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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-02-09
(45)【発行日】2022-02-18
(54)【発明の名称】蓄電素子及び蓄電装置
(51)【国際特許分類】
   H01M 50/46 20210101AFI20220210BHJP
   H01M 50/431 20210101ALI20220210BHJP
   H01M 50/443 20210101ALI20220210BHJP
   H01M 50/446 20210101ALI20220210BHJP
   H01M 50/449 20210101ALI20220210BHJP
   H01M 50/489 20210101ALI20220210BHJP
   H01M 4/13 20100101ALI20220210BHJP
   H01G 11/52 20130101ALI20220210BHJP
   H01G 11/26 20130101ALI20220210BHJP
   H01G 11/46 20130101ALI20220210BHJP
   H01G 11/50 20130101ALI20220210BHJP
【FI】
H01M50/46
H01M50/431
H01M50/443 M
H01M50/446
H01M50/449
H01M50/489
H01M4/13
H01G11/52
H01G11/26
H01G11/46
H01G11/50
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2017168589
(22)【出願日】2017-09-01
(65)【公開番号】P2019046648
(43)【公開日】2019-03-22
【審査請求日】2020-07-10
(73)【特許権者】
【識別番号】507151526
【氏名又は名称】株式会社GSユアサ
(74)【代理人】
【識別番号】100074332
【弁理士】
【氏名又は名称】藤本 昇
(74)【代理人】
【識別番号】100114432
【弁理士】
【氏名又は名称】中谷 寛昭
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 丈
(72)【発明者】
【氏名】宮崎 明彦
(72)【発明者】
【氏名】高野 理史
【審査官】井原 純
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-073328(JP,A)
【文献】特開2012-195239(JP,A)
【文献】国際公開第2008/114727(WO,A1)
【文献】国際公開第2015/111710(WO,A1)
【文献】国際公開第2013/047747(WO,A1)
【文献】国際公開第2009/041395(WO,A1)
【文献】特開2010-080297(JP,A)
【文献】特開2015-103301(JP,A)
【文献】特開2016-051523(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2016/0072111(US,A1)
【文献】中国特許出願公開第106252570(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第101901907(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 50/40-50/497
H01M 4/04
H01M 4/13
H01M 10/00-10/0587
H01G 11/00-11/86
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
セパレータと、活物質粒子を含む活物質層と、前記セパレータ及び前記活物質層の間に配置され且つ第一粒子を含む中間層とを備え、
前記セパレータは、第二粒子を含有する基材層を有し、
前記活物質粒子のメジアン径A[μm]と、前記第一粒子のメジアン径B[μm]と、前記第二粒子を含有する基材層の平均孔径C[μm]と、前記第二粒子のメジアン径D[μm]は、下記の関係式(1)を満たす、蓄電素子。
A>B>C>D 関係式(1)
【請求項2】
前記第二粒子における平均アスペクト比が1以上3以下である、請求項1の蓄電素子。
【請求項3】
前記第一粒子の平均アスペクト比が前記第二粒子の平均アスペクト比よりも大きい、請求項1又は2の蓄電素子。
【請求項4】
前記活物質層を有する正極を備え、
前記中間層が前記正極の活物質層と前記セパレータとの間に配置され、前記正極の活物質層の充填密度が3.8g/cm以下である、請求項1乃至3のいずれかの蓄電素子。
【請求項5】
前記活物質層の表面粗さが100nm以上である、請求項1乃至4のいずれかの蓄電素子。
【請求項6】
請求項1乃至3のいずれか1項の蓄電素子を一以上備えた、蓄電装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、リチウムイオン二次電池などの蓄電素子、及び、該蓄電素子を備えた蓄電装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、多孔質層を有するセパレータを備えるリチウムイオン二次電池が知られている(例えば、特許文献1)。
【0003】
特許文献1では、熱可塑性樹脂を主体とする微多孔膜からなる多孔質層(I)の少なくとも片方の面に、耐熱温度が150℃以上のフィラーを主体として含む多孔質層(II)を有したセパレータにおいて、前記多孔質層に含まれるフィラーが、耐酸化性のフィラーAと、炭素質材料からなるフィラーBとから構成されることを特徴とする電池用セパレータ、及び、上記セパレータと、正極、負極、有機電解液を有するリチウムイオン二次電池が記載されている。
【0004】
