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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-02-08
(45)【発行日】2022-02-17
(54)【発明の名称】混合器装置
(51)【国際特許分類】
   F01N 3/24 20060101AFI20220209BHJP
   B01F 23/20 20220101ALI20220209BHJP
   B01F 25/40 20220101ALI20220209BHJP
   B01D 53/94 20060101ALI20220209BHJP
【FI】
F01N3/24 N ZAB
B01F3/04 Z
B01F5/00 D
B01D53/94 400
B01D53/94 222
【請求項の数】 15
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2020174756
(22)【出願日】2020-10-16
(65)【公開番号】P2021067267
(43)【公開日】2021-04-30
【審査請求日】2020-10-16
(31)【優先権主張番号】10 2019 128 193.8
(32)【優先日】2019-10-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】520050956
【氏名又は名称】プーレム ゲー・エム・ベー・ハー
【氏名又は名称原語表記】Purem GmbH
【住所又は居所原語表記】Homburger Strasse 95, 66539 Neunkirchen, Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【弁理士】
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100134315
【弁理士】
【氏名又は名称】永島 秀郎
(74)【代理人】
【識別番号】100135633
【弁理士】
【氏名又は名称】二宮 浩康
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【弁理士】
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】ペーター カスト
(72)【発明者】
【氏名】ミヒャエル デントラー
(72)【発明者】
【氏名】フィンツェント エーダー
(72)【発明者】
【氏名】マティアス ロートフース
【審査官】菅野 京一
(56)【参考文献】
【文献】特表2018-534458(JP,A)
【文献】国際公開第2016/118720(WO,A1)
【文献】特開2016-089823(JP,A)
【文献】国際公開第2014/112072(WO,A1)
【文献】特開2013-133774(JP,A)
【文献】特開2016-217337(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F01N 3/00-3/38
B01F 3/00,5/00
B01D 53/94
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
内燃機関の排ガス装置用の混合器装置であって、
前記混合器装置は、
排ガス装置(16)における排ガス流と反対方向に位置付けされるべき後面(22)と、前記排ガス流の方を向いて位置付されるべき前面(44)とを有する底部要素(12)を含んでおり、前記底部要素(12)内には、反応剤送入開口(31)が形成されており、前記反応剤送入開口(31)は、前記底部要素(12)の前記前面(44)で前記反応剤送入開口(31)から始まり、開口軸線(A)の方向において半径方向に拡張する反応剤受容体積体(46)に対して開放されており
記底部要素(12)と結合されている、前記開口軸線(A)を環状に包囲している回転運動生成要素(20)を含んでおり、前記回転運動生成要素(20)内には、前記開口軸線(A)の方向において、前記反応剤受容体積体(46)に続く混合体積体(64)が形成されており、前記回転運動生成要素(20)内には、前記開口軸線(A)を中心とした円周方向において相互に続く複数の排ガス通流開口(66)が設けられており、
前記底部要素(12)内には、前記開口軸線(A)を中心とした円周方向において相互に続いて配置されており、かつ前記反応剤受容体積体(46)に対して開放されている複数の排ガス通流通路(58)が設けられており、
少なくとも1つの排ガス通流通路(58)は、前記底部要素(12)の前面(44)に設けられた、軸線方向に開放された溝状の窪みを含んでいる、
