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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-02-09
(45)【発行日】2022-02-18
(54)【発明の名称】容量素子及びプラズマ処理装置
(51)【国際特許分類】
   H01G 5/013 20060101AFI20220210BHJP
   H05H 1/46 20060101ALI20220210BHJP
   C23C 16/509 20060101ALI20220210BHJP
【FI】
H01G5/013 200
H05H1/46 L
C23C16/509
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2018013771
(22)【出願日】2018-01-30
(65)【公開番号】P2019134022
(43)【公開日】2019-08-08
【審査請求日】2021-01-15
(73)【特許権者】
【識別番号】000003942
【氏名又は名称】日新電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100121441
【弁理士】
【氏名又は名称】西村 竜平
(74)【代理人】
【識別番号】100154704
【弁理士】
【氏名又は名称】齊藤 真大
(72)【発明者】
【氏名】中田 誓治
(72)【発明者】
【氏名】安東 靖典
(72)【発明者】
【氏名】久保田 清
【審査官】北原 昂
(56)【参考文献】
【文献】特開平8-69945(JP,A)
【文献】特開平2-32515(JP,A)
【文献】実開平6-44207(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01G 5/013
H05H 1/46
C23C 16/509
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いに対向して設けられた一対の固定電極と、
前記一対の固定電極の間に出入可能に設けられた固体誘電体と、
前記一対の固定電極及び前記固体誘電体を収容する収容容器と、
前記収容容器内に導入されて前記一対の固定電極の間に介在する液体誘電体とを具備する、容量素子。
【請求項2】
前記収容容器が、前記液体誘電体を導入する導入ポート及び前記液体誘電体を導出する導出ポートを有している、請求項1記載の容量素子。
【請求項3】
前記一対の固定電極の一方が、前記導入ポートに設けられた第1のフランジ部材と、前記第1のフランジ部材に支持された複数の第1の固定金属板とを有し、
前記一対の固定電極の他方が、前記導出ポートに設けられた第2のフランジ部材と、前記第1の固定金属板の間に位置するように前記第2のフランジ部材に支持された複数の第2の固定金属板とを有し、
前記第1のフランジ部材及び前記第2のフランジ部材に前記液体誘電体が流通可能な開口が形成されている、請求項2記載の容量素子。
【請求項4】
前記固体誘電体が、
前記収容容器の側壁に回転軸周りに回転可能に支持された回転軸体と、
前記回転軸体に支持されて前記回転軸周りに回転し、前記第1の固定金属板及び前記第2の固定金属板の間を出入する複数の誘電体板とを有している、請求項3記載の容量素子。
【請求項5】
前記複数の誘電体板が、前記第1の固定金属板及び前記第2の固定金属板の間から抜き出された状態において、前記第1の固定金属板及び前記第2の固定金属板の何れにも対向しない、請求項4記載の容量素子。
【請求項6】
前記液体誘電体が水である、請求項1乃至5のうち何れか一項に記載の容量素子。
【請求項7】
前記固体誘電体の比誘電率が水の比誘電率よりも小さい、請求項1乃至6のうち何れか一項に記載の容量素子。
【請求項8】
互いに対向して設けられた一対の固定電極と、
前記一対の固定電極の間に設けられた固体誘電体と、
前記一対の固定電極及び前記固体誘電体を収容する収容容器と、
前記収容容器内に導入されて前記一対の固定電極の間に介在する液体誘電体とを具備し、
前記収容容器内の前記液体誘電体の容量を変更可能に構成されている、容量素子。
【請求項9】
請求項1乃至8のうち何れか一項に記載の容量素子と、
前記容量素子と電気的に接続されるとともに、高周波電流が流されて、プラズマを発生させるためのアンテナ導体とを具備し、
