(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-02-08
(45)【発行日】2022-02-17
(54)【発明の名称】制御弁の制御ユニット、制御弁装置、空調システム、及び制御弁の制御方法
(51)【国際特許分類】
G05D 7/06 20060101AFI20220209BHJP
【FI】
G05D7/06 Z
(21)【出願番号】P 2020030695
(22)【出願日】2020-02-26
(62)【分割の表示】P 2018095398の分割
【原出願日】2014-02-07
【審査請求日】2020-03-12
(31)【優先権主張番号】P 2013023042
(32)【優先日】2013-02-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000169499
【氏名又は名称】高砂熱学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002860
【氏名又は名称】特許業務法人秀和特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】三戸 大介
(72)【発明者】
【氏名】青山 剛士
(72)【発明者】
【氏名】入部 真武
【審査官】影山 直洋
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-165578(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G05D 7/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
流体の流量または流速を弁の開閉によって制御する制御弁の開度、
前記制御を行うために用いられる値であって前記制御弁を通過する前記流体の流量若しくは前記流体の流速である制御基礎値、並びに、
前記制御弁を通過する前記流体の前記弁前後の差圧、の関係を示す特性データを記憶した記憶部と、
前記弁前後の差圧を検出または算出することで認識する差圧認識部と、
前記差圧認識部で認識した差圧、並びに前記記憶部又は他の装置から前記制御弁の制御に要する制御基礎値を取得し、前記取得した差圧並びに前記制御に要する制御基礎値に対応する制御弁の開度を前記特性データに基づいて求め、当該開度に基づく開度信号を、前記開度信号に基づく開度となるように前記弁を稼動させる駆動部に対して
、前記駆動部の駆動量が最小駆動量以下となるまで出力
可能な処理部と、を備え、
前記特性データは、前記弁前後の差圧毎に設定され、
前記処理部は、前記制御弁の開度を複数の前記特性データに基づいて求め
る、
制御弁の制御ユニット。
【請求項2】
流体の流量または流速を弁の開閉によって制御する制御弁の開度、
前記制御を行うために用いられる値であって他の装置から受信して前記制御弁の弁開度を操作し得る開度指令値である制御基礎値、並びに、
前記制御弁を通過する前記流体の前記弁前後の差圧、の関係を示す特性データを記憶した記憶部と、
前記弁前後の差圧を検出または算出することで認識する差圧認識部と、
前記差圧認識部で認識した差圧、並びに前記記憶部又は他の装置から前記制御弁の制御に要する制御基礎値を取得し、前記取得した差圧並びに前記制御に要する制御基礎値に対応する制御弁の開度を前記特性データに基づいて求め、当該開度に基づく開度信号を、前記開度信号に基づく開度となるように前記弁を稼動させる駆動部に対して
、前記駆動部の駆動量が最小駆動量以下となるまで出力
可能な処理部と、を備え、
前記特性データは、前記弁前後の差圧毎に設定され、
前記処理部は、前記制御弁の開度を複数の前記特性データに基づいて求め
る、
制御弁の制御ユニット。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の制御弁の制御ユニットを備え、
前記制御弁が、
前記流体の流路と、
開閉によって前記流体の流量を制御する前記弁と、
前記弁前後の差圧を前記差圧認識部へ伝える伝達手段と、有する、
制御弁装置。
【請求項4】
空調対象空間から排気される排気経路または空調対象空間に給気される給気経路に請求項3に記載の制御弁装置を備える、
空調システム。
【請求項5】
流体の流量または流速を弁の開閉によって制御する制御弁の開度、
前記制御を行うために用いられる値であって前記制御弁を通過する前記流体の流量若しくは前記流体の流速である制御基礎値、並びに、
前記制御弁を通過する前記流体の前記弁前後の差圧、の関係を示す特性データを記憶した記憶部から前記特性データを読み出すステップと、
差圧認識部が前記弁前後の差圧を検出または算出することで認識するステップと、
処理部が、前記差圧認識部で認識した差圧、並びに前記記憶部又は他の装置から前記制御弁の制御に要する制御基礎値を取得し、前記取得した差圧並びに前記制御に要する制御基礎値に対応する制御弁の開度を前記特性データに基づいて求め、当該開度に基づく開度信号を、前記開度信号に基づく開度となるように前記弁を稼動させる駆動部に対して
、前記駆動部の駆動量が最小駆動量以下となるまで出力
可能な出力ステップと、を実行し、
