(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-02-08
(45)【発行日】2022-02-17
(54)【発明の名称】内視鏡用可撓管の製造方法
(51)【国際特許分類】
A61B 1/005 20060101AFI20220209BHJP
G02B 23/24 20060101ALI20220209BHJP
【FI】
A61B1/005 511
G02B23/24 A
(21)【出願番号】P 2020525359
(86)(22)【出願日】2019-05-15
(86)【国際出願番号】 JP2019019341
(87)【国際公開番号】W WO2019244521
(87)【国際公開日】2019-12-26
【審査請求日】2020-09-30
(31)【優先権主張番号】P 2018117024
(32)【優先日】2018-06-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000113263
【氏名又は名称】HOYA株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100114557
【氏名又は名称】河野 英仁
(74)【代理人】
【識別番号】100078868
【氏名又は名称】河野 登夫
(72)【発明者】
【氏名】四條 由久
【審査官】増渕 俊仁
(56)【参考文献】
【文献】特開平11-042204(JP,A)
【文献】特開平03-169535(JP,A)
【文献】特開2006-014772(JP,A)
【文献】特開2007-050117(JP,A)
【文献】特開昭61-047918(JP,A)
【文献】特開2006-212278(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 1/00-1/32
G02B 23/24-23/26
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
未溶融のホットメルト接着剤を、第1温度に加熱する第1加熱部、前記第1温度より高い第2温度に加熱する第2加熱部、および前記第2温度よりも高い第3温度に加熱する第3加熱部がこの順番で配置された加熱流路の前記第1加熱部側から供給し、
前記加熱流路の前記第3加熱部側に接続された筒状のクロスヘッドの内側を、筒状の基材を所定の速度で通過させ、
前記加熱流路を通過中に溶融した前記ホットメルト接着剤を、前記クロスヘッドを介して前記基材の外周に押出成形する
内視鏡用可撓管の製造方法。
【請求項2】
前記第2温度は、前記ホットメルト接着剤の軟化点である
請求項1に記載の内視鏡用可撓管の製造方法。
【請求項3】
前記第3温度は、前記ホットメルト接着剤が流体になる温度である
請求項1または請求項2に記載の内視鏡用可撓管の製造方法。
【請求項4】
押出成形した前記ホットメルト接着剤の外周に外皮樹脂を押出成形する
請求項1から請求項3のいずれか一つに記載の内視鏡用可撓管の製造方法。
【請求項5】
溶融した前記ホットメルト接着剤とともに、該ホットメルト接着剤を覆う外皮樹脂を押出成形する
請求項1から請求項3のいずれか一つに記載の内視鏡用可撓管の製造方法。
【請求項6】
前記ホットメルト接着剤は、前記外皮樹脂と共通の成分を含む
請求項4または請求項5に記載の内視鏡用可撓管の製造方法。
【請求項7】
前記基材は、筒状に編組された複数の素線を有する網状管を外面に備え、
前記基材が前記クロスヘッドを通過する速度と、前記ホットメルト接着剤を前記クロスヘッドを介して押し出す速度との組み合わせは、前記ホットメルト接着剤が前記複数の素線の間に浸透するように調整される
請求項1から請求項6のいずれか一つに記載の内視鏡用可撓管の製造方法。
【請求項8】
前記基材が前記クロスヘッドを通過する速度と、前記ホットメルト接着剤を前記クロスヘッドを介して押し出す速度との組み合わせは、前記ホットメルト接着剤が前記網状管の内側に浸透しないように調整される
請求項7に記載の内視鏡用可撓管の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内視鏡用可撓管の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
