(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-02-08
(45)【発行日】2022-02-17
(54)【発明の名称】灰押出装置
(51)【国際特許分類】
F23J 1/02 20060101AFI20220209BHJP
【FI】
F23J1/02 B
(21)【出願番号】P 2021167221
(22)【出願日】2021-10-12
【審査請求日】2021-10-14
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】501370370
【氏名又は名称】三菱重工環境・化学エンジニアリング株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100092978
【氏名又は名称】真田 有
(72)【発明者】
【氏名】常泉 慎也
(72)【発明者】
【氏名】吉田 研志
(72)【発明者】
【氏名】花本 英樹
【審査官】古川 峻弘
(56)【参考文献】
【文献】特許第6752988(JP,B1)
【文献】特開2005-195229(JP,A)
【文献】実開平06-030641(JP,U)
【文献】実開平06-030642(JP,U)
【文献】特開昭56-050223(JP,A)
【文献】特開昭52-086539(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F23J 1/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
焼却灰が導入される筒状の壁面からなる導入口及び貯留水で冷却された前記焼却灰を排出する排出口を備えた冷却槽と、
前記冷却槽内に配置され、先端が前記冷却槽の底面の全幅に亘って接するとともに前記焼却灰を前記排出口側へ押し出すスクレーパと、
前記導入口に対し前記排出口と逆側に配置され、前記スクレーパを駆動する駆動装置と、
前記冷却槽内の前記貯留水が、前記壁面の下端よりも上方且つ前記排出口よりも下方である所定水位を超えた場合に前記貯留水を排水するための排水管とを有し、
前記冷却槽の前記底面は、前記導入口の直下から前記排出口が形成された開口端に向かって上り傾斜となる第一傾斜面と、前記第一傾斜面と同一幅であって前記導入口の直下から前記第一傾斜面の逆側に向かって上り傾斜となる第二傾斜面とを備え、
前記駆動装置は、前記第二傾斜面の上方に配置された駆動軸を備え、前記駆動軸が回動することで前記駆動軸と前記スクレーパとに接続されたアームによって前記スクレーパを前記底面に沿って前進及び後進の往復動作させる灰押出装置であって、
前記スクレーパ及び前記アームに接触しない位置、且つ、前記所定水位よりも下方に、前記冷却槽の前記第二傾斜面を貫通して気密に設置され、第一噴出口からガスを前記第二傾斜面と前記スクレーパとの間に向けて噴出する第一配管先端部と、
前記第一配管先端部に前記冷却槽の外部で接続された接続管と、
前記接続管に接続された直管と
を備える第一配管と、
前記第一配管に前記ガスを供給する第一ガス供給装置と
、
前記冷却槽の外面に固定される第一フランジと、
前記第一フランジに対して気密に蓋をする第二フランジと
を有し、
前記第一配管先端部が前記第二フランジに気密に固定されて一体化され、
前記第二フランジ及び前記第一配管先端部は、前記第二フランジへの前記第一配管先端部の固定の角度が異なる複数のバリエーションが用意され、前記バリエーションの中から前記焼却灰の質に応じた前記固定の角度で一体化されている前記第二フランジ及び前記第一配管先端部に取り換えられ、前記第一噴出口から噴出された前記ガスにより生じる前記貯留水の水流と前記ガスによる泡とによって、前記第二傾斜面側に堆積しようとする戻り灰を攪拌する灰押出装置
。
【請求項2】
前記冷却槽に、複数の前記第一フランジが設置され、
前記複数の第一フランジの各々に、それぞれ対応する前記第二フランジ及び前記第一配管が設置された請求項
1に記載の灰押出装置。
【請求項3】
前記第一噴出口からの前記ガスの噴出を制御する制御装置をさらに有し、
前記ガスは、圧縮空気または前記焼却灰を生成する焼却炉の排ガスであり、
前記制御装置は、少なくとも前記後進の際、前記複数の第一フランジに対応して設置された複数の前記第一配管の前記第一噴出口から、前記ガスを同時またはそれぞれ時間差を設けて噴出させる請求項
2に記載の灰押出装置。
