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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-02-08
(45)【発行日】2022-02-17
(54)【発明の名称】循環冷媒の冷却用ヒートステーション
(51)【国際特許分類】
   F25B 9/06 20060101AFI20220209BHJP
【FI】
F25B9/06 B
【請求項の数】 14
(21)【出願番号】P 2020552189
(86)(22)【出願日】2018-04-06
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-08-10
(86)【国際出願番号】 US2018026482
(87)【国際公開番号】W WO2019194819
(87)【国際公開日】2019-10-10
【審査請求日】2020-11-27
(73)【特許権者】
【識別番号】501356112
【氏名又は名称】スミトモ (エスエイチアイ) クライオジェニックス オブ アメリカ インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】Sumitomo(SHI)Cryogenics of America,Inc.
(74)【代理人】
【識別番号】110000811
【氏名又は名称】特許業務法人貴和特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ロングスワース,ラルフ,シー.
【審査官】森山 拓哉
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-075429(JP,A)
【文献】特開2002-081774(JP,A)
【文献】特開2002-243291(JP,A)
【文献】米国特許第08375742(US,B2)
【文献】国際公開第2016/068039(WO,A1)
【文献】特開2003-028527(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F25B 9/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
循環する冷媒を冷却するためのGMまたはスターリングサイクルで作動する極低温膨張器であって、
高温側に取付フランジを有するシリンダと、
前記シリンダ内で、高温側と低温側との間を往復し、往復運動によって低温側変位容積部を形成するディスプレーサと、
第1のガスがその中を通じて前記低温側変位容積部に流出入する再生器と、
円筒状シェルを介して、該シェルの外部にある第2の熱交換器内の第2の循環冷媒からの熱を前記第1のガスに径方向に移送する、第1の熱交換器と、
を備え、
前記第1のガスは、前記再生器と前記低温側変位容積部との間を前記第1の熱交換器を介して流れ、
前記第2の熱交換器は、前記第2の循環冷媒用の入口ポートおよび出口ポートを有するハウジング内に収納されており、
前記ハウジングは、前記第2の熱交換器の上方に配された上部空間と、前記第2の熱交換器の下方に配された下部空間とを有し、および、
前記入口ポートおよび前記出口ポートは、前記第2の循環冷媒のすべてを、該第2の循環冷媒が前記第2の熱交換器を流れるように、前記ハウジングの底部に配されている、
極低温膨張器。
【請求項2】
前記入口ポートおよび前記出口ポートは、前記第2の循環冷媒の凝縮性ガスが前記入口ポートを介して戻り、前記第2の循環冷媒の液体が前記出口ポートを流出するよう配置されている、請求項1に記載の極低温膨張器。
【請求項3】
前記膨張器は、低温側の方向が下方から水平までの間となるように設置可能である、請求項2に記載の極低温膨張器。
【請求項4】
液体ポンプが、前記第2の循環冷媒を循環させる、請求項2に記載の極低温膨張器。
【請求項5】
前記第2の循環冷媒は、自然対流によって循環する、請求項2に記載の極低温膨張器。
【請求項6】
前記第2の熱交換器は、前記円筒状のシェル内の機械加工されたスロットの1つによって形成される膨張器の軸に対して平行であるフィンと、前記円筒状のシェルの外面に熱的に結合された銅製の折り畳みリボンとを備える、請求項1に記載の極低温膨張器。
【請求項7】
