(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-02-09
(45)【発行日】2022-02-18
(54)【発明の名称】車両ドアのノブ保持構造
(51)【国際特許分類】
E05B 85/08 20140101AFI20220210BHJP
E05B 79/02 20140101ALI20220210BHJP
B60J 5/00 20060101ALI20220210BHJP
【FI】
E05B85/08
E05B79/02
B60J5/00 M
(21)【出願番号】P 2020072191
(22)【出願日】2020-04-14
【審査請求日】2020-10-20
(73)【特許権者】
【識別番号】591038587
【氏名又は名称】株式会社アンセイ
(74)【代理人】
【識別番号】110001117
【氏名又は名称】特許業務法人ぱてな
(72)【発明者】
【氏名】高木 正晴
(72)【発明者】
【氏名】梅津 智
【審査官】鳥井 俊輔
(56)【参考文献】
【文献】特開2000-080822(JP,A)
【文献】米国特許第02708845(US,A)
【文献】米国特許第02768854(US,A)
【文献】実開昭60-048558(JP,U)
【文献】実開平02-077261(JP,U)
【文献】実開平05-052146(JP,U)
【文献】特開平11-350813(JP,A)
【文献】国際公開第03/102335(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E05B 77/00-85/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ドアトリムに貫設されたノブ挿通穴に設けられ、前記ノブ挿通穴に下から挿入される上向きの凸形状をなすインジケータノブが上昇及び下降する際に前記インジケータノブを案内する車両ドアのノブ保持構造であって、
前記インジケータノブを上下に案内する案内部と、
前記案内部よりも下方に設けられ、前記インジケータノブを前記案内部に導く導入部とを備え、
前記導入部は、前記ノブ挿通穴の軸心周りで前記インジケータノブを囲み、下向きに逆テーパ形状に広がる曲面である導入曲面を含
み、
前記ノブ保持構造は、前記案内部及び前記導入部が形成され、前記ドアトリムに下から当接する第1部材と、
前記ドアトリムに上から当接して前記第1部材と共に前記ドアトリムを挟持し、前記ノブ挿通穴の外周縁を覆う第2部材とからなり、
前記第1部材は、前記軸心を中心とし、前記案内部が形成された筒形状部分を含み、
前記筒形状部分の内周側には、段部である複数の被係合部が形成され、
前記第2部材には、前記軸心に沿って前記第1部材に向かって延び、かつ前記軸心の径内方向に弾性変形可能な複数の係合部が形成され、
各前記係合部の先端には、前記軸心の径外方向に突出し、各前記被係合部に係合可能な爪が形成され、
前記第1部材と前記第2部材とが前記ドアトリムを挟持するときに、各前記係合部は、各前記爪が各前記被係合部に摺接することで前記軸心の前記径内方向に弾性変形し、各前記爪が各前記被係合部を乗り越えた後に弾性変形しなくなって各前記爪が各前記被係合部に係合することで、前記第1部材と前記第2部材とが離間することを規制し、
各前記係合部は、前記ノブ挿通穴に挿入された前記インジケータノブによって、前記径内方向への弾性変形が規制されることを特徴とする車両ドアのノブ保持構造。
【請求項2】
ドアトリムに貫設されたノブ挿通穴に設けられ、前記ノブ挿通穴に下から挿入される上向きの凸形状をなすインジケータノブが上昇及び下降する際に前記インジケータノブを案内する車両ドアのノブ保持構造であって、
前記インジケータノブを上下に案内する案内部と、
前記案内部よりも下方に設けられ、前記インジケータノブを前記案内部に導く導入部とを備え、
前記導入部は、前記ノブ挿通穴の軸心周りで前記インジケータノブを囲み、下向きに逆テーパ形状に広がる曲面である導入曲面を含み、
前記ノブ保持構造は、前記案内部及び前記導入部が形成され、前記ドアトリムに下から当接する第1部材と、
前記ドアトリムに上から当接して前記第1部材と共に前記ドアトリムを挟持し、前記ノブ挿通穴の外周縁を覆う第2部材とからなり、
前記ドアトリムには、前記ノブ挿通穴の前記外周縁か
ら前記軸心の径外方向に凹む第1凹
部が形成され
、
前記第2部材には、前記第1凹部に嵌合する第1凸
部が形成され、
前記第1部材及び前記第2部材の一方には、前記軸心に沿って前記第1部材及び前記第2部材の他方に向かって突出する第3凸部が形成され、
前記第1部材及び前記第2部材の前記他方には、前記第3凸部が嵌合する第3凹部が形成されている
ことを特徴とする車両ドアのノブ保持構造。
【請求項3】
前記ドアトリムには、前記ノブ挿通穴の前記外周縁から前記軸心の前記径外方向に凹む第2凹部が形成され、
前記第1凹部と前記第2凹部とは、前記軸心を中心とする非点対称であり、
前記第2部材には、前記第2凹部に嵌合する第2凸部が形成されている請求項2記載の車両ドアのノブ保持構造。
【請求項4】
前記第1部材及び前記第2部材の一方には、前記軸心に沿って前記第1部材及び前記第2部材の他方に向かって延び、かつ前記軸心の径内方向に弾性変形可能な複数の係合部が形成され、
各前記係合部の先端には、前記軸心の径外方向に突出して前記第1部材及び前記第2部材の前記他方に係合し、前記第1部材と前記第2部材とが離間することを規制する爪が形成され、
各前記係合部は、前記ノブ挿通穴に挿入された前記インジケータノブによって、前記径内方向への弾性変形が規制される請求項
2又は3記載の車両ドアのノブ保持構造。
【請求項5】
前記導入曲面は、前記軸心周りで180°を超える範囲で前記インジケータノブを囲んでいる請求項1
乃至4のいずれか1項記載の車両ドアのノブ保持構造。
