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特許7022278フィルタープレスの浸透圧脱水方法及び浸透圧脱水システム
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  • 特許-フィルタープレスの浸透圧脱水方法及び浸透圧脱水システム 図1
  • 特許-フィルタープレスの浸透圧脱水方法及び浸透圧脱水システム 図2
  • 特許-フィルタープレスの浸透圧脱水方法及び浸透圧脱水システム 図3
  • 特許-フィルタープレスの浸透圧脱水方法及び浸透圧脱水システム 図4
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-02-09
(45)【発行日】2022-02-18
(54)【発明の名称】フィルタープレスの浸透圧脱水方法及び浸透圧脱水システム
(51)【国際特許分類】
   B01D 25/12 20060101AFI20220210BHJP
   C02F 11/122 20190101ALI20220210BHJP
【FI】
B01D25/12 U
C02F11/122
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2018183175
(22)【出願日】2018-09-28
(65)【公開番号】P2020049452
(43)【公開日】2020-04-02
【審査請求日】2020-08-26
(73)【特許権者】
【識別番号】000197746
【氏名又は名称】株式会社石垣
(72)【発明者】
【氏名】渡邊 行宣
(72)【発明者】
【氏名】福林 靖裕
【審査官】目代 博茂
(56)【参考文献】
【文献】特公平07-004490(JP,B2)
【文献】特開昭58-098199(JP,A)
【文献】特開昭58-098200(JP,A)
【文献】特開昭50-015351(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2001/0021428(US,A1)
【文献】特開2017-006844(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01D25/12-25/21
C02F11/00-11/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ろ布(8)を張設したろ過室(13)に有機性汚泥を供給して脱水ケーキを生成するフィルタープレスの脱水方法において、
汚泥をろ過室(13)に圧入してろ過する圧入工程(S2)と、
高濃度の溶液をろ過室(13)に供給する浸透圧脱水工程(S4)と、
溶液をろ過室(13)から排出する溶液排出工程(S5)と、
を有することを特徴とするフィルタープレスの浸透圧脱水方法。
【請求項2】
前記溶液として2~5%の塩分濃度の溶液を用いる
ことを特徴とする請求項1に記載のフィルタープレスの浸透圧脱水方法。
【請求項3】
前記溶液として海水を用いる
ことを特徴とする請求項2に記載のフィルタープレスの浸透圧脱水方法。
【請求項4】
前記圧入工程(S2)後、ろ過室(13)内に設けたダイアフラム(19)を膨張させる圧搾工程(S3)を有する
ことを特徴とする請求項1乃至請求項3の何れか一項に記載の浸透圧脱水方法。
【請求項5】
前記溶液排出工程(S5)は、ろ過室(13)内に設けたダイアフラム(19)を膨張させる
ことを特徴とする請求項1乃至請求項4の何れか一項に記載の浸透圧脱水方法。
【請求項6】
複数のろ板(4)を並列してろ板(4、4)間にろ過室(13)を形成し、ろ過室(13)に有機性汚泥を供給して脱水するフィルタープレスの浸透圧脱水システムにおいて、
ろ布(8)を張設したろ過室(13)に原液を圧入する原液供給口(14)と、
ろ布(8)で分離したろ液をろ過室(13)から排出するろ液排出口(15)と、
ろ過室(13)に高濃度の溶液を供給する溶液供給口(16)と、を備え、
ろ過室(13)の脱水ケーキが浸漬するように溶液を供給し、所定時間が経過した後、ろ過室(13)から溶液を排出する
ことを特徴とするフィルタープレスの浸透圧脱水システム。