前記入口ポートを介して流入した前記第2の循環冷媒は、前記第2の熱交換器の片側にあるフィンを通って前記上部空間へ上昇し、他方側にある前記フィン、前記下部空間、および前記出口ポートを通って下降して戻るように構成されている、請求項1に記載の極低温膨張器。
【請求項8】
前記入口ポートを介して流入した前記第2の循環冷媒は、前記ハウジング内のバイパス流路を通って前記上部空間へ上昇し、前記第2の熱交換器、前記下部空間、および前記出口ポートを通って下降して戻るように構成されている、請求項6に記載の極低温膨張器。
【請求項9】
前記第2の循環冷媒は、自然対流によって循環する、請求項8に記載の極低温膨張器。
【請求項10】
前記第2の循環冷媒は、ファン、液体ポンプ、および自然循環のいずれか1つによって循環される、請求項1に記載の極低温膨張器。
【請求項11】
ヒータが前記第2の熱交換器と熱接触している、請求項1に記載の極低温膨張器。
【請求項12】
前記低温側変位容積部は、前記再生器と前記第1の熱交換器との間に、該低温側変容積部全体の20%未満の容積の第1の容積部を備える、請求項1に記載の極低温膨張器。
【請求項13】
循環する冷媒を冷却するためのGMまたはスターリングサイクルで作動する極低温膨張器であって、
シリンダ内で、高温側と低温側との間を往復し、往復運動によって低温側変位容積部を形成するディスプレーサと、
第1のガスがその中を通じて前記低温変位容積部に流出入する再生器と、
円筒状シェルを介して、該シェルの外部にある第2の熱交換器内の第2の循環冷媒からの熱を前記第1のガスに径方向に移送する、第1の熱交換器と、
を備え、
前記第1のガスは、前記再生器と前記低温側変位容積部との間を前記第1の熱交換器を介して流れ、
前記第2の熱交換器は、前記第2の循環冷媒用の単一ポートを有するハウジング内に収納されており、および、
前記単一ポートは、前記ハウジングの底部に設けられる、
極低温膨張器。
【請求項14】
前記単一ポートは、前記膨張器の軸が水平に配されている場合に、前記ハウジングから前記第2の循環冷媒を液体として排出する、請求項13に記載の極低温膨張器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、外部負荷を冷却する循環冷媒から、GMサイクルまたはスターリングサイクルで作動し、極低温冷却を提供する、高容量膨張器の低温側内部にある往復動ガス流に熱を伝達する、ヒートステーションの構造の改善に関する。
【背景技術】
【0002】
GMサイクルまたはスターリングサイクルの冷凍機は、高圧ガスを、再生用熱交換器を介して、変位容積が増加する際に、シリンダ内で往復するピストンの低温側へ高圧ガスを流し、その後、ピストンが変位容積を低減させるにともない、その圧力を低減させ、再生用熱交換器を介してガスを戻すことにより、膨張機内で極低温の冷却を実現する。かかる冷却は、低温側変位容積部を包囲する、シリンダの低温側キャップの壁を介した熱伝導によって、負荷の冷却に利用することが可能となる。膨張器における、低温側キャップおよびガスに熱を伝達するための手段は、低温側ヒートステーションと称される。
【0003】
クライオポンプ、超電導MRIマグネット、および実験室用機器を冷却するために使用される極低温冷凍機のほとんどは、GM式冷凍機を使用している。これらの用途においては、ほとんどの場合、4K~70Kの間にある温度で、1W~50Wという比較的少量の冷却が必要とされ、かかる冷却は熱伝導により冷凍機のヒートステーションに伝達される。現在、75K付近の温度で300W~1000Wの負荷を冷却することが可能な冷凍機への需要が高まっているが、このような冷却は、循環冷媒によりほとんど実用的に実現可能となっている。かかる冷媒は、低温ファンまたは室温のコンプレッサによってガスとして、ポンプによって液体として、あるいは、自然対流によってガスまたは液体として循環させることができる。自然対流の最もシンプルな形式は、冷媒を凝縮し、その液体を負荷に流して蒸発させた後、ガスとして凝結面に戻すことである。
【0004】
本発明の目的は、冷媒の冷却または凝縮が可能で、コンパクトで、効率的で、かつ、循環配管への取付および接続が容易な、低温側ヒートステーションを備える高容量GM膨張器を提供することである。この目的を達成するためには、ヒートステーションを介して循環する冷媒の圧力低下を最小限にしつつ、循環する冷媒と膨張器内のガスとの間の温度差を最小限にする必要がある。低温ファンまたはポンプに入力される動力は、冷凍機に対する熱負荷の一部となるため、圧力低下を最小限とすることは重要である。温度差を最小限とするためには、膨張器内のガスに熱を伝達する内部熱交換器に、循環ガスからの熱を、低温側キャップを介して移動させる、外部熱交換器および内部熱交換器の設計が必要となる。