【請求項6】
前記案内部は、前記軸心に沿って延びて前記インジケータノブに当接し、かつ前記軸心の径外方向に弾性変形可能な押圧片を含んでいる請求項1乃至
5のいずれか1項記載の車両ドアのノブ保持構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は車両ドアのノブ保持構造に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に従来の車両ドアのノブ保持構造の一例が開示されている。このノブ保持構造は、ドアトリムに貫設されたノブ挿通穴に設けられている。このノブ保持構造は、ノブ挿通穴に下から挿入される上向きの凸形状をなすインジケータノブが上昇及び下降する際にインジケータノブを案内するものである。
【0003】
このノブ保持構造は、案内部及び導入部を備えている。案内部は、ノブ挿通穴に嵌め込まれた縁取りリングを含んでいる。案内部は、縁取りリングによって、インジケータノブを上下に案内する。導入部は、ドアトリムに一体に形成された複数のリブを含んでおり、案内部よりも下方に設けられている。各リブの内側辺は、案内部の縁取りリングに向けて傾斜している。
【0004】
導入部は、インジケータノブをノブ挿通穴に挿入するときに、各リブの内側辺により、インジケータノブを案内部の縁取りリングに導くようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、上記従来の車両ドアのノブ保持構造では、インジケータノブをノブ挿通穴に挿入するときに、各リブの内側辺がインジケータノブを局所的に押圧するので、インジケータノブに傷が付き易いという問題がある。
【0007】
本発明は、上記従来の実情に鑑みてなされたものであって、インジケータノブに傷が付くことを抑制できる車両ドアのノブ保持構造を提供することを解決すべき課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の車両ドアのノブ保持構造は、ドアトリムに貫設されたノブ挿通穴に設けられ、前記ノブ挿通穴に下から挿入される上向きの凸形状をなすインジケータノブが上昇及び下降する際に前記インジケータノブを案内する車両ドアのノブ保持構造であって、
前記インジケータノブを上下に案内する案内部と、
前記案内部よりも下方に設けられ、前記インジケータノブを前記案内部に導く導入部とを備え、
前記導入部は、前記ノブ挿通穴の軸心周りで前記インジケータノブを囲み、下向きに逆テーパ形状に広がる曲面である導入曲面を含み、
前記ノブ保持構造は、前記案内部及び前記導入部が形成され、前記ドアトリムに下から当接する第1部材と、
前記ドアトリムに上から当接して前記第1部材と共に前記ドアトリムを挟持し、前記ノブ挿通穴の外周縁を覆う第2部材とからなり、
前記第1部材は、前記軸心を中心とし、前記案内部が形成された筒形状部分を含み、
前記筒形状部分の内周側には、段部である複数の被係合部が形成され、
前記第2部材には、前記軸心に沿って前記第1部材に向かって延び、かつ前記軸心の径内方向に弾性変形可能な複数の係合部が形成され、
各前記係合部の先端には、前記軸心の径外方向に突出し、各前記被係合部に係合可能な爪が形成され、
前記第1部材と前記第2部材とが前記ドアトリムを挟持するときに、各前記係合部は、各前記爪が各前記被係合部に摺接することで前記軸心の前記径内方向に弾性変形し、各前記爪が各前記被係合部を乗り越えた後に弾性変形しなくなって各前記爪が各前記被係合部に係合することで、前記第1部材と前記第2部材とが離間することを規制し、
各前記係合部は、前記ノブ挿通穴に挿入された前記インジケータノブによって、前記径内方向への弾性変形が規制されることを特徴とする。
【0009】
本発明の車両ドアのノブ保持構造では、インジケータノブをノブ挿通穴に挿入するときに、導入部が導入曲面により、インジケータノブを案内部に導く。この際、導入曲面がインジケータノブに面で当接するので、インジケータノブに対する局所的な押圧を抑制できる。
【0010】
したがって、本発明の車両ドアのノブ保持構造では、インジケータノブに傷が付くことを抑制できる。その結果、このノブ保持構造では、車室内の美観の低下を抑制できる。
また、この構成により、第1部材及び第2部材を簡素化できるとともに、ドアトリムにおけるノブ挿通穴の周辺の形状を簡素化できる。
さらに、この構成により、複数の係合部は、インジケータノブに規制されて爪が外れ難いので、第1部材と第2部材とがドアトリムを挟持する状態を確実に維持できる。
本発明の別の車両ドアのノブ保持構造は、ドアトリムに貫設されたノブ挿通穴に設けられ、前記ノブ挿通穴に下から挿入される上向きの凸形状をなすインジケータノブが上昇及び下降する際に前記インジケータノブを案内する車両ドアのノブ保持構造であって、
前記インジケータノブを上下に案内する案内部と、
前記案内部よりも下方に設けられ、前記インジケータノブを前記案内部に導く導入部とを備え、
前記導入部は、前記ノブ挿通穴の軸心周りで前記インジケータノブを囲み、下向きに逆テーパ形状に広がる曲面である導入曲面を含み、
前記ノブ保持構造は、前記案内部及び前記導入部が形成され、前記ドアトリムに下から当接する第1部材と、
前記ドアトリムに上から当接して前記第1部材と共に前記ドアトリムを挟持し、前記ノブ挿通穴の外周縁を覆う第2部材とからなり、
前記ドアトリムには、前記ノブ挿通穴の前記外周縁から前記軸心の径外方向に凹む第1凹部が形成され、
前記第2部材には、前記第1凹部に嵌合する第1凸部が形成され、
前記第1部材及び前記第2部材の一方には、前記軸心に沿って前記第1部材及び前記第2部材の他方に向かって突出する第3凸部が形成され、
前記第1部材及び前記第2部材の前記他方には、前記第3凸部が嵌合する第3凹部が形成されていることを特徴とする。
