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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-02-09
(45)【発行日】2022-02-18
(54)【発明の名称】電源システム
(51)【国際特許分類】
   B62D 6/00 20060101AFI20220210BHJP
   B62D 5/04 20060101ALI20220210BHJP
   B60R 16/033 20060101ALI20220210BHJP
   B62D 101/00 20060101ALN20220210BHJP
   B62D 119/00 20060101ALN20220210BHJP
【FI】
B62D6/00
B62D5/04
B60R16/033 C
B62D101:00
B62D119:00
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2018025278
(22)【出願日】2018-02-15
(65)【公開番号】P2019137373
(43)【公開日】2019-08-22
【審査請求日】2021-01-12
(73)【特許権者】
【識別番号】000001247
【氏名又は名称】株式会社ジェイテクト
(74)【代理人】
【識別番号】110002310
【氏名又は名称】特許業務法人あい特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 文彦
【審査官】村山 禎恒
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-150672(JP,A)
【文献】特開2016-107933(JP,A)
【文献】特開2013-074741(JP,A)
【文献】特開2008-029126(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B62D 6/00-6/10
B62D 5/04
B60R 16/033
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電源装置と、前記電源装置を制御する制御装置とを含み、
前記電源装置が、
負荷に電力を供給する主電源と、
入力側端子と出力側端子とを有する補助電源であって、前記入力側端子が前記主電源に電源スイッチを介して電気的に接続された補助電源と、
前記補助電源の出力側端子に一端が電気的に接続された補助電源スイッチと、
前記主電源に基づいて前記補助電源を充電するための充電回路と、
前記補助電源から負荷への電力供給をオンオフする切替回路と、
前記主電源と前記負荷とをバイパススイッチを介して電気的に接続するバイパス回路とを含み、
前記充電回路は、
前記補助電源スイッチの他端と前記切替回路との接続点に一端が電気的に接続される第1スイッチング素子と、
前記第1スイッチング素子の他端に一端が電気的に接続され、他端が接地された第2スイッチング素子と、
これらのスイッチング素子の接続点に一端が電気的に接続され、前記電源スイッチと前記補助電源の前記入力側端子との接続点に他端が電気的に接続された昇圧コイルとを含み、
前記切替回路が、
前記第1スイッチング素子と前記補助電源スイッチの他端との接続点に一端が電気的に接続された第3スイッチング素子と、
前記第3スイッチング素子の他端に一端が電気的に接続され、前記電源スイッチと前記補助電源の前記入力側端子との接続点に他端が電気的に接続された第4スイッチング素子とを含み、
前記第3スイッチング素子と前記第4スイッチング素子との接続点が前記負荷に電気的に接続されており、
前記制御装置は、
前記電源スイッチ、前記第2スイッチング素子および前記補助電源スイッチをオフとし、前記バイパススイッチおよび前記第3スイッチング素子をオンにし、前記第1スイッチングをオフとした状態において、前記第1スイッチング素子の一端の電圧および他端の電圧に基づいて、前記第1スイッチング素子がショート故障であるか否かを判定する手段と、
前記電源スイッチ、前記第2スイッチング素子および前記補助電源スイッチをオフとし、前記バイパススイッチおよび前記第3スイッチング素子をオンにし、前記第1スイッチングをオンとした状態において、前記第1スイッチング素子の一端の電圧および他端の電圧に基づいて、前記第1スイッチング素子がオープン故障であるか否かを判定する手段とを含む、電源システム。
【請求項2】
前記補助電源が1つのキャパシタまたは直列接続された複数のキャパシタからなる、請求項1に記載の電源システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、電源システムに関する。
【背景技術】
【0002】
下記特許文献1には、電動パワーステアリング装置(EPS : Electric Power Steering)用の電動モータ12の駆動回路23に電力を供給するための電源装置20と、電源装置20の作動を制御する電源管理部30とを備えた電動パワーステアリング装置が開示されている。
電源装置20は、主電源17と、主電源17に直列に接続される補助電源18と、主電源17の出力電圧を昇圧して補助電源18を充電する充電回路(昇圧回路)33とを有する。充電回路23は、補助電源18の出力側端子に一端が電気的に接続される第1スイッチング素子34と、第1スイッチング素子34に一端が電気的に接続され、他端が接地された第2スイッチング素子35と、これらのスイッチング素子34,35の接続点に一端が電気的に接続され、他端がリレースイッチ31を介して主電源17に接続された昇圧コイル36とを含む
電源管理部30は、補助電源18の出力電圧V2の所定時間当たりの低下量ΔVが、所定の基準最大電圧ΔVmaxを超えたときに、電源装置20の出力先に異常(例えば、電路L1が接地側電路LGに短絡)があると判定する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2012-91768号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
