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特許7022401人材マッチング装置及び人材マッチングプログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-02-09
(45)【発行日】2022-02-18
(54)【発明の名称】人材マッチング装置及び人材マッチングプログラム
(51)【国際特許分類】
   G06Q 10/10 20120101AFI20220210BHJP
【FI】
G06Q10/10 322
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2021163772
(22)【出願日】2021-10-04
【審査請求日】2021-10-04
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】721006622
【氏名又は名称】株式会社フジヨシ
(73)【特許権者】
【識別番号】520478105
【氏名又は名称】株式会社クリアタクト
(74)【代理人】
【識別番号】100153246
【弁理士】
【氏名又は名称】伊吹 欽也
(72)【発明者】
【氏名】飯田 美名子
(72)【発明者】
【氏名】中庭 伊織
【審査官】鈴木 和樹
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-67072(JP,A)
【文献】特開2005-18274(JP,A)
【文献】特開2004-21908(JP,A)
【文献】特開2001-297175(JP,A)
【文献】特開2019-125299(JP,A)
【文献】韓国公開特許第10-2018-0041478(KR,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06Q 10/00 - 99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
求職者と求人者とをマッチングする人材マッチング装置であって、
過去勤務実績のある就労者及び勤務先の組織員の性格診断結果と、該就労者の勤務年数との相関関係が学習された学習モデルを記憶した記憶手段と、
求職者及び求人者の組織員の性格診断に関する情報を取得する取得手段と、
前記性格診断に関する情報に基づいて、求職者及び求人者の組織員の性格診断結果を判定する性格診断手段と、
前記学習モデルの相関関係に基づいて、求職者及び求人者の組織員の性格診断結果から、求人者の組織において所定の勤務年数以上を勤務しうる求職者を推論する推論手段と、
求人者の組織において所定の勤務年数以上を勤務しうる前記求職者と、該求人者とを抽出する抽出手段と、
を有することを特徴とする人材マッチング装置。
【請求項2】
前記勤務先及び前記求人者の前記組織員は、複数人であり、
前記推論手段は、前記学習モデルの相関関係に基づいて、求職者の性格診断結果及び求人者の前記組織員の複数各々の性格診断結果から、求人者の組織において所定の勤務年数以上を勤務しうる求職者を推論すること、
を特徴とする請求項1に記載の人材マッチング装置。
【請求項3】
前記推論手段は、前記学習モデルの相関関係に基づいて、求職者の性格診断結果及び求人者の前記組織員の複数各々の、就労後における求職者との関与度に応じた性格診断結果から、求人者の組織において所定の勤務年数以上を勤務しうる求職者を推論すること、
を特徴とする請求項2に記載の人材マッチング装置。
【請求項4】
前記就労者の性格診断結果と、前記求職者の性格診断結果とは、所定以上近似すること、
を特徴とする請求項1に記載の人材マッチング装置。
【請求項5】
前記勤務先と前記求人者とは、同一組織であること、
を特徴とする請求項2に記載の人材マッチング装置。
【請求項6】
前記勤務先と前記求人者とは、異なる組織であって、
該勤務先の組織員の性格診断結果と、該求人者の組織員の性格診断結果とは、所定以上近似すること、
を特徴とする請求項1に記載の人材マッチング装置。
【請求項7】
コンピュータを、請求項1ないし6何れか一項に記載の人材マッチング装置として機能させるための人材マッチングプログラム。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、人材マッチング装置及び人材マッチングプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、待機児童や保育施設(保育園等)の増加・女性就業率向上などにより保育ニーズが高まる中、保育士不足が問題となっている。また保育士の定着率は比較的低いと言われており、保育士が保育施設に就職してもその離職率は5年以内で約50%というデータもある。主な退職理由としては、多い理由順に、職場環境の人間関係(33%)、待遇面(29%)、仕事量(27%)、長労働時間(25%)、妊娠・出産(22%)といったものが挙げられる。
【0003】
このような背景の下、人材マッチングシステムが知られており、これに関する技術として、例えば特許文献1に記載される人材マッチングシステム10は、労働者6が就労することが可能な就労可能日時、希望している給与及び所有しているスキルを入力する就労条件処理部12と、就労可能日時、給与及びスキルに基づいて、使用者4によって選択された労働者6に就労オファーを送信するオファー処理部14と、就労オファーが労働者6によって承諾されたときにマッチングを成立させるマッチング処理部16と、を備える。
【0004】
また、例えば特許文献2に記載される人材マッチング装置は、第1のユーザから、要求する人物像の条件や雇用条件を含む第1条件を受け付け、第2のユーザから、第2ユーザ情報を含む第2条件や希望条件を受け付ける。そして、第2ユーザ情報に基づいて第2のユーザの人物像に関する情報を抽出して第2の条件に含め、第1条件と第2条件とのマッチングにより第1条件を満たす第2条件を有する第2のユーザを識別する。これにより、第1のユーザが求める人物像にマッチした第2のユーザを抽出する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特許6816906号公報
【文献】特開2017-097498号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記特許文献1に記載される人材マッチングシステムにおいては、求職者側の個人情報と、求人者側の求人情報とのマッチングは、就労可能日時、給与及びスキル(ひいては年齢、資格、勤務場所等)の予め設定された条件のみでマッチングする場合、就職後・就労後の環境要素が考慮されていない。また、上記特許文献2に記載される人材マッチング装置においては、求人者側が求める人物像にマッチした人材をあくまで一方的に抽出するものである。このため、例えば特に職場の人間関係などの職場環境に馴染めないという理由により、結局は早期退職に至ってしまうという事態も想定される。
