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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-02-08
(45)【発行日】2022-02-17
(54)【発明の名称】複合弁
(51)【国際特許分類】
   F16K 27/00 20060101AFI20220209BHJP
   F16K 11/22 20060101ALI20220209BHJP
【FI】
F16K27/00 D
F16K11/22 Z
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2019560790
(86)(22)【出願日】2018-11-12
(86)【国際出願番号】 JP2018041874
(87)【国際公開番号】W WO2020100201
(87)【国際公開日】2020-05-22
【審査請求日】2020-12-04
(73)【特許権者】
【識別番号】000204033
【氏名又は名称】太平洋工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100112472
【弁理士】
【氏名又は名称】松浦 弘
(74)【代理人】
【識別番号】100202223
【弁理士】
【氏名又は名称】軸見 可奈子
(72)【発明者】
【氏名】金森 和宏
(72)【発明者】
【氏名】中山 康治
(72)【発明者】
【氏名】見津 輝聖
【審査官】小岩 智明
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-153223(JP,A)
【文献】特表2005-517133(JP,A)
【文献】特開2002-331195(JP,A)
【文献】特開2001-132864(JP,A)
【文献】特開平06-147359(JP,A)
【文献】特開昭59-089877(JP,A)
【文献】実開平06-018773(JP,U)
【文献】実開昭59-166075(JP,U)
【文献】実開昭57-001973(JP,U)
【文献】中国特許出願公開第105840884(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16K 1/00- 1/10,11/00-11/22,
27/00-27/02,51/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
弁体が直線運動する複数の弁を備える複合弁であって、
前記複数の弁に共有されるボディと、
前記ボディの複数位置に穿孔されて、互いに平行に延びる複数の平行孔と、
前記複数の平行孔の途中部分を絞ってなる複数の弁口と、
前記複数の平行孔に各々含まれ、前記弁体を収容する複数の弁室と、
前記複数の平行孔のうち前記弁口をはさんで各々の前記弁室と反対側の部分を含み、一端が前記ボディの外面に開口する複数の第1ポートと、
前記複数の前記弁室と交差する連絡孔と、
前記連絡孔のうち前記弁室同士の間部分に交差し、一端が前記ボディの外面に開口する第2ポートと、を有し、
前記連絡孔の端部に位置して前記ボディの外面に開口し、センサ又は逆止弁を取り付けるための装着部が設けられている複合弁。
【請求項2】
前記装着部は、前記ボディの外面のうち前記複合弁の使用時に上側を向く面に開口し、
前記装着部に、前記連絡孔に流体をチャージするために前記逆止弁が取り付けられている請求項1に記載の複合弁。
【請求項3】
前記第2ポートは、前記複数の平行孔と平行に配置されかつ、内部にフィルタが嵌合されている請求項1又は2に記載の複合弁。
【請求項4】
前記フィルタは、
一端有底、他端開放の筒状をなしたフィルタ本体と、
前記フィルタ本体の他端部に固定され、前記第2ポートの内面に当接して前記フィルタ本体を前記第2ポートの内面から浮かせた状態に保持する嵌合リングと、を有する請求項3に記載の複合弁。
【請求項5】
前記複数の弁室のうち前記弁口と反対側で前記ボディの外面に開口する複数の外面開口と、
前記複数の弁に設けられて、前記外面開口内に嵌合する複数の蓋部材とを備え、
前記複数の蓋部材は、前記ボディのうち同じ方向を向いた面に配置されている請求項1乃至4の何れか1の請求項に記載の複合弁。
【請求項6】
前記第2ポートは、前記複数の平行孔と平行に配置され、
前記複数の第1ポートには、前記複数の平行孔と直交して延び、一端が前記ボディの外面に開口する直交孔が含まれている請求項5に記載の複合弁。