この発明の目的は、補助電源の出力側端子に一端が電気的に接続される第1スイッチング素子と、第1スイッチング素子に一端が電気的に接続され、他端が接地された第2スイッチング素子と、これらのスイッチング素子の接続点に電気的に接続された昇圧コイルとを含む充電回路における第1スイッチング素子の故障を新規な方法で検出することが可能となる電源システムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
この発明の一実施形態は、負荷に電力を供給する主電源(31)と、入力側端子と出力側端子とを有する補助電源であって、前記入力側端子が前記主電源に電源スイッチ(51)を介して電気的に接続された補助電源(55)と、前記補助電源の出力側端子に一端が電気的に接続された補助電源スイッチ(56)と、前記主電源に基づいて前記補助電源を充電するための充電回路(53)と、前記補助電源から負荷への電力供給をオンオフする切替回路(54)と、前記主電源と前記負荷とをバイパススイッチ(57)を介して電気的に接続するバイパス回路(81)とを含み、前記充電回路は、前記補助電源スイッチの他端と前記切替回路との接続点に一端が電気的に接続される第1スイッチング素子(61A)と、前記第1スイッチング素子の他端に一端が電気的に接続され、他端が接地された第2スイッチング素子(62A)と、これらのスイッチング素子の接続点に一端が電気的に接続され、前記電源スイッチと前記補助電源の前記入力側端子との接続点に他端が電気的に接続された昇圧コイル(63)とを含む、電源装置(30)を提供する。
【0006】
電源スイッチ、第2スイッチング素子および補助電源スイッチをオフとし、バイパススイッチをオンとすると、主電源の電圧が、バイパススイッチおよび切替回路を介して第1スイッチング素子の一端に印可された状態となり、第1スイッチング素子の他端が開放された状態となる。この状態を第1スイッチ素子故障判別用状態ということにすると、第1スイッチ素子故障判別用状態において、第1スイッチングをオフ状態にして、第1スイッチング素子の一端の電圧および他端の電圧を測定することにより、第1スイッチング素子がショート故障であるか否かを判定できる。また、第1スイッチ素子故障判別用状態において、第1スイッチングをオン状態にして、第1スイッチング素子の一端の電圧および他端の電圧を測定することにより、第1スイッチング素子がオープン故障であるか否かを判定できる。
【0007】
この発明の一実施形態では、前記切替回路が、前記第1スイッチング素子と前記補助電源スイッチの他端との接続点に一端が電気的に接続された第3スイッチング素子(71A)と、前記第3スイッチング素子の他端に一端が電気的に接続され、前記電源スイッチと前記補助電源の前記入力側端子との接続点に他端が電気的に接続された第4スイッチング素子(72A)とを含み、前記第3スイッチング素子と前記第4スイッチング素子との接続点が前記負荷に電気的に接続される。
【0008】
この発明の一実施形態では、前記補助電源が1つのキャパシタまたは直列接続された複数のキャパシタからなる。
この発明の一実施形態は、前記電源装置と前記電源装置を制御する制御装置(33)とを含み、前記制御装置は、前記電源スイッチ、前記第2スイッチング素子および前記補助電源スイッチをオフとし、前記バイパススイッチおよび前記第3スイッチング素子をオンにし、前記第1スイッチングをオフとした状態において、前記第1スイッチング素子の一端の電圧および他端の電圧に基づいて、前記第1スイッチング素子がショート故障であるか否かを判定する手段と、前記電源スイッチ、前記第2スイッチング素子および前記補助電源スイッチをオフとし、前記バイパススイッチおよび前記第3スイッチング素子をオンにし、前記第1スイッチングをオンとした状態において、前記第1スイッチング素子の一端の電圧および他端の電圧に基づいて、前記第1スイッチング素子がオープン故障であるか否かを判定する手段とを含む、電源システムを提供する。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1図1は、本発明の一実施形態に係る電源装置が適用された電動パワーステアリング装置の概略構成を示す模式図である。
図2図2は、図1の電動パワーステアリング装置の電気的構成を示す回路図である。
図3図3は、主として、EPS用ECUの構成を示すブロック図である。
図4図4は、電源制御用ECUの動作を説明するためのフローチャートである。
図5A図5Aは、図4のステップS2の起動時故障検出処理の詳細な手順を示すフローチャートの一部である。
図5B図5Bは、図4のステップS2の起動時故障検出処理の詳細な手順を示すフローチャートの一部である。
図6図6は、リレーおよびスイッチング素子のショート故障またはオープン故障の検出順序、故障の種類、各故障検出時のリレーおよびスイッチング素子のオンオフ状態、ならびに各故障検出に用いられる電圧を示す表である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下では、この発明の実施形態を、添付図面を参照して詳細に説明する。
図1は、本発明の一実施形態に係る電源装置が適用された電動パワーステアリング装置の概略構成を示す模式図である。
電動パワーステアリング装置1は、車両を操向するための操舵部材としてのステアリングホイール2と、このステアリングホイール2の回転に連動して転舵輪3を転舵する転舵機構4と、運転者の操舵を補助するための操舵補助機構5とを備えている。ステアリングホイール2と転舵機構4とは、ステアリングシャフト6および中間軸7を介して機械的に連結されている。
【0011】
ステアリングシャフト6は、ステアリングホイール2に連結された入力軸8と、中間軸7に連結された出力軸9とを含む。入力軸8と出力軸9とは、トーションバー10を介して相対回転可能に連結されている。
トーションバー10の近傍には、トルクセンサ11が配置されている。トルクセンサ11は、入力軸8および出力軸9の相対回転変位量に基づいて、ステアリングホイール2に与えられた操舵トルクTを検出する。この実施形態では、トルクセンサ11によって検出される操舵トルクTは、たとえば、右方向への操舵のためのトルクが正の値として検出され、左方向への操舵のためのトルクが負の値として検出され、その絶対値が大きいほど操舵トルクの大きさが大きくなるものとする。
【0012】
転舵機構4は、ピニオン軸13と、転舵軸としてのラック軸14とを含むラックアンドピニオン機構からなる。ラック軸14の各端部には、タイロッド15およびナックルアーム(図示略)を介して転舵輪3が連結されている。ピニオン軸13は、中間軸7に連結されている。ピニオン軸13の先端には、ピニオン16が連結されている。
