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特許7022142銀系赤外線(IR)反射層を保護するための銀ドープ保護層を有する(低放射率)low-Eコーティングを有するコーティングされた物品、及びその製造方法
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  • 特許-銀系赤外線(IR)反射層を保護するための銀ドープ保護層を有する(低放射率)low-Eコーティングを有するコーティングされた物品、及びその製造方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-02-08
(45)【発行日】2022-02-17
(54)【発明の名称】銀系赤外線(IR)反射層を保護するための銀ドープ保護層を有する(低放射率)low-Eコーティングを有するコーティングされた物品、及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   C03C 17/36 20060101AFI20220209BHJP
   B32B 17/06 20060101ALI20220209BHJP
   G02B 5/26 20060101ALI20220209BHJP
   C23C 14/06 20060101ALI20220209BHJP
【FI】
C03C17/36
B32B17/06
G02B5/26
C23C14/06 N
【請求項の数】 45
(21)【出願番号】P 2019547514
(86)(22)【出願日】2018-02-28
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2020-04-09
(86)【国際出願番号】 US2018020084
(87)【国際公開番号】W WO2018160616
(87)【国際公開日】2018-09-07
【審査請求日】2020-12-16
(31)【優先権主張番号】15/446,026
(32)【優先日】2017-03-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
【早期審査対象出願】
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】517413513
【氏名又は名称】ガーディアン・グラス・エルエルシー
【氏名又は名称原語表記】GUARDIAN GLASS, LLC
【住所又は居所原語表記】2300 Harmon Road, Auburn Hills, MI 48326-1714 United States of America
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【弁理士】
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【弁理士】
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100067013
【弁理士】
【氏名又は名称】大塚 文昭
(74)【代理人】
【識別番号】100086771
【弁理士】
【氏名又は名称】西島 孝喜
(74)【代理人】
【識別番号】100109335
【弁理士】
【氏名又は名称】上杉 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100120525
【弁理士】
【氏名又は名称】近藤 直樹
(74)【代理人】
【識別番号】100139712
【弁理士】
【氏名又は名称】那須 威夫
(72)【発明者】
【氏名】ル・イーウェイ
(72)【発明者】
【氏名】ボイス・ブレント
(72)【発明者】
【氏名】ディン・グオウェン
(72)【発明者】
【氏名】ジュハースト・スコット
(72)【発明者】
【氏名】クラベロ・セサル
(72)【発明者】
【氏名】シュウェイガート・ダニエル
(72)【発明者】
【氏名】ツァン・グイツェン
(72)【発明者】
【氏名】リー・ダニエル
【審査官】松本 瞳
(56)【参考文献】
【文献】中国特許出願公開第102898041(CN,A)
【文献】特開2004-277780(JP,A)
【文献】特開2001-226765(JP,A)
【文献】特開2006-028641(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2016/0297708(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2015/0017392(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2012/0263885(US,A1)
【文献】特表2007-501184(JP,A)
【文献】欧州特許出願公開第01273558(EP,A1)
【文献】欧州特許出願公開第01123906(EP,A1)
【文献】特開昭59-076534(JP,A)
【文献】特開昭62-196366(JP,A)
【文献】特開2017-030348(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2015/0146287(US,A1)
【文献】特開2003-170524(JP,A)
【文献】特開2005-264329(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C03C 15/00-23/00
B32B 1/00-43/00
G02B 5/20- 5/28
C23C 14/00-14/58
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガラス基材によって支持されたコーティングを含むコーティングされた物品であって、前記コーティングが、
前記ガラス基材上の第1の誘電体層と、
前記ガラス基材上の、少なくとも前記第1の誘電体層の上方に位置する、銀を含む金属製又は実質的に金属製の赤外線(IR)反射層と、
前記ガラス基材上の、前記銀を含むIR反射層の上方に位置し、かつそれに直接接触する、ドープされた銀を含む保護層と、
前記ガラス基材上の第2の誘電体層であって、少なくとも前記第1の誘電体層、前記銀を含むIR反射層、及び前記ドープされた銀を含む保護層の上方に位置する第2の誘電体層と、を含み、
前記ドープされた銀を含む保護層の金属含有量が、原子百分率で80~99.5%のAgと、0.5~20%のドーパントを含み、前記ドーパントが、Zn、Cu、Ni、W、Sn、Si、SiAl、ZnAl、ZnSi、ZnSiCu、及びこれらの組み合わせのうちの1つ以上であり、かつ、
前記コーティングが11Ω/sq.以下のシート抵抗(Rs)及び0.2以下の垂直放射率(En)を有する、コーティングされた物品。
【請求項2】
前記ドープされた銀を含む保護層の金属含有量が、原子百分率で90~99%のAgと、1~10%のドーパントを含み、前記ドーパントが、Zn、Cu、Ni、W、Sn、Si、SiAl、ZnAl、ZnSi、ZnSiCu、及びこれらの組み合わせのうちの1つ以上である、請求項1に記載のコーティングされた物品。
【請求項3】
前記ドープされた銀を含む保護層の金属含有量が、原子百分率で95~99%のAgと、1~5%のドーパントを含み、前記ドーパントが、Zn、Cu、Ni、W、Sn、Si、SiAl、ZnAl、ZnSi、ZnSiCu、及びこれらの組み合わせのうちの1つ以上である、請求項2に記載のコーティングされた物品。
【請求項4】
前記IR反射層が、銀から本質的になる、請求項1~3のいずれか一項に記載のコーティングされた物品。
【請求項5】
前記IR反射層が金属製である、請求項1~4のいずれか一項に記載のコーティングされた物品。
【請求項6】
前記ドープされた銀を含む保護層が、金属製又は実質的に金属製である、請求項1~5のいずれか一項に記載のコーティングされた物品。
【請求項7】