【請求項7】
前記複数の弁室のうち前記弁口と反対側で前記ボディの外面に開口する複数の外面開口と、
前記複数の弁に設けられて、前記外面開口内に嵌合する複数の蓋部材とを備え、
前記複数の蓋部材は、前記ボディのうち反対側を向いた2面に分けて配置されている請求項1乃至4の何れか1の請求項に記載の複合弁。
【請求項8】
前記第2ポートは、前記複数の平行孔と平行に配置され、
前記複数の第1ポートには、前記複数の平行孔と直交して延び、一端が前記ボディの外面に開口する直交孔を有するエルボタイプの第1ポートと、前記平行孔が前記ボディの外面に開口する位置まで延びてなるストレートタイプの第1ポートとが含まれている請求項5乃至7の何れか1の請求項に記載の複合弁。
【請求項9】
前記連絡孔は、前記ストレートタイプの第1ポートを含む前記平行孔から前記ボディの外面まで延びて開口し、その開口がセンサ又は逆止弁で閉塞されている請求項8に記載の複合弁。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、複数の弁を備える複合弁に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、複数の弁が配管と継手を介して接続されている構造体が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2016-107745号公報(段落[0045]、図1
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1のように、複数の弁を備える構造体では、それら弁、配管及び継手の接続箇所が多いために、それらの接続作業及びシール作業に手間がかかると共に、流体が漏れるおそれも高かった。そのため、複数の弁を備える構造体に対して、組み付け工数の低減と流体が漏れるおそれの低減とが望まれている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するためになされた請求項1の発明は、弁体が直線運動する複数の弁を備える複合弁であって、前記複数の弁に共有されるボディと、前記ボディの複数位置に穿孔されて、互いに平行に延びる複数の平行孔と、前記複数の平行孔の途中部分を絞ってなる複数の弁口と、前記複数の平行孔に各々含まれ、前記弁体を収容する複数の弁室と、前記複数の平行孔のうち前記弁口をはさんで各々の前記弁室と反対側の部分を含み、一端が前記ボディの外面に開口する複数の第1ポートと、前記複数の前記弁室と交差する連絡孔と、前記連絡孔のうち前記弁室同士の間部分に交差し、一端が前記ボディの外面に開口する第2ポートと、を有し、前記連絡孔の端部に位置して前記ボディの外面に開口し、センサ又は逆止弁を取り付けるための装着部が設けられている複合弁である。
【図面の簡単な説明】
【0006】
図1】本開示の第1実施形態に係る複合弁の斜視図
図2】複合弁の底面図
図3】複合弁のA-A断面図
図4】開状態の電磁弁の拡大断面図
図5】開状態の膨張弁の拡大断面図
図6】フィルタの拡大断面図
図7】第2実施形態に係る複合弁の斜視図
図8】複合弁の底面図
図9】複合弁のB-B断面図
図10】第3実施形態に係る複合弁の斜視図
図11】複合弁の底面図
図12】複合弁のC-C断面図
【発明を実施するための形態】
【0007】
[第1実施形態]
以下、図1~6を参照しつつ、本実施形態の複合弁10について説明する。図1に示される本実施形態の複合弁10は、例えば、カーエアコンの冷媒回路に設けられ、配管に接続される。
【0008】
図1及び図2に示されるように、複合弁10は、縦長の直方体状となったボディ11を有し、ボディ11内に設けられた流路内に複数の弁体を備えてなる。なお、本実施形態の例では、複合弁10の使用時(即ち、複合弁10が配管や接続機器等の接続対象に接続された際)には、ボディ11の長手方向が上下方向(鉛直方向)となるように配置される。以下では、ボディ11において、使用時に鉛直方向上側を向く面を上面11T、下側を向く面を下面11B、ということとする。また、図3において、紙面に垂直な方向を前後方向、横方向を左右方向ということとし、ボディ11の外面のうち、左側、右側を向く面を、それぞれ左面11L、右面11Rということとする。
【0009】
