(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-02-09
(45)【発行日】2022-02-18
(54)【発明の名称】シクラニリプロール又はその塩を含有する有害生物防除用固形組成物
(51)【国際特許分類】
A01N 25/30 20060101AFI20220210BHJP
A01N 43/56 20060101ALI20220210BHJP
A01N 25/00 20060101ALI20220210BHJP
A01N 25/08 20060101ALI20220210BHJP
A01N 25/12 20060101ALI20220210BHJP
A01P 7/04 20060101ALI20220210BHJP
A01P 17/00 20060101ALI20220210BHJP
【FI】
A01N25/30
A01N43/56 D
A01N25/00 101
A01N25/08
A01N25/12
A01P7/04
A01P17/00
(21)【出願番号】P 2018559459
(86)(22)【出願日】2017-12-25
(86)【国際出願番号】 JP2017046435
(87)【国際公開番号】W WO2018123971
(87)【国際公開日】2018-07-05
【審査請求日】2020-12-18
(31)【優先権主張番号】P 2016253792
(32)【優先日】2016-12-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000000354
【氏名又は名称】石原産業株式会社
(72)【発明者】
【氏名】佐野 光夫
(72)【発明者】
【氏名】武田 千秋
(72)【発明者】
【氏名】岡田 隆士
(72)【発明者】
【氏名】▲濱▼本 卓
【審査官】高橋 直子
(56)【参考文献】
【文献】特開2003-286106(JP,A)
【文献】特開2015-063467(JP,A)
【文献】特公昭40-008920(JP,B2)
【文献】特開2010-150227(JP,A)
【文献】国際公開第2010/087380(WO,A1)
【文献】特開2011-057629(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01N 25/30
A01N 43/56
A01N 25/00
A01N 25/08
A01N 25/12
A01P 7/04
A01P 17/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
シクラニリプロール又はその塩とアニオン性界面活性剤が極性溶媒に溶解した溶液(成分(1))、吸油性粉末(成分(2))、及び粒状担体(成分(3))を含有し;前記アニオン性界面活性剤が、ポリオキシエチレンアリールフェニルエーテル硫酸エステル
塩及びポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸エステル
塩から成る群から選択される少なくとも一種であり;成分(1)が、成分(2)及び成分(3)の少なくとも一方に吸収又は付着されていることを特徴とする有害生物防除用固形組成物。
【請求項2】
極性溶媒が、N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、N,N-ジメチルオクタンアミド、N,N-ジメチルデカンアミド、N-メチル-2-ピロリドン、N-エチル-2-ピロリドン、N-オクチル-2-ピロリドン、ジメチルスルホキシド、γ-ブチロラクトン、シクロヘキサノン、二塩基酸エステル、プロピレングリコール、プロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、テトラヒドロフルフリルアルコール、ベンジルアルコール、n-ブタノール、2-エチルヘキサノール及びシクロヘキサノールから成る群から選択される少なくとも一種である請求項
1に記載の組成物。
【請求項3】
成分(2)と成分(3)が、バインダーで結合されている、請求項1
又は2のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項4】
成分(2)又は成分(3)に吸収又は付着した成分(1)が、液体の状態で存在する請求項1乃至
3のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項5】
成分(3)が、種子、鉱物質粒状担体及び糖類から成る群から選択される少なくとも一種である請求項1乃至
4のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項6】
成分(3)が、鉱物質粒状担体である請求項1乃至
5のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項7】
鉱物質粒状担体が、珪砂、珪石、軽石及び炭酸カルシウムから成る群から選択される少なくとも一種である請求項
6に記載の組成物。
【請求項8】
剤型が、育苗ポット、育苗箱、セル成型育苗トレー又はペーパーポット内の苗又は土壌への処理剤である請求項
6または
7に記載の組成物。
【請求項9】
剤型が、粒剤、粉剤又は水和剤である請求項1乃至
8のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項10】
請求項1乃至
9のいずれか1項に記載の組成物を、有害生物又はそれが発生する場所に施用して有害生物を防除する方法。
【請求項11】
請求項
8に記載の組成物を苗に処理し、植物の苗を保護する方法。
【請求項12】
育苗ポット、育苗箱苗、セル成型育苗トレー又はペーパーポット内の苗又は土壌に処理する請求項
11に記載の方法。
【請求項13】
請求項1乃至
9のいずれか1項に記載の組成物を、種子が播かれた土壌又は苗が植えられた土壌に処理し、有害生物を防除する方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シクラニリプロール又はその塩を有効成分として含む有害生物防除用固形組成物、およびこの組成物を種子又は苗に処理することにより、発芽又は移植後の植物を有害生物から保護する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
シクラニリプロール(cyclaniliprole)は一般名であり、その化学名は3-ブロモ-N-[2-ブロモ-4-クロロ-6-[[(1-シクロプロピルエチル)アミノ]カルボニル]フェニル]-1-(3-クロロピリジン-2-イル)-1H-ピラゾール-5-カルボキサミドである。この化合物は、殺虫剤として有用なアントラニルアミド系化合物であり、特許文献1に化合物No.16として記載されている。しかしながら、特許文献1には、この化合物を種子又は苗に処理することにより、発芽又は移植後の植物を有害生物から保護する方法については何ら具体的に開示されていない。
【0003】
特許文献2には、シクラニリプロールを包含する一般式で示されたカルボキサミド殺節足動物剤と特定の界面活性成分を含む混合物を溶剤に溶解させて固形キャリアに浸潤させた後、溶剤を蒸発させることにより得た固形キャリアの粒子を含有する固形殺節足動物組成物が記載されている。また、この組成物を粉剤又は粉末として種子及び他の繁殖体にコーティングすることが記載されている。しかしながら、該組成物は、特定のアニオン性界面活性剤を使用していない点で、本発明の有害生物防除用固形組成物とは異なる。
【0004】
特許文献3には、シクラニリプロールを包含する一般式化合物と、チアジニル等の植物病害防除活性化合物と、スメクタイト鉱物を含む増量剤と、水溶性結合剤とを含有する農薬粒剤組成物を育苗箱に施用する害虫の防除方法が記載されている。また、特許文献4には、コーティング用組成物と農薬から成る繁殖体コーティング用組成物の農薬有効成分化合物として、シクラニリプロールを包含する一般式化合物が適用できることが記載されている。
【0005】
