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特許7022262高温耐水性が改善された酸素遮断多重コーティングフィルム
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  • 特許-高温耐水性が改善された酸素遮断多重コーティングフィルム 図1
  • 特許-高温耐水性が改善された酸素遮断多重コーティングフィルム 図2
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-02-09
(45)【発行日】2022-02-18
(54)【発明の名称】高温耐水性が改善された酸素遮断多重コーティングフィルム
(51)【国際特許分類】
   B32B 27/30 20060101AFI20220210BHJP
   B32B 27/32 20060101ALI20220210BHJP
   B32B 27/36 20060101ALI20220210BHJP
   B32B 27/34 20060101ALI20220210BHJP
【FI】
B32B27/30 102
B32B27/32 Z
B32B27/36
B32B27/34
【請求項の数】 1
(21)【出願番号】P 2019071698
(22)【出願日】2019-04-04
(65)【公開番号】P2019181948
(43)【公開日】2019-10-24
【審査請求日】2019-04-08
(31)【優先権主張番号】10-2018-0042851
(32)【優先日】2018-04-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】519122002
【氏名又は名称】エスアール テクノパック カンパニー リミテッド
(73)【特許権者】
【識別番号】519122013
【氏名又は名称】エスアール ケミカル カンパニー リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100149870
【弁理士】
【氏名又は名称】芦北 智晴
(74)【代理人】
【識別番号】100140659
【弁理士】
【氏名又は名称】奥 佳晃
(72)【発明者】
【氏名】ゾ ホンロ
(72)【発明者】
【氏名】ソン ドンヒョン
(72)【発明者】
【氏名】ゾ デフン
【審査官】飛彈 浩一
(56)【参考文献】
【文献】特開平09-255910(JP,A)
【文献】特開2007-253477(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B32B 27/28
B32B 27/36
B32B 27/34
B32B 27/32
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリエチレンテレフタレート(PET)、ナイロン(NYLON)、ポリプロピレン(PP)、またはポリエチレン(PE)がコロナ処理された基材フィルム層(100)と、
酸素遮断層(300)と、
前記基材フィルム層(100)前記酸素遮断層(300)の間に形成された接着層(200)
含み、
前記酸素遮断層(300)は、1500の重合度及び98%のケン化度を有するポリビニルアルコール(PVOH)及び(3-グリシジルオキシプロピル)トリメトキシシランを含み、
前記酸素遮断層(300)を形成するための酸素遮断コーティング液、100重量当たり5~15重量の固形分を含み、
記固形分は、100重量当たりポリビニルアルコール(PVOH)75~95重量及び(3-グリシジルオキシプロピル)トリメトキシシラン5~25重量を含み
前記酸素遮断層(300)は、前記酸素遮断コーティング液を前記接着層(200)の上にコートしてから乾燥させたものであり、
前記酸素遮断層(300)の厚さは、1~1.5μmであり、
前記接着層(200)の厚さは、0.5~1μmであり、
20時間の間90℃の水分と接触させた後、測定された酸素透過度が0.025~0.04cc/m・dayである高温耐水性が改善された酸素遮断多重コーティングフィルム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高温耐水性が改善された酸素遮断多重コーティングフィルムに係り、さらに詳しくは、高温の水分と長時間接触時においても酸素遮断性が維持される高温耐水性が改善された酸素遮断多重コーティングフィルムに関する。
