特許 7022242 工作機械および表示制御装置

(19)【発行国】日本国特許庁(JP)

(12)【公報種別】特許公報(B1)

(11)【特許番号】

(24)【登録日】2022-02-08

(45)【発行日】2022-02-17

(54)【発明の名称】工作機械および表示制御装置

(51)【国際特許分類】

   G05B 19/409 20060101AFI20220209BHJP

   B23Q 15/12 20060101ALI20220209BHJP

   G05B 19/4063 20060101ALI20220209BHJP

   G05B 19/18 20060101ALI20220209BHJP

【ＦＩ】

G05B19/409 C

B23Q15/12 A

G05B19/4063 L

G05B19/18 W

【請求項の数】 4

(21)【出願番号】P 2021106227

(22)【出願日】2021-06-28

【審査請求日】2021-07-26

【早期審査対象出願】

(73)【特許権者】

【識別番号】000146847

【氏名又は名称】ＤＭＧ森精機株式会社

(74)【代理人】

【識別番号】110002273

【氏名又は名称】特許業務法人インターブレイン

(72)【発明者】

【氏名】大矢 めぐみ

(72)【発明者】

【氏名】榎本 潤次郎

(72)【発明者】

【氏名】香田 信平

(72)【発明者】

【氏名】長野 利隆

【審査官】尾形 元

(56)【参考文献】

【文献】特開２０１７－８７３３８（ＪＰ，Ａ）

【文献】特開２０１２－８８９６８（ＪＰ，Ａ）

【文献】特開２０１９－２５５５８（ＪＰ，Ａ）

【文献】特開２０１８－２０４２６（ＪＰ，Ａ）

(58)【調査した分野】(Int.Cl.，ＤＢ名)

Ｇ０５Ｂ １９／１８－１９／４１６

Ｇ０５Ｂ １９／４２－１９／４６

Ｂ２３Ｑ １５／００－１５／２８

(57)【特許請求の範囲】

【請求項1】

工具を取り付け可能な取付部と、
加工プログラムにしたがって前記工具の回転を制御する数値制御部と、
前記工具の振動を検出する振動検出部と、
を備える工作機械の稼働状態を表示制御する表示制御装置であって、
前記振動検出部で検出された振動レベルが予め定める所定値を超えた場合に、前記振動レベルに基づいてびびり振動を収束させるための回転速度である第１回転速度を計算する計算部と、
前記振動レベルが前記所定値を超えた際の回転速度である第２回転速度から前記第１回転速度へ変更するための変更指示を受け付ける変更受付部と、
操作画面に、前記第１回転速度と、前記第２回転速度と、前記加工プログラムにより指定される第３回転速度に対する変更の割合を示す割合表示部と、を表示する制御を行い、かつ、前記第１回転速度を前記割合表示部の前記第３回転速度に対する変更の割合に対応する箇所に表示する制御を行う表示制御部と、を備え、
前記変更受付部で変更を受け付けると、前記数値制御部は前記工具の回転速度の制御指令値を前記第１回転速度に変更するように制御する、表示制御装置。

【請求項2】

工具を取り付け可能な取付部と、
加工プログラムにしたがって前記工具の回転を制御する数値制御部と、
前記工具の振動を検出する振動検出部と、
前記振動検出部で検出された振動レベルが予め定める所定値を超えた場合に、前記振動レベルに基づいてびびり振動を収束させるための回転速度である第１回転速度を計算する計算部と、
前記振動レベルが前記所定値を超えた際の回転速度である第２回転速度から前記第１回転速度へ変更するための変更指示を受け付ける変更受付部と、
操作画面に、前記第１回転速度と、前記第２回転速度と、前記加工プログラムにより指定される第３回転速度に対する変更の割合を示す割合表示部と、を表示する制御を行い、かつ、前記第１回転速度を前記割合表示部の前記第３回転速度に対する変更の割合に対応する箇所に表示する制御を行う表示制御部と、を備え、
前記変更受付部で変更を受け付けると、前記数値制御部は前記工具の回転速度の制御指令値を前記第１回転速度に変更するように制御する、工作機械。

【請求項3】

前記表示制御部は、前記振動検出部で検出された振動レベルが前記所定値を超えた場合に、前記第２回転速度から前記第１回転速度への変更指示を受け付けるために前記操作画面に表示する指示入力部を有効化し、
前記変更受付部は、有効化された前記指示入力部を介した入力がなされたときに、前記変更指示を受け付ける、請求項２に記載の工作機械。

【請求項4】

前記計算部は、前記第１回転速度として、前記第２回転速度よりも高い第１推奨値と、前記第２回転速度よりも低い第２推奨値を計算し、
前記表示制御部は、前記指示入力部の有効化に先立って、前記第１推奨値および前記第２推奨値のいずれを選択対象とするかの設定指示を受け付ける設定画面を表示する、請求項３に記載の工作機械。

【発明の詳細な説明】

【技術分野】

【0001】

本発明は、工作機械において発生するびびり振動の収束を支援するための表示制御技術に関する。

【背景技術】

【0002】

工作機械において、びびり振動の発生はワーク加工面の品質低下につながるため、その発生を抑制することは重要である。びびり振動の発生原因は多岐にわたる。振動源が工具の場合もあれば、ワークの場合もある。この原因を把握し排除するために、オペレータは自身の経験に基づいて対処することが多い。例えば、振動の音を聞き、ワークの加工面を観察してびびり振動の発生原因を予想し、主軸の回転速度や送り速度、工具の切込み深さや切込み幅などを調整する。それでもびびり振動が収まらない場合は、ワークの固定方法の変更や工具の変更を試みる。このような対処方法は、オペレータ自身の経験や知見に基づいて選択される。

【0003】

びびり振動の要因は複数ある。主なものとして、振動により生じた加工面の起伏が工具の切込み厚さを変動させることに起因する再生びびりと、固有振動数に基づく共振による強制びびりがある。再生びびりの抑制方法としては、切れ刃通過周波数におけるびびり振動数の整数成分と現次数が一致するように主軸回転速度を調整することで、主軸回転速度を安定領域に収める手法が知られている（特許文献１参照）。