前記コーティングされた物品が、少なくとも40%の可視光透過率を有する、請求項1~6のいずれか一項に記載のコーティングされた物品。
【請求項8】
前記コーティングされた物品が、少なくとも50%の可視光透過率を有する、請求項1~7のいずれか一項に記載のコーティングされた物品。
【請求項9】
前記コーティングされた物品が、少なくとも70%の可視光透過率を有する、請求項1~8のいずれか一項に記載のコーティングされた物品。
【請求項10】
前記コーティングされた物品が、少なくとも1.10の光対太陽利得比(LSG)を有する、請求項1~9のいずれか一項に記載のコーティングされた物品。
【請求項11】
前記コーティングされた物品が、少なくとも1.30の光対太陽利得比(LSG)を有する、請求項1~10のいずれか一項に記載のコーティングされた物品。
【請求項12】
前記コーティングされた物品が、少なくとも1.60の光対太陽利得比(LSG)を有する、請求項1~11のいずれか一項に記載のコーティングされた物品。
【請求項13】
前記ドーパントがZnを含み、かつ、
前記ドープされた銀を含む保護層の金属含有量が、原子百分率で90~99%のAgと、1~10%のZnを含む、請求項1~12のいずれか一項に記載のコーティングされた物品。
【請求項14】
前記ドーパントがZnを含み、かつ、
前記ドープされた銀を含む保護層の金属含有量が、原子百分率で95~99%のAgと、1~5%のZnを含む、請求項13に記載のコーティングされた物品。
【請求項15】
前記ドーパントがCuを含み、かつ、
前記ドープされた銀を含む保護層の金属含有量が、原子百分率で90~99%のAgと、1~10%のCuを含む、請求項1~14のいずれか一項に記載のコーティングされた物品。
【請求項16】
前記ドーパントがCuを含み、かつ、
前記ドープされた銀を含む保護層の金属含有量が、原子百分率で95~99%のAgと、1~5%のCuを含む、請求項15に記載のコーティングされた物品。
【請求項17】
前記ドーパントがNiを含み、かつ、
前記ドープされた銀を含む保護層の金属含有量が、原子百分率で90~99%のAgと、1~10%のNiを含む、請求項1~16のいずれか一項に記載のコーティングされた物品。
【請求項18】
前記ドーパントがNiを含み、かつ、
前記ドープされた銀を含む保護層の金属含有量が、原子百分率で95~99%のAgと、1~5%のNiを含む、請求項17に記載のコーティングされた物品。
【請求項19】
前記ドーパントがWを含み、かつ、
前記ドープされた銀を含む保護層の金属含有量が、原子百分率で90~99%のAgと、1~10%のWを含む、請求項1~18のいずれか一項に記載のコーティングされた物品。
【請求項20】
前記ドーパントがWを含み、かつ、
前記ドープされた銀を含む保護層の金属含有量が、原子百分率で95~99%のAgと、1~5%のWを含む、請求項19に記載のコーティングされた物品。
【請求項21】
前記ドーパントがSnを含み、かつ、
前記ドープされた銀を含む保護層の金属含有量が、原子百分率で90~99%のAgと、1~10%のSnを含む、請求項1~20のいずれか一項に記載のコーティングされた物品。
【請求項22】
前記ドーパントがSnを含み、かつ、
前記ドープされた銀を含む保護層の金属含有量が、原子百分率で95~99%のAgと、1~5%のSnを含む、請求項21に記載のコーティングされた物品。
【請求項23】
前記ドーパントがSiを含み、かつ、
前記ドープされた銀を含む保護層の金属含有量が、原子百分率で90~99%のAgと、1~10%のSiを含む、請求項1~22のいずれか一項に記載のコーティングされた物品。
【請求項24】
前記ドーパントがSiを含み、かつ、前記ドープされた銀を含む保護層の金属含有量が、原子百分率で95~99%のAgと、1~5%のSiを含む、請求項23に記載のコーティングされた物品。
【請求項25】
前記ドーパントがZn及びCuを含み、かつ、
前記ドープされた銀を含む保護層の金属含有量が、原子百分率で80~99%のAg、並びに0.5~10%のZn及び0.5~10%のCuを含む、請求項1~24のいずれか一項に記載のコーティングされた物品。
【請求項26】
前記ドーパントがZn及びSiを含み、かつ、
前記ドープされた銀を含む保護層の金属含有量が、原子百分率で80~99%のAg、並びに0.5~10%のZn及び0.5~10%のSiを含む、請求項1~25のいずれか一項に記載のコーティングされた物品。
【請求項27】
前記コーティングされた物品が熱焼戻しされている、請求項1~26のいずれか一項に記載のコーティングされた物品。
【請求項28】
前記ドープされた銀を含む保護層は、前記銀を含むIR反射層よりも少なくとも40Å薄い、請求項1~27のいずれか一項に記載のコーティングされた物品。
【請求項29】
前記ドープされた銀を含む保護層は、前記銀を含むIR反射層よりも少なくとも75Å薄い、請求項1~28のいずれか一項に記載のコーティングされた物品。
【請求項30】
前記ドープされた銀を含む保護層は、前記銀を含むIR反射層よりも少なくとも100Å薄い、請求項1~29のいずれか一項に記載のコーティングされた物品。
【請求項31】
前記ドープされた銀を含む保護層は、厚さが約3~70Åであり、前記銀を含むIR反射層は、厚さが約40~170Åである、請求項1~30のいずれか一項に記載のコーティングされた物品。
【請求項32】
前記ドープされた銀を含む保護層は、厚さが約5~25Åであり、前記銀を含むIR反射層は、厚さが約60~155Åである、請求項1~31のいずれか一項に記載のコーティングされた物品。
【請求項33】
前記ドープされた銀を含む保護層は、厚さが約8~15Åであり、前記銀を含むIR反射層は、厚さが約80~145Åである、請求項1~32のいずれか一項に記載のコーティングされた物品。
【請求項34】
前記第1の誘電体層が、窒化ケイ素を含む、請求項1~33のいずれか一項に記載のコーティングされた物品。
【請求項35】
前記コーティングが、9Ω/sq.以下のシート抵抗(Rs)、及び/又は0.11以下の垂直放射率(En)を有する、請求項1~34のいずれか一項に記載のコーティングされた物品。
【請求項36】
前記コーティングが、前記ドープされた銀を含む保護層から離間し、かつそれに接触しない、銀を含む別の赤外線(IR)反射層を更に含む、請求項1~35のいずれか一項に記載のコーティングされた物品。
【請求項37】
前記コーティングが、前記銀を含むIR反射層の下方に位置し、かつそれに直接接触する、酸化亜鉛を含む誘電層を更に含む、請求項1~36のいずれか一項に記載のコーティングされた物品。
【請求項38】
前記コーティングが、前記ドープされた銀を含む保護層の上に配置され、かつそれに直接接触する、Ni及び/又はCrを含むバリア層を更に含む、請求項1~37のいずれか一項に記載のコーティングされた物品。
【請求項39】
前記バリア層が、Ni及び/又はCrの窒化物を含む、請求項38に記載のコーティングされた物品。
【請求項40】
ガラス基材によって支持されたコーティングを含むコーティングされた物品であって、前記コーティングが、
前記ガラス基材上の第1の誘電体層と、
前記ガラス基材上の、少なくとも前記第1の誘電体層の上方に位置する、銀を含む金属製又は実質的に金属製の赤外線(IR)反射層と、
前記ガラス基材上の、前記銀を含むIR反射層の上方に位置し、かつそれに直接接触する、ドープされた銀を含む保護層と、
前記ガラス基材上の第2の誘電体層であって、少なくとも前記第1の誘電体層、前記銀を含むIR反射層、及び前記ドープされた銀を含む保護層の上方に位置する第2の誘電体層と、を含み、
前記ドープされた銀を含む保護層の金属含有量が、原子百分率で80~99.5%のAgと、0.5~20%のZnを含み、かつ、
前記コーティングが11Ω/sq.以下のシート抵抗(Rs)及び0.2以下の垂直放射率(En)を有する、コーティングされた物品。
【請求項41】
前記ドープされた銀を含む保護層の金属含有量が、原子百分率で90~99%のAgと、1~10%のZnを含む、請求項40に記載のコーティングされた物品。
【請求項42】