【請求項4】
前記第一配管先端部の前記第一噴出口における形状は、
前記第一配管先端部の延在方向に下端
が上端
よりも飛び出している形状である請求項
3に記載の灰押出装置。
【請求項5】
前記冷却槽内の前記貯留水の水位を検出する水位計と、
前記水位計の上方且つ近傍に設置され、前記水位計で検出された水位に基づいて注水し、前記冷却槽内の前記貯留水を増水する注水管と、
前記第二傾斜面の上方であって、前記往復動作する前記スクレーパ及び前記アームに接触しない位置に一端から他端まで配置された第二配管と
をさらに有し、
前記第二配管は、前記一端が前記所定水位よりも下方に配置されるとともに、前記一端に、前記他端から導入された前記ガスを噴出する第二噴出口を備え、
前記第二噴出口は、前記壁面のうち前記第二傾斜面の上方に位置する壁面の下端部に形成された開孔に接続され、
前記水位計は、前記第二傾斜面の上方であって、前記スクレーパが最も後進した際の前記スクレーパの後端と前記開孔が形成された前記壁面との間に配置され、
前記水位計は、前記注水管からの注液で洗浄され、
前記第二噴出口から噴出された前記ガスにより生じる前記貯留水の水流と前記ガスによる泡とによって、前記壁面の前記下端部と前記スクレーパの上面との隙間に前記貯留水を流通させる請求項1から請求項
4のいずれか一項に記載の灰押出装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、焼却灰(焼却残渣)を冷却して排出する灰押出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ごみ等の被焼却物を焼却するプラントとして焼却炉プラントが知られている。このプラント内の焼却炉(例えばストーカ炉)では、被焼却物を燃焼することで生成された灰(焼却灰)が灰シュートから灰押出装置へ落とされ、灰押出装置内の貯留水で冷却された後に灰押出装置から搬送装置へ排出される。灰押出装置には、貯留水で冷却された焼却灰を排出口へ押し出すスクレーパ(「プッシャー」とも呼ばれる)が設けられる。スクレーパは、排出口側に向かう前進方向と、これとは逆の後進方向とに往復動作して貯留水内の焼却灰を押し出す。
【0003】
ところで、一般的な灰押出装置では、スクレーパの往復動作により、焼却灰がスクレーパの裏側下方に入り込んで堆積する傾向にある。このように、焼却灰の押出方向と逆方向に存在する空間に入り込んだ焼却灰は「戻り灰」とも呼ばれる。戻り灰の堆積量が増加すると、スクレーパの駆動に支障をきたし、焼却灰を排出口から押し出すことができなくなるおそれがある。
【0004】
そこで、簡易な構造で、且つ、戻り灰の量を減少、抑制できるようにした灰押出装置が開発されている。例えば、特許文献1では、戻り灰が堆積しうる空間(第二空間)に、上下方向に長い直線状の配管(第一配管)を配置し、この配管の下端の噴出口からガスを噴出することで、冷却槽内の貯留水の水流とガスによる泡とによって戻り灰の堆積を防止している。また、特許文献2では、焼却灰が導入される筒状の壁面の下端部に噴出口が接続された配管(第一配管)に加え、特許文献1と同様の配管(第二配管)を設けることで、一層効果的に戻り灰の堆積を抑制している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特許第6718563号
【文献】特許第6752988号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記の特許文献1の灰押出装置に設けられる第一配管、及び、特許文献2の灰押出装置に設けられる第二配管は、いずれも、灰押出装置にもともと設けられている駆動部上方の開口から挿入され、灰押出装置の底板に当接させた状態で、当該上方で固定されるものであり、設置が容易である。しかし、当該配管は鉛直方向に長いため、灰押出装置を停止して灰押出装置の内部を清掃または点検する際に、人の動きを阻害して清掃または点検に時間を要したり、人が当該配管を誤って故障させたりするなど、不具合が生じる可能性があり、改善の余地がある。