特許文献1に記載のセパレータを備えたリチウムイオン二次電池では、活物質の膨張により、セパレータが塑性変形で収縮等し、電池の内部抵抗が上昇する場合がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2011-154967号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本実施形態は、セパレータの変形によって内部抵抗が上昇することが抑制された蓄電素子、及び、該蓄電素子を備えた蓄電装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本実施形態の蓄電素子は、セパレータと、活物質粒子を含む活物質層と、セパレータ及び活物質層の間に配置され且つ第一粒子を含む中間層とを備え、
セパレータは、第二粒子を含有する基材層を有し、
活物質粒子のメジアン径A[μm]と、第一粒子のメジアン径B[μm]と、第二粒子を含有する基材層の平均孔径C[μm]と、第二粒子のメジアン径D[μm]は、下記の関係式(1)を満たす。
A>B>C>D 関係式(1)
【発明の効果】
【0008】
本実施形態によれば、セパレータの変形によって内部抵抗が上昇することが抑制された蓄電素子を提供できる。また、該蓄電素子を備えた蓄電装置を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1図1は、本実施形態に係る蓄電素子の斜視図である。
図2図2は、図1のII-II線位置の断面図である。
図3図3は、同実施形態に係る蓄電素子の電極体における構成を説明するための断面図である。
図4図4は、正極活物質層、中間層、及び基材層の模式断面図である。
図5図5は、本実施形態に係る蓄電素子を含む蓄電装置の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明に係る蓄電素子の一実施形態について、図1図4を参照しつつ説明する。蓄電素子には、二次電池、キャパシタ等がある。本実施形態では、蓄電素子の一例として、充放電可能な二次電池について説明する。尚、本実施形態の各構成部材(各構成要素)の名称は、本実施形態におけるものであり、背景技術における各構成部材(各構成要素)の名称と異なる場合がある。
【0011】
本実施形態の蓄電素子1は、非水電解質二次電池である。より詳しくは、蓄電素子1は、リチウムイオンの移動に伴って生じる電子移動を利用したリチウムイオン二次電池である。この種の蓄電素子1は、電気エネルギーを供給する。蓄電素子1は、単一又は複数で使用される。具体的に、蓄電素子1は、要求される出力及び要求される電圧が小さいときには、単一で使用される。一方、蓄電素子1は、要求される出力及び要求される電圧の少なくとも一方が大きいときには、他の蓄電素子1と組み合わされて蓄電装置100に用いられる。前記蓄電装置100では、該蓄電装置100に用いられる蓄電素子1が電気エネルギーを供給する。
【0012】
蓄電素子1は、図1図4に示すように、正極11と負極12とを含む電極体2と、電極体2を収容するケース3と、ケース3の外側に配置される外部端子7であって電極体2と導通する外部端子7と、を備える。また、蓄電素子1は、電極体2、ケース3、及び外部端子7の他に、電極体2と外部端子7とを導通させる集電体5等を有する。
【0013】
電極体2は、正極11と負極12とがセパレータ4によって互いに絶縁された状態で積層された積層体22が巻回されることによって形成される。電極体2は、正極11とセパレータ4との間に、第一粒子bを含有する中間層8を有する。
【0014】
正極11は、金属箔111(集電箔)と、金属箔111の表面に重ねられ且つ活物質粒子aを含む正極活物質層112と、を有する。本実施形態では、正極活物質層112は、金属箔111の両面にそれぞれ重なる。なお、正極11の厚さは、40μm以上150μm以下であってもよい。
【0015】
金属箔111は帯状である。本実施形態の正極11の金属箔111は、例えば、アルミニウム箔である。正極11は、帯形状の短手方向である幅方向の一方の端縁部に、正極活物質層112の非被覆部(正極活物質層が形成されていない部位)115を有する。
【0016】
正極活物質層112は、粒子状の活物質(活物質粒子a)と、粒子状の導電助剤と、バインダとを含む。正極活物質層112の厚さは、12μm以上70μm以下であってもよい。正極活物質層112の目付量は、6mg/cm以上17mg/cm 以下であってもよい。正極活物質層112の充填密度は、2.4g/cm以上3.8g/cm以下であってもよい。正極活物質層112の厚さ、目付量及び充填密度は、金属箔111の一方の面を覆うように配置された1層分におけるものである。
正極活物質層112の充填密度が3.8g/cm 以下であることにより、電極のスプリングバック(電解液吸収による膨潤、充放電による膨れなど)によるセパレータの潰れを抑制することができる。
【0017】
正極活物質層112の表面粗さは、100nm以上600nm以下であってもよい。正極活物質層112の表面粗さが100nm以上であることにより、中間層8と活物質粒子aとの間に電極膨張の逃げ代となる隙間を設けることができる。
【0018】
正極活物質層112の表面粗さは、JIS B0601:2013に準じて測定された算術平均粗さである。表面粗さRaは、少なくとも5点を測定した平均値によって求められる。なお、製造された電池における正極活物質層112の表面粗さを測定する場合、例えば、電池の負極電位が1.0V以上になるように電池を放電した後、該電池を乾燥雰囲気下で解体する。次に、正極活物質層112を取り出してジメチルカーボネートで洗浄した後、2時間以上真空乾燥する。その後、市販されているレーザー顕微鏡(キーエンス社製 機器名「VK-8510」)を用いて、測定領域(面積):149μm×112μm(16688μm)、測定ピッチ:0.1μmの測定条件で、正極活物質層112の表面粗さを算出することができる。
【0019】
正極活物質層112の活物質粒子aのメジアン径Aは、2μm以上20μm以下であってもよい。活物質粒子aのメジアン径A(平均粒径D50)は、下記のようにして粒度分布を測定することによって求める。
【0020】
粒径頻度分布は、レーザ回折・散乱式の粒度分布測定装置を用いた測定によって求められる。粒径頻度分布は、粒子の体積基準によって求められる。測定条件は、実施例において詳しく説明されている。なお、製造された電池の活物質層に含まれる粒子の粒径頻度分布を測定する場合、例えば、1.0Cレートで4.2Vに達するまで電池を充電した後、さらに4.2Vの定電圧で電池を3時間放電し、その後、1.0Cレートで2.0Vまで定電流放電する。続いて、2.0Vで5時間の定電圧放電を行う。そして、電池を乾燥雰囲気下で解体する。活物質層を取り出してジメチルカーボネートで洗浄して砕いた後、活物質と導電助剤とを比重差などによって分離し、分離した活物質を2時間以上真空乾燥する。その後、粒度分布測定装置を用いて測定する。