【0007】
本発明は、上記の点に鑑み提案されたものであり、一つの側面では、求職者と相性の良い職場環境(就職先)とをマッチングし、就職後(就労後)における就労者の定着率を向上させることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の課題を解決するため、本開示に係る材マッチング装置は、求職者と求人者とをマッチングする人材マッチング装置であって、過去勤務実績のある就労者及び勤務先の組織員の性格診断結果と、該就労者の勤務年数との相関関係が学習された学習モデルを記憶した記憶手段と、求職者及び求人者の組織員の性格診断に関する情報を取得する取得手段と、前記性格診断に関する情報に基づいて、求職者及び求人者の組織員の性格診断結果を判定する性格診断手段と、前記学習モデルの相関関係に基づいて、求職者及び求人者の組織員の性格診断結果から、求人者の組織において所定の勤務年数以上を勤務しうる求職者を推論する推論手段と、求人者の組織において所定の勤務年数以上を勤務しうる前記求職者と、該求人者とを抽出する抽出手段と、を有する。
【発明の効果】
【0009】
本開示の実施の形態によれば、求職者と相性の良い職場環境(就職先)とをマッチングし、就職後(就労後)における就労者の定着率を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本実施形態に係る人材マッチングシステムの構成例を示す図である。
図2】本実施形態に係る人材マッチングサーバのハードウェア構成例を示す図である。
図3A】本実施形態に係る人材マッチングサーバのソフトウェア構成例を示す図である。
図3B】本実施形態に係る求職者DBのデータ構成例を示す図である。
図3C】本実施形態に係る求人者DBのデータ構成例を示す図である。
図4】本実施形態に係るエゴグラム性格診断を説明する図である。
図5】本実施形態に係る人材マッチングシステムの利用フローについて説明する図である。
図6】本実施形態に係るエゴグラム性格診断画面の一例を示す図である。
図7】本実施形態に係るお勧め保育園一覧画面の一例を示す図である。
図8】本実施形態に職員情報登録画面の一例を示す図である。
図9】本実施形態に係るエゴグラム性格診断画面の一例を示す図である。
図10】本実施形態に係るお勧め保育士一覧画面の一例を示す図である。
図11】本実施形態に係る過去勤務実績データの一例を示す図である。
図12】本実施形態に係るベイジアンネットワークの学習済モデル概念を説明する図である。
図13】本実施形態に係る人材マッチング処理を示すフローチャート図である。
図14】保育士とお勧め保育園との関係性を説明する図(その1)である。
図15】保育士とお勧め保育園との関係性を説明する図(その2)である。
図16】本実施形態に職員情報登録画面の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本実施形態について、図面を参照して説明する。同一の構成については、同じ符号を付して説明する。尚、以下の実施形態は本開示の技術を限定するものではなく、また、本実施形態で説明されている特徴の組み合わせの全てが上記課題の解決手段に必須のものとは限らない。
【0012】
求職者及び求人者との間で人材紹介を行う人材マッチングシステムの一実施形態例として、以下、保育士と保育施設のマッチングシステムに本発明を適用した例を示す。また、保育施設は、例えば保育園(保育所)、幼稚園、託児所などを含むが、以下の実施形態においてはまとめて保育園という。
【0013】
<システム構成>
(ネットワーク構成)
図1は、本実施形態に係る人材マッチングシステムの構成例を示す図である。図1の人材マッチングシステム100は、人材マッチングサーバ10と、保育士端末20と、保育園端末30とを含む。
【0014】
人材マッチングサーバ10は、就職先の保育園を探している保育士(求職者)と、保育士を採用したい保育園(求人者)とをマッチングし人材紹介を行うための人材マッチング装置である。人材マッチングサーバ10は、例えば人材紹介サービス提供事業者等によって運営される。
【0015】
保育士端末20は、例えばスマートフォン、タブレット端末又はパーソナルコンピュータなどであり、保育士が人材マッチングサーバ10にアクセスするための情報端末である。保育士は、保育士端末20を用いて人材マッチングサーバ10による求人ウェブサイトにアクセス・ログインし、ウェブサイト上で求職者情報の登録や保育園の紹介サービス等を受けることができる
保育園端末30は、例えばスマートフォン、タブレット端末又はパーソナルコンピュータなどであり、保育園の採用担当者(以下、保育園担当者という)等が人材マッチングサーバ10にアクセスするための情報端末である。保育園担当者は、保育園端末30を用いて人材マッチングサーバ10による求人ウェブサイトにアクセス・ログインし、ウェブサイト上で求人情報の登録や保育士の紹介サービス等を受けることができる。
【0016】
なお、保育士端末20及び保育園端末30には、人材マッチングサーバ1にアクセスするために、予め所定のアプリケーションプログラム(汎用ウェブブラウザや専用アプリ)がインストールされる。
【0017】
(ハードウェア構成)
図2は、本実施形態に係る人材マッチングサーバのハードウェア構成例を示す図である。図2に示されるように、人材マッチングサーバ10は、CPU(Central Processing Unit)11、ROM(Read Only Memory)12、RAM(Random Access Memory)13、HDD(Hard Disk Drive)14、通信装置15、及び表示装置16を有する。
【0018】
CPU11は、各種プログラムの実行や演算処理を行う。ROM12は、起動時に必要なプログラムなどが記憶されている。RAM13は、CPU11での処理を一時的に記憶したり、データを記憶したりする作業エリアである。HDD14は、各種データ及びプログラムを格納する。通信装置15は、各端末との通信を行う。表示装置16は、ディスプレイである。
【0019】
(ソフトウェア構成)
図3Aは、本実施形態に係る人材マッチングサーバのソフトウェア構成例を示す図である。本実施形態に係る人材マッチングサーバ10は、主な機能部として、学習処理部101、入力取得部102、性格診断部103、マッチング部104、結果出力部105、及び記憶部108を有する。
【0020】