前記ドープされた銀を含む保護層の金属含有量が、原子百分率で95~99%のAg及び1~5%のZnを含む、請求項40又は41に記載のコーティングされた物品。
【請求項43】
前記ドープされた銀を含む保護層の金属含有量が、原子百分率で80~99%のAg、並びに0.5~10%のZn及び0.5~10%のCuを含む、請求項40~42のいずれか一項に記載のコーティングされた物品。
【請求項44】
前記ドープされた銀を含む保護層の金属含有量が、原子百分率で80~99%のAg、並びに0.5~10%のZn及び0.5~10%のSiを含む、請求項40~43のいずれかに記載のコーティングされた物品。
【請求項45】
ガラス基材によって支持されたコーティングを含むコーティングされた物品の製造方法であって、前記方法が、
前記ガラス基材上に第1の誘電体層をスパッタ堆積させることと、
前記ガラス基材上に、少なくとも前記第1の誘電体層の上方に位置する、銀を含む金属製又は実質的に金属製の赤外線(IR)反射層をスパッタ堆積させることと、
前記ガラス基材上の、前記銀を含むIR反射層の上方に、それに直接接触するように、ドープされた銀を含む金属製又は実質的に金属製の保護層をスパッタ堆積させることであって、堆積された状態で、前記ドープされた銀を含む保護層の金属含有量は、原子百分率で80~99.5%のAg、かつ0.5~20%のドーパントを含み、前記ドーパントがZn、Cu、Ni、W、Sn、Si、SiAl、ZnAl、ZnSi、ZnSiCu、及びこれらの組み合わせのうちの1つ以上であるようにスパッタ堆積させることと、
前記ドープされた銀を含む金属製又は実質的に金属製の保護層をスパッタ堆積した後、前記ガラス基材上に、少なくとも前記第1の誘電体層及び前記銀を含むIR反射層の上方に位置する、第2の誘電体層をスパッタ堆積させることと、を含み、
前記コーティングが、11Ω/sq.以下のシート抵抗(Rs)と、0.2以下の垂直放射率(En)と、を有する、方法。
【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
本出願は、低放射率(low-E)コーティングの熱安定性及び/又は化学的耐久特性を改善するために、少なくとも1つの金属製又は実質的に金属製である、銀をドープされた保護層(例えば、AgZn)に隣接かつ接触して設けられる、少なくとも1つの銀(Ag)系赤外線(IR)反射層を含むコーティングされた物品に関する。銀系IR反射層及び隣接する銀ドープ保護層は、低放射率(low-E)コーティングの一部であり、少なくとも透明な誘電体層どうしの間に挟まれてもよい。low-Eコーティングの耐久性を更に改善し、化学的曝露時の層間剥離の可能性を低減するために、Ni及び/又はCrを含むバリア層が、銀ドープ保護層の上方に、銀ドープ保護層に直接接触するように提供され得る。このようなlow-Eコーティングは、単板窓、絶縁ガラス(IG)窓ユニットなどの用途に使用することができる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0002】
コーティングされた物品は、絶縁ガラス(IG)ユニット、車両用窓、単板窓、及び/又は同様の窓用途で使用することが当該技術分野において知られている。特定の例示的な事例では、コーティングされた物品の設計者は、多くの場合、高い可視透過率、実質的に中性の色、低い放射率(又は放射力)、低いシート抵抗(R)、IG窓ユニットの文脈における低いU値、及び/又は低い比抵抗の組み合わせを得ようと努力している。高い可視透過率及び実質的に中性の色は、コーティングされた物品を、建築用窓用途又は車両用窓用途などのように、こうした特性が所望される用途で使用することを可能にする一方で、低い放射率(low-E)、低いシート抵抗及び低い比抵抗といった特性により、かかるコーティングされた物品が著しい量のIR放射を遮断して、例えば車両又は建物内部が望ましくない程度に加熱されるのを低減することが可能になる。
【0003】
少なくとも1つの銀系赤外線(IR)反射層を有するlow-Eコーティングは、当該技術分野において知られている。例えば、参照により本明細書に組み込まれる米国特許第5,344,718号、同第6,576,349号、同第8,945,714号、同第9,371,684号、同第9,028,956号、同第9,556,070号、同第8,945,714号、同第9,028,983号を参照されたい。ガラス上のlow-Eコーティングは、エネルギーを節約するために商業用及び住宅用建物に広く使用されている。二重銀(Ag)low-Eコーティングは、その優れた低放射率特性及び優れた太陽熱利得の制御により、有力なlow-E製品である。
【0004】
しかしながら、銀IR反射層を有する従来のlow-Eコーティングは、化学的耐久性及び/又は環境耐久性に関連する問題を有し、そのためそれらの用途は制限されてしまう。その理由は、銀IR反射層が、特に、二重銀タイプのlow-Eコーティングに対してあまり安定的ではないことである。銀(Ag)が腐食又は損傷すると、銀の光学的、電気的、及び熱的(放射率)特性は劣化する。例えば、ガラス/Si/NiCr/Ag/NiCr/Siの積層体を有する太陽光制御low-Eコーティングは、効率的な太陽光制御を提供するが、塩酸(HCl酸)環境条件などの化学的環境には、合理的に耐えることができない。市場にはいくつかの耐久性のあるlow-Eコーティングが存在するが、それらの性能は、特に、約1.0以下の望ましくないほど低い光対太陽利得比(LSG)値に関して、乏しいものである。LSG値が高いほど、より多くのエネルギーが節約される。そのため高いLSG値が望ましい。LSGはTvis/SHGCとして計算され、SHGCはNRFC 2001に準拠する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の例示的な実施形態は、高いLSG値を維持しながら銀の耐久性(例えば、化学的耐久性)を改善した、低反射率(low-E)コーティングを提供することによってこれらの問題を解決する。本発明の例示的実施形態は、化学的耐久性を改善するために、少なくとも1つの金属製又は実質的に金属製である、銀をドープされた保護層(例えば、AgZn)に隣接しかつ接触して提供される、少なくとも1つの銀(Ag)系赤外線(IR)反射層を含むlow-Eコーティングを有するコーティングされた物品に関する。銀系IR反射層及び隣接する銀ドープ保護層は、低放射率(low-E)コーティングの一部であり、少なくとも透明な誘電体層どうしの間に挟まれてもよい。驚くべきことにそして予想外なことに、銀をドープされた層の直下に、それに接触させて銀系IR反射層を提供することにより、銀系IR反射層及びlow-Eコーティング全体の熱安定性、耐腐食性、及び化学耐久性が改善される一方で、所望の場合、少なくとも1.10(より好ましくは少なくとも1.20、より好ましくは少なくとも1.30、最も好ましくは少なくとも1.60)の高いLSG値など、良好な光学特性及び放射率特性を維持することができるということが判明した。low-Eコーティングの耐久性を更に改善するために、Ni及び/又はCrを含むバリア層が、銀ドープ保護層の上方に、銀ドープ保護層に直接接触するように提供され得る。
【0006】
本発明の例示的実施形態では、ガラス基材で支持されたコーティングを含むコーティングされた物品が提供され、このコーティングは、ガラス基材上の第1の誘電体層と、ガラス基材上の、少なくとも第1の誘電体層の上方に位置する、銀を含む金属製又は実質的に金属製の赤外線(IR)反射層と、ガラス基材上の、銀を含む第1のIR反射層の上方にあり、かつそれに直接接触する、ドープされた銀を含む保護層と、ガラス基材上の第2の誘電体層であって、少なくとも第1の誘電体層、銀を含むIR反射層、及びドープされた銀を含む保護層の上方に位置する第2の誘電体層と、を含み、ドープされた銀を含む保護層の金属含有量は、原子百分率で80~99.5%のAgと、0.5~20%のドーパントであり、ドーパントは、Zn、Cu、Ni、W、Sn、Si、SiAl、ZnAl、ZnSi、ZnSiCu、及びこれらの組み合わせのうちの1つ以上であり、コーティングは、11Ω/sq.以下のシート抵抗(R)、及び0.2.以下の垂直放射率(E)を有する。
