(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-02-08
(45)【発行日】2022-02-17
(54)【発明の名称】イオン交換膜、この製造方法、及びこれを含むエネルギー貯蔵装置
(51)【国際特許分類】
H01M 8/1053 20160101AFI20220209BHJP
H01M 8/1058 20160101ALI20220209BHJP
H01M 8/1023 20160101ALI20220209BHJP
H01M 8/1039 20160101ALI20220209BHJP
H01M 8/106 20160101ALI20220209BHJP
H01M 8/1069 20160101ALI20220209BHJP
H01M 8/18 20060101ALI20220209BHJP
H01M 8/1051 20160101ALI20220209BHJP
C08J 5/22 20060101ALI20220209BHJP
C08J 7/16 20060101ALI20220209BHJP
B01J 39/05 20170101ALI20220209BHJP
B01J 39/19 20170101ALI20220209BHJP
B01J 47/12 20170101ALI20220209BHJP
【FI】
H01M8/1053
H01M8/1058
H01M8/1023
H01M8/1039
H01M8/106
H01M8/1069
H01M8/18
H01M8/1051
C08J5/22 CFG
C08J7/16
B01J39/05
B01J39/19
B01J47/12
(21)【出願番号】P 2020123690
(22)【出願日】2020-07-20
(62)【分割の表示】P 2018545648の分割
【原出願日】2017-03-20
【審査請求日】2020-07-20
(31)【優先権主張番号】10-2016-0039511
(32)【優先日】2016-03-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】518215493
【氏名又は名称】コーロン インダストリーズ インク
(74)【代理人】
【識別番号】100121382
【氏名又は名称】山下 託嗣
(72)【発明者】
【氏名】キム,ナ ヨン
(72)【発明者】
【氏名】イ,ドン フン
(72)【発明者】
【氏名】ヨム,スン ジブ
【審査官】上野 文城
(56)【参考文献】
【文献】特開2003-123792(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2011/0014544(US,A1)
【文献】特開昭58-091728(JP,A)
【文献】特開2013-218868(JP,A)
【文献】特開2006-206671(JP,A)
【文献】特開2004-217921(JP,A)
【文献】特開2006-114502(JP,A)
【文献】国際公開第2014/034415(WO,A1)
【文献】韓国公開特許第10-2013-0106074(KR,A)
【文献】特開2008-226835(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 8/1053
H01M 8/1058
H01M 8/1023
H01M 8/1039
H01M 8/106
H01M 8/1069
H01M 8/18
H01M 8/1051
C08J 5/22
C08J 7/16
B01J 39/05
B01J 39/19
B01J 47/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
イオン交換膜において、
多孔性支持体と、
前記多孔性支持体の少なくとも一つの表面
上の第1コーティング層
と、
前記第1コーティング層上の第2コーティング層と、
を含み、
前記多孔性支持体の空隙は、第1炭化水素系イオン伝導体で満たされており、
前記第1コーティング層は、
第2炭化水素系イオン伝導体、及びシリカを含み、
前記第2コーティング層は、フッ素系イオン伝導体を含み、
前記第2コーティング層に接する、前記第1コーティング層
の面に存在する前記第2炭化水素系イオン伝導体はフッ素置換基を含むことを特徴とするイオン交換膜。
【請求項2】
前記多孔性支持体の空隙は、前記
第1炭化水素系イオン伝導体とシリカとでもって満たされたことを特徴とする請求項
1に記載のイオン交換膜。
【請求項3】
前記第1コーティング層に含まれたシリカ100重量部に対して、
前記多孔性支持体の空隙内にあるシリカは10重量部以下であることを特徴とする請求項
2に記載のイオン交換膜。
【請求項4】
多孔性支持体と、
前記多孔性支持体の少なくとも一つの表面上の第1コーティング層と、
前記第1コーティング層上の第2コーティング層と、
を含み、
前記多孔性支持体の空隙は、第1炭化水素系イオン伝導体で満たされており、
前記第1コーティング層は、第2炭化水素系イオン伝導体を含み、
前記第2コーティング層は、フッ素系イオン伝導体を含み、
前記
第1及び第2炭化水素系イオン伝導体は、主鎖がベンゼン環を含み、前記ベンゼン環にイオン交換基がついている炭化水素系高分子であり、
前記第2コーティング層に接する、前記第1コーティング層
の面に存在する前記第2炭化水素系イオン伝導体のベンゼン環にフッ素が置換されたことを特徴とする請求項1に記載のイオン交換膜。
【請求項5】
前記多孔性支持体は、炭化水素系多孔性支持体であることを特徴とする請求項1に記載のイオン交換膜。
【請求項6】
多孔性支持体の空隙を炭化水素系イオン伝導体で満たす第1ステップと、
前記多孔性支持体の少なくとも一つの表面上に、炭化水素系イオン伝導体を含む第1コーティング層を形成する第2ステップと、
前記第1コーティング層の表面をフッ素ガスで処理する第3ステップと、
前記フッ素ガスで処理された、前記第1コーティング層の表面上に、フッ素系イオン伝導体を含む第2コーティング層を形成する第4ステップと
を含
み、
前記第1コーティング層は、炭化水素系イオン伝導体と、シリカとを含む混合物でもって形成されることを特徴とするイオン交換膜の製造方法。
【請求項7】
前記の第1及び第2ステップは、炭化水素系イオン伝導体と、シリカとを含む混合物を用いて、順次に、または同時に行われることを特徴とする請求項
6に記載のイオン交換膜の製造方法。
【請求項8】
請求項1~
5のいずれかに記載のイオン交換膜を含むことを特徴とするエネルギー貯蔵装置。
【請求項9】
前記エネルギー貯蔵装置は、燃料電池であることを特徴とする請求項
8に記載のエネルギー貯蔵装置。
【請求項10】
前記エネルギー貯蔵装置は、レドックスフロー電池(redox flowbattery)であることを特徴とする請求項
8に記載のエネルギー貯蔵装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、イオン交換膜、この製造方法、及びこれを含むエネルギー貯蔵装置に関し、より詳細には、表面エネルギー制御を介してイオン交換膜と接合される他の素材との界面接合性が向上し、界面抵抗が減少されたイオン交換膜、この製造方法、及びこれを含むエネルギー貯蔵装置に関する。
【背景技術】
【0002】
化石燃料の枯渇と環境汚染に関する問題を解決するために、使用効率を向上させることにより、化石燃料を節約するか、再生可能なエネルギーをより多くの分野に適用しようとする努力がなされている。
【0003】
太陽熱及び風力のような再生可能なエネルギー源は、以前よりも大いに、効率的に使用されているが、これらのエネルギー源は、間歇的かつ予測不可能である。このような特性のため、これらのエネルギー源に対する依存度が制限され、現在、一次電力源のうち、再生エネルギー源が占める割合は非常に低い。
【0004】
再充電可能な電池(rechargeable battery)は、単純かつ効率的な電気貯蔵方法を提供するので、これを小型化して移動性を高め、間歇的補助電源やラップトップ、タブレットPC、携帯電話等の小型家電の電源として活用しようとする努力が続けられている。
【0005】
その中で、レドックスフロー電池(RFB;Redox Flow Battery)は、電解質の電気化学的な可逆反応による充電と放電を繰り返して、エネルギーを長期間貯蔵して使用できる二次電池である。電池の容量と出力特性を各々左右するスタックと電解質タンクとが互いに独立的に構成されており、電池設計が自由であり、設置空間の制約も少ない。
【0006】
また、レドックスフロー電池は、発電所や電力系統、建物に設けて、急な電力需要増加に対応できる負荷平準化機能、停電や瞬時電圧低下を補償したり抑制したりする機能等を有しており、必要に応じて自由に組み合わせることのできる非常に有力なエネルギー貯蔵技術であり、大規模エネルギー貯蔵に適したシステムである。
【0007】
レドックスフロー電池は、一般に、2つの分離された電解質で構成される。1つは、陰性電極反応における電気活性物質を貯蔵し、他の1つは、陽性電極反応に使用される。実際、レドックスフロー電池において電解質反応は、正極と負極とで互いに相違し、電解質液流れ現象が存在するので、正極側と負極側とで圧力差が発生する。代表的なレドックスフロー電池である全バナジウム系レドックスフロー電池において正極及び負極の電解質の反応は、それぞれ、下記の反応式1及び反応式2のとおりである。