内燃機関の排ガス装置用の混合器装置。
【請求項2】
前記回転運動生成要素(20)は、環状の結合領域(50)によって、前記底部要素(12)の前記前面(44)で収容領域(48)上に軸線方向に載置され、前記底部要素(12)と結合されている、請求項1記載の混合器装置。
【請求項3】
排ガス通流通路(58)は、前記底部要素(12)の前記前面(44)に設けられた、軸線方向に開放された溝状の窪みを含んでいる、請求項1または2記載の混合器装置。
【請求項4】
少なくとも1つの排ガス通流通路(58)、有利には各排ガス通流通路(58)は、前記底部要素(12)と前記回転運動生成要素(20)の前記環状の結合領域(50)との間に形成された流入開口(60)の領域において、半径方向に外側へ開放されている、請求項2および3記載の混合器装置。
【請求項5】
少なくとも1つの排ガス通流通路(58)、有利には各排ガス通流通路(58)は、前記反応剤受容体積体(46)に対して半径方向に内側へ開放されている、前記底部要素(12)を貫通する穴を含んでいる、請求項1から4までのいずれか1項記載の混合器装置。
【請求項6】
前記回転運動生成要素(20)内に提供された前記混合体積体(64)は、前記底部要素(12)から始まって、前記開口軸線(A)の方向において、半径方向に拡張して形成されている、請求項1から5までのいずれか1項記載の混合器装置。
【請求項7】
円周方向において相互に続く前記排ガス通流開口(66)の少なくとも一部は、相違する大きさまたは/および形状または/および円周方向において直接的に続く排ガス通流開口(66)に対する異なる間隔で形成されている、請求項1から6までのいずれか1項記載の混合器装置。
【請求項8】
前記回転運動生成要素(20)での少なくとも1つの排ガス通流開口(66)、有利には各排ガス通流開口(66)に対する割り当てにおいて、少なくとも1つの流れ偏向要素(70)が設けられている、請求項1から7までのいずれか1項記載の混合器装置。
【請求項9】
種々の排ガス通流開口(66)に対する割り当てにおいて設けられている少なくとも2つの流れ偏向要素(70)は、相違する大きさまたは/および形状または/および傾斜した配置で形成されている、または/かつ少なくとも1つの流れ偏向要素(70)、有利には各流れ偏向要素(70)は、前記混合体積体(64)から離れる方向において延在している、請求項8記載の混合器装置。
【請求項10】
前記開口軸線(A)を中心とした、前記底部要素(12)に関する前記回転運動生成要素(20)の所定の回転位置付けを設定するために、位置付け手段(52)が設けられている、請求項1から9までのいずれか1項記載の混合器装置。
【請求項11】
反応剤送入装置(18)を前記底部要素(12)に取り付けるために、前記底部要素(12)の前記後面(22)に、固定装置(30)が設けられている、請求項1から10までのいずれか1項記載の混合器装置。
【請求項12】
前記固定装置(30)は、前記反応剤送入開口(31)の周りに、円周間隔を伴って相互に配置されており、かつ前記後面(22)に対して開放されている複数の固定開口(34)、有利には雌ねじ開口を含んでいる、請求項11記載の混合器装置。
【請求項13】
少なくとも1つの固定開口(34)は、少なくとも1つの別の固定開口(34)よりも大きい半径方向間隔を前記開口軸線(A)に対して有している、請求項12記載の混合器装置。
【請求項14】
少なくとも1つの固定開口(34)は、前記底部要素(12)に設けられている、前記位置付け手段(52)の位置付け突起(54)の領域に設けられている、請求項10を引用する、請求項12または13記載の混合器装置。
【請求項15】
排ガス装置であって、
前記排ガス装置は排ガス案内コンポーネント(14)と、前記排ガス案内コンポーネント(14)で支持されている、請求項1記載の混合器装置(10)とを含んでおり、前記底部要素(12)の前記後面(22)には、反応剤送入装置(18)が配置されている、
排ガス装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内燃機関の排ガス装置用の混合器装置に関する。
【0002】
この種の混合器装置は、特に、ディーゼルユニットとして構成されている内燃機関の排ガス装置において、排ガス流内に噴射された反応剤、たとえば尿素溶液/水溶液を排ガスと効率的に混合するために用いられ、これによって、下流側に続く触媒装置、特にSCR触媒装置において、排ガス中の窒素酸化物の割合を低減させる触媒反応が進行することが可能になる。
【0003】