図3に示されるように、ボディ11には、左右方向に延びて互いに平行になった第1の平行孔21と第2の平行孔22が備えられている。第1と第2の平行孔21,22は、左面11Lと直交していると共に、前後方向が略同じ位置に配置されている。第1平行孔21は、第2平行孔22よりも上側に配置されていると共に、ボディ11を貫通している。第1の平行孔21の一端は、ボディ11の左面11Lに開口し、第1の平行孔21の他端は、ボディ11の右面11Rに開口している。また、第2の平行孔22の一端は、ボディ11の左面11Lに開口し、第2の平行孔22の他端は、ボディ11の右端寄り位置まで延び、ボディ11の下面11Bに開口した下側直交孔29と直交している。
【0010】
なお、ボディ11は、例えば、直方体状の部材に平行孔21,22等の複数の孔が穿孔されることで形成される。このような直方体状の部材は、例えば、樹脂又は金属で構成され、一体成形、一体鋳造 、鍛造等によって形成することができる。
【0011】
第1と第2の平行孔21,22には、それぞれの途中部分が絞られてなる第1弁口25と第2弁口26が設けられている。本実施形態では、第1弁口25は、第2弁口26より左側に配置されている。なお、第1弁口25は、第1の平行孔21の内面に取り付けられてその内面から突出する部材によって形成されてもよい。第2弁口26についても同様である。
【0012】
各平行孔21,22内には、それぞれ第1弁口25と第2の弁口26を開閉する第1弁体31と第2弁体41とが設けられている。具体的には、第1弁体31は、第1弁口25より右側に配置され、第1の平行孔21の延在方向(即ち、左右方向)に直線運動して、第1弁口25を閉塞する閉位置(図3参照)と、第1弁口25を開放する開位置(図4参照)とに配置される。第2弁体41は、第2弁口26より左側に配置され、第2の平行孔22の延在方向(即ち、左右方向)に直線運動して、第2弁口26を閉塞する閉位置(図3参照)と第2弁口26を開放する開位置(図5参照)とに配置される。即ち、本実施形態では、第1弁体31と第2弁体41は、互いに平行な方向に移動する。
【0013】
第1と第2の平行孔21,22には、それぞれ第1弁体31と第2弁体41を直線運動可能に収容する第1弁室23と第2弁室24が設けられている。具体的には、第1弁室23は、第1の平行孔21のうち第1弁口25より右側に拡径されて右面11Rまで延びる拡径部により形成され、第1の平行孔21の右端の外面開口に嵌合する蓋部材としての第1の弁体ホルダ32により、第1弁室23の右端が閉じられている。また、第2弁室24は、第2の平行孔22のうち第2弁口26より左側に拡径されて左面11Lまで延びる拡径部により形成され、第2の平行孔22の左端の外面開口に嵌合する蓋部材としての第2の弁体ホルダ42により、第2弁室24の左端が閉じられている。第1と第2の弁体ホルダ32,42は、それぞれ第1弁体31と第2弁体41を上記直線運動可能に支持している。また、第1と第2の弁体ホルダ32,42は、弁体31,41をそれぞれ移動させるための機構(例えば、電磁コイル34,44等)を内部に備えていて、ボディ11から張り出している。
【0014】
第1の平行孔21のうち第1弁口25から左側に延びるストレートタイプの流路と、第2の平行孔22のうち第2弁口26より右側の部分及び下側直交孔29からなるエルボタイプの流路とは、配管や接続機器等の接続対象に接続される1対の第1ポート15を構成している(図2及び図3参照)。なお、1対の第1ポート15は、両方ともストレートタイプの流路であってもよいし、両方ともエルボタイプの流路であってもよい。
【0015】
図3に示されるように、ボディ11には、第1と第2の平行孔21,22に直交する(具体的には、第1及び第2弁室23,24に直交する)連絡孔27が設けられている。連絡孔27は、上下方向に延びて左面11L及び右面11Rと平行に配置され、連絡孔27の上端がボディ11の上面11Tに開口すると共に、連絡孔27の下端が第2の平行孔22まで延びている。上述の第1弁口25と第2弁口26は、それぞれ連絡孔27の内面における左側部分と右側部分とに開口している。第1弁口25と第2弁口26の開口縁には、それぞれ第1弁体31、第2弁体41が宛がわれる弁座25Z、26Zが形成されている(図4及び図5参照)。
【0016】
連絡孔27のうちボディ11に開口する上端部には、センサ又は逆止弁を取り付けるための装着部28が形成されている。装着部28に取り付けられるセンサとしては、例えば、圧力センサ、温度センサ、粉塵センサ等が挙げられる。装着部28に取り付けられる逆止弁としては、チャージ弁、リリーフ弁等が挙げられる。なお、装着部28は、例えば、センサ又は逆止弁に設けられた雄螺子部と螺合する雌螺子部を備えている。本実施形態では、装着部28には、連絡孔27に流体をチャージするためにチャージ弁20が取り付けられる。
