(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-02-08
(45)【発行日】2022-02-17
(54)【発明の名称】カードを含む代用肉食品及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
A23J 3/00 20060101AFI20220209BHJP
A23J 3/16 20060101ALI20220209BHJP
A23J 3/28 20060101ALI20220209BHJP
A23L 29/262 20160101ALN20220209BHJP
A23L 29/269 20160101ALN20220209BHJP
【FI】
A23J3/00 502
A23J3/16 501
A23J3/28 502
A23L29/262
A23L29/269
(21)【出願番号】P 2021108317
(22)【出願日】2021-06-30
【審査請求日】2021-09-15
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】306007864
【氏名又は名称】ユニテックフーズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000774
【氏名又は名称】特許業務法人 もえぎ特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】後藤 詩絵
(72)【発明者】
【氏名】種市 和也
【審査官】吉海 周
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-029565(JP,A)
【文献】特開2005-021163(JP,A)
【文献】特開平04-131067(JP,A)
【文献】特表2018-533945(JP,A)
【文献】韓国登録特許第10-1965176(KR,B1)
【文献】松山勇介,植物性食品におけるカードランの利用法,月刊フードケミカル,2020年09月01日,Vol.36, No.9,pp.97-102
【文献】新延信吾,ベジミート開発におけるメチルセルロースの応用,月刊フードケミカル,2020年09月01日,Vol.36, No.9,pp.103-106
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A23J
A23L
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
カードラン及びメチルセルロースを含むカード
と、メチルセルロース又はメチルセルロース及びカードランを含む粉末を含む代用肉。
【請求項2】
さらに植物性たんぱく質を含む請求項
1に記載の代用肉。
【請求項3】
次の工程を含む代用肉の製造方法。
A.
カードラン及びメチルセルロースを含むカードを調製する工程
B.Aの工程で調製したカード
、その他の材料、
メチルセルロース又はメチルセルロース及びカードランを含む粉末を混合する工程
【請求項4】
請求項1
又は2に記載の代用肉を加工する工程を含む代用肉食品の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、代用肉に関する。さらに詳しくは、熱可逆性ゲル化剤を構成成分とするカードを含む代用肉等に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、気候変動や世界的な人口増加等により、動物由来の食肉によるたんぱく質の摂取が困難となるたんぱく質クライシスが懸念されており、食肉に替わり得る食品として、植物を由来とするたんぱく質から、代用肉を製造する様々な技術が開発されている。
【0003】
例えば、特許文献1では、澱粉、澱粉含有素材、小麦たんぱく質等を含む植物性組織状たんぱくを用い、乾燥物換算100質量部に対して特定量の水を含む植物性組織状たんぱくとすることによって、ステーキ、焼き肉、ローストビーフ等の肉加工食品用の肉等の代替品として使用できる天然肉に近い食感(弾力感、硬さ、繊維感)を呈する肉様食品を提供する技術が開示されている。
