(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-02-09
(45)【発行日】2022-02-18
(54)【発明の名称】電気機械サーキットブレーカおよびバッテリハウジング
(51)【国際特許分類】
H01H 37/52 20060101AFI20220210BHJP
H02H 7/18 20060101ALI20220210BHJP
H02J 7/00 20060101ALI20220210BHJP
H02H 9/02 20060101ALI20220210BHJP
H02H 5/04 20060101ALI20220210BHJP
H01M 50/572 20210101ALI20220210BHJP
H01M 50/20 20210101ALI20220210BHJP
【FI】
H01H37/52 B
H02H7/18
H02J7/00 S
H02H9/02 B
H02H5/04 120
H02H5/04 170
H01M50/572
H01M50/20
(21)【出願番号】P 2018532046
(86)(22)【出願日】2016-12-15
(86)【国際出願番号】 US2016066985
(87)【国際公開番号】W WO2017106535
(87)【国際公開日】2017-06-22
【審査請求日】2019-12-10
(32)【優先日】2015-12-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2016-05-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】505441524
【氏名又は名称】ボーンズ、インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100113608
【氏名又は名称】平川 明
(74)【代理人】
【識別番号】100138357
【氏名又は名称】矢澤 広伸
(72)【発明者】
【氏名】ボーンズ,ゴードン リー
(72)【発明者】
【氏名】メイヤー,ラース エリック グナー
(72)【発明者】
【氏名】ゲリングス,アール ロバート
(72)【発明者】
【氏名】ケーシー,ケリー シー.
(72)【発明者】
【氏名】多田 淳
【審査官】関 信之
(56)【参考文献】
【文献】米国特許第04862132(US,A)
【文献】特開2004-134119(JP,A)
【文献】特開2007-043800(JP,A)
【文献】特開2015-015150(JP,A)
【文献】特開2002-319343(JP,A)
【文献】特開平04-337222(JP,A)
【文献】特開2005-285459(JP,A)
【文献】特表2005-522847(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01H 37/52
H02H 7/18
H01M 50/572
H01M 50/20
H02J 7/00
H02H 9/02
H02H 5/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の端子と、
第2の端子と、
第3の端子と、
前記第1の端子と前記第2および第3の端子との間に配置された熱作動スイッチと
を備え、前記スイッチが、前記第1の端子が前記第2の端子に電気的に接続されている、正常動作状態を有し、前記スイッチが、前記第1の端子が前記第2の端子と前記第3の端子の両方に電気的に接続されている、故障状態を有し、したがって故障状態では、電流の大部分が前記第1の端子と前記第3の端子との間を流れ、電流のごく一部が前記第1の端子と前記第2の端子との間を流れる、故障状態に応答する電気ブレーカ。
【請求項2】
前記第1の端子と前記第2の端子との間に正温度係数(PTC)抵抗器をさらに備える、請求項1に記載のブレーカ。
【請求項3】
前記熱作動スイッチが、前記PTC抵抗器と接触するバイメタルスイッチング素子を備える、請求項2に記載のブレーカ。
【請求項4】
前記バイメタルスイッチング素子が半球状である、請求項3に記載のブレーカ。
【請求項5】
前記熱作動スイッチが、前記第1の端子および前記バイメタルスイッチング素子に電気的に接続された可動アームを備える、請求項3~4のいずれか1項に記載のブレーカ。
【請求項6】
前記可動アームが、前記スイッチが前記正常動作状態にあるときは前記第2の端子に電気的に接続されている、請求項5に記載のブレーカ。
【請求項7】
前記バイメタルスイッチング素子が、前記スイッチが前記正常動作状態から前記故障状態に移行するにつれて形状が反転する、請求項6に記載のブレーカ。
【請求項8】
前記バイメタルスイッチング素子の反転が、前記可動アームを枢動または湾曲させて、前記第3の端子に電気的に接続させる、請求項7に記載のブレーカ。
【請求項9】
前記スイッチが、前記熱作動スイッチの温度が第1の閾値温度よりも上昇すると、前記正常動作状態から前記故障状態に移行するように構成されている、請求項1~8のいずれか1項に記載のブレーカ。
【請求項10】
前記スイッチが、前記熱作動スイッチの温度が前記第1の閾値温度より低い第2の閾値温度よりも低下すると、前記故障状態から前記正常動作状態に復帰するように構成されている、請求項9に記載のブレーカ。
【請求項11】
前記第1の閾値温度が65℃~85℃の範囲内にある、請求項9~10のいずれか1項に記載のブレーカ。
【請求項12】
前記第1の閾値温度が70℃~80℃の範囲内にある、請求項11に記載のブレーカ。
【請求項13】
前記第2の閾値温度が30℃~60℃の範囲内にある、請求項10~12のいずれか1項に記載のブレーカ。
【請求項14】
前記第2の閾値温度が40℃~55℃の範囲内にある、請求項13に記載のブレーカ。
【請求項15】
前記スイッチが、前記正常動作状態から前記故障状態に移行した後に、自動的には前記正常動作状態に戻らないように構成されている、請求項1~14のいずれか1項に記載のブレーカ。
【請求項16】
前記PTC抵抗器が、前記第1の端子と前記第2の端子との間に配置されている、請求項2~9のいずれか1項に記載のブレーカ。
【請求項17】
前記PTC抵抗器がセラミックPTC抵抗器を備える、請求項2~9のいずれか1項に記載のブレーカ。
【請求項18】
バッテリ用の互いに直列に接続された複数のセルであって、前記複数のセルの各セルが、第1のバッテリセル端子および第2のバッテリセル端子を有する複数のセルと、
前記複数のセルのうちの選択されたセルの前記第1のバッテリセル端子に接続された電気ブレーカであって、
第1の端子と、
第2の端子と、
第3の端子と、
前記第1の端子と前記第2および第3の端子との間に配置されたスイッチと
を備え、前記スイッチが、前記第1の端子が前記第2の端子に電気的に接続されている、正常動作状態を有し、前記スイッチが、前記第1の端子が前記第2の端子と前記第3の端子の両方に電気的に接続されている、故障状態を有する電気ブレーカと、
故障状態では、電流の大部分が前記第1の端子と前記第3の端子との間を流れて、前記選択されたセルを迂回して分流を提供し、電流のごく一部が前記第1の端子と前記第2の端子との間を流れるように、前記第3の端子を前記選択されたセルの前記第2のバッテリセル端子と電気的に接続する、バイパス回路と
を備える、デバイス。
【請求項19】
前記第1の端子と前記第2の端子との間に正温度係数(PTC)抵抗器をさらに備える、請求項18に記載のデバイス。
【請求項20】
前記スイッチが熱作動スイッチを備える、請求項18または19に記載のデバイス。
【請求項21】
前記熱作動スイッチがバイメタルスイッチング素子を備える、請求項20に記載のデバイス。
【請求項22】
前記スイッチが、前記熱作動スイッチの温度が第1の閾値温度よりも上昇すると、前記正常動作状態から前記故障状態に移行するように構成されている、請求項18~21のいずれか1項に記載のデバイス。
【請求項23】
前記スイッチが、前記熱作動スイッチの温度が前記第1の閾値温度より低い第2の閾値温度よりも低下すると、前記故障状態から前記正常動作状態に復帰するように構成されている、請求項22に記載のデバイス。
【請求項24】
前記第1の閾値温度が65℃~85℃の範囲内にある、請求項22~23のいずれか1項に記載のデバイス。
【請求項25】
前記第1の閾値温度が70℃~80℃の範囲内にある、請求項24に記載のデバイス。
【請求項26】
前記第2の閾値温度が30℃~60℃の範囲内にある、請求項23~25のいずれか1項に記載のデバイス。
【請求項27】
前記第2の閾値温度が40℃~55℃の範囲内にある、請求項26に記載のデバイス。
【請求項28】
前記スイッチが、前記正常動作状態から前記故障状態に移行した後に、前記正常動作状態に戻ることができないように構成されている、請求項18~27のいずれか1項に記載のデバイス。
【請求項29】
バッテリ用の1つまたは複数のセルを収容するサイズおよび形状のバッテリハウジングをさらに備え、前記電気ブレーカが前記バッテリハウジングと一体化されている、請求項18~28のいずれか1項に記載のデバイス。
【請求項30】
バッテリ用のセルを収容するサイズおよび形状の1つまたは複数の空洞を画定するハウジング本体と、
前記ハウジング本体と結合されたブレーカであって、スイッチを備えるブレーカと、
前記ハウジング本体の第1の端部にあり、前記スイッチに電気的に接続された第1の電気導体であって、前記セルの第1の電極に電気的に接続するように構成された第1の電気導体と、
前記ハウジング本体の第2の端部にある第2の電気導体であって、前記セルの第2の電極に電気的に接続して、前記第1の電気導体と前記第2の電気導体との間に第1の電気経路を画定するように構成された第2の電気導体と、
前記ハウジング本体と結合されたバイパス導体であって、前記スイッチおよび前記第2の電気導体に電気的に接続して、前記スイッチと前記第2の電気導体との間に第2の電気経路を画定するバイパス導体と
を備え
、
前記スイッチが、電流が前記第1および第2の電気導体の間の前記第1の電気経路に沿って流れる、正常動作状態を有し、前記スイッチが、前記電流の少なくとも大部分が前記セルをバイパスし、前記スイッチと前記第2の電気導体との間の前記第2の経路に沿って流れる、故障状態を有
し、
前記故障状態では、前記電流のごく一部が前記第1の経路に沿って流れる、
バッテリハウジング。
【請求項31】
前記ブレーカが、
第1の端子と、
第2の端子と、
第3の端子と
を備え、前記スイッチが、前記第1の端子と前記第2および第3の端子との間に配置された熱作動スイッチを備え、前記スイッチが、前記第1の端子が前記第2の端子に電気的に接続されている、正常動作状態を有し、前記スイッチが、前記第1の端子が前記第2の端子と前記第3の端子の両方に電気的に接続されている、故障状態を有し、したがって故障状態では、前記電流の大部分が前記第1の端子と前記第3の端子との間を流れ、前記電流のごく一部が前記第1の端子と前記第2の端子との間を流れる、請求項30
に記載のバッテリハウジング。
【請求項32】
前記第1の端子と前記第2の端子との間に正温度係数(PTC)抵抗器をさらに備える、請求項
31に記載の
バッテリハウジング。
【請求項33】
前記熱作動スイッチが、前記PTC抵抗器と接触するバイメタルスイッチング素子を備える、請求項
32に記載の
バッテリハウジング。
【請求項34】
前記ブレーカが、前記ハウジング本体の前記第1の端部に配置されている、請求項30~
33のいずれか1項に記載のバッテリハウジング。
【請求項35】
前記バイパス導体が、前記ハウジング本体の壁に沿って前記第1の端部から前記第2の端部に延びる、請求項30~
34のいずれか1項に記載のバッテリハウジング。
【請求項36】
前記1つまたは複数の空洞が、前記セルがツールレス接続によって前記バッテリハウジングに電気的かつ機械的に接続するような寸法である、請求項30~
35のいずれか1項に記載のバッテリハウジング。
【請求項37】
前記1つまたは複数の空洞が、前記セルを前記バッテリハウジングに機械的かつ電気的に接続するスナップフィット接続で、前記セルを収容するサイズおよび形状である、請求項
36に記載のバッテリハウジング。
【請求項38】
前記セルであって、前記1つまたは複数の空洞内に配置されたセルをさらに備える、請求項30~
37のいずれか1項に記載のバッテリハウジング。
【請求項39】
前記1つまたは複数の空洞が、第2のセルを収容するサイズおよび形状であり、前記バッテリハウジングが、
前記ハウジング本体と結合された第2のブレーカであって、第2のスイッチを備える第2のブレーカと、
前記ハウジング本体の前記第2の端部にあり、前記第2のスイッチに電気的に接続された第3の電気導体であって、前記第2のセルの第1の電極に電気的に接続するように構成された第3の電気導体と、
前記ハウジング本体の前記第1の端部にある第4の電気導体であって、前記第2のセルの第2の電極に電気的に接続して、前記第3の電気導体と前記第4の電気導体との間に第3の電気経路を画定するように構成された第4の電気導体と、
前記ハウジング本体と結合された第2のバイパス導体であって、前記第2のスイッチおよび前記第4の電気導体に電気的に接続して、前記第2のスイッチと前記第4の電気導体との間に第4の電気経路を画定する第2のバイパス導体と