前記液体誘電体が前記アンテナ導体の冷却液である、プラズマ処理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、容量素子及びこの容量素子を備えたプラズマ処理装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
容量素子としては、特許文献1に示すように、互いに対向する一対の電極と、これらの電極の間に出入可能に設けられた誘電体とを備え、誘電体を出入させることにより静電容量が可変に構成された所謂可変コンデンサと称されるものがある。
【0003】
このような可変コンデンサにおいて、仮に一対の電極と誘電体との間に隙間が設けられていないと、一対の電極の間に誘電体を出入させることで電極や誘電体が傷ついてしまうという問題が生じる。
【0004】
一方、電極と誘電体との間に隙間を設けた場合は、空気の比誘電率が低い(約1.0)ので、静電容量が大幅に低下してしまうという問題が生じる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開平8-69945号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
そこで本発明は、上記問題点を解決すべくなされたものであり、一対の電極やこれらの電極の間に出入可能に設けられた誘電体を傷つけることなく、しかも静電容量の大幅な低下を防ぎつつ、静電容量を可変にすることをその主たる課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
すなわち本発明に係る容量素子は、互いに対向して設けられた一対の固定電極と、前記一対の固定電極の間に出入可能に設けられた固体誘電体と、前記一対の固定電極及び前記固体誘電体を収容する収容容器と、前記収容容器内に導入されて前記一対の固定電極の間に介在する液体誘電体とを具備することを特徴とするものである。
【0008】
このように構成された容量素子であれば、一対の固定電極の間に液体誘電体を介在させているので、固定電極と固体誘電体との間に隙間を設ければ、この隙間を液体誘電体で満たすことができる。これにより、固定電極や固体誘電体を傷つけることなく、一対の固定電極の間に固体誘電体を出入させることができるうえ、静電容量の大幅な低下を防ぐことができる。
【0009】
前記収容容器が、前記液体誘電体を導入する導入ポート及び前記液体誘電体を導出する導出ポートを有していることが好ましい。
このような構成であれば、収容容器の内部を液体誘電体が流れるので、収容容器内の液体誘電体が置換される。これにより、液体誘電体の温度上昇による比誘電率の変化などに起因した静電容量の不意の変動を抑えることができる。
【0010】
前記一対の固定電極の一方が、前記導入ポートに設けられた第1のフランジ部材と、前記第1のフランジ部材に支持された複数の第1の固定金属板とを有し、前記一対の固定電極の他方が、前記導出ポートに設けられた第2のフランジ部材と、前記第1の固定金属板の間に位置するように前記第2のフランジ部材に支持された複数の第2の固定金属板とを有し、前記第1のフランジ部材及び前記第2のフランジ部材に前記液体誘電体が流通可能な開口が形成されていることが好ましい。
このような構成であれば、第1の固定金属板や第2の固定金属板を導入ポートや導出ポートを介して収容容器内に挿入しているので、これらの固定金属板を挿入するための別のポートを収容容器に形成する必要がなく、製造の容易化を図れる。
【0011】
具体的な実施態様としては、前記固体誘電体が、前記収容容器の側壁に回転軸周りに回転可能に支持された回転軸体と、前記回転軸体に支持されて前記回転軸周りに回転し、前記第1の固定金属板及び前記第2の固定金属板の間を出入する複数の誘電体板とを有している構成が挙げられる。
このような構成であれば、収容容器と回転軸体との間を軸シールによりシールすることができ、例えば第1の固定金属板及び第2の固定金属板の間で誘電体板を並進移動させる構成に比べてシール性が良い。
【0012】
前記複数の誘電体板が、前記第1の固定金属板及び前記第2の固定金属板の間から抜き出された状態において、前記第1の固定金属板及び前記第2の固定金属板の何れにも対向しないことが好ましい。