【0008】
【0009】
【0010】
したがって、両電極での圧力差を克服し、充電と放電を繰り返しても優れた電池性能を示すためには、物理的、化学的耐久性が向上したイオン交換膜を必要とし、レドックスフロー電池においてイオン交換膜は、システムのうち、約10%のレベルに達する値段を占めている核心素材である。
【0011】
このように、レドックスフロー電池においてイオン交換膜は、電池寿命と値段を決定する核心部品であって、レドックスフロー電池の商用化のためには、イオン交換膜のイオンの選択透過性が高くて、バナジウムイオンのクロスオーバー(crossover)が低くなければならず、電気的抵抗が小さくてイオン伝導度が高くなければならず、機械的及び化学的に安定し、耐久性が高いながらも値段が安くなければならない。
【0012】
一方、現在、イオン交換膜として商用化された高分子電解質膜は、数十年間使用されただけでなく、着実に研究されている分野であって、最近にも、直接メタノール燃料電池(DMFC;direct methanol fuel cell)や高分子電解質膜燃料電池(PEMFC;polymer electrolyte membrane fuel cell、proton exchange membrane fuel cell)、レドックスフロー電池、水処理装置(Water purification)などに使用されるイオンを伝達する媒介体として、イオン交換膜に対する数多くの研究が活発に進められている。
【0013】
現在、イオン交換膜として広く使用される物質は、米国デュポン社の過フッ化スルホン酸基含有高分子であるナフィオン(Nafion)TM系膜がある。この膜は、飽和水分含量であるとき、常温で0.08S/cmのイオン伝導性と優れた機械的強度、及び耐化学性を有し、自動車用燃料電池に用いられるほどに、電解質膜として安定した性能を有している。また、これと類似した形態の商用膜では、旭化成(Asahi Chemicals)社のアシプレックス-エス(Aciplex-S)膜、ダウケミカル(Dow Chemicals)社のダウ(Dow)膜、旭ガラス(Asahi Glass)社のフレミオン(Flemion)膜、ゴア&アソシエイツ(Gore&Associate)社のゴアセレクト(GoreSelcet)膜などがあり、カナダのバラードパワーシステム(Ballard Power System)社でアルファまたはベータの形態で過フッ素化された高分子が開発研究中にある。
【0014】
しかし、前記膜等は、値段が高価であり、合成方法が難しくて、大量生産の困難があるだけでなく、レドックス流れ電池のような電気エネルギーシステムにおいて、クロスオーバー現象や、高い温度や低い温度で低いイオン伝導度を有するなどの、イオン交換膜として効率性が大きく落ちるという短所を有している。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
本発明の目的は、表面エネルギー制御を介して他の素材との界面接合性が向上し、界面抵抗が減少されたイオン交換膜を提供することである。
【0016】
本発明の他の目的は、前記イオン交換膜の製造方法を提供することである。
【0017】
本発明のさらに他の目的は、前記イオン交換膜を含むエネルギー貯蔵装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0018】
本発明の一実施形態によれば、複数の空隙(pore)を含む多孔性支持体、前記多孔性支持体の空隙を満たしているイオン伝導体、そして、前記多孔性支持体の表面に位置し、シリカ及びイオン伝導体を含むシリカコーティング層を備えるイオン交換膜を提供する。
【0019】
前記多孔性支持体の空隙は、前記イオン伝導体と混合されたシリカをさらに含むことができる。
【0020】
前記シリカコーティング層に含まれたシリカ100重量部に対して、前記多孔性支持体の空隙に含まれたシリカは10重量部以下でありうる。
【0021】
前記シリカコーティング層の表面は、複数個の凹部が規則的または不規則的に形成されたパターンを含むことができる。
【0022】
前記シリカコーティング層の表面は、微細凹凸が形成されて、表面粗さを有することができる。
【0023】
前記シリカコーティング層の表面は、フッ素ガスで処理された表面を含むことができる。
【0024】
本発明の他の一実施形態によれば、複数の空隙(pore)を含む多孔性支持体、そして、前記多孔性支持体の空隙を満たしながら前記多孔性支持体表面にイオン伝導体コーティング層を形成するイオン伝導体を備え、前記イオン伝導体コーティング層の表面は、複数個の凹部が規則的または不規則的に形成されたパターンを含むものであるイオン交換膜を提供する。
【0025】
本発明のさらに他の一実施形態によれば、複数の空隙(pore)を含む多孔性支持体、及び、前記多孔性支持体の空隙を満たしつつ前記多孔性支持体表面にイオン伝導体コーティング層を形成するイオン伝導体を備え、前記イオン伝導体コーティング層の表面は、微細凹凸が形成されて、表面粗さを有するものであるイオン交換膜を提供する。
【0026】
前記微細凹凸のサイズは、イオン伝導体コーティング層の全体の厚さに対して0.1~20長さ%でありうる。
【0027】
本発明のさらに他の一実施形態によれば、複数の空隙(pore)を含む多孔性支持体、及び、前記多孔性支持体の空隙を満たしつつ前記多孔性支持体表面にイオン伝導体コーティング層を形成するイオン伝導体を備え、前記イオン伝導体コーティング層は、フッ素ガスで処理された表面を含むものであるイオン交換膜を提供する。
【0028】
前記イオン伝導体は、主鎖がベンゼン環を含み、前記ベンゼン環にイオン交換基がついている炭化水素系高分子であり、前記イオン伝導体コーティング層におけるフッ素ガスで処理された表面は、前記フッ素ガス処理によって、前記イオン伝導体の前記ベンゼン環にフッ素が置換され得る。
【0029】
前記イオン伝導体コーティング層におけるフッ素ガスで処理された表面上に、フッ素系イオン伝導体コーティング層をさらに備えることができる。
【0030】
前記多孔性支持体は、炭化水素系多孔性支持体であり、前記イオン伝導体は、炭化水素系イオン伝導体でありうる。
【0031】
本発明のさらに他の一実施形態によれば、シリカ分散液とイオン伝導体とを混合してシリカ-イオン伝導体混合物を製造するステップ、及び、複数の空隙(pore)を含む多孔性支持体の表面に前記シリカ-イオン伝導体混合物をコーティングしてシリカコーティング層を形成するステップを含むイオン交換膜の製造方法を提供する。
【0032】
前記シリカコーティング層を形成するステップは、前記シリカ-イオン伝導体混合物が前記多孔性支持体の空隙を満たしつつ前記多孔性支持体の表面に前記シリカコーティング層を形成させることができる。
【0033】
前記シリカコーティング層を形成するステップは、イオン伝導体で前記多孔性支持体の空隙を満たすステップ、及び、前記多孔性支持体の表面に前記シリカ-イオン伝導体混合物をコーティングして前記シリカコーティング層を形成させるステップを含むことができる。
【0034】
前記イオン交換膜の製造方法は、前記シリカコーティング層を形成するステップの後に、前記シリカコーティング層の表面をエッチング処理するステップをさらに含むことができる。
【0035】
前記イオン交換膜の製造方法は、前記シリカコーティング層の形成ステップ後に、前記シリカコーティング層の表面をフッ素ガスで処理するステップをさらに含むことができる。
【0036】
本発明のさらに他の一実施形態によれば、複数の空隙(pore)を含む多孔性支持体の空隙をイオン伝導体で満たしつつ前記多孔性支持体の表面にイオン伝導体コーティング層を形成するステップ、及び、前記イオン伝導体コーティング層の表面をエッチング処理するステップを含むイオン交換膜の製造方法を提供する。
【0037】
前記エッチング処理は、有機溶媒を含むエッチング溶液、イオン伝導体を有機溶媒に希釈させたエッチング溶液、及びシリカ分散液からなる群より選ばれるいずれか1つのエッチング溶液を前記イオン伝導体コーティング層の表面に接触させて行われうる。
【0038】
前記エッチング処理は、レーザ照射、ポリッシング(polishing)、コロナ処理、及びプラズマ処理からなる群より選ばれるいずれか1つの物理的処理によって行われうる。
【0039】
本発明のさらに他の一実施形態によれば、複数の空隙(pore)を含む多孔性支持体の空隙をイオン伝導体で満たしつつ前記多孔性支持体の表面にイオン伝導体コーティング層を形成するステップ、及び、前記イオン伝導体コーティング層の表面をフッ素ガスで処理するステップを含むイオン交換膜の製造方法を提供する。
【0040】
前記イオン交換膜の製造方法は、前記のフッ素ガス処理されたイオン伝導体コーティング層の上にフッ素系イオン伝導体コーティング層を形成するステップをさらに含むことができる。
【0041】
本発明のさらに他の一実施形態によれば、前記イオン交換膜を含むエネルギー貯蔵装置を提供する。
【0042】
前記エネルギー貯蔵装置は、燃料電池でありうる。
【0043】