【背景技術】
【0002】
現在、食品包装産業を含めた多様な産業分野において、酸素遮断性が主な技術的課題として浮上しており、これと関連して多様な酸素遮断フィルムが開発されている。
【0003】
このような酸素遮断フィルムとして、過去からポリビニル-ジ-クロライド(PVDC)積層法が適用されているが、PVDCは、環境規制物質であるクロライドを含んでおり、焼却時、ダイオキシンが排出される短所があり、現在、環境物質への転換が強く要求されている実情である。
【0004】
また、酸素遮断性に優れた素材のうち、無機酸化物蒸着積層法を用いた技術があるが、このような技術は、製品生産収率が極めて低く、これによる製品の製造単価が上昇する問題があり、蒸着積層層の硬度が極めて高く、基材フィルムが、含湿によって収縮または膨脹する場合、蒸着積層層にクラック現象が発生するという短所がある。
【0005】
一方、その他、酸素遮断フィルム素材として、エチレンビニルアルコール(EVOH)の場合は、基材フィルムとEVOHフィルムを合紙し、または基材フィルムと一緒にこれらを共押出する方法を用いて製造することにより、酸素遮断フィルムを生産することができるが、このように製造されたEVOH酸素遮断フィルムは、EVOH層と基材フィルム層との間の接着力が弱く、剥離しやすいという問題点があった。また、韓国内で用いられるEVOHは、全量輸入に依存しているので、EVOHを代替するための多様な研究が韓国内外企業において盛んに進行されている実情である。
【0006】
一方、ポリビニルアルコール(PVOH)素材は、環境に優しく、酸素遮断特性が極めて優れているが、PVOHは、高温の水分と接触すると、水分がポリビニルアルコールに吸湿され、酸素遮断特性が著しく減少するという問題があり、これにより、食品包装等の酸素遮断が強く要求される食品包装材産業分野における使用上の限界を持っていた。
【0007】
このようなPVOHの高温耐水性及び酸素遮断性の低下の問題点を解決するために、クレイ等を含む無機物とPVOHを混合し、無機物の耐水性を用いて、PVOHの酸素遮断能を補完する方案が研究されており、PVOHとポリウレタン化合物を混合して、撥水性と酸素遮断性を兼ね備えようとする方法等が、多様に研究されている実情である。
【0008】
一方、下記の特許文献1には、ポリビニルアルコール(PVOH)を用いて加熱密封性の多層フィルムを製造する方法が開示されているが、特許文献1の方法により製造されたフィルムの場合にも、高温の水分と接触時には著しく酸素遮断性が低下するという問題が解決できない限界がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【文献】大韓民国特許公開公報第10-1998-0700176号(1998.03.30.)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
そこで、本発明では、上記問題を解決するために、ポリビニルアルコール(PVOH)と、1つ以上のエポキシ基を有するシランとを混合して、酸素遮断層を形成することにより、高温耐水性を改善し、高温の水分と長時間接触時においても優れた酸素遮断性が維持される酸素遮断多重コーティングフィルムを開発するに至った。
【0011】
したがって、本発明の一観点によれば、その目的は、高温の水分と長時間接触時においても優れた酸素遮断性が維持される酸素遮断多重コーティングフィルムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の一具現例による高温耐水性が改善された酸素遮断多重コーティングフィルムは、基材フィルム層100と、酸素遮断層300と、基材フィルム層100と酸素遮断層300の間に形成された接着層200を含み、酸素遮断層300は、ポリビニルアルコール(PVOH)及びシランを含み、前記シランは、1つ以上のエポキシ基を含んでもよい。
【0013】
本発明の他の具現例による高温耐水性が改善された酸素遮断多重コーティングフィルムにおいて、前記ポリビニルアルコール(PVOH)は、500~2,500の重合度及び98~100%のケン化度を有するものであってもよい。
【0014】
本発明のまた他の具現例による高温耐水性が改善された酸素遮断多重コーティングフィルムにおいて、酸素遮断層300を形成するための酸素遮断コーティング液、100重量当たり5~15重量の固形分を含み、前記固形分は、100重量当たりポリビニルアルコール(PVOH)75~95重量及びシラン5~25重量が含まれたものであってもよい。