このような構成であれば、第1の固定金属板や第2の固定金属板を収容容器から取り外すことなく、誘電体板を収容容器に対して挿脱することができ、組み立て性やメンテナンス性が良い。
【0013】
前記液体誘電体が水であることが好ましい。これならば、液体誘電体として高抵抗の水を用いることにより、電気絶縁性を担保することができる。
【0014】
前記固体誘電体の比誘電率が水の比誘電率よりも小さいことが好ましい。これならば、液体誘電率として水を用いた場合に、固体誘電率と固体金属板との対向面積に比例して静電容量を減少させることができる。
【0015】
また、互いに対向して設けられた一対の固定電極と、前記一対の固定電極の間に設けられた固体誘電体と、前記一対の固定電極及び前記固体誘電体を収容する収容容器と、前記収容容器内に導入されて前記一対の固定電極の間に介在する液体誘電体とを具備し、前記収容容器内の前記液体誘電体の容量を変更可能に構成されていることを特徴とする容量素子も、本発明の1つである。
このように構成された容量素子によれば、液体誘電体の容量を変更することで静電容量を変えることができるので、一対の固定電極や固体誘電体が傷つくことを防ぐことができる。そのうえ、一対の固定電極の間に液体誘電体を介在させているので、これらの間が空気により満たされている場合に比べて、静電容量の大幅な低下を抑えることができる。
【0016】
さらに、本発明に係るプラズマ処理装置は、上述した容量素子と、前記容量素子と電気的に接続されるとともに、高周波電流が流されて、プラズマを発生させるためのアンテナ導体とを具備し、前記液体誘電体が前記アンテナ導体の冷却液であることを特徴とするものである。
このように構成されたプラズマ処理装置であれば、プラズマ生成時に生じる熱によって高温になりがちなアンテナ導体を、液体誘電体を用いてアンテナ導体を冷却することができるので、アンテナ自体の破損又はその周辺構造の破損などを防ぐことができ、安定してプラズマを発生させることが可能となる。
【発明の効果】
【0017】
このように構成した本発明によれば、一対の固定電極やこれらの電極の間に出入可能に設けられた誘電体を傷つけることなく、しかも静電容量の大幅な低下を防ぎつつ、静電容量を可変にすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本実施形態のプラズマ処理装置の構成を模式的に示す縦断面図である。
図2】同実施形態のプラズマ処理装置の構成を模式的に示す横断面図である。
図3】同実施形態の可変コンデンサを模式的に示す横断面図である。
図4】同実施形態の可変コンデンサを模式的に示す縦断面図である。
図5】同実施形態の可変コンデンサを導入ポート側から見た側面図である。
図6】同実施形態の固定金属板及び可動誘電体が対向しない状態を示す模式図である。
図7】同実施形態の第1の固定電極及び第2の固定電極の構成を示す模式図である。
図8】同実施形態の固定金属板及び可動金属板が対向した状態を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下に、本発明に係るプラズマ処理装置の一実施形態について、図面を参照して説明する。
【0020】
<装置構成>
本実施形態のプラズマ処理装置100は、誘導結合型のプラズマPを用いて基板Wに処理を施すものである。ここで、基板Wは、例えば、液晶ディスプレイや有機ELディスプレイ等のフラットパネルディスプレイ(FPD)用の基板、フレキシブルディスプレイ用のフレキシブル基板等である。また、基板Wに施す処理は、例えば、プラズマCVD法による膜形成、エッチング、アッシング、スパッタリング等である。
【0021】
なお、このプラズマ処理装置100は、プラズマCVD法によって膜形成を行う場合はプラズマCVD装置、エッチングを行う場合はプラズマエッチング装置、アッシングを行う場合はプラズマアッシング装置、スパッタリングを行う場合はプラズマスパッタリング装置とも呼ばれる。
【0022】
具体的にプラズマ処理装置100は、図1及び図2に示すように、真空排気され且つガスGが導入される真空容器2と、真空容器2内に配置された直線状のアンテナ導体3と、真空容器2内に誘導結合型のプラズマPを生成するための高周波をアンテナ導体3に印加する高周波電源4とを備えている。なお、アンテナ導体3に高周波電源4から高周波を印加することによりアンテナ導体3には高周波電流IRが流れて、真空容器2内に誘導電界が発生して誘導結合型のプラズマPが生成される。