DE 10 2014 108 809 C5から、近似的に円筒状の排ガス混合管を含んでいる混合器装置が既知である。この排ガス混合管の軸線方向の終端領域では、底部要素が支持されており、この底部要素では、反応剤を、排ガス混合管内に形成された混合体積体に噴射する、一般的にはインジェクタとも称される反応剤送出装置が支持されている。排ガス混合管内には、管の長手方向軸線の方向において相互に続く、排ガス通流開口の複数の列が形成されており、これらを通って、排ガス混合管を循環する排ガスが混合体積体内に流入し、そこで反応剤と混ざり合うことができる。実質的に円錐状に半径方向に拡張する、排ガス混合管の長手方向領域においても、排ガス通流開口が設けられている。
【0004】
本発明の課題は、反応剤の堆積が生じる危険性を低減させるのと同時に、噴射された反応剤に対する改善された混合特性を提供する、内燃機関の排ガス装置用の混合器装置を提供することである。
【0005】
上述の課題は、本発明に相応して、内燃機関の排ガス装置用の混合器装置によって解決され、この混合器装置は、
・排ガス装置における排ガス流と反対方向に位置付けされるべき後面と、排ガス流の方を向いて位置付されるべき前面とを有する底部要素を含んでおり、ここでこの底部要素内には、反応剤送入開口が形成されており、ここでこの反応剤送入開口は、底部要素の前面で反応剤送入開口から始まり、開口軸線の方向において半径方向に拡張する反応剤受容体積体に対して開放されており、ここでこの底部要素内には、開口軸線を中心とした円周方向において相互に続いて配置されており、かつ反応剤受容体積体に対して開放されている、たとえば近似的に半径方向に延在している複数の排ガス通流通路が設けられており、
・底部要素と結合されている、開口軸線を環状に包囲している回転運動生成要素を含んでおり、ここでこの回転運動生成要素内には、開口軸線の方向において、反応剤受容体積体に続く混合体積体が形成されており、この回転運動生成要素内には、開口軸線を中心とした円周方向において相互に続く複数の排ガス通流開口が設けられている。
【0006】
本発明に相応に構築された混合器装置では、底部要素は、回転運動生成要素内に提供された混合体積体を軸線方向で終了させる、もしくは反応剤を噴射するための反応剤送入装置を支持するというタスクを有しているだけでなく、反応剤受容体積体とともに、その中で、この反応剤受容体積体に対して開放されている排ガス通流通路を介して、噴射された反応剤を包囲する排ガス流が生成される体積体も提供する。反応剤受容体積体内への排ガスのこのような供給によって、流れの方向変換または渦巻き生成によって、反応剤の噴霧円錐から偏向された反応剤の小さい滴が底部要素に集まり、そこで堆積を形成する可能性がなくなる。反応剤受容体積体内に導入された排ガス流によって、噴射された反応剤全体が、混合体積体の領域内に達し、そこで効率的に、排ガス通流開口を介して均一に混合体積体内に導入された排ガスと混ざり合うことができる。
【0007】
底部要素との固定的な結合のために、回転運動生成要素は環状の結合領域によって、底部要素の前面で収容領域上に軸線方向に載置され、底部要素と結合されていてもよい。
【0008】
構造的に容易に実現され、かつ底部要素上での反応剤の堆積を効率的に阻止する設計は、少なくとも1つの排ガス通流通路、有利には各排ガス通流通路が、底部要素の前面に設けられた、軸線方向に開放された溝状の窪みを含んでいることによって実現される。
【0009】
ここで、排ガス通流通路内への排ガスの流入を可能にするために、少なくとも1つの排ガス通流通路、有利には各排ガス通流通路が、底部要素と回転運動生成要素の環状の結合領域との間に形成された流入開口の領域において、半径方向に外側へ開放されていてもよい。
【0010】
択一的な設計では、底部要素内に形成された反応剤受容体積体内への排ガスの流入は、少なくとも1つの排ガス通流通路、有利には各排ガス通流通路が、反応剤受容体積体に対して半径方向に内側へ開放されている、底部要素を貫通する穴を含んでいることによって実現される。この種の穴は、たとえば穿孔として底部要素に設けられてもよい。
【0011】
混合体積体に達した反応剤と、混合体積体内に流入した排ガスとの効率的な混合のために、回転運動生成要素内に提供された混合体積体は、底部要素から始まって、開口軸線の方向において、半径方向に拡張して形成されていてもよい。
【0012】
基本的に、排ガスと反応剤との均一かつ効率的な混合のために、実質的に回転運動生成要素もしくは混合体積体の長手方向中央軸線にも相当し得る開口軸線に対して同心もしくは実質的に対称の回転運動流を生成するのは有利である。排ガス流における混合器装置の統合に関連するが、回転運動生成要素に全ての円周領域において均一に排ガスが流れ込むことを基本的には保証することができないので、排ガスの不均一な流れ込みを補償する、回転運動生成要素の次のような設計に対して、円周方向において相互に続く排ガス通流開口の少なくとも一部が、相違する大きさまたは/および形状または/および円周方向において直接的に続く排ガス通流開口に対する異なる間隔で形成されていることが提案される。