【0015】
本発明のまた他の具現例による高温耐水性が改善された酸素遮断多重コーティングフィルムにおいて、前記接着層200は、ポリウレタンプライマー層であり、前記ポリウレタンプライマー層を形成するプライマーは、接着層200の100重量当たり5~15重量の固形分を含み、前記固形分は、主剤であるポリエステル系接着剤60~75重量及び硬化剤25~40重量で構成されてもよい。
【0016】
本発明のまた他の具現例による高温耐水性が改善された酸素遮断多重コーティングフィルムにおいて、前記酸素遮断層300の厚さは、1~1.5μmであり、前記接着層200の厚さは、0.5~1μmであってもよい。
【0017】
本発明の高温耐水性が改善された酸素遮断多重コーティングフィルムは、
ポリエチレンテレフタレート(PET)、ナイロン(NYLON)、ポリプロピレン(PP)、またはポリエチレン(PE)がコロナ処理された基材フィルム層100と、酸素遮断層300と、基材フィルム層100と酸素遮断層300の間に形成された接着層200を含み、
素遮断層300は、1500の重合度及び98%のケン化度を有するポリビニルアルコール(PVOH)及び(3-グリシジルオキシプロピル)トリメトキシシランを含み、
素遮断層300を形成するための酸素遮断コーティング液、100重量当たり5~15重量の固形分を含み、
前記固形分は、100重量当たりポリビニルアルコール(PVOH)75~95重量及び(3-グリシジルオキシプロピル)トリメトキシシラン5~25重量を含み
酸素遮断層300は、前記酸素遮断コーティング液を接着層200の上にコートしてから乾燥させたものであり、
20時間の間90℃の水分と接触させた後、測定された酸素透過度が0.025~0.04cc/m・dayであってもよい。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、極めて環境にやさしく、高温の水分と長時間接触時も、極めて優れた酸素遮断性が維持されるという長所を有する。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】本発明の一具現例による酸素遮断多重コーティングフィルムの断面積層構造を概略的に示した図である。
図2】本発明の一実施例による酸素遮断多重コーティングフィルムの酸素透過度の大きさを示したグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明をさらに具体的に説明するに先立ち、本明細書及び請求の範囲で用いられる用語や単語は、通常的かつ辞書的な意味に限定されて解釈されてはならず、発明を最も最善の方法で説明するために、用語の概念を適宜定義することができるという原則に基づき、本発明の技術的思想に符合する意味と概念と解釈されなければならない。したがって、本明細書に記載された実施例の構成は、本発明の好適な一例に過ぎないだけで、本発明の技術的思想を全て代弁するものではないので、本出願時点においてこれらを代替可能な多様な均等物及び変形例があり得ることを理解しなければならない。
【0021】
以下、本発明が属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易にその実施をすることができるように、本発明の好適な実施例について詳述する。これとともに、本発明を説明するにあたって、本発明の要旨を不要に曖昧にすると判断される場合、その関連公知技術についての詳細な説明を省略する。
【0022】
本発明に係る酸素遮断多重コーティングフィルムは、食品包装産業分野等に多様に用いられるが、本発明が用いられる産業分野が単に食品包装産業分野に限定されるものではない。
【0023】
本発明に係る酸素遮断多重コーティングフィルムは、極めて環境にやさしく、高温の水分と長時間接触時も、極めて優れた酸素遮断性が維持されるという長所を有する。
【0024】
以下、図1を参照して、本発明の酸素遮断多重コーティングフィルムを構成するそれぞれの層構造を概略的に説明する。
【0025】
図1に概略的に示すように、本発明の高温耐水性が改善された酸素遮断多重コーティングフィルムは、基材フィルム層100と、酸素遮断層300と、前記基材フィルム層と酸素遮断層との間に形成された接着層200と、を含む。
【0026】