本発明の別の車両ドアのノブ保持構造でも、インジケータノブに傷が付くことを抑制できる。その結果、このノブ保持構造では、車室内の美観の低下を抑制できる。
また、この構成により、第1部材及び第2部材を簡素化できるとともに、ドアトリムにおけるノブ挿通穴の周辺の形状を簡素化できる。
ドアトリムには、ノブ挿通穴の外周縁から軸心の径外方向に凹む第2凹部が形成されていることが望ましい。第1凹部と第2凹部とは、軸心を中心とする非点対称であることが望ましい。そして、第2部材には、第2凹部に嵌合する第2凸部が形成されていることが望ましい。
この場合、第2部材の形状が左の車両ドア用と右の車両ドア用とで異なる場合でも、第1~3凹部と第1~3凸部との嵌合により、誤組み付けを抑制できる。
第1部材及び第2部材の一方には、軸心に沿って第1部材及び第2部材の他方に向かって延び、かつ軸心の径内方向に弾性変形可能な複数の係合部が形成されていることが望ましい。各係合部の先端には、軸心の径外方向に突出して第1部材及び第2部材の他方に係合し、第1部材と第2部材とが離間することを規制する爪が形成されていることが望ましい。そして、各係合部は、ノブ挿通穴に挿入されたインジケータノブによって、径内方向への弾性変形が規制されることが望ましい。
この場合、複数の係合部は、インジケータノブに規制されて爪が外れ難いので、第1部材と第2部材とがドアトリムを挟持する状態を確実に維持できる。
【0011】
導入曲面は、軸心周りで180°を超える範囲でインジケータノブを囲んでいることが望ましい。この場合、導入曲面がインジケータノブに広い面で当接するので、インジケータノブに対する局所的な押圧を一層抑制できる。
【0017】
案内部は、軸心に沿って延びてインジケータノブに当接し、かつ軸心の径外方向に弾性変形可能な押圧片を含んでいることが望ましい。この場合、案内部は、押圧片によってインジケータノブのがたつきを抑制しながらインジケータノブをスムーズに案内できる。
【発明の効果】
【0018】
本発明の車両ドアのノブ保持構造によれば、インジケータノブに傷が付くことを抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】
図1は、実施例1のノブ保持構造が適用された車両ドアの斜視図である。
【
図2】
図2は、実施例1のノブ保持構造を示す斜視図である。
【
図3】
図3は、実施例1のノブ保持構造を示す斜視図である。
【
図4】
図4は、実施例1のノブ保持構造に係り、案内部及び導入部が一体に形成されたリテーナと、ドアトリムと、ベゼルとを示す分解斜視図である。
【
図5】
図5は、実施例1のノブ保持構造に係り、リテーナと、ドアトリムと、ベゼルとを示す分解斜視図である。
【
図6】
図6は、実施例1のノブ保持構造を示す下面図である。
【
図7】
図7は、実施例1のノブ保持構造に係り、
図6のA-A断面を示す断面図である。
【
図8】
図8は、実施例2のノブ保持構造に係り、ドアトリムに一体に形成された案内部及び導入部と、ベゼルとを示す分解斜視図である。
【
図9】
図9は、実施例2のノブ保持構造に係り、ドアトリムに一体に形成された案内部及び導入部を示す斜視図である。
【
図11】
図11は、実施例3のノブ保持構造に係り、案内部及び導入部が一体に形成されたリテーナと、ドアトリムとを示す分解斜視図である。
【
図12】
図12は、実施例3のノブ保持構造に係り、2つの係合部及び4つの当接凸部が一体に形成されたドアトリムを示す分解斜視図である。
【
図14】
図14は、変形例のノブ保持構造を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明を具体化した実施例1~3を図面を参照しつつ説明する。
【0021】
(実施例1)
図1に示すように、実施例1の車両ドアのノブ保持構造1は、自動車等である車両の車両ドア8に適用されている。車両ドア8は、車体の側面に設けられた開口9を開閉するサイドドアである。以下の説明では、車両ドア8が左側のサイドドアである場合について説明する。
【0022】
<車両ドア及びノブ保持構造の概略構成>
車両ドア8は、鋼板製のアウタードアパネル8A及びインナードアパネル8Bと、樹脂製のドアトリム80とを含んでいる。インナードアパネル8Bは、アウタードアパネル8Aに対して車両内側から接合されている。アウタードアパネル8A及びインナードアパネル8Bの上部分は、車両ドア8の窓枠を構成している。
【0023】
ドアトリム80は、インナードアパネル8Bの下部分に対して車両内側から組み付けられている。ドアトリム80は、車室内の意匠面の一部を構成している。ドアトリム80の上壁部80Uは、車両ドア8の窓枠の下端縁に沿って車両ドア8の前端から後端まで延びている。
【0024】
なお、
図2以降の各図に示す前後方向、上下方向及び車両内外方向は、すべて
図1に対応させて表示している。
【0025】
図1に示すように、車両ドア8の後端部には、ドアロック装置90が設けられている。ドアロック装置90は、車両ドア8の後端面から進入口91を露出させている。進入口91には、車両ドア8の開閉に伴ってドアロック装置90が移動する際、車体に固定された略「U」字形状のストライカ99が相対的に進入するようになっている。
【0026】
車両ドア8の外面におけるドアロック装置90よりも上方には、外側ドアハンドル5が設けられている。図示は省略するが、車両ドア8の内面には、内側ドアハンドルが設けられている。外側ドアハンドル5及び内側ドアハンドルはそれぞれ、図示しない伝達ロッドや伝達ケーブルを介して、ドアロック装置90に連結されている。
【0027】