をさらに備える、請求項30~
38のいずれか1項に記載のバッテリハウジング。
【請求項40】
外部部品との電気的連絡を提供するように構成された第1のモジュラバッテリ端子であって、前記ハウジング本体の第1の壁の外面上に配置された第1のモジュラバッテリ端子と、前記モジュラバッテリ端子を前記スイッチに電気的に接続する第3の電気導体とをさらに備える、請求項30~
39のいずれか1項に記載のバッテリハウジング。
【請求項41】
第2の外部部品との電気的連絡を提供するように構成された第2のモジュラバッテリ端子であって、前記ハウジング本体の第2の壁の第2の外面上に配置された第2のモジュラバッテリ端子をさらに備える、請求項
40に記載のバッテリハウジング。
【請求項42】
前記バッテリハウジングと電気的に連絡するバッテリ監視システムであって、前記スイッチが前記故障状態にあるかどうかを判定するように構成されたバッテリ監視システムをさらに備える、請求項
31~
41のいずれか1項に記載のバッテリハウジング。
【請求項43】
互いに電気的に接続された複数のバッテリハウジングであって、前記複数のバッテリハウジングの各バッテリハウジングが、請求項30~
42のいずれか1項に記載のバッテリハウジングを備える複数のバッテリハウジングを備える、バッテリパック。
【請求項44】
前記複数のバッテリハウジングが直列に接続されている、請求項
43に記載のバッテリパック。
【請求項45】
前記複数のバッテリハウジングが並列に接続されている、請求項
43に記載のバッテリパック。
【請求項46】
前記複数のバッテリハウジングと電気的に連絡する昇降圧コンバータであって、前記バッテリパックの出力電圧を調節するように構成された昇降圧コンバータをさらに備える、請求項
43~
45のいずれか1項に記載のバッテリパック。
【請求項47】
バッテリ用のセルを収容するように構成されたバッテリハウジングであって、
前記バッテリハウジングと一体化された3端子ブレーカであって、正常動作状態および故障状態を有する3端子ブレーカと、
前記ブレーカが前記正常動作状態にあるときに前記セルを通る主電流経路と、
前記ブレーカが前記故障状態にあるときに前記セルをバイパスするように構成されたバイパス電流経路と
を備え
、
前記故障状態では、前記電流のごく一部が前記主電流経路に沿って流れ、前記電流の大部分が前記バイパス電流経路に沿って流れる、
バッテリハウジング。
【請求項48】
前記セルであって、前記バッテリハウジングの空洞内に配置されたセルをさらに備える、請求項
47に記載のバッテリハウジング。
【請求項49】
外部部品との電気的連絡を提供するように構成された第1のモジュラバッテリ端子であって、前記バッテリハウジングの第1の壁の外面上に配置された第1のモジュラバッテリ端子をさらに備える、請求項
47または48に記載のバッテリハウジング。
【請求項50】
第2の外部部品との電気的連絡を提供するように構成された第2のモジュラバッテリ端子であって、前記ハウジング本体の第2の壁の第2の外面上に配置された第2のモジュラバッテリ端子をさらに備える、請求項
49に記載のバッテリハウジング。
【請求項51】
前記バッテリハウジングが、ツールレス接続によって前記セルに機械的かつ電気的に接
続するサイズおよび形状である、請求項
47~
50のいずれか1項に記載のバッテリハウジング。
【請求項52】
前記ツールレス接続がスナップフィット接続を含む、請求項
51に記載のバッテリハウジング。
【請求項53】
バッテリ用のセルを収容するように構成されたバッテリハウジングであって、
前記バッテリハウジングと一体化されたブレーカであって、正常動作状態および故障状態を有するブレーカと、
前記セルの対応する第1および第2の端子に電気的に接続するように構成された第1および第2のセル接点
と、
前記第1および第2のセル接点の間で前記セルを収容するサイズおよび形状の空洞と
を備え、
前記第1および第2のセル接点および前記空洞が、前記セルがツールレス接続によって前記バッテリハウジングに電気的かつ機械的に接続するような寸法であ
り、
前記ブレーカが前記正常動作状態にあるときに前記セルを通る主電流経路と、前記セルが前記故障状態にあるときに前記セルをバイパスするように構成されたバイパス電流経路とをさらに備え、
前記ブレーカが前記第1のセル接点と電気的に接続されており、
前記故障状態では、前記電流の大部分が前記バイパス電流経路に沿って流れ、前記電流のごく一部が前記主電流経路に沿って流れる、
バッテリハウジング。
【請求項54】
前記ツールレス接続がスナップフィット接続を含む、請求項
53に記載のバッテリハウジング。
【請求項55】
バッテリ用の複数のセルを収容するように構成されたバッテリハウジングであって、
前記複数のセルを収容するサイズおよび形状の空洞と、
前記バッテリハウジング上の複数のセル接点であって、各セル接点が、前記複数のセルのうちの対応するセルの対応する端子に電気的に接続するように構成された複数のセル接点と、
前記バッテリハウジングと一体化された複数のブレーカであって、前記複数のブレーカの各ブレーカが正常動作状態および故障状態を有する複数のブレーカと
を備え、
前記複数のブレーカの各ブレーカが、前記複数のセル接点の対応するセル接点に電気的に接続されて
おり、
前記故障状態では、前記電流の大部分が前記複数のセルのうちの対応するセルをバイパスし、前記電流のごく一部が前記対応するセルを流れる、
バッテリハウジング。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願への相互参照)
本出願は、全体として、またあらゆる目的のために、その開示の全体が参照により本明細書に援用される、米国仮特許出願第62/269420号明細書および米国仮特許出願第62/331756号明細書の優先権を主張する。
【0002】
本分野は一般に、電気機械サーキットブレーカに関し、詳細には、3端子ブレーカおよびこうした3端子ブレーカを組み込む電気システムに関する。本分野はまた、電気機械サーキットブレーカを一体化させることができるバッテリハウジングに関する。
【背景技術】
【0003】
様々なタイプの電気デバイスでは、1つもしくは複数のセルを備えてもよいバッテリなどの回路素子、または他の構成要素は、より大きな電気デバイスの動作もしくは信頼性に悪影響を及ぼす故障を起こす場合がある。たとえば、回路素子は過熱状態になることがあり、かつ/または過度の電流が回路素子を通過する過電流故障を起こす場合がある。こうした過温度および/または過電流故障は、デバイスの機能性、信頼性、耐用年数、および/または安全性を低下させる場合がある。したがって、回路素子(バッテリなど)が動作中に過温度および/または過電流故障を起こすときに、より大きな電気デバイスを保護する装置が、依然として引き続き必要とされている。
【発明の概要】
【0004】
一実施形態では、故障状態に応答する電気ブレーカを開示する。ブレーカは、第1の端子、第2の端子、および第3の端子を含むことができる。ブレーカはまた、第1の端子と第2および第3の端子との間に配置された熱作動スイッチを含むことができる。スイッチは、第1の端子が第2の端子に電気的に接続されている、正常動作状態を有することができる。スイッチは、第1の端子が第2の端子と第3の端子の両方に電気的に接続されている、故障状態を有することができ、したがって故障状態では、電流の大部分が第1の端子と第3の端子との間を流れ、電流のごく一部が第1の端子と第2の端子との間を流れる。
【0005】
いくつかの実施形態では、ブレーカは、第1の端子と第2の端子との間に正温度係数(PTC)抵抗器を含むことができる。熱作動スイッチは、PTC抵抗器と接触するバイメタルスイッチング素子を備えることができる。バイメタルスイッチング素子は、半球状とすることができる。熱作動スイッチは、第1の端子およびバイメタルスイッチング素子に電気的に接続された可動アームを備えることができる。可動アームは、スイッチが正常動作状態にあるときは、第2の端子に電気的に接続することができる。バイメタルスイッチング素子は、スイッチが正常動作状態から故障状態に移行するにつれて、形状が反転することができる。バイメタルスイッチング素子の反転は、可動アームを枢動または湾曲させて、第3の端子に電気的に接続させることができる。スイッチは、熱作動スイッチの温度が第1の閾値温度よりも上昇すると、正常動作状態から故障状態に移行するように構成することができる。スイッチは、熱作動スイッチの温度が第1の閾値温度より低い第2の閾値温度よりも低下すると、故障状態から正常動作状態に復帰するように構成することができる。第1の閾値温度は、65℃~85℃の範囲内とすることができる。第1の閾値温度は、70℃~80℃の範囲内とすることができる。第2の閾値温度は、30℃~60℃の範囲内とすることができる。第2の閾値温度は、40℃~55℃の範囲内とすることができる。スイッチは、正常動作状態から故障状態に移行した後に、自動的には正常動作状態に戻らないように構成することができる。PTC抵抗器は、第1の端子と第2の端子との間に配置することができる。PTC抵抗器は、セラミックPTC抵抗器を備えることがで
きる。
【0006】
別の実施形態では、デバイスを開示する。デバイスは、互いに直列に接続された複数のバッテリセルであって、複数のバッテリセルの各バッテリセルが第1のバッテリセル端子および第2のバッテリセル端子を有する複数のバッテリセルを含むことができる。デバイスは、複数のバッテリセルのうちの選択されたバッテリセルの第1のバッテリセル端子に接続された電気ブレーカを含むことができる。電気ブレーカは、第1の端子、第2の端子、および第3の端子を含むことができる。ブレーカは、第1の端子と第2および第3の端子との間に配置されたスイッチ(たとえば、熱作動スイッチ)を含むことができる。スイッチは、第1の端子が第2の端子に電気的に接続されている、正常動作状態を有することができる。スイッチは、第1の端子が第2の端子と第3の端子の両方に電気的に接続されている、故障状態を有することができる。デバイスは、故障状態では、電流の大部分が第1の端子と第3の端子との間を流れて、選択されたバッテリセルを迂回して分流を提供し、電流のごく一部が第1の端子と第2の端子との間を流れるように、第3の端子を選択されたバッテリセルの第2のバッテリセル端子と電気的に接続する、バイパス回路を含むことができる。
【0007】
いくつかの実施形態では、デバイスは、第1の端子と第2の端子との間に正温度係数(PTC)抵抗器を含むことができる。熱作動スイッチは、バイメタルスイッチング素子を含むことができる。スイッチは、熱作動スイッチの温度が第1の閾値温度よりも上昇すると、正常動作状態から故障状態に移行するように構成することができる。スイッチは、熱作動スイッチの温度が第1の閾値温度より低い第2の閾値温度よりも低下すると、故障状態から正常動作状態に復帰するように構成することができる。第1の閾値温度は、65℃~85℃の範囲内とすることができる。第1の閾値温度は、70℃~80℃の範囲内とすることができる。第2の閾値温度は、30℃~60℃の範囲内とすることができる。第2の閾値温度は、40℃~55℃の範囲内とすることができる。スイッチは、正常動作状態から故障状態に移行した後に、正常動作状態に戻ることができないように構成することができる。
【0008】
一実施形態では、バッテリハウジングを開示する。バッテリハウジングは、バッテリ用のセルを収容するサイズおよび形状の空洞を画定するハウジング本体を備えることができる。バッテリハウジングは、ハウジング本体と結合されたブレーカであって、スイッチを備えるブレーカを含むことができる。バッテリハウジングは、ハウジング本体の第1の端部にあり、スイッチに電気的に接続された第1の電気導体であって、セルの第1の電極に電気的に接続するように構成された第1の電気導体を備えることができる。バッテリハウジングは、ハウジング本体の第2の端部にある第2の電気導体であって、セルの第2の電極に電気的に接続して、第1の電気導体と第2の電気導体との間に第1の電気経路を画定するように構成された第2の電気導体を備えることができる。バッテリハウジングは、ハウジング本体と結合されたバイパス導体であって、スイッチおよび第2の電気導体に電気的に接続して、スイッチと第2の電気導体との間に第2の電気経路を画定するバイパス導体を含むことができる。
【0009】
別の実施形態では、バッテリ用のセルを収容するように構成されたバッテリハウジングを開示する。バッテリハウジングは、バッテリハウジングと一体化された3端子ブレーカであって、正常動作状態および故障状態を有する3端子ブレーカを含むことができる。バッテリハウジングは、ブレーカが正常動作状態にあるときにセルを通る主電流経路を含むことができる。バッテリハウジングは、サーキットブレーカが故障状態にあるときにセルをバイパスするように構成されたバイパス電流経路を含むことができる。
【0010】
別の実施形態では、バッテリ用のセルを収容するように構成されたバッテリハウジング
