(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-02-08
(45)【発行日】2022-02-17
(54)【発明の名称】電磁弁
(51)【国際特許分類】
F16K 31/06 20060101AFI20220209BHJP
【FI】
F16K31/06 305L
F16K31/06 305S
F16K31/06 305K
(21)【出願番号】P 2020561980
(86)(22)【出願日】2018-12-24
(86)【国際出願番号】 JP2018047411
(87)【国際公開番号】W WO2020136694
(87)【国際公開日】2020-07-02
【審査請求日】2021-06-18
(73)【特許権者】
【識別番号】000204033
【氏名又は名称】太平洋工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100112472
【氏名又は名称】松浦 弘
(74)【代理人】
【識別番号】100202223
【氏名又は名称】軸見 可奈子
(72)【発明者】
【氏名】金森 和宏
【審査官】篠原 将之
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-160983(JP,A)
【文献】特開2018-146058(JP,A)
【文献】国際公開第2017/217123(WO,A1)
【文献】特開2017-207099(JP,A)
【文献】特開2019-007572(JP,A)
【文献】特開2001-124229(JP,A)
【文献】特開2007-092826(JP,A)
【文献】特開2001-124440(JP,A)
【文献】特開2013-029178(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16K 31/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
流体が通過する内部流路の途中に弁孔が設けられたボディと、
前記弁孔を開閉する弁体と、
前記ボディに固定されて、前記弁体の一端側を直動可能に支持するスリーブと、を有する電磁弁であって、
前記弁体には、前記スリーブの内側面に摺動して前記弁体の移動方向を規制する摺動部と、前記摺動部の下方で前記弁孔の開口縁との間に挟まれるバネを保持するバネ保持部とが形成され、
前記バネ保持部は、前記摺動部よりも外側に張り出し
、
前記弁体が最も大きく開いた状態である全開位置に配置されたときに、前記ボディのうち前記内部流路の内側面の上端と、前記バネ保持部の下面とが同じ高さに位置する電磁弁。
【請求項2】
請求項1に記載の電磁弁であって、
前記ボディには、前記スリーブの少なくとも一部が嵌合される嵌合孔が形成され、
前記バネ保持部は、前記嵌合孔の内径よりも小さい電磁弁。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の電磁弁であって、
前記弁体が最も大きく開いた状態である全開位置に配置されたときに、前記スリーブの下端面に当接する電磁弁。
【請求項4】
請求項1乃至
3の何れか1の請求項に記載の電磁弁であって、
前記バネは、前記弁体が開位置に配されるように付勢している電磁弁。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、電磁弁に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に記載の電磁弁は、弁孔の開口縁と、弁体との間に圧縮コイルばねが備えられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
弁孔径の拡大に伴う大型化の抑制が可能な電磁弁が求められている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するためになされた請求項1の電磁弁は、流体が通過する内部流路の途中に弁孔が設けられたボディと、前記弁孔を開閉する弁体と、前記ボディに固定されて、前記弁体の一端側を直動可能に支持するスリーブと、を有する電磁弁であって、前記弁体には、前記スリーブの内側面に摺動して前記弁体の移動方向を規制する摺動部と、前記摺動部の下方で前記弁孔の開口縁との間に挟まれるバネを保持するバネ保持部とが形成され、前記バネ保持部は、前記摺動部よりも外側に張り出し、前記弁体が最も大きく開いた状態である全開位置に配置されたときに、前記ボディのうち前記内部流路の内側面の上端と、前記バネ保持部の下面とが同じ高さに位置する。