鋼板を螺旋状に巻いた螺旋管に、金属製の網状管を被覆して形成した基材を外皮樹脂で被覆した内視鏡用可撓管が、内視鏡の挿入部の外装部材に使用されている。基材の表面にシランカップリング材を塗布する内視鏡用可撓管用溶剤塗布装置が提案されている。基材にシランカップリング材をスプレーにより塗布した後に、基材の外周に外皮樹脂を押出成形することにより、基材と外皮樹脂とを十分な強度で接着できる(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に開示された装置においては、シランカップリング材をスプレーする噴霧室には減圧手段、排気手段および冷却手段等が必要である。さらに、シランカップリング材が塗布された基材は、外皮樹脂を押出成形する前に十分に乾燥させて、シランカップリング材を溶かした溶媒を取り除く必要がある。そのため、製造装置が大型化するとともに、製造に時間が掛かる。
【0005】
一つの側面では、小型の製造装置で内視鏡用可撓管を製造可能な、内視鏡用可撓管の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
内視鏡用可撓管の製造方法は、未溶融のホットメルト接着剤を、第1温度に加熱する第1加熱部、前記第1温度より高い第2温度に加熱する第2加熱部、および前記第2温度よりも高い第3温度に加熱する第3加熱部がこの順番で配置された加熱流路の前記第1加熱部側から供給し、前記加熱流路の前記第3加熱部側に接続された筒状のクロスヘッドの内側を、筒状の基材を所定の速度で通過させ、前記加熱流路を通過中に溶融した前記ホットメルト接着剤を、前記クロスヘッドを介して前記基材の外周に押出成形する。
【発明の効果】
【0007】
一つの側面では、小型の製造装置で内視鏡用可撓管を製造可能な、内視鏡用可撓管の製造方法を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図9】実施の形態2のクロスヘッドの模式図である。
【
図10】実施の形態3の内視鏡用可撓管の縦断面図である。
【
図11】実施の形態4の内視鏡用可撓管の横断面拡大図である。
【
図12】実施の形態4の内視鏡用可撓管の横断面拡大図である。
【
図13】実施の形態4の内視鏡用可撓管の横断面拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
[実施の形態1]
図1は、内視鏡10の外観図である。本実施の形態の内視鏡10は、上部消化管または下部消化管向けの軟性鏡である。内視鏡10は、挿入部20、操作部40、ユニバーサルコード59およびコネクタ部50を有する。操作部40は、湾曲ノブ41およびチャンネル入口42を有する。チャンネル入口42には、処置具等を挿入する挿入口を有する鉗子栓43が固定されている。
【0010】
挿入部20は長尺であり、一端が折れ止め部26を介して操作部40に接続されている。挿入部20は、操作部40側から順に軟性部21、湾曲部22および先端部23を有する。軟性部21は、軟性である。軟性部21の表面は、チューブ状の内視鏡用可撓管30(
図3参照)である。湾曲部22は、湾曲ノブ41の操作に応じて湾曲する。
【0011】
以後の説明では、挿入部20の長手方向を挿入方向と記載する。同様に、挿入方向に沿って操作部40に近い側を操作部側、操作部40から遠い側を先端側と記載する。
【0012】
ユニバーサルコード59は長尺であり、第一端が操作部40に、第二端がコネクタ部50にそれぞれ接続されている。ユニバーサルコード59は、軟性である。コネクタ部50は、図示しないビデオプロセッサ、光源装置、表示装置および送気送水装置等に接続される。
【0013】
図2は、先端部23の端面の外観図である。先端部23の端面には、観察窓51、2個の照明窓52、送気ノズル53、送水ノズル54およびチャンネル出口55等が設けられている。
【0014】
先端部23の端面は、略円形である。観察窓51は、
図2において端面の中心よりも上側に設けられている。観察窓51の左右に照明窓52が設けられている。観察窓51の右下に、送気ノズル53および送水ノズル54が、それぞれの出射口を観察窓51に向けて設けられている。観察窓51の左下に、チャンネル出口55が設けられている。
【0015】
図1および
図2を使用して、内視鏡10の構成の説明を続ける。コネクタ部50、ユニバーサルコード59、操作部40および挿入部20の内部に、ファイバーバンドル、ケーブル束、送気チューブおよび送水チューブ等が挿通されている。光源装置から出射した照明光は、ファイバーバンドルを介して、照明窓52から照射する。照明光により照らされた範囲を、観察窓51を介して図示しない撮像素子で撮影する。撮像素子からケーブル束を介してビデオプロセッサに映像信号が伝送される。
【0016】
送気送水装置から供給された空気は、送気チューブを介して送気ノズル53から観察窓51に向けて放出される。同様に、送気送水装置から供給された水は、送水チューブを介して送水ノズル54から観察窓51に向けて放出される。送気ノズル53および送水ノズル54は、内視鏡検査中の観察窓51の清掃等に使用される。