を開示する。バッテリハウジングは、バッテリハウジングと一体化されたブレーカであって、正常動作状態および故障状態を有するブレーカを含むことができる。第1および第2のセル接点であって、ブレーカが第1のセル接点と電気的に接続されている第1および第2のセル接点が、セルの対応する第1および第2の端子に電気的に接続するように構成できる。空洞が、第1および第2のセル接点の間でセルを収容するサイズおよび形状とすることができる。第1および第2のセル接点および空洞は、セルがツールレス接続によってバッテリハウジングに電気的かつ機械的に接続するような寸法とすることができる。
【0011】
別の実施形態では、バッテリ用の複数のセルを収容するように構成されたバッテリハウジングを開示する。バッテリハウジングは、複数のセルを収容するサイズおよび形状の空洞を含むことができる。バッテリハウジングは、バッテリハウジング上の複数のセル接点であって、各セル接点が複数のセルのうちの対応するセルの対応する端子に電気的に接続するように構成された複数のセル接点を含むことができる。複数のブレーカであって、複数のブレーカの各ブレーカが正常動作状態および故障状態を有する複数のブレーカが、バッテリハウジングと一体化できる。複数のブレーカの各ブレーカは、複数のセル接点の対応するセル接点に電気的に接続することができる。
【0012】
これらの実施形態は全て、本明細書に開示する本発明の範囲内にあることを意図するものである。これらのおよび他の実施形態は、添付図面を参照する以下の好ましい実施態様の詳細な説明から当業者には容易に明らかになり、本発明はここで開示するいかなる特定の好ましい実施形態にも限定されるものではない。
【0013】
以下の図面を参照して、これから本発明の特定の実施態様を説明するが、これらは一例として挙げるものであり、これらには限定されない。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1A】一実施形態による、電気システムの正常動作状態における概略回路図である。
【0015】
【
図1B】
図1Aに示すシステムの故障状態における概略回路図である。
【0016】
【
図2A】一実施形態による、
図1A~
図1Bの実施形態で使用する電気ブレーカの正常動作状態における概略側断面図である。
【0017】
【0018】
【
図3A】
図2Aの電気ブレーカの故障状態における概略側断面図である。
【0019】
【0020】
【
図4】様々な実施形態による、例示的なスイッチが正常動作状態から故障状態にトリップする電流および温度を示すグラフである。
【0021】
【
図5】様々な実施形態による、例示的な正温度係数(PTC)抵抗器の温度と抵抗との間の関係を示す概略グラフである。
【0022】
【
図6A】別の実施形態による、電気システムの正常動作状態における概略回路図である。
【0023】
【
図6B】
図6Aに示すシステムの故障状態における概略回路図である。
【0024】
【
図7】さらに別の実施形態による、システムの性能をシミュレートするために使用することができる電気システムの概略回路図である。
【0025】
【
図8A】一実施形態による、サーキットブレーカを組み込むバッテリハウジングの概略上面、正面、および右側斜視図である。
【0026】
【
図8B】
図8Aに示すバッテリハウジングの概略底面、背面、および左側斜視図である。
【0027】
【
図9A】第1および第2のバッテリセルがハウジング内に配置されている、
図8A~
図8Bに示すバッテリハウジングの概略上面、正面、および右側斜視図である。
【0028】
【
図9B】
図9Aのバッテリハウジングおよびバッテリセルの概略底面、背面、および左側斜視である。
【0029】
【0030】
【0031】
【
図11A】バッテリ端子および第1のセル接点に沿って断面を取った、バッテリハウジングおよびバッテリセルの概略上面、背面、および右側斜視断面図である。
【0032】
【
図11B】第2のセル接点に沿って断面を取った、バッテリハウジングおよびバッテリセルの概略上面、背面、および右側斜視断面図である。
【0033】
【
図12】様々な実施形態による、互いに接続されたモジュラ・バッテリ・ハウジングの列の背面および右側斜視図である。
【0034】
【
図13A】様々な実施形態による、直列に接続されたバッテリハウジングの列の概略回路図である。
【0035】
【
図13B】様々な実施形態による、2つのバッテリハウジングが並列に接続されているバッテリハウジングの概略回路図である。
【0036】
【
図14】互いに直列にかつ昇降圧コンバータと接続されたセルの列を備えるバッテリパックの概略系統図である。
【発明を実施するための形態】
【0037】
I.3端子ブレーカの実施例
本明細書に開示する様々な実施形態は、電気デバイスを過熱および/または過度の電流から保護するための電気機械3端子ブレーカに関する。電気デバイスおよび電気システムは、システム全体の性能または信頼性に悪影響を及ぼすことがある故障状態(たとえば、過温度および/または過電流故障)になることがある多数の回路素子を有してもよい。たとえば、多くのデバイスは、電気システムに電力を供給するのを、複数のバッテリまたはバッテリセル(直列接続、並列接続、またはこれらの組合せを問わない)に頼っている。バッテリは充電式のことが多く、これにより、ユーザが、新しいバッテリを購入する代わりに、放電後にバッテリを繰り返し使用することが可能になる。たとえば、モバイル電子
デバイス(スマートフォン、タブレット・コンピューティング・デバイス、ラップトップコンピュータなど)は、数動作時間にわたる高性能コンピューティングのために電子デバイスに電力を供給する、高エネルギ容量充電式バッテリ(たとえば、リチウムイオンバッテリ)を利用する。電動自転車、電気車両、およびハイブリッド車両もまた、長い走行距離で車両を動作させるのに十分な電力を供給するのを、高エネルギ容量バッテリに頼っている。太陽光発電システムは、太陽電池によって発生するエネルギを蓄えるためにバッテリを使用することが多い。多数のタイプの電気システムおよび電気デバイス用の信頼性が高く長持ちするバッテリが引き続き必要とされていることを、当業者なら理解するであろう。
【0038】
こうしたバッテリ駆動システムの1つの問題は、1つもしくは複数のバッテリセルが、電気システム全体の性能、信頼性、および/もしくは安全性に悪影響を及ぼすことがある、過度の温度(過温度故障状態)および/または過度の電流(過電流故障状態)を受ける場合があることである。たとえば、リチウムイオンバッテリ(たとえば、リチウムポリマーまたは他のタイプのリチウムイオンバッテリ)を利用するシステムでは、セルが十分に高温になる場合に、セルが熱暴走を起こし、それにより、溶液中のリチウムを固体に変え、セル内のリチウム層を短絡させることがある。こうした状況では、バッテリは短絡状態になることがあり、過度の電流をセル内に流して、セルの温度をさらにいっそう上昇させることがある。場合によっては、過度の温度が、過熱したセルを劣化させることがあり、またはより大きな電気システムの動作を阻害することがある。
【0039】
いくつかのタイプの電気機械サーキットブレーカは、バイメタルスイッチを正温度係数(PTC)抵抗器とたとえば並列に接続することによって、過温度および/または過電流故障状態に対処することができる。PTC抵抗器とは、従来の抵抗体とは対照的に、温度の上昇と共に抵抗が増加する抵抗器である。ブレーカによっては、過度の電流が特定の回路素子、たとえばバッテリを流れる場合に、バイメタルスイッチおよびPTC抵抗器の温度が上昇するものもある。閾値温度において、バイメタルスイッチは反転位置にトリップして、スイッチを開いてもよい。したがって、こうしたブレーカの故障状態では、開いたスイッチが、回路素子を通る電流の流れを停止または著しく減少させて、故障状態の回路素子を救済してもよい。しかし、構成によっては、回路全体を通る電流の流れを停止または著しく減少させることが望ましくない場合があるものもある。たとえば、回路素子が他の回路素子と直列である場合には、現在の技術水準のブレーカのスイッチを開くことは、他の回路素子を通る電流の流れを停止または著しく減少させる場合がある。
【0040】
システム内の他の回路素子との接続性を維持しながら、回路素子内の過温度および/または過電流故障の影響に対処するために、本明細書に開示する実施形態は、正常動作状態中には電流を回路素子に流すが、故障状態中には問題がある回路素子を迂回して電流の大部分(または全て)をバイパスまたは分流する、3端子ブレーカを提供する。たとえば、ブレーカは、より大きな電気システムの対応する端子に接続することができる、第1の端子、第2の端子、および第3の端子を含むことができる。ブレーカはまた、第1の端子と第2および第3の端子との間に配置された熱作動機械スイッチを含むことができる。スイッチは、第1の端子が第2の端子に電気的に接続されている、正常動作状態を有することができる。スイッチは、第1の端子が、抵抗器を介して第2の端子に、および直接的に第3の端子に電気的に接続されている、故障状態を有することができる。いくつかの実施形態では、スイッチは、これに限定するものではないが、半球状のバイメタルディスクなどのバイメタル素子を備えることができ、これが作動して、スイッチを正常状態から故障状態に移行させることができ、逆の場合も同様である。いくつかの実施形態では、第1の端子と第2および第3の端子のうちの一方との間に、正温度係数(PTC)抵抗器を設けることができる。
【0041】
図1Aは、一実施形態による、電気システム1の正常動作状態における概略回路図である。電気システム1は、負荷L、および直列に接続された複数のバッテリセル2a~2eを含むことができる。本明細書に開示する全ての図面の場合と同様に、一連のバッテリセルの極性が、
図1Aに示す極性と逆でもよいことが理解されよう。セル2a~2eは、負荷Lに十分な電力を供給する任意の適当なタイプのバッテリセルを備えることができる。たとえば、いくつかの実施形態では、バッテリセル2a~2eは、リチウムイオン・バッテリ・セルまたはリチウム・ポリマー・バッテリ・セルを備えることができる。負荷Lは、モバイルデバイス(スマートフォン、タブレット・コンピューティング・デバイス、ラップトップコンピュータなど)の構成要素、車両(ハイブリッドもしくは電気車両など)の構成要素、電気エネルギ貯蔵システムまたは他の適当な電気もしくは電子システムの構成要素などの、任意の適当なタイプの電気負荷を備えることができる。いくつかの実施形態では、バッテリセル2a~2eは、太陽光発電および蓄電システム内へのエネルギ貯蔵に使用してもよい。
図1Aに示す実施形態では、バッテリセル2a~2eは直列に接続されているが、他の構成では、セルは並列に接続することもでき、またはこれらの組合せとすることもできることを理解されたい。さらに、
図1Aには5つのバッテリセル2a~2eを示してあるが、任意の適当な数のセルを使用してもよいことを理解されたい。
【0042】
図1Aでは、電気ブレーカ3が、回路を故障状態から保護するためにバッテリセル2cに接続されている。ブレーカ3は、正温度係数(PTC)抵抗器5と接続されたスイッチ4を備えることができる。
図1Aの実施形態では、たとえば、スイッチ4はPTC抵抗器と並列に接続されているが、他の実施形態では、PTC抵抗器は他の構成で接続してもよい。例示する実施形態では、スイッチ4は熱作動機械スイッチ、特にバイメタル素子である。本明細書で説明するように、PTC抵抗器5は、温度の上昇と共に増加する抵抗を有する抵抗素子を備えることができる。PTC抵抗器5は、セラミックPTC抵抗器またはポリマーPTC抵抗器を含め、任意の適当なタイプのPTC抵抗器とすることができる。ブレーカ3は、故障状態からの回路の保護を提供するものとして示してあるが、各セル2a~2e(またはこれらの任意の組合せ)は、故障保護を提供するためにそれ自体のブレーカに接続してもよいことを理解されたい。
図1Aに関連して以下に説明するように、たとえば、バイパス回路6が、セル2cを迂回して経路設定されて、故障状態においてセル2cから離れるように電流の全てまたは大部分を分流させることができる。
【0043】
図1Aに示すシステム1は、スイッチ4が、入力端子と考えることができる第1の端子T1を、第1のまたは主出力端子と考えることができる第2の端子T2と電気的に接続している、正常動作状態で示してある。
図1Aに示すように、第1の端子T1は、スイッチ4と隣接するバッテリセル2dとの間に配置されている。第2の端子T2は、スイッチ4と故障状態から保護すべきセル2cとの間に配置されている。例示する実施形態では、PTC抵抗器5は、第1の端子T1を第2の端子T2と電気的に接続するスイッチ4と並列である。電気システム1の正常動作中、各セル2a~2eが電圧Vをシステムに供給する場合には、直列に接続されたセル2a~2eは、5
*Vの電圧を負荷Lに共同で供給する。
【0044】
バッテリセル2a~2eは、第1の電流I1を負荷Lに供給することができる。ブレーカ3の内部では、PTC抵抗器5がスイッチ4と並列なので、第2の電流I2がスイッチ4を流れることができ、第3の電流I3がPTC抵抗器5を流れることができ、ここで、I1=I2+I3である。システム1の正常動作中、スイッチ4の抵抗RSは、PTC抵抗器5の抵抗RPTCよりも著しく小さくてもよい。たとえば、正常動作状態中、PTC抵抗器5の抵抗RPTCは1~20オームの範囲内でもよく、スイッチ4の抵抗RSは1~10ミリオームの範囲内でもよい。したがって、スイッチ4の相対的に低い抵抗RSは、電流の大部分を、PTC抵抗器5を通過することなくスイッチ4に流す。いくつかの実施形態では、たとえば、正常動作中、スイッチ4を流れ、PTC抵抗器をバイパスする第