前記エネルギー貯蔵装置は、レドックスフロー電池(redox flowbattery)でありうる。
【発明の効果】
【0044】
本発明のイオン交換膜は、表面エネルギー制御を通じて、イオン交換膜と接合される他の素材との界面接合性が向上し、長期的な耐久性が安定的に維持されるので、エネルギー貯蔵装置だけでなく、発電用システムに適用するときにも接合耐久性の向上が可能であり、また、イオン交換膜の表面エネルギー制御を介して他の素材との界面抵抗も減少されて、イオン交換膜の厚さ方向(through-plane)交換性能を向上させることにより、接合耐久性だけでなく、システムの効率も向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0045】
【
図1】本発明の一実施形態に係る全バナジウム系レドックス電池を概略的に示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0046】
以下、本発明の属する技術分野における通常の知識を有する者が容易に実施できるように本発明の実施形態について詳細に説明する。しかしながら、本発明は、種々の相異なる形態で実現されうるのであり、ここで説明する実施形態に限定されない。
【0047】
本発明の一実施形態に係るイオン交換膜は、複数の空隙(pore)を含む多孔性支持体、前記多孔性支持体の空隙を満たしているイオン伝導体、そして、前記多孔性支持体の表面に位置し、シリカ及びイオン伝導体を含むシリカコーティング層を含む。
【0048】
前記多孔性支持体は、1つの例示として熱的及び化学的分解に対する抵抗性に優れた過フッ素化重合体を含むことができる。例えば、前記多孔性支持体は、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、または、テトラフルオロエチレンと、CF2=CFCnF2n+1(nは、1~5の整数)、或いは下記の化学式1で表される化合物との共重合体でありうる。
【0049】
【0050】
上記化学式1において、mは0~15の整数であり、nは1~15の整数である。
【0051】
前記PTFEは、商業的に用いられており、前記多孔性支持体として好ましく使用することができる。また、高分子フィブリルの微細構造、またはフィブリルによって節が互いに連結された微細構造を有する発泡ポリテトラフルオロエチレンポリマー(e-PTFE)も前記多孔性支持体として好ましく使用することができ、前記節が存在しない高分子フィブリルの微細構造を有するフィルムも前記多孔性支持体として好ましく使用することができる。
【0052】
前記過フッ素化重合体を含む多孔性支持体は、分散重合PTFEを潤滑剤の存在下でテープに押出成形し、これにより得られた材料を延伸して、より多孔質であり、より強い多孔性支持体に製造することができる。また、前記PTFEの融点(約342℃)を超過する温度で前記e-PTFEを熱処理することにより、PTFEの非晶質含有率を増加させることもできる。上記方法で製造されたe-PTFEフィルムは、様々な直径を有する微細気孔及び空隙率を有することができる。上記方法で製造されたe-PTFEフィルムは、少なくとも35%の空隙を有することができ、前記微細気孔の直径は、約0.01~1μmでありうる。また、前記過フッ素化重合体を含む多孔性支持体の厚さは、様々に変化可能であるが、一例として、2μm~40μm、好ましくは、5μm~20μmでありうる。前記多孔性支持体の厚さが2μm未満であれば、機械的強度が顕著に落ちることがあり、それに対し、厚さが40μmを超過すれば、抵抗損失が増加し、軽量化及び集積化が落ちることがある。
【0053】
前記多孔性支持体の他の1つの例示として、前記多孔性支持体は、ナノ繊維等が複数の気孔を含む不織布の形態で集積されたナノウェブを含むことができる。
【0054】
前記ナノ繊維は、優れた耐化学性を表し、疏水性を有して、高湿の環境で水分による形態変形の恐れがない炭化水素系高分子を好ましく使用することができる。具体的に、前記炭化水素系高分子では、ナイロン、ポリイミド、ポリアラミド、ポリエーテルイミド、ポリアクリロニトリル、ポリアニリン、ポリエチレンオキサイド、ポリエチレンナフタレート、ポリブチレンテレフタレート、スチレンブタジエンゴム、ポリスチレン、ポリビニルクロライド、ポリビニルアルコール、ポリビニリデンフルオライド、ポリビニルブチレン、ポリウレタン、ポリベンゾオキサゾール、ポリベンゾイミダゾール、ポリアミドイミド、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレン、ポリプロピレン、これらの共重合体、及びこれらの混合物からなる群より選ばれるものを使用することができ、この中でも、耐熱性、耐化学性、及び形態安定性により優れたポリイミドを好ましく使用することができる。
【0055】
前記ナノウェブは、電界紡糸により製造されたナノ繊維がランダムに配列されたナノ繊維の集合体である。ここで、前記ナノ繊維は、前記ナノウェブの多孔度及び厚さを考慮して、電子走査顕微鏡(Scanning Electron Microscope、JSM6700F、JEOL)を利用して50個の繊維直径を測定し、その平均から計算したとき、40~5000nmの平均直径を有することが好ましい。もし、前記ナノ繊維の平均直径が40nm未満である場合、前記多孔性支持体の機械的強度が低下することがあり、前記ナノ繊維の平均直径が5,000nmを超過する場合、多孔度が顕著に落ち、厚さが厚くなることがある。
【0056】
前記ナノウェブは、上記のようなナノ繊維からなることにより、50%以上の多孔度を有することができる。一方、前記ナノウェブは、90%以下の多孔度を有することが好ましい。もし、前記ナノウェブの多孔度が90%を超過する場合、形態安定性が低下することにより、後工程が円滑に進められないことがある。前記多孔度は、下記の数式1によって前記ナノウェブの全体の体積に対する空気体積の割合により計算することができる。ここで、前記全体の体積は、長方形状のサンプルを製造して、横、縦、厚さを測定して計算し、空気体積は、サンプルの質量を測定後、密度から逆算した高分子体積を全体体積から引いて得ることができる。
【0057】
[数式1]
多孔度(%)=(ナノウェブ内の空気体積/ナノウェブの全体の体積)×100
【0058】
また、前記ナノウェブは、5~50μmの平均厚さを有することができる。前記ナノウェブの厚さが5μm未満であれば、機械的強度が顕著に落ちることがあり、それに対し、厚さが50μmを超過すれば、抵抗損失が増加し、軽量化及び集積化が落ちることがある。より好ましいナノウェブの厚さは、10~30μmの範囲である。
【0059】
一方、前記イオン伝導体は、プロトンのようなカチオン交換基を有するカチオン伝導体であるか、またはハイドロキシイオン、カーボネート、或いはバイカーボネートといったアニオン交換基を有するアニオン伝導体でありうる。
【0060】
前記カチオン交換基は、スルホン酸基、カルボキシル基、ボロン酸基、リン酸基、イミド基、スルホンイミド基、スルホンアミド基、及びこれらの組み合わせからなる群より選ばれるいずれか1つでありうるし、一般的に、スルホン酸基またはカルボキシル基でありうる。
【0061】
前記カチオン伝導体は、前記カチオン交換群を含み、主鎖にフッ素を含むフルオロ系高分子;ベンゾイミダゾール、ポリアミド、ポリアミドイミド、ポリイミド、ポリアセタール、ポリエチレン、ポリプロピレン、アクリル樹脂、ポリエステル、ポリスルホン、ポリエーテル、ポリエーテルイミド、ポリエステル、ポリエーテルスルホン、ポリエーテルイミド、ポリカーボネート、ポリスチレン、ポリフェニレンスルファイド、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエーテルケトン、ポリアリールエーテルスルホン、ポリホスファゼン、またはポリフェニルキノキサリンなどの炭化水素系高分子;ポリスチレン-グラフト-エチレンテトラフルオロエチレン共重合体、またはポリスチレン-グラフト-ポリテトラフルオロエチレン共重合体などの部分フッ素化された高分子;スルホンイミドなどを挙げることができる。
【0062】
より具体的に、前記カチオン伝導体が水素イオンカチオン伝導体である場合、前記高分子等は、側鎖にスルホン酸基、カルボキシル酸基、リン酸基、ホスホン酸基、及びこれらの誘導体からなる群より選ばれるカチオン交換基を含むことができ、その具体的な例としては、ポリ(パーフルオロスルホン酸)、ポリ(パーフルオロカルボキシル酸)、スルホン酸基を含むテトラフルオロエチレンとフルオロビニルエーテルの共重合体、脱フッ素化された硫化ポリエーテルケトン、またはこれらの混合物を含むフルオロ系高分子;スルホン化されたポリイミド(sulfonated polyimide、S-PI)、スルホン化されたポリアリールエーテルスルホン(sulfonated polyarylethersulfone、S-PAES)、スルホン化されたポリエーテルエーテルケトン(sulfonated polyetheretherketone、SPEEK)、スルホン化されたポリベンゾイミダゾール(sulfonated polybenzimidazole、SPBI)、スルホン化されたポリスルホン(sulfonated polysulfone、S-PSU)、スルホン化されたポリスチレン(sulfonated polystyrene、S-PS)、スルホン化されたポリホスファゼン(sulfonated polyphosphazene)、及びこれらの混合物を含む炭化水素系高分子を挙げることができるが、これに限定されるものではない。