【0004】

一方、強制びびりの抑制方法としては、切れ刃通過周波数におけるびびり振動数の整数成分と現次数をずらすように主軸回転速度を調整することで、びびり振動を抑制する手法が知られている。いずれにしてもびびり振動を回避する場合、オペレータは現在の主軸回転速度と、上記手法で算出された主軸回転速度（推奨値）を把握したうえで、主軸回転速度をどのように調整するか判断しなければならない。

【0005】

このオペレータの判断をサポートするため、例えば操作画面に安定限界線図と振動分布図を並べて表示し、これらに現在の主軸回転速度を重畳させる表示制御技術が提案されている（特許文献２参照）。また、操作画面に振動情報を表すグラフを表示し、びびり振動の種類を視覚的に判別できるマーカをプロットする表示制御技術が提案されている（特許文献３参照）。オペレータは、これらの操作画面を確認することで、びびり振動を抑制するための主軸回転速度の変更先を判断できる。

【先行技術文献】

【特許文献】

【0006】

【文献】特開２０１８－１７６２９６号公報

【文献】特開２０１２－８８７８３号公報

【文献】特開２０１２－８８９６７号公報

【発明の概要】

【発明が解決しようとする課題】

【0007】

ところで、特許文献２，３に記載の方法によれば、オペレータが現在の主軸回転速度を把握しつつ変更先の主軸回転速度にあたりをつけることはできるものの、安定領域そのものが時々刻々変化するため、その変化を追いかけながらの判断は容易ではない。また、変更先の主軸回転速度を特定できたとしても、現在の主軸回転速度からどの程度の変化があるのかが直ちには把握し難い。このため、制御状態の急変を懸念してその変更操作に躊躇し、迅速な対応を行い難いといった懸念もある。

【課題を解決するための手段】

【0008】

本発明のある態様は、工具を取り付け可能な取付部と、加工プログラムにしたがって工具の回転を制御する数値制御部と、工具の振動を検出する振動検出部と、工具の回転速度を検出する回転速度検出部と、を備える工作機械の稼働状態を表示制御する表示制御装置である。この表示制御装置は、振動検出部で検出された振動レベルが予め定める所定値を超えた場合に、振動レベルに基づいて第１回転速度を計算する計算部と、振動レベルが所定値を超えた際の回転速度である第２回転速度から第１回転速度へ変更するための変更指示を受け付ける変更受付部と、操作画面に、第１回転速度と、第２回転速度と、加工プログラムにより指定される第３回転速度に対する変更の割合を示す割合表示部と、を表示する制御を行い、かつ、第１回転速度を割合表示部の第３回転速度に対する変更の割合に対応する箇所に表示する制御を行う表示制御部と、を備える。変更受付部で変更を受け付けると、数値制御部は工具の回転速度の制御指令値を第１回転速度に変更するように制御する。

【0009】

本発明の別の態様は工作機械である。この工作機械は、工具を取り付け可能な取付部と、加工プログラムにしたがって工具の回転を制御する数値制御部と、工具の振動を検出する振動検出部と、工具の回転速度を検出する回転速度検出部と、振動検出部で検出された振動レベルが予め定める所定値を超えた場合に、振動レベルに基づいて第１回転速度を計算する計算部と、振動レベルが所定値を超えた際の回転速度である第２回転速度から第１回転速度へ変更するための変更指示を受け付ける変更受付部と、操作画面に、第１回転速度と、第２回転速度と、加工プログラムにより指定される第３回転速度に対する変更の割合を示す割合表示部と、を表示する制御を行い、かつ、第１回転速度を割合表示部の第３回転速度に対する変更の割合に対応する箇所に表示する制御を行う表示制御部と、を備える。変更受付部で変更を受け付けると、数値制御部は工具の回転速度の制御指令値を第１回転速度に変更するように制御する。

【発明の効果】

【0010】

本発明によれば、工作機械におけるびびり振動を抑制する操作を促すにあたり、オペレータに使い勝手のよい表示を提供できる。

【図面の簡単な説明】

【0011】

【図1】実施形態に係る工作機械の概略構成を表す斜視図である。

【図2】びびり振動の検出に関わる機能部の電気的構成を模式的に示す図である。

【図3】制御ユニットの機能ブロック図である。

【図4】制御装置による制御状態を管理するための管理画面を表す図である。

【図5】ステータス画面を表す図である。

【図6】チューニング画面を表す図である。

【図7】振動制御処理を表すフローチャートである。

【図8】図７のＳ１８における推奨値提示処理を表すフローチャートである。

【図9】図７のＳ２４における主軸回転速度調整処理を表すフローチャートである。

【図10】各処理の過程で表示されるチューニング画面を表す図である。

【図11】各処理の過程で表示されるチューニング画面を表す図である。

【図12】各処理の過程で表示されるチューニング画面を表す図である。

【図13】各処理の過程で表示されるチューニング画面を表す図である。

【図14】各処理の過程で表示されるチューニング画面を表す図である。

【図15】各処理の過程で表示されるチューニング画面を表す図である。

【図16】各処理の過程で表示されるチューニング画面を表す図である。

【図17】各処理の過程で表示されるチューニング画面を表す図である。

【図18】各処理の過程で表示されるチューニング画面を表す図である。

【図19】変形例に係るチューニング画面の主要部を表す図である。

【発明を実施するための形態】

【0012】

以下、図面を参照しつつ、本発明の一実施形態について説明する。
図１は、実施形態に係る工作機械の概略構成を表す斜視図である。なおここでは、工作機械１を正面からみて左右方向，上下方向，前後方向を、それぞれＸ軸方向，Ｙ軸方向，Ｚ軸方向とする。