【0023】
真空容器2は、例えば金属製の容器であり、その内部は真空排気装置5によって真空排気される。真空容器2はこの例では電気的に接地されている。
【0024】
真空容器2内に、例えば流量調整器(図示省略)及びアンテナ導体3に沿う方向に配置された複数のガス導入口21を経由して、ガスGが導入される。ガスGは、基板Wに施す処理内容に応じたものにすれば良い。
【0025】
また、真空容器2内には、基板Wを保持する基板ホルダ6が設けられている。この例のように、基板ホルダ6にバイアス電源7からバイアス電圧を印加するようにしても良い。バイアス電圧は、例えば負の直流電圧、負のバイアス電圧等であるが、これに限られるものではない。このようなバイアス電圧によって、例えば、プラズマP中の正イオンが基板Wに入射する時のエネルギーを制御して、基板Wの表面に形成される膜の結晶化度の制御等を行うことができる。基板ホルダ6内に、基板Wを加熱するヒータ61を設けておいても良い。
【0026】
アンテナ導体3は、真空容器2内における基板Wの上方に、基板Wの表面に沿うように(例えば、基板Wの表面と実質的に平行に)複数配置されている。
【0027】
アンテナ導体3の両端部付近は、真空容器2の相対向する側壁をそれぞれ貫通している。アンテナ導体3の両端部を真空容器2外へ貫通させる部分には、絶縁部材8がそれぞれ設けられている。この各絶縁部材8を、アンテナ導体3の両端部が貫通しており、その貫通部は例えばパッキン91によって真空シールされている。各絶縁部材8と真空容器2との間も、例えばパッキン92によって真空シールされている。なお、絶縁部材8の材質は、例えば、アルミナ等のセラミックス、石英、又はポリフェニンサルファイド(PPS)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)等のエンジニアリングプラスチック等である。
【0028】
さらに、アンテナ導体3において、真空容器2内に位置する部分は、直管状の絶縁カバー10により覆われている。この絶縁カバー10の両端部は絶縁部材8によって支持されている。なお、絶縁カバー10の材質は、例えば、石英、アルミナ、フッ素樹脂、窒化シリコン、炭化シリコン、シリコン等である。
【0029】
そして、複数のアンテナ導体3は、内部に冷却液CLが流通する流路3sを有する中空構造のものである。本実施形態では、直管状をなす金属パイプ31である。金属パイプ31の材質は、例えば、銅、アルミニウム、これらの合金、ステンレス等である。
【0030】
なお、冷却液CLは、真空容器2の外部に設けられた循環流路11によりアンテナ導体3を流通するものであり、前記循環流路11には、冷却液CLを一定温度に調整するための熱交換器などの温調機構111と、循環流路11において冷却液CLを循環させるためのポンプなどの循環機構112とが設けられている。冷却液CLとしては、電気絶縁の観点から、高抵抗の水が好ましく、例えば純水またはそれに近い水が好ましい。その他、例えばフッ素系不活性液体などの水以外の液冷媒を用いても良い。
【0031】
また、複数のアンテナ導体3は、図2に示すように、接続導体12によって接続されて1本のアンテナ構造となるように構成されている。つまり、互いに隣接するアンテナ導体3における真空容器2の外部に延出した端部同士を接続導体12によって電気的に接続している。具体的には、互いに隣接するアンテナ導体3において一方のアンテナ導体3の端部と他方のアンテナ導体3の端部とを接続導体12により電気的に接続している。
【0032】
ここで、接続導体12により接続される2つのアンテナ導体3の端部は同じ側壁側に位置する端部である。これにより、複数のアンテナ導体3は、互いに隣接するアンテナ導体3に互いに逆向きの高周波電流が流れるように構成される。
【0033】
そして、接続導体12は内部に流路を有しており、その流路に冷却液CLが流れるように構成されている。具体的には、接続導体12の一端部は、一方のアンテナ導体3の流路と連通しており、接続導体12の他端部は、他方のアンテナ導体3の流路と連通している。これにより、互いに隣接するアンテナ導体3において一方のアンテナ導体3を流れた冷却液CLが接続導体12の流路を介して他方のアンテナ導体3に流れる。これにより、共通の冷却液CLにより複数のアンテナ導体3を冷却することができる。また、1本の流路によって複数のアンテナ導体3を冷却することができるので、循環流路11の構成を簡略化することができる。
