(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-02-09
(45)【発行日】2022-02-18
(54)【発明の名称】パターン形成方法及び処理液
(51)【国際特許分類】
G03F 7/40 20060101AFI20220210BHJP
G03F 7/32 20060101ALI20220210BHJP
G03F 7/039 20060101ALI20220210BHJP
G03F 7/038 20060101ALI20220210BHJP
G03F 7/20 20060101ALI20220210BHJP
【FI】
G03F7/40 502
G03F7/32
G03F7/039 601
G03F7/038 601
G03F7/20 521
(21)【出願番号】P 2019534525
(86)(22)【出願日】2018-07-31
(86)【国際出願番号】 JP2018028599
(87)【国際公開番号】W WO2019026885
(87)【国際公開日】2019-02-07
【審査請求日】2021-01-26
(31)【優先権主張番号】P 2017151354
(32)【優先日】2017-08-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000004178
【氏名又は名称】JSR株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000729
【氏名又は名称】特許業務法人 ユニアス国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】志水 誠
(72)【発明者】
【氏名】川尻 陵
(72)【発明者】
【氏名】一戸 大吾
【審査官】川村 大輔
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2017/057253(WO,A1)
【文献】特開2013-011833(JP,A)
【文献】特開2011-033841(JP,A)
【文献】特開2009-015158(JP,A)
【文献】特開2005-352133(JP,A)
【文献】特開2015-099831(JP,A)
【文献】米国特許第04535054(US,A)
【文献】特開2014-224895(JP,A)
【文献】特開平11-352701(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03F 7/004-7/42
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(1)フォトレジスト組成物を用いて基板上にレジスト膜を形成する工程、
(2)上記レジスト膜を露光する工程、
(3)上記露光されたレジスト膜を現像液で現像しパターンを形成する工程、及び
(4)上記パターンを処理液で処理する工程
を含むパターン形成方法であって、
上記フォトレジスト組成物が、
[A]酸の作用により解離する酸解離性基を含む構造単位(I)を有し、この酸解離性基の解離により上記現像液に対する溶解性が減少する重合体、及び
[B]感放射線性酸発生体
を含有し、上記処理液が酸性を示す処理液であ
り、
上記現像液が有機溶媒を含有し、
さらに、上記現像液が、塩基性化合物を含むパターン形成方法。
【請求項2】
上記塩基性化合物が含窒素化合物である請求項
1に記載のパターン形成方法。
【請求項3】
上記含窒素化合物が、下記式(1)で表される化合物である請求項
2に記載のパターン形成方法。
【化1】
(式(1)中、R
1及びR
2は、それぞれ独立して、水素原子、水酸基、ホルミル基、アルコキシ基、アルコキシカルボニル基、炭素数1~30の鎖状炭化水素基、炭素数3~30の脂環式炭化水素基、炭素数6~14の芳香族炭化水素基又はこれらの基を2種以上組み合わせてなる基である。R
3は、水素原子、水酸基、ホルミル基、アルコキシ基、アルコキシカルボニル基、炭素数1~30のn価の鎖状炭化水素基、炭素数3~30のn価の脂環式炭化水素基、炭素数6~14のn価の芳香族炭化水素基又はこれらの基を2種以上組み合わせてなるn価の基である。nは、1以上の整数である。但し、nが2以上のとき、複数のR
1及びR
2はそれぞれ同一でも異なっていてもよい。また、R
1~R
3のいずれか2つが結合して、それぞれが結合する窒素原子と共に環構造を形成してもよい。)
【請求項4】
上記酸性を示す処理液が、過酸化水素、炭酸、硝酸、硫酸、有機酸及び有機酸塩からなる群より選択される少なくとも1種を含む請求項1から請求項
3のいずれか一項に記載のパターン形成方法。
【請求項5】
上記酸性を示す処理液が、上記有機酸又は有機酸塩としてシュウ酸、クエン酸、コハク酸、エチレンジアミン四酢酸、酒石酸、サリチル酸、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸、吉草酸、カプロン酸、カプリル酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、アラキン酸、安息香酸、アクリル酸、アジピン酸、マロン酸、リンゴ酸、グリコール酸、フタル酸、テレフタル酸、ピメリン酸及びフマル酸からなる群より選ばれた1種又は2種以上の有機酸又はその塩を含む請求項
4に記載のパターン形成方法。
【請求項6】
上記重合体の構造単位(I)が、下記式(2)で表される基を有する構造単位である請求項1から請求項
5のいずれか一項に記載のパターン形成方法。
【化2】
(式(2)中、R
pは、酸解離性基である。)
【請求項7】
上記構造単位(I)が、下記式(3)で表される構造単位である請求項1から請求項
6のいずれか一項に記載のパターン形成方法。
【化3】
(式(3)中、R
4は、水素原子、メチル基又はトリフルオロメチル基である。R
pは、上記式(2)と同義である。)
【請求項8】
上記R
pで表される酸解離性基が、下記式(4)で表される基である請求項1から請求項
7のいずれか一項に記載のパターン形成方法。
【化4】
(式(4)中、R
p1~R
p3は、炭素数1~4のアルキル基又は炭素数4~20の脂環式炭化水素基である。但し、上記アルキル基及び脂環式炭化水素基が有する水素原子の一部又は全部は置換されていてもよい。また、R
p2及びR
p3は、互いに結合して、それぞれが結合している炭素原子と共に炭素数4~20の2価の脂環式炭化水素基を形成してもよい。)
【請求項9】
上記現像液が含有する有機溶媒が、エーテル系溶媒、ケトン系溶媒及びエステル系溶媒からなる群より選択される少なくとも1種である請求項
1に記載のパターン形成方法。
【請求項10】
有機溶媒及び塩基性化合物を含有する現像液でレジスト膜の現像を行う工程、及び
上記現像工程により形成されたパターンの処理を行う工程を含むパターンの形成方法における上記処理に用いられ、酸性を示す処理液。
【請求項11】
(1)フォトレジスト組成物を用いて基板上にレジスト膜を形成する工程、
(2)上記レジスト膜を露光する工程、
(3)上記露光されたレジスト膜を現像液で現像しパターンを形成する工程、及び
(4)上記パターンを処理液で処理する工程
を含むパターン形成方法であって、
上記フォトレジスト組成物が、
[A]酸の作用により解離する酸解離性基を含む構造単位(I)を有し、この酸解離性基の解離により上記現像液に対する溶解性が減少する重合体、及び
[B]感放射線性酸発生体
を含有し、上記処理液が酸性を示す処理液であり、
上記酸性を示す処理液が、過酸化水素、炭酸、硝酸、硫酸、有機酸及び有機酸塩からなる群より選択される少なくとも1種を含むパターン形成方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、パターン形成方法及び処理液に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体デバイス、液晶デバイス等の各種電子デバイス構造の微細化に伴って、リソグラフィー工程におけるレジストパターンの微細化が要求されている。現在、例えばArFエキシマレーザーを用いて線幅90nm程度の微細なレジストパターンを形成することができるが、今後はさらに微細なレジストパターン形成が要求される。
【0003】
上記要求に対し、既存の装置を用い工程を増やすことなく、従来の化学増幅型フォトレジスト組成物の解像力を高める技術として、現像液にアルカリ水溶液よりも極性の低い有機溶媒を用いる技術が知られている(特許文献1,特開2000-199953号公報参照)。すなわち、現像液にアルカリ水溶液を用いてレジストパターンを形成する際には、光学コントラストが乏しいために微細なレジストパターンを形成することが困難であるのに対し、この技術により有機溶媒を用いた場合には光学コントラストを高くすることができるために、微細なレジストパターンを形成することが可能となる。
【0004】
しかし、有機溶媒を現像液に用いると、パターン形成工程においてレジスト膜の膜減りが起こり、それによりエッチング耐性が低下し、所望のパターンが得られないという不都合がある。また、上記技術によると、得られるパターンのライン幅のラフネス(Line Width Roughness:LWR)が大きく、所望のパターンが得られないという不都合もある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2000-199953号公報
【文献】特開2013-011833号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献2には、有機溶媒現像液を用いる際の膜減りの抑制、LWRの低減を目的として、有機溶媒現像液に含窒素化合物を添加することが開示されている。この技術によれば感度、焦点深度(Depth Of Focus:DOF)等の性能を良好に保ちつつ、露光余裕度(Exposure Latitude:EL)とLWRを改善できる。しかし、レジスト組成物や現像液、露光条件の組み合わせによっては現像欠陥が増大するケースがある。本発明はこのような事情に基づいてなされたものである。本発明の目的は、レジスト膜のパターン形成工程における膜減りの抑制、良好なLWR、感度、DOFといった諸性能に優れ、かつ現像欠陥の少ないレジストパターンを形成できるパターン形成方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するためになされた発明は、
(1)フォトレジスト組成物を用いて基板上にレジスト膜を形成する工程、
(2)上記レジスト膜を露光する工程、
(3)上記露光されたレジスト膜を現像液で現像しパターンを形成する工程、及び
(4)上記パターンを処理液で処理する工程
を含むパターン形成方法であって、
上記フォトレジスト組成物が、
[A]酸の作用により解離する酸解離性基を含む構造単位(I)を有し、この酸解離性基の解離により上記現像液に対する溶解性が減少する重合体、及び
[B]感放射線性酸発生体
を含有し、上記処理液が酸性を示す処理液であるパターン形成方法である。
好適な実施形態において、上記現像液が有機溶媒を含有し、さらに現像液が、塩基性化合物を含むパターン形成方法である。
【0008】
本発明のパターン形成方法によると、有機溶媒を含有するネガ型現像液に含窒素化合物を含み、酸性を示す処理液で処理することで、露光部の膜減りの抑制、現像工程における未露光部と露光部との溶解コントラストの向上、LWRの低減、感度、DOF等を指標としたリソグラフィー特性の向上といった効果を享受しつつ、現像欠陥が抑制されたパターンを形成することができる。なお、ここで「酸解離性基」とは、カルボキシ基、水酸基、アミノ基、スルホ基等の極性基の水素原子を置換する基であって、酸の作用により解離する基をいう。