2の電流I2は、PTC抵抗器5を流れる第3の電流I3の100倍以上、1000倍以上、または10000倍以上でもよい。したがって、有利なことに、スイッチ4の相対的に低い抵抗RSは、正常動作状態中により大きな電気システム1の電気的性能を低下させることはできない。
【0045】
図1Bは、
図1Aに示すシステム1の故障状態における概略回路図である。特に断りのない限り、
図1Bに示す参照符号は、
図1Aに示したものと同じ構成要素を表す。上記で説明したように、故障状態では、セル2cは過度の温度および/または電流を受ける場合がある。温度および/またはセル2cを通過する電流が、所定の温度および/または電流を超える場合、スイッチ4は、
図1Aに示す正常状態から
図1Bに示す故障状態に移行することができる。たとえば、
図2A~
図3Bに関連して以下に説明するように、故障状態では、スイッチ4は第2の端子T2から第3の端子T3に移動することができる。
図1Bに示すように、第3の端子T3は、セル2cをバイパスするバイパス回路6への電気的接続を提供することができる。したがって、故障状態では、スイッチ4は、(過温度および/または過電流故障を起こす)セル2cをバイパスして、第1の端子T1とセル2cに隣接するセル2bとの間の電気的接続を提供することができる。故障状態では、電流の大部分は、セル2cの温度および/またはセル2cを通る電流のさらなる増加を防止するように、過温度および/または過電流故障中のセル2cをバイパスする。
【0046】
図2Aは、一実施形態による、
図1A~
図1Bの実施形態で使用することができる電気ブレーカ3の正常動作状態における概略側断面図である。
図2Bは、
図2Aに示すブレーカ3の概略回路図である。
図3Aは、
図2Aの電気ブレーカ3の故障状態における概略側断面図である。
図3Bは、
図3Aに示すブレーカ3の概略回路図である。
図2Aおよび
図3Aに示すように、ブレーカ3は、第1の端子T1、第2の端子T2、および第3の端子T3が結合されたハウジング10を備える電気機械デバイスを備えることができる。ハウジング10は、第2の端子T2に、また1つまたは複数のインタコネクト13を介してPTC抵抗器5に電気的に接続された、第1の導電線12を備えることができる。ハウジングはまた、第3の端子T3に電気的に接続された、ハウジング10の上面に沿った第2の導電線14を備えることができる。
【0047】
スイッチ4は、可動(たとえば、枢動可能または湾曲可能な)導電性アーム8、およびスイッチング素子7を備えることができる。枢動可能なアーム8は、第1の端子T1に、また接触によってスイッチング素子7に、電気的に接続することができる。たとえば、
図2Aに示す正常状態では、枢動可能なアーム8は、スイッチング素子7の中央部分に電気的に接触することができる。たとえば、
図2Aでは、枢動可能なアーム8は、枢動可能なアーム8の末端部の接点15が、第1の導電線12および第2の端子T2に接触し、電気的に接続されている、正常状態で示してある。
図3Aでは、枢動可能なアーム8は、別の接点16が、第2の導電線14および第3の端子T3に接触し、電気的に接続されている、故障状態で示してある。故障状態では、枢動可能なアーム8はまた、スイッチング素子7の対向する端部で、スイッチング素子7に電気的に接触することができる。
【0048】
枢動可能なアーム8は、スイッチング素子7およびPTC抵抗器5と係合することによって、正常状態から故障状態に移行することができる。たとえば、スイッチング素子7は、温度変化に応じて変形する、電気機械または熱機械スイッチング素子、特に半球状のバイメタル素子を備えることができる。正常動作中、
図2Aおよび
図2Bに示すように、第1の電流I
1は、枢動可能なアーム8に沿って流れることができる。電流I
2の大部分は、PTC抵抗器5を通過することなく、第2の端子T2、第1の導電線12、および枢動可能なアーム8を通過する。しかし、小さいトリクル電流I
3(破線で図示)が、第2の端子T2および第1の導電線12から、PTC抵抗器5およびスイッチング素子7を経て、枢動可能なアーム8まで通る。上記で説明したように、正常動作中、PTC抵抗器5を
バイパスする電流I
2は、PTC抵抗器5を通るトリクル電流I
3よりもはるかに大きくてもよい。
【0049】
温度および/またはブレーカ3を通る電流が所定の値を超える場合には、ブレーカ3は、
図2A~
図2Bに示す正常動作状態から、
図3A~
図3Bに示す故障状態に移行することができる。たとえば、スイッチング素子7の温度が、製造工程において選択および調整することができる特定の温度閾値を超える場合には、スイッチング素子7は、
図2Aの下向き湾曲形状から、
図3Aの上向き湾曲形状に切り替わることができる。過度の電流が、PTC抵抗器5およびPTC抵抗器5に接触するスイッチング素子7の温度の対応する上昇を引き起こすので、PTC抵抗器5もまた、スイッチング素子7の温度を上昇させることができる。スイッチング素子7が、
図3Aに示す上向き湾曲形状に変形すると、枢動可能なアーム8の末端部の接点16は、第2の導電線14および第3の端子T3に(または、図示しない他の実施形態では、第3の端子T3に直接的に)接触し、電気的に接続する。スイッチング素子7は、正常状態では下向き湾曲し、故障状態では上向き湾曲するものとして示してあるが、他の構成では、ブレーカはまた、スイッチング素子7が、正常動作状態中に上向き湾曲形状であり、故障状態中に下向き湾曲形状であるように構成してもよいことを理解されたい。
【0050】
したがって、故障状態では、第1の電流I
1は、枢動可能なアーム8に沿って第1の端子T1まで通る。PTC抵抗器5の温度がセル2cの温度と共に上昇するにつれて(
図1B)、PTC抵抗器5の抵抗R
PTCはそれに対応して増加する。温度の上昇に伴うPTC抵抗器5の増加する抵抗R
PTCによって、電流I
2の大部分は、第2の導電線14および第3の端子T3から枢動可能なアーム8まで通る。第2の電流I
2は、
図1Bに示すバイパス回路6に沿って通過することにより、セル2cをバイパスする。しかし、小さいトリクル電流I
3は依然として、第1の導電線12および第2の端子T2から、PTC抵抗器5およびスイッチング素子7を経て(たとえば、スイッチング素子7の端部で)、枢動可能なアーム8および第1の端子T1まで通る。
図5に関して以下でさらに詳細に説明するように、PTC抵抗器5によって発生する熱が、最初の故障状態後に高温を維持して、スイッチ4がチャタリングを起こす、すなわち、故障モードと正常動作モードとの間で繰り返し切り替わるのを防止するので、トリクル電流I
3は、極めて重要なデバイス機能性を可能にするために、セル2cから少量の電流を供給することができる。PTC抵抗器5を通るトリクル電流I
3が、正常状態および故障状態下で異なる大きさを有することができること、またI
3の大きさが、故障状態の出現中に変わることができることを、当業者なら理解するであろう。
【0051】
図4は、様々な実施形態による、例示的なスイッチ4が正常動作状態から故障状態にトリップする電流および温度を示すグラフである。具体的には、
図4は、カリフォルニア州リバーサイドのBourns,Inc.から市販されているKomatsulite(商標)のKCAシリーズAタイプブレーカに使用される、半球状のバイメタルスイッチの電流対温度のプロットである。具体的には、
図4は、シリーズAタイプブレーカの4つの異なるバージョンについて電流対温度をプロットする。
図4では、線は、特定のブレーカが故障状態にトリップする温度と電流との組合せを表す。したがって、各線より下の領域は正常状態を示し、線以上の領域は故障状態を示す。
図4に示すように、スイッチ4は、(低電流でも)比較的高い温度で、かつ/または(低温でも)比較的高い電流で、正常動作状態から故障状態にトリップすることができる。たとえば、スイッチ4が、デザインに応じて、65℃~85℃の範囲内、より具体的には70℃~80℃の範囲内の所定の温度に達すると、スイッチ4は、正常動作状態から故障状態にトリップすることができる。
【0052】
PTC抵抗器5を使用することは、いくつかの実施形態で様々な利点をもたらすことができる。本明細書で説明するように、PTC抵抗器5は、最初の故障状態後に上昇した温
度を維持することにより、ブレーカ3が高い率で正常状態と故障状態との間でチャタリングを起こさないようにスイッチ4およびブレーカ3が安定的に動作することを可能にすることができる。さらに、PTC抵抗器5の温度の低下は、ある状況下では、ブレーカ3を故障状態から正常動作状態にリセットするのに役立つことができる。
【0053】
図5は、様々な実施形態による、例示的なPTC抵抗器の温度と抵抗との間の関係を示す概略グラフである。たとえば、
図5に示すように、所定の故障温度T
fより低い温度では、PTC抵抗器5の抵抗R
PTCは比較的低レベルとすることができる(しかし、スイッチ4の抵抗R
Sよりも高くすることができる)。PTC抵抗器5の温度が所定の故障温度T
fに達すると、抵抗R
PTCは温度の上昇と共に著しく増加することができる。
図1A~
図3Bのブレーカ3では、PTC抵抗器5の温度の上昇が、PTC抵抗器5に接触するスイッチング素子7の温度をさらに上昇させることができる。したがって、PTC抵抗器5の温度の上昇は、スイッチング素子7を変形させて、
図3A~
図3Bに示す故障状態にトリップさせるのを促進することができ、またはこれに役立つことができる。
【0054】
それに対応して高いPTC抵抗器5の抵抗RPTCは、PTC抵抗器5を通るトリクル電流I3を維持しながら、電流の大部分を枢動可能なアーム8に沿って通過させることができる。バイパスされるセル2cの温度が低下する場合(たとえば、バイパスされるセル2cを通過する電流の減少によって)、PTC抵抗器5は、ヒステリシスによって、また故障を引き起こすより高い温度と共にPTC抵抗器5の抵抗RPTCが増加することによって、依然として高い抵抗RPTCを有してもよく、したがって、それ自体の熱を発生させて、PTC素子がない場合よりも長くスイッチング素子(たとえば、バイメタル素子)を故障状態に維持する。すなわち、PTC抵抗器5の温度が著しく低下するとしても、PTC抵抗器5は、温度がリセット温度Trよりも低下するまで、故障状態によって引き起こされた高い抵抗RPTCレベルを維持する。
【0055】
有利なことに、
図5に示すヒステリシスは、ブレーカ3がチャタリングモードで動作するのを防止することができる。チャタリングモードでは、
図5に示すヒステリシスがなく、(わずかにでも)温度が低下するにつれて、バイメタルスイッチング素子7の温度は低下し、時期尚早に切り替わって正常動作状態に戻ることになる。動作状態の電流の増加は、スイッチング素子7の温度を、故障温度T
fを超えて再び上昇させることになり、ブレーカは、正常動作状態から故障状態に、そしてまた戻るように、繰り返し切り替わる可能性がある。こうしたチャタリングモードは望ましくなく、より大きな電気システム1の不安定性につながることがある。
【0056】
したがって、
図5に示すヒステリシスにより、PTC抵抗器5が、高い抵抗およびそれに対応して比較的高い温度を維持することが可能になり、これにより、温度がリセット温度T
rに低下するまで、スイッチング素子7を故障状態に維持することができる。その上、PTC抵抗器を通る小さいトリクル電流I
3は、チャタリングを防止するように温度を十分に高く維持するのに役立ってもよい。ブレーカ3の温度がリセット温度T
rよりも低下すると、PTC抵抗器5の抵抗は、低下して正常動作状態の抵抗R
PTCに戻ることができる。様々な実施形態では、故障温度T
fは、65℃~85℃の範囲内、より具体的には70℃~80℃の範囲内とすることができる。様々な実施形態では、リセット温度T
rは、30℃~60℃の範囲内、より具体的には40℃~55℃の範囲内とすることができる。
【0057】
したがって、
図1A~
図3Bのブレーカ3は、有利なことに、スイッチ4と(たとえば並列に)接続されたPTC抵抗器5を利用して、安定した動作状態および故障状態を維持することができる。
図1A~
図3Bのブレーカ3は、有利なことにいくつかの構成ではリセット可能とすることができ、したがってブレーカ3は、故障状態が収まる場合に(たと
えば、電流および/または温度の十分な減少によって)、正常動作状態に復帰することができる。さらに、本明細書で説明するように、ブレーカ3は、チャタリングなしに、安定して故障状態に移行し、正常動作状態に戻ることができる。
【0058】
図6Aは、別の実施形態による、電気システム1の正常動作状態における概略回路図である。
図6Bは、
図6Aに示すシステム1の故障状態における概略回路図である。特に断りのない限り、
図6A~
図6Bの構成要素は、
図1A~
図3Bに関連して図示および説明したものと同じまたは概して同様の特徴を表す。たとえば、
図1A~