前記特性データは、前記弁前後の差圧毎に設定され、
前記処理部は、前記制御弁の開度を複数の前記特性データに基づいて求め
る、
制御弁の制御方法。
【請求項6】
流体の流量または流速を弁の開閉によって制御する制御弁の開度、
前記制御を行うために用いられる値であって他の装置から受信して前記制御弁の弁開度を操作し得る開度指令値である制御基礎値、並びに、
前記制御弁を通過する前記流体の前記弁前後の差圧、の関係を示す特性データを記憶した記憶部から前記特性データを読み出すステップと、
差圧認識部が前記弁前後の差圧を検出または算出することで認識するステップと、
処理部が、前記差圧認識部で認識した差圧、並びに前記記憶部又は他の装置から前記制御弁の制御に要する制御基礎値を取得し、前記取得した差圧並びに前記制御に要する制御基礎値に対応する制御弁の開度を前記特性データに基づいて求め、当該開度に基づく開度信号を、前記開度信号に基づく開度となるように前記弁を稼動させる駆動部に対して
、前記駆動部の駆動量が最小駆動量以下となるまで出力
可能な出力ステップと、を実行し、
前記特性データは、前記弁前後の差圧毎に設定され、
前記処理部は、前記制御弁の開度を複数の前記特性データに基づいて求め
る、
制御弁の制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、制御弁の制御ユニット、制御方法及び制御弁装置に関する。
【背景技術】
【0002】
弁の開度により流量を調整する制御弁の開度-風量(流量)特性は、直線で無いため、開度の大小によって応答性が異なる。つまり、同じ操作量に対する風量(流量)の変化量は、開度の大小によって異なる。また、風量(流量)は制御弁前後の差圧にも影響される。このような特性は弁の種類、大きさによっても異なり、また製造者が異なれば、同種の弁であっても異なる。
【0003】
このような制御上の複雑さを回避するために、制御弁で流体の流量を制御する場合には、現在流量を計測し、目標流量と現在流量の偏差の大きさに応じて操作量を決定するフィードバック制御が行われてきた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開平9-287798号公報
【文献】特開2010-169306号公報
【文献】特開平5-204466号公報
【文献】特開2010-223540号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、このフィードバック制御では、開度の大小によって応答性が変化するために、開度が小さい場合にはハンチングを起こし、開度が大きい場合には、緩慢な動作になるなどの問題があった。このため、実質的に制御範囲に上限・下限を設ける必要があるという問題もあった。
【0006】
このような制御範囲の制約を緩和するために、制御弁の流路形状を工夫して開度-風量(流量)特性を直線に近づけるなどの工夫がなされてきたが、開度-風量(流量)特性を直線へ充分に近づける設計は難しく、また、流路形状が複雑化してしまう。
【0007】
そこで本発明は、制御弁の特性や器差に係わらず、速やかに所望の制御を達成させることが可能な制御弁を制御する技術の提供を課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するため、本発明の制御弁装置は、
制御弁と当該制御弁の制御ユニットとを有し、
前記制御ユニットが、
流体の流量を弁の開閉によって制御する前記制御弁の開度、
前記制御を行うために用いられる値であって前記制御弁を通過する前記流体の流量若しくは前記流体の流速又は他の装置から受信して前記制御弁の弁開度を操作し得る開度指令値である制御基礎値、並びに、
前記制御弁を通過する前記流体の前記弁前後の差圧、
の関係を示す特性データを記憶した記憶部と、
前記弁前後の差圧を検出するまたは算出することで認識する差圧認識部と、
前記差圧認識部で認識した差圧並びに前記記憶部又は他の装置から前記制御弁の制御に要する制御基礎値を取得し、前記取得した差圧並びに前記制御に要する制御基礎値に対応する制御弁の開度を前記特性データに基づいて求め、当該開度に基づく開度信号を出力する処理部と、
前記開度信号に基づく開度となるように前記弁を開閉させる駆動部と、を備え、
前記制御弁が、
前記流体の流路と、
開閉によって前記流体の流量を制御する前記弁と、
前記弁前後の差圧を前記差圧認識部へ伝える伝達手段と、
を備えた。
【0009】
前記制御弁装置において、前記制御基礎値は前記制御弁を通過する前記流体の流量または前記流体の流速であり、前記制御に要する制御基礎値は前記制御弁を通過すべき要求流量または要求流速であり、前記特性データは、前記弁開度を、流量または流速と弁前後差圧との関数で示したデータであっても良い。
【0010】
前記制御弁装置において、前記制御基礎値は前記制御弁を通過する前記流体の流量または前記流体の流速であり、前記制御に要する制御基礎値は前記制御弁を通過すべき要求流量または要求流速であり、前記特性データは、前記制御弁を通過する前記流体の流量または流速毎に設定され、流量または流速が変化した際、前記処理部は、前記制御弁の開度を当該流量または流速に該当する特性データに基づいて求めても良い。