前記基材フィルム層100は、食品を包装するために用いられる多様な樹脂フィルムで構成されてもよく、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ナイロン(NYLON)、ポリプロピレン(PP)、ポリエチレン(PE)、ポリ乳酸(PLA)等が用いられる。
【0027】
前記基材フィルム層100は、本発明に係る酸素遮断多重コーティングフィルムにおいて、最も厚く形成される層に該当し、多重コーティングフィルムを構造的に支える役割をする。
【0028】
前記基材フィルム層100の厚さは、多重コーティングフィルムの使用目的に応じて多様に形成されてもよく、例えば、10~100μmの厚さに形成されてもよく、好ましくは、約20~50μmの厚さに、さらに好ましくは、約30~40μmの厚さに形成されてもよい。
【0029】
前記基材フィルム層100を形成するフィルムとして用いられるPET、NYLON、PP、PE、PLA等の多様な樹脂フィルムは、コロナ処理を施したものを用いてもよい。
【0030】
コロナ処理を施した基材フィルムを用いて基材フィルム層を形成する場合、フィルムの耐久性を向上させることができるという長所がある。
【0031】
前記基材フィルム層100の上には、後述する酸素遮断層300と前記基材フィルム層100との間の接着力を与える接着層200が形成される。
【0032】
前記接着層200は、ポリウレタンプライマー層であり、前記ポリウレタンプライマー層を形成するプライマーは、接着層200の100重量当たり5~15重量の固形分を含むように構成される。
【0033】
前記固形分は、主剤と硬化剤成分で構成され、主剤であるポリエステル系接着剤60~75重量及び硬化剤25~40重量で構成されてもよい。
【0034】
前記ポリエステル系接着剤の主剤が、全体固形分100重量当たり60重量未満で含まれる場合、プライマーの接着力が減少し、硬度が高くなり、固形分100重量当たり75重量を超過する場合は、プライマーの接着力は増加するものの、プライマーコーティング後、巻取り時、フィルム反対側への接着剤の転移現象が発生することになる問題がある。
【0035】
前記硬化剤としては、イソシアネート系硬化剤を用いてもよく、接着剤固形分100重量当たり25~40重量の重量比で用いることが好ましい。
【0036】
前記イソシアネート系硬化剤の重量が、接着剤固形分100重量に対して25重量未満で含まれる場合、接着剤プライマーの接着力は増加するものの、プライマーコーティング後、巻取り時、フィルム反対側への接着剤の転移現象が発生し、接着剤固形分100重量に対して40重量を超過する場合は、プライマーの接着力が減少し、硬度が高くなる現象が発生することになる。
【0037】
本発明の接着層200を形成するためのプライマーコーティング液は、例えば、下記のような方法で製造される。
【0038】
まず、酢酸エチル(Ethyl acetate)85~95重量を投入した後、接着剤固形分100重量に対してポリエステル系接着剤主剤を60~75重量、イソシアネート系硬化剤を25~40重量添加し、約60℃の温度を維持しながら、約6時間の間攪拌してプライマーコーティング液を製造する。
【0039】
前記酸素遮断層300は、ポリビニルアルコール(PVOH)及びシランを含み、前記シランは、1つ以上のエポキシ基を含んでもよい。
【0040】
本発明の多重コーティングフィルムを製造するために用いられるシラン(silane)は、1つ以上のエポキシ基を含むものであり、例えば、2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン<2-(3,4-epoxycyclohexyl)ethyltrimethoxysilane>、(3-グリシドキシプロピル)トリメトキシシラン<(3-glycidoxypropyl)trimethoxysilane>、3-グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン<3-glycidoxypropyl methyldiethoxysilane>、2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリエトキシシラン<2-(3,4-epoxycyclohexyl)ethyltriethoxysilane>、3-グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン<3-glycidoxypropylmethyl dimethoxysilane>、3-グリシドキシプロピルトリエトキシシラン<3-glycidoxypropyl triethoxysilane>等を用いることが好ましい。