図1Bの実施形態と同様に、特定のバッテリセル2cを迂回して電流をバイパスするために、ブレーカ3を設けることができる。しかし、
図1A~
図3Bの実施形態とは異なり、
図6A~
図6Bの実施形態では、ブレーカ3はリセット不可でもよい。したがって、
図6A~
図6Bの実施形態では、スイッチ4が正常動作状態から故障状態にトリップすると、スイッチ4は自動的にはリセットして正常動作状態に戻らない。したがって、ブレーカ3は、故障状態を起こすセル2cを迂回して電流を分流させるリセット不可スイッチとして機能してもよい。バッテリ管理システムが、バイパスされるセル2cの両端の電圧降下を検出することができ、ユーザに、セル2cが適切に動作しておらず、回路から分流されたというアラートをトリガすることができる。ユーザは、セル2cを交換または修理することによって、アラートに応答することができ、ブレーカ3を手動でリセットまたは交換することができる。
【0059】
図6A~
図6Bの実施形態では、ブレーカ3は、
図1A~
図3Bに示すPTC抵抗器5などのPTC抵抗器を含むことはできない。こうした構成では、スイッチ4は、ブレーカ3の温度が上昇するにつれて変形する(たとえば、反転する)、バイメタルスイッチング素子(スイッチング素子7と同様)を含んでもよい。ブレーカが故障状態に達すると、スイッチ4は、トリップして第3の端子T3に接続し、セル2cをバイパスすることができる。リセット不可のブレーカ3では、スイッチング素子は、温度の低下がスイッチング素子を正常動作状態に戻さないような形状とすることができる。
【0060】
さらに他の構成では、リセット不可のブレーカ3は、
図1A~
図3Bに示したものと同様のPTC抵抗器を含んでもよいが、スイッチ4(および関連するスイッチング素子)の形状は、故障状態にトリップした後にスイッチ4が正常状態に戻るのを防止するように選択してもよい。こうした構成では、PTC抵抗器は、故障状態をトリガするようにバイメタルスイッチング素子をより迅速に加熱するように働くことができる。上記で説明したように、PTC抵抗器はまた、重大なデバイス機能性を可能にするように、小さいトリクル電流をセル2cに流してもよい。
【0061】
したがって、様々な実施形態では、ブレーカ3はリセット可能でもよく、したがってスイッチ4は、安定してチャタリングなく、正常動作状態と故障状態との間を行ったり来たり移行することができる。いくつかの実施形態では、ブレーカ3はリセット不可でもよく、したがってスイッチ4は、故障状態にトリップした後に自動的には元の正常動作状態には移行しない。
【0062】
図7は、さらに別の実施形態による、電気システム1の概略回路図である。いくつかの構成では、
図7に示すシステム1を使用して、
図1A~
図6Bに開示した実施形態を利用するシステムの性能をモデル化することができる。他の構成では、システム1は、物理的に実装されて(たとえば、別個の電気部品および/または集積回路/デバイス技術を使用して)、本明細書に述べるような3端子ブレーカとして効果的に働くことができる。特に断りのない限り、
図7の構成要素は、
図1A~
図6Bに関連して図示および説明したものと同じまたは概して同様の特徴を表す。たとえば、システム1は、直列に接続された複数のバッテリセルBT1、BT2、およびBT3を含むことができる。ブレーカ3は、故障状態から保護すべき特定のセルBT2に電気的に接続することができる。
図1A~
図3B
の実施形態と同様に、ブレーカ3は、PTC抵抗器5に接続されたスイッチ4を備えることができる。
図7では、スイッチ4はPTC抵抗器5と並列でもよいが、他の実施形態では、PTC抵抗器5は他の場所に設置してもよい。スイッチ4および/またはPTC抵抗器5の温度が上昇するにつれて、PTC抵抗器5の抵抗R
PTCはそれに対応して増加する。さらに、温度および/または電流が所定の閾値を超えると、スイッチ4および/またはPTC抵抗器5の温度の上昇が、スイッチ4を開くことができる。
【0063】
しかし、
図1A~
図3Bの実施形態とは異なり、
図7の実施形態では、スイッチ4は第3の端子T3に直接接触することはできない。対照的に、セル2cをバイパスするバイパス回路6は、正常動作状態中にノーマルオープンのリレー20を備えてもよい。故障状態中、スイッチ4が故障状態にトリップすると、検知回路30(これはまた、電流検知抵抗器、磁流抵抗器、および/または温度検知サーミスタを備えることができる)が、ブレーカ3の両端の電圧降下を検出することができる。検知回路30は、リレー20に信号を送信して、リレー20を閉じ、保護されるセル2cを迂回して電流を分流させることができる。したがって、
図7の実施形態では、スイッチ4を第3の端子T3に直接接続させる代わりに、検知回路30が、ブレーカ3の両端の電圧降下に基づいて故障状態を検出することができ、スイッチ4が開いたままの間、リレー20を第3の端子T3に接続させることができる。
【0064】
(実施例)
図7に示すシステム1のための自動試験を開発し、これは、専用の試験台、および2.5Ahの3つの3.6Vdcリチウムイオンセル(BT1、BT2、およびBT3に対応)用の外部ホルダを利用する。試験台は、ケルビンモードで接続された3つの抵抗温度検出器(RTD)温度センサ、外部ホルダ内の個々のバッテリセルBT1、BT2、BT3、外部負荷、およびねじ式端子台を介して接続されるブレーカ3を含むことができる。この実施例による試験に使用したブレーカ3は、カリフォルニア州リバーサイドのBourns, Inc.によって製造されたKomatsulite(商標)のモデルNR82CBOである。RTDの測定のために、端子台を使用して外部抵抗測定器をケルビン方式で接続してもよく、またRTDのシールドの接地のために、3つの他のねじ端子を使用することができる。
【0065】
試験は、高電流のノーマルオープンのリレー20をブレーカ3に追加するように実行することができ、したがってブレーカ3は、単極双投(SPDT)切替動作を有するかのように働く。ブレーカ3の両端の電圧降下を監視する。本実施例による試験手順では、ブレーカ3の両端の0.65Vdc以上の電圧がリレー20を閉じて、トリップして開くブレーカであることを示した。ブレーカ3の両端の0.5Vdc以下の電圧がリレー20を開いて、リセットブレーカであることを示した。この動作により、リレー20およびブレーカの接点が、SPDTスイッチをエミュレートすることが可能になる。ブレーカ3が閉じているまたはトリップしていないとき、3つのセルBT1~BT3は直列に接続され、所望通りに負荷がかけられてもよい。全てのセルBT1~BT3の両端には、軽い240オームの台上負荷を設置することができる。外付け負荷(たとえば、10Aまで)もまた、セルの両端に接続することができる。ブレーカ3は、一連の3つのセル中の第2または中央のセルBT2を保護するために適用することができる。過電流および/または過熱故障によってブレーカ3が開くと、次いで第2のセルBT2は、一連の3つのセル中からバイパスされ、開いたブレーカを越えて短絡状態になって、PTC抵抗器5を加熱するエネルギを供給する。この動作は、第2のセルBT2が、ブレーカ3を開状態に維持するのに十分なほどPTC抵抗器5を温かく保つ電荷を有する限り、ブレーカ3を開いたままにしておく。保護されたセルの電圧が、ブレーカ3をリセットさせるのに十分なほどブレーカのPTC抵抗器5が冷えるレベルまで低下すると、次いでブレーカ3はリセットし、外部リレー20は開く。この動作は、保護されたセルBT2を再び一連の3つのセルに戻す。本
試験手順を実行して、ブレーカ3がトリップして開いた後、保護されたセルBT2が放電しすぎてこれを続けられなくなるまでに、セルBT2がどれくらいの間ブレーカ3を開いたままにしておくことができるのかを判定することができる。
【0066】
試験手順を行うために、ソフトウェアも実行した。ソフトウェアは、コンピュータのユーザインタフェースでプログラムすることができ、
図7のシステム1を自動的に試験するように構成されている。ブレーカ3がトリップする場合には、ソフトウェアは、トリップしたブレーカの時間、各セルBT1~BT3の電圧、ブレーカ3の両端の電圧、接続されたセルBT1およびBT3の両端の総電圧、PTC抵抗器5を通る電流、保護されたセルBT2およびブレーカ3の温度、他のセルBT1およびBT3の温度、ならびに/または他の適当なデータを、繰り返し記録する。プログラムは、たとえば、(1)BT1~BT3のいずれかの電圧が1.10Vdc未満に低下する、(2)ブレーカ3が閉状態にリセットする(たとえば、0.2Vdc未満のブレーカ電圧で示されるように)、(3)3つのセルBT1~BT3のいずれかの温度が85℃を超える、または(4)ブレーカ電流が5mA未満である(たとえば、故障したブレーカ3によって)、および/あるいは他の任意の適当な所定の条件など、条件の任意の組合せが満たされると、終了することができる。
【0067】
試験台およびシステム1を使用して、バッテリセルBT1~BT3を充電することもできる。セルBT1~BT3は、3つの独立した充電電源を使用して同時に個別に充電することができ、または、3つのバッテリセルBT1~BT3の列全体は、単一のセルの充電電圧の3倍を用いる単一の充電電源で一度に充電することができる。この構成では、3つの全てのセルBT1~BT3は、4.10Vdcの最大電圧で定電流(たとえば、最大1Aに制限される)を印加することによって、最初に個別に充電される。特定のセルの両端の電圧が4.10Vdcに達し、充電電流が100mAに低下すると、充電は完了したとみなされ、終了する。
【0068】
いくつかの構成では、試験台およびシステム1を使用して、0.4C充電レートでの12.3Vdc/1Aの電源による3つのセルBT1~BT3の充電を試験することができる。たとえば、システム1が、ブレーカ3がリセットしたためにソフトウェアが終了または中断したことを検出した場合、またBT2の電圧が正の場合には、ソフトウェアは3つのセルBT1~BT3の充電を開始することができる。充電は、3つのセルBT1~BT3の両端の12.3Vdcの最大電圧で1Aの電流で行うことができる。したがって、システム1は、バッテリ管理システムとして働くことができ、各セルBT1~BT3の電圧、3つの全てのセルの合成電圧、アンペアでの電流、および各セルBT1~BT3の温度を測定することができる。充電動作は、以下の条件、すなわち、(1)セルBT1~BT3うちのいずれか1つの電圧が4.099Vdcを超える、(2)電流が100mA未満に低下する、かつ/またはセルBT1~BT3のいずれかの温度が50℃を超える、の任意の組合せが生じると、終了することができる。
【0069】
本明細書に開示する実施形態は、バッテリを利用する電気システムおよび電気デバイスに関するが、本明細書に開示するブレーカ3は、他の任意の適当なタイプの回路素子と共に使用することができることを理解されたい。たとえば、本明細書に開示するブレーカ3は、過温度および/または過電流故障状態の影響を受けやすいどのような回路素子にも使用してよい。さらに、本明細書に開示するブレーカ3はまた、直流(DC)および交流(AC)の両方の用途を含む非バッテリ電力システムに使用してもよい。
【0070】
II.バッテリハウジングの実施例
いくつかのシステムでは、バッテリセルは、金属リボンまたは他のタイプの電気インタコネクトを使用して、互いに接続されている。リボンまたは他のインタコネクトは、セル
の正端子および負端子にスポット溶接、はんだ付け、またはその他の方法で接合してもよい。たとえば、円筒形リチウムイオンセル(電動自転車に使用されるものなど)は通常、リボンインタコネクトを使用して、直列または並列に互いにスポット溶接されている。溶接接合、はんだ接合、または他のタイプの金属接合方法を利用する接続部を有するセルを交換するためには、ユーザは接合を破壊し、バッテリセルを交換し、所望の金属接合方法を用いて接続部を新しいバッテリセルに再接合する。しかし、溶接やはんだ付けなどの金属接合方法は、接合を形成するために必要以上の時間、機器、および/または専門技術を要することがある。その上、2つのバッテリセル間の金属接合が十分な電気的接続性を提供する場合でも、インタコネクトおよび接合部が適切に収容されないこと、またはコンパクトにパッケージ化されないことがある。たとえば、いくつかの構成では、インタコネクトおよび/もしくは接合部は、適切なパッケージングが提供されない場合に絡まることがあり、かつ/またはひらひらすることがある。様々な実施形態では、
図1A~
図7に関して本明細書に開示したブレーカ3もまた、適当な金属接合方法を用いて、インタコネクトおよび/またはバッテリと溶接、はんだ付け、またはその他の方法で接合してもよい。しかし、上記で説明したように、こうした金属接合方法は時間と費用がかかる場合があり、また特殊専門技術を要する場合がある。本明細書に開示するバッテリハウジングは、
図1A~
図7に関連して上記で述べたブレーカ3のいずれかと組み合わせて使用することができる。
【0071】
したがって、本明細書に開示する様々な実施形態は、
図1A~
図7に関連して上記で開示した機能および/または形状を有するサーキットブレーカを組み込む、モジュラ・バッテリ・ハウジングを利用する。バッテリハウジングは、1つまたは複数のバッテリセルを収容するサイズおよび形状の空洞を画定するハウジング本体を備えることができる。スイッチを有するブレーカ(