学習処理部101は、過去勤務実績データ記憶部108aに記憶された過去勤務実績データを教師データとして、過去勤務実績のある就労者及び勤務先の組織員の性格診断結果と、就労者の勤務年数との相関関係を学習した学習モデルを生成し、学習済モデルとして学習モデル記憶部108bに記憶する機能を有している。
【0021】
入力取得部102は、求職者及び求人者の組織員の性格診断に関する情報(例えばエゴグラム設問の回答結果)を取得する機能を有している。
【0022】
性格診断部103は、入力取得部102により取得された性格診断に関する情報に基づいて、求職者及び求人者の組織員の性格診断結果(例えばエゴグラムタイプ)を判定する機能を有している。
【0023】
マッチング部104は、学習モデル記憶部108bに記憶された学習モデルの相関関係に基づいて、求職者及び求人者の組織員の性格診断結果から、求人者の組織において所定の勤務年数以上(例えば1年)を勤務しうる求職者を推論する機能(推論部104a)と、求人者の組織において所定の勤務年数以上を勤務しうる求職者と、求人者とを抽出する機能(抽出部104b)とを有している。
【0024】
結果出力部105は、マッチング部104により推論・抽出された求人者の組織において所定の勤務年数以上を勤務しうる求職者と、求人者とを出力する機能を有している。
【0025】
記憶部108は、過去勤務実績データ記憶部108a、学習モデル記憶部108b、求職者DB108c、求人者DB108d、エゴグラム設問108eを含み記憶する。
【0026】
人材マッチングサーバ10には、人材マッチングプログラムが予めインストールされており、人材マッチングサーバ10を構成するコンピュータのCPU、ROM、RAM等のハードウェア資源上で人材マッチングプログラムが実行されることで、上記の各機能部が実現される。またこれら機能部は、「手段」、「モジュール」、「ユニット」、又は「回路」に読替えてもよい。また、記憶部108の各記憶部やDBは、ネットワーク50上の外部記憶装置に配置することも可能である。また、上記コンピュータプログラム及びアプリケーションプログラムは、コンピュータが読み取り可能な記憶媒体に格納されていてもよい。
【0027】
図3Bは、本実施形態に係る求職者DBのデータ構成例を示す図である。本実施形態に係る求職者DB108cは、求職者である保育士の「求職者ID」、「ユーザ情報」、「個人情報」、「希望労働条件情報」、「エゴグラムタイプ」などのデータ項目を有する。保育士は、保育士端末20を用いて人材マッチングサーバ10による求人ウェブサイトにアクセスし、保育士登録画面上から保育士登録(求職者登録)を行う。
【0028】
「求職者ID」は、求職者毎に付番される固有の識別子である。「ユーザ情報」の「メールアドレス」及び「パスワード」は、求職者が人材マッチングサーバ10による求人ウェブサイトにログインするためのID及びパスワードである。
【0029】
「個人情報」は、例えば、保育士の氏名、生年月日、年齢、性別、住所、既婚・未婚の別、扶養家族の有無、学歴、保有技能、保有資格、勤務経歴、退職理由等を含む。希望労働条件情報は、例えば、保育士の希望年収・待遇、職務形態、勤務地、勤務日数・時間等を含む。
【0030】
「希望労働条件情報」は、例えば、保育士の希望年収・待遇、職務形態、勤務地、勤務日数・時間等を含む。
【0031】
「エゴグラムタイプ」は、保育士の性格を示す情報である。後述するように、保育士は保育士登録時、保育士登録画面上にエゴグラム設問108eが出題される。保育士はエゴグラム設問(例えば50問)に回答し、その回答結果を入力する。「エゴグラムタイプ」は、その回答結果に基づく性格診断結果である。
【0032】
図3Cは、本実施形態に係る求人者DBのデータ構成例を示す図である。本実施形態に係る求人者DB108dは、求人者である保育園の「求人者ID」、「ユーザ情報」、「企業・組織情報」、「求人募集情報」、「職員情報」などのデータ項目を有する。保育園担当者は、保育園端末30を用いて人材マッチングサーバ10による求人ウェブサイトにアクセスし、保育園登録画面上から保育園登録(求人者登録)を行う。
【0033】
「求人者ID」は、求人者毎に付番される固有の識別子である。「ユーザ情報」の「メールアドレス」及び「パスワード」は、求人者が人材マッチングサーバ10による求人ウェブサイトにログインするためのID及びパスワードである。
【0034】
「企業・組織情報」は、例えば、施設名、所在地、設立年・施設歴、代表者名、職員数、職員情報、認可形態、運営理念、実績、取り組み等を含む。
【0035】
「求人募集情報」は、例えば、職種、新卒・中途の別、経験の有無、仕事内容、応募資格、募集背景、採用予定人数、雇用形態、雇用期間、試用期間、勤務地、勤務時間、給与、昇給、諸手当、休日・休暇、待遇・福利厚生、教育制度、求める人材、求人有効期間、応募・選考情報(応募方法や採用までの流れ等)、職員の雇用・離職情報(事業年度別の採用数、離職者数、平均勤続年数、従業員の平均年齢等)等を含む。
【0036】
「職員情報(職員プロフィール)」は、保育園で働く在職職員の情報である。具体的に保育園の場合、職員情報として、保育園で働く在職職員の、例えば役職・職責(園長、主任、一般保育士等)、年齢、性別等を登録する。職員情報は、更に氏名、生年月日、住所、既婚・未婚の別、扶養家族の有無、学歴、保有技能、保有資格、勤務経歴等を含んでもよい。また「エゴグラムタイプ」は、職員毎の性格を示す情報である。後述するように、保育園職員はエゴグラム設問(例えば50問)に回答し、その回答結果を入力する。「エゴグラムタイプ」は、その回答結果に基づく性格診断結果である。なお保育園情報(特に職員情報)に変更があった場合、保育園担当者は情報を最新にアップデートする。
【0037】
<エゴグラム性格診断>
本実施形態に係る人材マッチングシステム100おいては、求職者側と求人者側において特に就労後に生じる人間関係やコミュニケーションについての相性を事前に判定するため、エゴグラム性格診断を実施する。エゴグラム性格診断は、従来より心理療法の一つで交流分析というジャンルで使われている伝統的な心理検査手法である。人間の性格は、親から受け継いだものや、育った環境、その人の年齢、経験などさまざまな要素で作られるが、エゴグラム性格診断は、人の複雑な性格を、5つの心の領域に分類の上、心理検査テスト50問から5つの自我状態のエネルギー量を評価し、その診断結果を示すグラフから性格特性や行動パターンを推測する。
【0038】
図4は、本実施形態に係るエゴグラム性格診断を説明する図である。5つの心とは、CP(Critical Parent:父親的心)、NP(Nurturing Parent:母親的心)、A(Adult:理性的心)、FC(Free Child:自由な子供)、AC(Adapted Child:従順な子供)である。