本発明は、このような課題に鑑み案出されたものであって、簡易な構造で、且つ、戻り灰の量を減少、抑制することができ、さらに清掃または点検する際の不具合を解消する灰押出装置を提供することを目的する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の灰押出装置は、焼却灰が導入される筒状の壁面からなる導入口及び貯留水で冷却された前記焼却灰を排出する排出口を備えた冷却槽と、前記冷却槽内に配置され、先端が前記冷却槽の底面の全幅に亘って接するとともに前記焼却灰を前記排出口側へ押し出すスクレーパと、前記導入口に対し前記排出口と逆側に配置され、前記スクレーパを駆動する駆動装置と、前記冷却槽内の前記貯留水が、前記壁面の下端よりも上方且つ前記排出口よりも下方である所定水位を超えた場合に前記貯留水を排水するための排水管とを有し、前記冷却槽の前記底面は、前記導入口の直下から前記排出口が形成された開口端に向かって上り傾斜となる第一傾斜面と、前記第一傾斜面と同一幅であって前記導入口の直下から前記第一傾斜面の逆側に向かって上り傾斜となる第二傾斜面とを備え、前記駆動装置は、前記第二傾斜面の上方に配置された駆動軸を備え、前記駆動軸が回動することで前記駆動軸と前記スクレーパとに接続されたアームによって前記スクレーパを前記底面に沿って前進及び後進の往復動作させる灰押出装置であって、前記スクレーパ及び前記アームに接触しない位置、且つ、前記所定水位よりも下方に、前記冷却槽の前記第二傾斜面を貫通して気密に設置され、第一噴出口からガスを前記第二傾斜面と前記スクレーパとの間に向けて噴出する第一配管先端部と、前記第一配管先端部に前記冷却槽の外部で接続された接続管と、前記接続管に接続された直管とを備える第一配管と、前記第一配管に前記ガスを供給する第一ガス供給装置と、前記冷却槽の外面に固定される第一フランジと、前記第一フランジに対して気密に蓋をする第二フランジとを有し、前記第一配管先端部が前記第二フランジに気密に固定されて一体化され、前記第二フランジ及び前記第一配管先端部は、前記第二フランジへの前記第一配管先端部の固定の角度が異なる複数のバリエーションが用意され、前記バリエーションの中から前記焼却灰の質に応じた前記固定の角度で一体化されている前記第二フランジ及び前記第一配管先端部に取り換えられ、前記第一噴出口から噴出された前記ガスにより生じる前記貯留水の水流と前記ガスによる泡とによって、前記第二傾斜面側に堆積しようとする戻り灰を攪拌する。
【発明の効果】
【0008】
本発明の灰押出装置によれば、簡易な構造で、戻り灰の量を減少、抑制することができる。加えて、第一配管は、第一配管先端部を除き、冷却槽の内部に存在しないため、灰押出装置の内部を清掃または点検する際の不具合を解消することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図2】
図1の灰押出装置の要部拡大断面図(
図3のB-B矢視断面図)である。
【
図4】
図2と同じ断面であって、
図1に示す灰押出装置の第一配管先端部の取り付け構造を説明するための図である。
【
図5】
図1に示す灰押出装置の第一フランジの取付位置を説明するための拡大概略上面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を参照して、実施形態としての灰押出装置について説明する。以下に示す実施形態はあくまでも例示に過ぎず、以下の実施形態で明示しない種々の変形や技術の適用を排除する意図はない。本実施形態の各構成は、それらの趣旨を逸脱しない範囲で種々変形して実施することができる。また、以下の各構成は、本発明に必須の構成を除いて必要に応じて取捨選択することができ、あるいは適宜組み合わせることができる。
【0011】
背景技術で説明したように、「戻り灰」の堆積量が増加すると、スクレーパの駆動に支障をきたし、焼却灰を排出口から押し出すことができなくなるおそれがある。そこで、本実施形態の灰押出装置は、後述するとおり、第一配管を冷却槽の外側に配置し、冷却槽の第二傾斜面とスクレーパとの間に向けてガスを噴出する第一配管の先端(第一配管先端部)を冷却槽に貫通させるという簡易な構造を採用し、戻り灰の堆積を抑制しつつ、清掃または点検の際の不具合を解消する。
【0012】
まずは灰押出装置の全体構成を説明し、次いで、灰押出装置の要部構成を詳述する。
図1に示す灰押出装置1の全体構成は、上記の特許文献2に記載の灰押出装置1の全体構成と同様である。以下の説明では、特許文献2の灰押出装置1と同一構成については同一符号を付し、その構成に関する詳細な説明は省略する。また、図面においては、説明の簡便のため、適宜、X軸、Y軸、Z軸による直交座標系を用いて説明する。X軸方向は、後述するスクレーパ3の前進及び後進の方向であり、Y軸方向は、後述する冷却槽2の幅方向であり、Z軸方向は上下方向である。