【0009】
上記塩基性化合物としては含窒素化合物が好ましく、下記式(1)で表される化合物であることがより好ましい。
【化1】
(式(1)中、R
1及びR
2は、それぞれ独立して、水素原子、水酸基、ホルミル基、アルコキシ基、アルコキシカルボニル基、炭素数1~30の鎖状炭化水素基、炭素数3~30の脂環式炭化水素基、炭素数6~14の芳香族炭化水素基又はこれらの基を2種以上組み合わせてなる基である。R
3は、水素原子、水酸基、ホルミル基、アルコキシ基、アルコキシカルボニル基、炭素数1~30のn価の鎖状炭化水素基、炭素数3~30のn価の脂環式炭化水素基、炭素数6~14のn価の芳香族炭化水素基又はこれらの基を2種以上を組み合わせてなるn価の基である。nは、1以上の整数である。但し、nが2以上のとき、複数のR
1及びR
2はそれぞれ同一でも異なっていてもよい。また、R
1~R
3のいずれか2つが結合して、それぞれが結合する窒素原子と共に環構造を形成してもよい。)
【0010】
含窒素化合物が上記特定構造を有することで、露光部の膜減りをより抑制することができる。また、当該パターン形成方法により形成されるパターンは、LWRが低減され、感度、DOF等を十分満足し、かつ現像欠陥が少ないものとなる。
【0011】
好適な実施形態において、上記酸性の処理液が、過酸化水素、炭酸、硝酸、硫酸、有機酸及び有機酸塩からなる群より選択される少なくとも1種を含み、さらに上記有機酸又は有機酸塩が、シュウ酸、クエン酸、コハク酸、エチレンジアミン四酢酸、酒石酸、サリチル酸、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸、吉草酸、カプロン酸、カプリル酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、アラキン酸、安息香酸、アクリル酸、アジピン酸、マロン酸、リンゴ酸、グリコール酸、フタル酸、テレフタル酸、ピメリン酸及びフマル酸からなる群より選ばれた1種又は2種以上の有機酸又はその塩である。このような処理液によって処理することで、パターン欠陥等が少ないパターンを形成することができる。
【0012】
構造単位(I)は下記式(2)で表される基を有する構造単位であることが好ましい。
【化2】
(式(2)中、R
pは、酸解離性基である。)
【0013】
構造単位(I)が上記式(2)で表される基を有することで、当該パターン形成方法に用いられるレジスト膜の露光部において、酸の作用により上記酸解離性基が解離し極性の高いカルボキシ基が発生する。このカルボキシ基と現像液中の含窒素化合物とが相互作用することで、現像液に対する溶解性をさらに減少させることができる。そのため、当該パターン形成方法によると、露光部の膜減りをさらに抑制することができる。また、当該パターン形成方法により形成されるパターンは、LWRが低減され、感度、DOF等を十分満足し、かつ現像欠陥が少ないものとなる。
【0014】
構造単位(I)は、下記式(3)で表される構造単位であることが好ましい。
【化3】
(式(3)中、R
4は、水素原子、メチル基又はトリフルオロメチル基である。R
pは、上記式(2)と同義である。)
【0015】
構造単位(I)が上記特定構造であると、露光部において発生する酸の作用により上記酸解離性基が解離しカルボキシ基が発生する。このカルボキシ基と現像液中の含窒素化合物とが相互作用することで、現像液に対する溶解性をさらに減少させることができるため、当該パターン形成方法によると、露光部の膜減りをさらに抑制することができる。また、当該パターン形成方法により形成されるパターンは、LWRが低減され、感度、DOF等を十分満足し、かつ現像欠陥が少ないものとなる。
【0016】
上記R
pで表される酸解離性基は、下記式(4)で表される基であることが好ましい。
【化4】
(式(4)中、R
p1~R
p3は、炭素数1~4のアルキル基又は炭素数4~20の脂環式炭化水素基である。但し、上記アルキル基及び脂環式炭化水素基が有する水素原子の一部又は全部は置換されていてもよい。また、R
p2及びR
p3は、互いに結合して、それぞれが結合している炭素原子と共に炭素数4~20の2価の脂環式炭化水素基を形成してもよい。)
【0017】
上記式(2)及び式(3)においてRpで表される酸解離性基を上記式(4)で表される特定構造の基とすることで、上記酸解離性基は、露光部において発生する酸の作用により解離し易くなる。その結果、当該パターン形成方法によると、レジスト膜における露光部の現像液に対する溶解性をさらに減少させることができ、膜減りをさらに抑制することができる。
【0018】
上記現像液が含有する有機溶媒は、エーテル系溶媒、ケトン系溶媒及びエステル系溶媒からなる群より選択される少なくとも1種であることが好ましい。上記現像液が含有する有機溶媒をエーテル系溶媒、ケトン系溶媒及びエステル系溶媒からなる群より選択される少なくとも1種の有機溶媒とすることで、露光部の現像液に対する溶解性をさらに減少させることができ、膜減りをさらに抑制することができる。
【0019】
本発明には、有機溶媒及び塩基性化合物を含有する現像液でレジスト膜の現像を行う工程、及び
上記現像工程により形成されたパターンの処理を行う工程を含むパターンの形成方法における上記処理に用いられ、酸性を示す処理液も含まれる。
【0020】
上記処理液により、露光部の膜減りの抑制、現像工程における未露光部と露光部との溶解コントラストの向上、LWRの低減、感度、DOF等を指標としたリソグラフィー特性の向上といった効果に加え、現像欠陥が抑制されたパターンを形成することができる。
【発明の効果】
【0021】
本発明のレジストパターン形成方法によれば、レジストパターン形成工程における膜減りを抑制することができると共に、LWRが低減され、感度、DOF等を十分満足し、かつ現像欠陥が少ないレジストパターンを形成することができる。
【発明を実施するための形態】
【0022】
<パターン形成方法>
本発明のパターン形成方法は、
(1)フォトレジスト組成物を用いて基板上にレジスト膜を形成する工程、(2)上記レジスト膜を露光する工程、(3)上記露光されたレジスト膜を現像液で現像しパターンを形成する工程、及び(4)上記パターンを処理液で処理する工程を含むパターン形成方法であって、
上記フォトレジスト組成物が、
[A]酸の作用により解離する酸解離性基を含む構造単位(I)を有し、この酸解離性基の解離により上記現像液に対する溶解性が減少する重合体、及び[B]感放射線性酸発生体を含有し、上記処理液が酸性を示す処理液であることを特徴とするパターン形成方法である。以下、各工程、フォトレジスト組成物及び現像液について詳述する。
【0023】
[(1)工程]
本工程では、本発明に用いられるフォトレジスト組成物を基板上に塗布し、レジスト膜を形成する。基板としては、例えばシリコンウェハ、アルミニウムで被覆されたウェハ等の従来公知の基板を使用できる。また、例えば特公平6-12452号公報や特開昭59-93448号公報等に開示されている有機系又は無機系の下層反射防止膜を基板上に形成してもよい。
【0024】
塗布方法としては、例えば回転塗布(スピンコーティング)、流延塗布、ロール塗布等が挙げられる。なお、形成されるレジスト膜の膜厚としては、通常0.01μm~1μmであり、0.01μm~0.5μmが好ましい。
【0025】
上記フォトレジスト組成物を塗布した後、必要に応じてプレベーク(PB)によって塗膜中の溶媒を揮発させてもよい。PBの加熱条件としては、上記フォトレジスト組成物の配合組成によって適宜選択されるが、通常30℃~200℃程度であり、50℃~150℃が好ましい。
【0026】
また、環境雰囲気中に含まれる塩基性不純物等の影響を防止するために、例えば特開平5-188598号公報等に開示されている保護膜をレジスト層上に設けることもできる。さらに、レジスト層からの酸発生剤等の流出を防止するために、例えば特開2005-352384号公報等に開示されている液浸用保護膜をレジスト層上に設けることもできる。なお、これらの技術は併用できる。
【0027】
[(2)工程]
本工程では、(1)工程で形成されたレジスト膜の所望の領域に特定パターンのマスク、及び必要に応じて液浸液を介して縮小投影することにより露光を行う。例えば、所望の領域にアイソラインパターンを有するマスクを介して縮小投影露光を行うことにより、アイソスペースパターンを形成できる。同様にして、ドットパターンを有するマスクを介して縮小投影露光を行うことによりホールパターンを形成することができる。また、露光は所望のパターンとマスクパターンによって2回以上行ってもよい。2回以上露光を行う場合、露光は連続して行うことが好ましい。複数回露光する場合、例えば所望の領域にラインアンドスペースパターンマスクを介して第1の縮小投影露光を行い、続けて第1の露光を行った露光部に対してラインが交差するように第2の縮小投影露光を行う。第1の露光部と第2の露光部とは直交することが好ましい。直交することにより、露光部で囲まれた未露光部においてコンタクトホールパターンを形成することができる。なお、露光の際に用いられる液浸液としては水やフッ素系不活性液体等が挙げられる。液浸液は、露光波長に対して透明であり、かつ膜上に投影される光学像の歪みを最小限に留めるよう屈折率の温度係数ができる限り小さい液体が好ましいが、特に露光光源がArFエキシマレーザー光(波長193nm)である場合、上述の観点に加えて、入手の容易さ、取り扱いのし易さといった点から水を用いるのが好ましい。
【0028】
露光に使用される放射線としては、[B]酸発生体の種類に応じて適宜選択されるが、例えば、紫外線、遠紫外線、X線、荷電粒子線等が挙げられる。これらのうち、ArFエキシマレーザー(波長193nm)やKrFエキシマレーザー(波長248nm)に代表される遠紫外線が好ましく、ArFエキシマレーザー、EUV又は電子線を用いたリソグラフィー技術といった32nm以下の超微細領域のパターン形成も用いることができる。露光量等の露光条件は、上記フォトレジスト組成物の配合組成や添加剤の種類等に応じて適宜選択される。当該レジストパターン形成方法においては、上述のように露光工程を複数回有してもよく、これらの複数回の露光においては、同じ光源を用いても異なる光源を用いても良い。但し、1回目の露光にはArFエキシマレーザー光を用いることが好ましい。
【0029】
また、露光後にポストエクスポージャーベーク(PEB)を行なうことが好ましい。PEBを行なうことにより、上記フォトレジスト組成物中の酸解離性基の解離反応を円滑に進行できる。PEBの加熱条件としては、通常30℃~200℃であり、50℃~170℃が好ましい。
【0030】
[(3)工程]
本工程は、(2)工程において露光されたレジスト膜を現像液で現像しパターンを形成する工程である。当該現像液は、アルカリ水溶液からなる現像液を用いることができ、有機溶媒を含有するネガ型現像液も用いることができる。さらに含窒素化合物を含む。当該現像液が有機溶媒に加えて含窒素化合物を含むことで、レジスト膜における露光部の現像液不溶性が向上し、膜減りを抑制することが可能となる。ここで、ネガ型現像液とは、低露光部及び未露光部を選択的に溶解・除去させる現像液のことである。当該現像液中の有機溶媒の含有量としては、80質量%以上が好ましく、90質量%以上がより好ましく、100質量%がさらに好ましい。現像液中の有機溶媒の含有量を上記特定の範囲とすることにより、露光部、未露光部間の溶解コントラストを向上させることができ、その結果、リソグラフィー特性に優れたパターンを形成することができる。なお、有機溶媒以外の成分としては、例えば、水、シリコンオイル等が挙げられる。