図1A~
図7に関して開示したブレーカ3と同様または同じでもよい)は、ハウジング本体に結合してもよく、またはこれと一体化してもよい。第1の電気導体が、ハウジング本体の第1の端部に配置でき、スイッチに電気的に接続できる。第1の電気導体は、バッテリの第1のバッテリセル端子に電気的に接続するように構成することができる。第2の電気導体が、ハウジング本体の第2の端部に配置できる。第2の電気導体は、バッテリセルの第2のバッテリセル端子に電気的に接続して、第1の電気導体と第2の電気導体との間に第1の電気経路を画定するように構成することができる。バイパス導体もまた、ハウジング本体と結合することができる。バイパス導体は、スイッチおよび第2の電気導体に電気的に接続して、スイッチと第2の電気導体との間に第2の電気経路を画定することができる。
【0072】
正常状態では、ブレーカは、全ての電流が、第1および第2の電気導体の間の、バッテリセルを通る第1の電気経路に沿って流れるように構成してもよい。故障状態(過温度および/または過電流状態など)では、ブレーカは、電流の大部分(または全て)が、バッテリセルをバイパスし、スイッチと第2の電気導体との間の第2の経路に沿って流れるように構成してもよい。いくつかの実施形態では、電流のごく一部は、故障状態においてバッテリセルを流れる。有利なことに、本明細書に開示するバッテリハウジングにより、ユーザが、溶接やはんだ付けなどの金属接合方法を一切行うことなく、単にバッテリハウジングの空洞の内部にバッテリセルをカチッとはめることが可能になることができる。その上、バッテリハウジングは、1つまたは複数のバッテリセルにコンパクトな構造的支持を提供し、複数のバッテリハウジングが互いに接続して任意の数のバッテリセルを直列または並列に設けてもよいモジュラ構造を提供する。ハウジング本体は絶縁壁を備えてもよく、これは、ハウジングの構成要素が互いに短絡するのを防止するように、セルの絶縁被覆ハウジング、セル接点、モジュラバッテリ端子、および導電性セグメントなどの導電性構成要素を、機械的かつ電気的に分離することができる。ハウジング本体は絶縁スペーサ要素を代替的または追加的に備えてもよく、これは、ハウジングの構成要素が互いに短絡するのを防止するように、セルの絶縁被覆ハウジング、セル接点、リード、および導電性セ
グメントなどの導電性構成要素を、機械的かつ電気的に分離する空隙を設ける。
【0073】
図8Aは、一実施形態による、バッテリハウジング100の概略上面、正面、および右側斜視図である。
図8Bは、
図8Aに示すバッテリハウジング100の概略底面、正面、および左側斜視図である。バッテリハウジング100は、1つまたは複数の壁110を有し、1つまたは複数のバッテリセル(
図9A~
図9B参照)を収容するサイズおよび形状の空洞102を画定する、ハウジング本体101を備えることができる。ハウジング本体101の壁110は、セルを収容するための容器を画定する働きをし、また、壁110に結合されたまたはこれと共に形成された導電体を電気的に分離する働きをする、絶縁材料を含むことができる。たとえば、壁110の絶縁材料には、プラスチックまたはポリマー材料、セラミック材料などが含まれてもよい。
【0074】
ハウジング本体101は、第1の端部111(たとえば、上部)、および第1の端部111に対向する第2の端部112(たとえば、下部)を備えることができる。第1の壁110aおよび第2の壁110bが、第1および第2の端部111,112の間に延びることができ、図に示すy軸に沿って、バッテリセルの幅を収容するのに十分な距離だけ、互いに離間することができる。第3の壁110cおよび第4の壁110dが、それぞれ第1および第2の端部111,112に配置でき、図に示すz軸に沿って、バッテリセルの長さを収容するのに十分な距離だけ、互いに離間することができる。
図8A~
図8Bに示すように、第3および第4の壁110c,110dのそれぞれは、バッテリセルの端子を露出させてもよい開口117を備えてもよい。空洞102は、第1、第2、第3、および第4の壁110a~110dによって画定してもよい。例示する実施形態では、空洞102へは、ハウジング100の両端部(たとえば、左右端部)でz-y平面内に画定される開口を介してアクセスすることができる。他の実施形態では、完全に密閉されたハウジングを形成するように、z-y平面内に形成された追加の壁があってもよい。こうした実施形態では、空洞102へは、1つもしくは複数のバッテリセルを挿入するとき、かつ/または取り出すときに開閉してもよい、1つもしくは複数のドアを設けることにより、かつ/あるいは第1および第2の壁110a,110bの開口を通って、アクセスしてもよい。
【0075】
図8A~
図8Bに示す空洞102は、2つの円筒形のリチウム・イオン・バッテリ・セルなどの、2つのバッテリセルを収容するサイズおよび形状であるが、空洞102は、他のタイプ、サイズ、形状、または数のバッテリセルを収容する形状でもよいことを理解されたい。たとえば、その代わりに、空洞102は、1つバッテリセルのみを収容するサイズでもよく、または、3つのバッテリセル、4つのバッテリセル、5つのバッテリセル、6つのバッテリセル、7つのバッテリセル、8つのバッテリセル、もしくは9つ以上のバッテリセルを収容するサイズでもよい。さらに、
図8A~
図8Bに示す空洞102は、細長い円筒形バッテリセルを収容する形状として示してあるが、他の構成では、空洞102は、長方形、正方形、もしくは多角形の断面を有するバッテリセル、またはコイン輪郭を有するバッテリセル(たとえば、バッテリセルの高さもしくは長さが、幅もしくは直径よりも小さい)を収容するサイズおよび形状でもよい。
【0076】
有利なことに、ハウジング本体101および空洞102は、バッテリセルをハウジング110に接続するためにツールを一切必要とすることなく、たとえば、ツールレス接続によって、バッテリセルがハウジング本体101にカチッとはまることができるようなサイズおよび形状とすることができる。たとえば、いくつかの実施形態では、バッテリセルのバッテリセル端子に接続するセル接点は、バッテリセルが接点間にカチッとはまることができるように、バッテリセルの長さよりも短い距離だけ離間することができる(たとえば、バッテリセルは接点間に押し込むことができ、接点を互いに離れるように撓ませることができる)。他の実施形態では、ハウジング本体101の(z軸に沿った)長さおよび/または(y軸に沿った)幅は、それぞれバッテリセルの長さおよび幅寸法よりもわずかに
小さくなるように選択してもよい。ハウジング本体101は、ユーザがわずかに大きめのバッテリセル(または複数のバッテリセル)を空洞102に押し込んで、1つまたは複数のバッテリセルを収容するようにハウジング本体101を撓ませることができるように、十分にコンプライアンス性があってもよい。1つまたは複数のバッテリセルがハウジング100に入ると、ハウジング本体101は緩和して、1つまたは複数のバッテリセルを空洞102内に固定する。こうしたスナップフィット接続により、比較的簡単なバッテリセルの取付または交換工程が可能になり、この場合、1つまたは複数のバッテリセルは、スナップフィット接続によってハウジング100に機械的かつ電気的に接続される。本明細書ではスナップフィット接続について述べるが、セルとハウジングとの間の他のツールレス接続を用いてもよいことを理解されたい。その上、いくつかの実施形態では、セルは、任意の適当な金属接合方法または材料を用いて、セル接点105a~105cに接続してもよい。たとえば、いくつかの実施形態では、セル接点105a~105dは、はんだ、溶接、導電性エポキシ樹脂などを用いて、セルに接続することができる。こうした金属接合接続は、接続の抵抗を低減させるため、かつ/またはバッテリハウジングの信頼性を向上させるために用いてもよい。
【0077】
バッテリハウジング100はまた、モジュール接続された別のバッテリハウジング、電気負荷などの外部部品と、それぞれが電気的に連絡するように構成された、第1のモジュラバッテリ端子104aおよび第2のモジュラバッテリ端子104bを含むことができる。ハウジング100はまた、
図9A~
図12に関連して詳細に説明するように、電流を様々な電気経路に沿って方向付けるように構成された、複数の電気導体を含むことができる。たとえば、ハウジング100は、第1の導電性セグメント107a、第2の導電性セグメント107b、第3の導電性セグメント107c、第4の導電性セグメント107d、第5の導電性セグメント107e、および第6の導電性セグメント107fを備えることができる。第1のセル接点105aが、第1のセルの第1のバッテリセル端子に接触するように構成でき、第2のセル接点105bが、第2のセルの第2のバッテリセル端子に接触するように構成できる。同様に、第3のセル接点105cが、第1のセルの第2のバッテリセル端子に接触するように構成でき、第4のセル接点105dが、第2のセルの第1のバッテリセル端子に接触するように構成できる。ハウジング100はまた、第1のバイパス導体106aおよび第2のバイパス導体106bを含むことができる。加えて、第1のブレーカ3aが、第1の導電性セグメント107a、第2の導電性セグメント107b、および第1のバイパス導体106aに接続できる。第2のブレーカ3bが、第3の導電性セグメント107c、第4の導電性セグメント107d、および第2のバイパス導体106bに接続できる。
【0078】
本明細書で説明するように、バッテリハウジング100(単一または複数のセルを収容してもよい)および導体は、ハウジング100およびハウジング100内に配置された1つまたは複数のセルを通る電流の流れのための様々な電気経路を画定することができる。バッテリハウジング100は、バッテリハウジング100と一体化された3端子ブレーカ(たとえば、ブレーカ3a,3b)を含むことができる。
図1A~
図7に関連して上記で説明したように、ブレーカ3a,3bは、正常動作状態および故障状態を有することができる。ブレーカ3a,3bは、1つもしくは複数のセルが過温度および/または過電流状態にさらされると、故障状態に入ることができる。バッテリハウジング100は、ブレーカが正常動作状態にあるときにセルを通る主電流経路を画定することができる。バッテリハウジング100は、サーキットブレーカが故障状態にあるときにセルをバイパスするように構成されたバイパス電流経路を画定することができる。たとえば、正常動作状態では、ブレーカ3a,3bの第1の端子T1は、第2の端子T2に接続することができ、したがって電流は、T1をT2に接続しているスイッチを流れ、また主電流経路に沿ってセルを流れる。故障状態では、第1の端子T1は、ブレーカ3a,3bの第3の端子T3に接続されるように移動することができる。故障状態では、電流のごく一部(たとえば、小さ
いトリクル電流)は、主電流経路に沿って流れることができ、電流の大部分は、バイパス電流経路に沿って流れることができる。いくつかの構成では、ブレーカ3a,3b内にPTC抵抗器が設けられる。上記で説明したように、ブレーカ3a,3bは、セルが故障状態にあるときに第2の端子T2から第3の端子T3に移動することができる、バイメタルスイッチを備えることができる。ブレーカ3a,3bは、バッテリハウジング内の任意の適当な位置に配置されて、故障状態(たとえば、過温度および/または過電流状態)を検出し、故障状態にあるときに電流にセルをバイパスさせることができる。
【0079】
本明細書に例示する電気導体は、別個の導電性セグメントまたは接点に相当するものとして述べてもよいが、代わりに、導電性セグメントまたは接点をより少ない導電性セグメントから形成してもよい(たとえば、導体は連続的でもよい)ことを理解されたい。たとえば、第1の導電性セグメント107aは、モジュラバッテリ端子104aと別体であるものとして示してあるが、他の実施形態では、モジュラバッテリ端子104aは、介在セグメントなしにブレーカ3aに直接接続してもよく、または、モジュラバッテリ端子104aは、連続的な導電体を介してブレーカ3aに接続してもよい。同様に、第2の導電性セグメント107bは、第1のセル接点105aと別体であるものとして示してはあるが、ブレーカ3aは、介在セグメントなしにセル接点105aと直接接続してもよいこと、または、セル接点105aは、ブレーカ3aとセルとの間に連続的な導電体を備えてもよいことを理解されたい。同様に、ブレーカ3bは、介在セグメント107cおよび107dなしにセル接点を介してセルに直接接続してもよい。そして、バイパス導体106a,106bは、介在セグメントなしに(または連続的な導電体を介して)、ブレーカ3a,3bからセル接点105a,105bに直接接続してもよい。様々なタイプの電気ルーティング構成が、本明細書に開示する実施形態での使用に適してもよいことを、当業者なら理解するであろう。
【0080】