【0013】
[1.全体構成]
図1に示すように、本実施形態の灰押出装置1は焼却炉(例えばストーカ炉)に設けられ、焼却炉で生成された焼却灰を冷却槽2で冷却したのち搬送装置19(例えばコンベヤ)へと排出する。灰押出装置1は、焼却灰を冷却する貯留水が貯留された冷却槽2と、冷却槽2内に配置されたスクレーパ3及び駆動装置4とを有する。冷却槽2には、焼却灰が導入される筒状(例えば矩形筒状)の壁面20からなる導入口21と、貯留水で冷却された焼却灰を排出する排出口22が設けられる。なお、壁面20の下端は、冷却槽2内の貯留水の所定水位(
図1中の破線)よりも下方に位置する。
【0014】
冷却槽2の底面23は、導入口21の直下の底面部分(以下「最下面23c」という)から、排出口22(具体的には、排出口22における鉛直方向且つ下方の端部である開口端23d)に向かって上り傾斜となる第一傾斜面23aと、導入口21の直下から第一傾斜面23aの逆側に向かって上り傾斜となる第二傾斜面23bとを備える。冷却槽2の底面23は、下に凸の曲面状であって、冷却槽2の断面形状は幅方向に一様であり、第一傾斜面23a、最下面23c及び第二傾斜面23bの各幅寸法は全て同一である。
【0015】
スクレーパ3は冷却された焼却灰を排出口22側へ押し出す装置である。スクレーパ3は、上方を向く上面3aと排出口22側を向く押出面3bと図示しない両側面とを備え、冷却槽2の底面23側に開放した箱型形状をなす。スクレーパ3は、押出面3bの下端(すなわちスクレーパ3の先端3c)が冷却槽2の底面23の全幅に亘って接しながら底面23に沿って前進及び後進する。
【0016】
駆動装置4はスクレーパ3を駆動する装置であり、導入口21に対し排出口22の逆側(
図1中の右側)に配置される。駆動装置4は、第二傾斜面23bの上方に配置されて二方向に回動可能な駆動軸40と、スクレーパ3と駆動軸40とを接続するアーム41とを備える。駆動装置4は、駆動軸40が回動することでアーム41によってスクレーパ3を底面23に沿って前進及び後進の往復動作をさせる。
なお、前進とは、スクレーパ3が焼却灰を排出口22側へ押し出す方向(
図1中の左方向、前進方向Df)に動くことを意味し、後進とは、前進の逆方向(スクレーパ3が戻る方向、
図1中の右方向、後進方向Dr)に動くことを意味する。また、全幅とは、冷却槽2の内部の幅方向(
図1の紙面に直交する方向)の大きさを意味する。
【0017】
灰押出装置1は、冷却槽2内の貯留水の水位を検出する水位計11と、水位計11の上方且つ近傍に設置され、水位計11で検出された水位に基づいて注水し、冷却槽2内の貯留水を増水する注水管8とを有する。
水位計11は、例えば、第二傾斜面23bの上方であって、スクレーパ3が最も後進した際(
図1中の二点鎖線の状態)のスクレーパ3の後端と後述する開孔が形成された壁面20(後壁20R)との間に配置される。これにより、正確な水位の検出が可能となる。
また、注水管8は、例えば、スクレーパ3が最も後進した際のスクレーパ3の後端よりも前進方向Df側に配置される。これにより、注水管8からの注液で、水位計11を適時洗浄可能となる。
【0018】
冷却槽2内の貯留水の所定水位は、水封のため、壁面20の下端よりも上方且つ排出口22の下方に設定される。冷却槽2内の貯留水は、この所定水位に保たれるようコントロールされる。例えば、制御装置10が、水位計11によって検出された水位に基づき注水管8の中途に介装された電磁バルブ82を開閉制御する。また、冷却槽2には、貯留水の水位が所定水位を超えた場合に貯留水を排水するための排水管12が設けられる。
【0019】
制御装置10は、上述した電磁バルブ82の開閉制御に加え、後述する第一配管5の第一噴出口50からのガスの噴出や、第二配管6の第二噴出口60からのガスの噴出を制御する。また、制御装置10は、駆動装置4を制御する。
【0020】
冷却槽2は、スクレーパ3の前進及び後進の方向において三つの空間に大別される。具体的には、導入口21の直下(最下面23cの上方)の空間(消火加湿空間24)と、第一傾斜面23aの上方に位置する空間(第一空間25)と、第二傾斜面23bの上方に位置する空間(第二空間26)である。