【0031】
上記有機溶媒としては、例えばアルコール系溶媒、エーテル系溶媒、ケトン系有機溶媒、アミド系溶媒、エステル系有機溶媒、炭化水素系溶媒等が挙げられる。
【0032】
上記アルコール系溶媒としては、例えば
4-メチル-2-ペンタノール、n-ヘキサノール等の炭素数1~18の脂肪族モノアルコール系溶媒;
シクロヘキサノール等の炭素数3~18の脂環式モノアルコール系溶媒;
1,2-プロピレングリコール等の炭素数2~18の多価アルコール系溶媒;
プロピレングリコールモノメチルエーテル等の炭素数3~19の多価アルコール部分エーテル系溶媒などが挙げられる。
【0033】
上記エーテル系溶媒としては、例えば
ジエチルエーテル、ジプロピルエーテル、ジブチルエーテル、ジペンチルエーテル、ジイソアミルエーテル、ジヘキシルエーテル、ジヘプチルエーテル等のジアルキルエーテル系溶媒;
テトラヒドロフラン、テトラヒドロピラン等の環状エーテル系溶媒;
ジフェニルエーテル、アニソール等の芳香環含有エーテル系溶媒などが挙げられる。
【0034】
上記ケトン系溶媒としては、例えば
アセトン、メチルエチルケトン、メチル-n-プロピルケトン、メチル-n-ブチルケトン、ジエチルケトン、メチル-iso-ブチルケトン、2-ヘプタノン、エチル-n-ブチルケトン、メチル-n-ヘキシルケトン、ジ-iso-ブチルケトン、トリメチルノナノン等の鎖状ケトン系溶媒:
シクロペンタノン、シクロヘキサノン、シクロヘプタノン、シクロオクタノン、メチルシクロヘキサノン等の環状ケトン系溶媒:
2,4-ペンタンジオン、アセトニルアセトン、アセトフェノン等が挙げられる。
【0035】
上記アミド系溶媒としては、例えばN,N’-ジメチルイミダゾリジノン、N-メチルホルムアミド、N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジエチルホルムアミド、アセトアミド、N-メチルアセトアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、N-メチルプロピオンアミド、N-メチルピロリドン等が挙げられる。
【0036】
上記エステル系溶媒としては、例えば
酢酸n-ブチル、乳酸エチル等のモノカルボン酸エステル系溶媒;
酢酸プロピレングリコール等の多価アルコールカルボキシレート系溶媒;
酢酸プロピレングリコールモノメチルエーテル等の多価アルコール部分エーテルカルボキシレート系溶媒;
シュウ酸ジエチル等の多価カルボン酸ジエステル系溶媒;
ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート等のカーボネート系溶媒などが挙げられる。
【0037】
上記炭化水素系溶媒としては、例えば
n-ペンタン、n-ヘキサン等の炭素数5~12の脂肪族炭化水素系溶媒;
トルエン、キシレン等の炭素数6~16の芳香族炭化水素系溶媒等が挙げられる。
【0038】
これらのうち、エーテル系溶媒、ケトン系溶媒、エステル系溶媒が好ましく、酢酸n-ブチル、酢酸イソプロピル、酢酸アミル、アニソール、メチルエチルケトン、メチル-n-ブチルケトン、メチル-n-アミルケトンがより好ましい。これらの有機溶媒は、単独で使用してもよく2種以上を併用してもよい。
【0039】
上記現像液が含む塩基化合物としては、オニウム塩、オニウム塩を有する高分子、含窒素化合物、窒素原子を3つ以上含む含窒素化合物、塩基性ポリマー、及び、リン系化合物からなる群から選択される化合物である。
オニウム塩とは、有機物成分とルイス塩基が配位結合をつくることによって生成された塩を指す。使用されるオニウム塩の種類は特に制限されず、例えば、以下に示されるカチオン構造を有するアンモニウム塩、ホスホニウム塩、オキソニウム塩、スルホニウム塩、セレノニウム塩、カルボニウム塩、ジアゾニウム塩、ヨードニウム塩等が挙げられる。
また、オニウム塩構造中のカチオンとしては、複素芳香環のヘテロ原子上に正電荷を有するものも含む。
オニウム塩を有するポリマーとは、オニウム塩構造を側鎖または主鎖に有するポリマーである。
塩基性ポリマーとは、プロトン受容性基を有するポリマーである。塩基性ポリマーにおいては、通常、塩基性部位を有する繰り返し単位が含まれるが、塩基性部位を有さない他の繰り返し単位を有していてもよい。また、塩基性部位を有する繰り返し単位としては、1種のみならず、複数種含まれていてもよい。
上記化合物は、特開2014-219487号公報記載の化合物を用いることができる。
【0040】
上記現像液が含む上記含窒素化合物は、酸の作用によりレジスト膜中に発生する極性基と相互作用し、有機溶媒に対する露光部の不溶性をさらに向上させることができる。ここで、上記含窒素化合物と極性基との相互作用とは、この含窒素化合物と極性基が反応して塩を形成する作用、イオン性結合を形成する作用等のことである。上記含窒素化合物としては、上記式(1)で表される化合物が好ましい。
【0041】
上記式(1)中、R1及びR2は、それぞれ独立して、水素原子、水酸基、ホルミル基、アルコキシ基、アルコキシカルボニル基、炭素数1~30の鎖状炭化水素基、炭素数3~30の脂環式炭化水素基、炭素数6~14の芳香族炭化水素基又はこれらの基を2種以上組み合わせてなる基である。R3は、水素原子、水酸基、ホルミル基、アルコキシ基、アルコキシカルボニル基、炭素数1~30のn価の鎖状炭化水素基、炭素数3~30のn価の脂環式炭化水素基、炭素数6~14のn価の芳香族炭化水素基又はこれらの基を2種以上組み合わせてなるn価の基である。nは、1以上の整数である。但し、nが2以上のとき、複数のR1及びR2はそれぞれ同一でも異なっていてもよい。またR1~R3のいずれか2つが結合して、それぞれが結合する窒素原子と共に環構造を形成してもよい。
【0042】
上記R1及びR2で表される炭素数1~30の鎖状炭化水素基としては、例えばメチル基、エチル基、n-プロピル基、i-プロピル基、n-ブチル基、2-メチルプロピル基、1-メチルプロピル基、t-ブチル基等が挙げられる。
【0043】
上記R1及びR2で表される炭素数3~30の脂環状炭化水素基としては、例えばシクロプロピル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、アダマンチル基、ノルボニル基等が挙げられる。
【0044】
上記R1及びR2で表される炭素数6~14の芳香族炭化水素基としては、例えばフェニル基、トリル基、ナフチル基等が挙げられる。
【0045】
上記R1及びR2で表されるこれらの基を2種以上組み合わせてなる基としては、例えばベンジル基、フェネチル基、ナフチルメチル基、ナフチルエチル基等の炭素数6~12のアラルキル基等が挙げられる。
【0046】
上記R3で表される炭素数1~30のn価の鎖状炭化水素基としては、例えば上記R1及びR2で表される炭素数1~30の鎖状炭化水素基として例示した基と同様の基から水素原子を(n-1)個除いた基等が挙げられる。
【0047】
上記R3で表される炭素数3~30の脂環状炭化水素基としては、例えば上記R1及びR2で表される炭素数3~30の環状炭化水素基として例示した基と同様の基から水素原子を(n-1)個除いた基等が挙げられる。
【0048】
上記R3で表される炭素数6~14の芳香族炭化水素基としては、例えば上記R1及びR2で表される炭素数6~14の芳香族炭化水素基として例示した基と同様の基から水素原子を(n-1)個除いた基等が挙げられる。
【0049】
上記R3で表されるこれらの基を2種以上組み合わせてなる基としては、例えば上記R1及びR2で表されるこれらの基を2種以上組み合わせてなる基として例示した基と同様の基から水素原子を(n-1)個除いた基等が挙げられる。
【0050】
上記R1~R3で表される基は置換されていてもよい。具体的な置換基としては、例えばメチル基、エチル基、プロビル基、n-ブチル基、t-ブチル基、ヒドロキシル基、カルボキシ基、ハロゲン原子、アルコキシ基等が挙げられる。上記ハロゲン原子としては、例えばフッ素原子、塩素原子、臭素原子等が挙げられる。また、アルコキシ基としては、例えばメトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基等が挙げられる。
【0051】
上記式(1)で表される化合物としては、例えば(シクロ)アルキルアミン化合物、含窒素複素環化合物、アミド基含有化合物、ウレア化合物等が挙げられる。
【0052】
(シクロ)アルキルアミン化合物としては、例えば窒素原子を1つ有する化合物、窒素原子を2つ有する化合物、窒素原子を3つ以上有する化合物等が挙げられる。
【0053】
窒素原子を1つ有する(シクロ)アルキルアミン化合物としては、例えばn-ヘキシルアミン、n-ヘプチルアミン、n-オクチルアミン、n-ノニルアミン、1-アミノデカン、シクロヘキシルアミン等のモノ(シクロ)アルキルアミン類;
ジ-n-ブチルアミン、ジ-n-ペンチルアミン、ジ-n-ヘキシルアミン、ジ-n-ヘプチルアミン、ジ-n-オクチルアミン、ジ-n-ノニルアミン、ジ-n-デシルアミン、シクロヘキシルメチルアミン、ジシクロヘキシルアミン等のジ(シクロ)アルキルアミン類;
トリエチルアミン、トリ-n-プロピルアミン、トリ-n-ブチルアミン、トリ-n-ペンチルアミン、トリ-n-ヘキシルアミン、トリ-n-ヘプチルアミン、トリ-n-オクチルアミン、トリ-n-ノニルアミン、トリ-n-デシルアミン、シクロヘキシルジメチルアミン、メチルジシクロヘキシルアミン、トリシクロヘキシルアミン等のトリ(シクロ)アルキルアミン類;
トリエタノールアミン等の置換アルキルアミン;
アニリン、N-メチルアニリン、N,N-ジメチルアニリン、2-メチルアニリン、3-メチルアニリン、4-メチルアニリン、N,N-ジブチルアニリン、4-ニトロアニリン、ジフェニルアミン、トリフェニルアミン、ナフチルアミン、2,4,6-トリ-tert-ブチル-N-メチルアニリン、N-フェニルジエタノールアミン、2,6-ジイソプロピルアニリン、2-(4-アミノフェニル)-2-(3-ヒドロキシフェニル)プロパン、2-(4-アミノフェニル)-2-(4-ヒドロキシフェニル)プロパン等の芳香族アミン類が挙げられる。
【0054】
窒素原子を2つ有する(シクロ)アルキルアミン化合物としては、例えばエチレンジアミン、テトラメチルエチレンジアミン、テトラメチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、4,4’-ジアミノジフェニルメタン、4,4’-ジアミノジフェニルエーテル、4,4’-ジアミノベンゾフェノン、4,4’-ジアミノジフェニルアミン、2,2-ビス(4-アミノフェニル)プロパン、2-(3-アミノフェニル)-2-(4-アミノフェニル)プロパン、1,4-ビス〔1-(4-アミノフェニル)-1-メチルエチル〕ベンゼン、1,3-ビス〔1-(4-アミノフェニル)-1-メチルエチル〕ベンゼン、ビス(2-ジメチルアミノエチル)エーテル、ビス(2-ジエチルアミノエチル)エーテル、1-(2-ヒドロキシエチル)-2-イミダゾリジノン、2-キノキサリノール、N,N,N’,N’-テトラキス(2-ヒドロキシプロピル)エチレンジアミン等が挙げられる。