また、特許文献2では、メチルセルロース、変性グルテン、植物たんぱく質及び油を段階的に用いて調製したエマルジョンベースを調理して、バーガーパティー及びソーセージ等に使用できる植物ベースの食肉類似物を製造する技術が開示されている。
さらに、特許文献3では、畜肉加工食品の代替品として大豆たんぱく、ゲル化剤、凝固剤、及び水を含み加熱してゲル化される大豆たんぱく加工食品用組成物等が開示されている。
【0004】
このように、組織状等の特殊な形状を有する小麦たんぱく等を含む植物たんぱくや、大豆由来のたんぱく等を用いることにより、様々な代用肉が開発されている。しかし、これらは特殊な形状の植物たんぱくを用いることが必須であったり、代用肉として結着させる際にでんぷんや増粘多糖類等を用いているため、調理時にべたついたり、逆にポロポロ崩れてしまう等の問題があった。さらに、調理したものをきっ食した際にネトつきを感じたり、糊っぽく感じたり、肉らしい弾力感や固さが感じられない等、動物由来の食肉と同等の代用肉が得られているとは十分にいえなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2020-150892号公報
【文献】特開2005-21163号公報
【文献】再表2007/013146号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は動物由来の食肉と同様の物性を有し、作業性がよい代用肉の提供を課題とする。本発明はさらに、調理した際に、動物由来の食肉を調理した場合と同様の食感、風味及び外観等を有する代用肉の提供を課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討を行った結果、熱可逆性ゲル化剤を構成成分とするカードを含む代用肉とすることで、動物由来の食肉と同様の物性を有し、作業性がよい代用肉が得られることを見出し、本発明を完成するに至った。本発明の代用肉を用いることにより、きっ食時の食感、風味及び外観等が動物由来の食肉を用いた場合と同等である代用肉食品を提供できる。さらに、本発明の代用肉は腐敗等の懸念が少ないため、動物由来の食肉(生肉)を全く使用しないか一部使用したとしても保存性の優れた代用肉食品の提供が可能となる。
【0008】
すなわち、本発明は次の(1)~(9)に示される代用肉等に関する。
(1)熱可逆性ゲル化剤を構成成分とするカードを含む代用肉。
(2)熱可逆性ゲル化剤がカードラン及びセルロース誘導体である上記(1)に記載の代用肉。
(3)セルロース誘導体がメチルセルロース又はヒドロキシプロピルメチルセルロースのいずれか一種以上である上記(2)に記載の代用肉。
(4)さらに植物性たんぱくを含む上記(1)~(3)のいずれかに記載の代用肉。
(5)さらに熱可逆性ゲル化剤を構成成分とする粉末を含む上記(1)~(4)のいずれかに記載の代用肉。
(6)熱可逆性ゲル化剤が、セルロース誘導体である上記(5)に記載の代用肉。
(7)セルロース誘導体がメチルセルロース又はヒドロキシプロピルメチルセルロースのいずれか一種以上である上記(6)に記載の代用肉。
(8)次の工程を含む代用肉の製造方法。
A.熱可逆性ゲル化剤を構成成分とするカードを調製する工程
B.Aの工程で調製したカードとその他の材料を混合する工程
(9)上記(1)~(7)のいずれかに記載の代用肉を加工する工程を含む代用肉食品の製造方法。
【発明の効果】
【0009】
本発明によって、動物由来の食肉と同様の物性を有し、作業性がよい代用肉の提供が可能となった。本発明の代用肉を用いた食品は、きっ食するとジューシーに感じられ、動物由来の食肉を用いた食品と同様の食感、風味及び外観等を示すことから、ハンバーグ、ソーセージ、ミートローフ、肉団子、餃子等の様々な料理に利用できる。また、これらの代用肉を用いて冷凍食品等を提供することもできる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】焼成中の代用肉の写真を示した図である(実施例6)。
【
図2】代用肉食品及びその断面の外観を示した図である(実施例6)。
【0011】
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明の「代用肉」とは、動物由来の食肉と同等の物性を有し、調理すると動物由来の食肉を用いた場合と同様の食品が製造できるもののことをいう。