【0011】
前記制御弁装置において、前記特性データが、前記差圧毎に設定され、
前記処理部が、前記制御弁の開度を前記差圧に該当する特性データに基づいて求めても良い。
【0012】
上記課題を解決するため、本発明の制御弁の制御方法は、
流体の流量を弁の開閉によって制御する制御弁の開度、
前記制御を行うために用いられる値であって前記制御弁を通過する前記流体の流量若しくは前記流体の流速又は他の装置から受信して前記制御弁の弁開度を操作し得る開度指令値である制御基礎値、並びに、
前記制御弁を通過する前記流体の前記弁前後の差圧、
の関係を示す特性データを記憶した記憶部から前記特性データを読み出すステップと、
差圧認識部が、前記弁前後の差圧を検出するまたは算出することで認識するステップと、
処理部が、前記差圧認識部で認識した差圧並びに前記記憶部又は他の装置から前記制御弁の制御に要する制御基礎値を取得し、前記取得した差圧並びに前記制御に要する制御基礎値に対応する制御弁の開度を前記特性データに基づいて求め、当該開度に基づく開度信号を出力するステップと、
を実行する。
【0013】
前記制御方法において、前記制御基礎値は前記制御弁を通過する前記流体の流量または前記流体の流速であり、前記制御に要する制御基礎値は前記制御弁を通過すべき要求流量または要求流速であり、前記特性データは、前記弁開度を、流量または流速と弁前後差圧との関数で示したデータであっても良い。
【0014】
前記制御方法において、前記制御基礎値は前記制御弁を通過する前記流体の流量または前記流体の流速であり、前記制御に要する制御基礎値は前記制御弁を通過すべき要求流量または要求流速であり、前記特性データは、前記制御弁を通過する前記流体の流量または流速毎に設定され、流量または流速が変化した際、前記処理部は、前記制御弁の開度を当
該流量または流速に該当する特性データであっても良い。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、制御弁の特性や器差に係わらず、速やかに所望の制御を達成させることが可能な制御弁を制御する技術を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】
図1は、実施形態1に係る制御弁装置の概略構成図である。
【
図2】
図2は、風量QとΔPに係る値に対する弁体の開度を表す特性データの図である。
【
図5】
図5は、要求流量が上昇した際の制御弁の制御における具体的な動作の説明図である。
【
図6】
図6は、要求流量が上昇した際の制御弁の制御における具体的な動作の説明図である。
【
図7】
図7は、差圧が上昇した際の制御弁の制御における具体的な動作の説明図である。
【
図8】
図8は、差圧が上昇した際の制御弁の制御における具体的な動作の説明図である。
【
図9】
図9は、変形例1の特性データの一例を示す図である。
【
図10】
図10は、変形例1の特性データを用いて弁体の開度を求める例を示す図である。
【
図11】
図11は、変形例2の特性データの一例を示す図である。
【
図12】
図12は、変形例2の特性データを用いて弁体の開度を求める例を示す図である。
【
図13】
図13は、実施形態2に係る空調システムを示す概略図である。
【
図15】
図15は、実施形態2に係る制御弁の制御方法の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
〈実施形態1〉
《装置構成》
図1は、本実施形態に係る制御弁装置10の概略構成図である。
図1に示すように、制御弁装置10は、制御弁1と制御ユニット2とを有し、空調システムのダクト等に接続され、制御ユニット2が制御弁1の開閉を制御して、制御弁1内を通過する空気の流量(風量)を制御する。
【0018】
制御弁1は、本体11や、弁体(絞り機構)12、差圧チューブ(伝達手段)13を備えている。
【0019】
本体11は、内空を空気の流路とする管状の部材(管状体)であり、例えばVAV方式の空調システムにおける給気ダクトと接続される。
【0020】
弁体12は、制御ユニット2の制御によって開閉させられ、開状態で本体11内空の開口面積を最大とし、閉状態で本体11内空の開口面積を最小(開口を無くし、空気の通過を止めることも含む)とする絞り機構である。弁体12は、開閉により風量を制御できれば、どのような形式であっても良いが、本実施形態では、回動軸121と絞り羽122とを有するバタフライ弁である。絞り羽122は、本体11内を通過する空気の流通方向19と直交する面における本体内空の形状と略同じ外形とした平板状の部材であり、回動軸
121を中心に回動可能に保持されている。
【0021】
差圧チューブ13は、弁体12前後の差圧を制御ユニット2に伝える伝達手段である。ここで弁体12前後とは、弁体12に対し、空気の流通方向19において上流側を前、下流側を後としている。
【0022】
差圧チューブ13は、一端が弁体12の前側で本体11に接続されて空気の流路と連通し、他端が制御ユニット2と接続された前側チューブ(前側伝達手段)131と、一端が弁体12の後側で本体11に接続されて空気の流路と連通し、他端が制御ユニット2と接続された後側チューブ(後側伝達手段)132とを有している。