【請求項7】
前記溶液として2~5%の塩分濃度の溶液を用いる
ことを特徴とする請求項6に記載のフィルタープレスの浸透圧脱水システム。
【請求項8】
前記溶液として海水を用いる
ことを特徴とする請求項7に記載のフィルタープレスの浸透圧脱水システム。
【請求項9】
前記ろ過室(13)に原液を圧入した後、ろ過室(13)に備えるダイアフラム(19)を膨張して圧搾脱水する
ことを特徴とする請求項6乃至請求項8の何れか一項に記載のフィルタープレスの浸透圧脱水システム。
【請求項10】
前記ろ過室(13)から溶液を排出した後、ダイアフラム(19)を膨張して圧搾脱水する
ことを特徴とする請求項9に記載のフィルタープレスの浸透圧脱水システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フィルタープレスのろ過室内で脱水された有機性汚泥の含水率低減方法に関して、脱水ケーキを高濃度の溶液で洗浄することにより、浸透圧の作用で脱水ケーキからさらに水分を排出する脱水ケーキの浸透圧脱水方法及び浸透圧脱水システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から脱水機は、ろ過室に供給した汚泥中の水分がろ材を透過することで脱水を行っている。フィルタープレスに関しては、ろ板間に形成したろ過室内に汚泥を供給し、ろ過室に設けたダイアフラムなどの圧搾機構により機械的に脱水し、脱水ケーキが生成される。
また、脱水ケーキ中に含まれる物質の回収や除去のために、圧搾工程後のろ過室に洗浄液を供給し、脱水ケーキを洗浄する技術が特許文献1に開示されている。
【0003】
また、汚泥をフィルタープレス等で機械的に脱水する方法以外では、汚泥を濃縮塩水に浸透膜を挟んで接触させ、浸透圧による作用を利用して汚泥中の水分を濃縮塩水に移行させ、汚泥を脱水する方法が特許文献2に開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特公平07-4490号公報
【文献】特開昭58-98199号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
下水処理場で発生するような活性汚泥、又は消化汚泥等は無数の微生物から構成されており、そこに含まれる多くの水分はその微生物の細胞膜の中に存在する。また、パルプ廃液汚泥や動植物性残渣、ビルピット汚泥等の生物由来汚泥においても、細胞膜の中に多くの水分が含まれている。
【0006】
上述するような有機性汚泥を脱水処理する場合、従来のフィルタープレスのように、機械的な圧搾脱水では細胞内の水分を取出すことができず、脱水ケーキの含水率を低下させるのには限界があった。
【0007】
特許文献1では、フィルタープレスで生成した脱水ケーキの洗浄を行うことで、脱水ケーキに含まれる物質を回収や除去することができるが、主に化学工業においてケーキ中の不純物を除去するもので、微生物が含有する水分までを除去できるものではない。
【0008】
また、特許文献2は機械的な脱水ではなく浸透圧の作用による脱水を行っているが、汚泥と濃縮塩水の接触面でしか浸透圧の作用が得られず、脱水の効率が低かった。また、加圧脱水を十分に行っていないため、水分を多く含んだ汚泥に対して大量の濃縮塩水を必要とし、脱水に長い時間が必要であった。
【課題を解決するための手段】
【0009】
ろ布を張設したろ過室に有機性汚泥を供給して脱水ケーキを生成するフィルタープレスの脱水方法において、汚泥をろ過室に圧入してろ過する圧入工程と、高濃度の溶液をろ過室に供給する浸透圧脱水工程と、溶液をろ過室から排出する溶液排出工程と、を有することで、微生物の細胞内の水分を排出し、圧搾脱水より短時間で低含水率の脱水ケーキを得ることができる。
【0010】
前記溶液として2~5%の塩分濃度の溶液を用いることで浸透圧の脱水効果が得られ、前記溶液として海水を用いることで、溶液を低コストで使用でき、排出した溶液はそのまま海へ放流することができるため、廃水処理のコストを削減できる。
【0011】
前記圧入工程後、ろ過室内に設けたダイアフラムを膨張させる圧搾工程を有することで、浸透圧により排出する水分量が減少し、使用する洗浄液の量が低減する。