【図面の簡単な説明】
【0006】
【
図3】(A)閉位置の弁体の略側断面図(B)全開位置の弁体の略側断面図
【0007】
[第1実施形態]
図1には電磁弁10の断面図が示されている。本実施形態の電磁弁10は所謂パイロット式の電磁弁である。電磁弁10は、金属ブロックからなるボディ20に形成された流体が通過する内部流路25の途中位置に弁孔27が設けられ、その弁孔27を開閉する弁体11を有している。弁体11は、ボディ20に固定されたガイドスリーブ30によって直動可能に支持されている。
【0008】
ボディ20には、ガイドスリーブ30の一端が収容される嵌合孔23が設けられている。そして、嵌合孔23に弁体11の移動方向を案内するガイドスリーブ30が嵌合されている。また、ボディ20には、左側に開放する第1流路21と、第1流路21よりも下方に設けられ、右側に開放する第2流路22と、第1流路21と第2流路22とを連絡する連絡流路24が設けられている。そして、連絡流路24のうち、第1流路21側の開口が弁孔27になっている。弁孔27の開口縁には開口溝27Mが設けられている。なお、第1流路21、第2流路22及び連絡流路24から、内部流路25が構成される。
【0009】
ガイドスリーブ30は、筒状をなし、上側にプランジャー40を直動可能に支持するプランジャー支持部35が形成され、下側に後述する弁体11を直動可能に支持する弁体支持部31が形成されている。そして、弁体支持部31の少なくとも一部が嵌合孔23に嵌合されている。なお、
図1に示されるように、ガイドスリーブ30のプランジャー支持部35の回りには電磁コイル60が配置され、電磁コイル60に通電されると、プランジャー40が下降する構成になっている。
【0010】
弁体11は、弁体支持部31の内周面31Nと摺動する摺動部12と、弁孔27を閉塞可能な弁座14を有している。弁座14は、弁孔27よりも大径に形成されている。摺動部12と弁座14とは、胴部15によって連絡している。胴部15は、摺動部12及び弁座14よりも小径に形成されているので、弁体11の軽量化を図ることができる。また、中心には、プランジャーと連結されるねじ部材18が貫通している。
【0011】
本実施形態の電磁弁10は、弁孔27の開口縁と弁体11との間に、圧縮コイルバネ45を狭持する構成になっている。ところで、従来の電磁弁100は、
図4に示されるように、弁孔
270の開口縁と、摺動部120の下端面との間で圧縮コイルバネ
450を狭持する構成であった。そのため、弁孔径が大きくなると、それに伴い摺動部120の径も大きくなる。そして摺動部120の径の大径化に伴い、ガイドスリーブ300等の周辺部品も大きくなり、電磁弁100が大型化してしまう問題があった。
【0012】
ここで、本実施形態の電磁弁10の弁体11は、摺動部12よりも外側に張り出す円環状のバネ保持部13を有している。そして、バネ保持部13の下端面13Kと、開口溝27Mとの間に圧縮コイルバネ45を狭持する構成となっている。これにより、バネ保持部13の張り出し量を変化させることで、弁孔27の大径化に対応することができるので、摺動部12の径を変える必要がなく、弁孔27の大径化による電磁弁10の大型化を抑制することができる。また、本実施形態のように、弁体11にバネ保持部13を有する構成にすれば、摺動部12の大きさを一定にすることが可能であるので、ガイドスリーブ30等の周辺部品の共通化を図ることができる。
【0013】
また、
図1に示されるように、バネ保持部13の上方は、摺動部12の下端部分が内側にくびれてなるくびれ部13Bが形成されている。これにより、バネ保持部13がガイドスリーブ30に当接する前に、バネ保持部13の上面13Jの面積が大きく確保されている。また、バネ保持部13の下方は、弁座14の外形よりもやや大きく形成されている。これにより、圧縮コイルバネ45の組み付け性の向上を図ることができる。
【0014】
ところで、本実施形態の電磁弁10は、通電すると、プランジャー40が下降し、弁体11の弁座14が弁孔27を閉塞する閉位置に移動し(