【0055】
窒素原子を3つ以上有する(シクロ)アルキルアミン化合物としては、例えばポリエチレンイミン、ポリアリルアミン、2-ジメチルアミノエチルアクリルアミド等の重合体等が挙げられる。
【0056】
含窒素複素環化合物としては、例えば含窒素芳香族複素環化合物、含窒素脂肪族複素環化合物等が挙げられる。
【0057】
含窒素芳香族複素環化合物としては、例えば
イミダゾール、4-メチルイミダゾール、4-メチル-2-フェニルイミダゾール、ベンズイミダゾール、2-フェニルベンズイミダゾール、1-ベンジル-2-メチルイミダゾール、1-ベンジル-2-メチル-1H-イミダゾール等のイミダゾール類;
ピリジン、2-メチルピリジン、4-メチルピリジン、2-エチルピリジン、4-エチルピリジン、2-フェニルピリジン、4-フェニルピリジン、2-メチル-4-フェニルピリジン、ニコチン、ニコチン酸、ニコチン酸アミド、キノリン、4-ヒドロキシキノリン、8-オキシキノリン、アクリジン、2,2’:6’,2’’-ターピリジン等のピリジン類が挙げられる。
【0058】
含窒素脂肪族複素環化合物としては、例えば
ピペラジン、1-(2-ヒドロキシエチル)ピペラジン等のピペラジン類;
ピラジン、ピラゾール、ピリダジン、キノザリン、プリン、ピロリジン、プロリン、ピペリジン、ピペリジンエタノール、3-ピペリジノ-1,2-プロパンジオール、モルホリン、4-メチルモルホリン、1-(4-モルホリニル)エタノール、4-アセチルモルホリン、3-(N-モルホリノ)-1,2-プロパンジオール、1,4-ジメチルピペラジン、1,4-ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン等が挙げられる。
【0059】
アミド基含有化合物としては、例えば
N-t-ブトキシカルボニルジ-n-オクチルアミン、N-t-ブトキシカルボニルジ-n-ノニルアミン、N-t-ブトキシカルボニルジ-n-デシルアミン、N-t-ブトキシカルボニルジシクロヘキシルアミン、N-t-ブトキシカルボニル-1-アダマンチルアミン、N-t-ブトキシカルボニル-2-アダマンチルアミン、N-t-ブトキシカルボニル-N-メチル-1-アダマンチルアミン、(S)-(-)-1-(t-ブトキシカルボニル)-2-ピロリジンメタノール、(R)-(+)-1-(t-ブトキシカルボニル)-2-ピロリジンメタノール、N-t-ブトキシカルボニル-4-ヒドロキシピペリジン、N-t-ブトキシカルボニルピロリジン、N-t-ブトキシカルボニルピペラジン、N,N-ジ-t-ブトキシカルボニル-1-アダマンチルアミン、N,N-ジ-t-ブトキシカルボニル-N-メチル-1-アダマンチルアミン、N-t-ブトキシカルボニル-4,4’-ジアミノジフェニルメタン、N,N’-ジ-t-ブトキシカルボニルヘキサメチレンジアミン、N,N,N’,N’-テトラ-t-ブトキシカルボニルヘキサメチレンジアミン、N,N’-ジ-t-ブトキシカルボニル-1,7-ジアミノヘプタン、N,N’-ジ-t-ブトキシカルボニル-1,8-ジアミノオクタン、N,N’-ジ-t-ブトキシカルボニル-1,9-ジアミノノナン、N,N’-ジ-t-ブトキシカルボニル-1,10-ジアミノデカン、N,N’-ジ-t-ブトキシカルボニル-1,12-ジアミノドデカン、N,N’-ジ-t-ブトキシカルボニル-4,4’-ジアミノジフェニルメタン、N-t-ブトキシカルボニルベンズイミダゾール、N-t-ブトキシカルボニル-2-メチルベンズイミダゾール、N-t-ブトキシカルボニル-2-フェニルベンズイミダゾール等のN-t-ブトキシカルボニル基含有アミノ化合物;
ホルムアミド、N-メチルホルムアミド、N,N-ジメチルホルムアミド、アセトアミド、N-メチルアセトアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、プロピオンアミド、ベンズアミド、ピロリドン、N-メチルピロリドン、N-アセチル-1-アダマンチルアミン、イソシアヌル酸トリス(2-ヒドロキシエチル)等が挙げられる。
【0060】
ウレア化合物としては、例えば尿素、メチルウレア、1,1-ジメチルウレア、1,3-ジメチルウレア、1,1,3,3-テトラメチルウレア、1,3-ジフェニルウレア、トリ-n-ブチルチオウレア等が挙げられる。
【0061】
これらのうち、(シクロ)アルキルアミン化合物、含窒素脂肪族複素環化合物が好ましく、1-アミノデカン、ジ-n-オクチルアミン、トリ-n-オクチルアミン、テトラメチルエチレンジアミン、N,N-ジブチルアニリン、プロリンがより好ましい。
【0062】
現像液には、必要に応じて界面活性剤を適当量添加することができる。界面活性剤としては例えば、イオン性や非イオン性のフッ素系及び/又はシリコン系界面活性剤等を用いることができる。
【0063】
現像方法としては、例えば現像液が満たされた槽中に基板を一定時間浸漬する方法(ディップ法)、基板表面に現像液を表面張力によって盛り上げて一定時間静止することで現像する方法(パドル法)、基板表面に現像液を噴霧する方法(スプレー法)、一定速度で回転している基板上に一定速度で現像液吐出ノズルをスキャンしながら現像液を吐出しつづける方法(ダイナミックディスペンス法)等が挙げられる。
【0064】
[(4)工程]
当該パターン形成方法では、(3)工程の後に、(4)上記パターンを、酸性を示す処理液により処理する処理工程を含む。上記処理工程における酸性を示す処理液としては、過酸化水素、炭酸、硝酸、硫酸、有機酸又は有機酸塩からなる群より選択される少なくとも1種を含むことが好ましい。さらに上記有機酸又は有機酸塩が、シュウ酸、クエン酸、コハク酸、エチレンジアミン四酢酸、酒石酸、サリチル酸、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸、吉草酸、カプロン酸、カプリル酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、アラキン酸、安息香酸、アクリル酸、アジピン酸、マロン酸、リンゴ酸、グリコール酸、フタル酸、テレフタル酸、ピメリン酸及びフマル酸からなる群より選ばれた1種又は2種以上の有機酸又はその塩であることが好ましい。このような処理液によって処理することで、パターン欠陥等が少ないパターンを形成することができる。
酸性を示す処理液のpHとしては、3以上7未満が好ましく、4以上6.5未満がより好ましい。pHが3以下であると、配管等の酸腐食等を誘発するためである。
また、酸性を示す処理液は有機溶媒を含むことができる。このような処理液として、有機溶媒を使用することで、発生したスカムを効率よく洗浄することができる。
【0065】
処理液として使用する有機溶媒としては、炭化水素系溶媒、ケトン系溶媒、エステル系溶媒、アルコール系溶媒、アミド系溶媒等が好ましい。これらのうちアルコール系溶媒、エステル系溶媒がより好ましく、アルコール系溶媒がさらに好ましい。上記アルコール系溶媒のうち、炭素数6~8の1価のアルコール系溶媒が特に好ましい。
【0066】
炭素数6~8の1価のアルコール系溶媒としては、例えば直鎖状、分岐状又は環状の1価のアルコール等が挙げられ、具体的には、1-ヘキサノール、1-ヘプタノール、1-オクタノール、4-メチル-2-ペンタノール、2-ヘキサノール、2-ヘプタノール、2-オクタノール、3-ヘキサノール、3-ヘプタノール、3-オクタノール、4-オクタノール、ベンジルアルコール等が挙げられる。これらのうち、1-ヘキサノール、2-ヘキサノール、2-ヘプタノール、4-メチル-2-ペンタノールが好ましい。
【0067】
上記処理液の各成分は、単独で使用してもよく2種以上を併用してもよい。処理液中の含水率は、10質量%以下が好ましく、5質量%以下がより好ましく、3質量%以下がさらに好ましい。処理液中の含水率を10質量%以下にすることで、良好な現像特性を得ることができる。なお、処理液には界面活性剤を添加できる。
【0068】
上記処理液による洗浄処理の方法としては、例えば一定速度で回転している基板上に処理液を吐出しつづける方法(回転塗布法)、処理液が満たされた槽中に基板を一定時間浸漬する方法(ディップ法)、基板表面に処理液を噴霧する方法(スプレー法)等が挙げられる。
【0069】
<フォトレジスト組成物>
本発明に用いられるフォトレジスト組成物は、[A]重合体及び[B]酸発生体を含有する。また、上記フォトレジスト組成物は、好適成分として、[C]フッ素原子含有重合体、[D]酸拡散制御体、[E]溶媒を含有する。さらに本発明の効果を損なわない限り、上記フォトレジスト組成物は、その他の任意成分を含有してもよい。以下、各成分について詳述する。
【0070】
<[A]重合体>
[A]重合体は、酸の作用により解離する酸解離性基を含む構造単位(I)を有し、この酸解離性基の解離により上記現像液に対する溶解性が減少する重合体である。[A]重合体は、構造単位(I)を有することで、露光により[B]酸発生体から発生する酸の作用により、酸解離性基が解離し、カルボキシ基等の極性基を有するようになる。その結果、有機溶媒を含有するネガ型現像液に対する溶解性が低下するため、良好なレジストパターンを形成することができる。また、当該パターン形成方法に用いられる上記現像液が含む含窒素化合物は、上記極性基と相互作用し、さらに現像液に対する溶解性を低下させることができる。その結果、パターン形成工程におけるレジスト膜の膜減りを抑制することができる。ここで、「極性基」とは、カルボキシ基、水酸基、アミノ基、スルホ基等の高い極性を有する基をいう。なお、[A]重合体は、本発明の効果を損なわない限り、構造単位(I)に加えて、ラクトン基又は環状カーボネート基を含む構造単位(II)を有することが好ましく、極性基を含む構造単位(III)等のその他の構造単位を有してもよい。なお、[A]重合体は各構造単位を単独で有してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0071】
[構造単位(I)]
構造単位(I)は酸の作用により解離する酸解離性基を含む構造単位である。また、構造単位(I)は、上記式(2)で表される基を有する構造単位であることが好ましい。構造単位(I)が上記式(2)で表される基を有すると、当該パターン形成方法に用いられるレジスト膜において酸の作用により発生する基が、極性の高いカルボキシ基となる。このカルボキシ基と現像液中の含窒素化合物との相互作用より、レジスト膜の露光部の現像液に対する溶解性をより減少させることができる。それにより露光部の膜減りをさらに抑制することができると共に、得られるパターンはLWRが低減され、感度、DOF等を十分満足する。また、構造単位(I)は、上記式(3)で表される構造単位であることがさらに好ましい。
【0072】
上記式(2)中、Rpは酸解離性基である。
【0073】
Rpで表される酸解離性基としては上記式(4)で表される基が好ましい。
【0074】
式(4)中、Rp1~Rp3は、炭素数1~4のアルキル基又は炭素数4~20の脂環式炭化水素基である。但し、上記アルキル基及び脂環式炭化水素基は置換基を有してもよい。また、Rp2及びRp3は、互いに結合してそれぞれが結合している炭素原子と共に炭素数4~20の2価の脂環式炭化水素基を形成してもよい。
【0075】
Rp1~Rp3で表される炭素数1~4のアルキル基としては、例えばメチル基、エチル基、n-プロピル基、i-プロピル基、n-ブチル基、2-メチルプロピル基、1-メチルプロピル基、t-ブチル基等が挙げられる。
【0076】