しかしながら、特許文献3及び特許文献4に記載の組成物は、シクラニリプロールと特定のアニオン性界面活性剤が極性溶媒に溶解した溶液を組成物中に含有していない点で、本発明の有害生物防除用固形組成物とは異なる。
【0006】
特許文献5には、スルホニルウレア化合物と、ポリオキシエチレンアリールフェニルエーテル硫酸エステル塩やポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸エステル塩のようなアニオン系界面活性剤を含む固形農薬組成物が記載されている。しかしながら、有効成分化合物とアニオン性界面活性剤が極性溶媒に溶解した溶液を適用したものではない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】国際公開第2005/077934号公報
【文献】国際公開第2009/002856号公報
【文献】国際公開第2011/083709号公報
【文献】国際公開第2015/187788号公報
【文献】国際公開第2016/017547号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
従来の有害生物防除剤は、スペクトラム及び効果においてそれぞれ特徴を有するが、反面、特定の病害虫に対して効果が充分でなかったり、残効性が短く一定期間の効果を期待できなかったりして、施用場面によっては、実用上充分な防除効果を示さないことがある。また、防除効果において優れたものであっても、施用作業の省力化や少ない処理薬量によって高い防除効果をあげることが求められる場合がある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、上記課題を解決すべく検討を重ねた結果、シクラニリプロール又はその塩とアニオン性界面活性剤が極性溶媒に溶解した溶液(成分(1))、吸油性粉末(成分(2))、及び粒状担体(成分(3))を含有し;前記アニオン性界面活性剤が、ポリオキシエチレンアリールフェニルエーテル硫酸エステル塩、ポリオキシエチレンアリールフェニルエーテルリン酸エステル塩、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル硫酸エステル塩、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテルリン酸エステル塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸エステル塩及びポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸エステル塩から成る群から選択される少なくとも一種であり;成分(1)が、成分(2)及び成分(3)の少なくとも一方に吸収又は付着されていることを特徴とする有害生物防除用固形組成物を水中で使用すると、シクラニリプロールの溶出性が高くなり、シクラニリプロールが水分等を介して土壌等に拡散滞留し易くなるため、簡便かつ安全に少ない処理薬量でも予想以上の高い防除効果をあげることができることの知見を得、本発明を完成した。
【0010】
即ち、本発明は、シクラニリプロール又はその塩とアニオン性界面活性剤が極性溶媒に溶解した溶液(成分(1))、吸油性粉末(成分(2))、及び粒状担体(成分(3))を含有し;前記アニオン性界面活性剤が、ポリオキシエチレンアリールフェニルエーテル硫酸エステル塩、ポリオキシエチレンアリールフェニルエーテルリン酸エステル塩、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル硫酸エステル塩、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテルリン酸エステル塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸エステル塩及びポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸エステル塩から成る群から選択される少なくとも一種であり;成分(1)が、成分(2)及び成分(3)の少なくとも一方に吸収又は付着されていることを特徴とする有害生物防除用固形組成物;該組成物を、有害生物又はそれが発生する場所に施用して有害生物を防除する方法;並びに、該組成物を苗に処理し、植物の苗を保護する方法に関する。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、従来の薬剤の散布方法と比べ、散布作業の省力化や、薬剤の飛散防止などの観点から環境等に対する安全性の向上が期待できるが、更に加えて、少ない処理薬量によっても予想以上の高い防除効果をあげることができる。
【発明を実施するための形態】
【0012】
シクラニリプロールの塩としては、例えばナトリウム塩、カリウム塩、カルシウム塩、アンモニウム塩のような無機塩、ジメチルアミン塩のような有機塩基との塩が挙げられる。シクラニリプロールの塩は、上記特許文献1に記載の方法に従って製造することができる。
【0013】
本発明において使用されるアニオン性界面活性剤は、ポリオキシエチレンアリールフェニルエーテル硫酸エステル塩、ポリオキシエチレンアリールフェニルエーテルリン酸エステル塩、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル硫酸エステル塩、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテルリン酸エステル塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸エステル塩及びポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸エステル塩から成る群から選択される少なくとも一種である。それらの中でも、ポリオキシエチレンアリールフェニルエーテル硫酸エステル塩及びポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸エステル塩から成る群から選択される少なくとも一種が望ましく、ポリオキシエチレンアリールフェニルエーテル硫酸エステル塩が最も望ましい。なお、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸エステル塩のアルキル部分の炭素数は8~12であるのが望ましい。ポリオキシエチレンアリールフェニルエーテル硫酸エステル塩としては、例えば、ソルポールT-10SPG(東邦化学工業社製商品名)、ソルポールT-15SPG(東邦化学工業社製商品名)、ソルポールT-20SPG(東邦化学工業社製商品名)、ソルポール7920P(東邦化学工業社製商品名、)、ニューカルゲン EP-72PG(竹本油脂社製商品名)、ニューカルゲン EP-75PG(竹本油脂社製商品名)、ニューカルゲン EP-77PG(竹本油脂社製商品名)、ソプロホール(Soprophor) 4D/384(ソルベイ日華社製商品名)等が挙げられる。
本発明において使用されるアニオン性界面活性剤は、硫酸エステル塩やリン酸エステル塩とすることにより、ノニオン系界面活性剤をアニオン化したものであり、塩としては、ナトリウム塩やカリウム塩やアンモニウム塩が挙げられる。
【0014】
本発明において使用される「極性溶媒」は、シクラニリプロール又はその塩と前記したアニオン性界面活性剤を溶解できるものであれば、何れのものでもよいが、20℃において、シクラニリプロールを5000ppm以上、好ましくは1000ppm以上溶解させることができるものであるのが望ましい。具体的には、N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、N,N-ジメチルオクタンアミド、N,N-ジメチルデカンアミド、N-メチル-2-ピロリドン、N-エチル-2-ピロリドン、N-オクチル-2-ピロリドン、ジメチルスルホキシド、γ-ブチロラクトン、シクロヘキサノン、二塩基酸エステル、プロピレングリコール、プロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、テトラヒドロフルフリルアルコール、ベンジルアルコール、n-ブタノール、2-エチルヘキサノール及びシクロヘキサノールから成る群から選択される少なくとも一種であるのが望ましい。それらの中でも、N-メチル-2-ピロリドンがさらに望ましい。また、成分(1)中で、シクラニリプロール又はその塩の量は、極性溶媒100重量部に対して50重量部以下、好ましくは40重量部以下、さらに好ましくは30重量部以下であるのが望ましい。また、アニオン性界面活性剤の量は、極性溶媒100重量部に対して60重量部以下、好ましくは50重量部以下、さらに好ましくは40重量部以下であるのが望ましい。