【0013】

工作機械１は、横型のマシニングセンタであり、加工装置２および制御ユニット４を備える。加工装置２を覆うように図示しない筐体が設けられ、その筐体の側面に操作盤が設けられている。操作盤は、オペレータが操作可能なタッチパネル（後述）を有する。

【0014】

加工装置２は、ベッド１０と、ベッド１０に立設されたコラム１２と、コラム１２の前面側に移動自在に設けられた主軸頭１４と、ベッド１０上に移動自在に設けられたテーブル１６を備える。主軸頭１４は、Ｚ軸方向の軸線を有し、主軸１８をその軸線周りに回転可能に支持する。主軸頭１４には、主軸１８を回転駆動するためのスピンドルモータが設けられている。主軸１８は、工具ホルダ２０に保持された工具Ｔを同軸状に取り付け可能な「取付部」として機能する。テーブル１６には、図示略の治具を介してワークＷが固定される。

【0015】

コラム１２の前面にガイドレール２２が設けられ、サドル２４がＸ軸方向に移動可能に支持される。サドル２４の前面にはガイドレール２６が設けられ、主軸頭１４がＹ軸方向に移動可能に支持される。サドル２４および主軸頭１４の移動は、図示略の送り機構とそれを駆動するサーボモータにより実現される。この送り機構は、例えばボールねじを用いたねじ送り機構である。主軸１８は、サドル２４および主軸頭１４が駆動されることによりＸ，Ｙ軸方向に移動自在である。主軸頭１４には、加速度センサ３０が内蔵されている。加速度センサ３０は、工具Ｔのびびり振動を検出するために用いられるが、その詳細については後述する。

【0016】

一方、ベッド１０の上面にガイドレール３２が設けられ、サドル３４がＺ軸方向に移動可能に支持される。サドル３４上にテーブル１６が固定されている。サドル３４の移動は、図示略の送り機構とそれを駆動するサーボモータにより実現される。この送り機構は、例えばボールねじを用いたねじ送り機構である。ワークＷは、サドル３４が駆動されることによりＺ軸方向に移動自在である。すなわち、以上の構成により、ワークＷと工具Ｔとの相対位置を三次元的に調整することができる。

【0017】

図２は、びびり振動の検出に関わる機能部の電気的構成を模式的に示す図である。
上述のように、主軸頭１４には加速度センサ３０が内蔵されている。加速度センサ３０は、ワークＷの加工中に工具Ｔに生じる振動を検出し、その振動に応じた信号を出力する。加速度センサ３０にて検出された加速度（より詳細には、加速度を表す電気信号）は、信号処理装置４０に入力される。

【0018】

信号処理装置４０は、専用の基板にＡ／Ｄ変換器４２および周波数解析装置４４を搭載して構成される。加速度センサ３０から出力された信号は、Ａ／Ｄ変換器４２によりＡＤ変換され、周波数解析装置４４によりＦＦＴ（高速フーリエ変換）が行われる。それらの情報が制御ユニット４に出力される。

【0019】

制御ユニット４は、制御装置５０および振動処理装置５２を含む。制御ユニット４には表示装置５４が接続されている。表示装置５４は、操作盤に設けられたタッチパネルであり、工作機械１の制御状態を表す画面やオペレータが操作する操作画面を表示する。

【0020】

振動処理装置５２は、制御装置５０から制御状態を示す情報を受け取る一方、オペレータの操作入力に応じた制御指令を制御装置５０に対して出力する。振動処理装置５２は、信号処理装置４０や制御装置５０から受信した信号に基づき、びびり振動に関する所定の処理を実行する。

【0021】

振動処理装置５２は、信号処理装置４０から入力される信号に基づき、主軸１８の振動状態（つまり工具Ｔの振動状態）を示す画面（ステータス画面）を表示させるとともに、びびり振動の発生有無を判定する。振動処理装置５２は、びびり振動が発生したと判定すると、そのびびり振動を収束させるための操作画面（チューニング画面）を表示させる。これらの詳細については後述する。

【0022】

制御装置５０は、手動又は自動で生成された加工プログラム（ＮＣプログラム）にしたがってモータ等のアクチュエータを制御する。ワークＷにターニング加工を施す際、制御装置５０は、駆動回路５６を介してサーボモータを駆動し、主軸頭１４を送り駆動する。また、駆動回路５６を介してスピンドルモータを駆動し、主軸１８を回転させる。

【0023】

図３は、制御ユニット４の機能ブロック図である。
制御ユニット４の各構成要素は、ＣＰＵ（Central Processing Unit）および各種コンピュータプロセッサなどの演算器、メモリやストレージといった記憶装置、それらを連結する有線または無線の通信線を含むハードウェアと、記憶装置に格納され、演算器に処理命令を供給するソフトウェアによって実現される。コンピュータプログラムは、デバイスドライバ、オペレーティングシステム、それらの上位層に位置する各種アプリケーションプログラム、また、これらのプログラムに共通機能を提供するライブラリによって構成されてもよい。以下に説明する各ブロックは、ハードウェア単位の構成ではなく、機能単位のブロックを示している。

【0024】

制御ユニット４は、ユーザインタフェース処理部１１０、データ処理部１１２、データ格納部１１４および検出部１１６を含む。ユーザインタフェース処理部１１０は、オペレータからの操作入力を受け付けるほか、画像表示や音声出力など、ユーザインタフェースに関する処理を担当する。データ処理部１１２は、ユーザインタフェース処理部１１０により取得されたデータ、検出部１１６により検出された情報およびデータ格納部１１４に格納されているデータに基づいて各種処理を実行する。データ処理部１１２は、ユーザインタフェース処理部１１０、検出部１１６およびデータ格納部１１４のインタフェースとしても機能する。データ格納部１１４は、各種プログラムと設定データを格納する。

【0025】

ユーザインタフェース処理部１１０は、入力部１２０および出力部１２２を含む。入力部１２０は、タッチパネルあるいはハンドル等のハードデバイスを介してオペレータからの入力を受け付ける。入力部１２０は変更受付部１２４を含む。変更受付部１２４は、主軸１８の回転速度や送り速度の変更など、オペレータによる変更指示を受け付ける。

