(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-02-09
(45)【発行日】2022-02-18
(54)【発明の名称】搬送台車および搬送物受け渡し機構
(51)【国際特許分類】
B62B 3/10 20060101AFI20220210BHJP
B29C 33/30 20060101ALI20220210BHJP
B62B 3/04 20060101ALI20220210BHJP
【FI】
B62B3/10 B
B29C33/30
B62B3/04 Z
(21)【出願番号】P 2018124703
(22)【出願日】2018-06-29
【審査請求日】2020-12-14
(73)【特許権者】
【識別番号】000241500
【氏名又は名称】トヨタ紡織株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001036
【氏名又は名称】特許業務法人暁合同特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】高塚 富士夫
(72)【発明者】
【氏名】井上 貴義
【審査官】久慈 純平
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-157560(JP,A)
【文献】特開2009-6802(JP,A)
【文献】特開平7-313127(JP,A)
【文献】特開2013-35492(JP,A)
【文献】特開平6-329240(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B62B 1/00-5/08,
B29C 33/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
搬送物を搬送するための搬送台車であって、
移動可能に構成された台車本体と、
前記搬送物が載置可能とされるとともに前記搬送物を前後方向に移動させることが可能な構成とされた載置部と、
前記載置部の前方において動作可能に設けられ、自身の一部が前記搬送物の前方に位置する場合に前記搬送物の前方側への移動を抑止するとともに、自身の動作に基づいて前記搬送物の前方から外れて前記搬送物の前方側への移動を許容する落下防止部材と、
先端が前記落下防止部材より前方側に突出する状態で前記台車本体に対して前後方向に移動可能に保持され、前進端において自身の一部が前記落下防止部材に係合して前記落下防止部材の動作を抑止する係合部材と、
前記係合部材を前方に向かって付勢する付勢部材と、
を備え、
当該搬送台車が搬送物を受け渡す設備に向かって前進する際、前記係合部材は先端が前記設備の一部に当接して前記付勢部材の付勢力に抗って前記台車本体に対して後退し、当該搬送台車が前記設備に対して所定位置に位置することで、前記係合部材の前記落下防止部材に対する係合が解除されて、前記落下防止部材の動作が許容されるとともに、
当該搬送台車が前記所定位置から後退することで、前記係合部材が前記付勢部材の付勢力によって前記台車本体に対して前進して前記落下防止部材に係合し、前記落下防止部材の動作が抑止されるように構成された搬送台車。
【請求項2】
前記落下防止部材は、前後方向に延びる軸線周りに回動可能な板状の部材とされた請求項1に記載の搬送台車。
【請求項3】
前記係合部材は、先端部が前方ほど小さな外径となる円錐台形状とされ、
前記落下防止部材は、自身の一部が前記搬送物の前方に位置する場合において、前記係合部材の先端部が嵌合可能な切り欠きを有し、
前記切り欠きは、内周面が前記係合部材の前記先端部の外周面に沿って傾斜するテーパ状に形成され、
前記付勢部材の付勢力によって前記係合部材の先端部の外周面が前記切り欠きの内周面に押し付けられることで、前記係合部材の先端が前記落下防止部材より前方側に突出した状態とされるとともに、前記落下防止部材の回動が抑止されるように構成された請求項2に記載の搬送台車。
【請求項4】
前記落下防止部材に対して前記落下防止部材の回動軸線と同軸的に設けられて前記台車本体の後方側まで延びる回転軸部と、前記回転軸部の後端に設けられた把持部とを有し、操作者が前記落下防止部材を回動させるための操作部材を備えた請求項2または請求項3に記載の搬送台車。
【請求項5】
前記搬送物は、矩形状のものとされ、
当該搬送台車は、それぞれが前記落下防止部材である一対の落下防止部材を備え、前記一対の落下防止部材が、それぞれ前記搬送物の左側前方および右側前方に位置することで、前記搬送物の前方側への移動を抑止するように構成された請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の搬送台車。
【請求項6】
請求項1から請求項5のいずれか1項に記載の搬送台車と前記設備との間で前記搬送物の受け渡しを行うための機構であって、
前記落下防止部材は、自身の一部が前記搬送物の前方に位置する第1位置と、その一部が前記搬送物の前方から外れた位置にある第2位置との間で動作可能とされ、
前記設備は、前記落下防止部材が前記第2位置に位置する場合に前記落下防止部材を係止する係止部を備え、
前記落下防止部材が前記第2位置に位置することで、前記搬送台車が前記設備に対して連結されるように構成された搬送台車設備間の搬送物受け渡し機構。
【請求項7】
前記搬送物は、矩形状のものとされ、
前記搬送台車は、それぞれが前記落下防止部材である一対の落下防止部材を備え、前記一対の落下防止部材が、それぞれ前記搬送物の左側前方および右側前方に位置することで、前記搬送物の前方側への移動を抑止するように構成され、