ラック軸14は、自動車の左右方向に沿って直線状に延びている。ラック軸14の軸方向の中間部には、ピニオン16に噛み合うラック17が形成されている。このピニオン16およびラック17によって、ピニオン軸13の回転がラック軸14の軸方向移動に変換される。ラック軸14を軸方向に移動させることによって、転舵輪3を転舵することができる。
【0013】
ステアリングホイール2が操舵(回転)されると、この回転が、ステアリングシャフト6および中間軸7を介して、ピニオン軸13に伝達される。そして、ピニオン軸13の回転は、ピニオン16およびラック17によって、ラック軸14の軸方向移動に変換される。これにより、転舵輪3が転舵される。
操舵補助機構5は、操舵補助用の電動モータ18と、電動モータ18の出力トルクをステアリングシャフト6に伝達するための減速機19とを含む。減速機19は、ウォームギヤ20と、このウォームギヤ20と噛み合うウォームホイール21とを含むウォームギヤ機構からなる。
【0014】
ウォームギヤ20は、電動モータ18によって回転駆動される。また、ウォームホイール21は、ステアリングシャフト6とは一体的に回転可能に連結されている。ウォームホイール21は、ウォームギヤ20によって回転駆動される。
電動モータ18によってウォームギヤ20が回転駆動されると、ウォームホイール21が回転駆動され、ステアリングシャフト6が回転する。すなわち、電動モータ18によってウォームギヤ20を回転駆動することによって、電動モータ18による操舵補助が可能となっている。
【0015】
車両には、車速Vを検出するための車速センサ24が設けられている。トルクセンサ11によって検出される操舵トルクT、車速センサ24によって検出される車速V等は、EPS用ECU(ECU:Electronic Control Unit)12に入力される。EPS用ECU12は、これらの入力等に基づいて、電動モータ18を制御することにより、いわゆるアシスト制御を行う。
【0016】
EPS用ECU12内のモータ駆動回路42および電源IC43(図3参照)には、主電源31および補助電源装置32内の補助電源55(図2参照)のいずれか一方または両方によって電力が供給される。補助電源装置32は、電源制御用ECU33によって制御される。EPS用ECU12と電源制御用ECU33とは通信線を介して接続されている。
【0017】
主電源31と補助電源装置32とによって電源装置30が構成される。電源制御用ECU33は、電源装置30を制御する制御装置の一例である。
図2は、電動パワーステアリング装置1の電気的構成を示す回路図である。図3は、主として、EPS用ECU12の構成を示すブロック図である。
図3を参照して、EPS用ECU12は、マイクロコンピュータからなるモータ制御回路41と、モータ制御回路41によって制御され、電動モータ18に電力を供給するモータ駆動回路(インバータ回路)42と、モータ制御回路41用の電源を生成するための電源IC43とを含んでいる。EPS用ECU12には、電動モータ18に流れるモータ電流を検出するための電流センサ44の出力信号が入力される。
【0018】
モータ制御回路41は、トルクセンサ11によって検出される操舵トルクTと、車速センサ24によって検出される車速Vと、電流センサ44によって検出されるモータ電流とに基づいて、モータ駆動回路42を駆動制御する。具体的には、モータ制御回路41は、操舵トルクTと車速Vとに基づいて目標電流値を設定し、電動モータ18に流れるモータ電流が目標電流値と等しくなるように、モータ駆動回路42を駆動制御する。
【0019】
図2を参照して、補助電源装置32は、主電源31に直列に接続されている。補助電源装置32は、電源リレー(電源スイッチ)51と、第1逆接保護リレー52と、充電回路53と、放電回路(切替回路)54と、補助電源55と、補助電源リレー(補助電源スイッチ)56と、バイパスリレー(バイパススイッチ)57と、第2逆接保護リレー58とを含む。
【0020】
電源リレー51と第1逆接保護リレー52とが、主電源31の正極側端子と充電回路53との間に配置されている。第1逆接保護リレー52と充電回路53との接続点をP1として、第1逆接保護リレー52は、電源リレー51と接続点P1との間に接続されている。電源リレー51は、スイッチング素子51Aと、主電源31に対して逆方向となるようにスイッチング素子51Aに並列接続されたダイオード51Bとからなる。この実施形態の電源リレー51は、ダイオード51Bが内蔵されたnチャネル型MOSFET(Metal Oxide Semiconductor Field Effect Transistor)からなる。
【0021】
第1逆接保護リレー52は、主電源31が誤って逆接続された場合に回路を保護するためのリレーである。第1逆接保護リレー52は、スイッチング素子52Aと、正しく接続された主電源31に対して順方向となるようにスイッチング素子52Aに並列接続されたダイオード52Bとからなる。この実施形態の第1逆接保護リレー52は、ダイオード52Bが内蔵されたnチャネル型MOSFETからなる。
【0022】
充電回路53は、補助電源55を充電するための回路である。充電回路53は、直列接続された一対のスイッチング素子61A,62Aと、これらのスイッチング素子61A,62Aの接続点P2と接続点P1との間に接続された昇圧コイル63とを含む。上段側のスイッチング素子61Aには、主電源31に対して順方向(補助電源55に対して逆方向)となるようにダイオード61Bが並列接続されている。下段側のスイッチング素子62Aには、主電源31に対して逆方向となるようにダイオード62Bが並列接続されている。この実施形態では、スイッチング素子61A,62Aは、それぞれダイオード61B,62Bが内蔵されたnチャネル型MOSFETからなる。
【0023】
上段側のスイッチング素子61Aのソースは、接続点P2で下段側のスイッチング素子62Aのドレインに接続されている。下段側のスイッチング素子62Aのソースは接地されている。上段側のスイッチング素子61Aのドレインは、補助電源リレー56を介して補助電源55の出力側端子に接続されている。上段側のスイッチング素子61Aと補助電源リレー56との接続点をP3で示す。補助電源55の出力側端子は、補助電源リレー56、スイッチング素子61Aおよび昇圧コイル63を介して接続点P1に接続されている。接続点P1と補助電源55の入力側端子との接続点をP4で示す。