このような本発明の「代用肉」は、「熱可逆性ゲル化剤」を構成成分とするカードを含むものであればよい。「熱可逆性ゲル化剤」は、本発明の「代用肉」が製造できるものであればいずれのものであってもよく、例えば、メチルセルロースやヒドロキシプロピルメチルセルロース等のセルロース誘導体、カードラン等が挙げられる。これらは二種以上組み合わせて使用することもできる。
【0012】
本発明の「代用肉」は、任意の量の「熱可逆性ゲル化剤」を添加して製造することができるが、好ましくはカード中に「熱可逆性ゲル化剤」が3%以上となるように添加することが好ましい。カード中に含まれる「熱可逆性ゲル化剤」の量が3%よりも少ない場合、代用肉食品の成型性が悪くなったり、代用肉食品として固さが不十分になったりする傾向があるためである。これは「熱可逆性ゲル化剤」としてカードラン及びセルロース誘導体等を組み合わせてカードを調製する場合も同様である。
また、カードラン及びセルロース誘導体を「熱可逆性ゲル化剤」としてカードを調製する場合は、カードランとセルロース誘導体の割合が1:9~9:1となるように配合することが好ましく、2:8~8:2となるように配合することがより好ましい。
【0013】
本発明の「代用肉」の構成成分となる「熱可逆性ゲル化剤」はいずれも食品として使用できるものであればよく、独自に調製したものや市販のもの等を用いることができる。
カードランであれば微粉砕されたカードランを用いることが好ましく、このようなカードランとして、例えばカードランNS(三菱商事ライフサイエンス社)が挙げられる。
また、セルロース誘導体としてメチルセルロースを用いる場合、ヒートゲル(登録商標)超、ヒートゲル(登録商標)極(ユニテックフーズ社)やヒートゲル(登録商標)超CL(いずれもユニテックフーズ社)や、メトローズ MCE-100TS(信越化学工業社)等が挙げられ、メチルセルロースとその他の成分を配合して製剤化されたサーモメイト(青葉化成社)等を用いても良い。
さらにヒドロキシプロピルメチルセルロースを用いる場合は、ヒートゾル(登録商標)緩やヒートゾル(登録商標)柔(共にユニテックフーズ社)等が挙げられる。
これらのセルロース誘導体は、単独で用いてもよく、二種以上組み合わせて用いることもできる。
【0014】
本発明の「代用肉」はさらに「植物性たんぱく」を含むものが好ましい。「植物性たんぱく」はカードの構成成分として含んでもよく、カード以外のその他の材料として含んでも良い。
このような「植物性たんぱく」として、大豆たんぱく、小麦たんぱく、エンドウたんぱく等の豆類や、キノコ、玄米、ひまわりの種、かぼちゃの種といった穀類由来のたんぱく等が挙げられる。これらの植物性たんぱくも食品として使用できるものであればよく、独自に調製したものや市販のもの等を用いることができる。これらの植物性たんぱくはいずれも二種類以上組み合わせて使用することもできる。
例えば、大豆たんぱくであれば、粉末大豆たん白サンラバー20、フジニック、ベジテックスやアペックス(いずれも不二製油株式会社)等を使用することができる。また、小麦たんぱくであれば、粉末状小麦たんぱくA-グルK(グリコ栄養食品社)や粒状小麦たんぱく(ユニテックフーズ社)、エンドウたんぱくであればNutralys(登録商標)(ロケット社)等を使用することができる。
これらの植物性たんぱくは、いずれの製造方法で作られたものでも良いが、エクストルーダーで押し出されたものを任意の大きさでカットした後、乾燥して製造されたものであることが好ましい。尚、ユニテックフーズ社の粒状小麦たんぱくはこの製造方法にて製造されたものである。
【0015】
本発明の「代用肉」はさらに熱可逆性ゲル化剤を構成成分とする「粉末」を含むものであることが特に好ましい。ここで、「粉末」とは熱可逆性ゲル化剤を構成成分とする粉状の物質のことをいい、熱可逆性ゲル化剤に加えて、「粉状のその他の成分」を含むものであってもよい。
「粉末」に含まれる熱可逆性ゲル化剤はメチルセルロースやヒドロキシプロピルメチルセルロース等のセルロース誘導体であることが好ましく、これらにカードラン等を組み合わせて含むこともできる。