【0015】
本発明において、成分(2)の「吸油性粉末」とは、成分(1)を吸収又は付着させるための空隙又は表面を有する粉末を意味する。吸油性粉末の粒子径は、通常粒状担体の粒子径よりも小さいものであり、体積平均粒子径で150μm以下が好ましく、0.01μm~150μmの範囲内であるのがより好ましく、0.1μm~150μmの範囲内であるのがさらに好ましい(「範囲内」とは、その境界の値も含む。以下同様)。また、成分(2)の吸油性粉末は、成分(1)を吸収又は付着できる吸油能力を有するものが望ましく、またSiO2の含有量の高いものであるのが望ましい。特に望ましい吸油性粉末の例としては、ゼオライト、モンモリロナイト、珪藻土、パーライト、シリカゲル、ベントナイト、孔質アルミナ、カオリナイト、タルク、ホワイトカーボン、活性白土、アタパルジャイト、バーミキュライト、セライト、ハイドロタルサイト、微粉末状に析出させた含水SiO2等が挙げられる。
【0016】
本発明において、成分(3)の「粒状担体」とは、成分(1)を吸収又は付着した成分(2)の吸油性粉末を表面に付着できるものである。成分(3)の粒状担体には成分(2)の吸油性粉末よりも粒子径が大きいものが含まれていることが望ましく、成分(3)の粒状担体の大部分(例えば、80重量%以上、望ましくは90重量%以上)が、200μmより大きい粒子径であることがより望ましい。成分(3)の粒状担体としては、例えば、種子、鉱物質担体及び糖類から成る群から選択される少なくとも一種が挙げられる。鉱物質担体としては、珪砂、珪石、軽石及び炭酸カルシウムから成る群から選択される少なくとも1種が挙げられる。また、糖類としては、グルコース、スクロース、デキストリン及びデンプンから成る群から選択される少なくとも1種が挙げられる。なお、鉱物質担体及び糖類は適宜、粒状物に成型してもよい。成分(1)と成分(2)の重量比は1:100~100:1、好ましくは1:50~50:1の範囲内であるのが望ましい。成分(2)と成分(3)の重量比は1:2000~1:5、好ましくは1:1000~1:5の範囲内にあるのが望ましい。また、成分(3)の粒状担体自体が空隙を有し、油状成分、例えば、成分(1)を吸収又は付着できるものであってもよい。
【0017】
本発明の有害生物防除用固形組成物(以下本発明組成物ともいう)において、成分(1)は、吸油性粉末(成分(2))及び粒状担体(成分(3))のうちの少なくとも一方に吸収又は付着されている。例えば、成分(2)中の空隙又は表面に成分(1)を吸収又は付着させた後、このもので成分(3)の表面を被覆して、本発明組成物を調製することができる。その際、成分(1)は成分(3)にも吸収又は付着させることができる。また、成分(3)に成分(1)を吸収又は付着させた後、成分(2)で被覆して、本発明組成物を調製することができる。その際、成分(1)は成分(2)にも吸収又は付着させることができる。さらに、成分(1)、成分(2)及び成分(3)を混合し、本発明組成物を調製することができる。その際、成分(1)は成分(2)にも成分(3)にも吸収又は付着させることができる。これら方法で本発明組成物を調製する際には、バインダーを用いて、成分(2)と成分(3)を結合させたものに、成分(1)を吸収又は付着させてもよい。本発明組成物においては、成分(1)が成分(2)又は成分(3)に吸収又は付着した後も、成分(1)から極性溶媒を蒸発させず、液体の状態で存在するのが望ましい。
【0018】
上記バインダーとしては、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、ヘキシレングリコールのような低級アルキレングリコール;ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコールのようなポリアルキレングリコール;スクロースのような糖質;マンニトールのような糖質誘導体;デンプン;デキストリンのような変性デンプン;ポリビニルアルコール、加水分解ポリ酢酸ビニル、ポリビニルメチルエーテル、ポリビニル-ピロリジノン等の人工ポリマー;カルボキシメチルセルロース塩やリグニンスルホン酸塩等の高分子界面活性剤等を用いることができる。これらのバインダーの中でも、人工ポリマーを用いるのが望ましく、その中でもポリビニルアルコールを用いるのが望ましい。バインダーは成分(3)の粒状担体100重量部に対して20重量部以下、好ましくは10重量部以下であるのが望ましい。
【0019】
本発明組成物は、調製時に粒状の形状になり、そのまま粒剤として使用できる。また、粒状担体として種子を使用した場合はそのまま使用することができる。一方、必要に応じ農薬補助剤と共に粉剤、粒剤、水和剤等の種々の形態に製剤して使用することもできる。粉剤又は水和剤に製剤する場合は、本発明組成物を適宜粉砕してもよい。それらの製剤におけるシクラニリプロール又はその塩の配合割合は、組成物全重量(100重量部)に対して通常0.01~98重量部、望ましくは0.1~95重量部である。それらの製剤は、そのまま使用するか、又は水等の希釈剤で所定濃度に希釈して使用することができる。
【0020】
ここにいう農薬補助剤としては、増量剤、乳化剤、分散剤、展着剤、浸透剤、湿潤剤、増粘剤、消泡剤、安定剤、凍結防止剤等が挙げられ、必要により適宜添加すればよい。増量剤としては、固体性の増量剤と液体性の増量剤に分けられ、固体性の増量剤としては、活性炭、大豆粉、小麦粉、木粉、魚粉、粉乳等の動植物性粉末;硫黄粉末;無水硫酸ナトリウム等が挙げられ、液体性の増量剤としては、水;アセトン、メチルエチルケトン等のケトン類;ジオキサン、テトラヒドロフラン等のエーテル類;ケロシン、灯油等の脂肪族炭化水素類;キシレン、トリメチルベンゼン、テトラメチルベンゼン、シクロヘキサン、ソルベントナフサ等の芳香族炭化水素類;クロロホルム、クロロベンゼン等のハロゲン化炭化水素類;酢酸エチル、脂肪酸のグリセリンエステル等のエステル類;アセトニトリル等のニトリル類;大豆油、トウモロコシ油等の植物油等が挙げられる。
【0021】
本発明組成物の処理対象としては、農園芸用に栽培される植物の種子又は苗等が挙げられる。種子への処理は、前記粒状担体として種子を選択する態様で行ってもよい。ここでいう種子又は苗としては、粒状担体として適用できる種子の他、種苗、種芋、塊茎、球根、球茎、鱗茎、むかご、接木用植物片、幼苗等も含まれる。農園芸用に栽培される植物としては、例えばイネ、オオムギ、コムギ、エンバク、ライムギ、オートムギ、トウモロコシ、ソバ等の禾穀類;ジャガイモ、サツマイモ、ダイズ、アズキ、インゲン、エンドウ、ソラマメ、ラッカセイ等のイモ、豆類;クワ、タバコ、チャ、テンサイ、サトウキビ、イグサ、ワタ、アマ、アサ、ナタネ、ゴマ、ベニバナ、ホップ、チョウセンニンジン、ゼラニウム、オリーブ等の工芸作物(industrial crops);トマト、ナス、トウガラシ、ピーマン、キュウリ、メロン、スイカ、カボチャ、ダイコン、ハクサイ、キャベツ、カリフラワー、タマネギ、ネギ、ラッキョウ、ニラ、ニンニク、アスパラガス、ゴボウ、シュンギク、フキ、アーチチョーク、ニンジン、セロリ、パセリ、セリ、ミツバ、ホウレンソウ、サトイモ、ヤマイモ、クワイ、ハス、ショウガ、ミョウガ、イチゴ、オクラ等の野菜;ヒマワリ、カーネーション、キク、ラン等の草花;等が挙げられる。
【0022】
本発明組成物の処理方法としては、例えば以下のものが挙げられる。