・CP:厳しい父親的な側面を表し、責任感が強い、厳格である、理想をかかげる、こうあるべきという批判的な特徴の強さを意味する。CPが高いと「支配的」、普通であれば「良心的」、低いと「無責任」とされる。
・NP:優しい母親的な側面を表し、優しい、思いやりがある、世話好き、受容的であるという養育的な特徴を意味する。NPが高いと「過干渉」、普通であれば「受容」、低いと「冷淡」とされる。
・A:合理的な大人の自我状態で、親の自分と子どもの自分のまとめ役的な側面を表し、理論的、現実的である、冷静沈着である、客観性を重んじる、といった特徴の強さを意味する。Aが高いと「打算的」、普通であれば「理性的」、低いと「無計画」とされる。
・FC:欲求のままに行動する子ども的な側面を表し、感情を率直に表現する、自由奔放である、好奇心が強い、創造的である、無邪気である、といった特徴の強さを意味する。FCが高いと「自己中」、普通であれば「創造性」、低いと「消極的」とされる。
・AC:周囲の目を気にする空気を読む子ども的な側面を表し、協調性がある、我慢強い、他者を優先する、遠慮がちである、人の評価を気にする、といった特徴の強さを意味する。ACが高いと「依存的」、普通であれば「協調的」、低いと「頑固」とされる。
【0039】
例えば、図4に示す「佐藤さん」の場合、エゴグラム性格診断の結果、エゴグラムタイプは「AAAAB」である。つまり5つの心の診断結果はそれぞれ「CP」はA(高い)、「AP」はA(高い)、「A」はA(高い)、「FC」はA(高い)、「AC」はB(普通)となっていることから、責任感が強く、完璧主義、テキパキ仕事をこなすといったタイプ推測される。一方、「田中さん」の場合、エゴグラム性格診断結果、エゴグラムタイプは「BABBA」である。つまり5つの心の診断結果はそれぞれ「CP」はB(普通)、「AP」はA(高い)、「A」はB(普通)、「FC」はB(普通)、「AC」はA(高い)となっていることから、優しさ、協調性が高く周りの意見を尊重するタイプと推測される。
【0040】
なお、5つの心の高い低いは良い悪いではなく、全体のバランスがどのようになっているか、即ちエゴグラムにおいて各々の心グラフの高低及び組み合わせの、エゴグラムタイプと呼ばれるグラフパターン(台形型、U型、N型、逆N型、M型、W型、平坦型等)によって、その人の性格の特徴が見えてくるものである。
【0041】
<人材マッチングシステム利用フロー>
図5は、本実施形態に係る人材マッチングシステムの利用フローについて説明する図である。就職先の保育園を探している保育士と、保育士を採用したい保育園とがマッチングされるまでのシステム利用の流れについて説明する。
【0042】
(保育士側)
S1:まず保育士は、保育士端末20を用いて人材マッチングサーバ10による求人ウェブサイトにアクセスし、保育士登録画面上から保育士登録(求職者登録)を行う。具体的に保育士は、入力登録すべき保育士情報(求職者情報)として、図3Bに示されるような保育士の個人情報及び希望労働条件情報を入力する。また保育士登録時、保育士登録画面上にエゴグラム設問108eが出題される。保育士はエゴグラム設問(例えば50問)に回答し、その回答結果を入力する。
【0043】
図6は、本実施形態に係るエゴグラム性格診断画面の一例を示す図である。保育士は5つの心CP、NP、A、FC、ACにちなんだ各10問からなる合計50問のエゴグラム設問110に対して、「はい」「いいえ」「どちらともいえない」を選択することで回答する。なお、回答結果は、例えば「はい」を2点、「いいえ」を0点、「どちらともいえない」を1点とし、各々の心ごとに点数を集計し、点数の高低に応じて例えばA(15~20点)、B(5~14点)又はC(0~5点)の3段階で評価される。
【0044】
人材マッチングサーバ10は、保育士登録が完了すると、入力された保育士の個人情報、希望労働条件情報、及びエゴグラム回答結果を含む保育士情報(求職者情報)を、求職者DB108c(図3B)に登録・保存する。またエゴグラム性格診断結果として、例えば図4に示した「AAAAB」、「BABBA」といったように、各々の心をA、B又はCの3段階で評価したエゴグラムタイプを、当該保育士に対応付けて求職者DB108c(図3B)に登録・保存する。
【0045】
S2:次に保育士は、保育園検索画面上からお勧め保育園一覧を表示し参照することができる。詳しくは後述するが、人材マッチングサーバ10は、当該保育士と求人中の保育園(就職先)とのマッチング処理を実行し、求人中の保育園の中から、当該保育士にとって長期就労しうる可能性が高いとされる保育園を、その可能性の高い順に一覧表示する。
【0046】
S3:保育士は、お勧め保育園一覧の中から、例えば紹介を希望する保育園を一又は複数選択し、企業・組織情報や求人募集情報等を参照する。保育士が求人応募したいと考える保育園があった場合には、保育園の紹介申し込みを行うことができる。
【0047】
図7は、本実施形態に係るお勧め保育園一覧画面の一例を示す図である。保育士が任意の検索条件(例えば「種類」、「所在地」)を入力すると、入力した検索条件に合致する保育園が「オススメ度」の高い順に画面上に一覧表示111される。「オススメ度」の高い保育園は、エゴグラム性格診断結果に基づいて算出された指標値(スコアともいう)の高い保育園であって、その保育士から見て長期就労しうる可能性が高いとされる保育園保育園である。保育士は、「詳細」を押下操作することで求人者情報を含む詳細情報を参照し、「気になる」にチェックの上、「紹介を依頼する」を押下操作して、求人応募したい保育園の紹介申し込みを行うことができる。
【0048】
S4:人材マッチングサーバ10は、保育士から保育園紹介申し込みを受け付けると、当該保育士に対して紹介希望の保育園を紹介する紹介通知を送信する。なお、人材マッチングサーバ10は、人材紹介サービス提供事業者により紹介可否が検討され許可された場合や保育園側が紹介を受託した場合にのみ紹介通知を送信することも可能である。
【0049】
(保育園側)
S11:保育園担当者は、保育園端末30を用いて人材マッチングサーバ10による求人ウェブサイトにアクセスし、保育園登録画面上から保育園登録(求人者登録)を行う。具体的に保育園担当者は、入力登録すべき保育園情報(求人者情報)の一つとして、図3Cに示されるような保育園の企業・組織情報、職員情報を入力する。
【0050】
図8は、本実施形態に職員情報登録画面の一例を示す図である。本実施形態に係る職員情報(職員プロフィール)120は、保育園で働く在職職員の情報である。具体的に保育園の場合、職員情報として、保育園で働く在職職員の、例えば役職・職責(園長、主任、一般保育士等)、年齢、性別等を登録する。また更に、登録した職員はそれぞれがエゴグラム性格診断実施121を押下することで遷移するエゴグラム性格診断画面においてエゴグラム設問(例えば50問)に回答し、その回答結果を入力する。つまり、保育士と勤務後に職務上関わりを有する職員の全員がエゴグラム性格診断を予め受けることになっている。