【0021】
正極11の活物質は、リチウムイオンを吸蔵放出可能な化合物である。正極11の活物質は、例えば、リチウム金属酸化物である。具体的に、正極の活物質は、例えば、LiMeO(Meは、1又は2以上の遷移金属を表す)によって表される複合酸化物(LiCo、LiNi、LiMn、LiNiCoMn等)、又は、LiMe(XO(Meは、1又は2以上の遷移金属を表し、Xは例えばP、Si、B、Vを表す)によって表されるポリアニオン化合物(LiFePO、LiMnPO、LiMnSiO、LiCoPOF等)である。
【0022】
正極11の活物質は、Li1-xNiMnCo2-δの化学組成で表されるリチウム遷移金属複合酸化物であってもよい。ただし、0<x<1であり、a+b+c+d=1であり、0≦a≦1であり、0≦b≦1であり、0≦c≦1であり、0≦d≦1であり、0≦δ≦0.5であり、Mは、B、Mg、Al、Ti、V、Zn、Y、Zr、Mo、Wからなる群より選択された少なくとも1種である。
【0023】
本実施形態では、正極11の活物質は、LiNiMnCoの化学組成で表されるリチウム遷移金属複合酸化物(ただし、0<p≦1.3であり、q+r+s=1であり、0≦q≦1であり、0≦r≦1であり、0≦s≦1であり、1.7≦t≦2.3である)である。なお、0<q<1であり、0<r<1であり、0<s<1であってもよい。
【0024】
上記のごときLiNiMnCoの化学組成で表されるリチウム遷移金属複合酸化物は、例えば、LiNi1/3Co1/3Mn1/3、LiNi1/6Co1/6Mn2/3、LiCoOなどである。
【0025】
正極活物質層112に用いられるバインダは、例えば、ポリフッ化ビニリデン(PVdF)、エチレンとビニルアルコールとの共重合体、ポリメタクリル酸メチル、ポリエチレンオキサイド、ポリプロピレンオキサイド、ポリビニルアルコール、ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸、スチレンブタジエンゴム(SBR)である。本実施形態のバインダは、ポリフッ化ビニリデンである。
【0026】
正極活物質層112の導電助剤は、炭素を98質量%以上含む炭素質材料である。炭素質材料は、例えば、ケッチェンブラック(登録商標)、アセチレンブラック、黒鉛等である。本実施形態の正極活物質層112は、導電助剤としてアセチレンブラックを有する。
【0027】
正極活物質層112は、導電助剤を3質量%以上5質量%以下含んでもよい。
【0028】
負極12は、金属箔121(集電箔)と、金属箔121の上に形成された負極活物質層122と、を有する。本実施形態では、負極活物質層122は、金属箔121の両面にそれぞれ重ねられる。金属箔121は帯状である。本実施形態の負極の金属箔121は、例えば、銅箔である。負極12は、帯形状の短手方向である幅方向の一方の端縁部に、負極活物質層122の非被覆部(負極活物質層が形成されていない部位)125を有する。負極12の厚さは、40μm以上150μm以下であってもよい。
【0029】
負極活物質層122は、粒子状の活物質(活物質粒子)と、バインダと、を含む。負極活物質層122は、セパレータ4を介して正極11と向き合うように配置される。負極活物質層122の幅は、正極活物質層112の幅よりも大きい。
【0030】
負極12の活物質は、負極12において充電反応及び放電反応の電極反応に寄与し得るものである。例えば、負極12の活物質は、グラファイト、非黒鉛質炭素(難黒鉛化性炭素、易黒鉛化性炭素)などの炭素材料、又は、ケイ素(Si)及び錫(Sn)などリチウムイオンと合金化反応を生じる材料である。本実施形態の負極の活物質は、非晶質炭素である。より具体的には、負極の活物質は、難黒鉛化性炭素である。
【0031】
負極活物質層122(1層分)の厚さは、10μm以上50μm以下であってもよい。負極活物質層122の目付量(1層分)は、0.3g/100cm以上1.0g/100cm以下であってもよい。負極活物質層122の充填密度(1層分)は、0.9g/cm以上1.2g/cm以下であってもよい。
【0032】
負極活物質層122に用いられるバインダは、正極活物質層に用いられるバインダと同様のものである。本実施形態のバインダは、スチレンブタジエンゴム(SBR)である。
【0033】
負極活物質層122では、バインダの割合は、活物質粒子とバインダとの合計質量に対して、5質量%以上10質量%以下であってもよい。
【0034】
負極活物質層122は、ケッチェンブラック(登録商標)、アセチレンブラック、黒鉛等の導電助剤をさらに有してもよい。本実施形態の負極活物質層122は、導電助剤を有していない。
【0035】
本実施形態の電極体2では、以上のように構成される正極11と負極12とがセパレータ4によって絶縁された状態で巻回される。即ち、本実施形態の電極体2では、正極11、負極12、及びセパレータ4の積層体22が巻回される。セパレータ4は、絶縁性を有する部材である。セパレータ4は、正極11と負極12との間に配置される。これにより、電極体2(詳しくは、積層体22)において、正極11と負極12とが互いに絶縁される。また、セパレータ4は、ケース3内において、電解液を保持する。これにより、蓄電素子1の充放電時において、リチウムイオンが、セパレータ4を挟んで交互に積層される正極11と負極12との間を移動する。
【0036】
セパレータ4は、帯状である。セパレータ4は、多孔質な基材層41を有する。セパレータ4は、正極11及び負極12間の短絡を防ぐために正極11及び負極12の間に配置されている。本実施形態のセパレータ4は、基材層41のみを有する。
【0037】
基材層41は、多孔質に構成される。基材層41は、基材と第二粒子dとを含有する。基材層41において、第二粒子dは、例えば、層内の各孔の中に入り込んでいたり、基材の中に埋まっていたりする。基材層41は、例えば、第二粒子dを含有する織物、不織布、又は多孔膜である。基材の材質としては、高分子化合物、ガラス、セラミックなどが挙げられる。高分子化合物としては、例えば、ポリアクリロニトリル(PAN)、ポリアミド(PA)、ポリエチレンテレフタレート(PET)などのポリエステル、ポリプロピレン(PP)、ポリエチレン(PE)などのポリオレフィン(PO)、及び、セルロースからなる群より選択された少なくとも1種が挙げられる。