【0026】

出力部１２２は、画像表示あるいは音声出力によりオペレータに各種情報を提供する。出力部１２２は、表示部１２６を含む。表示部１２６は、表示装置５４おける操作画面として、パネル（キーボードおよび機械操作パネル）を画面表示させてもよい。表示部１２６は、主軸１８の状態（制御状態や振動状態）を示すステータス画面を表示し、びびり振動が発生した場合には上述したチューニング画面を表示する（詳細後述）。

【0027】

検出部１１６は、振動検出部１３０および回転速度検出部１３２を含む。振動検出部１３０は、加速度センサ３０からのセンサ出力に基づき主軸１８の振動（つまり工具Ｔの振動）を検出し、また、信号処理装置４０から出力される情報を取得する。回転速度検出部１３２は、主軸１８に付設したロータリエンコーダ（図示せず）のセンサ出力に基づき、主軸１８の回転速度（つまり工具Ｔの回転速度）を検出する。

【0028】

データ格納部１１４は、ＮＣプログラム格納部１４０、工具データ格納部１４２および表示データ格納部１４４を含む。ＮＣプログラム格納部１４０は、加工プログラム（ＮＣプログラム）を格納する。工具データ格納部１４２は、工作機械１にて使用される工具Ｔの情報（工具情報）を工具ＩＤに対応づけて格納する。工具情報には、例えば工具の種類、工具径、刃数などの情報が含まれる。また、振動処理装置５２による主軸回転速度の調整可能な範囲（以下「調整範囲」という）についても工具情報と対応づけられている。表示データ格納部１４４は、表示部１２６に表示させる画面データ、画面内に表示させるソフトキー、ダイアログボックス等の種々の画像データを格納する。

【0029】

データ処理部１１２は、数値制御部１５０、工具情報管理部１５２、振動処理部１５４、推奨回転速度計算部１５６および表示制御部１５８を含む。数値制御部１５０は、制御装置５０の機能を含む。数値制御部１５０は、入力部１２０から入力される指令に基づき、データ格納部１１４に格納されている加工プログラムにしたがって加工装置２を制御する。

【0030】

数値制御部１５０は、また、制御装置５０による現在の制御状態を示す情報（制御情報）を振動処理部１５４へ逐次送信する。数値制御部１５０は、例えば主軸回転速度の制御指令値（以下「制御指令主軸回転速度」ともいう）を送信する。

【0031】

工具情報管理部１５２は、工具データ格納部１４２に格納される工具Ｔの情報（工具情報）を工具ＩＤに対応づけて管理する。

【0032】

振動処理部１５４は、振動処理装置５２の機能としてびびり検出部１６０を含む。上述した周波数解析装置４４が、加速度センサ３０から連続的に出力される信号を受信し、その信号を所定のサンプリング間隔でフーリエ解析（周波数解析）することで、工具Ｔに生じている振動の周波数（「振動周波数」という）とその大きさ（「振動レベル」ともいう）を算出する。びびり検出部１６０は、これら振動レベルおよび振動周波数の情報を取得し、その振動レベルが所定の閾値を超えたときにびびり振動が発生したと判定する。この振動レベルが閾値を超えた際の制御指令主軸回転速度が「第２回転速度」に対応する。

【0033】

本実施形態では、周波数解析装置４４を信号処理装置４０に設け（図２参照）、制御ユニット４と分離する構成を例示したが、変形例においては、周波数解析装置４４の機能を「周波数解析部」として振動処理部１５４に含めてもよい。また、信号処理装置４０を制御ユニット４の一部として組み込んでもよい。

【0034】

推奨回転速度計算部１５６は、びびり振動が発生したときに、これを収束させるために好適な主軸回転速度の変更先（「推奨回転速度」ともいう）を計算する。なお、推奨回転速度は「第１回転速度」に対応し、例えば特開２０１８－１７６２９６号公報に記載の方法で算出できる。

【0035】

具体的には、検出されたびびり振動が再生びびりである場合、そのときの振動周波数ω０（びびり周波数）および工具Ｔの刃数ｎに基づいて、下記式（１）により推奨回転速度ＳＳ（推奨値）を算出できる。
ＳＳ＝（６０×ω０）／（ｎ×ｋ）・・・（１）
但し、ｋは１以上の任意の整数である。

【0036】

この推奨回転速度ＳＳは、安定限界線図におけるｋ次の安定ポケットに対応した回転速度である。主軸回転速度を推奨回転速度ＳＳに調整することで、びびり振動を解消できる可能性がある。びびり振動が発生したときの主軸回転速度Ｓ０に対し、例えばｋを２としたときに上記式（１）によって得られる推奨回転速度ＳＳが安定領域内となるような場合には、主軸回転速度をＳ０からＳＳに変更することによってびびり振動を解消できる。

【0037】

なお、工具Ｔの刃数ｎは、現在使用中の工具Ｔの工具ＩＤに基づいて取得できる。工具情報管理部１５２は、その工具ＩＤに基づいて工具データ格納部１４２を参照し、刃数ｎを取得する。推奨回転速度計算部１５６は、オペレータに提示する推奨回転速度として、現在の制御指令主軸回転速度よりも高い第１推奨値と、現在の制御指令主軸回転速度よりも低い第２推奨値を算出する。

【0038】

表示制御部１５８は、表示部１２６による表示を制御する。表示制御部１５８は、制御装置５０による制御状態を示す画面（ステータス画面等）や、びびり振動の発生を監視するための画面（チューニング画面等）を表示部１２６に表示させる。

【0039】

振動処理部１５４、推奨回転速度計算部１５６、表示制御部１５８、変更受付部１２４および表示部１２６は、工作機械１の稼働状態を表示制御する「表示制御装置」として機能する。