前記設備は、一対の落下防止部材の各々に対応して、それぞれが前記係止部である一対の係止部を備えた請求項6に記載の搬送台車設備間の搬送物受け渡し機構。
【請求項8】
前記設備は、前記搬送物の受け渡しを禁止する状態から、受け渡しを許容する状態に切り替える受け渡し許容装置を備え、
前記落下防止部材が、前記第1位置から前記第2位置に動作する際に、前記受け渡し許容装置を作動させるための作動レバーを動作させるように構成されており、
前記落下防止部材が前記第2位置に位置することで、前記設備において前記搬送物の受け渡しを許容する状態とされるように構成された請求項6または請求項7に記載の搬送台車設備間の搬送物受け渡し機構。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、搬送物を搬送するための搬送台車に関し、また、その搬送台車と設備との間で搬送物の受け渡しを行うための搬送物受け渡し機構に関する。
【背景技術】
【0002】
下記特許文献1および2には、搬送物として金型を搬送する搬送台車が記載されている。下記特許文献1に記載の搬送台車は、操作者の人力によって動かされるものであり、下記特許文献2に記載の搬送台車は、駆動源の駆動力によってレール上を移動するものである。そのような搬送台車においては、搬送物の落下を防止する必要がある。下記特許文献1および2に記載の搬送台車は、操作者によって動かされる搬送台車においては、搬送物の搬送台車からの落下によって、搬送物や搬送物の受け渡しを行う設備の損傷する虞がある。また、特許文献1に記載の搬送台車のように、操作者によって動かされる搬送台車においては、搬送物や設備の損傷のみでなく、落下する搬送物が操作者や他の人に接触する虞もある。
【0003】
下記特許文献1に記載の搬送台車は、搬送台車の設備に対する位置決めを行うための位置決めピンと、搬送台車からの搬送物の落下を防止するために落下防止ピンとを備え、それら位置決めピンと落下防止ピンとが、人による操作によってワイヤを介して動作するように構成されている。そして、下記特許文献1に記載の搬送台車は、搬送物の落下を防止する目的で、位置決めピンが設備に対して係合しない状態と、落下防止ピンが搬送物を係止しない状態とが、同時に実現しないようにするインターロック機構を備えたものとなっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2009-166361号公報
【文献】特開2011-173354号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来の搬送台車においては、位置決めピンや落下防止ピンを挿す作業が、人の手によって行われている場合があり、挿し忘れや手間がかる等が原因で、落下防止ピンが挿されていない状態で搬送作業が行われたり、位置決めピンが挿されない状態で設備との間で搬送物を受け渡し作業が行われたりするような、不安全な作業が行わるという問題があった。上記特許文献1に記載された搬送台車は、そのような問題に対処したものとなっている。しかしながら、上記特許文献1に記載された搬送台車は、位置決めピンと落下防止ピンとの各々を動作させる機構が、それぞれワイヤを介して動作させるものであるとともに、それらを連携させて、位置決めピンと落下防止ピンとの各々の動作を規制する機構が必要であるため、多くの部品を要するとともに、比較的複雑な構成となっている。
【0006】
本発明は、そのような実情に鑑みてなされたものであり、比較的単純な構成によって、搬送物の搬送および搬送台車と設備との間における搬送物の受け渡しを、簡単な操作で安全に行うことを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために本発明の搬送台車は、
搬送物を搬送するための搬送台車であって、
移動可能に構成された台車本体と、
前記搬送物が載置可能とされるとともに前記搬送物を前後方向に移動させることが可能な構成とされた載置部と、
前記載置部の前方において動作可能に設けられ、自身の一部が前記搬送物の前方に位置する場合に前記搬送物の前方側への移動を抑止するとともに、自身の動作に基づいて前記搬送物の前方から外れて前記搬送物の前方側への移動を許容する落下防止部材と、
先端が前記落下防止部材より前方側に突出する状態で前記台車本体に対して前後方向に移動可能に保持され、前進端において自身の一部が前記落下防止部材に係合して前記落下防止部材の動作を抑止する係合部材と、
前記係合部材を前方に向かって付勢する付勢部材と、
を備え、
当該搬送台車が搬送物を受け渡す設備に向かって前進する際、前記係合部材は先端が前記設備の一部に当接して前記付勢部材の付勢力に抗って前記台車本体に対して後退し、当該搬送台車が前記設備に対して所定位置に位置することで、前記係合部材の前記落下防止部材に対する係合が解除されて、前記落下防止部材の動作が許容されるとともに、
当該搬送台車が前記所定位置から後退することで、前記係合部材が前記付勢部材の付勢力によって前記台車本体に対して前進して前記落下防止部材に係合し、前記落下防止部材の動作が抑止されるように構成されたことを特徴とする。
【0008】
このように構成された搬送台車は、搬送物の落下を防止すべく落下防止部材の動作を抑止した状態(ロック状態)と、搬送物の受け渡しを可能とすべく落下防止部材の動作を許容する状態(アンロック状態)との間の切替が、設備に向かって前進すること、設備から後退することによって、自動で行われるように構成されている。詳しく言えば、設備に向かって前進することで、ロック状態からアンロック状態に切り替わり、設備から後退することで、アンロック状態からロック状態に切り替わるように構成されている。つまり、この構成の搬送台車は、設備に対して所定位置に設置するだけで、落下防止部材のロックが自動で解除され、所定位置から移動するだけで、落下防止部材が自動でロックされる。つまり、この構成の搬送台車によれば、特別な操作をすることなく、落下防止部材のロック・アンロックを切り替えることができる。