また、「粉状のその他の成分」としては例えば、でんぷん、カードラン等が挙げられ、必要に応じてまた、塩、グルタミン酸ナトリウム、香辛料等の調味料の混合物(粉末MIX)等を用いても良い。でんぷんは食品として使用できるものであればよく、由来は問わず、独自に調製したものや市販のもの等を用いることができる。馬鈴薯由来のでんぷんを用いることもでき、デヒドロキシプロピル化リン酸架橋でん粉等の加工されたでんぷんを用いても良い。このような馬鈴薯でんぷんとして、例えば、スウェリージェル700(王子コーンスターチ株式会社)が挙げられる。
【0016】
本発明の「代用肉」は、「カード」以外に「植物性たんぱく」や「粉末」等の「その他の材料」を含むものであってもよい。
「その他の材料」としては、上述の「植物性たんぱく」や「粉末」に加えて、玉ねぎ・にんじん・ピーマン・ネギ等の野菜や、動物由来の食肉(生肉)等の具材、塩・醤油・砂糖・味噌・味醂・油等の調味料、昆布・鰹節等の旨味成分、シャンピニオンエキス・スミヤキオイル等の香料、香味油等の香味等が挙げられる。
具材は目的とする食品の種類や形態に応じて、みじん切り、角切り、千切り等を行い、任意に形や大きさを調製したものを使用できる。シャンピニオンエキスや昆布等を加えることでグアニル酸やイノシン酸等の旨味の相乗効果が得られ、香味油等を加えて風味を調整することで、より風味が良く美味しい代用肉を製造することができる。
【0017】
本発明の代用肉は調製されたものをそのまま常温で保存することができ、冷蔵や冷凍等して保存することもでき、様々な保存状態で流通することもできる。冷凍保存した代用肉は、使用時に解凍して代用肉食品の製造のために加工することもできる。
【0018】
本発明の「代用肉の製造方法」は、次のA及びBの工程を含む方法であればよく、代用肉の製造に有用なその他の工程を含むものであってもよい。
A.熱可逆性ゲル化剤を構成成分とするカードを調製する工程
B.Aの工程で調製したカードとその他の材料を混合する工程
また、さらに次の工程を含む方法であってもよい。
C.Bの工程で調製された混合物を成型する工程
【0019】
Aの工程におけるカードの調製は、例えば、カードランやセルロース誘導体等の熱可逆性ゲル化剤の試料(粉末)を油に分散した後、冷水を加えて攪拌する等によって行うことができる。カードが調製できるものであればいずれの機器を用いて攪拌してもよく、例えば、竪型ミキサーや、フードプロセッサー(MK-K61、パナソニック社)等を用いてもよい。
【0020】
Bの工程においてカードと混合する「その他の原料」として、熱可逆性ゲル化剤を構成成分とする「粉末」を加えることができる。
「カード」とは異なる「粉末」の形状で「熱可逆性ゲル化剤」を混合することによってカードの固さの調製が容易となり、Cの工程等において「代用肉」として成型する際に混合しやすい固さとなるため、「代用肉」の製造における作業性をより向上することができる。また、「熱可逆性ゲル化剤」を「カード」と「粉末」のそれぞれの形状で組み合わせることにより、熱可逆性ゲル化剤の作用をより効果的に発揮することができる。
【0021】
Cの工程において成型される代用肉は、ブロック状、厚切り肉状、薄切り肉状等、目視できる大きさの形状を有することが好ましく、動物由来の食肉を用いた場合と同様に、目的とする食品の形態に応じて任意に大きさや形状を調製することができる。例えば目的とする食品がハンバーグであれば、楕円形、丸型、四角形、三角形、星型、ハート型等の形状が挙げられる。
【0022】
本発明の「代用肉食品の製造方法」は、代用肉を加工する工程を含む製造方法であればよく、代用肉食品の製造に有用なその他の工程を含むものであってもよい。
ここで「加工」とは、焼く、蒸す、煮る、揚げる、揚げ焼きする等の加熱処理が挙げられる。
このようにして製造される「代用肉食品」としては、例えば、ハンバーグ、ソーセージ、ミートローフ、ハム、肉団子、餃子、肉まん、焼売、メンチカツ、ハンバーガー用パテ、ナゲット、から揚げ、そぼろやロールキャベツ等が挙げられる。また、本発明の「代用肉」を具として用いたカレー、シチュー等も本発明の「代用肉食品」に該当する。
本発明の「代用肉」を含む「代用肉食品」は、動物由来の食肉を含まないものであることが好ましいが、必要に応じて動物由来の食肉を併用するものであってもよい。また、動物由来の食肉を主とする食品の一部に本発明の代用肉を混合したものも本発明の「代用肉食品」に含まれる。
本発明の代用肉食品はそのまま常温で保存することができ、冷蔵や冷凍等して保存することもでき、様々な保存状態で流通することもできる。冷凍保存した代用肉食品は、きっ食時に解凍、再加熱等を行いきっ食できる。