電気導体(たとえば、導電性セグメント107a~107f、セル接点105a~105d、モジュラバッテリ端子104a~104b、バイパス導体106a,106b)は、ハウジング本体101に結合することができ、またはこれと共に形成することができる。たとえば、いくつかの実施形態では、ハウジング本体101は、射出成形、3次元(3D)印刷などの適当な方法を用いて形成することができる。導体を収容するサイズおよび形状の凹部に導体を接続することができ、または、所望の導体の周りにハウジング本体101を成形することができる。いくつかの実施形態では、接着剤を使用して、ハウジング本体101に導体を接続してもよい。他の実施形態では、バッテリハウジング100全体(たとえば、絶縁ハウジング本体101および導体を含む)は、絶縁構造および導電性構造を単一のモノリシック体に同時に画定可能な3D印刷方法を用いて製造してもよい。
【0081】
加えて、
図8A~
図8Bに示すように、第1のコネクタ135aが、第2のセル接点105bに結合でき、またはこれと共に形成できる。第2のコネクタ135bが、第3のセル接点105cに結合でき、またはこれと共に形成できる。第1および第2のコネクタ135a,135bは、バッテリ管理システム(BMS)に電気的に接続するように構成された導電性タブまたはラグを備えることができる。たとえば、いくつかの実施形態では、第2および第3のセル接点105b,105cは、バッテリセルの負端子を、それぞれ第1および第2のコネクタ135a,135bと電気的に接続することができる。BMS(
図13A~
図13B参照)は、各バッテリセルの電圧を監視することができ、セルの電圧が許容できないレベルに上昇または低下した場合に、ユーザに通知することができる(たとえば、アラームもしくは他のインジケータで)。たとえば、いくつかの実施形態では、BMSは、1つまたは複数のバッテリセルが、たとえばスイッチが故障状態にあることによってバイパスされたかどうかを判定することができる。こうした通知は、バッテリセルを交換すべきであることをユーザに警告することができる。
【0082】
図9Aは、第1のセル114aおよび第2のセル114bがハウジング100内に配置されている、
図8A~
図8Bに示すバッテリハウジング100の概略上面、正面、および右側斜視図である。
図9Bは、
図9Aのバッテリハウジング100およびセル114a,114bの概略底面、正面、および左側斜視図である。
図10Aは、
図9A~
図9Bに示すバッテリハウジング100およびセル114a,114bの概略頂面図である。
図10Bは、
図9A~
図10Aに示すバッテリハウジング100およびセル114a,114bの概略底面図である。
図11Aは、モジュラバッテリ端子104a,104bおよび第1のセル接点105aを通るように断面を取った、バッテリハウジング100およびセル114a,114bの概略上面、背面、および右側斜視断面図である。
図11Bは、第2のセル接点105bを通るように断面を取った、バッテリハウジング100およびセル114a,114bの概略上面、背面、および右側斜視断面図である。
【0083】
図9A~
図11Bに示す第1および第2のセル114a,114bは、円筒形バッテリセル(たとえば、リチウム・イオン・バッテリ・セル)であるが、上記で説明したように、バッテリセルは、任意の適当な形状または輪郭、および任意の適当なタイプのバッテリセルを備えることができる。さらに、上記で説明したように、2つのセル114a,114bが示してあるが、より多くのまたはより少ないバッテリセルをハウジング100内に配置してもよい。たとえば、いくつかの実施形態では、バッテリハウジング100は、単一のセルを収容するサイズおよび形状とすることができる。1つまたは複数のセルを有する複数のハウジングを、モジュラ構成で互いに接続することができる。
図9A~
図9Bの構成では、各セル114a,114bは、第1のバッテリセル端子113a(たとえば、正端子)および第2のバッテリセル端子113b(たとえば、負端子)を備える。セル114a,114bは、第1のセル114aの第1のバッテリセル端子113aが、第1の端部111またはその近傍にあり、第1のセル114aの第2のバッテリセル端子113bが、第2の端部112またはその近傍に配置されるように、ハウジング101内に配置してもよい。第2のセル114bの第1のバッテリセル端子113aは、第1のセル114aの第2のバッテリセル端子113bに隣接して、第2の端部112またはその近傍に配置してもよい。第2のセル114bの第2のバッテリセル端子113bは、第1のセル114aの第1のバッテリセル端子113aに隣接して、第1の端部111またはその近傍に配置してもよい。
【0084】
図9A~
図9Bは、バッテリハウジング100によって画定される様々な電気経路P1~P7を示す。例示する実施形態では、経路P1~P7の矢形は、電子流の方向を示し(第1のバッテリセル端子113aが正端子と仮定)、これは、当業者なら理解するであろうが、電流の従来定義の方向と反対である。したがって、ここで挙げる実施例の電流の流れを想像するために、全ての矢先の方向を逆にすることができる。他の実施形態では、電子は、ハウジング100に対するセル114a,114bの極性に応じて、図に示す方向と反対に流れてもよい。
【0085】
第1の経路P1(
図9Aおよび
図10A)が、第1のモジュラバッテリ端子104aと、本開示を通して開示するものと同様のスイッチを備えてもよいブレーカ3aとの間に画定できる。第1のモジュラバッテリ端子104aは、別のバッテリハウジングや電気負荷などの外部部品との電気的連絡を提供するように構成することができる。第1のモジュラバッテリ端子104aは、ハウジング本体101の外面上に配置することができ、たとえば、第1の壁110aの外面上に配置することができる。しかし、他の実施形態では、第1のモジュラバッテリ端子104aは、ハウジング100の他の面上に配置してもよく、他の形状および輪郭を備えてもよい。たとえば、他の実施形態では、モジュラバッテリ端子104aは、外部部品への電気的接続を容易にするために、ハウジング本体101から外側に延びてもよい。電流は、第1の導電性セグメント107aに沿って、第1のモジュラバッテリ端子104aと第1のブレーカ3aとの間を流れることができる。上記で説明
したように、いくつかの実施形態では、第1のセグメント107aは、モジュラバッテリ端子104aおよびブレーカ3aに接合された別部品の導電体とすることができる。他の実施形態では、第1の経路P1は、連続部品の導電体に沿って、モジュラバッテリ端子104aとブレーカ3aとの間に画定される。
【0086】
第1のセグメント107aの一方の端部は、
図1A~
図3Bおよび
図6A~
図7に関連して説明および図示した第1の端子T1などの、ブレーカ3aの第1の端子に電気的に接続することができる。たとえば、セグメント107aは、第1の端子T1に溶接もしくははんだ付けすることができ、または、他の方法で電気的に接続することができる。第2の導電性セグメント107bは、ブレーカ3aおよび第1のセル接点105aに電気的に接続することができる。たとえば、第2のセグメント107bの一方の端部は、ブレーカ3の第2の端子T2に電気的に接続することができ、第2のセグメント107bの他方の端部は、第1のセル接点105aに電気的に接続することができる。上記で説明したように、いくつかの実施形態では、第2のセグメント107bは、ブレーカ3aおよびセル接点105aとは別部品の導電体を備えることができる。他の実施形態では、ブレーカ3aの第2の端子T2および第1のセル接点105aは、連続部品の導電体を備えることができる。一例として、
図11Aに示すように、第2のセグメント107bは、第1のセル接点105aの開口を通って延びるように湾曲して、第2のセグメント107aをセル接点105aに固定し、第1のセル114aの第1の端子113aへの電気的接続性を提供することができる。第1のバイパス導体106aは、ブレーカ3aの第3の端子T3、および第3の導電性セグメント107cに接続された第3のセル接点105cに電気的に接続することができる(
図9A、
図9B、
図10A、および
図10B参照)。たとえば、第1のバイパス導体106aは、ブレーカ3aの第3の端子T3に接続して、セル114aを迂回してバイパス路を設けることができる。バイパス導体106aは、ハウジング本体101に接着することができ、またはこれと共に形成することができる。
【0087】
図1A~
図7に関連して上記で説明したように、ブレーカ3aは、正常状態および故障状態を有するスイッチを備えることができる。正常状態では、
図1A~
図7に関連して上記で説明したように、ブレーカ3aの第1の端子T1は、第2の端子T2に接続してもよい(
図10A参照)。こうした構成では、動作電流および/または温度は正常範囲内にあり、電流は、第1のセル114aを通る第2の電気経路P2に沿って流される。たとえば、正常状態では、電子は、経路P2に沿って、ブレーカ3aから(
図9A)、第2のセグメント107bおよび第1のセル接点105aに沿って、第1のバッテリセル端子113aを通って、セル114aに、また、第2のバッテリセル端子113bを通って(
図9B)、ハウジング100の第2の端部112にあるセル接点105cおよび第3の導電性セグメント107cに、流れてもよい。
【0088】
第3のセル接点105cは、第1のセル114aの第2の端子113bから第3の導電性セグメント107cに、電子を輸送する働きをする。有利なことに、第1のセル接点105aおよび第3のセル接点105cのそれぞれは、溶接やはんだ付けなどの金属接合作業を用いることなく、バッテリセルのそれぞれの端子113a,113bに接触するようなサイズでもよい。その代わりに、上記で説明したように、セル接点105a,105cとセル114aとの間の電気的接触は、セル接点105aとセル接点105cとの間にセル114aが押し込まれる、スナップフィット接続によって提供してもよい。セル接点105a,105cは円盤状の導電体として示してあるが、他の実施形態では、セル接点105a,105cは、細長い部品の導電体を備えることができることを理解されたい。その上、セル114aは、簡単なスナップフィット接続によって、ハウジング100に機械的かつ電気的に接続してもよいが、いくつかの実施形態では、ユーザは、特に充電式バッテリについて、追加的または代替的に接合手順(溶接やはんだ付けなど)を行って、端子113a,113bをセル接点105a,105cに接続してもよい。
【0089】
したがって、より大きなシステムの正常動作中、電流は、第2の経路P2に沿って、すなわちセル114aを通って流れる(図に示す矢印と反対方向に)。しかし、上記で説明したように、場合によっては、セル114aが過熱状態になることがあり、または過度の電流がセル114aを流れることがある。
図1A~
図7に関連して上記で説明したように、温度および/またはセル114aを流れる電流が、様々な所定の値を超える場合には、ブレーカ3aは故障状態に入ってもよく、この場合、ブレーカ内のスイッチ5は、ブレーカ3aの第1の端子T1を第3の端子T3と接続するように移動する。こうした故障状態では、電流のごく一部は依然として、第1の端子T1と第2の端子T2との間を、また第2の経路P2に沿って、セル114aを流れてもよい。しかし、電流の大部分(もしくは全て)は、ブレーカ3aの第3の端子T3と第3のセル接点105cとの間に延びる第3の経路P3に沿って、セル114aを迂回して分流またはバイパスされる。セル114aを迂回して電流の大部分または全てを分流することは、セル114aが損傷するのを防止することができ、セル114aの寿命を延ばすことができる。その上、故障状態では、第2のセル114bおよびより大きな電気システムへの電流の流れを阻害することなく、セル114aをバイパスすることができる。有利なことに、
図9A~
図9Bに示す構成は、正常動作では、セル114aに出入りするより短い電気経路P2を、また故障状態では、バイパス導体106aを通るより長いバイパス経路P3を利用することができる。より長いバイパス経路P3は、セル114aを通る経路P2よりも高い抵抗を有してもよい。正常動作中に提供される比較的低い抵抗は、発熱のための電力の損失を有益に減少させることができる。
【0090】
図10Bに示すように、第1のバイパス導体106aは、第3のセル接点105cに接触することができ、これは、第1のバイパス導体106aと第3の導電性セグメント107cとの間の電気的連絡を提供する。第3の導電性セグメント107cは、第2および第3の経路P2,P3の合流点と第2のブレーカ3bとの間に第4の電気経路P4を画定することができる。たとえば、正常状態では、電流は、セル114aを通る第2の経路P2に沿って、また第4の経路P4および第3のセグメント107cに沿って、第2のブレーカ3bに流れることができる。故障状態では、電流の大部分または全て(
図1BのI
2)は、第3の経路P3および第1のバイパス導体106aに沿って、第3のセル接点105cおよび第3のセグメント107cに流れることができ、電流のごく一部(
図1BのI
3)は、第2の経路P2に沿って、第3のセル接点105cおよび第3のセグメント107cに流れることができる。合成電流(
図1BのI
1)は、第3のセグメント107cおよび第4の経路P4に沿って、ブレーカ3bに流れることができる。
【0091】