(1)本発明組成物を、育苗ポット、育苗箱、セル成型育苗トレー又はペーパーポット中の苗に注入、散布又は投下する方法。
(2)本発明組成物を、土壌、育苗土、植穴に詰める土等に注入、散布、投下又は混和する方法。
(3)本発明組成物を、播き溝、植穴、うね等に注入、散布又は投下する方法。
【0023】
種子又は苗に処理する本発明組成物中のシクラニリプロール又はその塩の量の範囲は、保護すべき植物の種類、薬剤の処理方法、防除対象の有害生物の種類等により異なり一概に規定できないが、種子に処理する場合、種子100Kg当り通常1g~5000gであり、望ましくは5g~1000g、さらに望ましくは60g~80gである。
また、苗に処理する場合、本発明組成物中のシクラニリプロール又はその塩の量は、苗1株当り一般に0.01mg~500mgであり、望ましくは0.1mg~100mgである。また、処理面積1ヘクタール当り一般に1g~5000gであり、望ましくは5g~1000gである。また、植穴等に処理する場合、例えばナス、キュウリ、トマト、キャベツ、メロン等の植物の苗1株当り一般に0.1mg~100mgであり、望ましくは5mg~20mgである。
【0024】
本発明によって防除される有害生物としては、植物が生育する過程で、その植物に害を及ぼすおそれがある食害性昆虫や吸汁性昆虫等である。例えばツマグロヨコバイ、ヒメヨコバイ等のヨコバイ類;トビイロウンカ、セジロウンカ、ヒメトビウンカ等のウンカ類;タバココナジラミ、オンシツコナジラミ等のコナジラミ類;モモアカアブラムシ、ワタアブラムシ、ニセダイコンアブラムシ、ジャガイモヒゲナガアブラムシ、ムギミドリアブラムシ、ムギクビレアブラムシ等のアブラムシ類;クワコナカイガラムシ、ルビーロウムシ、サンホーゼカイガラムシ、ヤノネカイガラムシ等のカイガラムシ類;及びヒラズハナアザミウマ、ネギアザミウマ、チャノキイロアザミウマ、ミナミキイロアザミウマ、クロトンアザミウマ、ミカンキイロアザミウマ、イネクダアザミウマ等のアザミウマ類;キスジノミハムシ、コロラドハムシ、フタスジヒメハムシ、ドウガネブイブイ、マメコガネ等の甲虫類;コナガ、ヨトウムシ、ハスモンヨトウ、コドリンガ、タバコバッドワーム、マイマイガ、コブノメイガ、チャノコカクモンハマキ、タマナヤガ、カブラヤガ、アオムシ等のチョウ類等が挙げられる。
【0025】
本発明において、粒状担体(成分(3))として種子以外のものを用いた場合の組成物は、育苗ポット、育苗箱、セル成型育苗トレー又はペーパーポットに播種又は移植された種子又は苗に処理することができる。また、粒状担体として種子を用いた場合の組成物は、そのまま育苗ポット、育苗箱、セル成型育苗トレー又はペーパーポットに播種することができる。シクラニリプロール又はその塩は優れた浸透移行性を有しているので、本発明組成物を育苗箱等に処理すると、植物の根部から吸い上げられたシクラニリプロール又はその塩を効率的に植物体内に取り込ませることができる。従って、本発明組成物により、植物体を加害する害虫等の有害生物を効率的に防除可能となる。本発明組成物は、特に、育苗箱に播種されたイネの吸汁害虫防除に適用するのが望ましい。また、本発明組成物をイネの育苗箱処理に用いると、シクラニリプロール又はその塩は水分等を介して土壌等に拡散滞留する事で長期に薬効を持続させることができる。本発明組成物では、前記したシクラニリプロール又はその塩が水分等に溶出し易くなるため、効率的に薬効を得ることができる。ここでいう溶出とは、シクラニリプロール若しくはその塩単独、シクラニリプロール若しくはその塩及びアニオン系界面活性剤、又はシクラニリプロール若しくはその塩、アニオン系界面活性剤及び極性溶媒とが一緒になって吸油性粉末から乖離して、水層へ移行し溶解又は分散する或いは種子へ移行することを意味する。
【0026】
本発明組成物は、シクラニリプロール又はその塩以外の他の有害生物防除剤と混用・併用して使用することができる。混用は、本発明組成物の調製時であっても、種子又は苗に処理する時であってもよい。また、本発明組成物の調製時に他の有害生物防除剤を混用する場合は、他の有害生物防除剤を成分(1)~(3)の何れに加えて調製してもよい。他の有害生物防除剤としては、殺虫剤、殺ダニ剤、殺線虫剤或いは殺土壌害虫剤、殺菌剤、又はBT剤或いは昆虫病原ウイルス剤のような微生物農薬等が挙げられる。
【0027】
上記他の有害生物防除剤中の、殺虫剤、殺ダニ剤、殺線虫剤或いは殺土壌害虫剤の有効成分化合物(一般名;一部申請中を含む、又は日本植物防疫協会試験コード)としては、例えば、プロフェノホス(profenofos)、ジクロルボス(dichlorvos)、フェナミホス(fenamiphos)、フェニトロチオン(fenitrothion)、EPN、ダイアジノン(diazinon)、クロルピリホス(chlorpyrifos)、クロルピリホスメチル(chlorpyrifos‐methyl)、アセフェート(acephate)、プロチオホス(prothiofos)、ホスチアゼート(fosthiazate)、カズサホス(cadusafos)、ジスルホトン(dislufoton)、イソキサチオン(isoxathion)、イソフェンホス(isofenphos)、エチオン(ethion)、エトリムホス(etrimfos)、キナルホス(quinalphos)、ジメチルビンホス(dimethylvinphos)、ジメトエート(dimethoate)、スルプロホス(sulprofos)、チオメトン(thiometon)、バミドチオン(vamidothion)、ピラクロホス(pyraclofos)、ピリダフェンチオン(pyridaphenthion)、ピリミホスメチル(pirimiphos-methyl)、プロパホス(propaphos)、ホサロン(phosalone)、ホルモチオン(formothion)、マラチオン(malathion)、テトラクロルビンホス(tetrachlorvinphos)、クロルフェンビンホス(chlorfenvinphos)、シアノホス(cyanophos)、トリクロルホン(trichlorfon)、メチダチオン(methidathion)、フェントエート(phenthoate)、ESP、アジンホスメチル(azinphos-methyl)、フェンチオン(fenthion)、ヘプテノホス(heptenophos)、メトキシクロル(methoxychlor)、パラチオン(parathion)、ホスホカルブ(phosphocarb)、デメトン-S-メチル(demeton-S-methyl)、モノクロトホス(monocrotophos)、メタミドホス(methamidophos)、イミシアホス(imicyafos)、パラチオン-メチル(parathion-methyl)、テルブホス(terbufos)、ホスファミドン(phosphamidon)、ホスメット(phosmet)、ホレート(phorate)、ホキシム(phoxim)、トリアゾホス(triazophos)のような有機リン酸エステル系化合物;
【0028】
カルバリル(carbaryl)、プロポキスル(propoxur)、アルジカルブ(aldicarb)、カルボフラン(carbofuran)、チオジカルブ(thiodicarb)、メソミル(methomyl)、オキサミル(oxamyl)、エチオフェンカルブ(ethiofencarb)、ピリミカルブ(pirimicarb)、フェノブカルブ(fenobucarb)、カルボスルファン(carbosulfan)、ベンフラカルブ(benfuracarb)、ベンダイオカルブ(bendiocarb)、フラチオカルブ(furathiocarb)、イソプロカルブ(isoprocarb)、メトルカルブ(metolcarb)、キシリルカルブ(xylylcarb)、XMC、フェノチオカルブ(fenothiocarb)のようなカーバメート系化合物;
【0029】
カルタップ(cartap)、チオシクラム(thiocyclam)、ベンスルタップ(bensultap)、チオスルタップナトリウム(thiosultap-sodium)、チオスルタップジナトリウム(thiosultap-disodium)、モノスルタップ(monosultap)、ビスルタップ(bisultap)、シュウ酸水素チオシクラム(thiocyclam hydrogen oxalate)のようなネライストキシン誘導体;