【0017】
チャンネル入口42とチャンネル出口55との間は、軟性部21および湾曲部22の内部を通るチューブ状のチャンネルにより接続されている。チャンネル入口42から図示しない処置具を挿入することにより、チャンネル出口55から処置具の先端を突出させて、大腸ポリープの切除等の手技を行なうことができる。
【0018】
図3は、内視鏡用可撓管30の縦断面図である。前述のとおり、内視鏡用可撓管30は、軟性部21の外装部材である。
図3は内視鏡用可撓管30を挿入方向に沿って切断した断面を示す。
図4は、
図3のIV-IV線による断面図である。
図5は、
図4のA部拡大図である。
【0019】
内視鏡用可撓管30は、基材35の外周を、ホットメルト接着剤層38、外皮33およびトップコート34で順次覆った構成である。基材35は、螺旋管31と螺旋管31の外周を覆う網状管32とを有する。螺旋管31は、帯状の金属を螺旋状に巻いた構成である。
図3においては、1本の帯状の金属を螺旋状に巻いた螺旋管31を示すが、2本以上の帯状の金属を螺旋状に巻いた螺旋管31を使用しても良い。螺旋管31は、軟性部21を屈曲した場合に、内部に挿通されたファイバーバンドル、ケーブル束および各種チューブ等の内蔵物が潰されないように保護する。
【0020】
網状管32は、複数の素線321(
図5参照)を筒状に編組して形成されている。素線321は、たとえば、ステンレス鋼線または銅合金線等の細線である。素線321の材料は、非金属であっても良い。素線321は、金属の細線の表面に樹脂をコーティングした構成であっても良い。網状管32は、素材または太さの異なる素線321を組み合わせて編組して形成されても良い。
【0021】
外皮33は、網状管32の外周全面を覆う樹脂の層である。外皮33の材料である外皮樹脂は、たとえば、エチレン-酢酸ビニル共重合体等のポリオレフィン、ポリテトラフルオロエチレン、エチレン-テトラフルオロエチレン共重合体等のフッ素系樹脂、ポリエステル系エラストマー、ポリオレフィン系エラストマー、フッ素系エラストマー、ポリウレタン系エラストマー、ポリアミド系エラストマー、シリコーンゴム、または、フッ素ゴム等である。外皮33は、複数の樹脂層の積層体でも良い。複数の外皮樹脂材料を混合して、外皮33を形成しても良い。
【0022】
トップコート34は、たとえば、ウレタン系樹脂またはフッ素樹脂である。トップコート34は、内視鏡10の洗浄および消毒に用いる薬液等から、外皮33を保護する。
【0023】
ホットメルト接着剤層38は、加熱により溶融した状態で塗布し、冷えると固まって接着するホットメルト接着剤により形成された層である。ホットメルト接着剤層38は、網状管32と外皮33とを接着する。
図3および
図4に示すように、ホットメルト接着剤層38は網状管32の外周全面を覆う。
【0024】
図5に示すように、ホットメルト接着剤層38を構成するホットメルト接着剤は網状管32を構成する素線321同士の隙間に若干浸透している。ホットメルト接着剤層38と網状管32との間の接着面積が広く、かつ、接着面の凸凹によるアンカー効果が働く。そのため、ホットメルト接着剤層38と網状管32とは、強固に接着されている。
【0025】
ホットメルト接着剤層38の主成分は、外皮33と同系統の樹脂材料製であることが望ましい。たとえば、外皮33の材料にポリウレタンエラストマーを使用する場合には、ポリウレタン系のホットメルト接着剤をホットメルト接着剤層38に使用する。外皮33の材料にポリエステルエラストマーを使用する場合には、ポリエステル系のホットメルト接着剤をホットメルト接着剤層38に使用する。同系統の樹脂材料同士は、強固に接続される。
【0026】
以上に説明した構成により、ホットメルト接着剤層38は、網状管32の外周全面にわたって外皮33を強固に接着する。たとえば、外径12.2ミリメートル程度の内視鏡用可撓管30である場合、ホットメルト接着剤層38の厚さt1は50マイクロメートル程度、外皮33の厚さt2は200マイクロメートル程度であることが望ましい。
【0027】
このような内視鏡用可撓管30を使用することにより、小さい曲率半径で屈曲させた状態での捻り操作が行なわれた場合であっても、網状管32と外皮33との間の剥離が生じにくい。そのため、耐久性の高い内視鏡10を提供できる。
【0028】
内視鏡10を使用した後の洗浄等に、温水が使用される場合がある。そのため、ホットメルト接着剤層38に使用するホットメルト接着剤の軟化点は、摂氏80度以上であることが望ましく、摂氏100度以上であることがさらに望ましい。なお、ホットメルト接着剤の軟化点の試験方法は、JIS(Japan Industrial Standard)K6863-1994「ホットメルト接着剤の軟化点試験方法」により規定されている。