【0034】
複数のアンテナ導体3のうち接続導体12で接続されていない一方の端部が給電端部3aとなり、当該給電端部3aには、整合回路41を介して高周波電源4が接続される。また、他方の端部である終端部3bは直接接地されている。なお、終端部3bは、コンデンサ又はコイル等を介して接地しても良い。
【0035】
上記構成によって、高周波電源4から、整合回路41を介して、アンテナ導体3に高周波電流IRを流すことができる。高周波の周波数は、例えば、一般的な13.56MHzであるが、これに限られるものではない。
【0036】
<接続導体12の構成>
次に接続導体12について、図3図7を参照して詳細に説明する。なお、図3及び図4などにおいて一部のシール部材などは記載を省略している。
【0037】
接続導体12は、図3及び図4に示すように、アンテナ導体3に電気的に接続される容量素子たる可変コンデンサ13と、当該可変コンデンサ13と一方のアンテナ導体3の端部とを接続する第1の接続部14と、可変コンデンサ13と他方のアンテナ導体3の端部とを接続する第2の接続部15とを有している。
【0038】
第1の接続部14及び第2の接続部15は、アンテナ導体3の端部を取り囲むことによって、アンテナ導体3に電気的に接触するとともに、アンテナ導体3の端部に形成された開口部3Hから冷却液CLを可変コンデンサ13に導くものである。これら接続部14、15の材質は、例えば、銅、アルミニウム、これらの合金、ステンレス等である。
【0039】
本実施形態の各接続部14、15は、アンテナ導体3の端部において、開口部3Hよりも真空容器2側でOリングなどのシール部材S1を介して液密に装着されるものであり、開口部3Hよりも外側は拘束しないように構成されている(図3参照)。これにより、接続部14、15に対するアンテナ導体3の若干の傾きを許容する構成としている。
【0040】
可変コンデンサ13は、一方のアンテナ導体3に電気的に接続される第1の固定電極16と、他方のアンテナ導体3に電気的に接続されるとともに、第1の固定電極16との間でコンデンサを形成する第2の固定電極17と、第1の固定電極16及び第2の固定電極17の間に出入可能に設けられた固体誘電体18とを有している。
【0041】
本実施形態の可変コンデンサ13は、固体誘電体18が所定の回転軸C周りに回転することによって、その静電容量を変更できるように構成されている。そして、可変コンデンサ13は、第1の固定電極16、第2の固定電極17及び固体誘電体18を収容する絶縁性を有する収容容器19を備えている。
【0042】
収容容器19は、一方のアンテナ導体3からの冷却液CLを導入する導入ポートP1と、冷却液CLを他方のアンテナ導体3に導出する導出ポートP2とを有している。導入ポートP1は、収容容器19の一方の側壁(図3では左側壁19a)に形成され、導出ポートP2は収容容器19の他方の側壁(図3では右側壁19b)に形成されており、導入ポートP1及び導出ポートP2は互いに対向した位置に設けられている。なお、本実施形態の収容容器19は、内部に中空部を有する概略直方体形状をなすものであるが、その他の形状であってもよい。
【0043】
第1の固定電極16及び第2の固定電極17は、固体誘電体18の回転軸Cに沿った互いに異なる位置に設けられている。本実施形態では、第1の固定電極16は、収容容器19の導入ポートP1から収容容器19の内部に挿入して設けられている。また、第2の固定電極17は、収容容器19の導出ポートP2から収容容器19の内部に挿入して設けられている。
【0044】
第1の固定電極16は、互いに対向するように設けられた複数の第1の固定金属板161を有している。また、第2の固定電極17は、第1の固定金属板161の間に位置するように設けられた複数の第2の固定金属板171を有している。これらの固定金属板161、171はそれぞれ、回転軸Cに沿って略等間隔に設けられており、第1の固定金属板161は、互いに隣り合う第2の固定金属板171の中間に位置し、第2の固定金属板171は、互いに隣り合う第1の固定金属板161の中間に位置している。なお、第1の固定金属板161と第2の固定金属板171とのギャップは例えば1.5mm~3.0mmである。
【0045】