【0038】
基材層41の第二粒子dの平均アスペクト比は、1以上3以下であってもよい。第二粒子dの平均アスペクト比が1以上3以下であることにより、基材層41の圧縮応力がより大きくなり、セパレータ4の変形をより抑制することができる。従って、セパレータ4の変形等によって電池の抵抗が上昇することを、より抑制できる。平均アスペクト比が1以上3以下である第二粒子dは、塊状である。
【0039】
第二粒子dの平均アスペクト比は、基材層41の厚さ方向の断面(電子顕微鏡観察像)において、各粒子のアスペクト比(縦の長さ/横の長さ)を測定した平均値である。アスペクト比は、各粒子における互いに最も離れた両端を通る直線を基にして求める。縦の長さは、前記両端間の長さである。一方、横の長さは、上記の直線に垂直な方向において、最も厚い部分の長さである。なお、ランダムに選んだ少なくとも100個について縦及び横の長さを測定し、測定結果を平均して、平均アスペクト比を求める。
【0040】
第二粒子dは、多孔質であってもよい。第二粒子dの材質は、有機物であってもよく無機物であってもよい。有機物としては、例えば、高分子化合物が挙げられる。具体的に、高分子化合物としては、例えば、ポリスチレン、ポリビニルケトン、ポリアクリロニトリル、ポリメタクリル酸メチル、ポリメタクリル酸エチル、ポリグリシジルメタクリレート、ポリグリシジルアクリレート、ポリアクリル酸メチル等のホモポリマー、あるいはこれらホモポリマーを構成するモノマー単位を2種類以上含むコポリマーが挙げられる。また、高分子化合物としては、例えば、ポリテトラフルオロエチレン、4フッ化エチレン-6フッ化プロピレン共重合体、4フッ化エチレン-エチレン共重合体、ポリビニリデンフルオライド等のフッ素樹脂、メラミン樹脂、尿素樹脂、ポリエチレン、ポリプロピレンなどが挙げられる。
一方、無機物としては、例えば、炭酸カルシウム、タルク、クレー、カオリン、シリカ、ハイドロタルサイト、珪藻土、炭酸マグネシウム、炭酸バリウム、硫酸カルシウム、硫酸マグネシウム、硫酸バリウム、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、酸化カルシウム、酸化マグネシウム、酸化チタン、酸化アルミニウム、マイカ、ゼオライト、ガラス等などが挙げられる。
【0041】
基材層41の平均孔径Cは、0.01μm以上0.15μm以下であってもよい。基材層41の平均孔径Cは、下記の測定方法によって測定される。基材層41がポリオレフィン微多孔膜であるときを例に挙げ、下記に詳しく説明する。
【0042】
平均孔径Cの測定における、孔(細孔)の内部の流体について、以下のことが知られている。詳しくは、流体の平均自由工程が孔の孔径よりも大きいとき、孔(細孔)の内部の流体は、クヌーセンの流れに従う。これに対して、流体の平均自由工程が孔の孔径よりも小さいとき、孔(細孔)の内部の流体は、ポアズイユの流れに従う。そこで、ポリオレフィン微多孔膜の透気度測定における空気の流れがクヌーセンの流れに従うと仮定し、また、ポリオレフィン微多孔膜の透水度測定における水の流れがポアズイユの流れに従うと仮定する。
平均孔径C(μm)は、空気の透過速度定数Rgas(m/(m・秒・Pa))、水の透過速度定数Rliq(m/(m・秒・Pa))、空気の分子速度ν(m/秒)、水の粘度η(Pa・秒)、標準圧力Ps(=101325Pa)、気孔率ε(%)、膜厚L(μm)から、次式を用いて求める。
d=2ν×(Rliq/Rgas)×(16η/3Ps)×10
【0043】
gasは、下記方法によって測定された透気度から次式を用いて求められる。
gas=0.0001/(透気度×(6.424×10-4)×(0.01276×101325))
・透気度(秒/100cc)
JIS P-8117に準拠して測定する。例えば、東洋精器製作所社製ガーレー式透気度計GB2(内筒質量:567g)を用いて、645mmの面積(直径28.6mmの円)において、空気100ccが通過する時間(秒)を透気度(秒/100cc)として測定する。
【0044】
liqは透水度(cm/(cm・秒・Pa))から次式を用いて求められる。
liq=透水度/100
なお、透水度は、直径41mmのステンレス製の透液セルに、予めエタノールに浸しておいたポリオレフィン微多孔膜をセットし、膜のエタノールを水で洗浄した後、約50000Paの差圧で水を透過させ、120秒間経過した際の透水量(cm)を測定することにより、単位時間・単位圧力・単位面積当たりの透水量として計算される。
また、νは気体定数R(=8.314)、絶対温度T(K)、円周率π、空気の平均分子量M(=2.896×10-2kg/mol)から次式を用いて求められる。
ν=((8R×T)/(π×M))1/2
【0045】
基材層41の第二粒子dのメジアン径Dは、0.001μm以上0.1μm以下であってもよい。第二粒子dのメジアン径D(平均粒径D50)は、上述した方法と同様の方法で粒度分布を測定することによって求める。なお、いったん製造された電池におけるセパレータ4(基材層41)の第二粒子dのメジアン径Bを測定する場合、例えば、基材層41に含まれる基材を有機溶媒等によって溶解させて第二粒子dを取り出す。取り出した第二粒子dについて上記と同様に粒度分布を測定して、メジアン径Dを求める。
【0046】
本実施形態の蓄電素子1では、正極活物質層112と基材層41との間に中間層8が配置されている。具体的に、本実施形態では、正極活物質層112と中間層8とが直接接し、また、中間層8とセパレータ4(基材層41)とが直接接している。なお、負極活物質層122と基材層41との間に中間層8が配置されてもよい。
【0047】
中間層8は、第一粒子bを含有する。中間層8は、バインダを含有してもよい。第一粒子bは、基材層41の第二粒子dと比べて板状であってもよい。即ち、第一粒子bの平均アスペクト比が第二粒子dの平均アスペクト比よりも大きくてもよい。平均アスペクト比が5以上50以下である第一粒子bは、通常、板状である。第一粒子bが第二粒子dと比べて板状であることにより、抵抗値の上昇を抑制することができる。平均アスペクト比は、上述した方法と同様の方法によって測定される。