【0023】
また、制御ユニット2は、記憶部21や、差圧認識部22、処理部23、駆動部24を備えている。
【0024】
記憶部21は、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)、PROM(Programmable Read-Only Memory)、EEPROM(Electrically Erasable Programmable Read-Only Memory)など、データを記憶し、電気的に読み出し可能な記憶装置である。記憶部21は、制御弁1の開度と、制御を行う際の要求流量(制御基礎値)と、制御弁1を通過する空気の弁前後の差圧との関係を示す特性データを記憶している。この特性データは市販の制御弁毎に異なるものであり、各々に対して予め試験(実測)して求め、記憶部21に記憶しておく。なお、特性データは、実測したデータに限らず、実測したデータを補正したデータや、類似した制御弁の特性データから換算したデータ、制御弁の仕様から推定したデータ、シミュレーションによって算出したデータ等であっても良い。
【0025】
差圧認識部22は、弁前後の差圧を検出するまたは算出することで認識する。本実施形態の差圧認識部22は、2点間の圧力の差を計測する差圧計であり、入力ポート(口金)221の一方に前側チューブ131が接続され、他方に後側チューブ132が接続されている。差圧認識部22は、二つの入力ポートに伝達される圧力の差によって受圧素子(例えばダイアフラム)を変位させ、この変位量を半導体歪みゲージの抵抗値変化や電極間の静電容量変化等によって電気信号に変換し、差圧信号として出力する構成としている。なお、弁前後の差圧を計測する方法としてはこれに限らず、弁の前(上流側)と後(下流側)のそれぞれに圧力の絶対値を計測する圧力センサを設置し、当該圧力センサを通信線で差圧認識部と接続して、差圧認識部は2つの圧力センサで検知された数値の差から算出するものであってもよい。この場合、通信線が本願の伝達手段を構成する。
【0026】
処理部23は、差圧認識部22で認識した差圧及び要求流量に対応する制御弁1の開度を前記特性データに基づいて求め、当該開度に基づく開度信号を出力する等、所定の処理を行うデバイスであり、例えばプログラムに基づいて前記処理を行う汎用のプロセッサー(CPU、MPU等)や、前記処理を行う特定用途向け集積回路(ASIC)、前記処理を行う論理回路を設定可能なプログラマブルロジックデバイス等である。
【0027】
駆動部24は、ステッピングモータ等の駆動源241や、駆動源241の駆動力を弁体12の回動軸121に伝達する動力伝達機構242を有している。また、駆動部24は、弁体12の角度や位置、移動量等、弁体12の開度を検出するためのセンサー(例えばエンコーダ)を有しても良い。
【0028】
《特性データの説明》
弁体12の開閉によって、制御弁1を通過する空気の流量(風量)が調整される際に、例えば弁体12が閉じた状態、即ち弁体12による抵抗が高い状態であると、動圧により弁体12の前側で圧力が高くなり、弁体12前後の圧力差は大きくなる。一方、弁体12
が開いた状態、即ち弁体12による抵抗が低い状態であると、動圧による弁体12前側での圧力の上昇が少なく、弁体12前後の圧力差は小さくなる。
【0029】
これら風量Q、差圧ΔP、抵抗係数ξとの関係は一般に以下の式で表される。ここで、Aは弁体が設置された流路の断面積、ρは流体の密度である。
【数1】
【0030】
式1のうち、入力値である風量QとΔPを左辺にまとめると、式2に示すように右辺は抵抗係数ξだけの関数となる。
【数2】
抵抗係数ξが弁体12の開度(本例では角度θ)毎に一意に定まる場合、右辺の値に
対応するθは一意に定まる。即ち、右辺の値とθとの関係は、1本の曲線(以下、特性曲線とも称す)で表されることになる。
【0031】
図2は、式2の右辺の値に対する角度θとの関係を表す特性曲線、即ち風量QとΔPに係る値(式2の左辺の値)に対する弁体12の開度を表す特性データの図である。
【0032】
図2では、式2の左辺の値を縦軸にとり、弁体12の角度θを横軸にとって、この対応関係を特性曲線31で示している。この特性曲線31は、制御弁1の弁体12の角度θ毎に、制御弁1を通過する風量Q及び弁体12前後の差圧ΔPに係る値との関係を、例えば建設しようとする設備に採用される弁やバルブを試験施設にて予め測定し、この対応関係を示す対応表や関係式等の特性データとして記憶部に記憶する。
【0033】
これにより制御ユニット2の処理部は、目標とする風量、即ち制御によって要求する風量(以下、要求風量とも称す)Q及び差圧ΔPが入力された場合、
図2に示すように、式2の左辺の値を求め、この値32に対する角度θの値33を特性曲線31に基づいて求める。
【0034】
ここで角度θは、例えば弁体12を全閉状態としたときの角度を0°とし、この全閉状態から開く方向へ回動軸121を中心に回転させたときの弁体12の位置までの回転角である。なお、弁体12の開度は、角度θに限らず、例えば全閉状態を0%、全開状態を100%とし、この0%から100%までの値として示しても良い。
【0035】