【0013】
回転運動流の発生を次のことによって支持することができる。すなわち、回転運動生成要素での少なくとも1つの排ガス通流開口、有利には各排ガス通流開口に対する割り当てにおいて、少なくとも1つの流れ偏向要素が設けられていることによって支持することができる。
【0014】
ここで種々の排ガス通流開口に対する割り当てにおいて設けられている少なくとも2つの流れ偏向要素が、相違する大きさまたは/および形状または/および傾斜した配置(Anstellung)で形成されている場合、これによって、回転運動生成要素への、排ガスの不均一な流れ込み(Anstroemung)も補償することができる。
【0015】
混合体積体内部において、回転運動流の発生を妨害しないために、少なくとも1つの流れ偏向要素、有利には各流れ偏向要素が、混合体積体から離れる方向において、すなわち回転運動生成要素で外側へ延在することがさらに提案される。
【0016】
特に、上述した、回転運動生成要素の非対称の設計の場合には、その所定の位置付けのために、排ガス流内に位置付け手段を設けることが有利であり、これによって、開口軸線を中心とした、底部要素に関する回転運動生成要素の所定の回転位置付けを設定することができる。
【0017】
反応剤送入装置を底部要素に取り付けるために、底部要素の後面に、固定装置が設けられていてもよい。
【0018】
固定装置が、反応剤送入開口の周りに、円周間隔を伴って相互に配置されており、かつ後面に対して開放されている複数の固定開口、有利には雌ねじ開口を含んでいる場合、反応剤送入装置を容易に、たとえばボルトを用いて固定要素に取り付けることができる。
【0019】
ここで、反応剤送入装置の構造的な設計に合わせることを可能にするために、少なくとも1つの固定開口が、少なくとも1つの別の固定開口よりも大きい半径方向間隔を開口軸線に対して有していてもよい。
【0020】
固定開口は基本的には、底部要素の後面に対してのみ開放されている開口として設計されるべきなので、排ガス漏出を回避するために、底部要素の使用可能な構築材料の効率的な利用のために、少なくとも1つの固定開口が、底部要素に設けられている、位置付け手段の位置付け突起の領域に設けられていてもよい。
【0021】
本発明はさらに、排ガス装置に関しており、この排ガス装置は排ガス案内コンポーネントと、この排ガス案内コンポーネントで支持されている、本発明に相応する構造を備える混合器装置とを含んでおり、ここで底部要素の後面には、反応剤送入装置が配置されている。
【0022】
本発明を以降で、添付の図面を参照して詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1図2および図4における画像方向Iにおける、内燃機関の排ガス装置用の混合器装置の側面図である。
図2図1における観察方向IIにおける、図1の混合器装置の平面図である。
図3図2における線III-IIIに沿って切断された、図1の混合器装置の長手方向断面図である。
図4図2における線IV-IVに沿って切断された、図1の混合器装置の長手方向断面図である。
図5図1における方向Vにおいて観察された、図1の混合器装置の後面図である。
図6図1の混合器装置が内部に統合された排ガス装置の部分図である。
【0024】
図1から図5に示された混合器装置10は、実質的に、2つの構成部分もしくは2つの構造グループで構築されている。これは一方では、一般的に参照番号12によって示されている底部要素であり、この底部要素によって混合器装置10は、図6において見て取れる、一般的に参照番号16によって示されている排ガス装置の、たとえば円蓋状のコンポーネント14に固定されていてもよく、かつこの底部要素には、図3に示されているように、一般的に参照番号18によって示されている反応剤送入装置が取り付けられる。さらに、混合器装置10は、回転運動生成要素20を含んでおり、この回転運動生成要素は以降で説明する様式で底部要素12と結合されている。
【0025】
底部要素12はたとえば、鍛造された構成部分として、鋳込まれた構成部分として、焼結された構成部分としてまたは切削加工によって製造された金属構成部分として提供されていてもよい。回転運動生成要素20は、たとえば薄板成形部分として形成されていてもよい。
【0026】