【0029】
図6は、外皮被覆装置60の模式図である。外皮被覆装置60は、基材35の外周をホットメルト接着剤層38および外皮33で覆う装置である。外皮被覆装置60は、成形部69と、硬化部67とを備える。
【0030】
成形部69は、押出成形機70とクロスヘッド81とを備える。押出成形機70は、それぞれがクロスヘッド81に接続された第1押出成形機701と第2押出成形機702とを含む。第1押出成形機701はホットメルト接着剤層38の押出成形を行なう。第2押出成形機702は、外皮33の押出成形を行なう。
【0031】
基材35は、1台の内視鏡10用ごとに製作される。複数の基材35が、連結部材36により一列に連結されて、基材連結体37を構成する。基材連結体37は、第1ドラム681に巻かれた状態で供給される。
【0032】
基材連結体37は、クロスヘッド81の内部を通り、硬化部67を介して第2ドラム682に接続されている。第1ドラム681および第2ドラム682が回転することにより、基材連結体37はクロスヘッド81を所定の速度で通過する。クロスヘッド81内で、基材連結体37の表面にホットメルト接着剤層38および外皮33が押出成形される。
【0033】
硬化部67は、押出成形した外皮33を硬化させる。外皮33に熱可塑性樹脂を使用する場合には、硬化部67は冷却機である。外皮33に紫外線硬化樹脂を使用する場合には、硬化部67は紫外線ランプである。外皮33に熱硬化樹脂を使用する場合には、硬化部67はヒータである。なお、ホットメルト接着剤層38は、温度が軟化点を下回ることにより硬化する。
【0034】
図7は、第1押出成形機701の模式図である。第1押出成形機701は、原料容器74を備える。原料容器74と、前述のクロスヘッド81との間は、略円筒状の筒部77により接続されている。筒部77の内部に、筒部77と同軸にスクリュー75が配置され、筒部77の内面とスクリュー75との間に加熱流路76が形成されている。
【0035】
筒部77の外側に、加熱部71が配置されている。加熱部71は、原料容器74に近い側から第1加熱部711、第2加熱部712および第3加熱部713に分かれている。第1加熱部711、第2加熱部712および第3加熱部713は、それぞれヒータ72および送風機73を備える。図示を省略する制御装置により、ヒータ72および送風機73が制御されて、加熱流路76温度が所定の温度に設定される。なお、加熱部71は4個以上に分かれていても良い。
【0036】
原料容器74には、粉状または粒状の原料が投入される。原料容器74内の原料が加熱流路76に入り、スクリュー75の回転によりクロスヘッド81内に送り込まれる。スクリュー75の回転速度、すなわち原料をクロスヘッド81に供給する速度は、図示を省略する制御装置により制御される。
【0037】
第2押出成形機702の構成も、
図7に示す第1押出成形機701と同様である。第2押出成形機702は、外皮樹脂を押出成形する。なお、第2押出成形機702の加熱部71は、2個または4個以上に分かれていても良く、分かれていなくても良い。
【0038】
図8は、クロスヘッド81の模式図である。クロスヘッド81は第1型61、第2型62および第3型63を有する。第1型61は中心軸に沿って第1基材孔611を有する、略円筒形状である。第2型62は、太径部628と細径部629とを備える略段付円筒形状である。太径部628の内面は、第1型61の外面を覆う。細径部629の内面は、第1基材孔611と同軸に配置されており、第1基材孔611よりも若干太い第2基材孔622を形成している。
【0039】
第3型63は、細径部629の外面を覆う略円筒形状である。第3型63の内面の一端は、第2基材孔622よりも若干太い第3基材孔633を形成している。第1基材孔611、第2基材孔622および第3基材孔633は、同一軸上に連続して配置されており、内部に基材連結体37が挿通される。
【0040】
第1型61の外面と第2型62の内面との間に、第1成形流路651が形成されている。第1成形流路651は、第1押出成形機701に接続されている。第2型62の外面と第3型63の内面との間に第2成形流路652が形成されている。第2成形流路652は第2押出成形機702に接続されている。
【0041】
図6から
図8を使用して、外皮被覆装置60の動作を説明する。前述のとおり、第1ドラム681および第2ドラム682が回転することにより、基材連結体37はクロスヘッド81を所定の速度で通過する。第1押出成形機701の原料容器74内のホットメルト接着剤が、加熱流路76に供給される。スクリュー75の回転により、ホットメルト接着剤が加熱流路76の内部をクロスヘッド81に向けて押し出される。