消火加湿空間24は、導入口21から焼却灰が導入されるともに、この焼却灰を消火及び冷却しつつ加湿する空間である。第一空間25は、スクレーパ3により押された焼却灰を引き続き加湿するとともに、所定水位よりも上方に位置する焼却灰の水分を抜いて固化しない程度に乾燥させる空間である。第二空間26は、上記の駆動装置4、注水管8、排水管12及び水位計11が配置される空間である。また、スクレーパ3が最も後退した状態(
図1中の二点鎖線の状態)では、スクレーパ3の大部分が第二空間26内に位置する。
【0021】
図1に拡大して示すように、スクレーパ3の上面3aと後壁20R(壁面20のうち排出口22側の面(すなわち前壁20F)に対向する壁面)の下端部20bとの間には、導入口21の直下の空間(消火加湿空間24)と第二傾斜面23bの上方の空間(第二空間26)とを連通する隙間Gが設けられる。隙間Gは、スクレーパ3が最も前進した状態(
図1中の実線の状態)でも確保される。
貯留水は、スクレーパ3の往復動作と逆方向に隙間Gを流通する。すなわち、貯留水は、スクレーパ3の後進時には、前進方向Dfに隙間Gを通過して第二空間26から消火加湿空間24へ流れ、スクレーパ3の前進時には、後進方向Drに隙間Gを通過して消火加湿空間24から第二空間26へ流れる。
【0022】
[2.要部構成]
スクレーパ3が往復動作すると貯留水に水流が生じ、貯留水に浸かっている焼却灰が貯留水とともに隙間Gから第二空間26に入り込んで第二空間26に堆積する戻り灰となりうる。灰押出装置1は、第二空間26内に入り込んだ戻り灰が堆積することを抑制し、隙間Gを通じて消火加湿空間24に戻るように構成しつつ、清掃または点検の際の不具合を解消した点に特徴がある。
【0023】
具体的には、灰押出装置1は、第二傾斜面23bとスクレーパ3との間に向けてガスを噴出する第一配管先端部5Aと、第一配管先端部5Aに冷却槽2の外部で接続された接続管5Bと、接続管5Bに接続された直管5Cとを備える第一配管5を有する。第一配管先端部5Aは、往復動作するスクレーパ3及びアーム41の双方に接触しない位置、且つ、所定水位よりも下方に、冷却槽2の第二傾斜面23bを貫通して気密に設置される。なお、スクレーパ3は冷却槽2の実質的に全幅に亘って設けられる一方、アーム41は幅方向に間隔をあけて複数配置されるため、第一配管先端部5Aは、幅方向においてアーム41と重ならない位置に配置される。
【0024】
第一配管先端部5Aの一端には、ガスを噴出する第一噴出口50が設けられる。灰押出装置1は、第一配管5の他端に設けられた第一コンプレッサ51(第一ガス供給装置)を有する。灰押出装置1は、第一噴出口50から噴出されたガスにより生じる貯留水の水流とガスによる泡とによって、第二傾斜面23b側に堆積しようとする戻り灰を攪拌する。なお、第一配管5の中途(例えば、直管5C)には、制御装置10により開閉制御される第一電磁バルブ52が介装される。
【0025】
第一噴出口50から噴出されるガスは、この第一コンプレッサ51により圧縮された圧縮空気である。なお、圧縮空気の代わりに、焼却灰を生成する焼却炉の排ガスを第一噴出口50から噴出する構成としてもよい。この場合、第一コンプレッサ51に代えて又は加えて、焼却炉の排ガスダクトから排ガスを第一配管5の他端に導入するための導入管を接続すればよい。すなわち、第一ガス供給装置は第一コンプレッサ51に限られない。
【0026】
次に、第一配管先端部5Aの周辺構造について説明する。
図2~
図4に示すように、灰押出装置1は、冷却槽2の外面にシール溶接されたドーナツ形状の第一フランジ53と、第一フランジ53に対して気密に蓋をする第二フランジ54とをさらに有する。第一配管先端部5Aは、第二フランジ54に気密に固定された直管である。第二フランジ54を第一フランジ53に気密に固定した状態では、第一配管先端部5Aは水平方向に延びるように配置される。
【0027】
第二傾斜面23b(灰押出装置1の底板)には、第一配管先端部5Aが挿通される貫通孔23hが設けられる。第一フランジ53は、円板且つドーナツ状であり、ドーナツ状の孔の位置を貫通孔23hに合わせた状態で、第二傾斜面23bの外面にシール溶接される。
なお、シール溶接とは、密閉を目的とした溶接を意味する。
図2及び
図4中の符号56で示す黒塗り部分がシール溶接された溶接部である。
【0028】
第二フランジ54は、第一フランジ53と同径の円板であって、第一フランジ53のドーナツ状の孔を塞ぐ蓋であり、第一フランジ53と気密に固定される。第一フランジ53には、固定用のボルト55が螺合される雌ネジ構造のボルト挿通孔53h(
図4中に一箇所図示する)が設けられる。また、第二フランジ54には、単なる貫通孔であるボルト挿通孔54h(