【0030】
ジコホル(dicofol)、テトラジホン(tetradifon)、エンドスルファン(endosulfan)、ジエノクロル(dienochlor)、ディルドリン(dieldrin)のような有機塩素系化合物;
【0031】
酸化フェンブタスズ(fenbutatin oxide)、シヘキサチン(cyhexatin)のような有機金属系化合物;
【0032】
フェンバレレート(fenvalerate)、ペルメトリン(permethrin)、シペルメトリン(cypermethrin)、デルタメトリン(deltamethrin)、シハロトリン(cyhalothrin)、テフルトリン(tefluthrin)、エトフェンプロックス(ethofenprox)、フルフェンプロックス(flufenprox)、シフルトリン(cyfluthrin)、フェンプロパトリン(fenpropathrin)、フルシトリネート(flucythrinate)、フルバリネート(fluvalinate)、シクロプロトリン(cycloprothrin)、ラムダシハロトリン(lambda-cyhalothrin)、ピレスリン(pyrethrins)、エスフェンバレレート(esfenvalerate)、テトラメスリン(tetramethrin)、レスメスリン(resmethrin)、プロトリフェンブト(protrifenbute)、ビフェントリン(bifenthrin)、ゼータシペルメトリン(zeta-cypermethrin)、アクリナトリン(acrinathrin)、アルファシペルメトリン(alpha-cypermethrin)、アレスリン(allethrin)、ガンマシハロトリン(gamma-cyhalothrin)、シータシペルメトリン(theta-cypermethrin)、タウフルバリネート(tau-fluvalinate)、トラロメスリン(tralomethrin)、プロフルスリン(profluthrin)、ベータシペルメトリン(beta-cypermethrin)、ベータシフルトリン(beta-cyfluthrin)、メトフルトリン(metofluthrin)、フェノトリン(phenothrin)、フルメトリン(flumethrin)、デカメトリン(decamethrin)のようなピレスロイド系化合物;
【0033】
ジフルベンズロン(diflubenzuron)、クロルフルアズロン(chlorfluazuron)、テフルベンズロン(teflubenzuron)、フルフェノクスロン(flufenoxuron)、トリフルムロン(triflumuron)、ヘキサフルムロン(hexaflumuron)、ルフェヌロン(lufenuron)、ノバルロン(novaluron)、ノビフルムロン(noviflumuron)、ビストリフルロン(bistrifluron)、フルアズロン(fluazuron)のようなベンゾイルウレア系化合物;
【0034】
メトプレン(methoprene)、ピリプロキシフェン(pyriproxyfen)、フェノキシカルブ(fenoxycarb)、ジオフェノラン(diofenolan)のような幼若ホルモン様化合物;
ピリダベン(pyridaben)のようなピリダジノン系化合物;
【0035】
フェンピロキシメート(fenpyroximate)、フィプロニル(fipronil)、テブフェンピラド(tebufenpyrad)、エチプロール(ethiprole)、トルフェンピラド(tolfenpyrad)、アセトプロール(acetoprole)、ピラフルプロール(pyrafluprole)、ピリプロール(pyriprole)のようなピラゾール系化合物;
【0036】
イミダクロプリド(imidacloprid)、ニテンピラム(nitenpyram)、アセタミプリド(acetamiprid)、チアクロプリド(thiacloprid)、チアメトキサム(thiamethoxam)、クロチアニジン(clothianidin)、ニジノテフラン(nidinotefuran)、ジノテフラン(dinotefuran)、ニチアジン(nithiazine)のようなネオニコチノイド系化合物;
テブフェノジド(tebufenozide)、メトキシフェノジド(methoxyfenozide)、クロマフェノジド(chromafenozide)、ハロフェノジド(halofenozide)のようなヒドラジン系化合物;
【0037】
ピリダリル(pyridalyl)、フロニカミド(flonicamid)のようなピリジン系化合物;
スピロジクロフェン(spirodiclofen)、スピロメシフェン(spiromesifen)、スピロテトラマト(spirotetramat)のような環状ケトエノール系化合物;
【0038】
フルアクリピリム(fluacrypyrim)のようなストロビルリン系化合物;
【0039】
フルフェネリム(flufenerim)のようなピリジナミン系化合物;
【0040】
ジニトロ系化合物、有機硫黄化合物、尿素系化合物、トリアジン系化合物、ヒドラゾン系化合物、また、その他の化合物として、フロメトキン(flometoquin)、ブプロフェジン(buprofezin)、ヘキシチアゾクス(hexythiazox)、アミトラズ(amitraz)、クロルジメホルム(chlordimeform)、シラフルオフェン(silafluofen)、トリアザメイト(triazamate)、ピメトロジン(pymetrozine)、ピリミジフェン(pyrimidifen)、クロルフェナピル(chlorfenapyr)、インドキサカルブ(indoxacarb)、アセキノシル(acequinocyl)、エトキサゾール(etoxazole)、シロマジン(cyromazine)、1,3-ジクロロプロペン(1,3-dichloropropene)、ジアフェンチウロン(diafenthiuron)、ベンクロチアズ(benclothiaz)、ビフェナゼート(bifenazate)、プロパルギット(propargite)、クロフェンテジン(clofentezine)、メタフルミゾン(metaflumizone)、フルベンジアミド(flubendiamide)、シフルメトフェン(cyflumetofen)、クロラントラニリプロール(chlorantraniliprole)、シアントラニリプロール(cyantraniliprole)、シクラニリプロール(cyclaniliprole)、シエノピラフェン(cyenopyrafen)、ピリフルキナゾン(pyrifluquinazon)、フェナザキン(fenazaquin)、アミドフルメット(amidoflumet)、スルフルアミド(sulfluramid)、ヒドラメチルノン(hydramethylnon)、メタアルデヒド(metaldehyde)、リアノジン(ryanodine)、ベルブチン(verbutin)、クロロベンゾエート(chlorobenzoate)、チアゾリルシナノニトリル(thiazolylcinnanonitrile)、スルホキサフロル(sulfoxaflor)、フルエンスルホン(fluensulfone)、トリフルメゾピリム(triflumezopyrim)、アフィドピロペン(afidopyropen)、フルピラジフロン(flupyradifuron)、NC-515、テトラニリプロール(tetraniliprole)、フルララネル(fluralaner)、broflanilide、dicloromezotiaz、fluhexafon、チオキサザフェン(tioxazafen)、DKN-2601、MSI-1302、NA-89、MIE-1209、ZDI-2502、NNI-1501、S-1578、BAI-1602、BAI-1603、DAI-1601のような化合物;等が挙げられる。