Rp1~Rp3で表される炭素数4~20の脂環式炭化水素基としては、例えば
アダマンタン骨格、ノルボルナン骨格等の有橋式骨格を有する多環の脂環式炭化水素基;
シクロペンタン、シクロヘキサン等のシクロアルカン骨格を有する単環の脂環式炭化水素基が挙げられる。また、これらの基が有する水素原子の一部又は全部は、例えば炭素数1~10の直鎖状、分岐状又は環状のアルキル基の1種以上で置換されていてもよい。
【0077】
これらのうち、Rp1が炭素数1~4のアルキル基であり、Rp2及びRp3が相互に結合してそれぞれが結合している炭素原子とともにアダマンタン骨格又はシクロアルカン骨格を有する2価の基を形成することが好ましい。
【0078】
上記式(2)で表される基は、構造単位(I)において、どの部位に結合していてもよい。例えば、重合体主鎖部分に直接結合していてもよいし、側鎖部分に結合していてもよい。
【0079】
構造単位(I)としては、上記式(3)で表される構造単位が好ましく、上記式(3)で表される構造単位としては、例えば下記式(1-1)~(1-4)で表される構造単位等が挙げられる。
【0080】
【0081】
上記式(1-1)~(1-4)中、R4は、上記式(3)と同義である。Rp1、Rp2及びRp3は上記式(4)と同義である。npは1~4の整数である。
【0082】
[A]重合体における構造単位(I)の含有率は、20モル%~80モル%であることが好ましく、30モル%~70モル%であることがより好ましい。構造単位(I)の含有率を上記特定範囲とすることで、当該パターン形成方法を用いた場合のリソグラフィー特性さらに向上させることができる。
【0083】
[構造単位(II)]
[A]重合体は、ラクトン基又は環状カーボネート基を含む構造単位(II)を有することが好ましい。[A]重合体が構造単位(II)を有することで、当該パターン形成方法におけるレジスト膜の基板への密着性を向上できる。ここで、ラクトン基とは、-O-C(O)-で表される構造を含むひとつの環(ラクトン環)を含有する基を表す。また、環状カーボネート基とは、-O-C(O)-O-で表される構造を含むひとつの環(環状カーボネート環)を含有する基を表す。ラクトン環又は環状カーボネート環を1つめの環として数え、ラクトン環又は環状カーボネート環のみの場合は単環式基、さらに他の環構造を有する場合は、その構造に関わらず多環式基という。
【0084】
構造単位(II)としては、例えば下記式で表される構造単位等が挙げられる。
【0085】
【0086】
【0087】
上記式中、R5は水素原子、フッ素原子、メチル基又はトリフルオロメチル基である。
【0088】
構造単位(II)を与える単量体としては、例えば国際公開2007/116664号に記載の単量体、下記式(5)で表される単量体等が挙げられる。
【0089】
【0090】
上記式(5)中、R5は、水素原子、フッ素原子、メチル基又はトリフルオロメチル基である。RL1は、単結合又は2価の連結基である。RL2は、ラクトン基又は環状カーボネート基である。
【0091】
上記RL1で表される2価の連結基としては、例えば炭素数1~20の2価の直鎖状又は分岐状の炭化水素基等が挙げられる。
【0092】
上記RL2で表されるラクトン基としては、例えば下記式(L2-1)~(L2-6)で表される基等が挙げられ、環状カーボネート基としては、例えば(L2-7)、(L2-8)で表される基等が挙げられる。
【0093】
【0094】
上記式中、RLc1は、酸素原子又はメチレン基である。RLc2は、水素原子又は炭素数1~4のアルキル基である。nLc1は、0又は1である。nLc2は、0~3の整数である。nC1は、0~2の整数である。nC2~nC5は、それぞれ独立して、0~2の整数である。*は、上記式(5)のRL1に結合する部位を示す。なお、上記式(L2-1)~(L2-8)で表される基は置換基を有していてもよい。
【0095】
[A]重合体における構造単位(II)の含有率の上限は65モル%が好ましく、55モル%がより好ましい。下限は25モル%が好ましく、35モル%がより好ましい。構造単位(II)の含有率を上記特定範囲とすることで、当該パターン形成方法におけるレジスト膜の基板等への密着性がさらに向上する。
【0096】
[A]重合体は、構造単位(I)、構造単位(II)以外のその他の構造単位を有していてもよい。その他の構造単位としては、例えば極性基を含む構造単位(III)等が挙げられる。
【0097】
[構造単位(III)]
[A]重合体は、極性基を含む構造単位(III)をさらに有することが好ましい。[A]重合体が構造単位(III)をさらに有することで、[A]重合体と、[B]酸発生体等の他の成分との相溶性が向上するため、当該パターン形成方法により得られるパターンのリソグラフィー性能をより優れたものとすることができる。なお、構造単位(III)としては、例えば下記式で表される構造単位等が挙げられる。
【0098】
【0099】
上記式中、R6は水素原子、フッ素原子、メチル基又はトリフルオロメチル基である。
【0100】
[A]重合体における構造単位(III)の含有率の上限は30モル%が好ましく、20モル%がより好ましい。
【0101】
<[A]重合体の合成方法>
[A]重合体は、例えば所定の各構造単位に対応する単量体を、ラジカル重合開始剤を使用し、適当な溶媒中で重合することにより製造できる。例えば、単量体及びラジカル開始剤を含有する溶液を、反応溶媒又は単量体を含有する溶液に滴下して重合反応させる方法、単量体を含有する溶液と、ラジカル開始剤を含有する溶液とを各別に、反応溶媒又は単量体を含有する溶液に滴下して重合反応させる方法、各々の単量体を含有する複数種の溶液と、ラジカル開始剤を含有する溶液とを各別に、反応溶媒又は単量体を含有する溶液に滴下して重合反応させる方法等の方法で合成することが好ましい。
【0102】
上記重合に使用される溶媒としては、例えば
n-ペンタン、n-ヘキサン、n-ヘプタン、n-オクタン、n-ノナン、n-デカン等のアルカン類;
シクロヘキサン、シクロヘプタン、シクロオクタン、デカリン、ノルボルナン等のシクロアルカン類;
ベンゼン、トルエン、キシレン、エチルベンゼン、クメン等の芳香族炭化水素類;
クロロブタン類、ブロモヘキサン類、ジクロロエタン類、ヘキサメチレンジブロミド、クロロベンゼン等のハロゲン化炭化水素類;
酢酸エチル、酢酸n-ブチル、酢酸i-ブチル、プロピオン酸メチル等の飽和カルボン酸エステル類;
アセトン、2-ブタノン、4-メチル-2-ペンタノン、2-ヘプタノン等のケトン類;
テトラヒドロフラン、ジメトキシエタン類、ジエトキシエタン類等のエーテル類;
メタノール、エタノール、1-プロパノール、2-プロパノール、4-メチル-2-ペンタノール等のアルコール類等が挙げられる。これらの溶媒は、単独で使用してもよく2種以上を併用してもよい。
【0103】
上記重合における反応温度は、ラジカル開始剤の種類に応じて適宜決定される。通常、上限は150℃であり、120℃以下がより好ましい。下限としては40℃が好ましく、50℃がより好ましい。反応時間としては、通常48時間以下であり、24時間以下がより好ましい。一方、下限としては通常1時間である。
【0104】
上記重合に使用されるラジカル開始剤としては、アゾビスイソブチロニトリル(AIBN)、2,2’-アゾビス(4-メトキシ-2,4-ジメチルバレロニトリル)、2,2’-アゾビス(2-シクロプロピルプロピオニトリル)、2,2’-アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)、2,2’-アゾビス(2-メチルプロピオニトリル)等が挙げられる。これらの開始剤は2種以上を混合して使用してもよい。
【0105】
重合反応により得られた重合体は、再沈殿法により回収することが好ましい。すなわち、重合反応終了後、重合液を再沈溶媒に投入することにより、目的の樹脂を粉体として回収する。再沈溶媒としては、アルコール類やアルカン類等を単独で又は2種以上を混合して使用することができる。再沈殿法の他に、分液操作やカラム操作、限外ろ過操作等により、単量体、オリゴマー等の低分子成分を除去して、重合体を回収することもできる。
【0106】
[A]重合体のゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)による重量平均分子量(Mw)の下限としては1,000が好ましく、2,000がより好ましい。上限としては10,000が好ましく、50,000がより好ましく、30,000がさらに好ましい。[A]重合体のMwを上記特定範囲とすることで、膜減りを抑制し、得られるパターンのLWRを低減することができる。
【0107】
[A]重合体のMwと数平均分子量(Mn)との比(Mw/Mn)としては、通常1~5である。上限としては3が好ましく、2がより好ましい。Mw/Mnをこのような特定範囲とすることで、得られるパターンのLWRを低減することができる。
【0108】
なお、本明細書においてMw及びMnは、GPCカラム(G2000HXL 2本、G3000HXL 1本、G4000HXL 1本、以上東ソー社製)を用い、流量1.0mL/分、溶出溶媒テトラヒドロフラン、試料濃度1.0質量%、試料注入量100μL、カラム温度40℃の分析条件で、検出器として示差屈折計を使用し、単分散ポリスチレンを標準とするゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により測定した値をいう。
【0109】
<[B]感放射線性酸発生体>
[B]感放射線性酸発生体は、露光により酸を発生する成分である。露光により発生した酸は、その酸の強さやパターン形成条件によって当該感放射線性組成物中で、2つの機能を担うと考えられる。第1の機能としては、露光により発生した酸が、[A]重合体の構造単位(I)が有する酸解離性基を解離させる機能が挙げられる。この第1の機能を有する感放射線性酸発生体を感放射線性酸発生体(I)という。第2の機能としては、[A]重合体の構造単位(I)が有する酸解離性基を実質的に解離させず、未露光部において上記感放射線性酸発生体(I)から発生した酸の拡散を抑制する機能が挙げられる。この第2の機能を有する感放射線性酸発生体を感放射線性酸発生体(II)という。感放射線性酸発生体(II)から発生する酸は、感放射線性酸発生体(I)から発生する酸より相対的に弱い酸(pKaが大きい酸)であるということができる。感放射線性酸発生体が感放射線性酸発生体(I)または感放射線性酸発生体(II)として機能するかは、発生する酸の強さ、[A]重合体の構造単位(I)が有する酸解離性基を解離するのに必要とするエネルギー、および感放射線性組成物を用いてパターンを形成する際に与えられる熱エネルギー条件等によって決まる。当該感放射線性樹脂組成物における[B]感放射線性酸発生体の含有形態としては、後述するような化合物の形態(以下、「[B]酸発生剤」ともいう)でも、重合体の一部として組み込まれた形態でも、これらの両方の形態でもよい。
【0110】
上記感放射線性酸発生体(I)を含有することにより、露光部の[A]重合体の極性が増大し、露光部における[A]重合体が、アルカリ水溶液現像の場合は現像液に対して溶解性となり、一方、有機溶媒現像の場合は現像液に対して難溶性となる。
【0111】
上記感放射線性酸発生体(II)を含有することにより、当該感放射線性組成物は、パターン現像性、LWR性能により優れるレジストパターンを形成することができる。
【0112】