第1のブレーカ3aと同様に、第2のブレーカ3bは、正常動作状態および故障状態を有する。正常状態では、第3のセグメント107cはブレーカ3bの第1の端子T1に接続されており、端子T1はさらに、ブレーカ3bの第2の端子T2に接続されている。ブレーカ3bの第2の端子T2は、第4の導電性セグメント107d、第4のセル接点105d、および第2のセル114bの第1のバッテリセル端子113aと接続することができる(
図10B参照)。したがって、正常状態では、電流は、ブレーカ3bを通って、第4のセル接点105dと第2のセル接点105bとの間の、第2のセル114bを通る第5の経路P5に沿って流れる(
図9B参照)。
【0092】
故障状態(過温度および/または過電流故障など)では、ブレーカ3bのスイッチは、第1の端子T1を第3の端子T3と接続するように移動することができ、第3の端子T3は、第2のバイパス導体106bの第1の端部と接続することができる。第1のブレーカ3aと同様に、第2のセル114bが故障状態にある場合、電流の大部分は、第6の電気経路P6に沿ってバイパス導体106bを流れ、電流のごく一部は、第5の電気経路P5に沿ってセル114bを流れる。先に述べたように、図中の矢先は電子流の方向を示し(
113aは正、113bは負と仮定)、したがって電流は、図に示す矢先と反対方向に流れる。
【0093】
図9A、
図10A、および
図11Bに示すように、第2のバイパス導体106bの第2の端部は、第5の電気セグメント107eに接続することができる。加えて、第2のセル接点105bは、第5の電気セグメント107eに接続することができる。第5および/または第6の経路P5,P6に沿って流れる電流は、第5のセグメント107eおよび第6のセグメント107fを通る第7の電気経路P7に沿って、第2のモジュラバッテリ端子104bに流れることができる。第2のモジュラバッテリ端子104bは、ハウジング100の外面上に、たとえば、第2の壁110bの外面上に形成することができる。第2のモジュラバッテリ端子104bは、別のバッテリハウジングや電気負荷などの別の外部部品との電気的連絡を提供するように構成することができる。
図11A~
図11Bに示すように、チャネル116が、ハウジングの壁110の一部に沿って画定でき、第6のセグメント107fを収容するサイズおよび形状とすることができる。
【0094】
図12は、様々な実施形態による、互いに接続されたバッテリハウジング100A~100Dの列120を備えるバッテリパックの背面右側斜視図である。有利なことに、
図9A~
図11Bに示すバッテリハウジング100は、多数のバッテリハウジングを互いに電気的かつ機械的に接続することができる、モジュラプラットフォームを提供することができる。モジュラ構成で互いに接続された多数のバッテリハウジングを使用することにより、自動推進用途(自動車、スクータ、または自転車などの電気車両用のセル)、コンピューティング用途(ラップトップコンピュータ、モバイルスマートフォン、タブレットなど)、医療用具などの、高出力用途のための高電圧電源の使用が有益に可能になることができる。その上、1つまたは複数のブレーカ3を各ハウジング100A~100Dに組み込むことによって、故障状態によって1つまたは複数のバッテリセルがバイパスされる場合でも、バッテリパックはデバイス動作のために電流を供給し続けることができ、ユーザは、単にバッテリハウジングからバッテリセルを取り出し、交換バッテリセルをカチッとはめ込むことにより、電気負荷への電流の供給を阻害することなく、不良バッテリセルを交換することができる。
【0095】
図12に示すように、第1のハウジング100Aの第1のモジュラバッテリ接点104aは、第2のハウジング100Bの第2のモジュラバッテリ接点104bに電気的に接続することができ、第2のハウジング100Bの第1のモジュラバッテリ接点104aは、第3のハウジング100Cの第2のモジュラバッテリ接点104bに電気的に接続することができ、第3のハウジング100Cの第1のモジュラバッテリ接点104aは、第4のハウジング100Dの第2のモジュラバッテリ接点104aに電気的に接続することができる。隣接するハウジングのそれぞれの第1および第2のモジュラバッテリ接点104a,104bの間の接続は、金属接合方法を用いることなく行うことができる。たとえば、いくつかの実施形態では、隣接するハウジングのモジュラバッテリ接点104a,104bは互いにカチッとはまって、隣接するハウジング間の電気的および機械的接続を提供することができる。いくつかの実施形態では、隣接するバッテリハウジングのモジュラバッテリ接点104a,104bは、摺動接続で噛み合って、隣接するハウジング間の電気的および機械的接続を提供することができる。いくつかの実施形態では、ユーザは、隣接するハウジングのモジュラバッテリ接点104a,104bを互いに溶接またははんだ付けすることを選んでもよい。様々な実施形態では、各ハウジング100A~100Dのハウジング本体101は、隣接するバッテリハウジング間の機械的係合を提供する様々な機械的ロック機構を備えることができる。
図12には4つのハウジング100A~100Dが示してあるが、任意の適当な数のバッテリハウジングを互いに接続することができることを理解されたい。列120が組み立てられると、最も外側の電気モジュラバッテリ接点(たとえば、
図12のハウジング100Aの第2のモジュラバッテリ接点104b、および
ハウジング100Dの第1のモジュラバッテリ接点104a)は、所望の電気負荷(たとえば、モータ)に電気的に接続して、そこに電力を供給することができる。
【0096】
図13Aは、様々な実施形態による、直列に接続されたバッテリハウジング100A~100Cの列120を備えるバッテリパックの概略回路図である。特に断りのない限り、
図13Aに示す参照符号は、
図1A~
図12に示したものと同じまたは同様の構成要素を表す。本明細書で説明するように、複数のバッテリハウジング100A~100Cは互いに直列に接続することができる。ハウジング100A~100Cを互いに直列に接続することは、有利なことに、電気負荷への供給に利用できる電気エネルギの総量を増加させることができる。たとえば、
図13Aには、3つのハウジング100A~100Cが示してあり、各ハウジング100A~100Cは2つのセル114a,114bを備える。各セル114a,114bがVの電圧を有する場合には、図に示すように直列に接続された6つのバッテリセルの列120は、6Vの電圧を供給する。ハウジングのモジュール性により、高い所要電力の用途のために多数のバッテリを使用することが可能になる。バッテリセルのうちの1つが故障した場合には、関連するブレーカ3a,3bは、有利なことに、故障したバッテリセルを迂回して電流の大部分を経路設定して、より大きなシステムに電力を供給することができる。ハウジング100A~100Cのスナップフィット接続により、ユーザが故障したバッテリセルを簡単に取り出し、交換することが可能になる。その上、
図13Aに示すように、バッテリ管理システム(BMS)は、バッテリセルの選択された端子(たとえば、負端子)と電気的に結合された、それぞれの第1および第2のコネクタ135a,135bに接続することができる。本明細書で説明するように、BMSは、各バッテリセルの電圧を監視することができ、特定のセルの電圧が望ましくないレベルに上昇または低下した場合、ユーザに警告することができる。たとえば、いくつかの実施形態では、BMSは、1つまたは複数のバッテリセルが、たとえばスイッチが故障状態にあることによってバイパスされたかどうかを判定することができる。
【0097】
図13Bは、様々な実施形態による、互いに並列に接続されたバッテリハウジング100A~100Bの群122を備えるバッテリパックの概略回路図である。特に断りのない限り、
図13Bに示す参照符号は、
図1A~
図12に示したものと同じまたは同様の構成要素を表す。
図13Aの実施形態とは異なり、
図13Bでは、2つのバッテリハウジング100Aおよび100Bは並列に接続されている。第1のハウジング100Aのバッテリセルのうちの1つが故障した場合には(たとえば、セル114a)、ブレーカ3aは、セル114aをバイパスして、第2のセル114bおよびより大きな電気システムに電流を供給することができる。加えて、
図13Aと同様に、BMSは、上記で説明したように、それぞれの第1および第2のコネクタ135a,135bに電気的に接続して、各バッテリセルの電圧を監視することができる。
【0098】
図13Bに示す構成の1つの課題は、1つのセルが故障し、ブレーカによってバイパスされる場合には、その結果得られる構成が、2つのセルと並列の1つのセルを含むことになることである。結果として生じる2つの列の両端の電圧の不平衡は、依然として動作可能なセルを損傷し、かつ/またはより大きな電気システムの性能を低下させる場合がある。いくつかの実施形態では、こうした電圧不平衡には、ダイオード(たとえば、ショットキ型ダイオード)を各並列の列に設けて、セルを通る逆バイアスを防止することによって対処してもよい。いくつかの実施形態では、潜在的な電圧不平衡には、ダイオードと同様に働くことができるトランジスタ(たとえば、p型MOSFET)を各列に設けて、セルを通る逆バイアスを防止または減少させることによって対処してもよい。
【0099】
図14は、互いに直列にかつ昇降圧コンバータ130と接続されたセル114a~114eの列120を備えるバッテリパックの概略系統図である。セル114a~114eは、本明細書に開示するバッテリハウジング100のいずれかと結合することができ、また
は、他の任意の適当な方法で、互いに接続することができる。昇降圧コンバータ130は、列120の出力電圧を許容可能な電圧範囲内に維持するDC-DC変換構造を備えることができる。たとえば、セル114a~114eのうちの1つが、ブレーカによって列からバイパスされる場合には、列120の総電圧は、バイパスされるセルによって供給される電圧に等しい量だけ低下することになる。昇降圧コンバータ130は、有利なことに、列120の出力を所望の電圧範囲内に維持することができる。たとえば、
図14に示すように、各セル114a~114eが3.6Vの電圧を供給する場合には、列120は通常、合計18Vを供給することになる。セルのうちの1つがバイパスされる場合には、供給電圧は合計14.4Vに低下することになる。昇降圧コンバータ130は、1つまたは複数のセルがバイパスされる場合でも、列120の合計出力を18Vに維持することができる。
【0100】
本明細書で説明するように、故障状態によって1つまたは複数のセルがブレーカによってバイパスされるとき、バイパスされるセルは、他のセルおよび電気負荷に供給される電流を遮断しない。過電流および/または過温度故障状態が収まると、
図1A~
図7に関連して上記で説明したように、ブレーカはリセットして、正常動作状態に復帰することができる。その上、ユーザは、バイパスされ損傷を受けたセルを簡単に取り出し、新しいセルとハウジングとの電気的および機械的接続を提供する簡単なスナップフィット接続を用いて、新しいセルと交換することができる。様々な実施形態では、使用中にセルがバイパスされたかどうかを判定する電気バッテリ監視システムを設けることができる。バッテリ監視システムは、ユーザに信号を送信して、1つまたは複数のセルを交換すべきであることをユーザに警告することができる。バッテリ監視システムまたはバッテリ管理システム(BMS)の使用を容易にするために、各セル間の回路内の点へのBMSの接続を容易にする端子または接点をモジュラ・バッテリ・ハウジングに組み込むことができる。バッテリまたはバッテリパック用のハウジングに一体化して、過温度および/または過電流故障状態を自動的に監視することができる、本明細書に開示するブレーカを使用することは、バッテリセル自体の内部よりもハウジングレベルにブレーカを設けるためのコストを有益に削減することができる。セルごとのブレーカをなくすことは、ブレーカを省略するのと比べて、システムの安全性を高めながら、システムの全体的なコストを削減することができる。その上、本明細書に開示するブレーカを利用することはまた、液体冷却システムなどのコストのかかる熱管理システムの必要性を低減することもできる。いくつかの実施形態では、特に低温環境において、バッテリの性能を向上させるために、1つまたは複数の加熱素子、たとえばPPTC素子をハウジングに組み込んでもよい。
【0101】
ある特定の実施形態および実施例との関連で本発明を開示したが、本発明が、具体的に開示した実施形態を超えて、本発明の他の代替的な実施形態および/または使用、ならびに明らかな変更形態およびこれらと同等のものに及ぶことを、当業者なら理解するであろう。加えて、本発明のいくつかの変形形態を詳細に図示および説明したが、本発明の範囲内にある他の変更形態が、本開示に基づいて当業者には容易に明らかになるであろう。実施形態の特定の特徴および態様の様々な組合せまたは副組合せを行ってもよく、依然として本発明の範囲内にあることも企図される。ここで開示した発明の種々の形態を形成するために、ここで開示した実施形態の様々な特徴および態様を、互いに組み合わせ、または置き換えることができることを理解されたい。したがって、本明細書に開示した本発明の範囲は、上記で述べた特定の開示実施形態によって限定されるべきではなく、次の特許請求の範囲を公正に読むことによってのみ決定されるべきであることが意図される。