底部要素12は、一般的に参照番号22によって示されている後面を有しており、この後面には、一般的にインジェクタとも称される反応剤送入装置18が、たとえば固定フランジ24によって取り付けられていてもよい。固定フランジ24には噴射ノズル26が支持されており、噴射ノズルを介して、以降でさらに説明され、図3において暗示されるように、噴射されるべき反応剤が噴霧円錐28の形で送出される。底部要素12には、反応剤送入開口31が形成されており、反応剤送入開口にはたとえば噴射ノズル26が係合して位置付けされていてもよい、もしくは反応剤送入開口を通じて、噴射されるべき反応剤が導かれる、もしくは噴射される。
【0027】
底部要素12の後面22には、図5において見て取れる固定装置30が形成されており、この固定装置を介して、反応剤送入装置18もしくはその固定フランジ24を底部要素12に固定することができる。固定装置30は、たとえば、固定フランジ24の取り付けのために形成されている平坦な取り付け面領域32と、複数の固定開口34とを含んでいてもよく、これらの固定開口は、反応剤送入開口31の周り、相互に円周間隔を伴って配置されており、たとえば雌ねじ開口として形成されている。取り付け面領域32の形成および固定開口34の位置付けは、固定フランジ24の形状に合うように調整されていてもよい。図示の例では、これらの固定開口34は、反応剤送入開口31もしくは図3において見て取れる開口軸線もしくはその開口中央軸線Aに対して異なる間隔を有している。したがって、底部要素12は、特に後面22の領域において、実質的に円形の円周輪郭とは異なる、僅かに楕円形の円周輪郭を有する。
【0028】
固定装置30を半径方向に外側に包囲するように、底部要素12に、結合領域36が設けられている。このような結合領域36は、半径方向に外側へ突出している結合フランジ38と、これに半径方向に内側で続いて、結合ショルダー40とを有している。図6に示されているように、このような結合領域36によって、底部要素12を、排ガス案内コンポーネント14内に形成されている開口42内に、たとえば内側からはめ込むことができる。したがって、結合フランジ38は、排ガス案内コンポーネント14の内側に当接しており、結合ショルダー40を介して、開口42における底部要素12のセンタリングが設定可能である。ここで底部要素12をたとえば、円周方向において包囲している溶接継ぎ目によって、結合ショルダー40もしくは結合フランジ38の領域内に固定し、気密性に排ガス案内コンポーネント14に取り付けることができる。
【0029】
ここでは、底部要素12の前面44に、反応剤受容体積体46が形成されている。反応剤送入開口31は、この反応剤受容体積体46に対して開放されており、反応剤受容体積体46は軸線方向において、反応剤送入開口31から始まり、半径方向に拡張している、たとえば円錐形の構造を有している。したがって、反応剤受容体積体46は、後面22に近い自身の領域において、前面44に近い自身の領域におけるよりも、より小さい横断面を有している。
【0030】
前面44の領域において、底部要素12は、段を伴って形成されている収容領域48を形成し、この収容領域には、回転運動生成要素20が環状の結合領域50とともに、軸線方向に載置されており、これによって回転運動生成要素20は半径方向にかつ軸線方向に所定のように、底部要素12に関して位置付けられている。回転運動生成要素20はたとえば溶接によって、底部要素12と、収容領域48に拡がる、もしくは収容領域に軸線方向に支持されている結合領域50の領域において固定的に結合されていてもよい。特に、底部要素12と回転運動生成要素20との結合を容易に確立するために、回転運動生成要素20は自身の環状の結合領域50において、実質的に円筒状の構造を有する収容領域48の相応する形状に合わせて形成されていてもよい。
【0031】
底部要素12に関する、回転運動生成要素20の所定の回転位置付けもしくは円周位置付けも得るために、一般的に参照番号52によって示されている位置付け手段が設けられている。位置付け手段52はたとえば、図5において見て取れる固定開口34が反応剤送入開口31に対して比較的大きい間隔で配置されている場所で、位置付け突起54を含んでおり、この位置付け突起は、図1において見て取れる、回転運動生成要素20の環状の結合領域50における位置付け凹部56に係合して位置付けされており、これによって、底部要素12に関する、回転運動生成要素20の許される回転位置付けは1つだけになる。たとえば、円周に分配されて、複数のこの種の位置付け突起54および相応に位置付け凹部56も設けられていてもよく、環状の結合領域は円周方向において基本的に複数回中断されていてもよいが、それにもかかわらず、継続して、回転運動生成要素20を底部要素12に取り付けるための一般的に環状の全体的な構造を提供しているということを指摘しておく。固定開口34のうちの1つが、この種の位置付け突起54の領域に配置されており、すなわちこれによって、円周方向においても半径方向においても重なって位置付けられていることによって、ガス漏出を回避するために、止まり穴として形成されるべき固定開口34を、底部要素12の軸線方向に中実の構築材料内に設けることができることが保証されている。