【0007】
本発明の特定の例示的実施形態では、ガラス基材で支持されたコーティングを含むコーティングされた物品が提供され、このコーティングは、ガラス基材上の第1の誘導体層と、ガラス基材上の、少なくとも第1の誘電体層の上方に位置する、銀を含む金属製又は実質的に金属製の赤外線(IR)反射層と、ガラス基材上の、銀を含むIR反射層の上方に位置し、かつそれに直接接触する、ドープされた銅を含む保護層と、ガラス基材上の第2の誘電体層であって、少なくとも第1の誘電体層、銀を含むIR反射層、及びドープされた銅を含む保護層の上方に位置する、第2の誘電体層と、を含み、ドープされた銅を含む保護層の金属含有量は、原子百分率で80~99.5%のCu及び0.5~20%のドーパントを含み、ドーパントは、Zn、Ag、Ni、W、Sn、Si、SiAl、ZnAl、ZnSi、ZnSiCu、及びこれらの組み合わせのうちの1つ以上であり、コーティングは、11Ω/sq.以下のシート抵抗(R)、及び0.2.以下の垂直放射率(E)を有する。
【0008】
本発明の特定の例示的実施形態では、ガラス基材で支持されたコーティングを含むコーティングされた物品の製造方法が提供され、この方法は、ガラス基材上に第1の誘電体層をスパッタ堆積させることと、ガラス基材上に、少なくとも第1の誘電体層の上方に位置する、銀を含む金属製又は実質的に金属製の赤外線(IR)反射層をスパッタ堆積させることと、ガラス基材上に、銀を含むIR反射層の上方に、それに直接接触するようにドープされた銀を含む金属製又は実質的に金属製の保護層をスパッタ堆積させることであって、堆積された状態で、ドープされた銀を含む保護層の金属含有量は、原子百分率で80~99.5%のAg、かつ0.5~20%のドーパントを含み、ドーパントがZn、Cu、Ni、W、Sn、Si、SiAl、ZnAl、ZnSi、ZnSiCu及びこれらの組み合わせのうちの1つ以上であるようにスパッタ堆積させることと、ドープされた銀を含む金属製又は実質的に金属製の保護層をスパッタ堆積した後、ガラス基材上に、少なくとも第1の誘電体層及び銀を含むIR反射層の上方に位置する、第2の誘電体層をスパッタ堆積させることと、を含み、コーティングが、11Ω/sq.以下のシート抵抗(R)と、0.2.以下の垂直放射率(E)と、を有する。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明の例示的実施形態による、コーティングされた物品の断面図である。
【0010】
図2】本発明の別の例示的実施形態による、コーティングされた物品の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
ここで図面を参照すると、同様の参照番号は、いくつかの図全体を通して同様の部分を示す。
【0012】
本発明の例示的実施形態は、low-Eコーティング30、40を支持するガラス基材1を含む、コーティングされた物品に関する。low-Eコーティング30、40は、高いlSG値を維持しながら、銀の耐久性(例えば、化学的耐久性)を改善するように設計されている。本発明の例示的実施形態は、化学的耐久性を改善するために、少なくとも1つの金属製又は実質的に金属製である、銀をドープされた保護層10(例えば、AgZn、AgCu、AgNi、AgW、AgSn、AgSi、AgSiAl、AgZnAl、AgZnSi、AgZnSiCu,及び/又はそれらの合金からなるか、又はそれを含む)に隣接しかつ接触して設けられる、少なくとも1つの銀(Ag)系赤外線(IR)反射層9、9’を含むlow-Eコーティングを有するコーティングされた物品に関する。銀を含むIR反射層9、9’は、好ましくは、本発明の例示的実施形態では、銀をドープされた保護層10とは異なる材料であり、IR反射層9、9’は、好ましくは、銀からなり、スパッタリングチャンバとの間のクロストークのため、堆積されるときには、他のいかなる金属をもドープされていないか、又はわずかにドープされているのみのいずれかであり、かつ保護層10は、銀からなり、堆積されるときには、本明細書で説明されるように、意図的に別の金属でドープされる。更に、本発明の特定の例示的実施形態では、銀ドープ保護層10は、好ましくは、隣接する銀系IR反射層9、9’よりも実質的に薄いが、それは、こうすることで、可視透過率を高めることができるからである。特定の例示的実施形態では、銀ドープ保護層10は、隣接する銀系IR反射層9、9’よりも、少なくとも40オングストローム(Å)薄い(より好ましくは少なくとも50Å薄い、更により好ましくは少なくとも75Å薄く、最も好ましくは少なくとも100Å薄い)。銀系IR反射層9、9’及び隣接する銀ドープ保護層10は、低放射率(low-E)コーティング30、40の一部であり、少なくとも透明な誘電体層の間に挟まれてもよい。驚くべきことにそして予想外なことに、銀をドープされた層10の直下に、それに接触させて銀系IR反射層9、9’を提供することにより、銀系IR反射層9及びlow-Eコーティング30、40全体の熱安定性、耐腐食性、及び化学耐久性が改善される一方で、所望の場合、少なくとも1.10(より好ましくは少なくとも1.20、より好ましくは少なくとも1.30、最も好ましくは少なくとも1.60)の高いLSG値など、良好な光学特性及び放射率特性を維持することができるということが判明した。LSG値は、単板で測定され得ることに留意されたい。low-Eコーティングの耐久性を更に改善するために、Ni及び/又はCrを含むバリア層11、26が、銀ドープ保護層10の上方に、銀ドープ保護層10に直接接触して設けられ得る。このようなコーティングされた物品は、単板窓、絶縁ガラス(IG)窓ユニットなどの用途で使用することができる。本明細書のコーティングされた物品は、所望により熱処理(例えば、熱焼戻し)されてもよい。
【0013】
図1は、本発明の例示的実施形態による、コーティングされた物品の断面図である。コーティングされた物品は、ガラス基材1(例えば、厚さ約1.0~10.0mm、より好ましくは厚さ約1.0mm~6.0mmの透明、緑色、青銅、又は青緑色のガラス基材)、及び基材1上に直接又は間接的のいずれかで提供される、多層low-Eコーティング(又は層組織)30を含む。図1に示すように、low-Eコーティング30は、以下のものからなるか又はそれらを含む:窒化ケイ素(例えば、Si又は他の何らかの好適な化学量論的組成物)からなるか又はそれを含む透明誘電体層2;酸化亜鉛(例えば、ZnO(例えば、「x」は約1であってもよい)又はZnAlO)を含む透明誘電体層7;銀からなるか又は銀を含む、金属製又は実質的に金属製のIR(赤外)反射層9;銀IR反射層9上に直接設けられ、それに接触する、金属製又は実質的に金属製である、銀をドープされた保護層10;Ni及び/又はCrの酸化物及び/又は窒化物(例えば、NiCrO)からなるか又はそれを含むバリア層11;酸化スズを含む透明誘電体層13及び窒化ケイ素を含む透明誘電体層15からなるか又はそれらを含むオーバーコート。窒化シリコンを含む層2及び/又は15は、Al、酸素などを更に含んでもよく、同様に酸化スズ層13は、窒素、亜鉛などの他の材料を更に含んでもよい。本発明の特定の例示的実施形態では、他の層及び/又は材料がコーティングに提供されてもよく、特定の例示的事例では特定の層が除去又は分割され得ることも可能である。例えば、本発明の特定の例示的実施形態では、酸化ジルコニウムオーバーコート層(図示せず)が層15の上方に設けられてもよい。更に、上記の層のうちの1つ以上は、本発明の特定の例示的実施形態において、他の材料をドープされてもよい。
【0014】