【0005】
Longsworthによる米国特許第4,277,949号公報は、膨張器ヒートステーションに巻き付けられたチューブによって冷却された室温のコンプレッサによって循環されるヘリウムを用いて、遠隔の負荷から熱を輸送するシステムを開示している。異なる温度の負荷は、冷凍機から負荷を熱的に断絶することができる対流カップリングによって、循環するヘリウムに接続される。凝縮した冷媒の自然対流によって遠隔の負荷を冷却するシステムの一例が、Wangの米国特許第8,375,742号公報に記載されている。その図7には、絶縁スリーブに取り付けられた、低温側の拡張面を備える膨張器が示されている。冷媒は、低温側で凝縮し、絶縁チューブを介して、負荷を冷却するデュアへ排出され、ボイルオフガスは、該絶縁チューブに戻り、再凝縮される。自然対流によって、熱漏れを遮断するために小さなガスの流れを室温に戻してから再凝縮するオプションも示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】米国特許第4,277,949号公報
【文献】米国特許第8,375,742号公報
【文献】米国特許第6,256,997号公報
【発明の概要】
【0007】
本発明のヒートステーションは、膨張器を取り付けるための有利な手段を実現することができる、いくつかの部品の新規な組み合わせを備える。膨張器を取り付けるための有利な手段は、膨張器の低温側にコンパクトなヒートステーションを必要とし、これにより、取付プレートの孔の大きさを最小限とし、かつ、循環チューブの取り付けが簡素化される。再生器と再生用膨張器の膨張スペースとの間で使用される熱交換器はすでに知られているが、この熱交換器は、環状ギャップ、孔あきプレート、ワイヤスクリーン、波形金属シート、および、ワイヤ放電加工機(EDM)、フライス加工、またはソーイングによって切断されたスロットを含む。スロット間にフィンを形成する狭いスロットは、圧力低下および空隙容積に対して最適な熱輸送を達成する大きさとすることができる。
【0008】
折り畳まれた銅リボンを使用して、狭い間隔で配置されたフィンを形成することは、有利である。リボンは、他のいかなる加工方法よりもはるかに低コストで、熱輸送、圧力低下、および空隙容積の3つの機能的特性の間で良好なバランスをとるよう形成される。リボンを用いることで、機械加工よりも狭いギャップを形成することもでき、かつ、3つの機能的特性間の関係を変更するよう伸縮させることもできる。
【0009】
折り畳みリボンは、膨張器の低温側での熱輸送を最適化するために使用することができ、さらには、遠隔の負荷から膨張器の低温側の外側に熱を輸送する冷媒の循環流からの熱輸送を最適化するために使用することができる。最適な形状は、円筒状の低温側ヒートステーションの外側に熱的に結合され、負荷から熱を除去する外部の折り畳みリボンを有し、および、前記低温側のヒートステーションの内側に熱的に結合され、機械加工されたスロットまたは内部の折り畳みリボンによって形成されたフィンを有する形状であることが見出された。したがって、熱は、(銅製)ヒートステーションのシェル上の外部の折り畳みリボンから、内部フィンに対して、最小限の温度差で径方向に直接輸送される。折り畳みリボンによって形成されたフィンが、低温側ヒートステーションの内側ではなく、低温側ヒートステーションの外側に存在することが優れている理由は、外部フィン内の空隙容積を考慮することがないため、表面積および流量面積が増大し、コスト的に優位であるためである。折り畳みリボンは、機械加工されたフィンよりも必要とする材料が少ないため、よりコンパクトである。上述した内部熱交換器および外部熱交換器の配置により、低温側の直径を最小化することができるため、真空ハウジングの取付孔を最小化することができる。ただし、低温側ヒートステーションに径方向の嵌合部分が存在しない場合に限り、上記取付孔を小さくすることが可能である。アウタハウジング内で冷媒を循環させる新規な手段により、循環する冷媒に接続するチューブを底部に取り付けることが可能となる。
【0010】