【0012】
前記溶液排出工程は、ろ過室内に設けたダイアフラムを膨張させることで、溶液をさらに排出し、脱水ケーキの含水率を低減させることができる。
【0013】
複数のろ板を並列してろ板間にろ過室を形成し、ろ過室に有機性汚泥を供給して脱水するフィルタープレスの浸透圧脱水システムにおいて、ろ布を張設したろ過室に原液を圧入する原液供給口と、ろ布で分離したろ液をろ過室から排出するろ液排出口と、ろ過室に高濃度の溶液を供給する溶液供給口と、を備え、ろ過室の脱水ケーキが浸漬するように溶液を供給し、所定時間が経過した後、ろ過室から溶液を排出することで、微生物の細胞内の水分を排出し、圧搾脱水より短時間で低含水率の脱水ケーキを得ることができる。
【0014】
前記ろ過室に原液を圧入した後、ろ過室に備えるダイアフラムを膨張して圧搾脱水することで、浸透圧により排出する水分量が減少し、使用する洗浄液の量が低減する。
【0015】
前記ろ過室から溶液を排出した後、ダイアフラムを膨張して圧搾脱水することで、溶液をさらに排出し、脱水ケーキの含水率を低減させることができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、有機性汚泥を供給して脱水ケーキを生成するフィルタープレスの脱水方法において、ろ過室内の脱水ケーキを高濃度の溶液に浸すことで、浸透圧の作用が働き、効率よく脱水ケーキから水分を溶液に移すことができる。
溶液として海水を使用することで、ろ過室から排出した海水をそのまま海へ放流することができる。
汚泥は加圧脱水のように機械的な脱水を行った後に浸透圧脱水を行うため、少量の溶液で汚泥を浸漬させることができ、加圧脱水より短時間で低含水率の脱水ケーキを得ることができる。
フィルタープレスのろ過室を利用すれば、洗浄に利用した溶液を容易に排出できる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明に係るフィルタープレスの側断面図である。
図2】同じく、ろ布を吊設するろ板の正面図である。
図3】同じく、フィルタープレスの略平面図である。
図4】同じく、並列したろ板の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
図1はフィルタープレスの側断面図である。
この発明で用いるフィルタープレスは、フロントフレーム1とリア―フレーム2に一対のレール3が橋架してあり、レール3上に多数のろ板4・・・が支架してある。並列したろ板4は、フィルタープレート4aとダイアフラム19を張設したダイアフラム板4bが交互に配設してある。
【0019】
並列したろ板4は移行チェーン5で連結してあり、ろ板4、4間を一定の間隔に開板できるようにしてある。リア―フレーム2に配設した油圧シリンダー6が、並列したろ板4の後端部のムーバブルヘッド7に連結してあり、油圧シリンダー6で並列したろ板4を開閉させる。ろ板4、4間には、一対のろ布8、8を図示しないチェーン等で吊設している。
リア―フレーム2の上部にろ布駆動機9を配設し、ろ布駆動機9がフロントフレーム1とリア―フレーム2の上部に支架したろ布昇降用のスライドシャフト10に連動連結してある。スライドシャフト10はろ布8を吊設したチェーン等を連結し、スライドシャフト10が駆動することでろ布が昇降する。よって、ろ布駆動機9を駆動することでろ布8が昇降する。
並列したろ板4の下方にろ布洗浄排水を受けるドリッピングパン11が配設してある。
【0020】
図2はろ布を吊設するろ板の正面図である。
ろ板4の中央部に凹面状のろ過床12が形成してあり、ろ板4を閉板した時にろ板4の前面に吊設したろ布8、8間にろ過室13が形成される。ろ板4の上部にろ過室13を連通する原液供給口14が設けてある。原液供給口14からろ過室13に原液を供給し、供給した原液をろ過床12に張設したろ布8で固液分離を行う。
【0021】
原液供給口14はろ板4を貫通して開口し、並列したろ板4を閉板した時に、前後のろ板4、4の原液供給口14が連通する。
また、ろ板4下部一方の側壁部にはろ板4を貫通するろ液排出口15を開口し、ろ板4下部他方の側壁部にはろ板4を貫通する溶液供給口16を開口する。ろ板4を閉板した時には、並列したろ板4のろ液排出口15及び溶液供給口16がそれぞれ連通する。