【0051】
図9は、本実施形態に係るエゴグラム性格診断画面の一例を示す図である。図8に示されるように、園長の「山田花子」は5つの心CP、NP、A、FC、ACにちなんだ各10問からなる合計50問のエゴグラム設問122対して、「はい」「いいえ」「どちらともいえない」を選択することで回答する。同様に、保育士と職務上関わりを有する職員の全員が設問に回答する。
【0052】
人材マッチングサーバ10は、保育園登録が完了すると、入力された保育園の企業・組織情報、職員情報を含む保育園情報(求人者情報)を、求人者DB108d(図3C)に登録・保存する。またエゴグラム性格診断結果として、例えば図4の「AAAAB」、「BABBA」といったように、各々の心をA、B又はCの3段階で評価したエゴグラムタイプを、当該職員に対応付けて求人者DB(図3C)に登録・保存する。なお、職員数が多い場合などは一度に保育園登録を完了させることは困難であるため、実施可能な職員から順にエゴグラム性格診断を受け、その都度そのエゴグラムタイプを、当該職員に対応付けて求人者DB108dに登録・保存することも可能である。
【0053】
S12:次に保育園側が保育士を採用したい、つまり実際の求人募集を行いたい場合に、保育園担当者は、求人募集登録画面上から求人募集情報登録を行う。具体的に保育園担当者は、入力登録すべき保育園情報(求人者情報)の一つとして、図3Cに示されるような求人募集情報を入力する。
【0054】
人材マッチングサーバ10は、求人募集登録が完了すると、入力された保育園の求人募集情報を、求人者DB108d(図3C)に登録・保存する。
【0055】
S13:次に保育園担当者は、保育士検索画面上からお勧め保育士一覧を表示し参照することができる。詳しくは後述するが、人材マッチングサーバ10は、当該保育園と求職中の保育士とのマッチング処理を実行し、求職中の保育士の中から当該保育園で長期就労しうる可能性が高いとされる保育士を、その可能性の高い順に一覧表示する。
【0056】
S14:保育園担当者は、お勧め保育士一覧の中から、例えば紹介を希望する保育士を一又は複数選択し、保育士情報(求職者情報)を参照する。保育園側が採用したいと考える保育士があった場合には、保育士の紹介申し込みを行うことができる。
【0057】
図10は、本実施形態に係るお勧め保育士一覧画面の一例を示す図である。保育園担当者が任意の検索条件(例えば「雇用形態」、「住所」)を入力すると、入力した検索条件に合致する保育士が「オススメ度」の高い順に画面上に一覧表示123される。「オススメ度」の高い保育士は、エゴグラム性格診断結果に基づいて算出された指標値の高い保育士であって、その保育園で長期就労しうる可能性が高いとされる保育士である。保育園担当者は、「詳細」を押下操作することで求職者情報等の詳細情報を参照し、「気になる」にチェックの上、「紹介を依頼する」を押下操作して、採用したい保育士の紹介申し込みを行うことができる。
【0058】
S15:人材マッチングサーバ10は、保育園側から保育士紹介申し込みを受け付けると、当該保育園に対して紹介希望の保育士を紹介する紹介通知を送信する。なお、人材マッチングサーバ10は、人材紹介サービス提供事業者により紹介可否が検討され許可された場合や保育士側が紹介を受託した場合にのみ紹介通知を送信することも可能である。
【0059】
<情報処理>
(学習処理)
図11は、本実施形態に係る過去勤務実績データの一例を示す図である。本実施形態に係る学習モデルの学習処理についてまず説明する。学習モデル構築のための教師データとして、図3に示した過去勤務実績データ記憶部108aは、マッチング処理に先立って予め、勤務先(就職先)であった保育園に関するデータと、過去にその保育園に勤務実績のあった保育士に関するデータとを記憶する。
【0060】
保育園に関するデータは、例えば、保育園の企業・組織情報(施設名、所在地、設立年・施設歴、代表者名、職員数、職員情報、認可形態、運営理念、実績、取り組み等)、保育園の職員情報(役職・職責、年齢、性別等)、当該職員のエゴグラム性格診断結果であるエゴグラムタイプを含む。個々の保育園毎及び職員毎に付番された固有のIDが含まれていてもよい。
【0061】
保育士に関するデータは、例えば、過去に勤務実績のあった保育士の個人情報(個人情報は、例えば、年齢、性別、住所、既婚・未婚の別、扶養家族の有無、学歴、保有技能、保有資格、勤務経歴、退職理由等)、当該保育士のエゴグラム性格診断結果であるエゴグラムタイプ、当該保育士の勤務実績のあった保育園、勤務開始日、退職日、勤務年数(勤務年数)を含む。勤務年数は、勤務開始日から退職日までに勤務した年数であり、現職の場合は勤務開始日から現在までの勤務した年数である。個々の保育士毎に付番された固有のIDが含まれていてもよい。また当該保育士の勤務実績のあった保育園、勤務開始日、退職日、勤務年数は、勤務経歴に含めてもよい。
【0062】
学習処理部101は、過去勤務実績データ記憶部108aに記憶されている保育園及び保育士に関するデータを読み出して、勤務先であった保育園に関するデータと、過去にその保育園に勤務実績のあった保育士に関するデータとの組から構成される教師データを作成する。また学習処理部101は、作成した教師データを用いて機械学習を実行し、保育園職員のエゴグラムタイプを含む保育園に関するデータ、及び、保育士のエゴグラムタイプを含む保育士に関するデータと、保育士の勤務年数との相関関係を規定する数学モデル、即ち入力(説明変数)を求職中の保育士のエゴグラムタイプを含む保育士情報とし、出力(目的変数)を求人中の保育園において当該保育士が就労した場合にその勤務年数が所定年数(例えば1年)以上となる確率とする数学モデルを生成し、学習済モデルとして学習モデル記憶部108bに記憶する。
【0063】
図11に示す例においては、例えば、過去勤務実績として保育士Aさんは保育園Xにおける勤務年数が5年(且つ依然在籍中)となっている。また特に保育士Aのエゴグラムタイプは「AAAAB」であり、保育園Xの職員X1(園長)のエゴグラムタイプは「BABBA」、職員X2(主任)のエゴグラムタイプは「AACBA」、職員X3(一般保育士)のエゴグラムタイプは「BACBA」である。一方、保育士Bさんは保育園Xにおける勤務年数が6か月となっている。また特に保育士Aのエゴグラムタイプは「ACACBA」である。そうすると、保育士Aの方が保育園Xに長期就労していることから、保育士Aと保育園Xの職員らのエゴグラムタイプの相性組み合わせの方が、保育士Bと保育園Xの職員らのエゴグラムタイプの相性組み合わせよりも、長期就労可能という観点からは性格的相性が良いということが学習可能である。
【0064】