【0042】
ヒータ72および送風機73により、加熱流路76内の温度が所定の値に調整される。表1に、軟化点が約120度であるホットメルト接着剤を用いる場合の、第1加熱部711から第3加熱部713のそれぞれの中央部における、加熱流路76内のホットメルト接着剤の温度の例を示す。単位は摂氏である。
【0043】
【0044】
ホットメルト接着剤が加熱流路76を通過する過程について説明する。粉状または粒状のホットメルト接着剤は、第1加熱部711内で予熱され、第2加熱部712の中央付近で流体に変化する。ホットメルト接着剤は、第3加熱部713内でさらに加熱されて、粘性の低い流体になる。
【0045】
ホットメルト接着剤は、第1成形流路651を通過して、基材連結体37の表面に押出成形される。ホットメルト接着剤は粘性が低い状態であるため、
図11を使用して説明したように、網状管32を構成する素線321同士の隙間に若干浸透する。なお、ホットメルト接着剤の厚さおよび網状管32への浸透量は、基材連結体37の速度、および、スクリュー75の回転速度により調整される。
【0046】
前述のとおり、内視鏡用可撓管30には、ファイバーバンドル、ケーブル束および各種チューブ等の内蔵物が挿通される。ホットメルト接着剤が内視鏡用可撓管30の内面に突出した状態で硬化した場合には、内蔵物の挿通に支障が生じる。したがって、基材連結体37の速度、および、スクリュー75の回転速度は、ホットメルト接着剤が螺旋管31の内側に浸透しないように調整される。
【0047】
図3に示すように、螺旋管31の隙間は素線321同士の隙間に比べて大きいため、螺旋管31の隙間に到達したホットメルト接着剤は容易に螺旋管31の内面に到達する。したがって、基材連結体37の速度、および、スクリュー75の回転速度は、ホットメルト接着剤が網状管32の内面に浸透しないように調整されることが、さらに望ましい。
【0048】
同様にして、外皮樹脂が第2押出成形機702から第2成形流路652を介して、ホットメルト接着剤の表面に押出成形されて、外皮33を形成する。外皮33は、硬化部67で硬化する。ホットメルト接着剤は、軟化点よりも温度が低下した場合に硬化する。ホットメルト接着剤は、外皮33が押出成形される前に硬化しても良いし、硬化部67において硬化しても良い。
【0049】
なお、外皮33は2層以上の層により構成されていても良い。たとえば、複数の第2押出成形機702と複数の第2成形流路652とを設けることにより、外皮33を多層に構成できる。
【0050】
硬化部67を通過した基材連結体37は、
図4に示すように第2ドラム682に巻き取られて、次の製造工程に投入される。なお、第2ドラム682に巻き取る変わりに、連結部材36を外して、1本ずつに分離しても良い。硬化部67と第2ドラム682との間で、トップコート34を付加しても良い。
【0051】
本実施の形態によると、小型の製造装置で内視鏡用可撓管30を製造可能な製造方法等を提供できる。本実施の形態によると、外皮33と網状管32とが強固に接着されており、耐久性の高い内視鏡用可撓管30を提供できる。
【0052】
本実施の形態によると、原料容器74とクロスヘッド81との間で、加熱流路76内の温度を順次上昇させることにより、ホットメルト接着剤の変質を防止する内視鏡用可撓管30の製造方法を提供できる。
【0053】
ホットメルト接着剤層38の材料に、たとえば湿気硬化型ウレタン系ホットメルト接着剤等の、いわゆる反応性ホットメルト接着剤を使用しても良い。反応性ホットメルト接着剤は、溶融状態で網状管32と外皮33とを接着した後に硬化反応が進行することにより、接着時と同じ温度でも再溶融しなくなる。そのため、耐熱性の高い内視鏡用可撓管30および内視鏡10を提供できる。
【0054】
[実施の形態2]
本実施の形態は、ホットメルト接着剤と外皮33とを同時に押出成形する内視鏡用可撓管30の製造方法に関する。実施の形態1と共通する部分については、説明を省略する。
【0055】
図9は、実施の形態2のクロスヘッド81の模式図である。クロスヘッド81は、第1型61および第2型62を有する。第1型61は中心軸に沿って第1基材孔611を有する、略円筒形状である。第2型62は、第1型61の外面を覆う略円筒形状である。
【0056】
第2型62の内面の一端は、第1基材孔611よりも若干太い第2基材孔622を形成している。第1基材孔611と第2基材孔622とは、同一軸上に連続して配置されており、内部に基材連結体37が挿通される。
【0057】
第1型61の外面と第2型62の内面との間に、第1成形流路651が形成されている。第1成形流路651は、第1押出成形機701に接続されている。第2型62内に、略円筒形状の第2成形流路652が形成されている。第2成形流路652は第2押出成形機702に接続されている。第1成形流路651と第2成形流路652とは合流して、第2基材孔622に接続されている。