【0048】
第一粒子bの平均アスペクト比は、第二粒子dの平均アスペクト比よりも大きくてもよい。第一粒子bの平均アスペクト比が第二粒子dの平均アスペクト比よりも大きいことにより、セパレータの基材層41の変形をより抑制でき、抵抗値の上昇をより抑制することできる。第一粒子bの平均アスペクト比は、例えば6~9であってもよい。なお、第一粒子bの平均アスペクト比は、中間層8の厚さ方向の断面にて、上述した方法と同様の方法によって測定される。
【0049】
第一粒子bのメジアン径Bは、0.1μm以上5μm以下であってもよい。第一粒子bのメジアン径B(平均粒径D50)は、上述した方法と同様の方法で粒度分布を測定することによって求める。
【0050】
第一粒子bの材質としては、上述した第二粒子dの材質と同様のものが挙げられる。第一粒子bの材質と、第二粒子dの材質とは、同じでもよく、異なってもよい。
【0051】
中間層8のバインダとしては、上述した正極活物質層112のバインダと同様のものが挙げられる。中間層8のバインダと、正極活物質層112のバインダとは、同じでもよく、異なってもよい。
【0052】
本実施形態において、活物質粒子aのメジアン径A[μm]と、第一粒子bのメジアン径B[μm]と、第二粒子dを含有する基材層41の平均孔径C[μm]と、第二粒子dのメジアン径D[μm]は、下記の関係式(1)を満たす。
A>B>C>D 関係式(1)
本実施形態の蓄電素子では、充電によって正極11の活物質粒子aが膨張したときに、正極活物質層112から中間層8を介してセパレータ4に向けて押圧力が加わる。このとき、図4に示されるように、中間層8によって、セパレータ4の表面を保護することができる。従って、セパレータ4の表面が変形することを、中間層8によって抑制できる。セパレータ4の変形を抑制できる分、セパレータ4の孔が押しつぶされることを抑制できることから、セパレータ4によって(セパレータ4に起因して)抵抗が上昇することを抑制できる。
A>Bにより、正極活物質層112から中間層8に上記の押圧力が加わったときに、1の活物質粒子aから中間層8の複数の第一粒子bへ力が分散されやすくなり、押圧力を緩和することができる。これにより、セパレータ4に押圧力が加わることが抑制され、セパレータ4が変形することが抑制される。従って、上記の理由と同様の理由により、セパレータ4によって抵抗が上昇することが抑制される。
B>Cにより、中間層8からセパレータ4に上記の押圧力が加わったときに、中間層8の粒子がセパレータ4内の孔に入ることが抑制され、セパレータ4の目詰まりを抑制できる。セパレータ4の目詰まりが抑制される分、セパレータ4において抵抗が上昇することが抑制される。
C>Dにより、第二粒子dがセパレータ4の孔に入り込みやすくなる。これにより、セパレータ4の強度が高まる。従って、セパレータ4に上記の押圧力が加わったときに、セパレータ4が変形することを抑制できる。よって、上記の理由と同様の理由により、セパレータ4によって抵抗が上昇することが抑制される。
以上のように、上記の構成によれば、セパレータ4によって抵抗が上昇することが抑制された蓄電素子1を提供できる。
【0053】
セパレータ4の幅(帯形状の短手方向の寸法)は、負極活物質層122の幅より僅かに大きい。セパレータ4は、正極活物質層112及び負極活物質層122が重なるように幅方向に位置ずれした状態で重ね合わされた正極11と負極12との間に配置される。このとき、正極11の非被覆部115と負極12の非被覆部125とは重なっていない。即ち、正極11の非被覆部115が、正極11と負極12との重なる領域から幅方向に突出し、且つ、負極12の非被覆部125が、正極11と負極12との重なる領域から幅方向(正極11の非被覆部115の突出方向と反対の方向)に突出する。積層された状態の正極11、負極12、及びセパレータ4、即ち、積層体22が巻回されることによって、電極体2が形成される。
【0054】
ケース3は、開口を有するケース本体31と、ケース本体31の開口を塞ぐ(閉じる)蓋板32と、を有する。ケース3は、電極体2及び集電体5等と共に、電解液を内部空間に収容する。ケース3は、電解液に耐性を有する金属によって形成される。ケース3は、例えば、アルミニウム、又は、アルミニウム合金等のアルミニウム系金属材料によって形成される。ケース3は、ステンレス鋼及びニッケル等の金属材料、又は、アルミニウムにナイロン等の樹脂を接着した複合材料等によって形成されてもよい。
【0055】
電解液は、非水溶液系電解液である。電解液は、有機溶媒に電解質塩を溶解させることによって得られる。有機溶媒は、例えば、プロピレンカーボネート及びエチレンカーボネートなどの環状炭酸エステル類、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、及びエチルメチルカーボネートなどの鎖状カーボネート類である。電解質塩は、LiClO、LiBF、及びLiPF等である。本実施形態の電解液は、プロピレンカーボネート、ジメチルカーボネート、及びエチルメチルカーボネートを所定の割合で混合した混合溶媒に、0.5mol/L以上1.5mol/L以下のLiPFを溶解させたものである。
【0056】
ケース3は、ケース本体31の開口周縁部と、長方形状の蓋板32の周縁部とを重ね合わせた状態で接合することによって形成される。また、ケース3は、ケース本体31と蓋板32とによって画定される内部空間を有する。本実施形態では、ケース本体31の開口周縁部と蓋板32の周縁部とは、溶接によって接合される。
【0057】
蓋板32は、ケース3内のガスを外部に排出可能なガス排出弁321を有する。ガス排出弁321は、ケース3の内部圧力が所定の圧力まで上昇したときに、該ケース3内から外部にガスを排出する。ガス排出弁321は、蓋板32の中央部に設けられる。
【0058】
ケース3には、電解液を注入するための注液孔が設けられる。注液孔は、ケース3の内部と外部とを連通する。注液孔は、蓋板32に設けられる。注液孔は、注液栓326によって密閉される(塞がれる)。注液栓326は、溶接によってケース3(本実施形態の例では蓋板32)に固定される。
【0059】
外部端子7は、他の蓄電素子1の外部端子7又は外部機器等と電気的に接続される部位である。外部端子7は、導電性を有する部材によって形成される。外部端子7は、バスバ等が溶接可能な面71を有する。面71は、平面である。