図12は、本実施形態に係るベイジアンネットワークの学習済モデル概念を説明する図である。ベイジアンネットワーク(Bayesian Network)は、因果関係を確率により記述するグラフィカルモデルの1つで、様々な因果関係の推論を有向非巡回グラフ構造により表すとともに、個々の変数の関係を条件つき確率で表す確率推論のモデルである。確率分布は確率変数をノード、変数間関係をリンクとするグラフ・ネットワークで表現できる。例えば確率変数A、B、Cの間の条件付依存性をA→B、B→Cと表し、リンクの元となる親ノードをA(保育士・保育園のエゴグラムタイプ)やB(保育士・保育園のエゴグラムタイプの組み合わせ相性)、リンクの先にくる子ノードをC(保育園で保育士の勤務年数が例えば1年以上となる確率)とした場合、Bが所定の相性にあるときにCが起こる条件付確率を表現することができる。
【0065】
つまり、保育士のエゴグラムと当該保育園(職員)とのエゴグラムとの性格診断の組み合わせ・相性や、保育士の保有技能・保有資格と当該保育園の運営理念・取り組みとのスキルの組み合わせ・マッチ度などから、その保育園でその保育士の勤務年数が例えば1年以上となる確率が分かるので、保育士と保育園とのマッチング処理において、今回新たに求職中の保育士及び求人中の保育園に関するデータを取得し、学習済モデルに入力することで、その保育士にとって勤務年数が例えば1年以上となりうる保育園を推論し、お勧め保育園としてマッチングすることができる。
【0066】
なお、本実施形態に係る機械学習は、公知の機械学習を用いることができるが、特に保育士のエゴグラムと当該保育園(職員)とのエゴグラム性格診断結果による性格相性および勤務年数に基づく学習済みモデルから、今回新たに求職中の保育士にとって長期勤務が可能な保育園を推論し(又は今回新たに求人中の保育園にとって長期勤務が可能な保育士を推論し)、お勧め保育園(又はお勧め保育士)としてマッチングできればよく、ベイジアンネットワークの他、例えば、ニューラルネットワーク(NN)、畳み込みニューラルネットワーク(CNN)、サポートベクターマシン(SVM)等を用いてもよい。多層のニューラルネットワークを用いたディープラーニングでもよい。
【0067】
また、適用する学習モデルによっては、求職中の保育士及び求人中の保育園職員のエゴグラム性格診断結果から、当該保育園においてその保育士の勤務年数値をまず推論(推定)し、そのうち推論された勤務年数値が1年以上という条件を満たす保育士を抽出してもよい。
【0068】
(性格診断処理)
次いで本実施形態に係る性格診断処理について説明する。入力取得部102は、求人ウェブサイト(図6、8)を介して、保育士又は保育園職員から入力回答されたエゴグラム設問に対する回答結果を取得する。
【0069】
性格診断部103は、取得された回答結果に基づいて各々の心ごとに点数を集計し、点数の高低に応じて例えばA(15~20点)、B(5~14点)又はC(0~5点)の3段階で評価することで、エゴグラム性格診断結果として、各々の心をA、B又はCの3段階で評価したエゴグラムタイプを、当該回答者毎に対応付けて求人者DB108d及び求職者DB108cに登録・保存する。
【0070】
(人材マッチング処理)
図13は、本実施形態に係る人材マッチング処理を示すフローチャート図である。CPU11が本フローチャートを実現可能なプログラムを読み込んで実行させることで、各ステップ(以下、「S」と表記する)を実現することができる。
【0071】
以下、保育士が保育士端末20を用いて人材マッチングサーバ10による求人ウェブサイトにアクセス・ログインし、保育園検索画面上からお勧め保育園一覧を表示し参照するケースについて説明する。
【0072】
S31:マッチング部104は、お勧め保育士一覧表示要求があったか否かを判定する。お勧め保育士一覧表示要求があった場合、S32へ進む。
【0073】
S32:マッチング部104は、求職者DB108cから、ログイン中の当該保育士の個人情報(例えば年齢、性別、更に住所、既婚・未婚の別、扶養家族の有無、学歴、保有技能、保有資格、勤務経歴を含んでもよい)及び当該保育士のエゴグラム性格診断結果であるエゴグラムタイプを取得し、これを学習モデル記憶部108bに記憶された学習済モデルに入力する。
【0074】
S33:マッチング推論部104は、保育士の個人情報及びエゴグラムタイプに基づいて、当該保育士にとって長期就労(例えば1年以上)が期待できるお勧め保育園を推論する。具体的には、保育園毎に保育士の勤務年数が例えば1年以上となりうる確率(スコア)を推論し、確率が高い上位所定数(例えば5つ)の保育園を抽出する。また、保育士の個人情報及びエゴグラムタイプに基づいて、当該保育園においてその保育士の勤務年数値をまず推論(推定)し、そのうち推論された勤務年数値が1年以上という条件を満たす保育士を抽出してもよい。
【0075】
S34:結果出力部105は、S33でお勧め保育園が抽出されたか否かを判定する。なお、抽出されたお勧め保育園が0である場合、「オススメ保育士該当なし。新たな保育士の登録される迄暫くお待ち下さい。」といった表示を、保育士端末20に対して行うことができる(S34:NO)。
【0076】
S35:一方、S33でお勧め保育園が抽出された場合、結果出力部105は、お勧め保育園として、勤務年数が例えば1年以上となりうる確率(スコア)とともに、確率が高い上位例えば5つといった上位所定数の保育園を取得し、保育園一覧画面上(図7)、取得された所定数の保育園を、確率(スコア)の高い順に並べて、オススメ保育園一覧として表示する。
【0077】
なお、該当する保育園が所定数(例えば5つ)に満たない場合であっても、該当した保育園のみを取得する。また、例えば60%などといったように予め基準確率(基準スコア)を設けておき、基準確率に満たない保育園については、たとえ確率が高い上位所定数に入ってもこれを除外するようにしてもよい。
【0078】
上述したようにここで取得されたオススメ保育園は、特に例えば保育士のエゴグラムと当該保育園職員との各々のエゴグラム性格診断結果の組み合わせ及びそのとき保育士の当該保育園での勤務年数に基づく学習済みモデルから、今回新たに求職中の保育士から見て長期勤務が可能と推論された保育園である。なお、長期勤務が可能かどうかは保育士のエゴグラムと当該保育園職員との各々のエゴグラム性格診断結果に基づいて推論されることから、言い換えれば、その保育士は長期勤務が可能と推論されたその保育園職員と人間関係やコミュニケーションの面で性格的好相性であり、そのため長期勤務が可能であるということができる。
【0079】
図14は、保育士とお勧め保育園との関係性を説明する図(その1)である。図13に示される過去勤務実績データによれば、過去勤務実績として保育士Aさんは保育園Xにおける勤務年数が5年(且つ依然在籍中)となっていることから、保育士Aさんと保育園Xの職員らとは人間関係やコミュニケーションが良好、即ち性格的好相性であることが推察される。