【0017】
また、ボディ11には、連絡孔27に直交すると共に第1及び第2の平行孔21,22と平行な横孔により、第2ポート16が形成されている。第2ポート16の一端部は、連絡孔27のうち第1弁室23と第2弁室24の間の部分に連絡すると共に、第2ポート16の他端部は、ボディ11の右面11Rに開口している。第2ポート16は、配管や接続機器等の接続対象に接続される(図2及び図3参照)。なお、第2ポート16の一端(左端)は、連絡孔27よりも左側まで延び、円形凹部16Uを形成している。
【0018】
図6に示されるように、第2ポート16の内部には、フィルタ50が嵌合されている。具体的には、フィルタ50は、一端有底、他端開放の筒状をなしたフィルタ本体51を有し、軸方向に長くなっている。また、フィルタ50は、フィルタ本体51の他端部に固定された嵌合リング52を有している。嵌合リング52は、フィルタ本体51から径方向外側に周方向全体に亘って張り出していて、第2ポート16の内面に当接し、フィルタ本体51を第2ポート16の内面から浮かせた状態に保持する。なお、フィルタ本体51の一端部は、上述の円形凹部16U内に受容されていると共に、嵌合リング52は、第2ポート16のうち連絡孔27よりも右側の部分に配置されている。
【0019】
本実施形態では、第1弁体31と第1の弁体ホルダ32とボディ11とは、電磁弁30を構成している。また、第2弁体41と第2の弁体ホルダ42とボディ11とは、膨張弁40を構成している。即ち、複合弁10は、複数の弁(電磁弁30と膨張弁40)がボディ11を共有している構成となっている。なお、電磁弁30は、パイロット式となっていて、パイロット孔36とパイロット弁体37と連通路38とを有する。パイロット孔36は、第1弁体31を直線運動の方向に貫通し第1弁口25に連通する。パイロット弁体37は、電磁コイル34により第1弁体31と同軸上を直線運動し(図4参照)、パイロット孔36を第1弁口25と反対側から開閉する。連通路38は、第1弁体31を貫通し、パイロット弁体37がパイロット孔36から離れたときに、パイロット孔36のうち第1弁口25と反対側の開口と連絡孔27とを連通させる。
【0020】
なお、本実施形態では、第2ポート16が冷媒等の流体を流入するための入力ポートとなっていると共に、第1ポート15が流体を流出させるための出力ポートとなっている。第2ポート16から流入した流体は、フィルタ50の側面(詳細には、フィルタ本体51の側面)を通過して連絡孔27へと流入する。その後、流体は、第1弁口25と第2弁口26のうち、電磁弁30、膨張弁40によって開放状態となっている弁口を通過して、第1ポート15からボディ11の外部へと流出する。
【0021】
ところで、本実施形態では、電磁弁30と膨張弁40とでは、第1と第2の平行孔21,22に挿入される部分の長さが異なっている。このため、第1と第2の平行孔21,22では、ボディ11の外面から、第1弁口25までの深さと第2弁口26までの深さとを、異ならせる必要がある。ここで、本実施形態のように、連絡孔27の内面を利用して第1弁口25,第2弁口26を設けるときには、ボディ11の同じ面(左面11L又は右面11R)に第1と第2の平行孔21,22を開口させる場合、それら開口が形成される部分同士の間に段差部を設ける等して、該開口同士の左右方向の位置をずらす必要がある(後述の第2実施形態参照。図9)。これに対し、本実施形態では、第1の平行孔21と第2の平行孔22が、互いに反対側の面(右面11Rと左面11L)に開口している。従って、ボディ11の外面に上記段差部を設ける必要がなくなり、ボディ11を直方体状のような簡単な形状にすることができる。これにより、本実施形態の複合弁10では、ボディ11の製造が容易となる。
【0022】
本実施形態の複合弁10では、複数の弁でボディ11が共有されると共に、弁体31,41をそれぞれ収容する弁室23,24同士がボディ11内の連絡孔27で連絡しているので、複数の弁3040同士を接続する従来の継手や配管を廃止することができ、組み付け工数の低減と、流体が漏れる虞の低減を図ることができる。また、一般に、直線運動する弁体31,41を有する構造は、弁体31,41の直線運動の方向に嵩張る構造となるが、本実施形態では、複数の弁体31,41の移動方向が互いに平行になっているので、複合弁10をコンパクトにすることが可能となる。
