを中性にするために、NaOHなどの追加の塩基を、約0.5~1.5%w/wで使用できる。30分から数時間の間、約40~60℃で溶液を加熱して、脱色方法を加速することができる。加熱後、濃縮ラムノリピドの色は、明るくなって、糖蜜様の黒色から、蜜様の淡褐色または暗黄色になる。溶液を加熱した結果として、ラムノリピド濃度の減少はない。
【0016】
得られた液体相の質を向上させる(代わりに、強化させるとも呼ばれる)方法が、実施例2および3に述べられる通り、さらに提供される。液体相の質の向上は、BODおよび/またはTSSおよび/または約OD400~約OD800の間のOD測定値によって判定されてよい。
【0017】
米国特許出願公開第2016/0272667号明細書は、過酸化水素(H)または有機過酸化物(ペルオキシ酢酸)または無機過酸化物(過酸化ナトリウム)を使用する過酸化物処理による有機溶媒を使用しない方法から得られたラムノリピドの脱色を開示しているが、開示され、提唱された過酸化物は、NAFA704に記載された危険度に基づく、引火性、健康および反応性の高いリスクを有し得る[21]。上述の化学物質と異なり、過炭酸ナトリウムは、「オキシクリーン」という商品名で世界中の家庭で使用されている環境に優しい化学物質である[22]。過酸化物よりも、脱色剤として過炭酸ナトリウムを使用する優位性は、以下の通りである。
1.過炭酸ナトリウムは、安定した白色粉末形態で過酸化水素が組み合わされたソーダ灰であるので、輸送がより安全である。
2.過炭酸ナトリウムによる脱色は、中和ステップと同時に起こり、したがって、方法は、米国特許出願公開第2016/0272667号明細書に記載された脱色ステップと比較して、より短い。
3.出発材料が水性培地(例えば、発酵培地またはブロス)でなく濃縮ラムノリピド溶液であり、したがって、ほんのわずかな体積が処理されるので、作業体積は、米国特許出願公開第2016/0272667号明細書と比較して、有意に減少する。
4.方法は、有意により短い。方法は、48時間と比較して、1時間以内で行われる。
【0018】
本明細書に記載された方法は、微生物によって生成された色素に起因して暗い色であるいずれの発酵生成物においても、使用できる。
【実施例
【0019】
[実施例1]
60℃、0.75~3%w/w当量過酸化水素濃度(EHPC)での過炭酸ナトリウム添加による酸性型濃縮清澄ブロス(ACCB)の色除去
本方法の出発材料は、米国特許出願公開第2016/0272667号明細書に記載された中和ステップの前に、pH2.1での清澄ブロス(CB)からのラムノリピドの沈殿から得られた酸性型濃縮清澄ブロス(ACCB)である。
【0020】
出発材料、ACCBのpHは、およそ2.1である。化学式NaCO・1.5Hを有する過炭酸ナトリウムを、0.75~3%w/w当量過酸化水素濃度(EHPC)で、ACCBに加える。全ての試料の撹拌速度および温度の不変性を確保するために、MaxQ(商標)8000スタッカブルオービタルシェーカー(Thermo Scientific)を使用して、試料を、250rpmで撹拌しながら60℃で加熱する。
【0021】
過炭酸ナトリウム添加による試料の減色を、図3および4に示す。
【0022】
水酸化ナトリウム(NaOH)を、約pH7にするために、2%EHPC未満の過炭酸ナトリウムを添加した試料に加える。試料に加えた、過炭酸ナトリウムおよびNaOHの量を、60℃で加熱した4時間後、試料中のH残留物の濃度とともに表1に示す。
【0023】
【表1】
【0024】
濃縮清澄ブロス(CCB)は、図5に見られる通り、茶褐色から非常に明るい黄色に、過炭酸ナトリウムの添加によって有意に減色する。
【0025】
培地試料中の光を吸収する成分の濃度を比較するために、試料の光吸収の量または光学密度(OD)を、GENESYS(商標)20可視分光光度計(Thermo Scientific)を使用して、多様な波長で測定する。ベール・ランベルトの法則に基づくと、ODが高ければ高いほど、試料は、暗くなる。図6は、0%EHPCと指定されたCCB試料(図5の一番左の試料)が、過炭酸ナトリウムが添加されたその他の試料と比べて一番高いODを有することを、明らかに示す。脱イオン水によってCCB試料(0%EHPC)を5倍に希釈することによって、ODは、減色した濃縮清澄ブロス(CR-CCB)と同じ範囲にあるように見える。これは、CR-CCBの色が、20%CCBと相対的にほぼ同じ暗さであることを示唆する。この実施例のための出発材料ACCBは、同じバッチ/供給源から取られ、したがって、材料の多様性はゼロであることに留意されたい。
【0026】
[実施例2]
45℃で1%~2.5%w/w当量過酸化水素濃度(EHPC)での過炭酸ナトリウム添加による酸性型濃縮清澄ブロス(ACCB)の色除去