【0023】
以下に実施例を挙げて本発明の具体的な実施態様について説明する。なお、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【実施例】
【0024】
本発明の実施例において、別途記載がない限りは次の試料、代用肉の基本配合を用い、製造した各代用肉食品の評価を行った。なお、本発明の実施例の検討は、株式会社コスモジャパンの協力を受け、共同で行った。
1.試料
本願明細書の実施例において、別途、記載がない限りは次の試料をそれぞれ使用した。
1)カードラン:カードランNS(三菱商事ライフサイエンス社)
2)セルロース誘導体(メチルセルロース):ヒートゲル(登録商標) 超(ユニテックフーズ社)
3)大豆たんぱく:粉末大豆たん白サンラバー20(不二製油株式会社)
4)小麦たんぱく:粒状小麦たんぱく(ユニテックフーズ社)
5)馬鈴薯でんぷん:スウェリージェル700(王子コーンスターチ株式会社)
【0025】
2.代用肉の基本配合
代用肉の基本配合を表1に示した。
【0026】
【0027】
3.代用肉食品の評価
〔評価方法〕
代用肉40gを円形(直径約65mm、高さ約10mm)に成型して焼成(240℃、片面2分(計4分)、芯温75℃(シャープ社製ホットプレート KX-E13E))し、代用肉食品を製造した。
3日間冷凍して保存した代用肉食品を電子レンジで再加熱(600W、1min)した後、きっ食して次の各項目について評価基準に基づき官能評価を行った。5人のパネラーの平均点を評価結果とした。
【0028】
〔評価基準〕
1)保形性
5点:しっかりとした保形性があり、通常の食肉のように扱える。
4点:やや保形性が強く、通常の食肉と同等に扱える。
3点:程よい保形性があり、通常の食肉のように扱える。
2点:やや保形性が弱く、通常の食肉より柔らかくて通常の食肉のように扱いづらい。
1点:保形性がなく、柔らかすぎて崩れやすいため、通常の食肉のように扱えない。
【0029】
2)好ましさ
5点:通常の食肉と同様又はそれ以上に良い食感及び風味があり、代用肉として非常に適している。
4点:通常の食肉と同等の食感及び風味があり、代用肉として適している。
3点:通常の食肉とほぼ同様の食感及び風味があり、代用肉として使用できる。
2点:通常の食肉より食感及び風味がやや劣り、代用肉としてやや物足りなく感じる。
1点:通常の食肉より食感及び風味が劣り、代用肉として不適である。
【0030】
代用肉の製造方法
次の工程により代用肉を製造した。
A.カードラン及びセルロース誘導体を構成成分とするカードを調製する工程
B.Aの工程で調製したカードとその他の材料を混合する工程
【0031】
[実施例1]
代用肉の製造(1)
表2の配合となるように、カードラン、セルロース誘導体等の粉末の試料をサラダ油に分散した後、冷水を加えて攪拌し、カードAを調製した。
表1の配合となるようにカードAに具材、たんぱく、調味液を加えた後、攪拌しながら粉末を少しずつ加えて混合し、得られた混合物を成型し代用肉(パテ)を得た。
【0032】
【0033】
カードAを含む代用肉を用いて製造した代用肉食品と、キサンタンガム(SATIAXANE CX90、カーギル社)を含むカード(比較品a~c)を用いて製造した各比較食品について官能評価を行い、評価結果を表2に示した。
その結果、カードランとメチルセルロースを組み合わせて配合したカードAを用いることによって、保形性がよく、好ましさにも優れた代用肉食品が製造できることが確認できた。
【0034】
[実施例2]
代用肉の製造(2)
表3に記載の配合となるように、カードラン、セルロース誘導体等の粉末の試料をサラダ油に分散した後、冷水を加えて攪拌し、カード(B~F)を調製した。各カードの外観を観察し、触感を調べてカードの様子を評価した。その後、表1の配合となるように、これらのカード(B~F)とその他の材料を混合して成型し、代用肉を得た。この際、成型時の作業性も評価した。さらにこの代用肉を用いた代用肉食品について官能評価を行った。
【0035】
【0036】
【0037】
調製したカード(B~F)はカードランとメチルセルロースを1:9~9:1となるように組み合わせて配合したものであり、表4に示すように、程よい粘度と保形性があるものや、やや固さがあったり、固さが強かったりするものであった。