図示は省略するが、ドアロック装置90は、ラッチ状態とアンラッチ状態とに切り替わる周知のラッチ機構を備えている。ラッチ機構は、車両ドア8が閉じられてストライカ99が進入口91に進入することによりラッチ状態に切り替わり、ストライカ99を保持する。その一方、ラッチ機構は、外側ドアハンドル5又は図示しない内側ドアハンドルに対するユーザの開操作によりアンラッチ状態に切り替わり、ストライカ99が進入口91から離脱することを許容する。
【0028】
また、図示は省略するが、ドアロック装置90は、電動アクチュエータによって施錠状態と解錠状態とに切り替わる周知の施錠解錠機構を有している。施錠解錠機構は、図示しないリモコンキー等に対するユーザの施錠操作によって電動アクチュエータが作動することで施錠状態に切り替わり、ラッチ機構がラッチ状態からアンラッチ状態に切り替わることを禁止する。その一方、施錠解錠機構は、図示しないリモコンキー等に対するユーザの解錠操作によって電動アクチュエータが作動することで解錠状態に切り替わり、ラッチ機構がラッチ状態からアンラッチ状態に切り替わることを許容する。
【0029】
ドアロック装置90には、施錠解錠機構に連動する図示しないリンクレバーが設けられている。図示しないリンクレバーには、上下方向に延びる金属製のインジケータロッド7Aの下端が連結されている。
【0030】
図2に示すように、インジケータロッド7Aの上端には、樹脂製のインジケータノブ7がインサート成形されている。インジケータノブ7は、上向きの凸形状をなしている。インジケータノブ7は、上端部が半球形状をなし、その半球形状部分より下方において円柱形状をなしている。インジケータノブ7の表面は、例えば、鏡面、梨地面、シボ面等の意匠性の高い面とされている。
【0031】
図1に示すように、ノブ保持構造1は、ドアトリム80の上壁部80Uの後端側に設けられている。
図2~
図7では、ドアトリム80におけるノブ保持構造1の周辺部分のみを図示している。ドアトリム80の上壁部80Uは、車両外側から車両内側に向かって下り傾斜している。
【0032】
ドアトリム80は、硬質樹脂層80Aと、硬質樹脂層80Aの表面に積層された弾性フォーム層80Bと、弾性フォーム層80Bを覆って意匠面を構成する表皮層80Cとからなる積層体である。
【0033】
図4、
図5及び
図7に示すように、ドアトリム80の上壁部80Uには、ノブ挿通穴87が貫設されている。ノブ挿通穴87は、鉛直方向に延びる軸心X1を中心とする丸穴である。ノブ挿通穴87は、傾斜する上壁部80Uに直交する方向から見ると、楕円形状となっている。
【0034】
図2、
図3及び
図7に示すように、ノブ保持構造1は、ドアトリム80に貫設されたノブ挿通穴87に設けられている。インジケータノブ7は、ノブ挿通穴87に下から挿入されて、ノブ保持構造1に保持されている。
【0035】
ドアロック装置90の施錠解錠機構が解錠状態に切り替わると、図示しないリンクレバーが連動してインジケータロッド7Aを押し上げる。これにより、インジケータノブ7は、ノブ保持構造1に案内されて
図2に示す解錠表示位置P1に上昇する。その結果、ユーザは、車外から車両ドア8の窓越しにインジケータノブ7(P1)を目視することで、車両ドア8が解錠されていると容易に認識できる。
【0036】
その一方、ドアロック装置90の施錠解錠機構が施錠状態に切り替わると、図示しないリンクレバーが連動してインジケータロッド7Aを引き下げる。これにより、インジケータノブ7は、ノブ保持構造1に案内されて
図2に示す施錠表示位置P2に下降する。その結果、ユーザは、車外から車両ドア8の窓越しにインジケータノブ7(P2)を目視することで、車両ドア8が施錠されていると容易に認識できる。
【0037】
<ノブ保持構造の具体的構成>
図4、
図5及び
図7に示すように、ノブ保持構造1は、リテーナ10とベゼル20とからなる。リテーナ10は、本発明の「第1部材」の一例である。ベゼル20は、本発明の「第2部材」の一例である。
【0038】
リテーナ10及びベゼル20はそれぞれ、熱可塑性樹脂の射出成形等によって製造される樹脂成形品である。本実施例では、リテーナ10の樹脂材料と、ベゼル20の樹脂材料とが異なっている。具体的には、ベゼル20は、リテーナ10と比較して意匠性の要求が高いため、高品質な表面を形成可能な樹脂材料が採用される。
【0039】
図4及び
図5に示すように、ドアトリム80の上壁部80Uには、ドアトリム80に対してベゼル20を位置決めするための第1凹部81及び第2凹部82が形成されている。
【0040】
第1凹部81は、軸心X1に対して車両外側に位置し、ノブ挿通穴87の外周縁から軸心X1の径外方向に凹む略矩形状の凹部である。第2凹部82は、軸心X1に対して車両内側に位置し、かつ前後方向において第1凹部81よりも前方に位置し、ノブ挿通穴87の外周縁から軸心X1の径外方向に凹む略矩形状の凹部である。つまり、第1凹部81と第2凹部82とは、軸心X1を中心とする非点対称である。
【0041】
図5に示すように、ドアトリム80の上壁部80Uの下面には、ドアトリム80に対してリテーナ10が当接するときの姿勢を決めるための4つの当接凸部88が形成されている。
【0042】
各当接凸部88は、ドアトリム80の上壁部80Uにおける軸心X1よりも前方でノブ挿通穴87の外周縁に隣接する2か所と、軸心X1よりも後方でノブ挿通穴87の外周縁に隣接する2か所とに配置され、それぞれ下向きに短く突出する略円柱である。
【0043】
図4、
図5及び
図7に示すように、リテーナ10は、軸心X1を中心とする筒形状部分と、筒形状部分の下端に接続して下向きに延びながら軸心X1の径外方向に広がる漏斗形状部分とを含んでいる。
【0044】
図4に示すように、リテーナ10の筒形状部分の上端面10Uは、ドアトリム80の上壁部80Uの傾斜に沿って傾斜し、かつ軸心X1を囲む環状の面である。リテーナ10の上端面10Uには、第3凹部13と、4つの当接凸部18とが形成されている。
【0045】