また、
図2の例では、特性データとして、式2の左辺の値と角度θとの対応関係を求めたが、弁体12の開度(角度θ)との対応関係を求める式は、これに限らず「抵抗係数」と「風量Q及び差圧ΔP」とが、それぞれ異なる辺となるように式1を変数分離したものであれば、どのような式であっても良い。例えば、式1を変形して式3とし、弁体12の開度との対応関係を求める値として式3の左辺の値を用いても良い。式3の左辺の値(抵抗係数ξ)と弁体12の開度(角度θ)との対応関係を求めて特性データとしても良い。縦軸にとる値をQ/√ΔP(式2の左辺)またはその逆数とするほうが、計算が簡易となる上に、数値の桁数も小さくなり、処理部23による処理速度の向上につながるので、よ
り好ましい。
【数3】
【0036】
また、高精度な制御性が求められる場合に、風量Q(あるいは風速V)が異なるときの抵抗係数の違いの影響が無視できないことがある。このような場合は、風量Q(あるいは風速V)毎の複数の特性曲線を使って制御しても良い。
【0037】
図3は、風速3m/sから風速7m/sまでの1m/s毎に特性曲線34~38を求めた場合を示している。これにより風量Q(あるいは風速V)に応じた特性曲線34~38を用いて精度良く弁体12の開度(角度θ)を求めることができる。
【0038】
例えば設定風速が4.1m/sで、入力値の関数の値がIaであった場合、
図3に示すように、Iaと対応する特性曲線35の値θ35と特性曲線36の値θ36を求め、この間の風速4.1m/sに相当する値θaを求める。
【0039】
《制御方法》
図4は、制御弁1の制御方法の説明図である。制御ユニット2は、電源が投入されると、差圧認識部22や処理部23を動作させて
図4の処理(制御方法)を実行する。
【0040】
先ず、差圧認識部22は、前側チューブ131を介して伝達される弁体12前側の圧力と、後側チューブ132を介して伝達される弁体12後側の圧力との差を検出し、この差圧に応じた電気信号を処理部23に入力する(ステップS1)。この差圧の検出は、所定のサンプリング周期で検出するものでも良いし、処理部23などから要求されたときに検出するものでも良い。
【0041】
処理部23は、予め設定されたプログラムやロジックに基づいて処理を開始し(ステップS2)、要求風量(設定風量)Qを取得する(ステップS3)。この要求風量Qの取得は、予め記憶部21等に設定されたものを読み出すものでも良いし、空調システム等の他の装置から入力を受けるものでも良い。
【0042】
差圧信号の受信及び要求風量の取得を行った処理部23は、式2や式3の如く差圧信号及び要求風量に係る関数の値を求めると共に(ステップS4)、特性データを記憶部21から読み出し(ステップS5)、差圧信号及び要求風量に係る関数の値と対応する弁体12の開度(例えば角度θ)を特性データに基づいて求め、開度信号として駆動部24に送信する(ステップS6)。
【0043】
駆動部24は、処理部23からの開度信号に基づいてステッピングモータ等の駆動源241を駆動し、動力伝達機構242を介して駆動源241の駆動力を弁体12の回動軸121に伝達して弁体12を回転させ、前記開度信号の示す開度に調整する(ステップS7)。
ここで制御基礎値は要求流速であってもよく、取得した要求流速と予め取得しておいた流路断面積とで「流量=流路断面積×流速」の式により、流速を流量に置き換えて制御に用いればよい。
また、流路の開口率を制御により変化させる場合の当該箇所における要求流速を制御基礎値とする場合は、「流量=流路断面積×開口率×流速」の式により、入力された開口率と、予め取得しておいた流路断面積と、取得した要求流速とで、流量に置き換えて制御に用いればよい。
【0044】
図5,
図6は、要求風量(流量)が上昇した際の制御弁1の制御における具体的な動作の説明図である。
【0045】
要求風量Q1に対し、弁体12前後の差圧ΔP1、弁体12の開度θ1で、要求どおりの風量Q1が流れているときに(T1)、要求風量がQ1からQ2に上昇した場合(T2)、処理部23は、特性曲線(特性データ)51に基づいてQ2/√ΔP1と対応する角度θ2を求め、弁体12の角度をθ2とするように開度信号を駆動部24へ送る(T3)。
駆動部24は、開度信号に従って弁体12を回転させ、弁体12の角度をθ2とする(T4)。
【0046】
しかし、弁体12の角度をθ1からθ2に変動させると、弁体12が開方向に動くので、弁体12前後の差圧がΔP1から例えばΔP2に低下し(T5)、開度がθ2に達しても風量がQ2に到達しない(Q2´)。
【0047】
そこで、弁体12の角度がθ2に達し、差圧がΔP2となった際、処理部23は、Q2/√ΔP2と対応する角度θ3を求め、弁体12の角度をθ3とするように開度信号を駆動部24へ送る(T6)。
駆動部24は、開度信号に従って弁体12を回転させ、弁体12の角度をθ3とする(T7)。
【0048】
しかし、弁体12の角度をθ2からθ3に変動させると、弁体12が開方向に動くので、弁体12前後の差圧がΔP2よりも低下し(T8)、開度がθ3に達しても風量がQ2に到達しない。
【0049】
そこで前述と同様に角度θを求めて弁体12の角度を制御する処理を繰り返し、最終的に風量が要求風量Q2となるときには、差圧がΔP2よりも低いΔP3、開度がθ2よりも大きいθ4で収束する(T9)。