【0009】
そして、この構成の搬送台車は、落下防止部材のロック・アンロックを切り替える機構が、落下防止部材に対して係合可能な係合部材を付勢部材によって付勢しただけの簡単な構成で実現されている。したがって、この構成の搬送台車は、容易に製造することが可能となっている。
【0010】
なお、この構成の搬送台車において、落下防止部材を動作させる機構は、特に限定されない。例えば、落下防止部材を動作させるための駆動源を設け、その駆動源を作動させることで落下防止部材を動作させる構成であってもよく、係合部材の前後方向の動作に連動して落下防止部材を動作させる構成であってもよい。このような構成とすれば、搬送物の受け渡し作業は容易化することができるが、搬送台車の構成が複雑化することになる。搬送台車の構成を単純化するという観点からすれば、当該搬送台車の操作者の操作によって落下防止部材を動作させる操作部材を設けた構成とすることが望ましい。
【0011】
また、この構成の搬送台車は、台車本体が複数の車輪を有するものとされ、操作者の力によって動かされるものであってもよく、駆動源の駆動力によって動かされるものであってもよい。
【0012】
上記構成において、前記落下防止部材は、前後方向に延びる軸線周りに回動可能な板状の部材とすることができる。
【0013】
当該搬送台車と設備との間で搬送物の受け渡しを行う際に搬送物の落下を防止するためには、当該搬送台車を設備に対して固定した状態において、載置部と設備との間を狭くすることが望ましい。つまり、落下防止部材は、載置部と設備との間の比較的小さな隙間の中で、動作させる必要がある。この構成の搬送台車は、落下防止部材が板状の部材とされて、その板厚分の隙間内で動作することができるため、載置部と設備との間を狭くすることができ、当該搬送台車と設備との間で搬送物の受け渡しを安全に行うことができる。
【0014】
また、上記構成において、
前記係合部材は、先端部が前方ほど小さな外径となる円錐台形状とされ、
前記落下防止部材は、自身の一部が前記搬送物の前方に位置する場合において、前記係合部材の先端部が嵌合可能な切り欠きを有し、
前記切り欠きは、内周面が前記係合部材の前記先端部の外周面に沿って傾斜するテーパ状に形成され、
前記付勢部材の付勢力によって前記係合部材の先端部の外周面が前記切り欠きの内周面に押し付けられることで、前記係合部材の先端が前記落下防止部材より前方側に突出した状態とされるとともに、前記落下防止部材の回動が抑止されるように構成することができる。
【0015】
この構成の搬送台車は、前述の板状の落下防止部材と係合部材とを係合させる構造が限定されている。この構成の搬送台車は、係合部材が前進端に位置する場合において、係合部材の先端が落下防止部材より前方側に突出するとともに係合部材の一部が落下防止部材に係合する構成が、比較的単純な形状の係合部材および落下防止部材によって実現されている。したがって、この構成の搬送台車は、より一層、容易に製造することが可能となっている。
【0016】
さらに、上記構成において、前記落下防止部材に対して前記落下防止部材の回動軸線と同軸的に設けられて前記台車本体の後方側まで延びる回転軸部と、前記回転軸部の後端に設けられた把持部とを有し、操作者が前記落下防止部材を回動させるための操作部材を備えた構成とすることができる。
【0017】
この構成の搬送台車は、落下防止部材が動作(回動)する機構が限定されており、操作者によって操作部材が回転させられることで、落下防止部材が回動させられるようになっている。この構成の搬送台車は、単純な構造で落下防止部材が回動することが可能となっている。なお、操作者の力によって動かされる搬送台車は、台車本体の後方側に当該搬送台車を動かすためのハンドルを備えているのが一般的である。この構成の搬送台車は、そのハンドル付近に操作部材が設けられているため、搬送台車の後方から移動することなく、操作部材を回転させることで落下防止部材を回動させ、搬送物の前方側への移動を許容した状態とすることができる。つまり、この構成の搬送台車は、操作者の力によって動かされる搬送台車に好適である。
【0018】
さらにまた、上記構成において、前記搬送物は、矩形状のものとされ、当該搬送台車は、それぞれが前記落下防止部材である一対の落下防止部材を備え、前記一対の落下防止部材が、それぞれ前記搬送物の左側前方および右側前方に位置することで、前記搬送物の前方側への移動を抑止するように構成することができる。
【0019】
この構成の搬送台車は、一対の落下防止部材を備えたものとなっている。そのため、一方の落下防止部材によるロックを忘れたり、一方の落下防止部材が破損したりしていても、他方の落下防止部材によって搬送物をロックすることができ、より安全に搬送物の搬送作業を行うことができる。
【0020】
上記課題を解決するために本発明の搬送物受け渡し機構は、
上記のように構成された搬送台車と前記設備との間で前記搬送物の受け渡しを行うための機構であって、
前記落下防止部材は、自身の一部が前記搬送物の前方に位置する第1位置と、その一部が前記搬送物の前方から外れた位置にある第2位置との間で動作可能とされ、
前記設備は、前記落下防止部材が前記第2位置に位置する場合に前記落下防止部材を係止する係止部を備え、
前記落下防止部材が前記第2位置に位置することで、前記搬送台車が前記設備に対して連結されるように構成されたことを特徴とする。