複数の第1の固定金属板161は、互いに同一形状をなすものであり、第1のフランジ部材162に支持されている。第1のフランジ部材162は、収容容器19の導入ポートP1が形成された左側壁19aに固定されており、ここでは導入ポートP1に連通する貫通孔162Hが形成されている。また、複数の第2の固定金属板171は、互いに同一形状をなすものであり、第2のフランジ部材172に支持されている。第2のフランジ部材172は、収容容器19の導出ポートP2が形成された右側壁19bに固定されており、ここでは導出ポートP2に連通する貫通孔172Hが形成されている。
【0046】
第1の固定金属板161及び第2の固定金属板171は、図6及び図7に示すように、平板状をなすものであり、平面視において、互いに対向する対面領域Zを有する。なお、図7は説明の便宜上、第1の固定電極16及び第2の固定電極17を収容容器19から取り外した状態を示している。
【0047】
対面領域Zは、各固定金属板161、171の先端側に設定されており、各固定金属板161、171の対面領域Zが平面視において重なり合うことにより、これらの対面領域Zの間がコンデンサとして形成される。ここでの対面領域Zは、例えば回転軸Cを中心とした部分円環状をなし、ここでは半円環状としてあるが、矩形状やその他の種々の形状としても構わない。
【0048】
固体誘電体18は、図3に示すように、収容容器19の側壁(図3では前側壁19c)に回転軸C周りに回転可能に軸支される回転軸体181と、当該回転軸体181に支持されて第1の固定電極16及び第2の固定電極17の間に出入する可動誘電体板182とを有している。
【0049】
回転軸体181は、回転軸Cに沿って延びる直線状をなすものである。この回転軸体181は、その一端部が収容容器19の前側壁19cから外部に延出するように構成されている。そして、この収容容器19の前側壁19cにおいてOリングなどのシール部材S2により回転可能に支持される。ここでは、前側壁19cにおいて2つのOリングにより2点支持されている。また、回転軸体181の他端部は、収容容器19の内面に設けられた位置決め凹部191に回転可能に接触している。
【0050】
また、回転軸体181は、可動誘電体板182を支持する部分181xが金属製などの導電材料から形成され、収容容器19から外部に延出した部分181yが樹脂製などの絶縁材料から形成されている。
【0051】
可動誘電体板182は、第1の固定金属板161及び第2の固定金属板171の間それぞれに介在する平板状のものであり、回転軸Cに沿って互いに略等間隔に配置されている。ここでは、可動誘電体板182と第1の固定金属板161とが互いに離間するとともに、可動誘電体板182と第2の固定金属板171とが互いに離間しており、具体的には第1の固定金属板161及び第2の固定金属板171の中間に可動誘電体板182が配置されている。図3では、第1の固定金属板161を3枚、第2の固定金属板171を3枚とし、可動誘電体板182を5枚としているが、これに限られない。なお、可動誘電体板182の厚み寸法は例えば1mmである。
【0052】
これらの可動誘電体板182は、回転軸Cに直交するとともに、第1の固定金属板161や第2の固定金属板171と平行に設けられており、互いに同一形状をなす。具体的に可動誘電体板182は、図6に示すように、少なくとも第1の固定金属板161及び第2の固定金属板171の対面領域Zを含む形状であり、ここでは平面視において、部分円環状、より具体的には半円環状である。この可動誘電体板182の外径は、対面領域Zの外径と略同一としてあるが、対面領域Zよりも外径が大きくても良いし、小さくても良い。また、可動誘電体板182の形状は、半円環状などの部分円環状に限らず、矩形状やその他の種々の形状としても構わない。
【0053】
このように構成された可変コンデンサ13において固体誘電体18を回転させることによって、図8に示すように、可動誘電体板182における第1の固定金属板161や第2の固定金属板171と対向する対向面積A、すなわち可動誘電体板182における第1の固定金属板161及び第2の固定金属板171の間に介在している部分の対向面積Aが変化する。本実施形態では、各固定金属板161、171の回転軸C側の先端辺161a、171aが円弧状であり、固体誘電体18を回転させることによって、対向面積Aが固体誘電体18の回転角度θに比例して変化する。
【0054】