【0050】
例えば、ステッピングモータ(駆動源241)により弁体12を回転させる場合に、風量が要求風量Q2に近づくに従って回転量が徐々に小さくなっていき、開度信号に基づく角度と現在角度との差が、駆動部24の最小駆動量(例えば0.18°)以下となって収束する。
【0051】
図5に示すように制御弁装置10は、現状の差圧と対応する弁体の角度(開度)を特性データに基づいて決定し、弁体12を制御することにより、風量を速やかに要求どおりの風量にすることができる。
【0052】
例えば従来のフィードバック制御であると、現状の風量を検出して要求風量との風量偏差を算出し、風量偏差に比例した大きさの補正動作を行うことで、要求風量に近づける動作を行っている。このとき補正量を算出する際の比例定数が過大であると、要求風量を挟んで行き来するような動作(ハンチング)を生じる。逆に、フィードバック制御の比例定数は、弁体の開度が小さいほど小さくする必要があるため、小さい開度まで流量制御に使おうとすると、比例定数を小さくして動作を緩慢にさせる必要が生じる。
【0053】
これに対し本実施形態の制御弁装置では、上述のように、弁が開く方向に開度が変わる時は差圧が減少するため1回の動作では要求風量よりも僅かに少なく、逆に閉じる方向に開度が変わる時は差圧が増加するため1回の動作では要求風量よりも僅かに多くなる。このように、本願の制御弁装置による動作では要求風量を通り過ぎることが無いため、要求
風量を挟んで行き来するような動作(ハンチング)が起こることは無い。また、本願のこのような特性は、弁体の動作速度に依存しないため、動作速度をモータ性能の限界まで早く設定してもハンチングの無い安定した動作が確保できる。
【0054】
なお、上記
図5、
図6の説明では、
図5の処理T3,T5,T9において
図6に示す特性曲線(特性データ)51から差圧及び風量(Q/√ΔP)に応じた弁体の開度θを求めたが、これに限らず、
図3に示すように風量Q或いは風速V毎の複数の特性曲線に基づき、差圧及び制御基礎値(Q/√ΔP)に応じた弁体の開度θを複数の特性曲線から近似して求めても良い。
【0055】
例えば、要求どおりの風量Q1が流れ、差圧がΔP1のときに、要求風量がQ2に上昇した場合、Q2/√ΔP1の値を
図3におけるIa、風速をVaとし、複数の特性曲線34~38のうち、風速Vaの前後の特性曲線から値Iaと対応する開度θを求め、夫々の開度θから風速Vaに相当する開度θを近似する。即ち、風速Va=4.1m/sであれば
、風速V=4m/sの特性曲線35と風速V=5m/sの特性曲線36から値Iaと対応する開度θ35,θ36を求め、夫々の開度θ35,θ36から風速Vaに相当する開度θaを近似する
。
【0056】
図7,
図8は、差圧が上昇した際の制御弁1の制御における具体的な動作の説明図である。
【0057】
要求流量Qaに対し、弁体12前後の差圧ΔPd、弁体12の開度θdで、要求どおりの風量Qaが流れているときに(T11)、差圧がΔPdからΔPcに上昇した場合(T12)、処理部23は、特性曲線(特性データ)52に基づいてQa/√ΔPcと対応する角度θcを求め、弁体12の角度をθcとするように開度信号を駆動部24へ送る(T13)。
駆動部24は、開度信号に従って弁体12を回転させ、弁体12の角度をθcとする(T14)。
【0058】
しかし、弁体12の角度をθdからθcに変動させると、弁体12が閉方向に動くので、弁体12前後の差圧がΔPcから例えばΔPbに上昇し(T5)、開度がθcとなっても風量がQbへ上昇する。
【0059】
そこで、弁体12の角度がθcに達し、差圧がΔPbとなった際、処理部23は、Qa/√ΔPbと対応する角度θbを求め、弁体12の角度をθbとするように開度信号を駆動部24へ送る(T16)。
駆動部24は、開度信号に従って弁体12を回転させ、弁体12の角度をθbとする(T17)。
【0060】
弁体12の角度をθcからθbに変動させると、再度、弁体12が閉方向に動くので、弁体12前後の差圧がΔPbよりも上昇し(T18)、開度がθbとなっても風量がQaよりも高くなる。
【0061】
そこで前述と同様に角度θを求めて弁体12の角度を制御する処理を繰り返し、
最終的に風量が要求風量Qaとなるときには、例えば差圧がΔPcよりも高いΔPa、開度がθcよりも小さいθaで収束する(T19)。
【0062】
図7に示す例においても制御弁装置10は、現状の差圧と対応する弁体の角度(開度)を特性データに基づいて決定することで、前述の
図5の例と同様、速やかに要求どおりの風量にすることができる。
【0063】
《実施形態1の効果》
以上のように本実施形態によれば、要求風量と弁体12前後の差圧から一意に弁体12の開度が求まるため、フィードバック制御と比べて速やかに要求風量を達成するように制御弁1を制御できる。
【0064】
また、本実施形態によれば、制御弁1の特性に左右されることなく、全閉から全開までの広い範囲で高い応答性が得られ、応答性の影響を受けることなくレンジアビリティの高い制御が可能となる。
【0065】