図1参照)、通電を切ると、圧縮コイルバネ45によって、弁体11が上側に押されて、全開位置へと移動する(
図2参照)構成になっている。
【0015】
ここで、本実施形態の電磁弁10は、閉位置のときに、第1流路21の途中位置に配置されているバネ保持部13(
図1及び
図3(A)参照)は、全開状態になるとバネ保持部13の上面13Jが弁体支持部31の下端面31Kに当接する構成になっている(
図2及び
図3(B)参照)。即ち、バネ保持部13がガイドスリーブ30に当接することによって、弁体11の全開位置に位置決めすることができる。従来の電磁弁100は、摺動部120の上面120Jをスリーブに当てて位置決めをしていたため、摺動部120の上面120Jの大きさを、位置決め可能な程度の大きさにする必要があった。ここで、本実施形態の電磁弁10は、バネ保持部13の上面を位置決めに用いることができるので、摺動部12の上端の形状の自由度が向上する。例えば、摺動部12の上面がガイドスリーブ30に当接する必要がないので、摺動部12の軸方向の長さを短くすることができる。これにより、弁体11における摺動部12の重量を軽量化することができる。
【0016】
また、本実施形態の電磁弁10は、ボディ20の嵌合孔23とガイドスリーブ30の弁体支持部31の下端面31Kとの間にバネ保持部13を収容可能な収容部28が形成されている。具体的には、嵌合孔23の第1流路21側の開口は、バネ保持部13の外径と同一又は大きく形成されている。そして、嵌合孔23に嵌合されるガイドスリーブ30の弁体支持部31の下端面31Kは、バネ保持部13の軸方向の厚みと同じ分だけ第1流路21の上方に位置する構成になっていて、この弁体支持部31の下端面31Kと第1流路21との間に、収容部28が形成される。
【0017】
これにより、本実施形態の電磁弁10は、弁体11が全開状態のときにバネ保持部13が収容部28に収容される。そして、バネ保持部13は、第1流路21の内周面21Nと面一又は奥側に配置される構成となるので、バネ保持部13によって流れを阻害することがなく、バネ保持部13を形成したことによる圧力損失を抑制することができる。なお、ここで「同一,面一」というのは,物理的に「厳密な同一,面一」はもちろん,技術常識的からみて同一,面一にみられる「略同一,略面一」をも含む概念である。
【0018】
[他の実施形態]
(1)上記実施形態では、バネ保持部13は、円環状をなしていたが、複数の突片で構成されていてもよい。
【0019】
(2)上記実施形態では、バネ保持部13を収容する収容部28を有する構成であったが、収容部28を有さない構成であってもよい。
【0020】
(3)上記実施形態では、バネ保持部13は、嵌合孔23の内径よりも小さく構成されていたが、
図5に示されるように、バネ保持部13Zは、嵌合孔23の内径よりも大きく構成されていてもよい。
【0021】
(4)上記実施形態では、バネ保持部13の上面13Jが弁体支持部31の下端面31Kに当接することで、弁体11が全開位置に位置決めされていたが、バネ保持部13の上面13Jが下端面31Kに当接しない構成であってもよい。この場合、従来通り、摺動部12の上面12Jをガイドスリーブ30に当接する構成にしてもよい。
【0022】
(5)上記実施形態では、ガイドスリーブ30のうち弁体支持部31の全体が嵌合孔23に嵌合される構成であったが、弁体支持部31の一部のみが嵌合孔23に嵌合される構成であってもよい。
【0023】
(6)上記実施形態では、ガイドスリーブ30のうち弁体支持部31のみが嵌合孔23に嵌合される構成であったが、プランジャー支持部35も嵌合する構成であってもよい。
【0024】
(7)上記実施形態では、第1流路21と第2流路22とが平行に形成されていたが、流路の形状は適宜変更することができる。また、第1流路21と第2流路22とが交差する場合、連絡流路24を有さない構成であってもよい。
【符号の説明】
【0025】
10 電磁弁
11 弁体
12 摺動部
13 バネ保持部
14 弁座
20 ボディ
23 嵌合孔
25 内部流路
27 弁孔
27M 開口溝
28 収容部
30 ガイドスリーブ
31 弁体支持部
35 プランジャー支持部
40 プランジャー
45 圧縮コイルバネ
60 電磁コイル