【0021】
このように構成された搬送物受け渡し機構は、落下防止部材によって搬送物の前方側への移動を抑止する状態(移送抑止状態)と、搬送物の移動を許容する状態(移送許容状態)との切り替えに伴って、搬送台車と設備とが連結された状態(連結状態)と、連結が解除された状態(非連結状態)とが切り替わるようになっている。具体的には、この構成の搬送物受け渡し機構は、移送抑止状態において非連結状態とされ、移送許容状態において連結状態とされる。つまり、搬送台車を設備に対して固定して、移送抑止状態から移送許容状態に変更することで、自動で連結状態とされるとともに、搬送台車を設備から離間させる際に、連結状態から非連結状態に変更することで、自動で移送抑止状態とされるようになっている。したがって、この構成の搬送物受け渡し機構によれば、搬送台車のロックを解除するのと合わせて、搬送台車と設備とが連結され、搬送台車と設備との連結を解除するのと合わせて、搬送台車がロックされるようになっており、安全に、搬送物の受け渡し作業を行うことができる。
【0022】
また、この構成の搬送物受け渡し機構は、落下防止部材を第1位置と第2位置との間で変更するだけで、移送抑止状態と移送許容状態との切替、および、連結状態と非連結状態との切替が、同時に行われるようになっており、簡単な操作で、搬送物の受け渡し作業を行うことが可能となっているのである。
【0023】
また、上記構成において、
前記搬送物は、矩形状のものとされ、
前記搬送台車は、それぞれが前記落下防止部材である一対の落下防止部材を備え、前記一対の落下防止部材が、それぞれ前記搬送物の左側前方および右側前方に位置することで、前記搬送物の前方側への移動を抑止するように構成され、
前記設備は、一対の落下防止部材の各々に対応して、それぞれが前記係止部である一対の係止部を備えた構成とすることができる。
【0024】
この構成の搬送物受け渡し機構は、一対の落下防止部材と一対の係止部とを含んで構成されている。この構成の搬送物受け渡し機構は、搬送台車を設備に対して連結する際に、一方の落下防止部材を係止部に係止させるべく動作させている際にも、他方の落下防止部材によって移送禁止状態が維持され、また、搬送台車を設備から切り離す際に、一方の落下防止部材による係止を解除しても、他方の落下防止部材によって連結状態が維持される。したがって、この搬送物受け渡し機構によれば、より安全に、搬送物の受け渡し作業を行うことができる。
【0025】
さらに、上記構成において、
前記設備は、前記搬送物の受け渡しを禁止する状態から、受け渡しを許容する状態に切り替える受け渡し許容装置を備え、
前記落下防止部材が、前記第1位置から前記第2位置に動作する際に、前記受け渡し許容装置を作動させるための作動レバーを動作させるように構成されており、
前記落下防止部材が前記第2位置に位置することで、前記設備において前記搬送物の受け渡しを許容する状態とされるように構成することができる。
【0026】
この構成の搬送物受け渡し機構は、設備側に設けられた受け渡し許容装置を、落下防止部材の動作に伴って、自動で作動させるように構成されている。つまり、この構成の搬送物受け渡し機構は、落下防止部材の動作(第1位置から第2位置への変更)によって搬送台車のロックを解除するのと合わせて、設備のロックが解除されるとともに、搬送台車と設備とが連結される。また、落下防止部材の動作(第2位置から第1位置への変更)によって搬送台車と設備との連結を解除するのと合わせて、搬送台車と設備の両者がロックされるようになっている。
【0027】
従来は、受け渡し許容装置を作動させるために、操作者が設備の操作盤まで移動して操作する必要があったが、この構成の搬送物受け渡し機構によれば、その必要がなく、より簡単な操作で、搬送物の受け渡し作業を行うことができる。
【0028】
なお、設備の受け渡し許容装置は、例えば、係止部材を搬送物に係合した状態として搬送物の移送を禁止した状態から、係合しない状態として搬送物の移送を許容する状態に切り替えるような装置、より具体的に言えば、係止ピンを載置部から上方に突出させた状態から下降させる装置を採用することができる。また、例えば、搬送台車の載置部に対して設備の載置部との高さが合っていない状態として搬送物の移送を禁止した状態から、それらの載置部の高さが合っている状態として搬送物の移送を許容する状態に切り替える装置(リフター)等を採用することができる。
【発明の効果】
【0029】
本発明によれば、比較的単純な構成によって、搬送物の搬送および搬送台車と設備との間における搬送物の受け渡しを、簡単な操作で安全に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【
図1】本発明の実施例の搬送物受け渡し機構を概略的に示す平面図である。
【
図5】
図3に示す搬送台車の要部を拡大して示す図である。
【
図6】
図1に示す搬送物受け渡し機構の要部を拡大して示す図である。
【
図7】搬送物受け渡し機構の要部を、設備側からの視点において示す図である。
【
図8】搬送台車を設備に対して所定位置に位置させた状態を示す平面図である。
【
図9】搬送台車を設備に対して連結した状態を示す平面図である。
【
図10】搬送台車を設備に対して連結した状態を、設備側からの視点において示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
以下、本発明を実施するための形態として、本発明の実施例を、図を参照しつつ詳しく説明する。なお、本発明は、下記の実施例に限定されるものではなく、当業者の知識に基づいて種々の変更、改良を施した種々の態様で実施することができる。