【0063】
一方、前記カチオン伝導体の中で、イオン伝導機能に優れ、値段の面でも有利な炭化水素系高分子を好ましく用いることができる。また、前記イオン伝導体として炭化水素系高分子を使用し、前記多孔性支持体として炭化水素系高分子を使用する場合、前記炭化水素系イオン伝導体に含まれた炭化水素系高分子と前記多孔性支持体に含まれた炭化水素系高分子とを互いに同じ物質系で構成することができ、具体的には、前記炭化水素系イオン伝導体としてSPI(sulfonated polyimide)を用い、前記多孔性支持体としてポリイミドを用いる場合、前記炭化水素系イオン伝導体と前記多孔性支持体との間の接着性をさらに向上させることができ、界面抵抗をさらに下げることができる。
【0064】
前記アニオン伝導体は、ハイドロキシイオン、カーボネート、またはバイカーボネートといったアニオンを移送させることができるポリマーであって、アニオン伝導体は、ハイドロキサイドまたはハライド(一般的に、クロライド)の形態が商業的に入手可能であり、前記アニオン伝導体は、産業的浄水(water purification)、金属分離、または触媒工程などに使用されうる。
【0065】
前記アニオン伝導体としては、一般的に金属水酸化物がドーピングされたポリマーを使用でき、具体的に、金属水酸化物がドーピングされたポリ(エーテルスルホン)、ポリスチレン、ビニル系ポリマー、ポリ(ビニルクロライド)、ポリ(ビニリデンフルオライド)、ポリ(テトラフルオロエチレン)、ポリ(ベンゾイミダゾール)、またはポリ(エチレングリコール)などを使用できる。
【0066】
前記イオン伝導体は、前記イオン交換膜の全体の重量に対して50~99重量%で含まれうる。前記イオン伝導体の含量が50重量%未満であれば、前記イオン交換膜のイオン伝導度が低下する恐れがあり、前記イオン伝導体の含量が99重量%を超過すれば、前記イオン交換膜の機械的強度及び寸法安定性が低下することがある。
【0067】
一方、前記イオン交換膜は、前記多孔性支持体の表面に位置するシリカコーティング層を含む。前記シリカコーティング層は、前記イオン交換膜の一面にのみ位置し得るし、前記イオン交換膜の両面に位置し得る。
【0068】
前記イオン交換膜は、前記シリカコーティング層を介してその表面エネルギーを制御できる。前記シリカコーティング層は、前記イオン交換膜を電極といった他の素材と接合して使用するとき、他の素材との界面接合性を向上させ、界面抵抗も減少させることができる。これにより、前記イオン交換膜は、前記イオン交換膜と接合される他の素材との界面接合性が向上し、長期的な耐久性が安定的に維持されるので、エネルギー貯蔵装置だけでなく、発電用システムに適用するときにも接合耐久性の向上が可能であり、また、前記イオン交換膜は、前記他の素材との界面抵抗も減少されて、イオン交換膜の厚さ方向(through-plane)交換性能を向上させることにより、接合耐久性だけでなく、システムの効率も向上させることができる。
【0069】
前記シリカコーティング層は、シリカ及びイオン伝導体を含む。前記イオン伝導体についての具体的な説明は、上記と同様なので、繰り返し的な説明は省略する。
【0070】
前記シリカの種類は、本発明において限定されず、商用化されたあらゆる種類のシリカを使用できる。また、前記シリカの粒子サイズも本発明において限定されないが、0.01~100nmの平均粒径を有するシリカを好ましく使用できる。前記シリカの平均粒径が0.01nm未満である場合、分散性が低下して物性が均一でないことがあり、100nmを超過する場合、前記シリカが前記シリカコーティング層の内部に均一に分布され難く、前記シリカコーティング層の厚さが増加することで、前記イオン交換膜の機械的物性が低下することがある。
【0071】
前記シリカコーティング層は、前記イオン伝導体100重量部に対して前記シリカを1~50重量部、好ましく5~30重量部で含むことができる。前記シリカの含量が前記イオン伝導体100重量部に対して1重量部未満である場合、表面エネルギー改善効果がないことがあり、50重量部を超過する場合、前記シリカナノ分散粒子のため、却って性能及び特性が低下することがある。
【0072】
前記多孔性支持体の空隙は、前記イオン伝導体と混合されたシリカをさらに含むことができる。ただし、本発明は、前記シリカコーティング層を介して前記イオン交換膜表面の表面エネルギーを制御するためのものであるから、前記シリカが前記多孔性支持体の空隙内に位置するよりは、前記多孔性支持体の表面に、より多く位置することが表面エネルギー制御の側面で好ましい。
【0073】
これにより、前記シリカコーティング層に含まれたシリカ100重量部に対して、前記多孔性支持体の空隙に含まれたシリカは10重量部以下、好ましく5重量部以下、より好ましく1~5重量部であることが好ましい。もし、前記多孔性支持体の空隙に含まれたシリカの含量が10重量部を超過する場合、前記イオン交換膜の厚さ方向(through-plane)交換性能が低下することがある。
【0074】
本発明の他の一実施形態に係るイオン交換膜は、複数の空隙(pore)を含む多孔性支持体、そして、前記多孔性支持体の空隙を満たしながら前記多孔性支持体表面にイオン伝導体コーティング層を形成するイオン伝導体を含み、前記イオン伝導体コーティング層の表面は、複数個の凹部が規則的または不規則的に形成されたパターンを含む。
【0075】
前記多孔性支持体及びイオン伝導体についての具体的な説明は、上記と同様なので、繰り返し的な説明は省略する。ただし、ここで、前記イオン伝導体は、前記多孔性支持体の空隙を満たすだけでなく、前記多孔性支持体の表面にイオン伝導体からなるイオン伝導体コーティング層を形成する。
【0076】
前記イオン交換膜は、前記パターンが形成されたイオン伝導体コーティング層を介してその表面エネルギーを制御できる。前記パターンが形成されたイオン伝導体コーティング層は、前記イオン交換膜を電極といった他の素材と接合して使用するとき、接触表面積を増加させて他の素材との界面接合性を向上させ、界面抵抗も減少させることができる。これにより、前記イオン交換膜は、前記イオン交換膜と接合される他の素材との界面接合性が向上し、長期的な耐久性が安定的に維持されるので、エネルギー貯蔵装置だけでなく、発電用システムに適用するときにも接合耐久性の向上が可能であり、また、前記イオン交換膜は、前記他の素材との界面抵抗も減少されて、イオン交換膜の厚さ方向(through-plane)交換性能を向上させることにより、接合耐久性だけでなく、システムの効率も向上させることができる。
【0077】
ここで、前記イオン伝導体コーティング層は、その表面に複数個の凹部が規則的または不規則的に形成されたパターンを含む。前記凹部の断面形状は、三角または四角などとして角張っているか、半円または半楕円などのように丸くなっているのであり得、前記凹部は、長さ方向に延びたライン(line)形状であるか、延びずに孤立したホール(hole)形状でありうる。前記ライン形状は、直線であるか、くねくねとした線の形態でありうるし、前記ホール形状は、円、楕円、または四角形などの多角形状でありうる。
【0078】
本発明の他の一実施形態に係るイオン交換膜は、複数の空隙(pore)を含む多孔性支持体、及び、前記多孔性支持体の空隙を満たしつつ前記多孔性支持体表面にイオン伝導体コーティング層を形成するイオン伝導体を含み、前記イオン伝導体コーティング層の表面は、微細凹凸が形成されて表面粗さを有する。ここで、前記微細凹凸とは、前記イオン伝導体コーティング層の表面が複数個の微細な凹部と複数個の微細な凸部とを有することを意味する。
【0079】
前記多孔性支持体及びイオン伝導体についての具体的な説明は、上記と同様なので、繰り返し的な説明は省略する。ただし、ここで、前記イオン伝導体は、前記多孔性支持体の空隙を満たすだけでなく、前記多孔性支持体表面にイオン伝導体からなるイオン伝導体コーティング層を形成する。
【0080】
前記イオン交換膜は、前記微細凹凸が形成されたイオン伝導体コーティング層を通じてその表面エネルギーを制御できる。前記微細凹凸が形成されたイオン伝導体コーティング層は、前記イオン交換膜を電極といった他の素材と接合して使用するとき、接触表面積を増加させて、他の素材との界面接合性を向上させ、界面抵抗も減少させることができる。これにより、前記イオン交換膜は、前記イオン交換膜と接合される他の素材との界面接合性が向上し、長期的な耐久性が安定的に維持されるので、エネルギー貯蔵装置だけでなく、発電用システムに適用するときにも接合耐久性の向上が可能であり、また、前記イオン交換膜は、前記他の素材との界面抵抗も減少されて、イオン交換膜の厚さ方向(through-plane)交換性能を向上させることにより、接合耐久性だけでなく、システムの効率も向上させることができる。
【0081】