また、処理部23は、制御弁1の現在の開度の値及び差圧認識部22で認識した差圧の入力を受けて、特性データに基づいて現在の風量(流量)を求めるようにしても良い。このようにすることで、現在の風量(流量)を確認でき、要求風量の入力を受けてから実際の風量が要求どおりの風量となるまで迅速に制御されているか否かを監視することができる。
【0066】
《変形例1》
前述の実施形態1では、差圧及び制御基礎値と対応する開度の関係を示す特性データに基づいて開度を求める構成としたが、これに限らず、本変形例1は、差圧と対応する開度の関係を制御基礎値毎に示す特性データに基づいて開度を求める構成とした。なお、この他の構成は、実施形態1と同じであるので、同一の要素には同符号を付すなどして再度の説明を省略する。
【0067】
図9は、本変形例1の特性データの一例を示す図である。
図9の特性データは、縦軸に差圧ΔPを取り、横軸に弁体12の開度θを取り、差圧ΔPと開度θとの関係を風速V毎の複数の特性曲線で示した。この特性曲線は、例えば建設しようとする設備に採用される弁やバルブを試験施設にて予め測定して求めることができる。なお、本変形例1の特性データは、風速V毎の特性曲線に限らず、風量Qといった制御基礎値毎の特性曲線であっても良い。
【0068】
この特性曲線を要求する風速Vの最小値から最大値にかけて所定のピッチで求めて記憶部21に記憶しておく。
図9では、風速1m/sから風速10m/sの複数の特性曲線54~59を示している。各特性曲線を求める風速のピッチ(間隔)は、等間隔であっても良いし、不等間隔であっても良い。
【0069】
図10は、本変形例1の特性データを用いて弁体12の開度を求める例を示す図である。例えば設定風速が9.2m/sで、差圧認識部22で検出した差圧がPaであった場合、
先ず設定風速9.2m/sを挟む2本の特性曲線、即ち風速9.2m/sより風速Vの低い特性曲線と風速Vの高い特性曲線を選択する。
図10では、風速Vの低い特性曲線のうち最も設定風速9.2m/sに近い特性曲線55と、風速Vの高い特性曲線のうち最も設定風速9
.2m/sに近い特性曲線54とが選択される。
【0070】
次に差圧認識部22により入力された差圧Paと特性曲線54、55とが交わる位置の開度θ54,θ55を求め、この風速9m/sの開度θ55と風速10m/sのθ54を風速9.2m/s
で按分して開度θsを求める。
【0071】
このように本変形例1によれば、弁体12前後の差圧ΔPと要求風速Vとから一意に弁体12の開度θが求まるため、フィードバック制御と比べて速やかに要求風速Vを達成するように制御弁1を制御できる。
【0072】
また、本変形例1では、差圧ΔPと弁体12の開度θとの対応関係を特性データとして記憶しているため、制御時に、検出した差圧ΔPをそのまま用いて、対応する弁体12の開度θを求めることができ、制御時の処理を簡素化できる。
【0073】
更に、本変形例1では、特性データを風速V或は風量Q毎に設定しているので、各特性曲線の差圧ΔPと開度θとの関係を夫々の風量Q或は風速Vに応じた値に設定でき、風量Q或は風速Vが異なるときの差圧ΔPと開度θとの関係の違いの影響を抑えて精度良く制御弁1の制御を行うことができる。
【0074】
《変形例2》
前述の実施形態1では、差圧及び制御基礎値と対応する開度の関係を示す特性データに基づいて開度を求める構成としたが、これに限らず、本変形例2は、制御基礎値と対応する開度との関係を差圧毎に示す特性データに基づいて弁体の開度を求める構成とした。なお、この他の構成は、実施形態1と同じであるので、同一の要素には同符号を付すなどして再度の説明を省略する。
【0075】
図11は、本変形例2の特性データの一例を示す図である。
図11の特性データは、縦軸に風速Vを取り、横軸に弁体12の開度θを取り、風速Vと開度θとの関係を差圧ΔP毎の複数の特性曲線で示した。この特性曲線は、例えば建設しようとする設備に採用される弁やバルブを試験施設にて予め測定して求めることができる。なお、本変形例2の特性データは、風速Vに対する特性曲線に限らず、風量Qといった制御基礎値と弁体12の開度θとの関係を差圧ΔP毎の複数の特性曲線で示したものであっても良い。
【0076】
この特性曲線を差圧ΔPの最小値から最大値にかけて所定のピッチで求めて記憶部21に記憶しておく。
図11では、差圧100Paから差圧1000Paの複数の特性曲線71~76を示している。各特性曲線を求める差圧のピッチ(間隔)は、等間隔であっても良いし、不等間隔であっても良い。
【0077】
図12は、本変形例2の特性データを用いて弁体12の開度を求める例を示す図である。例えば設定風速がVaで、差圧認識部22で検出した差圧が920Paであった場合、先ず差圧920Paを挟む2本の特性曲線、即ち差圧920Paより差圧の低い特性曲線と差圧の高い特性曲線を選択する。
図11では、差圧の低い特性曲線のうち最も差圧920Paに近い特性曲線75と、差圧の高い特性曲線のうち最も差圧920Paに近い特性曲線76とが選択される。
【0078】
次に設定風速Vと特性曲線75、76とが交わる位置の開度θ75,θ76を求め、この差圧900Paの開度θ75と差圧1000Paの開度θ76を差圧920Paで按分して開度θxを求める。
【0079】