【0041】
素遮断層300を形成するための酸素遮断コーティング液は、100重量当たり固形分が5~15重量の割合で含まれる。
【0042】
記固形分は、100重量当たりポリビニルアルコール75~95重量の割合で混合され、シランが5~25重量の割合で混合される。
【0043】
前記固形分100重量当たりポリビニルアルコール(PVOH)が75重量未満で含まれる場合は、高温耐水性は上昇するものの、酸素遮断効果が減少し、前記固形分100重量当たり含まれるポリビニルアルコール(PVOH)が95重量を超過する場合、そのもので酸素遮断性は優れているものの、高温耐水性が減少し、多重コーティングフィルムが長時間高温の水分と接触する場合、吸湿により結果的に酸素遮断性が低下する問題が発生する。
【0044】
一方、前記固形分100重量当たりエポキシ基を1つ以上有するシランの含量が、5重量未満である場合、コーティング液の酸素遮断効果が上昇するものの、高温耐水性の性能が減少し、25重量を超過する場合、高温耐水性は上昇するものの、コーティング液の酸素遮断能が減少することになる。
【0045】
本発明の酸素遮断層300を形成するための酸素遮断コーティング液は、例えば、下記のような方法で製造することができる。
【0046】
まず、蒸留水70~80重量にPVOH75~95重量を徐々に投入した後、90℃になるまで加熱しながら溶解させる。
【0047】
その後、エポキシ基を1つ以上有するシラン5~25重量を投入し、常温で約6時間の間反応させる。
【0048】
このとき、0.1Nの塩酸(Hydrochloric acid)を約1.0重量投入してもよい。
【0049】
0.1Nの塩酸(Hydrochloric acid)を加えると、フィルムの高温耐水性をさらに向上させることができる。
【0050】
反応完了後、エチルアルコール(Ethyl alcohol)15重量を投入して、酸素遮断コーティング液を完成する。
【0051】
一方、前記ポリビニルアルコール(PVOH)は、500~2,500の重合度及び98~100%のケン化度を有するものであってもよい。
【0052】
本発明のまた他の具現例による高温耐水性が改善された酸素遮断多重コーティングフィルムにおいて、酸素遮断層300を形成するための酸素遮断コーティング液、100重量当たり5~15重量の固形分を含み、前記固形分は、100重量当たりポリビニルアルコール(PVOH)75~95重量及びシラン5~25重量が含まれたものであってもよい。
【0053】
本発明のまた他の具現例による高温耐水性が改善された酸素遮断多重コーティングフィルムにおいて、前記酸素遮断層300の厚さは、1~1.5μmであり、前記接着層200の厚さは、0.5~1μmであってもよい。
【0054】
PVOH酸素遮断層の厚さが1μm未満である場合、酸素遮断層の厚さが薄く、酸素遮断の特性が減少し、1.5μmを超過する場合、酸素遮断層の厚さが厚くなり、酸素遮断の特性は向上するものの、製造原価が上昇し、コーティング後の乾燥時、乾燥が円滑に行われないという問題がある。
【0055】
一方、接着層200の厚さが0.5μm未満である場合、基材フィルム層100と酸素遮断層300との間の接着力が低下し、各層間の分離が起こり、接着層200の厚さが1μmを超過する場合は、多重コーティングフィルムの撓み性が低下する恐れがあり、高温接触時、各層間の膨脹率の差により、各層間の剥離現象が発生する恐れがある。
【0056】
以下、具体的な実施例を通じて本発明の多重コーティングフィルムを製造する方法について説明する。
【0057】
製造例1:PVOHコーティング液サンプルA-1の製造
蒸留水610gに重合度1500、ケン化度98%であるPVOH75gをゆっくり投入し、90℃まで加熱して溶解させた。その後、(3-グリシジルオキシプロピル)トリメトキシシラン5g、0.1N塩酸(hydrochloric acid)10gを投入し、常温で6時間反応させた。その後、エチルアルコール150gを投入して、PVOHコーティング液A-1を製造した。
【0058】
製造例2:PVOHコーティング液サンプルA-2の製造
蒸留水610gに重合度1500、ケン化度98%であるPVOH65gをゆっくり投入し、90℃まで加熱して溶解させた。その後、(3-グリシジルオキシプロピル)トリメトキシシラン15g、0.1N塩酸(hydrochloric acid)10gを投入し、常温で6時間反応させた。その後、エチルアルコール150gを投入して、PVOHコーティング液A-2を製造した。