図4中に一箇所図示する)が設けられる。
図3では、四つのボルト55により第一フランジ53及び第二フランジ54が固定される構成を例示しているが、ボルト55の個数は四つに限られない。また、各フランジ53、54の形状は円板に限られず、また、気密に固定できれば互いに同径でなくてもよい。
【0029】
第一配管先端部5Aは、第二フランジ54を貫通して第二フランジ54にシール溶接されており、第二フランジ54と第一配管先端部5Aとは予め一体化されている。本実施形態の第一配管5は、第二フランジ54と一体化された第一配管先端部5Aと、他の装置等を回避した経路に配置された直管5Cと、第一配管先端部5A及び直管5Cを気密に接続可能な接続管5Bとから構成される。なお、接続管5B及び直管5Cの個数は一つであってもよいし、複数設けられてもよい。また、他の装置等を回避した経路にするため、
図3に示すように、X軸方向から見て、接続管5Bを、Z軸方向に対し所定角度θ(例えば、45度)だけ傾けて第一配管先端部5Aに接続してもよい。
図4に示すように、第二フランジ54と一体化された第一配管先端部5Aは、第一フランジ53のドーナツ状の孔及び底面23の貫通孔23hに挿入され、図示しないガスケットを挟んで、二つのフランジ53及び54をボルト止めすることで気密に固定される。
【0030】
第一配管先端部5Aの第一噴出口50における形状は、下端から上端に向かって鋭角となる竹槍形状である。二つのフランジ53及び54を気密に固定し、灰押出装置1を駆動させると、戻り灰が灰押出装置1の底面23に沿って第一配管先端部5Aに向かって移動してくる可能性がある。これに対し、第一噴出口50が竹槍形状(人の口に例えれば、下あごが上あごよりも飛び出している形状)であるため、底面23に沿って移動してきた焼却灰は、下あごの下側と底面23との間(
図2中の符号Sで示す空間)に移動することから、第一噴出口50が閉塞されにくい。
【0031】
なお、ここでは、第一配管先端部5Aが水平方向に延びるように固定される構成を説明したが、第二フランジ54への第一配管先端部5Aの固定の角度を様々に変えた複数のバリエーションを用意してもよい。第一配管先端部5A付きの第二フランジ54は簡単に取り換え可能であるため、例えば、焼却灰の質に応じて、戻り灰の量を低減する効果が大きい角度のものを使用すればよい。また、第一配管先端部5Aの第一噴出口50における形状は、上記の竹槍形状に限られない。例えば、第一配管先端部5Aの固定角度に応じて形状を変更してもよい。
【0032】
灰押出装置1に設けられる第一配管5の個数は、灰押出装置1の大きさによって増減させてよい。すなわち、灰押出装置1の種類により、一箇所のみに設置する場合もあれば、二つ以上設置してもよい。冷却槽2に複数の第一配管5が設置される場合には、冷却槽2の幅方向(Y軸方向)に均等に配置されることが好ましい。例えば、
図5に示すように、二つのアーム41の稼働範囲の間に二つの第一フランジ53を溶接し、各第一フランジ53に第一配管5を接続してもよい。あるいは、アーム41の稼働範囲の幅方向外側にも第一フランジ53を溶接して第一配管5を接続することで、この位置での戻り灰の量を低減してもよい。なお、各第一配管5には、第一コンプレッサ51及び第一電磁バルブ52が設けられる。
【0033】
冷却槽2に複数の第一フランジ53が設置される場合、複数の第一フランジ53の各々に、それぞれ対応する第二フランジ54及び第一配管5が設置される。この場合、制御装置10が、各第一フランジ53から突出した第一配管先端部5Aの第一噴出口50からのガス噴出のタイミングを制御してもよい。制御装置10は、複数の第一噴出口50から同時にガスを噴出してもよいし、それぞれ時間差を設けて噴出してもよい。例えば、二つの第一噴出口50が設けられる場合には、交互にガスを噴出させてもよい。同時にガスを噴出する場合と時間差でガスを噴出する場合とでは、水流が変わるため、焼却灰の質や量に応じて、戻り灰の量の低減効果が大きい制御を制御装置10が実施すればよい。なお、制御装置10は、少なくともスクレーパ3の後進の際に第一噴出口50からガスを噴出させる。ただし、スクレーパ3の動作に関わらず、常時ガスを噴出する構成としてもよい。
【0034】