図2は、本発明の別の例示的実施形態による、コーティングされた物品の断面図である。図1とは対照的に、図2のlow-Eコーティング40は、2つの互いに離間した銀系IR反射層9及び9’を含み、図2のIR反射層9及び9’は層23~25によって離間されている。図1及び図2の実施形態の両方において、low-Eコーティングは、low-Eコーティングの化学的耐久性を改善するために、金属製又は実質的に金属製である、銀をドープされた保護層10に隣接して、その下方に、かつそれに接触するように設けられた、少なくとも1つの銀系IR反射層を含む。図2のlow-Eコーティング40では、銀をドープされた保護層10は、上側の銀層9’の上方に、それに接触して設けられるが、下側の銀層9の上方に、それに接触して設けられている上記のような銀をドープされた保護層は存在しない。図2の二重銀の実施形態の代替的実施形態では、それぞれの銀をドープされた保護層10が、上側銀IR反射層9’及び下側銀IR反射層9の両方の上方に、それぞれに接触して設けられていてよい。
【0015】
図2に示すlow-Eコーティング40は、ガラス基材1(例えば、透明、緑色、青銅色、又は青緑色のガラス基材で、厚さ約1.0~10.0mm、より好ましくは約1.0~6.0mmのもの)によって支持され、かつ以下の層を含む:スズ酸亜鉛からなるか又はそれを含む透明誘電体層22;酸化亜鉛又はスズ酸亜鉛からなるか又はそれを含む透明誘電体シード層7;金属製又は実質的に金属製の下側銀系IR反射層9;金属製又は実質的に金属製の下側銀系IR反射層9の上方に、それに直接接触して設けられ、NiCr、NiCrN、NiCrMo、NiCrMoO、NiCrMoN、NiTiNbO、ニッケル(Ni)酸化物、クロミウム/クロム(Cr)酸化物、TiO、又はニッケルクロム酸化物(NiCrO)などのニッケル合金酸化物、又は他の好適な材料からなるか又はそれを含み得るバリア層23;スズ酸亜鉛からなるか又はそれを含む透明誘電体層24;酸化亜鉛又はスズ酸亜鉛からなるか又はそれを含む透明誘電体シード層25;金属製又は実質的に金属製の上側銀系IR反射層9’;上側銀系IR反射層9’の上に直接設けられ、それに接触する金属製又は実質的に金属製である、銀をドープされた保護層10;銀をドープされた保護層10の上方に、それに直接接触して設けられ、NiCr、NiCrN、NiCrMo、NiCrMoO、NiCrMoN、NiTiNbO、ニッケル(Ni)酸化物、クロミウム/クロム(Cr)酸化物、TiO、又はニッケルクロム酸化物(NiCrO)などのニッケル合金酸化物、又は他の好適な材料からなるか又はそれを含み得るバリア層26;スズ酸亜鉛、酸化亜鉛、酸化スズなどからなるか又はそれ(ら)を含む透明誘電体層27;酸化亜鉛、酸化スズ、又は他の好適な材料からなるか又はそれ(ら)を含む透明誘電体層28;及び窒化ケイ素、シリコンオキシナイトライド、及び/又は他の好適な材料からなるか又はそれ(ら)を含む透明誘電体層15。窒化ケイ素を含む層15は、Al、酸素等を更に含んでもよい。本発明の特定の例示的実施形態では、他の層及び/又は材料がコーティングに提供されてもよく、特定の例示的事例では特定の層が除去又は分割され得ることも可能である。例えば、本発明の特定の例示的実施形態では、酸化ジルコニウムオーバーコート層(図示せず)が層15の上方に設けられてもよい。更に、上記の層のうちの1つ以上は、本発明の特定の例示的実施形態においては、コーティング40から除外されたり、あるいは他の材料でドープされたりしてもよい。
【0016】
従来の銀系low-Eコーティングは、HCl及びCASS溶媒中で起こるもののような、上述したような化学的耐久性の問題を有する。腐食のメカニズムとしては、電解腐食及び酸化競合が挙げられる。異なる電位を有する2つの金属が、導電性のある腐食性液体中で互いに電気的に接触しているときに異種金属接触腐食が生じる。2つの金属の効果は共にアノードの腐食速度を増加させ、かつカソードの腐食を低減させ又は抑制しさえする。したがって、アノード材料ははるかに速く腐食され、カソードの腐食が抑制される。本発明の例示的実施形態では、銀IR反射層9、9’はカソード位置にあるため、保護層10の犠牲アノード材料によってカソード銀9、9’が保護される。銀をドープされた層10は、本発明の例示的実施形態によるlow-E積層体における化学腐食から層9、9’の銀を保護するために、銀9、9’に直接隣接するものとして提供される。上述したように、本発明の図1及び2の実施形態では、比較的薄い金属製又は実質的に金属製である、銀をドープされた保護層10は、AgZn、AgCu、AgNi、AgW、AgSn、AgSi、AgSiAl、AgZnAl、AgZnSi、AgZnSiCu,及び/又はこれらの組み合わせからなっていてもよく、又はこれらを含んでもよい。
【0017】
なお、「実質的に」金属製とは、原子百分率で10%以下の酸素含有量、より好ましくは5%以下の酸素含有量を有する金属製であることを意味する。実質的に金属製の層9、9’及び10は、本発明の例示的実施形態において、0~10%の酸素及び/又は窒素、より好ましくは0~5%の酸素及び/又は窒素(原子%)、最も好ましくは0~2%の酸素及び/又は窒素を含有してもよい。
【0018】
図1及び図2中の保護層10のAg内のドーパント含有量は、好ましくは低く保たれ、保護層10の厚さは、好ましくは、保護層10による光吸収を低減し、所望に応じてコーティングされた物品の可視透過率を高く維持することが可能であるように、隣接する銀IR反射層9、9’に対して薄いことが好ましい。本発明の特定の例示的実施形態では、図1及び図2中及び他の実施形態の保護層10の金属含有量は、好ましくは80~99.5%のAg、より好ましくは90~99%のAg、最も好ましくは95~99%のAgと、好ましくは0.5~20%のドーパント、より好ましくは1~10%のドーパント、最も好ましくは1~5%のドーパントであり、ドーパントは、Zn、Cu、Ni、W、Sn、Si、SiAl、ZnAl、ZnSi、ZnSiCu,又はこれらの組み合わせのいずれかである。したがって、本発明の特定の例示的実施形態では、図1及び図2中及び他の実施形態の保護層10の金属含有量は、好ましくは80~99.5%のAg、より好ましくは90~99%のAg、最も好ましくは95~99%のAgと、好ましくは0.5~20%のZn、より好ましくは1~10%のZn、最も好ましくは1~5%のZnである。本発明の特定の例示的実施形態では、図1及び図2中及び他の実施形態の保護層10の金属含有量は、好ましくは80~99.5%のAg、より好ましくは90~99%のAg、最も好ましくは95~99%のAgと、好ましくは0.5~20%のCu、より好ましくは1~10%のCu、最も好ましくは1~5%のCuである。本発明の特定の例示的実施形態では、図1及び図2中及び他の実施形態の保護層10の金属含有量は、好ましくは80~99.5%のAg、より好ましくは90~99%のAg、最も好ましくは95~99%のAgと、好ましくは0.5~20%のNi、より好ましくは1~10%のNi、最も好ましくは1~5%のNiである。本発明の特定の例示的実施形態では、図1及び図2中及び他の実施形態の保護層10の金属含有量は、好ましくは80~99.5%のAg、より好ましくは90~99%のAg、最も好ましくは95~99%のAgと、好ましくは0.5~20%のW、より好ましくは1~10%のW、最も好ましくは1~5%のWである。本発明の特定の例示的実施形態では、図1及び図2中及び他の実施形態の保護層10の金属含有量は、好ましくは80~99.5%のAg、より好ましくは90~99%のAg、最も好ましくは95~99%のAgと、好ましくは0.5~20%のSn、より好ましくは1~10%のSn、最も好ましくは1~5%のSnである。本発明の特定の例示的実施形態では、図1及び図2中及び他の実施形態の保護層10の金属含有量は、好ましくは80~99.5%のAg、より好ましくは90~99%のAg、最も好ましくは95~99%のAgと、好ましくは0.5~20%のSi、より好ましくは1~10%のSi、最も好ましくは1~5%のSiである。スパッタ堆積などを介して堆積される保護層10は、好ましくは、原子百分率で10%以下の酸素を含有する金属製又は実質的に金属製のものであり、より好ましくは5%以下の酸素を含有する金属製又は実質的に金属製のものである。層10の上方に、NiCrOなどの酸化物層11(又は層26)がスパッタリングにより堆積される場合、層10は、その上方に層11を堆積させる間に、ある程度酸化され得る可能性がある。しかしながら、層11(又は層26)が酸化物層ではなく、その代わりに窒化物層である場合には、その堆積により、層10の有意な程度の酸化を引き起こすことはないはずである。