【0032】
図1に、本発明の実施例の搬送台車10と、その搬送台車10との間において搬送物の受け渡しを行う設備としての表皮基材圧着機12とを、概略的に示す。そして、本実施例の搬送物受け渡し機構は、それら搬送台車10と表皮基材圧着機12との間に設けられる。本実施例の搬送台車10は、搬送物として、表皮基材圧着機12にセットされる金型Mを搬送するものであり、本実施例の搬送物受け渡し機構は、その金型Mを、搬送台車10から表皮基材圧着機12に移送するため、あるいは、表皮基材圧着機12から搬送台車10に移送するための機構である。
【0033】
まず、金型Mについて簡単に説明するとともに、表皮基材圧着機12について、概略的な構成を簡単に説明する。金型Mは、上下方向において重ねられたものとなっており、下方側の固定側型板部と、上方側の可動側型板部とからなる。それら固定側型板部および可動側型板部は、それぞれ、長方形板状のベースM
1に対して金型本体M
2が固定されたものとなっている。表皮基材圧着機12は、縦型の装置であり、
図1に示す固定盤14上に固定側型板部が固定保持されるとともに、図示を省略する可動盤に対して可動側型板部が固定保持された状態で、金型Mを開閉させるように構成される。
【0034】
また、表皮基材圧着機12は、一対のダイリフタ16を備えており、それら一対のダイリフタ16にエアが供給されることで、ベアリング(図示省略)を固定盤14より上方に上昇させて、そのベアリングによって金型Mをスムースに移動させることが可能とされている。さらに、表皮基材圧着機12は、金型Mの固定盤14からの移動を抑止するストッパ装置18を備えている。そのストッパ装置18は、係止ピン18aを主体とするものであり、その係止ピン18aが、固定盤14における搬送台車10が連結される側に上下方向に移動可能に設けられている。係止ピン18aは、スプリング(図示省略)によって上方に向かって付勢されおり、通常は、固定盤14の上面から突出した状態とされており、エアが供給されることによって、下降させられて、固定盤14の上面から突出しない状態とされる。つまり、ダイリフタ16およびストッパ装置18は、金型Mの受け渡しを禁止する状態から、エアが供給されることで、金型Mの受け渡しを許容する状態に切り替える受け渡し許容装置として機能するものとなっている。
【0035】
<搬送台車の構成>
次に、本実施例の搬送台車10について、
図2から
図4を参照しつつ、詳しく説明する。本搬送台車10は、作業者(操作者)の力によって動かされるものであり、概して直方体形状のフレームからなる台車本体20と、その台車本体20の下端の四隅に設けられた4つの車輪22と、台車本体20の上部に設けられた金型Mを載置可能な載置部24と、作業者が当該搬送台車10を動かす際に把持可能なハンドル26と、自身を駐車させた際に自身を固定するための駐車ストッパ28と、を備えている。
【0036】
本搬送台車10は、上述した金型Mの長方形状のベースM1に合わせた形状のものとなっている。つまり、搬送台車10の載置部24が、長方形状のベースM1に合わせ、平面視で概して長方形状に形成されている。載置部24は、複数のローラを有する一対のレール30を有しており、それら一対のレール30が延びる方向に金型Mを移動させることが可能とされている。なお、本搬送台車10は、一対のレール30の延びる方向を前後方向と呼ぶこととし、また、表皮基材圧着機12との間で金型Mの受け渡しを行う側を前方と、上記のハンドル26が設けられた側を後方と、呼ぶこととする。
【0037】
本搬送台車10は、金型Mを搬送する際に、載置部24に載置された金型Mの脱落を防止するように構成されている。具体的には、本搬送台車10は、載置部24の両側端の各々に立設された一対のガイド32を備えており、側方からの金型Mの落下が防止される。また、本搬送台車10は、載置部24の後端側中央に、上方に向かって突出するストッパピン34を備えており、そのストッパピン34によって金型Mの後方側への移動が抑止される。さらに、当該搬送台車10は、載置部24の両側端の各々に、金型Mの前方側への移動を抑止して前方側への落下を防止するための一対のストッパ機構36を備えている。
【0038】
一対のストッパ機構36について、
図5および
図6をも参照しつつ説明する。各ストッパ機構36は、落下防止部材としての板状部材であるストッパプレート40と、そのストッパプレート40を動作させるための操作レバー42と、を含んで構成される。各ストッパ機構36のストッパプレート40は、載置部24の前方において、前後方向に延びる軸線周りに回動可能に設けられている。また、操作レバー42は、ストッパプレート40に対してそれの回動軸線と同軸的に固定されて載置部24の後方まで延びる回転軸部42aと、その回転軸部42aの後端にそれに直交する方向に延び出した把持部42bと、を有しており、作業者が回転軸部42aを回動させることで、ストッパプレート40を回動させるものとなっている。なお、それら一対のストッパ機構36の各々の把持部42bは、
図2に示すように、ハンドル26のすぐ左側とすぐ右側に配されている。
【0039】
そして、ストッパプレート40は、第1位置と第2位置との間で回動可能に構成されている。ストッパプレート40は、第1位置に位置する場合に、自身の一部が金型MのベースM
1の前方に位置して、金型Mの前方側への移動を抑止することができる。ちなみに、
図1~
図6は、搬送台車10において、金型Mの移動を抑止している状態が図示されている。一方、ストッパプレート40は、作業者によって回動させられて、第2位置に位置する場合(
図5における二点鎖線)、自身の一部が金型Mの前方から外れ、金型Mの前方側への移動を許容することができる。