更に、Bacillus thuringiensis aizawai、Bacillus thuringiensis kurstaki、Bacillus thuringiensis israelensis、Bacillus thuringiensis japonensis、Bacillus thuringiensis tenebrionis等のBacillus thuringiensisが生成する結晶タンパク毒素、昆虫病原ウイルス剤、昆虫病原糸状菌剤、線虫病原糸状菌剤等のような微生物農薬、アベルメクチン(avermectin)、エマメクチンベンゾエート(emamectin Benzoate)、ミルベメクチン(milbemectin)、ミルベマイシン(milbemycin)、スピノサド(spinosad)、イベルメクチン(ivermectin)、レピメクチン(lepimectin)、DE-175、アバメクチン(abamectin)、エマメクチン(emamectin)、スピネトラム(spinetoram)のような抗生物質及び半合成抗生物質;アザディラクチン(azadirachtin)、ロテノン(rotenone)のような天然物;ディート(deet)のような忌避剤;等が挙げられる。
【0041】
上記他の農薬中の、殺菌剤の有効成分化合物(一般名;一部申請中を含む、又は日本植物防疫協会試験コード)としては、例えば、メパニピリム(mepanipyrim)、ピリメサニル(pyrimethanil)、シプロジニル(cyprodinil)、フェリムゾン(ferimzone)のようなアニリノピリミジン系化合物;
【0042】
5-クロロ-7-(4-メチルピペリジン-1-イル)-6-(2,4,6-トリフルオロフェニル)[1,2,4]トリアゾロ[1,5-a]ピリミジンのようなトリアゾロピリミジン系化合物;
【0043】
フルアジナム(fluazinam)のようなピリジナミン系化合物;
【0044】
トリアジメホン(triadimefon)、ビテルタノール(bitertanol)、トリフルミゾール(triflumizole)、エタコナゾール(etaconazole)、プロピコナゾール(propiconazole)、ペンコナゾール(penconazole)、フルシラゾール(flusilazole)、マイクロブタニル(myclobutanil)、シプロコナゾール(cyproconazole)、テブコナゾール(tebuconazole)、ヘキサコナゾール(hexaconazole)、ファーコナゾールシス(furconazole‐cis)、プロクロラズ(prochloraz)、メトコナゾール(metconazole)、エポキシコナゾール(epoxiconazole)、テトラコナゾール(tetraconazole)、オキスポコナゾールフマル酸塩(oxpoconazole fumarate)、シプコナゾール(sipconazole)、プロチオコナゾール(prothioconazole)、トリアジメノール(triadimenol)、フルトリアホール(flutriafol)、ジフェノコナゾール(difenoconazole)、フルキンコナゾール(fluquinconazole)、フェンブコナゾール(fenbuconazole)、ブロムコナゾール(bromuconazole)、ジニコナゾール(diniconazole)、トリシクラゾール(tricyclazole)、プロベナゾール(probenazole)、シメコナゾール(simeconazole)、ペフラゾエート(pefurazoate)、イプコナゾール(ipconazole)、イミベンコナゾール(imibenconazole)のようなアゾール系化合物;
【0045】
キノメチオネート(quinomethionate)のようなキノキサリン系化合物;
【0046】
マンネブ(maneb)、ジネブ(zineb)、マンゼブ(mancozeb)、ポリカーバメート(polycarbamate)、メチラム(metiram)、プロピネブ(propineb)、チラム(thiram)のようなジチオカーバメート系化合物;
【0047】
フサライド(fthalide)、クロロタロニル(chlorothalonil)、キントゼン(quintozene)のような有機塩素系化合物;
【0048】
ベノミル(benomyl)、シアゾファミド(cyazofamid)、チオファネートメチル(thiophanate‐methyl)、カーベンダジム(carbendazim)、チアベンダゾール(thiabendazole)、フベリアゾール(fuberiazole)のようなイミダゾール系化合物;シモキサニル(cymoxanil)のようなシアノアセトアミド系化合物;
【0049】
メタラキシル(metalaxyl)、メタラキシル-M(metalaxyl-M)、メフェノキサム(mefenoxam)、オキサジキシル(oxadixyl)、オフレース(ofurace)、ベナラキシル(benalaxyl)、ベナラキシル-M(benalaxyl-M、別名キララキシル(kiralaxyl、chiralaxyl))、フララキシル(furalaxyl)、シプロフラム(cyprofuram)、カルボキシン(carboxin)、オキシカルボキシン(oxycarboxin)、チフルザミド(thifluzamide)、ボスカリド(boscalid)、ビキサフェン(bixafen)、イソチアニル(isothianil)、チアジニル(tiadinil)、セダキサン(sedaxane)のようなアニリド系化合物;
【0050】
ジクロフルアニド(dichlofluanid)のようなスルファミド系化合物;
【0051】
水酸化第二銅(cupric hydroxide)、有機銅(oxine copper)のような銅系化合物;
【0052】
ヒメキサゾール(hymexazol)のようなイソキサゾール系化合物;
【0053】
ホセチルアルミニウム(fosetyl‐Al)、トルクロホスメチル(tolclofos‐Methyl)、S-ベンジル O,O-ジイソプロピルホスホロチオエート、O-エチル S,S-ジフェニルホスホロジチオエート、アルミニウムエチルハイドロゲンホスホネート、エジフェンホス(edifenphos)、イプロベンホス(iprobenfos)のような有機リン系化合物;
【0054】
キャプタン(captan)、キャプタホル(captafol)、フォルペット(folpet)のようなフタルイミド系化合物;
【0055】
プロシミドン(procymidone)、イプロジオン(iprodione)、ビンクロゾリン(vinclozolin)のようなジカルボキシイミド系化合物;
【0056】
フルトラニル(flutolanil)、メプロニル(mepronil)のようなベンズアニリド系化合物;
【0057】
ペンチオピラド(penthiopyrad)、3-(ジフロロメチル)-1-メチル-N-[(1RS,4SR,9RS)-1,2,3,4-テトラヒドロ-9-イソプロピル-1,4-メタノナフタレン-5-イル]ピラゾール-4-カルボキサミドと3-(ジフロロメチル)-1-メチル-N-[(1RS,4SR,9SR)-1,2,3,4-テトラヒドロ-9-イソプロピル-1,4-メタノナフタレン-5-イル]ピラゾール-4-カルボキサミドの混合物(イソピラザム(isopyrazam))、シルチオファム(silthiopham)、フェノキサニル(fenoxanil)、フラメトピル(furametpyr)のようなアミド系化合物;
【0058】
フルオピラム(fluopyram)、ゾキサミド(zoxamide)のようなベンズアミド系化合物;
【0059】
トリホリン(triforine)のようなピペラジン系化合物;
【0060】
ピリフェノックス(pyrifenox)のようなピリジン系化合物;
【0061】
フェナリモル(fenarimol)のようなカルビノール系化合物;
【0062】
フェンプロピディン(fenpropidin)のようなピペリジン系化合物;
【0063】
フェンプロピモルフ(fenpropimorph)、トリデモルフ(tridemorph)のようなモルフォリン系化合物;
【0064】
フェンチンヒドロキシド(fentin hydroxide)、フェンチンアセテート(fentin acetate)のような有機スズ系化合物;