【0040】

次に、びびり振動の発生検知および抑制に関する処理について具体的に説明する。
図４は、制御装置５０による制御状態を管理するための管理画面を表す図である。
この管理画面では、画面右側領域に実行中のＮＣプログラムが表示されている。画面左上領域にステータス画面が表示され、画面左下領域にチューニング画面が表示されている。これらの表示には、表示データ格納部１４４に格納されたデータが用いられる。

【0041】

図５は、ステータス画面を表す図である。
ステータス画面の中央には、横軸を経過時間、縦軸を振動レベルおよび主軸回転速度とするサンプリング画面１７０が表示される。サンプリング画面１７０は、振動レベルおよび主軸回転速度の変化をリアルタイムで表示するリアルタイムチャートである。実線が振動レベル（ｄＢ）の変化を示し、点線が主軸回転速度の制御指令値（ｍｉｎ^－１）の変化を示している。

【0042】

このステータス画面はタッチパネル機能を有する操作画面でもあり、サンプリング画面１７０における横軸のスケールとして、最大１０ｍｉｎとするパターンと、最大１ｍｉｎ（６０ｓ）とするパターンのいずれかを選択できる。図示の例では、後者が選択されている。画面右端の「０ｍｉｎ」が現在の時点であり、その左側にそれ以前のサンプリング履歴が連続的に表示されている。サンプリング画面１７０は、画面左上のデータ収集ボタン１７２をオンにすることでリアルタイム表示される。

【0043】

図６は、チューニング画面を表す図である。
チューニング画面の中央領域には、主軸回転速度を表すためのオーバーライドバー１８０が表示される。オーバーライドバー１８０は、画面の左右に延びるスケールオブジェクト（スケール機能を有するオブジェクト）であり、その中央がプログラム指令主軸回転速度の１００％の位置を示す。ここで、「プログラム指令主軸回転速度」は、加工プログラムにより指定される主軸回転速度であり、「第３回転速度」に対応する。プログラム指令主軸回転速度は、プログラム上で新たな値が指令されない限り変化しない。オーバーライドバー１８０の上側に現在の制御指令主軸回転速度が表記される（図示の例では２５００ｍｉｎ^－１）。制御指令主軸回転速度は、ＰＬＣにより指令される主軸回転速度である。

【0044】

チューニング画面の起動時は、プログラム指令主軸回転速度と制御指令主軸回転速度は等しくなるため、オーバーライドバー１８０の中央上側に制御指令主軸回転速度が表示される。なお、振動処理装置５２により主軸回転速度が変更された場合には、変更された割合に応じて制御指令主軸回転速度の表示位置が変更される。なお、正常な制御が行われている限り、上述したロータリエンコーダにより検出される実際の主軸回転速度（「実主軸回転速度」ともいう）は、制御指令主軸回転速度とほぼ一致することとなる。

【0045】

オーバーライドバー１８０において、右端はプログラム指令主軸回転速度の１５０％（つまり＋５０％）の位置を示し、左端はプログラム指令主軸回転速度の５０％（つまり－５０％）の位置を示す。すなわち、オーバーライドバー１８０は、現在のプログラム指令主軸回転速度に対する制御指令主軸回転速度の変更の割合を示す「割合表示部」に対応する。

【0046】

チューニング画面の上領域には、現時点で検出されている振動レベルとピーク周波数が表記される。「ピーク周波数」は、現時点で振動レベルが最大となっている振動周波数を意味する。図示の例では、振動レベル：６８（ｄＢ）、ピーク周波数：１１５２（Ｈｚ）が示されている。さらに、この振動レベルによりびびり振動の発生が判定されたため、その旨を報知する「びびり発生中」との文字列が表示されている。

【0047】

びびり振動が検出されると、上述のように、推奨回転速度計算部１５６が、これを収束させるための２つの推奨回転速度（第１推奨値および第２推奨値）を算出する。表示制御部１５８は、算出された２つの推奨値をチューニング画面に表示させる。図示の例では、スケールに沿った下側に第１推奨値として「２８７８ｍｉｎ^－１」が表示され、第２推奨値として「２４６６ｍｉｎ^－１」が表示されている。

【0048】

オーバーライドバー１８０においてプログラム指令主軸回転速度に対する割合に対応する箇所に、制御指令主軸回転速度の位置を示す▼とその数値（２５００ｍｉｎ^－１）が表示される。そして、第１推奨値の位置を示す▲とその数値（２８７８ｍｉｎ^－１）が、オーバーライドバー１８０においてプログラム指令主軸回転速度に対する割合に対応する箇所に表示される。同様に、第２推奨値の位置を示す▲とその数値（２４６６ｍｉｎ^－１）が、オーバーライドバー１８０においてプログラム指令主軸回転速度に対する割合に対応する箇所に表示される。

【0049】

なお、主軸回転速度の下の数値（ｍ／ｍｉｎ）は、工具の周速（ｍ／ｍｉｎ）を示し、下記式（２）により算出される。
周速[m/min]＝主軸回転速度[min^-1]×π×（工具直径[mm]／１０００）・・・（２）
この「周速」は、工具負荷の指標となる。

【0050】

ただし、後述のように、オペレータの事前設定により第１推奨値および第２推奨値の一方が選択可能とされるため、選択対象でない推奨値はグレーアウトされる。この推奨値の事前設定は、後述の選択ボタン１８２ａ，１８２ｂを切り替えることで行うことができる。その詳細な説明については省略する。

【0051】

チューニング画面もタッチパネル機能を有する操作画面であり、オペレータにより選択可能な複数種のボタンが表示される。オーバーライドバー１８０の左右端のやや下方には、推奨値の設定方法を選択するための選択ボタン１８２ａ，１８２ｂが表示される。チューニング画面の下領域には、リセットボタン１８４と調整ボタン１８６が表示される。調整ボタン１８６は、主軸回転速度について速度変更指令を受け付ける「指示入力部」として機能する。リセットボタン１８４は、制御指令主軸回転速度をプログラム指令主軸回転速度にリセットする指令を受け付ける「リセット指令入力部」として機能する。