第3凹部13は、リテーナ10の上端面10Uにおける軸心X1に対して車両外側に位置する部分から下向きに凹む凹部である。
【0046】
各当接凸部18は、リテーナ10の上端面10Uにおける軸心X1よりも前方に位置する2か所と、上端面10Uにおける軸心X1よりも後方に位置する2か所とに配置され、それぞれ上向きに短く突出する略円柱である。各当接凸部18は、ドアトリム80の各当接凸部88と整合するように設けられている。
【0047】
図4、
図6及び
図7に示すように、リテーナ10の筒形状部分には、2つの被係合部15が形成されている。各被係合部15は、リテーナ10の筒形状部分の内周側で軸心X1に対して前方及び後方に位置して上下方向に延びる2つの溝にそれぞれ形成された段部である。
【0048】
図4及び
図6に示すように、リテーナ10の筒形状部分には、案内部30が形成されている。案内部30は、2つの案内突起32と、押圧片31とを含んでいる。
【0049】
各案内突起32は、リテーナ10の筒形状部分の内周面における軸心X1に対して車両外側に位置する部分の上端縁に配置され、前後方向において互いに離間している。各案内突起32は、軸心X1の径内方向に突出している。
【0050】
図5に示すように、押圧片31は、リテーナ10の筒形状部分の内周面における軸心X1に対して車両内側に位置する部分の下端縁から軸心X1に沿って上向きに延びる片持ち梁形状とされている。押圧片31の上端部は、軸心X1の径内方向に折れ曲がっている。押圧片31は、その上端部を軸心X1の径外方向に変位させるように弾性変形可能である。
【0051】
図6に示すように、各案内突起32と押圧片31とは、軸心X1を囲む3か所でインジケータノブ7の外周面に当接するようになっている。
【0052】
図3及び
図5~
図7に示すように、リテーナ10の漏斗形状部分には、導入部40が形成されている。つまり、導入部40は、案内部30よりも下方に設けられている。
【0053】
導入部40は、リテーナ10の筒形状部分の内周面に接続する導入曲面40Aを含んでいる。導入曲面40Aは、ノブ挿通穴87の軸心X1周りでインジケータノブ7を囲み、下向きに逆テーパ形状に広がる曲面である。
【0054】
本実施例では、導入曲面40Aは、軸心X1周りで180°を超える範囲でインジケータノブ7を囲むようになっている。より詳しくは、導入曲面40Aは、軸心X1を中心とする略円環状の曲面であり、インジケータノブ7の全周を囲むようになっている。
【0055】
図4、
図5及び
図7に示すように、ベゼル20は、軸心X1を中心とする丸穴27が中央に貫設された枠形状部分を含んでいる。ベゼル20の枠形状部分は、ノブ挿通穴87の外周縁と、第1凹部81及び第2凹部82とを覆う大きさに設定されている。
【0056】
図7に示すように、丸穴27の内径は、インジケータノブ7の外周面に接触しないように、インジケータノブ7の外径よりも大きく設定されている。
【0057】
図5に示すように、ベゼル20の枠形状部分の下面には、第1凸部21、第2凸部22、第3凸部23及び2つの係合部25が形成されている。
【0058】
第1凸部21は、ベゼル20の枠形状部分における軸心X1に対して車両外側に位置する部分に凸設されている。第1凸部21は、ドアトリム80の第1凹部81に嵌合可能である。
【0059】
第2凸部22は、ベゼル20の枠形状部分における軸心X1に対して車両内側に位置し、かつ前後方向において第1凸部21よりも前方に位置する部分に凸設されている。第2凸部22は、ドアトリム80の第2凹部82に嵌合可能である。
【0060】
第3凸部23は、第1凸部21の下面の前端縁から軸心X1に沿ってリテーナ10に接近するように下向きに突出している。第3凸部23は、リテーナ10の第3凹部13に嵌合可能である。
【0061】
2つの係合部25は、ベゼル20の枠形状部分における軸心X1よりも前方及び後方で丸穴27の外周縁に隣接する2か所からそれぞれ軸心X1に沿ってリテーナ10に接近するように下向きに延びる片持ち梁形状とされている。
【0062】
各係合部25の先端には、爪25Aが形成されている。各係合部25の爪25Aは、軸心X1の径外方向に突出しており、リテーナ10の各被係合部15に係合可能となっている。各係合部25は、爪25Aを軸心X1の径内方向に変位させるように弾性変形可能である。
【0063】
<ノブ保持構造及びインジケータノブの組み付け方法>
上記構成であるノブ保持構造1は、以下のようにしてドアトリム80に組み付けられる。
【0064】
すなわち、
図4及び
図5に示すように、ベゼル20をドアトリム80の上壁部80Uよりも上方の位置からノブ挿通穴87に向かって下降させる。この際、各係合部25は、爪25Aがノブ挿通穴87の内周面に摺接することで軸心X1の径内方向に弾性変形し、ノブ挿通穴87を通過する。
【0065】
そして、第1凸部21が第1凹部81に嵌合し、かつ第2凸部22が第2凹部82に嵌合することにより、ベゼル20がドアトリム80に対して位置決めされる。その結果、ベゼル20の枠形状部分は、ドアトリム80の上壁部80Uに上から当接してノブ挿通穴87の外周縁を覆う。
【0066】
次に、リテーナ10をドアトリム80の上壁部80Uよりも下方の位置からノブ挿通穴87に向かって上昇させる。この際、ベゼル20の第3凸部23は、リテーナ10の第3凹部13に嵌合する。また、ベゼル20の各係合部25は、リテーナ10の筒形状部分の内周側に進入する。
【0067】
各係合部25は、爪25Aが各被係合部15に摺接することで軸心X1の径内方向に弾性変形し、爪25Aが各被係合部15を乗り越えた後に弾性変形しなくなる。これにより、
図7に示すように、各係合部25の爪25Aは、各被係合部15に係合し、リテーナ10とベゼル20とが離間することを規制する。その結果、リテーナ10とベゼル20とがドアトリム80を挟持する。