【0065】
ペンシキュロン(pencycuron)のような尿素系化合物;
【0066】
ジメトモルフ(dimethomorph)、フルモルフ(flumorph)のようなシンナミック酸系化合物;
【0067】
ジエトフェンカルブ(diethofencarb)のようなフェニルカーバメート系化合物;
【0068】
フルジオキソニル(fludioxonil)、フェンピクロニル(fenpiclonil)のようなシアノピロール系化合物;
【0069】
アゾキシストロビン(azoxystrobin)、クレソキシムメチル(kresoxim‐methyl)、メトミノストロビン(metominostrobin)、トリフロキシストロビン(trifloxystrobin)、ピコキシストロビン(picoxystrobin)、オリザストロビン(oryzastrobin)、ジモキシストロビン(dimoxystrobin)、ピラクロストロビン(pyraclostrobin)、フルオキサストロビン(fluoxastrobin)のようなストロビルリン系化合物;
【0070】
ファモキサドン(famoxadone)のようなオキサゾリジノン系化合物;
【0071】
エタボキサム(ethaboxam)のようなチアゾールカルボキサミド系化合物;
【0072】
イプロバリカルブ(iprovalicarb)、ベンチアバリカルブ-イソプロピル(benthiavalicarb-isopropyl)のようなバリンアミド系化合物;
【0073】
メチル N-(イソプロポキシカルボニル)-L-バリル-(3RS)-3-(4-クロロフェニル)-β-アラニナート(valiphenalate)のようなアシルアミノアシッド系化合物;
【0074】
フェナミドン(fenamidone)のようなイミダゾリノン系化合物;
【0075】
フェンヘキサミド(fenhexamid)のようなハイドロキシアニリド系化合物;
【0076】
フルスルファミド(flusulfamide)のようなベンゼンスルホンアミド系化合物;
【0077】
シフルフェナミド(cyflufenamid)のようなオキシムエーテル系化合物;
【0078】
アトラキノン系化合物;
【0079】
クロトン酸系化合物;
【0080】
バリダマイシン(validamycin)、カスガマイシン(kasugamycin)、ポリオキシン(polyoxins)のような抗生物質;
【0081】
イミノクタジン(iminoctadine)、ドディン(dodine)のようなグアニジン系化合物;
6-ターシャリーブチル-8-フルオロ-2,3-ジメチルキノリン-4-イル アセテート(テブフロキン(tebufloquin))のようなキノリン系化合物;
【0082】
(Z)-2-(2-フルオロ-5-(トリフルオロメチル)フェニルチオ)-2-(3-(2-メトキシフェニル)チアゾリジン-2-イリデン)アセトニトリル(フルチアニル(flutianil))のようなチアゾリジン系化合物;
【0083】
その他の化合物として、ピリベンカルブ(pyribencarb)、イソプロチオラン(isoprothiolane)、ピロキロン(pyroquilon)、ジクロメジン(diclomezine)、キノキシフェン(quinoxyfen)、プロパモカルブ塩酸塩(propamocarb hydrochloride)クロルピクリン(chloropicrin)、ダゾメット(dazomet)、メタムナトリウム塩(metam‐sodium)、ニコビフェン(nicobifen)、メトラフェノン(metrafenone)、UBF-307、ジクロシメット(diclocymet)、プロキンアジド(proquinazid)、アミスルブロム(amisulbrom;別名アミブロドール(amibromdole))、3-(2,3,4-トリメトキシ-6-メチルベンゾイル)-5-クロロ-2-メトキシ-4-メチルピリジン、4-(2,3,4-トリメトキシ-6-メチルベンゾイル)-2,5-ジクロロ-3-トリフルオロメチルピリジン、ピリオフェノン(pyriofenone)、イソフェタミド(isofetamid)マンジプロパミド(mandipropamid)、フルオピコリド(fluopicolide)、カルプロパミド(carpropamid)、メプチルジノキャップ(meptyldinocap)、スピロキサミン(spiroxamine)、フェンピラザミン(fenpyrazamine)、マンデストロビン(mandestrobin)、ZF-9646、BCF-051、BCM-061、BCM-062等が挙げられる。
【0084】
種子又は苗への有効成分(シクラニリプロール又はその塩、前記した他の有害生物防除剤)の付着力を増大させるために、上記製剤又は水等の希釈剤で一定の濃度に調製した薬液に、寒天、ペクチン、カラギーナン、アルギン酸塩又はその誘導体、キサンタンガム、セルロース誘導体、ポリビニルアルコール、ポリアクリルアミド、ポリビニルピロリドン、ポリカルボン酸塩等の天然又は合成高分子、ゲル化剤を添加することができる。
【0085】
シクラニリプロール又はその塩と、他の有害生物防除剤との混合割合(重量比)は、混用する有害生物防除剤の種類、薬剤の処理方法等により異なり、一概に規定できないが、通常は1:100~100:1の範囲内であり、望ましくは1:50~50:1の範囲内である。
【0086】
次に、本発明の望ましい実施形態のいくつかを例示するが、これらは本発明を限定するものではない。
(1)シクラニリプロール又はその塩とアニオン性界面活性剤が極性溶媒に溶解した溶液(成分(1))、吸油性粉末(成分(2))、及び粒状担体(成分(3))を含有し;前記アニオン性界面活性剤が、ポリオキシエチレンアリールフェニルエーテル硫酸エステル塩、ポリオキシエチレンアリールフェニルエーテルリン酸エステル塩、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル硫酸エステル塩、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテルリン酸エステル塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸エステル塩及びポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸エステル塩から成る群から選択される少なくとも一種であり;成分(1)が、成分(2)及び成分(3)の少なくとも一方に吸収又は付着されることを特徴とする有害生物防除用固形組成物。
(2)アニオン性界面活性剤が、ポリオキシエチレンアリールフェニルエーテル硫酸エステル塩及びポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸エステル塩から成る群から選択される少なくとも一種である(1)に記載の組成物。
(3)アニオン性界面活性剤が、ポリオキシエチレンアリールフェニルエーテル硫酸エステル塩である(2)に記載の組成物。
(4)極性溶媒が、N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、N,N-ジメチルオクタンアミド、N,N-ジメチルデカンアミド、N-メチル-2-ピロリドン、N-エチル-2-ピロリドン、N-オクチル-2-ピロリドン、ジメチルスルホキシド、γブチロラクトン、シクロヘキサノン、二塩基酸エステル、プロピレングリコール、プロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、テトラヒドロフルフリルアルコール、ベンジルアルコール、n-ブタノール、2-エチルヘキサノール及びシクロヘキサノールから成る群から選択される少なくとも一種である(1)~(3)に記載の組成物。
(5)極性溶媒が、N-メチル-2-ピロリドンである(1)~(4)に記載の組成物。
(6)成分(2)と成分(3)がバインダーで結合されている、(1)~(5)に記載の組成物。
(7)バインダーが、人工ポリマーである(6)に記載の組成物。
(8)バインダーが、ポリビニルアルコールである(6)に記載の組成物。