【0080】
一方、現在求職中の保育士Nさんは、エゴグラム性格診断の結果、保育士Aさんと同一又は近い性格タイプであると判定されている。従って、過去保育園Xにおいて長期勤務実績のある保育士Aさんと近い性格の保育士Nさんにとっても、現在求人中の保育園Xの職員らと非常に相性が良い可能性が高く、保育士Aさんが長期勤務するに非常に適した職場環境であるということができる。即ち、現在求職中の保育士Nさんが仮に求人中の保育園Xに就労した場合、勤務年数が例えば1年以上となる確率が高く、保育士Nからみて保育園Xはお勧め保育園である。
【0081】
なお仮に、例えば過去勤務実績として保育士Aさんは、さらに保育園Y(非図示)における勤務実績があるものとして、保育園Yにおける勤務年数が半年となっていた場合、保育士Aさんと保育園Yの職員らとは人間関係やコミュニケーションについて好相性ではないであろう可能性が高い。
【0082】
この場合、現在求職中の保育士Nさんは、エゴグラム性格診断の結果、保育士Aさんと同一又は近い性格タイプであると判定されているため、過去保育園Yにおいて長期勤務実績がない保育士Aさんと近い性格の保育士Nさんにとっても、現在求人中の保育園Yの職員らと相性が良いとはいえないであろう可能性が高く、保育士Aさんが長期勤務するに非常に適した職場環境ではない可能性が高いということができる。即ち、現在求職中の保育士Nさんが仮に求人中の保育園Yに就労した場合、勤務年数が例えば1年以上となる確率が低く、保育士Nからみて保育園Yはお勧め保育園から除外されうる。
【0083】
なお、エゴグラム性格診断結果が、同一又は近い性格タイプかどうかの判定は、例えばエゴグラムタイプが完全に一致する場合は同一と判定できる。エゴグラムタイプにおいて5つの心のうち多少異なっていても、グラフパターン(台形型、U型、N型、逆N型、M型、W型、平坦型等)が同一分類される場合は、近い・近似するということができる。
【0084】
図15は、保育士とお勧め保育園との関係性を説明する図(その2)である。図13と比べると、現在求人中の保育園Zは、例えば新規に設立された保育園のため、過去勤務実績データが存在しない。一方、保育園Zの職員らのエゴグラム性格診断の結果、保育園Xの職員らと保育園Zの職員らとは同一又は近い性格タイプであると判定されている。
【0085】
一方、現在求職中の保育士Nさんは、エゴグラム性格診断の結果、保育士Aさんと同一又は近い性格タイプであると判定されている。従って、過去保育園Xにおいて長期勤務実績のある保育士Aさんと近い性格の保育士Nさんにとって、保育園Xの職員らと近い性格である現在求人中の保育園Zの職員らとも非常に相性が良い可能性が高く、保育士Aさんが長期勤務するに非常に適した職場環境であるということができる。即ち、現在求職中の保育士Nさんが仮に求人中の保育園Zに就労した場合、勤務年数が例えば1年以上となる確率が高く、保育士Nからみて保育園Zもお勧め保育園である。
【0086】
なお、図15のケースで、保育園Xの職員らと保育園Zの職員らとは同一又は近い性格タイプであると判定というのは、保育園Xの職員全体で構成される性格タイプと保育園Zの職員全体で構成される性格タイプが同一又は近い性格タイプであるものであり、個々の職員レベルでみれば必ずしも同一又は近い性格タイプである訳ではない。例えばグラフパターン(台形型、U型、N型、逆N型、M型、W型、平坦型等)のうち、保育園Xの職員全体で構成される性格タイプは、台形型10人、U型1人、N型2人、平坦型2人であるとした場合、台形型比重傾向である。一方、保育園Zの職員全体で構成される性格タイプは、台形型6人、U型2人、N型1人、W型1人、平坦型5人であるとした場合、やや台形型比重傾向である。この場合、保育園Xの職員全体で構成される性格タイプと保育園Zの職員全体で構成される性格タイプが近い性格タイプであるということができる。
【0087】
(補足)
以下の点についても言及する。
・就労後の保育士にとって大切なのは、保育園施設自体との相性ではなく、保育園施設内で働く生の職員との人間関係やコミュニケーションといった性格的相性の良さである。相性が良ければ、職後(就労後)における就労者の定着率が向上する。よって、本実施形態においては、エゴグラム性格診断は、園長などの保育園代表者1名のみならず、そこで働き保育士が日々接する職員ら(可能な限り全員)のエゴグラム性格診断結果を用いるようにした。これにより、就職後(就労後)における就労者の定着率を向上という観点から、保育士と保育園施設内で働く職員らとの性格的タイプの組み合わせを特に考慮の上、求職中の保育士と求人中の保育園を効果的にマッチングすることが可能である。
【0088】
・また、本実施形態に係る職員情報は、職員の役職や職責(園長、主任、一般保育士等)の情報を含む。このため、就労後における保育士との関与度が高い職員、例えば役職的に保育士が就労後に日々接する割合の高い職員については、職員情報入力画面(図16)において、就労後における保育士との関与度が高い職員(例えばそれに該当する役職職員)ほど高い重み(重み係数等)124を付けることで、求職中の保育士と求人中の保育園を、より効果的にマッチングすることが可能である。
【0089】
一般に、保育園組織の方針自体は園長が示すものの、チームに対する方針・指示・評価は主任保育士、そして切磋琢磨・協調は同僚保育士となっていることが多く、就職後に求職中の保育士が求人中の保育園の職員らと人間関係やコミュニケーションがうまく取れるかどうかは、特に職員の中でも特に主任保育士の性格が大きく関与しているのではないかと想像される。
【0090】
よって例えば、役職園長と一保育士とはあまり接する機会が少ないため、就労後における保育士との関与度が高くない園長のエゴグラム性格診断結果を考慮すべき比重・割合(相性の重要度の重み割合)を小さくする。これにより当該保育園の所属職員らの全体的性格(職員らのエゴグラム性格診断結果の集合)から、園長の性格分の影響を小さくする。仮に園長が現場にノータッチの場合は0%となり、当該保育園の所属職員らの全体的性格に園長は加味されない。一方、役職主任は一保育士にとって直属の上司であり、日々接する機会が多いため、就労後における保育士との関与度が高い主任のエゴグラム性格診断結果を考慮すべき比重・割合(相性の重要度の重み)を大きくすることができる。
【0091】
この結果、当該保育園の所属職員らの全体的性格(職員らのエゴグラム性格診断結果の集合)としては、当該園長よりも当該主任の性格診断結果のウェイトが重くなる。つまり、その保育園の現場状況に即してこれを保育園の所属職員らとしての全体的性格に反映することができる。これにより、就職後(就労後)における就労者の定着率を向上という観点から、保育士と保育園施設内で働く職員らとの性格的タイプの組み合わせ(特に例えば当該主任)を特に考慮の上、求職中の保育士と求人中の保育園をより効果的にマッチングすることが可能である。