ろ過床12の下部には、ろ液排出口15に連通するろ液排出路17を形成する。また、同様に溶液供給口16に連通する溶液供給通路18を形成する。
【0022】
ろ過室13で脱水が完了した脱水ケーキは、並列したろ板4を開板して、ろ布8を下方に走行させて排出する。その他、脱水ケーキの排出は、ろ布8を振動させて排出するなど、公知の技術を用いて排出してよい。
ろ板4下部には図示しないろ布洗浄ノズルが追設してあり、ろ布8に洗浄水を噴射して、目詰まりしたろ布8を走行させながら再生する。その他、ろ布8の洗浄には公知の技術が利用できる。
【0023】
図3はフィルタープレスの略平面図、図4は並列したろ板の断面図である。
ダイアフラム板4bは、ろ過床12に膨張自在なダイアフラム19を張設している。そして、ダイアフラム板4bには図示しない圧力水パイプを連結している。圧力水パイプでダイアフラム19に圧力水を供給することでダイアフラム19を膨張させ、ろ過室13の脱水ケーキを圧搾脱水する。
【0024】
フィルタープレート4aとダイアフラム板4bの上部には原液供給口14が貫通して形成している。
複数のろ板4が並列することで、各ろ板4の原液供給口14、ろ液排出口15、溶液供給口16がそれぞれ連通し、原液の流路、ろ液の流路、溶液の流路が形成される。
ろ布8で分離されたろ液は、ろ過室13からろ液排出通路17を通ってろ液排出口15へ流出し、フィルタープレスから排出される。
そして、浸透圧脱水の際には溶液供給口16から供給した溶液が溶液供給通路18を通ってろ過室13に流入し、脱水ケーキの浸透圧脱水を行う。
【0025】
原液供給口14には弁Vaを備えた原液供給管20を接続し、原液供給ポンプ21によって原液を供給する。また、ろ液排出口15には弁Vbを備えたろ液排出管22を接続し、溶液供給口16には弁Vcを備えた溶液供給管23を接続し、溶液供給ポンプ24によって溶液を供給する。
【0026】
本発明の浸透圧脱水で使用する溶液は、高濃度の溶液を使用する。
有機性汚泥、例えば下水汚泥を脱水して生成された脱水ケーキは多くの微生物を含有しているため、脱水ケーキに高濃度の溶液を接触させることで、浸透圧の作用により微生物の細胞膜から水分が排出される。すなわち、脱水ケーキを高濃度の溶液に浸漬することで、脱水ケーキの含水率をさらに低下させることができる。
高濃度の溶液は、塩水、海水などが利用に適しており、2~5%の塩分濃度であれば十分な浸透圧で微生物の細胞膜から水分を排出することができる。
【0027】
細胞膜のような半透膜、すなわち溶媒だけを透す膜で隔てられた2室に濃度の異なる2つの溶液があると、濃度の低い溶液から濃度の高い溶液に溶媒分子が移動する。
これは、細胞膜を通過する溶媒分子の数が、高濃度溶液中の溶媒分子よりも、低濃度溶液中の溶媒分子の方が多くなることによって起こる。
結果として、溶媒は溶質濃度の高い溶液の方へ移動し、濃度が平衡状態に達するまで続く。
【0028】
脱水ケーキを形成する微生物には細胞内に低濃度の水分を含んでいるため、高濃度の溶液を使用すると、微生物内の低濃度の水分が細胞膜を通過して高濃度の溶液へ移動する。従って、微生物で形成される脱水ケーキから水分が排出され、より水分の含有量の少ない脱水ケーキが得られる。なお、本発明は脱水ケーキが有機性汚泥から形成されるものであれば浸透圧の効果が得られる。
【実施例
【0029】
本発明における脱水ケーキの浸透圧脱水方法は、フィルタープレスを用いて以下のように運転が行われる。
【0030】
閉板工程(S1)
リア―フレーム2に配設した油圧シリンダー6によって、並列して配設しているろ板4を閉板し、締め付け、多数のろ過室13を形成すると共に、原液供給口14を連結して原液供給路を形成する。このとき、原液供給管20の弁Vaと溶液供給管23の弁Vcは閉じ、ろ液排出管22の弁Vbは開いている。
【0031】
圧入工程(S2)