また、可動誘電体板182は、その全体が第1の固定金属板161及び第2の固定金属板171の間に介在する介在位置と、可動誘電体板182が第1の固定金属板161及び第2の固定金属板171の何れにも対向しない非介在位置との間で回転移動する。そして、可動誘電体板182が非介在位置にある状態では、図6に示すように、平面視において、可動誘電体板182における固定金属板161、171に臨む端辺182aと、固定金属板161、171における可動誘電体板182に臨む端辺161b、171bとの間に隙間Xを設けている。これにより、固体誘電体18を軸方向に取り外し可能にしている。本実施形態では、固体誘電体18を支持している前側壁19cを軸方向に沿って取り外すことによって固体誘電体18が取り外される。
【0055】
上記の構成において、収容容器19の導入ポートP1から冷却液CLが流入すると、収容容器19の内部が冷却液CLにより満たされる。これにより、第1の固定金属板161及び第2の固定金属板171の間が冷却液CLで満たされ、その冷却液CLが、可変コンデンサ13の誘電体となる。つまり、本実施形態の可変コンデンサ13は、液体誘電体と上述した固体誘電体18との2種類の誘電体を備えている。より詳細に説明すると、液体誘電体である冷却液CLは、ここでは水であり20℃で比誘電率が約80である。一方、固体誘電体18は、液体誘電体よりも比誘電率が小さいもの、すなわち水よりも比誘電率が小さいものである。より具体的には、固体誘電体18は、比誘電率が10以下のものであり、例えば比誘電率が3.8の石英や比誘電率が8.5のアルミナなどである。このように、固体誘電体18の比誘電率が液体誘電体の比誘電率よりも小さいので、可動誘電体板182を非介在位置から介在位置に回転移動させることにより、その回転角度θに応じて静電容量が減少する。
【0056】
ここで、本実施形態では、固定金属板161、171と可動誘電体板182との対向方向が、導入ポートP1及び導出ポートP2の対向方向と直交するように構成されている。つまり、固定金属板161、171及び可動誘電体板182が導入ポートP1及び導出ポートP2の対向方向に沿って設けられている。この構成により、収容容器19の内部を冷却液CLが流れやすくなる。その結果、収容容器19内の冷却液CLの置換が容易となり、可変コンデンサ13の冷却を効率良く行うことができる。また、導入ポートP1から流入した冷却液CLは固定金属板161、171及び可動誘電体板182の間に流入しやすく、固定金属板161、171及び可動誘電体板182の間から流出しやすい。その結果、固定金属板161、171及び可動誘電体板182の間の冷却液の置換が容易となり、液体誘電体たる冷却液CLの温度変化が抑えられる。これにより、可変コンデンサ13の静電容量を一定に維持しやすくなる。さらに、固定金属板161、171及び可動誘電体板182の間に気泡が滞留しにくくなる。
【0057】
<本実施形態の効果>
このように構成した本実施形態のプラズマ処理装置100によれば、第1の固定金属板161と可動誘電体板182との間や、第2の固定金属板171と可動誘電体板182との間に液体誘電体たる冷却液CLが介在しているので、固定金属板161、171や可動誘電体板182を傷つけることなく可動誘電体板182を回転させることができる。
そのうえ、第1の固定金属板161と可動誘電体板182との間や、第2の固定金属板171と可動誘電体板182との間に例えば空気が介在する場合に比べて、静電容量の大幅な低下を防ぐことができる。
【0058】
また、固体誘電体18が、回転軸体181を回転させることにより可動誘電体板182が第1の固定金属板161及び第2の固定金属板171の間を出入りするように構成されているので、例えば第1の固定金属板161及び第2の固定金属板171の間で可動誘電体板182を並進移動させる構成に比べてシール性が良い。
【0059】
さらに、可動誘電体板182が非介在位置にある状態において、可動誘電体板182が第1の固定金属板161及び第2の固定金属板171の何れにも対向しないので、第1の固定金属板161や第2の固定金属板171を収容容器19から取り外すことなく、固体誘電体18を収容容器19に対して挿脱することができ、組み立て性やメンテナンス性が良い。
【0060】
加えて、固体誘電体18として液体誘電体である冷却液CLよりも比誘電率が小さいものを用いているので、冷却液CLによって可変コンデンサの静電容量を大まかに定めつつ、その静電容量を固体誘電体18の回転により細やかに調整することができる。