【0024】
補助電源55は、第1キャパシタ55Aと、第1キャパシタ55Aに直列接続された第2キャパシタ55Bとからなる。補助電源55における第1キャパシタ55A側の端子(入力側端子)が接続点P4に接続されている。補助電源55における第2キャパシタ55B側の端子(出力側端子)は、補助電源リレー56を介して接続点P3に接続されている。
【0025】
補助電源リレー56は、スイッチング素子56Aと補助電源55に対して逆方向となるようにスイッチング素子56Aに並列接続されたダイオード56Bとからなる。この実施形態では、スイッチング素子56Aは、ダイオード56Bが内蔵されたnチャネル型MOSFETからなる。スイッチング素子56Aのソースが接続点P3に接続され、スイッチング素子56Aのドレインが補助電源55の出力側端子に接続されている。
【0026】
接続点P3と接続点P4との間に、放電回路54が接続されている。放電回路54は、直列接続された一対のスイッチング素子71A,72Aからなる。上段側のスイッチング素子71Aには、補助電源55に対して逆方向となるようにダイオード71Bが並列接続されている。下段側のスイッチング素子72Aには、主電源31に対して順方向となるようにダイオード72Bが並列接続されている。この実施形態では、スイッチング素子71A,72Aは、それぞれダイオード71B,72Bが内蔵されたnチャネル型MOSFETからなる。
【0027】
上段側のスイッチング素子71Aのソースは、接続点P5で下段側のスイッチング素子72Aのドレインに接続されている。上段側のスイッチング素子71Aのドレインは、接続点P3に接続されている。下段側のスイッチング素子72Aのソースは、接続点P4に接続されている。一対のスイッチング素子71A,72Aの接続点P5は、EPS用ECU12内のモータ駆動回路42および電源IC43に接続されている。
【0028】
この実施形態では、補助電源装置32に故障(異常)が発生した場合にも、EPS用ECU12に電力を供給できるようにするために、バイパス回路81が設けられている。補助電源装置32の故障(異常)とは、電源リレー51、第1逆接保護リレー52、補助電源リレー56、充電回路53内のスイッチング素子61A,62A、放電回路54内のスイッチング素子71A,72A等の故障(異常)をいう。バイパス回路81は、主電源31とEPS用ECU12とを、バイパスリレー57および第2逆接保護リレー58を介して電気的に接続する。
【0029】
バイパス回路81の一端は、主電源31の正極側端子に接続されている。バイパス回路81の他端は、接続点P5とEPS用ECU12とを接続する接続線に接続されている。接続点P5とEPS用ECU12とを接続する接続線と、バイパス回路81の他端との接続点をP6で示す。
バイパスリレー57は、スイッチング素子57Aと、主電源31に対して逆方向となるようにスイッチング素子57Aに並列接続されたダイオード57Bとからなる。この実施形態では、スイッチング素子57Aは、ダイオード57Bが内蔵されたnチャネル型MOSFETからなる。スイッチング素子57Aのドレインが主電源31の正極側端子に接続されている。
【0030】
第2逆接保護リレー58は、バイパスリレー57と接続点P6との間に接続されている。第2逆接保護リレー58は、主電源31が誤って逆接続された場合に回路を保護するためのリレーである。第2逆接保護リレー58は、スイッチング素子58Aと、正しく接続された主電源31に対して順方向となるようにスイッチング素子58Aに並列接続されたダイオード58Bとからなる。この実施形態では、スイッチング素子58Aは、ダイオード58Bが内蔵されたnチャネル型MOSFETからなる。スイッチング素子58Aのソースがスイッチング素子57Aのソースに接続され、スイッチング素子58Aのドレインが接続点P6に接続されている。
【0031】
主電源31の端子間電圧(主電源電圧Vb)は、第1電圧センサ91によって検出される。補助電源55と補助電源リレー56との接続点の電圧(補助電源後段電圧Vc)は、第2電圧センサ92によって検出される。接続点P3の電圧(補助電源リレー後段電圧Va)は、第3電圧センサ93によって検出される。接続点P2の電圧(充電中点電圧Vd)は、第4電圧センサ94によって検出される。接続点P5の電圧(放電中点電圧Ve)は、第5電圧センサ95によって検出される。主電源31の出力電流(主電源電流ib)は、電流センサ96によって検出される。
【0032】
補助電源55の端子間電圧は、補助電源後段電圧Vcから主電源電圧Vbを減算した値(Vc-Vb)となる。以下において、補助電源55の端子間電圧を、補助電源電圧(Vc-Vb)という場合がある。
各電圧センサ91~95の検出値および電流センサ96の検出値は、電源制御用ECU33に入力される。電源制御用ECU33には、イグニッションキーの状態を表すイグニッション状態検知信号(図示略)が入力する。電源制御用ECU33は、リレー51,52,56,57,58およびスイッチング素子61A,62A,71A,72Aをそれぞれ駆動するための複数のゲート駆動回路(図示略)およびマイクロコンピュータ(図示略)を含む。マイクロコンピュータは、電源制御処理を行う。具体的には、マイクロコンピュータは、イグニッション状態検知信号、各電圧センサ91~95の検出値および電流センサ96の検出値等に基づいて、前記複数のゲート駆動回路を制御する。
【0033】
イグニッションキーがオン操作されたときには、そのことを示すイグニッション状態検知信号(以下、「イグニッションオン状態信号」という。)が電源制御用ECU33に入力される。電源制御用ECU33は、イグニッションオン状態信号が入力されると、補助電源装置32が故障しているか否かを判定するための起動時故障検出処理を行う。起動時故障検出処理の詳細については、後述する。
【0034】
起動時故障検出処理において、補助電源装置32の故障が検出されなかったときには、電源制御用ECU33は、通常制御動作を開始する。