【0052】

ただし、リセットボタン１８４および調整ボタン１８６については、振動処理部１５４による処理過程で選択可否が判定され、選択可能であるときは通常の表示（「アクティブ表示」ともいう）がなされ、選択不可のときはグレーアウトされる。調整ボタン１８６は、選択されている推奨値が事前設定した調整範囲内であればアクティブ表示される。

【0053】

図示の例では、事前設定として第１推奨値が選択されており、選択ボタン１８２ａがアクティブ表示されている。その状態でびびり振動が発生したため、第２推奨値はグレーアウトされている。そして、選択されている第１推奨値が調整範囲内であったため、調整ボタン１８６がアクティブ表示されている。オペレータは、この状態で調整ボタン１８６をタップ（選択）することにより、制御指令主軸回転速度（２５００ｍｉｎ^－１）を推奨回転速度（第１推奨値：２８７８ｍｉｎ^－１）に変更するよう指示できる。

【0054】

なお、本実施形態では図示のように、主軸回転速度の調整範囲が、プログラム指令主軸回転速度に対して５０～１５０％（つまり±５０％）の範囲に設定されている。それにより、オペレータの想定外に主軸１８の回転数（制御状態）が急変しないようにされている。

【0055】

振動処理部１５４は、オペレータの入力に応じて数値制御部１５０に対し、主軸回転速度の変更指示を出力する。数値制御部１５０は、この変更指示を受けて主軸回転速度の制御指令値（つまり制御指令主軸回転速度）を変更する。

【0056】

次に、びびり振動を抑制するための具体的処理について説明する。
図７は、振動制御処理を表すフローチャートである。図８は、図７のＳ１８における推奨値提示処理を表すフローチャートである。図９は、図７のＳ２２における主軸回転速度調整処理を表すフローチャートである。図１０～図１８は、各処理の過程で表示されるステータス画面およびチューニング画面を表す図である。以下、図７～図９に基づき、図１０～図１８を適宜参照しつつ説明する。

【0057】

図７に示すように、振動制御処理において、振動処理部１５４は、検出部１１６を介して主軸１８の振動データを取得する（Ｓ１０）。表示制御部１５８は、その振動データに基づいてステータス画面およびチューニング画面を更新する（Ｓ１２）。

【0058】

びびり振動が発生しない間もチューニング画面は表示される（図１０）。振動レベルおよびピーク周波数として現在の検出値が表示され、オーバーライドバー１８０におけるプログラム指令主軸回転速度に対する割合に対応する箇所に現在の制御指令主軸回転速度が表示される。主軸回転速度の変更を要しないため、推奨回転速度は表示されない。調整ボタン１８６は無効とされる。リセットボタン１８４も無効とされる。一方、選択ボタン１８２ａ，１８２ｂについては有効とされ、現状の設定から変更することもできる。図１０の例では、事前設定として現在の制御指令主軸回転速度よりも高い第１推奨値が選択対象とされているが、選択ボタン１８２ｂをオンにすることにより、現在の制御指令主軸回転速度よりも低い第２推奨値を選択対象に変更することもできる。

【0059】

振動レベルが閾値を超え、びびり検出部１６０がびびり振動を検出すると（Ｓ１４のＹ）、推奨回転速度計算部１５６が推奨回転速度を計算する（Ｓ１６）。そして、推奨値提示処理が実行される（Ｓ１８）。

【0060】

図８に示すように、推奨値提示処理において、表示制御部１５８は、算出された第１推奨値および第２推奨値の双方が調整範囲内（本実施形態ではプログラム指令主軸回転速度の±５０％以内）にあれば（Ｓ３０のＹ）、両推奨値を表示させる（Ｓ３２）（図１１）。ただし、事前設定により選択されていない推奨値はグレーアウトされる。また、調整ボタン１８６が有効とされる（Ｓ３４）。この場合、オペレータが調整ボタン１８６をタップすることにより、制御指令主軸回転速度が第１推奨値へ変更されることとなる。

【0061】

なお、オーバーライドバー１８０には再探索範囲１８８が重畳表示される。再探索範囲１８８は、今回の推奨回転速度への変更によってびびり振動が収束しない場合に推奨値を再計算するときの探索範囲を示す。この探索範囲については、びびり状態に応じて推奨値と共に算出される。図１１において、ステータス画面中の▼はその制御指令主軸回転速度の切り替えタイミングを表している。この例では、再計算により制御指令主軸回転速度が３回切り替えられたものの、びびり振動が収束しないため、４回目の推奨値が提示されている様子を示す。

【0062】

一方、選択した側の推奨値（選択推奨値）のみが調整範囲にあれば（Ｓ３０のＮ，Ｓ３６のＹ）、表示制御部１５８は、その選択推奨値のみを表示させ（Ｓ３８）、調整ボタン１８６を有効にする（Ｓ４０）（図１２）。図１２の例では、現在の制御指令主軸回転速度よりも低い第２推奨値が選択対象とされているため、オペレータが調整ボタン１８６をタップすることにより、制御指令主軸回転速度が第２推奨値へ変更される。

【0063】

選択していない側の推奨値（非選択推奨値）のみが調整範囲にあれば（Ｓ３６のＮ，Ｓ４２のＹ）、表示制御部１５８は、その非選択推奨値のみ表示させるが（Ｓ４４）、調整ボタン１８６は無効にする（Ｓ４６）（図１３）。すなわち、この状態ではオペレータは主軸回転速度を変更できない。図１３の例では第１推奨値が選択対象とされているため、主軸回転速度を変更できるようにするには、選択ボタン１８２ｂをオンにして第２推奨値を選択対象とする必要がある。

【0064】

第１推奨値および第２推奨値のいずれも調整範囲内にない場合（Ｓ４２のＮ）、表示制御部１５８は、両推奨値を非表示とし（Ｓ４８）、調整ボタン１８６を無効とする（Ｓ５０）（図１４）。また、その旨を示す「推奨値が調整範囲外」などの文字列を表示する。この状態ではオペレータは主軸回転速度を変更できない。