【0023】
また、本実施形態の複合弁10では、ボディ11の外面において連絡孔27を穿孔する際に形成される開口を、センサ又は逆止弁を取り付けるための装着部28としたので、連絡孔27の開口を単に塞ぐだけの構造に比べて、連絡孔27の開口を有効利用することができる。この場合、装着部28を、ボディ11の外面のうち複合弁10の使用時に上側を向く面(本実施形態の例では、上面11T)に配置し、装着部28に、連絡孔27に流体をチャージするためのチャージ弁20を取り付けてもよい。これにより、チャージ弁20から流体をチャージし易くなると共に、チャージ弁20の内部に汚れが堆積する虞を低減することが可能となる。
【0024】
本実施形態の複合弁10では、第2ポート16の内部には、フィルタ50が嵌合されていて、その第2ポート16が平行孔21,22と平行に配置されている。この構成によれば、フィルタ50が第2ポート16の延在方向に長い場合であっても、複合弁10をコンパクトにすることが可能となる。また、本実施形態では、フィルタ本体51の他端部に嵌合リング52を固定し、嵌合リング52によってフィルタ本体51を第2ポート16の内面から浮かせた状態に保持する。これにより、フィルタ本体51と第2ポート16の内面との間に隙間を形成することができ、フィルタ50の側面を流体が通過し易くなる。
【0025】
なお、本明細書において、「平行」とは、厳密に平行な状態だけでなく、5度以下の角度で互いに傾斜する状態をも意味する。また、「直交」とは、85度以上95度以下の角度で交差することを意味し、厳密に90度で交差する場合に限定されない。
【0026】
[第2実施形態]
以下、図7図9を参照しつつ、第2実施形態について説明する。本実施形態の複合弁10Vでは、ボディ11Vの形状が上記第1実施形態と異なると共に、第1の平行孔21と第2の平行孔22の開口の向きが同じ側(左側)になっている点が、上記第1実施形態と異なる。ボディ11Vは、左面11Lの上下方向の途中位置に段差部12Lが設けられた形状となっている。具体的には、段差部12Lは、第1の平行孔21の左端開口と第2の平行孔22の左端開口の間に配置され、左面11Lのうち段差部12Lよりも上側部分が、左側に張り出した張出面11LHとなっている。なお、右面11Rの上下方向の途中位置にも、段差部12Rが形成され、右面11Rのうち段差部12Rよりも上側部分が陥没して陥没面12RKが形成されている。なお、ボディ11Vは、例えば、直方体状の部材を切削して段差部12L、段差部12Rを形成したものに、平行孔21等の複数の孔を穿孔することで形成することができる。
【0027】
また、本実施形態では、第1の平行孔21の開口の向きが、第1実施形態と異なるのに伴って、第1弁口25、第1弁体31、第1弁室23、第1弁体ホルダ32の配置も、第1実施形態と左右反対となっている。
【0028】
本実施形態によっても、上記第1実施形態と同様の効果を奏することができる。ここで、電磁弁30と膨張弁40とでは、第1と第2の平行孔21,22に挿入される部分の長さが異なるため、第1と第2の平行孔21,22では、左端から第1弁口25までの深さと、左端から第2弁口26までとの深さを異ならせる必要がある。これに対し、本実施形態のように、連絡孔27の内面を利用して第1弁口25,第2弁口26を設けるときには、第1弁口25と第2弁口26の左右方向の位置は略同じとなる。このため、左面11Lが平坦となっていると、電磁弁30と膨張弁40の両方を備えることが難しくなる。これに対して、本実施形態では、左面11Lのうち、第1と第2の平行孔21,22の左端開口の間に、段差部12Lが設けられているので、第1と第2の平行孔21,22において、左端から第1弁口25までと左端から第2弁口26までとの深さを容易に異ならせることができる。これにより、互いに異なる電磁弁30と膨張弁40を、各弁体ホルダ32,42が同じ側に配置された状態で備えることができるので、複合弁10Vのコンパクト化を図ることが可能となる。
【0029】
[第3実施形態]