一方、起動時故障検出処理において、補助電源装置32の故障が検出されたときには、電源制御用ECU33は、電源リレー51、第1逆接保護リレー52、補助電源リレー56、スイッチング素子61A,62A,71A,72Aをオフとし、バイパスリレー57および第2逆接保護リレー58をオンとする。そして、電源制御用ECU33は、電源制御処理を終了する。この場合には、電源制御用ECU33は、通常制御動作を開始しない。
【0035】
通常制御動作が開始された場合には、電源制御用ECU33は、バイパスリレー57、第2逆接保護リレー58、スイッチング素子61A,62A,71Aをオフとし、電源リレー51、第1逆接保護リレー52、補助電源リレー56およびスイッチング素子72Aをオンとする。なお、スイッチング素子71A,72Aに関し、スイッチング素子72Aをオフとし、スイッチング素子71Aをオンとするようにしてもよい。この後、電源制御用ECU33は、電圧センサ91~95および電流センサ96等の検出値に基いて、補助電源装置32内の4つのスイッチング素子61A,62A,71A,72Aをオンオフ制御する。
【0036】
電源制御用ECU33は、EPS用ECU12の消費電力に応じた値に基づいて、4つのスイッチング素子61A,62A,71A,72Bを制御する。具体的には、電源制御用ECU33は、主電源電力PSに基づいて、4つのスイッチング素子61A,62A,71A,72Bを制御する。主電源電力PSは、EPS用ECU12がアシスト制御のためにモータ駆動回路42を駆動することで消費する主電源31の実電力である。主電源電力PSは、電流センサ96によって検出される主電源電流ibと、第1電圧センサ91によって検出される主電源電圧Vbとの積を演算することにより求められる。
【0037】
より具体的には、主電源電力PSが予め定められた出力電圧切替用閾値KE未満であるときには、電源制御用ECU33は、例えば、放電回路54内の上段側のスイッチング素子71Aをオフに設定し、下段側のスイッチング素子72Aをオンに設定する。これにより、主電源31のみによってモータ駆動回路42に電力が供給される。このように、主電源31のみによってEPS用ECU12に電力が供給される電力供給モード(電力供給状態)を「通常出力電圧モード(通常出力電圧状態)」という場合がある。
【0038】
また、主電源電力PSが出力電圧切替用閾値KE未満であるときには、電源制御用ECU33は、必要に応じて、充電回路53内の一対のスイッチング素子61A,62Aを交互にオンさせる。これにより、接続点P1における出力電圧(主電源電圧)が昇圧されて、補助電源55に印加される。これにより、補助電源55(第1キャパシタ55Aおよび第2キャパシタ55B)が充電される。
【0039】
主電源電力PSが出力電圧切替用閾値KE以上であるときには、電源制御用ECU33は、充電回路53内の一対のスイッチング素子61A,62Aをオフ状態とする。また、電源制御用ECU33は、放電回路54内の上段側のスイッチング素子71Aをオンに設定し、下段側のスイッチング素子72Aをオフに設定する。これにより、主電源31および補助電源55の両方によってモータ駆動回路42に電力が供給される。この場合、主電源31の電圧に補助電源55の電圧が上乗せされた電圧がモータ駆動回路42に印加される。
【0040】
電源制御用ECU33は、主電源電力PSが出力電圧切替用閾値KE以上であるときに、放電回路54内の一対のスイッチング素子71A,72Aを交互にオンさせてもよい。この場合も、主電源31および補助電源55の両方によってモータ駆動回路42に電力が供給される。このように主電源31および補助電源55の両方を利用してEPS用ECU12に電力が供給される電力供給モード(電力供給状態)を「高出力電圧モード(高出力電圧状態)」という場合がある。
【0041】
イグニッションキーがオフ操作されたときには、そのことを示すイグニッション状態検知信号(以下、「イグニッションオフ状態信号」という。)が電源制御用ECU33に入力される。電源制御用ECU33は、イグニッションオフ状態信号が入力されると、電源リレー51、第1逆接保護リレー52、補助電源リレー56、バイパスリレー57、第2逆接保護リレー58およびスイッチング素子61A,62A,71A,72Aをオフにする。
【0042】
図4は、電源制御用ECU33の動作を説明するためのフローチャートである。
電源制御用ECU33は、イグニッションオン状態信号が入力されると(ステップS1:YES)、補助電源装置32が故障しているか否かを判定するための起動時故障検出処理を行う(ステップS2)。起動時故障検出処理の詳細については、後述する。
起動時故障検出処理によって補助電源装置32の故障が検出されなかった場合には(ステップS3:YES)、電源制御用ECU33は、通常制御動作を開始する。電源制御用ECU33は、まず、初期設定を行う(ステップS4)。この初期設定では、電源制御用ECU33は、バイパスリレー57、第2逆接保護リレー58、スイッチング素子61A,62A,71Aをオフとし、電源リレー51、第1逆接保護リレー52、補助電源リレー56およびスイッチング素子72Aをオンとする。これにより、電力供給モードは、通常出力電圧モードとなる。
【0043】
なお、前述したように、スイッチング素子71A,72Aに関し、スイッチング素子72Aをオフとし、スイッチング素子71Aをオンとするようにしてもよい。このようにした場合には、電力供給モードは、高出力電圧モードとなる。
次に、電源制御用ECU33は、第1電圧センサ91によって検出される主電源電圧Vb、第2電圧センサ92によって検出される補助電源後段電圧Vcおよび電流センサ96によって検出される主電源電流ibを取得する(ステップS5)。
【0044】
次に、電源制御用ECU33は、ステップS5で取得された主電源電圧Vdと主電源電流ibとを乗算することにより主電源電力PSを演算する(ステップS6)。そして、電源制御用ECU33は、主電源電力PSが出力電圧切替用閾値KE以上であるか否かを判別する(ステップS7)。
主電源電力PSが出力電圧切替用閾値KE未満である場合には(ステップS7:NO)、電源制御用ECU33は、放電回路54内の上段側のスイッチング素子71Aをオフに設定し、下段側のスイッチング素子72Aをオンに設定する(ステップS8)。これにより、補助電源55の放電が実行されている場合には、その放電が停止される。また、これにより、電力供給モードが通常出力電圧モードとなる。
【0045】