【0065】

図７に戻り、オペレータの操作入力により調整ボタン１８６がタップされると（Ｓ２０のＹ）、主軸回転速度調整処理が実行される（Ｓ２２）。

【0066】

図９に示すように、主軸回転速度調整処理において、表示制御部１５８は、調整ボタン１８６に代えて停止ボタン１８７を表示させる（Ｓ６０）（図１５）。一方、振動処理部１５４が、選択された推奨回転速度への変更指示を出力する（Ｓ６２）。数値制御部１５０は、制御指令主軸回転速度をその推奨回転速度に変更して主軸１８を制御する。表示制御部１５８は、ステータス画面およびチューニング画面を更新する（Ｓ６３）。このとき、ステータス画面において制御指令主軸回転速度の切り替えタイミングを示す▼が追加され、チューニング画面において制御指令主軸回転速度の表示位置が更新される。オペレータは、その制御の切り替え過程で異常を感じた場合、停止ボタン１８７をタップすることでいつでも制御を停止させることができる。また、リセットボタン１８４が有効とされ、オペレータは、いつでも制御をリセットすることができる。リセットボタン１８４は、プログラム指令主軸回転速度と制御指令主軸回転速度とが異なるときに有効化される。

【0067】

振動処理部１５４は、検出部１１６を介して主軸１８の振動データを取得する（Ｓ６４）。このとき、所定の終了条件が成立していなければ（Ｓ６６のＮ）、推奨回転速度計算部１５６が推奨回転速度を再計算する（Ｓ６８）本実施形態では、この「終了条件」として、停止ボタン１８７がタップされたこと、びびり振動が収束したこと、びびり振動が調整前よりも大きくなったこと、びびり振動の種類が変化したこと、びびり振動の周波数が変化したことなどが設定されている。なお、変形例においては、これらの全てではなくいずれかを終了条件として設定してもよい。表示制御部１５８は、この再計算中において停止ボタン１８７を表示させたままとする（図１６）。

【0068】

図１６の例では、制御指令主軸回転速度が２７００ｍｉｎ^－１の状態でびびり振動が発生しており、推奨値として２８７８ｍｉｎ^－１が表示されたため、オペレータが調整ボタン１８６をタップしている。その結果、制御指令主軸回転速度が２８７８ｍｉｎ^－１に変更されたものの、上述の終了条件に該当しなかったため、そのまま再探索がなされている。その再探索の結果、制御指令主軸回転速度が２９００ｍｉｎ^－１に自動的に変更されている。図１６は、この２９００ｍｉｎ^－１に変更された瞬間の画面を示している。

【0069】

なお、このとき、オーバーライドバー１８０の下方に示される推奨値は２８７８ｍｉｎ^－１から２９００ｍｉｎ^－１に変更されてはいない。再探索から制御指令主軸回転速度が自動的に変更されるまでのサイクルが一瞬であるため、オペレータが目で追えないからである。ここでは、推奨値を更新表示する代わりに再探索範囲１８８を表示することで、どの範囲までを連続調整するのかをオペレータに把握させるようにしている。

【0070】

算出された推奨値が調整範囲内であれば（Ｓ７０のＹ）、Ｓ６２へ戻る。こうして終了条件が成立すれば（Ｓ６６のＹ）、Ｓ６８およびＳ７０の処理をスキップする。表示制御部１５８は、推奨値を非表示とし（Ｓ７２）、調整ボタン１８６をグレーアウトさせて無効にする（Ｓ７４）（図１７）。一方、算出された推奨値が調整範囲内でない場合も（Ｓ７０のＮ）、表示制御部１５８は、推奨値を非表示とし（Ｓ７２）、調整ボタン１８６をグレーアウトさせて無効にする（Ｓ７４）。

【0071】

図７に戻り、調整ボタン１８６がタップされなければ（Ｓ２０のＮ）、Ｓ２２の処理をスキップする。びびり振動が検出されなければ（Ｓ１４のＮ）、Ｓ１６～Ｓ２２の処理をスキップする。そして、工作機械１の稼働が停止されるなど、システム終了となれば（Ｓ２４のＹ）、一連の処理を終了する。システム終了でなければ（Ｓ２４のＮ）、Ｓ１０へ戻る。

【0072】

なお、本処理の過程でびびり振動の収束以外の理由で調整を終了した場合には、新たな推奨値が提示される（図１８）。このとき、調整ボタン１８６およびリセットボタン１８４が有効とされる。図１８の例では、制御指令主軸回転速度が２７００ｍｉｎ^－１の状態でびびり振動が発生しており、推奨値として２８７８ｍｉｎ^－１が表示されたため、オペレータが調整ボタン１８６をタップしている。その結果、制御指令主軸回転速度が２８７８ｍｉｎ^－１に変更されている。このとき、びびり振動は収束しなかったものの、上述の終了条件に該当したため、調整が終了されている。オーバーライドバー１８０の下方には、推奨値の再計算の結果として新たな推奨値（２７０８ｍｉｎ^－１，２９００ｍｉｎ^－１）が提示されている。

【0073】

以上、実施形態に基づいて工作機械１について説明した。
本実施形態によれば、チューニング画面に左右に延びるオーバライドバーを表示し、そのオーバライドバーにおいて割合で示される位置に主軸回転速度の変更推奨値（推奨回転速度）をプロットする表示方法を採用した。それにより、オペレータは、以下を視覚的（直感的）に把握でき、自身の感覚にあった選択を行うことができる。
・制御指令主軸回転速度を推奨回転速度（びびり回避速度）に調整した場合の変化量
・制御指令主軸回転速度と推奨回転速度との大小関係

【0074】

また、その推奨値（推奨回転速度）が内部的に計算され、オペレータはそれを承認するかどうかを判断するだけでよいため、迅速な対応をとりやすい。本実施形態によれば、工作機械１におけるびびり振動を抑制する操作を促すにあたり、オペレータに使い勝手のよい表示画面を提供できる。