図1に示すように、灰押出装置1は、第二傾斜面23bの上方であって、往復動作するスクレーパ3及びアーム41に接触しない位置に一端(下端)から他端(上端)まで配置された直線状の第二配管6をさらに有する。第二配管6は、その一端が所定水位よりも下方に配置されており、この一端に、他端から導入されたガスを噴出する第二噴出口60を備える。第二配管6の他端には、第二コンプレッサ61(第二ガス供給装置)が設けられる。第二配管6から噴出されるガスは、この第二コンプレッサ61により圧縮された圧縮空気、または、焼却炉の排ガスである。
【0035】
第二配管6の一端の形状は、実質的に水平方向に屈曲形成された角部を備えたL字形状である。第二噴出口60は、壁面20のうち第二傾斜面23bの上方に位置する壁面(すなわち後壁20R)の下端部20bに形成された開孔に接続される。なお、開孔は、下端部20bにおいて壁面20の厚み方向に貫通する孔や切欠きであり、第二噴出口60が嵌合可能な形状であることが好ましい。第二噴出口60は、当該開孔に対し、後壁20Rの外側(第二空間26側)を向く面から挿入され、第二噴出口60の先端が後壁20Rの内側(消火加湿空間24側)を向く面と一致する位置で固定される。
【0036】
灰押出装置1は、第二噴出口60から噴出されたガスにより生じる貯留水の水流とガスによる泡とによって、壁面20の下端部20bとスクレーパ3の上面3aとの隙間Gに貯留水を流通させる。より具体的には、第二配管6が上記のように配置されることで、第二噴出口60からガスが隙間Gの近傍で噴出され、当該ガスにより生じる貯留水の水流とガスによる泡が、スクレーパ3の上面3aに堆積した焼却灰ではね返り、隙間Gの周辺に滞留する焼却灰や浮遊する焼却灰(浮遊灰)を攪拌する。
【0037】
詳述すると、灰押出装置1では、第二噴出口60から噴出されたガスにより生じる貯留水の水流とガスによる泡が、まず、スクレーパ3の上面3aに堆積した焼却灰を削り取る。そして、当該堆積した焼却灰ではね返り隙間Gの近傍に流れ込む泡が、隙間Gの周囲に付着した焼却灰を剥離し、当該堆積した焼却灰ではね返って隙間Gの近傍に流れ込む水流が、当該剥離した焼却灰及び当該隙間に堆積しようとする焼却灰を押し流す。
従って、隙間Gの焼却灰による閉塞が抑制されるため、スクレーパ3の往復動作に伴って、戻り灰を含む貯留水を第二空間26から消火加湿空間24へ効果的に排出することができる。
【0038】
[3.作用及び効果]
(1)本実施形態の灰押出装置1によれば、第二傾斜面23bの近傍で第一噴出口50から噴出されたガスにより生じる水流と泡が、第二傾斜面23bとスクレーパ3の間を前進方向Dfに進み、やがてスクレーパ3の排出口22側を向く押出面3bまたは上面3aに速度を落として穏やかに当たることではね返り、または、当たることなく渦を巻く。このため、当該ガスによる泡で、第二空間26に堆積(例えば、第二傾斜面23bに堆積、スクレーパ3の裏側に堆積、等)した戻り灰が剥離され、当該水流によって、当該剥離した戻り灰のみならず第二空間26に堆積しようとする戻り灰を攪拌する。
【0039】
言い換えると、第二空間26内に堆積した戻り灰を剥離するとともに、第二空間26内の戻り灰が第二傾斜面23b上に堆積する前に、第一噴出口50から噴出されるガスによって戻り灰を攪拌し、貯留水内に戻り灰が混ざり合った状態(流動状態)を保つ。従って、灰押出装置1は、戻り灰を第二空間26から容易に排出することができる。また、灰押出装置1においては、戻り灰は、上記泡の浮力によりスクレーパ3の裏側や第二傾斜面23bの近傍から水面に押し上げられて分散する。これによっても、灰押出装置1は、戻り灰を第二空間26からさらに容易に排出することができる。
【0040】
第二空間26で攪拌された戻り灰は、スクレーパ3の往復動作により生じる水流に乗って、貯留水とともに隙間Gから消火加湿空間24へと排出される。従って、灰押出装置1によれば、簡易な構造で、且つ、戻り灰の量を減少、抑制することができる。
さらに、第一配管5は、第一配管先端部5Aを除き、冷却槽2の内部に存在しないため、灰押出装置1の内部を清掃または点検する際の不具合、例えば、灰押出装置1の内部に配置する配管が人の動きを阻害して清掃または点検に時間を要したり、人が当該配管を誤って故障させたりするなどの不具合を解消できる。
【0041】
第一配管先端部5Aは、第二フランジ54に気密に固定されて一体化されており、第二フランジ54は、冷却槽2の外面にシール溶接された第一フランジ53に対し気密に蓋をする構成であるため、第一配管先端部5Aを、冷却槽2を貫通した状態で気密に設置することができる。