【0068】
この状態で、ドアトリム80の弾性フォーム層80Bは、ベゼル20の枠形状部分に押圧されて若干凹むことにより、復元力を発揮する。この復元力により、各係合部25の爪25Aが各被係合部15にがたつきなく係合するので、異音の発生を抑制できる。
【0069】
また、この状態で、
図4に示すリテーナ10の各当接凸部18が
図5に示すドアトリム80の各当接凸部88に下から当接することにより、ドアトリム80に対してリテーナ10が当接するときの姿勢が決まる。
【0070】
図3に示すように、ノブ保持構造1がドアトリム80に組み付けられた後、インジケータノブ7をノブ挿通穴87に挿入する。このときに、導入部40は、下向きに逆テーパ形状に広がる導入曲面40Aにより、インジケータノブ7を案内部30にスムーズに導く。その結果、
図2及び
図7に示すように、ノブ保持構造1は、インジケータノブ7の上端がベゼル20の枠形状部分よりも上方に位置する状態で、インジケータノブ7を保持する。
【0071】
図6に示すように、この状態で、案内部30の各案内突起32と押圧片31とは、軸心X1を囲む3か所でインジケータノブ7の外周面に当接することにより、インジケータノブ7を上下に案内する。そして、インジケータノブ7ががたついたり、軸心X1に対して傾斜したりする場合、押圧片31が軸心X1の径外方向に弾性変形してインジケータノブ7に適度な押圧力を作用させる。これにより、各案内突起32と押圧片31とがインジケータノブ7の外周面に当接する状態が好適に維持される。
【0072】
図7に示すように、各係合部25は、ノブ挿通穴87に挿入されたインジケータノブ7によって、軸心X1の径内方向への弾性変形が規制される。その結果、各係合部25の爪25Aが各被係合部15から外れ難い。
【0073】
なお、ノブ保持構造1が右側のサイドドアである車両ドア8に適用される場合、リテーナ10の変更はないが、ドアトリム80におけるノブ挿通穴87と第1凹部81と第2凹部82との位置関係が上記構成とは勝手違いの同一構成となり、ベゼル20も上記構成とは勝手違いの同一構成となる。
【0074】
<作用効果>
実施例1のノブ保持構造1では、
図3に示すように、インジケータノブ7をノブ挿通穴87に挿入するときに、導入部40が導入曲面40Aにより、インジケータノブ7を案内部30に導く。この際、導入曲面40Aがインジケータノブ7に面で当接するので、インジケータノブ7に対する局所的な押圧を抑制できる。
【0075】
したがって、実施例1のノブ保持構造1では、インジケータノブ7に傷が付くことを抑制できる。その結果、このノブ保持構造1では、車室内の美観の低下を抑制できる。
【0076】
また、このノブ保持構造1では、導入曲面40Aは、軸心X1周りで180°を超える範囲でインジケータノブ7を囲んでいる。より詳しくは、導入曲面40Aは、軸心X1を中心とする略円環状の曲面であり、インジケータノブ7の全周を囲んでいる。この構成により、導入曲面40Aがインジケータノブ7に広い面で当接するので、インジケータノブ7に対する局所的な押圧を一層抑制できる。
【0077】
さらに、このノブ保持構造1は、
図4及び
図5に示すように、ドアトリム80に下から当接するリテーナ10に案内部30及び導入部40が形成され、ドアトリム80に上から当接するベゼル20がリテーナ10と共にドアトリム80を挟持し、ノブ挿通穴87の外周縁を覆う。この構成により、リテーナ10及びベゼル20を簡素化できるとともに、ドアトリム80におけるノブ挿通穴87の周辺の形状を簡素化できる。
【0078】
また、このノブ保持構造1では、
図7に示すように、ベゼル20の各係合部25は、ノブ挿通穴87に挿入されたインジケータノブ7によって、軸心X1の径内方向への弾性変形が規制される。この構成により、各係合部25の爪25Aがリテーナ10の各被係合部15から外れ難いので、リテーナ10とベゼル20とがドアトリム80を挟持する状態を確実に維持できる。
【0079】
さらに、このノブ保持構造1では、
図4及び
図5に示すように、ドアトリム80において、第1凹部81と第2凹部82とは、軸心X1を中心とする非点対称である。ベゼル20には、第1凹部81に嵌合する第1凸部21と、第2凹部82に嵌合する第2凸部22と、リテーナ10の第3凹部13に嵌合する3凸部23とが形成されている。この構成により、ベゼル20の形状が左側のサイドドアである車両ドア8用と、右側のサイドドアである車両ドア8用とで異なる場合でも、第1~3凹部81、82、13と第1~3凸部21、22、23との嵌合により、誤組み付けを抑制できる。
【0080】
また、このノブ保持構造1では、
図4~
図6に示すように、案内部30は、軸心X1に沿って延びてインジケータノブ7に当接し、かつ軸心X1の径外方向に弾性変形可能な押圧片31を含んでいる。この構成により、案内部30によって上下に案内されるインジケータノブ7ががたついたり、軸心X1に対して傾斜したりする場合、押圧片31が軸心X1の径外方向に弾性変形してインジケータノブ7に適度な押圧力を作用させる。これにより、各案内突起32と押圧片31とがインジケータノブ7の外周面に当接する状態が好適に維持される。その結果、案内部30は、インジケータノブ7のがたつきを抑制しながらインジケータノブ7をスムーズに案内できる。
【0081】
(実施例2)
図8~
図10に示すように、実施例2のノブ保持構造2は、実施例1のノブ保持構造1に係るリテーナ10の代わりに、ドアトリム80に一体に形成された案内部230及び導入部240を採用するとともに、実施例1に係るベゼル20をそのまま採用している。
【0082】
実施例2のその他の構成は実施例1と同様である。このため、実施例1と同一の構成については同一の符号を付して説明を省略又は簡略する。
【0083】