【0060】
集電体5は、ケース3内に配置され、電極体2と通電可能に直接又は間接に接続される。本実施形態の集電体5は、導電性を有する部材によって形成される。図2に示すように、集電体5は、ケース3の内面に沿って配置される。集電体5は、蓄電素子1の正極11と負極12とにそれぞれ導通される。
【0061】
本実施形態の蓄電素子1では、電極体2とケース3とを絶縁する袋状の絶縁カバー6に収容された状態の電極体2(詳しくは、電極体2及び集電体5)がケース3内に収容される。
【0062】
次に、上記実施形態の蓄電素子1の製造方法について説明する。
【0063】
例えば、蓄電素子1の製造方法では、まず、活物質を含む合剤を金属箔に塗布し、活物質層を形成して、正極11及び負極12をそれぞれ作製する。また、市販のセパレータを用意するか、又は、セパレータを作製する。次に、中間層8を形成するための組成物を調製し、斯かる組成物から中間層8を形成する。続いて、正極11、セパレータ4、及び負極12を重ね合わせて電極体2を形成する。さらに、電極体2をケース3に入れ、ケース3に電解液を入れることによって蓄電素子1を組み立てる。
【0064】
正極11の作製では、例えば、金属箔の両面に、活物質粒子aと、バインダと、導電助剤と、溶媒と、を含む合剤をそれぞれ塗布することによって正極活物質層112を形成する。正極活物質層112を形成するための塗布方法としては、一般的な方法が採用される。塗布された正極活物質層112を所定の圧力でロールプレスする。プレス圧を調整することにより、正極活物質層112の厚さや充填密度を調整できる。なお、負極12も同様にして作製する。
【0065】
セパレータ4(基材層41)の作製では、例えば、熱可塑性樹脂が溶融する温度で、第二粒子dと熱可塑性樹脂と流動パラフィンとを混合し、混合物を引き伸ばす。引き延ばした混合物を塩化メチレン等に浸漬することによって流動パラフィンを塩化メチレン等に溶解させて取り除く。これにより、多孔質な基材層41を作製できる。基材層41の平均孔径Cは、基材層41を作製するときに、延伸倍率を変えることによって調整できる。詳しくは、延伸倍率を大きくすることによって、平均孔径Cを大きくできる。
【0066】
中間層8の作製では、第一粒子bとバインダと溶媒とを含む中間層用の組成物を調製し、該組成物を塗布したあと、溶媒を揮発させることによって、中間層8を形成する。中間層8は、基材層41の少なくとも一方の面上に形成されてもよい。中間層8が基材層41の少なくとも一方の面上に形成されることにより、斯かる面と対向する活物質層の活物質粒子aが膨張して基材層41を塑性変形させることが抑制される。なお、中間層8は、正極活物質層112及び負極活物質層122の少なくともいずれかの上に形成されてもよい。
【0067】
電極体2の形成では、正極11と負極12との間にセパレータ4を挟み込んだ積層体22を巻回することにより、電極体2を形成する。詳しくは、正極活物質層112と負極活物質層122とがセパレータ4を介して互いに向き合うように、正極11とセパレータ4と負極12とを重ね合わせ、積層体22を作る。このとき、正極活物質層112と基材層41との間、又は、負極活物質層122と基材層41との間に中間層8を配置する。積層体22を巻回して、電極体2を形成する。
【0068】
蓄電素子1の組み立てでは、ケース3のケース本体31に電極体2を入れ、ケース本体31の開口を蓋板32で塞ぎ、電解液をケース3内に注入する。ケース本体31の開口を蓋板32で塞ぐときには、ケース本体31の内部に電極体2を入れ、正極11と一方の外部端子7とを導通させ、且つ、負極12と他方の外部端子7とを導通させた状態で、ケース本体31の開口を蓋板32で塞ぐ。電解液をケース3内へ注入するときには、ケース3の蓋板32の注入孔から電解液をケース3内に注入する。
【0069】
上記のように構成された本実施形態の蓄電素子1では、上述した通り、正極11の活物質粒子aのメジアン径A[μm]と、中間層8の第一粒子bのメジアン径B[μm]と、第二粒子dを含有する基材層41の平均孔径C[μm]と、基材層41の第二粒子dのメジアン径D[μm]は、下記の関係式(1)を満たす。
A>B>C>D 関係式(1)
本実施形態の蓄電素子1では、セパレータの基材層41が、基材としての樹脂と、第二粒子dとを含む場合、充電によって活物質粒子aが膨張したときに、正極活物質層112から中間層8を介してセパレータ4に向けて押圧力が加わる。この押圧力によって、基材層41の樹脂が塑性変形し、セパレータ4が収縮し得る。特に、上記のごとく巻回された電極体2の折れ曲がった部分において、このようなセパレータ4の収縮が起こりやすい。しかしながら、上記の押圧力が加わっても、中間層8によって、セパレータ4の基材層41の樹脂が塑性変形して収縮することを抑制できる。特に、基材層41の表面部分の樹脂が塑性変形して収縮することを抑制できる。従って、セパレータ4の表面が変形することを、中間層8によって抑制できる。また、第二粒子dが基材層41の変形を抑制できることから、第二粒子dによっても、セパレータ4が変形することを抑制できる。セパレータ4の変形を抑制できる分、セパレータ4の孔が押しつぶされることを抑制できる。従って、セパレータ4によって(セパレータ4に起因して)抵抗が上昇することを抑制できる。
【0070】
尚、本発明の蓄電素子は、上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加え得ることは勿論である。例えば、ある実施形態の構成に他の実施形態の構成を追加することができ、また、ある実施形態の構成の一部を他の実施形態の構成に置き換えることができる。さらに、ある実施形態の構成の一部を削除することができる。
【0071】
上記の実施形態では、正極活物質層112と基材層41との間に中間層8が配置された蓄電素子1について詳しく説明したが、本発明の蓄電素子1では、負極活物質層122と基材層41との間に中間層8が配置されてもよい。負極12の活物質が黒鉛やケイ素である場合、これら活物質は、充電によってより膨張しやすい。そのため、上記の押圧力によってセパレータ4がより変形しやすくなるが、上記の中間層8によってセパレータ4の変形を抑制できる。なお、正極11の活物質及び負極12の活物質のうち、より硬い活物質を含む電極と、基材層41との間に、中間層8が配置されることが好ましい。