【0061】
そのうえ、アンテナ導体3を冷却液CLにより冷却することができるので、プラズマPを安定して発生させることができる。また、可変コンデンサ13の誘電体をアンテナ導体3を流れる冷却液CLにより構成しているので、可変コンデンサ13を冷却しつつその静電容量の不意の変動を抑えることができる。
【0062】
<その他の変形実施形態>
なお、本発明は前記実施形態に限られるものではない。
【0063】
例えば、液体誘電体として、前記実施形態では冷却液CLたる水を用いていたが、水に限らず例えば油やイオン交換液など種々の液体を液体誘電体として用いて良い。なお、前記実施形態では、水の比誘電率が20℃で約80であることを述べたが、水等のように温度によって比誘電率が変化する液体誘電体を用いる場合、その使用温度は20℃に限らず種々の温度を選択して構わない。固体誘電体としては、その使用温度における液体誘電体の比誘電率も小さい比誘電率のものを用いることができる。また、比誘電率が周波数によって変化する液体誘電体を用いる場合においても、その使用周波数は特に限定されるものではない。
さらに、固体誘電体18としては、前記実施形態では液体誘電体の比誘電率よりも小さいものを用いていたが、液体誘電体の比誘電率よりも大きいものを用いても良い。この場合、可動誘電体板182を非介在位置から介在位置に回転移動させることにより、その回転角度θに応じて静電容量が増大する。
【0064】
前記実施形態では、可動誘電体板182が回転軸C周りに回転するものであったが、可動誘電体板182が一方向にスライド移動(並進移動)するものであってもよい。ここで、可動誘電体板182がスライド移動する構成としては、可動誘電体板182が固定金属板161、171との対向方向に直交する方向にスライドして対向面積が変化するものであってもよいし、可動誘電体板182が固定金属板161、171との対向方向に沿ってスライド移動して対向距離が変化するものであってもよい。
【0065】
さらに、前記実施形態では、可変コンデンサ13が、固体誘電体18を回転させることにより静電容量が変わるように構成されていたが、可変コンデンサ13としては、固体誘電体18を動かすことなく、収容容器19内における液体誘電体の容量を増減させることにより静電容量が変わるように構成されていても良い。
この場合、循環流路11を循環する冷却液とは別の液体を液体誘電体として収容容器19に収容させることが好ましく、その液体誘電体の容量の調整は自動或いは手動で行えば良い。
【0066】
さらに、前記実施形態では、可変コンデンサ13が互いに隣接するアンテナ導体3の間に設けられているが、アンテナ導体3と接地との間に設けられるものであってもよい。この場合、第1の固定電極16はアンテナ導体3に電気的に接続され、第2の固定電極17は接地される。さらに加えて、可変コンデンサ13は、整合回路41とアンテナ導体3との間に設けられても良い。この場合、第1の固定電極16は整合回路41に電気的に接続され、第2の固定電極17はアンテナ導体3に電気的に接続される。
【0067】
その上、前記実施形態では、アンテナ導体3は直線状をなすものであったが、湾曲又は屈曲した形状であっても良い。この場合、金属パイプが湾曲又は屈曲した形状であっても良いし、絶縁パイプが湾曲又は屈曲した形状であっても良い。
【0068】
また、本発明の可変コンデンサは、必ずしもプラズマ処理装置に用いる必要はなく、種々の装置に適用して構わない。
【0069】
その他、本発明は前記実施形態に限られず、その趣旨を逸脱しない範囲で種々の変形が可能であるのは言うまでもない。
【符号の説明】
【0070】
100・・・プラズマ処理装置
W・・・基板
P・・・誘導結合プラズマ
2・・・真空容器
3・・・アンテナ導体
3S・・・流路
CL・・・冷却液
13・・・可変コンデンサ
16・・・第1の固定電極
161・・・固定金属板
17・・・第2の固定電極
171・・・固定金属板
18・・・固体誘電体
C・・・回転軸
182・・・可動誘電体板
161a、171a・・・先端辺
161b、171b・・・端辺
182a・・・端辺
19・・・収容容器
P1・・・導入ポート
P2・・・導出ポート
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8