本方法の出発材料は、実施例1に記載されている通り、酸性型濃縮清澄ブロス(ACCB)である。過炭酸ナトリウムを、1%、1.5%、2%および2.5%w/w当量過酸化水素濃度(EHPC)で、出発材料のACCBに加える。水酸化ナトリウム(NaOH)もまた、約pH7にするために、2.5%EHPC未満の過炭酸ナトリウムを添加した試料へ加える。
【0027】
次に、全ての試料の撹拌速度および温度の不変性を確保するために、MaxQ(商標)8000スタッカブルオービタルシェーカー(Thermo Scientific)を使用して、試料を、350rpmで撹拌しながらバッフルなしフラスコ中で45℃で加熱する。多様な波長で試料の光学密度(OD)を測定するGENESYS(商標)20可視分光光度計(Thermo Scientific)によって、試料の暗度を、定量化する。OD値が低ければ低いほど、試料の色は明るくなる。試料の光学密度を、図7に示す。OD値と同様に、試料の色の暗さは、過炭酸ナトリウム添加の濃度を上昇させることで減少した。試料の色または光学密度の減少%もまた、過炭酸ナトリウムなし(0%EHPC)の試料と比較して算出し、図8に表示する。
【0028】
[実施例3]
過炭酸ナトリウム添加による、米国特許出願公開第2016/0272667号明細書に記載の酸沈殿による非有機溶媒ラムノリピド濃縮方法からの水性層廃水ストリームの色除去および廃水の質強化
米国特許出願公開第2016/0272667号明細書の実施例2~6に記載された濃縮ラムノリピド生成物を得るための清澄ブロス(CB)の酸沈殿ステップから得られた水性(水)層は、本方法からの廃水とみなされ、この実施例のための出発材料である。過炭酸ナトリウムを、60℃で0.25%および0.5%EHPCで、この酸性廃水ストリーム中に加える。60℃で穏やかに撹拌した1時間後、試料を、熱から移動して、1~2時間、室温まで冷却させる。その後、試料を、光学密度測定および生化学的酸素要求量(BOD)および総懸濁固体量(TSS)分析にかける。BOD
【0029】
試料の光学密度(OD)を、GENESYS(商標)20可視分光光度計(Thermo Scientific)によって測定する。BODおよびTSSは、それぞれStandard Methods for the Examination of Water and Wastewater(www.Standardmethods.org)より入手可能)5210Bおよび2540に基づいて実施される。試料の多様な波長(nm)での光学密度%、BOD%およびTSS%減少を、表2に示す。0.5%EHPCでの過炭酸ナトリウムによって水性廃水ストリームを処理することは、BODおよびTSSの最高の減少をもたらすが、一方で、最大の減色は、検討された波長(400~800nm)において0.75%EHPCの試料で観察される。水性層は、茶色から黄色へ、過炭酸ナトリウムの添加によって減色する。
【0030】
【表2】

なお、本発明には、以下の実施態様が包含される。
[1]1種または複数のラムノリピド(RL)を含む中和された組成物を得る、有機溶媒を使用しない方法であって、
(a)少なくとも1種のラムノリピドを含む水性培地を用意するステップ、
(b)用意された前記培地を酸で処理して、固体相、液体相および油性相を含む酸性培地を得るステップ、
(c)ステップ(b)の前記酸性培地から少なくとも前記液体相を除去して、酸性固体相および場合によって酸性油性相を得るステップ、
(d)ステップ(c)の前記酸性固体相および場合によって前記酸性油性相を中和および脱色するのに有効な量の過炭酸塩および場合によって第2の塩基を含む組成物で、ステップ(c)において得られた前記酸性固体相および場合によって酸性油性相を処理して、前記中和された組成物を得るステップ
を含む、方法。
[2]前記中和および脱色のステップが、少なくとも約30分間、約35~85℃の間の温度で起こる、前記[1]に記載の方法。
[3]ステップ(d)における前記過炭酸塩が、約0.5~約3%当量過酸化水素濃度(EHPC)の量で存在する、前記[1]に記載の方法。
[4]前記[1]の方法に従って得ることができる、中和および脱色された溶液を含む組成物。
[5]前記[1]の方法のステップ(b)において得られた前記液体相の質を向上させる方法であって、前記質を向上させるのに有効な量の過炭酸塩で、前記液体相を処理するステップを含む、方法。
[6]前記[1]の方法のステップ(b)において得られた前記液体相中で少なくとも約25%のBODおよび/またはTSSを減少させる方法であって、前記液体相中で少なくとも約25%のBODおよび/またはTSSを減少させるのに有効な量の過炭酸塩を含む組成物で、前記液体相を処理するステップを含む、方法。
[7]前記過炭酸塩が、約0.2%~約0.8%w/wEHPCの量で存在する、前記[6]に記載の方法。
【0031】
参考文献
【表3】
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8