このように本変形例1によれば、要求風速Vと弁体12前後の差圧ΔPとから一意に弁体12の開度θが求まるため、フィードバック制御と比べて速やかに要求風速Vを達成するように制御弁1を制御できる。
【0080】
また、本変形例1では、要求風速Vと弁体12の開度θとの対応関係を特性データとして記憶しているため、制御時に、要求風速Vをそのまま用いて、対応する弁体12の開度θを求めることができ、制御時の処理を簡素化できる。
【0081】
〈実施形態2〉
本実施形態2は、前記制御弁装置10を空調システム100の排気経路に適用した例について示す。
図13は、本実施形態2に係る空調システム100を示す概略図である。
【0082】
図13に示すように、空調システム100は、空調機4や、定風量制御装置5、室圧計6、調節計(制御装置)7、制御弁装置10を有し、部屋8内の空気調和を行うシステムである。なお、部屋8は定風量装置で給気を受け、制御弁1の開閉を制御することにより排気量を制御される室圧制御室であり、扉の開閉時の外乱時に室圧が乱れないことが求められる(第一実施形態でもこの用途に好適に適用できる)。
制御弁装置10は、前述の実施形態1と同様の構成である。このため同一の要素には同符号を付す等して再度の説明は省略する。
【0083】
本実施形態2において、制御弁装置10の要求風量が変化した場合や、弁体12前後の差圧が変化した場合の動作は、前述の
図4~
図8と同じであり、これに加えて本実施形態2では、調節計7からの開度指令値を特性データに基づいて補正し、補正後の開度となるように弁体12の開度を制御する構成が前述の実施形態1と異なっている。
【0084】
空調機4は、外気を導入して、温度や湿度、清浄度等が所定の条件となるように調整し、給気として供給するものである。
【0085】
定風量制御装置5は、空調機4からの給気を介する給気経路61中に配置され、給気経路61内の静圧が変化しても、部屋8内へ供給される給気が設定された風量になるよう風速センサー(不図示)で通過風速を計測しながら制御弁(不図示)で風量制御を行う装置である。
【0086】
室圧計6は、部屋8内の圧力を計測する圧力計であり、測定した圧力を電気信号(室圧信号)として調節計7に入力する。
【0087】
調節計7は、室圧計6で測定した室圧に基づいて制御弁装置10の開度を決定し、制御弁装置10の開度を制御して部屋8内の圧力を調整する装置である。
【0088】
制御弁装置10は、排気経路62中に配置され、調節計7からの開度指令値等に応じて排気の風量を制御する装置である。本実施形態2の制御弁装置10は、調節計7からの開度指令値を補正するため特性データ(補正曲線)を記憶部21に記憶している。
【0089】
図14は、補正曲線の一例を示す図である。補正曲線は、要求風量を達成するために調節計7が出力する開度指令値と、当該要求風量を達成したときの制御弁装置10の弁体12の開度との対応関係を予め求め、関係式や対応表等のデータとして記憶したものである。いわば、調節計7の開度指令値を要求風量の代用値(制御基礎値)として利用する。
【0090】
また、補正曲線は、弁体12前後の差圧によっても対応関係が変化するので、差圧を異ならせて求めた複数の補正曲線を記憶している。
図14の例では、差圧ΔPを100Pa,200Pa,300Paとしたときの補正曲線を夫々求めた。
【0091】
図15は、本実施形態2に係る制御弁1の制御方法の説明図である。制御ユニット2は、電源が投入されると、差圧認識部22や処理部23を動作させて
図15の処理(制御方法)を実行する。
【0092】
先ず、差圧認識部22は、前側チューブ131を介して伝達される弁体12前側の圧力と、後側チューブ132を介して伝達される弁体12後側の圧力との差を検出し、この差圧に応じた電気信号を処理部23に入力する(ステップS11)。
【0093】
処理部23は、調節計7から制御基礎値としての開度信号(開度指令値)を受信したか
否かを判定し(ステップS12)、開度信号を受信した場合(ステップS12,Yes)、補正曲線(特性データ)を記憶部21から読み出し(ステップS13)、前記開度信号と対応する弁体12の開度を補正曲線に基づいて求め、開度信号として駆動部24に送信する(ステップS14)。
【0094】
駆動部24は、処理部23からの開度信号に基づいてステッピングモータ等の駆動源241を駆動し、動力伝達機構242を介して駆動源241の駆動力を弁体12の回動軸121に伝達して弁体12を回転させ、前記開度信号の示す開度に調整する(ステップS15)。なお、ステップS11~S15の処理は、電源がオフになるまで繰り返し実行する。
【0095】
以上のように本実施形態2によれば、調節計7からの開度指令値を特性データに基づいて補正して制御弁の開度を制御するので、制御弁1の特性に依らず、どのような形式の制御弁1と調節計7を組み合わせて用いても適切に制御を行うことができる。
【符号の説明】
【0096】
1 制御弁
2 制御ユニット
4 空調機
5 定風量制御装置
6 室圧計
7 調節計
8 部屋
10 制御弁装置
11 本体
12 弁体
13 差圧チューブ
21 記憶部
22 差圧認識部
23 処理部
24 駆動部
100 空調システム