循環する冷媒が外部フィン内で凝縮し、負荷で蒸発する場合、熱は負荷から最も効率的に輸送される。窒素は、約65K~85Kの温度範囲の負荷を凝縮および蒸発させるために使用することができ、ネオンは、約22K~35Kの温度範囲の負荷に対して使用することができる。ヘリウムは、冷媒としてヘリウムを使用する冷凍機の範囲内の任意の温度で使用することができる。
【0011】
本発明は、GM膨張器において、循環する冷媒を冷却するためヒートステーションであって、コンパクトで、効率的で、かつ、循環配管への取り付けおよび接続が容易であるヒートステーションを備える。前記ヒートステーションは、シェルを備え、該シェルは、循環ガス配管に接続する入口ポートおよび出口ポートを有する円筒状のハウジング内において、前記シェルの軸に対して平行に配置され、前記シェルに熱的に接続された、外部フィンおよび内部フィンを備える。前記ハウジングの直径は、外部熱交換器上の折り畳みリボンを用い、かつ、前記入口ポートおよび出口ポートを前記ハウジングの底部に配置することにより、最小化される。このため、クライオスタットの高温側フランジに前記膨張器を取り付けるための取付孔の直径は最小化される。前記外部熱交換器内の前記フィンは、異なる冷媒および方向に対して、前記ハウジング内での異なる循環パターンを可能とするよう構成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1図1aは、米国特許第6,256,997号公報に記載されているような内部低温側熱交換器を有する、従来の空気圧作動のGMサイクル膨張器の概略図である。丸で囲まれた領域は、図3図5においてその新たな設計が示される。図1bは、外部熱交換器としてのフィンを形成する、機械加工されたスロットを有する低温側と、アウタハウジングの一部を示す平面図である。
図2図2は、折り畳みリボンの一部を示す図である。
図3図3aは、ガスを再生器からシリンダの底部に流入させた後、円形シェル内の機械加工されたフィンを備える環状空間を通って上方に流動させ、さらに膨張空間に流入させるチューブを備えた、GM膨張器100の低温側を示す模式図である。シェルの外部には、窒素などの冷媒を再凝縮するよう設計されたハウジング内の折り畳みリボンが存在する。図3bは、円形シェルの内部に機械加工されたフィンを備え、外部に折り畳みリボンを備える、GM膨張器100の低温側熱交換器の拡大断面図である。
図4図4aは、内部および外部熱交換器の両方に折り畳みリボンフィンと、2つのポートを備えるハウジングとを有する、GM膨張器200の低温側を示す概略図である。外部の折り畳みリボンの中断部により、ガスは底部から流入して上部へ流動し、フィンを通って底部へ戻るよう流動する。当該構成は、循環するガスまたは凝縮する冷媒を冷却するために使用することができる。図4bは、折り畳みリボンを備えるGM膨張器200の環状間隙と、戻りガスが上部へ流動する外部の折り畳みリボンの中断部を示す拡大断面図である。
図5図5aは、GM膨張器200と同一の内部および外部の折り畳みリボン熱交換器を有するが、ディスプレーサの延長部およびシールが、再生器からのガスを低温側の内部環状空間を介して膨張空間へと流通させる、GM膨張器300の低温側を示す概略図である。ハウジングは、底部に仕切りを有し、ガスは仕切りの一方の側面のポートから該底部に流入し、外部フィンの約半分を通って上昇し、残りの半分を下降した後、出口ポートを通って流動する。図5bは、折り畳みリボンと、内部の折り畳みリボンの内側にあり、シールされたスリーブとを備える、GM膨張器300の環状間隙の拡大断面図である。
図6図6は、ハウジングの端部に単一のポートが配置され、該ハウジングに流入する冷媒ガスが外部フィン内で凝縮し、膨張器が低温側を下方と水平との間にあるいずれかの方向に向けられた場合に、前記ポートを通って液体として排出される、GM膨張器400の低温側を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
これらの図においては、同一の部分については同一の参照番号を付し、「上方」および「上部」は高温側を、「下方」および「底部」は低温側を意味する。
【0014】