【0019】
単板の例では、コーティングされた物品は、ガラス基材1などの1つの基材のみを含む(図1~2を参照)。しかしながら、本明細書の単板コーティング物品は、複数のガラス基材を含む、例えば、IG窓ユニットなどのデバイスにおいて使用されてもよい。例示的なIG窓ユニットは、例えば、米国特許第5,770,321号、同第5,800,933号、同第6,524,714号、同第6,541,084号、及び米国特許出願公開第2003/0150711号に図示及び説明されており、これらの開示は全て参照により本明細書に組み込まれる。例示的なIG窓ユニットは、例えば、図1及び図2に図示されているコーティングされたガラス基材1を含み得るが、そのガラス基材1は、スペーサ、シーラント等を介して別のガラス基材に連結され、それらの間に間隙が画定されている。IGユニットの実施形態における基材間のこの間隙は、特定の事例では、アルゴン(Ar)などのガスで充填され得る。例示的なIGユニットは、それぞれ約3~4mmの厚さの一対の、互いに離間した実質的に透明なガラス基材を含んでもよく、そのうちの1つは、特定の例示的事例では本明細書におけるコーティングでコーティングされ、基材間の間隙は、約5~30mmであってもよく、より好ましくは約10~20mm、最も好ましくは約12~16mmであってよい。特定の例示的事例では、コーティングは、内側又は外側ガラス基材1の、間隙に面する側面上に提供されていてよい。
【0020】
窒化ケイ素を含む透明誘電体層2は、反射防止目的のために提供され、色シフトを低減することが判明している。窒化ケイ素層2は、Siからなっていてもよく、又はSiを含んでいてもよい。あるいは、窒化ケイ素層2は、Si-リッチ型(完全に化学量論的ではない)のものであってもよい。更に、窒化ケイ素層2及び/又は15の一方又は両方は、アルミニウム又はステンレス鋼などのドーパント、及び/又は少量の酸素を更に含んでもよい。これらの層は、特定の例示的実施形態ではスパッタリングによって、又は任意の他の好適な技術を介して堆積されてもよい。酸化チタン、スズ酸亜鉛、又は酸化スズなどの他の材料を、透明誘電体層2及び/又は15に使用することもできる。
【0021】
図1及び図2の実施形態においては、透明誘電体シード層7は、酸化亜鉛(例えば、ZnO)からなるか又はそれを含む。層7の酸化亜鉛は、特定の例示的実施形態において、他の材料、例えばAl(例えば、ZnAlOを形成するため)を含有してもよい。例えば、本発明の特定の例示的実施形態では、酸化亜鉛層7は、約1~10%のAl(又はB)、より好ましくは約1~5%のAl(又はB)、最も好ましくは約2~4%のAl(又はB)をドープされてもよい。層9における銀の下での酸化亜鉛7の使用は、銀の優れた品質を実現するのを可能にする。特定の例示的実施形態(例えば、以下で説明する)において、酸化亜鉛を含む層7は、セラミックZnO又は金属の回転マグネトロンスパッタリングターゲットをスパッタリングすることによって形成されてもよい。特定の例示的実施形態におけるセラミックターゲットの使用(例えば、Al、FなどでドープされていてもされていなくてもよいZnO)は、高品質の銀が提供されるのを可能にし、それによってより低い放射率のコーティングをもたらすことが判明した。セラミックターゲット中のZn:Oは、特定の例示的実施形態においては化学量論的であってもよいが、ZnO(例えば、0.25≦×≦0.99、より好ましくは0.50≦×≦0.97、更により好ましくは0.70≦×≦0.96)を含む少なくとも1つの準化学量論的セラミックターゲットを、特定の例において化学量論的であり得る酸化亜鉛を含む層7をスパッタ堆積させるのに使用してもよい。本発明の代替実施形態では、スズ酸亜鉛、NiCr、NiCrN、NiCrMoN、又はNiCrOなどの他の材料を層7に使用してもよい。
【0022】
なおも図1及び図2を参照すると、透明赤外線(IR)反射層9及び9’は、好ましくは導電性を有し、かつ金属製又は実質的に金属製であり、しかも好ましくは銀(Ag)を含むか、又は本質的に銀(Ag)からなるものである。IR反射層9及び9’は、本発明の好ましい実施形態では、他の金属をドープされない。IR反射層9及び9’は、低放射力、低シート抵抗などのlow-E及び/又は良好な太陽制御特性を有することを可能にするのに役立つ。特定の例示的実施形態では、銀(Ag)IR反射層9及び9’は、酸化亜鉛を含む透明誘電体シード層7、25の上方に位置し、層9、9’の一方又は両方は、銀をドープされたプロアクティブ層10の下方に、その層10に直接接触して位置する。
【0023】
なおも図1~2を参照すると、バリア層11及び26は、Ni及び/又はCrの酸化物からなる又はそれを含んでいてもよく、あるいは、金属製でありかつ、Ni及び/又はCrからなる又はNi及び/又はCrを含むものであってよく、かつ、例えば窒化物であってもよい。特定の例示的実施形態では、バリア層11及び/又は26はそれぞれ、NiCr、NiCrN、NiCrMo、NiCrMoO、NiCrMoN、NiTiNbO、ニッケル(Ni)酸化物、クロミウム/クロム(Cr)酸化物、TiO、又はニッケルクロム酸化物(NiCrO)などのニッケル合金酸化物、あるいは他の好適な材料からなっていてもよく、又はそれを含むものであってよい。層11及び26は、本発明の特定の例示的実施形態において、約0~20%の窒素、より好ましくは約1~10%の窒素を含有していてもよい。層11及び26は、本発明の異なる実施形態では、酸化等級付けされてもよく、又はされていなくてもよい。酸化等級付けとは、層の酸化度が層の厚さ方向に沿って変化することを意味するが、その結果、例えば、あるバリア層は、その層10に直接隣接する接触界面において、銀をドープされた保護層10からより遠く/最も遠くにあるその一部よりも、より酸化の程度がより低いと等級付けされ得る。驚くべきことに、銀をドープされた保護層10の上方に、それに直接接触するバリア層11及び26の存在は、low-Eコーティングの化学的耐久性を改善し、化学的曝露時の層間剥離の可能性を低減することが判明した。
【0024】
図1に示されるようなオーバーコートの例は、特定の例示的実施形態では、透明誘電体層13及び/又は15からなっていてもよく、又はそれを含んでいてもよい。誘電体層13は、本発明の特定の例示的実施形態では、酸化スズなどの金属酸化物からなるか、又はそれを含んでいてもよい。酸化スズ又はスズ酸亜鉛などの金属酸化物を含む層13は、反射防止目的のために提供され、また、コーティングされた物品の放射率及び製造プロセスの安定性及び効率性も改善する。酸化スズを含む層13は、本発明の特定の例示的実施形態において、窒素及び/又は亜鉛などの他の材料をドープされてもよい。酸化スズ系層13は、良好な耐久性をもたらし、光透過性を改善する。誘電体層15は、窒化ケイ素(例えば、Si又は他の好適な化学量論的組成物)からなるか又はそれを含んでいてよく、あるいは本発明の特定の例示的実施形態においては、シリコンオキシナイトライドなどの任意の他の好適な材料であるか、又はそれを含んでいてもよい。窒化ケイ素層15は、本発明の特定の例示的実施形態において、ドーパントとしてアルミニウムなどの他の材料、又は少量の酸素を更に含んでもよい。特定の例示的事例において、所望により、酸化ジルコニウムオーバーコートなどの他の層が、オーバーコート中の層15の上方に設けられてもよい。層15は、耐久性向上のために提供され、下にある層を保護するために提供される。特定の例示的実施形態では、窒化ケイ素系層15は、約1.9~2.2、より好ましくは約1.95~2.05の屈折率(n)を有し得る。特定の例示的実施形態では、Zrが、層15(又は層2若しくは層5)の窒化ケイ素に提供されてもよい。したがって、本発明の特定の例示的実施形態では、層2及び/又は15のうちの1つ以上は、SiZrN及び/又は酸化ジルコニウムからなるか、又はそれ(ら)を含んでいてもよい。