【0072】
上記の実施形態では、活物質を含む活物質層が金属箔に直接接した正極について詳しく説明したが、本発明では、正極が、バインダと導電助剤とを含む導電層であって活物質層と金属箔との間に配置された導電層を有してもよい。
【0073】
上記実施形態では、活物質層が各電極の金属箔の両面側にそれぞれ配置された電極について説明したが、本発明の蓄電素子では、正極11又は負極12は、活物質層を金属箔の片面側にのみ備えてもよい。
【0074】
上記実施形態では、積層体22が巻回されてなる電極体2を備えた蓄電素子1について詳しく説明したが、本発明の蓄電素子は、巻回されない積層体22を備えてもよい。詳しくは、それぞれ矩形状に形成された正極、セパレータ、負極、及びセパレータが、この順序で複数回積み重ねられてなる電極体を蓄電素子が備えてもよい。
【0075】
上記実施形態では、蓄電素子1が充放電可能な非水電解質二次電池(例えばリチウムイオン二次電池)として用いられる場合について説明したが、蓄電素子1の種類や大きさ(容量)は任意である。また、上記実施形態では、蓄電素子1の一例として、リチウムイオン二次電池について説明したが、これに限定されるものではない。例えば、本発明は、種々の二次電池、その他、電気二重層キャパシタ等のキャパシタの蓄電素子にも適用可能である。
【0076】
蓄電素子1(例えば電池)は、図5に示すような蓄電装置100(蓄電素子が電池の場合は電池モジュール)に用いられてもよい。蓄電装置100は、上記の蓄電素子1を一以上備える。蓄電装置100は、通常、少なくとも二つの蓄電素子1と、蓄電素子1同士を電気的に接続するバスバ部材91と、を有する。この場合、本発明の技術が少なくとも一つの蓄電素子に適用されていればよい。
【実施例
【0077】
以下に示すようにして、非水電解質二次電池(リチウムイオン二次電池)を製造した。
【0078】
(実施例1)
(1)正極の作製
溶剤としてN-メチル-2-ピロリドン(NMP)と、導電助剤(アセチレンブラック)と、バインダ(PVdF)と、活物質(LiNi1/3Co1/3Mn1/3)の粒子とを、混合し、混練することで、正極用の合剤を調製した。導電助剤、バインダ、活物質の配合量は、それぞれ4.5質量%、4質量%、91.5質量%とした。調製した正極用の合剤を、金属箔に、乾燥後の活物質の塗布量(バインダや導電助剤を含まない量)が8.89mg/cmとなるようにそれぞれ塗布した。乾燥後、ロールプレスを行った。その後、真空乾燥して、水分等を除去した。プレス後の活物質層(1層分)の厚さは、30μmであった。活物質層の充填密度は、2.6g/cmであった。
【0079】
(2)負極の作製
活物質としては、メジアン径が3.3μmの粒子状の非晶質炭素(難黒鉛化炭素)を用いた。また、バインダとしては、PVdFを用いた。負極用の合剤は、溶剤としてNMPと、バインダと、活物質とを混合、混練することで調製した。バインダは、5質量%となるように配合し、活物質は、95質量%となるように配合した。調製した負極用の合剤を、乾燥後の塗布量(目付量でなくバインダを含まない量)が4.04mg/cmとなるように、銅箔(厚さ10μm)の両面にそれぞれ塗布した。乾燥後、ロールプレスを行い、真空乾燥して、水分等を除去した。活物質層(1層分)の厚さは、35μmであった。活物質層の充填密度は、1.2g/cmであった。
【0080】
(3)セパレータ(基材層)
第二粒子を40質量%含有する基材層を次のようにして作製した。
Mvが70万であるホモポリマーの高密度ポリエチレンを45質量部と、Mvが30万であるホモポリマーの高密度ポリエチレンを45質量部と、Mvが40万であるホモポリマーのポリプロピレン5質量部と、第二粒子としてシリカRX200 10質量部とを、タンブラーブレンダーを用いてドライブレンドした。
得られたポリオレフィン混合物99質量部に酸化防止剤としてテトラキス-[メチレン-(3’,5’-ジ-t-ブチル-4’-ヒドロキシフェニル)プロピオネート]メタンを1質量部添加し、再度タンブラーブレンダーを用いてドライブレンドすることにより、混合物を得た。
得られた混合物を、窒素雰囲気下で二軸押出機へフィーダーにより供給した。また、流動パラフィン(37.78℃における動粘度7.59×10-5/s)を押出機シリンダーにプランジャーポンプにより注入した。
押し出される全混合物中の、流動パラフィンの割合が65質量部、及びポリマー濃度が35質量部となるように、フィーダー及びポンプの運転条件を調整した。
次いで、それらを二軸押出機内で230℃に加熱しながら溶融混練し、得られた溶融混練物を、T-ダイを経て表面温度80℃に制御された冷却ロール上に押し出し、その押出物を冷却ロールに接触させ成形(cast)して冷却固化することにより、シート状成形物を得た。
このシートを同時二軸延伸機にて、温度112℃において倍率7×6.4倍に延伸した。その後、延伸物を塩化メチレンに浸漬して、流動パラフィンを抽出除去後、乾燥し、更にテンター延伸機を用いて温度130℃において横方向に2倍延伸した。
その後、この延伸シートを幅方向に約10%緩和して熱処理を行い、第二粒子を含有する厚さが22μmのポリオレフィン樹脂多孔膜をセパレータの基材層として作製した。
【0081】
(4)中間層
第一粒子を含有する中間層を次のようにして作製した。第一粒子としてのアルミナ粒子、バインダとしてのSBR(スチレン-ブタジエンゴム)、増粘剤としてのCMC(カルボシキメチルセルロース)、溶剤としてのイオン交換水に、界面活性剤を混合して、中間層用の組成物を調製した。斯かる組成物中のアルミナ粒子とバインダとの質量比率は、97:3とした。次に、グラビア法によって、斯かる組成物をセパレータ(基材層)上に塗布し、80℃で12時間、乾燥した。これにより、セパレータ(基材層)の一方の面上に中間層を形成した。
【0082】
(5)電解液の調製
電解液としては、以下の方法で調製したものを用いた。非水溶媒として、プロピレンカーボネート、ジメチルカーボネート、エチルメチルカーボネートを、いずれも1容量部ずつ混合した溶媒を用い、この非水溶媒に、塩濃度が1mol/LとなるようにLiPFを溶解させ、電解液を調製した。
【0083】
(6)ケース内への電極体の配置
上記の正極、上記の負極、上記の電解液、セパレータ、及びケースを用いて、一般的な方法によって電池を製造した。