なお、第一配管先端部5Aが水平方向に延びるように配置されることで、第一噴出口50からのガスは、第二傾斜面23bから離れる方向に噴出する。このため、第一噴出口50から噴出されたガスが第二傾斜面23bを削るなどして損傷することがない。
【0042】
冷却槽2に複数の第一フランジ53が設置され、各第一フランジ53に、第一配管先端部5A付きの第二フランジ54を設置することで、冷却槽2の広い範囲で戻り灰の堆積を一層抑制することができる。
また、制御装置10によって、複数設置した第一配管先端部5Aからのガスの噴出を同時またはそれぞれ時間差を設けることで、焼却灰の性質に応じた適切な水流を作り出し、効果的に戻り灰の量の減少、抑制をすることができる。なお、液体ではなくガスを噴出する構成とすることで、貯留水の液量に影響を与えることなく戻り灰の量の減少、抑制をすることができる。
【0043】
上記の第一配管先端部5Aの第一噴出口50における形状は、下端から上端に向かって鋭角となる竹槍形状である。このように形状を工夫したことで、底面23に沿って移動してきた焼却灰により第一噴出口50が閉鎖されることを抑制でき、第一配管5の戻り灰による詰まりを低減または防止することができる。
【0044】
また、上記の灰押出装置1には第二配管6も設けられている。この第二配管6を通じて貯留水内で噴出されたガスが泡となりながら水流を生じさせ、上記はね返りにより泡を伴った水流が隙間G近傍に流れ込む。これにより、焼却灰による隙間Gの閉塞が抑制できるため、スクレーパ3の往復動作に伴う隙間Gを介した貯留水の行き来を確保できる。言い換えると、スクレーパ3の往復動作により生じる水流に乗せて、戻り灰を貯留水とともに隙間Gから消火加湿空間24へ排出することができる。従って、簡易な構造で、戻り灰の量の減少、抑制効果をさらに強化することができる。また、第二噴出口60から噴出されるガスにより生じる貯留水の水流とガスによる泡とによって、特に、上記のはね返った水流と泡とによって、導入口21の直下の水面に浮遊する焼却灰(浮遊灰)を攪拌して加湿することができ、浮遊灰が水面で固化するアーチングを防止できる。
【0045】
加えて、注水管8と水位計11を適切に設置することで、水位計11を適時洗浄して計測誤差を減少させることができる。これにより、冷却槽2内の貯留水の水位を適切に保つことができる。
【0046】
上述した灰押出装置1は一例であり、上述した構成に限られない。
例えば、上述した実施形態の灰押出装置1において、制御装置10がガスの噴出タイミングだけでなく、噴出量を制御するよう構成してもよい。
【符号の説明】
【0047】
1 灰押出装置
2 冷却槽
3 スクレーパ
3a 上面
3b 押出面
3c 先端
4 駆動装置
5 第一配管
5A 第一配管先端部
5B 接続管
5C 直管
6 第二配管
8 注水管
10 制御装置
11 水位計
12 排水管
19 搬送装置
20 壁面
20b 下端部
20R 後壁
21 導入口
22 排出口
23 底面
23a 第一傾斜面
23b 第二傾斜面
23c 最下面
23d 開口端
23h 貫通孔
24 消火加湿空間
25 第一空間
26 第二空間
40 駆動軸
41 アーム
50 第一噴出口
51 第一コンプレッサ(第一ガス供給装置)
52 第一電磁バルブ
53 第一フランジ
53h ボルト挿入孔
54 第二フランジ
54h ボルト挿入孔
55 ボルト
56 溶接部
60 第二噴出口
61 第二コンプレッサ(第二ガス供給装置)
62 第二電磁バルブ
82 電磁バルブ
Df 前進方向
Dr 後進方向
G 隙間
【要約】
【課題】簡易な構造で、且つ、戻り灰の量を減少、抑制し、清掃や点検時の不具合を解消する。
【解決手段】冷却槽2と、スクレーパ3と、駆動装置4と、排水管12とを有し、冷却槽2の底面23が第一傾斜面23a及び第二傾斜面23bを備え、駆動装置4がスクレーパ3を底面23に沿って往復動作させる灰押出装置1は、スクレーパ3及びアーム41に接触しない位置、且つ、貯留水の所定水位よりも下方に、冷却槽2の第二傾斜面23bを貫通して気密に設置された第一配管先端部5Aと、この先端部5Aに冷却槽2の外部で接続された接続管5Bと、接続管5Bに接続された直管5Cとを備える第一配管5と、第一配管5にガスを供給する装置51とを有する。第一配管先端部5Aの第一噴出口50から噴出されたガスにより生じる貯留水の水流とガスによる泡とによって第二傾斜面23b側に堆積しようとする戻り灰を攪拌する。
【選択図】
図1