【0025】
図示されたコーティングの下方又は上方の他の層も提供され得る。したがって、層組織又はコーティングが基材1「の上にある」か、又は基材1「により支持されている」(直接的又は間接的に)が、他の層を、それらの間に提供することが可能であり得る。したがって、例えば、図1のコーティングは、他の層が層3と基材1との間に提供されていても、基材1「の上にあり」かつ基材1「により支持されている」と考えることができる。更に、特定の実施形態では、図示されたコーティングの特定の層が除去され得る一方で、他の実施形態では、本発明の特定の実施形態の全体的な趣旨から逸脱することなく、他の層が様々な層間に追加され得るか、又は様々な層が分割部分間に追加された他の層で分割され得る。
【0026】
様々な厚さが本発明の異なる実施形態で使用され得るが、図1の実施形態におけるガラス基材1上のそれぞれの層の厚さ及び材料の例は、ガラス基材から外側に向かって以下のとおりである(例えば、特定の例示的事例においては、酸化亜鉛層及び窒化ケイ素層中のAl含有量は、約1~10%、より好ましくは約1~3%であり得る)。なお、表1~2において、バリア層11、23、及び26は、NiCr、NiCrN、NiCrMo、NiCrMoO、NiCrMoN、NiTiNbO、ニッケル(Ni)酸化物、クロミウム/クロム(Cr)酸化物、TiO、又はニッケルクロム酸化物(NiCrO)などのニッケル合金酸化物などの上記の好適な材料のうちのいずれかからなっていてもよく、又はそれを含んでもよいことに留意されたい。表1~表2において、銀をドープされた保護層10は、AgZn、AgCu、AgNi、AgW、AgSn、AgSi、AgSiAl、AgZnAl、AgZnSi、AgZnSiCu、及び/又はこれらの組み合わせからなっていてもよく、又はこれらを含んでもよい。
【表1】
【0027】
様々な厚さが本発明の異なる実施形態で使用され得るが、図1及び図2の実施形態におけるガラス基材1上のそれぞれの層の厚さ及び材料の例は、ガラス基材から外側に向かって以下のとおりである(例えば、特定の例示的事例においては、酸化亜鉛層及び窒化ケイ素層中のAl含有量は、約1~10%、より好ましくは約1~3%であり得る)。
【表2】
【0028】
驚くべきことにそして予想外なことに、銀をドープされた層10の直下に、それに接触させて銀系IR反射層9、9’を提供することにより、銀系IR反射層9、9’及びlow-Eコーティング30、40全体の耐腐食性、熱安定性、及び化学耐久性が改善される一方で、所望の場合、高いLSG値など、良好な光学特性及び放射率特性を維持することができるということが判明した。保護層10のAg内のドーパント含有量は、好ましくは低く保たれ、銀をドープされた保護層10の厚さは、好ましくは、保護層10による光吸収を低減し、所望に応じてコーティングされた物品の可視透過率を高く維持することが可能であるように、隣接する銀IR反射層9、9’に対して、実質的に薄いことが好ましい。図1及び図2の実施形態では、例えば、本発明の特定の例示的実施形態では、銀ドープ保護層10は、好ましくは、隣接する銀系IR反射層9、9’よりも実質的に薄いが、それは、こうすることで、可視透過率を高めることができるからである。特定の例示的実施形態では、銀ドープ保護層10は、隣接する銀系IR反射層9、9’よりも、少なくとも40オングストローム(Å)薄い(より好ましくは少なくとも50Å薄い、更により好ましくは少なくとも75Å薄く、最も好ましくは少なくとも100Å薄い)。
【0029】
また、驚くべきことに、銀ドープ保護層10上方のバリア層11及び26の存在は、耐久性にとって特に重要であることも判明した。予想外に、銀系IR反射層9、9’上方の銀ドープ保護層10と組み合わせたバリア層11及び26の存在により、low-Eコーティングの化学的耐久性が驚くほど向上した。バリア層11、26が存在しない場合、化学試験時に層間剥離が生じ得る。
【0030】
本発明の特定の例示的実施形態では、本明細書のコーティングされた物品(例えば、図1及び図2を参照)は、熱焼戻しなどの任意の熱処理の前及び/又は後に、単板に測定されたときに、表3に示されるlow-E(低放射率)、太陽光及び/又は光学特性を有し得る。
【表3】
【0031】
図1及び図2のlow-Eコーティングには、本明細書で論じられる本発明の特定の例示的実施形態におけるIR反射層9(又は9’)と銀ドープ保護層10との組み合わせが使用されるが、IR反射層9(又は9’)と銀ドープ保護層10との、本明細書に記載される組み合わせを、他のlow-Eコーティングで使用することも可能である。例えば、限定するものではないが、米国特許第5,344,718号、同第6,576,349号、同第8,945,714号、同第9,371,684号、同第9,028,956号、同第9,556,070号、同第8,945,714号、及び/又は同第9,028,983号(全て参照により本明細書に組み込まれる)のいずれかにおけるlow-Eコーティング中の銀系IR反射層は、本発明の例示的実施形態では、本明細書で論じられるIR反射層9及び銀をドープされた保護層10の組み合わせで置き換えられてもよい。換言すれば、例えば、米国特許第5,344,718号、同第6,576,349号、同第8,945,714号、同第9,371,684号、同第9,028,956号、同第9,556,070号、同第8,945,714号及び/又は同第9,028,983号のいずれかの銀系IR反射層は、本明細書で論じられるように、銀系IR反射層9及び銀をドープされた保護層10によって置き換えられてもよい。
【0032】
本発明の代替的な実施形態では、本明細書に記載される任意の実施形態における保護層10は、Ag系ではなくCu系であってもよい。換言すれば、金属製又は実質的に金属製の保護層10は、Cuをドープされたものであってもよい。したがって、本発明の特定の例示的実施形態では、図1及び図2中及び他の実施形態の保護層10の金属含有量は、好ましくは80~99.5%のCu、より好ましくは90~99%のCu、最も好ましくは95~99%のCuと、好ましくは0.5~20%のドーパント、より好ましくは1~10%のドーパント、最も好ましくは1~5%のドーパントであり、ドーパントは、Zn、Ag、Ni、W、Sn、Si、SiAl、ZnAl、ZnSi、ZnSiAg,又はこれらの組み合わせのいずれかである。
【0033】
図2に示す実施例1を、本発明の例示的な実施形態に従って作製し、試験し、また比較例(CE)を作製し、試験した。実施例1及びCEは、AgZn保護層10(97% Ag、及び3% Zn)が実施例1に存在していたが、比較例(CE)には存在しないという点を除いて、同じlow-Eコーティング40を有していた。CE及び実施例1の層厚は以下のとおりであり、厚さの単位はnmである。
【表4】
【0034】
少なくとも8分間、少なくとも600℃で同じ熱処理(HT)にかけた後の、実施例1及びCEの光学データ及び熱データは、以下のとおりである。なお、以下の表における「垂直放射率」とは、垂直放射率(emmisivity/emittance)(E)を表す。
【表5】
【0035】
HTの後、実施例1とCEとの間に顕著な差異が見られた。特に、CEのコーティングは、実施例1のコーティングと比較して、HTの後、欠陥が少なくとも5倍であった。したがって、銀IR反射層9’の上方に銀をドープされた保護層10の追加することにより、コーティングの熱安定性を驚くほど改善することが実証された。
【0036】
また、同じ腐食試験を実施例1及び比較例(CE)に対して実施した。これは、それぞれの腐食/耐久特性を試験するためである。試験は、高湿度(85%)及び高温(85℃)(HHHT)の2日間試験であった。この試験後の実施例1とCEとの差異は、顕著であり、驚くべきことであった。HHHT試験後、CEは、実施例1よりも多く、かつはるかに悪い欠陥を有していた。実施例1はCEよりも、HHHT試験においてはるかに高い耐久性を有していたことが、顕微鏡による観察を通じてわかった。したがって、銀IR反射層9’の上方に銀をドープされた保護層10を追加したことにより、コーティングの耐久性を驚くほど改善することも実証された。