この後、電源制御用ECU33は、補助電源電圧(Vc-Vb)が所定の充電判別用閾値Vth(Vth>0)未満であるか否かを判別する(ステップS9)。この判別は、補助電源55の過充電を防止するために行われている。充電判別用閾値Vthは、補助電源55の上限電圧と等しい値またはそれよりも若干小さい値に設定される。補助電源電圧(Vc-Vb)が充電判別用閾値Vth以上であれば(ステップS9:NO)、電源制御用ECU33は、充電回路53内の2つのスイッチング素子61A,62Aをともにオフに設定する(ステップS10)。そして、電源制御用ECU33は、イグニッションオフ状態信号が入力されたか否かを判別する(ステップS14)。イグニッションオフ状態信号が入力されていなければ(ステップS14:NO)、電源制御用ECU33はステップS5に戻る。
【0046】
前記ステップS9において、補助電源電圧(Vc-Vb)が充電判別用閾値Vth未満であると判別された場合には(ステップS9:YES)、電源制御用ECU33は、補助電源55の充電処理を開始する(ステップS11)。具体的には、電源制御用ECU33は、充電回路53内の一対のスイッチング素子61A,62Aを交互にオンさせて、接続点P3に昇圧電圧を発生させる。これにより、補助電源55が充電される。なお、ステップS9からステップS11に移行した場合に、既に充電処理が開始されている場合には、電源制御用ECU33は充電処理を継続して行う。
【0047】
この後、電源制御用ECU33は、ステップS14に移行し、イグニッションオフ状態信号が入力されたか否かを判別する。イグニッションオフ状態信号が入力されていなければ(ステップS14:NO)、電源制御用ECU33はステップS5に戻る。
前記ステップS7で、主電源電力PSが出力電圧切替用閾値KE以上であると判別された場合には(ステップS7:YES)、電源制御用ECU33は、充電回路53内の2つのスイッチング素子61A,62Aをともにオフに設定する(ステップS12)。これにより、充電処理が実行中である場合には、充電処理が停止される。
【0048】
次に、電源制御用ECU33は、放電回路54内の上段側のスイッチング素子71Aをオンに設定し、下段側のスイッチング素子72Aをオフに設定する(ステップS13)。これにより、電力供給モードが高出力電圧モードとなる。
この後、電源制御用ECU33は、ステップS14に移行し、イグニッションオフ状態信号が入力されたか否かを判別する。イグニッションオフ状態信号が入力されていなければ(ステップS14:NO)、電源制御用ECU33はステップS5に戻る。
【0049】
ステップS14において、イグニッションオフ状態信号が入力されていると判別された場合には(ステップS14:YES)、電源制御用ECU33はステップS15に進む。ステップS15では、電源制御用ECU33は、電源リレー51、第1逆接保護リレー52、補助電源リレー56、バイパスリレー57、第2逆接保護リレー58およびスイッチング素子61A,62A,71A,72Aをオフにする。そして、電源制御用ECU33は、今回の電源制御処理を終了する。
【0050】
前記ステップS2の起動時故障検出処理によって補助電源装置32の故障が検出された場合には(ステップS3:NO)、電源制御用ECU33は、電源リレー51、第1逆接保護リレー52、補助電源リレー56、スイッチング素子61A,62A,71A,72Aをオフとし、バイパスリレー57および第2逆接保護リレー58をオンとする(ステップS16)。そして、電源制御用ECU33は、電源制御処理を終了する。
【0051】
図5Aおよび図5Bは、図4のステップS2の起動時故障検出処理の詳細な手順を示すフローチャートである。
起動時故障検出処理では、電源制御用ECU33は、まず、第1電圧センサ91によって検出される主電源電圧Vb、第2電圧センサ92によって検出される補助電源後段電圧Vc、第3電圧センサ93によって検出される補助電源リレー後段電圧Vaおよび第5電圧センサ95によって検出される放電中点電圧Veを取得する(ステップS21)。なお、この時点では、電源リレー51、第1逆接保護リレー52、補助電源リレー56、スイッチング素子61A.62A,71A,72A、バイパスリレー57および第2逆接保護リレー58はオフ状態である。
【0052】
次に、電源制御用ECU33は、ステップS21で取得された補助電源後段電圧Vcと補助電源リレー後段電圧Vaと差(Vc-Va)に基づいて、補助電源リレー56がショート故障であるか否かを判定する(ステップS22)。具体的には、電源制御用ECU33は、電圧差(Vc-Va)が所定の閾値α(α>0)以下であるか否かを判別することにより、補助電源リレー56がショート故障であるか否かを判定する。電源制御用ECU33は、電圧差(Vc-Va)が閾値α以下であれば、補助電源リレー56がショート故障であると判定し、電圧差(Vc-Va)が閾値αよりも大きければ補助電源リレー56はショート故障ではないと判定する。
【0053】
補助電源リレー56がショート故障であると判定された場合には(ステップS22:YES)、電源制御用ECU33は、補助電源装置32が故障していると判定する(ステップS40)。そして、電源制御用ECU33は、起動時故障検出処理を終了する。この場合には、図4のステップS3で補助電源装置32の故障が検出されたと判別される。
ステップS22において補助電源リレー56がショート故障ではないと判定された場合には(ステップS22:NO)、電源制御用ECU33は、ステップS21で取得された主電源電圧Vbと放電中点電圧Veとの差(Vb-Ve)に基づいて、バイパスリレー57がショート故障であるか否かを判定する(ステップS23)。具体的には、電圧差(Vb-Ve)が所定の閾値β(β>0)以下であるか否かを判別することにより、バイパスリレー57がショート故障であるか否かを判定する。電源制御用ECU33は、電圧差(Vb-Ve)が閾値β以下であれば、バイパスリレー57がショート故障であると判定し、電圧差(Vb-Ve)が閾値βよりも大きければバイパスリレー57はショート故障ではないと判定する。
【0054】
バイパスリレー57がショート故障であると判定された場合には(ステップS23:YES)、電源制御用ECU33は、補助電源装置32が故障していると判定する(ステップS40)。そして、電源制御用ECU33は、起動時故障検出処理を終了する。この場合には、図4のステップS3で補助電源装置32の故障が検出されたと判別される(ステップS3:NO)。