【0040】
本搬送台車10は、各ストッパ機構36に対して、ストッパプレート40の回動を禁止することが可能な一対のロック機構50を備えている。各ロック機構50は、ストッパプレート40に係合してそれの回動を禁止する係合部材としてのロックピン52と、そのロックピン52を前方に向かって付勢する付勢部材(スプリング:図示省略)を含んで構成される付勢機構54と、を含んで構成される。ロックピン52は、先端部52aが円錐台形状に形成されたものとなっており、付勢機構54によって、前後方向に延びる状態で、前後方向に摺動可能に保持されており、通常は、付勢部材によって前進端に位置している。一方、ストッパプレート40は、
図5に示すように、第1位置にある場合において、下方に開口する半円状の切り欠き40aが形成されている。またその切り欠き40aは、内周面が、ロックピン52の先端部52aの外周面に沿って板厚方向に傾斜するテーパ状に形成されている。したがって、ロックピン52は、先端部52aがストッパプレート40の切り欠き40aに嵌まり込み、付勢機構54の付勢力によって、ロックピン52の先端部52aの外周面が、ストッパプレート40の切り欠き40aの内周面に押し付けられる。そのような構成により、ロックピン52は、ストッパプレート40の第1位置からの回動を禁止するようになっている。また、ロックピン52がストッパプレート40に押し付けられた状態においては、
図6に示すように、ロックピン52の先端がストッパプレート40より前方に突出した状態となっている。
【0041】
なお、駐車ストッパ28は、
図2および
図4に示すように、台車本体20の後方側下端に設けられており、ダウン用のフットレバー28aを踏み下げることで、パッド28bを地面に押し付けて、当該搬送台車10の後方側の2つの車輪を持ち上げるようにして、当該搬送台車10を固定するように構成されている。一方、駐車ストッパ28による固定を解除する場合は、アップ用のフットレバー28cを踏み下げることで、パッド28bが上昇して、当該搬送台車10の後方側の2つの車輪が接地する。
【0042】
<搬送物受け渡し機構の構成>
次に、上述のように構成された搬送台車10と表皮基材圧着機12との間に設けられた搬送物受け渡し機構(以下、単に「受け渡し機構」と呼ぶ場合がある)の構成について、詳しく説明する。表皮基材圧着機12は、
図1に示すように、搬送台車10が連結される側に、搬送台車10の左右方向の位置を規定するための一対のガイド60と、搬送台車10の両側端の各々に対応して搬送台車10と連結するための一対の連結ブロック62と、を備えている。一対のガイド60は、表皮基材圧着機12における下方側の地面に近い箇所に、左右方向に間隔をおいて設けられている。詳しく言えば、それら一対のガイド60の間隔が、搬送台車10の台車本体20の左右方向の寸法より僅かに大きくされており、搬送台車10の左右方向の位置を規定する。そして、搬送台車10は、それら一対のガイド60内に位置することで、載置部24の左右方向の位置が、表皮基材圧着機12の固定盤14の位置に合うようになっている。
【0043】
一対の連結ブロック62の各々は、
図6および
図7に示すように、搬送台車10の載置部24とほぼ同じ高さ位置となるように設けられるとともに、搬送台車10が一対のガイド60内に位置している状態において一対のストッパ機構36の前方側に位置するように設けられている。そして、各連結ブロック62は、搬送台車10が備えるロックピン52を当接させる当接片64を有している。その当接片64は、
図7に示すように、搬送台車10が一対のガイド60内に位置している状態において、ロックピン52の前方に位置している。つまり、搬送台車10を表皮基材圧着機12に連結させる際、搬送台車10を一対のガイド60に沿って前進させると、最初に、一対のロック機構50の各々のロックピン52において、表皮基材圧着機12の当接片64に当接する。さらに、搬送台車10を前進させると、各ロックピン52は付勢機構54の付勢力に抗って台車本体20に対して後退する。そして、
図8に示すように、各ロックピン52が後退端まで移動させられると、搬送台車10の表皮基材圧着機12に対する移動が停止させられる。つまり、搬送台車10の表皮基材圧着機12に対する前後方向の位置が規定され、搬送台車10が表皮基材圧着機12との間で金型Mの受け渡しを行う位置である所定位置に位置することになる。
【0044】
また、その搬送台車10が所定位置に位置して、各ロックピン52が後退端に位置している場合には、ロックピン52はストッパプレート40との係合が解除され、ストッパプレート40が回動可能な状態となっている。つまり、本受け渡し機構は、搬送台車10を前進させて、表皮基材圧着機12に対して所定位置に位置させるだけで、ストッパプレート40のロックが自動で解除されるのである。一方、搬送台車10を表皮基材圧着機12から切り離す場合には、搬送台車10が所定位置にある状態(
図8に示した状態)から、搬送台車10を後退させると、各ロックピン52が付勢機構54の付勢力によって台車本体20に対して前進させられる。そして、各ロックピン52がストッパプレート40に係合し、ストッパプレート40の回動が抑止された状態となる。つまり、本受け渡し機構は、搬送台車10を所定位置から後退させるだけで、ストッパプレート40が自動でロックされるのである。
【0045】
そして、作業者が操作レバー42によって両ストッパ機構36のストッパプレート40を回動させて、ストッパプレート40を第2位置に位置させることで、ストッパプレート40が金型Mの前方から外され、搬送台車10における金型Mの受け渡し準備が整うことになる。