【0058】
第1押出成形機701から押し出されたホットメルト接着剤と、第2押出成形機702から押し出された外皮33の材料の樹脂とは、2層になって、基材連結体37の表面に押出成形される。
【0059】
本実施の形態によると、ホットメルト接着剤と外皮33とは溶融した状態で接触し、一緒に流動した後に硬化するため、界面で強固に接合される。そのため、両者の間での剥離が生じにくい内視鏡用可撓管30を製造できる。
【0060】
[実施の形態3]
本実施の形態は、挿入方向に硬さが変化する内視鏡用可撓管30に関する。実施の形態1と共通する部分については、説明を省略する。
【0061】
図10は、実施の形態3の内視鏡用可撓管30の縦断面図である。外皮33は、第1外皮331の外側が、第2外皮332により覆われた構成である。ホットメルト接着剤層38は、
図10の左側から右側に向けて徐々に厚くなっている。第1外皮331は、
図10の左側から右側に向けて徐々に薄くなっている。ホットメルト接着剤層38と第1外皮331との厚さの合計、および、第2外皮332の厚さは、一様である。
【0062】
なお、
図10においては、ホットメルト接着剤層38および第1外皮331の厚さの変化を誇張して示す。ホットメルト接着剤層38および第1外皮331の厚さは、内視鏡用可撓管30の全長にわたって変化しても、内視鏡用可撓管30の一部分において変化しても良い。
【0063】
ホットメルト接着剤層38と、第1外皮331との硬さは異なる。本実施の形態によると、均一な太さで、挿入方向に硬さが変化する内視鏡用可撓管30を提供できる。なお、第2外皮332の厚さは一様であるため、全体に均質な外観を有する内視鏡用可撓管30を提供できる。
【0064】
[実施の形態4]
本実施の形態は、網状管32へのホットメルト接着剤の浸透量が挿入方向に変化する内視鏡用可撓管30に関する。実施の形態1と共通する部分については、説明を省略する。
【0065】
図11から
図13は、実施の形態4の内視鏡用可撓管30の横断面拡大図である。
図11から
図13は、挿入方向にそれぞれ異なる位置で切断した横断面を、
図5と同様に拡大した拡大図を示す。たとえば内視鏡用可撓管30は、先端側の端部から操作部側の端部にかけて、
図5、
図11、
図12および
図13に示す断面を順次有する。
【0066】
図5、
図11および
図12の順に、ホットメルト接着剤の網状管32への浸透深さが深くなっている。
図13においては、ホットメルト接着剤は網状管32全体に浸透し、螺旋管31一部にも浸透している。
【0067】
浸透深さが深いほど、内視鏡用可撓管30の硬度が増す。これにより、均一な太さで、先端側から操作部側にかけて徐々に硬さが上昇する内視鏡用可撓管30を提供できる。
【0068】
各実施例で記載されている技術的特徴(構成要件)はお互いに組合せ可能であり、組み合わせすることにより、新しい技術的特徴を形成することができる。
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって、制限的なものでは無いと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した意味では無く、請求の範囲によって示され、請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0069】
10 内視鏡
20 挿入部
21 軟性部
22 湾曲部
23 先端部
26 折れ止め部
30 内視鏡用可撓管
31 螺旋管
32 網状管
321 素線
33 外皮
331 第1外皮
332 第2外皮
34 トップコート
35 基材
36 連結部材
37 基材連結体
38 ホットメルト接着剤層
40 操作部
41 湾曲ノブ
42 チャンネル入口
43 鉗子栓
50 コネクタ部
51 観察窓
52 照明窓
53 送気ノズル
54 送水ノズル
55 チャンネル出口
59 ユニバーサルコード
60 外皮被覆装置
61 第1型
611 第1基材孔
62 第2型
622 第2基材孔
628 太径部
629 細径部
63 第3型
633 第3基材孔
651 第1成形流路
652 第2成形流路
67 硬化部
681 第1ドラム
682 第2ドラム
69 成形部
70 押出成形機
701 第1押出成形機
702 第2押出成形機
71 加熱部
711 第1加熱部
712 第2加熱部
713 第3加熱部
72 ヒータ
73 送風機
74 原料容器
75 スクリュー
76 加熱流路
77 筒部
81 クロスヘッド