【0055】
ステップS23においてバイパスリレー57がショート故障ではないと判定された場合には(ステップS23:NO)、電源制御用ECU33は、補助電源リレー56をオン状態にする(ステップS24)。
次に、電源制御用ECU33は、第2電圧センサ92によって検出される補助電源後段電圧Vc、第3電圧センサ93によって検出される補助電源リレー後段電圧Vaおよび第5電圧センサ95によって検出される放電中点電圧Veを取得する(ステップS25)。
【0056】
そして、電源制御用ECU33は、ステップS25で取得された補助電源後段電圧Vcと補助電源リレー後段電圧Vaとの差(Vc-Va)に基づいて、補助電源リレー56がオープン故障であるか否かを判定する(ステップS26)。具体的には、電圧差(Vc-Va)が閾値αよりも大きいか否かを判別することにより、補助電源リレー56がオープン故障であるか否かを判定する。電源制御用ECU33は、電圧差(Vc-Va)が閾値αよりも大きければ、補助電源リレー56がオープン故障であると判定し、電圧差(Vc-Va)が閾値α以下であれば補助電源リレー56はオープン故障ではないと判定する。
【0057】
補助電源リレー56がオープン故障であると判定された場合には(ステップS26:YES)、電源制御用ECU33は、補助電源装置32が故障していると判定する(ステップS40)。そして、電源制御用ECU33は、起動時故障検出処理を終了する。この場合には、図4のステップS3で補助電源装置32の故障が検出されたと判別される(ステップS3:NO)。
【0058】
ステップS26において補助電源リレー56がオープン故障ではないと判定された場合には(ステップS26:NO)、電源制御用ECU33は、ステップS25で取得された補助電源リレー後段電圧Vaと放電中点電圧Veとの差(Va-Ve)に基づいて、スイッチング素子71Aがショート故障であるか否かを判定する(ステップS27)。具体的には、電圧差(Va-Ve)が所定の閾値γ(γ>0)以下であるか否かを判別することにより、スイッチング素子71Aがショート故障であるか否かを判定する。電源制御用ECU33は、電圧差(Va-Ve)が閾値γ以下であれば、スイッチング素子71Aがショート故障であると判定し、電圧差(Va-Ve)が閾値γよりも大きければスイッチング素子71Aはショート故障ではないと判定する。
【0059】
スイッチング素子71Aがショート故障であると判定された場合には(ステップS27:YES)、電源制御用ECU33は、補助電源装置32が故障していると判定する(ステップS40)。そして、電源制御用ECU33は、起動時故障検出処理を終了する。この場合には、図4のステップS3で補助電源装置32の故障が検出されたと判別される(ステップS3:NO)。
【0060】
ステップS27においてスイッチング素子71Aがショート故障ではないと判定された場合には(ステップS27:NO)、電源制御用ECU33は、スイッチング素子71Aをオン状態にする(ステップS28)。なお、この時点においても、補助電源リレー56はオン状態を維持している。
次に、電源制御用ECU33は、第3電圧センサ93によって検出される補助電源リレー後段電圧Vaおよび第5電圧センサ95によって検出される放電中点電圧Veを取得する(ステップS29)。
【0061】
そして、電源制御用ECU33は、ステップS29で取得された補助電源リレー後段電圧Vaと放電中点電圧Veとの差(Va-Ve)に基づいて、スイッチング素子71Aがオープン故障であるか否かを判定する(ステップS30)。具体的には、電圧差(Va-Ve)が閾値γよりも大きいか否かを判別することにより、スイッチング素子71Aがオープン故障であるか否かを判定する。電源制御用ECU33は、電圧差(Va-Ve)が閾値γよりも大きければ、スイッチング素子71Aがオープン故障であると判定し、電圧差(Va-Ve)が閾値γ以下であればスイッチング素子71Aはオープン故障ではないと判定する。
【0062】
スイッチング素子71Aがオープン故障であると判定された場合には(ステップS30:YES)、電源制御用ECU33は、補助電源装置32が故障していると判定する(ステップS40)。そして、電源制御用ECU33は、起動時故障検出処理を終了する。この場合には、図4のステップS3で補助電源装置32の故障が検出されたと判別される(ステップS3:NO)。
【0063】
ステップS30においてスイッチング素子71Aがオープン故障ではないと判定された場合には(ステップS30:NO)、電源制御用ECU33は、スイッチング素子71Aおよび補助電源リレー56をオフ状態にするとともに、バイパスリレー57および第2逆接保護リレー58をオン状態にする(ステップS31)。
次に、電源制御用ECU33は、第1電圧センサ91によって検出される主電源電圧Vbおよび第5電圧センサ95によって検出される放電中点電圧Veを取得する(ステップS32)。
【0064】
そして、電源制御用ECU33は、ステップS32で取得された主電源電圧Vbと放電中点電圧Veとの差(Vb-Ve)に基づいて、バイパスリレー57がオープン故障であるか否かを判定する(ステップS33)。具体的には、電圧差(Vb-Ve)が閾値βよりも大きいか否かを判別することにより、バイパスリレー57がオープン故障であるか否かを判定する。電源制御用ECU33は、電圧差(Vb-Ve)が閾値βよりも大きければ、バイパスリレー57がオープン故障であると判定し、電圧差(Vb-Ve)が閾値β以下であればバイパスリレー57はオープン故障ではないと判定する。
【0065】
バイパスリレー57がオープン故障であると判定された場合には(ステップS33:YES)、電源制御用ECU33は、補助電源装置32が故障していると判定する(ステップS40)。そして、電源制御用ECU33は、起動時故障検出処理を終了する。この場合には、図4のステップS3で補助電源装置32の故障が検出されたと判別される(ステップS3:NO)。
【0066】
ステップS33においてバイパスリレー57がオープン故障ではないと判定された場合には(ステップS33:NO)、電源制御用ECU33は、スイッチング素子71Aをオン状態にする(ステップS34)。なお、この時点においても、バイパスリレー57および第2逆接保護リレー58はオン状態を維持している。