[B]酸発生体としては、例えばジアゾニウム塩、ホスホニウム塩、スルホニウム塩、ヨードニウム塩、ピリジニウム塩等のオニウム塩、イミドスルホネート、オキシムスルホネート、ジアゾスルホン、ジスルホン等が挙げられる。
【0113】
オニウム塩としては、スルホニウム塩、ヨードニウム塩が好ましい。
【0114】
これらの[B]酸発生体は、単独で使用してもよく2種以上を併用してもよい。[B]酸発生体が酸発生剤である場合の含有量の下限は、[A]重合体100質量部に対して通常0.1質量部であり、0.5質量部がより好ましい。上限としては[A]重合体100質量部に対して30質量部が好ましく、20質量部がより好ましい。[B]酸発生体の使用量を上記範囲とすることで、放射線に対するレジストの透明性を確保しつつ、レジストに求められる感度及び現像性を確保できる。
【0115】
<[C]フッ素原子含有重合体>
[C]フッ素原子含有重合体重合体(以下、「[C]重合体」ともいう。)は、[A]重合体よりもフッ素原子の質量含有率が大きい重合体である。
【0116】
ベース重合体となる重合体より疎水性が高い重合体は、レジスト膜表層に偏在化する傾向があり、[C]重合体は[A]重合体よりもフッ素原子の質量含有率が大きいため、この疎水性に起因する特性により、レジスト膜表層に偏在化する傾向がある。その結果、液浸露光時における酸発生剤、酸拡散制御剤等が液浸媒体に溶出することを抑制することができる。また、この[C]重合体の疎水性に起因する特性により、レジスト膜と液浸媒体との前進接触角を所望の範囲に制御でき、バブル欠陥の発生を抑制できる。さらに、[C]重合体の含有により、レジスト膜と液浸媒体との後退接触角が大きくなり、水滴が残らずに高速でのスキャン露光が可能となる。フォトレジスト組成物に[C]重合体を含有させることにより、液浸露光法に好適なレジスト膜を形成することができる。
【0117】
[C]重合体のフッ素原子の質量含有率の下限としては、1質量%が好ましく、2質量%がより好ましく、3質量%がさらに好ましい。上記質量含有率の上限としては、60質量%が好ましく、50質量%がより好ましく、40質量%がさらに好ましい。フッ素原子の質量含有率を上記範囲とすることで、[C]重合体のレジスト膜における偏在化をより適度に調整することができる。なお、重合体のフッ素原子の質量含有率は、13C-NMRスペクトル測定により重合体の構造を求め、その構造から算出することができる。
【0118】
[C]重合体におけるフッ素原子の含有形態は特に限定されず、主鎖、側鎖及び末端のいずれに結合するものでもよいが、フッ素原子を含む構造単位(以下、「構造単位(F)」ともいう)を有することが好ましい。
【0119】
[構造単位(F)]
構造単位(F)としては、例えば下記式(f-1)等が挙げられる。
【0120】
【0121】
上記式(f-1)中、RJは、水素原子、フッ素原子、メチル基又はトリフルオロメチル基である。Gは、単結合、酸素原子、硫黄原子、-COO-、-SO2NH-、-CONH-又は-OCONH-である。RKは、炭素数1~6の1価のフッ素化鎖状炭化水素基又は炭素数4~20の1価のフッ素化脂環式炭化水素基である。
【0122】
上記RJとしては、構造単位(f-1)を与える単量体の共重合性の観点から、水素原子及びメチル基が好ましく、メチル基がより好ましい。
【0123】
上記Gとしては、-COO-、-SO2NH-、-CONH-及び-OCONH-が好ましく、-COO-がより好ましい。
【0124】
上記RKで表される炭素数1~6の1価のフッ素化鎖状炭化水素基としては、一部又は全部の水素原子がフッ素原子により置換された炭素数1~6の直鎖又は分岐鎖アルキル基が挙げられる。
【0125】
上記RKで表される炭素数4~20の1価のフッ素化脂環式炭化水素基としては、一部又は全部の水素原子がフッ素原子により置換された炭素数4~20の単環又は多環の炭化水素基が挙げられる。
【0126】
RKとしては、フッ素化鎖状炭化水素基が好ましく、2,2,2-トリフルオロエチル基及び1,1,1,3,3,3-ヘキサフルオロ-2-プロピル基がより好ましく、2,2,2-トリフルオロエチル基がさらに好ましい。
【0127】
[C]重合体が構造単位(F)を有する場合、構造単位(F)の含有割合の下限としては、[C]重合体を構成する全構造単位に対して、10モル%が好ましく、20モル%がより好ましい。上記含有割合の上限としては、100モル%が好ましく、90モル%がより好ましい。構造単位(F)の含有割合を上記範囲とすることで、[C]重合体のフッ素原子の質量含有率をさらに適度に調整することができる。
【0128】
[C]重合体としては、脂環構造を有するものが好ましい。脂環構造を含む構造単位(A)としては、例えば非酸解離性の脂環式炭化水素基を含む構造単位等が挙げられる。上記非酸解離性の脂環式炭化水素基を含む構造単位としては、例えば下記式(7)で表される構造単位等が挙げられる。
【0129】
【0130】
上記式(7)中、R9は、水素原子、フッ素原子、メチル基又はトリフルオロメチル基である。Xは、炭素数4~20の1価の脂環式炭化水素基である。
【0131】
上記Xで表される炭素数4~20の1価の脂環式炭化水素基としては、例えばシクロブタン、シクロペンタン、シクロヘキサン、ビシクロ[2.2.1]ヘプタン、ビシクロ[2.2.2]オクタン、トリシクロ[5.2.1.02,6]デカン、テトラシクロ[6.2.1.13,6.02,7]ドデカン、トリシクロ[3.3.1.13,7]デカン等のシクロアルカン類の脂環族環に由来する炭化水素基が挙げられる。これらのシクロアルカン由来の脂環族環に由来する炭素水素基は、置換基を有していてもよく、例えば、メチル基、エチル基、n-プロピル基、i-プロピル基、n-ブチル基、2-メチルプロピル基、1-メチルプロピル基、t-ブチル基等の炭素数1~4の直鎖状若しくは分岐状のアルキル基又は炭素数3~10のシクロアルキル基の1種以上あるいは1個以上で置換してもよい。置換基は、これらアルキル基及びシクロアルキル基に限定されるものではなく、ヒドロキシル基、シアノ基、炭素数1~10のヒドロキシアルキル基、カルボキシ基、酸素原子で置換されたものであってもよい。
【0132】
[C]重合体が構造単位(A)を有する場合、構造単位(A)の含有割合の下限としては、[C]重合体を構成する全構造単位に対して、10モル%が好ましく、30モル%がより好ましく、50モル%がさらに好ましい。上記含有割合の上限としては、90モル%が好ましく、80モル%がより好ましい。
【0133】
[C]重合体は、酸解離性基を含む構造単位(B)を有することができる。構造単位(B)としては、例えば[A]重合体における構造単位(I)等が挙げられる。[C]重合体における構造単位(B)の含有割合の上限としては、[C]重合体を構成する全構造単位に対して、20モル%が好ましく、10モル%がより好ましく、5モル%がさらに好ましく、0モル%が特に好ましい。
【0134】
フォトレジスト組成物が[C]重合体を含有する場合、[C]重合体の含有量の下限としては、[A]重合体100質量部に対して、0.1質量部が好ましく、0.5質量部がより好ましく、1質量部がさらに好ましく、2質量部が特に好ましい。上記含有量の上限としては、30質量部が好ましく、20質量部がより好ましく、15質量部がさらに好ましく、10質量部が特に好ましい。フォトレジスト組成物は[C]重合体を1種又は2種以上含有していてもよい。
【0135】
[C]重合体は、上述した[A]重合体と同様の方法で合成することができる。
【0136】
[C]重合体のMwの下限としては、1,000が好ましく、3,000がより好ましく、4,000がさらに好ましい。上記Mwの上限としては、50,000が好ましく、20,000がより好ましく、8,000がさらに好ましい。
【0137】
[C]重合体のGPCによるMnに対するMwの比(Mw/Mn)の比の上限としては、5が好ましく、3がより好ましく、2がさらに好ましく、1.5が特に好ましい。上記比の下限としては、通常1であり、1.2が好ましい。
【0138】
<[D]酸拡散制御体>
[D]酸拡散制御体は、露光により[B]酸発生体から生じる酸のレジスト膜中における拡散現象を制御し、未露光部における好ましくない化学反応を抑制する効果を奏する成分である。フォトレジスト組成物が[D]酸拡散制御体を含有することで、得られるフォトレジスト組成物の貯蔵安定性がさらに向上し、またレジストとしての解像度がさらに向上する。また、露光から現像処理までの引き置き時間の変動によるレジストパターンの線幅変化を抑えることができ、プロセス安定性に極めて優れた組成物が得られる。なお、[D]酸拡散制御体の本発明におけるフォトレジスト組成物における含有形態としては、遊離の化合物の形態(以下、適宜「[D]酸拡散制御剤」ともいう)でも、重合体の一部として組み込まれた形態でも、これらの両方の形態でもよい。
【0139】
[D]酸拡散制御剤としては、例えばアミン化合物、アミド基含有化合物、ウレア化合物、含窒素複素環化合物等が挙げられる。
【0140】
アミン化合物としては、例えばモノ(シクロ)アルキルアミン類;ジ(シクロ)アルキルアミン類;トリ(シクロ)アルキルアミン類;置換アルキルアニリン又はその誘導体;エチレンジアミン、N,N,N’,N’-テトラメチルエチレンジアミン、テトラメチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、4,4’-ジアミノジフェニルメタン、4,4’-ジアミノジフェニルエーテル、4,4’-ジアミノベンゾフェノン、4,4’-ジアミノジフェニルアミン、2,2-ビス(4-アミノフェニル)プロパン、2-(3-アミノフェニル)-2-(4-アミノフェニル)プロパン、2-(4-アミノフェニル)-2-(3-ヒドロキシフェニル)プロパン、2-(4-アミノフェニル)-2-(4-ヒドロキシフェニル)プロパン、1,4-ビス(1-(4-アミノフェニル)-1-メチルエチル)ベンゼン、1,3-ビス(1-(4-アミノフェニル)-1-メチルエチル)ベンゼン、ビス(2-ジメチルアミノエチル)エーテル、ビス(2-ジエチルアミノエチル)エーテル、1-(2-ヒドロキシエチル)-2-イミダゾリジノン、2-キノキサリノール、N,N,N’,N’-テトラキス(2-ヒドロキシプロピル)エチレンジアミン、N,N,N’,N’’N’’-ペンタメチルジエチレントリアミン、トリエタノールアミン等が挙げられる。
【0141】
アミド基含有化合物としては、例えばN-t-ブトキシカルボニル基含有アミノ化合物、ホルムアミド、N-メチルホルムアミド、N,N-ジメチルホルムアミド、アセトアミド、N-メチルアセトアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、プロピオンアミド、ベンズアミド、ピロリドン、N-メチルピロリドン、N-アセチル-1-アダマンチルアミン、イソシアヌル酸トリス(2-ヒドロキシエチル)等が挙げられる。
【0142】
ウレア化合物としては、例えば尿素、メチルウレア、1,1-ジメチルウレア、1,3-ジメチルウレア、1,1,3,3-テトラメチルウレア、1,3-ジフェニルウレア、トリ-n-ブチルチオウレア等が挙げられる。
【0143】
含窒素複素環化合物としては、例えばイミダゾール類;ピリジン類;ピペラジン類;ピラジン、ピラゾール、ピリダジン、キノザリン、プリン、ピロリジン、ピペリジン、4-ヒドロキシ-N-アミロキシカルボニルピペリジン、ピペリジンエタノール、3-ピペリジノ-1,2-プロパンジオール、モルホリン、4-メチルモルホリン、1-(4-モルホリニル)エタノール、4-アセチルモルホリン、3-(N-モルホリノ)-1,2-プロパンジオール、1,4-ジメチルピペラジン、1,4-ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン等が挙げられる。