【0032】
底部要素12には、反応剤受容体積体46に対する割り当てにおいて、円周方向において相互に間隔を伴って、かつ相互に続いて配置されている、一般的に星型の構造で設けられている複数の排ガス通流通路58が設けられている。これらの排ガス通流通路58は、たとえば半径方向に、反応剤送入開口31から始まって、半径方向に外側へ延在しており、軸線方向に開放されている、溝状の窪みとしてのその設計に基づいて、基本的に軸線方向に、前面44へ向かう方向において開放されている。反応剤受容体積体46の拡張する幾何学的形状を提供するための底部要素12の形状に相応して、実質的に半径方向に延在している排ガス通流通路58はここで、開口軸線Aの方向において僅かに傾斜して配置されている。半径方向外側で、排ガス通流通路58は流入開口60を介して外側へ、すなわち混合器装置10に関して周辺に対して開放されている。このような流入開口60は、底部要素12と、回転運動生成要素20の環状の結合領域50との間に画定されている。
【0033】
円周方向において、これらの排ガス通流通路58の間に、底部要素12の材料領域62が位置し、材料領域は実質的に、軸線方向において半径方向に拡張する、反応剤受容体積体46の構造も定める。同様に、ガス漏出を回避するために止まり穴として形成されている、位置付け突起54の領域に位置付けされていない固定開口34が、このような材料領域62の領域に設けられていてもよく、すなわち、底部要素12が比較的大きい軸線方向の材料厚さを有している場所に設けられていてもよい。このようにして、安定した、たとえばねじ止めによって実現された、底部要素12への反応剤送出装置18の取り付けを保証することができる。
【0034】
回転運動生成要素20は、自身の内部領域において、混合体積体64を提供する。このような混合体積体64も、軸線方向において、底部要素12への回転運動生成要素20の取り付け部分から始まり、半径方向に拡張している、たとえば円錐形の構造を有している。回転運動生成要素20の長手方向中央軸線および実質的にメイン噴射方向にも相当する開口軸線Aを中心とした円周方向において、回転運動生成要素20内に、相互に円周間隔を伴って配置されている複数の排ガス通流開口66が設けられている。メイン噴射方向では、反応剤が噴霧円錐28の形で、反応剤受容体積体46もしくは混合体積体64内に噴射される。排ガス通流開口66はたとえば次のように構成もしくは寸法決めされていてもよい。すなわちこれらが、実質的にそれぞれ、ほぼ、回転運動生成要素20の軸線方向の拡がり全体にわたって延在し、底部要素12から離れる方向において増大する円周寸法を有しており、これによって、円周方向において相互に直接的に隣接する排ガス通流開口66の間に、ウェブ68が、近似的に一定の寸法を伴って、円周方向において形成されているように、構成もしくは寸法決めされていてもよい。
【0035】
各排ガス通流開口66に対する割り当てにおいて、フラップ状のまたは翼状の流れ偏向要素70が設けられている。これらはたとえば次のことによって生成可能である。すなわち、実質的にU字状のスリットを、回転運動生成要素の構築材料内に設ける際に、各排ガス通流開口66を生成するために、このようなスリットによって包囲されている材料領域が半径方向に外側へ曲げられ、これによって、一方では各排ガス通流開口66が生じ、他方では、このような材料領域によって、各ウェブ68に続く、流れ偏向要素70が生じることによって生成可能である。したがって流れ偏向要素70の円周輪郭は実質的に、これらにそれぞれ割り当てられている排ガス通流開口66の円周輪郭にも相当する。当然、流れ偏向要素70が、割り当てられている各排ガス通流開口66の円周輪郭とは異なる円周輪郭を有していてもよく、たとえば異なって形成された複数のセグメント、および異なった傾斜で配置された複数のセグメント、すなわち回転運動生成要素20の基本的な幾何学的形状に関して異なる角度で配置された複数のセグメントにも分けられていてもよい。
【0036】