カードの粘度が高いとべたつきが強く成型性が悪くなり、カードが固いほど保形性が良くなる傾向が見られるが、カード(B~F)はややべたつきがあるものもあったが、いずれも適した成型性や保形性を示すものであった。一方、比較品dは固さが全くなくべたつきが強すぎ、比較品eは逆に固くて粘性がないため、ボロボロと崩れてしまう物性となってしまい、いずれも代用肉の製造には適さなかった。
カード(B~F)を含む代用肉を用いて製造した代用肉食品は、通常の食肉を用いた食品と同様に保形性や好ましさに優れた食品となることが確認できた。
このような特徴はカードランのみを含むカード(比較品d)や、メチルセルロースのみを含むカード(比較品e)では得られず、代用肉の製造において、カードランとメチルセルロースを1:9~9:1となるように組み合わせて配合したカードを用いることが重要であることが示された。
【0038】
[実施例3]
代用肉の製造(3)
表5に記載の配合となるように、カードラン、セルロース誘導体等の粉末の試料をサラダ油に分散した後、冷水を加えて攪拌し、カード(G~I)を調製した。その後、表1の配合となるように、これらのカードとその他の材料を混合して成型し、代用肉を得た。さらにこの代用肉を用いて製造した代用肉食品について官能評価を行った。
【0039】
【0040】
表5に示されるように、カード中に含まれるカードランとメチルセルロースの合計が3%(w/w)以上(カードH、I)となるように配合した場合や、さらに4%(w/w)以上(カードG)となるように配合した場合に、程よい保形性や、やや強い保形性を示すことが確認できた。また、きっ食時にジューシーに感じられる好ましい代用肉食品であった。
【0041】
[実施例4]
代用肉の製造(4)
実施例2と同様に調製したカードAと、表1の粉末aについて表6に記載の配合となるように調製した粉末bとを用いて代用肉を製造した。この代用肉を用いて製造した各代用肉食品について官能評価を行った。
比較としてセルロース誘導体を含まない粉末A、カードランを含まない粉末Bを用いて製造した各比較食品についても評価した。
【0042】
【0043】
表6に示されるように、メチルセルロースを構成成分としない粉末(比較品A、B)を用いた場合、保形性及び好ましさが不十分な食品となるのに対して、メチルセルロースを構成成分とする粉末(粉末a、b)を用いて製造した代用肉では、保形性及び好ましさのいずれにおいても優れた代用肉食品が製造できることが確認できた。また、この代用肉食品はきっ食時にジューシーに感じられる好ましいものであった。
【0044】
[実施例5]
実施例2と同様に調製したカードAと、表1の粉末aを用いて代用肉を製造した。この代用肉40gを円形(直径約65mm、高さ約10mm)に成型して、スチームコンベクションにて焼成し、代用肉食品を製造した。焼成中の代用肉の写真を
図1に示した。この代用肉の調理中の外観は市販のパテ(動物由来の食肉使用)と同様であった。
また、市販のパテ(動物由来の食肉使用)も同様に焼成し、外観、食感及び風味等を比較した。その結果、
図2に示されるように、本発明の代用肉食品は市販のパテ(比較品)と同等の外観を示すことが確認できた。また、きっ食時の食感及び風味等も同等であり、本発明の代用肉を用いることにより、調理した際に、動物由来の食肉を調理した場合と同様の食感、風味等を有する代用肉食品が製造できることが確認できた。
【産業上の利用可能性】
【0045】
本発明によって、動物由来の食肉と同様の物性を有し、作業性がよい代用肉の提供が可能となった。本発明の代用肉を用いた食品は、きっ食するとジューシーに感じられ、動物由来の食肉を用いた食品と同様の食感、風味及び外観等を示すことから、ハンバーグ、ソーセージ、ミートローフ、肉団子、餃子等の様々な料理に利用できる。また、これらの代用肉を用いて冷凍食品等を提供することもできる。
【要約】
【課題】動物由来の食肉と同様の物性を有し、作業性がよい代用肉を提供する。さらに、調理した際に、動物由来の食肉を調理した場合と同様の食感、風味及び外観等を有する代用肉を提供する。
【解決手段】熱可逆性ゲル化剤を構成成分とするカードを含む代用肉。熱可逆性ゲル化剤がカードラン及びセルロース誘導体であるカードを含む代用肉。熱可逆性ゲル化剤を構成成分とするカードと、さらに植物性たんぱくを含む代用肉。
【選択図】なし