【0059】
製造例3:PVOHコーティング液サンプルA-3の製造
蒸留水620gに重合度1500、ケン化度98%であるPVOH65gをゆっくり投入し、90℃まで加熱して溶解させた。その後、(3-グリシジルオキシプロピル)トリメトキシシラン18g、0.1N塩酸(hydrochloric acid)10gを投入し、常温で6時間反応させた。その後、エチルアルコール150gを投入して、PVOHコーティング液A-3を製造した。
【0060】
製造例4:接着層コーティング液B-1の製造
固形分重量%が60%であるポリエステル系接着剤主剤200g、固形分重量%が75%であるイソシアネート系硬化剤30g、及び酢酸エチル770gを投入した後、60℃の温度下で6時間の間攪拌して、接着層コーティング液B-1を製造した。
【0061】
製造例5:接着層コーティング液B-2の製造
固形分重量%が60%であるポリエステル系接着剤主剤150g、固形分重量%が75%であるイソシアネート系硬化剤75g、及び酢酸エチル775gを投入した後、60℃の温度下で6時間の間攪拌して、接着層コーティング液B-2を製造した。
【0062】
製造例6:接着層コーティング液B-3の製造
固形分重量%が60%であるポリエステル系接着剤主剤100g、固形分重量%が75%であるイソシアネート系硬化剤100g、及び酢酸エチル800gを投入した後、60℃の温度下で6時間の間攪拌して、接着層コーティング液B-3を製造した。
【0063】
比較製造例1:PVOHコーティング液A-4の製造
蒸留水800gに重合度1500、ケン化度98%であるPVOH100gをゆっくり投入し、90℃まで加熱して溶解させた。その後、エチルアルコール150gを投入して、PVOHコーティング液A-4を製造した。
【0064】
比較製造例2:PVOHコーティング液A-5の製造
蒸留水700gに重合度500、ケン化度98%のPVOH150gをゆっくり投入し、90℃まで加熱して溶解させた。その後、エチルアルコール150gを投入して、PVOHコーティング液A-5を製造した。
【0065】
実施例1:接着層コーティング液B-1及びPVOHコーティング液A-1
コロナ処理された厚さ36μmのPETフィルムを基材フィルムとして使用し、その上に、乾燥厚さが1μmとなるように接着層コーティング液B-1をコートしてから80℃で1分間乾燥した。その後、その上に、乾燥厚さが1.5μmとなるようにPVOHコーティング液A-1をコートしてから80℃で1分間乾燥して、積層フィルムP-1を製造した。
【0066】
実施例2:接着層コーティング液B-2及びPVOHコーティング液A-1
コロナ処理された厚さ36μmのPETフィルムを基材フィルムとして使用し、その上に、乾燥厚さが1μmとなるように接着層コーティング液B-2をコートしてから80℃で1分間乾燥した。その後、その上に、乾燥厚さが1.5μmとなるようにPVOHコーティング液A-1をコートしてから80℃で1分間乾燥して、積層フィルムP-2を製造した。
【0067】
実施例3:接着層コーティング液B-2及びPVOHコーティング液A-2
コロナ処理された厚さ36μmのPETフィルムを基材フィルムとして使用し、その上に、乾燥厚さが1μmとなるように接着層コーティング液B-2をコートしてから80℃で1分間乾燥した。その後、その上に、乾燥厚さが1.5μmとなるようにPVOHコーティング液A-2をコートしてから80℃で1分間乾燥して、積層フィルムP-3を製造した。
【0068】
実施例4:接着層コーティング液B-2及びPVOHコーティング液A-3
コロナ処理された厚さ36μmのPETフィルムを基材フィルムとして使用し、その上に、乾燥厚さが1μmとなるように接着層コーティング液B-2をコートしてから80℃で1分間乾燥した。その後、その上に、乾燥厚さが1.5μmとなるようにPVOHコーティング液A-3をコートしてから80℃で1分間乾燥して、積層フィルムP-4を製造した。
【0069】
実施例5:接着層コーティング液B-3及びPVOHコーティング液A-1
コロナ処理された厚さ36μmのPETフィルムを基材フィルムとして使用し、その上に、乾燥厚さが1μmとなるように接着層コーティング液B-3をコートしてから80℃で1分間乾燥した。その後、その上に、乾燥厚さが1.5μmとなるようにPVOHコーティング液A-1をコートしてから80℃で1分間乾燥して、積層フィルムP-5を製造した。