【0075】

また、オーバーライドバーの100％となる位置、すなわちプログラム指令主軸回転速度の位置を中央に固定することで、主軸回転速度を繰り返し調整しても、オペレータは、制御指令主軸回転速度、プログラム指令主軸回転速度、推奨回転速度の関係性を把握し続けることができる。このとき、プログラム指令主軸回転速度の数値的に認識している必要もない。

【0076】

工作機械のオペレータは、いわゆるオーバライドスイッチを使用することで、主軸回転速度や送り速度の変更を現在の制御指令値に対する割合をもって操作する運用に慣れていることが少なくない。本実施形態によれば、オーバーライドバーにおいて推奨回転速度をプログラム指令主軸回転速度に対する割合として直感的に把握できる表示が行われるため、このようなオペレータにとっても違和感のない使用感を実現できる。その結果、オペレータはより迅速に主軸回転速度を調整できるようになる。

【0077】

さらに、オーバライドバーに主軸回転速度の調整範囲を提示することで、オペレータは、算出された推奨回転速度への調整が可能かどうか視覚的に判断できる。オーバライドバーへの数値のプロットと調整範囲の提示により、その変更が量的および質的にオペレータが意図しない方向に進むことを回避できる。

【0078】

［変形例］
図１９は、変形例に係るチューニング画面の主要部を表す図である。
上記実施形態では、図１９（Ａ）に示すように、主軸回転速度の調整範囲が、プログラム指令主軸回転速度に対して５０～１５０％（つまり±５０％）の範囲に設定される例を示した。本変形例では、オペレータの判断により調整範囲を設定変更することができる。

【0079】

すなわち、調整範囲を５０～１５０％（つまり±５０％）とすることもできれば（図１９（Ａ））、調整範囲を８０～１２０％（つまり±２０％）とすることもできる（図１９（Ｂ））。また、プログラム指令主軸回転速度に対してプラス側とマイナス側で調整可能な割合（％）を異ならせることができるようにしてもよい。例えば、比較的安全側であるマイナス側の調整範囲を大きくするなど、適宜設定できる。これらの設定は、チューニング画面を設定画面に切り替えることで行うことができる。このような設定により、オペレータの判断により調整範囲の上限と下限を設定でき、個々のオペレータの感覚に合わせた運用が可能となる。

【0080】

上記実施形態では、オーバーライドバー１８０の上側に現在の制御指令主軸回転速度を表示させる例を示した。変形例においては、これに代えて実主軸回転速度を表示させてもよい。現在の制御指令主軸回転速度が実主軸回転速度にほぼ等しくなるためである。その場合、「実主軸回転速度」が「第２回転速度」に該当する。推奨回転速度計算部１５６は、オペレータに提示する推奨回転速度として、実主軸回転速度よりも高い第１推奨値と、実主軸回転速度よりも低い第２推奨値を算出する。

【0081】

上記実施形態では、工作機械１として横型のマシニングセンタを例示した。変形例においては、縦型のマシニングセンタであってもよい。あるいは、ターニングセンサであってもよいし、マシニングセンタとターニングセンタの双方の機能を備えた複合加工機であってもよい。それらの工作機械に対し、上述したびびり振動を抑制するための表示制御を適用してもよい。

【0082】

なお、本発明は上記実施形態や変形例に限定されるものではなく、要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化することができる。上記実施形態や変形例に開示されている複数の構成要素を適宜組み合わせることにより種々の発明を形成してもよい。また、上記実施形態や変形例に示される全構成要素からいくつかの構成要素を削除してもよい。

【符号の説明】

【0083】

１ 工作機械、２ 加工装置、４ 制御ユニット、１０ ベッド、１２ コラム、１４ 主軸頭、１６ テーブル、１８ 主軸、２０ 工具ホルダ、３０ 加速度センサ、４０ 信号処理装置、５０ 制御装置、５２ 振動処理装置、５４ 表示装置、１１０ ユーザインタフェース処理部、１１２ データ処理部、１１４ データ格納部、１１６ 検出部、１２０ 入力部、１２２ 出力部、１２４ 変更受付部、１２６ 表示部、１３０ 振動検出部、１３２ 回転速度検出部、１４０ ＮＣプログラム格納部、１４２ 工具データ格納部、１４４ 表示データ格納部、１５０ 数値制御部、１５２ 工具情報管理部、１５４ 振動処理部、１５６ 推奨回転速度計算部、１５８ 表示制御部、１６０ びびり検出部、１７０ サンプリング画面、１７２ データ収集ボタン、１８０ オーバーライドバー、１８２ａ 選択ボタン、１８２ｂ 選択ボタン、１８４ リセットボタン、１８６ 調整ボタン、１８７ 停止ボタン、１８８ 再探索範囲、Ｔ 工具、Ｗ ワーク。

【要約】

【課題】工作機械におけるびびり振動を抑制する操作を促すにあたり、オペレータに使い勝手のよい表示を提供する。
【解決手段】ある態様の表示制御装置は、振動検出部で検出された振動レベルが予め定める所定値を超えた場合に、振動レベルに基づいて第１回転速度を計算する計算部と、振動レベルが所定値を超えた際の回転速度である第２回転速度から第１回転速度へ変更するための変更指示を受け付ける変更受付部と、操作画面に、第１回転速度と、第２回転速度と、加工プログラムにより指定される第３回転速度に対する変更の割合を示す割合表示部と、を表示する制御を行い、かつ、第１回転速度を割合表示部の第３回転速度に対する変更の割合に対応する箇所に表示する制御を行う表示制御部と、を備える。変更受付部で変更を受け付けると、数値制御部は工具の回転速度の制御指令値を第１回転速度に変更するように制御する。
【選択図】図６

【図1】

【図2】

【図3】

【図4】

【図5】

【図6】

【図7】

【図8】

【図9】

【図10】

【図11】

【図12】

【図13】

【図14】

【図15】

【図16】

【図17】

【図18】

【図19】