【0046】
一対の連結ブロック62の各々は、また、ストッパプレート40を係止する係止部としての係止片66を有している。その係止片66は、
図6および
図7に示すように、搬送台車10側に向かって延び出すとともに、先端部66aが上方に向かって延び出して、側方から視点で概してL字形状のものとなっている。また、その係止片66は、
図8に示すように、搬送台車10が所定位置に位置している状態において、ストッパプレート40のすぐ脇(側方)に位置している。そして、ストッパプレート40が、
図7および
図8に示した第1位置にある状態から、作業者によって回動させられて第2位置に位置すると、
図9および
図10に示すように、係止片66の先端部66aの表皮基材圧着機12側に入り込むことになる。つまり、搬送台車10は、表皮基材圧着機12に対して後退が抑止されること、換言すれば、表皮基材圧着機12に対して連結されることになるのである。
【0047】
つまり、本受け渡し機構は、両ストッパ機構36のストッパプレート40を第1位置から回動させて第2位置に位置させることによって、搬送台車10において金型Mの受け渡しを許容するのと同時に、搬送台車10は表皮基材圧着機12に対して連結されるように構成されている。一方、搬送台車10を表皮基材圧着機12から切り離す場合には、両ストッパ機構36のストッパプレート40を第2位置から回動させて第1位置に位置させることによって、搬送台車10の表皮基材圧着機12に対する連結を解除するのと同時に、搬送台車10において金型Mの受け渡しを禁止するように構成されている。
【0048】
さらに、一対の連結ブロック62の各々には、前述した表皮基材圧着機12が備えるダイリフタ16およびストッパ装置18を作動させるための作動レバー68を有している。その作動レバー68は、
図7および
図8に示すように、左右方向において、係止片66より外側に設けられている。作動レバー68は、前後方向に延びる回転軸68a周りに回動可能とされ、係止片66側で、かつ、斜め下側に向かって延び出している。また、作動レバー68は、先端に前後方向に延びる軸線周りに回転可能なローラ68bが設けられている。
【0049】
この作動レバー68は、回動して押し下げられることで、ダイリフタ16およびストッパ装置18を作動させる。より詳しく言えば、一対の連結ブロック62の各々が有する作動レバー68の両者が押し下げられることで、ダイリフタ16およびストッパ装置18の両者にエアが供給されるように構成されている。つまり、作動レバー68の両者が押し下げられることで、ダイリフタ16においてベアリング(図示省略)を固定盤14より上方に上昇させるととともに、ストッパ装置18において係止ピン18aを下降させ、金型Mの受け渡しを許容する状態とされるのである。なお、この作動レバー68は、上方側に向かって付勢されており、通常状態においては、
図7および
図8に示す位置に位置するようになっている。つまり、作動レバー68を押し下げる力がなくなれば、通常時の位置に戻されて、ダイリフタ16およびストッパ装置18へのエアの供給が停止させられる。
【0050】
そして、この作動レバー68は、
図7および
図8に示すように、先端のローラ68bが係止片66のすぐ脇に位置している。そのため、ストッパプレート40が、第1位置から第2位置に回動する途中で、このローラ68bに当接し、
図9および
図10に示すように、作動レバー68を回転軸68a周りに回動させて押し下げることになるのである。つまり、本受け渡し機構は、両ストッパ機構36のストッパプレート40を第1位置から回動させて第2位置に位置させることによって、搬送台車10において金型Mの受け渡しを許容するのと同時に、表皮基材圧着機12においても金型Mの受け渡しを許容する状態とされるとともに、搬送台車10が表皮基材圧着機12に対して連結されるように構成されている。
【0051】
一方、搬送台車10を表皮基材圧着機12から切り離す場合には、両ストッパ機構36のストッパプレート40を第2位置から回動させて第1位置に位置させることによって、作動レバー68が元の位置に戻されてダイリフタ16およびストッパ装置18へのエアの供給が停止し、表皮基材圧着機12において金型Mの受け渡しを禁止する状態とされる。つまり、本受け渡し機構は、搬送台車10を表皮基材圧着機12から切り離す場合において、両ストッパ機構36のストッパプレート40を第2位置から回動させて第1位置に位置させることによって、搬送台車10の表皮基材圧着機12に対する連結を解除するのと同時に、表皮基材圧着機12および搬送台車10の両者において金型Mの受け渡しを禁止するように構成されているのである。
【0052】
<金型の交換手順>
(I)設備から金型の取り外し
(i)搬送台車の所定位置への移動
次に、上述のように構成された搬送台車10および受け渡し機構を利用して、表皮基材圧着機12における金型Mの交換作業を行う場合の手順について説明する。まず、何も載置されていない搬送台車10を用意する。その搬送台車10は、一対のストッパプレート40が第1位置に位置してロックピン52によってロックされている状態、つまり、金型Mの受け渡しを禁止する状態となっている。そして、作業者は、その搬送台車10を、表皮基材圧着機12に対して所定位置に位置させる。これにより、一対のストッパプレート40のロックが解除され、回動が許容される。なお、作業者は、搬送台車10を、この所定位置において固定するために、駐車ストッパ28を作動させる。
【0053】
(ii)操作レバーによるロック