【0092】
なお、上述の過去勤務実績データの勤務先の保育園Xに関するデータにおいて、同様に、勤務実績のある保育士が就労後に日々接した割合の高い役職職員について、日々接する割合の高い役職ほど高い重みを付けてもよい。これにより、学習モデルにおいては、求職中の保育士及び求人中の保育園職員らの性格的相性と、勤務年数との相関関係を、よりその保育園の現場状況に即して反映することができる。
【0093】
・就労後長期に勤務を継続したい保育士にとって大切なのは、保育園施設内で働く職員との人間関係やコミュニケーションがうまく取れるかといったいわば性格的相性であるが、その性格的相性を判定するための要素として、エゴグラム性格診断結果のみならず、保育士と職員らの性別及び年齢も重要な要素である。相性は、性別及び年齢によっても変わってくるためである。例えば保育士からみて同じ年の職員とは相性や折り合いがうまくない場合があっても、年上職員であれば、相性や折り合いがよい場合もある。逆に例えば年上の職員とは相性や折り合いが得意でない保育士であっても、同じ年職員であれば、相性や折り合いよくできる場合もある。性別(男性・女性)についても同性か異性かによって同様のことがいえる。
【0094】
・また更に、エゴグラム性格診断結果、性別及び年齢のならず、その性格的相性を判定するための要素として、住所、既婚・未婚の別、扶養家族の有無、学歴、保有技能、保有資格、勤務経歴など、保育士の個人情報と、保育園職員らの職員情報(プロフィール)も重要な要素である。相性は、個人の持つプロフィールの共通性によっても変わってくるためである。例えば保育士からみて性格的相性や折り合いがうまくない場合があっても、同じような共通点(住所、既婚・未婚の別、扶養家族の有無、学歴、保有技能、保有資格、勤務経歴等)であれば、相性や折り合いがよい場合もある。
【0095】
・本実施形態において、保育士及び保育園職員らのエゴグラム性格診断結果に基づく場合、就職後にその保育士がその保育園の職員らと人間関係やコミュニケーションがうまく取れるかどうかといった性格的相性の観点から、長期就労の可能性が高いかどうかを判定した。しかしながら、長期就労の可能性が高いかどうかは性格的相性の観点からに留まらない。例えば保育士の保有技能・保有資格及び保育園の運営理念・取り組みとのスキルマッチ度や、さらには保育士の希望労働条件情報及び保育園の求人募集情報との労働条件マッチ度といったように、スキル条件的相性や労働条件的相性という観点も、長期就労の可能性が高いかどうかに影響する要素である。従って本実施形態においては前者の性格的相性のみならず、後者の条件的相性も総合的に加味し、最終的に当該保育士にとってお勧め保育園を出力するようにしてもよい。
【0096】
・過去勤務実績データにおける保育士の退職理由が「職場環境の人間関係」である場合、スキル条件的相性や労働条件的相性よりも、性格的相性の方により重い重みを付けることで、最終的に求職中の保育士にとってよりお勧め保育園を出力できる。
【0097】
・エゴグラム設問の回答結果は、求人ウェブサイト(図6、8)を介して、保育士又は保育園職員から入力回答されたエゴグラム設問に対する回答結果を取得する他、別の場で実施・回答された回答結果のみを、人材マッチングサーバ10(入力取得部102)に対してまとめてインポートするなど流し入力してもよい。
【0098】
・保育園側においては、保育士と勤務後に職務上関わりを有する職員の全員がエゴグラム性格診断を予め受けることが望ましいが、全保育園職員がエゴグラム設問に回答するということが運用上・実務上困難である場合は、例えば園長及び主任のみといったように、主要な職員だけで設問に回答するということも可能である。
【0099】
<総括>
本実施形態に係る人材マッチングシステム100によれば、特に保育士及び保育園職員らのエゴグラム性格診断結果に基づいて、過去勤務実績データに基づく学習モデルを活用し、就職後に求職中の保育士が求人中の保育園の職員らと人間関係やコミュニケーションがうまく取れるかどうかといった性格的相性の観点から、当該保育士がその保育園で長期就労の可能性が高いかどうかを判定するため、求職者と相性の良い職場環境(就職先)とをマッチングし、就職後(就労後)における就労者の定着率を向上させることが可能である。またこれにより保育士を安定的に確保し、保育業界の人材不足解消、保育人材の長期育成、待機児童を減らし、ひいては女性活躍推進につながり、地域課題解決にも大きく寄与することが期待される。
【0100】
以上、本発明の好適な実施の形態により、特定の具体例を示して本発明を説明したが、特許請求の範囲に定義された本発明の広範な趣旨および範囲から逸脱することなく、これら具体例に様々な修正および変更を加えることができることは明らかである。すなわち、具体例の詳細および添付の図面により本発明が限定されるものと解釈してはならない。
【0101】
なお、本発明は、上述の実施形態の1つ以上の機能を実現するプログラムを、ネットワークまたは記録媒体を介してシステムまたは装置に供給し、そのシステムまたは装置のコンピュータにおける1つ以上のプロセッサーがプログラムを読み出し作動させる処理でも実現可能である。
【符号の説明】
【0102】
10 人材マッチングサーバ
20 保育士端末
30 保育園端末
100 人材マッチングシステム
101 学習処理部
102 入力取得部
103 性格診断部
104 マッチング部
105 結果出力部
108 記憶部
【要約】      (修正有)
【課題】求職者と相性の良い職場環境とをマッチングし、就職後における就労者の定着率を向上させる人材マッチング装置及び人材マッチングプログラムを提供する。
【解決手段】人材マッチングサーバ10は、過去勤務実績のある就労者及び勤務先の組織員の性格診断結果を記憶した過去勤務実績データ記憶部108aと、就労者の勤務年数との相関関係が学習された学習モデルを記憶した学習モデル記憶部108bと、求職者及び求人者の性格診断に関する情報を取得する入力取得部102と、性格診断に関する情報に基づいて、求職者及び求人者の性格診断結果を判定する性格診断部103と、学習モデルの相関関係に基づいて、求職者及び求人者の性格診断結果から、求人者の組織において所定の勤務年数以上を勤務しうる求職者を推論する推論部104aと、求人者の組織において所定の勤務年数以上を勤務しうる求職者及び求人者を抽出する抽出部104bと、を有する。
【選択図】図3A
図1
図2
図3A
図3B
図3C
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16