前記イオン伝導体コーティング層の前記微細凹凸のサイズは、前記イオン伝導体コーティング層の全体の厚さに対して0.1~20長さ%でありうるし、好ましく0.1~5長さ%でありうる。前記微細凹凸のサイズが20長さ%を超過する場合、伝導性能がない前記多孔性支持体が表面に露出して前記イオン交換膜の性能が低下することがある。
【0082】
ここにおいて、前記微細凹凸のサイズは、前記微細な凸部のうちの最も高い凸部と、前記微細な凹部のうちの最も深い凹部との高さの差を意味し、ここで、前記イオン伝導体コーティング層の全体の厚さは、前記多孔性支持体の一面において前記多孔性支持体の表面から前記最も高い凸部までの距離を意味する。例えば、前記微細凹凸のサイズが前記イオン伝導体コーティング層の全体の厚さに対して10長さ%とは、前記イオン伝導体コーティング層の全体の厚さが1μmである場合、前記微細凹凸のサイズが0.1μmであることを意味する。
【0083】
本発明のさらに他の一実施形態に係るイオン交換膜は、複数の空隙(pore)を含む多孔性支持体、及び、前記多孔性支持体の空隙を満たしつつ前記多孔性支持体表面にイオン伝導体コーティング層を形成するイオン伝導体を含み、前記イオン伝導体コーティング層は、フッ素ガスで処理された表面を含む。
【0084】
前記多孔性支持体及びイオン伝導体についての具体的な説明は、上記と同様なので、繰り返し的な説明は省略する。ただし、ここで、前記イオン伝導体は、前記多孔性支持体の空隙を満たすだけでなく、前記多孔性支持体表面にイオン伝導体からなるイオン伝導体コーティング層を形成する。
【0085】
前記イオン交換膜は、前記イオン伝導体コーティング層におけるフッ素ガスで処理された表面を通じてその表面エネルギーを制御できる。前記イオン伝導体コーティング層におけるフッ素ガスで処理された表面は、前記イオン交換膜を電極といった他の素材と接合して使用するとき、他の素材との界面接合性を向上させ、界面抵抗も減少させることができる。これにより、前記イオン交換膜は、前記イオン交換膜と接合される他の素材との界面接合性が向上し、長期的な耐久性が安定的に維持されるので、エネルギー貯蔵装置だけでなく、発電用システムに適用するときにも接合耐久性の向上が可能であり、また、前記イオン交換膜は、前記他の素材との界面抵抗も減少されて、イオン交換膜の厚さ方向(through-plane)交換性能を向上させることにより、接合耐久性だけでなく、システムの効率も向上させることができる。
【0086】
また、イオン伝導体が主鎖にベンゼン環を含む炭化水素系高分子であり、前記イオン交換基が前記ベンゼン環についている場合、前記フッ素ガス処理によって前記ベンゼン環に前記フッ素が置換され得る。この場合、前記置換されたフッ素が前記イオン交換基の電子を引っ張って、前記イオン交換基が水素イオンとの引力(interaction)が弱くなりつつ、前記イオン交換膜のイオン伝導性が向上し得る。このように、前記フッ素ガス処理によって前記イオン伝導体の水素イオンと引力を有する親水性領域は極親水化させ、前記ベンゼン環を含む主鎖である疏水性領域は、極疎水化させて、前記イオン交換膜の性能を向上させることができる。これにより、前記イオン伝導体がフッ素を含まない物質からなる場合にも、前記イオン伝導体コーティング層におけるフッ素ガスで処理された表面は、極少量(ppm単位)のフッ素を含むことができる。
【0087】
前記主鎖にベンゼン環を含む炭化水素系高分子からなる前記イオン伝導体は、例えば、スルホン化されたポリイミド(sulfonated polyimide、S-PI)、スルホン化されたポリアリールエーテルスルホン(sulfonated polyarylethersulfone、S-PAES)、スルホン化されたポリエーテルエーテルケトン(sulfonated polyetheretherketone、SPEEK)、スルホン化されたポリベンゾイミダゾール(sulfonated polybenzimidazole、SPBI)、スルホン化されたポリスルホン(sulfonated polysulfone、S-PSU)、及びこれらの混合物からなる群より選ばれるいずれか1つを挙げることができるが、本発明がこれに限定されるものではない。
【0088】
また、前記イオン交換膜は、前記イオン伝導体コーティング層におけるフッ素ガスで処理された表面上に、フッ素系イオン伝導体コーティング層をさらに含むことができる。
【0089】
前記フッ素系イオン伝導体コーティング層は、前記イオン交換膜と接合される他の素材と、前記イオン交換膜との間に配置されて、前記イオン交換膜を前記素材に貼り付ける役割と、燃料、イオン、または副産物の移動通路として作用することができる。特に、前記多孔性支持体の空隙を満たしているイオン伝導体が炭化水素系イオン伝導体であり、前記イオン交換膜と接合される素材が、フッ素系イオン伝導体を含んでいる電極である場合、前記フッ素系イオン伝導体コーティング層は、前記イオン交換膜と前記電極との間に配置されて、これらの接合性をさらに向上させることができる。
【0090】
前記フッ素系イオン伝導体コーティング層の厚さは1~5μmでありうる。前記フッ素系イオン伝導体コーティング層の厚さが1μm未満である場合には、前記イオン交換膜の付着力が弱まることがあり、5μmを超過する場合には、燃料などの移動が円滑にならないことがある。
【0091】
前記フッ素系イオン伝導体コーティング層は、フッ素系イオン伝導体からなることができるが、前記フッ素系イオン伝導体は、上記で例示した主鎖にフッ素を含むフルオロ系高分子、またはポリスチレン-グラフト-エチレンテトラフルオロエチレン共重合体、或いはポリスチレン-グラフト-ポリテトラフルオロエチレン共重合体などの部分フッ素化された高分子などを挙げることができる。
【0092】
より具体的に、前記フッ素系イオン伝導体は、ポリ(パーフルオロスルホン酸)、ポリ(パーフルオロカルボキシル酸)、スルホン酸基を含むテトラフルオロエチレンとフルオロビニルエーテルの共重合体、脱フッ素化された硫化ポリエーテルケトン、またはこれらの混合物を含むフルオロ系高分子を挙げることができ、商業的には、デュポン(duPont)社のナフィオン(Nafion、登録商標)、旭ガラス社のフレミオン(登録商標)、または旭化成社のアシプレックス(登録商標)などのパーフルオロスルホン酸系などを用いることができる。
【0093】
一方、前記イオン交換膜の表面エネルギーを制御できる手段について各々説明したが、本発明がこれに限定されるものではなく、前記表面エネルギーを制御できる手段は、互いに組み合わせることが可能である。
【0094】
例えば、前記イオン交換膜が前記シリカコーティング層を含む場合、前記イオン伝導体コーティング層に代えて、前記シリカコーティング層の表面が、複数個の凹部が規則的または不規則的に形成されたパターンを含むか、微細凹凸が形成されて表面粗さを有することができ、また、前記シリカコーティング層の表面がフッ素ガス処理され得る。
【0095】
また、前記イオン伝導体コーティング層の表面が、複数個の凹部が規則的または不規則的に形成されたパターンを含むか、微細凹凸が形成されて表面粗さを有する場合にも、前記パターン及び微細凹凸が形成されたイオン伝導体コーティング層の表面をフッ素ガスで処理することもできる。
【0096】
本発明のさらに他の一実施形態に係るイオン交換膜の製造方法は、シリカ分散液とイオン伝導体とを混合してシリカ-イオン伝導体混合物を製造するステップ、及び、複数の空隙(pore)を含む多孔性支持体の表面に前記シリカ-イオン伝導体混合物をコーティングしてシリカコーティング層を形成するステップを含む。
【0097】
まず、前記シリカ分散液とイオン伝導体とを混合してシリカ-イオン伝導体混合物を製造する。前記シリカ-イオン伝導体混合物の製造は、前記シリカ分散液に前記イオン伝導体を添加した後、追加の溶媒を添加することによってもなされうる。
【0098】
前記シリカとイオン伝導体についての具体的な説明は、上記と同様なので、繰り返し的な説明は省略する。
【0099】
前記シリカ分散液は、商用化されたシリカ分散液を購入して使用することができ、シリカを溶媒に分散させて製造することもできる。前記シリカ分散液は、好ましくシリカナノ分散液でありうるし、前記シリカナノ分散液は、前記シリカがナノサイズに分散された溶液を意味する。前記シリカを溶媒に分散させる方法は、従来一般的に知られた方法を使用することが可能であるため、具体的な説明は省略する。
【0100】
前記シリカ分散液を製造するための溶媒または前記追加溶媒では、水、親水性溶媒、有機溶媒、及びこれらの1つ以上の混合物からなる群より選ばれる溶媒を用いることができる。
【0101】
前記親水性溶媒は、炭素数1~12の直鎖状、分岐状の飽和または不飽和炭化水素を主鎖として含む、アルコール、イソプロピルアルコール、ケトン、アルデヒド、カーボネート、カルボキシレート、カルボキシル酸、エーテル、及びアミドで構成された群より選ばれる1つ以上の官能基を有したものでありうるし、これらは、脂環式または芳香族環化合物を主鎖の少なくとも一部として含むことができる。
【0102】
前記有機溶媒は、N-メチルピロリドン、ジメチルスルホキサイド、テトラハイドロフラン、及びこれらの混合物から選択することができる。
【0103】
次に、前記多孔性支持体表面に前記シリカ-イオン伝導体混合物をコーティングしてシリカコーティング層を形成する。