円周方向において相互に続いている排ガス通流開口66に種々の円周間隔が設けられていることが図2において明確に見て取れる。これは、全ての排ガス通流開口66が直接的に隣接している排ガス通流開口66に対して同じ円周間隔を有しているのではなく、この結果、異なる円周寸法を備えるウェブ68が存在している、ということを意味している。基本的には、排ガス通流開口66は相互に異なる寸法を有していてもよい。流れ偏向要素70も、相互に異なる寸法を有していてもよい、もしくは回転運動生成要素20の基本的な幾何学的形状に関して異なった傾斜で配置されていてもよい、もしくは異なった角度がつけられていてもよく、すなわち異なった程度、半径方向に外側へ曲げられていてもよい。
【0037】
図6は、排ガス装置16内への、このように構築された混合器装置10の統合を示している。図6は、流れの矢印Pに基づいて、自身の外側での排ガスの、混合器装置10への流れ込みを示してしている。
【0038】
特に、排ガス装置16内への入れ込みによって、混合器装置10に、回転運動生成要素20の領域において、円周方向において、排ガスが均一に流れ込まず、これによって混合体積体64内への排ガスの基本的に不均一な流入特性が、回転運動流の生成の際に生じ得ることが明らかである。このような不均一な流入は、上述した、排ガス通流開口66もしくは流れ偏向要素70の変化する位置付けまたは/および異なる寸法または/および異なる形状によって補償される。円周方向において異なる、回転運動生成要素20への流れ込みにも係わらず、このようにして、開口軸線Aに関して近似的に同心の、もしくはほぼ対称の回転運動流が、混合体積体内への排ガスの流入の際に生成され、これによって噴霧円錐28の形で混合体積体64内に噴射される反応剤との極めて均一な混合も生成可能である。
【0039】
しかし、外側から混合器装置10に流れ込む排ガスは、排ガス通流開口66だけを介して混合体積体64内に流入するのではなく、流入開口60および排ガス通流通路58も介して、反応剤が反応剤送入装置18の噴射ノズル26から流出する領域において、反応剤受容体積体46内に流入する。これによって排ガス流が、反応剤受容体積体46の内部で生成され、これは底部要素12の表面から始まり、噴霧円錐28を包囲し、すなわち被覆流を形成する。このような被覆流は、噴霧円錐28の形で送出された反応剤を、反応剤受容体積体から混合体積体64へ導き、ここで次に、排ガスとの一次的な混合が生じる。
【0040】
渦巻き生成または還流によって、反応剤の小さい滴が底部要素12の表面の領域において、すなわち反応剤受容体積体46の領域において、底部要素12に沈殿し、ここで堆積を形成し得ないことが、反応剤受容体積体46内に導入されるこのような排ガス流の生成によって保証される。この種の被覆流の生成は、実質的に、送出される反応剤全体が混合体積体64に達し、そこで、回転運動流の形で同様に混合体積体64内に導入された排ガスとの混合に供されることを保証する。同時に、高温の燃焼排ガスが、反応剤受容体積体46の領域において底部要素12で循環することによって、堆積の発生を支持する、底部要素の12の冷却が回避されることが保証される。
【0041】
混合器装置の本発明の設計によって、混合体積体への反応剤の極めて均一な送出に基づいて、かつ開口軸線Aに対して実質的に同心の構造を伴う極めて均一な渦流が生成できることに基づいて堆積の発生の恐れが格段に低減されるのと同時に、反応剤と排ガスとの極めて効率的な混合と排ガスの効率的な気化とが生成可能であることが保証される。これは同様に、下流側に続くSCR触媒装置での、特にコールドスタートまたは低い負荷点における改善された排ガス清浄をもたらし得る。
【0042】
図示され、これまで詳細に記述された混合器装置が種々の観点において変更可能であるということを最後に指摘しておく。したがってたとえば、排ガス通流開口もしくは流れ偏向要素の配置または/および形状を、各排ガス装置の構造もしくは排ガス装置における流れの案内に合うように、示されたものと異なって選択することが可能である。排ガス通流通路の数もしくは寸法も、示された配置もしくは寸法と異なっていてもよい。基本的にはこのような排ガス通流通路は、底部要素の内側に設けられている穴として、たとえば穿孔によって設けられて、提供されていてもよく、これらは一方では半径方向に外側へ開放されており、他方では反応剤受容体積体を包囲する、底部要素の表面の領域において、反応剤受容体積体に対して開放されている。排ガス通流通路がどのような形で形成されているのかは関係しないが、これらが、反応剤送出装置の取り付けのために用いられる固定開口と交差しないということに留意されたい。これは最終的に、一方では固定開口が、他方では排ガス通流通路が、種々の円周領域において、開口軸線に関して配置されるべきであるということを意味している。
図1
図2
図3
図4
図5
図6