【0070】
実施例6:接着層コーティング液B-3及びPVOHコーティング液A-2
コロナ処理された厚さ36μmのPETフィルムを基材フィルムとして使用し、その上に、乾燥厚さが1μmとなるように接着層コーティング液B-3をコートしてから80℃で1分間乾燥した。その後、その上に、乾燥厚さが1.5μmとなるようにPVOHコーティング液A-2をコートしてから80℃で1分間乾燥して、積層フィルムP-6を製造した。
【0071】
比較例1:PVOHコーティング液A-2(接着層コーティング液処理無し)
コロナ処理された厚さ36μmのPETフィルムを基材フィルムとして使用し、その上に、乾燥厚さが1.5μmとなるようにPVOHコーティング液A-2をコートしてから80℃で1分間乾燥して、積層フィルムP-7を製造した。
【0072】
比較例2:接着層コーティング液B-1及びPVOHコーティング液A-4
コロナ処理された厚さ36μmのPETフィルムを基材フィルムとして使用し、その上に、乾燥厚さが1μmとなるように接着層コーティング液B-1をコートしてから80℃で1分間乾燥した。その後、その上に、乾燥厚さが1.5μmとなるようにPVOHコーティング液A-4をコートしてから80℃で1分間乾燥して、積層フィルムP-8を製造した。
【0073】
比較例3:接着層コーティング液B-2及びPVOHコーティング液A-4
コロナ処理された厚さ36μmのPETフィルムを基材フィルムとして使用し、その上に、乾燥厚さが1μmとなるように接着層コーティング液B-2をコートしてから80℃で1分間乾燥した。その後、その上に、乾燥厚さが1.5μmとなるようにPVOHコーティング液A-4をコートしてから80℃で1分間乾燥して、積層フィルムP-9を製造した。
【0074】
比較例4:接着層コーティング液B-2及びPVOHコーティング液A-5
コロナ処理された厚さ36μmのPETフィルムを基材フィルムとして使用し、その上に、乾燥厚さが1μmとなるように接着層コーティング液B-2をコートしてから80℃で1分間乾燥した。その後、その上に、乾燥厚さが1.5μmとなるようにPVOHコーティング液A-5をコートしてから80℃で1分間乾燥して、積層フィルムP-10を製造した。
【0075】
前記実施例1~6及び比較例1~4の積層フィルムP-1~P-10を用いて、下記の実験を行った。
【0076】
[酸素透過度測定実験]
ASTM D 3985により積層フィルムの酸素透過度を測定し、それぞれの積層フィルムを横×縦=7cm×7cmの大きさに切り取り、MOCON社のOX-TRAN 2/21を用いて、23℃、相対湿度0%で各サンプルの酸素透過度を測定し、その結果を下記の表1に示した。
【0077】
[ボイリング(boiling)測定実験]
積層フィルムP-1~P-10のコーティング面に他のPETフィルムをラミネートしてから、これを横×縦=1.5cm×1cmの大きさに切り取り、実験サンプルを準備した。これらの実験サンプルをそれぞれ90℃の水に30分間浸漬させてから取り出して、フィルムの状態を確認し、その結果を下記の表1に示した。
【0078】
[剥離強度測定実験]
積層フィルムP-1~P-10のコーティング面に他のPETフィルムをラミネートしてから、これを横×縦=1.5cm×1cmの大きさに切り取り、実験サンプルを準備した。これらの実験サンプルのラミネート界面を万能試験機(Universal testing machine)でT字剥離実験を行い、剥離速度は200m/分とし、実験結果を下記の表1に示した。
【0079】
【表1】
【0080】
上記表1の結果から分かるように、実施例1~6の場合、ボイリングテストにおいて良好な結果を示し、高温耐水性に優れていることが確認される。
【0081】
一方、実施例1~6と比較例2~4のフィルムサンプルを用いて、1時間、3時間、5時間、10時間、及び20時間の間、90℃の水分と接触させた後のそれぞれのフィルムサンプルの酸素透過度(cc/m2・day)を測定し、その結果を下記の表2に示した。
【0082】
【表2】
【0083】
上記表2の結果から分かるように、本発明による実施例1~6の場合は、長時間経過後も、酸素透過度が殆ど変わらないことが確認されるものの、比較例2~4の場合は、経時により酸素透過度が急激に増加することが確認される。これは、本発明に係る多重積層フィルムが有する優れた高温耐水性と、それによる酸素遮断維持力を直接的に裏付ける結果として解釈される。

図1
図2