図1aは、今日最も広く使用されている低温側熱交換器の設計を有する、従来の空気圧駆動のGMサイクル膨張器を模式的に示す。本発明は、膨張器の低温側において丸で囲まれた領域にて、負荷から膨張器内のガスに熱を移動させるための新規な設計を開示する。図1aは、そのサイクルを説明するとともに、その低温側を提示するための、一般的な空気圧駆動のGM膨張器の全体図である。当該システムは、ライン31を介して膨張器に高圧ガスを供給するコンプレッサ40を備える。コンプレッサ40は、ガスを、高温側吸気バルブ44を介して高温側変位容積部30へ流入させ、次に、ディスプレーサ1内の再生器3に流入させ、さらに、再生器3を通して、ディスプレーサ延長部12aの低温側にある膨張空間5へと流入させる。ディスプレーサ1はシリンダ2内で上方に移動し、変位容積部5を高圧の低温ガスで充填する。次に、吸気バルブ44は閉じ、排気バルブ45が開いて、変位容積部5のガスの圧力が低下するにつれて、該ガスの温度はより低い温度に低下する。低圧の低温ガスは、ディスプレーサ1が下方に移動するにともない、低温側変位容積部5から押し出される。低温側端部37に接続された負荷からの熱は、ディスプレーサ延長部12aと低温側端部22との間の環状間隙7を通して低温ガスに輸送され、放射状ポート15、再生器3、高温側変位容積部30、排気バルブ45、および低圧ライン32を通して、コンプレッサ40に輸送される。シリンダ2は、クライオスタットフランジ47上に取り付けられた高温側シリンダフランジ46を有する。ディスプレーサ1の上部には、高温ヘッド41内のドライブステムボア36内を往復するドライブステム35が取り付けられている。ディスプレーサ1の往復運動は、バルブ44および45と位相をずらしてバルブ42および43を開閉することによって行われ、これによって、ガスがライン34を通ってドライブステム容積部36に流入する際に、ガスが交互に高圧および低圧となる。
【0015】
図1aは、クライオスタット26内の装置25を冷却するために冷媒を循環させる、現在構築されているシステムの概略図を含む。低温側端部37は、図1bに示した低温側キャップ22の外側に外部熱交換器としてのフィンを形成する、機械加工されたスロットと、循環ガスをフィンの径方向上方に流入させる入口ポート21aと、フィンの下方でアウタハウジング16の底部に形成された出口ポート21bとを有する。ファンまたはポンプであるサーキュレータ27は、真空断熱されたチューブ28および29を通して冷媒を駆動させる。かかる低温側の構造は、少ない圧力低下で熱輸送を非常に効果的に行うことができるが、径方向に入口ポートを備えるため、クライオスタットフランジ47内のポートに膨張器の残りを挿入した後に、低温側端部37に追加する必要があるため、その組み立てが複雑となる。また、機械加工によるフィンは、コストとサイズを増大させる。本発明の主な利点は、低温側端部37の直径を最小化することにより、合理的に小さなクライオスタットフランジ47内のポートに適合し、負荷に接続する配管を低温側端部37に接続する前に、追加の組み立て作業を行う必要がないことである。
【0016】
図2は、通常は銅のシートから形成される、折り畳みリボン13を示す。折り畳みリボンの形状は、厚さT、幅W、高さH、および間隙Gによって画定される。現時点で製造されている折り畳まれた銅製リボンは、機械加工による場合との比較で、より薄いシートを用いて製造され、より狭い間隙を有する。シートの厚さは0.3mm~1.0mmの範囲であり、H/T比が約15、G/(G+T)比が0.6より大きくなるように、折り畳むことができる。シートを折り畳んだ後に折り目を押すことにより、間隙をさらに低減させることができる。代替的に、折り畳みリボンを伸長させることにより、間隙を増大させることができる。
【0017】
図3aに示した、膨張器100のシリンダ2の低温側における圧力境界は、円筒状のシェル4および端部プレート10を備える。図3bは、シェル4に圧入されたコア9内の機械加工されたスロットによって形成される内部熱交換器6と、シェル4の外側に熱的に結合された、折り畳みリボンを備える外部熱交換器14の詳細を示す。コア9は、チューブ8に締まり嵌めされており、これにより、ガスの大部分は、再生器3から端部プレート10の上まで流入した後、チャネル11を径方向に通過し、内部熱交換器6を介して低温側変位容積部5に流入する。ハウジング16は、外側の折り畳みリボン14を包囲し、底部に入口ポート21および出口ポート22を有し、シリンダ2の低温側フランジ48に取り付けられている。かかる部材の配置により、窒素などの冷媒ガスは、入口ポート21を通ってマニホールド20に流入し、マニホールド20により折り畳みリボン14に供給され、凝縮し、出口ポート22を介して、冷却対象の負荷に向けて、液体として排出される。