【0104】
前記多孔性支持体についての具体的な説明は、上記と同様なので、繰り返し的な説明は省略する。ただし、前記多孔性支持体は、エレクトロブローイング(electroblowing)、エレクトロスピニング(electrospinning)、及びメルトブローイング(melt blowing)からなる群より選ばれる方法などにより製造されうる。
【0105】
前記シリカ-イオン伝導体混合物を前記多孔性支持体表面にコーティングする方法は、前記シリカ-イオン伝導体混合物の粘度によって、スクリーンプリンティング法、スプレーコーティング法、ドクターブレード法、ラミネーティング法などを使用できる。
【0106】
一方、前記シリカコーティング層を形成するステップは、前記シリカ-イオン伝導体混合物が先に前記多孔性支持体の空隙を満たすステップ、及び前記多孔性支持体表面に前記シリカコーティング層が形成されるステップを含むことができる。
【0107】
このために、前記多孔性支持体を前記シリカ-イオン伝導体混合物に担持または含浸することができる。ただし、本発明がこれに限定されるものではなく、上記したように、スクリーンプリンティング法、スプレーコーティング法、ドクターブレード法、ラミネーティング法などを利用する場合にも、前記シリカ-イオン伝導体混合物が前記多孔性支持体の空隙を満たすようにすることができる。
【0108】
また、前記多孔性支持体を前記シリカ-イオン伝導体混合物に担持または含浸させ、前記シリカ-イオン伝導体混合物が先に前記多孔性支持体の空隙を満たすようにした後、前記多孔性支持体表面に前記シリカ-イオン伝導体混合物をスプレーして前記シリカコーティング層を形成できる。
【0109】
具体的に、前記含浸する方法は、前記多孔性支持体を前記シリカ-イオン伝導体混合物に浸漬して行うことができる。前記含浸温度及び時間は、様々な要素等の影響を受けることができる。例えば、前記多孔性支持体の厚さ、前記溶液の濃度、溶媒の種類などによって影響を受けることができる。ただし、前記含浸工程は、前記溶媒のある点以上において100℃以下の温度でなされることができ、より一般的に、常温(10~30℃)において70℃以下の温度で約5~30分間なされることができる。ただし、前記温度は、前記多孔性支持体の融点以上となることはできない。前記浸漬した後、約80℃程度熱風オーブンで3時間以上乾燥することができ、このような浸漬、乾燥作業を2~5回行うことができる。
【0110】
一方、前記シリカコーティング層を形成するステップは、前記イオン伝導体で前記多孔性支持体の空隙を満たすステップ、及び前記多孔性支持体表面に前記シリカ-イオン伝導体混合物をコーティングして前記シリカコーティング層を形成させるステップを含むことができる。
【0111】
前記イオン伝導体で前記多孔性支持体の空隙を満たすステップは、前記多孔性支持体を、イオン伝導体を含む溶液に担持または含浸して行われうる。ただし、本発明がこれに限定されるものではなく、上記したスクリーンプリンティング法、スプレーコーティング法、ドクターブレード法、ラミネーティング法などを利用する場合にも、前記イオン伝導体を含む溶液が前記多孔性支持体の空隙を満たすようにすることもできる。
【0112】
前記イオン伝導体を含む溶液は、商用化されたイオン伝導体溶液を購入して使用することができ、前記イオン伝導体を溶媒に分散させて製造することもできる。前記イオン伝導体を溶媒に分散させる方法は、従来一般的に知られた方法を使用することが可能であるため、具体的な説明は省略する。
【0113】
前記イオン伝導体を含む溶液を製造するための溶媒としては、水、親水性溶媒、有機溶媒、及びこれらの1つ以上の混合物からなる群より選ばれる溶媒を用いることができ、これらについては、上記説明と同様なので、繰り返し的な説明は省略する。
【0114】
具体的に、前記含浸する方法は、前記多孔性支持体を、前記イオン伝導体を含む溶液に浸漬して行うことができる。前記含浸温度及び時間は、様々な要素等の影響を受けうる。例えば、前記多孔性支持体の厚さ、前記溶液の濃度、溶媒の種類などによって影響を受けうる。ただし、前記含浸工程は、前記溶媒のある点以上において100℃以下の温度で行われうるのであり、より一般的に、常温(20℃)において70℃以下の温度で約5~30分間行われうる。ただし、前記温度は、前記多孔性支持体の融点以上ではありえない。前記浸漬した後、約80℃程度、熱風オーブンで3時間以上乾燥することができ、このような浸漬、乾燥の作業を2~5回行うことができる。
【0115】
次に、前記空隙がイオン伝導体で満たされた多孔性支持体の表面に前記シリカコーティング層を形成させる。前記シリカ-イオン伝導体混合物を前記多孔性支持体表面にコーティングする方法は、上記したスクリーンプリンティング法、スプレーコーティング法、ドクターブレード法、ラミネーティング法などを利用したコーティング法、または含浸方法などが使用され得る。これに関する具体的な説明は、上記説明と同様なので、繰り返し的な説明は省略する。
【0116】
本発明のさらに他の一実施形態に係るイオン交換膜の製造方法は、複数の空隙(pore)を含む多孔性支持体の空隙をイオン伝導体で満たしつつ、前記多孔性支持体の表面にイオン伝導体コーティング層を形成するステップ、及び、前記イオン伝導体コーティング層の表面をエッチング処理するステップを含む。
【0117】
前記多孔性支持体及びイオン伝導体についての具体的な説明と、前記イオン伝導体で前記多孔性支持体の空隙を満たす方法は、上記と同様なので、繰り返し的な説明は省略する。
【0118】
ただし、前記イオン伝導体で前記多孔性支持体の空隙を満たす過程で前記イオン伝導体は、前記多孔性支持体の空隙を満たした後、前記多孔性支持体の表面に前記イオン伝導体コーティング層を形成させる。このために、前記含浸工程を複数回行うことができる。
【0119】
次に、前記イオン伝導体コーティング層の表面をエッチング処理する。前記エッチング処理によって前記イオン伝導体コーティング層の表面には複数個の凹部が規則的または不規則的に形成されたパターンが形成されるか、微細凹凸が形成されて表面粗さを有するようになる。
【0120】
前記エッチング処理は、化学的処理または物理的処理でありうる。
【0121】
前記化学的処理は、有機溶媒を用いるのでありうる。
【0122】
具体的に、前記エッチング処理は、有機溶媒を含むエッチング溶液または前記イオン伝導体を前記有機溶媒に希釈させたエッチング溶液を、前記イオン伝導体コーティング層の表面に接触させて行われうる。
【0123】
前記有機溶媒は、N-メチル-2-ピロリドン(N-methyl-2-pyrrolidone、NMP)、ジメチルホルムアマイド(dimethylformamide、DMF)、ジメチルアセトアマイド(dimethylacetamide、DMAc)、ジメチルスルホキサイド(dimethylsulfoxide、DMSO)、及びこれらの混合物からなる群より選ばれるいずれか1つでありうる。
【0124】
前記エッチング溶液は、前記イオン伝導体を前記エッチング溶液の全体の重量に対して0~3重量%で含むことができる。前記エッチング溶液が前記イオン伝導体をさらに含む場合、薄膜で形成された高分子電解質膜が、エッチングのために性能が低下する可能性を低めることができる点で好ましく、前記イオン伝導体の含量が前記エッチング溶液の全体の重量に対して3重量%を超過する場合、エッチングの意味よりは、シリカナノ分散液とイオン伝導体のコーティング層が形成される方向に切り換えられ得るので、エッチングの効果が阻害されるという問題が生じ得る。
【0125】
また、前記エッチング溶液で前記シリカコーティング層を形成するための前記シリカ分散液を、前記エッチング溶液として用いることもできる。前記シリカ分散液についての具体的な説明は、上記と同様なので、繰り返し的な説明は省略する。前記エッチング溶液として前記シリカ分散液を用いると、表面積を増加させたり、膜の表面エネルギーをより減少させたりすることができるという効果が発生し得る。
【0126】
前記エッチング処理は、前記エッチング溶液を前記イオン伝導体コーティング層の表面にスプレーすることにより行われうるのであり、前記スプレーの強さは、形成しようとする微細凹凸のサイズによって適宜調節でき、例えば、前記エッチング処理は、前記エッチング溶液を前記イオン伝導体コーティング層の表面に0.05~1ml/cm2の量で接触させて行われうる。前記エッチング溶液処理が0.05ml/cm2未満である場合、エッチング効果がほとんど発生しないという問題が生じ得るし、1ml/cm2を超過する場合、高分子コーティング層を洗い落として剥離させるという問題が生じ得る。
【0127】
前記物理的処理は、レーザ照射、ポリッシング(polishing)、コロナ処理、及びプラズマ処理などからなる群より選ばれるいずれか1つでありうるし、前記ポリッシングは、紙やすり・研磨布またはニップロール製織などを適切な強度で擦って所望の微細凹凸のサイズを形成するように行われうる。
【0128】
また、前記イオン伝導体コーティング層の表面にパターンを形成するために、前記エッチング処理を利用する場合、形成しようとするパターンの形状のマスクを用いて前記化学的処理または物理的処理をすることができる。