(9)成分(2)又は成分(3)に吸収又は付着した成分(1)が液体の状態で存在する(1)~(8)に記載の組成物。
(10)成分(3)が、種子、鉱物質粒状担体及び糖類から成る群から選択される少なくとも一種である(1)~(9)に記載の組成物。
(11)成分(3)が、種子である(1)~(10)に記載の組成物。
(12)組成物の剤型が、種子処理剤である(1)~(11)に記載の組成物。
(13)成分(3)が、鉱物質粒状担体である(10)に記載の組成物。
(14)鉱物質担体が、珪砂、珪石、軽石及び炭酸カルシウムから成る群から選択される少なくとも一種である(10)又は(13)に記載の組成物。
(15)組成物の剤型が、育苗ポット、育苗箱、セル成型育苗トレー又はペーパーポット内の苗又は土壌への処理剤である(1)~(14)に記載の組成物。
(16)組成物の剤型が、粒剤、粉剤又は水和剤である(1)~(15)に記載の組成物。
(17)成分(2)が、ゼオライト、モンモリロナイト、珪藻土、パーライト、シリカゲル、ベントナイト、孔質アルミナ、カオリナイト、タルク、ホワイトカーボン、活性白土、アタパルジャイト、バーミキュライト、セライト、ハイドロタルサイト及び微粉末状に析出させた含水SiO2から成る群から選択される少なくとも1種である(1)~(16)に記載の組成物。
(18)成分(1)と成分(2)の重量比が、1:100~100:1の範囲内である(1)~(17)に記載の組成物。
(19)成分(2)と成分(3)の重量比が、1:2000~1:5の範囲内である、(1)~(18)に記載の組成物。
【0087】
(20)(1)~(19)に記載の有害生物防除用固形組成物を、有害生物又はそれが発生する場所に施用して有害生物を防除する方法。
(21)(1)~(19)に記載の組成物を、種子若しくは種子が生育する土壌、又は苗若しくは苗の生育する土壌に処理し、植物の苗を保護する方法。
(22)育苗ポット、育苗箱、セル成型育苗トレー又はペーパーポット内の苗又は土壌に処理する(20)~(21)に記載の方法。
(23)(1)~(19)に記載の組成物を、種子が播かれた土壌又は苗が植えられた土壌に処理し、有害生物を防除する方法。
【実施例】
【0088】
製剤例1
シクラニリプロール0.75重量部及びソルポール7920P(東邦化学工業社製)0.50重量部をN-メチル-2-ピロリドン1.50重量部に溶解し、得られた溶液を、滴下して混合することにより珪砂5号95.65重量部の表面に付着させた。さらにホワイトカーボン1.60重量部を添加し、混合して本発明組成物を得た。
【0089】
製剤例2
珪砂5号94.71重量部に6.15%ポリビニルアルコール水溶液を6.74重量部添加して混合し、さらにホワイトカーボンを5.19重量部添加して混合後、乾燥することにより、珪砂5号がホワイトカーボンで被覆された被覆珪砂を製造した。
シクラニリプロール0.75重量部及びソルポールT-10SPG(東邦化学工業社製)1.30重量部をN-メチル-2-ピロリドン1.50重量部に溶解し、得られた溶液を、上記被覆珪砂95.65重量部と混合して吸油させることにより、本発明組成物を得た。
【0090】
製剤例3
シクラニリプロール1.5g及びソルポールT-10SPG(東邦化学工業社製)2.6gをN-メチル-2-ピロリドン3.0gに溶解し、得られた溶液に、ホワイトカーボン10gを添加して混合し、均一に分散した混合粉を作製した。
大豆種子99.3重量部を水で湿らせた後、上記混合粉を0.7重量部加えて混合し、大豆種子を粉衣して本発明組成物を得た。
【0091】
製剤例4
大豆種子をトウモロコシ種子に変更した以外は、製剤例3と同様の方法により、本発明組成物を得た。
【0092】
試験例1(コブノメイガ幼虫防除試験)
1.2cm×1.2cmの大きさのセルが格子状に仕切られたプラスチックケース(9.5cm×16cm、60セル)に土壌を詰め、それぞれにイネ3粒ずつを播種した。イネが1.5葉期になったところで、製剤例1の組成物を1ケース当り4.2gの割合で、ケース全体の土壌表面に手で均一に散粒した。処理1日後に、セル内の土壌とともにイネ幼苗を取出し、予め土壌3L(リットル)を入れ、灌水した後、代掻きを施した1/5,000aポットに移植した。ポットは20℃に設定したガラス温室に静置した。移植14日後及び28日後にポットに円筒をかぶせて、コブノメイガ2齢初期幼虫をポット当り10頭を接種した。接種後は筒上部をガーゼで覆った。接種した14日目に、幼虫の生存数とイネの巻葉数を調査し、次式に従って死虫率と巻葉防止率を算出した。試験は、3反復で実施し、死虫率と巻葉防止率の平均値を表1に示した。
死虫率(%)=((接種幼虫数―生存幼虫数)/接種幼虫数)×100
巻葉防止率(%)=100-(巻葉数/調査時イネ葉数)×100
【0093】
【0094】
試験例2(ハスモンヨトウ幼虫防除試験)
土壌を詰めたポット(φ90mm、高さ90mm)に、製剤例3の組成物を1ポットに1粒ずつ播種し、土壌の上から、散水する。大豆が生育したところで、筒をかぶせてハスモンヨトウ幼虫を接種する。筒上部はガーゼで覆う。幼虫接種5日後もしくは6日後に幼虫の生存数を調査する。下記の式により死虫率を計算すると、90%以上の死虫率が得られる。
死虫率(%)=((接種幼虫数―生存幼虫数)/接種幼虫数)×100
【0095】
試験例3(ハスモンヨトウ幼虫防除試験)
土壌を詰めたポット(φ60mm、高さ55mm)に、製剤例4の組成物を1ポットに1粒ずつ播種し、土壌の上から散水した。播種7日後及び14日後に、生育したトウモロコシを地際で切り取り、そのうち2株を水道水1mlで湿らせたろ紙を入れたプラスチックシャーレ(φ90mm、高さ15mm)に入れた。そこにハスモンヨトウ2齢終期幼虫10頭を接種し、シャーレに蓋をして25℃に設定した恒温室に静置した。接種5日後に幼虫の生存数(無処理に比べ、明らかに生育が悪い個体は生存数から除外した)を調査し、下記の式により死虫率及び補正死虫率を算出し、表2の結果を得た。試験は5反復で実施し、死虫率及び補正死虫率の平均値を表2に示した。
死虫率(%)=((接種幼虫数-生存幼虫数)/接種幼虫数)×100
補正死虫率(%)=((製剤例4の死虫率-無処理の死虫率)/(100-無処理の死虫率))×100
【0096】
【0097】
試験例4(溶出試験)
100mLの蓋付三角フラスコに、20℃のイオン交換水を50mLと製剤例2の組成物を0.5g投入し、蓋をした後に20℃で3時間静置した。三角フラスコから水を約2mLサンプリングし、0.45μmのフィルターを通して高速液体クロマトグラフィー(HPLC)分析用サンプルとした。このサンプルについてシクラニリプロールの溶出量をHPLC分析をしたところ、水中のシクラニリプロールの濃度は25ppmであった。
【0098】
試験例5(稲体濃度分析)
1.2cm×1.2cmの大きさのセルが格子状に仕切られたプラスチックケース(9.5cm×16cm、60セル)に土壌を詰め、それぞれにイネ3粒ずつを播種した。イネが1.5葉期になったところで、製剤例1の組成物を1ケース当り4.2gの割合で、ケース全体の土壌表面に手で均一に散粒した。処理3時間後に、セル内の土壌とともにイネ幼苗を取出し、土壌3L(リットル)を入れた後、灌水し、代掻きを施した1/5,000aポットに移植した。ポットは20℃に設定したガラス温室に静置した。移植20日後に水面より上部のイネを切り取り、稲体濃度分析に供試した。切り取ったイネに、アセトニトリルを添加し、ホモジナイザーで破砕しながら抽出後、ミニカラムで精製を行って分析用サンプルとした。分析は液体クロマトグラフィ-質量分析法(LC-MS)にて行い、稲体中のシクラニリプロールの濃度として0.57ppmの結果を得た。
【産業上の利用可能性】
【0099】
本発明により、施用作業の省力化や少ない処理薬量によって高い防除効果をあげることができる有害生物防除用固形組成物を提供する。
なお、2016年12月27日に出願された日本特許出願2016-253792号の明細書、特許請求の範囲、及び要約書の全内容をここに引用し、本発明の明細書の開示として、取り入れるものである。