原液供給管20に配設している弁Vaを開くと共に、原液供給ポンプ2を起動する。原液は原液供給管20から原液供給口14を介し、ろ過室13に配設されたろ布8、8間に圧入される。原液は各ろ過室13内に十分に行き渡り、ろ過室13に張設されたろ布8によって固液分離され、圧入圧力によるろ過作用が進行する。ろ布8を透過して固液分離されたろ液は、ろ過室13からフィルタープレート4a、ダイアフラム板4bのろ過床12に形成されたろ液排出通路17を介してろ液排出口15へ流出する。ろ液排出口15へ流出したろ液は、ろ液排出口15からろ液排出管2を通り、外部へ排出される。
圧入工程S2は予め定められた一定時間の間継続する。ろ過室13内は固形分が蓄積し、脱水ケーキを形成する。
【0032】
圧搾工程(S3)
一定時間、原液の圧入を行った後、原液供給ポンプ21を停止し、弁Vaを閉じる。その後、圧力水パイプから供給した圧力水によりろ過室13内のダイアフラム19を膨張させる。ダイアフラム19はろ過室13内で膨張し、脱水ケーキに対して圧搾を行い、脱水ケーキに含まれる水分をさらに排出する。圧搾工程S3は予め定められた一定時間の間継続する。
【0033】
浸透圧脱水工程(S4)
圧搾工程S3終了後、圧力水の供給を停止し、ろ液排出管22の弁Vbを閉止する。
次に溶液供給管23の弁Vcを開き、溶液供給ポンプ24を駆動させ、溶液をろ過室13内に供給する。この時、ダイアフラム19から圧力水を少量排出する。
溶液は溶液供給管23から溶液供給口16を通り、溶液供給口16からろ板4のろ過床12に連通した溶液供給通路18を介してろ過室13に供給される。
溶液は、ろ過室13の脱水ケーキがすべて浸漬するようにろ過室13上部まで供給する。溶液を所定量だけ供給した後、弁Vcを閉止して溶液供給ポンプ24を停止する。
【0034】
ここで、下水汚泥の脱水ケーキに多く含有されている微生物は、圧搾工程S3では排出できなかった水分を細胞内に含んでいる。
浸透圧脱水には高濃度の溶液を用いるため、溶液に浸漬した微生物は、浸透圧の作用で細胞膜から水分が外部へ排出される。従って、高濃度の溶液で浸透圧脱水することで、脱水ケーキからさらに水分を取り除くことができる。
また、溶液を供給し、所定時間だけ脱水ケーキに浸漬することで、浸透圧が十分に作用し脱水ケーキの含水率を低下させることができる。
【0035】
溶液排出工程(S5)
ろ過室13に溶液を供給し、所定時間が経過した後に溶液を排出する。ろ液排出管22の弁Vbを開くことで、ろ液排出通路17からろ液排出管22を通って浸透圧脱水に使用した溶液を排出する。この時、ダイアフラム19に圧力水を供給してダイアフラム19を膨張させると、溶液を効率よく排出できる。溶液は、浸透圧の作用で脱水ケーキを形成する微生物から排出された水分と混ざった状態で排出される。浸透圧脱水前の脱水ケーキと比較すると、浸透圧脱水後の脱水ケーキは浸透圧の作用で微生物から排出された水分だけ、含水率が低下している。
洗浄液排出後、必要に応じて溶液供給管23をブロワーに接続し、エアーブローにより残留した水分を排出してもよい。
【0036】
排出した溶液は、逆浸透装置や天日乾燥などで濃縮し、浸透圧脱水に再利用できる。なお、海水を溶液の代わりに使用すれば、排出した海水をそのまま海へ放流することもできる。
【0037】
開板工程(S6)
溶液の排出を行った後、ダイアフラム19に供給した圧力水を排出する。その後、油圧シリンダーを収縮させ、ろ板を一定間隔で開板する。開板したろ過室13内のケーキは、ろ布駆動機によりろ布8を昇降させることで下方に排出する。ろ布8を昇降して脱水ケーキを排出後、閉板工程S1に戻って再び脱水を行うためにろ板を閉板する。
【産業上の利用可能性】
【0038】
本発明は有機性汚泥、例えば活性汚泥、消化汚泥、パルプ廃液汚泥、動植物性残渣、ビルピット汚泥などの細胞膜内に水分を多く含んだ汚泥を対象とした浸透圧脱水において、高濃度の溶液を用いることで、脱水ケーキに含まれる水分をさらに排出する。ろ過室13で脱水した脱水ケーキに高濃度の溶液を浸漬させることで更なる脱水効果が得られるため、フィルタープレスの構成は本実施例に限定されるものでなく、本発明は公知のフィルタープレスに適用できる。
【符号の説明】
【0039】
4 ろ板
8 ろ布
13 ろ過室
14 原液供給口
15 ろ液排出口
16 溶液供給口
19 ダイアフラム
S2 圧入工程
S3 圧搾工程
S4 浸透圧脱水工程
S5 溶液排出工程
図1
図2
図3
図4