【0144】
また、[D]酸拡散制御剤として、露光により感光し弱酸を発生する光崩壊性塩基を用いることもできる。光崩壊性塩基は、酸発生剤(II)の機能を有し得る。すなわち、露光部においては酸を発生して[A]重合体の当該現像液に対する不溶性を高め、現像後の露光部表面のラフネスを抑制する。一方、未露光部ではクエンチャーとして機能し、解像度をより向上させることができる。光崩壊性塩基の一例として、露光により分解して酸拡散制御性を失うオニウム塩化合物がある。オニウム塩化合物としては、例えば下記式(D1)で示されるスルホニウム塩化合物、下記式(D2)で表されるヨードニウム塩化合物等が挙げられる。
【0145】
【0146】
上記式(D1)及び式(D2)中、R10~R14はそれぞれ独立して、水素原子、アルキル基、アルコキシ基、ヒドロキシル基、ハロゲン原子又は-SO2-RCである。RCは、アルキル基、シクロアルキル基、アルコキシ基又はアリール基である。Z-は、OH-、R15-COO-、RD-SO2-N-―R15、R15-SO3-又は下記式(D3)で示されるアニオンである。R15は炭素数1~10の直鎖状若しくは分岐状のアルキル基、炭素数3~20のシクロアルキル基、炭素数6~30のアリール基、炭素数7~30のアルカリール基である。上記アルキル基、シクロアルキル基、アリール基及びアルカリール基の水素原子の一部又は全部は置換されていてもよい。RDは、炭素数1~10の直鎖状若しくは分岐状のアルキル基、置換基を有してもいてもよい炭素数3~20のシクロアルキル基である。上記アルキル基及びシクロアルキル基の水素原子の一部又は全部はフッ素原子で置換されていてもよい。但し、Z-がR15-SO3-の場合、SO3-が結合する炭素原子にフッ素原子が結合する場合はない。
【0147】
【0148】
上記式(D3)中、R16は、水素原子の一部又は全部がフッ素原子で置換されていてもよい炭素数1~12の直鎖状若しくは分岐状のアルキル基、又は炭素数1~12の直鎖状若しくは分岐状のアルコキシ基である。uは0~2の整数である。
【0149】
上記式(D1)及び(D2)におけるR10~R14としては、水素原子及び-SO2-RCが好ましい。また、上記RCとしては、シクロアルキル基が好ましく、シクロヘキシル基がより好ましい。
【0150】
上記R15で表されるアルキル基としては、例えばメチル基、エチル基、プロピル基、i-プロピル基、ブチル基、i―ブチル基、t-ブチル基等、及びこれらの基の水素原子の一部又は全部が置換された基等が挙げられる。
【0151】
上記R15で表されるシクロアルキル基としては、例えばシクロペンチル基、シクロヘキシル基、ノルボルニル基、トリシクロデカニル基、テトラシクロドデカニル基、アダマンチル基等、及びこれらの基の水素原子の一部又は全部が置換された基等が挙げられる。
【0152】
上記R15で表されるアリール基としては、例えば、フェニル基、ナフチル基、アントラニル基等、及びこれらの基の水素原子の一部又は全部が置換された基等が挙げられる。
【0153】
上記R15で表されるアルカリール基としては、例えば、ベンジル基、フェニルエチル基、フェニルプロピル基、及びこれらの基の水素原子の一部又は全部が置換された基等が挙げられる。
【0154】
上記アルキル基、シクロアルキル基、アリール基及びアルカリール基が有する置換基としては、例えば、ヒドロキシル基、ハロゲン原子、アルコキシ基、ラクトン基、アルキルカルボニル基等が挙げられる。
【0155】
上記RDで表されるアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基等が挙げられる。
【0156】
上記RDで表されるシクロアルキル基としては、例えば、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、ノルボルニル基、アダマンチル基等が挙げられる。
【0157】
上記光崩壊性塩基としては、例えば下記式で表される化合物等が挙げられる。
【0158】
【0159】
当該パターン形成方法に用いられるフォトレジスト組成物における[D]酸拡散制御剤の含有量としては、[A]重合体100質量部に対して、10質量部未満が好ましい。合計使用量が10質量部を超えると、レジストとしての感度が低下する傾向にある。これらの[D]酸拡散抑制剤は、単独で使用してもよく2種以上を併用してもよい。
【0160】
<[E]溶媒>
当該パターン形成方法に用いられるフォトレジスト組成物は通常[E]溶媒を含有する。[E]溶媒は少なくとも[A]重合体、[B]酸発生体、好適成分である[C]重合体、[D]酸拡散制御剤及び任意成分を溶解できれば特に限定されない。[E]溶媒としては、例えばアルコール系溶媒、エーテル系溶媒、ケトン系溶媒、アミド系溶媒、エステル系溶媒及びその混合溶媒等が挙げられる。
【0161】
[E]溶媒の具体例としては、上述のレジストパターン形成方法における(3)工程において列挙した有機溶媒と同様のものが挙げられる。これらのうちプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、シクロヘキサノン、γ-ブチロラクトンが好ましい。これらの溶媒は単独で使用してもよく2種以上を併用してもよい。
【0162】
<その他の任意成分>
当該パターン形成方法に用いられるフォトレジスト組成物は、その他の任意成分として、界面活性剤、脂環式骨格含有化合物、増感剤等を含有できる。なお、上記フォトレジスト組成物は、上記その他の任意成分をそれぞれ1種のみ含有してもよいし、2種以上を含有してもよい。
【0163】
[界面活性剤]
界面活性剤は、当該パターン形成方法に用いられるフォトレジスト組成物の塗布性、ストリエーション、現像性等を改良する効果を奏する。界面活性剤としては、例えばポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンステアリルエーテル、ポリオキシエチレンオレイルエーテル、ポリオキシエチレンn-オクチルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンn-ノニルフェニルエーテル、ポリエチレングリコールジラウレート、ポリエチレングリコールジステアレート等のノニオン系界面活性剤の他、以下商品名でKP341(信越化学工業社)、ポリフローNo.75、同No.95(以上、共栄社化学社)、エフトップEF301、同EF303、同EF352(以上、トーケムプロダクツ社)、メガファックF171、同F173(以上、大日本インキ化学工業社)、フロラードFC430、同FC431(以上、住友スリーエム社)、アサヒガードAG710、サーフロンS-382、同SC-101、同SC-102、同SC-103、同SC-104、同SC-105、同SC-106(以上、旭硝子工業社)等が挙げられる。
【0164】
[脂環式骨格含有化合物]
脂環式骨格含有化合物は、当該パターン形成方法に用いられるフォトレジスト組成物のドライエッチング耐性、パターン形状、基板との接着性等を改善する効果を奏する。
【0165】
脂環式骨格含有化合物としては、例えば
1-アダマンタンカルボン酸、2-アダマンタノン、1-アダマンタンカルボン酸t-ブチル等のアダマンタン誘導体類;
デオキシコール酸t-ブチル、デオキシコール酸t-ブトキシカルボニルメチル、デオキシコール酸2-エトキシエチル等のデオキシコール酸エステル類;
リトコール酸t-ブチル、リトコール酸t-ブトキシカルボニルメチル、リトコール酸2-エトキシエチル等のリトコール酸エステル類;
3-〔2-ヒドロキシ-2,2-ビス(トリフルオロメチル)エチル〕テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカン、2-ヒドロキシ-9-メトキシカルボニル-5-オキソ-4-オキサ-トリシクロ[4.2.1.03,7]ノナン等が挙げられる。これらの脂環式骨格含有化合物は単独で使用してもよく2種以上を併用してもよい。
【0166】
[増感剤]
増感剤は、[B]酸発生体からの酸の生成量を増加する作用を示すものであり、当該パターン形成方法に用いられるフォトレジスト組成物の「みかけの感度」を向上させる効果を奏する。
【0167】
増感剤としては、例えばカルバゾール類、アセトフェノン類、ベンゾフェノン類、ナフタレン類、フェノール類、ビアセチル、エオシン、ローズベンガル、ピレン類、アントラセン類、フェノチアジン類等が挙げられる。これらの増感剤は、単独で使用してもよく2種以上を併用してもよい。
【0168】
<フォトレジスト組成物の調製方法>
当該パターン形成方法に用いられるフォトレジスト組成物は、例えば[E]溶媒中で[A]重合体、[B]酸発生体、[C]重合体、[D]酸拡散制御剤及び任意成分を所定の割合で混合することにより調製できる。また、当該フォトレジスト組成物は、[E]溶媒に溶解又は分散させた状態に調製され使用され得る。
【0169】
<現像液>
当該現像液は、当該パターン形成方法に好適に用いられるネガ型現像液であり、有機溶媒を含有し、さらに含窒素化合物を含む。なお、当該現像液については、当該パターン形成方法の(3)工程における現像液の説明を適用することができる。
【実施例】
【0170】
以下、本発明を実施例に基づいて具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。各物性値の測定方法を下記に示す。
【0171】
[重量平均分子量(Mw)及び数平均分子量(Mn)]
重合体のMw及びMnは、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により東ソー社製のGPCカラム(G2000HXL 2本、G3000HXL 1本、G4000HXL 1本)を使用し、以下の条件により測定した。
溶離液:テトラヒドロフラン(和光純薬工業社)
流量:1.0mL/分
試料濃度:1.0質量%
試料注入量:100μL
検出器:示差屈折計
標準物質:単分散ポリスチレン
【0172】
[低分子量成分含有量]
[A]重合体中の低分子量成分(分子量1,000未満の成分)の含有量(質量%)は、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)により、ジーエルサイエンス社製Inertsil ODS-25μmカラム(4.6mmφ×250mm)を使用し、以下の条件により測定した。
溶離液:アクリロニトリル/0.1%リン酸水溶液
流量:1.0mL/分
試料濃度:1.0質量%
試料注入量:100μL
検出器:示差屈折計
【0173】
[13C-NMR分析]:
13C-NMR分析は、日本電子社製JNM-EX400を使用し、測定溶媒としてDMSO-d6を使用して行った。重合体における各構造単位の含有率は、13C-NMRで得られたスペクトルにおける各構造単位に対応するピークの面積比から算出した。
【0174】
<[A]重合体の合成>
[A]重合体及び後述する[C]重合体の合成に用いた単量体を下記に示す。
【0175】
【0176】
[合成例1]