図8に示すように、ノブ保持構造2において、ドアトリム80は、軸心X1を中心として上壁部80Uの下面から下向きに延びる円筒部分を含んでいる。
【0084】
図9及び
図10に示すように、ノブ挿通穴87、第1凹部81及び第2凹部82は、ドアトリム80の円筒部分に囲まれて、実施例1よりも下方までに延びている。
【0085】
図8及び
図10に示すように、ドアトリム80の円筒部分には、2つの被係合部285が形成されている。各被係合部285は、ドアトリム80の円筒部分の内周側で軸心X1に対して前方及び後方の位置に形成された段部である。
【0086】
図8及び
図9に示すように、ドアトリム80の円筒部分には、案内部230が形成されている。案内部230は、2つの案内突起232と、押圧片231とを含んでいる。
【0087】
各案内突起232は、ドアトリム80の円筒部分の内周側におけるノブ挿通穴87よりも小径となった内フランジ部分287Aに配置されている。各案内突起232は、軸心X1に対して車両外側に位置し、かつ前後方向において互いに離間している。各案内突起232は、軸心X1の径内方向に突出している。
【0088】
押圧片231は、ドアトリム80の円筒部分の内周側における軸心X1に対して車両内側に位置する部分から軸心X1に沿って上向きに延びる片持ち梁形状とされている。押圧片231の上端部は、軸心X1の径内方向に折れ曲がっている。押圧片231は、その上端部を軸心X1の径外方向に変位させるように弾性変形可能である。
【0089】
各案内突起232と押圧片231とは、軸心X1を囲む3か所でインジケータノブ7の外周面に当接するようになっている。
【0090】
図8及び
図10に示すように、ドアトリム80の円筒部分における案内部230よりも下方には、導入部240が形成されている。
【0091】
導入部240は、内フランジ部分287Aの下端縁に接続する導入曲面240Aを含んでいる。導入曲面240Aは、ノブ挿通穴87の軸心X1周りでインジケータノブ7を囲み、下向きに逆テーパ形状に広がる曲面である。
【0092】
本実施例では、導入曲面240Aは、軸心X1周りで180°を超える範囲でインジケータノブ7を囲むようになっている。より詳しくは、導入曲面240Aは、軸心X1を中心とする略円環状の曲面であり、インジケータノブ7の全周を囲むようになっている。
【0093】
ベゼル20は、以下のようにしてドアトリム80に組み付けられる。すなわち、
図8に示すように、ベゼル20をドアトリム80の上壁部80Uよりも上方の位置からノブ挿通穴87に向かって下降させる。この際、各係合部25は、爪25Aがノブ挿通穴87の内周面に摺接することで軸心X1の径内方向に弾性変形し、ノブ挿通穴87を通過した後に弾性変形しなくなる。これにより、
図10に示すように、各係合部25の爪25Aは、各被係合部285に係合し、ベゼル20がドアトリム80から離間することを規制する。
【0094】
そして、第1凸部21が第1凹部81に嵌合し、かつ第2凸部22が第2凹部82に嵌合することにより、ベゼル20がドアトリム80に対して位置決めされる。その結果、ベゼル20の枠形状部分は、ドアトリム80の上壁部80Uに上から当接してノブ挿通穴87の外周縁を覆う。
【0095】
この状態で、ドアトリム80の弾性フォーム層80Bは、ベゼル20の枠形状部分に押圧されて若干凹むことにより、復元力を発揮する。この復元力により、各係合部25の爪25Aが各被係合部285にがたつきなく係合するので、異音の発生を抑制できる。
【0096】
上記構成である実施例2のノブ保持構造2では、実施例1のノブ保持構造1と同様に、導入曲面240Aによってインジケータノブ7に傷が付くことを抑制できる。その結果、このノブ保持構造2では、車室内の美観の低下を抑制できる。
【0097】
また、このノブ保持構造2では、案内部230及び導入部240がドアトリム80に一体に形成されている。この構成により、ノブ保持構造2をドアトリム80に組み付ける手間を簡素化できる。
【0098】
(実施例3)
図11~
図13に示すように、実施例3のノブ保持構造3では、実施例1のノブ保持構造1に係るドアトリム80の代わりに、硬質樹脂の単層構成であるドアトリム380を採用するとともに、実施例1に係るリテーナ10をそのまま採用する一方、実施例1に係るベゼル20を無くしている。
【0099】
実施例3のその他の構成は実施例1と同様である。このため、実施例1と同一の構成については同一の符号を付して説明を省略又は簡略する。
【0100】
ドアトリム380の上壁部380Uには、軸心X1を中心とするノブ挿通穴387が貫設されている。ノブ挿通穴387の内径は、実施例1に係るベゼル20の丸穴27の内径と略等しく設定されている。
【0101】
図12に示すように、ドアトリム380の上壁部380Uの下面には、ドアトリム380に対してリテーナ10が当接するときの姿勢を決めるための第3凸部383と、4つの当接凸部388とが形成されている。
【0102】
第3凸部383は、ドアトリム380の上壁部380Uにおける軸心X1よりも車両外側でノブ挿通穴387の外周縁に隣接する箇所に配置され、軸心X1に沿ってリテーナ10に接近するように下向きに突出している。第3凸部383は、リテーナ10の第3凹部13に嵌合可能である。
【0103】
各当接凸部388は、ドアトリム380の上壁部380Uにおける軸心X1よりも前方でノブ挿通穴387の外周縁に隣接する2か所と、軸心X1よりも後方でノブ挿通穴387の外周縁に隣接する2か所とに配置され、それぞれ下向きに短く突出している。各当接凸部388は、リテーナ10の各当接凸部18と整合するように設けられている。
【0104】
また、ドアトリム380の上壁部380Uの下面には、2つの係合部385が形成されている。各係合部385は、ドアトリム380の上壁部380Uにおける軸心X1よりも前方及び後方でノブ挿通穴387の外周縁に隣接する2か所からそれぞれ軸心X1に沿ってリテーナ10に接近するように下向きに延びる片持ち梁形状とされている。