【0129】
本発明のさらに他の一実施形態に係るイオン交換膜の製造方法は、複数の空隙(pore)を含む多孔性支持体の空隙をイオン伝導体で満たしつつ前記多孔性支持体の表面にイオン伝導体コーティング層を形成するステップ、及び、前記イオン伝導体コーティング層の表面をフッ素ガスで処理するステップを含む。
【0130】
前記多孔性支持体及びイオン伝導体についての具体的な説明と前記イオン伝導体で前記多孔性支持体の空隙を満たす方法は、上記と同様なので、繰り返し的な説明は省略する。
【0131】
ただし、前記イオン伝導体で前記多孔性支持体の空隙を満たす過程で前記イオン伝導体は、前記多孔性支持体の空隙を満たした後、前記多孔性支持体表面に前記イオン伝導体コーティング層を形成させる。このために、前記含浸工程を複数回行うことができる。
【0132】
次に、前記イオン伝導体コーティング層の表面をフッ素ガスで処理する。
【0133】
前記フッ素ガス処理によって前記イオン伝導体コーティング層のフッ素ガスで処理された表面には共有結合及びフッ素置換基を含むことができる。
【0134】
前記フッ素ガス処理は、常温(10~30℃)のチャンバ内において、フッ素ガスを数ppm単位で吹き込んで行われうる。前記フッ素ガス処理の時間は約5~60分程度で行われうるのであり、前記処理時間内で前記フッ素ガス処理がなされる場合、前記イオン伝導体コーティング層の表面の10~40面積%程度について表面特性が変化され得る。
【0135】
前記イオン交換膜の製造方法は、前記フッ素ガス処理されたイオン伝導体コーティング層上にフッ素系イオン伝導体コーティング層を形成するステップをさらに含むことができる。
【0136】
前記フッ素系イオン伝導体コーティング層についての具体的な説明は、上記と同様なので、繰り返し的な説明は省略する。
【0137】
また、前記フッ素系イオン伝導体コーティング層を形成するための前記フッ素系イオン伝導体を含む溶液は、前記イオン伝導体と同様に、商用化されたフッ素系イオン伝導体を含む溶液を購入して使用することができ、前記フッ素系イオン伝導体を溶媒に分散させて製造することもできる。前記フッ素系イオン伝導体を前記溶媒に分散させる方法は、従来一般的に知られた方法を使用することが可能であるため、具体的な説明は省略する。
【0138】
また、前記フッ素系イオン伝導体を含む溶液を製造するための溶媒では、水、親水性溶媒、有機溶媒、及びこれらの1つ以上の混合物からなる群より選ばれる溶媒を用いることができ、これらについては、前記説明と同様なので、繰り返し的な説明は省略する。
【0139】
前記フッ素系イオン伝導体を含む溶液を前記フッ素ガス処理されたイオン伝導体コーティング層上にコーティングする方法では、スクリーンプリンティング法、スプレーコーティング法、ドクターブレード法、ラミネーティング法などを使用することができる。
【0140】
一方、前記イオン交換膜の製造方法について各々説明したが、本発明がこれに限定されるものではなく、前記イオン交換膜の製造方法は、互いに組み合わせられることが可能である。
【0141】
例えば、前記イオン交換膜の製造方法が前記シリカコーティング層を形成するステップを含む場合、前記イオン伝導体コーティング層に代えて、前記シリカコーティング層の表面について、各々エッチング処理したりフッ素ガス処理したりすることができ、または、前記シリカコーティング層の表面をエッチング処理した後にフッ素ガス処理することができ、前記シリカコーティング層の表面をフッ素ガス処理した後にエッチング処理することもできる。
【0142】
また、前記イオン伝導体コーティング層の表面をエッチング処理した後にフッ素ガス処理でき、前記イオン伝導体コーティング層の表面をフッ素ガス処理した後にエッチング処理することもできる。
【0143】
本発明のさらに他の一実施形態に係るエネルギー貯蔵装置は、前記イオン交換膜を含む。以下、前記エネルギー貯蔵装置がレドックスフロー電池または燃料電池である場合について詳細に説明するが、本発明がこれに限定されるものではなく、前記イオン交換膜は、二次電池形態のエネルギー貯蔵装置にも適用が可能である。
【0144】
前記エネルギー貯蔵装置の1つの例示において、前記イオン交換膜は、小さいイオンチャンネルによってバナジウムイオンをブロッキング(blocking)することで、低いバナジウムイオン透過性を有し、バナジウムレドックスフロー電池に適用する場合、バナジウム活物質がクロスオーバー(crossover)されて、エネルギー効率を低下させるという問題を解決することにより、高いエネルギー効率を達成できるところ、前記エネルギー貯蔵装置は、好ましくレドックスフロー電池(redox flow battery)でありうる。
【0145】
前記レドックスフロー電池は、互いに向かい合うように配置される正極と負極、及び、前記の正極と負極との間に配置される前記イオン交換膜を含む電池セルに、正極電解質及び負極電解質を供給して充放電を行うことができる。
【0146】
前記レドックスフロー電池は、正極電解質としてV(IV)/V(V)レドックスカップルを、負極電解質としてV(II)/V(III)レドックスカップルを使用する全バナジウム系レドックス電池;正極電解質としてハロゲンレドックスカップルを、負極電解質としてV(II)/V(III)レドックスカップルを使用するバナジウム系レドックス電池;正極電解質としてハロゲンレドックスカップルを、負極電解質としてスルファイドレドックスカップルを使用するポリスルファイドブロミンレドックス電池;または正極電解質としてハロゲンレドックスカップルを、負極電解質として亜鉛(Zn)レドックスカップルを使用する亜鉛-ブロミン(Zn-Br)レドックス電池でありうるが、本発明において前記レドックスフロー電池の種類が限定されない。
【0147】
以下、前記レドックスフロー電池が全バナジウム系レドックス電池である場合を例に挙げて説明する。しかし、本発明のレドックスフロー電池が前記全バナジウム系レドックス電池に限定されるものではない。
【0148】
図1は、前記全バナジウム系レドックス電池を概略的に示す模式図である。
【0149】
前記
図1に示すように、前記レドックスフロー電池は、セルハウジング102、前記セルハウジング102を正極セル102Aと負極セル102Bに両分するように設けられた前記イオン交換膜104、そして、前記正極セル102Aと負極セル102Bとのそれぞれに位置する正極106及び負極108を含む。
【0150】
また、前記レドックスフロー電池は、追加的に前記正極電解質が貯蔵される正極電解質貯蔵タンク110、及び、前記負極電解質が貯蔵される負極電解質貯蔵タンク112をさらに備えることができる。
【0151】
また、前記レドックスフロー電池は、前記正極セル102Aの上端及び下端に、正極電解質流入口及び正極電解質流出口を備え、前記負極セル102Bの上端及び下端に、負極電解質流入口及び負極電解質流出口を備えることができる。
【0152】
前記正極電解質貯蔵タンク110に貯蔵された前記正極電解質は、ポンプ114によって前記正極電解質流入口を通じて前記正極セル102Aに流入した後、前記正極電解質流出口を通じて前記正極セル102Aから排出される。
【0153】
同様に、前記負極電解質貯蔵タンク112に貯蔵された前記負極電解質は、ポンプ116によって前記負極電解質流入口を通じて前記負極セル102Bに流入した後、前記負極電解質流出口を通じて前記負極セル102Bから排出される。
【0154】
前記正極セル102Aでは、電源/負荷118の動作によって前記正極106を介しての電子の移動が発生し、これにより、V5+⇔V4+の酸化/還元反応が起こる。同様に、前記負極セル102Bでは、電源/負荷118の動作によって前記負極108を介しての電子の移動が発生し、これにより、V2+⇔V3+の酸化/還元反応が起こる。酸化/還元反応を終えた正極電解質と負極電解質とは、それぞれ、正極電解質貯蔵タンク110と負極電解質貯蔵タンク112に循環される。
【0155】
前記正極106と負極108とは、Ru、Ti、Ir、Mn、Pd、Au、及びPtの中から選択される1種以上の金属と、Ru、Ti、Ir、Mn、Pd、Au、及びPtの中から選択される1種以上の金属の酸化物を含む複合材(例えば、Ti基材にIr酸化物やRu酸化物を塗布したもの)、前記複合材を含むカーボン複合物、前記複合材を含む寸法安定電極(DSE)、導電性ポリマー(例えば、ポリアセチレン、ポリチオフェンなどの電気が通じる高分子材料)、グラファイト、ガラス質カーボン、導電性ダイアモンド、導電性DLC(Diamond-Like Carbon)、カーボンファイバからなる不織布、及び、カーボンファイバからなる織布からなる群より選ばれるいずれか1つで構成された形態でありうる。
【0156】
前記正極電解質及び負極電解質は、チタンイオン、バナジウムイオン、クロムイオン、亜鉛イオン、錫イオン、及びこれらの混合物からなる群より選ばれるいずれか1つの金属イオンを含むことができる。
【0157】
例えば、前記負極電解質は、負極電解質イオンとしてバナジウム2価イオン(V2+)またはバナジウム3価イオン(V3+)を含み、前記正極電解質は、正極電解質イオンとしてバナジウム4価イオン(V4+)またはバナジウム5価イオン(V5+)を含むことができる。
【0158】