次いで、作業者は、一対の操作レバー42の各々を操作して、一対のストッパプレート40の各々を、順次、第1位置から回動させて第2位置に位置させる。これにより、搬送台車10が表皮基材圧着機12に連結されるとともに、表皮基材圧着機12のダイリフタ16およびストッパ装置18が作動して表皮基材圧着機12にセットされた金型Mを受取可能な状態とされる。また、表皮基材圧着機12のダイリフタ16およびストッパ装置18は、一方の作動レバー68が押し下げられただけでは作動せず、両方の作動レバー68が押し下げられた時点で作動するようになっており、一対のストッパプレート40の両者によって搬送台車10が表皮基材圧着機12に連結した場合にのみ、表皮基材圧着機12において金型Mを受取可能な状態されるようになっており、安全性が高められている。
【0054】
(iii)金型の移動
そして、作業者は、表皮基材圧着機12上の金型Mを搬送台車10上に移動させる。ちなみに、上述の駐車ストッパ28による搬送台車10のロックが不十分であったとしても、搬送台車10は、ストッパプレート40によって表皮基材圧着機12に連結されているため、金型Mの移送時に、搬送台車10が後退してしまうことが防止される。
【0055】
(iv)操作レバーによるロックの解除
金型Mを搬送台車10上に移動させた後、作業者は、一対の操作レバー42の各々を操作して、一対のストッパプレート40の各々を、順次、第2位置から回動させて第1位置に位置させる。これにより、搬送台車10の表皮基材圧着機12に対する連結が解除されるとともに、表皮基材圧着機12のダイリフタ16およびストッパ装置18が停止して表皮基材圧着機12にセットされた金型Mを受取可能な状態とされる。なお、この際、一方のストッパプレート40が第1位置に位置させられて、その一方のストッパプレート40によって、搬送台車10上の金型Mの前方からの落下を防止した状態においても、他方のストッパプレート40によって、搬送台車10と表皮基材圧着機12との連結状態が維持されているため、搬送台車10の表皮基材圧着機12から切り離す作業を安全に行うことができる。
【0056】
(v)搬送台車の後退
次に、作業者は、駐車ストッパ28を解除して、搬送台車10を後退させる。これにより、一対のストッパプレート40の各々は、ロックピン52によってロックされて回動が禁止され、金型Mの搬送台車10からの落下を確実に防止することができる。以上で、表皮基材圧着機12から金型Mを外す作業が完了する。
【0057】
(II)設備への金型のセット
続いて、表皮基材圧着機12に、別の金型Mをセットする作業を行う。この作業も、上述した金型Mを取り外す作業と同じ手順で行われる。つまり、別の金型Mが載置された搬送台車10の所定位置への移動、操作レバー42によるロック、金型Mの搬送台車10から表皮基材圧着機12への移動、操作レバー42によるロックの解除、搬送台車の撤去で、表皮基材圧着機12への別の金型Mをセットする作業が完了する。
【0058】
なお、操作レバー42によるロックを行う場合においては、一方のストッパプレート40が第2位置に位置させられて、その一方のストッパプレート40によって、搬送台車10と表皮基材圧着機12とが連結状態とされた場合においても、第1位置にある他方のストッパプレート40によって、搬送台車10上の金型Mの前方からの落下を防止することができるため、搬送台車10の表皮基材圧着機12に連結する作業を安全に行うことができる。また、操作レバー42によるロックの解除を行う場合においては、一方のストッパプレート40を第1位置に位置させた時点で、表皮基材圧着機12のダイリフタ16およびストッパ装置18が停止するため、表皮基材圧着機12に移送された金型Mが搬送台車10側に戻ることが確実に防止されるようになっている。
【0059】
<本発明の効果および変形例>
以上のように構成された搬送台車10および搬送物受け渡し機構は、比較的単純な構成となっているにもかかわらず、作業者が行う作業は少なく、簡単な作業で、かつ、安全に搬送物の受け渡し作業を行うことが可能とされているのである。
【0060】
本実施例の受け渡し機構において、設備は表皮基材圧着機12であったが、それに限定されず、金型Mを収容する設備等の種々の設備との間に本発明の受け渡し機構を設けることができる。また、本実施例の搬送台車10は、金型を搬送するためのものであったが、それに限定されず、種々の搬送物を搬送する搬送台車に本発明を適用することができる。さらに、本実施例の搬送台車10は、操作者の力によって動かされるものであったが、駆動源を備えてその駆動源の駆動力によって動くものに、本発明を適用することもできる。
【0061】
本実施例の搬送台車10においては、落下防止部材は、板状の部材で前後方向に延びる軸線周りに回動可能なものとされていたが、それに限定されない。ただし、上記実施例のような落下防止部材によれば、板厚分の隙間内で動作することができるため、搬送台車の載置部と設備との間を狭くすることができ、搬送物の受け渡しを安全に行うことができる。また、落下防止部材をロックする係合部材の形状、その係合部材の落下防止部材への係合する構成も、上記実施例に限定されず、種々の態様で実施することができる。
【符号の説明】
【0062】
10…搬送台車、12…表皮基材圧着機〔設備〕、M…金型〔搬送物〕、14…固定盤、16…ダイリフタ〔受け渡し許容装置〕、18…ストッパ装置〔受け渡し許容装置〕、20…台車本体、22…車輪、24…載置部、26…ハンドル、36…一対のストッパ機構、40…ストッパプレート〔落下防止部材〕、40a…切り欠き、42…操作レバー〔操作部材〕、42a…回転軸部、42b…把持部、50…一対のロック機構、52…ロックピン〔係合部材〕、52a…先端部、54…付勢機構〔付勢部材〕、62…一対の連結ブロック、66…係止片〔係止部〕、68…作動レバー