次に、電源制御用ECU33は、第3電圧センサ93によって検出される補助電源リレー後段電圧Vaおよび第4電圧センサ94によって検出される充電中点電圧Vdを取得する(ステップS35)。
【0067】
そして、電源制御用ECU33は、ステップS35で取得された補助電源リレー後段電圧Vaと充電中点電圧Vdとの差(Va-Vd)に基づいて、スイッチング素子61Aがショート故障であるか否かを判定する(ステップS36)。具体的には、電圧差(Va-Vd)が所定の閾値δ(δ>0)以下であるか否かを判別することにより、スイッチング素子61Aがショート故障であるか否かを判定する。電源制御用ECU33は、電圧差(Va-Vd)が閾値δ以下であれば、スイッチング素子61Aがショート故障であると判定し、電圧差(Va-Vd)が閾値δよりも大きければスイッチング素子61Aはショート故障ではないと判定する。
【0068】
スイッチング素子61Aがショート故障であると判定された場合には(ステップS36:YES)、電源制御用ECU33は、補助電源装置32が故障していると判定する(ステップS40)。そして、電源制御用ECU33は、起動時故障検出処理を終了する。この場合には、図4のステップS3で補助電源装置32の故障が検出されたと判別される(ステップS3:NO)。
【0069】
ステップS36においてスイッチング素子61Aがショート故障ではないと判定された場合には(ステップS36:NO)、電源制御用ECU33は、スイッチング素子61Aをオン状態にする(ステップS37)。なお、この時点においても、バイパスリレー57、第2逆接保護リレー58およびスイッチング素子71Aはオン状態を維持している。
次に、電源制御用ECU33は、第3電圧センサ93によって検出される補助電源リレー後段電圧Vaおよび第4電圧センサ94によって検出される充電中点電圧Vdを取得する(ステップS38)。
【0070】
そして、電源制御用ECU33は、ステップS38で取得された補助電源リレー後段電圧Vaと充電中点電圧Vdとの差(Va-Vd)に基づいて、スイッチング素子61Aがオープン故障であるか否かを判定する(ステップS39)。具体的には、電圧差(Va-Vd)が所定の閾値δよりも大きいか否かを判別することにより、スイッチング素子61Aがオープン故障であるか否かを判定する。電源制御用ECU33は、電圧差(Va-Vd)が閾値δよりも大きければ、スイッチング素子61Aがオープン故障であると判定し、電圧差(Va-Vd)が閾値δ以下であればスイッチング素子61Aはオープン故障ではないと判定する。
【0071】
スイッチング素子61Aがオープン故障であると判定された場合には(ステップS39:YES)、電源制御用ECU33は、補助電源装置32が故障していると判定する(ステップS40)。そして、電源制御用ECU33は、起動時故障検出処理を終了する。この場合には、図3のステップS3で補助電源装置32の故障が検出されたと判別される(ステップS3:NO)。
【0072】
ステップS39においてスイッチング素子61Aがオープン故障ではないと判定された場合には(ステップS39:NO)、電源制御用ECU33は、補助電源装置32が故障していないと判定する(ステップS41)。そして、電源制御用ECU33は、起動時故障検出処理を終了する。この場合には、図3のステップS3で補助電源装置32の故障が検出されなかったと判別される(ステップS3:YES)。
【0073】
図6に、リレー56,57およびスイッチング素子71A,61Aのショート故障またはオープン故障の検出順序、故障の種類、各故障検出時のリレー51、56,57およびスイッチング素子71A,61Aのオンオフ状態、ならびに各故障検出に用いられる電圧を示しておく。
この実施形態では、電源リレー51、第1逆接保護リレー52、補助電源リレー56およびスイッチング素子62A、72Aをオフとし、バイパスリレー57、第2逆接保護リレー58およびスイッチング素子71Aをオンとした状態で、スイッチング素子61Aをオフ状態にすることにより、スイッチング素子61Aがショート故障しているか否かを判定できる。また、前記状態で、スイッチング素子61Aをオン状態にすることにより、スイッチング素子61Aがオープン故障しているか否かを判定できる。
【0074】
したがって、この実施形態では、補助電源55から、補助電源リレー56、スイッチング素子61Aおよび昇圧コイル63を通って、補助電源55に戻る経路を短絡させることなく、スイッチング素子61Aのショート故障およびオープン故障を判定することができるようになる。
以上、この発明の実施形態について説明したが、この発明はさらに他の形態で実施することもできる。前述の実施形態では、主電源電力PSが出力電圧切替用閾値KE以上であるか否かに基づいて、通常出力電圧モードと高出力電圧モードとを切り替えている。しかし、EPS用ECU12の消費電力(モータ駆動回路42の消費電力)が所定の出力電圧切替用閾値以上であるか否かに基づいて、通常出力電圧モードと高出力電圧モードとを切り替えてもよい。
【0075】
前述した実施形態では、補助電源は、2つのキャパシタから構成されているが、1つのキャパシタから構成されていてもよいし、3以上のキャパシタから構成されていてもよい。また、補助電源は、1または複数のキャパシタ以外の電源要素から構成されていてもよい。キャパシタ以外の電源要素としては、全固体電池、リチウムイオン電池等が挙げられる。
【0076】
また、前述の実施形態では、この発明による電源装置(電源システム)を電動パワーステアリング装置に適用した場合について説明したが、この発明は電動モータを含むパワーステアリング装置であれば、電動ポンプ式油圧パワーステアリング装置等の電動パワーステアリング装置以外のパワーステアリング装置にも適用することができる。
また、この発明は、パワーステアリング装置以外の装置にも適用することができる。
【0077】
その他、特許請求の範囲に記載された事項の範囲で種々の設計変更を施すことが可能である。
【符号の説明】
【0078】
1…電動パワーステアリング装置、12…EPS用ECU、30…電源装置、31…主電源、32…補助電源装置、33…電源制御用ECU、41…モータ制御回路、42…モータ駆動回路、51…電源リレー、53…充電回路、54…放電回路、55…補助電源、56…補助電源リレー、57…バイパスリレー、61A,62A…スイッチング素子、63…昇圧コイル、91~95…電圧センサ、96…電流センサ
図1
図2
図3
図4
図5A
図5B
図6