【0105】
各係合部385の先端には、爪385Aが形成されている。各係合部385の爪385Aは、軸心X1の径外方向に突出しており、リテーナ10の各被係合部15に係合可能となっている。各係合部385は、爪385Aを軸心X1の径内方向に変位させるように弾性変形可能である。
【0106】
リテーナ10は、以下のようにしてドアトリム380に組み付けられる。すなわち、
図11に示すように、リテーナ10をドアトリム380の上壁部380Uよりも下方の位置からノブ挿通穴387に向かって上昇させる。この際、ドアトリム380の第3凸部383は、リテーナ10の第3凹部13に嵌合する。また、ドアトリム380の各係合部385は、リテーナ10の筒形状部分の内周側に進入する。
【0107】
各係合部385は、爪385Aが各被係合部15に摺接することで軸心X1の径内方向に弾性変形し、爪385Aが各被係合部15を乗り越えた後に弾性変形しなくなる。これにより、
図13に示すように、各係合部385の爪385Aは、各被係合部15に係合し、リテーナ10がドアトリム380から離間することを規制する。
【0108】
また、この状態で、
図11に示すリテーナ10の各当接凸部18が
図12に示すドアトリム380の各当接凸部388に下から当接することにより、ドアトリム380に対してリテーナ10が当接するときの姿勢が決まる。その結果、リテーナ10がドアトリム380に強固に固定される。
【0109】
上記構成である実施例3のノブ保持構造3では、実施例1、2のノブ保持構造1、2と同様に、導入曲面40Aによってインジケータノブ7に傷が付くことを抑制できる。その結果、このノブ保持構造3では、車室内の美観の低下を抑制できる。
【0110】
また、このノブ保持構造3では、案内部30及び導入部40が形成されたリテーナ10がドアトリム380に一体に固定されている。この構成により、車両ドア8のノブ保持構造3をドアトリム380に組み付ける作業を簡素化できる。
【0111】
以上において、本発明を実施例1~3に即して説明したが、本発明は上記実施例1~3に制限されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更して適用できることはいうまでもない。
【0112】
実施例1~3では、導入曲面40A、240Aは、軸心X1を中心とする略円環状の曲面であり、インジケータノブ7の全周を囲むようになっているが、本発明はこの構成には限定されない。例えば、導入曲面40A、240Aを軸心X1の周方向において2~数個に分割した構成も本発明に含まれる。この場合、導入曲面40A、240Aの分割部分における軸心X1の周方向の端縁を丸め処理することが好ましく、分割部分同志の隙間も狭くすることが好ましい。また、導入曲面は、軸心X1を囲む略多角環状の曲面であってもよい。さらに、
図14に変形例のノブ保持構造を示す。この変形例では、実施例1のノブ保持構造1に係るリテーナ10について、軸心X1よりも車両外側に位置する部分の一部を切り欠いて、導入部40が略C字形状の曲面である導入曲面40Cを含むように変更している。導入曲面40Cにおける軸心X1の周方向の一端縁と他端縁とは丸め処理されている。これにより、導入曲面40Cは、軸心X1周りで180°を超える範囲でインジケータノブ7を囲む。その結果、この変形例では、実施例1~3のノブ保持構造1~3と同様に、導入曲面40Cによってインジケータノブ7に傷が付くことを抑制できる。
【0113】
実施例1~3では、ノブ保持構造1~3が車両の左側面に設けられた車両ドア8に適用されているが、本発明はこの構成には限定されない。例えば、ノブ保持構造が適用される車両ドアは、車両の右側面に設けられたサイドドアでもよく、また、インジケータノブが設けられていれば、テールゲート等のサイドドアとは異なるドアであってもよい。
【0114】
実施例1に係る2つの係合部25と同様の形状で上向きに突出する係合部をリテーナ10に形成し、実施例1に係る2つの被係合部15と同様の形状で逆向きの被係合部をベゼル20に形成し、双方の係合によってリテーナ10とベゼル20とがドアトリム80を挟持するようにしてもよい。
【0115】
実施例1に係る第3凸部23と同様の形状で上向きに突出する第3凸部をリテーナ10に形成し、実施例1に係る第3凹部13と同様の形状で逆向きに凹む第3凹部をベゼル20に形成し、双方が嵌合するようにしてもよい。
【0116】
実施例1~3に係るインジケータノブ7について、ユーザがインジケータノブ7に対して手動で行う施錠操作を受けて施錠表示位置P2に押し下げられることでロック装置90の施錠解錠機構を施錠状態に切り替える一方、ユーザがインジケータノブ7に対して手動で行う解錠操作を受けて解錠表示位置P1に引き上げられることでロック装置90の施錠解錠機構を解錠状態に切り替えるようになっていてもよい。
【0117】
実施例2からベゼル20を無くした構成も、本発明に含まれる。この場合、実施例2に係る第1凹部81及び第2凹部82を無くし、ノブ挿通穴87の内径もベゼル20の丸穴27と略等しい大きさに変更してもよい。
【産業上の利用可能性】
【0118】
本発明は、自動車、バス又は産業車両等の車両に利用可能である。
【符号の説明】
【0119】
8…車両ドア
1、2、3…ノブ保持構造
80、380…ドアトリム
87、387…ノブ挿通穴
7…インジケータノブ
30、230…案内部
40、240…導入部
X1…ノブ挿通穴の軸心
40A、240A、40C…導入曲面
10…第1部材(リテーナ)
20…第2部材(ベゼル)
25…複数の係合部
25A…爪
81…第1凹部
82…第2凹部
13…第3凹部
21…第1凸部
22…第2凸部
23…第3凸部
31、231…押圧片