【0037】
本発明の例示的実施形態では、ガラス基材で支持されたコーティングを含むコーティングされた物品が提供され、このコーティングは、ガラス基材上の第1の誘電体層と、ガラス基材上の、少なくとも第1の誘電体層の上方に位置する、銀を含む金属製又は実質的に金属製の赤外線(IR)反射層と、ガラス基材上の、銀を含むIR反射層の上方に位置し、かつそれに直接接触する、ドープされた銀を含む保護層と、ガラス基材上の第2の誘電体層であって、少なくとも第1の誘電体層、銀を含むIR反射層、及びドープされた銀を含む保護層の上方に位置する第2の誘電体層と、を含み、ドープされた銀を含む保護層の金属含有量は、原子百分率で80~99.5%のAgと、0.5~20%のドーパントであり、ドーパントは、Zn、Cu、Ni、W、Sn、Si、SiAl、ZnAl、ZnSi、ZnSiCu、及びこれらの組み合わせのうちの1つ以上であり、コーティングは、11Ω/sq.以下のシート抵抗(R)、及び0.2.以下の垂直放射率(E)を有する。
【0038】
直前の段落に記載のコーティングされた物品においては、ドープされた銀を含む保護層の金属含有量は、原子百分率で90~99%のAgと、1~10%のドーパントを含んでもよく、ドーパントは、Zn、Cu、Ni、W、Sn、Si、SiAl、ZnAl、ZnSi、ZnSiCu、及びこれらの組み合わせのうちの1つ以上である。
【0039】
先行する2段落のいずれかに記載のコーティングされた物品においては、ドープされた銀を含む保護層の金属含有量は、原子百分率で95~99%のAgと、1~5%のドーパントを含んでもよく、ここでドーパントは、Zn、Cu、Ni、W、Sn、Si、SiAl、ZnAl、ZnSi、ZnSiCu、及びこれらの組み合わせのうちの1つ以上である。
【0040】
先行する3段落のいずれかに記載のコーティングされた物品においては、IR反射層は、銀からなっていても、又は銀から本質的になっていてもよい。
【0041】
先行する4段落のいずれかに記載のコーティングされた物品においては、IR反射層は金属製であってもよい。
【0042】
先行する5段落のいずれかに記載のコーティングされた物品においては、ドープされた銀を含む保護層は、金属製又は実質的に金属製であってもよい。
【0043】
先行する6段落のいずれかに記載のコーティングされた物品においては、コーティングされた物品は、少なくとも40%、より好ましくは少なくとも50%、最も好ましくは少なくとも70%の可視光透過率を有していてよい。
【0044】
先行する7段落のいずれかに記載のコーティングされた物品において、コーティングされた物品は、少なくとも1.10の光対太陽利得比(LSG)、より好ましくは少なくとも1.30のLSG、更により好ましくは少なくとも1.60のLSGを有してもよい。
【0045】
先行する8段落のいずれかに記載のコーティングされた物品において、ドーパントはZnを含んでもよく、ドープされた銀を含む保護層の金属含有量は、原子百分率で90~99%のAgと、1~10%のZnを、より好ましくは、原子百分率で95~99%のAgと、1~5%のZnを含み得る。
【0046】
先行する9段落のいずれかに記載のコーティングされた物品において、ドーパントはCuを含んでもよく、ドープされた銀を含む保護層の金属含有量は、原子百分率で90~99%のAgと、1~10%のCuを、より好ましくは原子百分率で95~99%のAgと、1~5%のCuを含み得る。
【0047】
先行する10段落のいずれかに記載のコーティングされた物品において、ドーパントはNiを含んでもよく、ドープされた銀を含む保護層の金属含有量は、原子百分率で90~99%のAgと、1~10%のNiを、より好ましくは原子百分率で95~99%のAgと、1~5%のNiを含み得る。
【0048】
先行する11段落のいずれかに記載のコーティングされた物品において、ドーパントはWを含んでもよく、ドープされた銀を含む保護層の金属含有量は、原子百分率で90~99%のAgと、1~10%のWを、より好ましくは原子百分率で95~99%のAgと、1~5%のWを含み得る。
【0049】
先行する12段落のいずれかに記載のコーティングされた物品において、ドーパントはSnを含んでもよく、ドープされた銀を含む保護層の金属含有量は、原子百分率で90~99%のAgと、1~10%のSnを、より好ましくは原子百分率で95~99%のAgと、1~5%のSnを含み得る。
【0050】
先行する13段落のいずれかに記載のコーティングされた物品において、ドーパントはSiを含んでもよく、ドープされた銀を含む保護層の金属含有量は、原子百分率で90~99%のAgと、1~10%のSiを、より好ましくは原子百分率で95~99%のAgと、1~5%のSiを含み得る。
【0051】
先行する14段落のいずれかに記載のコーティングされた物品において、ドーパントは、Zn及びCuを含んでもよく、ドープされた銀を含む保護層の金属含有量は、原子百分率で80~99%のAg並びに、0.5~10%のZn及び0.5~10%のCuを含み得る。
【0052】
先行する15段落のいずれかに記載のコーティングされた物品において、ドーパントはZn及びSiを含んでもよく、ドープされた銀を含む保護層の金属含有量は、原子百分率で80~99%のAg並びに、0.5~10%のZn及び0.5~10%のSiを含み得る。
【0053】
先行する16段落のいずれかに記載のコーティングされた物品において、コーティングされた物品は熱焼戻しされていてもよい。
【0054】
先行する17段落のいずれかに記載のコーティングされた物品において、ドープされた銀を含む保護層は、銀を含むIR反射層よりも、少なくとも40Å薄くてもよく、より好ましくは少なくとも75Å薄くてもよく、更により好ましくは少なくとも100Å薄くてもよい。
【0055】
先行する18段落のいずれかに記載のコーティングされた物品において、ドープされた銀を含む保護層は、厚さが約3~70Åであってもよく、かつ/又は銀を含むIR反射層は、厚さが約40~170Åであってもよい。
【0056】
先行する19段落のいずれかに記載のコーティングされた物品において、ドープされた銀を含む保護層は、厚さが約5~25Åであってもよく、かつ/又は銀を含むIR反射層は、厚さが約60~155Åであってもよい。
【0057】
先行する20段落のいずれかに記載のコーティングされた物品において、ドープされた銀を含む保護層は、厚さが約8~15Åであってもよく、かつ/又は銀を含むIR反射層は、約80~145Åの厚さであってもよい。
【0058】
先行する21段落のいずれかに記載のコーティングされた物品において、第1の誘電体層は、窒化ケイ素を含んでもよい。
【0059】
先行する22段落のいずれかに記載のコーティングされた物品において、コーティングは、9Ω/sq以下のシート抵抗(R)、及び/又は0.11以下の垂直放射率(E)を有してもよい。
【0060】
先行する23段落のいずれかに記載のコーティングされた物品において、コーティングは、ドープされた銀を含む保護層から離間し、それとは接触しない、銀を含む別の赤外線(IR)反射層を更に含んでもよい。
【0061】
先行する24段落のいずれかに記載のコーティングされた物品において、コーティングは、銀を含むIR反射層の下方に位置し、それと直接接触する、酸化亜鉛を含む誘電体層を更に含んでもよい。
【0062】
先行する25段落のいずれかに記載のコーティングされた物品において、コーティングは、ドープされた銀を含む保護層の上方に位置し、かつそれに直接接触する、Ni及び/又はCrを含むバリア層を更に含んでもよい。バリア層は、Ni及び/又はCrの窒化物を含んでもよい。
【0063】
本発明は、現在実用的で好ましい実施形態と考えられるものと関連して説明されたが、本発明は、開示される実施形態に限定されるものではなく、寧ろ、添付の特許請求の範囲の趣旨及び範囲内に含まれる様々な修正及び同等の構成を網羅することを意図するものであることを理解されたい。
図1
図2