前記正極電解質及び負極電解質に含まれる前記金属イオンの濃度は、0.3~5Mであることが好ましい。
【0159】
前記正極電解質及び負極電解質の溶媒では、H2SO4、K2SO4、Na2SO4、H3PO4、H4P2O7、K2PO4、Na3PO4、K3PO4、HNO3、KNO3、及びNaNO3からなる群より選ばれるいずれか1つを使用できる。前記の正極及び負極の活物質となる前記金属イオンが全て水溶性であるため、前記の正極電解質及び負極電解質の溶媒として水溶液を好ましく用いることができる。特に、水溶液として、前記の硫酸、リン酸、硝酸、硫酸塩、リン酸塩、及び硝酸塩からなる群より選ばれるいずれか1つを使用する場合、前記金属イオンの安定性、反応性、及び溶解度を向上させることができる。
【実施例】
【0160】
以下、本発明の属する技術分野における通常の知識を有する者が容易に実施できるように本発明の実施形態について詳細に説明する。しかしながら、本発明は、種々の相異なる形態で実現されうるのであり、ここで説明する実施形態に限定されない。
【0161】
[実施例:イオン交換膜の製造]
(実施例1-1)
濃度が12重量%であるポリアミック酸/THF紡糸溶液を30kVの電圧が印加された状態で電界紡糸した後、ポリアミック酸ナノウェブ前駆体を形成してから、350℃のオーブンで5時間の間熱処理して15μmの平均厚さを有するポリイミド多孔性支持体を製造した。この際、前記電界紡糸は、25℃にてスプレージェットノズルで30kVの電圧を印加した状態で行った。
【0162】
N-メチル-2-ピロリドン(N-methyl-2-pyrrolidinone;NMP)にSPEEK(sulfonated polyether ether ketone)を溶解させて10重量%のイオン伝導体溶液を製造した。
【0163】
前記イオン伝導体溶液に前記多孔性支持体を浸漬したが、具体的には、常温で20分間浸漬工程を行い、この際、微細気泡除去のために、減圧雰囲気を1時間くらい適用した。その後、80℃に維持された熱風オーブンで3時間乾燥してNMPを除去した。
【0164】
一方、シリカ分散液(シリカ粒径15nm、溶媒イソプロピルアルコール、シリカ25重量%)にイオン伝導体であるSPEEK(sulfonated polyether ether ketone)を溶解させてシリカ-イオン伝導体混合物を製造した。前記シリカ-イオン伝導体混合物は、前記イオン伝導体100重量部に対して前記シリカを10重量部で含んだ。
【0165】
前記イオン伝導体が空隙に満たされた多孔性支持体を、前記シリカ-イオン伝導体混合物に浸漬した。具体的には、常温で20分間浸漬工程を行い、この際、微細気泡除去のために、減圧雰囲気を1時間くらい適用した。その後、80℃に維持された熱風IRオーブンで3時間乾燥してNMPを除去し、イオン交換膜を製造した。
【0166】
(実施例1-2)
イオン伝導体であるSPEEK(sulfonated polyetheretherketone)を有機溶媒であるDMAcに希釈させてエッチング溶液を製造した。このとき、前記エッチング溶液は、前記イオン伝導体を前記エッチング溶液の全体重量に対して3重量%で含んだ。
【0167】
上記実施例1-1で製造されたイオン交換膜の表面に、前記製造されたエッチング溶液を、常温で0.1ml/cm2の量でスプレーした後、80℃に維持された熱風IRオーブンで乾燥してエッチング処理した。前記製造されたイオン伝導体の表面には、前記シリカコーティング層の全体の厚さに対して3長さ%の微細凹凸が形成された。
【0168】
(実施例1-3)
上記実施例1-2において、前記エッチング溶液でエッチング処理したことの代わりに、前記製造されたイオン交換膜について、ニップロールを通過させて物理的処理したことを除いては、前記実施例1-2と同様に行ってイオン交換膜を製造した。前記製造されたシリカコーティング層の表面には、前記シリカコーティング層の全体の厚さに対して5長さ%の微細凹凸が形成された。
【0169】
(実施例1-4)
上記実施例1-2において、前記有機溶媒でエッチング処理したことの代わりに、プラズマ処理法で前記シリカコーティング層の表面に幅100nm、間隔100nmであるストライプパターンを形成したことを除いては、前記実施例1-2と同様に行ってイオン交換膜を製造した。
【0170】
(実施例1-5)
上記実施例1-2において、前記有機溶媒でエッチング処理したことの代りに、10×10cm2サイズのイオン交換膜に対して、常温のチャンバで10ppmのフッ素ガスで60分間処理したことを除いては、前記実施例1-2と同様に行ってイオン交換膜を製造した。
【0171】
(実施例2-1)
濃度が12重量%であるポリアミック酸/THF紡糸溶液を30kVの電圧が印加された状態で電界紡糸した後、ポリアミック酸ナノウェブ前駆体を形成してから、350℃のオーブンで5時間の間熱処理して15μmの平均厚さを有するポリイミド多孔性支持体を製造した。この際、前記電界紡糸は、25℃にてスプレージェットノズルで30kVの電圧を印加した状態で行った。
【0172】
N-メチル-2-ピロリドン(N-methyl-2-pyrrolidinone;NMP)にSPEEK(sulfonated polyetheretherketone)を溶解させて20重量%のイオン伝導体溶液を製造した。
【0173】
前記イオン伝導体溶液に前記多孔性支持体を浸漬したが、具体的には、常温で20分間浸漬工程を行い、この際、微細気泡除去のために減圧雰囲気を1時間くらい適用した。その後、80℃に維持された熱風オーブンで3時間乾燥してNMPを除去した。上記の浸漬、乾燥工程を3回繰り返して行い、イオン交換膜を製造した。
【0174】
一方、イオン伝導体であるSPEEK(sulfonated polyetheretherketone)を有機溶媒であるDMAcに希釈させてエッチング溶液を製造した。この際、前記エッチング溶液は、前記イオン伝導体を前記エッチング溶液の全体の重量に対して3重量%で含んだ。
【0175】
前記製造されたイオン交換膜の表面に、前記製造されたエッチング溶液を、常温で0.1ml/cm2の量でスプレーした後、80℃に維持された熱風IRオーブンで乾燥してエッチング処理した。前記製造されたイオン伝導体の表面には、イオン伝導体コーティング層の全体の厚さに対して1長さ%の微細凹凸が形成された。
【0176】
(実施例2-2)
上記実施例2-1において、前記エッチング溶液でエッチング処理したことの代わりに、前記製造されたイオン交換膜について、ニップロールを通過させて物理的処理したことを除いては、前記実施例2-1と同様に行ってイオン交換膜を製造した。前記製造されたイオン交換膜の表面には、前記イオン伝導体コーティング層の全体の厚さに対して5長さ%の微細凹凸が形成された。
【0177】
(実施例2-3)
上記実施例2-1において、前記有機溶媒でエッチング処理したことの代わりに、プラズマ処理方法で、前記イオン伝導体コーティング層の表面に幅100nm、間隔100nmであるストライプパターンを形成したことを除いては、上記実施例2-1と同様に行ってイオン交換膜を製造した。
【0178】
(実施例3)
上記実施例2-1において、前記有機溶媒でエッチング処理したことの代りに、10×10cm2サイズのイオン交換膜に対して、常温のチャンバで10ppmのフッ素ガスで60分間処理したことを除いては、上記実施例2-1と同様に行ってイオン交換膜を製造した。
【0179】
[実験例1:イオン交換膜のイオン伝導度]
上記実施例にて製造されたイオン交換膜の両面にPt/C電極を固定させ、95%RH、80℃で、厚さ方向(throughplane)の水素イオン伝導度を測定し、その結果を下記に表した。
【0180】
【0181】
上記の表1の結果のように、上記実施例1-1~3のイオン交換膜の場合、0.04~0.09S/cmの高い水素イオン伝導度を示した。
【0182】
[実験例2:イオン交換膜の表面エネルギー]
上記実施例にて製造されたイオン交換膜の表面エネルギーを、水に対する接触角測定で評価し、その結果は、下記に示した。
【0183】
【0184】
上記表2の結果、低い表面エネルギーを有するシリカコーティング層を含むか、表面エッチング処理、パターン化工程、及びフッ素ガスを処理した実施例1-1~実施例3の場合、接触角は全て60゜以上であり、平均的に69゜以上であって高い値を示した。
【0185】
このように、本発明の好ましい一実施形態によりイオン交換膜の表面エネルギーが制御されて、界面抵抗が減少したことが確認できた。また、このようなイオン交換膜の表面エネルギーの制御によって界面接合性の向上を確認できた。
【0186】
以上、本発明の好ましい実施形態について詳細に説明したが、本発明の権利範囲はこれに限定されるものではなく、次の請求の範囲で定義している本発明の基本概念を利用した当業者の様々な変形及び改良形態も本発明の権利範囲に属するものである。
【産業上の利用可能性】
【0187】
本発明の好ましい一実施形態に係るイオン交換膜を含むエネルギー貯蔵装置、特に、レドックスフロー電池の場合、発電所や電力系統、建物に設けて急な電力需要増加に対応できる負荷平準化機能、停電や瞬時電圧低下を補償したり抑制したりする機能を有しているので、大規模エネルギー貯蔵に適している。