化合物(M-1)43.08g(50モル%)、及び化合物(M-5)56.92g(50モル%)を200gの2-ブタノンに溶解し、AIBN4.21g(単量体化合物の総量に対し5モル%)を添加して単量体溶液を調製した。100gの2-ブタノンを入れた1,000mLの三口フラスコを30分窒素パージした後、撹拌しながら80℃に加熱し、調製した単量体溶液を滴下漏斗にて3時間かけて滴下した。滴下開始を重合反応の開始時間とし、重合反応を6時間実施した。重合反応終了後、重合溶液を水冷して30℃以下に冷却した。2,000gのメタノール中に冷却した重合溶液を投入し、析出した白色粉末をろ別した。ろ別した白色粉末を400gのメタノールで2回洗浄した後、ろ別し、50℃で17時間乾燥させて白色粉末状の重合体(A-1)を得た(収量73g、収率73%)。得られた重合体(A-1)のMwは、7,730であり、Mw/Mnは1.51であり、低分子量成分含有量は0.05質量%であった。また、13C-NMR分析の結果、重合体(A-1)における化合物(M-1)由来の構造単位(I):化合物(M-5)由来の構造単位(II)の含有率は、47.3(モル%):52.7(モル%)であった。
【0177】
[合成例2~4]
表1に記載の単量体を所定量配合した以外は、合成例1と同様に操作して重合体(A-2)~(A-4)を得た。また、得られた各重合体の各構造単位の含有率、Mw、Mw/Mn比、収率(%)、低分子量成分含有量を合わせて表1に示す。
【0178】
<[C]フッ素原子含有重合体の合成>
[合成例5]
化合物(M-9)71.67g(70モル%)及び化合物(M-11)28.33g(30モル%)を100gの2-ブタノンに溶解し、ジメチル2,2’-アゾビスイソブチレート10.35gを添加して単量体溶液を調製した。100gの2-ブタノンを入れた1,000mLの三口フラスコを30分窒素パージした後、撹拌しながら80℃に加熱し調製した単量体溶液を滴下漏斗にて3時間かけて滴下した。滴下開始を重合反応の開始時間とし、重合反応を6時間実施した。重合反応終了後、重合溶液を水冷して30℃以下に冷却した。反応溶液を4L分液漏斗に移液した後、300gのn-ヘキサンでその重合溶液を均一に希釈し、1,200gのメタノールを投入して混合した。次いで、60gの蒸留水を投入し、さらに攪拌して30分静置した。その後、下層を回収し、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート溶液とした(収率60%)。得られた重合体(C-1)のMwは7,200であり、Mw/Mnは2.00であり、低分子量成分含有量は0.07質量%であった。また、13C-NMR分析の結果、重合体(C-1)における化合物(M-9)由来の構造単位及び化合物(M-11)由来の構造単位の含有率は、71.1モル%:28.9モル%であった。
【0179】
[合成例6]
表1に記載の単量体を所定量配合した以外は、合成例5と同様に操作して重合体(C-2)を得た。また、得られた各重合体の各単量体化合物に由来する構造単位の含有率、Mw、Mw/Mn比、収率(%)、低分子量成分含有量を合わせて表1に示す。
【0180】
【0181】
<現像液の調製>
各現像液の調製に用いた含窒素化合物を以下に示す。
【0182】
(含窒素化合物)
(F-1):トリn-オクチルアミン
(F-2):ジ-n-オクチルアミン
(F-3):1-アミノデカン
(F-4):N,N-ジブチルアニリン
(F-5):プロリン
(F-6):テトラメチルエチレンジアミン
【0183】
[調製例1]
メチル-n-アミルケトン99.9g(99.9質量%)に、含窒素化合物(F-1)0.1g(0.1質量%)を添加し、撹拌して現像液(G-1)を得た。
【0184】
[調製例2~15]
表2に記載した有機溶媒及び含窒素化合物を所定量配合した以外は、調製例1と同様に操作して、現像液(G-2)~(G-14)及び(g-1)を得た。
【0185】
【0186】
酸性を示す処理液として、以下(H-1)から(H-3)の処理液を用いた。
(H-1)過酸化水素を含む処理液 pH6.6
(H-2)炭酸を含む処理液 pH6.7
(H-3)酢酸を含む処理液 pH6.0
各実施例では酸性を示す処理液で処理した後、純水で7秒間リンスを行った。比較例では酸性処理液による処理は行わず、純水による7秒間のリンスのみを行った。
【0187】
<フォトレジスト組成物の調製>
フォトレジスト組成物の調製に用いた[B]酸発生体、[D]酸拡散制御剤、[E]溶媒について以下に示す。
【0188】
([B]酸発生剤)
下記式(B-1)及び(B-2)でそれぞれ表される化合物
【0189】
【0190】
([D]酸拡散制御剤)
下記式(D-1)~(D-3)でそれぞれ表される化合物
(D-1):トリフェニルスルホニウムカンファースルホネート
(D-2):4-ヒドロキシ-N-アミロキシカルボニルピペリジン
(D-3):トリエタノールアミン
【0191】
【0192】
([E]溶媒)
(E-1):酢酸プロピレングリコールモノメチルエーテル
(E-2):シクロヘキサノン
(E-3):γ-ブチロラクトン
【0193】
[調製例16]
重合体(A-1)100質量部、酸発生剤(B-2)7.2質量部、重合体(C-1)3質量部、酸拡散制御剤(D-1)3.9質量部、及び溶媒(E-1)2110質量部、(E-2)900質量部、(E-3)30質量部を混合し、得られた混合溶液を孔径0.20μmのフィルターでろ過してフォトレジスト組成物(J-1)を調製した。
【0194】
[調製例17~19]
下記表3に記載した種類及び配合量の各成分を混合した以外は、調製例16と同様にして各フォトレジスト組成物(J-2)~(J-4)を調製した。
【0195】
【0196】
[実施例1]
12インチシリコンウェハ上に、下層反射防止膜(ARC66、ブルワーサイエンス社製)をスピンコーター(CLEAN TRACK Lithius Pro i、東京エレクトロン社製)を使用して塗布した。205℃で60秒間加熱し、膜厚105nmの下層反射防止膜を形成した。次いで、上記スピンコーターを使用して、フォトレジスト組成物(J-1)を塗布し、90℃で60秒間PBを行った。23℃で30秒間冷却し、膜厚90nmのレジスト膜を形成した。次いで、ArF液浸露光装置(NSR-S610C、ニコン精機カンパニー社製)を使用し、NA=1.3、ダイポールの光学条件にて、ベストフォーカスの条件で露光した。露光は1/4倍投影のスキャナー(ニコン精機カンパニー社製、NSR-S610C)を使用し、レチクル上のサイズは160nmクロム/320nmピッチで、マスクバイアスは0nmであった。その後、ホットプレート(CLEAN TRACK Lithius Pro i)にて、105℃で60秒間PEBし、23℃で30秒間冷却した。現像液(G-1)を用いて30秒間パドル現像した後処理液(H-1)で7秒間処理した。純水で洗浄した後、2,000rpm、15秒間振り切りでスピンドライすることにより、40nmライン/80nmピッチのレジストパターンを形成した。
【0197】
[感度の評価]
上記パターン形成方法により形成されるラインパターンが40nmライン/80nmピッチとなるような露光量を最適露光量とし、この最適露光量を感度(mJ/cm2)とした。感度が60(mJ/cm2)以下である場合、良好であると判断した。なお、測長には走査型電子顕微鏡(日立ハイテクノロジーズ社製、CG4000)を用いた。結果を表5に示す。
【0198】
[焦点深度(Depth Of Focus:DOF)の評価]
上記と同様にして作製したレジスト膜を、縮小投影露光後のラインパターンが40nmライン/80nmピッチとなるようなマスクを介して露光した。形成されるラインパターンのライン幅が40nmの±10%以内となる場合のフォーカスの振れ幅を焦点深度(DOF(nm))とした。DOFの値が300(nm)以上である場合、フォーカス変化に対するパターニング性能の変量が小さく良好であると判断した。結果を表5に示す。
【0199】
[LWR(Line Width Roughness)の評価]
上記と同様に作製した40nmライン/80nmピッチのラインパターンを、走査型電子顕微鏡(日立ハイテクノロジーズ社製CG4000)を用い、パターン上部から観察した。ライン幅を任意のポイントで計50点測定し、その測定ばらつきを3シグマとして算出した値をLWR(nm)とした。LWRの値が4.5(nm)以下である場合を良好と判断した。結果を表5に示す。
【0200】
[膜減り量の評価]
膜厚77nmの下層反射防止膜(ARC29A、ブルワー・サイエンス社製)を形成した8インチシリコンウェハ上に、フォトレジスト組成物(J-1)によって、初期膜厚120nmのレジスト膜を形成し、90℃で60秒間PBを行った。次に、このレジスト膜を、ArFエキシマレーザー露光装置(NSR S306C、NIKON社製)を用い、NA=0.78、sigma=0.90、Conventionalの条件により、マスクを介する事無く、上記最適露光量でウェハ全面を露光した。露光後、105℃で60秒間PEBを行った。現像液(G-1)により23℃で30秒間パドル現像し、処理液(H-1)で7秒間処理した。純水で洗浄した後、2,000rpm、15秒間振り切りでスピンドライすることにより乾燥を行った。一連のプロセス完了後、残存するレジスト膜の膜厚を測定し、初期膜厚から残存膜厚を引いた値を膜減り量(nm)とした。なお、膜厚測定には光干渉式膜厚測定装置(ラムダエース、大日本スクリーン製造社製)を用いた。測定された膜減り量が、30nm未満の場合を良好、30nm以上の場合を不良と判断した。結果を表5に示す。
【0201】
[パーティクル欠陥の評価]
上記と同様にして40nmライン/80nmピッチのラインパターンを作製した。作製したレジストパターンを欠陥検査装置(KLA?Tencor社の「KLA2905」)を用いて検査し、電子ビームレビュー装置(KLA?Tencor社の「eDR?7110」)を用いて欠陥分類を実施した。レジストパターン上のパーティクル欠陥数が10個以下の場合は(良好)と、11個以上の場合は(不良)と評価した。結果を表5に示す。
【0202】
[実施例2~16、参考例1~4及び比較例1~7]
使用するフォトレジスト組成物、PEB温度、時間、使用する現像液及び処理液の組み合わせを表4に記載のとおり変更した他は実施例1と同様にして、感度、焦点深度、LWR及びパーティクル欠陥を評価した。表4中「-」は処理液による処理を行わなかったことを示す。各種評価結果を表5に示す。
【0203】
【0204】
【0205】
表5に示すように、本発明のレジストパターン形成方法によれば、レジスト膜のパターン形成時における膜減りを著しく抑制できると共に、感度、DOFを良好に保ちつつ、得られるパターンの線幅のバラツキ、欠陥を低減することができる。また、本発明の処理液によれば、レジスト膜のパターン形成時における膜減りを抑制し、感度、DOFを良好に保ち、得られるパターンの線幅のバラツキを低減しつつ、さらに現像欠陥を大幅に低減することができる。
【産業上の利用可能性】
【0206】
本発明のレジストパターン形成方法によれば、レジストパターン形成工程における膜減りを抑制することができると共に、感度、DOFを良好に保ちつつ、得られるパターンの線幅のバラツキ、欠陥を低減することができる。また本発明の処理液によれば、レジスト膜のパターン形成時における膜減りを抑制し、感度、DOFを良好に保ち、得られるパターンの線幅のバラツキを低減しつつ、さらに現像欠陥を大幅に低減することができる。。従って、本発明のパターン形成方法及び処理液は、半導体デバイス、液晶デバイス等の各種電子デバイスのリソグラフィー工程におけるレジストパターン形成に好適に用いることができる。