以下、図10図12を参照しつつ、第3実施形態について説明する。本実施形態の複合弁10Wは、上記第2実施形態に対して、略直方体状のボディ11Wを有している点が異なると共に、複数の弁として同じ1対の膨張弁40Wを有している点が異なる(即ち、同じ1対の弁体41W、弁体ホルダ42Wを有している点が異なる)。また、図12に示されるように、第2実施形態に対して、上側の第1ポート15の形状が異なる。具体的には、上側の第1ポート15は、下側の第1ポート15と同様のエルボタイプとなっている。詳細には、第1の平行孔21の右端が、ボディ11Wの左右方向の途中位置に配置され、第1の平行孔21の右端から上方には、第1の平行孔21と直交する上側直交孔29Wが延びている。そして、第1の平行孔21のうち第1弁口25よりも右側の部分と、上側直交孔29Wとから、本実施形態の上側の第1ポート15が構成されている。
【0030】
本実施形態の膨張弁40Wでは、上記第1及び第2実施形態の膨張弁40と同様に、弁体41Wが直線運動して弁口25Wを開閉する。図12に示す例では、上側に配置された弁体41Wが弁口25Wを閉塞する閉位置に配置されていると共に、下側に配置された弁体41Wが弁口25Wを開放する開位置に配置されている。なお、本実施形態では、第1の平行孔21と第2の平行孔22同士、第1ポート15同士、は上下対称に配置されている。
【0031】
また、本実施形態では、連絡孔27における上面11Tの開口の装着部28には、封止栓20Wが取り付けられている。なお、装着部28には、センサ又は逆止弁が装着されていてもよい。
【0032】
本実施形態によっても、上記第1実施形態と同様の効果を奏することができる。本実施形態では、複合弁10Wに設けられる複数の膨張弁40Wが同じ構成となっているので、第1と第2の平行孔21,22の開口が同じ面(本例では、左面11L)に配置されていても、それら開口の形成部分を面一とすることができる。これにより、ボディ11Wを、直方体状のように単純な形状とすることが可能となるので、複合弁10Wの製造が容易となる。
【0033】
[他の実施形態]
(1)上記実施形態では、複合弁10を、カーエアコン用の冷媒回路に適用した構成を示したが、複合弁10の用途は特に限定されず、流体回路に設けられればよく、例えば、熱媒回路に適用されてもよい。
【0034】
(2)上記実施形態では、第1ポート15が出力ポート、第2ポート16が入力ポートとなっていたが、逆の構成でもよい。即ち、第1ポート15が入力ポート、第2ポート16が出力ポートとなっていてもよい。
【0035】
(3)上記実施形態では、第1弁室23と第2弁室24を連絡する連絡孔27が、第1と第2の平行孔21,22対して直交していたが、傾斜していてもよい。
【0036】
(4)上記実施形態において、第2ポート16が、第1と第2の平行孔21,22に交差する方向に延びていてもよい。
【0037】
(5)上記実施形態では、第1と第2の平行孔21,22が、平行となっていが、互いに傾斜する方向に延びている構造とすることもできる。この場合、弁体31,41は、互いに傾斜する方向に直線運動することとなる。また、この場合、第1と第2の平行孔21,22の開口が同じ側(例えば、左側)を向いていてもよいし、反対側(例えば、左側と右側)を向いていてもよい。
【0038】
(6)上記実施形態では、弁体31,41が直線運動する弁(電磁弁30,膨張弁40)が設けられていたが、この代わりに、弁体が回転運動する弁(例えば、ロータリー弁)が設けられていてもよい。
【0039】
(7)上記実施形態では、ボディ11は、複合弁10の使用時に、第1と第2の平行孔21,22が左右方向(水平方向)に延びるように配置されていたが、第1と第2の平行孔21,22が上下方向(鉛直方向)に延びるように又は上下方向に対して傾斜する方向に延びるように配置されていてもよい。また、上記実施形態では、ボディ11は、装着部28がボディ11のうち上側を向く面に開口するように配置されたが、装着部28がボディ11のうち下側を向く面又は水平方向を向く面に開口するように配置されてもよい。なお、装着部28に逆止弁としてのチャージ弁が取り付けられる場合には、装着部28の開口は、上側を向く面に配置されることが好ましい。
【符号の説明】
【0040】
10 複合弁
11 ボディ
15 第1ポート
16 第2ポート
21 第1の平行孔
22 第2の平行孔
27 連絡孔
図1
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図3
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図5
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図12