折り畳みリボン14の上方に位置するマニホールド19は、最低温度の表面にガスを供給するに際して小さな機能を果たしている。熱は、凝縮する冷媒から、外部熱交換器14、円筒状のシェル4、内部熱交換器6を介して、低温側変位容積部5に流入出するガスへ輸送される。熱を伝導する部品、内部熱交換器6と外部熱交換器14、およびシェル4は、高い熱伝導率を有する材料、たとえば銅からなることが好ましい。これに対して、ハウジング16、および入口ポート21と出口ポート22は、ステンレススチールからなることが好ましい。熱伝導率の高い金属を熱接合する工程は、通常ははんだ付けやろう付けによるが、接合部における温度差が、外部ガス流と内部ガス流との間の温度差に比べて小さい限り、圧入などの他の方法で行うこともできる。ハウジング16の周囲にヒータを巻き付けて、負荷の暖めを容易にするオプションは図示されていない。
【0018】
図4aおよび図4bに示した膨張器200は、折り畳みリボンを内部熱交換器14として示し、外部部品が冷媒を凝縮するのではなく、循環するガス状の冷媒を冷却するよう設計されていることを除いては、膨張器100と同様である。これは、戻しポート21aにより、負荷を冷却したガスを、ハウジング16の底部を介して外部の折り畳みリボン14の上部のマニホールド19に接続している流路18に流入させ、折り畳みリボンを通してガスを逆に流すことによってなされる。冷却されたガスは、その後、出口ポート21bを介して流出する。流路18は、バリヤ23によって排気マニホールド20から分離されている。
【0019】
外部熱交換器14を介して、循環するガス状の冷媒を流動させる他の手段として、膨張器300の低温側を図5aに示す。入口ポート21aを介して流動するガスは、下部空間20aに流入し、外部熱交換器14の一方側のフィンを通って、上部空間19に上昇し、他方側のフィン、底部空間20b、および出口ポート21bを通って下降する。
【0020】
膨張器300は、再生器3の下方に、スリーブ17の内側に締まり嵌めされた延長部12bを有し、スリーブ17は、内部熱交換器6の内側に締まり嵌めされる。延長部12bは、ディスプレーサ1よりも小さい直径を有するため、低温側変位容積部は、内部変位容積部5aと外部変位容積部5bとに分割される。シール49は、内部変位容積部5aと外部変位容積部5bとの間でのガス漏れを防ぎ、ガスを、放射状流路15を介して低温側変位容積部5bに強制的に流入させる。低温側変位容積部5bでは、ガスの一部が残留し、残りのガスは内部熱交換器6を介して低温側変位容積部5aに流入する。容積部5bは、低温側変位容積部全体の約15%の容積を有するが、このことは、膨張器100および膨張器200における内部熱交換器6を通って流動するガス量に対して、約85%のみのガス量が、膨張器300の内部熱交換器6を通過することを意味する。再生器3から流出するガスの最後の15%は、最初の85%のガスよりも著しく高温であるため、かかる構成は熱力学的に有利であり、内部熱交換器6を通過するガスの量が少ないとしても、平均的にはより低温が達成される。
【0021】
図6は、ハウジング16の外側底部に単一のポート21を有する膨張器400の低温側の概略図を示す。膨張器400は、ガス状の冷媒39aが流入すると同時に、ポート21を通って液体状の冷媒39bを排出できるように、水平に設置される。冷却対象の装置がポート21の下方に位置する場合には、窒素などの冷媒は自然対流によって循環することができる。
【0022】
表1は、シェル4の外側にフィンを機械加工して形成された外部熱交換器と、折り畳みリボンとを比較した例を示す。設計は、5g/sのヘリウムを200kPaで循環させることにより、400Wの冷却を輸送することに基づいており、両者において、ガスおよびフィンにおいて温度差が同一であり、圧力低下も同一である。機械加工されたフィンの厚さはその根元の厚さとし、機械加工によるフィンの銅の重量は、溝から除去された材料を含むものとする。
【0023】
【表1】
【0024】
折り畳みリボンは、ハウジング16の直径と、フィンの形成に必要な材料の量とを大幅に低減させている。
【0025】
なお、特許請求の範囲においては、「上部」および「底部」、並びに、「上方」および「下方」は、低温側が下に、膨張器の軸が垂直に配された膨張器の場合におけるものと解釈される。
図1
図2
図3
図4
図5
図6