まず、セパレータが上記の正極および負極の間に配されて積層されてなるシート状物を巻回した。このとき、正極活物質層とセパレータの基材層との間に中間層を配置した。次に、巻回されてなる電極体を、ケースとしてのアルミニウム製の角形電槽缶のケース本体内に配置した。続いて、正極及び負極を2つの外部端子それぞれに電気的に接続させた。さらに、ケース本体に蓋板を取り付けた。上記の電解液を、ケースの蓋板に形成された注液口からケース内に注入した。最後に、ケースの注液口を封止することにより、ケースを密閉した。
【0084】
・セパレータの基材層の平均孔径Cについて
いったん製造した電池から基材層を取り出し、基材層をジメチルカーボネートで洗浄し、その後、2時間以上真空乾燥を行う前処理を施した。そして、上述した方法によって平均孔径Cを求めた。平均孔径Cは、0.1μmであった。
【0085】
・活物質粒子のメジアン径A、第一粒子のメジアン径B、第二粒子のメジアン径D
いったん製造した電池から正極を取り出した。取り出した正極を50倍以上の質量のNMPに浸漬し、15分間の超音波分散によって前処理を施した。さらに、正極から金属箔を取り除き、正極活物質層をNMPに浸漬した状態で15分間の超音波分散処理を施した。その後、比重差によって活物質粒子と導電助剤とを分離し、分離された活物質粒子の測定試料を含む分散液を調製した。測定試料の粒径頻度分布の測定では、測定装置としてレーザー回折式粒度分布測定装置(島津製作所社製「SALD2300」)、測定制御ソフトとして専用アプリケーションソフトフェアDMS ver2を用いた。具体的な測定手法としては、散乱式の測定モードを採用し、上記分散液が循環する湿式セルを、2分間超音波環境下に置いた後に、レーザー光を照射し、測定試料から散乱光分布を得た。そして、散乱光分布を対数正規分布により近似し、その粒径頻度分布(横軸、σ)において最小を0.021μm、最大を2000μmに設定した範囲で測定を行った。活物質粒子の体積基準によるメジアン径Aは、4.0μmであった。
同様にして測定した第一粒子の体積基準によるメジアン径Bは、1μmであった。また、第二粒子の体積基準によるメジアン径Dは、0.05μmであった。なお、セパレータの基材層を加熱したデカリン(溶媒)に浸漬することによって、基材層のポリエチレンを溶解させ、基材層から第二粒子を取り出した。取り出した第二粒子のメジアン径Dを上記と同様にして測定した。
【0086】
・第一粒子、第二粒子の平均アスペクト比について
上述した方法(電子顕微鏡観察像における測定)によって平均アスペクト比を測定した結果、第一粒子の平均アスペクト比は、8であった。第一粒子の形状は、板状であった。一方、第二粒子の平均アスペクト比は、2であった。第二粒子の形状は、塊状であった。
【0087】
・正極活物質層の表面粗さについて
いったん製造した電池から正極を取り出した。正極を取り出す時に、正極活物質層からセパレータの基材層を引き剥がした。そして、上述した方法によって、正極活物質層の表面粗さを測定した。その結果、表面粗さは、400nmであった。
【0088】
(実施例2、比較例1~4)
正極の活物質粒子のメジアン径Aを変えること、中間層の第一粒子のメジアン径Bを変えること、基材層の第二粒子のメジアン径Dを変えること、セパレータの基材層の平均孔径Cを変えること、等によって、電池を表1に示す構成に変更した点以外は、実施例1と同様にしてリチウムイオン二次電池を製造した。
なお、実施例2において、上記と同様にして基材層の第二粒子の平均アスペクト比を測定したところ、第二粒子の平均アスペクト比は、8であった。実施例2において、第二粒子は、板状であった。
【0089】
【表1】
【0090】
<電池の抵抗値の測定>
充放電サイクル試験後の各電池について、以下の条件で内部抵抗を算出した。
25℃で2.5Vまで0.1CAの定電流充電した後に、4.2Vで定電圧充電して、定電流充電と定電圧充電とを合わせて3時間充電した。この充電によって各電池をSOC100%に設定した。SOC100%の充電状態で25℃で1時間保持した後に、0.1CA(I1)で10秒間放電したときの電圧(E1)、続いて0.5CA(I2)で10秒間放電したときの電圧(E2)をそれぞれ測定した。放電電流値I1、I2および測定した電圧E1、E2を用いて、25℃における直流抵抗値(Rx)を以下の式1により算出した。
Rx=|(E1-E2)/(I1-I2)|・・・(式1)
【0091】
<セパレータの圧縮応力の測定>
下記の条件で、セパレータの圧縮応力を測定した。
負極活物質層の厚さLnを40μmと設定した。この厚さの5%に相当する深さまで基材層を圧縮したとき応力を測定した。詳しくは、負荷除荷試験装置(島津製作所社製、型番:MCT-211)において、Φ50μmの円筒圧子(面積S)を用いて、負荷除荷試験を実施した。最小試験力5mNのときを負荷変位開始位置とした。この時に、深さLn/20(5%深さ)における試験力Faから、以下の式2にて応力Fbを算出した。
Fb=Fa/S/a[MPa]・・・(式2)
上記式1において、Faの単位はNであり、Sの単位はmであり、aは係数(a=1.61)である。セパレータの圧縮応力の結果を表1に示す。
【0092】
実施例の蓄電素子では、充電を繰り返したあとにセパレータが変形すること等によって抵抗が上昇することが抑制された。一方、比較例の蓄電素子では、セパレータが変形すること等によって抵抗がやや上昇した。
また、基材層の第二粒子が塊状であることにより、セパレータの基材層において、基材である樹脂に第二粒子が潜り込みやすく、また、絡まりやすくなったと考えられる。これにより、上記の「セパレータの圧縮応力」の値が、実施例2よりも実施例1の方でより大きくなったと考えられる。従って、実施例1の方で、セパレータの変形がより抑制されたと考えられる。
【符号の説明】
【0093】
1:蓄電素子(非水電解質二次電池)、
2:電極体、
3:ケース、 31:ケース本体、 32:蓋板、
4:セパレータ、 41:基材層、 d:第二粒子、
5:集電体、
6:絶縁カバー、
7:外部端子、 71:面、
8:中間層、 b:第一粒子、
11:正極、
111:正極の金属箔(集電箔)、 112:正極活物質層、 a:活物質粒子、
12:負極、
121:負極の金属箔(集電箔)、 122:負極活物質層、
91:バスバ部材、
100:蓄電装置。
図1
図2
図3
図4
図5